説明

パーキンソン病緩和のためのラサギリン

薬学的に効果的な量のラサギリンまたは薬学的に許容されるラサギリンの塩を含む医薬組成物を患者に定期的に投与し、疾患を緩和することによりパーキンソン病を緩和する方法。当該方法は、進行速度を低減すること;抗パーキンソン症治療の必要性を遅らせること;症候性抗パーキンソン治療を必要とするパーキンソン病患者のリスクを低減すること;および機能低下を緩和することとを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2008年8月22日出願の米国仮出願番号61/189,724、2008年6月13日出願の米国仮出願番号61/131,936の利益を主張し、その内容は引用によりここに組み込まれる。
【0002】
本明細書において種々の刊行物が引用される。これらの刊行物の開示の全体は引用により本明細書に組み込まれ、本発明が属する先行技術をさらに完全に記載する。
【背景技術】
【0003】
パーキンソン病(PD)は、2番目に一般的な加齢に関係する神経変性障害であり、60歳を越える人の1〜2%が発症している。現行の治療は主に、ドーパミン置換法に基づく(Olanow CW, Watts RL, Koller WC. An algorithm (decision tree) for the management of Parkinson's disease (2001): treatment guidelines. Neurology 2001; 56(suppl 5): 1-88; Rascol O, Goetz C, Koller W, Poewe W, Sampaio C. Treatment interventions for Parkinson's disease: an evidence based assessment. Lancet. 2002 359:1589-1598)。しかしながら、慣習的なレボドーバ治療は、90%の患者の潜在的運動障害合併症の発病に関連する(Ahlskog JE, Muenter MD. Frequency of levodopa-related dyskinesias and motor fluctuations as estimated from the cumulative literature. Mov Disord. 2001, 16:448-58)。さらに、潜在的障害の特徴、例えば歩行機能障害、平衡感覚障害、すくみ(freezing)、睡眠障害、自律神経障害および痴呆などは一般に、利用可能な治療によっては十分に制御されない(Lang AE, Obeso JA. Time to move beyond nigrostriatal dopamine deficiency in Parkinson's disease. Ann Neurol 2004, 55: 761-765)。レボドーバ非応答性のこれらの特徴は、脳、脊髄および末梢自律神経系における非ドーパミン作動性の病理学を反映していると考えられる(Forno LS. Neuropathology of Parkinson's disease. J Neuropathol Exp Neurol. 996;55:259-272; Braak H, Tredici KD, Rub U, de Vos RA, Jansen Steur EN, Braak E. Staging of brain pathology related to sporadic Parkinson's disease. Neurobiol Aging 2003, 24:197-211)。実際、見込みのある長期の研究により、レボドーパの非応答性の特徴が進行患者の障害および養護施設への入所の主な原因であることを示している(Hely MA, Morris JG, Traficante R, Reid WG, O'Sullivan DJ, Williamson PM. The Sydney multicentre study of Parkinson's disease: progression and mortality at 10 years. J Neurol Neurosurg Psychiatry. 1999, 67:300-307)。したがって、現行の利用可能な治療法にも関わらず、多くのパーキンソン病患者が身体障害を有している。パーキンソン病研究において、障害の進行を遅らせるか、止めるか、または逆転させる神経保護療法が最も優先度が高い。
【0004】
