説明

パン及びパンの製造方法

【課題】一般的なパン酵母(イースト)を全く使用せずに、乳酸菌発酵によって生成されるガスで生地を膨らませる新規なパンを提供する。
【解決手段】所定の粉生地に所定量(粉生地100%重量に対して、菌培養液1〜30%重量)のヘテロ発酵型乳酸菌を加えて捏ね上げ、長時間(8〜24時間)乳酸発酵させて生地が充分に膨張した後に分割成型し、更にホイロ時間(二次発酵時間)を長くして二次発酵による生地膨張を促進させた後に、焼成して製出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イースト発酵を行わないパン及びパンの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
イースト発酵を行わない所謂クイックブレッドとして、スコーンやマフィンが知られており、これらのクイックブレッドは、膨張材(ベーキングパウダー)を使用して生地を膨らませている。
【0003】
またサワーブレッド等として知られているパンは、酸味や香味を醸し出すために乳酸菌を使用することが提案されている。然し、パン生地の発酵工程の3〜5時間程度では、菌の栄養分が、イースト菌によって使い尽くされてしまい同時に、イースト発酵によって生成されるアルコールによって乳酸発酵が著しく抑制され、乳酸生成量が少なくサワーブレッドとはならない。従前の乳酸菌添加は、単に通常のパンの風味改善のため使用されているにすぎない。そこで乳酸菌使用の場合の改善手段が種々提案されている(特許文献1,2,3)。
【0004】
【特許文献1】特許3080900号公報。
【特許文献2】特開2001−258466号公報。
【特許文献3】特開2005−245338号公報。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
クイックブレッドは、膨張材(ベーキングパウダー)を使用するもので、この膨張材には炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、塩化アンモニウム、炭酸カルシウム、酒石酸水素カリウム、アンモニウムミョウバン等が配合されており、弱アルカリのアンモニアや二酸化炭素が機体になって食品を膨らませるもので、若干アルカリ的風味が残ってしまう。
【0006】
また乳酸菌を生地に混入する場合には、乳酸菌による風味(酸味)を得るためには、特許文献1,2,3に開示されているとおり、イースト発酵とのバランスを考慮して種々の手順が要求される煩雑さがある。
【0007】
そこで本発明者は、乳酸菌発酵によって生成されるガスでパンを膨らませるイースト無添加のパンを提案したものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るパン及びパンの製造方法は、所定の粉生地に、所定量のヘテロ発酵型乳酸菌を使用して捏ね上げ、長時間乳酸発酵させて生地が充分に膨張した後に分割成型し、更にホイロ時間を長くして二次発酵による生地膨張を促進させた後に、焼成して製出することを特徴とするものである。
【0009】
粉生地に適宜な添加物を加えると共に、一般的なパン酵母(イースト)を使用せずに、ガス生成能が高いヘテロ発酵型乳酸菌を適宜量(水100に対して上白糖30%重量(以下同じ)、酵母エキス0.4%、酢酸ナトリウム1%、塩化マグネシウム0.1%を加えた培地で、1ml中菌数が10個以上となるまで培養した乳酸菌液を、粉重量に対して1〜30%で好ましくは5%)加えて捏ね上げ、長時間発酵(8〜24時間)を行うと、発酵による生成ガスで生地を膨らませる。更に常法通りの製パン工程に則って分割成型し、ホイロ時間(二次発酵時間)を長くとり、生地が充分膨張した後に、焼き上げるもので、焼きあがったパンは、酸味が強い独特の風味を備えると共に、常温保存性に優れたものとなった。
【発明の効果】
【0010】
本発明は上記の通りの構成で、一般的なパン酵母を全く使用せずに生地を乳酸発酵で膨化させたもので、麦のチーズというべき独自の風味を供えた新規なパンを提供できたものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
次に本発明の実施の形態について説明する。本発明の実施形態は、乳酸菌の混入量を相違させた二種の実施形態を示した。
【0012】
第一実施形態の生地の構成は、図1に示すように、粉生地として強力粉を使用し、これに前記したヘテロ発酵型乳酸菌液(MP−4A)5%重量(粉量を100とした場合の比率)、上白糖5%重量、食塩2%重量、乳酸菌の増殖のための脱脂粉乳2%重量、ショートニング5%重量、水65%重量である。
【0013】
そして前記全材料をミキシング(ビータM10分)して捏ね上げ(捏上温度28℃)、一晩程度発酵させる(30℃、湿度75%の雰囲気下で行う)。発酵終了時の乳酸菌の量を計測した結果、生地1g中に7.6×10個含まれていた。
【0014】
発酵後にそのまま所定の大きさに分割型詰め(山形食パンの型に入れる)し、ホイロ工程(38℃、湿度80%雰囲気下で5時間放置)後、焼成(上下220℃、30分)する。
【0015】
製出されたパンは、やや焼き色が付きにくかったが、外観は通常のパンと変わらず、一般的なパンと比べて伸びが悪く重たいパンとなった。食味は乳酸菌による酸味が強く、独特な風味を備えていた。
【0016】
また図2の表は、本発明の第二実施形態の生地の材料表・工程表であり、第一実施形態に比較して乳酸菌液量を20%重量とし、この増加分に対応して水50%重量としたものである。
【0017】
その製造手順は、前記第一実施形態と同様で、全材料のミキシング(ビータM10分)して捏ね上げ(捏上温度87℃)、一晩(12時間)程度発酵させ(30℃、湿度75%の雰囲気下で行う)、所定の大きさに分割型詰めし、ホイロ工程(38℃、湿度80%雰囲気下で5時間放置)後、焼成(上下220℃、30分)する。
【0018】
製出されたパンは、前記第一実施形態と同様に、外観は通常のパンと変わらないが、より以上酸味が強く、食感が全体としてしっとりとしてチーズのようであった。
【0019】
また前記両実施形態のパンは、そのまま袋詰めして保存性を確認したところ、常温保存で、1ヵ月後も3ヶ月後も再加熱なしで食することができ、保存性に優れていることが確認できた。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の第一実施形態の使用材料表・工程表。
【図2】本発明の第二実施形態の使用材料表・工程表。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の粉生地に所定量のヘテロ発酵型乳酸菌を加えて捏ね上げ、長時間乳酸発酵させて生地が充分に膨張した後に分割成型し、更にホイロ時間を長くして二次発酵による生地膨張を促進させた後に、焼成してなることを特徴とするパンの製造方法。
【請求項2】
所定の粉生地に、所定量のヘテロ発光型乳酸菌を加えて捏ね上げ、長時間乳酸発酵させて生地が充分に膨張した後に分割成型し、更にホイロ時間を長くして二次発酵による生地膨張を促進させた後に、焼成して製出してなることを特徴とするパン。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate