説明

パワー半導体パッケージの冷却装置

【課題】パワー半導体パッケージを冷却する冷却装置において、薄く形成した絶縁板の強度と絶縁性を確保することが可能な技術を提供する。
【解決手段】本明細書は、パワー半導体素子を収容したパワー半導体パッケージを冷却する冷却装置を開示する。そのパワー半導体パッケージは、平板状に形成されており、放熱部を備えている。その冷却装置は、内部に冷却水が流れる冷却器と、パワー半導体パッケージの放熱部と冷却器の間に挟み込まれる絶縁板を備えている。その冷却装置では、絶縁板の端部に、パワー半導体パッケージに向けて突出するリブが形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、パワー半導体パッケージの冷却装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ハイブリッド自動車や電気自動車等の電動車両が本格的に実用化され、普及が拡大している。電動車両の電力変換装置は、IGBTなどのパワー半導体素子を収容したパワー半導体パッケージを備えている。パワー半導体素子は動作に伴い発熱するため、パワー半導体パッケージを効果的に冷却する技術が必要とされる。
【0003】
特許文献1に、パワー半導体パッケージを冷却する技術が記載されている。パワー半導体パッケージは、平板状に形成されており、放熱部を備えている。特許文献1の技術では、パワー半導体パッケージの放熱部からの熱を、内部に冷却水が流れる冷却器へ伝熱することで、パワー半導体パッケージを冷却する。パワー半導体パッケージの放熱部と冷却器には、高い伝熱性が必要とされるため、それぞれ金属製の部材が用いられる。パワー半導体パッケージの放熱部と冷却器の間の絶縁性を確保するために、特許文献1の技術では、パワー半導体パッケージと冷却器の間にセラミックス製の絶縁板を挟みこんでいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−210829号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
絶縁板には、冷却器とパワー半導体パッケージを確実に絶縁する絶縁性と、パワー半導体パッケージから冷却器へ良好に伝熱する伝熱性が要求される。絶縁板を厚く形成してしまうと、熱抵抗が高くなり、冷却器によるパワー半導体パッケージの冷却効率が低下してしまう。従って、絶縁板は可能な限り薄く形成することが好ましい。しかしながら、薄く形成した絶縁板は、端部において割れや欠けを生じるおそれがある。特に、絶縁板としてセラミックス等の脆性材料を用いる場合、この傾向は顕著である。また、薄く形成した絶縁板では、絶縁板の端部を回りこんで放電する沿面放電を生じるおそれがある。薄く形成した絶縁板の強度と絶縁性を確保することが可能な技術が期待されている。
【0006】
本明細書では、上記の課題を解決する技術を提供する。本明細書では、パワー半導体パッケージを冷却する冷却装置において、薄く形成した絶縁板の強度と絶縁性を確保することが可能な技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書は、パワー半導体素子を収容したパワー半導体パッケージを冷却する冷却装置を開示する。そのパワー半導体パッケージは、平板状に形成されており、放熱部を備えている。その冷却装置は、内部に冷却水が流れる冷却器と、パワー半導体パッケージの放熱部と冷却器の間に挟み込まれる絶縁板を備えている。その冷却装置では、絶縁板の端部に、パワー半導体パッケージに向けて突出するリブが形成されている。
【0008】
上記の冷却装置では、絶縁板の端部にリブが形成されているので、絶縁板の端部の強度が確保され、割れや欠けが生じることを抑制することができる。さらに、上記の冷却装置では、絶縁板の端部にリブを形成することで、パワー半導体パッケージの放熱部から冷却器までの沿面距離を長くし、沿面放電の発生を抑制することができる。絶縁板を薄くした場合でも、絶縁性能を確保することができる。
【0009】
上記の冷却装置では、パワー半導体パッケージと絶縁板の間に隙間充填剤が充填されており、パワー半導体パッケージに、リブが嵌合する凹部が形成されていることが好ましい。
【0010】
パワー半導体パッケージの放熱部や、絶縁板の表面には、表面粗さに起因する微少な凹凸が存在する。従って、パワー半導体パッケージの放熱部と絶縁板を直接的に接触させると、理想的な面接触とはならずに、多数の点接触を介して放熱部と絶縁板が接触することになる。このような場合、放熱部からの放熱にばらつきが生じて、絶縁板が局所的に高温となってしまうおそれがある。上記のように隙間充填剤を用いることで、放熱部と絶縁板を理想的な面接触に近づけ、放熱部からの均等な放熱を実現することができる。隙間充填剤としては、例えばグリス等が用いられる。このように隙間充填剤を使用すると、絶縁板がパワー半導体パッケージに対して滑りやすくなり、絶縁板の位置決めが困難となる場合がある。上記の冷却装置によれば、絶縁板のリブがパワー半導体パッケージの凹部に嵌合するので、パワー半導体パッケージに対する絶縁板の滑りを抑制し、絶縁板を確実に位置決めすることができる。
【0011】
上記の冷却装置では、絶縁板のパワー半導体素子に対向する箇所に凸部が形成されていることが好ましい。
【0012】
上記の冷却装置によれば、放熱部からの放熱が最も大きくなるパワー半導体素子の近傍で、放熱部と絶縁板の間の距離を短くすることができ、伝熱性を向上して冷却効率を向上することができる。また、放熱部と絶縁板の間に異物が混入した場合でも、凸部によってその異物が周辺に排斥されるので、放熱部からの放熱が最も大きくなるパワー半導体素子の近傍から異物を排斥することができる。上記の冷却装置によれば、冷却効率をより向上することができる。