いくつかの有望な化合物について臨床試験を行い、それらがパーキンソン病において障害緩和効果を有するか否かについて決定した(Schapira AH, Olanow CW. Neuroprotection in Parkinson disease: mysteries, myths, and misconceptions. JAMA. 2004, 291:358-364)。いくつかの化合物はネガティブであり、結果評価について治験薬の効果を示さなかった;しかしながら、いくつかの化合物はポジティブであったが、結果評価が研究的介入の症候性または薬理学的効果により交絡(confound)する可能性があるため、神経保護的であると立証することができなかった。研究において、主要エンドポイントは、レボドーパ治療を余儀なくさせる障害を発症させる時点である(Parkinson's Study Group. Effects of tocopherol and deprenyl on the progression of disability in early Parkinson's disease. N Engl JMed 1993, 328:176-183)。しかしながらこの研究は、この治験でのポジティブな結果が、変性を遅らせる保護的効果またはそれをマスクする(masked)症候性効果を有するセレギリンによるものであるかどうかを決定することはできなかった(Olanow CW, Calne D. Does selegiline mono therapy in Parkinson's Disease act by symptomatic or protective mechanisms? Neurology 1991, 42:41-48))。別の研究において、主要エンドポイントは、非治療のベースラインと、12ヶ月のセレギリンまたはプラセボによる治療と2ヶ月の薬剤ワォッシュアウト(wash-out)後に行われた非治療の最終の往診との間でのパーキンソン病統一スケール(UPDRS)運動スコアの変化である(Olanow CW, Hauser RA, Gauger L, et al. The effect of deprenyl and levodopa on the progression of signs and symptoms in Parkinson's disease. Ann Neurol 1995, 38:771-777)。この研究では、セレギリンにより治療された患者はプラセボにより治療された患者よりもベースラインからの悪化が少なかったが、2ヶ月以上続く交絡(confounding)長期間症候性効果を排除することは出来なかった。
【0005】
最近になって、可能な神経保護剤として新規プロパルギルアミン(「TCH 346」)について研究がなされた。実験室においては、低用量で投与されたときであっても、TCH 346がインビトロおよびインビボモデルの療法で保護的な効果を有することが観察された(Waldmeier PC, Boulton AA, Cools AR, Kato AC, Tatton WG. Neurorescuing effects of the GAPDH ligand CGP 3466B. J Neural Transm Suppl. 2000, (60):197-214; Andringa G, van Oosten RV, Unger W et al, Systemic administration of the propargylamine CGP 3466B (TCH346) prevents behavioural and morphological deficits in rats with 6-hydroxydopamine-induced lesions in the substantia nigra. Eur J Neurosci 2000, 12:3033-3043; Andringa G, Eshuis S, Perentes E. TCH346 prevents motor symptoms and loss of striatal FDOPA uptake in bilaterally MPTP-treated primates. Neurobiol Dis 2003; 14: 205-217)。TCH346はタイプBモノアミンオキシダーゼ(MAO−B)を抑制しなかったので、当該薬剤が症候性効果により交絡されることはない。当該薬剤を、見込みのある二重盲式プラセボ対照多施設臨床試験において試験し、レボドーバを必要とする期間を主要エンドポイントとして用いた。