説明

パンツ型吸収性物品

【課題】おむつ交換に際して、手間を軽減して迅速、かつ、衛生的に交換可能とする、等の利点がもたらされる。
【解決手段】外装シート20における腹側部分Fに、胴部開口36から脚部開口38にかけて切断容易部40が設けられる。この内の逆U字形に形成される主切断容易部40Aの外周側に、同じく腹側部分Fにおける胴部開口36から脚部開口38にかけて外装シート20を構成する複数部材を相互に接合する主接合部42Aが、配置される。これに伴い、この主接合部42Aも逆U字形に形成されて、この主接合部42Aの下端部も2つの脚部開口38にそれぞれ達している。主接合部42Aの頂部に向かって胴部開口36から上側接合部42Bが、2本の上側切断容易部40Bの間に垂直方向に沿って形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に交換性を向上させたパンツ型吸収性物品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近時、大人の失禁に対応するものとして、外装シート上に吸収体を配置し、この吸収体で尿を吸収する構造のパンツ型吸収性物品であるパンツ型おむつが提案されている。このようなパンツ型おむつにおいては、介護者がおむつ交換することがあるが、このおむつ交換を行う際には、一般的にトイレ内で立った状態でこのパンツ型おむつの胴回り部の両脇部を片方ずつ破って、交換することが多い。
【0003】
このようにおむつ交換する際においては、パンツ型おむつの片方の脇のみを破いた時に、パンツ型おむつが落ち易くなり、不安定な状態となる。このため、着用者や介護者が股間部を支えながら、もう一方の脇部を切り離すことにしているが、このときに、内側の吸収体が床に落ちたりしてしまい衛生的でない欠点があった。また、このように不安定な状態のパンツ型おむつを着用者や介護者が支えながら交換しなければならないので、スピーディーなおむつ交換ができない欠点もあった。
【0004】
これに対して、前腹部を左右に開閉可能なパンツ型おむつが下記の特許文献1に開示されている。しかし、この特許文献1では、前腹部の胴回り部分を左右に開閉できる構造とされているものの、おむつ交換に際して、胴回り部分を左右に開く動作が必要となるため、スピーディーに交換ができなかった。また、下記の特許文献2のような胴周り側部を切り裂くことのできる使い捨てのパンツ型着用物品を備えるおむつも知られている。しかし、この特許文献2では、両脇部に伸長、収縮するパネルをそれぞれ配置して、おむつ交換に際して両脇部を破り易くしているものの、両脇部を片方ずつ破る作業は従来と変わらないため、交換時の手間は軽減できなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−230313号公報
【特許文献2】特開2006−346005号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで本発明の主たる課題は、おむつ交換に際して、交換の手間を軽減して迅速、かつ、衛生的に交換可能としうる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決した本発明は次記の通りである。
<請求項1記載の発明>
複数部材が積層されるとともに、腹側部分、背側部分、およびこれらの間で下部に位置する股下部分を有する外装シートと、
吸収体を含む吸収性本体と、
を備え、
前記外装シートが部分的に接合されて上部に胴部開口および下部に2つの脚部開口が設けられるとともに、前記外装シートの内面側における少なくとも前記股下部分に前記吸収性本体が固定された、パンツ型吸収性物品において、
腹側部分における前記胴部開口から前記脚部開口にかけた前記外装シートの部分を切断容易にした切断容易部と、
切断容易部に隣り合いつつ前記胴部開口から前記脚部開口にかけて、前記外装シートを構成する複数部材間を接合する接合部と、
を有したことを特徴とするパンツ型吸収性物品。
【0008】
(作用効果)
