説明

パン搬送装置及びパン包装システム

【課題】パンの搬送先の所定位置にパンを正確に載置できる簡易な構成のパン搬送装置及び、当該パン搬送装置によりパン包装装置のスクープの所定位置にパンを確実に載置することができるパン包装システムを提供すること。
【解決手段】パンが搬送される搬送経路に沿って離間配置され回転可能な一対の転動体と、前記一対の転動体に巻回され、前記搬送経路に沿って配置される無端回動体と、前記無端回動体に装着され、前記搬送経路に沿って前記パンを付勢し、前記パンを所定位置へ搬送する第1のフライトと、前記搬送経路に沿って前記第1のフライトの上流側で前記無端回動体に装着され、前記所定位置に前記パンを整合させるように前記パンを付勢する第2のフライトと、を備えるパン搬送装置及び当該パン搬送装置を備えるパン包装システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パンを搬送するためのパン搬送装置及び当該パン搬送装置を備えパンを包装するためのパン包装システムに関する。特に、パンを所定位置に載置することができるパン搬送装置及び当該パン搬送装置を備えるパン包装システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ポリエチレン袋等の包装部材内に縦長の(例えば3斤長の)食パンを詰めるパン包装システムが利用されている。例えば、特許文献1は、従来のパン包装システムを開示する。この従来のパン包装システムでは、インフィードコンベアにより食パンがスクープに導入され、スクープの往復移動により、食パンがポリエチレン製の包装部材に収容され、袋に収容された食パンはスクープからディスチャージコンベアへ落下する。さらに、包装された食パンは、ディスチャージコンベアにより次の工程(例えば、袋の封止工程)に搬送される。
【0003】
なお、食パンを包装するためのスクープは、食パンを搬送する搬送経路を横切るように前進し包装部材を保持する。さらに、包装部材を保持したスクープは、搬送経路を再度横切るように後退すると、食パンが包装部材内に収容され、包装された食パンが搬送経路上に落下する。このように、従来のパン包装システムでは、スクープの往復移動により食パンが包装される。
【0004】
スクープを構成し食パンを保持する下方スクープは、食パンが載置される平坦な基部と、基部の下流側端部に連続し、上方に延在する下流側フランジと、基部の上流側端部に連続し、上方に延在する上流側フランジと、を有する。また、搬送経路を横切る方向に視た、上流側フランジの長さは、下流側フランジの長さより短い。搬送方向を横切る方向に視て水平面に対して、下方スクープの基部の下流側が下方に傾斜している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特公昭44−1594号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来のパン搬送装置及びパン包装システムでは、パン搬送装置による搬送先である次工程の部材(パン包装システムの場合には、パン包装装置の下方スクープ)の所定位置へ正確に載置することが困難であった。パンが落下すると、パン自体が有する弾性でパンが跳ね上がり、所定位置からずれる場合があるためである。結果として、パンが所定位置からずれているため、次工程におけるパンに対する処理が適切に行われない恐れがある。従って、パン搬送装置やパン包装システムの処理効率をさらに向上させることが困難であった。
【0007】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものである。すなわち、パンの搬送先の所定位置にパンを正確に載置できる簡易な構成のパン搬送装置及び、当該パン搬送装置によりパン包装装置のスクープの所定位置にパンを確実に載置することができるパン包装システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明のパン搬送装置の第1の態様は、パンが搬送される搬送経路に沿って離間配置され回転可能な一対の転動体と、前記一対の転動体に巻回され、前記搬送経路に沿って配置される無端回動体と、前記無端回動体に装着され、前記搬送経路に沿って前記パンを付勢し、前記パンを所定位置へ搬送する第1のフライトと、前記搬送経路に沿って前記第1のフライトの上流側で前記無端回動体に装着され、前記所定位置に前記パンを整合させるように前記パンを付勢する第2のフライトと、を備える。
【0009】
また、本発明のパン搬送装置の第2の態様によれば、前記第1のフライト及び前記第2のフライトの一方又は両方の前記パンに当接する当接部は、湾曲面を有する。
【0010】
さらに、本発明のパン搬送装置の第3の態様によれば、前記第1のフライト及び前記第2のフライトの一方又は両方の前記当接部は、回動可能である。