(Olanow CW, Schapira AH, LeWitt PA, Kieburtz K, Sauer D, Olivieri G, Pohlmann H, Hubble J. TCH346 as a neuroprotective drug in Parkinson's disease: a double-blind, randomised, controlled trial. Lancet Neurol. 2006, 5:1013-1020)。試験した3つの用量で、TCH346は主要エンドポイントまたは副次的エンドポイントの何れかに対するポジティブな効果を示さず、障害緩和効果も示さなかった。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、初期パーキンソン病患者においてパーキンソン病の進行速度を低減する方法を提供し、当該方法は、初期パーキンソン病患者を特定することと、パーキンソン病症状の進行速度を低減するのに効果的な量のラサギリンまたは薬学的に許容されるラサギリンの塩をそのように特定された初期パーキンソン病患者に定期的に投与することとを含む。
【0007】
本発明はまた、パーキンソン病患者においてパーキンソン病症状の進行速度を低減する方法も提供し、当該方法は、パーキンソン病の症状の進行速度を低減するのに効果的な量のラサギリンまたは薬学的に許容されるラサギリンの塩を、52週間を超える期間に亘りパーキンソン病患者に定期的に投与することを含む。
【0008】
本発明はさらに、初期パーキンソン病患者において症候性の抗パーキンソン治療の必要性を遅らせる方法を提供し、これは患者を初期パーキンソン病患者であると特定することと、そのように特定された患者に症候性の抗パーキンソン治療の必要を遅らせるのに効果的な量のラサギリンまたは薬学的に許容されるラサギリンの塩を定期的に投与することとを含む。
【0009】
本発明はさらに、症候性の抗パーキンソン治療を必要とするパーキンソン病患者のリスクを低減する方法を提供し、これは症候性の抗パーキンソン病治療のリスクを低減するのに効果的な量のラサギリンまたは薬学的に許容されるラサギリンの塩を、36週間に亘り患者に定期的に投与することを含む。
【0010】
本発明はさらに、初期パーキンソン病患者の機能低下を緩和する方法を提供し、これは患者が初期パーキンソン病患者であると特定することと、そのように特定された患者に機能低下を緩和するのに効果的な量のラサギリンまたは薬学的に許容されるラサギリンの塩を定期的に投与することとを含む。
【0011】
本発明はさらに、パーキンソン病患者において機能低下を緩和する方法を提供し、これは機能低下を緩和するのに効果的な量のラサギリンまたは薬学的に許容されるラサギリンの塩を、52週間を超える期間に亘り患者に定期的に投与することを含む。
【0012】
本発明はさらに、パーキンソン病の初期の徴候を示す患者を治療する方法を提供し、これはパーキンソン病の初期の徴候を示す患者を特定することと、そのように特定された患者に当該患者を治療するのに効果的な量のラサギリンまたは薬学的に許容されるラサギリンの塩を定期的に投与することとを含む。
【0013】
本発明はさらに、初期パーキンソン病患者において疲労を緩和する方法を提供し、これは患者が初期パーキンソン病患者であると特定することと、そのように特定された患者に疲労を緩和するのに効果的な量のラサギリンまたは薬学的に許容されるラサギリンの塩を定期的に投与することとを含む。
【0014】
本発明はさらに、初期パーキンソン病患者において非運動性の症状の重症度を緩和する方法を提供し、これは初期パーキンソン病患者であると特定することと、そのように特定された患者に非運動性の症状の重症度を緩和するのに効果的な量のラサギリンまたは薬学的に許容されるラサギリンの塩を定期的に投与することとを含む。
【0015】
本発明はさらに、初期パーキンソン病患者において疲労を緩和する方法を提供し、これは疲労を緩和するのに効果的な量のラサギリンまたは薬学的に許容されるラサギリンの塩を初期パーキンソン病患者に定期的に投与することを含む。
【0016】
本発明はさらに、初期パーキンソン病患者において非運動性の症状の重症度を緩和する方法を提供し、これは非運動性の症状の重症度を緩和するのに効果的な量のラサギリンまたは薬学的に許容されるラサギリンの塩を初期パーキンソン病患者に定期的に投与することを含む。
【0017】
本発明はさらに、パーキンソン病患者において臨床的進行を遅らせ且つパーキンソン病の症状を治療する方法を提供し、これは患者において臨床的進行を遅らせ且つパーキンソン病の徴候および症状を緩和するのに効果的な量のラサギリンまたは薬学的に許容されるラサギリンの塩をパーキンソン病患者に定期的に投与することを含む。
