説明

パーキング機構付ディスクブレーキ装置

【課題】アジャスト機構12a及びパーキング機構の構成部品のうちで、キャリパ5aに設けたシリンダ空間9aの奥部に組み込む部品の組み付け性の向上を図ると共に、組み付け作業の際にこのシリンダ空間9aの内周面を傷めにくい構造を実現する。
【解決手段】前記パーキングブレーキ機構の構成部品の一部をインナ、アウタ側両ケース45、46同士の間に組み込み、係止孔51、51と係止爪片55、55との係合により、これら両ケース45、46を結合して、インナ側補助組立体59としておく。この状態で、前記両係止爪片55、55の外接円の直径を小さくしておく。そして、前記インナ側補助組立体59を前記シリンダ空間9aに組み込んだ状態で、前記両係止爪片55、55を前記インナ側ケース45の外周面から大きく突出させて、これら両係止爪片55、55を、前記シリンダ空間9aの内周面に形成した係止凹部61に係合させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、パッドのライニングの摩耗に拘らず、非制動時に於けるこのライニングとロータとの間の隙間を適正値に保つ為のアジャスト機構を備えたパーキング機構付ディスクブレーキ装置の改良に関する。具体的には、これらアジャスト機構及びパーキング機構の構成部品のうちで、キャリパに設けたシリンダ空間の奥部に組み込む部品の組み付け性の向上を図る事を意図したものである。
【背景技術】
【0002】
走行時の制動(サービスブレーキ)を油圧式に行い、駐車時の制動(パーキングブレーキ)を機械式に行うパーキング機構付ディスクブレーキ装置が、例えば特許文献1〜3に記載される等により従来から広く知られている。図30〜31は、このうちの特許文献2に記載された構造を示している。先ず、この従来構造に就いて、簡単に説明する。車輪と共に回転するロータ1に隣接する状態で車体(ナックル等、懸架装置の構成部材)に固定するサポート2に対してインナ、アウタ両パッド3、4及びキャリパ5を、軸方向(本明細書及び特許請求の範囲で軸方向とは、特に断わらない限り、前記ロータ1の軸方向を言う)の変位を可能に支持している。前記キャリパ5は、アウタ側乃至中間部を構成する主部6と、インナ側端部を構成する副部7とをボルト8、8により結合固定して成る。このうちの主部6の反ロータ側半部に設けたシリンダ空間9内にピストン10を、スリーブ11を介して、軸方向の変位を可能に、且つ、液密に嵌装している。そして、前記ピストン10と前記副部7の奥端面との間に、このピストン10の側から順番に、アジャスト機構12とカム機構13とを設けている。
【0003】
サービスブレーキの作動時には、前記シリンダ空間9内に油圧を導入し(加圧したブレーキオイルを送り込み)、前記ピストン10を前記ロータ1に近づく方向に変位させて、前記インナパッド3を前記ロータ1のインナ側面に押し付ける。この押し付けの反作用として前記キャリパ5が前記サポート2に対しインナ側に変位し、このキャリパ5のアウタ側端部に設けたキャリパ爪14により前記アウタパッド4を、前記ロータ1のアウタ側面に押し付ける。この結果このロータ1が、軸方向両側から強く押し付けられて、制動が行われる。
【0004】
パーキングブレーキの作動時には、パーキングレバー15により、前記カム機構13を構成するカムシャフト16を回転させる。すると、この回転に基づく、ローラ17、17とカム面18a、18bとの係合状態の変化により、一対のカム部材19a、19b同士の間隔が拡がり、アジャストスピンドル20が前記ロータ1に近づく方向に押圧される。すると、このアジャストスピンドル20が、アジャストスクリュ21を介して前記ピストン10を前記ロータ1に近づく方向に押圧する。この結果、上述したサービスブレーキ時と同様に、インナ、アウタ両パッド3、4により、前記ロータ1を軸方向両側から挟持して、制動を行わせる。
【0005】
これら両パッド3、4を構成するライニングの摩耗が進むと、サービスブレーキ時に、前記アジャストスピンドル20に対して前記アジャストスクリュ21が、回動しつつ前記ロータ1に近づく方向に変位する。そして、サービスブレーキを解除した状態での、前記ピストン10の後退位置が前記ロータ1側に移動し、前記両パッド3、4を構成するライニングの摩耗を補償する。急制動等に於けるサービスブレーキの作動時等、過剰なブレーキ流体圧が前記ピストン10に加わった状態では、前記アジャストスクリュ21が前記アジャストスピンドル20に対して回動不能になり、前記アジャストスピンドル20がスプリング22の弾力に抗して、前記アジャストスクリュ21と共に前記ロータ1に近づく方向に移動する。この為、非制動時に前記両パッド3、4を構成するライニングと前記ロータ1の両側面とが擦れ合うほど前記ピストン10が前記ロータ1に近づく方向に変位する、所謂オーバアジャストが防止される。
【0006】
上述の様なパーキング機構付ディスクブレーキ装置は、図31から明らかな通り、細かい構成部品が多く、組立作業が面倒である。図30〜31に示した従来構造の場合には、キャリパ5を、主部6と副部7とに二分割している為、各構成部品のうちでパーキング機構を構成する部品のうちの多くを、前記副部7に組み付けてから、この副部7と前記主部6とを前記各ボルト8、8で結合する事により、組立作業を比較的容易に行える。但し、二分割型のキャリパを使用する事は、このキャリパを含めたパーキング機構付ディスクブレーキ装置の小型・軽量化を図る面からは不利である。パーキング機構付ディスクブレーキ装置の小型・軽量化を図る為には、特許文献1、3に記載された発明の構造の様に、一体型のキャリパを使用する事が好ましい。但し、この場合には、当該キャリパに設けたシリンダ空間の奥端部(反ロータ側端部)に、アジャスト機構を構成する為の細かな部品を組み付ける作業の容易化を図る為の考慮が必要になる。
【0007】
特許文献1には、構成部品をシリンダ空間の奥部内に組み込んで、適宜止め輪により抜け止めを図りつつ組み立てる技術が記載されているが、組立作業が面倒になる事は避けられない。これに対して特許文献3には、機械的な構造により推力を発生させるパーキング機構の構成部品を、カートリッジ(31)及びばね保持器(27)によりサブアッセンブリユニットとしてまとめた状態で、シリンダ空間内に収める技術が記載されている(明細書の段落[0027]部分及び図1、5)。但し、前記特許文献3に記載された発明の構造は、前記サブアッセンブリユニットを前記シリンダ空間外で組み立てる際に、前記カートリッジ(31)の一部を曲げ成形しつつ(再成形ラグ32を形成しつつ)このカートリッジ(31)と一部の部品(傾斜要素12)とを組み合わせる為、組み合わせ作業が面倒になる。しかも前記特許文献3に記載された発明の構造は、予め外部で組み立てた前記サブアッセンブリをキャリパのシリンダ空間内に押し込む際に、前記ばね保持器(27)の突出ラグ(28)がシリンダ空間(ボア4)の内周面と擦れ合い易い。そして、擦れ合った場合には、このシリンダ空間の内周面を傷付けてしまう可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2004−286202号公報
【特許文献2】特開2007−177955号公報
【特許文献3】特表2008−522106号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上述の様な事情に鑑みて、アジャスト機構及びパーキング機構の構成部品のうちで、キャリパに設けたシリンダ空間の奥部に組み込む部品の組み付け性の向上を図ると共に、必要とすれば、組み付け作業の際にこのシリンダ空間の内周面を傷めにくい構造を実現すべく発明したものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のパーキング機構付ディスクブレーキ装置は、前述した従来から知られているパーキング機構付きディスクブレーキ装置と同様に、ロータと、サポートと、インナパッド及びアウタパッドと、キャリパと、ピストンと、パーキング機構とを備える。
このうちのロータは、車輪と共に回転する。
又、前記サポートは、前記ロータに隣接して、車体に支持固定する。
又、前記インナパッド及びアウタパッドは、前記ロータを軸方向両側から挟む状態で、前記サポートに、軸方向の変位を可能に支持する。
又、前記キャリパは、アウタ側端部に前記アウタパッドのアウタ側面を押圧する為のキャリパ爪を、インナ側半部に前記インナパッドに向けて開口するシリンダ空間を、それぞれ設け、前記サポートに軸方向の変位を可能に支持する。
又、前記ピストンは、前記シリンダ空間の開口寄り部分に、軸方向の変位を可能に内嵌する。
又、前記パーキング機構は、前記シリンダ空間の奥端面と前記ピストンとの間に設け、前記シリンダ空間外に設けられたパーキングレバーの揺動変位に伴って回動する一部の部品の回転運動に伴って、軸方向寸法を拡げ、前記ピストンを前記インナパッドに向け押圧する。
【0011】
特に、本発明のパーキング機構付ディスクブレーキ装置に於いては、反ロータ側ケースとロータ側ケースとを備える。
そして、これら反ロータ側ケースとロータ側ケースとの間に、前記パーキング機構の構成部品のうちで、前記ピストンに対して組み付けられる部品以外の部品を組み付ける。又、このうちの反ロータ側ケースを、前記シリンダ空間の奥端部に内嵌支持すると共に、前記ロータ側ケースを、この反ロータ側ケースよりもロータ側に配置する。
又、これら両ケースのうちのロータ側ケースの反ロータ側端部に、このロータ側ケースの径方向に関して外方に向けて折れ曲がった複数の係止爪片を、同じく反ロータ側ケースの一部に、反ロータ側に向いた端縁を有する係止部を、それぞれ形成する。
