説明

パンチルト装置

【課題】パン回転およびチルト回転に係る駆動機構及び装置の小型化を可能にしたパンチルト装置を提供する。
【解決手段】パンチルト装置1によれば、チルトモータ13及びパンモータ14の両方がカメラユニット6に設けられているので、これらが別々に設けられる場合に比して、装置の小型化が図られ、パン回転およびチルト回転に係る駆動機構の小型化を可能にしている。さらに、パン回転およびチルト回転に係る駆動機構の小型化により、組立作業性が向上すると共に、カメラユニット6の取り外しや組立ても容易となり、修理時などにおけるメンテナンス性が向上する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ネットワークカメラや監視用カメラ等に適用されるパンチルト装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、このような分野の技術として、特開2003−121918号公報がある。この公報に記載されたカメラ装置は、レンズや撮像素子などから構成されるカメラユニットを備えている。このカメラユニットは、雲台のベース板金に設置された可動部によって支持されている。この可動部は、雲台に対してパン方向に回転可能になっており、カメラユニットは、可動部の回転に伴ってパン方向に回転する。また、カメラユニットは、可動部に対してチルト方向に回転可能になっている。
【0003】
上記したようにカメラユニットをパン方向およびチルト方向にそれぞれ回転させるため、この装置には、パン駆動ユニットおよびチルト駆動ユニットが設けられている。パン駆動ユニットは、ベース板金上に固定されており、パンモータ(パン回転用駆動源)によって可動部をパン方向に回転させ、この可動部の回転によってカメラユニットをパン方向に回転させる。また、チルト駆動ユニットは、可動部の内部に固定されており、チルトモータ(チルト回転用駆動源)によってカメラユニットをチルト方向に回転させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−121918号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記した従来の装置では、パン回転用駆動源がベース板金上に固定され、チルト回転用駆動源が可動部内に固定されているので、パン回転およびチルト回転に係る駆動機構をまとめてユニット化することは構造上難しく、装置が大型化してしまうという問題があった。
【0006】
本発明は、パン回転およびチルト回転に係る駆動機構及び装置の小型化を可能にしたパンチルト装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るパンチルト装置は、筐体に設けられた光学機器がパン方向およびチルト方向に回転するパンチルト装置であって、パン回転軸線上に配置された回転軸を介して筐体内に設置されるカメラユニットは、回転軸のパン回転軸線を中心として筐体に対してパン方向に回転自在なベース部と、光学機器を有し、パン回転軸線に直交するチルト回転軸線を中心としてベース部に対してチルト方向に回転自在なチルト回転体と、ベース部に固定されて、カメラユニットをパン方向に回転させるパン回転用駆動源と、ベース部に固定されて、チルト回転体をチルト方向に回転させるチルト回転用駆動源と、を有することを特徴とする。
【0008】
本発明に係るパンチルト装置によれば、筐体内には、回転軸を介してカメラユニットが設置されている。このカメラユニットのベース部には、カメラユニットをパン方向に回転させるパン回転用駆動源と、チルト回転体をチルト方向に回転させるチルト回転用駆動源とが固定されており、これらのパン回転用駆動源およびチルト回転用駆動源によって、カメラユニットのチルト回転体に設けられた光学機器がパン方向およびチルト方向に回転する。このように、パン回転用駆動源およびチルト回転用駆動源の両方がカメラユニットに設けられているので、これらが別々に設けられる場合に比して、装置の小型化が図られる。よって、パン回転およびチルト回転に係る駆動機構の小型化が可能になる。さらに、パン回転およびチルト回転に係る駆動機構が小型化されることで、組立作業性が向上すると共に、カメラユニットの取り外しや組立ても容易となり、修理時などにおけるメンテナンス性が向上する。
