説明

パンティルター

【目的】 大きな減速比及び高トルクが得られ小型でかつ軽量化を可能とし、携帯に便利なパンティルターを得る。
【構成】 パン駆動機構としてパン用ギャードモータ19を用い、ティルト駆動機構としてティルト用ギャードモータ26を用い、それぞれのギャードモータ19及び26はそれぞれのモータ部20,27とギャー部21,28とをL字形に構成し、両ギャードモータ19及び26を互いに省スペースに組み合わせて配置した。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、例えば、ビデオカメラを遠隔操作等によって自由な方向にパンニング動作及びティルティング動作させることのできるパンティルターに関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、ビデオカメラを遠隔操作によって自由な方向へパンニング動作及びティルティング動作させることのできる装置、いわゆるパンティルターは提案されている。そしてこの種、パンティルターはパンニング動作を行う駆動源としてのパン駆動モータと、ティルティング動作を行う駆動源としてのティルト駆動モータとを有している。これら両モータは一例としてマイクロモータが用いられ、モータトルクが減速機構を介して減速される。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかし、従来のパンティルターに使用されている減速機構は、大きな減速比を得るために一般に複数の平歯車の輪列機構が採用されたり、あるいは平歯車とウォームギャとが併用された機構であるため、その構成が大がかりで複雑な構成となり、必然的にパンティルター全体が大型化しかつ高重量化となるといった問題があった。従って、このようなパンティルターは携帯には不便である。
【0004】また、減速機構としてギャードモータを使用することも考えられるが、従来のギャードモータはモータ部分とギャー部分とが直線的な構成であるため、パンティルター本体に対して余分なスペースを必要とし、この場合も小型化には問題がある。
【0005】本発明は、上述したような問題点を解消するためになされたもので、大きな減速比が得られ小型でかつ軽量化を可能とし、携帯に便利なパンティルターを得ることを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】上述した目的を達成するため、本発明によるパンティルターは、着脱可能のカメラ取付台が上部に設けられているパンティルター本体部と、第1の駆動源によって回転駆動されるパンギャーがターンテーブルの外周部に噛み合い、このパンギャーの遊星運動に連動してパンティルター本体部と共にカメラ取付台をパンニング動作するパン駆動機構と、第2の駆動源によって回転駆動されるティルトギャーがティルト部材の扇形ギャーと噛み合い、ティルトバーの揺動動作に連動してカメラ取付台をティルティング動作するティルト駆動機構とを備えたパンティルターにおいて、パン駆動機構の第1の駆動源及びティルト駆動機構の第2の駆動源としてそれぞれギャードモータを用いたものである。
【0007】
【作用】上述のように構成した本発明におけるパンティルターは、パン駆動機構の第1の駆動源及びティルト駆動機構の第2の駆動源としてそれぞれギャードモータを用いたので、大きな減速比が得られパンティルターの小型化と共に軽量化を図ることができる。
【0008】
【実施例】以下、本発明パンティルターの実施例を添付した図面に基づいて説明する。図1はパンティルターの内部構造の平面図、図2は図1のA−A線における断面図で、ビデオカメラを搭載した状態を示し、図3は図1のB−B線における断面図、図4は同じくC−C線における断面図、図5は同じくD−D線における断面図、そして図6は同じくE−E線における断面図である。
【0009】各図において、符号1はパンティルター本体部を示し、この本体部1はケーシングを兼ねる枠体2と、ベース板3上に搭載され枠体2内に収容された機構部4とから構成されている。ベース板3の中心部裏面には固定リング5がねじ6によって固定され、この固定リング5はその中心にベアリング7を介して挿着した軸体8によって支承され、従って、軸体8を中心として固定リング5と共にベース板3及び枠体2は回転可能に支持されている。