そして、前記反ロータ側ケース及び前記ロータ側ケースを前記シリンダ空間の所定位置に組み付ける以前の状態で、前記各係止爪片と前記各係止部との係合に基づいて、前記両ケース同士が分離する事を防止する。
これに対して、これら両ケースのうちの反ロータ側ケースを前記シリンダ空間の奥端部の所定位置に内嵌し、更に前記ロータ側ケースをこのシリンダ空間の所定位置に組み付けた状態で、前記係止爪片を前記シリンダ空間の内周面に形成した係止凹部に係合させる事により、このシリンダ空間からの前記両ケースの抜け止めを図る。
【0012】
この様な本発明を実施する場合に、具体的には、請求項2に記載した発明の様に、前記反ロータ側ケースを前記シリンダ空間の奥端部に、回転を阻止した状態で内嵌支持する。
又、前記反ロータ側ケースと前記ロータ側ケースとの間に組み込まれる部品を、反ロータ側カム部材と、ロータ側カム部材と、複数個の転動体と、アジャストナットと、スラスト軸受と、圧縮ばねとする。
このうちの反ロータ側カム部材は、軸方向に関する深さが前記両ケースの円周方向に関して漸次変化する複数の反ロータ側ランプ部をロータ側側面に、中心部に通孔を、それぞれ形成して成る円輪状とし、前記反ロータ側ケースの奥端部に、この反ロータ側ケースに対する回転を阻止された状態で内嵌支持する。
又、前記ロータ側カム部材は、前記通孔を挿通したシャフトのロータ側端部に外向フランジ状のランププレート部を固設する。且つ、このランププレート部の反ロータ側側面で前記各反ロータ側ランプ部と対向する部分に、軸方向に関する深さが円周方向に関して、前記各反ロータ側ランプ部と逆方向に漸次変化する複数のロータ側ランプ部を形成する。
又、前記各転動体は、これら反ロータ側、ロータ側各ランプ同士の間に、転動自在に設ける。
又、前記アジャストナットは、円筒状で、中心部に多条のアジャスト用雌ねじ部を、外周面の反ロータ寄り部分に外向フランジ状の鍔部を、それぞれ形成して成り、この鍔部の一部と前記反ロータ側ケースとの係合により回転を阻止する。
又、前記スラスト軸受は、前記ロータ側カム部材のロータ側側面と前記鍔部の反ロータ側側面との間に挟持する。
更に、前記圧縮ばねは、軸方向に関して弾性的に圧縮された状態で、前記鍔部のロータ側側面と前記ロータ側ケースとの間に挟持する。
【0013】
又、本発明を実施する場合に、例えば請求項3に記載した発明の様に、前記各係止部を、前記反ロータ側ケースのロータ側端部に形成された係止孔とする。
そして、この様な請求項3に記載した発明を実施する場合に、例えば請求項4に記載した発明の様に、前記反ロータ側ケースを前記シリンダ空間の奥端部の所定位置に内嵌し、更に前記ロータ側ケースをこのシリンダ空間の所定位置に組み付ける前後の何れの状態でも、前記各係止爪片を前記係止孔に、径方向内方から外方に挿通する。そして、組み付け前の状態ではこれら各係止爪片の一部を、前記各係止孔のロータ側端縁と係合させる事により前記両ケース同士の分離を防止する。これに対して、組み付け後の状態では、前記各係止爪片の先端部で前記反ロータ側ケースの外周面から突出した部分を前記係止凹部に係合させる事により、前記シリンダ空間からの前記両ケースの抜け止めを図る。
【0014】
又、本発明を実施する場合に好ましくは、請求項5に記載した発明の様に、前記ロータ側ケースの反ロータ側端部のうちで、このロータ側ケースの円周方向に関して複数箇所に前記各係止爪片を、前記反ロータ側ケースのロータ側端部に前記各係止孔を、それぞれ形成する。
そして、これら反ロータ側、ロータ側両ケース同士の間に組み込まれた圧縮ばねを所定量だけ圧縮した状態で、前記各係止爪片の先端部と前記各係止孔のロータ側端縁とを、前記反ロータ側、ロータ側両ケース同士が分離しない程度に係合させる。
更に、前記圧縮ばねを前記所定量を超えて圧縮した状態で、前記各係止爪片の先端部を前記反ロータ側ケースの外周面から、前記シリンダ空間の内周面に形成した係止凹部と係合可能な量突出させる。
【0015】
この様な請求項5に記載した発明を実施する場合、具体的には、請求項6に記載した発明の様に、前記各係止爪片を、各弾性腕片の先端部を前記反ロータ側ケースの径方向に関して外方に折り曲げて成るものとする。又、これら各弾性腕片の中間部先端寄り部分に、先端側を基端側よりも、前記反ロータ側ケースの径方向外方に存在させる方向に折れ曲がった段部を形成する。
そして、前記各弾性腕片のうちでこの段部よりも先端側部分が前記反ロータ側のケースの内周面に当接した状態で、前記各係止爪片の先端部と前記各係止孔とを、前記反ロータ側、ロータ側両ケース同士が分離しない程度に係合させる。更に、前記各弾性腕片のうちで前記段部よりも基端側部分が前記反ロータ側ケースの内周面に当接し、この段部が前記係止孔内に進入した状態で、前記各係止爪片の先端部で前記反ロータ側ケースの外周面から突出した部分を、前記シリンダ空間の内周面に形成した係止凹部に係合させる。
【0016】
この様な請求項6に記載した発明を実施する場合に好ましくは、請求項7に記載した発明の様に、前記各係止孔の反ロータ側の端部に、前記反ロータ側ケースの径方向に関して内方に折れ曲がった状態で前記ロータ側ケースに向けて延出する、抑え板部を形成する。そして、前記各弾性腕片の段部が前記係止孔内に進入した状態で、前記各弾性腕片の先端部を前記各抑え板部の径方向外側に進入させる事により、前記各係止爪片が前記係止凹部から抜け出る方向に変位する事を阻止する。
【0017】
或は、前述の様な請求項5に記載した発明を実施する場合、請求項8に記載した発明の様に、前記各係止爪片を、各弾性腕片の先端部を前記ロータ側ケースの径方向に関して外方に折り曲げて成るものとする。又、これら各係止爪片の中間部に、先端部よりも幅広の部分を設ける。又、前記各係止孔は、これら各係止爪片の先端部を通過させるが幅広の部分を通過させない幅狭部をロータ側部分に、この幅広の部分も通過させる幅広部を反ロータ側部分に、それぞれ備えたものとする。
そして、前記幅広の部分を前記幅狭部の両側縁部に係合させた状態で、前記各係止爪片の先端部と前記各係止孔とを、前記反ロータ側、ロータ側両ケースが分離しない程度に係合させる。更に、前記幅広の部分を前記幅広部を通過させた状態で、前記各係止爪片の先端部で前記ロータ側ケースの外周面から突出した部分を、前記シリンダ空間の内周面に形成した係止凹部に係合させる。
【0018】
又、本発明のうちの請求項3〜4に記載した発明を実施する場合に、例えば請求項9に記載した発明の様に、前記各係止爪片を、前記ロータ側ケースの外周縁のうちで、このロータ側ケースの円周方向に関して複数箇所から反ロータ側に延出した弾性腕片の先端部に設けられた、このロータ側ケースの円周方向に関する幅寸法がこれら各弾性腕片の同方向の幅寸法よりも大きな幅広部の反ロータ側半部を、前記ロータ側ケースの径方向に関して外方に曲げ起こす事により形成されたものとする。又、前記各係止孔のうちで前記反ロータ側ケースの円周方向に関して中央部と前記反ロータ側ケースのロータ側端縁との間に、この反ロータ側ケースの円周方向に関する幅寸法が前記弾性腕片の幅寸法以上である連通部を設ける。
そして、前記反ロータ側ケースを前記シリンダ空間の奥端部の所定位置に内嵌し、更に前記ロータ側ケースをこのシリンダ空間の所定位置に組み付ける以前の状態で、前記各係止爪片が前記各係止孔を、前記反ロータ側ケースの径方向に関して内方から外方に挿通して、これら各係止爪片と各係止孔との円周方向両端部同士の係合により前記両ケース同士の分離を防止する。
これに対して、組み付け後には、前記各弾性腕片が前記各連通部を通じて前記反ロータ側ケースよりも、この反ロータ側ケースの径方向に関して外方に変位した状態で、前記各係止爪片の先端部を前記係止凹部に係合させる事により、このシリンダ空間からの前記両ケースの抜け止めを図ると共に、前記幅広部を前記反ロータ側ケースの径方向に関して、前記連通部の外側に移動させる事により、前記係止凹部からの前記各係止孔片の抜け止めを図る。
【0019】
更に、本発明を実施する場合に、例えば請求項10に記載した発明の様に、前記各係止部を、反ロータ側ケースを構成する周壁部の反ロータ側の端縁とする。
この様な請求項10に記載した発明を実施する場合、より具体的には、請求項11に記載した発明の様に、前記周壁部を、円周方向に関して複数箇所に、軸方向に関してロータ側の端縁から反ロータ側の端縁にまで連通するスリット部を有する欠円筒状とする。そして、前記周壁部のうちでこれら各スリット部により円周方向に分割された部分同士を、前記反ロータ側ケースのうちで反ロータ側端部に設けられた底板部により互いに連結する。更に、前記周壁部の反ロータ側端縁のうちで、円周方向に関して前記各スリット部に整合する部分及びこれら各スリット部の両側部分には、前記底板部を存在させない。
【0020】
上述の様な請求項11に記載した発明を実施する場合に、例えば請求項12に記載した発明の様に、前記各係止爪片を、複数の弾性腕片の先端部に設ける。この場合に、これら各弾性腕片は、前記ロータ側ケースの外周縁のうちで、このロータ側ケースの円周方向に関して、前記各スリット部に整合する複数箇所から反ロータ側に延出させる。又、前記各弾性腕片の、前記円周方向に関する幅寸法を、前記各スリット部の同方向(前記ロータケースの円周方向)の幅寸法よりも小さくする。又、前記各係止爪片を、前記各弾性腕片の先端部に設けられた、同方向に関する幅寸法が前記各スリット部の同方向の幅寸法よりも大きな幅広部の反ロータ側半部を、前記ロータ側ケースの径方向に関して外方に曲げ起こす事により形成する。そして、前記反ロータ側ケースを前記シリンダ空間の奥端部の所定位置に内嵌し、更に前記ロータ側ケースをこのシリンダ空間の所定位置に組み付ける以前の状態で、前記各係止爪片が前記周壁部の反ロータ側の後端縁のうちで、円周方向に関して前記各スリット部の両側部分との係合により前記両ケース同士の分離を防止する。これに対して、組み付け後には、前記各弾性腕片が前記各スリット部内で、前記反ロータ側ケースの径方向に関して外方に変位し、前記各係止爪片の先端部を前記係止凹部に係合させる事により、このシリンダ空間からの前記両ケースの抜け止めを図る。
