パンを素材とした食品の製造方法、パンを素材とした食品
【課題】サクサクとした食感と香ばしさが確保された上で、ヒビ割れが生じにくい、ラスク等のパンを素材とした食品の製造方法を提供する。
【解決手段】パンからなり、厚さが8.0mm以上12.0mm以下で、外周部のみに茶色の外層1を有し、外層1が直線Aで一部除去されて外周部に内層2が露出している部分を有する素材を用意する。この素材を、乾燥した空気で加熱することで、水分含有率が3.0質量%以下である、パンを素材とした食品を得る。
【解決手段】パンからなり、厚さが8.0mm以上12.0mm以下で、外周部のみに茶色の外層1を有し、外層1が直線Aで一部除去されて外周部に内層2が露出している部分を有する素材を用意する。この素材を、乾燥した空気で加熱することで、水分含有率が3.0質量%以下である、パンを素材とした食品を得る。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パンを素材とした食品およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
パンを素材とした食品としては、下記の非特許文献1に記載された「ラスク」が挙げられる。この文献でラスクは、「5mm程度の厚さに切ったパンの表面に卵白と粉砂糖を混ぜ合わせたものを塗り、オーブンで焼いた菓子」と定義されている。
最近のラスクは、個別包装されて販売されている。このラスクは、フランスパンを8.0mm以上12.0mm以下の厚さにスライスした後、オーブンで焼いて、水分含有率を3.0質量%以下としている。水分含有率を3.0質量%以下とすることで、サクサクとした食感と香ばしさを有するラスクが得られるが、そのための乾燥工程で製品にヒビが入り、このヒビに起因して運搬等の流通時にラスクに割れが生じることがある。割れたラスクは商品価値が損なわれるため、割れを生じにくくすることが求められている。
【0003】
下記の特許文献1には、焼き菓子のヒビ割れを防ぐために、大豆蛋白含有素材、タピオカ澱粉、およびトレハロースを生地に入れることが記載されている。この文献には、焼き菓子の一例としてラスクが挙げられているだけで、ラスクについての具体的な方法は記載されていない。
【非特許文献1】社団法人全国調理師養成施設協会編、改訂調理用語辞典、図書印刷株式会社、1998年12月25日、p1241-1242
【特許文献1】特開平11−9176号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、サクサクとした食感と香ばしさが確保された上で、ヒビ割れが生じにくい、ラスク等のパンを素材とした食品の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明は、パンからなり、厚さが1.0mm以上12.0mm以下で、外周部のみに茶色の外層(製パン時の焼き色が付いた部分)を有し、外層が一部除去されて外周部に内層(製パン時の焼き色が付いていない部分)が露出している部分を有する素材を、乾燥した空気で加熱することで、水分含有率が5.0質量%以下である「パンを素材とした食品」を得る食品の製造方法を提供する。
【0006】
本発明の方法によれば、パンからなり、外周部のみに茶色の外層を有し、外層が一部除去されて外周部に内層が露出している部分を有する素材を用いることで、外周部全体に外層がある素材を用いた場合と比較して、加熱工程で素材にヒビが入りにくく、ヒビが入った場合でも外周に近い部分に外周に沿って入ることが多いため、得られた製品に割れが生じにくい。
【0007】
このようになる理由は、以下のように推測できる。通常、加熱工程が素材の厚さ方向を上下方向に向けて行われることに起因して、外周部全体に外層があると、素材の面の中央部(内層の部分)に応力が集中するため中央部にヒビが生じ易い。これに対して、外層が一部除去されて外周部に内層が露出している部分があると、素材の面の中央部への応力集中が緩和されるため中央部にヒビが生じにくい。また、露出している部分から水分が抜け易くなることで、内層の外周に近い部分が外層との硬さの差によって引っ張られるため、ヒビは外周に近い部分に外周に沿って入り易い。
【0008】
本発明の方法によれば、厚さが1.0mm以上12.0mm以下のパンを、乾燥した空気で加熱することで、水分含有率を5.0質量%以下にしているため、サクサクとした食感と香ばしさが確保される。素材の厚さは5.0mm以上12.0mm以下であることが好ましく、8.0mm以上12.0mm以下であることがより好ましい。また、加熱後の水分含有率を3.0質量%以下にすることが好ましい。
【0009】
本発明の方法において、前記素材は、外周の10%以上の長さで外層が除去されるように切断されているものが好ましい。
本発明の方法において、前記素材は、外周の50%の長さで外層が除去されるように切断されているものが好ましい。この素材は、例えば、外層が外周部全体にあるパンを、1.0mm以上12.0mm以下の範囲の厚さでスライスするとともに、スライス面に垂直な直線でスライス面が二分の一になるように切断することで得られる。
【0010】
本発明の方法においては、また、外周の75%の長さで外層が除去されるように切断された素材を用いてもよい。この素材は、例えば、外層が外周部全体にあるパンを、1.0mm以上12.0mm以下の範囲の厚さでスライスするとともに、スライス面に垂直で互いに直交する二本の直線でスライス面が四分の一になるように切断することで得られる。
本発明はまた、パンからなり、厚さが1.0mm以上12.0mm以下で、外周部のみに茶色の外層を有し、外層から内層に至る切り込みが入れてある素材を、乾燥した空気で加熱することで、水分含有率が5.0質量%以下である「パンを素材とした食品」を得る食品の製造方法を提供する。
【0011】
本発明の方法によれば、パンからなり、外周部のみに茶色の外層を有し、外層から内層に至る切り込みが入れてある素材を用いることで、このような切り込みがない素材を用いた場合と比較して、乾燥工程で素材にヒビが入りにくく、ヒビが入った場合でも外周に近い部分に外周に沿って入ることが多いため、得られた製品に割れが生じにくい。
また、厚さが1.0mm以上12.0mm以下のパンを、乾燥した空気で加熱することで、水分含有率を5.0質量%以下にしているため、サクサクとした食感と香ばしさが確保される。素材の厚さは5.0mm以上12.0mm以下であることが好ましく、8.0mm以上12.0mm以下であることがより好ましい。また、加熱後の水分含有率を3.0質量%以下にすることが好ましい。
本発明の方法においては、前記パンとしてフランスパンを用いることが好ましい。
本発明はまた、本発明の方法で製造されたパンを素材とした食品を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の方法によれば、サクサクとした食感と香ばしさが確保された上で、ヒビ割れが生じにくい、ラスク等のパンを素材とした食品が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を具体的な実施例を挙げて説明する。
[第1実施形態]
図1に示すように、断面がほぼ楕円形(長軸6.9〜7.3mm、短軸4.7〜5.0mm)であり、厚さ9.41mm〜10.57mmにスライスされたフランスパンを用意した。このスライスされたフランスパンは外周部のみに茶色の外層を有する。
【0014】
これを、図2に示すように、スライス面に垂直で短軸に平行な直線Aで切断する。これにより、外層1が一部除去されて外周部に内層2が露出する。直線Aによる切断位置を変えることで、切断された外層1の外周の長さL1 を変え、この長さL1 の切断前の外周の長さ(全周)に対する割合(カット割合)が10%、20%、30%、40%、50%とされた素材を用意した。また、比較例の素材として、図1の状態のままカットしていないものを用意した。各素材の水分含有率は28.0質量%である。
【0015】
各素材を、上下に熱源のあるオーブンの網の上にスライス面が水平になるように置き、220〜230℃の熱風(乾燥した空気)で6分間加熱した。加熱後の素材を常温の室内に6時間放置した後の状態を目視で観察して、ヒビが生じているかどうかを調べた。また、この状態での素材の水分含有率は2.9質量%以下であり、サクサクとした食感と香ばしさが確保されていた。
【0016】
カットなしのサンプルは、84個中11個にひびが生じず(図3)、6個に図4に示すような縦ヒビ(スライス面内の中心部付近に短軸方向に延びて入るヒビ)が生じ、67個に図5に示すような周辺ヒビ(スライス面内の外周に近い部分に外周に沿って入るヒビ)が生じた。
カット割合が10%のサンプルは、77個中4個にひびが生じず(図6)、73個に図7に示すような周辺ヒビが生じ、縦ヒビが生じたサンプルはなかった。
【0017】
カット割合が20%のサンプルは、70個中70個に図8に示すような周辺ヒビが生じ、縦ヒビが生じたサンプルとヒビが生じなかったサンプルはなかった。
