パン粉の製造方法

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明はパン粉の製造方法、更に詳細には従来のパン粉に比べて油で揚げた時の吸油量が少ないパン粉の製造方法に関し、フライ食品のカロリー低減に役立つものである。
【0002】
【従来の技術】近年、食のダイエット、ヘルシー志向が強まりカロリーの高い油脂含量の多い食品は敬遠される傾向にある。フライ食品に使用されるパン粉にもその兆しがみられパン粉の吸油を抑制するために特開平2−20258号には豆類から抽出した食物繊維細胞膜を配合したパン生地原料から製造したパン粉、特開平5−61号には穀類から調製された食物繊維を含有することを特徴とするフライ用パン粉が開示されている。
【0003】しかし、未だ吸油の抑制は不十分であり、またその効果を十分に発揮するためにはかなりの量の繊維質を配合する必要がありパン粉の品質も食感が硬い等不満足なものであった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】斯かる実状に於て、本発明者はフライ時の吸油が少なく、かつ食感の優れたパン粉を提供すべく種々研究を重ねた結果、製パン工程に於て、穀粉類に大豆粉および特定の加工澱粉を添加混合したものを主原料として用い、かつ焼成されるパンの体積を特定範囲に抑制せしめて発酵すれば、極めて良い結果が得られることを見い出し、本発明を完成した。
【0005】
【課題を解決するための手段】すなわち、本発明は製パン後粉砕してパン粉を製造する方法に於て、主原料として大豆粉および加工澱粉を添加した穀粉類を用い、かつ焼成されるパンの比容積が2.8〜3.6ml/gになるように発酵を抑制して焼成を行なうことを特徴とするパン粉の製造方法である。
【0006】本発明に用いられる穀粉類としては、小麦粉、ライ麦粉、コーンフラワー、米粉等が挙げられ、これらは2種以上混合使用しても良い。
【0007】本発明に用いられる大豆粉としては全脂大豆粉、脱脂大豆粉のどちらでも使用可能であるが、吸油抑制効果の面から特に加熱処理等で脱臭した全脂大豆粉が好ましく、またその添加量は穀粉類の2〜10重量%、特に4〜8重量%とするのが好ましい。添加量がこれより少ないとパン粉の組織が膜厚となり、歯ざわりの硬い食感となる。また添加量がこれより多いと大豆特有のにおいや味が強くなり、またパン粉が着色して黄色味が強くなる。
【0008】本発明に用いられる加工澱粉としては、ヒドロキシプロピルエーテル澱粉等の澱粉エーテル、リン酸エステル澱粉等の澱粉エステル、リン酸架橋澱粉等の架橋澱粉のような化学的処理をした澱粉誘導体あるいは湿熱処理等の物理的処理を行なったもの等の加工澱粉が好ましいものとして挙げられ、これらは1種又は2種以上を適宜組み合せて用いても良く、また複数の処理を施して得られたものを用いても良い。
【0009】これらの加工澱粉は、アミログラムを測定した時に、ブレークダウンすなわち最高粘度を示す温度以上に加熱した場合に生じる粘度低下現象が見られないか、又はブレークダウンの比率が10%以下の性質を示すものが好ましく、澱粉粒の膨潤が抑制されたものが本発明の目的を達成する上で特に良い結果を与える。
【0010】斯かる加工澱粉の添加量は、穀粉類の2〜5重量%、特に3〜4重量%とするのが好ましい。添加量がこれより少ないとパン粉の組織が膜厚となり、歯ざわりの硬い食感となる。また、添加量がこれより多いとフライ時のパン粉の吸油量が増加する。
【0011】本発明に於ては、原料として当該穀粉類、大豆粉および加工澱粉より成る主原料の他に、通常のパン粉製造に用いられる酵母、イーストフード、乳化剤、食塩、ショートニング等の副原料が適宜配合使用される。
【0012】本発明方法は上記の如き原料を用い、直捏法や中種法等の公知の製パン法に準じて製パン後、粉砕してパン粉を製造する(図1参照)が、製パン工程中の発酵は、パンの比容積が2.8〜3.6ml/gになるように抑制して行なわれる。この発酵は、通常抑制しない場合は比容積が4.0前後であるが、本発明ではこの発酵を通常の70〜90%に抑制することに特徴がある。比容積が前記範囲より小さいとパン粉の組織が膜厚となり、歯ざわりの硬い食感となり、また比容積がこれより大きいとフライ時のパン粉の吸油量が増大する。
【0013】斯かる発酵の抑制は、酵母、イーストフード、糖の添加量;ミキシング後の生地温度;発酵時間等を適宜調整することによって行なわれるが、特に作業性の点で酵母の添加量の調整により行なうのが好ましい。
【0014】また、焼成は電極を用いた通電式でも、オーブン等を用いた焙焼式でもよいが、本発明は特に通電式に適している。尚、粉砕後は乾燥して乾燥パン粉としても良く、また乾燥しないで生パン粉としても良い。
【0015】
【実施例】以下実施例を挙げて本発明を更に説明する。
【0016】実施例1〜4下記表1記載の配合原料を用い、表2記載の工程にて製パンした後、粉砕して生パン粉を得、次いで更に乾燥処理して乾燥パン粉を得た。尚、後記比較例5で得られるパンの体積を100としたときの各実施例で得られるパンの相対体積は後記表4の通りであった。
【0017】比較例1〜5下記表1記載の配合原料を用い、表2記載の工程にて製パンした後、粉砕して生パン粉を得、次いで更に乾燥処理して乾燥パン粉を得た。尚、比較例5で得られるパンの体積を100としたときの各比較例で得られるパンの相対体積は後記表4の通りであった。
【0018】
【表1】


