説明

パン搬送装置

【課題】切断されることにより得られるパン片各々に対して均等に押圧力を付与し、パン片の搬送を所定方向に確実に行うことができるパン搬送装置を提供すること。
【解決手段】
パンを複数のパン片に切断するためのパン切断手段を通過するように前記パンを搬送するパン搬送装置であって、前記複数のパン片が形成される予定の、前記パンの複数のパン片形成予定部位に当接可能な複数のプッシャー部材を有する当接手段と、前記パンが前記パン切断手段を通過するように、前記当接手段を前記パン切断手段に対して相対移動させるための駆動手段と、を備え、前記複数のプッシャー部材の少なくとも一つが、前記複数のパン片形成予定部位の各々に当接した状態で、前記駆動手段により前記パン当接手段が前記パン切断手段に対して相対移動されるパン搬送装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定厚さのパン片に切断するためのパン切断手段へパンを搬送するためのパン搬送装置に関する。特に、切断されるパン片の枚数や厚さに拘わらず、パン片を確実にパン切断手段へ押し込み、またパン切断手段を通過するまで、切断されたパン片の各々を均等に付勢することができるパン搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、食パンを切断するためのパン切断手段である切断用ブレードにパンを押し込む手段として種々の構成の装置が利用されている。例えば、直方体形状である3斤長の食パンを切断用ブレードへ導入するための搬送手段として、サイドベルト方式又はトップベルト方式のパン搬送装置が知られている。
【0003】
サイドベルト方式のパン搬送装置は、例えば3斤長の食パンの長手方向に関し、対向する両側面に平行に延びる一対の無端ベルトを備え、食パンの当該両側面に無端ベルトを係合させた状態で当該無端ベルトを回動させることにより、切断用ブレードへ食パンを搬送する構成である。また、トップベルト方式のパン搬送装置は、例えば3斤長の食パンが搬送される搬送経路に沿って延在する無端ベルトを備え、当該無端ベルトの上に、食パンを載置した状態で、当該無端ベルトを回動させることにより、切断用ブレードへ食パンを搬送する構成である。
【0004】
上記したサイドベルト方式及びトップベルト方式のパン搬送装置により、無端ベルトの下流端部に到達した食パンは、無端ベルト上を後から搬送されてくる後続のパンにより押し出され、切断用ブレードに押し込まれ、パン片に切断される。
【0005】
また、サイドベルト方式及びトップベルト方式のパン搬送装置とは異なる構成のパン搬送装置として、単一の食パンを切断用ブレードへ押し込むための押送部材を備えるパン搬送装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。特許文献1に開示されるパン搬送装置の押送部材は、搬送経路の上流側及び下流側に往復移動できる構成であり、切断用ブレードより上流側の位置から、切断用ブレードの下流側の位置まで食パンを押送し、切断する構成である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3752619号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来のように、サイドベルト方式及びトップベルト方式のパン搬送装置では、切断用ブレードに対して、パンを所定の姿勢で押し込むことが難しく、さらに、切断用ブレードにより切断されたパン片の挙動を制御することが難しい。
【0008】
特許文献1に開示されるパン搬送装置では、切断ブレードにより形成されるパン片に対応する食パンの部位の一部を、押送部材で押す構成である。したがって、パンの切断片を形成することになる食パンの複数の部位に関し、また、切断された複数のパン片に関し、押送部材により押される部位やパン片と、押されない部位やパン片が生じ、パンの搬送に際してパン片の挙動を制御することが難しい。
【0009】
よって、パン片の搬送方向が一定にならない恐れがあり、所定厚さや形状のパン片が得られないことが考えられる。
【0010】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものである。すなわち、切断されることにより得られるパン片各々に対して均等に押圧力を付与し、パン片の搬送を所定方向に確実に行うことができるパン搬送装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明のパン搬送装置の第1の態様は、パンを複数のパン片に切断するためのパン切断手段を通過するように前記パンを搬送するパン搬送装置であって、前記複数のパン片が形成される予定の、前記パンの複数のパン片形成予定部位に当接可能な複数のプッシャー部材を有する当接手段と、前記パンが前記パン切断手段を通過するように、前記当接手段を前記パン切断手段に対して相対移動させるための駆動手段と、を備え、前記複数のプッシャー部材の少なくとも一つが、前記複数のパン片形成予定部位の各々に当接した状態で、前記駆動手段により前記パン当接手段が前記パン切断手段に対して相対移動される。