カット割合が30%のサンプルは、88個中39個にひびが生じず(図9)、49個に図10に示すような周辺ヒビが生じ、縦ヒビが生じたサンプルはなかった。
カット割合が40%のサンプルは、73個中42個にひびが生じず(図11)、31個に図12に示すような周辺ヒビが生じ、縦ヒビが生じたサンプルはなかった。
【0018】
カット割合が50%のサンプルは、72個中57個にひびが生じず(図13)、15個に図14に示すような周辺ヒビが生じ、縦ヒビが生じたサンプルはなかった。
これらの結果を図15と図16にグラフで示す。図15は、各サンプルごとに、全数中のヒビなしサンプルの割合を示すグラフである。図16は、各サンプルごとに、ヒビありサンプル全数中の「周辺ヒビ入り」サンプルの割合を示すグラフである。
【0019】
この結果から以下のことが分かる。
カットなしのサンプルでは、ヒビなしサンプルの割合が13.1%で、10%カットサンプルおよび20%カットサンプルよりは多かったが、30%以上カットされたサンプルより少なかった。また、10%以上カットされているサンプルでは、ヒビ有りサンプルの全数が周辺ヒビ入りサンプルであったのに対して、カットなしのサンプルは周辺ヒビ入りサンプルの割合が91.8%であり、縦ヒビ入りサンプルが8.2%であった。なお、カットなしのサンプルの場合、縦ヒビ入りサンプルの全数中の割合が7.1%であった。
【0020】
すなわち、10%以上カットされているサンプルは、ヒビが発生していないか、発生していても割れにつながりにくい周辺ヒビのみが発生していて、割れにつながりやすい縦ヒビは発生していない。これに対して、カットなしサンプルは、割れにつながりやすい縦ヒビ入りサンプルの全数中の割合が7.1%と高かった。
よって、スライス面に垂直で短軸に平行な直線で、外周の10%以上の長さで外層が除去されて内層が露出するようにカットした素材を、乾燥した空気で加熱することで、割れが生じにくいラスク(パンを素材とした食品)が得られる。
【0021】
[第2実施形態]
図1に示すように、断面がほぼ楕円形(長軸6.9〜7.3mm、短軸4.7〜5.0mm)であり、厚さ9.41mm〜10.57mmにスライスされたフランスパンを用意した。このスライスされたフランスパンは外周部のみに茶色の外層を有する。
これを、図17に示すように、スライス面に垂直で長軸に平行な直線Bで切断する。これにより、外層1が一部除去されて外周部に内層2が露出する。直線Bによる切断位置を変えることで、切断された外層1の外周の長さL1 を変え、この長さL1 の切断前の外周の長さ(全周)に対する割合(カット割合)が10%、20%、30%、40%、50%とされた素材を用意した。また、比較例の素材として、図1の状態のままカットしていないものを用意した。各素材の水分含有率は28.0質量%である。
【0022】
各素材を、上下に熱源のあるオーブンの網の上にスライス面が水平になるように置き、220〜230℃の熱風(乾燥した空気)で6分間加熱した。加熱後の素材を常温の室内に6時間放置した後の状態を目視で観察して、ヒビが生じているかどうかを調べた。また、この状態での素材の水分含有率は2.9質量%以下であり、サクサクとした食感と香ばしさが確保されていた。
カットなしのサンプルは、59個中6個にひびが生じず(図18)、7個に図19に示すような縦ヒビ(スライス面内の中心部付近に短軸方向に延びて入るヒビ)が生じ、46個に図20に示すような周辺ヒビ(スライス面内の外周に近い部分に外周に沿って入るヒビ)が生じた。
【0023】
カット割合が10%のサンプルは、79個中9個にひびが生じず(図21)、6個に図22に示すような縦ヒビが生じ、64個に図23に示すような周辺ヒビが生じた。
カット割合が20%のサンプルは、72個中9個にひびが生じず(図24)、5個に図25に示すような縦ヒビが生じ、58個に図26に示すような周辺ヒビが生じた。
カット割合が30%のサンプルは、74個中16個にひびが生じず(図27)、2個に図28に示すような縦ヒビが生じ、56個に図29に示すような周辺ヒビが生じた。
【0024】
カット割合が40%のサンプルは、90個中87個にひびが生じず(図30)、3個に図31に示すような周辺ヒビが生じ、縦ヒビが生じたサンプルはなかった。
カット割合が50%のサンプルは、74個の全数にひびが生じなかった(図32)。
これらの結果を図33と図34にグラフで示す。図33は、各サンプルごとに、全数中のヒビなしサンプルの割合を示すグラフである。図34は、各サンプルごとに、ヒビありサンプル全数中の「周辺ヒビ入り」サンプルの割合を示すグラフである。
【0025】
この結果から以下のことが分かる。
カットなしのサンプルでは、ヒビなしサンプルの割合が10.2%で、10%以上カットされているサンプルより少なかった。また、10%以上カットされているサンプルでは、ヒビ有りサンプルの90%以上が周辺ヒビ入りサンプルであったのに対して、カットなしのサンプルは周辺ヒビ入りサンプルの割合が86.8%であり、縦ヒビ入りサンプルが13.2%であった。なお、縦ヒビ入りサンプルの全数中の割合は、カットなしのサンプルが11.9%、10%カットのサンプルが7.6%、20%カットのサンプルが6.9%であり、であった。30%カットのサンプルが2.7%であり、40%カットのサンプルが0%であり、50%カットのサンプルが0%であった。
【0026】
すなわち、10%以上カットされているサンプルは、ヒビが発生していないか、発生していても割れにつながりにくい周辺ヒビの発生率が高く、割れにつながりやすい縦ヒビの発生率は低い(縦ヒビ入りサンプルの全数中の割合が0〜7.6%)。これに対して、カットなしサンプルは、割れにつながりやすい縦ヒビ入りサンプルの全数中の割合が11.9%と高かった。
よって、スライス面に垂直で長軸に平行な直線で、外周の10%以上の長さで外層が除去されて内層が露出するようにカットした素材を、乾燥した空気で加熱することで、割れが生じにくいラスク(パンを素材とした食品)が得られる。
【0027】
[第3実施形態]
図1に示すように、断面がほぼ楕円形(長軸6.9〜7.3mm、短軸4.7〜5.0mm)であり、厚さ9.41mm〜10.57mmにスライスされたフランスパンを用意した。このスライスされたフランスパンは外周部のみに茶色の外層を有する。
これを、図35に示すように、スライス面に垂直で長軸および短軸に交差する斜めの直線C1 〜C5 で切断する。これにより、外層1が一部除去されて外周部に内層2が露出する。切断ラインを直線C1 〜C5 に変えることで、切断された外層1の外周の長さを変え、この長さの切断前の外周の長さ(全周)に対する割合(カット割合)が10%、20%、30%、40%、50%とされた素材を用意した。
【0028】
この実施形態において、直線C1 はカット割合10%の切断ライン、直線C2 はカット割合20%の切断ライン、直線C3 はカット割合30%の切断ライン、直線C4 は40%の切断ライン、直線C5 はカット割合50%の切断ラインである。直線C1 と直線C4 と直線C5 は、ベースラインC0 に対して20°傾いている。直線C2 はベースラインC0 に対して60°傾いている。直線C3 はベースラインC0 に対して45°傾いている。
【0029】
また、比較例の素材として、図1の状態のままカットしていないものを用意した。各素材の水分含有率は28.0質量%である。
各素材を、上下に熱源のあるオーブンの網の上にスライス面が水平になるように置き、220〜230℃の熱風(乾燥した空気)で6分間加熱した。加熱後の素材を常温の室内に6時間放置した後の状態を目視で観察して、ヒビが生じているかどうかを調べた。また、この状態での素材の水分含有率は2.9質量%以下であり、サクサクとした食感と香ばしさが確保されていた。
【0030】
カットなしのサンプルは、59個中6個にひびが生じず(図18)、7個に図19に示すような縦ヒビ(スライス面内の中心部付近に短軸方向に延びて入るヒビ)が生じ、46個に図20に示すような周辺ヒビ(スライス面内の外周に近い部分に外周に沿って入るヒビ)が生じた。
カット割合が10%のサンプルは、49個中9個に図36に示すような縦ヒビが生じ、40個に図37に示すような周辺ヒビが生じた。
カット割合が20%のサンプルは、60個中5個にひびが生じず(図38)、5個に図39に示すような縦ヒビが生じ、50個に図40に示すような周辺ヒビが生じた。
【0031】
カット割合が30%のサンプルは、56個中13個にひびが生じず(図41)、5個に図42に示すような縦ヒビが生じ、38個に図43に示すような周辺ヒビが生じた。
カット割合が40%のサンプルは、91個中73個にひびが生じず(図44)、18個に図45に示すような周辺ヒビが生じ、縦ヒビが生じたサンプルはなかった。
カット割合が50%のサンプルは、86個の全数にひびが生じなかった(図46)。