【0021】
上述の請求項12に記載した発明を実施する場合に好ましくは、請求項13に記載した発明の様に、前記各幅広部と前記各弾性腕片との間に、これら各弾性腕片の先端縁から、前記ロータ側ケースの径方向に関して内方に折れ曲がった連続部を設ける。そして、前記各幅広部のうちのロータ側半部である基板部を、前記周壁部の反ロータ側端部の内周面のうちで前記各スリット部の両側部分に当接させた状態で、前記各弾性腕片が前記周壁部の内周面から径方向内方に突出させない。
更に、この様な請求項13に記載した発明を実施する場合に好ましくは、請求項14に記載した発明の様に、前記各係止爪片の先端部を前記係止凹部に係合させて前記シリンダ空間からの前記両ケースの抜け止め図った状態で、前記ロータ側ケースの径方向に関して、前記各幅広部の基板部の内側に、前記パーキング機構を構成する一部の部品を進入させ、前記各係止爪片が前記ロータ側ケースの径方向に関して内方に変位する事を阻止する。
【発明の効果】
【0022】
上述の様に構成する本発明のパーキング機構付ディスクブレーキ装置によれば、アジャスト機構及びパーキング機構の構成部品のうちで、キャリパに設けたシリンダ空間の奥部に組み込む部品の組み付け性の向上を図れる。即ち、完成状態でこのシリンダ空間内に設置する上記各構成部品を、このシリンダ空間外の広い空間で反ロータ側、ロータ側両ケース同士の間に組み付ける事が可能になり、サブアッセンブリユニットとしてまとめた状態にできる。しかも、このサブアッセンブリユニットを組み立てる際に、前記反ロータ側、ロータ側両ケースを含めて、各構成部品を塑性変形させる等の手間は不要である。この為、前述の特許文献3に記載された従来構造に比べても、組立作業の容易化(組み付け性の向上)を図れる。
【0023】
又、請求項4〜9、12、13に記載した発明によれば、前記シリンダ空間外で組み立てた前記サブアッセンブリユニットをこのシリンダ空間の奥部に挿入する際に、各係止孔を形成した他方のケース(反ロータ側ケース)の外周面からの、各係止爪片の突出量を少なく抑えられる。この為、前記アッセンブリユニットの挿入作業に伴って、前記各係止爪片の先端縁が前記シリンダ空間の内周面と擦れ合う可能性を低くして、この内周面が傷つく可能性を低くできる。
特に、請求項7〜9、14に記載した発明によれば、前記サブアッセンブリユニットをこのシリンダ空間の奥部に挿入した後、前記各係止爪片の先端部が係止凹部から抜け出る事を確実に防止できる。この為、前記サブアッセンブリユニットを前記シリンダ空間の奥部に挿入した後、このシリンダ空間の開口寄り部分にピストン等の他の部材を組み付ける以前に、このシリンダ空間から前記サブアッセンブリユニットが、不用意に抜け出る事を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施の形態の第1例を示す、ロータの中心軸を含む仮想平面に関する断面図。
【図2】シリンダ空間の奥部に組み付ける部材を予め組み合わせて成るサブアッセンブリユニットを、ロータ側から見た状態で示す分解斜視図。
【図3】ランププレートをロータ側から見た状態で示す透視斜視図。
【図4】反ロータ側ケースを反ロータ側から見た状態で示す斜視図。
【図5】サブアッセンブリユニットを組み立てた後、シリンダ空間内に組み付ける以前の状態を、ロータ側から見た状態で示す斜視図。
【図6】同じく図1と同方向から見た状態で示す断面図。
【図7】係止爪片と係止孔及び係止凹部との係合関係を、サブアッセンブリユニットを組み立てた後シリンダ空間内に組み付ける以前の状態(A)と同じく組み付けた後の状態(B)とで示す部分拡大断面図。
【図8】サブアッセンブリユニットを組み立ててから、更にシリンダ空間内に組み付けた後の状態を、ロータ側から見た状態で示す斜視図。
【図9】同じく図1と同方向から見た状態で示す断面図。
【図10】本発明の実施の形態の第2例を示す、ロータの中心軸を含む仮想平面に関する断面図。
【図11】サブアッセンブリユニットを組み立てた後、シリンダ空間内に組み付ける以前の状態で示す、ロータ側から見た斜視図(A)及び半部断面図(B)。
【図12】同じく、サブアッセンブリユニットを組み立てた後、シリンダ空間内に組み付けた後の状態で示す、ロータ側から見た斜視図(A)及び断面図(B)。
【図13】本発明の実施の形態の第3例を示す、ロータの中心軸を含む仮想平面に関する断面図。
【図14】シリンダ空間の奥部に組み付ける部材を予め組み合わせて成るサブアッセンブリユニットを、ロータ側から見た状態で示す分解斜視図。
【図15】サブアッセンブリユニットを組み立てた後、シリンダ空間内に組み付ける以前の状態を、ロータ側から見た状態で示す斜視図(A)及び部分切断斜視図(B)。
【図16】同じく、シリンダ空間内に組み付けた後の状態を、ロータ側から見た状態で示す斜視図(A)及び部分切断斜視図(B)。
【図17】本発明の実施の形態の第4例を示す、ロータの中心軸を含む仮想平面に関する断面図。
【図18】シリンダ空間の奥部に組み付ける部材を予め組み合わせて成るサブアッセンブリユニットを組み立てた後、シリンダ空間内に組み付ける以前の状態を、ロータ側から見た状態で示す斜視図(A)及び断面図(B)。
【図19】同じく、シリンダ空間内に組み付けた後の状態を、ロータ側から見た状態で示す斜視図(A)及び断面図(B)。
【図20】図18の(A)のイ部拡大図(A)と、図19の(A)のロ部拡大図(B)。
【図21】本発明の実施の形態の第5例を示す、ロータの中心軸を含む仮想平面に関する断面図。
【図22】図21の右半中央部の拡大断面図。
【図23】シリンダ空間の奥部に組み付ける部材を予め組み合わせて成るサブアッセンブリユニットを、ロータ側から見た状態で示す分解斜視図。
【図24】図23のハ部拡大図。
【図25】サブアッセンブリユニットを組み立てる途中の状態を、ロータ側から見た状態で示す斜視図(A)及び断面図(B)。
【図26】サブアッセンブリユニットを組み立てた後の状態を、ロータ側から見た状態で示す斜視図(A)及び断面図(B)。
【図27】図26の(A)のニ部拡大図(A)及び図26の(B)のホ部拡大図(B)。
【図28】組み立てたサブアッセンブリユニットをシリンダ空間内に組み付ける途中の状態を、ロータ側から見た状態で示す斜視図(A)及び断面図(B)。
【図29】更にシリンダ空間内に組み付けた後の状態を、ロータ側から見た状態で示す斜視図(A)及び断面図(B)。
【図30】従来構造の1例を示す、ロータの中心軸を含む仮想平面に関する断面図。
【図31】キャリパの副部及びこの副部に組み付ける各構成部材の分解斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
[実施の形態の第1例]
図1〜9は、請求項1〜6に対応する、本発明の実施の形態の第1例を示している。本例は、本発明を、走行している車両を停止させる為のサービスブレーキを油圧式に、車両を停車状態に維持する為のパーキングブレーキを機械式に、それぞれ作動させる、フローティングキャリパ型ディスクブレーキに適用した場合に就いて示している。この為に本例の構造の場合には、車輪と共に回転するロータ1aに隣接する状態で車体に固定するサポート2aに対してインナ、アウタ両パッド3a、4a及びキャリパ5aを、軸方向の変位を可能に支持している。このうちのインナ、アウタ両パッド3a、4aは、前記ロータ1aを軸方向両側から挟む状態で設けている。又、前記キャリパ5aは、アウタ側端部にキャリパ爪14aを、インナ側半部にシリンダ部23を、それぞれ設けている。そして、このシリンダ部23の内部に前記ロータ1aに向けて開口する状態で設けたシリンダ空間9a内に、ピストン10aを、軸方向の変位を可能に、且つ、液密に嵌装している。そして、このピストン10aと前記シリンダ空間9aの奥端面との間に、このピストン10aの側から順番に、非制動時に於ける前記ロータ1aの両側面と前記両パッド3a、4aのライニングとの間の隙間を適正値に保つ為のアジャスト機構12aと、パーキング機構を構成するカム機構13aとを設けている。
【0026】
このうちのアジャスト機構12aは、アジャストナット24と、アジャストスピンドル20aと、アジャストスプリング25と、スラスト軸受26とを備える。このうちのアジャストスピンドル20aの中間部ロータ寄り部分にはアジャスト鍔部27を、反ロータ寄り部分には、多条雄ねじ部28を、それぞれ設けている。このアジャスト鍔部27の外周面は、ロータ側に向かうに従って外径が小さくなる方向に傾斜した部分円すい状凸面とし、この外周面を、前記ピストン10aの内周面の軸方向中間部に形成した、この外周面と同方向に同角度で傾斜した、部分円すい凹面状の受面29に対向させている。又、前記アジャストスプリング25と前記スラスト軸受26とは、前記ピストン10aの内周面の反ロータ寄り部分に係止した止め輪30と前記アジャスト鍔部27との間に、この止め輪30の側から順番に設けている。更に、前記アジャストナット24は、内周面に多条雌ねじ部31を形成したもので、この多条雌ねじ部31を、前記アジャストスピンドル20aの多条雄ねじ部28と螺合させている。
【0027】