【0012】
また、本発明のパン搬送装置の第2の態様によれば、前記複数のプッシャー部材間の距離を調整できるピッチ調整手段を備え、前記複数のパン片の枚数に対応して前記ピッチ調整手段により前記複数のプッシャー間の距離が調整される。
【0013】
また、本発明のパン搬送装置の第3の態様によれば、第2の態様のパン搬送装置であって、前記ピッチ調整手段は、前記複数のプッシャー部材に連結されるリンク機構を有する。
【0014】
本発明のパン搬送装置の第4の態様によれば、第2又は第3の態様のパン搬送装置であって、前記複数のパン片が偶数枚の場合の前記複数のプッシャー部材間の距離と、前記複数のパン片が奇数枚の場合の前記複数のプッシャー部材間の距離とを、前記ピッチ調整手段により異ならせる。
【0015】
なお、本明細書において、下流側とは搬送経路に沿って食パンが搬送される方向のことであり、上流側とはその逆の方向のことを意味する。
【発明の効果】
【0016】
本発明にかかるパン搬送装置は、少なくとも一つのプッシャー部材がパン片の各々に当接した状態で、当接手段が駆動手段によりパン切断手段に対して相対移動する構成である。従って、本発明のパン搬送装置は、パン切断手段への導入及び通過するパン片を確実かつ正確に搬送させることができ、パン片を正確に切断できるとともに、次工程への搬送を確実にできる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】実施形態に係る食パン搬送装置を備える食パン切断システムの主要要素を模式的に示す側面図であり、食パンが切断空間へ押し込まれる前の状態を示す。
【図2】実施形態に係る食パン搬送装置を備える食パン切断システムの主要要素を模式的に示す側面図であり、食パン片が切断空間から押し出された状態を示す。
【図3】偶数枚の食パン片に切断する際の状態である食パン搬送装置の平面図である。
【図4】奇数枚の食パン片に切断する際の状態である食パン搬送装置の平面図である。
【図5】図3の矢印V−V方向に見た側面図である。
【図6】図3の矢印VI−VI方向に見た側面図である。
【図7】偶数枚の食パン片に切断する場合と、奇数枚の食パン片に切断する場合における切断用ブレードとプッシャー部材との位置関係を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明に係るパン搬送装置を適用した実施形態に係る食パン搬送装置について図面を参照しつつ説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0019】
〔食パン切断システム〕
図1は、実施形態に係る食パン搬送装置109を備える食パン切断システム101の主要要素を模式的に示す側面図であり、食パンBが切断空間へ押し込まれる前の状態を示し、図2は、実施形態に係る食パン搬送装置109を備える食パン切断システム101の主要要素を模式的に示す側面図であり、食パン片B’が切断空間から押し出された状態を示す。
【0020】
食パン切断システム101は、食パンB、食パン片B’が搬送される搬送経路21の上流側(図1、2の左右方向に関し右方)から下流側(図1、2の左右方向に関し左方)へ向かい、アキュームコンベア103、第1のエレベータ105、第1のプッシャー121、食パン搬送装置109、第2のエレベータ111、搬送経路21を図1の上下方向に横切る切断用ブレード113が回動している切断空間115、フライトコンベア117が、その順に配置されている。
【0021】
ここで、搬送経路21とは、アキュームコンベア103の図1、2における右端部から、切断空間115を通過し、フライトコンベア117の図1、2における左端部までの食パンB、B’が通る領域であって、食パンB及び食パン片B’を搬送するための、食パン(本実施形態では、直方体状で3斤長の食パンB)の長手方向(搬送方向に直交する方向)長さを少なくも有する、平面視で(図1、2における上下方向の上方から観て)矩形状の領域をいう。
【0022】
