説明

パン粉およびその製造法

【課題】
本発明の目的は、パン粉の品質を向上させるためのパン粉改良剤、パン粉の品質を向上させる方法、パン粉の製造方法および該方法により得られるパン粉を提供することにある。
【解決手段】
ラクトコッカス(Lactococcus)属もしくはストレプトコッカス(Streptococcus)属に属する乳酸菌の培養物またはその処理物をパン粉生地に添加しパン粉を製造することにより、優れた食感を有するパン粉を製造することができる。本発明のパン粉改良剤として、2種以上、好ましくは2〜3種の、ラクトコッカス属に属する乳酸菌の培養物またはその処理物とストレプトコッカス属に属する乳酸菌の培養物またはその処理物とを組み合わせて用いると効果的にパン粉の品質の改良を行なうことができるので好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パン粉の製造方法、パン粉、パン粉改良剤およびパン粉の品質改良方法に関する。
【背景技術】
【0002】
パン粉を利用したフライ食品は、西欧より取り入れられ、日本で発展を遂げた食品である。このフライ食品において、パン粉は非常に重要な役割を果たしている。パン粉に望まれる性質としては、例えば、フライに用いた際にサクサク感があること等があげられる。
パン粉の品質を改良する方法としては、乳化剤(特許文献1参照)、α−アミラーゼ(特許文献2参照)、食物繊維(特許文献3参照)、マンナン(特許文献4参照)、蛋白質と胆汁酸の結合物(特許文献5参照)、大豆種皮(特許文献6参照)等を生地に添加する方法、電極法で焼いたパンを使用する方法(非特許文献1参照)、パンブロックを圧延する方法(特許文献7参照)等が知られている。
【0003】
一方、ラクトコッカス(Lactococcus)属に属する微生物の培養物もしくはその処理物をパンの風味改善(特許文献8参照)、日持ち向上(特許文献9参照)、物性改善(特許文献10参照)等の目的で使用されることが知られている。しかし、該培養物をパン粉に求められる食感改善、物性改善に使用することは知られていない。
ラクトコッカス属およびストレプトコッカス属は、微生物の分類上近縁の関係にあり、これらの属間では属名や種名が頻繁に変更されている。
【0004】
【特許文献1】特開平10−295303号公報
【特許文献2】特開平9−168372号公報
【特許文献3】特開平2−20258号公報
【特許文献4】特開2003−38115号公報
【特許文献5】特開2001−299193号公報
【特許文献6】特開2001−204373号公報
【特許文献7】特開平8−131108号公報
【特許文献8】特開平5−49385号公報
【特許文献9】特開2004−81212号公報
【特許文献10】特開2001−78684号公報
【非特許文献1】食品と科学、1988年、第5巻、p. 114-117
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、パン粉の品質を向上させるためのパン粉改良剤、パン粉の品質を向上させる方法、パン粉の製造方法および該方法により得られるパン粉を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、下記(1)〜(10)に関する。
(1) ラクトコッカス(Lactococcus)属もしくはストレプトコッカス(Streptococcus)属に属する乳酸菌の培養物またはその処理物をパン粉生地に添加することを特徴とするパン粉の製造方法。
(2) ラクトコッカス属に属する乳酸菌がラクトコッカス・ラクティス(Lactococcus lactis)である、上記(1)の方法。
(3) ストレプトコッカス属に属する乳酸菌が、ストレプトコッカス・サーモフィラス(Streptpcoccusthermophilus)である、上記(1)の方法。
【0007】
(4) 上記(1)〜(3)のいずれかの方法で製造されたパン粉。
(5) ラクトコッカス属もしくはストレプトコッカス属に属する乳酸菌の培養物またはその処理物を含有することを特徴とするパン粉改良剤。
