説明

パーキンソン病発症リスクマーカー

【課題】 パーキンソン病、特に孤発性パーキンソン病の発症に関連する発症リスクマーカーおよび発症リスクの判定方法ならびに判定試薬の提供を目的とする。
【解決手段】 ヒト染色体1q32において下記(A1)および(A2)の少なくとも一つのSNPを含む8塩基以上の連続する塩基配列からなるポリヌクレオチドを、パーキンソン病の発症リスクマーカーとして検出する。
(A1)ヒト染色体1q32において、NCBIのSNPデータベースのリファレンス番号rs16856139、rs823128、rs823122、rs947211、rs823156、rs708730およびrs11240572の少なくとも一つで特定されるSNP
(A2)ヒト染色体1q32において、前記(A1)のいずれかのSNPと連鎖不平衡にあるSNP

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パーキンソン病の発症リスクマーカーに関する。本発明は、さらに、パーキンソン病の判定方法、判定試薬、判定キット、およびスクリーニング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
パーキンソン病は、世界的に高頻度で発症する原因不明の神経変性疾患であり、その発症機構の解明が求められている。パーキンソン病は、一般に、メンデル遺伝形式にしたがって、家族内等で発症する家族性パーキンソン病と、家族とは無関係に発症する孤発性パーキンソン病とに分類される。前者の家族性パーキンソン病は、例えば、α−シヌクレイン遺伝子(SNCA遺伝子)、ロイシン多含反復リン酸化酵素2型(leucine−rich repeat kinase2)遺伝子(LRRK2遺伝子)、パーキン遺伝子(Parkin遺伝子、PARK2遺伝子)、ピンク1(PTEN−INDUCED PUTATIVE KINASE 1)遺伝子(PINK1遺伝子)、パーク7遺伝子(PARK7遺伝子)、エーティーピー13エー2(ATPase TYPE13A2)遺伝子(ATP13A2遺伝子)等の単一遺伝子の変異が原因であることが報告されている(非特許文献1〜5参照)。
【0003】
一方、パーキンソン病患者の大部分を占める孤発性パーキンソン病は、多数の遺伝要因と多数の環境要因とが重なって発症する、多因子疾患と考えられている。そこで、孤発性パーキンソン病の発症に関与する遺伝要因、すなわち、疾患感受性遺伝子を明らかにするため、多くの研究がなされてきた。これまでに明らかになった、ゲノムワイド有意水準を満たすような、確実なパーキンソン病感受性遺伝子は、SNCA遺伝子およびGBA遺伝子のみである。しかし、これら2つの遺伝子だけでは、孤発性パーキンソン病の遺伝性は説明できないため、これら2つの遺伝子以外にも、パーキンソン病の疾患感受性遺伝子は存在すると考えられる。こういった、未だ明らかになっていない遺伝要因を発見することは、発症リスクの判定、有効な治療方法および医薬の開発につながると考えられるため、遺伝要因の解明が強く望まれている(非特許文献6〜10参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Polymeropoulos, M.H. et al. Mutation in the alpha-synuclein gene identified in families with Parkinson's disease. Science 276, 2045-2047 (1997).
【非特許文献2】Paisan-Ruiz, C. et al. Cloning of the gene containing mutations that cause PARK8-linked Parkinson's disease. Neuron 44, 595-600 (2004).
【非特許文献3】Zimprich, A. et al. Mutations in LRRK2 cause autosomal-dominant parkinsonism with pleomorphic pathology. Neuron 44, 601-607 (2004).
【非特許文献4】Farrer M.J. Genetics of Parkinson disease: paradigm shifts and future prospects. Nat. Rev. Genet. 7, 306-318 (2006).
【非特許文献5】Thomas, B. & Beal, M.F. Parkinson’s disease. Hum. Mol. Genet. 16, R183-R194 (2007).
【非特許文献6】Warner, T.T. & Schapira, A.H. Genetic and environmental factors in the cause of Parkinson’s disease. Ann. Neurol. 53(Suppl 3), S16-S23 (2003).
【非特許文献7】Pals, P. et al. a-Synuclein promoter confers susceptibility to Parkinson's disease. Ann. Neurol. 56, 591-595 (2004).
【非特許文献8】Mizuta, I. et al. Multiple candidate gene analysis identifies alpha-synuclein as a susceptibility gene for sporadic Parkinson's disease. Hum. Mol. Genet. 15, 1151-1158 (2006).
【非特許文献9】Muller, J.C. et al. Multiple regions of alpha-synuclein are associated with Parkinson's disease. Ann. Neurol. 57, 535-541 (2005).
【非特許文献10】Aharon-Peretz, J. et al. Mutations in the glucocerebrosidasegene and Parkinson’s disease in Ashkenazi Jews. N. Engl. J. Med. 351, 1972-1977(2004).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明は、パーキンソン病、特に孤発性パーキンソン病の発症に関連する新規の発症リスクマーカー、パーキンソン病の発症リスクの判定方法および判定試薬の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するために、本発明の第1のパーキンソン病の発症リスクマーカーは、
ヒト染色体1q32において下記(A1)および(A2)の少なくとも一つのSNPを含む8塩基以上の連続する塩基配列からなるポリヌクレオチド、または、ヒト染色体4p15において下記(B1)および(B2)の少なくとも一つのSNPを含む8塩基以上の連続する塩基配列からなるポリヌクレオチドであることを特徴とする。
(A1)ヒト染色体1q32において、NCBIのSNPデータベースのリファレンス番号rs16856139、rs823128、rs823122、rs947211、rs823156、rs708730およびrs11240572の少なくとも一つで特定されるSNP
(A2)ヒト染色体1q32において、前記(A1)のいずれかのSNPと連鎖不平衡にあるSNP
(B1)ヒト染色体4p15において、NCBIの一塩基SNPデータベースのリファレンス番号rs11931532、rs12645693、rs4698412およびrs4538475の少なくとも一つで特定されるSNP
(B2)ヒト染色体4p15において、前記(B1)のいずれかのSNPと連鎖不平衡にあるSNP
【0007】
本発明の第1の判定方法は、被検体の核酸試料について、ヒト染色体1q32における下記(A1)および(A2)の少なくとも一つのSNP、または、ヒト染色体4p15における下記(B1)および(B2)の少なくとも一つのSNPをタイピングして、被検体のパーキンソン病に対する発症リスクを判定することを特徴とする。
(A1)ヒト染色体1q32において、NCBIのSNPデータベースのリファレンス番号rs16856139、rs823128、rs823122、rs947211、rs823156、rs708730およびrs11240572の少なくとも一つで特定されるSNP
(A2)ヒト染色体1q32において、前記(A1)のいずれかのSNPと連鎖不平衡にあるSNP
(B1)ヒト染色体4p15において、NCBIのSNPデータベースのリファレンス番号rs11931532、rs12645693、rs4698412およびrs4538475の少なくとも一つで特定されるSNP
(B2)ヒト染色体4p15において、前記(B1)のいずれかのSNPと連鎖不平衡にあるSNP
【0008】
本発明の第1の判定試薬は、前記本発明の第1のパーキンソン病の発症リスクマーカーに対してハイブリダイズ可能なタイピング用ポリヌクレオチドを含むことを特徴とする、パーキンソン病の発症リスクを判定するための判定試薬である。
【0009】
本発明の第1の判定キットは、前記本発明の第1の判定試薬を含むことを特徴とする、パーキンソン病の発症リスクを判定するための判定キットである。
【0010】
本発明の第1のスクリーニング方法は、パーキンソン病に対する医薬候補物質のスクリーニング方法であって、
前記本発明の第1のパーキンソン病の発症リスクマーカーを発現可能な細胞と、候補物質とを接触させる工程と、
前記細胞における前記第1の発症リスクマーカーの発現を検出する工程とを含み、
前記発現を変化させた候補物質を、医薬候補物質として選択することを特徴とする。
【0011】
本発明の第2のパーキンソン病の発症リスクマーカーは、
ヒト染色体1q32において下記(A1)および(A2)の少なくとも一つのSNPを含むポリヌクレオチドでコードされる、SLC45A3タンパク質、NUCKS1タンパク質、RAB7L1タンパク質、SLC41A1タンパク質およびPM20D1タンパク質の少なくとも一つのタンパク質、または、
ヒト染色体4p15において下記(B1)および(B2)の少なくとも一つのSNPを含むポリヌクレオチドでコードされる、BST1タンパク質であることを特徴とする。
(A1)ヒト染色体1q32において、NCBIのSNPデータベースのリファレンス番号rs16856139、rs823128、rs823122、rs947211、rs823156、rs708730およびrs11240572の少なくとも一つで特定されるSNP
(A2)ヒト染色体1q32において、前記(A1)のいずれかのSNPと連鎖不平衡にあるSNP
(B1)ヒト染色体4p15において、NCBIのSNPデータベースのリファレンス番号rs11931532、rs12645693、rs4698412およびrs4538475の少なくとも一つで特定されるSNP