【0019】表1中、・実施例及び比較例使用の全脂大豆粉は日清製粉(株)製「POS100」(商品名)、脱脂大豆粉はアメリカADM社製「Bakers Nutrisoy」(商品名)
・実施例及び比較例使用の加工澱粉は松谷化学工業(株)製の軽度リン酸架橋を施したヒドロキシプロピルエーテル澱粉「ファリネックスVA70C」(商 品名)〔ただし、実施 例4使用の加工澱粉は三和澱粉工業(株)製湿熱処 理澱粉「デリカスターH 100」(商品名)〕
【0020】
【表2】


【0021】試験例1実施例1〜5及び比較例1〜5で得た各パン粉10gを茶こしにとり、180℃で2分間フライした後、茶こしを傾けながら1分間油切りをする。その後、直径15cmのNo.2濾紙(ADVANTEC製)上にパン粉を展開し、5分間放置する。全体の重量を(W1)g、パン粉を除去した後の重量を(W2)gとする。別にフライ前のパン粉の水分含量(Mo:%)を測定し、水分は全てフライ中に蒸発すると仮定して次式で吸油量、吸油率を求めた。比較例5で得られるパン粉の吸油率を100としたときの相対吸油率は後記表4の通りであった。
【0022】
【数1】


【0023】試験例2豚肉切り身に打ち粉をまぶし、バッターを付着させた後、実施例1〜5及び比較例1〜5で得た各パン粉を衣付けし、180℃で4分間フライした。得られた各トンカツにつき、フライ直後及び冷却後ラップがけして室温で5時間放置後の食感の評価を熟練したパネラー10人により下記表3に示す評価基準に従って行なった。その結果の平均値は後記表4の通りであった。
【0024】
【表3】