(6) ラクトコッカス属に属する乳酸菌がラクトコッカス・ラクティスである、上記(5)のパン粉改良剤。
【0008】
(7) ストレプトコッカス属に属する乳酸菌が、ストレプトコッカス・サーモフィラスである、上記(5)のパン粉改良剤。
(8) ラクトコッカス属もしくはストレプトコッカス属に属する乳酸菌の培養物またはその処理物をパン粉生地に添加することを特徴とするパン粉の品質改良方法。
【0009】
(9) ラクトコッカス属に属する乳酸菌がラクトコッカス・ラクティスである、上記(8)の方法。
(10) ストレプトコッカス属に属する乳酸菌が、ストレプトコッカス・サーモフィラスである、上記(8)の方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、パン粉の品質を向上させるためのパン粉改良剤、パン粉の品質改良方法、パン粉の製造方法および該方法により得られるパン粉を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明に用いられるラクトコッカス(Lactococcus)属に属する乳酸菌としては、例えばラクトコッカス・ラクティス(Lactococcus lactis)、ラクトコッカス・ラフィノラクティス(Lactococcus raffinolactis)等があげられ、ラクトコッカス・ラクティスが好適に用いられる。
本発明に用いられるストレプトコッカス(Streptococcus)属に属する乳酸菌としては、例えば、ストレプトコッカス・サーモフィラス(Streptococcusthermophilus)、ストレプトコッカス・シトロボラム(Streptococcuscitrovorum)、ストレプトコッカス・ラクティス(Streptococcuslactis)等があげられ、ストレプトコッカス・サーモフィラスが好適に用いられる。
【0012】
ラクトコッカス属に属する乳酸菌およびストレプトコッカス属に属する乳酸菌は、単独で用いてもよいし、組み合わせて用いてもよい。
本発明の乳酸菌の培養物としては、微生物、好ましくは乳酸菌の培養に用いられる通常の方法に従って、上記乳酸菌を培地に培養して得られる培養液があげられる。
乳酸菌の培養には、グルコース、シュークロース、マルトース等の炭水化物、糖蜜、植物油脂、酢酸等の有機酸、小麦粉、ライ麦粉等の穀物粉、アンモニア、酢酸アンモニウム、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、硝酸アンモニウム等の各種アンモニウム塩、全乳、全粉乳、脱脂粉乳、生クリーム等の乳製品、アミノ酸、ペプトン、肉エキス、酵母エキス、ペプトン、酵母エキス、麦芽エキス等を含む液体または固体培地が用いられるが、培地中に、全乳、全粉乳、脱脂粉乳、生クリーム等の乳製品が含まれていることが好ましい。
【0013】
培養は、温度5〜50℃、必要に応じ通気条件下で4時間〜10日間行なう。
培養終了後、培養液をそのまま、または該培養液より遠心分離、ろ過等の方法によって分離して得られる菌体または培養上清等を、本発明の乳酸菌の培養物として用いることができる。
本発明の乳酸菌の培養物は、生菌が含まれていることが望ましいが、加熱殺菌を加えたものや遠心分離、ろ過を行った培養液の上清であってもよい。
【0014】
発明の乳酸菌の培養物には、さらに本発明の効果を害しない範囲で、ラクトコッカスおよびストレプトコッカス属に属する乳酸菌以外の微生物の培養物が含まれていてもよい。
このような微生物としては、例えば、ラクトバチルス・デルブルッキイ(Lactobacillus delbrueckii)、ラクトバチルス・ブレイビス(Lactobacillusbrevis)、ラクトバチルス・プランタラム(Lactobacillus plantarum)、ラクトバチルス・サンフランシスエンシス(Lactobacillus sanfranciscencis)、ラクトバチルス・カゼイ(Lactobacillus casei)、ラクトバチルス・ヘルベティカス(Lactobacillus