【0018】
本発明はさらに、初期パーキンソン病患者におけるパーキンソン病の症状の進行速度低減用のラサギリンまたは薬学的に許容されるラサギリンの塩を提供する。
【0019】
本発明はさらに、初期パーキンソン病患者における症候性の抗パーキンソン治療の必要性を遅らせることにおける使用のためのラサギリンまたは薬学的に許容されるラサギリンの塩を提供する。
【0020】
本発明はさらに、症候性の抗パーキンソン治療を必要とする初期パーキンソン病患者のリスク低減用のラサギリンまたは薬学的に許容されるラサギリンの塩を提供する。
【0021】
本発明はさらに、初期パーキンソン病患者における機能低下緩和用のラサギリンまたは薬学的に許容されるラサギリンの塩を提供する。
【0022】
本発明はさらに、パーキンソン病の初期の徴候を示す患者の治療用のラサギリンまたは薬学的に許容されるラサギリンの塩を提供する。
【0023】
本発明はさらに、初期パーキンソン病患者における疲労緩和用のラサギリンまたは薬学的に許容されるラサギリンの塩を提供する。
【0024】
本発明はさらに、初期パーキンソン病患者における非運動性の症状の重症度緩和用のラサギリンまたは薬学的に許容されるラサギリンの塩を提供する。
【0025】
本発明はさらに、初期パーキンソン病患者におけるパーキンソン病症状の進行速度低減用の薬学的に効果的な量のラサギリンまたは薬学的に許容されるラサギリンの塩を含む医薬組成物を提供する。
【0026】
本発明はさらに、初期パーキンソン病患者において症候性の抗パーキンソン治療の必要性を遅らせることにおける使用のための薬学的に効果的な量のラサギリンまたは薬学的に許容されるラサギリンの塩を含む医薬組成物を提供する。
【0027】
本発明はさらに、症候性の抗パーキンソン治療を必要とする初期パーキンソン病患者のリスク低減用の薬学的に効果的な量のラサギリンまたは薬学的に許容されるラサギリンの塩を含む医薬組成物を提供する。
【0028】
本発明はさらに、初期パーキンソン病患者における機能低下緩和用の薬学的に効果的な量のラサギリンまたは薬学的に許容されるラサギリンの塩を含む医薬組成物を提供する。
【0029】
本発明はさらに、パーキンソン病の初期の徴候を示す患者の治療用の薬学的に効果的な量のラサギリンまたは薬学的に許容されるラサギリンの塩を含む医薬組成物を提供する。
【0030】
本発明はさらに、初期パーキンソン病における疲労緩和用の薬学的に効果的な量のラサギリンまたは薬学的に許容されるラサギリンの塩を含む医薬組成物を提供する。
【0031】
本発明はさらに、初期パーキンソン病における非運動性の重症度緩和用の薬学的に効果的な量のラサギリンまたは薬学的に許容されるラサギリンの塩を含む医薬組成物を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0032】
本発明または本出願は、カラーで作成された少なくとも1つの図面を含む。カラー図面を含む本発明または本出願の公開の写しは、請求および必要な手数料の支払いにより官庁から提供されるだろう。
【図1】ADAGIO研究のデザイン
【図2】ADAGIO:疾患緩和主要統計的分析(Disease Modification Principal Statistical Analyses)−3つの主要分析
【図3A】患者の配置:プラセボ対照(「PC」)段階
【図3B】患者の配置:積極的治療段階
【図4A】年齢(歳)平均(SE):ITT分析セット(N=1174)
【図4B】年齢(歳)平均(SE):積極的有効性(ACTE)分析セット(N=996)
【図5A】男性の%(SE):ITT分析セット(N=1174)
【図5B】男性の%(SE):積極的有効性(ACTE)分析セット(N=996)
【図6A】PD診断からの期間(月)平均(SE):ITT分析セット(N=1174)
【図6B】PD診断からの期間(月)平均(SE):積極的有効性(ACTE)分析セット(N=996)
【図7A】ベースラインでの全UPDRSスコア平均(SE):ITT分析セット(N=1174)
【図7B】ベースラインでの全UPDRSスコア平均(SE):積極的有効性(ACTE)分析セット(N=996)
【図8A】ベースラインでのHoehn−Yahrスコア平均(SE):ITT分析セット(1174)
【図8B】ベースラインでのHoehn−Yahrスコア平均(SE):積極的有効性(ACTE)セット(N=996)