【0009】
ここで、チルト回転体の重心は、チルト回転軸線上に実質的に位置し、カメラユニットの重心は、パン回転軸線とチルト回転軸線との交点に略一致していると好適である。
【0010】
この場合、パンチルト装置を天井や側壁に設置しても、チルト回転体やカメラユニットを回転駆動する際の負荷を抑えることができる。よって、設置場所に関わらず安定した性能を発揮できる。
【0011】
また、ベース部は、カメラユニットの重心がパン回転軸線上に実質的に位置するように形成されていると好適である。
【0012】
この場合、ベース部を適宜形成することで、カメラユニットの重心がパン回転軸線上に位置するように調整でき、上記した作用・効果が容易に実現される。
【0013】
また、ベース部は、パン回転軸線に略垂直な方向に延在しており、パン回転用駆動源およびチルト回転用駆動源は、ベース部に関して光学機器とは反対側に固定されていると好適である。
【0014】
この場合、パン回転用駆動源およびチルト回転用駆動源は、パン回転軸線に略垂直な方向に延在するベース部に関して光学機器とは反対側に固定されるので、光学機器側からパンチルト装置を見た場合に、パン回転用駆動源およびチルト回転用駆動源がベース部に隠れて見え難くなる。よって、パンチルト装置の見栄えが向上される。
【0015】
また、パン回転軸線を中心にして筐体の底部に固定され、パン回転用駆動源の回転駆動力が外周側に伝達される環状の固定側ギヤと、ベース部の底部側に形成されて、固定側ギヤの内周側に配置されたストッパ当接部と、固定側ギヤの内周側に設けられて、ストッパ当接部の回転軌道上に延出してベース部の回転を制止するストッパと、を有し、ストッパは、ベース部の回転により回転軌道における一方または他方の側からストッパ当接部により押圧されて、一定の範囲を揺動した後にベース部の回転を制止すると好適である。
【0016】
この場合、ベース部に形成されたストッパ当接部が、ベース部の回転により固定側ギヤの内周側に設けられたストッパを押圧すると、ストッパは、一定の範囲を揺動した後にベース部の回転を制止するので、ベース部がストッパを越えて回転することが防止される。さらに、ストッパ当接部が、その回転軌道におけるストッパの一方の側から他方の側へと回転するにあたり、ストッパの一定の範囲の揺動によって、ベース部すなわちカメラユニットはパン方向に360度以上回転することが可能になる。よって、光学機器をパン方向の全範囲に向けることが可能になる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、パン回転およびチルト回転に係る駆動機構及びそれら駆動機構を組み込んだ装置の小型化が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施形態に係るパンチルト装置の斜視図である。
【図2】パンチルト装置の設置例を示す図である。
【図3】パンチルト装置のドームを取り除いた状態を示す斜視図である。
【図4】パンチルト装置の分解斜視図である。
【図5】カメラユニットと固定側ギヤを示す斜視図である。
【図6】カメラユニットと固定側ギヤを裏面側から見た斜視図である。
【図7】カメラユニットと固定側ギヤの底面図である。
【図8】カメラユニットのベース部を表面側から見た斜視図である。
【図9】カメラユニットのベース部を裏面側から見た斜視図である。
【図10】カメラユニットを裏面側から見た斜視図である。
【図11】カメラユニットの側面図である。
【図12】固定側ギヤに設けられたストッパおよびストッパ当接部の位置関係を示す図である。
【図13】チルト回転体の重心とチルト回転軸線を示す図である。
【図14】カメラユニットの重心とパン回転軸線およびチルト回転軸線とを示す図である。
【図15】カメラユニットの重心とパン回転軸線およびチルト回転軸線とを示す図である。
【図16】カメラユニットの重心とパン回転軸線およびチルト回転軸線とを示す図である。
【図17】チルト回転体の回転角度を示す図である。