helveticus)等のラクトバチルス(Lactobacillus)属、ロイコノストック・クレモリス(Leuconostoc cremoris)等のロイコノストック(Leuconostoc)属、ペディオコッカス・アシディラクティシ(Pediococcusacidilactici)等のペディオコッカス(Pediococcus)属、エンテロコッカス・フェカリス(Enterococcus faecalis)等のエンテロコッカス(Enterococcus)属、テトラゲノコッカス・ハロフィラス(Tetragenococcushalophilus)等のテトラゲノコッカス(Tetragenococcus)属、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomycescerevisiae)等のサッカロミセス(Saccharomyces)属、クリベロマイセス・ラクティス(Kluyveromyces lactis)等のクリベロマイセス(Kluyveromyces)属に属する微生物があげられる。
【0015】
本発明の乳酸菌の培養物の処理物としては、培養液、菌体または培養上清の乾燥物、培養液、菌体または培養上清の凍結乾燥物、培養液または菌体の酵素処理物、培養液または菌体の超音波処理物、培養液または菌体の機械的摩砕処理物、培養液または菌体の溶媒処理物等があげられる。
乾燥物の調製には、自然乾燥、熱風乾燥、通風乾燥、送風乾燥、噴霧乾燥、減圧乾燥、天日乾燥、真空乾燥等の乾燥方法が用いられる。凍結乾燥物の調製には、凍結乾燥機等を用いる通常の凍結乾燥法が用いられる。酵素処理物の調製には、リゾチーム等の酵素が用いられる。超音波処理物の調製には、超音波発生機等を用いる通常の超音波処理方法が用いられる。機械的摩砕物の調製には、フレンチプレス、マントンガウリンホモゲナイザー、ダイノミル等を用いる摩砕方法が用いられる。溶媒処理物の調製には、エタノール、メタノール等のアルコール類が用いられるが、飲食品への利用という観点からはエタノールが好ましく用いられる。
【0016】
本発明の乳酸菌の培養物またはその処理物には、パン粉改良の機能が損なわれない範囲で、他の成分、例えば糖類、乳化剤、着色剤、香料、防腐剤、油脂等が含まれていてもよい。
糖類としては、例えば、グルコース、シュークロース、トレハロース等があげられる。
乳化剤としては、例えば、モノグリセリン脂肪酸エステル、レシチン等があげられる。
着色剤としては、例えば、カロチン等があげられる。
香料としては、例えば、バニラオイル、ミルクフレーバー等があげられる。
防腐剤としては、例えば、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム等があげられる。
油脂としては、例えば、バター、豚脂、牛脂、綿実油、コーン油、サフラワー油、大豆油、パーム油、パーム核油、ヤシ油、カカオ油、サラダ油、マーガリン、ショートニング、サラダ油等があげられる。
【0017】
本発明の乳酸菌の培養物またはその処理物は、本発明のパン粉改良剤としてパン粉生地に添加して用いることができる。
また、本発明のパン粉改良剤として、2種以上、好ましくは2〜3種の、ラクトコッカス属に属する乳酸菌の培養物またはその処理物とストレプトコッカス属に属する乳酸菌の培養物またはその処理物とを組み合わせて用いると効果的にパン粉の品質の改良を行なうことができるので好ましい。
乳酸菌の培養物またはその処理物の組み合わせは特に限定されるものではなく、上記で示したいずれの本発明の乳酸菌の培養物またはその処理物の組み合わせであってもよい。
【0018】
例えば、2種の乳酸菌の培養物またはその処理物を組み合わせる例としては、乳酸菌の組み合わせとして示すと、ラクトコッカス・ラクティスとラクトコッカス・ラフィノラクティス、ラクトコッカス・ラクティスとストレプトコッカス・サーモフィラス、ラクトコッカス・ラクティスとストレプトコッカス・シトロボラム、ラクトコッカス・ラクティスとストレプトコッカス・ラクティス、ラクトコッカス・ラフィノラクティスとストレプトコッカス・サーモフィラス、ラクトコッカス・ラフィノラクティスとストレプトコッカス・シトロボラム、ラクトコッカス・ラフィノラクティスとストレプトコッカス・ラクティス、ストレプトコッカス・サーモフィラスとストレプトコッカス・シトロボラム、ストレプトコッカス・サーモフィラスとストレプトコッカス・ラクティス、ストレプトコッカス・シトロボラムとストレプトコッカス・ラクティスとの組み合わせがあげられ、ラクトコッカス・ラクティスとストレプトコッカス・サーモフィラスとの組み合わせが好ましくあげられる。