アキュームコンベア103は、従来から知られる搬送手段が用いられる。例えば、搬送経路21を横切る方向である幅方向(図1の紙面の奥行き方向)にそれぞれ、一対の駆動体および被駆動体が配置され、当該駆動体および被駆動体には、無端回動体が巻回される。無端回動体には、搬送経路を横切るように延びる複数の板状部材が固定されている。駆動体および被駆動体を回転させることで、複数の無端回動体の周方向に回動すると、食パンBを載せる板状部材が回動する。本実施形態のアキュームコンベア103により、食パンBが搬送経路21の上流側から下流側へ連続的に搬送される。
【0023】
アキュームコンベア103の下流側に配置される第1のエレベータ105は、前工程から連続して搬送される複数の食パンBから、単一の食パンBを分離する。本実施形態の第1のエレベータ105は、搖動中心を中心として搖動可能で、かつ、図1、2の上下方向に昇降可能な平坦な板部材から構成される支持部105aと、図1、2の上下方向に対して傾斜する方向に延びる傾斜部105bと、搖動中心回りに支持部105aを矢印119方向に搖動させる不図示の駆動部材と、を備える。
【0024】
第1のエレベータ105が下降位置(図2に示す状態)にあるとき、支持部105aが上流側から下流側へ向けて下方に傾斜した状態であり、単一の食パンBがアキュームコンベア103から第1のエレベータ105へ移送される。第1のエレベータ105に収容される食パンBは、支持部105aと傾斜部105bとにより支持される。その後、第1のエレベータ105は、支持部105aが時計回りに搖動するとともに、ブレードアクセステーブル122と面一となる上昇位置に移動する(図1に示す状態)。
【0025】
搬送経路21に沿って第1のエレベータ105の下流側に配置されるブレードアクセステーブル122は、ほぼ水平に延在する。ブレードアクセステーブル122を介して、食パンBが第1のエレベータ105から食パン搬送装置109へ導かれる。ブレードアクセステーブル122に載置されている食パンBは、第1のプッシャー121により、所定のタイミングで食パン搬送装置109に移送される。
【0026】
第1のプッシャー121は、ブレードアクセステーブル122と平行に延びるフレーム部材107aと、フレーム部材107aの長手方向に沿って離間し配置される2つの搖動片107bと、搖動片107bのそれぞれに固定され、食パンBに当接する爪部107cと、を有する。搖動片107bは、公知の駆動手段により矢印123方向に搖動可能に構成されている。
【0027】
図1、2に示すように、搖動片107bを時計回りに搖動させ、パンBに爪部107cが当接できる当接位置に移動する。この状態で、フレーム部材107aがエアシリンダ等のアクチュエータにより搬送経路21に沿って図1、2中の左方向に移動する。上流側(図1中右側)の爪部107cによりブレードアクセステーブル122の中央付近まで食パンBが搬送されると、搖動片107bは、矢印123方向において反時計回りに搖動し、爪部107cの食パンBに対する係合が解除され、食パンBと爪部107cが互いに干渉しない退避位置に移動する。
【0028】
爪部107cが退避位置にある状態で、フレーム部材107aが、上流側の初期位置に戻る(図1の状態)。初期位置で、爪部107cが矢印方向123に関し時計回りに搖動し、爪部107cが当接位置に降下し、ブレードアクセステーブル122の中央部辺りに載置されている食パンBに係合する。さらに、フレーム107aが下流方向に移動すると、当該食パンBが第2のエレベータ111に移送される。
【0029】
第2のエレベータ111は、図1,2の紙面の上下方向に昇降可能な構成である。図2に示すように、第2のエレベータ111の載置部111aが、ブレードアクセステーブル122とほぼ面一である載置位置にあるときに、第1のプッシャー121の下流側の爪部107bにより、第2のエレベータ111の載置部111aに移送される。載置部111aは、不図示の駆動手段により、切断用テーブル125と面一になる下方位置まで降下する。
【0030】
切断用テーブル125は、切断用ブレード113により食パンBの切断が行われる切断空間115の下面を規定する部材である。載置部111aが下方位置に到達すると、食パン切断システム101の制御を司る制御手段からの指令により、後述する当接手段を有する食パン搬送装置109が、食パンBを切断空間115内へ押し込む。食パン搬送装置109の構成については後述する。
【0031】
切断空間115に押し込まれた食パンBは、複数の切断用ブレード113により複数の食パン片B’に切断される。切断用ブレード113は、複数のエンドレスブレードから構成され、切断空間115に関し上下方向に離間配置されるブレードガイド126、127により、複数のエンドレスブレードは所定のピッチ(すなわち食パン片B’の厚さ寸法に対応する)で配置されている。切断された食パン片B’は、切断空間115の下流側に配置されるフライトコンベア117により、次工程へ移送される。
【0032】