【図18】ストッパに対してストッパ当接部が一方の側から当接する状態を示す図である。
【図19】ストッパに対してストッパ当接部が他方の側から当接する状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0020】
図1〜図4に示すように、パンチルト装置1は、例えば天井A、側壁Bまたは床C等に設置されて、ネットワークカメラや監視用カメラ等に適用されるものである。パンチルト装置1は、底部2aを有する円筒状の筐体2を備えている。筐体2内には、パン回転軸線X1上に配置されたパン回転軸11を介してカメラユニット6が設置されている。筐体2の上縁の内周側には、円環状のドーム受け枠3が固定されている。さらに、このドーム受け枠3には、透明な樹脂製のドーム4が固定されている。
【0021】
カメラユニット6は、レンズや撮像素子などから構成される光学機器8を有している。光学機器8は、ドーム4内の中央の位置に配置され、ドーム4越しに外部を撮影する。光学機器8は、撮影により取得した映像や画像を図示しない制御装置に出力する。
【0022】
カメラユニット6は、パン回転軸線X1を中心として筐体2に対してパン方向D1に回転可能になっている。さらに、カメラユニット6の光学機器8は、パン回転軸線X1に直交するチルト回転軸線X2を中心としてチルト方向D2(図11参照)に回転可能になっている。このような構成により、光学機器8がパン方向D1およびチルト方向D2に回転可能になっており、光学機器8によって、パンチルト装置1の設置箇所を基準としたあらゆる方向を撮影することができる。なお、パンチルト装置1におけるパン方向D1およびチルト方向D2への回転制御は、図示しない制御装置によって行われる。
【0023】
以下、カメラユニット6の構成について詳細に説明する。
【0024】
図5〜図7に示すように、カメラユニット6は、各機器が取り付けられる樹脂製のベース部7を有している。ベース部7は、パン回転軸線X1に略垂直な方向に延在すると共に、筐体2の底部2aからパン回転軸線X1方向に所定の長さ離間した位置で底部2aに対面している。
【0025】
ベース部7には、底部2aとは反対側すなわち表面側において、光学機器8を有する略直方体形状のチルト回転体9が取り付けられている。このチルト回転体9は、チルト回転軸線X2を中心としてベース部7に対してチルト方向D2に回転可能に設置されている。
【0026】
より詳しくは、図8及び図9に示すように、ベース部7には、パン回転軸11が挿入される軸孔7aが形成されると共に、パン回転軸線X1に略垂直な方向に延在する円板部7bがこの軸孔7aを中心として略半円形に形成されている。さらに、円板部7bの周方向の一部は切り欠かれた形状になっており、この部分には、チルト回転軸線X2に略垂直な方向に延在するチルト回転体9用の支持部7eが立設されている。また、図5に示すように、円板部7bには、軸孔7aのパン回転軸線X1に関して支持部7eとは対称の位置に、チルト回転軸線X2に略垂直な方向に延在する逆L字状のチルト回転体9用の他の支持板22が立設されている。
【0027】
チルト回転体9は、支持部7eと支持板22との間に配置されている。チルト回転体9は、支持部7eに隣接する光学機器保持枠20と、支持板22に隣接する蓋板21とによって光学機器8を側方から保持する構成になっている。光学機器保持枠20と支持部7eとの間には、第3チルト用ギヤ19がチルト回転軸線X2を中心にして配置されている。この第3チルト用ギヤ19は、光学機器保持枠20に固定されている。
【0028】
図4に示すように、光学機器保持枠20及び第3チルト用ギヤ19には、支持部7eの軸孔7k(図9参照)に挿入されたチルト回転軸30と、このチルト回転軸30の多端で連結される他のチルト回転軸29とが連結状態で貫通している。また、蓋板21には、支持板22の軸孔22aに挿入されたチルト回転軸31が貫通している。これらのチルト回転軸30,29,31は、チルト回転軸線X2上に配置されている(図13参照)。
【0029】