(B2)ヒト染色体4p15において、前記(B1)のいずれかのSNPと連鎖不平衡にあるSNP
【0012】
本発明の第2のスクリーニング方法は、パーキンソン病に対する医薬候補物質のスクリーニング方法であって、
本発明の第2のパーキンソン病の発症リスクマーカーと候補物質とを接触させる工程と、
前記第2の発症リスクマーカーと前記候補物質との結合の有無を検出する工程とを含み、
前記第2の発症リスクマーカーと結合した前記候補物質を、医薬候補物質として選択することを特徴とする。本発明の第2のスクリーニング方法において、前記第2の発症リスクマーカーは、リスクアレルを有するポリヌクレオチドでコードされるタンパク質である。
【発明の効果】
【0013】
本発明者らは、鋭意研究の結果、連鎖不平衡を示すSNPを有する、2つの新たな遺伝子領域を、パーキンソン病の疾患感受性遺伝子座として同定した。これらの疾患感受性遺伝子座において、連鎖不平衡を示す前記各SNPは、パーキンソン病の発症と強い関連性を示した。このため、前記疾患感受性遺伝子座における前記各種SNPを、疾患感受性SNPとして、タイピングすることによって、優れた信頼性で、パーキンソン病の発症リスクを判定することが可能となった。また、これらの疾患感受性SNPを有する前記疾患感受性遺伝子座およびそれがコードするタンパク質をターゲットとすることで、パーキンソン病の治療に有効な新たな候補物質のスクリーニングも可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、実施例1において、検定統計量のQ−Qプロットを示す図であり、図1(A)は、品質管理後のSNP 435,470個の検定統計量のQ−Qプロットを示し、図1(B)は、パーキンソン病との強い関連を有する4つの遺伝子座(1q32、4p15、4q22および12q12)を除去した後の検定統計量のQ−Qプロットを示す。
【図2】図1は、実施例1において、遺伝子座のSNPについて、染色体上の位置との関連の強さを示すプロットおよび連鎖不平衡(LD)構造を示す図であり、図2(A)は、1q32、図2(B)は、4p15を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明について、以下、詳細に説明する。以下の記述は、本発明を説明するための例示であり、本発明を、以下の実施形態のみに限定する趣旨ではない。また、本明細書中で使用する、全ての技術的用語、科学的用語および専門用語は、本発明が属する技術分野のいわゆる当業者により、一般的に理解されるのと同じ意味を有し、単に特定の態様の説明を目的として用いられており、本発明を限定することを意図したものではない。また、本発明は、その要旨を逸脱しない限り、さまざまな形態で実施できる。本明細書において引用した全ての先行技術文献、公開公報、特許公報およびその他の特許文献は、参照として本明細書に組み入れられ、本発明の実施のために用いることができる。
【0016】
本発明において、「多型」は、一般的に、母集団中で1%以上の頻度で存在する2以上の対立遺伝子を意味し、「SNP」は、一塩基多型であり、一般的に、遺伝子の塩基配列において、一塩基が変異した多様性を示す状態およびその部位を意味する。本発明において、「疾患感受性SNP」は、疾患の発症に関与するSNPである。本発明において、「疾患感受性遺伝子」は、疾患の発症に関与する遺伝子であり、前記疾患感受性SNPを有する連鎖不平衡ブロックに位置する遺伝子を意味する。
【0017】
本発明において、「パーキンソン病」は、家族性パーキンソン病と、孤発性パーキンソン病とがあり、「家族性パーキンソン病」は、メンデル遺伝形式にしたがって発症するパーキンソン病であり、「孤発性パーキンソン病」は、メンデル遺伝形式によらずに発症するパーキンソン病である。
【0018】
本発明において、「NCBI」は、National Center for Biotechnology Informationであり、「rs」は、前記NCBIのSNPデータベースに登録されているSNPを特定するリファレンス番号である。
【0019】
本発明において、「ポリヌクレオチド」は、例えば、ヌクレオチドから構成されており、一本鎖でもよいし、塩基対が形成された二本鎖であってもよい。前記ヌクレオチドは、例えば、リボヌクレオチドおよびデオキシリボヌクレオチドがあげられる。前記ポリヌクレオチドは、例えば、リボヌクレオチドから構成されるリボ核酸(RNA)でもよいし、デオキシリボヌクレオチドから構成されるデオキシリボ核酸(DNA)でもよいし、リボヌクレオチドとデオキシリボヌクレオチドの両方を含んでもよい。また、前記ポリヌクレオチドは、塩基として、天然の塩基を含んでもよいし、非天然の塩基を含んでもよい。前記天然の塩基としては、例えば、アデニン、シトシン、グアニン、チミンおよびウラシル等があげられ、前記非天然の塩基としては、例えば、4−アセチルシチジン、5−(カルボキシヒドロキシメチル)ウリジン、2’−O−メチルシチジン、5−カルボキシメチルアミノメチル−2−チオウリジン、5−カルボキシメチルアミノメチルウリジン、ジヒドロウリジン、2’−O−メチルシュードウリジン、β−D−ガラクトシルクエオシン、2’−O−メチルグアノシン、イノシン、N6−イソペンテニルアデノシン、1−メチルアデノシン、1−メチルシュードウリジン、1−メチルグアノシン、1−メチルイノシン、2,2−ジメチルグアノシン、2−メチルアデノシン、2−メチルグアノシン、3−メチルシチジン、5−メチルシチジン、N6−メチルアデノシン、7−メチルグアノシン、5−メチルアミノメチルウリジン、5−メトキシアミノメチル−2−チオウリジン、β−D−マンノシルクエオシン、5−メトキシカルボニルメチル−2−チオウリジン、5−メトキシカルボニルメチルウリジン、5−メトキシウリジン、2−メチルチオ−N6−イソペンテニルアデノシン、N−((9−β−D−リボフラノシル−2−メチルチオプリン−6−イル)カルバモイル)トレオニン、N−((9−β−D−リボフラノシルプリン−6−イル)N−メチルカルバモイル)トレオニン、ウリジン−5−オキシ酢酸−メチルエステル、ウリジン−5オキシ酢酸、ワイブトキソシン、シュードウリジン、クエオシン、2−チオシチジン、5−メチル−2−チオウリジン、2−チオウリジン、4−チオウリジン、5−メチルウリジン、N−((9−β−D−リボフラノシルプリン−6−イル)カルバモイル)トレオニン、2’−O−メチル−5−メチルウリジン、2’−O−メチルウリジン、ワイブトシン、3−(3−アミノ−3−カルボキシプロピル)ウリジン等があげられる。また、前記ポリヌクレオチドは、例えば、PNA(ペプチド核酸)、LNA(Locked Nucleic Acid)等を含んでもよい。前記ポリヌクレオチドは、例えば、天然のポリヌクレオチドでもよいし、合成したポリヌクレオチドでもよい。前記天然のポリヌクレオチドは、例えば、生体由来のゲノムDNA、cDNAおよびRNA等があげられる。合成したポリヌクレオチドは、例えば、ポリメラーゼチェーンリアクション(PCR)等の核酸増幅法により合成したDNAおよびRNA、化学合成したDNAおよびRNA等があげられる。
【0020】
<第1の発症リスクマーカー>
本発明の第1のパーキンソン病の発症リスクマーカーは、前述のように、ヒト染色体1q32において下記(A1)および(A2)の少なくとも一つのSNPを含む8塩基以上の連続する塩基配列からなるポリヌクレオチドもしくはその相補配列からなるポリヌクレオチド、または、ヒト染色体4p15において下記(B1)および(B2)の少なくとも一つのSNPを含む8塩基以上の連続する塩基配列からなるポリヌクレオチドもしくはその相補配列からなるポリヌクレオチドであることを特徴とする。
(A1)ヒト染色体1q32において、NCBIのSNPデータベースのリファレンス番号rs16856139、rs823128、rs823122、rs947211、rs823156、rs708730およびrs11240572の少なくとも一つで特定されるSNP
(A2)ヒト染色体1q32において、前記(A1)のいずれかのSNPと連鎖不平衡にあるSNP
(B1)ヒト染色体4p15において、NCBIのSNPデータベースのリファレンス番号rs11931532、rs12645693、rs4698412およびrs4538475の少なくとも一つで特定されるSNP
(B2)ヒト染色体4p15において、前記(B1)のいずれかのSNPと連鎖不平衡にあるSNP
【0021】
本発明の第1の発症リスクマーカーは、パーキンソン病の発症に関連することから、パーキンソン病の関連マーカーまたはパーキンソン病の疾患感受性マーカーということもできる。本発明の第1の発症リスクマーカーは、例えば、パーキンソン病の中でも、特に孤発性パーキンソン病の発症リスクマーカーとして有用である。前記各SNPについて、アレルのうち、前記パーキンソン病の発症の可能性、発症のし易さ、または、発症リスクの高さを示すアレルを、以下、「リスクアレル」という。前記(A1)のSNPのリスクアレルは、メジャーアレルであり、前記(A2)のSNPのリスクアレルは、前記(A1)のリスクアレルと同一ハプロタイプに存在するアレルであり、前記(B1)のSNPのリスクアレルは、マイナーアレルであり、前記(B2)のSNPのリスクアレルは、前記(B1)のリスクアレルと同一ハプロタイプに存在するアレルである。
【0022】
前記各SNPは、例えば、パーキンソン病の発症に関連することから、パーキンソン病の関連SNPまたはパーキンソン病の疾患感受性SNPということもできる。
【0023】
ヒト染色体1q32において前記(A1)および(A2)の少なくとも一つのSNPを含む前記塩基配列は、例えば、8塩基以上の連続する塩基配列であればよく、その長さの上限は、特に制限されない。また、ヒト染色体4p15において前記(B1)および(B2)の少なくとも一つのSNPを含む前記塩基配列は、例えば、8塩基以上の連続する塩基配列であればよい。前記塩基配列の下限は、例えば、10塩基長であり、好ましくは15塩基長が好ましく、より好ましくは、20塩基長である。前記塩基配列の上限は、特に制限されないが、例えば、30塩基長であり、好ましくは、40塩基長であり、より好ましくは、50塩基長である。
【0024】
本発明者は、前述のように、連鎖不平衡を示すSNPを有する、2つの新たな遺伝子領域を、パーキンソン病の疾患感受性遺伝子座として同定した。一方は、前記(A1)および(A2)のSNPを含む疾患感受性遺伝子座であり、以下、「PARK16」または「PARK16遺伝子座」という。他方は、前記(B1)および(B2)のSNPを含む疾患感受性遺伝子座であり、以下、「BST1」または「BST1遺伝子座」という。
【0025】
前記PARK16遺伝子座は、NCBI Reference Sequence:NT_004487.19に基づき、ヒト染色体1q32のゲノムにおいて、例えば、57,115,623位〜57,307,887位の領域である。
【0026】