フライトコンベア117は、従来から知られている構成の搬送手段である。例えば、一対の駆動体及び被駆動体と、駆動体及び被駆動体に巻回されている無端回動体と、その周方向に沿って所定間隔で離間配置されている複数のフライト117a、すなわち、搬送経路21を横切る方向に延在する棒状部材と、を備え、フライト117aにより食パン片B’が付勢されることで、食パン片B’が下流側に搬送される。
【0033】
〔食パン搬送装置〕
以下に、食パン搬送装置109について、図3〜図7を参照しつつ説明する。図3は、偶数枚の食パン片B’に切断する際の状態である食パン搬送装置109の平面図であり、図4は、奇数枚の食パン片’に切断する際の状態である食パン搬送装置109の平面図であり、図5は、図3の矢印V−V方向に見た側面図であり、図6は、図3の矢印VI−VI方向に見た側面図であり、図7は、偶数枚の食パン片に切断する場合と、奇数枚の食パン片に切断する場合と、における切断用ブレード113とプッシャー部材11a、11bとの位置関係を示す模式図である。なお、食パン切断システム101の食パン搬送装置109の上面に配置されている、ブレードアクセステーブル122は、図面の明瞭化のため図3、4から割愛している。
【0034】
食パン搬送装置109は、主として、当接手段すなわち第2のプッシャー1と、第2のプッシャー1を移動するための駆動手段であるアクチュエータ2と、を備える。第2のプッシャー1は、3つのプッシャー組立体3、5、7を備える。プッシャー組立体3、5、7は、一部を除いて同じ構造、形状及び寸法であるので、プッシャー組立体3を説明し、プッシャー組立体5、7については、プッシャー組立体3と異なる要素についてのみ説明する。
【0035】
プッシャー組立体3は、プッシャー部材、すなわち2つの固定プッシャー部材11a、4つの可動プッシャー部材11b、1つの補助プッシャー部材11cを備え、プッシャー部材11a、11b、11cは、互いに平行に配置されている。
【0036】
固定プッシャー部材11aは、図3、5に示されるように、搬送経路21の長手方向(矢印17)に延在し所定厚さの板状部材から構成されている。固定プッシャー11aの、下流側の先端部は、当接部19aである。2つの固定プッシャー部材11aの当接部19aは、搬送経路21に対してほぼ垂直方向に延び、所定の高さ寸法を有し、それぞれ食パン片B’−1及びB’−4に当接する。固定プッシャー部材11bの上流側の部位である固定部22aは、搬送経路21の幅方向(図3の上下方向)に延在するフレーム部材15に締結部材により固定されている。
【0037】
可動プッシャー部材11bは、図3に示されるように、搬送経路21の幅方向に関し、2つの固定プッシャー部材19a間に配置されている。可動プッシャー部材11bは、後述するリンク機構13の従動リンク23に固定されている。本実施形態では、二つの従動リンク23に対してそれぞれ、三つの可動プッシャー部材11bが装着されている。
【0038】
図6に示されるように、各可動プッシャー部材11bは、所定厚さの板状部材から構成され、各可動プッシャー部材11bの形状及び寸法は同じである。また、固定プッシャー部材11aの当接部19aと同様に、各可動プッシャー部材11bの下流側の先端部を構成する各当接部19bは、同寸法及び同形状であり、食パンB又は食パン片B’に当接する。可動プッシャー部材11bの上流側の部位を構成する固定部22bは、従動リンク23(図3、4参照。)に締結部材等により固定される。なお、三つの可動プッシャー部材11bの内、一つの可動プッシャー部材11bは、従動リンク23に直接固定され、他の二つのプッシャー部材11bは、所定厚さ(搬送経路21の幅方向(搬送経路17に直交する方向)に関する所定長さ寸法)のスペーサー25を介して従動リンク23に固定されている。
【0039】
また、図3において、搬送経路21の幅方向に関し、最も下方に配置されているプッシャー組立体3は、パンの耳部に対応する食パンBの部位に当接する補助プッシャー部材11cを備える。補助プッシャー部材11cの先端部を構成する当接部19cが食パンBに当接する。なお、食パンBの耳部の処理を考慮しない場合には、補助当接部11cを設ける必要がない。
【0040】
図3において、搬送経路21の幅方向に関し、最も上方に配置されるプッシャー組立体7も、同様に補助プッシャー部材11cを備える。また、補助プッシャー部材11cは、固定プッシャー部材11aから所定の距離だけ離れて固定されている。なお、図3において、搬送経路21の幅方向のほぼ真ん中に配置されるプッシャー組立体5は、補助当接部11cを備えない。
【0041】