一方、前記カム機構13aは、ボールランプ式のもので、前記アジャストナット24の外周面反ロータ寄り部分に形成したスラスト受鍔部32と、前記シリンダ空間9aの奥端面との間部分に設けている。この為に本例の場合には、この間部分に前記スラスト受鍔部32の側から順番に、スラストワッシャ33と、スラストニードル軸受34と、ランプシャフト35のランププレート部36と、保持器37により円周方向に関して等間隔に、且つ、転動自在に保持された複数個のボール38、38と、ランププレート39とを設けている。このランププレート39と前記ランププレート部36との互いに対向する面の、それぞれ複数箇所(図示の例では3箇所ずつ)に、ランプ溝40a、40bを形成している。これら各ランプ溝40a、40bは、それぞれ軸方向から見た形状が部分円弧形であり、軸方向に関する深さが、円周方向に関して漸次変化している。
【0028】
尚、本例の場合には、左右の車輪に組み付けるランプシャフト35及びランププレート39として同形のものを使用する事を考慮している。この為、前記各ランプ溝40a、40bを、図2〜3に示す様に、前記ランプシャフト35及びランププレート39の円周方向に関して中央部が最も深く、両端部に向かうに従って漸次浅くなる形状としている。但し、左右の車輪で異なる形状のものを使用しても構わないのであれば、各ランプ溝の形状を、ランプシャフト及びランププレートの円周方向の一端部で最も浅く、他端部で最も深くする。この場合には、ランプシャフト側のランプ溝の深さが変化する方向と、ランププレート側のランプ溝の深さが変化する方向とは、互いに逆にする。図示の例の場合も、前記各ボール38、38を介して互いに係合する部分の変化方向は、互いに逆である。
【0029】
何れにしても、前記各ボール38、38を、前記ランプシャフト35側のランプ溝40bと、前記ランププレート39側のランプ溝40a、40aとの間に、転動自在に挟持している。又、前記ランププレート部36と共に前記ランプシャフト35を構成する駆動シャフト41を、前記ランププレート39の中心孔42及び前記シリンダ部23の底部に設けた貫通孔43を、液密に、且つ、回転及び軸方向の変位を可能に挿通している。そして、前記駆動シャフト41の先端部で前記シリンダ部23の反ロータ側外側面から突出した部分に、パーキングレバー15aの基端部を結合固定している。このパーキングレバー15aにより前記ランプシャフト35を回転させると、前記各ボール38、38が前記各ランプ溝40a、40bに沿って(深い部分と浅い部分との間で)転動し、前記ランププレート部36と前記ランププレート39との距離を拡縮する。そして、拡張時には、前記スラストニードル軸受34を介して、前記アジャストナット24をロータ側に押圧する。
【0030】
上述の様なカム機構13aを構成する各部材24、33、34、35、38、39は、特許請求の範囲に記載した圧縮ばねである、予圧スプリング44と共に、反ロータ側ケース45とロータ側ケース46とから成るカムケース47内に収納している。このうちの反ロータ側ケース45は、素材となる、ステンレス鋼板、炭素鋼板等の金属板に、打ち抜き加工に加えて、絞り加工、バーリング加工等の塑性加工を施す事により一体に構成したもので、例えば図2、4に示す様に、円筒状の周壁部48を有する。そして、この周壁部48の反ロータ側端縁部の円周方向複数箇所(図示の例では3箇所)に、この周壁部48の径方向内方に折れ曲がった、折れ曲がり板部49a、49bを設けている。このうち、先端部が直角に尖った略三角形状である一対の折れ曲がり部49a、49aは、前記周壁部48の半周部分に片寄せた状態で設けており、残りの折れ曲がり部49bは、矩形で、前記周壁部48の周方向に関して、前記両折れ曲がり部49a、49aの中間位置に設けている。又、前記残りの折れ曲がり部49bの中央部に、反ロータ側に突出した円筒部50を設けている。更に、前記周壁部48のロータ寄り部分に、それぞれ一対ずつの係止孔51、51とガイド切り欠き52、52とを、交互に、且つ、前記周壁部48の周方向に関して等間隔に(90度置きに)形成している。このうちの一対の係止孔51、51は、矩形で、この周壁部48のロータ側端部の径方向反対側2箇所位置に、この周壁部48のロータ側端縁にまでは達しない状態で形成されている。一方、前記両ガイド切り欠き52、52は、矩形で、前記周壁部48のロータ側端部の径方向反対側2箇所位置に、この周壁部48のロータ側端縁に開口する状態で形成されている。
【0031】
これに対して、前記ロータ側ケース46は、ステンレス鋼板、炭素鋼板等の金属板に、打ち抜き加工に加えて曲げ加工を施す事により、例えば図2、5、8に示す様に一体に構成している。この様な前記ロータ側ケース46は、保持環部53と、この保持環部53の外周縁の径方向反対側2箇所位置から反ロータ側に折れ曲がった、一対の弾性腕片54、54とを備える。又、これら両弾性腕片54、54の先端部を、前記保持環部53の径方向外方に向けてほぼ直角に折り曲げる事により、それぞれ係止爪片55、55としている。更に、前記両弾性腕片54、54の中間部先端寄り部分で、これら両係止爪片55、55よりも少し基端側(ロータ側、前記保持環部53側)に寄った部分に、先端側を基端側よりも、前記ロータ側ケース46の径方向外方に存在させる方向に折れ曲がった、段部56、56を形成している。
【0032】
そして、前述の様に構成した反ロータ側ケース45と、上述の様に構成したロータ側ケース46との間に、前記アジャスト機構12aと前記パーキング機構とを構成する部品のうちで、前記ピストン10aに対して組み付けられる部品以外の部品を組み付けている。このピストン10aに対して組み付けられる部品以外の、前記アジャスト機構12aと前記パーキング機構とを構成する部品とは、図1〜2から明らかな通り、反ロータ側から順番に、前記ランププレート39と、前記保持器37及びボール38、38と、前記ランプシャフト35のランププレート部36と、スラストニードル軸受34と、スラストワッシャ33と、アジャストナット24と、予圧スプリング44とである。尚、前記ランプシャフト35の駆動シャフト41に関しては、前記ランププレート39の中心孔及び前記保持器37の中心孔を挿通して、これら各部材39、37よりも反ロータ側に突出させておく。
【0033】
又、前記両ケース45、46同士の間に組み込む前記各部材39、37、38、36、34、33、24、44のうち、最も反ロータ側に組み付けるランププレート39は、前記反ロータ側ケース45の奥端部(反ロータ側端部)の内側に、回転及び軸方向の変位を阻止した状態で嵌装している。この為に、前記ランププレート39の反ロータ側側面に、前記反ロータ側ケース45の奥端部に設けられた前記各折れ曲がり板部49a、49bとがたつきなく係合する凹部57a、57bを形成している。更に、前記アジャストナット24は前記反ロータ側ケース45のロータ側開口寄り部分に、回転を阻止した状態で、軸方向の変位を可能に嵌装している。この為に、前記アジャストナット24の外周面に形成したスラスト受鍔部32の外周縁の径方向反対側2箇所位置に突設した一対のガイド突片58、58を、前記反ロータ側ケース45のガイド切り欠き52、52に係合させている。
【0034】
前記両ケース45、46同士の間に前記各部材39、37、38、36、34、33、24、44を組み込む作業は、前記シリンダ空間9a外の、広い場所で行う。そして、これら各部材39、37、38、36、34、33、24、44を前記両ケース45、46同士の間に組み込んだ後、これら各部材39、37、38、36、34、33、24、44を前記両ケース45、46ごと前記シリンダ空間9a内に組み込む以前に、これら両ケース45、46同士を非分離に結合する。この為に本例の場合には、これら両ケース45、46同士の間に前記各部材39、37、38、36、34、33、24、44を所定の順番に配置した状態から、このうちの予圧スプリング44を弾性的に圧縮しつつ、前記反ロータ側、ロータ側両ケース45、46同士を互いに近づける。この際、前記両弾性腕片54、54を、互いの先端部同士を近づけ合う方向に弾性変形させておき、前記両ケース45、46を所定距離まで近づけた状態で、前記両弾性腕片54、54を拘束していた力を解除する。そして、これら両弾性腕片54、54の先端部に形成した前記両係止爪片55、55を、前記両係止孔51、51内に、前記反ロータ側ケース45の内径側から進入させる。この状態で、この反ロータ側ケース45と前記ロータ側ケース46とを近づけ合う方向の力を解除すると、図5〜6及び図7の(A)に示す様に、前記両係止爪片55、55が、前記両係止孔51、51のロータ側端縁と係合して、前記両ケース45、46同士が分離する事を防止する。この結果、図5〜6に示す様な、前記パーキング機構及び前記アジャスト機構12aの構成部品の一部を前記両ケース45、46同士の間に組み付けた、反ロータ側補助組立体(サブアッセンブリユニット)59が得られる。
【0035】
この様な反ロータ側補助組立体59は、前記反ロータ側ケース45を奥にして、前記シリンダ空間9a内に押し込む。このシリンダ空間9aの奥端面の中心から外れた部分に、有底で円形の受孔60を形成しており、この受孔60に、前記反ロータ側ケース45の反ロータ側端面に形成した円筒部50を挿入する。そして、これら受孔60と円筒部50との係合により、前記シリンダ空間9a内で前記反ロータ側ケース45が回転する事を防止する。前記反ロータ側補助組立体59の状態で前記両係止爪片55、55の外接円の直径は、前記シリンダ空間9aの内径よりも十分に小さい。従って、前記反ロータ側補助組立体59をこのシリンダ空間9a内に挿入する際に、前記両係止爪片55、55の先端縁がこのシリンダ空間9aの内周面と強く擦れ合って、この内周面に傷を付ける事はない。
【0036】
