説明

パンチング方法及びパンチング装置

【課題】間欠送りされる帯材をセンサに対する所定の検出位置に位置決め保持した状態で、帯材の加工位置への送り込み状態をセンサにより正確に検出することができるパンチング装置を提供する。
【解決手段】間欠送りされる金属製の帯材Wに対してその停止時にパンチ加工を施すためのパンチ機構と、帯材Wの送り異常を検出するための検出機構13とを備える。検出機構13は、非接触型のセンサ17と、そのセンサ17を保持する保持部材16と、その保持部材16に向かって帯材Wを押し付ける押圧部材18とを有する。押圧部材18は帯材Wの送りに伴って回転されるローラ20を有し、そのローラ20がバネ22の付勢力により帯材Wを保持部材16に向かって押圧する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、間欠送りされる金属製の帯材に対してパンチ加工を施すようにしたパンチング方法及びパンチング装置に係り、特に帯材が所定の加工位置に正しく間欠送りされたか否かを検出できるようにしたパンチング方法及びパンチング装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のパンチング装置としては、例えば特許文献1に開示されるような構成が提案されている。この従来構成においては、間欠送りされる金属製の帯材に対してパンチ加工を施すための抜き型のダイが設けられ、このダイに磁気センサが埋設されている。そして、帯材がダイ上の加工位置に間欠送りされたとき、磁気センサにより帯材に形成された孔の位置が検出されて、帯材が所定の加工位置に正しく送り込まれたか否かが判別されるようになっている。
【0003】
その他に、パンチとともに昇降するパイロットピンが帯材の孔を通過することにより、帯材の位置を検出するようにした従来構成も存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開昭61−87625号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この従来のパンチング装置においては、抜き型のダイに磁気センサが上向きの状態で埋設されている。そして、ダイの上面に沿って間欠送りされる帯材上の孔の位置が、抜き型のパンチの下降動作に先立って磁気センサにより検出されるようになっている。このため、帯材の間欠送りに際して帯材が湾曲したりして、磁気センサの検出時に帯材がダイの上面に密着することなく、ダイの上面から浮き上がった状態にあると、磁気センサによる位置検出が正確に行われないという問題があった。
【0006】
パイロットピンを用いた従来構成においては、ダイに対して昇降するパンチが下死点付近まで下降しないと、帯材の孔を検出できない。このため、帯材の異常状態が判明したときには、パンチが下死点付近にあって、異常停止が間に合わないことになる。
【0007】
なお、ワークをセンサに突き当ててそのワークを検出するようにした構成も存在するが、この構成においては、ワークが帯材のように撓みやすいものである場合、検出結果と実際のワークの位置との間にずれが生じて、誤検出のおそれが多分にあった。
【0008】
この発明は、このような従来の技術に存在する問題点に着目してなされたものである。その目的は、間欠送りされる帯材をセンサに対する所定の検出位置に位置決め保持した状態で、帯材の加工位置への送り込み状態をセンサにより正確に検出することができるパンチング装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、この発明においては、金属製の帯材を間欠送りしてその停止時に帯材に対してパンチ加工を施すパンチング方法において、帯材の停止時に、その帯材を非接触型のセンサを保持する保持部材に押し付けて帯材の位置を検出することを特徴としている。
【0010】
また、この発明においては、間欠送りされる金属製の帯材に対してその停止時にパンチ加工を施すためのパンチ機構と、帯材の送り異常を検出するための検出手段とを備えたパンチング装置において、前記検出手段が、非接触型のセンサと、そのセンサを保持する保持部材と、その保持部材に向かって帯材を押し付ける押圧手段とを有することを特徴としている。
【0011】
従って、この発明においては、帯材が間欠送りされると、その帯材が押圧手段により保持部材に向かって押し付けられて、非接触型のセンサに対する所定の検出位置に位置決め保持される。そして、この状態でセンサにより帯材の位置が検出される。よって、帯材をセンサに対する所定の検出位置に位置決め保持した状態で、その帯材の加工位置への送り込み状態をセンサにより正確に検出することができる。
【0012】
前記の構成において、帯材に形成された透孔を検出することにより帯材の位置が検出されることが好ましい。
前記の構成において、間欠送りされる金属製の帯材に対してその停止時にパンチ加工を施すためのパンチ機構と、帯材の送り異常を検出するための検出手段とを備えたパンチング装置において、前記検出手段は、非接触型のセンサと、そのセンサを保持する保持部材と、その保持部材に向かって帯材を押し付ける押圧手段とを有することが好ましい。
【0013】
前記の構成において、前記センサは、渦電流検出型であることが好ましい。
前記の構成において、前記保持部材は金属より摩擦抵抗の小さな合成樹脂材よりなること好ましい。
【0014】