また、三つのプッシャー組立体3、5、7の全ての当接部19a、19b、19cは、その下流側の先端縁部が、平面視で面一になるように配置されている。これは、被当接物である食パンの外形に確実に当接できるように、配置しているためである。すなわち、被当接物の外形の輪郭に沿うように当接部19a、19b、19cを配置すると、当接部19a、19b、19と被当接物との接触を確実に実現できる。
【0042】
図3において、当接部19a、19b、19cの下流側には、二点鎖線で示された食パン片B’−1、B’−2、B’−3、B’−4が示されている。これは、一斤を4枚切りに切断した状態である。また、切断線C1、C2、C3は、食パン片B’−1、B’−2、B’−3、B’−4の境界を示すとともに、切断用ブレード113が通過したことを示している。このように、プッシャー組立体3が搬送方向に沿って下流側に移動しても、固定プッシャー部材19a、可動プッシャー部材11b、及び補助プッシャー部材19cと、切断用ブレード113は、干渉しないように位置決めされている。
【0043】
なお、図3中には、三つのプッシャー組立体3、5、7に対応して、それぞれ4枚に切断された食パン片B’−1、B’−2、B’−3、B’−4、6枚に切断された食パン片B’、及び8枚に切断された食パン片B’が示されている。この図から、所定枚数に切断される食パン片B’(又は食パン片が形成される予定の複数の食パン片形成予定部位)に当接するプッシャー部材11a、11b、11cと、切断用ブレード113が通る位置と、が干渉しないように、各プッシャー組立体3、5、7が構成されていることがわかる。
【0044】
さらに、図3には、3斤分の食パンBが一斤分毎に異なる枚数の食パン片に切断された状態で示されているが、本発明は、一回の搬送工程において、3斤分の食パンBを、それぞれ異なる枚数の食パン片に切断するための食パン搬送装置109に限定されることを意味するものではない。切断される食パン片の枚数は、3斤分の食パンについて全て同じ枚数の食パン片に切断するなど、任意に設定できる。図4に示される食パンB’の枚数についても同様である。
【0045】
〔リンク機構〕
次に、複数の可動プッシャー部材11b間の距離を調整可能にするピッチ調整手段であるリンク機構13について説明する。三つのプッシャー組立体3、5、7が備える三つのリンク機構13は、同形状で同寸法であるので、搬送経路21の幅方向に関し最下方に配置され、先に説明したプッシャー組立体3が備えるリンク機構13について説明する。
【0046】
リンク機構13は、図3、6に示されるように、搬送経路21の長手方向(矢印17)に延びる連結リンク41と、連結リンク41の一端部に連結されるセンターリンク43と、連結リンク41の他端部に連結される揺動リンク73と、センターリンク43に枢動可能に共通の軸支ピン44により軸支される一端部を有する2つ一組のサイドリンク45、47と、サイドリンク45、47それぞれの他端部に枢動可能に軸支ピン46、48で軸支される2つの従動リンク23と、従動リンク23を搬送経路21の長手方向(矢印17)に往復移動可能に支持するリンク支持部材49、51と、を有する。また、サイドリンク45、47の長手方向中央部には、その揺動可能範囲を規制するための規制リンク53、55の一端部が、ピンにより軸支される。規制リンク53、55の他端部は、センターリンク43の搬送経路21の長手方向に縦長の規制穴59、61に挿入されている共通ピン54に枢動可能に連結されている。
【0047】
また、リンク支持部材49、51の長手方向に関する両端部は、それぞれ、固定プッシャー部材11aに固定されている。したがって、サイドリンク45、47がセンターリンク43から離接するように揺動すると、従動リンク23がセンターリンク43から離接する。そして、サイドリンク45、47の揺動範囲は、規制リンク53、55に規制されているので、従動リンク23がセンターリンク43に対して離接できる範囲も制限される。
【0048】
さらに、リンク機構13は、リンク駆動手段、例えばエアシリンダ65により駆動される。エアシリンダ65により搬送経路21の長手方向(矢印17)に往復移動するピストン部材67には、リンク駆動軸69が連結されている。リンク駆動軸69は、搬送経路21の幅方向に延在し、フレーム部材15に装着されている駆動軸支持部71により搬送経路21の長手方向に摺動可能に支持されている。駆動軸支持部71には、連結リンク41にピン結合されている搖動リンク73が固定されている。揺動リンク73が、矢印74方向に揺動すると、連結リンク41が搬送経路21の長手方向(矢印17)に往復移動する。
【0049】