この発明では、腹側部分における胴部開口から脚部開口にかけて外装シートの部分を切断容易部が切断容易にするとともに、切断容易部に隣り合った位置において接合部が外装シートを構成する複数部材間を接合している。このため、おむつ交換に際して、外装シートに力を加えることにより、切断容易部に沿って外装シートが引き裂かれるものの、本来的に切断されるべき切断容易部から引き裂き部分が外れようとした場合でも、接合部が切断容易部に隣り合って位置していることから、この接合部で引き裂き部分が止まるので、切断容易部に沿って最後まで外装シートが引き裂かれて、スピーディーな交換を妨げることがない。
【0009】
したがって、本発明によれば、腹側部分に切断容易部を配置したことで、おむつ交換する際に、切断容易部に力を加えることで、この部分を引き裂き取り外すことが可能となり、パンツ型吸収性物品を身体から簡易に取り外すことができる。このため、交換の手間を軽減して迅速に交換可能になるとともに、胴回り部の両脇部分を破るのと異なり吸収性本体が落ちることもなくなり、パンツ型吸収性物品を衛生的に交換可能になる。
【0010】
以上より、本発明によれば、おむつ交換に際して、交換の手間を軽減して迅速、かつ、衛生的に交換可能となり、着用性が改善される他、パンツ型吸収性物品の製造に際しては、従来の一般的な構造のパンツ型吸収性物品に切断容易部及び接合部を付加するだけなので、製造コストが大幅に増大することもない。
【0011】
<請求項2記載の発明>
前記切断容易部が、主切断容易部及び上側切断容易部を有し、
主切断容易部の下端部が2つの前記脚部開口にそれぞれ達するように、主切断容易部が逆U字形に形成されるとともに、主切断容易部の頂部に向かって前記胴部開口から上側切断容易部が形成される、請求項1記載のパンツ型吸収性物品。
【0012】
(作用効果)
主切断容易部が逆U字形に形成されて、この主切断容易部の下端部が2つの脚部開口にそれぞれ達し、また、主切断容易部の頂部に向かって胴部開口から上側切断容易部が形成されるという構造なので、パンツ型吸収性物品の胴部開口から脚部開口まで確実に引き裂くことが可能となる。
【0013】
<請求項3記載の発明>
前記接合部が、主接合部及び上側接合部を有し、
主接合部の下端部が2つの脚部開口にそれぞれ達するように、主接合部が逆U字形に形成されるとともに、主接合部の頂部に向かって胴部開口から上側接合部が形成される、請求項1または2記載のパンツ型吸収性物品。
【0014】
(作用効果)
主切断容易部及び上側切断容易部と同様に、主接合部が逆U字形に形成されて、この主接合部の下端部が2つの脚部開口にそれぞれ達し、また、主接合部の頂部に向かって胴部開口から上側接合部が形成されるという構造なので、切断部分が切断容易部のいずれの箇所から外れても、主接合部及び上側接合部の部分で停止して、切断部分が大きく外れることを確実に防止できる。
【0015】
<請求項4記載の発明>
逆U字形に形成される主切断容易部の外側を囲む位置に前記主接合部が配置された、請求項3記載のパンツ型吸収性物品。
【0016】
(作用効果)
逆U字形の主切断容易部の外側を囲む位置に主接合部が配置されるという構造なので、より一層確実に切断部分が主切断容易部から外れることを防止できる。
【0017】
<請求項5載の発明>
前記外装シートの主切断容易部と上側切断容易部との交点の近傍部分に、切り込みとされる切込部を設けた、請求項2〜4のいずれか1項に記載のパンツ型吸収性物品。
【0018】
(作用効果)
切断容易部と上側切断容易部との交点に切込部を入れておくことで、この部分が破れ易くなって一方の手で外装シートを簡易に引裂け、よりスピーティーな交換が可能となる。
【0019】
<請求項6記載の発明>
前記接合部が、熱溶着あるいは接着剤により外装シートを構成する複数部材を線状に接合した、請求項1〜5のいずれか1項に記載のパンツ型吸収性物品。
【0020】
(作用効果)
熱溶着あるいは接着剤により線状に外装シートを構成する複数部材が接合されて接合部が形成されることにより、パンツ型吸収性物品の製造に際して接合部を簡易に形成可能となる。
