パンツ型吸収性物品
【課題】製造コストを増大させたり、着用時の手間が増えたりすることなく、着用時に立体ギャザーに脚が引っかからないように脚を通す部分を形成して、着用性を改善する、等の利点がもたらされる。
【解決手段】外装シート20における腹側部分Fと背側部分Bとの間を熱溶着により点状に接合した接合部40が、胴部開口36側から股下側部分M側に存在する2つの脚部開口38にそれぞれ向かって直線状に2本延びる構造とされる。
【解決手段】外装シート20における腹側部分Fと背側部分Bとの間を熱溶着により点状に接合した接合部40が、胴部開口36側から股下側部分M側に存在する2つの脚部開口38にそれぞれ向かって直線状に2本延びる構造とされる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に着用性を向上させたパンツ型吸収性物品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近時、大人の失禁に対応するものとして、外装シート上に吸収体を配置し、この吸収体で尿を吸収する構造のパンツ型吸収性物品であるパンツ型おむつが提案されている。そして、図9から図11に示すような従来のパンツ型おむつ101の多くは、吸収体102の端部に立体ギャザー102Aを設けることで、使用時の尿漏れを抑える仕様としている。
この一方、装着者が高齢者等の場合は脚の可動範囲が狭く、図12に示すように着用時にパンツ型おむつ101の胴部開口136側から脚部開口138に脚Aを通過させる際に、脚Aの指先AUがこの立体ギャザー102Aに引っ掛かるおそれがあることから、着用性の面で改善が求められていた。
【0003】
これに対して、着用時に吸収体の横方向の広がりが抑えるために、図2等に吸収性本体20に切離部24、25やノッチ部26aを設けた構造を開示した特許文献1が知られている。この特許文献1によれば、吸収性本体20の横方向の広がりが着用時に抑えられることで、通常のパンツ型おむつよりは脚を通し易いようになっている。
【0004】
また、特許文献2では、着用物品の着用時における胴周りの直径が、左右一対の脚周り開口部上端における直径よりも大きくされているだけでなく、図1等に示されるように延出部分17及び止着部14を有して脚周りのみを接着テープで止める構造とすることで、着用時の利便性を向上し、着用後にこれら延出部分17及び止着部14を用いて、装着者にこの着用物品をフィットさせるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−162338号公報
【特許文献2】特開2003−79665号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に開示されたものでは、吸収性本体20に切離部24、25やノッチ部26aを設けるのに伴い、吸収性本体20が複雑な構造となって、製造コストが増大していた。また、特許文献2に開示されたものでは、脚周りのみを接着テープで事後的に止めることで脚周り部分とされるレッグ開口部を広げるなどしているが、延出部分17及び止着部14を用いていることから、余分な資材が必要となって製造コストが増大するとともに、着用時に接着テープで止める手間が増えることになる。
【0007】
そこで本発明の主たる課題は、製造コストを増大させたり、着用時の手間が増えたりすることなく、着用時に立体ギャザーに脚が引っかからないように脚を通す部分を形成して、着用性を改善した技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決した本発明は次記の通りである。
<請求項1記載の発明>
腹側部分、背側部分、およびこれらの間の下部に位置する股下部分を有する外装シートと、
吸収体を含むとともに端部に立体ギャザーを有した吸収性本体と、
を備え、
前記外装シートが部分的に接合されて上部に胴部開口および下部に2つの脚部開口が設けられるとともに、前記外装シートの内面側における少なくとも前記股下部分に前記吸収性本体が固定された、パンツ型吸収性物品において、
前記胴部開口から2つの前記脚部開口に繋がる部分を残し、前記外装シートにおける前記腹側部分と前記背側部分との間を前記胴部開口側から前記股下部側に向かって接合する接合部を有した、ことを特徴とするパンツ型吸収性物品。
【0009】
(作用効果)
この発明では、胴部開口から脚部開口に繋がる部分を残して、接合部により、外装シートにおける腹側部分と背側部分との間を胴部開口側から股下部分側に向かって接合したので、着用時に装着者の脚が、接合した接合部に沿って胴部開口から脚部開口に確実に案内されることになる。
【0010】
したがって、本発明によれば、腹側部分と背側部分との間を胴部開口側から股下部分側にわたって接合部で単に接合するだけなので、吸収性本体が複雑な構造となって製造コストが増大したり、あるいは接着テープで脚周り部分を止めるのに伴い余分な資材を必要として製造コストが増大したり、着用時の手間が増えることがない。これに伴い、吸収体本体が特殊な構造とされたり、着用物品の形状を大きく変えたりする特許文献1、2と異なって、従来より用いられているパンツ型吸収性物品にも容易に適用することができる。
【0011】
以上より、本発明によれば、製造コストを増大させたり、着用時の手間が増えたりすることなく、着用時に吸収性本体の端部に配置されている立体ギャザーに脚が引っかからずに脚が通ることになり、着用性が改善される。他方、接合部を熱による溶着や接着剤による接着により部分的に形成すれば、着用時において装着者の下半身により腹側部分と背側部分との間を押し広げる力が加わることで、この接合部が容易にはずれることになって、着用に支障はない。
【0012】
<請求項2記載の発明>
前記接合部が、2つの前記脚部開口のいずれか一方のみに合わせて直線状に1本延びている、請求項1記載のパンツ型吸収性物品。
【0013】
(作用効果)
接合部が直線上に1本延びるという構造なので、接合部の構造がより単純になって製造コストが一層低減される。また、パンツ型吸収性物品の着用時には、装着者が高齢者であっても、一方の脚部開口に装着者の脚が通過すれば、他方の脚部開口には一般的に安定的に脚を通過させることができるので、問題が生じることも少ない。
【0014】
<請求項3記載の発明>
前記接合部が、2つの前記脚部開口にそれぞれ合わせて直線状に2本延びている、請求項1記載のパンツ型吸収性物品。
【0015】
(作用効果)
接合部が、2つの脚部開口にそれぞれ向かって直線上に2本延びるという構造なので、装着者の両脚が立体ギャザーに確実に引っかからないようになるので、両脚がそれぞれスムーズに通過してより着用性が高まるようになる。
【0016】
<請求項4記載の発明>
前記接合部が、前記胴部開口側から前記吸収性本体に向かって一旦延びるとともに、前記吸収性本体の部分で2本に別れて2つの前記脚部開口にそれぞれ合わせて延びている、請求項1記載のパンツ型吸収性物品。
【0017】
(作用効果)
最低限必要な部分とされる吸収性本体の端部に配置されている立体ギャザーに対応して、2本の接合部を設けることでも、確実に着用性が高まるようになる。