従って、エアシリンダ65を作動させ、ピストン部材67を往復移動させると、センターリンク41が搬送方向の上流側又は下流側に移動し、従動リンク23をセンターリンク41から離間させたり、センターリンク41に近づけたりする。結果として、可動プッシャー部材11bの搬送経路21の幅方向に関する位置決めを行うことができる。複数枚の食パン片B’を得る場合には、図3のように、可動プッシャー部材11bを位置決めし、奇数枚の食パン片B’を得る場合には、図4のように、可動プッシャー部材11bを位置決めする。
【0050】
なお、リンク駆動軸69には、3つのプッシャー組立体3、5、7の各揺動リンク73が固定されているので、3つのプッシャー組立体3、5、7は、同期して作動される。
【0051】
フレーム部材15は、その長手方向の両端部がガイドフレーム79に固定されている(図3参照。)。ガイドフレーム79は、平面視で略三角形状であり、略三角形の頂部と、その頂部に対向する底辺部材とに、固定されている。また、ガイドフレーム79の底辺部材の両端部には、車輪77が回転可能に装着されている。
【0052】
食パン搬送システム101の筐体(不図示)には、搬送経路21(矢印17)に沿って延在するガイドレール75が設けられている。車輪77は、搬送経路21(矢印17)の幅方向の外方(図3の上方及び下方)から2つのガイドレール75を挟むように係合し、車輪77がガイドレール79上を転動する構成である。
【0053】
さらに、ガイドフレーム79の底辺部には、ガイドフレーム79を搬送経路21の長手方向(矢印17)に往復移動させるための駆動手段(すなわちアクチュエータ2)が連結されている。本実施形態のアクチュエータ2は、食パン切断システム101の筐体(不図示)に装着されている駆動部141と、駆動部141に連結され、搬送経路21の長手方向に沿って往復移動可能な被駆動部材143と、を有する。
【0054】
従って、被駆動部143にガイドフレーム79及びフレーム部材15を介して連結されている三つのプッシャー組立体3、5、7が、駆動部141により食パン切断システム101の筐体に対して相対的に移動できる。図5にガイドフレーム79が矢印17方向に往復移動する行程が実線及び2点鎖線で示されている。
【0055】
〔ピッチの規定方法〕
次に、プッシャー組立体3、5、7の可動プッシャー部材11bのピッチを規定する方法について説明する。図7は、食パンを切断して得られる食パン片の枚数に応じた切断用ブレードの位置を模式的に示す図である。図中において、その上下方向に配置されるN5、N7は、それぞれ一斤長の食パン(115mm)を5枚切り、7枚切りにする場合の、切断用ブレードと、プッシャー部材11a、11b、11cとの位置関係を示す。同様に、N4、N6、N8は、一斤長の食パンを4、6、8枚に切断する場合の、切断用ブレードとプッシャー部材11a、11b、11cとの位置関係を示す。
【0056】
図7に示されるように、切断される一斤長の食パンを食パン片に切断する場合、その食パン片の枚数に応じて、切断用ブレードの位置を変える必要がある。
【0057】
ここで、切断される食パン片の枚数が偶数(例えば、4枚、6枚又は8枚)のときには、一斤長に関する食パンの中心線Cを通る位置に切断用ブレードN4、N6、N8が必ず通り、その他の切断用ブレードN4、N6、N8は、中心線Cに関して対称の位置を通る。
【0058】
一方、切断される食パン片の枚数を奇数(例えば、5枚又は7枚)にすると、一斤長の食パンに関する中心線Cを通る位置に切断用ブレードN5、N7は通らない。一斤長の食パンに関する中心線Cを通る切断用ブレードN4、N6、N8を基準に考えると、5枚及び7枚に切断する場合には、中心線Cに最も近い切断用ブレードN5、N7が、それぞれ11.5mm、及び8.2mmだけ中心線Cからずれた位置となる。なお、この切断用ブレードのオフセット量は、ブレードガイドユニット126、127(図1、2参照。)で調整される。
上記の食パン片の枚数が奇数のときのオフセット量は、以下の数式1により求まる。
【0059】
〔数1〕
オフセット量=切断される食パンの長さ÷3(切断される食パンの斤数)÷ 奇数枚数 × 1/2
【0060】
なお、上記オフセット量は、偶数枚の食パン片B’を得るために配置された切断用ブレード(N4、N6、N8)の内、中心線Cを通る切断用ブレードから、奇数枚の食パン片B’を得るための、中心線Cから最も近い位置に配置されている切断用ブレード(N5、N7)までの距離を示す。隣り合う2つの切断用ブレード113は、中心線Cから最も近い2つの切断用ブレード間の距離と同じ間隔で配置される。本実施形態では、偶数枚の食パン片B’を得る際の切断用ブレードの配置を基準にし、奇数枚の食パン片B’を得る際の切断用ブレードを位置決めしているが、奇数枚の食パン片B’を得る際の切断用ブレードの配置を基準にし、偶数枚の食パン片B’を得る際の切断用ブレードの位置決めすることも可能である。
【0061】