前記の構成において、前記押圧手段は、帯材の送りに伴って回転されるローラを有し、そのローラがバネ力により帯材を保持部材に向かって押圧することが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
以上のように、この発明によれば、間欠送りされる帯材をセンサに対する所定の検出位置に位置決め保持した状態で、帯材の加工位置への送り込み状態をセンサにより正確に検出することができるという効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】第1実施形態のパンチング装置を示す概略構成図。
【図2】図1のパンチング装置における検出機構を拡大して示す要部斜視図。
【図3】図2の検出機構の要部平面図。
【図4】図3の4−4線における断面図。
【図5】図4の5−5線における断面図。
【図6】図4の6−6線における断面図。
【図7】第2実施形態を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、この発明を具体化した実施形態を図面に従って説明する。
(第1実施形態)
図1に示すように、第1実施形態のパンチング装置においては、金属製の帯材Wを間欠送りするための送り機構11と、間欠送りされる帯材Wに対してその停止時にパンチ加工を施すための下型12a及び上型12bよりなるパンチ機構12と、帯材Wの間欠送りの異常を検出するための検出手段としての検出機構13とが備えられている。この送り機構11、パンチ機構12及び検出機構13は、帯材Wの送り方向に沿って順に配列されている。
【0018】
次に、前記検出機構13の構成について詳細に説明する。図2〜図5に示すように、パンチ機構12の下型12aにおける帯材Wの下流側の部分には、取付部材15が固定配置されている。帯材Wの幅方向の側端縁の上部に位置するように、取付部材15上には保持部材16が配置されている。保持部材16は金属より摩擦抵抗の小さな硬質の合成樹脂材により構成されおり、この実施形態においては、ポリアミドやポリアセタール等のエンジニアリングプラスチックによって構成されている。保持部材16の前部下面には帯材Wの幅方向の側端縁の上面に接触可能な接触面16aが形成され、その接触面16aの帯材Wの送り方向の前後両側には送り方向の外側に向かって開放傾斜される案内面16dが形成されている。接触面16aより奥部の位置には規制面16cが形成され、この規制面16cにより帯材Wの幅方向の側端縁を規制するようになっている。この保持部材16には、非接触型のセンサ17がその検出部17aを下向きにした状態で埋設保持されている。このセンサ17は、帯材Wの幅方向の側端縁に沿って所定間隔おきに形成されたパイロットピン孔等の透孔Waを高周波磁界を利用し、渦電流の変化で検出する渦電流検出型となっている。そして、センサ17の上端から延びるコード17bが、保持部材16に設けられた挿通孔16b内を通って後方に導出されている。
【0019】
図4に示すように、前記保持部材16の接触面16aの下方において、取付部材15には縦方向に延びる収容孔15aが形成されている。収容孔15a内には、押圧手段としての押圧部材18が上下動可能に収容されている。押圧部材18は、四角ブロック状の支持体19を備えている。支持体19は合成樹脂材により構成され、その上面には一対の突条19aが形成されている。図5及び図6に示すように、その支持体19の前記突条19a間には帯材Wの送り方向と直交する方向へ平行に延びる支軸21を介して一対のローラ20が回転可能に支持され、これらのローラ20は突条19a間の凹部19b内に位置している。各ローラ20は、金属より摩擦抵抗の小さな合成樹脂材により構成されている。この実施形態において、支持体19及び各ローラ20は前記保持部材16と同様なエンジニアリングプラスチックによって構成されている。
【0020】
図4及び図5に示すように、前記取付部材15の収容孔15aには、押圧部材18の支持体19を上方に移動付勢するためのバネ22が配置されている。そして、このバネ22の付勢力により、支持体19上の各ローラ20が帯材Wの下面に接合されて、その帯材Wが保持部材16の接触面16aに向かって押し付けられている。この状態で、前記送り機構11により帯材Wが間欠送りされるとき、その間欠送りに伴って各ローラ20が回転される。
【0021】
次に、前記のように構成されたパンチング装置の作用を説明する。
このパンチング装置においては、送り機構11により帯材Wが間欠送りされながら、パンチ機構12により帯材Wに対してその停止時にパンチ加工が施される。この場合、パンチ機構12による帯材Wのパンチ加工に先立って、帯材Wに送り異常が生じているか否か、つまり検出機構13により帯材Wが所定の加工位置に送り込まれたか否かが検出される。
【0022】
すなわち、図4及び図5に示すように、押圧部材18の支持体19がバネ22の付勢力により上方に移動されて、押圧部材18の各ローラ20により帯材Wが保持部材16の接触面16aに向かって押し付けられる。そして、帯材Wの送り移動に際しては、各ローラ20が回転されるとともに、摩擦係数の小さな材質よりなる保持部材16の下面を摺動される。このため、帯材Wはほとんど抵抗なく、円滑に移動される。また、このとき、帯材Wの側端縁は保持部材16の規制面16cによって位置規制される。従って、帯材Wの間欠送りに際して帯材Wに湾曲部等が生じた場合でも、その帯材Wがセンサ17の検出部17aに対する所定の検出位置に位置決め保持される。この状態で、センサ17により帯材W上の透孔Waの位置が、渦電流値の変化に基づいて検出される。そして、このセンサ17による検出の結果、帯材Wに送り異常が判明した場合には、パンチ機構12によるパンチ加工が中断される。