【0018】
<請求項5記載の発明>
前記接合部が、熱溶着により点状に前記腹側部分と前記背側部分との間を接合した、請求項1〜4のいずれか1項に記載のパンツ型吸収性物品。
【0019】
(作用効果)
熱溶着により点状に外装シートが溶着されて接合部が形成されることにより、着用時において容易にこの接合部がはずれるので、接合部によりかえって着用が妨げられることもない。
【発明の効果】
【0020】
以上のとおり、本発明によれば、製造コストを増大させたり、着用時の手間が増えたりすることなく、着用時に立体ギャザーに脚が引っかからないように脚を通す部分を形成して、着用性を改善する、等の利点がもたらされる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】パンツ型吸収性物品の正面図である。
【図2】展開状態での組み立て図である。
【図3】外装シートの展開状態の平面図である。
【図4】吸収性本体の平面図である。
【図5】図3のA−A断面図である。
【図6】第1の形態のパンツ型吸収性物品の平面図である。
【図7】第1の形態のパンツ型吸収性物品に装着者の脚が挿入される際の説明図である。
【図8】第2の形態のパンツ型吸収性物品の正面図である。
【図9】従来技術のパンツ型吸収性物品の正面図である。
【図10】従来技術のパンツ型吸収性物品の平面図である。
【図11】従来技術のパンツ型吸収性物品の側面図である。
【図12】従来技術のパンツ型吸収性物品に装着者の脚が挿入される際の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の一実施形態について、先ず共通的構成について説明し、次に各種形態の特徴について説明する。
図1は実施形態のパンツ型吸収性物品1の製品状態外観図であり、図2は展開状態での組み立て図である。このパンツ型吸収性物品1(以下、単に物品ともいう。)は、不織布などからなる透液性表面シート11と、ポリエチレン等からなる不透液性バックシート12との間に、綿状パルプなどの吸収体13を介在させた吸収性本体10と、この吸収性本体10の外面側に対して一体的設けられた外装シート20とからなるものである。製造に際しては、外装シート20の上面側(内面側)に対して吸収性本体10の裏面がホットメルト接着剤Gなどによって一体化された後に、吸収性本体10および外装シート20が前後方向に折り重ねられ、その両側部が相互に熱溶着またはホットメルト接着剤などによって接合されることによって、ウエスト開口部である胴部開口36及び左右一対のレッグ開口部である脚部開口38が形成されたパンツ型吸収性物品1となる。
【0023】
以下、吸収性本体10、外装シート20の順に説明する。
(吸収性本体の基本構造)
吸収性本体10は、図4及び図5に示すように、不織布などからなる透液性表面シート11と、ポリエチレン等からなる不透液性バックシート12との間に、綿状パルプなどの吸収体13を介在させた構造とされ、体液を吸収保持するものである。
【0024】
吸収体13の表面側(肌当接面側)を覆う透液性表面シート11としては、有孔または無孔の不織布や多孔性プラスチックシートなどが好適に用いられる。不織布を構成する素材繊維は、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維の他、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維とすることができ、スパンレース法、スパンボンド法、サーマルボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法等の適宜の加工法によって得られた不織布を用いることができる。これらの加工法の内、スパンレース法は柔軟性、ドレープ性に富む点で優れ、サーマルボンド法は嵩高でソフトである点で優れている。透液性表面シート11に多数の透孔を形成した場合には、尿などが速やかに吸収されるようになり、ドライタッチ性に優れたものとなる。透液性表面シート11は、吸収体13の側縁部を巻き込んで吸収体13の裏面側まで延在している。
【0025】
吸収体13の裏面側(非肌当接面側)を覆う不透液性バックシート12は、ポリエチレンまたはポリプロピレンなどの不透液性プラスチックシートが用いられるが、近年はムレ防止の点から透湿性を有するものが好適に用いられる。この遮水・透湿性シートは、たとえばポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン樹脂中に無機充填材を溶融混練してシートを形成した後、一軸または二軸方向に延伸することにより得られる微多孔性シートであり、仮にシート厚が同じであれば無孔シートよりも剛性が低下するため、柔軟性の点で勝るものとなる。
【0026】
吸収体13は、フラッフ状パルプと吸水ポリマーとを成形してなるものが好適に用いられる。吸水性ポリマーは吸収体を構成するパルプ中に例えば粒状粉として混入することができる。パルプとしては、木材から得られる化学パルプ、溶解パルプ等のセルロース繊維や、レーヨン、アセテート等の人工セルロース繊維からなるものが挙げられ、広葉樹パルプよりは繊維長の長い針葉樹パルプの方が機能および価格の面で好適に使用できる。もちろんこれ以外の公知の吸収体も採用することができる。また、吸収体13は、形状及びポリマー保持等のため、必要に応じてクレープ紙等の透液性包装シート14によって包装されている。吸収体13の形状は、図示形態のように背側及び腹側に対して股間部の幅が狭い形状としたり、矩形形状としたりすることができる。
【0027】
一方、吸収性本体10の両側部には脚周りにフィットする立体ギャザーBSが形成されているのが好ましい。この立体ギャザーBSはギャザー不織布15により形成される、ギャザー不織布としては、図5に示されるように、折返しによって二重シートとした不織布が好適に用いられ、透液性表面シート11によって巻き込まれた吸収体13の側縁部をさらにその上側から巻き込んで吸収体13の裏面側まで延在して接着されている。より具体的には、ギャザー不織布15は、吸収性物品1の長手方向中間部では、立体ギャザーBS形成部分を残し、幅方向中間部から吸収体13の裏面側に亘る範囲がホットメルト接着剤等によって接着され、また長手方向前後端部では、幅方向中間部から一方側端縁までの区間が吸収体13の裏面側に亘る範囲で接着されるとともに、立体ギャザーBSを形成する部分を吸収体13の上面部にて折り畳むようにしながらホットメルト接着剤等により接着している。
ただし、折返しによって二重シートとした不織布を用いた構造の立体ギャザーBSの替りに、この立体ギャザーBSを折り返しの無い構造としても良い。
【0028】
二重シート不織布によって形成されたギャザー不織布15の内部には、起立先端側部分に複数本の糸状弾性伸縮部材16、16…が配設されている。糸状弾性伸縮部材16、16…は、製品状態において、弾性伸縮力により吸収体側縁部より突出する不織布部分を起立させて立体ギャザーBSを形成するためのものである。
【0029】
