説明

パン及びその製造方法

【課題】焼酎廃液(焼酎粕)中に豊富に含まれるビタミンE(α〜δトコフェロール)を有効利用した健康食品を提供でき、また産業廃棄物である焼酎廃液(焼酎粕)を再利用することのできるパン及びその製法の提供。
【解決手段】穀物粉1kgに対し焼酎粕の乾燥粉末を5〜500g含有させたパン生地を乳酸菌及び/又は酵母により醗酵させた後焼成するようにし、また穀物粉1kgに対し焼酎廃液を300〜800g含有させたパン生地を乳酸菌及び/又は酵母により醗酵させた後焼成する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】

【技術分野】
【0001】
本発明は焼酎廃液(焼酎粕)中に豊富に含まれるビタミンE(α〜δトコフェロール)を有効利用した健康食品として提供でき、また産業廃棄物である焼酎廃液(焼酎粕)を再利用することのできるパン及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、特開2006−121914号公報には、凍り豆腐を配合した生地を過熱処理し、また凍り豆腐は所定の大きさに切断してから生地の材料と混合され、さらに凍り豆腐が粉末状であることを特徴とするパンの製造方法が記載されている。
【0003】
この発明では、生の豆腐に比較して保存期間が比較的長くかつ水分量が略一定の凍り豆腐を材料として用いるので、品質管理や水分量の調整等が簡略化でき、簡単に栄養価の高いパンを製造でき、さらに製造されたパンは凍り豆腐の性質が生かされて、従来のパンや豆腐パンとは異なる独特の食感のパンとなる旨が記載されている。
【0004】
しかしながら、この発明は、凍り豆腐を利用するパン及びその製法であって、焼酎廃液(焼酎粕)を利用するものでなく、これにビタミンE(α〜δトコフェロール)が豊富に含まれておらず、また産業廃棄物である焼酎廃液(焼酎粕)を再利用するものではない。
【0005】
また、特開2003−289790号公報には、パン類の原料に茶抽出液を添加してパン生地を調整し、このパン生地を過熱処理することにより、パン類を製造する。茶抽出液は茶材に酒類及び酸醗酵乳を混和し、熟成して得られる塾生茶材から水系溶媒によって抽出されたものであることが好ましい。この場合、茶材としては緑茶類、中国茶類、紅茶類、麦茶からえらばれた1種又は2種以上が好ましく、酒類としては日本酒、ワイン、ウイスキー、ブランデー、ウオッカー、紹興酒、焼酎から選ばれる1種又は2種以上が好ましく、酸醗酵乳としてはヨーグルト、酸乳飲料、又は乳酸菌飲料が好ましい。さらに、パン類の原料として小麦全粒粉を用いることが好ましいとのするパンの製造方法が示されている。
【0006】
そして、この発明では茶抽出液を添加したパン生地を用いることにより、パンのボリュームが増大し、食感、風味の良好なパンを得ることができる旨記載されている。
【0007】
しかしながら、この発明においては、茶抽出液を添加したパン生地を用いることにより、パンのボリュームを増大させ、食感、風味の良好なパンを得ることを目的としており、焼酎廃液(焼酎粕)中に豊富に含まれるビタミンE(α〜δトコフェロール)を有効利用した健康食品として提供し、また産業廃棄物である焼酎廃液(焼酎粕)を再利用することを目的とするものではない。
【0008】
さらに、特開平9−201161号公報には、納豆を酒、または焼酎、または梅酒等のアルコール飲料に砂糖、塩を混合、熟成して納豆の餡を完成し、更に納豆の餡を前記生地に封入した納豆の餡入りパンの製造及び納豆の餡入りパンが記載されている。
【0009】
しかしながら、この発明においては、納豆には高蛋白質に富み、納豆酵素、アミノ酸が含まれ、ビタミンが豊富で抗癌作用があるといわれているが、和食の単品の副菜として食べるのみであったが、パン食にも洋食にも合うようにしたことを課題とするもので、焼酎そのものはアルコールが殆んど主成分であり、その残渣である焼酎廃液(焼酎粕)中に豊富に含まれるビタミンE(α〜δトコフェロール)を有効利用した健康食品として提供しようとするものでなく、また産業廃棄物である焼酎廃液(焼酎粕)を再利用することを目的とするものでもない。
