説明

パンツ型着用物品

【課題】着用時に弾性部材の端部が抜け難く、おむつのズレを防止するとともに、着用時にエンボス部による違和感を感じ難く、使用感が向上するパンツ型着用物品を提供すること。
【解決手段】本発明の一例のパンツ型使い捨ておむつ1Aは、腹側部Aの両側縁部6a,6a及び背側部Bの両側縁部6b,6b間に亘って複数本の弾性部材8が配され、腹側部Aの両側縁部6a,6a及び背側部Bの両側縁部6b,6bが融着されて形成された一対のサイド接合領域7,7を有する。各サイド接合領域7は、Y方向に間欠的に配された複数のエンボス部70からなるエンボス列をX方向に複数列配して形成されている。各エンボス部70は、少なくとも一本の弾性部材8と重なっており、隣り合う別のエンボス列を形成するX方向に隣り合うエンボス部70同士が、幅方向から見て重なっている。各エンボス部70は、X方向内方に突出する曲線部を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使い捨ておむつ等のパンツ型着用物品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、表面シート、裏面シート及び液保持性の吸収体を備え、腹側部の両側縁部と背側部の両側縁部とを融着して形成された一対のサイドシール部を有するパンツ型の吸収性物品が種々提案されている。
例えば、特許文献1には、腰周り弾性部材と各脚周り弾性部材との間における溶着部が、おむつの縦方向に互いに独立離間するとともにおむつの横方向に実質的に向かってほぼ円弧をなしているパンツ型の使い捨ておむつが開示されている。また、特許文献2には、前身頃と後身頃の横方向対向側部が縦横方向に所定間隔で並列する接合ドットで接合されているパンツ型の使い捨ておむつが開示されている。
【0003】
また、特許文献3には、基本接合部を水平直線状の接着線群とし、追加接合部を2列の斜行直線状の接着線群として、基本接合部を追加接合部に対して内側に配置したサイド接合部を有する使い捨てパンツが開示されている。また、特許文献4には、上下方向に沿って直線状に延在する溶着点線が複数列設けられることにより形成されたサイドシール部を備えたパンツ型使い捨ておむつが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平10−80号公報
【特許文献2】実開平8−157号公報
【特許文献3】特許第4276368号公報
【特許文献4】特開2009−131539号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の溶着部も特許文献2に記載の接合ドットも、弾性部材と重ならない位置に配されているため、着用時に弾性部材の端部が抜けてしまう場合がある。このように、弾性部材の端部が抜けてしまうと、例えば、着用中に体液を吸収し吸収体が重くなるだけで、おむつがズレてしまう。
【0006】
また、特許文献1に記載の溶着部は、縦方向に1列に配されており、横方向に多列に配されていないため、着用時に弾性部材の端部が抜けてしまう場合がある。また、特許文献4に記載の溶着点線は、おむつのウエスト部分において1列しか設けられていないなど、伸縮運動性の高い胴回り部での弾性部材の抜けは考慮されておらず、また、着用者が硬さを感じ易い。
【0007】
また、特許文献3に記載の基本接合部は、2列の追加接合部よりも内側に配されており、基本接合部の形状が水平直線状である為、着用時に着用者の体表に接する際の圧力が大きく、違和感を与え易い。
【0008】