【0011】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明のパン包装システムの第1の態様は、前述の第1の態様〜第3の態様のいずれか一のパン搬送装置と、前記パン搬送装置により前記パンが載置され、前記パンを包装するスクープを有するパン包装装置と、を備え、前記所定位置が、前記基部上にある。
【0012】
また、本発明のパン包装システムの第2の態様によれば、前記スクープは、前記パンが載置される基部と、前記搬送経路を横切る方向に視て前記基部の上流側端部から上方に突出する上流側フランジと、前記搬送経路を横切る方向に視て前記基部の下流側端部から上方に突出する下流側フランジと、を有し、前記上流側フランジと前記下流側フランジとは、前記基部から離れるに従い互いに離間するように延在する。
【0013】
また、本発明のパン包装システムの第3の態様によれば、前記所定位置は、水平である。
【0014】
簡易な構成で、パンを変形させたり、傷つけたり、パンの一部が削り取られたりせずに次工程へ搬送するための本発明のパン搬送装置の第4の態様は、パンが搬送される搬送経路に沿って離間配置され回転可能な一対の転動体と、前記一対の転動体に巻回され、前記搬送経路に沿って配置される無端回動体と、前記無端回動体に装着され、前記搬送経路に沿って前記パンを付勢し、前記パンを所定位置へ搬送するフライトと、を備え、前記フライトは、前記パンに当接する当接部を有し、前記当接部は、湾曲している。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係るパン搬送装置及びパン包装システムは、第1のフライト及び第2のフライトを備えるという簡易な構成により、第1のフライトにより搬送されたパンが所定位置からずれた場合であっても、第2のフライトによりパンを所定位置に整合できる。従って、パンを所定位置に確実に搬送することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】第1の実施形態に係る食パン包装システムの主要要素を模式的に示す側面図である。
【図2】図1に示される食パン搬送装置を主として示す側面図である。
【図3】図1の食パン搬送装置を主として示す平面図である。
【図4】図3の線IV−IVに沿った部分断面図である。
【図5】第2の実施形態に係る食パン包装システムの主要要素を模式的に示す側面図である。
【図6】図5の食パン搬送装置を主として示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明のパン搬送装置及びパン包装システムを適用した、実施形態に係る食パン搬送装置105及び食パン包装システム101を図面を参照しつつ説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、本明細書において、下流側とは食パンが搬送される方向のことであり、上流側とはその逆の方向のことである。さらに、右側(又は左側)とは、パンが搬送される方向(下流側)に向いたときの右方(又は左方)を意味する。
〔第1の実施形態〕
【0018】
図1は、第1の実施形態に係る食パン包装システム101の主要要素を模式的に示す側面図、図2は、図1に示される食パン搬送装置105を主として示す側面図、図3は、図1の食パン搬送装置105を主として示す平面図、図4は、図3の線IV−IVに沿った部分断面図である。なお、図3では、各構成要素の明瞭化のため、食パン搬送装置105及び食パン包装装置103を実線で示し、ディスチャージコンベア1を2点鎖線で示す。
【0019】
食パン搬送装置、すなわちインフィードコンベア105は、主として、食パンB1が搬送される搬送経路Pの上流側及び下流側に配置される一対の転動体、すなわちインフィード上流端スプロケット113及び下流端スプロケット115と、インフィード上流端スプロケット113及び下流端スプロケット115に巻回され、搬送経路Pに沿って配置される無端回動体、すなわちインフィード無端チェーン118と、インフィード無端チェーン118に装着され、食パンB1を搬送経路Pに沿って付勢する第1のフライト、すなわち第1のインフィードフライト119と、第1のインフィードフライト119より上流側に配置され、食パンB1を所定位置に載置するための第2のフライト、すなわち第2のインフィードフライト141と、を備える。
【0020】
インフィード上流端スプロケット113とインフィード下流端スプロケット115は、搬送経路Pに沿って延在するインフィード本体121に回転可能に固定されている。なお、第1の実施形態における上記所定位置は、下方スクープ151の基部151a上の水平面154である。
【0021】