【0019】
2種の乳酸菌の培養物またはその処理物を組み合わせる場合、それぞれの培養物の乾燥重量の比(以下、乾燥重量比ということもある)として1:0.25〜0.25:1、好ましくは、1:0.3〜0.3:1の範囲で用いると効果的にパン粉の品質の改良を行なうことができるので好ましい。
なお、乳酸菌の培養物またはその処理物の乾燥重量は、例えば、乳酸菌の培養物またはその処理物を105℃で4〜5時間送風乾燥し重量を測定する方法等により測定することができる。
【0020】
本発明のパン粉生地の製造方法は、本発明の乳酸菌の培養物またはその処理物をパン粉改良剤として添加する工程を有する以外は、通常のパン粉生地の製造方法を用いることができる。
代表的なパン粉生地の製造法としては、ストレート法、中種法等があげられる。ストレート法は、パン生地の全原料を最初から混ぜる方法であり、中種法は、穀物粉の一部に酵母および水を加えて中種をつくり、発酵後に残りのパン生地の原料を合わせる方法である。
【0021】
例えば、ストレート法では、パン粉生地の全原料をミキシングした後、20〜35℃で発酵させ、分割、ベンチを行い、成型、型詰めする。ホイロ(30〜45℃)を経た後、焼成(180〜240℃)する。中種法では、使用する穀物粉の全量の約7割、酵母、乳酸菌培養物、イーストフード等に水を加えミキシングし、20〜35℃で2〜5時間発酵させた後、穀物粉、水、食塩、砂糖、脱脂粉乳、ショートニング等、残りのパン生地の原料を追加し、ミキシング(本捏)、フロアータイム、分割、ベンチタイムを行い、成型、型詰めする。ホイロ(30〜45℃)を経た後、焼成(180〜240℃)する。
【0022】
本発明の乳酸菌の培養物またはその処理物のパン粉生地への添加は、パン粉生地製造のいずれの時期であってもよいが、中種法においては、中種に添加すると効果的にパン粉の品質を改良できるので好ましい。
本発明の乳酸菌の培養物またはその処理物は、パン粉生地中、穀物粉100重量部に対して、乾燥重量として0.1重量部以上、好ましくは0.1〜10重量部、さらに好ましくは1〜5重量部配合されるように添加される。
【0023】
本発明の乳酸菌の培養物またはその処理物以外のパン粉生地の原料としては、穀物粉、酵母、食塩からなる主原料と、糖類、乳製品、卵、油脂、改良剤等、必要に応じて添加される副原料とがあげられる。
これらのパン粉生地の原料は、穀物粉100重量部に対して、酵母1〜5重量部、食塩0.5〜2重量部、糖類0〜25重量部、乳製品0〜20重量部、卵0〜20重量部、油脂0〜20重量部、改良剤0〜10重量部が配合されることが好ましい。
【0024】
上記で得られるパン粉生地を焼成することにより、本発明のパン粉を得ることができる。
パン粉生地を焼成する方法としては、180℃程度以上の乾燥空気中で生地を焼成する方法、電極板を用いて、100〜200Vの電圧を負荷することによって生地を焼成する方法等があげられる。本発明のパン粉としては、例えば生パン粉、半生パン粉、ドライパン粉等があげられる。
【0025】
以下に、ストレート法で作成したパン粉生地を用いたばい焼法と電極法によるパン粉の一般的製法について例示する。
(1)ばい焼法
小麦粉、酵母、食塩、糖類、油脂、改良剤等の原料に、本発明の乳酸菌の培養物またはその処理物および水を加えて混捏する。該混捏物を20〜35℃で10〜120分間発酵(第1次発酵)する。ついで、生地を分割し、10〜30分間(ベンチタイム)放置する。
【0026】
放置後、生地を成形し、型に入れ、30〜45℃で一定の高さに生地が膨張するまで第2次発酵(ホイロ)を行う。次いで、180〜240℃で10〜60分間焼成してパンを得る。得られたパンを5〜20℃で18〜24時間放置する。放置後、粉砕機を用いてパンを粉砕しパン粉を製造する。