したがって、本発明の課題は、前述した従来技術が有する欠点を解消し得るパンツ型着用物品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、着用者の腹側、股領域、背側それぞれに位置する腹側部、股部および背側部を備え、該腹側部及び該背側部それぞれの両側縁部間に亘って複数本の弾性部材が配され、前記腹側部及び前記背側部それぞれの両側縁部が融着されて形成された一対のサイド接合領域を有する、前記腹側部、前記背側部から前記股部へ向かう縦方向とこれと直交する幅方向を備えたパンツ型着用物品であって、各前記サイド接合領域は、前記縦方向に間欠的に配された複数のエンボス部からなるエンボス列を前記幅方向に複数列配して形成されており、各前記エンボス部は、少なくとも一本の前記弾性部材と重なっており、隣り合う別の前記エンボス列を形成する幅方向に隣り合う前記エンボス部同士が、幅方向から見て重なっており、各前記エンボス部は、前記幅方向内方に突出する曲線部を有しているパンツ型着用物品を提供するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明のパンツ型着用物品によれば、着用時に弾性部材の端部が抜け難く、おむつのズレを防止するとともに、着用時にエンボス部による違和感を与え難く、使用感が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、本発明の第1実施形態であるパンツ型使い捨ておむつの斜視図である。
【図2】図2は、図1に示すパンツ型使い捨ておむつを展開して伸長した状態を表面シート側から見た展開平面図である。
【図3】図3は、図1に示すパンツ型使い捨ておむつのサイド接合領域を拡大した要部拡大平面図である。
【図4】図4は、本発明の第2実施形態であるパンツ型使い捨ておむつのサイド接合領域を拡大した要部拡大平面図である(図3相当図)。
【図5】図5は、他の実施形態のパンツ型使い捨ておむつの有するエンボス部の形状を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明のパンツ型着用物品の好ましい第1実施形態であるパンツ型使い捨ておむつについて、図1〜図3に基づいて説明する。
【0013】
第1実施形態のパンツ型使い捨ておむつ1A(以下、「おむつ1A」ともいう。)は、腹側部Aの両側縁部6a,6a間及び背側部Bの両側縁部6b,6b間に亘って複数本の弾性部材8が配され、腹側部Aの両側縁部6a,6a及び背側部Bの両側縁部6b,6bが融着されて形成された一対のサイド接合領域7,7を有している。
おむつ1Aは、図1,図2に示すように、中心線CLに対して左右対称に形成されている。従って以下の説明では、左右対称な部分については、主に、左側について説明する。
尚、各図中に示す「Y」方向は、腹側部A又は背側部Bから股部Cへ向かうおむつ1Aの縦方向であり、中心線CLに平行な方向であり、各図中に示す「X」方向は、縦方向と直交するおむつ1Aの幅方向であり、中心線CLに垂直な方向である。以下、具体的に、おむつ1Aについて説明する。
【0014】
おむつ1Aは、図2に示すように、液透過性の表面シート2と、液不透過性(撥水性も含む)の裏面シート3と、両シート2,3間に介在する吸収体4とを有する実質的に縦長の吸収性本体5、及び吸収性本体5の裏面シート3側に配され接着固定された外層体6を備えている。おむつ1Aは、図2に示すように、その縦方向(Y方向)に、腹側部A、股部C及び背側部Bを有している。おむつ1Aの腹側部Aは、着用時に、着用者の腹側に位置する部位であり、背側部Bは、着用者の背側に位置する部位であり、股部Cは、着用者の股領域に位置する部位である。
【0015】
おむつ1Aにおいて、吸収体4は、縦方向(Y方向)に長い矩形である。表面シート2及び裏面シート3は、それぞれ長方形状であり、吸収体4の縦方向(Y方向)の両端縁から延出した部分において互いに接合され、幅方向(X方向)の両端縁から延出した部分においても互いに接合されている。このように接合することにより、縦長の長方形状の吸収性本体5が形成されている。
【0016】
外層体6は、図2に示すように、吸収性本体5の外方全域に亘って延出しており、縦方向(Y方向)中央部において内方に括れている。おむつ1Aにおける外層体6の腹側部Aの両側縁部6a,6aの内面と背側部Bの両側縁部6b,6bの内面同士を互いに重ね合わせ、合掌状に融着して、一対のサイド接合領域7,7を形成することにより、図1に示すように、ウエスト開口部WO及び一対のレッグ開口部LO,LOを有するおむつ1Aが形成される。