【0021】
<請求項7載の発明>
前記切断容易部が、ミシン目により外装シートを間欠的に切断している、請求項1〜6のいずれか1項に記載のパンツ型吸収性物品。
【0022】
(作用効果)
ミシン目により外装シートを間欠的に切断して切断容易部が形成されることにより、パンツ型吸収性物品の製造に際して切断容易部を簡易に形成可能となる。
【発明の効果】
【0023】
以上のとおり、本発明によれば、おむつ交換に際して、手間を軽減して迅速、かつ、衛生的に交換可能としうる、等の利点がもたらされる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】パンツ型吸収性物品の正面図である。
【図2】展開状態での組み立て図である。
【図3】外装シートの展開状態の平面図である。
【図4】吸収性本体の平面図である。
【図5】図3のA−A断面図である。
【図6】第1の形態のパンツ型吸収性物品の切り裂きを説明する平面図である。
【図7】第2の形態のパンツ型吸収性物品の正面図である。
【図8】第3の形態のパンツ型吸収性物品の正面図である。
【図9】第4の形態のパンツ型吸収性物品の正面図である。
【図10】第5の形態のパンツ型吸収性物品の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の一実施形態について、先ず共通的構成について説明し、次に各種形態の特徴について説明する。
図1は実施形態のパンツ型吸収性物品1の製品状態外観図であり、図2は展開状態での組み立て図である。このパンツ型吸収性物品1(以下、単に物品ともいう。)は、不織布などからなる透液性表面シート11と、ポリエチレン等からなる不透液性バックシート12との間に、綿状パルプなどの吸収体13を介在させた吸収性本体10と、この吸収性本体10の外面側に対して一体的設けられた外装シート20とからなるものである。製造に際しては、外装シート20の上面側(内面側)に対して吸収性本体10の裏面がホットメルト接着剤Gなどによって一体化された後に、吸収性本体10および外装シート20が前後方向に折り重ねられ、その両側部が相互に熱溶着またはホットメルト接着剤などによって接合されることによって、ウエスト開口部である胴部開口36及び左右一対のレッグ開口部である脚部開口38が形成されたパンツ型吸収性物品1となる。
【0026】
以下、吸収性本体10、外装シート20の順に説明する。
(吸収性本体の基本構造)
吸収性本体10は、図4及び図5に示すように、不織布などからなる透液性表面シート11と、ポリエチレン等からなる不透液性バックシート12との間に、綿状パルプなどの吸収体13を介在させた構造とされ、体液を吸収保持するものである。
【0027】
吸収体13の表面側(肌当接面側)を覆う透液性表面シート11としては、有孔または無孔の不織布や多孔性プラスチックシートなどが好適に用いられる。不織布を構成する素材繊維は、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維の他、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維とすることができ、スパンレース法、スパンボンド法、サーマルボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法等の適宜の加工法によって得られた不織布を用いることができる。これらの加工法の内、スパンレース法は柔軟性、ドレープ性に富む点で優れ、サーマルボンド法は嵩高でソフトである点で優れている。透液性表面シート11に多数の透孔を形成した場合には、尿などが速やかに吸収されるようになり、ドライタッチ性に優れたものとなる。透液性表面シート11は、吸収体13の側縁部を巻き込んで吸収体13の裏面側まで延在している。
【0028】