(2)電極法
小麦粉、酵母、食塩、糖類、油脂、改良剤等の原料に、本発明の乳酸菌の培養物またはその処理物および水を加えて混捏する。該混捏物を20〜35℃で10〜120分間発酵(第1次発酵)する。ついで、生地を分割し、10〜30分間(ベンチタイム)放置する。
【0027】
放置後、生地を成形し、型に入れ、30〜45℃で一定の高さに生地が膨張するまで第2次発酵(ホイロ)を行う。次いで、100〜200Vの電圧を10〜25分間通電し、焼成してパンを得る。得られたパンを5〜20℃で18〜24時間放置する。放置後、粉砕機を用いてパンを粉砕しパン粉を製造する。
本発明のパン粉は、フライにした場合に、サクサクとした食感を有するパン粉が得られるパン粉である。
以下に実施例を示す。
【実施例1】
【0028】
乳酸菌の培養物150g、小麦粉(強力粉、日清製粉社製)3000g、イースト(協和発酵工業社製)60g、イーストフード(協和発酵工業社製)3g、ぶどう糖92g、塩27.7g、ショートニング92g、乳化剤(理研ビタミン社製)3gおよび水1700mlからなる原料を仕込み、ミキサーを用いてミキシングした。なお、乳酸菌の培養物としては、ラクトコッカス・ラクティス(Lactococcus lactis)の培養物(ポルテヨーグルト種21、協和発酵工業社製)、ストレプトコッカス・サーモフィラス(Streptococcusthermophilus)とラクトバチルス・デルブルッキイ(Lactobacillusdelbrueckii)の培養物(ポルテロイヤルサワー、協和発酵工業社製)を用いた。
【0029】
ミキシングした生地を20℃で20分間発酵(第1次発酵)した。生地を分割し、15分間(ベンチタイム)放置した。放置後、生地を成形し、型に入れ、38℃で56分間第2次発酵(ホイロ)を行った。次いで、210℃で53分間焼成してパンを得た。得られたパンを5℃で24時間放置した。放置後、粉砕機を用いてパンを粉砕しパン粉を製造した。
【0030】
なお、それぞれ100gのラクトコッカス・ラクティスの培養物およびストレプトコッカス・サーモフィラスとラクトバチルス・デルブルッキイの培養物を105℃で5時間送風乾燥し、これらの培養物の乾燥重量を測定したところ、それぞれ、33.9gおよび42.5gであった。
【0031】
乳酸菌の培養物の代わりに水100mlを用いる以外は、上記と同様の方法によりパン粉を製造し、これをコントロールとして用いた。
えびに打ち粉をまぶし、バッター液〔100gのバッターミックス粉#2200(旭食品工業社製)および160gの水からなる〕を付着させた後、上記で得られたパン粉を衣付けし、175℃で4分間フライした。
【0032】
得られたえびフライを10人のパネラーが試食し、パン粉の食感について第1表に示す10段階の評価点で評価を行なった。
【0033】
【表1】

【0034】
食感についてのパネラーの評価点の平均値を第2表に示す。
なお、第2表において、乳酸菌の培養物としてラクトコッカス・ラクティスの培養物を用いた場合は、「ラクトコッカス」と表記し、ストレプトコッカス・サーモフィラスとラクトバチルス・デルブルッキイの培養物を用いた場合は、「ストレプトコッカス」と示す。
【0035】
【表2】

【0036】
第2表に示すとおり、ラクトコッカス・ラクティスの培養物、およびストレプトコッカス・サーモフィラスとラクトバチルス・デルブルッキイの培養物をそれぞれ用いて得られたパン粉は優れた食感を示した。
【実施例2】
【0037】
第3表に示す量のストレプトコッカス・サーモフィラスとラクトバチルス・デルブルッキイの培養物(ポルテロイヤルサワー)、小麦粉(強力粉、日清製粉社製)2070g、イースト(協和発酵工業社製)42g、イーストフード(協和発酵工業社製)3g、乳化剤(理研ビタミン社製)3g、および水1200mlまたは1100mlからなる中種原料を仕込み、ミキサーでミキシングした。ミキシングした生地を28℃で110分間発酵(第1次発酵)した。