このような構成により、光学機器8、光学機器保持枠20、蓋板21、及び第3チルト用ギヤ19から構成されるチルト回転体9は、支持部7e及び支持板22によって、チルト回転軸線X2を中心にして回転自在に支持されている。
【0030】
図5、図6及び図10に示すように、ベース部7には、チルト回転体9とは反対側すなわち裏面側において、チルト回転体9をチルト方向D2に回転駆動するためのチルトモータ13と、カメラユニット6自体をパン方向D1に回転駆動するためのパンモータ14とが、各々、取付板13a,14aを介して固定されている。これらのチルトモータ13及びパンモータ14は、図示しない配線によって外部の機器に接続されている。チルトモータ13及びパンモータ14としては、同一のステッピングモータと取付板とウォームとが用いられてユニット化されている。このように、同一のユニットを採用することにより、部品の共用化および低コスト化が図られている。
【0031】
続いて、チルトモータ13に関して説明する。図8及び図9に示すように、ベース部7には、チルト回転体9用の支持部7eの近傍にギヤ挿入用開口7fが形成されており、ギヤ挿入用開口7fの下方には、チルト回転軸線X2に略垂直な方向に延在するチルトモータ取付面7hが形成されている。支持部7eの内面側には、後述する第2チルト用ギヤ18を配置するための窪み部7jが形成されており、この窪み部7jは、ギヤ挿入用開口7fに連通すると共に、チルトモータ取付面7hの上方に位置している。
【0032】
図8〜図11に示すように、チルトモータ13は、2本のネジ26によって、チルトモータ取付面7hに固定されている。チルトモータ13の出力軸は、パン回転軸線X1及びチルト回転軸線X2のいずれにも直交する方向に配置されている。チルトモータ13の出力軸には、チルト用ウォーム16が取り付けられている。
【0033】
チルトモータ取付面7hには、第1チルト用ギヤ軸27によって第1チルト用ギヤ17が取り付けられている。第1チルト用ギヤ軸27は、チルト回転軸線X2方向に配置されると共に、チルトモータ取付面7hに形成された軸孔7mに挿入されている。第1チルト用ギヤ17は、チルト用ウォーム16と噛み合うことにより、チルト回転軸線X2に平行な軸線周りに回転する。
【0034】
図11に示すように、支持部7eの内面側には、第2チルト用ギヤ軸28によって第2チルト用ギヤ18が取り付けられている。第2チルト用ギヤ18は、チルト用ウォーム16に噛み合う大径ギヤ18aと、カメラユニット6の第3チルト用ギヤ19に噛み合う小径ギヤ18bとを有する2段ギヤである。第2チルト用ギヤ軸28は、チルト回転軸線X2方向に配置されると共に、支持部7eに形成された軸孔7nに挿入されている。第2チルト用ギヤ18の大径ギヤ18aは、ギヤ挿入用開口7f内を通って第1チルト用ギヤ17と噛み合うことにより、チルト回転軸線X2に平行な軸線周りに回転する。第2チルト用ギヤ18の小径ギヤ18bは、第3チルト用ギヤ19に噛み合うことにより、カメラユニット6を低速で回転させる。
【0035】
次に、パンモータ14に関して説明する。図8及び図9に示すように、ベース部7には、支持部7eとはパン方向D1に約90度ずれた位置において、円板部7bから外方に張り出す長方形板状のパンモータ固定部7cが形成されている。
【0036】
図8〜図10に示すように、パンモータ14は、2本のネジ34によって、パンモータ固定部7cの裏面側に固定されている。パンモータ14の出力軸は、パン回転軸線X1に直交する方向に配置されている。パンモータ14の出力軸には、パン用ウォーム32が取り付けられている。
【0037】
パンモータ固定部7cの裏面側には、パン用ギヤ軸36によってパン用ギヤ33が取り付けられている。パン用ギヤ33は、パン回転軸線X1方向に配置されると共に、パンモータ固定部7cに形成された軸孔7pに挿入されている。パン用ギヤ33は、パン用ウォーム32と噛み合うことにより、パン回転軸線X1に平行な軸線周りに回転する。
【0038】
図4、図6及び図7に示すように、筐体2の底部2aと一体的に形成されたリング状の凸部2dには、環状の固定側ギヤ10がパン回転軸線X1を中心とするように位置決めされて底部2aにネジによって固定されている。固定側ギヤ10の外周側には、歯が形成されており、上記したパン用ギヤ33は、固定側ギヤ10の外周側に噛み合っている。