可動プッシャー部材11bは、リンク機構13により調整される。具体的には、図7に示すように、食パンBを8枚に切断する場合には、各プッシャー部材11a、11bは、切断用ブレードN8間を通り抜けるように移動する。また、食パンを4枚又は6枚に切断する場合には、すべての切断用ブレードN4、N6間の隙間を通るように配置されるが、隣り合う2つの切断用ブレードN4、N6、N8間に、複数のプッシャー部材11a又は11bが通るように配置されることもある。いずれの場合でも、少なくとも切断用ブレードN4、N6、N8間には、少なくとも一つのプッシャー部材11a、11bが通る構成である。結果として、食パンBの食パン片が形成される予定の複数のパン片形成予定部位のそれぞれは、少なくとも一つのプッシャー部材11a、11bにより、切断空間115内へ押し込み、切断空間115外へ食パン片が押し出される構成である。
【0062】
なお、本実施形態では、奇数枚(5、7枚)の食パン片B’を得る場合の、固定プッシャー部材11aに対して最も近くに配置される可動プッシャー部材11bの長手方向の中心線と、中心線Cとの間の距離が、30mmである。一方、偶数枚(4、6、8枚)の食パン片B’を得る場合の、固定プッシャー部材11aに最も近くに配置される可動プッシャー部材11bの長手方向の中心線と、中心線Cとの距離が、35mmである。しかしながら、本発明はこの寸法関係に限定されることなく、適宜変更可能である。
【0063】
次に、食パンBを7枚又は5枚に切断する場合には、前述の数式1により、オフセット量が得られる。そのオフセット量に基づき、切断用ブレードN5、N7間を通り抜けることができるように、リンク機構13を用いて、可動プッシャー部材11bの位置決めを行う。
【0064】
結果として、食パンを切断することで形成される各食パン片に対応する食パンの部位のそれぞれは、少なくとも一つプッシャー部材11a、11bにより、切断空間115内へ押し込み、押し出される構成である。
【0065】
なお、上記した食パン切断システム101は、食パン搬送装置109及びその他の各構成要素に電気的に連結され、各構成要素の制御を司る制御手段、当該システムを動作させるための種々の情報を入力するためのPCのキーボード等の入力手段、及び各構成要素を動作させるプログラム等を記憶する記憶手段等を備える。従って、各構成要素の駆動手段等は、オペレータが入力した情報に基づき、食パン制御システム101が動作する。
【0066】
〔食パン搬送装置の動作〕
上記構成の食パン搬送システム108は、以下の通り作動する。まず、食パン切断システム101のオペレータが、被切断対象である食パンBの寸法、切断する枚数等の情報を入力手段により入力する。食パン切断システム101の制御手段により、各構成要素は以下のように動作する。まず、入力された種々の情報に基づき、エアシリンダ65を駆動させ、各プッシャー組立体3、5、7の可動プッシャー部材11bの位置決めを行う。例えば、一斤部の食パンにつき4枚、6枚、8枚といった偶数枚に切断する場合には、図3に示すように、エアシリンダ65のピストン部材67を縮め、リンク駆動軸69を搬送経路21の下流側に移動させ、リンク機構13のサイドリンク45、47がセンターリンク43から相対的に離れた第1の位置に位置決めされる。
【0067】
また、一斤分の食パンにつき5枚及び7枚といった奇数枚に切断する場合には、図4に示すように、エアシリンダ65のピストン部材67を伸ばし、リンク駆動軸69を搬送経路21の上流側に移動させ、リンク機構13のサイドリンク45、47がセンターリンク43に相対的に近い第2の位置に位置決めされる。
【0068】
その後、制御手段は、アキュームコンベア103を駆動させ、第1のエレベータ105の方向へ食パンBを連続して搬送する。食パンBが第1のエレベータ105に到達する前に、第1のエレベータ105は、図2に示すように降下した状態となっている。従って、第1のエレベータ105により単一の食パンB1が、後続の食パンB1から分離される。第1のエレベータ105は、矢印119方向の時計回りに揺動し、支持部105aがブレードアクセステーブル122と面一となる。
【0069】
その後、第1のプッシャー121により、支持部105aに載置されている食パンBは、ブレードアクセステーブル122上を搬送され、第2のエレベータ111へ移送される。このとき、第2のエレベータ111の載置部111aがブレードアクセステーブルと面一となる第1の位置(図2に2つ目の食パンBが、移送された状態が示されている。)となっている。従って、食パンBは、第1のプッシャー121により、確実に載置部111aの所定位置に載置できる。
【0070】