吸収体13の裏面側(非肌当接面側)を覆う不透液性バックシート12は、ポリエチレンまたはポリプロピレンなどの不透液性プラスチックシートが用いられるが、近年はムレ防止の点から透湿性を有するものが好適に用いられる。この遮水・透湿性シートは、たとえばポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン樹脂中に無機充填材を溶融混練してシートを形成した後、一軸または二軸方向に延伸することにより得られる微多孔性シートであり、仮にシート厚が同じであれば無孔シートよりも剛性が低下するため、柔軟性の点で勝るものとなる。
【0029】
吸収体13は、フラッフ状パルプと吸水ポリマーとを成形してなるものが好適に用いられる。吸水性ポリマーは吸収体を構成するパルプ中に例えば粒状粉として混入することができる。パルプとしては、木材から得られる化学パルプ、溶解パルプ等のセルロース繊維や、レーヨン、アセテート等の人工セルロース繊維からなるものが挙げられ、広葉樹パルプよりは繊維長の長い針葉樹パルプの方が機能および価格の面で好適に使用できる。もちろんこれ以外の公知の吸収体も採用することができる。また、吸収体13は、形状及びポリマー保持等のため、必要に応じてクレープ紙等の透液性包装シート14によって包装されている。吸収体13の形状は、図示形態のように背側及び腹側に対して股間部の幅が狭い形状としたり、矩形形状としたりすることができる。
【0030】
一方、吸収性本体10の両側部には脚周りにフィットする立体ギャザーBSが形成されているのが好ましい。この立体ギャザーBSはギャザー不織布15により形成される、ギャザー不織布としては、図5に示されるように、折返しによって二重シートとした不織布が好適に用いられ、透液性表面シート11によって巻き込まれた吸収体13の側縁部をさらにその上側から巻き込んで吸収体13の裏面側まで延在して接着されている。より具体的には、ギャザー不織布15は、吸収性物品1の長手方向中間部では、立体ギャザーBS形成部分を残し、幅方向中間部から吸収体13の裏面側に亘る範囲がホットメルト接着剤等によって接着され、また長手方向前後端部では、幅方向中間部から一方側端縁までの区間が吸収体13の裏面側に亘る範囲で接着されるとともに、立体ギャザーBSを形成する部分を吸収体13の上面部にて折り畳むようにしながらホットメルト接着剤等により接着している。
【0031】
二重シート不織布によって形成されたギャザー不織布15の内部には、起立先端側部分に複数本の糸状弾性伸縮部材16、16…が配設されている。糸状弾性伸縮部材16、16…は、製品状態において、弾性伸縮力により吸収体側縁部より突出する不織布部分を起立させて立体ギャザーBSを形成するためのものである。
【0032】
不透液性バックシート12は、二重シート状のギャザー不織布15の内部まで進入し、図5に示されるように、立体ギャザーBSの下端側において防漏壁を構成するようになっている。かかる不透液性バックシート12としては、排便や尿などの褐色が出ないように不透明のものを用いるのが望ましい。不透明化としては、プラスチック中に、炭酸カルシウム、酸化チタン、酸化亜鉛、ホワイトカーボン、クレイ、タルク、硫酸バリウムなどの顔料や充填材を内添してフィルム化したものが好適に使用される。
【0033】
糸状弾性伸縮部材16としては、通常使用されるスチレン系ゴム、オレフィン系ゴム、ウレタン系ゴム、エステル系ゴム、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリスチレン、スチレンブタジエン、シリコン、ポリエステル等の素材を用いることができる。また、外側から見え難くするため、太さは925dtex以下、テンションは150〜350%、間隔は7.0mm以下として配設するのがよい。なお、糸状弾性伸縮部材に代えて、ある程度の幅を有するテープ状弾性伸縮部材を用いるようにしてもよい。
【0034】