【0017】
外層体6は、図2に示すように、パンツ型使い捨ておむつの最外表面となる外層シート61及び外層シート61の内面側に配されている内層シート62から形成されている。外層体6を構成する外層シート61及び内層シート62の間には、図1,図2に示すように、腹側部Aの両側縁部6a,6a間及び背側部Bの両側縁部6b,6b間に亘って複数本の弾性部材8が配されている。詳述すると、外層体6を構成する外層シート61及び内層シート62の間には、図1,図2に示すように、弾性部材8であるウエスト弾性部材81、胴廻り弾性部材82及びレッグ弾性部材83が配されており、腹側部A及び背側部Bの両側縁部6a,6a,6b,6bそれぞれには、ウエスト弾性領域(ウエストギャザー)、胴回り弾性領域(胴回りギャザー)及び環状となる一対のレッグ弾性領域(レッグギャザー)が形成されている。更に詳述すると、ウエスト弾性領域(ウエストギャザー)は、複数本のウエスト弾性部材81を、図1,図2に示すように、吸収性本体5より長手方向(Y方向)外方に間欠的に配し、且つ外層体6の腹側部Aにおける両側縁部6a,6a及び背側部Bにおける両側縁部6b,6b間に亘ってそれぞれ伸長状態で固着することにより形成されている。胴回り弾性領域(胴回りギャザー)も同様に、複数本の胴廻り弾性部材82を、図1,図2に示すように、ウエスト弾性部材81と外層体6の括れとの間に長手方向(Y方向)に間欠的に配し、且つ外層体6の腹側部Aにおける両側縁部6a,61及び背側部Bにおける両側縁部6b,6b間に亘って伸長状態で固着することにより形成されている。
【0018】
レッグ弾性領域(レッグギャザー)は、腹側部Aにおいては、複数本のレッグ弾性部材83を、図1,図2に示すように、腹側部Aの一方(図2の左側)の側縁部6aから腹側部Aの一方(図2の左側)の括れに沿って固着し、股部Cを通って、腹側部Aの他方(図2の右側)の括れに沿って腹側部Aの他方(図2の右側)の側縁部6aに至るまで伸長状態で固着し、股部Cの中央部(中心線CLを含む部位)でカットすることにより形成されている。同様に、レッグ弾性領域(レッグギャザー)は、背側部Bにおいては、複数本のレッグ弾性部材83を、図1,図2に示すように、背側部Bの一方(図2の左側)の側縁部6bから背側部Bの一方(図2の左側)の括れに沿って固着し、股部Cを通って、背側部Bの他方(図2の右側)の括れに沿って背側部Bの他方(図2の右側)の側縁部6bに至るまで伸長状態で固着し、股部Cの中央部でカットすることにより形成されている。
【0019】
各サイド接合領域7は、図1〜図3に示すように、縦方向(Y方向)に間欠的に配された複数のエンボス部70からなるエンボス列を幅方向(X方向)に複数列配して形成されている。エンボス部70は、腹側部Aにおける外層体6の側縁部6a及び背側部Bにおける外層体6の側縁部6bそれぞれに沿って、縦方向(Y方向)に所定間隔を空けて、10cmの長さ当り、5〜20個配されていることが好ましく、8〜15個配されていることが更に好ましい。このように複数個のエンボス部70を縦方向(Y方向)に所定間隔を空けて配することによって、縦方向(Y方向)に延びるエンボス列を形成している。エンボス列は、幅方向(X方向)に所定間隔を空けて、2〜5列配されていることが好ましく、おむつ1Aにおいては、図1〜図3に示すように、3列配されている。このように複数のエンボス列を幅方向(X方向)に所定間隔を空けて配することによって、サイド接合領域7を形成している。
尚、図3に示すエンボス列7dは、サイド接合領域7を形成する最も幅方向(X方向)外方に位置するエンボス列であり、図3に示すエンボス列7fは、サイド接合領域7を形成する最も幅方向(X方向)内方(中心線CL寄り)に位置するエンボス列であり、図3に示すエンボス列7eは、エンボス列7dとエンボス列7fとの間に位置するエンボス列である。
【0020】
エンボス列を形成する複数個のエンボス部70は、おむつ1Aにおいては、縦方向(Y方向)に一定間隔を空けて配されており、縦方向(Y方向)に隣り合うエンボス部70どうしの間隔は、3〜15mmであることが好ましく、5〜10mmであることが更に好ましい。尚、複数個のエンボス部70は、本実施形態のおむつ1Aにおいては、上述したように、縦方向(Y方向)に一定間隔を空けて配されているが、本発明においては一定間隔でなくてもよい。