これらの結果を図47と図48にグラフで示す。図47は、各サンプルごとに、全数中のヒビなしサンプルの割合を示すグラフである。図48は、各サンプルごとに、ヒビありサンプル全数中の「周辺ヒビ入り」サンプルの割合を示すグラフである。
【0032】
この結果から以下のことが分かる。
カットなしのサンプルでは、ヒビなしサンプルの割合が10.2%で、10%カットサンプルおよび20%カットサンプルよりは多かったが、30%以上カットされたサンプルより少なかった。また、20%以上カットされているサンプルでは、ヒビ有りサンプルの88.4%以上が周辺ヒビ入りサンプルであったのに対して、カットなしのサンプルは周辺ヒビ入りサンプルの割合が86.8%であり、縦ヒビ入りサンプルが13.2%であり、10%カットのサンプルは周辺ヒビ入りサンプルの割合が81.6%であり、縦ヒビ入りサンプルが18.4%であった。
【0033】
なお、カットなしのサンプルの場合、縦ヒビ入りサンプルの全数中の割合が11.9%であり、10%カットのサンプルの場合、縦ヒビ入りサンプルの全数中の割合が18.4%であった。
すなわち、20%以上カットされているサンプルは、ヒビが発生していないか、発生していても割れにつながりにくい周辺ヒビの発生率が高く、割れにつながりやすい縦ヒビの発生率は低い(縦ヒビ入りサンプルの全数中の割合が0〜8.9%)。
よって、スライス面に垂直で長軸および短軸と交差する直線で、外周の20%以上の長さで外層が除去されて内層が露出するようにカットした素材を、乾燥した空気で加熱することで、割れが生じにくいラスク(パンを素材とした食品)が得られる。
【0034】
[第4実施形態]
図1に示すように、断面がほぼ楕円形(長軸6.9〜7.3mm、短軸4.7〜5.0mm)であり、厚さ9.41mm〜10.57mmにスライスされたフランスパンを用意した。このスライスされたフランスパンは外周部のみに茶色の外層を有する。
これを、図49に示すように、スライス面に垂直で短軸に平行な2本の直線D1 ,D2 で切断する。これにより、外層1が一部除去されて外周部に内層2が露出する。この実施形態では、切断された外層1の外周の長さL1 ,L2 の、切断前の外周の長さ(全周)に対する割合(カット割合)がそれぞれ20%となるようにし、全体で40%カットされた素材を用意した。また、比較例の素材として、図1の状態のままカットしていないものを用意した。各素材の水分含有率は28.0質量%である。
【0035】
各素材を、上下に熱源のあるオーブンの網の上にスライス面が水平になるように置き、220〜230℃の熱風(乾燥した空気)で6分間加熱した。加熱後の素材を常温の室内に6時間放置した後の状態を目視で観察して、ヒビが生じているかどうかを調べた。また、この状態での素材の水分含有率は2.9質量%以下であり、サクサクとした食感と香ばしさが確保されていた。
【0036】
カットなしのサンプルは、59個中6個にひびが生じず(図18)、7個に図19に示すような縦ヒビ(スライス面内の中心部付近に短軸方向に延びて入るヒビ)が生じ、46個に図20に示すような周辺ヒビ(スライス面内の外周に近い部分に外周に沿って入るヒビ)が生じた。すなわち、ヒビ有りサンプル全数中の周辺ヒビ入りサンプルの割合が86.8%であり、縦ヒビ入りサンプルの割合が13.2%であった。また、ヒビなしサンプルの全数中の割合が10.2%であり、また、周辺ヒビ入りサンプルの全数中の割合が78.0%であり、縦ヒビ入りサンプルの全数中の割合が11.9%であった。
【0037】
図49に示すように合計で40%カットされたサンプルは、64個中60個に図50に示すような周辺ヒビが生じ、4個に図51に示すような縦ヒビが生じ、ヒビが生じなかったサンプルはなかった。すなわち、ヒビ有りサンプル全数中の周辺ヒビ入りサンプルの割合が93.75%であり、縦ヒビ入りサンプルの割合が6.25%であった。また、周辺ヒビ入りサンプルの全数中の割合が93.75%であり、縦ヒビ入りサンプルの全数中の割合が6.25%であった。
【0038】
このように、両端を20%ずつカットしたサンプルは、ヒビが発生していても割れにつながりにくい周辺ヒビの割合が93.75%と高く、割れにつながりやすい縦ヒビの割合が6.25%と低い。これに対して、カットなしサンプルは、割れにつながりやすい縦ヒビ入りサンプルの全数中の割合が11.9%と高かった。
よって、スライス面に垂直で短軸に平行な2本の直線で、両端を外周の20%ずつ合計40%の長さで外層が除去されて内層が露出するようにカットした素材を、乾燥した空気で加熱することで、割れが生じにくいラスク(パンを素材とした食品)が得られる。
【0039】
[第5実施形態]
図1に示すように、断面がほぼ楕円形(長軸6.9〜7.3mm、短軸4.7〜5.0mm)であり、厚さ9.41mm〜10.57mmにスライスされたフランスパンを用意した。このスライスされたフランスパンは外周部のみに茶色の外層を有する。
これに、図52に示すように、短軸に平行で上側の外層(厚さ1mm)から内層に至る長さ3mmの切り込みを入れた素材と、図53に示すように、長軸に平行で右側の外層(厚さ1mm)から内層に至る長さ3mmの切り込みを入れた素材を用意した。また、比較例の素材として、図1の状態のまま切り込みを入れていないものを用意した。各素材の水分含有率は28.0質量%である。
【0040】
各素材を、上下に熱源のあるオーブンの網の上にスライス面が水平になるように置き、220〜230℃の熱風(乾燥した空気)で6分間加熱した。加熱後の素材を常温の室内に6時間放置した後の状態を目視で観察して、ヒビが生じているかどうかを調べた。また、この状態での素材の水分含有率は2.9質量%以下であり、サクサクとした食感と香ばしさが確保されていた。
【0041】
切り込みなしのサンプルは、107個中31個にひびが生じず、36個に縦ヒビが生じ、40個に周辺ヒビが生じた。すなわち、ヒビなしサンプルの全数中の割合が29.0%であり、ヒビありサンプル全数中の周辺ヒビ入りサンプルの割合が52.6%であった。
図52のように上側に切り込みを入れたサンプルは、107個中18個にひびが生じず、33個に縦ヒビが生じ、56個に周辺ヒビが生じた。すなわち、ヒビなしサンプルの全数中の割合が16.8%であり、ヒビありサンプル全数中の周辺ヒビ入りサンプルの割合が62.9%であった。
【0042】
図53のように右側に切り込みを入れたサンプルは、108個中18個にひびが生じず、25個に縦ヒビが生じ、65個に周辺ヒビが生じた。すなわち、ヒビなしサンプルの全数中の割合が16.7%であり、ヒビありサンプル全数中の周辺ヒビ入りサンプルの割合が72.2%であった。
このように、切り込みを入れたサンプルは切り込みを入れないサンプルよりも、ヒビありサンプル全数中の周辺ヒビ入りサンプルの割合が高った。また、上側切り込みと右側切り込みとでは右側切り込みのサンプルの方が、ヒビありサンプル全数中の周辺ヒビ入りサンプルの割合が高かった。すなわち、切り込みを入れることで、ヒビが発生していても割れにつながりにくい周辺ヒビの割合が高くなる。
【0043】
よって、スライスされたフランスパンに外層から内層に至る切り込みを入れた素材を、乾燥した空気で加熱することで、割れが生じにくいラスク(パンを素材とした食品)が得られる。
なお、第1〜第4実施形態では、フランスパンをスライスした後に、スライス面に垂直に切断することで外層の一部を除去しているが、スライスと外層除去のための切断を一度に行える構造のカッターを用いて、一度に行ってもよい。
【0044】
また、上記各実施形態ではフランスパンを用いた例を挙げているが、本発明は、「厚さが1.0mm以上12.0mm以下で、外周部のみに茶色の外層を有し、外層が一部除去されて外周部に内層が露出している部分を有する素材」または「パンからなり、厚さが1.0mm以上12.0mm以下で、外周部のみに茶色の外層を有し、外層から内層に至る切り込みが入れてある素材」が得られるものであれば、フランスパン以外の、例えば、食パン、ロールパン、スティックパン、お米を材料としたパンなどにも適用できる。
また、パンを素材とした食品の種類に応じ、素材のスライス面に所望の調味料等を載せたものを乾燥した空気で加熱することで、味のついた「パンを素材とした食品」を得ることができる。
【0045】
[加熱時間について]
第1実施形態と同じ6種類の素材を用いて、外層をカットした素材の加熱時間を短くして得られたものの水分含有率を測定した。
外層をカットしていない素材は、第1実施形態と同じように、上下に熱源のあるオーブンの網の上にスライス面が水平になるように置き、220〜230℃の熱風(乾燥した空気)で6分00秒間加熱した後に、オーブンから取り出して室温まで冷ましたサンプルを粉々に砕き、水分計を使って水分含有率を測定した。具体的には、粉々に砕いたサンプルを105℃に10分間保持し、その間に蒸発した水分量から水分含有率を算出した。その結果、水分含有率は2.9質量%であった。
【0046】