不透液性バックシート12は、二重シート状のギャザー不織布15の内部まで進入し、図5に示されるように、立体ギャザーBSの下端側において防漏壁を構成するようになっている。かかる不透液性バックシート12としては、排便や尿などの褐色が出ないように不透明のものを用いるのが望ましい。不透明化としては、プラスチック中に、炭酸カルシウム、酸化チタン、酸化亜鉛、ホワイトカーボン、クレイ、タルク、硫酸バリウムなどの顔料や充填材を内添してフィルム化したものが好適に使用される。
【0030】
糸状弾性伸縮部材16としては、通常使用されるスチレン系ゴム、オレフィン系ゴム、ウレタン系ゴム、エステル系ゴム、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリスチレン、スチレンブタジエン、シリコン、ポリエステル等の素材を用いることができる。また、外側から見え難くするため、太さは925dtex以下、テンションは150〜350%、間隔は7.0mm以下として配設するのがよい。なお、糸状弾性伸縮部材に代えて、ある程度の幅を有するテープ状弾性伸縮部材を用いるようにしてもよい。
【0031】
前述のギャザー不織布15を構成する素材繊維も透液性表面シート11と同様に、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、アミド系等の合成繊維の他、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維とすることができ、スパンボンド法、サーマルボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法等の適宜の加工方法に得られた不織布を用いることができるが、特にはムレを防止するために坪量を抑えて通気性に優れた不織布を用いるのがよい。さらにギャザー不織布15については、尿などの透過を防止するとともに、カブレを防止しかつ肌への感触性(ドライ感)を高めるために、シリコン系、パラフィン金属系、アルキルクロミッククロイド系撥水剤などをコーティングした撥水処理不織布を用いるのが望ましい。
【0032】
(外装シートの構造)
外装シート20は、図2及び図3に示されるように、上層不織布20A及び下層不織布20Bからなる2層構造の不織布シートとされ、上層不織布20Aと下層不織布20Bとの間に各種弾性部材が配設され、伸縮性が付与されている。平面形状は、中間両側部に夫々脚部開口38を形成するために形成された凹状の脚回りカットライン29により、全体として擬似砂時計形状をなしている。
【0033】
特に、図示形態の外装シート20においては、弾性部材として、図3に示される展開形状において、ウエスト開口部回り23に配置されたウエスト部弾性部材24,24…と、腹側部分F及び背側部分Bに、上下方向に間隔をおいて水平方向に沿って配置された複数の腰回り弾性部材群25,25…とを有するとともに、腹側部分F及び背側部分Bのそれぞれにおいて、腰回り弾性部材群25,25…とは別に、腹側部分Fと背側部分Bとを接合する一方側接合縁から股下側に延び、股下側を迂回して腹側部分と背側部分との他方側接合縁に到達するとともに、互いに交差することなく間隔をおいて配置された複数本の湾曲弾性部材群26…、28…を備えている。なお、本外装シート20では、脚回りカットライン29に沿って実質的に連続する、所謂脚回り弾性部材は設けられていない。
【0034】
ウエスト部弾性部材24,24…は、腹側部分Fと背側部分Bとが接合された脇部接合縁21、22の範囲の内、ウエスト開口縁近傍に上下方向に間隔をおいて配設された複数条の糸ゴム状弾性部材であり、身体のウエスト部回りを締め付けるように伸縮力を与えることにより吸収性物品を身体に装着するためのものである。このウエスト部弾性部材24は、図示例では糸ゴムを用いたが、例えばテープ状の伸縮部材を用いてもよい。
【0035】
腰回り弾性部材群25,25…は、脇部接合縁21、22の内、概ね上部から下部までの範囲に亘り、上下方向に間隔をおいて水平方向に沿って配設された糸ゴム状の弾性部材であり、腹側部分F及び背側部分Bの腰回り部分に夫々水平方向の伸縮力を与え、吸収性物品を身体に密着させるためのものである。なお、ウエスト部弾性部材24、24…と腰回り弾性部材群25、25…との境界は必ずしも明確でなくてよい。例えば、腹側部分F及び背側部分Bに上下方向に間隔をおいて水平方向に配置された弾性部材の内、数は特定できなくても、上部側の何本かがウエスト部弾性部材として機能し、残りの弾性部材が腰回り弾性部材として機能していればよい。
【0036】
背側部分Bにおいて、腰回り弾性部材群25,25…とは別に配設された背側湾曲弾性部材群26、26…は、所定の(一方側の脇部接合縁22からほぼ脚回りカットライン29に沿って股下部に至り、股下部を横切った後に反対側の脚回りカットライン29にほぼ沿いながら他方側の脇部接合縁22に到達する)曲線に沿って配置された複数本、図示例では9本の糸ゴム状弾性部材であり、これら背側湾曲弾性部材群26、26…は互いに交差することなく、間隔をおいて配置されている。この背側湾曲弾性部材群26、26…は、2,3本程度の弾性伸縮部材を間隔を密にして実質的に一束として配置されるのではなく、所定の伸縮ゾーンを形成するように所定の間隔を空けて、5本以上、好ましくは7本以上配置される。
【0037】
外装シート20の腹側部分Fにおいて、腰回り弾性部材群25,25…とは別に配設された腹側湾曲弾性部材群28,28…も、所定の(一方側の脇部接合縁21から股下側に至り、股下部を横切った後に他方側の脇部接合縁21に到達する)曲線とともに、交差することなく間隔をおいて配置された複数本の、図示例では9本の糸状弾性部材であり、これら腹側湾曲弾性部材群28,28…は、互いに交差することなく、間隔をおいて配置されている。この腹側湾曲弾性部材群28、28…も、2,3本程度の弾性伸縮部材を間隔を密にして実質的に一束として配置されるのではなく、所定の伸縮ゾーンを形成するように所定の間隔を空けて、5本以上、好ましくは7本以上配置される。
【0038】
また、上記形態例では、腹側部分F及び背側部分Bに配置された腰回り弾性部材群25,25…及び湾曲弾性部材26…、28…は、吸収性本体10を横切る部分を切断し、不連続としているが、吸収性本体10上においても連続させて配置することもできる。弾性部材を吸収性本体上で不連続とすることにより、吸収体13の縮こまりをより防止することができる。
【0039】
上述した外装シート20は、例えば特開平4−28363号公報や、特開平11−332913号公報記載の技術により製造することができる。また、湾曲弾性部材26…、28…を吸収性本体10上で切断し不連続化するには、特開2002−35029号公報、特開2002−178428号公報及び特開2002−273808号公報に記載される切断方法が好適に採用される。
【0040】
(第1の形態)
特徴的には、図1にも示されるように、外装シート20における腹側部分Fと背側部分Bとの間を熱溶着により点状に接合した接合部40が、胴部開口36側から股下側部分M側に存在する2つの脚部開口38にそれぞれ向かって直線状に2本延びている。本形態では、このように接合部40が、外装シート20における腹側部分Fと背側部分Bとの間を部分的に接合することで、胴部開口36から2つの脚部開口38に繋がる装着者の脚が通過する部分を残した形で、パンツ型吸収性物品1が形成されている。
