説明

パワーモジュール

【課題】冷却プレートと半導体パッケージを交互に積層したパワーモジュールにおいて、下流の冷却プレートまで冷媒が良く流れるようにする。
【解決手段】パワーモジュール100は、複数の冷却プレート2と、半導体素子を収めた複数の半導体パッケージ3を交互に積層した構造を有している。冷却プレート2には、半導体パッケージ3の当接領域12cの両側に貫通孔12a、12bが形成されており、冷却プレート2の内部に一方の貫通孔から他方の貫通孔へと冷媒が通る流路が形成されている。また、隣接する冷却プレートの貫通孔同士が接続されている。さらに、積層体の一方の端に位置する最外冷却プレート2aの2つの貫通孔の夫々には、冷媒の供給管8と排出管7が接続されている。供給管8と排出管7の少なくとも一方の管と冷却プレート2aとの接続部の流路断面積S1が、貫通孔同士を接続する接続管5の流路断面積S2よりも大きい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体素子を収めた平板型の複数の半導体パッケージと冷却器が一体となったパワーモジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
インバータや電圧コンバータで用いられるIGBTや還流ダイオードなどの半導体素子は、発熱量が大きい。それらの素子は、パワー半導体素子、あるいは単にパワー素子などと呼ばれることがある。発熱量は、流れる電流の大きさに依存する。従って、大きな出力トルクが要求される車輪駆動用のモータ(ハイブリッド車を含む電気自動車用の走行用モータ)に電力を供給するインバータや電圧コンバータは、発熱量の大きいパワー素子を多数用いる。他方、車両搭載機器にはコンパクト性も求められる。そこで、電気自動車用に、多数のパワー素子を冷却器と一体化したパワーモジュールが提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1〜特許文献4には、発熱量の大きい半導体素子(パワー素子)を平板型の筐体(半導体パッケージ)に収め、複数の半導体パッケージと平板型の冷却プレートを交互に積層したパワーモジュールが提案されている。そのパワーモジュールは、半導体パッケージを両面から冷却することで、コンパクトで高い冷却能力を確保している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−332864号公報
【特許文献2】特開2010−200478号公報
【特許文献3】特開2011−165922号公報
【特許文献4】特開2005−311046号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のパワーモジュールは、次の構造を有する。即ち、冷却プレートには、半導体パッケージの当接領域の両側に貫通孔が形成されているとともに、その内部に一方の貫通孔から他方の貫通孔へと冷媒が通る流路が形成されている。隣接する冷却プレートの貫通孔同士が接続されている。また、冷却プレートと半導体パッケージの積層体の一方の端に位置する冷却プレート(最外冷却プレート)の2つの貫通孔の夫々に、冷媒を供給する供給管と冷媒を排出する排出管が接続されている。以下、隣り合う冷却プレートの貫通孔同士を接続する部分を接続管と称する。供給管から最外冷却プレートへと流入した冷媒は、最外冷却プレート内へ向かう流れと、接続管を通じて下流の冷却プレートへと向かう流れに分かれる。次の冷却プレート内でも同様に分流し、順次下流の冷却プレートへと冷媒が流れる。冷媒は、複数の冷却プレートを平行に流れ、他方の貫通孔と接続管を通じて合流し、最終的に排出管から出ていく。
【0006】
コンパクト性を高めるためには、冷却プレートの面積を小さくするのがよい。しかしながら、半導体パッケージの大きさは決まっているから、半導体パッケージの当接領域は小さくできない。冷却プレートのうち、当接領域を除く部分、即ち、貫通孔の断面積を小さくすれば、冷却プレートの面積を小さくすることができ、その結果、パワーモジュール全体のサイズを小さくすることができる。他方、上記したように、冷却プレートは積層されており、冷媒は接続管を通じて最外冷却プレートから順次に下流側の冷却プレートへ分流しながら流れていく。ここで、接続管の面積が狭いと冷媒供給管から下流側の冷却プレートには冷媒が流れ難くなる。