また、インフィードコンベア105により食パンB1が搬送される搬送経路Pは、平面視(図3参照。)で矩形状の板部材であるインフィード板123により構成される。従って、インフィード板123は、インフィード本体121(図1、2参照。)の上面を構成する。インフィード板145は、インフィード本体121に水平に固定され、インフィード板123上を食パンB1が摺動する。さらに、インフィード本体121は、不図示の支持部材によりインフィードコンベア105が配置される床面に支持されている。なお、図3において、インフィード板123は、図面の明瞭化のため2点鎖線で示している。
【0022】
インフィード板123は、後述するディスチャージコンベア1の搬送板25より図1の上下方向において上方に延在し、インフィード板123と搬送板25とは、食パン包装システム101が載置される床面に対する高さが異なる。
【0023】
インフィードコンベア105は、さらに、インフィード無端チェーン118の外周側には、インフィード駆動スプロケット111を備え、駆動モータ21からの回転力は、インフィード駆動スプロケット111を介してインフィード無端チェーン118に伝達される。なお、駆動モータとしてサーボモータを利用することが可能である。
【0024】
インフィード無端チェーン118は、インフィード板123の短手方向(図3の上下方向)に対向する両端部に沿って平行に配置される右側インフィード無端チェーン部材118a及び左側インフィード無端チェーン部材118bとから構成される。また、右側インフィード無端チェーン部材118aは、右側上流端スプロケット113a及び右側下流端スプロケット115aに巻回され、左側インフィード無端チェーン部材118bは、左側上流端スプロケット113b及び左側下流端スプロケット115bに巻回されている。
【0025】
上流端スプロケット113は、インフィード板123の短手方向に延びる上流端軸147に装着される右側上流端スプロケット113a及び左側上流端スプロケット113bから構成され、下流端スプロケット115は、インフィード板123の短手方向に延びる下流端軸149に装着される右側下流端スプロケット115a及び右側下流端スプロケット115bから構成される。上流端軸147及び下流端軸149は、それぞれ、インフィード本体121の搬送経路Pに関する上流側の端部及び下流側の端部に回転可能に支持されている。また、下流端軸149と上流端軸147とは、互いに平行に延在する。
【0026】
さらに、右側インフィード無端チェーン部材118aと左側インフィード無端チェーン部材118bとを連結するように、第1及び第2のインフィードフライト119、141が延びている。第1及び第2のインフィードフライト119、141は、インフィード板123に対して垂直方向上方(図1、2の上下方向上方)に延び、両インフィード無端チェーン部材118a、118bの周方向に所定距離離れて固定されている。また、第1及び第2のインフィードフライト119、141の組みが、右側インフィード無端チェーン部材118aと左側インフィード無端チェーン部材118bの周方向に等間隔で複数組み装着されている。
【0027】
次に、第1及び第2のインフィードフライト119、141について説明する。第1及び第2のインフィードフライト119、141は、同形状で同寸法であるので、第1のインフィードフライト119について説明する。図4に示されるように、第1のインフィードフライト119は、食パンB1に当接するインフィード当接部119aと、インフィード当接部119aを回転可能に支持する2つのインフィードフライト支持部119bと、を有する。
【0028】
インフィード当接部119aは、金属製で所定の曲率半径を有する円筒部材(すなわち、インフィード当接部119aの長手方向に直交する断面が円形)である。2つの第1のインフィードフライト支持部119bは、それぞれ、インフィード板123に対して垂直に延在する板状部材であり、その長手方向長さは、インフィード当接部119aがインフィード板123上に載置されている食パンB2に当接できるように寸法付けされている。2つのインフィードフライト支持部119bは、それぞれ右側インフィード無端チェーン部材118aと左側インフィード無端チェーン部材118bにピン151により固定されている。
【0029】
また、右側及び左側インフィード無端チェーン部材118a、118bは、その外周側で、インフィード駆動スプロケット111を構成する右側及び左側インフィード駆動スプロケット111a、111bにそれぞれ噛合し、後述の通り、回転力が伝達される。また、第1の実施形態では、インフィード上流端スプロケット113とインフィード下流端スプロケット115との間にインフィード無端チェーン118の張力を調整するためのテンション調節用スプロケット145が配置されている。
【0030】
すなわち、右側上流端スプロケット113a及び右側下流端スプロケット115aの間に、右側インフィード無端チェーン部材118aの張力を調整するための右側テンション調節用スプロケット145aが配置されている。同様に、左側上流端スプロケット113b及び左側下流端スプロケット115bの間に、左側インフィード無端チェーン部材118bの張力を調整するための左側テンション調節用スプロケット145bが配置されている。