【0041】
したがって、図6に示すようにこのパンツ型吸収性物品1を上部から見た場合、2つの脚部開口38のみが視認できるので、図7に示すように着用時に装着者の脚Aの指先AUが、腹側部分Fと背側部分Bとの間を接合した接合部40に沿って矢印Sに沿って案内されて、吸収性本体10の立体ギャザーBSに脚が引っかからないようになる。この際、本形態では、接合部40が胴部開口36側から2つの脚部開口38にそれぞれ向かって斜めに直線状に2本延びるという構造なので、この接合部40により、2本の脚がそれぞれ案内されつつ挿入されて、装着者の両脚が立体ギャザーBSに確実に引っかからないようになるのに伴い、両脚に対してより着用性が高まるようになる。
【0042】
なお、接合部40が2つの脚部開口38のいずれか一方のみに向かって直線状に1本延びる構造としても良い。このような構造とすれば、接合部40の構造がより単純になってパンツ型吸収性物品1の製造コストが一層低減される。また、この場合におけるパンツ型吸収性物品1の着用時には、装着者が高齢者であっても、一方の脚部開口38に装着者の脚が通過すれば、他方の脚部開口38には一般的に脚を安定的に通過させることができるので、問題が生じることも少ない。
【0043】
また、腹側部分Fと背側部分Bとの間を接合部40で単に接合するだけなので、吸収性本体10が複雑な構造となって製造コストが増大したり、あるいは接着テープで脚周り部分を止めるのに伴い余分な資材を必要として製造コストが増大したり、着用時の手間が増えることがない。
【0044】
以上より、本形態によれば、製造コストを増大させたり、着用時の手間が増えたりすることなく、着用時に吸収性本体10の端部に配置されている立体ギャザーBSに脚が引っかからずに脚が通ることになり、着用性が改善される。
【0045】
他方、接合部40を熱溶着により点状に部分的に接着したので、着用時において装着者の下半身により腹側部分Fと背側部分Bとの間を押し広げる力が加わるだけで、接合部40が容易にはずれることになり、接合部40によりかえって着用が妨げられることもない。この際、接合部40とされた部分は不織布が溶着されているので、引き延ばされるのに伴い、溶着された部分は装着者の体から逃げるようになり、装着者の体に直接接することもない。
【0046】
(第2の形態)
上記第1の形態では、接合部40が胴部開口36側から股下側部分M側に存在する2つの脚部開口38にそれぞれ向かって直線状に2本延びているが、本形態では、図8に示すように接合部40が胴部開口36側から吸収性本体10に向かって垂直に延びるとともに、この吸収性本体10の部分で2本に別れて、接合部40が2つの脚部開口38にそれぞれ向かって延びる構造とされている。
【0047】
したがって、本形態のように、最低限必要な部分とされる吸収性本体10の端部に配置されている立体ギャザーBSに沿って接合部40を設けることでも、確実に着用性が高まるようになる。この際、接合部40は、吸収性本体10の外側とされる外装シート20の腹側部分Fと背側部分Bとの間を接合する形としても良く、また、吸収性本体10の端部に沿って吸収性本体10上で接合しても良い。
【0048】
なお、上記各態様において、接合部40は、熱溶着により点状に部分的に接着した形としたが、接着剤により接着したり、超音波、ニードル等により接着しても良く、また、着用時に容易に剥がれるのであれば、点状とする替りに直線としたり、より装着者の脚がより通過しやすいような曲線状に接合部40を形成したりしても良い。
【0049】
さらに、上記形態において、外装シート20が上層不織布20A及び下層不織布20Bからなる2層構造の不織布シートとされているが、内側とされて装着者の体に触れる上層不織布20Aの組成と外側とされて装着者の体に触れない下層不織布20Bの組成とで、融点に差異をつけるために組成を相違させることが考えられる。このようにすることで、熱溶着時において、上層不織布20Aのみが接着され、下層不織布20Bは溶着されないようにすることができ、これに伴って下層不織布20Bには穴が開かないようになって、外観が向上する。具体的には、上層不織布20Aとしてポリエチレンとポリプロピレンとを混合(PE/PP)した不織布を用い、下層不織布20Bとしてポリプロピレン(PP)単体の不織布を用いることが考えられる。
【0050】
他方、上記各態様のパンツ型吸収性物品1を上部から見た場合、2つの脚部開口38のみが視認でき、立体ギャザーBSに脚がかからないようになるが、2つの脚部開口38の周りを着色することにより視認性が一層向上して、より着用性が高まることになる。
さらに、上記各態様において接合部の接合強度を調整することにより、パンツ型吸収性物品の着用に伴う引き上げ時に接合部分を剥がすようにしたが、腹側部分と背側部分との間を引っ張って、接合部分を剥がす用にしても良い。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明は、パンツ型吸収性物品に適用できるものである。
【符号の説明】
【0052】
1…吸収性物品、10…吸収性本体、11…透液性表面シート、12…不透液性バックシート、13…吸収体、14…クレープ紙、15…ギャザー不織布、16…糸状弾性伸縮部材、20…外装シート、29…脚回りカットライン、36…胴部開口、38…脚部開口、40…接合部、F…腹側部分、B…背側部分、BS…立体ギャザー、M…股下側部分。
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に着用性を向上させたパンツ型吸収性物品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近時、大人の失禁に対応するものとして、外装シート上に吸収体を配置し、この吸収体で尿を吸収する構造のパンツ型吸収性物品であるパンツ型おむつが提案されている。そして、図9から図11に示すような従来のパンツ型おむつ101の多くは、吸収体102の端部に立体ギャザー102Aを設けることで、使用時の尿漏れを抑える仕様としている。
この一方、装着者が高齢者等の場合は脚の可動範囲が狭く、図12に示すように着用時にパンツ型おむつ101の胴部開口136側から脚部開口138に脚Aを通過させる際に、脚Aの指先AUがこの立体ギャザー102Aに引っ掛かるおそれがあることから、着用性の面で改善が求められていた。
【0003】
これに対して、着用時に吸収体の横方向の広がりが抑えるために、図2等に吸収性本体20に切離部24、25やノッチ部26aを設けた構造を開示した特許文献1が知られている。この特許文献1によれば、吸収性本体20の横方向の広がりが着用時に抑えられることで、通常のパンツ型おむつよりは脚を通し易いようになっている。
【0004】