これに対して、外層を10%カットした素材は、加熱時間を5分40秒間にし、それ以外は同じ方法で加熱し、同じ方法で水分含有率を測定したところ、2.8質量%であった。外層を20%カットした素材は、加熱時間を5分30秒間にし、それ以外は同じ方法で加熱し、同じ方法で水分含有率を測定したところ、2.7質量%であった。
外層を30%カットした素材は、加熱時間を5分15秒間にし、それ以外は同じ方法で加熱し、同じ方法で水分含有率を測定したところ、2.9質量%であった。外層を40%カットした素材は、加熱時間を5分00秒間にし、それ以外は同じ方法で加熱し、同じ方法で水分含有率を測定したところ、2.6質量%であった。外層を50%カットした素材は、加熱時間を4分45秒間にし、それ以外は同じ方法で加熱し、同じ方法で水分含有率を測定したところ、2.7質量%であった。
この結果から、外層の一部をカットすることで、カットしない場合と比較して、同じ水分含有率にするための加熱時間を短くすることができるため、生産コストを低減できる効果も有する。
【0047】
[食感試験とアンケート結果]
パンを素材とした食品の一種であるラスクは、サクサクとした軽い食感であることが望まれるため、以下の方法で食感試験を行った。
図54に示すように、第1実施形態で得られたカットなしのサンプル(A)と、カット割合が50%のサンプル(B)と、サンプルAのほぼ相似形でサンプルBとほぼ同じ表面積で同じ厚さで同じ方法で得られたサンプル(C)を用意した。これらについて、レオメータを用い、割れるのに必要なエネルギーと力を測定した。この測定値はサンプルの硬さに比例するため、この測定値が低いほど軽い食感となる。それぞれ30個について測定して平均値を算出した。その結果を図55と図56に示す。
【0048】
この結果から、第1実施形態で得られたカット割合が50%のサンプルBが最も軽い食感となることが分かる。
また、サンプルA〜Cを50人に試食していただき、食感と食べやすさについて聞いたところ、以下の結果が得られた。
食感について
Aが最も良い:4人(8%)
Bが最も良い:30人(60%)
Cが最も良い:15人(30%)
変わらない:1人(2%)
食べやすさについて
Aが最も良い:1人(2%)
Bが最も良い:31人(62%)
Cが最も良い:18人(36%)
変わらない:0人(0%)
このように、本発明の実施例に相当するサンプルBが食感および食べやすさのいずれについても高い評価を得られた。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】スライスされたフランスパンのスライス面を写した図である。
【図2】第1実施形態における、フランスパンのスライス面に垂直な方向での切断ラインを示す図である。
【図3】第1実施形態で得られたサンプルの状態を写した図である。
【図4】第1実施形態で得られたサンプルの状態を写した図である。
【図5】第1実施形態で得られたサンプルの状態を写した図である。
【図6】第1実施形態で得られたサンプルの状態を写した図である。
【図7】第1実施形態で得られたサンプルの状態を写した図である。
【図8】第1実施形態で得られたサンプルの状態を写した図である。
【図9】第1実施形態で得られたサンプルの状態を写した図である。
【図10】第1実施形態で得られたサンプルの状態を写した図である。
【図11】第1実施形態で得られたサンプルの状態を写した図である。
【図12】第1実施形態で得られたサンプルの状態を写した図である。
【図13】第1実施形態で得られたサンプルの状態を写した図である。
【図14】第1実施形態で得られたサンプルの状態を写した図である。
【図15】第1実施形態で得られた結果をまとめたグラフであって、各サンプルごとに、全数中のヒビなしサンプルの割合を示すグラフである。
【図16】第1実施形態で得られた結果をまとめたグラフであって、各サンプルごとに、ヒビありサンプル全数中の「周辺ヒビ入り」サンプルの割合を示すグラフである。
【図17】第2実施形態における、フランスパンのスライス面に垂直な方向での切断ラインを示す図である。
【図18】第2実施形態で得られたサンプルの状態を写した図である。
【図19】第2実施形態で得られたサンプルの状態を写した図である。
【図20】第2実施形態で得られたサンプルの状態を写した図である。
【図21】第2実施形態で得られたサンプルの状態を写した図である。
【図22】第2実施形態で得られたサンプルの状態を写した図である。
【図23】第2実施形態で得られたサンプルの状態を写した図である。
【図24】第2実施形態で得られたサンプルの状態を写した図である。
【図25】第2実施形態で得られたサンプルの状態を写した図である。
【図26】第2実施形態で得られたサンプルの状態を写した図である。
【図27】第2実施形態で得られたサンプルの状態を写した図である。
【図28】第2実施形態で得られたサンプルの状態を写した図である。
【図29】第2実施形態で得られたサンプルの状態を写した図である。
【図30】第2実施形態で得られたサンプルの状態を写した図である。
【図31】第2実施形態で得られたサンプルの状態を写した図である。
【図32】第2実施形態で得られたサンプルの状態を写した図である。
【図33】第2実施形態で得られた結果をまとめたグラフであって、各サンプルごとに、全数中のヒビなしサンプルの割合を示すグラフである。
【図34】第2実施形態で得られた結果をまとめたグラフであって、各サンプルごとに、ヒビありサンプル全数中の「周辺ヒビ入り」サンプルの割合を示すグラフである。
【図35】第3実施形態における、フランスパンのスライス面に垂直な方向での切断ラインを示す図である。
【図36】第3実施形態で得られたサンプルの状態を写した図である。
【図37】第3実施形態で得られたサンプルの状態を写した図である。
【図38】第3実施形態で得られたサンプルの状態を写した図である。
【図39】第3実施形態で得られたサンプルの状態を写した図である。
【図40】第3実施形態で得られたサンプルの状態を写した図である。
【図41】第3実施形態で得られたサンプルの状態を写した図である。
【図42】第3実施形態で得られたサンプルの状態を写した図である。
【図43】第3実施形態で得られたサンプルの状態を写した図である。
【図44】第3実施形態で得られたサンプルの状態を写した図である。
【図45】第3実施形態で得られたサンプルの状態を写した図である。
【図46】第3実施形態で得られたサンプルの状態を写した図である。
【図47】第3実施形態で得られた結果をまとめたグラフであって、各サンプルごとに、全数中のヒビなしサンプルの割合を示すグラフである。
【図48】第3実施形態で得られた結果をまとめたグラフであって、各サンプルごとに、ヒビありサンプル全数中の「周辺ヒビ入り」サンプルの割合を示すグラフである。
【図49】第4実施形態における、フランスパンのスライス面に垂直な方向での切断ラインを示す図である。
【図50】第4実施形態で得られたサンプルの状態を写した図である。
【図51】第4実施形態で得られたサンプルの状態を写した図である。
【図52】第5実施形態の素材を写した図である。
【図53】第5実施形態の素材を写した図である。
【図54】食感試験で使用したサンプルの状態を写した図である。
【図55】食感試験で、割れるのに必要なエネルギーを測定した結果を示すグラフである。
【図56】食感試験で、割れるのに必要な力を測定した結果を示すグラフである。
【符号の説明】
【0050】
1 外層
2 内層
A 切断ライン
B 切断ライン
C1 〜C5 切断ライン
D1 ,D2 切断ライン
【技術分野】
【0001】
本発明は、パンを素材とした食品およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
パンを素材とした食品としては、下記の非特許文献1に記載された「ラスク」が挙げられる。この文献でラスクは、「5mm程度の厚さに切ったパンの表面に卵白と粉砂糖を混ぜ合わせたものを塗り、オーブンで焼いた菓子」と定義されている。
最近のラスクは、個別包装されて販売されている。このラスクは、フランスパンを8.0mm以上12.0mm以下の厚さにスライスした後、オーブンで焼いて、水分含有率を3.0質量%以下としている。水分含有率を3.0質量%以下とすることで、サクサクとした食感と香ばしさを有するラスクが得られるが、そのための乾燥工程で製品にヒビが入り、このヒビに起因して運搬等の流通時にラスクに割れが生じることがある。割れたラスクは商品価値が損なわれるため、割れを生じにくくすることが求められている。
【0003】
下記の特許文献1には、焼き菓子のヒビ割れを防ぐために、大豆蛋白含有素材、タピオカ澱粉、およびトレハロースを生地に入れることが記載されている。この文献には、焼き菓子の一例としてラスクが挙げられているだけで、ラスクについての具体的な方法は記載されていない。
【非特許文献1】社団法人全国調理師養成施設協会編、改訂調理用語辞典、図書印刷株式会社、1998年12月25日、p1241-1242