前述のギャザー不織布15を構成する素材繊維も透液性表面シート11と同様に、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、アミド系等の合成繊維の他、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維とすることができ、スパンボンド法、サーマルボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法等の適宜の加工方法に得られた不織布を用いることができるが、特にはムレを防止するために坪量を抑えて通気性に優れた不織布を用いるのがよい。さらにギャザー不織布15については、尿などの透過を防止するとともに、カブレを防止しかつ肌への感触性(ドライ感)を高めるために、シリコン系、パラフィン金属系、アルキルクロミッククロイド系撥水剤などをコーティングした撥水処理不織布を用いるのが望ましい。
【0035】
(外装シートの構造)
外装シート20は、図2及び図3に示されるように、上層不織布20A及び下層不織布20Bからなる2層構造の不織布シートとされ、上層不織布20Aと下層不織布20Bとの間に各種弾性部材が配設され、伸縮性が付与されている。平面形状は、中間両側部に夫々脚部開口38を形成するために形成された凹状の脚回りカットライン29により、全体として擬似砂時計形状をなしている。なお、これら上層不織布20A及び下層不織布20Bは、スパンレース、エアスルー、ポイントボンド、エアレイド、スパンボンド、ニードルパンチ等によりそれぞれ形成され、これら上層不織布20Aと下層不織布20Bとの間に各種弾性部材である糸ゴムを貼り合わせることにしている。
【0036】
特に、図示形態の外装シート20においては、弾性部材として、図3に示される展開形状において、ウエスト開口部回り23に配置されたウエスト部弾性部材24,24…と、腹側部分F及び背側部分Bに、上下方向に間隔をおいて水平方向に沿って配置された複数の腰回り弾性部材群25,25…とを有するとともに、腹側部分F及び背側部分Bのそれぞれにおいて、腰回り弾性部材群25,25…とは別に、腹側部分Fと背側部分Bとを接合する一方側接合縁から股下側に延び、股下側を迂回して腹側部分と背側部分との他方側接合縁に到達するとともに、互いに交差することなく間隔をおいて配置された複数本の湾曲弾性部材群26…、28…を備えている。なお、本外装シート20では、脚回りカットライン29に沿って実質的に連続する、所謂脚回り弾性部材は設けられていない。
【0037】
ウエスト部弾性部材24,24…は、腹側部分Fと背側部分Bとが接合された脇部接合縁21、22の範囲の内、ウエスト開口縁近傍に上下方向に間隔をおいて配設された複数条の糸ゴム状弾性部材であり、身体のウエスト部回りを締め付けるように伸縮力を与えることにより吸収性物品を身体に装着するためのものである。このウエスト部弾性部材24は、図示例では糸ゴムを用いたが、例えばテープ状の伸縮部材を用いてもよい。
【0038】
腰回り弾性部材群25,25…は、脇部接合縁21、22の内、概ね上部から下部までの範囲に亘り、上下方向に間隔をおいて水平方向に沿って配設された糸ゴム状の弾性部材であり、腹側部分F及び背側部分Bの腰回り部分に夫々水平方向の伸縮力を与え、吸収性物品を身体に密着させるためのものである。なお、ウエスト部弾性部材24、24…と腰回り弾性部材群25、25…との境界は必ずしも明確でなくてよい。例えば、腹側部分F及び背側部分Bに上下方向に間隔をおいて水平方向に配置された弾性部材の内、数は特定できなくても、上部側の何本かがウエスト部弾性部材として機能し、残りの弾性部材が腰回り弾性部材として機能していればよい。
【0039】
背側部分Bにおいて、腰回り弾性部材群25,25…とは別に配設された背側湾曲弾性部材群26、26…は、所定の(一方側の脇部接合縁22からほぼ脚回りカットライン29に沿って股下部に至り、股下部を横切った後に反対側の脚回りカットライン29にほぼ沿いながら他方側の脇部接合縁22に到達する)曲線に沿って配置された複数本、図示例では9本の糸ゴム状弾性部材であり、これら背側湾曲弾性部材群26、26…は互いに交差することなく、間隔をおいて配置されている。この背側湾曲弾性部材群26、26…は、2,3本程度の弾性伸縮部材を間隔を密にして実質的に一束として配置されるのではなく、所定の伸縮ゾーンを形成するように所定の間隔を空けて、5本以上、好ましくは7本以上配置される。