【0038】
得られた生地に小麦粉(強力粉)930g、ぶどう糖32g、塩46g、ショートニング92gおよび水450mlからなる本捏原料を加え、ミキシングした後、15分間放置した。放置後、生地を成形し、型に入れ、38℃で56分間第2次発酵(ホイロ)を行った。
次いで、210℃で53分間焼成してパンを得た。得られたパンを5℃で24時間放置した。放置後、粉砕機を用いてパンを粉砕しパン粉を製造した。
【0039】
なお、上記方法において、乳酸菌の培養物の使用量が90gまたは180gの場合は中種原料に使用する水を1200mlとし、300gの場合は1100mlとした。
また、乳酸菌の培養物を用いない以外は、上記と同様の方法によりパン粉を製造し、これをコントロールとして用いた。この場合、中種原料に使用する水を1200mlとした。
【0040】
これらのパン粉を用いて得られたえびフライのパン粉の食感を、実施例1記載の方法に準じて評価した。
結果を第3表に示す。なお、第3表には、乳酸菌の培養物の乾燥重量、パン粉生地原料中の小麦粉100重量部に対する乳酸菌の培養物の乾燥重量(重量部)もあわせて示した。
【0041】
【表3】

【実施例3】
【0042】
乳酸菌の培養物として、ラクトコッカス・ラクティスの培養物(ポルテヨーグルト種21)、ストレプトコッカス・サーモフィラスとラクトバチルス・デルブルッキイの培養物(ポルテロイヤルサワー)を第4表に示す重量比で150g添加した生地を用いる以外は、実施例1と同様の方法によりパン粉を製造した。
【0043】
コントロールとして、実施例1で用いたものと同じものを用いた。
これらのパン粉を用いて得られたえびフライのパン粉の食感を、実施例1記載の方法に準じて評価した。
結果を第4表に示す。
なお、第4表には、ラクトコッカス・ラクティスの培養物の乾燥重量を1とした場合のストレプトコッカス・サーモフィラスとラクトバチルス・デルブルッキイの培養物の乾燥重量(以下、乾燥重量比という)もあわせて示した。
【0044】
【表4】

【0045】
ラクトコッカス・ラクティスの培養物と、ストレプトコッカス・サーモフィラスとラクトバチルス・デルブルッキイの培養物とを混合したものを乳酸菌の培養物として用いて得られたパン粉は、それぞれの乳酸菌の培養物を単独で用いて得られたパン粉と比べていずれも優れた食感を示した。特に、ラクトコッカス・ラクティスの培養物と、ストレプトコッカス・サーモフィラスとラクトバチルス・デルブルッキイの培養物とを乾燥重量比1:2.5で混合したものを用いて得られたパン粉は優れた食感を示した。
【実施例4】
【0046】
ラクトコッカス・ラクティスの培養物(ポルテヨーグルト種21)と、ストレプトコッカス・サーモフィラスとラクトバチルス・デルブルッキイの培養物(ポルテロイヤルサワー)とを1:2の重量比(乾燥重量比は1:2.5)で混合したものを乳酸菌の培養物として第5表に示す量用い、中種に使用する水の量を第5表に示す量用いる以外は、実施例2と同様の方法によりパン粉を製造した。これらのパン粉を用いて得られたえびフライのパン粉の食感を、実施例1記載の方法に準じて評価した。
結果を第5表に示す。なお、第5表には、乳酸菌の培養物の乾燥重量およびパン粉生地中の小麦粉100重量部に対する乳酸菌の培養物の乾燥重量(重量部)もあわせて示した。
【0047】
【表5】

【実施例5】
【0048】
ラクトコッカス・ラクティスの培養物(ポルテヨーグルト種21)と、ストレプトコッカス・サーモフィラスとラクトバチルス・デルブルッキイの培養物(ポルテロイヤルサワー)とを1:2の重量比(乾燥重量比は1:2.5)で混合したもの150g、小麦粉(強力粉)2070g、イースト(協和発酵工業社製)42g、イーストフード(協和発酵工業社製)3g、乳化剤(理研ビタミン社製)3g、および水1200mlまたは1100mlからなる中種原料を仕込み、ミキサーを用いてミキシングした。ミキシングした生地を28℃で110分間発酵(第1次発酵)した。
【0049】