前記PARK16遺伝子座は、SLC45A3遺伝子、NUCKS1遺伝子、RAB7L1遺伝子、SLC41A1遺伝子およびPM20D1遺伝子の5つの遺伝子を含む領域である。ヒト染色体1q32のゲノム配列における、前記5つの遺伝子の配列は、例えば、NCBI Reference Sequence:NT_004487.19に登録されている。
前記SLC45A3は、ヒト染色体1q32のゲノムにおいて、57,115,623位〜57,138,272位の領域、
前記NUCKS1遺伝子は、ヒト染色体1q32のゲノムにおいて、57,170,589位〜57,208,003位の領域、
前記RAB7L1遺伝子は、ヒト染色体1q32のゲノムにおいて、57,225,756位〜57,233,252位の領域、
前記SLC41A1遺伝子は、ヒト染色体1q32のゲノムにおいて、57,246,863位〜57,270,803位の領域、
前記PM20D1遺伝子は、ヒト染色体1q32のゲノムにおいて、57,285,795位〜57,307,887位の領域である。
【0027】
前記5つの遺伝子のうち、NUCKS1遺伝子、RAB7L1遺伝子およびSLC41A1遺伝子は、パーキンソン病と最も強い関連性を示すrs947211で特定されるSNPと同じLDブロックに含まれる。
【0028】
前記(A1)に示す、7種類のSNP、すなわち、rs16856139、rs823128、rs823122、rs947211、rs823156、rs708730およびrs11240572で特定されるSNPは、パーキンソン病に対して、強い関連を示し、中でも、rs947211で特定されるSNPは、パーキンソン病と最も強い関連性を示す。下記表1に、各SNPの対立遺伝子(アレル)およびリスクアレルを示す。また、下記表1に、あわせて、前記PARK16遺伝子座における前記(A1)の各SNPを含む部分配列の配列番号ならびに前記部分配列におけるSNPの位置を示す。
【0029】
【表1】

【0030】
前記表1に示すSNPの中でも、rs947211で特定されるSNPが、パーキンソン病と最も強い関連性を示す。rs947211で特定されるSNPは、前記RAB7L1遺伝子の上流でありSLC41A1遺伝子の下流に位置する。
【0031】
前記表1に示すいずれかのSNPと連鎖不平衡にあるSNPは、例えば、以下で特定されるSNPが例示できる。各SNPについて、かっこ内に、リスクアレルを示す。rs12409639(G)、rs823092(T)、rs823093(T)、rs823108(C)、rs1772146(T)、rs1772147(A)、rs1620334(T)、rs823113(G)、rs823114(A)、rs865402(T)、rs823117(T)、rs823123(T)、rs1626710(T)、rs1772150(A)、rs4338418(A)、rs823144(A)、rs1775151(T)、rs1772153(C)、rs10900524(A)、rs1772156(C)、rs823157(A)、rs823065(G)、rs823066(G)、rs823071(T)、rs823078(C)等が例示できる。これらのSNPが連鎖不平衡の関係にあることは、国際HapMapプロジェクトのデータベースから明らかである。
【0032】
ヒト染色体1q32において前記(A1)および(A2)の少なくとも一つのSNPを含む前記塩基配列は、前述のように、例えば、8塩基以上の連続する塩基配列であればよい。前記塩基配列は、例えば、前記PARK16遺伝子座の全長配列でもよいし、前記PARK16遺伝子座の部分配列でもよい。前記PARK16遺伝子座の全長配列は、前述のように、例えば、ヒト染色体1q32のゲノムにおいて、SLC45A3遺伝子、NUCKS1遺伝子、RAB7L1遺伝子、SLC41A1遺伝子およびPM20D1遺伝子を含む、57,115,623位〜57,307,887位の領域があげられる。前記PARK16遺伝子座の部分配列は、例えば、NUCKS1遺伝子、RAB7L1遺伝子およびSLC41A1遺伝子を含む、57,170,589位〜57,270,803位の領域があげられる。この他にも、前記PARK16遺伝子座の部分配列は、例えば、SLC45A3遺伝子、NUCKS1遺伝子、RAB7L1遺伝子、SLC41A1遺伝子およびPM20D1遺伝子のいずれかの塩基配列またはその部分配列、前記遺伝子間の配列またはその部分配列、前記遺伝子の上流または下流の配列等があげられる。
【0033】
前記BST1遺伝子座は、例えば、NCBI Reference Sequence:NT_006316.16に基づき、ヒト染色体4p15のゲノムにおいて、6,886,370位〜6,926,645位の領域である。
【0034】
前記BST1遺伝子座は、BST1遺伝子を含む領域であり、前記BST1遺伝子の上流および下流の配列をさらに含んでもよい。ヒト染色体4p15のゲノム配列における、前記BST1遺伝子の配列は、例えば、NCBI Reference Sequence:NT_006316.16に登録されている。前記BST1遺伝子は、ヒト染色体4p15のゲノムにおいて、6,886,370位〜6,915,593位の領域である。
【0035】
前記BST1遺伝子座における4種類のSNP、すなわち、rs11931532、rs12645693、rs4698412およびrs4538475で特定されるSNPは、パーキンソン病に対して、強い関連を示し、中でも、rs4538475で特定されるSNPは、パーキンソン病と最も強い関連性を示す。下記表2に、各SNPの対立遺伝子(アレル)およびリスクアレルを示す。また、下記表2に、あわせて、前記BST1遺伝子座における前記(B1)の各SNPを含む部分配列の配列番号ならびに前記部分配列におけるSNPの位置を示す。
【0036】
【表2】

【0037】
前記表2に示すいずれかのSNPと連鎖不平衡にあるSNPは、例えば、例えば、以下で特定されるSNPが例示できる。各SNPについて、かっこ内に、リスクアレルを示す。rs11944132(C)、rs16892271(C)、rs6844968(G)、rs16892272(C)、rs16892276(T)、rs12651052(C)、rs12645513(G)、rs12646331(G)、rs9790670(G)、rs16892283(A)、rs16892287(C)、rs16892289(G)、rs4321629(C)、rs10516291(C)、rs16898413(T)、rs4435745(A)、rs4498133(G)、rs1058212(A)、rs955410(A)、rs6835705(G)、rs11724635(A)、rs4266290(G)、rs4698413(T)、rs4613561(T)、rs4273468(G)等があげられる。これらのSNPが連鎖不平衡の関係にあることは、国際HapMapプロジェクトのデータベースから明らかである。
【0038】
ヒト染色体4p15において前記(B1)および(B2)の少なくとも一つのSNPを含む前記塩基配列は、前述のように、例えば、8塩基以上の連続する塩基配列であればよい。前記塩基配列は、例えば、前記BST1遺伝子座の全長配列でもよいし、前記BST1遺伝子座の部分配列でもよい。前記BST1の全長配列は、前述のように、例えば、ヒト染色体4p15のゲノムにおいて、BST1遺伝子を含む、6,886,370位〜6,926,645位の領域があげられる。前記BST1遺伝子座の部分配列は、例えば、BST1遺伝子の塩基配列またはその部分配列、前記BST1遺伝子の上流または下流の配列等があげられる。
【0039】
<第1の判定方法>
本発明の第1の判定方法は、前述のように、被検体の核酸試料について、ヒト染色体1q32における下記(A1)および(A2)の少なくとも一つのSNP、または、ヒト染色体4p15における下記(B1)および(B2)の少なくとも一つのSNPをタイピングして、被検体のパーキンソン病に対する発症リスクを判定することを特徴とする判定方法である。以下、SNPをタイピングする工程を、以下、「タイピング工程」という。
(A1)ヒト染色体1q32において、NCBIのSNPデータベースのリファレンス番号rs16856139、rs823128、rs823122、rs947211、rs823156、rs708730およびrs11240572の少なくとも一つで特定されるSNP
(A2)ヒト染色体1q32において、前記(A1)のいずれかのSNPと連鎖不平衡にあるSNP
(B1)ヒト染色体4p15において、NCBIのSNPデータベースのリファレンス番号rs11931532、rs12645693、rs4698412およびrs4538475の少なくとも一つで特定されるSNP
(B2)ヒト染色体4p15において、前記(B1)のいずれかのSNPと連鎖不平衡にあるSNP
【0040】
判定目的の前記パーキンソン病は、例えば、家族性パーキンソン病でもよいし、孤発性パーキンソン病でもよいが、本発明は、中でも、孤発性パーキンソン病の発症リスクの判定に有用である。
【0041】
本発明の第1の判定方法は、前記タイピング工程における前記SNPのタイピングの結果に基づき、パーキンソン病の発症リスクを判定できる。本発明の第1の判定方法は、例えば、前記SNPのいずれかが、リスクアレルの場合、前記パーキンソン病を発症し易い、前記リスクアレル以外のアレルの場合に、前記パーキンソン病を発症し難いと判定する。本発明の第1の判定方法は、例えば、被検体がリスクアレルの場合、リスクアレル以外のアレルを有する他の被検体よりも、前記パーキンソンを発症し易いと判定し、被検体がリスクアレル以外のアレルの場合に、リスクアレルを有する他の被検体よりも、前記パーキンソン病を発症し難いと判定することもできる。前記パーキンソン病を発症し易いとは、例えば、パーキンソン病を発症するリスクが高いということもでき、前記パーキンソン病を発症し難いとは、例えば、パーキンソン病を発症するリスクが低いということもできる。前記SNPのリスクアレルは、前述の通りであって、前記(A1)のSNPのリスクアレルは、メジャーアレルであり、前記(A2)のSNPのリスクアレルは、前記(A1)のリスクアレルと同一ハプロタイプに存在するアレルであり、前記(B1)のSNPのリスクアレルは、マイナーアレルであり、前記(B2)のSNPのリスクアレルは、前記(B1)のリスクアレルと同一ハプロタイプに存在するアレル
である。
【0042】
前記タイピング工程において、タイピングするSNPの個数は、特に制限されず、例えば、1種類でもよいし、判定の信頼性をさらに向上できることから、2種類以上でもよい。タイピングするSNPが2種類以上の場合、例えば、前記(A1)または(A2)における異なるSNPを2種類以上タイピングしてもよいし、前記(B1)または(B2)における異なるSNPを2種類以上タイピングしてもよい。また、前記(A1)、(A2)、(B1)または(B2)のSNPを、あわせて2種類以上タイピングしてもよい。前記(A1)のSNPとしては、特に制限されないが、例えば、パーキンソン病との関連性が強いことから、rs947211をタイピングすることが好ましい。前記(B1)のSNPとしては、特に制限されないが、例えば、パーキンソン病との関連性が強いことから、rs4538475をタイピングすることが好ましい。