また、サイド接合領域7を形成する複数のエンボス列は、おむつ1Aにおいては、幅方向(X方向)に一定間隔を空けて配されており、幅方向(X方向)に隣り合うエンボス列どうしの間隔(エンボス列7dとエンボス列7eとの間隔、エンボス列7eとエンボス列7fとの間隔)は、2〜10mmであることが好ましく、3〜8mmであることが更に好ましい。尚、複数のエンボス列は、本実施形態のおむつ1Aにおいては、上述したように、幅方向(X方向)に一定間隔を空けて配されているが、本発明においては一定間隔でなくてもよい。なお、縦方向(Y方向)および幅方向(X方向)それぞれにおいて隣り合うエンボス部70間の間隔は、それぞれ、エンボス部70の縦方向長さの中心どうしの間及びエンボス部70の幅方向の長さの中心どうしの間の距離を指す。
【0021】
おむつ1Aにおいては、図1,図3に示すように、各サイド接合領域7を形成する最も幅方向(X方向)外方に位置するエンボス列7dは、その最上端がサイド接合領域7の最上端に達していない。ここで「エンボス列の最上端」の位置とは、エンボス列を構成する複数個のエンボス部70の中で、最も縦方向(Y方向)の上方に位置するエンボス部70の縦方向(Y方向)上端の位置を意味する。また、「サイド接合領域7の最上端」の位置とは、サイド接合領域7を形成する複数のエンボス列の中で、最も縦方向(Y方向)の上方にまで延びているエンボス列(おむつ1Aにおいてはエンボス列7f)を抽出し、このエンボス列(おむつ1Aにおいてはエンボス列7f)を構成する複数個のエンボス部70の中で、最も縦方向(Y方向)の上方に位置するエンボス部70の縦方向(Y方向)上端の位置を意味する。
【0022】
おむつ1Aにおいては、図1,図3に示すように、各サイド接合領域7を形成する最も幅方向(X方向)外方に位置するエンボス列7dは、その最下端がサイド接合領域7の最下端に達していない。ここで「エンボス列の最下端」の位置とは、エンボス列を構成する複数個のエンボス部70の中で、パンツ状態で最も縦方向(Y方向)の下方(パンツ状態において、最も股部C側の位置)に位置するエンボス部70の縦方向(Y方向)下端の位置を意味する。また、「サイド接合領域7の最下端」の位置とは、サイド接合領域7を形成する複数のエンボス列の中で、パンツ状態で最も縦方向(Y方向)の下方(パンツ状態において、最も股部C側の位置)にまで延びているエンボス列(おむつ1Aにおいてはエンボス列7f)を抽出し、このエンボス列(おむつ1Aにおいてはエンボス列7f)を構成する複数個のエンボス部70の中で、パンツ状態で最も縦方向(Y方向)の下方に位置するエンボス部70の縦方向(Y方向)下端の位置を意味する。
【0023】
おむつ1Aにおいては、図1,図3に示すように、サイド接合領域7を形成する複数のエンボス列の縦方向(Y方向)の長さが、幅方向(X方向)外方に向かって漸次短くなるように形成されている。具体的には、エンボス列7fの縦方向(Y方向)の長さよりもエンボス列7eの縦方向(Y方向)の長さが短く、エンボス列7eの縦方向(Y方向)の長さよりエンボス列7dの縦方向(Y方向)の長さが短く形成されており、エンボス列7fの縦方向(Y方向)の長さが最も長く、エンボス列7dの縦方向(Y方向)の長さが最も短く形成されている。
【0024】
エンボス列を形成する複数個のエンボス部70それぞれは、図1,図3に示すように、少なくとも一本の弾性部材8と重なっている。エンボス部70は、融着によって、外層体6を形成する外層シート61及び内層シート62を固定しており、エンボス部70が弾性部材8と重なる位置に配されていることによって、弾性部材8が、外層シート61と内層シート62との間に固定される。
【0025】