【図9】主要分析#1の結果−PC段階(12〜36週)での傾きの比較−全UPDRSスコアにおける変化のTVP−1012/500(ADAGIO)平均+ − SE−PC段階におけるITTデータ分析セット
【図10A】主要分析#1の結果−PC段階(12〜36週)での傾きの比較−ITTデータ分析セットのための結果:傾きの評価(SE)
【図10B】主要分析#1の結果−PC段階(12〜36週)での傾きの比較−ITTデータ分析セットのための結果:傾きの評価および95%CI
【図11A】プラセボ対照段階−第2有効性エンドポイント第36週:全UPDRSにおけるベースラインからLOVへの変化の調整平均:調整平均(SE)
【図11B】プラセボ対照段階−第2有効性エンドポイント第36週:全UPDRSにおけるベースラインからLOVへの変化の調整平均:調整平均差および95%CI
【図12】全UPDRSの変化−ラサギリン1mg早期開始vs遅延開始−ACTE:全UPDRSスコアACTEデータ分析セットにおける変化のTVP−1012/500(ADAGIO)平均+ −
【図13】全UPDRSの変化−ラサギリン2mg早期開始vs遅延開始−ACT:全UPDRSスコアACTEデータ分析セットにおける変化のTVP−1012/500(ADAGIO)平均+ −
【図14A】主要分析#2の結果−第72週(積極的段階の終了)における比較:調整平均(SE)
【図14B】主要分析#2の結果−第72週(積極的段階の終了)における比較:調整平均差および95%CI
【図15A】主要分析#3の結果−積極的段階48〜72週における非劣性の傾き−結果:傾きの評価(SE)
【図15B】主要分析#3の結果−積極的段階48〜72週における非劣性の傾き−結果:傾き評価の差および95%CI
【図16A】PC段階:更なる抗PD治療を必要とする患者の%
【図16B】PC段階:更なる抗PD治療を必要とする患者の%:オッズ比および95%CI
【図17】PC段階カプランメイヤー曲線および更なる抗PD治療のための期間とCox比例ハザード生存モデル結果
【図18A】PC段階:UPDRSバージョン4のパートIのベースラインからLOVへの変化の調整平均(日常生活の経験の非運動性側面):調整平均(SE)
【図18B】PC段階:UPDRSバージョン4のパートIのベースラインからLOVへの変化の調整平均(日常生活の経験の非運動性側面):調整平均差および95%CI
【図19A】PC段階:パーキンソン疲労スケール(PFS)のベースラインからLOVへの変化の調整平均:調整平均(SE)
【図19B】PC段階:パーキンソン疲労スケール(PFS)のベースラインからLOVへの変化の調整平均:調整平均差および95%CI
【発明の詳細な説明】
【0033】
本発明は、初期パーキンソン病患者のパーキンソン病の症状の進行速度を低減する方法を提供し、当該方法は初期パーキンソン病患者を特定することと、パーキンソン病の症状の進行速度を低減するのに効果的な量のラサギリンまたは薬学的に許容されるラサギリンの塩を、そのように特定された初期パーキンソン病患者に定期的に投与することとを含む。
【0034】
この方法の一実施形態において、患者はブロモクリプチン、ベンズトロピン、レボドーバ、ロピニロール、プラミペキソール、ロチゴチン、カベルゴリン、エンタカポン、トルカポン、アマンタジンまたはセレギリンによる治療を受けない。
【0035】
この方法の別の実施形態において、患者はラサギリンまたは薬学的に許容されるラサギリンの塩以外にいずれのパーキンソン病の治療も受けない。
【0036】
この方法の別の実施形態において、パーキンソン病の症状を全パーキンソン病統一スケール(全UPDRS)スコアにより定量化し、全UPDRSスコアの増加は、パーキンソン病の症状の進行を示し、期間に亘る全UPDRSスコアの増加の増加分はパーキンソン病症状の進行速度を示す。
【0037】
この方法のさらに別の実施形態において、期間はラサギリンまたは薬学的に許容されるラサギリンの塩の投与開始後12、24または36週である。
【0038】
この方法のさらに別の実施形態において、進行速度はラサギリンまたは薬学的に許容されるラサギリンの塩の投与の初期の症候性効果期間後、週あたり0.15単位未満の平均全UPDRSスコアの増加である。さらに、期間は12〜36週である。
【0039】
この方法のさらに別の実施形態において、進行速度はラサギリンまたは薬学的に許容されるラサギリンの塩の投与の初期の症候性効果期間後、週あたり0.15〜0.05単位未満の平均全UPDRSスコアの増加である。
【0040】
この方法のさらに別の実施形態において、進行速度はラサギリンまたは薬学的に許容されるラサギリンの塩の投与の初期の症候性効果期間後、週あたり0.15〜0.07単位未満の平均全UPDRSスコアの増加である。