本明細書は、冷却プレートと半導体パッケージを交互に積層したパワーモジュールにおいて、冷媒の流れを向上する技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前述したように、冷媒の供給管と排出管は、最外冷却プレート(冷却プレートと半導体パッケージの積層体の一方の端に位置する冷却プレート)に接続している。そして、最外冷却プレートの外側には半導体パッケージは配置されない。即ち、供給管と排出管の間には半導体パッケージが配置されない。そのため、最外冷却プレートでは、供給管と排出管の間に空間があり、供給管と排出管の断面積を大きくする余地がある。本明細書が開示する新規なパワーモジュールは、供給管と排出管の間の空間を利用し、供給管と排出管(少なくともその一方)と冷却プレートとの接続部の流路断面積を、接続管の流路断面積よりも大きくする。そのような構成によって、冷媒を積層体に流入し易くする。特に、供給管あるいは排出管と最外冷却プレートとの接続部分は、冷媒の分流/合流地点として最も流量が多い箇所であるから、そのような箇所にて冷媒を流れ易くすることによって(別言すれば流路抵抗を低減することによって)、供給管から遠い側(下流側)の冷却プレートへも冷媒がよく流れるようになる。
【0008】
供給管(あるいは排出管)と最外冷却プレートとの接続部の流路断面積を大きくすると、最外冷却プレート内部を流れる冷媒の流量が他の冷却プレートにおける冷媒流量よりも大きくなり、最外冷却プレート以外の下流の冷却プレートでは、期待したほど冷媒流量が増えない可能性がある。そこで、より好ましくは、最外冷却プレートの流路抵抗を他の冷却プレートの流路抵抗よりも大きくするのがよい。最外冷却プレートの流路抵抗を大きくする構造の好適な一例は、供給管(あるいは排出管)を冷却プレートの内部まで押し込み、供給管(あるいは排出管)の端部によって冷却プレート内部の流路を狭めることである。供給管(あるいは排出管)の端部を使って流路を狭める構造は、冷却プレートに特別な構造的変更を加えることなく実現できる。また、最外冷却プレートの流路抵抗を大きくする構造の別の一例は、最外冷却プレートの内部の流路の最小断面積を、他の冷却プレートの内部の最小断面積よりも小さくすることである。例えば、流路内に突起や遮蔽板を設けることで、その流路の最小断面積を他の流路よりも小さくすることができる。
【0009】
本明細書が開示する冷却器が一体となった積層型のパワーモジュールの詳細、及び、さらなる改良については発明の実施の形態において説明する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】パワーモジュールの模式的斜視図である。
【図2】1個の冷却プレートの斜視図である。
【図3】図1のIII−III方向から見たときのパワーモジュールの断面図である。
【図4】端部冷却プレートの断面図である。
【図5】変形例のパワーモジュールの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1に、パワーモジュール100の模式的斜視図を示す。パワーモジュール100は、電気自動車のモータに交流電力を供給するインバータの一部である。パワーモジュール100は、インバータの電子回路のうち、特に発熱の大きな素子、具体的には交流を発生するスイッチング素子(例えばIGBTなど)を集積したものである。パワーモジュール100は、IGBTなどの半導体素子を封止した複数のパッケージ(半導体パッケージ3)と冷却プレート2を積層した構造を有している。別言すれば、パワーモジュール100は、複数の冷却プレート2が平行に配置され、隣接する冷却プレート2の間に、半導体パッケージ3が挟まれた構造を有している。本実施例のパワーモジュール100では、隣接する冷却プレート2の間に、2個の半導体パッケージ3が挟まれる。なお、半導体パッケージ3と冷却プレート2の間には、絶縁シート4が挿入される。また、図示を省略しているが、各半導体パッケージ3からは電極が伸びており、他の回路と接続される。説明の都合上、冷媒の供給管8と排出管7(後述)が接続される冷却プレートを符号2aで表し、冷却プレート2aに近い方から遠い方へ向かって符号2b〜2gを付す。特定の冷却プレートを指定しない場合は、「冷却プレート2」と表記する。
【0012】