エンボス列を形成する複数個のエンボス部70それぞれは、図3に示すように、隣り合う別のエンボス列を形成する幅方向(X方向)に隣り合うエンボス部70同士が、幅方向から見て重なるように配されている。具体的に説明すると、例えばおむつ1Aにおいては、図3に示すように、エンボス列7dを形成する複数個のエンボス部70の中のエンボス部70dと、エンボス列7dと隣り合う別のエンボス列7eを形成する複数個のエンボス部70の中の、エンボス部70dと幅方向(X方向)に隣り合うエンボス部70eとを抽出した場合に、幅方向(X方向)から見て、エンボス部70dの縦方向(Y方向)下端部とエンボス部70eの縦方向(Y方向)の上端部とが重なっており、エンボス部70dとエンボス部70eとが重なっている。また、エンボス列7eを形成する複数個のエンボス部70の中のエンボス部70eと、エンボス列7eと隣り合う別のエンボス列7fを形成する複数個のエンボス部70の中の、エンボス部70eと幅方向(X方向)に隣り合うエンボス部70fとを抽出した場合に、幅方向(X方向)から見て、エンボス部70eの縦方向(Y方向)の下端部とエンボス部70fの縦方向(Y方向)の上端部とが重なっており、エンボス部70eとエンボス部70fとが重なっている。
【0026】
エンボス列を形成する複数個のエンボス部70それぞれは、図3に示すように、幅方向(X方向)内方(中心線CL側)に突出する曲線部を有している。エンボス部70は、平面視して、図3に示すように、楕円形状であり、幅方向(X方向)内方及び外方に突出する曲線部を有し(膨出形状)、且つ縦方向(Y方向)上方及び下方に突出する曲線部を有している。おむつ1Aの有する楕円形状のエンボス部70は、図1,図3に示すように、縦方向(Y方向)に長い形状であり、幅方向(X方向)内方(中心線CL側)に向かって突出する角のない形状である。
【0027】
おむつ1Aの有する複数個のエンボス部70それぞれは、図1,図3に示すように、同形同大に形成されている。各エンボス部70の面積は、5〜50mm2であることが好ましく、10〜30mm2であることが更に好ましい。ここでエンボス部70の面積とは、エンボスされた部分の面積であり、具体的には、エンボス部70を平面視して、エンボス処理によりフィルム状とされた部分であり、平面視して、エンボス処理部の底面の部分の面積のことを意味する。
【0028】
おむつ1Aにおいては、図3に示すように、エンボス列を形成する複数個のエンボス部70同士の間毎に、腹側部Aから背側部Bに貫通するスリット9が形成されている。このようなスリット9が形成されていることにより、サイド接合領域7の柔らかさが向上する。尚、おむつ1Aにおいては、エンボス列7dを形成する複数個のエンボス部70同士の間、エンボス列7eを形成する複数個のエンボス部70同士の間、及びエンボス列7fを形成する複数個のエンボス部70同士の間毎に、スリット9が形成されているが、サイド接合領域7の柔らかさの観点からは、サイド接合領域7を形成する最も幅方向(X方向)外方に位置するエンボス列7dに、少なくともスリット9が形成されていればよい。エンボス列7d以外のエンボス列7e及びエンボス列7fにもスリット9が形成されていれば、エンボス列7dにのみスリット9が形成されている場合に比べて、サイド接合領域7の柔らかさが向上するとともに、通気性が向上し、ムレを防止することができる。
【0029】
第1実施形態のパンツ型使い捨ておむつ1Aの形成材料について説明する。
表面シート2、裏面シート3及び吸収体4としては、それぞれ、通常、使い捨ておむつ等の吸収性物品に用いられるものであれば、特に制限なく用いることができる。例えば、表面シート2としては、親水性且つ液透過性の不織布等を用いることができ、裏面シート3としては、液不透過性又は撥水性の樹脂フィルムや樹脂フィルムと不織布の積層体等を用いることができる。吸収体4としては、パルプ繊維等の繊維の集合体(不織布であっても良い)又はこれに吸水性ポリマーの粒子を保持させてなる吸収性コアを、透水性の薄紙や不織布からなるコアラップシートで被覆したもの等を用いることができる。
【0030】
外層体6を構成する外層シート61と背側部Bの内層シート62としては、通常、使い捨ておむつ等の吸収性物品に用いられるものであれば、特に制限なく用いることができる。例えば、外層シート51及び内層シート52としては、撥水性の不織布等を用いることができる。