【0039】
さらに、筐体2の底部2aの中央に形成された軸孔2bには、パン回転軸11が圧入によって固定されている。このパン回転軸11は、ベース部7の軸孔7aに挿入され、固定されたパン回転軸11を中心にベース部7が回転自在になっている。軸孔7aを貫通したパン回転軸11の先端には、パン回転軸11からカメラユニット6が抜けて脱落することを防止するための抜け防止ワッシャ50(図4参照)が固定される。
【0040】
上記のようにチルト回転体9、チルトモータ13、パンモータ14がベース部7に一体に取り付けられたカメラユニット6が底部2aに設置され、パンモータ14の駆動によって固定側ギヤ10に回転駆動力が伝達されることで、カメラユニット6は、パン回転軸線X1を中心として筐体2に対してパン方向D1に回転可能になっている。
【0041】
このように、チルトモータ13及びパンモータ14は、パン回転軸11を中心として周方向に約90度ずれた位置に配置されているので、これらのモータ13,14をベース部7の裏面側にコンパクトに収めることができる。
【0042】
さらに、図9〜図11に示すように、ベース部7の円板部7bの裏面側には、パン回転軸線X1を中心とする円筒部7rが連設されている。この円筒部7rは、底部2aにおいて固定側ギヤ10の内周側で軸孔2bの周囲に形成された円筒状の空間2c(図4参照)内に配置されている。そして、この円筒部7rの外周側の一部には、空間2c内に配置されて、パン回転軸線X1方向に延びるストッパ当接ピン7sが形成されている。
【0043】
図12に示すように、固定側ギヤ10の内周側には、仮想線で示すストッパ当接ピン7sの回転軌道E上に延出するメカストッパ40が設けられている。このメカストッパ40は、凸部2dに形成された凹部2eと、固定側ギヤ10の内周側に形成された凹部10aとで合成された空間内に、底部2aに対して、メカストッパピン42によって取り付けられている。メカストッパ40は、メカストッパピン42を中心として、パン回転軸線X1に平行な軸線周りを回動自在になっている。メカストッパピン42に関して回転軌道Eとは反対側に位置するメカストッパ40の基端部40bは、固定側ギヤ10に対してメカストッパスプリング41によって連結されている。
【0044】
回転軌道E上に位置するメカストッパ40の先端部40aは、カメラユニット6のパン方向D1への回転に伴ってストッパ当接ピン7sに当接し、ストッパ当接ピン7sによって押圧されてメカストッパピン42を中心として回動するようになっている。すなわち、先端部40aは、カメラユニット6が図12に示す時計周りに回転した場合、図12の右側からストッパ当接ピン7sによって押圧され、反時計回りに回動する。これとは逆に、先端部40aは、カメラユニット6が図12に示す反時計周りに回転した場合、図12の左側からストッパ当接ピン7sによって押圧され、時計回りに回動する。
【0045】
凹部2eには、その空間内に突出するようにして、メカストッパ40のパン方向D1の両側においてメカストッパ40の回動を制止する回動制止片2f,2gが形成されている。回動制止片2f,2gは、メカストッパ40が所定の角度回動した場合に、メカストッパピン42に関して回転軌道Eとは反対側に位置する基端部40bが当接する位置に設けられている。メカストッパ40の先端部40aは、カメラユニット6の回転により回転軌道Eにおける一方および他方の側からストッパ当接ピン7sにより押圧されて、上記した所定の角度に対応する一定の範囲を揺動する。このような構成により、カメラユニット6は、パン方向D1に360度以上回転可能になっている。メカストッパ40は、基端部40bに連結されたメカストッパスプリング41によって、図12に示す筐体2の径方向に向くように付勢されている。
【0046】