尚、前記反ロータ側のランププレート39は前記キャリパ5aに対し、自身の中心軸回りの回転を十分に抑えた状態で、前記反ロータ側ケース45を介して支持する必要がある。このうちの前記キャリパ5aに対するこの反ロータ側ケース45の回り止めは、前記受孔60と前記円筒部50との係合により、この反ロータ側ケース45に対する前記ランププレート39の回り止めは、前記各折れ曲がり板部49a、49aに設けた互いに平行な一対の側縁76、76(図4参照)と前記両凹部57a、57aに設けた互いに平行な一対の段差面77、77(図3参照)との係合により図る。従って、前記中心軸回りの回転方向(図4の矢印α方向)のがたつきに結び付く、前記受孔60と前記円筒部50との係合部の隙間、並びに、前記両側縁76、76と前記両段差面77、77との係合部の隙間は、何れも、0.05〜0.2mm程度の僅少な値に止める。これに対して、図4に矢印βで示す、前記ランププレート39及び前記反ロータ側ケース45の径方向に関する隙間は、あまり厳密に規制する必要がなく、例えば、0.3〜0.5mm程度のがたつきがあっても、特に問題を生じない。一方、前記受孔60を、前記ランププレート39及び前記反ロータ側ケース45の径方向に長い長孔とする事は、前記受孔60の加工コストが嵩む為、好ましくない。そこで本例の場合には、この受孔60は有底の円孔として、前記キャリパ5aに対する前記反ロータ側ケース45の組み付け位置精度を厳密に規制する代わりに、この反ロータ側ケース45と前記ランププレート39との、前記径方向(矢印β方向)に関する自由度を或る程度確保して(0.3〜0.5mm程度にして)いる。そして、前記ランプシャフト35と前記シリンダ部23及び貫通孔43との間に生じ得る、製造上の誤差を吸収できる様にしている。
【0037】
上述の様に、前記受孔60と前記円筒部50とを係合させ、更に前記反ロータ側ケース45の前記各折れ曲がり板部49a、49bの反ロータ側側面を前記シリンダ空間9aの奥端面に当接させた状態から、更に前記予圧スプリング44を弾性的に圧縮しつつ、前記ロータ側ケース46を前記シリンダ空間9a内に押し込む。すると、前記図7の(B)及び図8〜9に示す様に、前記両弾性腕片54、54の中間部先端寄り部分の段部56、56が前記両係止孔51、51内に入り込み、前記反ロータ側ケース45の外周面からの前記両係止爪片55、55の突出量が増大する。そして、これら両係止爪片55、55の先端部が、前記シリンダ空間9aの内周面に、全周に亙って形成した、溝状の係止凹部61内に進入する。この状態で、前記反ロータ側ケース45を前記シリンダ空間9a内に押し込んでいる力を解除すると、両係止爪片55、55の先端部が前記係止凹部61のロータ側内側面に、前記予圧スプリング44の弾力により係合する。この結果、前記反ロータ側ケース45が前記シリンダ空間9aから抜け出る事がなくなり、前記反ロータ側補助組立体59の構成各部材45、46、39、37、38、35、34、33、24、44が、前記シリンダ空間9aの奥半部(反ロータ側半部)の適正位置に組み付けられる。
【0038】
尚、前記円筒部50の高さH50(図6参照)は、図7の(A)に示した状態から前記段部56が前記係止孔51内に入り込み、前記反ロータ側ケース45の外周面からの前記係止爪片55の突出量が増大するまでの、この反ロータ側ケース45に対する前記ロータ側ケース46のスライド量Lよりも大きく(H50>L)している。従って、前記円筒部50の少なくとも先端部が前記受孔60内に入り込む以前に、前記反ロータ側ケース45の外周面からの前記係止爪片55の突出量が増大する事はない。この為、前記円筒部50と前記受孔60とを係合させて、前記シリンダ空間9a内に前記反ロータ側補助組立体59を、この反ロータ側補助組立体59の円周方向に関する位相を適正にした状態で組み付ける作業を容易に行える。又、前記反ロータ側補助組立体59を前記シリンダ空間9a内に挿入すると同時に、前記ランプシャフト35の駆動シャフト41を、前記シリンダ部23の底部に設けた貫通孔43に挿通する。尚、この貫通孔43の内周面には、予めOリング62及びスリーブ(ラジアル滑り軸受)63を装着しておく。
【0039】
一方、前記アジャスト機構12aを構成する、前記アジャストスピンドル20aと、前記アジャストスプリング25と、前記スラスト軸受26と、前記止め輪30とは、予め前記ピストン10aの内径側に組み付けて、ロータ側補助組立体64としておく。このロータ側補助組立体64の組み付け作業も、前記シリンダ空間9a外の広い場所で行える為、容易である。このロータ側補助組立体64は、前記アジャストスピンドル20aの先端部(反ロータ側端部)に設けた多条雄ねじ部28を、予め前記シリンダ空間9a内に組み込んでおいた前記反ロータ側補助組立体59のアジャストナット24の内周面の多条雌ねじ部31と螺合させつつ、前記シリンダ空間9a内に組み付ける。このシリンダ空間9aの内周面の開口寄り部分(ロータ寄り部分)に設けた係止溝65には、予め液密保持用のオイルリング66を装着しておく。従って前記ピストン10aは、このオイルリング66の内周面と摺接しつつ、前記シリンダ空間9a内に組み込まれる。
【0040】
前記反ロータ側補助組立体59に続いて、前記ロータ側補助組立体64を前記シリンダ空間9a内の所定位置にまで組み込んだ後、前記ピストン10aの先端部(ロータ側端部)外周面と前記キャリパ5aとの間に、防塵用のブーツ67を装着する。その後、このキャリパ5aを、インナ、アウタ両パッド3a、4aと共にサポート2aに対し、軸方向の変位を可能に組み付け、更にこのサポート2aをナックル等の懸架装置の構成部材に、前記両パッド3a、4aを前記ロータ1aの両側に配置する状態で支持固定して、パーキング機構付ディスクブレーキ装置として完成する。
【0041】
走行中の車両を減速乃至停止させるサービスブレーキの作動時には、前記シリンダ空間9a内に油圧を導入し、前記ピストン10aを前記シリンダ空間9aから押し出す。そして、周知のフローティングキャリパ型ディスクブレーキと同様にして、前記両パッド3a、4aのライニングを前記ロータ1aの両側面に押し付け、制動を行う。制動の繰り返しによりこれら両パッド3a、4aのライニングが摩耗し、前記ピストン10aの移動量が多くなると、前記アジャスト機構12aが、従来から周知のアジャスト機構と同様にして、非制動時に於ける前記ピストン10aの位置をロータ側に移動させる。即ち、前記アジャストスピンドル20aのアジャスト鍔部27の外周面と前記受面29とが離隔し、前記アジャストスプリング25の弾力と、前記多条雄ねじ部28と前記多条雌ねじ部31との螺合とに基づいて前記アジャストスピンドル20aが、回転しつつロータ側に変位し、前記ライニングの摩耗分を補償する。
【0042】
これに対して、パーキングブレーキの作動時には、前記パーキングレバー15aにより前記ランプシャフト35を回転させる。すると、前記各ボール38、38が前記各ランプ溝40a、40bに沿って、これら各ランプ溝40a、40bの深い部分から浅い部分に向けて転動し、前記ランププレート部36と前記ランププレート39との距離を拡げる。そして、前記スラストニードル軸受34、前記アジャストナット24、前記アジャストスピンドル20aを介して、前記ピストン10aをロータ側に押圧する。そして、上述したサービスブレーキの場合と同様にして、前記両パッド3a、4aのライニングを前記ロータ1aの両側面に押し付け、制動を行う。パーキングブレーキの作動時には、前記アジャスト機構12aが作動する事はない。
【0043】
[実施の形態の第2例]
図10〜12は、請求項1〜7に対応する、本発明の実施の形態の第2例を示している。本例の場合には、反ロータ側ケース45aに形成した一対の係止孔51、51の軸方向両端部のうち、反ロータ側の端部に、この反ロータ側ケース45aの径方向に関して内方に折れ曲がった状態でロータ側ケース46に向けて延出する、抑え板部68、68を形成している。この様な本例の構造で、各部材同士の関係は、図11に示す様に、反ロータ側組立体59aを組み立てて、キャリパ5aのシリンダ空間9a内に組み込む以前の状態は、上述した実施の形態の第1例の場合と同様である。これに対して、前記反ロータ側補助組立体59aを前記シリンダ空間9a内に組み付け固定すべく、前記ロータ側ケース46に設けた一対の弾性腕片54、54の段部56、56を前記両係止孔51、51内に進入させた状態では、図10、12に示す様に、これら両弾性腕片54、54の先端部が、前記反ロータ側ケース45aの径方向に関して、前記両抑え板部68、68の外側に進入する。そして、この状態で、前記両弾性腕片54、54の先端部に形成した両係止爪片55、55が、前記シリンダ空間9aの内周面に形成した係止凹部61から抜け出る方向に(このシリンダ空間9aの径方向に関して内方に)変位する事を阻止する。
【0044】
この様な本例の構造によれば、前記反ロータ側補助組立体59aを前記シリンダ空間9aの奥部に挿入した後、前記両係止爪片55、55の先端部が前記係止凹部61から抜け出る事を確実に防止できる。この為、前記反ロータ側補助組立体59aを前記シリンダ空間9aの奥部に挿入した後、このシリンダ空間9aの開口寄り部分にピストン10a等を含むロータ側補助組立体64を組み付ける以前、以後に拘らず、前記シリンダ空間9aから前記反ロータ側補助組立体59aが、不用意に抜け出る事を防止できる。
その他の部分の構成及び作用は、上述した実施の形態の第1例と同様であるから、同等部分には同一符号を付して、重複する説明を省略する。
【0045】
[実施の形態の第3例]