【0031】
図1に示されるように、インフィードコンベア105には、装置本体29内に配置される駆動源である駆動モータ21により回転力が供給される。駆動モータ21によりウォームギア等(不図示)を介して回転する駆動シャフト51には、インフィードスプロケット114が装着されている。インフィードスプロケット114と、インフィード伝達スプロケット117とは、インフィード伝達チェーン120により巻回されている。
【0032】
インフィード伝達スプロケット117の回転軸122には、インフィード伝達スプロケット127がインフィード伝達スプロケット117と同心に装着されている。インフィード伝達スプロケット127と、インフィード伝達スプロケット131と(図1参照。)には、伝達無端チェーン125が巻回されている。インフィード伝達スプロケット131が装着されているインフィード駆動軸129には、インフィード駆動スプロケット111a、111bが、インフィード伝達スプロケット131と同心に装着されている。
【0033】
このように、駆動モータ21からの回転力は、インフィードスプロケット114、インフィード伝達チェーン120、インフィード伝達スプロケット117、インフィード伝達スプロケット127、及び伝達無端チェーン125等を介してインフィード伝達スプロケット131に伝達される。インフィード伝達スプロケット131が回動すると、インフィード駆動軸129が回動することでインフィード駆動スプロケット111a、111bが回動する。インフィード駆動スプロケット111a、111bが回動すると、インフィード無端チェーン118は、矢印133方向に回動する。従って、前工程から供給される食パンB1は、インフィード板123上を第1のインフィードフライト119により、インフィード上流端スプロケット113側から、インフィード下流端スプロケット115側へと搬送経路Pに沿って搬送される。
【0034】
〔食パン包装装置〕
次に、食パン包装システム101の食パン包装装置103の構成について簡単に説明する。食パンB1は、インフィードコンベア105により食パン包装装置103に導入される。食パン包装装置103は、食パンB1が収容されるポリエチレン袋などの包装部材を保持するスクープと、搬送経路Pを横切る方向にスクープを往復移動させる往復移動機構と、を備える。往復移動機構は、公知の構成であるので、その構成の詳細は割愛し、図面からも省略している。
【0035】
図1〜3には、食パン包装装置103のスクープを構成する下方スクープ151のみが示されている。なお、上方スクープは、公知の構成であるので、その構成の詳細は割愛し、図面からも省略している。なお、図1及び図2では、食パン包装装置103の下方スクープ151が正面視で示されている。図中、下方スクープ151が、その先端部151aと不図示の上スクープの先端部とにより包装部材を保持する位置に到達した前進位置にある状態が、実線で示されている。この状態で、インフィードコンベア105により搬送される食パンB1が下方スクープ151上に導入される。また、図3には、後退位置にある状態の下方スクープ152が、2点鎖線で示されている。
【0036】
図1に示されるように、L字形状の下方スクープ151の基部151aの上下方向位置は、搬送台25より上方であり、インフィード板123より下方である。また、下方スクープ151は、ディスチャージコンベア1の第1及び第2のフライト5、11の動作を干渉しない位置にあることは言うまでもない。
【0037】
食パンB1を保持する下方スクープ151は、搬送経路Pを横切る方向に視て(インフィードコンベア105の側面視で、又は図1の紙面の表裏方向に視て)、水平面を有する基部151aと、基部151aの下流側端部に連続し、上方に延在する下流側フランジ151bと、基部151aの上流側端部に連続する上流側フランジ151cと、を有する。さらに、下方スクープ151の基部151aは、水平に延在し、下流側フランジ151b及び上流側フランジ151cは、基部151aから離れるに従い、互いに離間するように延在する。また、基部151aに対して下流側フランジ151bが傾斜する角度αは、0度より大きく90度より小さい。さらに、基部151aに対して上流側フランジ151cが傾斜する角度βは、0度より大きく90度より小さく構成されている。
【0038】
また、搬送経路Pを横切る方向に視て、上流側フランジ151bは、その長さが、下流側フランジ151cの長さより短く寸法付けされ、インフィードコンベア105のインフィード下流端スプロケット115を越えてスクープ151の上流側から落下する食パンB1を確実に受けることができる形状を有している。
【0039】