【0031】
ウエスト弾性部材81、胴廻り弾性部材82、レッグ弾性部材83としては、通常、使い捨ておむつ等の吸収性物品に用いられるものであれば、特に制限なく用いることができる。例えば、天然ゴム、ポリウレタン、ポリスチレン−ポリイソプレン共重合体、ポリスチレン−ポリブタジエン共重合体、アクリル酸エチル−エチレン等のポリエチレン−αオレフィン共重合体等からなる糸状の伸縮性材料を用いることができる。
ウエスト弾性部材81、胴廻り弾性部材82は、おむつ1Aにおいては、材料を統一し、太さを同じにし、伸長時の伸長応力も同じにしている。詳述すると、伸長率100%に伸長した時の応力が25gf(5gf〜45gfの範囲の応力であることが好ましい)の弾性部材8(ウエスト弾性部材81及び胴廻り弾性部材82)を、同じ伸長率120%(100%〜150%の範囲とするのが好ましい)で伸長させた状態で外層シート61及び内層シート62の間に配している。尚、伸長率は、自然長に対する、伸長されて増加した分の長さの割合であり、例えば、長さ10cmのものを20cmに伸長するとその伸長率は100%とされる。
【0032】
腹側部Aの両側縁部6a,6a及び背側部Bの両側縁部6b,6bの融着には、ヒートエンボス、超音波エンボス、高周波エンボス等が用いられる。
【0033】
上述した本発明の第1施形態のパンツ型使い捨ておむつ1Aを使用した際の作用効果について説明する。
おむつ1Aの有する一対のサイド接合領域7,7それぞれは、図1,図3に示すように、縦方向(Y方向)に間欠的に配された複数のエンボス部70からなるエンボス列を幅方向(X方向)に3列7d,7e,7f配して形成されており、各弾性部材8はエンボス列を形成する少なくとも1つのエンボス部70と重なっており、また、隣り合う別のエンボス列を形成する幅方向(X方向)に隣り合うエンボス部同士(例えば、エンボス部70dとエンボス部70e、エンボス部70eとエンボス部70f)が幅方向(X方向)から見て重なっている。その為、着用時に弾性部材8(ウエスト弾性部材81、胴廻り弾性部材82、レッグ弾性部材83)の端部が抜け難く、おむつのズレを防止することができる。また、おむつ1Aの有する複数個の楕円形状のエンボス部70それぞれは、図1,図3に示すように、幅方向(X方向)内方(中心線CL側)に突出する曲線部を有しているので、着用時にエンボス部70による違和感を与え難く、使用感が向上する。また、おむつ1Aの有する複数個の楕円形状のエンボス部70それぞれは、図1,図3に示すように、曲線部を有しているので、着用時に弾性部材8が収縮することによって、エンボス列7dを形成するエンボス部70とエンボス列7eを形成するエンボス部70との間、及びエンボス列7eを形成するエンボス部70とエンボス列7fを形成するエンボス部70との間に、外層体6を構成する外層シート61及び背側部Bの内層シート62の弛みによる隙間を形成することができ、おむつ1Aの着用後の跡残りを低減することができる。
【0034】
また、おむつ1Aの有する複数個の楕円形状のエンボス部70それぞれは、図1,図3に示すように、縦方向(Y方向)に長い形状である。その為、着用時に着用者の体表に接触する領域が広く、エンボス部70の体表への圧力を小さくでき、エンボス部70による違和感を更に感じ難く、使用感が更に向上する。更に、エンボス部70の密度を小さくした上で、弾性部材8(ウエスト弾性部材81、胴廻り弾性部材82、レッグ弾性部材83)の端部の抜けを防止することができる。
また、おむつ1Aの有する複数個の楕円形状のエンボス部70それぞれは、図1,図3に示すように、幅方向(X方向)内方(中心線CL側)に向かって突出する角のない形状であるため、着用時に着用者の体表への圧力を大きくする形状がなく、エンボス部70による違和感を更に与え難く、使用感が更に向上する。
【0035】