また、特許文献2では、着用物品の着用時における胴周りの直径が、左右一対の脚周り開口部上端における直径よりも大きくされているだけでなく、図1等に示されるように延出部分17及び止着部14を有して脚周りのみを接着テープで止める構造とすることで、着用時の利便性を向上し、着用後にこれら延出部分17及び止着部14を用いて、装着者にこの着用物品をフィットさせるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−162338号公報
【特許文献2】特開2003−79665号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に開示されたものでは、吸収性本体20に切離部24、25やノッチ部26aを設けるのに伴い、吸収性本体20が複雑な構造となって、製造コストが増大していた。また、特許文献2に開示されたものでは、脚周りのみを接着テープで事後的に止めることで脚周り部分とされるレッグ開口部を広げるなどしているが、延出部分17及び止着部14を用いていることから、余分な資材が必要となって製造コストが増大するとともに、着用時に接着テープで止める手間が増えることになる。
【0007】
そこで本発明の主たる課題は、製造コストを増大させたり、着用時の手間が増えたりすることなく、着用時に立体ギャザーに脚が引っかからないように脚を通す部分を形成して、着用性を改善した技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決した本発明は次記の通りである。
<請求項1記載の発明>
腹側部分、背側部分、およびこれらの間の下部に位置する股下部分を有する外装シートと、
吸収体を含むとともに端部に立体ギャザーを有した吸収性本体と、
を備え、
前記外装シートが部分的に接合されて上部に胴部開口および下部に2つの脚部開口が設けられるとともに、前記外装シートの内面側における少なくとも前記股下部分に前記吸収性本体が固定された、パンツ型吸収性物品において、
前記胴部開口から2つの前記脚部開口に繋がる部分を残し、前記外装シートにおける前記腹側部分と前記背側部分との間を前記胴部開口側から前記股下部側に向かって接合する接合部を有した、ことを特徴とするパンツ型吸収性物品。
【0009】
(作用効果)
この発明では、胴部開口から脚部開口に繋がる部分を残して、接合部により、外装シートにおける腹側部分と背側部分との間を胴部開口側から股下部分側に向かって接合したので、着用時に装着者の脚が、接合した接合部に沿って胴部開口から脚部開口に確実に案内されることになる。
【0010】
したがって、本発明によれば、腹側部分と背側部分との間を胴部開口側から股下部分側にわたって接合部で単に接合するだけなので、吸収性本体が複雑な構造となって製造コストが増大したり、あるいは接着テープで脚周り部分を止めるのに伴い余分な資材を必要として製造コストが増大したり、着用時の手間が増えることがない。これに伴い、吸収体本体が特殊な構造とされたり、着用物品の形状を大きく変えたりする特許文献1、2と異なって、従来より用いられているパンツ型吸収性物品にも容易に適用することができる。
【0011】
以上より、本発明によれば、製造コストを増大させたり、着用時の手間が増えたりすることなく、着用時に吸収性本体の端部に配置されている立体ギャザーに脚が引っかからずに脚が通ることになり、着用性が改善される。他方、接合部を熱による溶着や接着剤による接着により部分的に形成すれば、着用時において装着者の下半身により腹側部分と背側部分との間を押し広げる力が加わることで、この接合部が容易にはずれることになって、着用に支障はない。
【0012】
<請求項2記載の発明>
前記接合部が、2つの前記脚部開口のいずれか一方のみに合わせて直線状に1本延びている、請求項1記載のパンツ型吸収性物品。
【0013】
(作用効果)
接合部が直線上に1本延びるという構造なので、接合部の構造がより単純になって製造コストが一層低減される。また、パンツ型吸収性物品の着用時には、装着者が高齢者であっても、一方の脚部開口に装着者の脚が通過すれば、他方の脚部開口には一般的に安定的に脚を通過させることができるので、問題が生じることも少ない。
【0014】
<請求項3記載の発明>
前記接合部が、2つの前記脚部開口にそれぞれ合わせて直線状に2本延びている、請求項1記載のパンツ型吸収性物品。
【0015】
(作用効果)
接合部が、2つの脚部開口にそれぞれ向かって直線上に2本延びるという構造なので、装着者の両脚が立体ギャザーに確実に引っかからないようになるので、両脚がそれぞれスムーズに通過してより着用性が高まるようになる。
【0016】
<請求項4記載の発明>
前記接合部が、前記胴部開口側から前記吸収性本体に向かって一旦延びるとともに、前記吸収性本体の部分で2本に別れて2つの前記脚部開口にそれぞれ合わせて延びている、請求項1記載のパンツ型吸収性物品。
【0017】
(作用効果)
最低限必要な部分とされる吸収性本体の端部に配置されている立体ギャザーに対応して、2本の接合部を設けることでも、確実に着用性が高まるようになる。
【0018】
<請求項5記載の発明>
前記接合部が、熱溶着により点状に前記腹側部分と前記背側部分との間を接合した、請求項1〜4のいずれか1項に記載のパンツ型吸収性物品。
【0019】
(作用効果)
熱溶着により点状に外装シートが溶着されて接合部が形成されることにより、着用時において容易にこの接合部がはずれるので、接合部によりかえって着用が妨げられることもない。
【発明の効果】
【0020】
以上のとおり、本発明によれば、製造コストを増大させたり、着用時の手間が増えたりすることなく、着用時に立体ギャザーに脚が引っかからないように脚を通す部分を形成して、着用性を改善する、等の利点がもたらされる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】パンツ型吸収性物品の正面図である。
【図2】展開状態での組み立て図である。
【図3】外装シートの展開状態の平面図である。
【図4】吸収性本体の平面図である。
【図5】図3のA−A断面図である。
【図6】第1の形態のパンツ型吸収性物品の平面図である。
【図7】第1の形態のパンツ型吸収性物品に装着者の脚が挿入される際の説明図である。
【図8】第2の形態のパンツ型吸収性物品の正面図である。
【図9】従来技術のパンツ型吸収性物品の正面図である。
【図10】従来技術のパンツ型吸収性物品の平面図である。
【図11】従来技術のパンツ型吸収性物品の側面図である。
【図12】従来技術のパンツ型吸収性物品に装着者の脚が挿入される際の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の一実施形態について、先ず共通的構成について説明し、次に各種形態の特徴について説明する。