【特許文献1】特開平11−9176号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、サクサクとした食感と香ばしさが確保された上で、ヒビ割れが生じにくい、ラスク等のパンを素材とした食品の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明は、パンからなり、厚さが1.0mm以上12.0mm以下で、外周部のみに茶色の外層(製パン時の焼き色が付いた部分)を有し、外層が一部除去されて外周部に内層(製パン時の焼き色が付いていない部分)が露出している部分を有する素材を、乾燥した空気で加熱することで、水分含有率が5.0質量%以下である「パンを素材とした食品」を得る食品の製造方法を提供する。
【0006】
本発明の方法によれば、パンからなり、外周部のみに茶色の外層を有し、外層が一部除去されて外周部に内層が露出している部分を有する素材を用いることで、外周部全体に外層がある素材を用いた場合と比較して、加熱工程で素材にヒビが入りにくく、ヒビが入った場合でも外周に近い部分に外周に沿って入ることが多いため、得られた製品に割れが生じにくい。
【0007】
このようになる理由は、以下のように推測できる。通常、加熱工程が素材の厚さ方向を上下方向に向けて行われることに起因して、外周部全体に外層があると、素材の面の中央部(内層の部分)に応力が集中するため中央部にヒビが生じ易い。これに対して、外層が一部除去されて外周部に内層が露出している部分があると、素材の面の中央部への応力集中が緩和されるため中央部にヒビが生じにくい。また、露出している部分から水分が抜け易くなることで、内層の外周に近い部分が外層との硬さの差によって引っ張られるため、ヒビは外周に近い部分に外周に沿って入り易い。
【0008】
本発明の方法によれば、厚さが1.0mm以上12.0mm以下のパンを、乾燥した空気で加熱することで、水分含有率を5.0質量%以下にしているため、サクサクとした食感と香ばしさが確保される。素材の厚さは5.0mm以上12.0mm以下であることが好ましく、8.0mm以上12.0mm以下であることがより好ましい。また、加熱後の水分含有率を3.0質量%以下にすることが好ましい。
【0009】
本発明の方法において、前記素材は、外周の10%以上の長さで外層が除去されるように切断されているものが好ましい。
本発明の方法において、前記素材は、外周の50%の長さで外層が除去されるように切断されているものが好ましい。この素材は、例えば、外層が外周部全体にあるパンを、1.0mm以上12.0mm以下の範囲の厚さでスライスするとともに、スライス面に垂直な直線でスライス面が二分の一になるように切断することで得られる。
【0010】
本発明の方法においては、また、外周の75%の長さで外層が除去されるように切断された素材を用いてもよい。この素材は、例えば、外層が外周部全体にあるパンを、1.0mm以上12.0mm以下の範囲の厚さでスライスするとともに、スライス面に垂直で互いに直交する二本の直線でスライス面が四分の一になるように切断することで得られる。
本発明はまた、パンからなり、厚さが1.0mm以上12.0mm以下で、外周部のみに茶色の外層を有し、外層から内層に至る切り込みが入れてある素材を、乾燥した空気で加熱することで、水分含有率が5.0質量%以下である「パンを素材とした食品」を得る食品の製造方法を提供する。
【0011】
本発明の方法によれば、パンからなり、外周部のみに茶色の外層を有し、外層から内層に至る切り込みが入れてある素材を用いることで、このような切り込みがない素材を用いた場合と比較して、乾燥工程で素材にヒビが入りにくく、ヒビが入った場合でも外周に近い部分に外周に沿って入ることが多いため、得られた製品に割れが生じにくい。
また、厚さが1.0mm以上12.0mm以下のパンを、乾燥した空気で加熱することで、水分含有率を5.0質量%以下にしているため、サクサクとした食感と香ばしさが確保される。素材の厚さは5.0mm以上12.0mm以下であることが好ましく、8.0mm以上12.0mm以下であることがより好ましい。また、加熱後の水分含有率を3.0質量%以下にすることが好ましい。
本発明の方法においては、前記パンとしてフランスパンを用いることが好ましい。
本発明はまた、本発明の方法で製造されたパンを素材とした食品を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の方法によれば、サクサクとした食感と香ばしさが確保された上で、ヒビ割れが生じにくい、ラスク等のパンを素材とした食品が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を具体的な実施例を挙げて説明する。
[第1実施形態]
図1に示すように、断面がほぼ楕円形(長軸6.9〜7.3mm、短軸4.7〜5.0mm)であり、厚さ9.41mm〜10.57mmにスライスされたフランスパンを用意した。このスライスされたフランスパンは外周部のみに茶色の外層を有する。
【0014】
これを、図2に示すように、スライス面に垂直で短軸に平行な直線Aで切断する。これにより、外層1が一部除去されて外周部に内層2が露出する。直線Aによる切断位置を変えることで、切断された外層1の外周の長さL1 を変え、この長さL1 の切断前の外周の長さ(全周)に対する割合(カット割合)が10%、20%、30%、40%、50%とされた素材を用意した。また、比較例の素材として、図1の状態のままカットしていないものを用意した。各素材の水分含有率は28.0質量%である。
【0015】
各素材を、上下に熱源のあるオーブンの網の上にスライス面が水平になるように置き、220〜230℃の熱風(乾燥した空気)で6分間加熱した。加熱後の素材を常温の室内に6時間放置した後の状態を目視で観察して、ヒビが生じているかどうかを調べた。また、この状態での素材の水分含有率は2.9質量%以下であり、サクサクとした食感と香ばしさが確保されていた。
【0016】
カットなしのサンプルは、84個中11個にひびが生じず(図3)、6個に図4に示すような縦ヒビ(スライス面内の中心部付近に短軸方向に延びて入るヒビ)が生じ、67個に図5に示すような周辺ヒビ(スライス面内の外周に近い部分に外周に沿って入るヒビ)が生じた。
カット割合が10%のサンプルは、77個中4個にひびが生じず(図6)、73個に図7に示すような周辺ヒビが生じ、縦ヒビが生じたサンプルはなかった。
【0017】
カット割合が20%のサンプルは、70個中70個に図8に示すような周辺ヒビが生じ、縦ヒビが生じたサンプルとヒビが生じなかったサンプルはなかった。
カット割合が30%のサンプルは、88個中39個にひびが生じず(図9)、49個に図10に示すような周辺ヒビが生じ、縦ヒビが生じたサンプルはなかった。
カット割合が40%のサンプルは、73個中42個にひびが生じず(図11)、31個に図12に示すような周辺ヒビが生じ、縦ヒビが生じたサンプルはなかった。
【0018】
カット割合が50%のサンプルは、72個中57個にひびが生じず(図13)、15個に図14に示すような周辺ヒビが生じ、縦ヒビが生じたサンプルはなかった。
これらの結果を図15と図16にグラフで示す。図15は、各サンプルごとに、全数中のヒビなしサンプルの割合を示すグラフである。図16は、各サンプルごとに、ヒビありサンプル全数中の「周辺ヒビ入り」サンプルの割合を示すグラフである。
【0019】
この結果から以下のことが分かる。
カットなしのサンプルでは、ヒビなしサンプルの割合が13.1%で、10%カットサンプルおよび20%カットサンプルよりは多かったが、30%以上カットされたサンプルより少なかった。また、10%以上カットされているサンプルでは、ヒビ有りサンプルの全数が周辺ヒビ入りサンプルであったのに対して、カットなしのサンプルは周辺ヒビ入りサンプルの割合が91.8%であり、縦ヒビ入りサンプルが8.2%であった。なお、カットなしのサンプルの場合、縦ヒビ入りサンプルの全数中の割合が7.1%であった。
【0020】
すなわち、10%以上カットされているサンプルは、ヒビが発生していないか、発生していても割れにつながりにくい周辺ヒビのみが発生していて、割れにつながりやすい縦ヒビは発生していない。これに対して、カットなしサンプルは、割れにつながりやすい縦ヒビ入りサンプルの全数中の割合が7.1%と高かった。
よって、スライス面に垂直で短軸に平行な直線で、外周の10%以上の長さで外層が除去されて内層が露出するようにカットした素材を、乾燥した空気で加熱することで、割れが生じにくいラスク(パンを素材とした食品)が得られる。
【0021】
[第2実施形態]
図1に示すように、断面がほぼ楕円形(長軸6.9〜7.3mm、短軸4.7〜5.0mm)であり、厚さ9.41mm〜10.57mmにスライスされたフランスパンを用意した。このスライスされたフランスパンは外周部のみに茶色の外層を有する。