【0010】そして、この軸体8の外周部にはターンテーブル9が固定されており、このターンテーブル9の外周部に第1のギャー部10と、その上部にこのギャー部10より小径の第2のギャー部11が形成されている。また、上述した軸体8の下面に例えば、三脚等への取付けねじ孔12が形成されている。また、他の方法としてここでは図示しないが、軸体8及びターンテーブル9と一体に台座を形成し、この台座を机上等に置いてパンティルターを支持することも可能である。
【0011】一方、上述した枠体2の上部には平行する一対の軸受部13,13が突設され、この軸受部13,13に揺動台14の側板15が軸16によって支承され、軸16を中心として揺動台14が揺動可能に支持されている。また、この揺動台14には、カメラ取付けねじ17を有するカメラ取付台18が図示しない手段によってワンタッチで着脱可能である。このカメラ取付台18上に仮想線で示す例えは、ビデオカメラ等のカメラCが据え付けられる。
【0012】さて、ベース板3上にはパン駆動機構の駆動源となるパン用ギャードモータ19が取り付けられている。パン用ギャードモータ19はモータ部20とギャー部21とからなり、このギャードモータの詳細については後で説明する。パン用ギャードモータ19の出力軸22には第1のベベルギャー23が取り付けられ、この第1のベベルギャー23に第2のベベルギャー24が噛み合わされている。そして、第2のベベルギャー24と同軸に固定されたパンギャー25が上述したターンテーブル9のギャー部10と噛み合っている。
【0013】また、ベース板3上にはティルト駆動機構の駆動源となるティルト用ギャードモータ26が取り付けられている。このティルト用ギャードモータ26もモータ部27とギャー部28とからなっている。ティルト用ギャードモータ26の出力軸29にはティルトギャー30が取り付けられ、このティルトギャー30に上述した揺動台14の側板15に軸16と同軸でかつ、ねじ31で固定したティルトバー32の扇形ギャー33が噛み合っている。この扇形ギャー33は枠体2に固定したストッパー兼リターンばね34によって挟持されている。そして、扇形ギャー33を挟むように一対のティルト用リミットスイッチ33a及び33bが配置されている。
【0014】次に、上述したギャードモータの詳細を図7R>7及び図8について説明する。尚、パン用ギャードモータ19とティルト用ギャードモータ26とは同一構造なのでここではパン用ギャードモータ19について説明する。
【0015】パン用ギャードモータ19のモータ部20の出力ギャー35には、ギャー部21の第1のスパーギャー36が噛み合い、このスパーギャー36のピニオンギャー37に第2のスパーギャー38が噛み合い、そのピニオンギャー39に第3のスパーギャー40が噛み合い、そのピニオンギャー41に第4のスパーギャー42が噛み合い、そしてこのスパーギャー42のピニオンギャー43にギャー部21の出力軸22に直結したギャー44が噛み合っている。
【0016】このように構成したパン用ギャードモータ19は、高速回転するモータ部20の出力トルクをギャー部21の輪列機構によって大きな減速比をもって出力軸22から出力させることができる。因みに、パン用ギャードモータ19の最終減速比は1/1,003であり、ティルト用ギャードモータ26の最終減速比は1/1,620である。特に、本発明の場合はモータ部20とギャー部21とを略L字形状に組み立て構成したものである。すなわち、上述したように構成したパン用ギャードモータ19及びティルト用ギャードモータ26とを図1に示すように組み合わせて配置することによりスペース上の無駄もなく省スペース化を図ることができる。
【0017】次に、カメラ取付台18に据え付けたカメラCのパンニング動作及びティルティング動作について説明する。
【0018】パンニング動作パン用ギャードモータ19のモータ部20が回転駆動され、その回転トルクがギャー部21によって減速された出力は、第1及び第2のベベルギャー23及び24を介してパンギャー25を回転する。このパンギャー25は例えば、図示しない三脚台に固定されているターンテーブル9の外周部に形成したギャー部10に噛み合っているため、パンギャー25はターンテーブル9の外周に沿って回転しながら移動する。すなわち、パンギャー25は遊星運動を行いながらパンティルター本体1をその固定リング5がベアリング7を介して軸体8を中心として水平状態で回動させ、カメラ取付台18に支持したカメラCをパンニング動作させることができる。