食パンBが載置された第2のエレベータ111の載置部111aが第2の位置(図1参照。)に降下され、切断用テーブル125と面一になると、食パン搬送装置109の駆動部141を駆動して、プッシャー部材11a、11b、11cを搬送経路21の下流側にある切断空間115に食パンBを押し込む。さらに、食パンBが所定枚数に切断されるように、食パンBが切断用ブレード113を通りすぎるように移動させ(図2に最初の食パンBが切断ブレード113を通りすぎた状態で示されている。)、切断された食パン片B’は、フライトコンベア117に到達する。その後、制御手段から指令を受けた駆動部141により、フレーム部材15が搬送経路21の上流側に移動され、初期位置に戻る(図2に示す第2の食パン搬送装置の状態)。ここで、一の食パンBの切断工程が完了する。その後は、上記の切断工程が繰り返されることにより、複数の食パンBを切断することができる。
【0071】
本実施形態の食パン搬送装置は、食パン一斤分につき、最大8枚の食パン片に切断する構成としたため、一のプッシャー組立体3、5、7は、2つの固定プッシャー部材11aと、6つの可動プッシャー部材11bとを備える構成としたが、本発明はこの構成に限定されない。切断されるパン片各々に対応する部位が、食パンの切断前後において少なくとも一つのプッシャー部材が当接できる構成とすれは、本発明の効果は得られる。したがって、プッシャー部材の数を適宜変更できることは言うまでもない。
【0072】
また、ピッチ調整手段は、リンク機構に限定されない。偶数枚のパン片に切断する場合と、奇数枚のパン片を得る場合とで、プッシャー部材間の距離を調整できる機構であれば、ピッチ調整手段として利用できる。
【0073】
本実施形態のプッシャー組立体が備えるプッシャー部材は、8又は9個としたが、本発明は、本構成に限定されない。プッシャー部材の数は、切断されるパン片の枚数に応じて適宜変更できる。また、本実施形態では、食パンに当接するプッシャー組立体を移動させ、食パンを切断用ブレードに導入する構成としたが、本発明はこの構成に限定されない。切断用ブレード及びプッシャー組立体の一方又は両々を移動させ、プッシャー組立体に当接されるパンを切断用ブレードに相対的に離接させ、パンを切断できる構成であれば本発明の作用、効果を実現可能である。
【0074】
また、本実施形態は、直方体形状の角型食パンを用いて説明したが、本発明は、角型食パンに限定されず、種々の寸法及び形状のパンを搬送するためのパン搬送装置に適用できる。
【符号の説明】
【0075】
1 第2のプッシャー
2 アクチュエータ
3、5、7 プッシャー組立体
11a 固定プッシャー部材
11b 可動プッシャー部材
11c 補助プッシャー部材
13 リンク機構
19a、19b 当接部
21 搬送経路
101 食パン切断システム
103 アキュームコンベア
105 第1のエレベータ
108 パン搬送システム
109 食パン搬送装置
111 第2のエレベータ
113 切断用ブレード
115 切断空間
121 第1のプッシャー
122 ブレードアクセステーブル
125 切断用テーブル
141 駆動部
143 被駆動部材
B 食パン
B’ 食パン片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パンを複数のパン片に切断するためのパン切断手段を通過するように前記パンを搬送するパン搬送装置であって、
前記複数のパン片が形成される予定の、前記パンの複数のパン片形成予定部位に当接可能な複数のプッシャー部材を有する当接手段と、
前記パンが前記パン切断手段を通過するように、前記当接手段を前記パン切断手段に対して相対移動させるための駆動手段と、を備え、
前記複数のプッシャー部材の少なくとも一つが、前記複数のパン片形成予定部位の各々に当接した状態で、前記駆動手段により前記パン当接手段が前記パン切断手段に対して相対移動されることを特徴とするパン搬送装置。
【請求項2】
前記複数のプッシャー部材間の距離を調整できるピッチ調整手段を備え、前記複数のパン片の枚数に対応して前記ピッチ調整手段により前記複数のプッシャー間の距離が調整されることを特徴とする請求項1に記載のパン搬送装置。
【請求項3】
前記ピッチ調整手段は、前記複数のプッシャー部材に連結されるリンク機構を有することを特徴とする請求項2に記載のパン搬送装置。
【請求項4】
前記複数のパン片が偶数枚の場合の前記複数のプッシャー部材間の距離と、前記複数のパン片が奇数枚の場合の前記複数のプッシャー部材間の距離とを、前記ピッチ調整手段により異ならせることを特徴とする請求項2又は3に記載のパン搬送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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