図1は実施形態のパンツ型吸収性物品1の製品状態外観図であり、図2は展開状態での組み立て図である。このパンツ型吸収性物品1(以下、単に物品ともいう。)は、不織布などからなる透液性表面シート11と、ポリエチレン等からなる不透液性バックシート12との間に、綿状パルプなどの吸収体13を介在させた吸収性本体10と、この吸収性本体10の外面側に対して一体的設けられた外装シート20とからなるものである。製造に際しては、外装シート20の上面側(内面側)に対して吸収性本体10の裏面がホットメルト接着剤Gなどによって一体化された後に、吸収性本体10および外装シート20が前後方向に折り重ねられ、その両側部が相互に熱溶着またはホットメルト接着剤などによって接合されることによって、ウエスト開口部である胴部開口36及び左右一対のレッグ開口部である脚部開口38が形成されたパンツ型吸収性物品1となる。
【0023】
以下、吸収性本体10、外装シート20の順に説明する。
(吸収性本体の基本構造)
吸収性本体10は、図4及び図5に示すように、不織布などからなる透液性表面シート11と、ポリエチレン等からなる不透液性バックシート12との間に、綿状パルプなどの吸収体13を介在させた構造とされ、体液を吸収保持するものである。
【0024】
吸収体13の表面側(肌当接面側)を覆う透液性表面シート11としては、有孔または無孔の不織布や多孔性プラスチックシートなどが好適に用いられる。不織布を構成する素材繊維は、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維の他、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維とすることができ、スパンレース法、スパンボンド法、サーマルボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法等の適宜の加工法によって得られた不織布を用いることができる。これらの加工法の内、スパンレース法は柔軟性、ドレープ性に富む点で優れ、サーマルボンド法は嵩高でソフトである点で優れている。透液性表面シート11に多数の透孔を形成した場合には、尿などが速やかに吸収されるようになり、ドライタッチ性に優れたものとなる。透液性表面シート11は、吸収体13の側縁部を巻き込んで吸収体13の裏面側まで延在している。
【0025】
吸収体13の裏面側(非肌当接面側)を覆う不透液性バックシート12は、ポリエチレンまたはポリプロピレンなどの不透液性プラスチックシートが用いられるが、近年はムレ防止の点から透湿性を有するものが好適に用いられる。この遮水・透湿性シートは、たとえばポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン樹脂中に無機充填材を溶融混練してシートを形成した後、一軸または二軸方向に延伸することにより得られる微多孔性シートであり、仮にシート厚が同じであれば無孔シートよりも剛性が低下するため、柔軟性の点で勝るものとなる。
【0026】
吸収体13は、フラッフ状パルプと吸水ポリマーとを成形してなるものが好適に用いられる。吸水性ポリマーは吸収体を構成するパルプ中に例えば粒状粉として混入することができる。パルプとしては、木材から得られる化学パルプ、溶解パルプ等のセルロース繊維や、レーヨン、アセテート等の人工セルロース繊維からなるものが挙げられ、広葉樹パルプよりは繊維長の長い針葉樹パルプの方が機能および価格の面で好適に使用できる。もちろんこれ以外の公知の吸収体も採用することができる。また、吸収体13は、形状及びポリマー保持等のため、必要に応じてクレープ紙等の透液性包装シート14によって包装されている。吸収体13の形状は、図示形態のように背側及び腹側に対して股間部の幅が狭い形状としたり、矩形形状としたりすることができる。
【0027】
一方、吸収性本体10の両側部には脚周りにフィットする立体ギャザーBSが形成されているのが好ましい。この立体ギャザーBSはギャザー不織布15により形成される、ギャザー不織布としては、図5に示されるように、折返しによって二重シートとした不織布が好適に用いられ、透液性表面シート11によって巻き込まれた吸収体13の側縁部をさらにその上側から巻き込んで吸収体13の裏面側まで延在して接着されている。より具体的には、ギャザー不織布15は、吸収性物品1の長手方向中間部では、立体ギャザーBS形成部分を残し、幅方向中間部から吸収体13の裏面側に亘る範囲がホットメルト接着剤等によって接着され、また長手方向前後端部では、幅方向中間部から一方側端縁までの区間が吸収体13の裏面側に亘る範囲で接着されるとともに、立体ギャザーBSを形成する部分を吸収体13の上面部にて折り畳むようにしながらホットメルト接着剤等により接着している。
ただし、折返しによって二重シートとした不織布を用いた構造の立体ギャザーBSの替りに、この立体ギャザーBSを折り返しの無い構造としても良い。
【0028】
二重シート不織布によって形成されたギャザー不織布15の内部には、起立先端側部分に複数本の糸状弾性伸縮部材16、16…が配設されている。糸状弾性伸縮部材16、16…は、製品状態において、弾性伸縮力により吸収体側縁部より突出する不織布部分を起立させて立体ギャザーBSを形成するためのものである。
【0029】
不透液性バックシート12は、二重シート状のギャザー不織布15の内部まで進入し、図5に示されるように、立体ギャザーBSの下端側において防漏壁を構成するようになっている。かかる不透液性バックシート12としては、排便や尿などの褐色が出ないように不透明のものを用いるのが望ましい。不透明化としては、プラスチック中に、炭酸カルシウム、酸化チタン、酸化亜鉛、ホワイトカーボン、クレイ、タルク、硫酸バリウムなどの顔料や充填材を内添してフィルム化したものが好適に使用される。
【0030】
糸状弾性伸縮部材16としては、通常使用されるスチレン系ゴム、オレフィン系ゴム、ウレタン系ゴム、エステル系ゴム、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリスチレン、スチレンブタジエン、シリコン、ポリエステル等の素材を用いることができる。また、外側から見え難くするため、太さは925dtex以下、テンションは150〜350%、間隔は7.0mm以下として配設するのがよい。なお、糸状弾性伸縮部材に代えて、ある程度の幅を有するテープ状弾性伸縮部材を用いるようにしてもよい。
【0031】
前述のギャザー不織布15を構成する素材繊維も透液性表面シート11と同様に、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、アミド系等の合成繊維の他、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維とすることができ、スパンボンド法、サーマルボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法等の適宜の加工方法に得られた不織布を用いることができるが、特にはムレを防止するために坪量を抑えて通気性に優れた不織布を用いるのがよい。さらにギャザー不織布15については、尿などの透過を防止するとともに、カブレを防止しかつ肌への感触性(ドライ感)を高めるために、シリコン系、パラフィン金属系、アルキルクロミッククロイド系撥水剤などをコーティングした撥水処理不織布を用いるのが望ましい。
【0032】
(外装シートの構造)