【0019】上述したパンニング動作はカメラCの360°のパンニングが行えるものであるが、所定の旋回角度範囲内をオートパンニング動作させるパンニング反転スイッチ機構を備えている。この反転スイッチ機構の一例を図5に示す。パンギャー25の回転円周上に所定の角度範囲に2つのパン用リミットスイッチ45(図では一方のリミットスイッチのみ示してある)が配置されている。すなわち、パンニング動作において回転移動するパンギャー25が一方のリミットスイッチ45に当接すると、該スイッチ45がオン動作しパン用ギャードモータ19が反転駆動し、ここで、パンギャー25は反転しカメラCを反対方向へ回動させる。そして、パンギャー25が他方のリミットスイッチ45に当接することで上記と同様にパンギャー25が反転動作し、つまり、カメラCは所定旋回角度範囲内(最大旋回角度は±130°)をパンニングさせることができる。また、上述したリミットスイッチ45に対しポテンショメータのような図示しないボリュームを併用することによって旋回角度範囲内を任意に調整できる。
【0020】また、実施例ではリミットスイッチを用いたパンニング反転スイッチ機構の場合について説明したが、例えば、フォトセンサ等を用いて光学的に反転させることも容易に行える。
【0021】さらに、パンニング動作の旋回速度は調整可能である。すなわち、図2に示すようにターンテーブル9の第2のギャー部11にボリュームギャー46を噛み合わせ、このボリュームギャー46は図示しない歯車伝達機構を介して上述したパンギャー25に連動している。このボリュームギャー46はボリューム47の可変調整によってパン用ギャードモータ19の回転トルクを制御し、上述した回転伝達機構を介してボリュームギャー46を駆動しターンテーブル9の回転速度つまり、パンニング動作の旋回速度を調整することができる。また、上述したボリューム47の代わりにフォトセンサ等の光学素子を用いてパン用ギャードモータ19の回転トルクを制御することも可能である。
【0022】ティルティング動作ティルト用ギャードモータ26のモータ部27が回転駆動され、その回転トルクがギャー部28によって減速されその出力に直結したティルトギャー30を回転させる。このティルトギャー30の回転によってこれに噛み合う扇形ギャー33を介してティルトバー32が軸16を支点として回動し、これに連動して揺動台14が傾斜動作しカメラ取付台18上に支持したカメラCがティルティング動作する。このティルティング動作はティルトバー32が所定角度に傾斜すると、扇形ギャー33の一側面が一方のティルト用リミットスイッチ33aに接触してオン状態にすることで、ティルト用ギャードモータ26は反転駆動してティルトギャー30が逆回転し、これによって揺動台14は上記と逆傾斜する。そして、扇形ギャー33の他側面が他方のティルト用リミットスイッチ33bに当接することで上記と同様にティルトギャー30が再び逆回転し、つまり、カメラCは所定回角度範囲内(最大傾斜角度は±15°)をティルティングさせることができる。
【0023】ここで、ティルトバー32の反転動作においてストッパー兼リターンばね34は次のように作用する。図3において例えば、ティルトバー32が時計方向へ回動し扇形ギャー33の一側面が一方のティルト用リミットスイッチ33aをオン動作した時点では、ストッパー兼リターンばね34はその一方のばね片34aが外方へ押し広げられる。このとき、ストッパー兼リターンばね34の他方のばね片34bは扇形ギャー33のこれ以上の回動を阻止し、リミットスイッチ33aに扇形ギャー33が強く当たるのを防止する作用が得られる。そして、ティルトバー32の反転動作のとき、ストッパー兼リターンばね34の一方のばね片34aはティルトバー32の反転回動を円滑に行うリターンばねの作用が行える。
【0024】このように構成したパンティルターの電源は、電池使用によるいわゆるDC駆動であり、屋外等に携帯し使用可能である。そして、上述したパンティルターは、勿論、遠隔操作可能である。その一例を図9について説明する。
【0025】遠隔操作はワイヤード方式及びワイヤレス方式があり、いずれもコマンダ48によって操作される。
【0026】ワイヤード方式は、パンティルター本体1に設けたコネクタ49とコマンダ48とをケーブル50で接続し、コマンダ48の操作によってパンティルターはパンニング及びティルティング動作される。
【0027】一方、ワイヤレス方式は、パンティルター本体1内に例えば赤外線受信機51が搭載され、コマンダ48から照射される赤外線によってパンティルターのパンニング及びティルティング動作が可能である。
【0028】尚、本発明は、上述しかつ図面に示した実施例に限定されるものでなく、その要旨を逸脱しない範囲内で種々の変形実施が可能である。例えば、パン用ギャードモータ19及びティルト用ギャードモータ26は実施例に示したギャーの組み合わせに限ることはなく、複数のスパーギャーの組み合わせによる減速機構や、ウォームギャーを1段または2段組み合わせた減速機構、あるいはウォームギャーとスパーギャーを組み合わせた減速機構等が可能である。