図2に冷却プレート2単体の斜視図を示す。冷却プレート2の長手方向(図中のX方向)の両端には貫通孔12a、12bが設けられている。冷却プレート2の内部は空洞であり、一方の貫通孔12aから流入した冷媒が空洞を通り、他方の貫通孔12bから出ていく。冷却プレート2の内部空間が流路に相当する。流路を冷媒が流れ、冷却プレート2に接する半導体パッケージ3を冷却する。冷却プレート2の中央には、絶縁シート4を介して半導体パッケージ3が当接する当接領域12cが定められている。貫通孔12a、12bは当接領域12cの両側に位置する。図1に示すように、複数の冷却プレート2は平行に配置され、隣接する冷却プレート2の貫通孔同士が接続管5で接続される。但し、積層体の端に位置する冷却プレート(最外冷却プレート2a)の貫通孔の外側開口(積層体の端面に位置する開口)には、冷媒を供給する供給管8と冷媒を排出する排出管7が接続される。また、他方の最外冷却プレート(図1の冷却プレート2g)の貫通孔の外側開口は塞がれる。全ての冷却プレート2の内部空間(流路)は接続管5によって相互に連通している。供給管8から供給される冷媒は、一方の貫通孔と接続管を通じて各冷却プレート内部に流入し、冷却プレート2の内部を横断し、他方の貫通孔と接続管を通じて排出管7へ至る。なお、冷媒は液体であり、例えばLLC(Long Life Coolant)である。
【0013】
図3に、図1のIII−III線に沿った断面図(図中のXY平面での断面図)を示す。また、図4に、最外冷却プレート2aの断面図を示す。図3に示すように、供給管8(排出管7)と最外冷却プレート2aとの接続部の断面積S1(流路断面積S1)は、貫通孔同士を接続する接続管5の断面積S2(流路断面積)よりも大きい。従って、冷媒は最外冷却プレート2aに流れ込み易くなっている。別言すれば、供給管8から最外冷却プレート2aへの冷媒流量が大きい。そのため、全ての冷却プレート2に冷媒が良く行きわたる。特に、供給管8の端部8aは、冷媒が接続管5へ向かう流れと流路12fへ向かう流れに分かれる分流点となるため、流路抵抗が大きい。パワーモジュール100では、最外冷却プレート2aにおける分流点の直前の流路断面積S1を大きくして冷媒を流れ易くしているので、流路抵抗が小さくなり多くの冷媒がスムーズに流れることができる。
【0014】
流路断面積S1が流路断面積S2よりも大きいということは、別言すると、最外冷却プレート2aの貫通孔において、供給管8と接続する側の開口12dの断面積S1が、接続管5と接続する側の開口12eの断面積S2よりも大きい、ということである(図4参照)。
【0015】
パワーモジュール100では、複数の冷却プレート2と複数の半導体パッケージ3の積層体における冷媒の入り口(供給管8と最外冷却プレート2aとの接続部)での流量が大きいので、下流の冷却プレート(図3において最外冷却プレート2aよりも下側の冷却プレート2b〜2g)へも冷媒が良く流れる。
【0016】
供給管8は、図3に示すように、その先端8aが最外冷却プレート2aの内部に入り込んでおり、流路12fの幅を狭めている。具体的には、供給管8の先端8aと流路内壁との間の幅d1は、流路12fの幅d2の約1/2である。他方、他の冷却プレート2b〜2gでは、接続管5の端部は冷却プレート2の開口部で止まっている。従って、最外冷却プレート2aの流路抵抗は、他の冷却プレート2b〜2gの流路抵抗よりも大きい。そのため、供給管8から冷媒が流れ込むが、その大部分が最外冷却プレート2aに流れ込むことを防ぐことができる。即ち、供給管8から流入する冷媒の多くは、最外冷却プレート2a以外の冷却プレート2b〜2gへと流れる。最外冷却プレート2aの流路抵抗が他の冷却プレート2b〜2gの流路抵抗よりも大きいという構造も、下流の冷却プレート2b〜2gへ冷媒が良く流れることに寄与する。なお、幅d1は、流路断面積S1や冷却プレートの数などの設計により適宜に選定され得る。
【0017】
実施例のパワーモジュール100に関する留意点を述べる。図4に示すように、最外冷却プレート2aにおいて、供給管8と排出管7が接続する2個の開口12dの端から端までの長さL1は、反対側(接続管5に面する側)の2個の開口12eの端から端までの長さL2と同じである。別言すれば、供給管8と排出管7が接続する2個の開口12dは、供給管8と排出管7の間の空間へと広がることによって、その断面積S1が反対側の開口12eの断面積S2よりも大きくなっている。供給管8と排出管7の間の空間には半導体パッケージ3が配置されないので、上記のとおり供給管8と排出管7を拡径して断面積S1を大きくすることが可能となる。上記の構造により、パワーモジュール100の外形サイズを増大することなく、最外冷却プレート2aの外側の開口12dの断面積を大きくすることを実現している。即ち、この構造によって、パワーモジュール100のサイズを増大することなく、全ての冷却プレート2へ冷媒を良く行き渡らせることを実現している。