【0040】
外装シート20の腹側部分Fにおいて、腰回り弾性部材群25,25…とは別に配設された腹側湾曲弾性部材群28,28…も、所定の(一方側の脇部接合縁21から股下側に至り、股下部を横切った後に他方側の脇部接合縁21に到達する)曲線とともに、交差することなく間隔をおいて配置された複数本の、図示例では9本の糸状弾性部材であり、これら腹側湾曲弾性部材群28,28…は、互いに交差することなく、間隔をおいて配置されている。この腹側湾曲弾性部材群28、28…も、2,3本程度の弾性伸縮部材を間隔を密にして実質的に一束として配置されるのではなく、所定の伸縮ゾーンを形成するように所定の間隔を空けて、5本以上、好ましくは7本以上配置される。
【0041】
また、上記形態例では、腹側部分F及び背側部分Bに配置された腰回り弾性部材群25,25…及び湾曲弾性部材26…、28…は、吸収性本体10を横切る部分を切断し、不連続としているが、吸収性本体10上においても連続させて配置することもできる。弾性部材を吸収性本体上で不連続とすることにより、吸収体13の縮こまりをより防止することができる。
【0042】
上述した外装シート20は、例えば特開平4−28363号公報や、特開平11−332913号公報記載の技術により製造することができる。また、湾曲弾性部材26…、28…を吸収性本体10上で切断し不連続化するには、特開2002−35029号公報、特開2002−178428号公報及び特開2002−273808号公報に記載される切断方法が好適に採用される。
【0043】
(第1の形態)
特徴的には、図1にも示されるように、外装シート20における腹側部分Fには、胴部開口36から脚部開口38にかけてミシン目であって切り込み部分とされる切断容易部40が設けられている。そして、この内の主切断容易部40Aの下端部が2つの脚部開口38にそれぞれ達するように、この主切断容易部40Aは逆U字形にそれぞれ形成されている。また、逆U字形の主切断容易部40Aの頂部に向かって胴部開口36からミシン目である2本の上側切断容易部40Bも相互に平行で垂直方向に沿って形成されている。このため、ミシン目により外装シート20を間欠的に切断していることから、この主切断容易部40A及び上側切断容易部40Bの部分で外装シート20の切断が容易になっている。
【0044】
この逆U字形に形成される主切断容易部40Aの外周側には、同じく腹側部分Fにおける胴部開口36から脚部開口38にかけて外装シート20を構成する複数部材である上層不織布20A、下層不織布20B及び各種弾性部材を相互に接合する主接合部42Aが、配置されている。これに伴い、この主接合部42Aも逆U字形に形成されていて、この主接合部42Aの下端部も2つの脚部開口38にそれぞれ達している。このため、この主接合部42Aが、主切断容易部40Aの外周側を囲むように、主切断容易部40Aの外周側に隣り合って位置していることになる。
【0045】
他方、逆U字形の主接合部42Aの頂部に向かって胴部開口36から上側接合部42Bが、2本の上側切断容易部40Bの間に垂直方向に沿って形成されていて、この上側接合部42Bも外装シート20を構成する上記複数部材間を相互に接合している。そして、接合部42を構成するこれら主接合部42A及び上側接合部42Bは、熱溶着により線状に外装シート20を構成する複数部材を接合することが考えられるが、接着剤による接着による接合としても良い。
【0046】
おむつ交換に際しては、一方の手で胴部開口36近傍のウエスト部を持つとともに、他方の手で吸収性本体10の上端部に対応する外装シート20の部分を持ち、吸収性本体10の上端部の対応するする箇所を下に引いて、まず主切断容易部40Aのミシン目を切り離(図6に一部切り離した状態を示す)した後に、上側切断容易部40Bのミシン目を切り離すようにする。
【0047】