これを、図17に示すように、スライス面に垂直で長軸に平行な直線Bで切断する。これにより、外層1が一部除去されて外周部に内層2が露出する。直線Bによる切断位置を変えることで、切断された外層1の外周の長さL1 を変え、この長さL1 の切断前の外周の長さ(全周)に対する割合(カット割合)が10%、20%、30%、40%、50%とされた素材を用意した。また、比較例の素材として、図1の状態のままカットしていないものを用意した。各素材の水分含有率は28.0質量%である。
【0022】
各素材を、上下に熱源のあるオーブンの網の上にスライス面が水平になるように置き、220〜230℃の熱風(乾燥した空気)で6分間加熱した。加熱後の素材を常温の室内に6時間放置した後の状態を目視で観察して、ヒビが生じているかどうかを調べた。また、この状態での素材の水分含有率は2.9質量%以下であり、サクサクとした食感と香ばしさが確保されていた。
カットなしのサンプルは、59個中6個にひびが生じず(図18)、7個に図19に示すような縦ヒビ(スライス面内の中心部付近に短軸方向に延びて入るヒビ)が生じ、46個に図20に示すような周辺ヒビ(スライス面内の外周に近い部分に外周に沿って入るヒビ)が生じた。
【0023】
カット割合が10%のサンプルは、79個中9個にひびが生じず(図21)、6個に図22に示すような縦ヒビが生じ、64個に図23に示すような周辺ヒビが生じた。
カット割合が20%のサンプルは、72個中9個にひびが生じず(図24)、5個に図25に示すような縦ヒビが生じ、58個に図26に示すような周辺ヒビが生じた。
カット割合が30%のサンプルは、74個中16個にひびが生じず(図27)、2個に図28に示すような縦ヒビが生じ、56個に図29に示すような周辺ヒビが生じた。
【0024】
カット割合が40%のサンプルは、90個中87個にひびが生じず(図30)、3個に図31に示すような周辺ヒビが生じ、縦ヒビが生じたサンプルはなかった。
カット割合が50%のサンプルは、74個の全数にひびが生じなかった(図32)。
これらの結果を図33と図34にグラフで示す。図33は、各サンプルごとに、全数中のヒビなしサンプルの割合を示すグラフである。図34は、各サンプルごとに、ヒビありサンプル全数中の「周辺ヒビ入り」サンプルの割合を示すグラフである。
【0025】
この結果から以下のことが分かる。
カットなしのサンプルでは、ヒビなしサンプルの割合が10.2%で、10%以上カットされているサンプルより少なかった。また、10%以上カットされているサンプルでは、ヒビ有りサンプルの90%以上が周辺ヒビ入りサンプルであったのに対して、カットなしのサンプルは周辺ヒビ入りサンプルの割合が86.8%であり、縦ヒビ入りサンプルが13.2%であった。なお、縦ヒビ入りサンプルの全数中の割合は、カットなしのサンプルが11.9%、10%カットのサンプルが7.6%、20%カットのサンプルが6.9%であり、であった。30%カットのサンプルが2.7%であり、40%カットのサンプルが0%であり、50%カットのサンプルが0%であった。
【0026】
すなわち、10%以上カットされているサンプルは、ヒビが発生していないか、発生していても割れにつながりにくい周辺ヒビの発生率が高く、割れにつながりやすい縦ヒビの発生率は低い(縦ヒビ入りサンプルの全数中の割合が0〜7.6%)。これに対して、カットなしサンプルは、割れにつながりやすい縦ヒビ入りサンプルの全数中の割合が11.9%と高かった。
よって、スライス面に垂直で長軸に平行な直線で、外周の10%以上の長さで外層が除去されて内層が露出するようにカットした素材を、乾燥した空気で加熱することで、割れが生じにくいラスク(パンを素材とした食品)が得られる。
【0027】
[第3実施形態]
図1に示すように、断面がほぼ楕円形(長軸6.9〜7.3mm、短軸4.7〜5.0mm)であり、厚さ9.41mm〜10.57mmにスライスされたフランスパンを用意した。このスライスされたフランスパンは外周部のみに茶色の外層を有する。
これを、図35に示すように、スライス面に垂直で長軸および短軸に交差する斜めの直線C1 〜C5 で切断する。これにより、外層1が一部除去されて外周部に内層2が露出する。切断ラインを直線C1 〜C5 に変えることで、切断された外層1の外周の長さを変え、この長さの切断前の外周の長さ(全周)に対する割合(カット割合)が10%、20%、30%、40%、50%とされた素材を用意した。
【0028】
この実施形態において、直線C1 はカット割合10%の切断ライン、直線C2 はカット割合20%の切断ライン、直線C3 はカット割合30%の切断ライン、直線C4 は40%の切断ライン、直線C5 はカット割合50%の切断ラインである。直線C1 と直線C4 と直線C5 は、ベースラインC0 に対して20°傾いている。直線C2 はベースラインC0 に対して60°傾いている。直線C3 はベースラインC0 に対して45°傾いている。
【0029】
また、比較例の素材として、図1の状態のままカットしていないものを用意した。各素材の水分含有率は28.0質量%である。
各素材を、上下に熱源のあるオーブンの網の上にスライス面が水平になるように置き、220〜230℃の熱風(乾燥した空気)で6分間加熱した。加熱後の素材を常温の室内に6時間放置した後の状態を目視で観察して、ヒビが生じているかどうかを調べた。また、この状態での素材の水分含有率は2.9質量%以下であり、サクサクとした食感と香ばしさが確保されていた。
【0030】
カットなしのサンプルは、59個中6個にひびが生じず(図18)、7個に図19に示すような縦ヒビ(スライス面内の中心部付近に短軸方向に延びて入るヒビ)が生じ、46個に図20に示すような周辺ヒビ(スライス面内の外周に近い部分に外周に沿って入るヒビ)が生じた。
カット割合が10%のサンプルは、49個中9個に図36に示すような縦ヒビが生じ、40個に図37に示すような周辺ヒビが生じた。
カット割合が20%のサンプルは、60個中5個にひびが生じず(図38)、5個に図39に示すような縦ヒビが生じ、50個に図40に示すような周辺ヒビが生じた。
【0031】
カット割合が30%のサンプルは、56個中13個にひびが生じず(図41)、5個に図42に示すような縦ヒビが生じ、38個に図43に示すような周辺ヒビが生じた。
カット割合が40%のサンプルは、91個中73個にひびが生じず(図44)、18個に図45に示すような周辺ヒビが生じ、縦ヒビが生じたサンプルはなかった。
カット割合が50%のサンプルは、86個の全数にひびが生じなかった(図46)。
これらの結果を図47と図48にグラフで示す。図47は、各サンプルごとに、全数中のヒビなしサンプルの割合を示すグラフである。図48は、各サンプルごとに、ヒビありサンプル全数中の「周辺ヒビ入り」サンプルの割合を示すグラフである。
【0032】
この結果から以下のことが分かる。
カットなしのサンプルでは、ヒビなしサンプルの割合が10.2%で、10%カットサンプルおよび20%カットサンプルよりは多かったが、30%以上カットされたサンプルより少なかった。また、20%以上カットされているサンプルでは、ヒビ有りサンプルの88.4%以上が周辺ヒビ入りサンプルであったのに対して、カットなしのサンプルは周辺ヒビ入りサンプルの割合が86.8%であり、縦ヒビ入りサンプルが13.2%であり、10%カットのサンプルは周辺ヒビ入りサンプルの割合が81.6%であり、縦ヒビ入りサンプルが18.4%であった。
【0033】
なお、カットなしのサンプルの場合、縦ヒビ入りサンプルの全数中の割合が11.9%であり、10%カットのサンプルの場合、縦ヒビ入りサンプルの全数中の割合が18.4%であった。
すなわち、20%以上カットされているサンプルは、ヒビが発生していないか、発生していても割れにつながりにくい周辺ヒビの発生率が高く、割れにつながりやすい縦ヒビの発生率は低い(縦ヒビ入りサンプルの全数中の割合が0〜8.9%)。
よって、スライス面に垂直で長軸および短軸と交差する直線で、外周の20%以上の長さで外層が除去されて内層が露出するようにカットした素材を、乾燥した空気で加熱することで、割れが生じにくいラスク(パンを素材とした食品)が得られる。
【0034】
[第4実施形態]
図1に示すように、断面がほぼ楕円形(長軸6.9〜7.3mm、短軸4.7〜5.0mm)であり、厚さ9.41mm〜10.57mmにスライスされたフランスパンを用意した。このスライスされたフランスパンは外周部のみに茶色の外層を有する。
これを、図49に示すように、スライス面に垂直で短軸に平行な2本の直線D1 ,D2 で切断する。これにより、外層1が一部除去されて外周部に内層2が露出する。この実施形態では、切断された外層1の外周の長さL1 ,L2 の、切断前の外周の長さ(全周)に対する割合(カット割合)がそれぞれ20%となるようにし、全体で40%カットされた素材を用意した。また、比較例の素材として、図1の状態のままカットしていないものを用意した。各素材の水分含有率は28.0質量%である。