【0018】
実施例のパワーモジュール100では、冷媒の供給管8と接続する開口と排出管7と接続する開口の双方の断面積S1が接続管5の断面積S2よりも大きい。冷媒の供給管8と接続する開口と排出管7と接続する開口のいずれか一方が接続管5の断面積S2よりも大きければ、断面積が等しい場合と比較して、下流の冷却プレートまで冷媒を良く行き渡らせる効果がある。なお、排出管側の開口断面積が大きいと、冷媒がスムーズに排出されるから、その結果として上流側(即ち供給管と最外冷却プレート2aとの接続部)も流れがスムーズとなる。
【0019】
接続管5は、冷却プレート2と別部材でなく、冷却プレート2と一体で成形されるものであってもよい。例えば、冷却プレート2が筐体を構成する2枚の外板で構成され、その外板に、貫通孔の開口の周縁が突き出ている接続部が形成されていてもよい。そのような接続部付きの外板は、プレス加工で容易に形成することが可能である。
【0020】
図5に、変形例のパワーモジュール200の断面図を示す。この例では、供給管8は、最外冷却プレート2aの内部には入り込んでいない。その代わり、最外冷却プレート2aの内部の流路12f内に、突起19が設けられている。突起19は、流路12fの横手方向(図5のZ方向)に伸びており、流路12fの横手方向全体に亘って、流路12fを狭めている。図5に示すように、最外冷却プレート2a内部の流路の最小幅(最小断面積)はd1である。また、最外冷却プレート2aに隣接する冷却プレート2bの流路の最小幅(最小断面積)はd2であり、d1<d2である。即ち、最外冷却プレート2aの流路の最小断面積は隣接する冷却プレート2bの流路の最終断面積よりも小さい。流路の断面積が小さければ流路抵抗は大きくなる。従って、図5のパワーモジュール200も、最外冷却プレート2aを流れる冷媒の量を抑え、冷媒が下流側に多く流れるようにすることができる。
【0021】
図示を省略したが、冷却効果を高めるため、各冷却プレート内の流路には、その長手方向(図中のX方向)に伸びる複数のフィンを備えることも好適である。
【0022】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0023】
2:冷却プレート
2a:最外冷却プレート
3:半導体パッケージ
4:絶縁シート
5:接続管
7:冷媒排出管
8:冷媒供給管
12a、12b:貫通孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の平板型の冷却プレートと、半導体素子を収めた平板型の複数の半導体パッケージを交互に積層したパワーモジュールであり、
冷却プレートの半導体パッケージ当接領域の両側に貫通孔が形成されているとともに、冷却プレートの内部に一方の貫通孔から他方の貫通孔へと冷媒が通る流路が形成されており、
隣接する冷却プレートの貫通孔同士が接続されており、
複数の冷却プレートと複数の半導体パッケージの積層体の一方の端に位置する冷却プレートの2つの貫通孔の夫々に、冷媒を供給する供給管と冷媒を排出する排出管が接続されており、
供給管と排出管の少なくとも一方と冷却プレートとの接続部の流路断面積が、貫通孔同士を接続する接続管の流路断面積よりも大きいことを特徴とするパワーモジュール。
【請求項2】
供給管と排出管が接続された積層体端部に位置する冷却プレートの内部の流路の抵抗が、他の冷却プレートの内部の流路の抵抗よりも大きいことを特徴とする請求項1に記載の半導体モジュール。
【請求項3】
供給管と排出管が接続された積層体端部に位置する冷却プレートの内部の流路の最小断面積が、他の冷却プレートの内部の流路の最小断面積よりも小さいことを特徴とする請求項2に記載の半導体モジュール。
【請求項4】
供給管と排出管の少なくとも一方の端部が冷却プレートの内部に延設されており、前記端部が冷却プレート内部の流路を狭めていることを特徴とする請求項2に記載のパワーモジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−98460(P2013−98460A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−242097(P2011−242097)
【出願日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】