【0023】
従って、この実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1) このパンチング装置においては、帯材Wが間欠送りされたとき、その帯材Wが押圧部材18により保持部材16に向かって押し付けられて、非接触型のセンサ17に対する所定の検出位置に位置決め保持され、さらに端縁の位置が規制面16cで規制され、この状態でセンサ17により帯材Wの位置が検出されるようになっている。よって、帯材Wをセンサ17に対する所定の検出位置に位置決め保持した状態で、その帯材Wの加工位置への送り込み状態をセンサ17により正確に検出することができる。
【0024】
(2) このパンチング装置においては、前記センサ17が渦電流検出型になっている。このため、帯材Wにオイルが塗布されていたとしても、渦電流値の変化により帯材Wに形成された透孔Waの位置を的確に検出することができて、帯材Wの位置を正確に検出できる。
【0025】
(3) このパンチング装置においては、前記保持部材16が金属より摩擦抵抗の小さな合成樹脂材より構成されている。このため、金属製の帯材Wが押圧部材18により保持部材16に押し付け接触された際に、帯材Wがほとんど抵抗なく送られるとともに、帯材Wの接触面が傷付くおそれを防止することができる。
【0026】
(4) このパンチング装置においては、前記押圧部材18が帯材Wの送りに伴って回転されるローラ20を有し、そのローラ20がバネ22の付勢力により帯材Wを保持部材16に向かって押圧するように構成されている。このため、ローラ20が帯材Wの送りに伴って回転されることにより、帯材Wの送りに対する抵抗を低減することができる。
【0027】
(第2実施形態)
次に、この発明の第2実施形態を第1実施形態と異なる部分を中心に説明する。
図7に示すように、この実施形態においては、前記第1実施形態よりも径の大きな透孔Waを検出するものであって、一対のセンサ17は帯材Wの送り方向に沿って並設されるように保持部材16に保持されている。そして、一方のセンサ17が透孔Waの送り方向前方側の端縁を、他方のセンサ17が透孔Waの送り方向後方側の端縁を検出する。
【0028】
このため、この実施形態では、以下の効果を発揮する。
(5) 一対のセンサ17が透孔Waの送り方向前方側及び後方側の端縁を検出するため、間欠送りされる帯材Wの停止位置を的確に検出できる。すなわち、いずれか一方のセンサ17のオンまたはオフ,両センサ17の同時オンまたはオフにより透孔Waが所定位置からずれているか否かを正確に検出できる。
(変更例)
なお、この実施形態は、次のように変更して具体化することも可能である。
【0029】
・ 保持部材16を帯材Wの送り方向に沿って複数設け、センサ17を各保持部材16に支持すること。
・ 保持部材16として、エンジニアリングプラスチックの外に、アルミ、ステンレススチール等の非磁性体及び非磁性体に磨耗対策のコーティングを施したもの等を用いること。
【0030】
・ 帯材Wの送り異常を検出するためのセンサ17として、渦電流検出型とは異なった非接触型のセンサ,例えば光電センサ(通常の光センサ,レーザ光用のセンサ等)を用いること。光電センサを用いた場合は、非磁性体の帯材Wであっても検出できる。
【符号の説明】
【0031】
11…送り機構、12…パンチ機構、13…検出手段としての検出機構、15…取付部材、16…保持部材、17…センサ、18…押圧手段としての押圧部材、19…支持体、20…ローラ、22…バネ、W…帯材、Wa…透孔。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属製の帯材を間欠送りしてその停止時に帯材に対してパンチ加工を施すパンチング方法において、
帯材の停止時に、その帯材を非接触型のセンサを保持する保持部材に押し付けて帯材の位置を検出することを特徴としたパンチング方法。
【請求項2】
帯材に形成された透孔を検出することにより帯材の位置が検出されることを特徴とした請求項1に記載のパンチング方法。
【請求項3】
間欠送りされる金属製の帯材に対してその停止時にパンチ加工を施すためのパンチ機構と、帯材の送り異常を検出するための検出手段とを備えたパンチング装置において、
前記検出手段は、非接触型のセンサと、そのセンサを保持する保持部材と、その保持部材に向かって帯材を押し付ける押圧手段とを有することを特徴とするパンチング装置。
【請求項4】
前記センサは、渦電流検出型であることを特徴とする請求項3に記載のパンチング装置。
【請求項5】
前記保持部材は金属より摩擦抵抗の小さな合成樹脂材よりなることを特徴とする請求項3または4に記載のパンチング装置。
【請求項6】
前記押圧手段は、帯材の送りに伴って回転されるローラを有し、そのローラがバネ力により帯材を保持部材に向かって押圧することを特徴とする請求項3〜5のうちのいずれか一項に記載のパンチング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−245540(P2012−245540A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−119012(P2011−119012)
【出願日】平成23年5月27日(2011.5.27)
【出願人】(000241500)トヨタ紡織株式会社 (2,945)
【Fターム(参考)】