【0043】
前記SNPのタイピング方法は、何ら制限されず、従来公知の方法が採用できる。前記タイピング方法としては、例えば、被検核酸と前記SNPに特異的なプローブとのハイブリダイズを行う方法、被検核酸を前記SNPに特異的なプライマーを用いて核酸増幅する方法、被検核酸の塩基配列を解析するシークエンス法、被検核酸を制限酵素処理し、断片長を確認するRFLP(Restriction Fragment Length Polymorphism;制限酵素断片長多型)法、MALDI−TOF/MS法等があげられる。前記プローブを使用する方法としては、例えば、TaqMan PCR法、インベーダー法等があげられる。
【0044】
前記SNPのタイピングに、前記プローブまたは前記プライマーを使用する場合、前記タイピング工程において、前記プローブまたは前記プライマーとして、例えば、タイピング用ポリヌクレオチドが使用できる。前記タイピング用ポリヌクレオチドは、例えば、本発明の第1の発症リスクマーカーに対してハイブリダイズ可能なポリヌクレオチドがあげられる。
【0045】
本明細書において、ハイブリダイズは、例えば、ハイブリダイゼーション緩衝液中で、ハイブリダイゼーション反応を行い、洗浄液中で洗浄することにより行える。前記ハイブリダイズは、ストリンジェントな条件下で行われることが好ましい。「ストリンジェントな条件」とは、例えば、前記ハイブリダイゼーション緩衝液中で、温度40〜70℃、好ましくは、60〜65℃等で、ハイブリダイゼーション反応を行い、塩濃度15〜300mmol/L、好ましくは15〜60mmol/L等の前記洗浄液で洗浄する条件があげられる。前記温度および塩濃度は、例えば、使用するプローブの長さ等に応じて、適宜設定可能である。また、前記洗浄の条件は、例えば、0.2×SSCまたは2×SSC、0.1%SDS、温度20〜68℃で行うことがあげられる。ストリンジェントな条件を、高(high)ストリンジェント条件、中等度(moderate)ストリンジェント条件および低(mild)ストリンジェント条件のいずれに設定するかは、例えば、洗浄時の塩濃度または温度で差を設けることができる。塩濃度で差を設ける場合、前記洗浄緩衝液として、例えば、高ストリンジェント条件には、0.2×SSCおよび0.1%SDSを使用することが好ましく、低ストリンジェント条件には、2×SSCおよび0.1%SDSを使用することが好ましい。温度で差を設ける場合、例えば、高ストリンジェント条件は、68℃、中等度ストリンジェント条件は、42℃、低ストリンジェント条件は、室温(20〜25℃)で洗浄を行うことが好ましく、洗浄液としては、例えば、0.2×SSC、0.1% SDSを使用できる。また、ハイブリダイゼーションに先立って、例えば、プレハイブリダイゼーションおよびプレ洗浄を行ってもよく、その条件も、特に制限されず、前述のハイブリダイゼーションと同様でもよいし、異なってもよい。いずれの場合も、前記洗浄緩衝液としては、例えば、0.2×SSCおよび0.1%SDSを使用できる。
【0046】
ハイブリダイゼーションの詳細な手順は、例えば、「Molecular Cloning, A Laboratory Manual 2nd ed.」(Cold Spring Harbor Press (1989))、特に、Section9.47−9.58、「Current Protocols in Molecular Biology」(John Wiley & Sons (1987−1997))、特に、Section6.3−6.4、「DNA Cloning 1: Core Techniques, A Practical Approach 2nd ed.」(Oxford University (1995))、特に、条件についてはSection2.10等を参照できる。また、市販のツールを使用する場合は、例えば、添付の使用説明書に従って行うことができる。
【0047】
前記(A1)または(A2)のSNPをタイピングする場合、前記タイピング用ポリヌクレオチドは、例えば、ヒト染色体1q32における前記(A1)および(A2)の少なくとも一つのSNPを含む8塩基以上の連続する塩基配列からなるポリヌクレオチドもしくはその相補配列からなるポリヌクレオチドがあげられる。
【0048】
前記(A1)または(A2)のSNPのタイピング用ポリヌクレオチドは、具体例として、以下のポリヌクレオチドがあげられる。
rs16856139のタイピング用ポリヌクレオチドは、例えば、配列番号1において、301位の塩基を含む連続した塩基配列からなるポリヌクレオチド、
rs823128のタイピング用ポリヌクレオチドは、例えば、配列番号2において、201位の塩基を含む連続した塩基配列からなるポリヌクレオチド、
rs823122のタイピング用ポリヌクレオチドは、例えば、配列番号3において、258位の塩基を含む連続した塩基配列からなるポリヌクレオチド、
rs947211のタイピング用ポリヌクレオチドは、例えば、配列番号4において、301位の塩基を含む連続した塩基配列からなるポリヌクレオチド、
rs823156のタイピング用ポリヌクレオチドは、例えば、配列番号5において、301位の塩基を含む連続した塩基配列からなるポリヌクレオチド、
rs708730のタイピング用ポリヌクレオチドは、例えば、配列番号6において、240位の塩基を含む連続した塩基配列からなるポリヌクレオチド、
rs11240572のタイピング用ポリヌクレオチドは、例えば、配列番号7において、501位の塩基を含む連続した塩基配列からなるポリヌクレオチドがあげられる。
【0049】
前記(B1)または(B2)のSNPをタイピングする場合、前記タイピング用ポリヌクレオチドは、例えば、ヒト染色体4p15における前記(B1)および(B2)の少なくとも一つのSNPを含む8塩基以上の連続する塩基配列からなるポリヌクレオチドもしくはその相補配列からなるポリヌクレオチドがあげられる。
【0050】
前記(B1)または(B2)のSNPのタイピング用ポリヌクレオチドは、具体例として、以下のポリヌクレオチドがあげられる。
rs11931532のタイピング用ポリヌクレオチドは、例えば、配列番号8において、301位の塩基を含む連続した塩基配列からなるポリヌクレオチド、
rs12645693のタイピング用ポリヌクレオチドは、例えば、配列番号9において、501位の塩基を含む連続した塩基配列からなるポリヌクレオチド、
rs4698412のタイピング用ポリヌクレオチドは、例えば、配列番号10において、301位の塩基を含む連続した塩基配列からなるポリヌクレオチド、
rs4538475のタイピング用ポリヌクレオチドは、例えば、配列番号11において、339位の塩基を含む連続した塩基配列からなるポリヌクレオチドがあげられる。
【0051】
前記タイピング用ポリヌクレオチドの塩基長は、特に制限されない。前記塩基長の下限は、例えば、8塩基長であり、好ましくは、10塩基長であり、より好ましくは、15塩基長であり、さらに好ましくは、20塩基長であり、特に好ましくは、25塩基長であり、特に好ましくは26塩基長である。前記塩基長の範囲は、例えば、8〜50塩基長または8〜30塩基長であり、好ましくは、10〜50塩基長または10〜30塩基長であり、より好ましくは、15〜50塩基長または15〜30塩基長であり、さらに好ましくは20〜50塩基長または20〜30塩基長であり、特に好ましくは、25〜50塩基長または25〜30塩基長であり、特に好ましくは、26〜39塩基長または26〜35塩基長である。
【0052】
前記タイピング用ポリヌクレオチドは、例えば、本発明の第1の発症リスクマーカーの塩基配列に基づいて、化学合成等により調製できる。前記タイピング用ポリヌクレオチドとなるプローブおよびプライマーの調製方法は、周知であり、例えば、「Molecular Cloning, A Laboratory Manual 2nd ed.」(Cold Spring Harbor Press (1989))、「Current Protocols in Molecular Biology」(John Wiley & Sons (1987−1977))を参照できる。
【0053】
前記タイピング工程は、前記タイピング用ポリヌクレオチドを、前記プローブまたは前記プライマーとして使用する場合、例えば、被検核酸を含む被検試料に、前記タイピング用ポリヌクレオチドを接触させることが好ましい。
【0054】
前記被検試料に含まれる前記被検核酸は、例えば、被検体の生体試料から抽出した生体由来のDNAまたはRNAでもよいし、前記生体由来のDNAから合成したRNA、DNAもしくはcDNA、または、生体由来のRNAから合成したcDNAであってもよい。前記生体由来のDNAは、例えば、ゲノムDNAがあげられる。前記生体由来のRNAは、例えば、一次転写産物RNAまたはスプライシングされた成熟RNAがあげられる。前者は、例えば、トータルRNAとして、後者は、例えば、mRNAとして、前記生体試料から抽出できる。前記生体由来のDNAおよびRNAは、例えば、従来公知の方法によって、前記生体から単離できる。また、前記生体由来のDNAからのRNAの合成は、例えば、前記生体由来のDNAを鋳型として、転写酵素を用いた転写反応により行うことができ、前記生体由来のDNAからのDNAの合成は、例えば、DNAポリメラーゼ等を用いたPCR等の核酸増幅反応により行うことができ、前記生体由来のDNAからのcDNAは、例えば、前記DNAを鋳型とした転写反応の後、合成したRNAを鋳型とする、逆転写酵素を用いた逆転写(RT)反応により行うことができる。また、前記生体由来のRNAからのcDNAの合成は、例えば、逆転写酵素を用いた逆転写反応により行うことができ、さらに、核酸増幅反応により前記cDNAを増幅することが好ましく、具体的には、RT−PCRを行うことが好ましい。
【0055】
前記被検試料は、特に制限されず、前記被検核酸を含んでいればよい。前記被検試料としては、例えば、生体試料を含むことが好ましい。前記生体試料としては、例えば、血液、ならびに、口腔粘膜、毛根、爪等の細胞および組織等があげられる。
【0056】
前記タイピング工程は、前記プローブを使用する場合、例えば、前記プローブと前記被検核酸とのハイブリダイズの有無を検出することによって、SNPのタイピングを行うことができる。
【0057】
前記プローブと前記被検核酸とのハイブリダイズの検出方法としては、特に制限されないが、例えば、ノーザンブロット法、サザンブロット法、in situハイブリダイゼーション法、TaqMan PCR法、インベーダー法等があげられる。前記プローブは、例えば、前記検出方法に応じて、適宜、標識物質を有してもよい。前記標識物質としては、例えば、蛍光物質、消光物質、放射性物質、酵素等があげられる。前記ハイブリダイズの検出は、例えば、前記標識物質の検出により行うことができ、この場合、前記標識物質の種類に応じて、適宜、前記標識物質を検出するための試薬を使用できる。