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、焼酎廃液(焼酎粕)中に豊富に含まれるビタミンE(α〜δトコフェロール)を有効利用した健康食品を提供でき、また産業廃棄物である焼酎廃液(焼酎粕)を再利用することのできるパン及びその製法を提供することを課題とする。
【0011】
尚、甘藷焼酎廃液中の成分は、pH値:4.2、水分:94.54%、固形物:5.46%、全糖:1.46%、粗脂肪:0.21%、粗蛋白:1.15%、粗繊維:0.42%、粗灰分:0.46%、アルコール分:0.2%、カリウム:2250ppm、カルシウム:220ppm、T−N:0.23%、T−C:2.37%、ビタミンE:257μg/g(粉)である。
【課題を解決する手段】
【0012】
請求項1の発明は、焼酎粕成分を含有するパンを提供するものである。
【0013】
この発明においては、焼酎廃液(焼酎粕)中に豊富に含まれるビタミンE(α〜δトコフェロール)を有効利用した健康食品を提供でき、また産業廃棄物である焼酎廃液(焼酎粕)を再利用することのできるパンを提供することができる。
【0014】
請求項2の発明は、穀物粉1kgに対し焼酎粕の乾燥粉末を5〜500g含有させたパン生地を乳酸菌及び/又は酵母により醗酵させた後焼成するようにした穀物類食品の製造方法を提供するものである。
【0015】
この発明においては、請求項1の効果に加え、パン生地に対し多くの焼酎粕乾燥粉末を添加することができる。
【0016】
請求項3の発明は、穀物粉1kgに対し焼酎廃液を300〜800g含有させたパン生地を乳酸菌及び/又は酵母により醗酵させた後焼成するようにしたパンの製造方法を提供するものである。
【0017】
この発明においては、請求項1の効果に加え、約95%水分を有する焼酎廃液をパン生地に添加するので水を別途添加する必要がなく、かつ約5%の栄養成分を有し短期間に充分に醗酵を促進することができる。
【0018】
請求項4の発明は、前記乳酸菌がラクトバチルス属、ロイコノストック属、ペディオコッカス属、ラクトコッカス属及びそれらの変異株(一種の菌の変異によるものの他に融合微生物も含む)から選ばれる一種以上であり、前記酵母がサッカロミセス属、ピヒア属、デバリオマイセス属、キャンディダ属、トルロプシスから選ばれる一種以上であるパンの製造方法を提供するものである。
【0019】
この発明においては、上記のような焼酎粕(焼酎廃液)の醗酵を促進し、有効成分を逃がさず、繊維成分を壊さず、短期間に充分醗酵させることができると共に、有効成分及びうまみ成分を充分ひき出すことができる。
【実施例1】
【0020】
小麦粉に焼酎粕の乾燥粉末を含有させたパン生地を乳酸菌及び/又は酵母により醗酵させた後焼成するようにした。即ち、小麦粉1kgに対し焼酎粕の乾燥粉末を1kg、塩20g、水640gからなる基本材料に、その他糖分、油脂、乳製品、卵等を加え、更に乳酸菌及び/又は酵母添加してミキシングを行い、約20℃下約360分第一次醗酵させた後、適当な大きさのパン形状に丸め、さらに約38℃下約50分第二次醗酵させ、その後約220℃下約35分焼成した。上記の結果出来上がったパンは、もち感、歯切れ感、甘み、凝集性に優れ、焼酎粕独特の風味のあるパンが得られた。
【0021】
小麦粉1kgに対し焼酎粕の乾燥粉末が5g以下であると、焼酎粕独特の風味が得られず、小麦粉1kgに対し焼酎粕の乾燥粉末が500g以上であるとパン生地の水分が不十分で生地の形状が保てない。
【実施例2】
【0022】
小麦粉に焼酎廃液を含有させたパン生地を乳酸菌及び/又は酵母により醗酵させた後焼成するようにした。即ち、小麦粉1kgに対し焼酎廃液を640g、塩20gからなる基本材料に、その他糖分、油脂、乳製品、卵等を加え、更に乳酸菌及び/又は酵母添加してミキシングを行い、約20℃下約360分第一次醗酵させた後、適当な大きさのパン形状に丸め、さらに約38℃下約50分第二次醗酵させ、その後約220℃下約35分焼成した。 上記の結果出来上がったパンは、もち感、歯切れ感、甘み、凝集性に優れ、焼酎粕独特の風味のあるパンが得られた。
【0023】
小麦粉1kgに対し焼酎廃液が300g以下であると、焼酎粕独特の風味が得られずかつ生地成形が不可能であり、小麦粉1kgに対し焼酎廃液が800g以上であるとパン生地の水分が多すぎ生地の形状が保てない。