また、搬送経路Pを横切る方向に視た、基部151aの長さは、食パンB1の1辺の長さbとほぼ同じに寸法付けされている。従って、傾斜する上流側フランジ151b及び下流側フランジ151cは、下方スクープ151に落下する食パンB1を、基部151a上へガイドする機能を有する。
【0040】
食パンB1が下方スクープ151に載置された後、下方スクープ151が後退位置(一点鎖線で示す状態(符号152))方向に後退すると、食パンB1が不図示の保持部材により搬送経路Pの上方に維持されるため、下方スクープ151の先端部151aに保持され、開口している包装部材内に食パンB1が収容される。
【0041】
さらに、スクープが完全に後退位置152に到達すると、不図示の保持部材に搬送経路Pの上方に維持されている包装された食パンB2が、下方スクープ151から第1のディスチャージコンベア3の搬送台5上に落下する。また、第1の実施形態では、下方スクープ151の基部151aの食パンB1が載置される領域と、第2の搬送台25bと、が水平であり、食パンB2が落下する前後の姿勢が同じである。結果として、第2の搬送台25bに対する食パンB2の着地を安定して行うことができる。
【0042】
〔ディスチャージコンベア〕
図1〜3に示されるように、食パン包装装置103の下流側に配置されるのは、ディスチャージコンベア1である。ディスチャージコンベア1は、包装された食パンB2を次工程へ搬送する。ディスチャージコンベア1について簡単に説明する。
【0043】
ディスチャージコンベア1は、主として、搬送経路Pに沿って配置され、食パンB2を搬送する第1のディスチャージコンベア3と、第1のディスチャージコンベア3に装着され、食パンB2を付勢するための第1のフライト5と、搬送経路Pに沿って配置され、第1のディスチャージコンベア3が通る搬送経路P上の領域と部分的に重なる領域である共通領域を通る第2のディスチャージコンベア9と、第2のディスチャージコンベア9に装着され、当該共通領域上で食パンB2を付勢するための第2のフライト11と、を備える。
【0044】
すなわち、第2の駆動スプロケット39は、上流端スプロケット13より搬送経路Pに関し下流側に配置され、第2の従動スプロケット41は、下流端スプロケット15より搬送経路Pに関し上流側に配置される。)。従って、第1及び第2の無端チェーン17、37の動作が干渉しないように、第1の無端チェーン17及び第2の無端チェーン37の、搬送経路Pの短手方向に関する相対位置が、異なる。
【0045】
また、第2のディスチャージコンベア9により食パンB2を搬送する搬送速度(Y方向)は、第1のディスチャージコンベア3より食パンB2を搬送する搬送速度より早く設定されている。
【0046】
次に、ディスチャージコンベア1の駆動系について簡単に説明する。図1に示されるように、駆動モータ21の不図示の回転軸は、ウォームギア等(不図示)を介して駆動シャフト51に連結されている。駆動シャフト51の一端部には、第1の搬送スプロケット53が装着されている。第1の搬送スプロケット53と、駆動スプロケット19の回転軸に同心に固定されている第1の従動スプロケット55とは、第1の搬送駆動チェーン57により巻回されている。従って、駆動モータ21の回転力は、第1の搬送スプロケット53、第1の搬送駆動チェーン57、及び第1の従動スプロケット55を介して、第1の駆動スプロケット19に伝達される。
【0047】
さらに、図1に示す駆動シャフト51には、第2の搬送スプロケット59が装着されている。第2の搬送スプロケット59は、装置本体29のほぼ中央に配置される伝達機構61に第1の伝達チェーン63を介して連結されている。また、伝達機構61は、第2の伝達チェーン65により、伝達スプロケット67に連結される。伝達スプロケット67が装着される回転軸には、伝達スプロケット67と同心に、同軸スプロケット69が装着されている。図1に示されるように、同軸スプロケット69と、第2の駆動軸38に固定されている駆動伝達スプロケット71とには、第3の伝達チェーン73が巻回されている。よって、駆動モータ21の回転力は、各要素及び駆動伝達スプロケット71を介して第2の駆動スプロケット39に伝達される。
【0048】
伝達機構61の入力ギア83へは、入力ギア83と同軸である入力スプロケット79に巻回されている第1の伝達チェーン63により回転力が伝達される。入力ギア83の回転力は、入力ギア83に噛合する出力ギア85に伝達される。出力ギア85は、第2の伝達軸77に装着されている。従って、出力ギア85の回転力が出力スプロケット81に伝達される。出力スプロケット81と、伝達スプロケット67とは、第2の伝達チェーン65により巻回されている。従って、出力スプロケット81の回転力は、第2の伝達チェーン65を介して伝達スプロケット67へと伝達される。
【0049】
上述の通り、第1の実施形態の食パン搬送装置1では、単一の駆動モータからの回転力により、第1のディスチャージコンベア3及び第2のディスチャージコンベア9が作動する。また、第1のディスチャージコンベア3及び第2のディスチャージコンベア9の搬送速度は、上述した駆動系を構成する要素の数や寸法等を変えることにより調節することができる。