【0058】
また、前記タイピング工程は、前記プライマーを使用する場合、例えば、前記被検核酸を鋳型として、前記プライマーを用いた核酸増幅を行い、増幅の有無を検出することによって、SNPのタイピングを行うことができる。前記プライマーは、例えば、1種類を使用してもよいし、2種類以上を含むプライマーセットとして使用することもできる。前記プライマーは、例えば、前記検出方法に応じて、適宜、標識物質を有してもよい。前記標識物質は、例えば、前述のような標識物質があげられる。
【0059】
前記プライマーを用いた核酸増幅によるタイピングの方法としては、例えば、ASP−PCR(Allele Specific Primer PCR)法等があげられる。
【0060】
<第1の判定試薬>
本発明の第1判定試薬は、前述のように、本発明の第1の発症リスクマーカーに対して、ハイブリダイズ可能なポリヌクレオチドを含むことを特徴とする、パーキンソン病の発症リスクを判定するための判定試薬である。
【0061】
前記タイピング用ポリヌクレオチドは、本発明の第1判定方法において説明した、プローブまたはプライマーとして使用可能なタイピング用ポリヌクレオチドと同様である。
【0062】
本発明の第1の判定試薬は、例えば、前記タイピングの方法に応じて、前記タイピング用ポリヌクレオチド以外に、適宜、試薬、使用説明書、固相等の器具等を含んでもよい。前記タイピング用ポリヌクレオチド以外の試薬としては、特に制限されないが、例えば、被検核酸を増幅するための試薬として、ポリメラーゼ、dNTP等の核酸モノマー、緩衝剤等を含んでもよいし、前記標識物質を検出するための酵素、基質等を含んでもよい。
【0063】
前記タイピング用ポリヌクレオチドは、例えば、固相に固定化されてもよい。前記固相としては、例えば、マイクロチップ、マイクロアレイがあげられる。このように、前記タイピング用ポリヌクレオチドを前記固相に固定化することによって、例えば、前記タイピング用ポリヌクレオチドと前記被検核酸とを接触させた後、前記タイピング用ポリヌクレオチドに未結合の前記被検核酸を、容易に除去できる。このため、さらに、判定精度を向上できる。一つの固相に固定化する前記タイピング用ポリヌクレオチドの種類は、特に制限されず、いずれか1種類の前記第1の発症リスクマーカーに対するタイピング用ポリヌクレオチドでもよいし、2種類以上の前記第1の発症リスクマーカーに対するタイピング用ポリヌクレオチドでもよい。また、前記固相には、例えば、さらに、他のマーカーに対するタイピング用ポリヌクレオチドを固定化してもよい。
【0064】
<第1の判定キット>
本発明の第1の判定キットは、前記本発明の第1の判定試薬を含むことを特徴とする、パーキンソン病の発症リスクを判定するための判定キットである。本発明の第1の判定キットは、前記本発明の第1の判定試薬を含んでいればよく、その他の構成は、何ら制限されない。前記判定試薬は、前述の通りである。
【0065】
<第1のスクリーニング方法>
本発明の第1のスクリーニング方法は、パーキンソン病に対する医薬候補物質のスクリーニング方法であって、
前記本発明の第1のパーキンソン病の発症リスクマーカーを発現可能な細胞と、候補物質とを接触させる工程と、
前記細胞における前記第1の発症リスクマーカーの発現を検出する工程とを含み、
前記発現を変化させた候補物質を、医薬候補物質として選択することを特徴とする。
【0066】
本発明の第1のスクリーニング方法において、前記第1の発症リスクマーカーは、リスクアレルの前記SNPを有する。
【0067】
このような方法によれば、前記第1の発症リスクマーカーの発現の変化の検出によって、パーキンソン病に対する医薬候補物質を得ることができる。
【0068】
前記細胞は、特に制限されず、前記第1の発症リスクマーカーを発現可能な細胞が使用できる。具体例としては、例えば、宿主細胞に、前記第1の発症リスクマーカーを連結したベクターを導入し、得られた形質転換体を、前記第1のスクリーニング方法に使用できる。そして、例えば、前記候補物質の存在下で、前記細胞を生育させ、前記第1の発症リスクマーカーの発現を確認する。
【0069】
前記第1の発症リスクマーカーの発現は、例えば、公知の方法によって検出できる。前記検出方法は、例えば、PCR、RT−PCR、リアルタイムPCR、リアルタイム逆転写−PCR(リアルタイムRT−PCR)等の核酸増幅法を利用して行うことができる。この他にも、例えば、ノーザンブロット法、ELISA、In situハイブリダイゼーション法等があげられる。
【0070】
前記候補物質の種類は、特に制限されず、例えば、低分子化合物等の化合物、タンパク質、ペプチド、核酸、生物の代謝産物等があげられる。
【0071】
<第2の発症リスクマーカー>
本発明の第2のパーキンソン病の発症リスクマーカーは、前述のように、ヒト染色体1q32において下記(A1)および(A2)の少なくとも一つのSNPを含むポリヌクレオチドでコードされる、SLC45A3タンパク質、NUCKS1タンパク質、RAB7L1タンパク質、SLC41A1タンパク質およびPM20D1タンパク質の少なくとも一つのタンパク質、または、
ヒト染色体4p15において下記(B1)および(B2)の少なくとも一つのSNPを含むポリヌクレオチドでコードされる、BST1タンパク質であることを特徴とする。
(A1)ヒト染色体1q32において、NCBIのSNPデータベースのリファレンス番号rs16856139、rs823128、rs823122、rs947211、rs823156、rs708730およびrs11240572の少なくとも一つで特定されるSNP
(A2)ヒト染色体1q32において、前記(A1)のいずれかのSNPと連鎖不平衡にあるSNP
(B1)ヒト染色体4p15において、NCBIのSNPデータベースのリファレンス番号rs11931532、rs12645693、rs4698412およびrs4538475の少なくとも一つで特定されるSNP
(B2)ヒト染色体4p15において、前記(B1)のいずれかのSNPと連鎖不平衡にあるSNP
【0072】
本発明の第2の発症リスクマーカーは、パーキンソン病の発症に関連することから、パーキンソン病の関連マーカーまたはパーキンソン病の疾患感受性マーカーということもできる。本発明の第2の発症リスクマーカーは、例えば、パーキンソン病の中でも、特に孤発性パーキンソン病の発症リスクマーカーとして有用である。
【0073】
SLC45A3タンパク質、NUCKS1タンパク質、RAB7L1タンパク質、SLC41A1タンパク質およびPM20D1タンパク質において、前記(A1)および(A2)のSNPは、前述したパーキンソン病の疾患感受性SNPである。前述のように、前記(A1)のSNPのリスクアレルは、メジャーアレルであり、前記(A2)のSNPのリスクアレルは、前記(A1)のリスクアレルと同一ハプロタイプに存在するアレルである。前記第2のリスクマーカーは、前記(A1)および(A2)の少なくとも1つのSNPがリスクアレルである前記ポリヌクレオチドでコードされるタンパク質であることが好ましい。
【0074】
SLC45A3タンパク質、NUCKS1タンパク質、RAB7L1タンパク質、SLC41A1タンパク質およびPM20D1タンパク質は、それぞれ、アミノ酸配列が、例えば、以下に示すNCBIアクセッションNo.に登録されている。
SLC45A3タンパク質:NCBIアクセッションNo.NP_149093.1
NUCKS1タンパク質:NCBIアクセッションNo.NP_073568.2
RAB7L1タンパク質:NCBIアクセッションNo.NP_001129135.1
SLC41A1タンパク質:NCBIアクセッションNo.NP_776253.3
PM20D1タンパク質:NCBIアクセッションNo.NP_689704.3
【0075】
BST1タンパク質において、前記(B1)および(B2)のSNPは、前述したパーキンソン病の疾患感受性SNPである。前記(B1)および(B2)のSNPは、前述のように、前記(B1)のSNPのリスクアレルは、マイナーアレルであり、前記(B2)のSNPのリスクアレルは、前記(B1)のリスクアレルと同一ハプロタイプに存在するアレルである。前記第2のリスクマーカーは、前記(B1)および(B2)の少なくとも1つのSNPがリスクアレルである前記ポリヌクレオチドでコードされるBST1タンパク質であることが好ましい。
【0076】
BST1タンパク質は、アミノ酸配列が、例えば、以下に示すNCBIアクセッションNo.に登録されている。
BST1タンパク質:NCBIアクセッションNo.NP_004325.2
【0077】
<第2の判定方法>
本発明の第2の判定方法は、前記本発明の第2の発症リスクマーカーを検出して、被検体のパーキンソン病に対する発症リスクを判定することを特徴とする判定方法である。
【0078】
判定目的の前記パーキンソン病は、例えば、家族性パーキンソン病でもよいし、孤発性パーキンソン病でもよいが、本発明は、中でも、孤発性パーキンソン病の発症リスクの判定に有用である。
【0079】
本発明の第2の判定方法は、前記第2の発症リスクマーカーの検出結果に基づき、パーキンソン病の発症リスクを判定できる。本発明の第2の判定方法は、例えば、被検体の生体試料において、前記リスクアレルのSNPを含むポリヌクレオチドでコードされる第2の発症リスクマーカーが検出された場合、前記パーキンソン病を発症し易いと判定し、被検体の生体試料において、前記リスクアレル以外のSNPを含むポリヌクレオチドでコードされる第2の発症リスクマーカーが検出された場合、前記パーキンソン病を発症し難いと判定する。
【0080】
前記第2の発症リスクマーカーの検出方法は、何ら制限されず、例えば、タンパク質の検出方法により行うことができる。前記検出方法としては、例えば、目的の前記第2の発症リスクマーカーに結合する抗体またはその抗原結合断片等を用いた、抗原抗体反応を利用する方法があげられる。前記抗原結合断片は、前記抗体の一部分、例えば、部分断片であり、且つ、前記第2の発症リスクマーカーを認識するものを意味する。
【0081】
<第2の判定試薬>
本発明の第2の判定試薬は、前述のように、本発明の第2の発症リスクマーカーに結合する抗体またはその抗原結合断片を含むことを特徴とする、パーキンソン病の発症リスクを判定するための判定試薬である。
【0082】
前記抗体またはその抗原結合断片は、本発明の第2の判定方法において説明した、抗体またはその抗原結合断片と同様である。
【0083】
本発明の第2の判定試薬は、例えば、前記抗体またはその抗原結合断片以外に、適宜、試薬、使用説明書、固相等の器具等を含んでもよい。
【0084】
前記抗体またはその抗原結合断片は、例えば、固相に固定化されてもよい。前記固相としては、例えば、マイクロアレイがあげられる。このように、前記抗体または抗原結合断片を前記固相に固定化することによって、例えば、前記抗体またはその抗原結合断片と前記被検体の生体試料とを接触させた後、未結合の前記生体試料を、容易に除去できる。このため、さらに、判定精度を向上できる。