図13〜16は、請求項1〜5、8に対応する、本発明の実施の形態の第3例を示している。本例の場合も、ロータ側ケース46aの反ロータ側端部に設ける一対の係止爪片55a、55aを、一対の弾性腕片54、54の先端部を径方向外方に折り曲げて成るものとしている。特に本例の場合には、前記両係止爪片55a、55aの中間部両側縁部の互いに整合する部分(前記ロータ側ケース46aの径方向に関する位置が互いに一致する部分)に、それぞれ突起69、69を形成して、図15の(B)に示す様に、当該部分の幅寸法W55を、先端部の幅寸法w55よりも大きくしている(W55>w55とし、当該部分を幅広の部分としている)。又、反ロータ側ケース45bに形成した一対の係止孔51a、51aは、軸方向に関して、ロータ側端部乃至中間部を、図14に示す様に、幅寸法w51が小さい幅狭部70とし、反ロータ側端部を、幅寸法W51が大きい幅広部71としている。このうちの幅狭部70の幅寸法w51は、前記両係止爪片55a、55aの中間部の突起69、69を形成した部分の幅寸法W55よりも小さく、先端部の幅寸法w55よりも大きく(W55>w51>w55)している。これに対して、前記幅広部71の幅寸法W51は、前記両係止爪片55a、55aの中間部の突起69、69を形成した部分の幅寸法W55よりも大きく(W51>W55)している。従って、前記幅狭部70は、前記両係止爪片55a、55aの先端部を通過させるが前記各突起69、69を形成した幅広の部分を通過させず、前記幅広部71は、この幅広の部分も通過させる。
【0046】
この様な本例の構造では、反ロータ側組立体59bを組み立てて、キャリパ5aのシリンダ空間9a内に組み込む以前には、図15に示す様に、前記両係止爪片55a、55aの先端部を前記幅狭部70に係合させておく。即ち、前記各突起69、69を形成した前記幅広の部分を、この幅狭部70の両側縁部に係合させた状態で、前記両係止爪片55a、55aの先端部と前記両係止孔51a、51aのロータ側端縁とを、前記反ロータ側、ロータ側両ケース45b、46a同士が分離しない程度に係合させる。この状態での機能は、前述した実施の形態の第1例の場合と同様である。これに対して、前記反ロータ側補助組立体59bを前記シリンダ空間9a内に組み付け固定すべく、予圧スプリング44を弾性的に圧縮しつつ、前記ロータ側ケース46aを前記シリンダ空間9a内に押し込むと、前記各突起69、69を形成した前記幅広の部分が、前記幅広部71を通過して、前記反ロータ側ケース45bの周壁部48よりも外径側に変位する。この結果、前記両係止爪片55a、55aの先端部がこの周壁部48の外周面から十分に突出し、前記シリンダ空間9aの内周面に形成した係止凹部61に係合する。
【0047】
この状態で、前記ロータ側ケース46aを反ロータ側に押圧している力を解除すると、前記予圧スプリング44の弾力によりこのロータ側ケース46aが、少しロータ側に戻されて、前記各突起69、69を形成した前記幅広の部分が、前記幅広部71よりもロータ側に移動する。この状態では、前記両係止爪片55a、55aが、前記ロータ側ケース46aの径方向に関して内方に変位する事はなくなる。従って、本例の構造によっても、前述した実施の形態の第2例の構造の場合と同様に、前記反ロータ側補助組立体59bを前記シリンダ空間9aの奥部に挿入した後、このシリンダ空間9aの開口寄り部分にピストン10a等を含むロータ側補助組立体64を組み付ける以前、以後に拘らず、前記シリンダ空間9aから前記反ロータ側補助組立体59bが、不用意に抜け出る事を防止できる。
その他の部分の構成及び作用は、前述した実施の形態の第1例と同様であるから、同等部分には同一符号を付して、重複する説明を省略する。
【0048】
[実施の形態の第4例]
図17〜20は、請求項1〜5、9に対応する、本発明の実施の形態の第4例を示している。本例の場合も、ロータ側ケース46bの反ロータ側端部に設ける一対の係止爪片55b、55bを、一対の弾性腕片54、54の先端部を径方向外方に折り曲げて成るものとしている。特に本例の場合には、前記両係止爪片55b、55bを、先に述べた第1〜3例の場合よりも幅広に形成すると共に、反ロータ側ケース45cの周壁部48のロータ側端部の直径方向反対側2箇所位置に形成した一対の係止孔51b、51bの一部を、この周壁部48のロータ側端縁に開口させている。
【0049】
即ち、本例の場合には、前記ロータ側ケース46bの外周縁の直径方向反対側2箇所位置から反ロータ側に延出する状態で設けられた一対の弾性腕片54、54の先端部に、図20に示す様に、前記ロータ側ケース46bの円周方向に関する幅寸法W72がこれら両弾性腕片54、54の同方向の幅寸法w54よりも大きな(W72>w54)、幅広部72を形成している。そして、この幅広部72の反ロータ側半部を、前記ロータ側ケース46bの径方向に関して外方に、ほぼ直角に曲げ起こす事により、前記両係止爪片55b、55bとしている。又、前記両係止孔51b、51bを、径方向から見た形状が凸字形で、前記周壁部48の円周方向中央部がこの周壁部48のロータ側端縁に開口した切り欠き状としている。前記両係止孔51b、51bのロータ側半部であり、前記周壁部48のロータ側端縁に開口する連通部73の幅寸法w73は、前記幅広部72の幅寸法W72よりも小さく、前記両弾性腕片54、54の幅寸法w54よりも大きい(W72>w73>w54)。又、前記両係止孔51b、51bの反ロータ側半部である幅広部71aの幅寸法W51及び軸方向の長さ寸法L51は、前記幅広部72の幅寸法W72及び長さ寸法L72よりも大きい(W51>W72、L51>L72)。
【0050】
この様な本例の構造では、反ロータ側組立体59cを組み立てて、キャリパ5aのシリンダ空間9a内に組み込む以前の状態は、図18及び図20の(A)に示す様に、前記両弾性腕片54、54の先端部の幅広部72を、前記反ロータ側ケース45cの径方向に関して、前記連通部73の両側に存在する突出板部74、74の内側に配置する。そして、前記両係止爪片55b、55bのロータ側側面を、これら両突出板部74、74の反ロータ側端縁に係合させる。この状態で、前記反ロータ側ケース45cと前記ロータ側ケース46bとが非分離に結合される。又、この反ロータ側ケース45cの外周面からの前記両係止爪片55b、55bの突出量を小さく抑えられる。この状態での機能は、前述した実施の形態の第1例の場合と同様である。
【0051】
これに対して、前記反ロータ側補助組立体59cを前記シリンダ空間9a内に組み付け固定すべく、予圧スプリング44を弾性的に圧縮しつつ、前記ロータ側ケース46bを前記シリンダ空間9a内に押し込むと、前記両弾性腕片54、54の先端部に設けた前記両幅広部72、72が前記両係止孔51b、51bの反ロータ側半部に達する。そして、これら両幅広部72、72が前記両係止孔51b、51bの反ロータ側半部を通過して、前記ロータ側ケース46bの周壁部48よりも外径側に変位する。この結果、前記両係止爪片55b、55bの先端部がこの周壁部48の外周面から十分に突出し、前記シリンダ空間9aの内周面に形成した係止凹部61に係合する。
【0052】
この状態で、前記ロータ側ケース46bを反ロータ側に押圧している力を解除すると、前記予圧スプリング44の弾力によりこのロータ側ケース46bが、少しロータ側に戻されて、前記両係止爪片55b、55bが、前記シリンダ空間9aの内周面に形成した係止凹部61と係合する。同時に、前記両弾性腕片54、54の先端部に設けた前記両幅広部72、72の両端部が、前記反ロータ側ケース45cの径方向に関して、前記各突出板部74、74の外側に移動する。この状態では、これら両幅広部72、72の反ロータ側端縁部に形成した前記両係止爪片55b、55bが、前記ロータ側ケース46bの径方向に関して内方に変位する事はなくなる。従って、本例の構造によっても、前述した実施の形態の第2〜3例の構造の場合と同様に、前記反ロータ側補助組立体59cを前記シリンダ空間9aの奥部に挿入した後、このシリンダ空間9aの開口寄り部分にピストン10a等を含むロータ側補助組立体64を組み付ける以前、以後に拘らず、前記シリンダ空間9aから前記反ロータ側補助組立体59cが、不用意に抜け出る事を防止できる。尚、本例の場合には、係止ピン75により、反ロータ側ケース45c及びランププレート39aの回り止めを図っている。但し、この部分の回り止め構造は、前述した実施の形態の第1〜3例と同様に構成する事もできる。逆に言えば、前述した第1〜3例の構造で、回り止め構造を本例と同様にする事もできる。
その他の部分の構成及び作用は、前述した実施の形態の第1例と同様であるから、同等部分には同一符号を付して、重複する説明を省略する。
【0053】
[実施の形態の第5例]
図21〜29は、請求項1、2、10〜13に対応する、本発明の実施の形態の第5例を示している。本例の場合には、反ロータ側ケース45dを構成する周壁部48aの反ロータ側の端縁に、ロータ側ケース46cの反ロータ側端部に設けた、一対の係止爪片55c、55cを係脱させる様にしている。この為に本例の場合には、前記周壁部48aを欠円筒状としている。即ち、この周壁部48aのうちで円周方向に関して180度反対側2箇所位置に、それぞれこの周壁部48aの軸方向両端縁同士を連通する、一対のスリット部78、78を、前記反ロータ側ケース45dの軸方向に形成している。そして、前記周壁部48aのうちで前記両スリット部78、78により円周方向に分割された部分同士を、前記反ロータ側ケース45dのうちで反ロータ側端部に設けられた底板部79により、互いに連結している。従って、前記両スリット部78、78の存在に拘らず、前記周壁部48aのうちで前記両スリット部78、78の円周方向両側に存在する部分同士が分離したり、これら両部分同士の位置関係がずれ動く事はない。言い換えれば、前記両スリット部78、78の円周方向に関する幅が変化する事はない。但し、前記底板部79は、これら両スリット部78、78に整合する部分、並びに、周方向に関してこの部分の両側部分には設けていない。従って、前記周壁部48aの反ロータ側端縁のうち、前記両スリット部78、78の両側部分は、軸方向に関して露出している。