カメラユニット6のパン方向D1における回転位置は、ベース部7のチルトモータ取付面7hの下端に設けられたパン回転位置被検出片7t(図9参照)と、筐体2の底部2aに固定されたパン回転位置検出装置38(図4及び図12参照)とによって検出される。また、チルト回転体9のチルト方向D2における回転位置は、光学機器保持枠20の下端に設けられたチルト回転位置被検出片20a(図4参照)と、ベース部7のギヤ挿入用開口7fに隣接する開口7u(図8及び図9参照)内に固定されたチルト回転位置検出装置37(図4及び図10参照)とによって検出される。これらのチルト回転位置検出装置38,37は、フォトインタラプタである。
【0047】
以上説明したパンチルト装置1において、図13に示すように、光学機器8、光学機器保持枠20、蓋板21、及び第3チルト用ギヤ19から構成されるチルト回転体9の重心F2は、チルト回転軸線X2上に位置している。チルト回転体9においては、光学機器8の位置、形状、及び重量などに応じて光学機器保持枠20や蓋板21の形状を調整することで、重心F2がチルト回転軸線X2上に位置するよう、重心F2の位置が調整されている。
【0048】
さらに、図14〜図16に示すように、カメラユニット6の重心F1は、パン回転軸線X1とチルト回転軸線X2との交点に一致している。カメラユニット6においては、カメラユニット6に搭載される各機器の位置、形状、及び重量などに応じてベース部7の形状や重心を調整することで、重心F1がパン回転軸線X1とチルト回転軸線X2との交点に一致するよう、重心F1の位置が調整されている。
【0049】
より具体的には、ベース部7には、前述したように、円板部7bから外方に張り出す長方形板状のパンモータ固定部7cが形成されており、このパンモータ固定部7cの裏面側にパンモータ14が固定されている。そこで、ベース部7には、パン回転軸線X1に関してパンモータ固定部7cとは対称な位置に、外方に張り出す板状の重心調整部7dが形成されている。
【0050】
続いて、パンチルト装置1におけるチルト回転およびパン回転の動作について説明する。
【0051】
図17に示すように、チルトモータ13の駆動により、チルト用ウォーム16、第1チルト用ギヤ17、第2チルト用ギヤ18、及び第3チルト用ギヤ19が回転し、チルト回転体9が回転する。ここで、チルトモータ13の回転角度は、1ステップあたりA度であるとする。また、チルト用ウォーム16、第1チルト用ギヤ17、第2チルト用ギヤ18の大径ギヤ18a、第2チルト用ギヤ18の小径ギヤ18b、及び第3チルト用ギヤ19の歯数は、それぞれB条、C歯、D歯、E歯、F歯であるとする。
【0052】
この場合、チルトモータ13の1ステップの駆動によって、各ギヤの回転角度は、以下のとおりになる。
チルト用ウォーム16:A度
第1チルト用ギヤ17:A/C度(図17の角度α)
第2チルト用ギヤ18の大径ギヤ18a:A/C/D度(図17の角度β)
第2チルト用ギヤ18の小径ギヤ18b:A/C/D度(図17の角度β)
第3チルト用ギヤ19:A/C/D/F×E度(図17の角度γ)
【0053】
このように、チルト回転における駆動用のギヤをウォーム16も含めて5個使用することで、チルト回転体9の回転角度よりもチルトモータ13のステップ角度を大きくできるので、チルトモータ13をマイクロステップ駆動ではなくフルステップ駆動させる場合であっても、チルト回転体9の停止角度を細かく設定することができる。チルト回転に係るギヤは、3個以上であることが好ましい。
【0054】
図6に示すように、パンモータ14の駆動により、パン用ウォーム32及びパン用ギヤ33が回転し、固定側ギヤ10に回転駆動力が伝達されることでカメラユニット6が回転する。パン回転における駆動用のギヤに関しても、パン用ウォーム32、パン用ギヤ33、及び固定側ギヤ10の3個を使用することで、パンモータ14をマイクロステップ駆動ではなくフルステップ駆動させる場合であっても、カメラユニット6の停止角度を細かく設定することができる。
【0055】
さらに、図18及び図19に示すように、カメラユニット6の回転に伴ってストッパ当接ピン7sが回転軌道E上を移動すると、ドーム4側から見て時計方向(図18の方向D3)に回転した場合、ストッパ当接ピン7sは、メカストッパ40の先端部40aに当接し、先端部40aを押圧する。これによってメカストッパ40がメカストッパピン42を中心として回動すると、基端部40bが回動制止片2fに当接し、メカストッパ40の回動が制止され、カメラユニット6の回転が制止される。