【0041】
この方法のさらに別の実施形態において、進行速度はラサギリンまたは薬学的に許容されるラサギリンの塩の投与の初期の症候性効果期間後、週あたり0.11〜0.07単位未満の平均全UPDRSスコアの増加である。
【0042】
この方法のさらに別の実施形態において、期間はラサギリンまたは薬学的に許容されるラサギリンの塩の投与開始後、48、54、60、66または77週である。
【0043】
この方法のさらに別の実施形態において、投与されるラサギリンの量は1日あたり1mgである。
【0044】
この方法のさらに別の実施形態において、投与されるラサギリンの量は1日あたり2mgである。
【0045】
この方法のさらに別の実施形態において、薬学的に許容されるラサギリンの塩はラサギリンメシレートである。
【0046】
この方法のさらに別の実施形態において、初期パーキンソン病患者は、ホーン・ヤー評価に従うステージIの患者である。
【0047】
この方法のさらに別の実施形態において、初期パーキンソン病患者は、症状が30未満;25未満;23未満;21未満または20未満のUPDRS全スコアを生ずる患者である。
【0048】
この方法のさらに別の実施形態において、初期パーキンソン病患者は、症状が17.5未満;17未満;16未満;15未満;14.5未満または14未満のUPDRS全スコアを生ずる患者である。
【0049】
この方法のさらに別の実施形態において、初期パーキンソン病患者は、12ヶ月;11ヶ月;10ヶ月;9ヶ月;8ヶ月;7ヶ月;6ヶ月;5ヶ月;4ヶ月;3ヶ月;2ヶ月または1ヶ月前以内に症状がパーキンソン病を示すと診断された患者である。
【0050】
本発明はさらに、パーキンソン病患者においてパーキンソン病の症状の進行速度を低減する方法を提供し、当該方法はパーキンソン病の症状の進行速度を低減するのに効果的な量のラサギリンまたは薬学的に許容されるラサギリンを52週間に亘り、パーキンソン病患者に定期的に投与することを含む。
【0051】
この方法の一実施形態において、患者は初期パーキンソン病患者である。
【0052】
この方法の更なる実施形態は、本明細書中に記載される。
【0053】
本発明はさらに、初期パーキンソン病患者において症候性の抗パーキンソン治療の必要性を遅らせる方法を提供し、これは患者が初期パーキンソン病患者であると特定することと、症候性の抗パーキンソン治療の必要性を遅らせるのに効果的な量のラサギリンまたは薬学的に許容されるラサギリンをそのように特定された患者に定期的に投与することとを含む。
【0054】
この方法の一実施形態において、症候性の抗パーキンソン病治療の必要性の遅延期間はラサギリンまたは薬学的に許容されるラサギリンの塩の投与開始後、34週間、36週間、または42週間を超える。
【0055】
この方法の更なる実施形態は、本明細書中に記載される。
【0056】
本発明はさらに、症候性の抗パーキンソン治療を必要とするパーキンソン病患者のリスクを低減する方法を提供し、これは症候性の抗パーキンソン治療を必要とするリスクを低減するのに効果的な量のラサギリンまたは薬学的に許容されるラサギリンの塩を36週間に亘り、患者に定期的に投与することとを含む。
【0057】
この方法の一実施形態において、リスクは40〜60%低減する。特に、リスクは少なくとも50%低減する。
【0058】
この方法の一実施形態において、投与は52週間を超える。
【0059】
この方法のさらなる実施形態は、本明細書中に記載される。
【0060】
本発明はさらに、初期パーキンソン病の機能低下を緩和する方法を提供し、これは患者が初期パーキンソン病であると特定することと、機能低下を緩和するのに効果的な量のラサギリンまたは薬学的に許容されるラサギリンの塩をそのように特定された患者に定期的に投与することとを含む。
【0061】
この方法の一実施形態において、初期パーキンソン病の患者の機能低下は、全パーキンソン病統一スケール(全UPDRS)スコアにより定量化され、全UPDRSスコアの増加は機能低下を示す。
【0062】
この方法の別の実施形態において、全パーキンソン病統一スケール(全UPDRS)スコアは、ラサギリンまたは薬学的に許容されるラサギリンの塩の投与開始後72週で3.97単位未満または3.35単位未満である。
【0063】
この方法の更なる実施形態は、本明細書中に記載される。
【0064】