【0050】
〔食パン包装システムの動作〕
インフィードコンベア105は、前工程で製造された食パンB1を第1のインフィードフライト119により付勢し、搬送経路Pに沿って食パンB1を搬送する。第1のインフィードフライト119の移動速度は、定速であり、食パン包装装置103へ導入するタイミングに合わせて不図示の制御部により駆動モータ21が制御される。前述したように、第1のインフィードフライト119が、インフィード下流端スプロケット115に到達し、下流端軸149を周回し始めると、インフィード板123から下方スクープ151上に食パンB1が落下する。
【0051】
食パンB1が落下するとき、食パンB1が下方スクープ151上の所定位置に着地しない場合がある。これは、下方スクープ151とインフィード板123との高さが異なり、食パンB1自体が弾性を有するため、下方スクープ151上で落下する食パンB1が跳ねる場合があるからである。例えば、食パンB1が、上流側フランジ151aに部分的に乗り上げた場合、第1のインフィードフライト119に続く第2のインフィードフライト141が、下流端軸149を周回することにより、第2のインフィードフライト141のインフィード当接部(図4の119a参照。)により食パンB1を基台151aへと付勢する。従って、2つのフライトを備える構成により、食パンB1を下方スクープ151の所定位置に載置させることができる。
【0052】
このように、第1のインフィードフライト119は、インフィード板123から食パンB1を下方スクープ151へ落下させる機能を有し、第2のインフィードフライト141は、食パンB1が所定位置に位置決めするように食パンB1の位置を整合させる機能を有する。第1のフライト119及び第2のフライトの寸法や形状は、互いに異なる構成とすることも可能である。
【0053】
さらに、インフィード当接部119a(及び第2のインフィードフライトの当接部)は、その長手方向断面が円形状で回転可能である。従って、第1及び第2のインフィードフライト119、141が食パンB1から離れる際、すなわち、インフィード当接部119aがインフィード下流端スプロケット115の下流端軸149の回りを回動するに従い、インフィード当接部119aが食パンB1から滑らかに離間する。インフィード当接部119aをこのように構成することにより、食パンB1を変形させたり、傷づけたり、食パンの一部を削り取ることを防止できる。
【0054】
下方スクープ151に載った食パンB1は、包装工程に移行する。包装部材を保持する下方スクープ151が、後退位置152に戻ると、基台151aに載置された食パンB1は、包装部材内に収容されるとともに、ディスチャージコンベア1へ落下する。
【0055】
落下した食パンB2に最初に当接するのは、第2のフライト11である。搬送経路Pの共通領域では、第2のフライト11が食パンB2を搬送する。共通領域の最も下流側の位置、すなわち、第2のフライト11が第2の駆動スプロケット39を周回し、第2のフライトの当接部が、食パンB2から離れる地点まで、第2の無端チェーン37の搬送速度で食パンB2を移動する。
【0056】
第2のフライト11により第2の搬送台25b上に落下した食パンB2を、スクープの往復移動を妨げないような地点へ移動させることで、次の食パンB1に対する包装工程を開始できる。第2のフライト11により搬送された食パンB2は、第1のフライト5により、第1の搬送台25a上を摺動して搬送経路Pに沿って下流端スプロケット15の方向へ搬送される。
【0057】
〔第2の実施形態〕
第2の実施形態に係る食パン搬送装置205及び食パン包装システム201について説明する。第2の実施形態に係る食パン搬送装置205及び食パン包装システム201は、第1のインフィードフライトのみを備える点で、第1のインフィードフライト及び第2のインフィードフライトを備える第1の実施形態に係る食パン搬送装置105及び食パン包装システム101と異なる。
【0058】
食パン搬送装置205及び食パン包装システム201は、従来のパン搬送装置により次工程(パン包装システムの場合には、パン包装装置の下方スクープ)へパンが移送される際、パンの形状や材料によっては、フライトの突起部によりパンが変形したり、パンが傷付いたり、パンの一部が削り取られたりする恐れがある、という課題を解決することを目的とする。
【0059】
以下に、第2の実施形態に係る食パン包装システム201について図5、6を参照しつつ第1の実施形態と異なる点を主として説明する。なお、以下の説明において記載しない部材及び構成、並びに部材及び構成がもたらす機能、作用、効果は、第1の実施形態に係る食パン包装システム101と同じである。
【0060】