【0035】
各素材を、上下に熱源のあるオーブンの網の上にスライス面が水平になるように置き、220〜230℃の熱風(乾燥した空気)で6分間加熱した。加熱後の素材を常温の室内に6時間放置した後の状態を目視で観察して、ヒビが生じているかどうかを調べた。また、この状態での素材の水分含有率は2.9質量%以下であり、サクサクとした食感と香ばしさが確保されていた。
【0036】
カットなしのサンプルは、59個中6個にひびが生じず(図18)、7個に図19に示すような縦ヒビ(スライス面内の中心部付近に短軸方向に延びて入るヒビ)が生じ、46個に図20に示すような周辺ヒビ(スライス面内の外周に近い部分に外周に沿って入るヒビ)が生じた。すなわち、ヒビ有りサンプル全数中の周辺ヒビ入りサンプルの割合が86.8%であり、縦ヒビ入りサンプルの割合が13.2%であった。また、ヒビなしサンプルの全数中の割合が10.2%であり、また、周辺ヒビ入りサンプルの全数中の割合が78.0%であり、縦ヒビ入りサンプルの全数中の割合が11.9%であった。
【0037】
図49に示すように合計で40%カットされたサンプルは、64個中60個に図50に示すような周辺ヒビが生じ、4個に図51に示すような縦ヒビが生じ、ヒビが生じなかったサンプルはなかった。すなわち、ヒビ有りサンプル全数中の周辺ヒビ入りサンプルの割合が93.75%であり、縦ヒビ入りサンプルの割合が6.25%であった。また、周辺ヒビ入りサンプルの全数中の割合が93.75%であり、縦ヒビ入りサンプルの全数中の割合が6.25%であった。
【0038】
このように、両端を20%ずつカットしたサンプルは、ヒビが発生していても割れにつながりにくい周辺ヒビの割合が93.75%と高く、割れにつながりやすい縦ヒビの割合が6.25%と低い。これに対して、カットなしサンプルは、割れにつながりやすい縦ヒビ入りサンプルの全数中の割合が11.9%と高かった。
よって、スライス面に垂直で短軸に平行な2本の直線で、両端を外周の20%ずつ合計40%の長さで外層が除去されて内層が露出するようにカットした素材を、乾燥した空気で加熱することで、割れが生じにくいラスク(パンを素材とした食品)が得られる。
【0039】
[第5実施形態]
図1に示すように、断面がほぼ楕円形(長軸6.9〜7.3mm、短軸4.7〜5.0mm)であり、厚さ9.41mm〜10.57mmにスライスされたフランスパンを用意した。このスライスされたフランスパンは外周部のみに茶色の外層を有する。
これに、図52に示すように、短軸に平行で上側の外層(厚さ1mm)から内層に至る長さ3mmの切り込みを入れた素材と、図53に示すように、長軸に平行で右側の外層(厚さ1mm)から内層に至る長さ3mmの切り込みを入れた素材を用意した。また、比較例の素材として、図1の状態のまま切り込みを入れていないものを用意した。各素材の水分含有率は28.0質量%である。
【0040】
各素材を、上下に熱源のあるオーブンの網の上にスライス面が水平になるように置き、220〜230℃の熱風(乾燥した空気)で6分間加熱した。加熱後の素材を常温の室内に6時間放置した後の状態を目視で観察して、ヒビが生じているかどうかを調べた。また、この状態での素材の水分含有率は2.9質量%以下であり、サクサクとした食感と香ばしさが確保されていた。
【0041】
切り込みなしのサンプルは、107個中31個にひびが生じず、36個に縦ヒビが生じ、40個に周辺ヒビが生じた。すなわち、ヒビなしサンプルの全数中の割合が29.0%であり、ヒビありサンプル全数中の周辺ヒビ入りサンプルの割合が52.6%であった。
図52のように上側に切り込みを入れたサンプルは、107個中18個にひびが生じず、33個に縦ヒビが生じ、56個に周辺ヒビが生じた。すなわち、ヒビなしサンプルの全数中の割合が16.8%であり、ヒビありサンプル全数中の周辺ヒビ入りサンプルの割合が62.9%であった。
【0042】
図53のように右側に切り込みを入れたサンプルは、108個中18個にひびが生じず、25個に縦ヒビが生じ、65個に周辺ヒビが生じた。すなわち、ヒビなしサンプルの全数中の割合が16.7%であり、ヒビありサンプル全数中の周辺ヒビ入りサンプルの割合が72.2%であった。
このように、切り込みを入れたサンプルは切り込みを入れないサンプルよりも、ヒビありサンプル全数中の周辺ヒビ入りサンプルの割合が高った。また、上側切り込みと右側切り込みとでは右側切り込みのサンプルの方が、ヒビありサンプル全数中の周辺ヒビ入りサンプルの割合が高かった。すなわち、切り込みを入れることで、ヒビが発生していても割れにつながりにくい周辺ヒビの割合が高くなる。
【0043】
よって、スライスされたフランスパンに外層から内層に至る切り込みを入れた素材を、乾燥した空気で加熱することで、割れが生じにくいラスク(パンを素材とした食品)が得られる。
なお、第1〜第4実施形態では、フランスパンをスライスした後に、スライス面に垂直に切断することで外層の一部を除去しているが、スライスと外層除去のための切断を一度に行える構造のカッターを用いて、一度に行ってもよい。
【0044】
また、上記各実施形態ではフランスパンを用いた例を挙げているが、本発明は、「厚さが1.0mm以上12.0mm以下で、外周部のみに茶色の外層を有し、外層が一部除去されて外周部に内層が露出している部分を有する素材」または「パンからなり、厚さが1.0mm以上12.0mm以下で、外周部のみに茶色の外層を有し、外層から内層に至る切り込みが入れてある素材」が得られるものであれば、フランスパン以外の、例えば、食パン、ロールパン、スティックパン、お米を材料としたパンなどにも適用できる。
また、パンを素材とした食品の種類に応じ、素材のスライス面に所望の調味料等を載せたものを乾燥した空気で加熱することで、味のついた「パンを素材とした食品」を得ることができる。
【0045】
[加熱時間について]
第1実施形態と同じ6種類の素材を用いて、外層をカットした素材の加熱時間を短くして得られたものの水分含有率を測定した。
外層をカットしていない素材は、第1実施形態と同じように、上下に熱源のあるオーブンの網の上にスライス面が水平になるように置き、220〜230℃の熱風(乾燥した空気)で6分00秒間加熱した後に、オーブンから取り出して室温まで冷ましたサンプルを粉々に砕き、水分計を使って水分含有率を測定した。具体的には、粉々に砕いたサンプルを105℃に10分間保持し、その間に蒸発した水分量から水分含有率を算出した。その結果、水分含有率は2.9質量%であった。
【0046】
これに対して、外層を10%カットした素材は、加熱時間を5分40秒間にし、それ以外は同じ方法で加熱し、同じ方法で水分含有率を測定したところ、2.8質量%であった。外層を20%カットした素材は、加熱時間を5分30秒間にし、それ以外は同じ方法で加熱し、同じ方法で水分含有率を測定したところ、2.7質量%であった。
外層を30%カットした素材は、加熱時間を5分15秒間にし、それ以外は同じ方法で加熱し、同じ方法で水分含有率を測定したところ、2.9質量%であった。外層を40%カットした素材は、加熱時間を5分00秒間にし、それ以外は同じ方法で加熱し、同じ方法で水分含有率を測定したところ、2.6質量%であった。外層を50%カットした素材は、加熱時間を4分45秒間にし、それ以外は同じ方法で加熱し、同じ方法で水分含有率を測定したところ、2.7質量%であった。
この結果から、外層の一部をカットすることで、カットしない場合と比較して、同じ水分含有率にするための加熱時間を短くすることができるため、生産コストを低減できる効果も有する。
【0047】
[食感試験とアンケート結果]
パンを素材とした食品の一種であるラスクは、サクサクとした軽い食感であることが望まれるため、以下の方法で食感試験を行った。
図54に示すように、第1実施形態で得られたカットなしのサンプル(A)と、カット割合が50%のサンプル(B)と、サンプルAのほぼ相似形でサンプルBとほぼ同じ表面積で同じ厚さで同じ方法で得られたサンプル(C)を用意した。これらについて、レオメータを用い、割れるのに必要なエネルギーと力を測定した。この測定値はサンプルの硬さに比例するため、この測定値が低いほど軽い食感となる。それぞれ30個について測定して平均値を算出した。その結果を図55と図56に示す。
【0048】
この結果から、第1実施形態で得られたカット割合が50%のサンプルBが最も軽い食感となることが分かる。
また、サンプルA〜Cを50人に試食していただき、食感と食べやすさについて聞いたところ、以下の結果が得られた。
食感について
Aが最も良い:4人(8%)
Bが最も良い:30人(60%)
Cが最も良い:15人(30%)
変わらない:1人(2%)
食べやすさについて
Aが最も良い:1人(2%)
Bが最も良い:31人(62%)
Cが最も良い:18人(36%)
変わらない:0人(0%)