【0085】
<第2の判定キット>
本発明の第2の判定キットは、前記本発明の第2の判定試薬を含むことを特徴とする、パーキンソン病の発症リスクを判定するための判定キットである。本発明の第2の判定キットは、前記本発明の第2の判定試薬を含んでいればよく、その他の構成は、何ら制限されない。前記判定試薬は、前述の通りである。
【0086】
<第2のスクリーニング方法>
本発明の第2のスクリーニング方法は、パーキンソン病に対する医薬候補物質のスクリーニング方法であって、
前記本発明のパーキンソン病の第2の発症リスクマーカーと候補物質とを接触させる工程と、
前記第2の発症リスクマーカーと前記候補物質との結合の有無を検出する工程とを含み、
前記第2の発症リスクマーカーと結合した前記候補物質を、医薬候補物質として選択することを特徴とする。
【0087】
本発明の第2のスクリーニング方法において、前記第2の発症リスクマーカーは、前記(A1)および(A2)の少なくとも1つのSNPがリスクアレルである前記ポリヌクレオチドでコードされる、SLC45A3タンパク質、NUCKS1タンパク質、RAB7L1タンパク質、SLC41A1タンパク質およびPM20D1タンパク質の少なくとも一つのタンパク質、または、前記(B1)および(B2)の少なくとも1つのSNPがリスクアレルである前記ポリヌクレオチドでコードされるBST1タンパク質である。
【0088】
このような方法によれば、前記第2の発症リスクマーカーとの結合の検出によって、パーキンソン病に対する医薬候補物質を得ることができる。
【0089】
前記第2の発症リスクマーカーと前記候補物質とは、両者が直接接触できればよく、その形式は特に制限されない。具体例としては、例えば、前記第2の発症リスクマーカーを、プレート等の固相に固定化して、これに前記候補物質を添加する方法があげられる。前記第2の発症リスクマーカーと前記候補物質との結合の有無は、特に制限されず、例えば、分子間相互作用解析により行うことができる。前記分子間相互作用解析は、例えば、Biacore等の市販のシステムを使用できる。
【0090】
前記候補物質の種類は、特に制限されず、例えば、低分子化合物等の化合物、タンパク質、ペプチド、抗体、核酸、生物の代謝産物等があげられる。
【実施例】
【0091】
つぎに、以下の実施例により、本発明を具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例には制限されない。市販の試薬は、特に示さない限り、それらのプロトコールに基づいて使用した。
【0092】
[実施例1]
1.サンプル
日本人のパーキンソン症例(以下、「症例」という)2,011サンプルのゲノムDNA、および、日本人の非パーキンソン症例(以下、「対照」という)18,381サンプルのゲノムDNAを準備した。前記症例のサンプルは、パーキンソン病と診断された被検体のサンプルであり、前記対照のサンプルは、パーキンソン病に罹患していない被検体のサンプルである。また、前記各サンプルのゲノムDNAは、既存の方法を用いて、前記各被検体から抽出した。
【0093】
2.ゲノムワイド関連解析(GWAS)
症例1,078サンプルおよび対照2,628サンプルのサンプルセットを使用した。これらのサンプルについて、Illumina HumanHap550 array(Illumina社製)を用いて、常染色体および性染色体におけるSNP 561,288個のジェノタイピングを行った。なお、実施例において、ヒトゲノムは、NCBIのbuild36.1に基づき、解析した。
【0094】
そして、これらの症例サンプル、対照サンプルおよびSNPについて、品質管理を行った。症例サンプルおよび対照サンプルの品質管理では、まず、コール率(call rate)95%未満の症例サンプルと、コール率98%未満の対照サンプルを除外し、症例1,012サンプルおよび対照2,573サンプルを選択した。つぎに、PLINK1.01(Am.J.Hum.Genet.2007年、81巻、p.559−575参照)を用いて、性別チェック機能により、性別不明のサンプル(n=18)を除外し、さらに、前記PLINK1.01を用いて、同祖(IBS;identity−by−state)の類似性を決定し、サンプルの各ペアについて潜在的な血縁関係を評価し、類似性の高いサンプルを除外した(n=55)。続いて、残りの合計3,512サンプルについて、日本人集団に属さない検体を検出するため、血縁関係を有しないHapMap被検体201人(42 JPT、45 CHB、57 CEPH、57 YRI)とともに、評価した。r<0.2のSNP 49,605個のIBSスコアをコンピュータ処理し、多次元尺度法により、非アジア系先祖を持つと考えられる3名を同定し、これを除外した。以上の品質管理の結果、症例988サンプルおよび対照2,521サンプルに絞り込んだ。他方、SNPについては、症例サンプルまたは対照サンプルにおけるコール率95%未満(n=7,927)、全サンプルにおけるマイナーアレル頻度5%未満(n=117,908)、または、対照サンプルにおけるハーディ ワインベルグ平衡の偏差のP値(PHWE)0.001未満のSNP(n=3,045)を除外した。さらに、パーキンソン病と強い関連性を示すSNPのクラスタープロットの目視検査において、プロットがクラスター化していないSNP(n=69)を除外した。品質管理されたSNPの全ジェノタイプコール率の中央値は、99.9%であった。
【0095】
つぎに、前記品質管理をパスした症例988サンプルおよび対照2,521サンプルのSNP 435,470個のジェノタイプデータについて、自由度1のコクラン アーミテージ検定(Cochran−Armitage test)により、前記各SNPとパーキンソン病との関連を検定した。得られた検定結果から、snpMatrixパッケージのカイ二乗関数Q−Qプロット機能を用いて、Quantile−Quantileプロット(Q−Qプロット)を作成した。また、自由度1のカイ二乗分布の期待値90%未満の平均値で、検定統計量90%未満の平均値を割り、genomic inflation factor(λ)を算出した。また、ロジスティック回帰分析により、オッズ比(OR)および95%信頼区間(95%CI)を評価した。
【0096】
3.再現解析1
前記GWASステージのサンプルとは異なる、症例612サンプルおよび対照14,139サンプルのサンプルセットを使用した。そして、これらのサンプルセットについて、VeraCodeプラットフォーム用のIllumina Goldengate Genotyping Assay(Illumina社製)、TaqMan(登録商標)SNP Genotyping Assays(Applied Biosystems社製)およびIllumina Infinium HumanHap610 array(Illumina社製)を用いて、前記GWASステージにおいて最も関連を示したSNP 337個(P≦0.000533)のジェノタイピングを行った。Illumina Goldengate Genotyping Assayは、症例サンプルのSNP 335個のジェノタイピングに使用し、前記TaqMan Genotyping Assayは、症例サンプルのSNP 2個のジェノタイピングに使用し、前記Illumina Infinium HumanHap610 arrayは、対照サンプルのSNP 337個のジェノタイピングに使用した。
【0097】
そして、これらの症例サンプル、対照サンプルおよびSNPについて、品質管理を行った。症例サンプルおよび対照サンプルの品質管理では、コール率90%未満を除外した。他方、SNPについては、症例サンプルまたは対照サンプルにおけるコール率95%未満、対照サンプルにおけるハーディ ワインベルグ平衡の偏差のP値(PHWE)0.001未満、前記目視検査において、クラスター化していないSNPを除外した。この品質管理によって得た、症例559サンプルおよび対照14,026サンプルのSNP 279個のジェノタイプデータを用いた以外は、前記GWASステージと同様にして、統計解析を行った。品質管理されたSNPの全ジェノタイプコール率の中央値は、99.7%であった。
【0098】
4.再現解析2
前記GWASステージおよび再現解析1とは異なる、症例321サンプルおよび対照1,614サンプルのサンプルセットを使用した。そして、これらのサンプルセットについて、VeraCodeプラットフォーム用のIllumina Goldengate Genotyping Assay(Illumina社製)、TaqMan(登録商標)SNP Genotyping Assays(Applied Biosystems社製)およびIllumina Infinium HumanHap610 array(Illumina社製)を用いて、前記GWASステージにおいて最も関連したSNP 337個(P≦0.000533)のジェノタイピングを行った。Illumina Goldengate Genotyping Assayは、症例サンプルおよび対照サンプルのSNP 335個のジェノタイピングに使用し、前記TaqMan Genotyping Assayは、症例サンプルおよび対照サンプルのSNP 2個のジェノタイピングに使用した。
【0099】
そして、これらの症例サンプル、対照サンプルおよびSNPについて、品質管理を行った。症例サンプルおよび対照サンプルの品質管理では、コール率90%未満を除外した。他方、SNPについては、症例サンプルまたは対照サンプルにおけるコール率95%未満、対照サンプルにおけるハーディ ワインベルグ平衡の偏差のP値(PHWE)0.001未満のSNPを除外した。この品質管理によって得た、症例318サンプルおよび対照1,590サンプルのSNP 24個のジェノタイプデータを用いた以外は、前記GWASステージと同様にして、統計解析を行った。品質管理されたSNPの全ジェノタイプコール率の中央値は、99.7%であった。
【0100】
5.メタ解析
前記GWAS、再現解析1および2で用いた全サンプルについて、コクラン マンテル ヘンツェル(Cochran−Mantel−Haenzel)検定により、前述の統計解析と同様にして、メタ解析を行った。
【0101】
6.連鎖不平衡(LD)評価
Haploview 4.1を用いて、前記メタ解析においてパーキンソン病との関連を示した遺伝子座を含む領域におけるLD構造を推測した。LDパターンは、ガブリエルらの方法を用いて、マイナーアレル頻度>5%、ジェノタイピング率>95%およびPHWE>0.001のアジア系(CHBおよびJPT)HapMapデータから作成した。
【0102】