【発明の効果】
【0013】
本明細書が開示する技術によれば、パワー半導体パッケージを冷却する冷却装置において、薄く形成した絶縁板の強度と絶縁性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】冷却装置10とパワーカード12の外観を示す斜視図である。
【図2】冷却装置10にパワーカード12を組み付けた状態の断面図である。
【図3】絶縁板20の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は、本実施例の冷却装置10を示している。冷却装置10は、パワーカード12を冷却するために用いられる。図2に示すように、パワーカード12は、電動車両においてコンバータやインバータ等を構成するパワー半導体素子14を内部に収容している。パワーカード12は、パワー半導体パッケージということもできる。パワー半導体素子14は、例えばIGBTなどのスイッチング素子である。冷却装置10はパワーカード12とともに、電動車両に搭載される。
【0016】
図1に示すように、パワーカード12は、平板状に形成されている。図2に示すように、パワーカード12は、前面と後面に金属製の放熱部16を備えている。
【0017】
図1に示すように、冷却装置10は、冷却器18と、絶縁板20を備えている。冷却器18は、内部に冷却水が流れる複数の冷却水通路22を備えている。冷却水通路22は金属製である。冷却装置10は、パワーカード12の前面と後面を、絶縁板20を介して冷却水通路22で挟み込むことで、前面の放熱部16と後面の放熱部16をそれぞれ冷却する。絶縁板20は、例えばセラミックス製の板状部材である。
【0018】
図2に示すように、パワーカード12の放熱部16と絶縁板20の間には、隙間充填剤としてグリス30が充填されている。グリス30を充填することで、放熱部16と絶縁板20の間を理想的な面接触の状態に近づけ、放熱部16からの放熱を均等にすることができる。絶縁板20が局所的に高温となってしまう事態を防ぐことができる。
【0019】
図1に示すように、絶縁板20は、矩形の平板形状に成形されている。図2や図3に示すように、絶縁板20の端部には、パワーカード12に向けて突出するリブ24が形成されている。このようなリブ24を形成することで、絶縁板20の端部の強度が確保されて、割れや欠けの発生が抑制されている。また、絶縁板20の端部にリブ24を形成することで、パワーカード12の放熱部16から冷却水通路22までの沿面距離が長く確保され、絶縁板20の端部を回り込む沿面放電の発生を抑制することができる。
【0020】
図2に示すように、パワーカード12には、絶縁板20のリブ24に対応する位置に、凹部26が形成されている。この凹部26にリブ24が嵌合することで、絶縁板20をパワーカード12に対して位置決めすることができる。パワーカード12の放熱部16と絶縁板20の間にグリス30を介在させた場合でも、絶縁板20のパワーカード12に対する滑りを抑制し、絶縁板20をパワーカード12に対して確実に位置決めすることができる。
【0021】
図2に示すように、絶縁板20には、パワーカード12のパワー半導体素子14に対向する箇所に、パワーカード12に向けて突出する凸部28が形成されている。この凸部28が存在することで、放熱部16からの放熱が最も大きくなるパワー半導体素子14の近傍において、放熱部16と絶縁板20の間の距離を短くすることができる。これにより、放熱部16から冷却水通路22への伝熱性を向上し、冷却効率を向上することができる。また、放熱部16と絶縁板20の間に異物が混入した場合でも、凸部28によってその異物が周辺に排斥されるので、放熱部16からの放熱が最も大きくなるパワー半導体素子14の近傍から異物を排斥することができる。冷却効率をより向上することができる。
【0022】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0023】
10 冷却装置
12 パワーカード
14 パワー半導体素子
16 放熱部
18 冷却器
20 絶縁板
22 冷却水通路
24 リブ
26 凹部
28 凸部
30 グリス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パワー半導体素子を収容したパワー半導体パッケージを冷却する冷却装置であって、
パワー半導体パッケージは、平板状に形成されており、放熱部を備えており、
その冷却装置は、冷却器と、パワー半導体パッケージの放熱部と冷却器の間に挟み込まれる絶縁板を備えており、
絶縁板の端部に、パワー半導体パッケージに向けて突出するリブが形成されている冷却装置。
【請求項2】
パワー半導体パッケージと絶縁板の間に隙間充填剤が充填されており、
パワー半導体パッケージに、リブが嵌合する凹部が形成されている請求項1の冷却装置。
【請求項3】
絶縁板のパワー半導体素子に対向する箇所に凸部が形成されている請求項2の冷却装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−115139(P2013−115139A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−258059(P2011−258059)
【出願日】平成23年11月25日(2011.11.25)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】