図5は、第2の実施形態に係る食パン包装システム201の主要要素を模式的に示す側面図、図6は、図5の食パン搬送装置205を主として示す平面図である。なお、図6では、各構成要素の明瞭化のため、食パン搬送装置205及び食パン包装装置103を実線で示し、ディスチャージコンベア1を2点鎖線で示す。
【0061】
食パン搬送装置、すなわちインフィードコンベア205は、主として、食パンB1が搬送される搬送経路Pの上流側及び下流側に配置される一対の転動体、すなわちインフィード上流端スプロケット113及び下流端スプロケット115と、インフィード上流端スプロケット113及び下流端スプロケット115に巻回され、搬送経路Pに沿って配置される無端回動体、すなわちインフィード無端チェーン118と、インフィード無端チェーン118に装着され、食パンB1を搬送経路Pに沿って付勢するフライト、すなわち第1のインフィードフライト119と、を備える。
【0062】
インフィード上流端スプロケット113とインフィード下流端スプロケット115は、搬送経路Pに沿って延在するインフィード搬送基台121に回転可能に固定されている。なお、第2の実施形態における上記所定位置は、下方スクープ151の基部151a上の水平面154である。
【0063】
また、インフィードコンベア205により食パンB1が搬送される搬送経路Pは、平面視(図6参照。)で矩形状の板部材であるインフィード板123により構成される。従って、インフィード板123は、インフィード本体121(図5参照。)の上面を構成する。インフィード板123は、インフィード本体121に水平に固定され、インフィード板123上を食パンB1が摺動する。なお、図6において、インフィード板123は、図面の明瞭化のため2点鎖線で示している。
【0064】
第1のインフィードフライト119は、右側インフィード無端チェーン部材118aと左側インフィード無端チェーン部材118bの周方向に等間隔で複数装着されている。第1のインフィードフライト119の形状は、図4に関連して説明した通りである。
【0065】
第1の実施形態と同様に、インフィードコンベア205には、装置本体29内に配置される駆動源である駆動モータ21により回転力が供給される(図3参照。)。駆動モータ21からの回転力により、インフィード駆動スプロケット111a、111bが回動すると、インフィード無端チェーン118は、矢印133方向に回動する。従って、前工程から供給される食パンB1は、インフィード板123上を第1のインフィードフライト119により、インフィード上流端スプロケット113側から、インフィード下流端スプロケット115側へと搬送経路Pに沿って搬送される。
【0066】
〔食パン包装システムの動作〕
インフィードコンベア205は、前工程で製造された食パンB1を第1のインフィードフライト119により付勢し、搬送経路Pに沿って食パンB1を搬送する。第1のインフィードフライト119の移動速度は、定速であり、食パン包装装置103へ導入するタイミングに合わせて不図示の制御部により駆動モータ21が制御される。前述したように、第1のインフィードフライト119が、インフィード下流端スプロケット115に到達し、下流端軸149を周回し始めると、インフィード板123から下方スクープ151上に食パンB1が落下する。
【0067】
インフィード当接部119aが断面円形状で回転可能である。従って、第1のインフィードフライト119が食パンB1から離れる際、すなわち、インフィード当接部119aがインフィード下流端スプロケット115の下流端軸149の回りを回動するに従い、インフィード当接部119aが食パンB1から滑らかに離間する。インフィード当接部119aをこのように構成することにより、第1のフライトが食パンから離れる際に、食パンに引っ掛かることがない。従って、パンを傷付けたり、パンの一部が削り取られたりすることなく次工程(又はスクープ)に搬送することができる。
【0068】
本発明のパン搬送装置は、パン包装システムではなく、包装部材の封をするための工程、パンをスライスするための工程といった種々の工程等で用いることが可能である。
【0069】
なお、第1及び第2のインフィードフライトのインフィード当接部は、円筒形状に限定されない。食パンに当接するインフィード当接部が所定の曲率半径を有する凸状の湾曲形状であれば良い。すなわち、インフィード当接部が下流端軸の回りを回動しつつ食パンから離間する際、パンを変形させたり、パンを傷つけたり、食パンの一部を削り取ることのない形状であればよい。また、インフィード無端チェーン及びインフィード当接部は、鋼鉄、炭素鋼、ステンレス鋼、及び合成樹脂等の種々の材料から形成することができる。
【0070】