図1(A)および(B)に、GWASにおける、コクラン アーミテージ検定の検定量のQ−Qプロットを示す。図1(A)は、品質管理後のSNP 435,470個の検定統計量のQ−Qプロットを示し、図(B)は、パーキンソン病との強い関連を有する4つの遺伝子座(1q32、4p15、4q22および12q12)を除去した後の検定統計量を示す。図1(A)および(B)において、直線は、カイ二乗観測値および期待値との一致を示し、破線は、genomic inflation factor(λ=1.055)を示し、網掛け領域は、各統計について、帰無仮説下、各分布の2.5thパーセンタイルおよび97.5thパーセンタイルを算出することにより形成した95% concentration band(95%信頼区間)を示す。
【0103】
図1(A)および(B)に示すように、Q−Qプロットは、帰無分布下、期待された検定統計量に、密接にマッチした(genomic inflation factorλ=1.055)。これは、集団の階層による、ゲノムワイドな統計量全体としてのインフレーションが、極めて少ないことを示し、また、多数のSNPが、帰無仮説下の期待値を超えるP値であることを表わしている。
【0104】
下記表3に、パーキンソン病との関連を示したSNPについて、前記GWASおよび前記再現解析の結果を示す。下記表3において、「GWAS+Replication1」は、GWASと再現解析1とのメタ解析の結果を示し、「GWAS+Replication 1+2」は、前記GWASと前記再現解析1と前記再現解析2とのメタ解析の結果を示す。下記表3において、Ptrendは、コクラン アーミテージ検定によるP値を示し、Pcmhは、前記メタ解析における前記検定による合算P値を示し、MAFは、マイナーアレル頻度を示す。下記表3におけるヌクレオチドポジションは、NCBI build 36を参照した。
【0105】
【表3】

【0106】
前記表3に示すように、2つの遺伝子座(1q32および4p15)において、パーキンソン病と強い関連性を示す11個のSNP(rs16856139、rs823128、rs823122、rs947211、rs823156、rs708730、rs11240572、rs11931532、rs12645693、rs4698412、rs4538475)が確認された。中でも、前記表3の前記GWASと前記再現解析1と前記再現解析2とのメタ解析に示すように、1q32においては、rs947211が、P=1.52×10−12、OR=1.30という最も強い関連性を示した。前記表3の前記GWASと前記再現解析1と前記再現解析2とのメタ解析に示すように、4p15においては、rs4538475が、P=3.94×10−9、OR=1.24という最も強い関連性を示した。また、前記表3の前記GWASと前記再現解析1と前記再現解析2とのメタ解析に示すように、両遺伝子座で最も有意なSNPは、有意水準P<5×10−8で、パーキンソン病との強い関連を示した。また、前記2つの各遺伝子座において、最も有意性の高い変異は、リスクアレル頻度が0.50である1q32上のrs947211、リスクアレル頻度が0.38である4p15上のrs4538475であった。そして、これらのSNPの集団寄与危険度は、前記rs947211が13%であり、前記rs4538475が8%と評価された。
【0107】
つぎに、図2に、前記2つの遺伝子座(1q32および4p15)におけるSNPの、染色体上の位置との関連の強さを示すプロット、および連鎖不平衡(LD)構造を示す。図2において、(A)は1q32、(B)は4p15である。図2(A)および(B)において、各上図の縦軸は、各SNPのGWASステージにおける−log10P(コクラン−アーミテージ傾向検定)であり、横軸は、各染色体上の位置(Mb、NCBI build 36参照)である。また、白三角(△)は、前記再現解析に選択したSNPを示し、白丸(○)は、前記再現解析に選択しなかったSNPを示し、菱型(◇)は、前記メタ解析における、前記再現解析に選択したSNPの−log10合算P(コクラン−マンテル−ヘンツェル検定)を示し、図中に示すSNP名は、前記メタ解析において最も有意な関連を持つSNPのリファレンス番号である。
【0108】
図2(A)に示すように、1q32上の7つのSNP(rs16856139、rs823128、rs823122、rs947211、rs823156、rs708730およびrs11240572)は、前記組み合わせ解析において、P<5×10−7の有意水準でパーキンソン病との関連を示した。この中でも、rs947211は、特にパーキンソン病との強い関連を示した(P=1.52×10−12、OR=1.30)。パーキンソン病との関連が最も強いSNP(rs947211)は、RAB7L1の8.5kb上流であり、SLC41A1の5.6kb下流に位置することがわかった。また、連鎖不平衡(LD)解析により、前記有意水準でパーキンソン病と関連する前述のSNPは、それぞれ、SLC45A3、NUCKS1、RAB7L1、SLC41A1およびPM20D1(FLJ32569ともいう)の5つの遺伝子を含むいくつかのLDブロック内に位置した。また、3つの遺伝子(NUCKS1、RAB7L1およびSLC41A1)は、rs947211と同じLDブロック内に含まれることがわかった。rs947211は、他の6つのSNPと弱い関連性を示し(r=0.07〜0.25)、rs947211と他の6つのSNPとを、全体データの条件解析において組み合わせた場合、残存関連シグナルが確認された。これは、この遺伝子座が、多数の独立したシグナルを有することを示唆している。これらのSNP(rs16856139、rs823128、rs823122、rs947211、rs823156、rs708730およびrs11240572)を含む領域を、「PARK16」と命名した。
【0109】
図2(B)に示すように、4p15上の4つのSNP(rs11931532、rs12645693、rs4698412およびrs4538475)は、前記組み合わせ解析において、P<5×10−7の有意水準でパーキンソン病との関連を示した。これらのSNPは、いずれもPDとの強い関連性を示した(P=3.94×10−9〜1.78×10−8、OR=1.24)。この中でも、rs4538475は、特にPDとの強い関連を示した(P=3.94×10−9、OR=1.24)。これらの4つのSNPは、BST1のイントロン8から4.1kb下流に位置することがわかった。また、LD解析により、前記有意水準でパーキンソン病と関連する前述のSNPは、それぞれ、r>0.78で相関し、遺伝子BST1を含む15kbのLDブロック内に含まれることがわかった。
【0110】
前記PARK16およびBST1のSNPとパーキンソン病との関連について、ヨーロッパ系統のGWASのデータを参照した。その結果、前記PARK16のSNPのパーキンソン病との関連は、アジア系統およびヨーロッパ系統の集団において共通した。この結果から、前記PARK16のSNPは、アジア系統およびヨーロッパ系統の集団に共通するパーキンソン病感受性遺伝子座であることが示唆された。また、前記BST1は、アジア系統のみで検出されることがわかった。この結果から、前記BST1は、パーキンソン病のリスクの程度について集団遺伝的不均一性を示すことが示唆された。
【産業上の利用可能性】
【0111】
本発明によれば、パーキンソン病の疾患感受性遺伝子であるPARK16およびBST1は、パーキンソン病の発症と強い関連性を示すことから、前記疾患感受性遺伝子における各種SNPをタイピングすることによって、優れた信頼性で、パーキンソン病の発症リスクを判定することが可能である。また、これらの疾患感受性遺伝子および疾患感受性SNPの同定により、パーキンソン病の治療に有効な新たな候補物質のスクリーニングも可能となる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒト染色体1q32において下記(A1)および(A2)の少なくとも一つのSNPを含む8塩基以上の連続する塩基配列からなるポリヌクレオチドもしくはその相補配列からなるポリヌクレオチド、または、ヒト染色体4p15において下記(B1)および(B2)の少なくとも一つのSNPを含む8塩基以上の連続する塩基配列からなるポリヌクレオチドもしくはその相補鎖からなるポリヌクレオチドであることを特徴とする、パーキンソン病の発症リスクマーカー。
(A1)ヒト染色体1q32において、NCBIのSNPデータベースのリファレンス番号rs16856139、rs823128、rs823122、rs947211、rs823156、rs708730およびrs11240572の少なくとも一つで特定されるSNP
(A2)ヒト染色体1q32において、前記(A1)のいずれかのSNPと連鎖不平衡にあるSNP
(B1)ヒト染色体4p15において、NCBIのSNPデータベースのリファレンス番号rs11931532、rs12645693、rs4698412およびrs4538475の少なくとも一つで特定されるSNP
(B2)ヒト染色体4p15において、前記(B1)のいずれかのSNPと連鎖不平衡にあるSNP
【請求項2】
前記SNPが、パーキンソン病の発症リスクを示すリスクアレルであり、
前記(A1)のSNPのリスクアレルが、メジャーアレルであり、
前記(A2)のSNPのリスクアレルが、前記(A1)のリスクアレルと同一ハプロタイプに存在するアレルであり、
前記(B1)のSNPのリスクアレルが、マイナーアレルであり、
前記(B2)のSNPのリスクアレルが、前記(B1)のリスクアレルと同一ハプロタイプに存在するアレルである、請求項1記載の発症リスクマーカー。
【請求項3】
前記rs16856139で特定されるSNPのリスクアレルがC、
前記rs823128で特定されるSNPのリスクアレルがA、
前記rs823122で特定されるSNPのリスクアレルがT、
前記rs947211で特定されるSNPのリスクアレルがG、
前記rs823156で特定されるSNPのリスクアレルがA、
前記rs708730で特定されるSNPのリスクアレルがA、
前記rs11240572で特定されるSNPのリスクアレルがC、
前記rs11931532で特定されるSNPのリスクアレルがT、
前記rs12645693で特定されるSNPのリスクアレルがG、
前記rs4698412で特定されるSNPのリスクアレルがA、および
前記rs4538475で特定されるSNPのリスクアレルがAである、請求項2に記載の発症リスクマーカー。
【請求項4】
前記(A1)および(A2)の少なくとも一つのSNPを含む前記ポリヌクレオチドが、ヒト染色体1q32の57,115,623位〜57,307,887位の塩基配列からなるポリヌクレオチドまたは前記塩基配列の部分配列からなるポリヌクレオチドである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の発症リスクマーカー。
【請求項5】
前記ポリヌクレオチドが、SLC45A3遺伝子、NUCKS1遺伝子、RAB7L1遺伝子、SLC41A1遺伝子およびPM20D1遺伝子の少なくともいずれか遺伝子の塩基配列からなるポリヌクレオチドまたは前記塩基配列の部分配列からなるポリヌクレオチドである、請求項4記載の発症リスクマーカー。
【請求項6】