【0056】
また、カメラユニット6がドーム4側から見て反時計方向(図19の方向D4)に回転した場合、ストッパ当接ピン7sは、メカストッパ40の先端部40aに当接し、先端部40aを押圧する。これによってメカストッパ40がメカストッパピン42を中心として回動すると、基端部40bが回動制止片2gに当接し、メカストッパ40の回動が制止され、カメラユニット6の回転が制止される。
【0057】
パンチルト装置1によれば、チルトモータ13及びパンモータ14の両方がカメラユニット6に設けられているので、これらが別々に設けられる場合に比して、装置の小型化が図られ、パン回転およびチルト回転に係る駆動機構の小型化を可能にしている。さらに、パン回転およびチルト回転に係る駆動機構の小型化により、組立作業性が向上すると共に、カメラユニット6の取り外しや組立ても容易となり、修理時などにおけるメンテナンス性が向上する。
【0058】
また、チルト回転体9の重心F2は、チルト回転軸線X2上に位置し、カメラユニット6の重心F1は、パン回転軸線X1とチルト回転軸線X2との交点に一致しているので、パンチルト装置1を天井Aや側壁Bに設置しても(図2参照)、チルト回転体9やカメラユニット6を回転駆動する際の負荷が抑えられる。よって、設置場所に関わらず安定した性能が発揮される。特に、パンチルト装置1のように小型のカメラにおいては、チルトモータ13やパンモータ14として小型で小出力のモータを採用しているので、モータ13,14の出力に対するチルト回転体9やカメラユニット6の重量バランスの影響は大きい。したがって、このような重量バランスの調整は重要となる。
【0059】
また、ベース部7を適宜形成することで、カメラユニット6の重心F1がパン回転軸線X1に位置するように調整されているので、上記した作用・効果が確実かつ容易に実現される。
【0060】
また、チルトモータ13及びパンモータ14は、パン回転軸線X1に略垂直な方向に延在するベース部7に関して光学機器8とは反対側に固定されるので、光学機器8側すなわちドーム4の外部からパンチルト装置1を見た場合に、チルトモータ13及びパンモータ14がベース部7に隠れて見え難くなっており、パンチルト装置の見栄えが向上する。
【0061】
また、ベース部7に形成されたストッパ当接ピン7sが、ベース部7の回転により固定側ギヤ10の内周側に設けられたメカストッパ40を押圧すると、メカストッパ40の先端部40aは、一定の範囲を揺動した後にベース部7の回転を制止するので、ベース部7がメカストッパ40を越えて回転することが防止される。さらに、ストッパ当接ピン7sが、その回転軌道Eにおける先端部40aの一方の側から他方の側へと回転するにあたり、先端部40aの一定の範囲の揺動によって、ベース部7すなわちカメラユニット6はパン方向D1に360度以上回転することが可能になっており、光学機器8をパン方向D1の全範囲に向けることが可能になっている。特に、チルトモータ13及びパンモータ14と外部とが配線によって接続される場合であっても、ベース部7がメカストッパ40を越えて回転することを防止しつつ、カメラユニット6の360度以上の回転を許容するため、配線の断線などを引き起こすことがなく、パン方向D1における全範囲への回転が支障なく実現される。
【0062】
従来、パン方向D1における360度以上の回転を支障なく行うためには、スリップリング等を介してチルトモータ13及びパンモータ14に対する給電を行う必要があったが、パンチルト装置1によれば、安価な配線を用いることができるので、低コスト化が図られると共に、スリップリングを用いることによる導通不良などの心配がなく、運転安定性の向上が実現される。
【0063】
さらに、メカストッパ40はメカストッパスプリング41によって付勢力を受けながら回動するので、メカストッパ40は、ストッパ当接ピン7sからの押圧に対して弾性、すなわちクッション性を有している。これにより、メカストッパ40に対するストッパ当接ピン7sの噛み付きや乗り上げが効果的に防止されている。