したがって、おむつ交換の際に外装シート20に力を加えることにより、主切断容易部40Aに沿って外装シート20が引き裂かれるものの、引き裂き部分が本来的に切断されるべき主切断容易部40Aから外れようとした場合でも、主接合部42Aが主切断容易部40Aに隣り合って位置していることから、この主接合部42Aで引き裂き部分がはずれることが防止されるので、主切断容易部40Aに沿って最後まで外装シート20が引き裂かれて、スピーディーな交換を妨げることがない。また、上側切断容易部40Bを切断する場合にも、上側接合部42Bが隣り合って位置していることから、同様に上側切断容易部40Bに沿って最後まで外装シート20が引き裂かれることになる。
【0048】
つまり、本態様によれば、腹側部分Fに切断容易部40を配置したことで、おむつ交換する際に、単に切断容易部40に力を加えて、この部分を引き裂くことが可能となり、パンツ型吸収性物品1を身体から簡易に取り外すことができる。このため、交換の手間を軽減して迅速に交換可能になるとともに、胴回り部の両脇部分を破る場合と異なり吸収性本体10が外装シート20から落ちることもなくなり、パンツ型吸収性物品1を衛生的に交換可能になる。
【0049】
以上より、本態様によれば、おむつ交換に際して、交換の手間を軽減して迅速に交換可能とするとともに衛生的に交換可能となり、着用性が改善される他、パンツ型吸収性物品1の製造に際しては、従来の一般的な構造に切断容易部40及び接合部42を付加するだけなので、製造コストが大幅に増大することもない。
【0050】
(第2の形態)
上記第1の形態では、主切断容易部40Aおよび上側切断容易部40Bからなる切断容易部40が形成されるとともに、主接合部42Aおよび上側接合部42Bからなる接合部42が形成されている。本形態でもこれらが同様に形成されているものの、図7に示すように外装シート20の主切断容易部40Aと上側切断容易部40Bとの交点の近傍部分であって、主接合部42Aと主切断容易部40Aとの間に、切り込みとされる切込部44が設けられた構造とされている。
【0051】
したがって、本形態のように、主切断容易部40Aと上側切断容易部40Bとの間の交点の近傍部分に切り込みを入れたことで、初期の切り離し易さが向上するようになった。
【0052】
(第3の形態)
上記第1の形態では、主切断容易部40A及び主接合部42Aが形成されているが、本形態では、図8に示すように、主接合部42Aの外周側に、同様にU字形にミシン目で形成された外側切断容易部40Cが配置されており、この外側切断容易部40Cのさらに外周側に外側接合部42Cが形成された構造とされている。
【0053】
したがって、本形態のように二重構造としたことで、仮に外装シート20が主接合部42Aを越えて脇部方向へ破れたとしても、外側切断容易部40C及び外側接合部42Cが存在することで、脚部開口38方向に沿って確実に破れるようになる。
【0054】
(第4の形態)
上記第1の形態では、切断容易部40及び接合部42が形成されていて、本形態でもこれらが同様に形成されているものの、本形態では、上側切断容易部40Bのミシン目に外部から力が加わらないようにしたものである。具体的には、図9に示すように、上側切断容易部40Bの外側に予備接合部42Dを上記上側接合部42Bと同様に設けるとともに、その上に後処理テープ46を貼り付けてこの後処理テープ46で補強を図ることで、上側切断容易部40Bに外部から力が加わらないようにして、不必要にこの上側切断容易部40Bが切断しないようにした。
【0055】
この結果、上記のように補強しない場合、胴部開口36近傍のウエスト部付近を持って引き上げた場合、ウエスト部の上側切断容易部40Bのミシン目は破れやすいものの、図9のような構造とすることで、パンツ型吸収性物品1の引き上げ時の破れにくさが向上する。ただし、おむつ交換時には、後処理テープ44を外す動作とともに、上側切断容易部40Bが切断されるので、おむつ交換に支障はない。
【0056】
(第5の形態)