【0025】
【表4】


【0026】試験例3実施例及び比較例で用いた加工澱粉のアミログラムを下記方法により測定結果は、図2及び図3の通りであった。
◎アミログラムの測定法澱粉45gを水450mlに懸濁させて25℃に調整し、これをブラベンダー社製アミログラフにかけた。25℃から92.5℃までは1.5℃/分ずつ昇温させ、92.5℃に達したところで同温度で10分間保持し、ついで62.5℃まで1.5℃/分ずつ降温(冷却)させて測定した。
【0027】
【発明の効果】本発明方法によれば、吸油量の少ないパン粉が得られるので、これを用いて各種フライ食品を製造すれば、カロリーを低減化したフライ食品を提供することができ、しかもフライ後の経時変化も少ないので、フライ直後のクリスピーな食感(さくさくして歯もろい食感)が長時間保持される。
【図面の簡単な説明】
【図1】パン粉の製造工程概略図。
【図2】松谷化学工業(株)製「ファリネックスVA70C」のアミログラム
【図3】三和澱粉工業(株)製「デリカスターH100」のアミログラム


【特許請求の範囲】
【請求項1】 製パン後粉砕してパン粉を製造する方法に於て、主原料として大豆粉および加工澱粉を添加した穀粉類を用い、かつ焼成されるパンの比容積が2.8〜3.6ml/gになるように発酵を抑制して焼成を行なうことを特徴とするパン粉の製造方法。
【請求項2】 大豆粉の添加量が穀粉類に対して2〜10重量%である請求項1記載のパン粉の製造方法。
【請求項3】 大豆粉が全脂大豆粉である請求項1又は2記載のパン粉の製造法。
【請求項4】 加工澱粉の添加量が穀粉類に対して2〜5重量%である請求項1〜3の何れか1項記載のパン粉の製造方法。
【請求項5】 加工澱粉が化学的処理、物理的処理又はこれらの複数処理を施して得られたものである請求項1〜4の何れか1項記載のパン粉の製造方法。
【請求項6】 加工澱粉が澱粉エーテル、澱粉エステル、架橋澱粉又は湿熱処理澱粉の何れか1種又は2種以上である請求項1〜5の何れか1項記載のパン粉の製造方法。
【請求項7】 加工澱粉が、そのアミログラムを測定した時に、ブレークダウンが見られないか、又はブレークダウンの比率が10%以下の性質を示すものである請求項1〜6の何れか1項記載のパン粉の製造方法。
【請求項8】 発酵抑制を酵母の添加量調整により行なうことを特徴とする請求項1〜7の何れか1項記載のパン粉の製造方法。
【請求項9】 製パンの際の焼成を通電式で行なうことを特徴とする請求項1〜8の何れか1項記載のパン粉の製造方法。


【図1】


【図2】


【図3】


【特許番号】特許第3270791号(P3270791)
【登録日】平成14年1月18日(2002.1.18)
【発行日】平成14年4月2日(2002.4.2)
【国際特許分類】
生活必需品 | 食品または食料品;他のクラスに包含されないそれらの処理 | A21DまたはA23BからA23Jまでに包含されない食品,食料品,または非アルコール性飲料;その調製または処理,例.加熱調理,栄養改善,物理的処理 | 食品または食料品;その調整または処理 | 穀類誘導製品を含有するもの | 肉,魚などの衣づけ用粒状穀粉類
生活必需品 | ベイキング;生地製造または加工の機械あるいは設備;ベイキングの生地 | ベイキングの穀粉または生地の処理,例.保存,例.材料の添加によるもの;ベイキング;ベイカリー製品;製品の保存 | ベイキング前または最中の添加材料による穀粉または生地の処理 | 有機物質の添加によるもの | 有機酸素化合物 | 炭水化物
【出願番号】特願平6−41323
【出願日】平成6年3月11日(1994.3.11)
【公開番号】特開平7−250641
【公開日】平成7年10月3日(1995.10.3)
【審査請求日】平成12年8月22日(2000.8.22)
【出願人】(398012306)日清フーズ株式会社
【参考文献】
【文献】特開 平6−169680(JP,A)
【文献】特開 平7−246072(JP,A)
【文献】特開 昭63−313555(JP,A)