外装シート20は、図2及び図3に示されるように、上層不織布20A及び下層不織布20Bからなる2層構造の不織布シートとされ、上層不織布20Aと下層不織布20Bとの間に各種弾性部材が配設され、伸縮性が付与されている。平面形状は、中間両側部に夫々脚部開口38を形成するために形成された凹状の脚回りカットライン29により、全体として擬似砂時計形状をなしている。
【0033】
特に、図示形態の外装シート20においては、弾性部材として、図3に示される展開形状において、ウエスト開口部回り23に配置されたウエスト部弾性部材24,24…と、腹側部分F及び背側部分Bに、上下方向に間隔をおいて水平方向に沿って配置された複数の腰回り弾性部材群25,25…とを有するとともに、腹側部分F及び背側部分Bのそれぞれにおいて、腰回り弾性部材群25,25…とは別に、腹側部分Fと背側部分Bとを接合する一方側接合縁から股下側に延び、股下側を迂回して腹側部分と背側部分との他方側接合縁に到達するとともに、互いに交差することなく間隔をおいて配置された複数本の湾曲弾性部材群26…、28…を備えている。なお、本外装シート20では、脚回りカットライン29に沿って実質的に連続する、所謂脚回り弾性部材は設けられていない。
【0034】
ウエスト部弾性部材24,24…は、腹側部分Fと背側部分Bとが接合された脇部接合縁21、22の範囲の内、ウエスト開口縁近傍に上下方向に間隔をおいて配設された複数条の糸ゴム状弾性部材であり、身体のウエスト部回りを締め付けるように伸縮力を与えることにより吸収性物品を身体に装着するためのものである。このウエスト部弾性部材24は、図示例では糸ゴムを用いたが、例えばテープ状の伸縮部材を用いてもよい。
【0035】
腰回り弾性部材群25,25…は、脇部接合縁21、22の内、概ね上部から下部までの範囲に亘り、上下方向に間隔をおいて水平方向に沿って配設された糸ゴム状の弾性部材であり、腹側部分F及び背側部分Bの腰回り部分に夫々水平方向の伸縮力を与え、吸収性物品を身体に密着させるためのものである。なお、ウエスト部弾性部材24、24…と腰回り弾性部材群25、25…との境界は必ずしも明確でなくてよい。例えば、腹側部分F及び背側部分Bに上下方向に間隔をおいて水平方向に配置された弾性部材の内、数は特定できなくても、上部側の何本かがウエスト部弾性部材として機能し、残りの弾性部材が腰回り弾性部材として機能していればよい。
【0036】
背側部分Bにおいて、腰回り弾性部材群25,25…とは別に配設された背側湾曲弾性部材群26、26…は、所定の(一方側の脇部接合縁22からほぼ脚回りカットライン29に沿って股下部に至り、股下部を横切った後に反対側の脚回りカットライン29にほぼ沿いながら他方側の脇部接合縁22に到達する)曲線に沿って配置された複数本、図示例では9本の糸ゴム状弾性部材であり、これら背側湾曲弾性部材群26、26…は互いに交差することなく、間隔をおいて配置されている。この背側湾曲弾性部材群26、26…は、2,3本程度の弾性伸縮部材を間隔を密にして実質的に一束として配置されるのではなく、所定の伸縮ゾーンを形成するように所定の間隔を空けて、5本以上、好ましくは7本以上配置される。
【0037】
外装シート20の腹側部分Fにおいて、腰回り弾性部材群25,25…とは別に配設された腹側湾曲弾性部材群28,28…も、所定の(一方側の脇部接合縁21から股下側に至り、股下部を横切った後に他方側の脇部接合縁21に到達する)曲線とともに、交差することなく間隔をおいて配置された複数本の、図示例では9本の糸状弾性部材であり、これら腹側湾曲弾性部材群28,28…は、互いに交差することなく、間隔をおいて配置されている。この腹側湾曲弾性部材群28、28…も、2,3本程度の弾性伸縮部材を間隔を密にして実質的に一束として配置されるのではなく、所定の伸縮ゾーンを形成するように所定の間隔を空けて、5本以上、好ましくは7本以上配置される。
【0038】
また、上記形態例では、腹側部分F及び背側部分Bに配置された腰回り弾性部材群25,25…及び湾曲弾性部材26…、28…は、吸収性本体10を横切る部分を切断し、不連続としているが、吸収性本体10上においても連続させて配置することもできる。弾性部材を吸収性本体上で不連続とすることにより、吸収体13の縮こまりをより防止することができる。
【0039】
上述した外装シート20は、例えば特開平4−28363号公報や、特開平11−332913号公報記載の技術により製造することができる。また、湾曲弾性部材26…、28…を吸収性本体10上で切断し不連続化するには、特開2002−35029号公報、特開2002−178428号公報及び特開2002−273808号公報に記載される切断方法が好適に採用される。
【0040】
(第1の形態)
特徴的には、図1にも示されるように、外装シート20における腹側部分Fと背側部分Bとの間を熱溶着により点状に接合した接合部40が、胴部開口36側から股下側部分M側に存在する2つの脚部開口38にそれぞれ向かって直線状に2本延びている。本形態では、このように接合部40が、外装シート20における腹側部分Fと背側部分Bとの間を部分的に接合することで、胴部開口36から2つの脚部開口38に繋がる装着者の脚が通過する部分を残した形で、パンツ型吸収性物品1が形成されている。
【0041】
したがって、図6に示すようにこのパンツ型吸収性物品1を上部から見た場合、2つの脚部開口38のみが視認できるので、図7に示すように着用時に装着者の脚Aの指先AUが、腹側部分Fと背側部分Bとの間を接合した接合部40に沿って矢印Sに沿って案内されて、吸収性本体10の立体ギャザーBSに脚が引っかからないようになる。この際、本形態では、接合部40が胴部開口36側から2つの脚部開口38にそれぞれ向かって斜めに直線状に2本延びるという構造なので、この接合部40により、2本の脚がそれぞれ案内されつつ挿入されて、装着者の両脚が立体ギャザーBSに確実に引っかからないようになるのに伴い、両脚に対してより着用性が高まるようになる。
【0042】
なお、接合部40が2つの脚部開口38のいずれか一方のみに向かって直線状に1本延びる構造としても良い。このような構造とすれば、接合部40の構造がより単純になってパンツ型吸収性物品1の製造コストが一層低減される。また、この場合におけるパンツ型吸収性物品1の着用時には、装着者が高齢者であっても、一方の脚部開口38に装着者の脚が通過すれば、他方の脚部開口38には一般的に脚を安定的に通過させることができるので、問題が生じることも少ない。
【0043】
また、腹側部分Fと背側部分Bとの間を接合部40で単に接合するだけなので、吸収性本体10が複雑な構造となって製造コストが増大したり、あるいは接着テープで脚周り部分を止めるのに伴い余分な資材を必要として製造コストが増大したり、着用時の手間が増えることがない。
【0044】
以上より、本形態によれば、製造コストを増大させたり、着用時の手間が増えたりすることなく、着用時に吸収性本体10の端部に配置されている立体ギャザーBSに脚が引っかからずに脚が通ることになり、着用性が改善される。
【0045】