【0024】
前記実施例1及び2に使用される乳酸菌は、ラクトバチルス属(例えば、Lactobacillus plantarum、Lactobacillus casei、Lactobacillus carvatusなど)、ロイコノストック属(例えば、Leuconostoc mesenteroidesなど)、ペディオコッカス属(例えば、Pediopcoccus halophilusなど)、ラクトコッカス属(例えば、Lactococcus faecalisなど)及びそれらの変異株(一種の菌の変異によるものの他に融合微生物も含む)から選ばれる一種以上を使用する。
【0025】
前記実施例1及び2に使用される酵母は、サッカロミセス属(例えば、Saccharomyces rouxiiなど)、ピヒア属(例えば、Pichia membranaefaciensなど)、デバリオマイセス属(例えば、Debaryomyces hanseniiなど)、キャンディダ属(例えば、Candida brumptiiなど)、トルロプシス(例えば、Torulopsis holmiiなど)から選ばれる一種以上を使用する。尚、麹菌、酵素等も使用することができる。
【0026】
尚、前記実施例1及び2において、小麦粉にかわりに、ライ麦、米粉、大麦粉その他の穀物粉やこれら2種以上の混合物を使用することもできる。
【0027】
前記実施例1及び2の基本材料において添加される副材料として、ハチミツ、豆腐、凍り豆腐、納豆、茶抽出液、酒(ワイン、ブランデー、ウイスキー、日本酒、焼酎、紹興酒等)、ナッツ、ドライフルーツ(乾燥イチジク、くるみ、レーズン等)、乳製品(牛乳、生クリーム、豆乳等)、卵等を添加することができる。
【0028】
前記実施例1及び2の基本材料において添加される他の栄養素として、オリゴ糖、ゴンザエムQ10、キチンキトサン、各種ビタミン類、各種植物繊維等を適宜添加することができる。
【0029】
前記実施例1及び2の基本材料において油脂成分を別途添加することもできる。例えば、オリーブオイル、バター、マーガリン、ショートニング等の他、イコサペンタエン酸(EPA)含有油脂やドコサヘキサエン酸(DHA)含有油脂等の高度不飽和脂肪酸含有油脂を使用することにより、抗血栓作用、抗動脈硬化作用、痴呆症状や不安症状の改善、抗腫瘍作用、抗アレルギー作用、血中脂質改善作用等を有する油脂成分をパンに付与することもできる。
【0030】
また、パン生地を冷凍保存する場合は、レシチンやトコフェノール等を含有する無蒸煮膨化大豆粉末と無蒸煮膨化大豆乳化油脂蘇生物を添加して、菌の活力を維持すると共に、その強力な乳化作用により氷の結晶の成長を抑制してグルテン組織の破壊を防止することもできる。
【発明の効果】
【0031】
上記の如く、焼酎廃液(焼酎粕)中に豊富に含まれるビタミンE(α〜δトコフェロール)の有効成分を利用した健康食品を提供でき、産業廃棄物である焼酎廃液(焼酎粕)を再利用することのできるパン及びその製造方法を提供し、このような焼酎廃液(焼酎粕)を含むパン生地の醗酵を促進し、この有効成分を逃がさず、かつ繊維成分を壊さず、さらに短期間に充分醗酵させることができると共に、有効成分及びうまみ成分を充分ひき出すことができる等の効果を奏する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
焼酎粕成分を含有するパン。
【請求項2】
穀物粉1kgに対し焼酎粕の乾燥粉末を5〜500g含有させたパン生地を乳酸菌及び/又は酵母により醗酵させた後焼成するようにしたパンの製造方法。
【請求項3】
穀物粉1kgに対し焼酎廃液を300〜800g含有させたパン生地を乳酸菌及び/又は酵母により醗酵させた後焼成するようにしたパンの製造方法。
【請求項4】
前記乳酸菌がラクトバチルス属、ロイコノストック属、ペディオコッカス属、ラクトコッカス属及びそれらの変異株(一種の菌の変異によるものの他に融合微生物も含む)から選ばれる一種以上であり、前記酵母がサッカロミセス属、ピヒア属、デバリオマイセス属、キャンディダ属、トルロプシスから選ばれる一種以上であるパンの製造方法。