また、おむつ1Aの各サイド接合領域7を形成する最も幅方向(X方向)外方に位置するエンボス列7dは、図3に示すように、エンボス列7dの最上端(最もウエスト開口部WO側の位置)がサイド接合領域7の最上端に達していないので、着用時に着用者の身体に当たり易い外層体6の縦方向(Y方向)上方側の両角部分を柔らかく形成することができ、使用感が向上する。
また、おむつ1Aの各サイド接合領域7を形成する最も幅方向(X方向)外方に位置するエンボス列7dは、図3に示すように、エンボス列7dの最下端がサイド接合領域7の最下端に達していないので、歩行時等に着用者の身体に当たり易い外層体6の縦方向(Y方向)下方側の両角部分を柔らかく形成することができ、使用感が向上する。特に、エンボス列7dの最下端が着用者の腸骨(ちょうこつ)の位置まで達していなければ、動き易く、違和感が少ないという効果が得られる。
【0036】
次に、本発明の第2実施形態のパンツ型使い捨ておむつについて、図5に基づいて説明する。
第2実施形態のパンツ型使い捨ておむつ1B(以下、「おむつ1B」ともいう)については、第1実施形態のパンツ型使い捨ておむつ1Aと異なる点について説明する。特に説明しない点は、第1実施形態のパンツ型使い捨ておむつ1Aと同様であり、第1実施形態のパンツ型使い捨ておむつ1Aの説明が適宜適用される。
【0037】
第2実施形態のおむつ1Bは、図5に示すように、複数個のエンボス部70それぞれに、ハート型形状のエンボス部70を用いている。図5に示すように、ハート型形状のエンボス部70は、幅方向(X方向)内方に突出する曲線部を有しており、縦方向(Y方向)に長い形状である。また、ハート型形状のエンボス部70は、図5に示すように、縦方向(Y方向)の下端に尖鋭な角を有しているが、幅方向(X方向)内方(中心線CL側)に向かって突出する角は有していない。
【0038】
第2実施形態のおむつ1Bの有する複数個のハート型形状のエンボス部70それぞれは、図5に示すように、同形同大に形成されていない。具体的には、おむつ1Bの各サイド接合領域7を形成する最も幅方向(X方向)外方に位置するエンボス列7dを形成する複数個のエンボス部70と、おむつ1Bの各サイド接合領域7を形成する最も幅方向(X方向)内方に位置するエンボス列7fを形成する複数個のエンボス部70とは、それぞれ、同形同大に形成されているが、エンボス列7dとエンボス列7fとの間に位置するエンボス列7eを形成する複数個のエンボス部70は、エンボス列7d,7fを形成する複数個のエンボス部70と形状は同じであるが、エンボス列7d,7fを形成する複数個のエンボス部70よりも小さく形成されている。
【0039】
おむつ1Bの有するエンボス列7d,7fを形成する各エンボス部70の面積は、前述した第1実施形態と同じであることが好ましい。
エンボス列7d,7fを形成する各エンボス部70の面積(S)に対するエンボス列7eを形成する各エンボス部70の面積(S1)の比(S1/S)は、0.6〜0.95であることが好ましく、0.7〜0.9であることが更に好ましい。
【0040】
第2実施形態のパンツ型使い捨ておむつ1Bの形成材料について説明する。第2実施形態のおむつ1Bについては、第1実施形態のパンツ型使い捨ておむつ1Aの形成材料と同様である。
【0041】
上述した本発明の第2実施形態のパンツ型使い捨ておむつ1Bを使用した際の作用効果について説明する。
第2実施形態のおむつ1Bの効果については、第1実施形態のおむつ1Aの効果と異なる点について説明する。特に説明しない点は、第1実施形態のおむつ1Aの効果と同様であり、第1実施形態のパンツ型使い捨ておむつ1Aの効果の説明が適宜適用される。
【0042】
第2実施形態のおむつ1Bは、図5に示すように、エンボス列7dとエンボス列7fとの間に位置するエンボス列7eを形成する複数個のエンボス部70は、エンボス列7d,7fを形成する複数個のエンボス部70と形状は同じであるが、エンボス列7d,7fを形成する複数個のエンボス部70よりも小さく形成されている。その為、非接合部分の面積(隙間)を大きくしながら弾性部材8の固定性を維持できるのでサイド接合領域7の柔軟性を高めることができる。
【0043】