他方、接合部40を熱溶着により点状に部分的に接着したので、着用時において装着者の下半身により腹側部分Fと背側部分Bとの間を押し広げる力が加わるだけで、接合部40が容易にはずれることになり、接合部40によりかえって着用が妨げられることもない。この際、接合部40とされた部分は不織布が溶着されているので、引き延ばされるのに伴い、溶着された部分は装着者の体から逃げるようになり、装着者の体に直接接することもない。
【0046】
(第2の形態)
上記第1の形態では、接合部40が胴部開口36側から股下側部分M側に存在する2つの脚部開口38にそれぞれ向かって直線状に2本延びているが、本形態では、図8に示すように接合部40が胴部開口36側から吸収性本体10に向かって垂直に延びるとともに、この吸収性本体10の部分で2本に別れて、接合部40が2つの脚部開口38にそれぞれ向かって延びる構造とされている。
【0047】
したがって、本形態のように、最低限必要な部分とされる吸収性本体10の端部に配置されている立体ギャザーBSに沿って接合部40を設けることでも、確実に着用性が高まるようになる。この際、接合部40は、吸収性本体10の外側とされる外装シート20の腹側部分Fと背側部分Bとの間を接合する形としても良く、また、吸収性本体10の端部に沿って吸収性本体10上で接合しても良い。
【0048】
なお、上記各態様において、接合部40は、熱溶着により点状に部分的に接着した形としたが、接着剤により接着したり、超音波、ニードル等により接着しても良く、また、着用時に容易に剥がれるのであれば、点状とする替りに直線としたり、より装着者の脚がより通過しやすいような曲線状に接合部40を形成したりしても良い。
【0049】
さらに、上記形態において、外装シート20が上層不織布20A及び下層不織布20Bからなる2層構造の不織布シートとされているが、内側とされて装着者の体に触れる上層不織布20Aの組成と外側とされて装着者の体に触れない下層不織布20Bの組成とで、融点に差異をつけるために組成を相違させることが考えられる。このようにすることで、熱溶着時において、上層不織布20Aのみが接着され、下層不織布20Bは溶着されないようにすることができ、これに伴って下層不織布20Bには穴が開かないようになって、外観が向上する。具体的には、上層不織布20Aとしてポリエチレンとポリプロピレンとを混合(PE/PP)した不織布を用い、下層不織布20Bとしてポリプロピレン(PP)単体の不織布を用いることが考えられる。
【0050】
他方、上記各態様のパンツ型吸収性物品1を上部から見た場合、2つの脚部開口38のみが視認でき、立体ギャザーBSに脚がかからないようになるが、2つの脚部開口38の周りを着色することにより視認性が一層向上して、より着用性が高まることになる。
さらに、上記各態様において接合部の接合強度を調整することにより、パンツ型吸収性物品の着用に伴う引き上げ時に接合部分を剥がすようにしたが、腹側部分と背側部分との間を引っ張って、接合部分を剥がす用にしても良い。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明は、パンツ型吸収性物品に適用できるものである。
【符号の説明】
【0052】
1…吸収性物品、10…吸収性本体、11…透液性表面シート、12…不透液性バックシート、13…吸収体、14…クレープ紙、15…ギャザー不織布、16…糸状弾性伸縮部材、20…外装シート、29…脚回りカットライン、36…胴部開口、38…脚部開口、40…接合部、F…腹側部分、B…背側部分、BS…立体ギャザー、M…股下側部分。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
腹側部分、背側部分、およびこれらの間の下部に位置する股下部分を有する外装シートと、
吸収体を含むとともに端部に立体ギャザーを有した吸収性本体と、
を備え、
前記外装シートが部分的に接合されて上部に胴部開口および下部に2つの脚部開口が設けられるとともに、前記外装シートの内面側における少なくとも前記股下部分に前記吸収性本体が固定された、パンツ型吸収性物品において、
前記胴部開口から2つの前記脚部開口に繋がる部分を残し、前記外装シートにおける前記腹側部分と前記背側部分との間を前記胴部開口側から前記股下部側に向かって接合する接合部を有した、ことを特徴とするパンツ型吸収性物品。
【請求項2】
前記接合部が、2つの前記脚部開口のいずれか一方のみに合わせて直線状に1本延びている、請求項1記載のパンツ型吸収性物品。
【請求項3】
前記接合部が、2つの前記脚部開口にそれぞれ合わせて直線状に2本延びている、請求項1記載のパンツ型吸収性物品。
【請求項4】
前記接合部が、前記胴部開口側から前記吸収性本体に向かって一旦延びるとともに、前記吸収性本体の部分で2本に別れて2つの前記脚部開口にそれぞれ合わせて延びている、請求項1記載のパンツ型吸収性物品。
【請求項5】
前記接合部が、熱溶着により点状に前記腹側部分と前記背側部分との間を接合した、請求項1〜4のいずれか1項に記載のパンツ型吸収性物品。
【請求項1】
腹側部分、背側部分、およびこれらの間の下部に位置する股下部分を有する外装シートと、
吸収体を含むとともに端部に立体ギャザーを有した吸収性本体と、
を備え、
前記外装シートが部分的に接合されて上部に胴部開口および下部に2つの脚部開口が設けられるとともに、前記外装シートの内面側における少なくとも前記股下部分に前記吸収性本体が固定された、パンツ型吸収性物品において、
前記胴部開口から2つの前記脚部開口に繋がる部分を残し、前記外装シートにおける前記腹側部分と前記背側部分との間を前記胴部開口側から前記股下部側に向かって接合する接合部を有した、ことを特徴とするパンツ型吸収性物品。
【請求項2】
前記接合部が、2つの前記脚部開口のいずれか一方のみに合わせて直線状に1本延びている、請求項1記載のパンツ型吸収性物品。
【請求項3】
前記接合部が、2つの前記脚部開口にそれぞれ合わせて直線状に2本延びている、請求項1記載のパンツ型吸収性物品。
【請求項4】
前記接合部が、前記胴部開口側から前記吸収性本体に向かって一旦延びるとともに、前記吸収性本体の部分で2本に別れて2つの前記脚部開口にそれぞれ合わせて延びている、請求項1記載のパンツ型吸収性物品。
【請求項5】
前記接合部が、熱溶着により点状に前記腹側部分と前記背側部分との間を接合した、請求項1〜4のいずれか1項に記載のパンツ型吸収性物品。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2013−74961(P2013−74961A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−215958(P2011−215958)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(390029148)大王製紙株式会社 (2,041)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(390029148)大王製紙株式会社 (2,041)
【Fターム(参考)】
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