【0054】
又、本例の場合も、前記両係止爪片55c、55cを、前記ロータ側ケース46cの外周縁のうちで円周方向に関して180度反対側2箇所位置から反ロータ側に延出した、一対の弾性腕片54a、54aの先端部に設けている。又、これら両弾性腕片54a、54aの、前記円周方向に関する幅寸法を、前記両スリット部78、78の、同方向に関する幅寸法よりも、少しだけ小さくしている。前記両係止爪片55c、55cは、前記両弾性腕片54a、54aの先端部に設けられた、前記円周方向に関する幅寸法が前記両スリット部78、78の同方向の幅寸法よりも大きな幅広部72a、72aの反ロータ側半部を、前記ロータ側ケース46cの径方向に関して外方に曲げ起こす事により形成している。本例の場合には、前記両幅広部72a、72aの基端縁と前記両弾性腕片54a、54aの先端縁との間に、これら両弾性腕片54a、54aの先端縁から、前記ロータ側ケース46cの径方向に関して内方に折れ曲がった連続部80、80を設けている。従って、前記両幅広部72a、72aのうちのロータ側半部である基板部81、81は、前記両弾性腕片54a、54aの先端部よりも、前記ロータ側ケース46cの径方向に関して内方に存在する。この為、次述する様に、反ロータ側補助組立体59dを組み立てた状態で、前記両弾性腕片54a、54aが前記周壁部48aの内周面から径方向内方に突出する事はない。
【0055】
各部を上述の様に構成した本例の構造の場合には、構成各部材を組み合わせて前記反ロータ側補助組立体59dを組み立て、更に、この反ロータ側補助組立体59dを、キャリパ5aのシリンダ空間9a内に組み込む。これらの作業に就いて、順番に説明する。
先ず、前記反ロータ側補助組立体59dの構成各部材を、図23に示した状態から組み合わせる。具体的には、ランププレート39、保持器37及びボール38、38、ランプシャフト35、スラストニードル軸受34、スラストワッシャ33、アジャストナット24、予圧スプリング44を前記反ロータ側ケース45d内に、前記底板部79の側から順番に組み込む。次いで、図25に示す様に、前記ロータ側ケース46cの保持環部53aにより前記予圧スプリング44を弾性的に圧縮しつつ、前記両幅広部72a、72aを、前記反ロータ側ケース45dの反ロータ側端縁よりも反ロータ側にまで変位させる。
【0056】
そして、この状態から、前記両弾性腕片54a、54aを互いに近付く方向に弾性的に押圧し、前記両基板部81、81を、前記反ロータ側ケース45dの径方向に関して、前記周壁部48aの内周面よりも内方に変位させる。次いで、前記予圧スプリング44を圧縮している力を解除し、図26に示す様に、前記両基板部81、81を前記周壁部48aの内径側に、この周壁部48aの反ロータ側から進入させ、前記両係止爪片55c、55cを、この周壁部48aの反ロータ側端縁に当接させる。この状態でも、前記両弾性腕片54a、54aが前記周壁部48aの内周面から径方向内方に突出する事はない為、前記ランププレート39を含む、前記構成各部材39、37、35、34、33を前記反ロータ側ケース45d内に、径方向に関する過大ながたつきを生じる事なく挿入できる。又、前記両係止爪片55c、55cが、前記周壁部48aの反ロータ側端縁に当接した状態で、前記ランププレート39は、前記両連続部80、80に押されて、図26、27の(B)に示す様に、前記底板部79から離隔する。
【0057】
上述の様にして、図26、27に示す様に、前記反ロータ側補助組立体59dを組み立てたならば、この反ロータ側補助組立体59dを前記シリンダ空間9a内に押し込む。そして、前記反ロータ側ケース45dの底板部79が、このシリンダ空間9aの奥端面82に当接した状態から、前記ロータ側ケース46cをこの奥端面82に向けて押圧する。この結果、前記両基板部81、81が前記周壁部48aの内径側から抜け出し、これら両基板部81、81から径方向外方に折れ曲がった、前記両係止爪片55c、55cが、前記シリンダ空間9aの奥端部内周面に形成した係止凹部61aと係合する。この結果、前記ロータ側ケース46cを含む前記反ロータ側補助組立体59dが、前記シリンダ空間9aから抜け出る事がなくなる。更に、基板部81、81が前記周壁部48aの内径側から抜け出す事に伴って、これら両基板部81、81及び前記両連続部80、80が、前記ランププレート39の外周面よりも径方向外方に変位する。そして、前記予圧スプリング44の弾力によりこのランププレート39が、前記両基板部81、81の内径側に入り込む。この結果、本例の構造によっても、前記両係止爪片55c、55cが前記係止凹部61aから抜け出る事がなくなって、前記シリンダ空間9aから前記反ロータ側補助組立体59dが、不用意に抜け出る事を防止できる。
その他の部分の構成及び作用は、前述した実施の形態の第1例と同様であるから、同等部分には同一符号を付して、重複する説明を省略する。
【符号の説明】
【0058】
1、1a ロータ
2、2a サポート
3、3a インナパッド
4、4a アウタパッド
5、5a キャリパ
6 主部
7 副部
8 ボルト
9、9a シリンダ空間
10、10a ピストン
11 スリーブ
12、12a アジャスト機構
13、13a カム機構
14、14a キャリパ爪
15、15a パーキングレバー
16 カムシャフト
17 ローラ
18a〜18d カム面
19a、19b カム部材
20、20a アジャストスピンドル
21 アジャストスクリュ
22 スプリング
23 シリンダ部
24 アジャストナット
25 アジャストスプリング
26 スラスト軸受
27 アジャスト鍔部
28 多条雄ねじ部
29 受面
30 止め輪
31 多条雌ねじ部
32 スラスト受鍔部
33 スラストワッシャ
34 スラストニードル軸受
35 ランプシャフト
36 ランププレート部
37 保持器
38 ボール
39、39a ランププレート
40a、40b ランプ溝
41 駆動シャフト
42 中心孔
43 貫通孔
44 予圧スプリング
45、45a、45b、45c、45d 反ロータ側ケース
46、46a、46b、46c ロータ側ケース
47 カムケース
48、48a 周壁部
49a、49b 折れ曲がり板部
50 円筒部
51、51a、51b 係止孔
52 ガイド切り欠き
53、53a 保持環部
54、54a 弾性腕片
55、55a、55b、55c 係止爪片
56 段部
57a、57b 凹部
58 ガイド突片
59、59a、59b、59c、59d 反ロータ側補助組立体
60 受孔
61、61a 係止凹部
62 Oリング
63 スリーブ
64 ロータ側補助組立体
65 係止溝
66 オイルリング
67 ブーツ
68 抑え板部
69 突起
70 幅狭部
71、71a 幅広部
72、72a 幅広部
73 連通部
74 突出板部
75 係止ピン
76 側縁
77 段差面
78 スリット部
79 底板部
80 連続部
81 基板部
82 奥端面


【特許請求の範囲】
【請求項1】
車輪と共に回転するロータと、このロータに隣接して車体に支持固定されるサポートと、このロータを軸方向両側から挟む状態で、このサポートに、軸方向の変位を可能に支持されたインナパッド及びアウタパッドと、アウタ側端部にこのアウタパッドのアウタ側面を押圧する為のキャリパ爪を、インナ側半部に前記インナパッドに向けて開口するシリンダ空間を、それぞれ設け、前記サポートに軸方向の変位を可能に支持されたキャリパと、このシリンダ空間の開口寄り部分に軸方向の変位を可能に内嵌されたピストンと、このシリンダ空間の奥端面とこのピストンとの間に設けられたパーキング機構とを備え、このパーキング機構は、前記シリンダ空間外に設けられたパーキングレバーの揺動変位に伴って回動する一部の部品の回転運動に伴って、軸方向寸法を拡げ、前記ピストンを前記インナパッドに向け押圧するものであるパーキング機構付ディスクブレーキ装置に於いて、前記パーキング機構の構成部品のうちで、前記ピストンに対して組み付けられる部品以外の部品を、前記シリンダ空間の奥端部に内嵌支持される反ロータ側ケースと、この反ロータ側ケースよりもロータ側に配置されたロータ側ケースとの間に組み込んでおり、これら両ケースのうちのロータ側ケースの反ロータ側端部に、このロータ側ケースの径方向に関し外方に向けて折れ曲がった複数の係止爪片を、同じく反ロータ側ケースの一部に、反ロータ側に向いた端縁を有する係止部を、それぞれ形成しており、この反ロータ側ケース及び前記ロータ側ケースを前記シリンダ空間の所定位置に組み付ける以前の状態で、前記各係止爪片と前記各係止部との係合に基づいて、前記両ケース同士が分離する事を防止し、これら両ケースのうちの反ロータ側ケースを前記シリンダ空間の奥端部の所定位置に内嵌し、更に前記ロータ側ケースをこのシリンダ空間の所定位置に組み付けた状態で、前記係止爪片を前記シリンダ空間の内周面に形成した係止凹部に係合させる事により、このシリンダ空間からの前記両ケースの抜け止めを図る事を特徴とするパーキング機構付ディスクブレーキ装置。
【請求項2】