得られた生地に小麦粉(強力粉、日清製粉社製)930g、ぶどう糖32g、塩46g、ショートニング92gおよび水450mlからなる本捏原料を加え、ミキシングした後、15分間放置した。放置後、生地を成形し、型に入れ、38℃で56分間第2次発酵(ホイロ)を行った。次いで、210℃で53分間焼成してパンを得た。得られたパンを5℃で24時間放置した。放置後、粉砕機を用いてパンを粉砕しパン粉を製造した。以下、このパン粉を中種パン粉という。
【0050】
乳酸菌の培養物150gを、中種原料ではなく本捏原料として加える以外は上記方法と同様の方法によりパン粉を製造した。以下、このパン粉を本捏パン粉という。
また、乳酸菌の培養物150gのうち、75gを中種原料として加え、残りの75gを本捏原料として加える以外は上記方法と同様の方法により、パン粉を製造した。以下、このパン粉を、中種/本捏パン粉という。
【0051】
さらに、乳酸菌の培養物としてラクトコッカス・ラクティスの培養物と、ストレプトコッカス・サーモフィラスとラクトバチルス・デルブルッキイの培養物とを1:2の重量比(乾燥重量比は1:2.5)で混合したもの150gを用いる以外は実施例1の方法と同様の方法によりパン粉を製造した。以下、このパン粉をストレート法により得られたパン粉という。
中種パン粉、本捏パン粉、中種/本捏パン粉およびストレート法により得られたパン粉をそれぞれ用いて得られたえびフライのパン粉の食感を、実施例1記載の方法に準じて評価した。コントロールとして、実施例1でのコントロールと同じものを用いた。
【0052】
結果を第6表に示す。
【0053】
【表6】

【0054】
本発明の乳酸菌の培養物を用いた場合、ストレート法、中種法のいずれの方法によっても優れた食感のパン粉を得ることができた。特に、中種法を用いた場合、優れた食感のパン粉を得ることができ、本発明の乳酸菌の培養物を中種に添加した場合、特に優れた食感のパン粉を得ることができた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラクトコッカス(Lactococcus)属もしくはストレプトコッカス(Streptococcus)属に属する乳酸菌の培養物またはその処理物をパン粉生地に添加することを特徴とするパン粉の製造方法。
【請求項2】
ラクトコッカス属に属する乳酸菌がラクトコッカス・ラクティス(Lactococcuslactis)である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
ストレプトコッカス属に属する乳酸菌が、ストレプトコッカス・サーモフィラス(Streptpcoccusthermophilus)である、請求項1記載の方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載された方法で製造されたパン粉。
【請求項5】
ラクトコッカス属もしくはストレプトコッカス属に属する乳酸菌の培養物またはその処理物を含有することを特徴とするパン粉改良剤。
【請求項6】
ラクトコッカス属に属する乳酸菌がラクトコッカス・ラクティスである、請求項5記載のパン粉改良剤。
【請求項7】
ストレプトコッカス属に属する乳酸菌が、ストレプトコッカス・サーモフィラスである、請求項5記載のパン粉改良剤。
【請求項8】
ラクトコッカス属もしくはストレプトコッカス属に属する乳酸菌の培養物またはその処理物をパン粉生地に添加することを特徴とするパン粉の品質改良方法。
【請求項9】
ラクトコッカス属に属する乳酸菌がラクトコッカス・ラクティスである、請求項8記載の方法。
【請求項10】
ストレプトコッカス属に属する乳酸菌が、ストレプトコッカス・サーモフィラスである、請求項8記載の方法。

【公開番号】特開2006−129786(P2006−129786A)
【公開日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−322756(P2004−322756)
【出願日】平成16年11月5日(2004.11.5)
【出願人】(000001029)協和醗酵工業株式会社 (276)
【出願人】(500180363)旭食品工業株式会社 (1)
【Fターム(参考)】