このように、本発明の実施例に相当するサンプルBが食感および食べやすさのいずれについても高い評価を得られた。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】スライスされたフランスパンのスライス面を写した図である。
【図2】第1実施形態における、フランスパンのスライス面に垂直な方向での切断ラインを示す図である。
【図3】第1実施形態で得られたサンプルの状態を写した図である。
【図4】第1実施形態で得られたサンプルの状態を写した図である。
【図5】第1実施形態で得られたサンプルの状態を写した図である。
【図6】第1実施形態で得られたサンプルの状態を写した図である。
【図7】第1実施形態で得られたサンプルの状態を写した図である。
【図8】第1実施形態で得られたサンプルの状態を写した図である。
【図9】第1実施形態で得られたサンプルの状態を写した図である。
【図10】第1実施形態で得られたサンプルの状態を写した図である。
【図11】第1実施形態で得られたサンプルの状態を写した図である。
【図12】第1実施形態で得られたサンプルの状態を写した図である。
【図13】第1実施形態で得られたサンプルの状態を写した図である。
【図14】第1実施形態で得られたサンプルの状態を写した図である。
【図15】第1実施形態で得られた結果をまとめたグラフであって、各サンプルごとに、全数中のヒビなしサンプルの割合を示すグラフである。
【図16】第1実施形態で得られた結果をまとめたグラフであって、各サンプルごとに、ヒビありサンプル全数中の「周辺ヒビ入り」サンプルの割合を示すグラフである。
【図17】第2実施形態における、フランスパンのスライス面に垂直な方向での切断ラインを示す図である。
【図18】第2実施形態で得られたサンプルの状態を写した図である。
【図19】第2実施形態で得られたサンプルの状態を写した図である。
【図20】第2実施形態で得られたサンプルの状態を写した図である。
【図21】第2実施形態で得られたサンプルの状態を写した図である。
【図22】第2実施形態で得られたサンプルの状態を写した図である。
【図23】第2実施形態で得られたサンプルの状態を写した図である。
【図24】第2実施形態で得られたサンプルの状態を写した図である。
【図25】第2実施形態で得られたサンプルの状態を写した図である。
【図26】第2実施形態で得られたサンプルの状態を写した図である。
【図27】第2実施形態で得られたサンプルの状態を写した図である。
【図28】第2実施形態で得られたサンプルの状態を写した図である。
【図29】第2実施形態で得られたサンプルの状態を写した図である。
【図30】第2実施形態で得られたサンプルの状態を写した図である。
【図31】第2実施形態で得られたサンプルの状態を写した図である。
【図32】第2実施形態で得られたサンプルの状態を写した図である。
【図33】第2実施形態で得られた結果をまとめたグラフであって、各サンプルごとに、全数中のヒビなしサンプルの割合を示すグラフである。
【図34】第2実施形態で得られた結果をまとめたグラフであって、各サンプルごとに、ヒビありサンプル全数中の「周辺ヒビ入り」サンプルの割合を示すグラフである。
【図35】第3実施形態における、フランスパンのスライス面に垂直な方向での切断ラインを示す図である。
【図36】第3実施形態で得られたサンプルの状態を写した図である。
【図37】第3実施形態で得られたサンプルの状態を写した図である。
【図38】第3実施形態で得られたサンプルの状態を写した図である。
【図39】第3実施形態で得られたサンプルの状態を写した図である。
【図40】第3実施形態で得られたサンプルの状態を写した図である。
【図41】第3実施形態で得られたサンプルの状態を写した図である。
【図42】第3実施形態で得られたサンプルの状態を写した図である。
【図43】第3実施形態で得られたサンプルの状態を写した図である。
【図44】第3実施形態で得られたサンプルの状態を写した図である。
【図45】第3実施形態で得られたサンプルの状態を写した図である。
【図46】第3実施形態で得られたサンプルの状態を写した図である。
【図47】第3実施形態で得られた結果をまとめたグラフであって、各サンプルごとに、全数中のヒビなしサンプルの割合を示すグラフである。
【図48】第3実施形態で得られた結果をまとめたグラフであって、各サンプルごとに、ヒビありサンプル全数中の「周辺ヒビ入り」サンプルの割合を示すグラフである。
【図49】第4実施形態における、フランスパンのスライス面に垂直な方向での切断ラインを示す図である。
【図50】第4実施形態で得られたサンプルの状態を写した図である。
【図51】第4実施形態で得られたサンプルの状態を写した図である。
【図52】第5実施形態の素材を写した図である。
【図53】第5実施形態の素材を写した図である。
【図54】食感試験で使用したサンプルの状態を写した図である。
【図55】食感試験で、割れるのに必要なエネルギーを測定した結果を示すグラフである。
【図56】食感試験で、割れるのに必要な力を測定した結果を示すグラフである。
【符号の説明】
【0050】
1 外層
2 内層
A 切断ライン
B 切断ライン
C1 〜C5 切断ライン
D1 ,D2 切断ライン
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パンからなり、厚さが1.0mm以上12.0mm以下で、外周部のみに茶色の外層を有し、外層が一部除去されて外周部に内層が露出している部分を有する素材を、乾燥した空気で加熱することで、水分含有率が5.0質量%以下である「パンを素材とした食品」を得る食品の製造方法。
【請求項2】
前記素材は、外周の10%以上の長さで外層が除去されるように切断されている請求項1記載の食品の製造方法。
【請求項3】
前記素材は、外周の50%の長さで外層が除去されるように切断されている請求項2記載の食品の製造方法。
【請求項4】
パンからなり、厚さが1.0mm以上12.0mm以下で、外周部のみに茶色の外層を有し、外層から内層に至る切り込みが入れてある素材を、乾燥した空気で加熱することで、水分含有率が5.0質量%以下である「パンを素材とした食品」を得る食品の製造方法。
【請求項5】
前記パンはフランスパンである請求項1〜4のいずれか1項に記載の食品の製造方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法で製造されたパンを素材とした食品。
【請求項1】
パンからなり、厚さが1.0mm以上12.0mm以下で、外周部のみに茶色の外層を有し、外層が一部除去されて外周部に内層が露出している部分を有する素材を、乾燥した空気で加熱することで、水分含有率が5.0質量%以下である「パンを素材とした食品」を得る食品の製造方法。
【請求項2】
前記素材は、外周の10%以上の長さで外層が除去されるように切断されている請求項1記載の食品の製造方法。
【請求項3】
前記素材は、外周の50%の長さで外層が除去されるように切断されている請求項2記載の食品の製造方法。
【請求項4】
パンからなり、厚さが1.0mm以上12.0mm以下で、外周部のみに茶色の外層を有し、外層から内層に至る切り込みが入れてある素材を、乾燥した空気で加熱することで、水分含有率が5.0質量%以下である「パンを素材とした食品」を得る食品の製造方法。
【請求項5】
前記パンはフランスパンである請求項1〜4のいずれか1項に記載の食品の製造方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法で製造されたパンを素材とした食品。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【図41】
【図42】
【図43】
【図44】
【図45】
【図46】
【図47】
【図48】
【図49】
【図50】
【図51】
【図52】
【図53】
【図54】
【図55】
【図56】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【図41】
【図42】
【図43】
【図44】
【図45】
【図46】
【図47】
【図48】
【図49】
【図50】
【図51】
【図52】
【図53】
【図54】
【図55】
【図56】
【公開番号】特開2009−296974(P2009−296974A)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−157253(P2008−157253)
【出願日】平成20年6月16日(2008.6.16)
【出願人】(595177361)株式会社おやつカンパニー (9)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年6月16日(2008.6.16)
【出願人】(595177361)株式会社おやつカンパニー (9)
【Fターム(参考)】
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