本発明のパンツ型着用物品は、上述の第1,第2実施形態のパンツ型使い捨ておむつに何ら制限されるものではなく、適宜変更可能である。また、上述の第1,第2実施形態のパンツ型使い捨ておむつにおける各構成要件は、本発明の趣旨を損なわない範囲で、適宜組み合わせて実施できる。
【0044】
例えば、上述の第1,第2実施形態のパンツ型使い捨ておむつ1A,1Bにおいては、幅方向(X方向)内方に突出する曲線部を有するエンボス部70として、図3,図4に示すように、楕円形状、ハート型形状のエンボス部を用いているが、楕円形状、ハート型形状以外に、幅方向(X方向)内方に突出する曲線部を有するエンボス部70の形状としては、例えば、図5(a)に示す枝豆型形状、図5(b),図5(c)に示す花柄形状、図5(d)に示すリボン型形状、図5(e)に示す8分音符,図5(f)に示す3連符のような音符型形状等が挙げられる。図5に示すこれらの形状は、何れも縦方向(Y方向)に長い形状である。図4(a)に示す枝豆型形状は、縦方向(Y方向)の両端に尖鋭な角を有し、図4(e)に示す音符型形状(8分音符)は、その符尾の先端に尖鋭な角を有しているが、何れの形状も、幅方向(X方向)内方(中心線CL側)に向かって突出する角は有していない。
【0045】
また、上述の第1,第2実施形態のパンツ型使い捨ておむつ1A,1Bにおいては、図3,図4に示すように、スリット9を備えているが、備えていなくてもよい。
【0046】
また、上述の第1,第2実施形態のパンツ型使い捨ておむつ1A,1Bにおいては、図2に示すように、腹側部Aの側部6aに形成されるエンボス部70の形状と背側部Bの側部6bに形成されるエンボス部70の形状とが一致しているが、一致してなくてもよい。
【0047】
パンツ型着用物品としては、上述したパンツ型使い捨ておむつ以外に、パンツ型の生理用ナプキン等が挙げられる。
【符号の説明】
【0048】
1A,1B パンツ型使い捨ておむつ
2 表面シート
3 裏面シート
4 吸収体
5 吸収性本体
6 外層体
6a,6b 側縁部
61 外層シート
62 内層シート
7 サイド接合領域
7d,7e,7f エンボス列
70 エンボス部
8 弾性部材
81 ウエスト弾性部材
82 胴廻り弾性部材
83 レッグ弾性部材
9 スリット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
着用者の腹側、股領域、背側それぞれに位置する腹側部、股部および背側部を備え、該腹側部及び該背側部それぞれの両側縁部間に亘って複数本の弾性部材が配され、前記腹側部及び前記背側部それぞれの両側縁部が融着されて形成された一対のサイド接合領域を有する、前記腹側部、前記背側部から前記股部へ向かう縦方向とこれと直交する幅方向を備えたパンツ型着用物品であって、
各前記サイド接合領域は、前記縦方向に間欠的に配された複数のエンボス部からなるエンボス列を前記幅方向に複数列配して形成されており、
各前記エンボス部は、少なくとも一本の前記弾性部材と重なっており、隣り合う別の前記エンボス列を形成する幅方向に隣り合う前記エンボス部同士が、幅方向から見て重なっており、
各前記エンボス部は、前記幅方向内方に突出する曲線部を有しているパンツ型着用物品。
【請求項2】
各前記エンボス部は、前記縦方向に長い形状である請求項1に記載のパンツ型着用物品。
【請求項3】
各前記サイド接合領域を形成する最も前記幅方向外方に位置する前記エンボス列は、その最上端が前記サイド接合領域の最上端に達していない請求項1又は2に記載のパンツ型着用物品。
【請求項4】
各前記サイド接合領域を形成する最も前記幅方向外方に位置する前記エンボス列は、その最下端が前記サイド接合領域の最下端に達していない請求項1〜3の何れか1項に記載のパンツ型着用物品。
【請求項5】
各前記エンボス部は、前記幅方向内方に向かって突出する角のない形状である請求項1〜4の何れか1項に記載のパンツ型着用物品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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