前記反ロータ側ケースが前記シリンダ空間の奥端部に、回転を阻止された状態で内嵌支持されており、この反ロータ側ケースと前記ロータ側ケースとの間に組み込まれる部品が、軸方向に関する深さが円周方向に関して漸次変化する複数の反ロータ側ランプ部をロータ側側面に、中心部に通孔を、それぞれ形成して成り、反ロータ側ケースの奥端部に、この反ロータ側ケースに対する回転を阻止された状態で内嵌支持された円輪状の反ロータ側カム部材と、前記通孔を挿通したシャフトのロータ側端部に外向フランジ状のランププレート部を固設すると共に、このランププレート部の反ロータ側側面で前記各反ロータ側ランプ部と対向する部分に、軸方向に関する深さが前記両ケースの円周方向に関して、前記各反ロータ側ランプ部と逆方向に漸次変化する複数のロータ側ランプ部を形成したロータ側カム部材と、これら反ロータ側、ロータ側各ランプ同士の間に転動自在に設けられた複数個の転動体と、中心部に多条のアジャスト用雌ねじ部を、外周面の反ロータ寄り部分に外向フランジ状の鍔部を、それぞれ形成して成り、この鍔部の一部と前記反ロータ側ケースとの係合により回転を阻止された円筒状のアジャストナットと、前記ロータ側カム部材のロータ側側面と前記鍔部の反ロータ側側面との間に挟持されたスラスト軸受と、軸方向に関して弾性的に圧縮された状態で、前記鍔部のロータ側側面と前記ロータ側ケースとの間に挟持された圧縮ばねとである、請求項1に記載したパーキング機構付ディスクブレーキ装置。
【請求項3】
前記各係止部が、前記反ロータ側ケースのロータ側端部に形成された係止孔である、請求項1〜2のうちの何れか1項に記載したパーキング機構付ディスクブレーキ装置。
【請求項4】
前記反ロータ側ケースを前記シリンダ空間の奥端部の所定位置に内嵌し、更に前記ロータ側ケースをこのシリンダ空間の所定位置に組み付ける前後の何れの状態でも、前記各係止爪片が前記係止孔を、径方向内方から外方に挿通しており、組み付け前の状態では前記各係止爪片の一部が、前記各係止孔のロータ側端縁と係合する事により前記両ケース同士の分離を防止し、組み付け後の状態では、前記各係止爪片の先端部で前記反ロータ側ケースの外周面から突出した部分を係止凹部に係合させる事により、このシリンダ空間からの前記両ケースの抜け止めを図る、請求項3に記載したパーキング機構付ディスクブレーキ装置。
【請求項5】
前記ロータ側ケースの反ロータ側端部のうちで、このロータ側ケースの円周方向に関して複数箇所に前記各係止爪片が、前記反ロータ側ケースのロータ側端部に前記各係止孔が、それぞれ形成されており、これら反ロータ側、ロータ側両ケース同士の間に組み込まれた圧縮ばねを所定量だけ圧縮した状態で、前記各係止爪片の先端部と前記各係止孔とが、前記反ロータ側、ロータ側両ケース同士が分離しない程度に係合し、前記圧縮ばねを前記所定量を超えて圧縮した状態で、前記各係止爪片の先端部が前記反ロータ側ケースの外周面から、前記シリンダ空間の内周面に形成した係止凹部と係合可能な量突出する、請求項3〜4のうちの何れか1項に記載したパーキング機構付ディスクブレーキ装置。
【請求項6】
前記各係止爪片が、各弾性腕片の先端部を前記反ロータ側ケースの径方向に関して外方に折り曲げて成るものであり、これら各弾性腕片の中間部先端寄り部分に、先端側を基端側よりも前記ロータ側ケースの径方向外方に存在させる方向に折れ曲がった段部を形成しており、前記各弾性腕片のうちでこの段部よりも先端側部分が前記反ロータ側ケースの内周面に当接した状態で、前記各係止爪片の先端部と前記各係止孔とが、前記反ロータ側、ロータ側両ケース同士が分離しない程度に係合し、前記各弾性腕片のうちで前記段部よりも基端側部分が前記反ロータ側ケースの内周面に当接した状態で、前記各係止爪片の先端部で前記反ロータ側ケースの外周面から突出した部分が、前記シリンダ空間の内周面に形成した係止凹部に係合する、請求項5に記載したパーキング機構付ディスクブレーキ装置。
【請求項7】
前記各係止孔の反ロータ側の端部に、前記反ロータ側ケースの径方向に関して内方に折れ曲がった状態で前記ロータ側ケースに向けて延出する抑え板部を形成し、前記各弾性腕片の段部を前記各係止孔内に進入させた状態で、これら各弾性腕片の先端部を前記各抑え板部の径方向外側に進入させる事により、前記各係止爪片が前記係止凹部から抜け出る方向に変位する事を阻止する、請求項6に記載したパーキング機構付きディスクブレーキ装置。
【請求項8】
前記各係止爪片が、各弾性腕片の先端部を、前記ロータ側ケースの径方向外方に折り曲げて成るものであり、前記各係止爪片の中間部に先端部よりも幅広の部分が設けられており、前記各係止孔は、これら各係止爪片の先端部を通過させるが幅広の部分を通過させない幅狭部をロータ側部分に、この幅広の部分も通過させる幅広部を反ロータ側部分に、それぞれ備えたものであり、この幅広の部分をこの幅狭部の両側縁部に係合させた状態で、前記各係止爪片の先端部と前記各係止孔とが、前記反ロータ側、ロータ側両ケースが分離しない程度に係合し、前記幅広の部分を前記幅広部を通過させた状態で、前記各係止爪片の基端部と前記各係止孔とが係合して、これら各係止爪片の先端部で前記ロータ側ケースの外周面から突出した部分が、前記シリンダ空間の内周面に形成した係止凹部に係合する、請求項5に記載したパーキング機構付ディスクブレーキ装置。
【請求項9】
前記各係止爪片が、前記ロータ側ケースの外周縁のうちで、このロータ側ケースの円周方向に関して複数箇所から反ロータ側に延出した弾性腕片の先端部に設けられた、このロータ側ケースの円周方向に関する幅寸法がこれら各弾性腕片の同方向の幅寸法よりも大きな幅広部の反ロータ側半部を、前記ロータ側ケースの径方向に関して外方に曲げ起こす事により形成されたものであり、前記各係止孔のうちで前記反ロータ側ケースの円周方向に関して中央部と前記反ロータ側ケースのロータ側端縁との間に、この反ロータ側ケースの円周方向に関する幅寸法が前記弾性腕片の幅寸法以上である連通部が設けられており、前記反ロータ側ケースを前記シリンダ空間の奥端部の所定位置に内嵌し、更に前記ロータ側ケースをこのシリンダ空間の所定位置に組み付ける以前の状態で、前記各係止爪片が前記各係止孔を、前記反ロータ側ケースの径方向に関して内方から外方に挿通して、これら各係止爪片と各係止孔との円周方向両端部同士の係合により前記両ケース同士の分離を防止し、組み付け後には、前記各弾性腕片が前記各連通部を通じて前記反ロータ側ケースよりも、この反ロータ側ケースの径方向に関して外方に変位した状態で、前記各係止爪片の先端部を前記係止凹部に係合させる事により、このシリンダ空間からの前記両ケースの抜け止めを図ると共に、前記幅広部を、前記反ロータ側ケースの径方向に関して、前記連通部の外側に移動させる事により、前記係止凹部からの前記各係止爪片の抜け止めを図る、請求項3〜4のうちの何れか1項に記載したパーキング機構付ディスクブレーキ装置。
【請求項10】
前記各係止部が、反ロータ側ケースを構成する周壁部の反ロータ側の端縁である、請求項1〜2のうちの何れか1項に記載したパーキング機構付ディスクブレーキ装置。
【請求項11】
前記周壁部が、円周方向に関して複数箇所に、軸方向に関してロータ側の端縁から反ロータ側の端縁にまで連通するスリット部を有する欠円筒状であり、前記周壁部のうちでこれら各スリット部により円周方向に分割された部分同士が、前記反ロータ側ケースのうちで反ロータ側端部に設けられた底板部により互いに連結されており、前記周壁部の反ロータ側端縁のうちで、円周方向に関して前記各スリット部に整合する部分及びこれら各スリット部の両側部分には前記底板部が存在しない、請求項10に記載したパーキング機構付ディスクブレーキ装置。
【請求項12】
前記各係止爪片が、前記ロータ側ケースの外周縁のうちで、このロータ側ケースの円周方向に関して、前記各スリット部に整合する複数箇所から反ロータ側に延出した、この円周方向に関する幅寸法がこれら各スリット部の同方向の幅寸法よりも小さい弾性腕片の先端部に設けられた、同方向に関する幅寸法が前記各スリット部の同方向の幅寸法よりも大きな幅広部の反ロータ側半部を、前記ロータ側ケースの径方向に関して外方に曲げ起こす事により形成されたものであり、前記反ロータ側ケースを前記シリンダ空間の奥端部の所定位置に内嵌し、更に前記ロータ側ケースをこのシリンダ空間の所定位置に組み付ける以前の状態で、前記各係止爪片が前記周壁部の反ロータ側の後端縁のうちで、円周方向に関して前記各スリット部の両側部分との係合により前記両ケース同士の分離を防止し、組み付け後には、前記各弾性腕片が前記各スリット部内で、前記反ロータ側ケースの径方向に関して外方に変位し、前記各係止爪片の先端部を前記係止凹部に係合させる事により、このシリンダ空間からの前記両ケースの抜け止めを図る、請求項11に記載したパーキング機構付ディスクブレーキ装置。
【請求項13】
前記各幅広部と前記各弾性腕片との間に、これら各弾性腕片の先端縁から、前記ロータ側ケースの径方向に関して内方に折れ曲がった連続部を設けており、前記各幅広部のうちのロータ側半部である基板部を、前記周壁部の反ロータ側端部の内周面のうちで前記各スリット部の両側部分に当接させた状態で、前記各弾性腕片が前記周壁部の内周面から径方向内方に突出しない、請求項12に記載したパーキング機構付ディスクブレーキ装置。
【請求項14】
前記各係止爪片の先端部を前記係止凹部に係合させて前記シリンダ空間からの前記両ケースの抜け止め図った状態で、前記ロータ側ケースの径方向に関して、前記各幅広部の基板部の内側に、前記パーキング機構を構成する一部の部品を進入させ、前記各係止爪片が前記ロータ側ケースの径方向に関して内方に変位する事を阻止する、請求項13に記載したパーキング機構付ディスクブレーキ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【公開番号】特開2013−11360(P2013−11360A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−229609(P2012−229609)
【出願日】平成24年10月17日(2012.10.17)
【分割の表示】特願2010−191907(P2010−191907)の分割
【原出願日】平成22年8月30日(2010.8.30)
【出願人】(000000516)曙ブレーキ工業株式会社 (621)
【Fターム(参考)】