【0064】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限られるものではない。例えば、上記実施形態では、チルトモータ13及びパンモータ14がベース部7に関して光学機器8とは反対側に固定される場合について説明したが、光学機器8と同じ側に固定されてもよい。
【0065】
また、カメラユニット6の重心F1は、パン回転軸線X1とチルト回転軸線X2との交点から多少ずれてもよく、チルト回転体9の重心F2は、チルト回転軸線X2に対して多少ずれてもよい。
【0066】
また、ベース部7は、チルト回転体9、チルトモータ13、及びパンモータ14を一体に設置できるものであれば如何なる形状であってもよく、円板部7bのようにパン回転軸線X1に略垂直な方向に延在する形状でなくてもよい。
【符号の説明】
【0067】
1…パンチルト装置、2…筐体、2a…底部、6…カメラユニット、7…ベース部、7s…ストッパ当接ピン(ストッパ当接部)、8…光学機器、9…チルト回転体、10…固定側ギヤ、11…パン回転軸、13…チルトモータ(チルト回転用駆動源)、14…パンモータ(パン回転用駆動源)、40…メカストッパ、D1…パン方向、D2…チルト方向、E…回転軌道、F1…カメラユニットの重心、F2…チルト回転体の重心、X1…パン回転軸線、X2…チルト回転軸線。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体に設けられた光学機器がパン方向およびチルト方向に回転するパンチルト装置であって、
パン回転軸線上に配置された回転軸を介して前記筐体内に設置されるカメラユニットは、
前記回転軸の前記パン回転軸線を中心として前記筐体に対して前記パン方向に回転自在なベース部と、
前記光学機器を有し、前記パン回転軸線に直交するチルト回転軸線を中心として前記ベース部に対してチルト方向に回転自在なチルト回転体と、
前記ベース部に固定されて、前記カメラユニットを前記パン方向に回転させるパン回転用駆動源と、
前記ベース部に固定されて、前記チルト回転体を前記チルト方向に回転させるチルト回転用駆動源と、を有することを特徴とするパンチルト装置。
【請求項2】
前記チルト回転体の重心は、前記チルト回転軸線上に実質的に位置し、
前記カメラユニットの重心は、前記パン回転軸線と前記チルト回転軸線との交点に略一致していることを特徴とする請求項1記載のパンチルト装置。
【請求項3】
前記ベース部は、前記カメラユニットの重心が前記パン回転軸線上に実質的に位置するように形成されていることを特徴とする請求項2記載のパンチルト装置。
【請求項4】
前記ベース部は、前記パン回転軸線に略垂直な方向に延在しており、前記パン回転用駆動源および前記チルト回転用駆動源は、前記ベース部に関して前記光学機器とは反対側に固定されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項記載のパンチルト装置。
【請求項5】
前記パン回転軸線を中心にして前記筐体の底部に固定され、前記パン回転用駆動源の回転駆動力が外周側に伝達される環状の固定側ギヤと、
前記ベース部の前記底部側に形成されて、前記固定側ギヤの内周側に配置されたストッパ当接部と、
前記固定側ギヤの内周側に設けられて、前記ストッパ当接部の回転軌道上に延出して前記ベース部の回転を制止するストッパと、を有し、
前記ストッパは、前記ベース部の回転により前記回転軌道における一方または他方の側から前記ストッパ当接部により押圧されて、一定の範囲を揺動した後に前記ベース部の回転を制止することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項記載のパンチルト装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2012−32636(P2012−32636A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−172666(P2010−172666)
【出願日】平成22年7月30日(2010.7.30)
【出願人】(000001225)日本電産コパル株式会社 (755)
【Fターム(参考)】