本形態でも、上記第1の形態と同様に主切断容易部40Aおよび上側切断容易部40Bからなる切断容易部40が形成されるとともに、主接合部42Aおよび上側接合部42Bからなる接合部42が形成されているが、本形態では、図10に示すように、主切断容易部40Aおよび主接合部42Aが逆U字形でなく、各ミシン目及び接合線を直線的に繋ぐとともに、交差部分で直角に曲がる構造とされている。このような構造としても逆U字形の構造と同様に、おむつ交換に際して、交換の手間を軽減して迅速に交換可能とするとともに衛生的に交換可能となり、着用性が改善される。
【0057】
なお、上記各態様において、接合部42は、熱溶着により線状に溶着することが考えられるが、点状に間欠的に溶着した形としても良い。また、切断容易部40は、ミシン目により形成することが考えられるが、他の手段である外装シート20に薄く切断線を形成しても良い。他方、接合部42及び切断容易部40とされるミシン目を外装シート20に形成する際には、溶着箇所付近となる部分の上層不織布20Aと下層不織布20Bとの間に挟まれた各種弾性部材をホットメルト接着剤で一体化するように固定してから、熱接着して接合部42を形成するとともにミシン目を形成することが考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明は、パンツ型吸収性物品に適用できるものである。
【符号の説明】
【0059】
1…吸収性物品、10…吸収性本体、11…透液性表面シート、12…不透液性バックシート、13…吸収体、14…クレープ紙、15…ギャザー不織布、16…糸状弾性伸縮部材、20…外装シート、29…脚回りカットライン、36…胴部開口、38…脚部開口、40…切断容易部、40A…主切断容易部、40B…上側切断容易部、42…接合部、42A…主接合部、42B…上側接合部、44…切込部、F…腹側部分、B…背側部分、BS…立体ギャザー、M…股下側部分。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数部材が積層されるとともに、腹側部分、背側部分、およびこれらの間で下部に位置する股下部分を有する外装シートと、
吸収体を含む吸収性本体と、
を備え、
前記外装シートが部分的に接合されて上部に胴部開口および下部に2つの脚部開口が設けられるとともに、前記外装シートの内面側における少なくとも前記股下部分に前記吸収性本体が固定された、パンツ型吸収性物品において、
腹側部分における前記胴部開口から前記脚部開口にかけた前記外装シートの部分を切断容易にした切断容易部と、
切断容易部に隣り合いつつ前記胴部開口から前記脚部開口にかけて、前記外装シートを構成する複数部材間を接合する接合部と、
を有したことを特徴とするパンツ型吸収性物品。
【請求項2】
前記切断容易部が、主切断容易部及び上側切断容易部を有し、
主切断容易部の下端部が2つの前記脚部開口にそれぞれ達するように、主切断容易部が逆U字形に形成されるとともに、主切断容易部の頂部に向かって前記胴部開口から上側切断容易部が形成される、請求項1記載のパンツ型吸収性物品。
【請求項3】
前記接合部が、主接合部及び上側接合部を有し、
主接合部の下端部が2つの脚部開口にそれぞれ達するように、主接合部が逆U字形に形成されるとともに、主接合部の頂部に向かって胴部開口から上側接合部が形成される、請求項1または2記載のパンツ型吸収性物品。
【請求項4】
逆U字形に形成される主切断容易部の外側を囲む位置に前記主接合部が配置された、請求項3記載のパンツ型吸収性物品。
【請求項5】
前記外装シートの主切断容易部と上側切断容易部との交点の近傍部分に、切り込みとされる切込部を設けた、請求項2〜4のいずれか1項に記載のパンツ型吸収性物品。
【請求項6】
前記接合部が、熱溶着あるいは接着剤により外装シートを構成する複数部材を線状に接合した、請求項1〜5のいずれか1項に記載のパンツ型吸収性物品。
【請求項7】
前記切断容易部が、ミシン目により外装シートを間欠的に切断している、請求項1〜6のいずれか1項に記載のパンツ型吸収性物品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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