第1の実施形態の食パン搬送装置は、第1のインフィードフライトと第2のインフィードフライトとを備える構成であり、第2の実施形態の食パン搬送装置は、第1のインフィードフライトを備える構成である。しかし、本発明はこの構成に限定されない。インフィードフライトの数や寸法は適宜変更でき、インフィードフライト間の距離も、搬送する対象の寸法や搬送先の載置位置に応じて変更できる。また、第1の実施形態では、第1のインフィードフライト及び第2のインフィードフライトとを別体としたが、第1及び第2のインフィードフライトを単一の部材から構成し、パンに当接するインフィード当接部を複数設ける構成とすることも可能である。
さらに、第1及び第2の実施形態では、回転力を伝達するためにスプロケットとチェーンとを用いているが、プーリとベルトとにより回転力を伝達することも可能である。
【0071】
なお、第1及び第2の実施形態の食パン包装装置は、ポリエチレン袋で食パンを包装する構成であるが、本発明は、この構成に限定されない。包装部材は、ポリプロピレン、ポリエステル、ナイロン等のプラスチック製の部材に限定されず、紙製、金属製、布製等の材料を用いてもよい。また、第1及び第2のフライト5、11の数は、任意に変更できる。
【0072】
また、第1及び第2の実施形態は、直方体形状の角型食パンを用いて説明したが、本発明は、角型食パンに限定されず、種々の寸法及び形状のパンを搬送するためのパン搬送装置やパンを切断するためのパン切断装置に適用できる。
【符号の説明】
【0073】
101、201 食パン包装システム
103 食パン包装装置
105、205 インフィードコンベア
111 インフィード駆動スプロケット
113 インフィード上流端スプロケット
115 インフィード下流端スプロケット
118 インフィード無端チェーン
119 第1のインフィードフライト
121 インフィード本体
123 インフィード板
141 第2のインフィードフライト
151 下方スクープ
151a 基部
151b 下流端フランジ
151c 上流端フランジ
B1 包装される前の食パン
B2 包装された食パン
P 搬送経路
1 ディスチャージコンベア
3 第1のディスチャージコンベア
5 第1のフライト
9 第2のディスチャージコンベア
11 第2のフライト
13 上流端スプロケット
15 下流端スプロケット
17 第1の無端チェーン
19 駆動スプロケット
21 駆動モータ
25a、25b 第1及び第2の搬送板
29 装置本体
37 第2の無端チェーン
38 第2の駆動軸
39 第2の駆動スプロケット
41 第2の従動スプロケット
51 駆動シャフト
53 第1の搬送スプロケット
55 第1の従動スプロケット
57 第1の搬送駆動チェーン
59 第2の搬送スプロケット
61 伝達機構
69 同軸スプロケット
71 駆動伝達スプロケット
73 第3の伝達チェーン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パンが搬送される搬送経路に沿って離間配置され回転可能な一対の転動体と、
前記一対の転動体に巻回され、前記搬送経路に沿って配置される無端回動体と、
前記無端回動体に装着され、前記搬送経路に沿って前記パンを付勢し、前記パンを所定位置へ搬送する第1のフライトと、
前記搬送経路に沿って前記第1のフライトの上流側で前記無端回動体に装着され、前記所定位置に前記パンを整合させるように前記パンを付勢する第2のフライトと、を備えることを特徴とするパン搬送装置。
【請求項2】
前記第1のフライト及び前記第2のフライトの一方又は両方の前記パンに当接する当接部は、湾曲面を有することを特徴とする請求項1に記載のパン搬送装置。
【請求項3】
前記第1のフライト及び前記第2のフライトの一方又は両方の前記当接部は、回動可能であることを特徴とする請求項2に記載のパン搬送装置。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載のパン搬送装置と、
前記パン搬送装置により前記パンが載置され、前記パンを包装するスクープを有するパン包装装置と、を備え、
前記所定位置が、前記基部上にあることを特徴とするパン包装システム。
【請求項5】
前記スクープは、前記パンが載置される基部と、前記搬送経路を横切る方向に視て前記基部の上流側端部から上方に突出する上流側フランジと、前記搬送経路を横切る方向に視て前記基部の下流側端部から上方に突出する下流側フランジと、を有し、
前記上流側フランジと前記下流側フランジとは、前記基部から離れるに従い互いに離間するように延在することを特徴とする請求項4に記載のパン包装システム。
【請求項6】
前記所定位置は、水平であることを特徴とする請求項4又は5に記載のパン包装システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2012−66891(P2012−66891A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−211466(P2010−211466)
【出願日】平成22年9月21日(2010.9.21)
【出願人】(000128728)株式会社オシキリ (40)
【Fターム(参考)】