前記(A1)および(A2)の少なくとも一つのSNPを含む前記ポリヌクレオチドが、ヒト染色体1q32の57,170,589位〜57,270,803位の塩基配列からなるポリヌクレオチドまたは前記塩基配列の部分配列からなるポリヌクレオチドである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の発症リスクマーカー。
【請求項7】
前記ポリヌクレオチドが、NUCKS1遺伝子、RAB7L1遺伝子およびSLC41A1遺伝子の少なくともいずれかの遺伝子の塩基配列からなるポリヌクレオチドまたは前記塩基配列の部分配列からなるポリヌクレオチドである、請求項6記載の発症リスクマーカー。
【請求項8】
前記(B1)および(B2)の少なくとも一つのSNPを含む前記ポリヌクレオチドが、ヒト染色体4p15の6,886,370位〜6,926,645位の塩基配列からなるポリヌクレオチドまたは前記塩基配列の部分配列からなるポリヌクレオチドである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の発症リスクマーカー。
【請求項9】
前記ポリヌクレオチドが、BST1遺伝子の塩基配列からなるポリヌクレオチドまたは前記塩基配列の部分配列からなるポリヌクレオチドである、請求項8記載の発症リスクマーカー。
【請求項10】
被検体の核酸試料について、ヒト染色体1q32における下記(A1)および(A2)の少なくとも一つのSNP、または、ヒト染色体4p15における下記(B1)および(B2)の少なくとも一つのSNPをタイピングして、被検体のパーキンソン病に対する発症リスクを判定することを特徴とする判定方法。
(A1)ヒト染色体1q32において、NCBIのSNPデータベースのリファレンス番号rs16856139、rs823128、rs823122、rs947211、rs823156、rs708730およびrs11240572の少なくとも一つで特定されるSNP
(A2)ヒト染色体1q32において、前記(A1)のいずれかのSNPと連鎖不平衡にあるSNP
(B1)ヒト染色体4p15において、NCBIのSNPデータベースのリファレンス番号rs11931532、rs12645693、rs4698412およびrs4538475の少なくとも一つで特定されるSNP
(B2)ヒト染色体4p15において、前記(B1)のいずれかのSNPと連鎖不平衡にあるSNP
【請求項11】
前記SNPが、パーキンソン病の発症リスクを示すリスクアレルの場合に、前記SNPが前記リスクアレル以外のアレルの場合と比較して、前記パーキンソン病の発症リスクが高いまたは前記パーキンソン病に罹患している可能性が高いと判定し、
前記(A1)のSNPのリスクアレルが、メジャーアレルであり、
前記(A2)のSNPのリスクアレルが、前記(A1)のリスクアレルと同一ハプロタイプに存在するアレルであり、
前記(B1)のSNPのリスクアレルが、マイナーアレルであり、
前記(B2)のSNPのリスクアレルが、前記(B1)のリスクアレルと同一ハプロタイプに存在するアレルである、請求項10記載の判定方法。
【請求項12】
前記タイピング工程において、タイピング用ポリヌクレオチドを使用し、
前記タイピング用ポリヌクレオチドが、請求項1から9のいずれか一項に記載の発症リスクマーカーに対して、ハイブリダイズ可能なポリヌクレオチドである、請求項10または11記載の判定方法。
【請求項13】
前記タイピング用ポリヌクレオチドが、プローブまたはプライマーである、請求項12に記載の判定方法。
【請求項14】
前記タイピング用ポリヌクレオチドの塩基長が、8塩基長以上である、請求項12または13に記載の判定方法。
【請求項15】
前記パーキンソン病が、孤発性パーキンソン病である、請求項10から14のいずれか一項に記載の判定方法。
【請求項16】
請求項1から9のいずれか一項に記載のパーキンソン病の発症リスクマーカーに対してハイブリダイズ可能なタイピング用ポリヌクレオチドを含むことを特徴とする、パーキンソン病の発症リスクを判定するための判定試薬。
【請求項17】
前記タイピング用ポリヌクレオチドが、固相に固定化されている、請求項16に記載の判定試薬。
【請求項18】
前記固相が、マイクロアレイである、請求項17に記載の判定試薬。
【請求項19】
請求項16〜18のいずれか一項に記載の判定試薬を含むことを特徴とする、パーキンソン病の発症リスクを判定するための判定キット。
【請求項20】
パーキンソン病に対する医薬候補物質のスクリーニング方法であって、
請求項2から9のいずれか一項に記載のパーキンソン病の発症リスクマーカーを発現可能な細胞と、候補物質とを接触させる工程と、
前記細胞における前記発症リスクマーカーの発現を検出する工程とを含み、
前記発現を変化させた候補物質を、医薬候補物質として選択することを特徴とするスクリーニング方法。
【請求項21】
ヒト染色体1q32において下記(A1)および(A2)の少なくとも一つのSNPを含むポリヌクレオチドでコードされる、SLC45A3タンパク質、NUCKS1タンパク質、RAB7L1タンパク質、SLC41A1タンパク質およびPM20D1タンパク質の少なくとも一つのタンパク質、または、
ヒト染色体4p15において下記(B1)および(B1)の少なくとも一つのSNPを含むポリヌクレオチドでコードされる、BST1タンパク質であることを特徴とする、パーキンソン病の発症リスクマーカー。
(A1)ヒト染色体1q32において、NCBIのSNPデータベースのリファレンス番号rs16856139、rs823128、rs823122、rs947211、rs823156、rs708730およびrs11240572の少なくとも一つで特定されるSNP
(A2)ヒト染色体1q32において、前記(A1)のいずれかのSNPと連鎖不平衡にあるSNP
(B1)ヒト染色体4p15において、NCBIのSNPデータベースのリファレンス番号rs11931532、rs12645693、rs4698412およびrs4538475の少なくとも一つで特定されるSNP
(B2)ヒト染色体4p15において、前記(B1)のいずれかのSNPと連鎖不平衡にあるSNP
【請求項22】
前記SNPが、パーキンソン病の発症リスクを示すリスクアレルであり、
前記(A1)のSNPのリスクアレルが、メジャーアレルであり、
前記(A2)のSNPのリスクアレルが、前記(A1)のリスクアレルと同一ハプロタイプに存在するアレルであり、
前記(B1)のSNPのリスクアレルが、マイナーアレルであり、
前記(B2)のSNPのリスクアレルが、前記(B1)のリスクアレルと同一ハプロタイプに存在するアレルである、請求項21記載の発症リスクマーカー。
【請求項23】
前記rs16856139で特定されるSNPのリスクアレルがC、
前記rs823128で特定されるSNPのリスクアレルがA、
前記rs823122で特定されるSNPのリスクアレルがT、
前記rs947211で特定されるSNPのリスクアレルがG、
前記rs823156で特定されるSNPのリスクアレルがA、
前記rs708730で特定されるSNPのリスクアレルがA、
前記rs11240572で特定されるSNPのリスクアレルがC、
前記rs11931532で特定されるSNPのリスクアレルがT、
前記rs12645693で特定されるSNPのリスクアレルがG、
前記rs4698412で特定されるSNPのリスクアレルがA、および
前記rs4538475で特定されるSNPのリスクアレルがAである、請求項22に記載の発症リスクマーカー。
【請求項24】
パーキンソン病に対する医薬候補物質のスクリーニング方法であって、
請求項22または23に記載のパーキンソン病の発症リスクマーカーと候補物質とを接触させる工程と、
前記発症リスクマーカーと前記候補物質との結合の有無を検出する工程とを含み、
前記発症リスクマーカーと結合した前記候補物質を、医薬候補物質として選択することを特徴とするスクリーニング方法。

【図2】
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【図1】
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【公開番号】特開2011−239697(P2011−239697A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−112507(P2010−112507)
【出願日】平成22年5月14日(2010.5.14)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り (1)電気通信回線を通じた発表 掲載年月日:2009年11月15日 掲載アドレス1:http//www.nature.com/ng/journal/v41/n12/pdf/ng.485.pdf 掲載アドレス2:http://www.nature.com/ng/journal/v41/n12/fp/ng.485.html?lang=en 掲載アドレス3:http://www.nature.com/ng/journal/v41/n12/full/ng.485.html 掲載アドレス4:http://www.nature.com/ng/journal/v41/n12/suppinfo/ng.485_Sl.html 掲載アドレス5:http://www.nature.com/ng/journal/v41/n12/extref/ng.485−Sl.pdf (2)発表した刊行物 刊行物名:PD Today No.29 発行者名:アルタ出版株式会社 発行年月日:2010年 1月28日 (3)電気通信回線を通じた発表 掲載年月日:2009年12月 8日 掲載アドレス1:http://www.med.kobe−u.ac.jp/info/2009/toda_091208.html (4)発表した刊行物 刊行物名:「第51回日本神経学会総会」のプログラム・抄録集 発行者名:一般社団法人 日本神経学会 発行年月日:2010年 5月 7日 (5)発表した刊行物 刊行物名:日本経済新聞 2009年11月16日付朝刊 発行者名:日本経済新聞社 発行年月日:2009年11月16日 (6)発表した刊行物 刊行物名:毎日新聞 2009年11月16日付朝刊 発行者名:毎日新聞社 発行年月日:2009年11月16日 (7)発表した刊行物 刊行物名:産経新聞 2009年11月16日付夕刊 発行者名:産経新聞社 発行年月日:2009年11月16日 (8)発表した刊行物 刊行物名:東京新聞 2009年11月16日付朝刊 発行者名:東京新聞社 発行年月日:2009年11月16日 (9)発表した刊行物 刊行物名:神戸新聞 2009年11月16日付朝刊 発行者名:神戸新聞社 発行年月日:2009年11月16日 (10)発表した刊行物 刊行物名:読売新聞 2009年11月23日付朝刊 発行者名:読売新聞社 発行年月日:
【出願人】(506137147)エーザイ・アール・アンド・ディー・マネジメント株式会社 (215)
【Fターム(参考)】