【0029】
【発明の効果】以上説明したように本発明におけるパンティルターは、カメラ取付台が上部に設けられているパンティルター本体部と、第1の駆動源によって回転駆動されるパンギャーがターンテーブルの外周部に噛み合い、このパンギャーの遊星運動に連動してパンティルター本体部と共にカメラ取付台をパンニング動作するパン駆動機構と、第2の駆動源によって回転駆動されるティルトギャーがティルト部材の扇形ギャーと噛み合い、ティルトバーの揺動動作に連動してカメラ取付台をティルティング動作するティルト駆動機構とを備えたパンティルターにおいて、パン駆動機構の第1の駆動源及びティルト駆動機構の第2の駆動源としてそれぞれギャードモータを用いたことによって、大きな減速比と高トルクが得られ、また、小型でかつ軽量化が図れ、携帯に便利なパンティルターを提供できる。
【0030】また、上述したパンティルターは、携帯に便利であるため、例えば、バードウォッチング、運動会、披露宴あるいは各種コンパ等に広く適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本例におけるパンティルターの内部構成の平面図である。
【図2】図1のA−A線断面図である。
【図3】図1のB−B線断面図である。
【図4】図1のC−C線断面図である。
【図5】図1のD−D線断面図である。
【図6】図1のE−E線断面図である。
【図7】ギャードモータの構成図で、ギャー部の内部を示した部分断面図である。
【図8】ギャードモータのギャー部の分解図である。
【図9】パンティルターの遠隔手段の説明図である。
【符号の説明】
1 パンティルター本体
2 枠体
3 ベース板
4 機構部
5 固定リング
7 ベアリング
8 軸体
9 ターンテーブル
10 第1のギャー部
11 第2のギャー部
14 揺動台
18 カメラ取付台
19 パン用ギャードモータ
20 モータ部
21 ギャー部
23 第1のベベルギャー
24 第2のベベルギャー
25 パンギャー
26 ティルト用ギャードモータ
27 モータ部
28 ギャー部
30 ティルトギャー
32 ティルトバー
33 扇形ギャー
33a,33b ティルト用リミットスイッチ
34 ストッパー兼リターンばね
36,38,40,42 スパーギャー
37,39,41,43 ピニオンギャー
45 パン用リミットスイッチ
46 ボリュームギャー
47 ボリューム
48 コマンダ
50 ケーブル
51 赤外線受信機
C カメラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】 着脱可能のカメラ取付台が上部に設けられているパンティルター本体部と、第1の駆動源によって回転駆動されるパンギャーがターンテーブルの外周部に噛み合い、このパンギャーの遊星運動に連動して上記パンティルター本体部と共にカメラ取付台をパンニング動作するパン駆動機構と、第2の駆動源によって回転駆動されるティルトギャーがティルト部材の扇形ギャーと噛み合い、上記ティルトバーの揺動動作に連動して上記カメラ取付台をティルティング動作するティルト駆動機構とを備えたパンティルターにおいて、上記パン駆動機構の第1の駆動源及びティルト駆動機構の第2の駆動源としてそれぞれギャードモータを用いたことを特徴とするパンティルター。
【請求項2】 上記それぞれのギャードモータはモータ部とギャー部とをL字形に構成し、両ギャードモータを互いに省スペースに組み合わせて配置したことを特徴とする請求項1記載のパンティルター。
【請求項3】 上記ティルト部材にストッパー兼リターンばねを設けたことを特徴とする請求項1記載のパンティルター。
【請求項4】 パンティルターがリモコン操作によって動作できるようにしたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のパンティルター。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開平6−78200
【公開日】平成6年(1994)3月18日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平4−230545
【出願日】平成4年(1992)8月28日
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)