本発明はさらに、パーキンソン病の初期の徴候を示す患者を治療する方法を提供し、これはパーキンソン病の初期の徴候を示す患者を特定することと、当該患者を治療するのに効果的な量のラサギリンまたは薬学的に許容されるラサギリンをそのように特定された患者に定期的に投与することとを含む。
【0065】
この方法のさらなる実施形態は、本明細書中に記載される。
【0066】
本発明はさらに、初期パーキンソン病患者において疲労を緩和する方法を提供し、これは疲労を緩和するのに効果的な量のラサギリンまたは薬学的に許容されるラサギリンの塩を初期パーキンソン病患者に定期的に投与することを含む。
【0067】
この方法の実施形態において、パーキンソン疲労スケールは、ラサギリンにより治療されない患者と比較して0.05〜0.23減少する。
【0068】
本発明はさらに、初期パーキンソン病患者において非運動性症状の重症度を緩和する方法を提供し、これは非運動性症状の重症度を緩和するのに効果的な量のラサギリンまたは薬学的に許容されるラサギリンを初期パーキンソン病患者に定期的に投与することを含む。
【0069】
この方法の一実施形態において、非運動性症状はUPDRSバージョン4のパート1により規定される。
【0070】
この方法の別の実施形態において、バージョン4パート1に規定されるUPDRSスコアの変化は、ラサギリンによる治療を受けていない患者と比較して少なくとも0.23である。
【0071】
本発明はさらに、パーキンソン病患者において臨床的進行を遅らせ且つパーキンソン病の症状を治療する方法を提供し、これは当該患者において臨床的進行を遅らせ且つパーキンソン病の徴候および症状を治療するのに効果的な量のラサギリンまたは薬学的に許容されるラサギリンをパーキンソン病患者に定期的に投与することを含む。
【0072】
この方法の一実施形態において、投与されるラサギリンの量は1日あたり1mgである。
【0073】
この方法の別の実施形態において、患者はブロモクリプシン、ベンゾトロピン、レボドーバ、ロピニロール、プラミペキソール、ロチゴチン、カベルゴリン、エンタカポン、トルカポン、アマンタジンまたはセレギリンによる治療を受けない。
【0074】
この方法の更に別の実施形態において、患者はラサギリンまたは薬学的に許容されるラサギリン以外にいずれのパーキンソン病の治療も受けない。
【0075】
この方法の更に別の実施形態において、患者の平均全UPDRSスコアは、ラサギリンまたは薬学的に許容されるラサギリンの塩の投与の初期の徴候性効果期間の後、週あたり0.15単位未満増加する。
【0076】
この方法の更に別の実施形態において、患者の平均全UPDRSスコアは、ラサギリンまたは薬学的に許容されるラサギリンの塩の投与の初期の徴候性効果期間の後、週あたり0.15〜0.05単位未満増加する。
【0077】
この方法の更に別の実施形態において、患者の平均全UPDRSスコアは、ラサギリンまたは薬学的に許容されるラサギリンの塩の投与の初期の徴候性効果期間の後、週あたり0.15〜0.07単位未満増加する。
【0078】
この方法の更に別の実施形態において、患者の平均全UPDRSスコアは、ラサギリンまたは薬学的に許容されるラサギリンの塩の投与の初期の徴候性効果期間の後、週あたり0.11〜0.07単位未満増加する。
【0079】
この方法の更に別の実施形態において、薬学的に許容されるラサギリンの塩はラサギリンメシレートである。
【0080】
この方法の更に別の実施形態において、患者は初期パーキンソン病患者である。
【0081】
この方法の更なる実施形態は、本明細書中に記載される。
【0082】
上記方法の一実施形態において、パーキンソン病患者は全UPDRSスコアが25.5を超える患者である。
【0083】
この方法の一実施形態において、投与されるラサギリンの量は1日あたり2mgである。
【0084】
この方法の別の実施形態において、患者の平均全UPDRSスコアは、ラサギリンまたは薬学的に許容されるラサギリンの塩の投与の初期の徴候性効果期間の後、週あたり0.28単位未満増加する。
【0085】
この方法の更に別の実施形態において、患者の平均全UPDRSスコアは、ラサギリンまたは薬学的に許容されるラサギリンの塩の投与の初期徴候性効果期間の後、週あたり0.28〜0.01単位増加する。
【0086】
この方法の更に別の実施形態において、患者の平均全UPDRSスコアは、ラサギリンまたは薬学的に許容されるラサギリンの塩の投与の初期徴候性効果期間の後、週あたり0.09〜0.01単位増加する。
【0087】
この方法の更に別の実施形態において、患者の平均全UPDRSスコアは、ラサギリンまたは薬学的に許容されるラサギリンの塩の投与の初期徴候性効果期間の後、週あたり0.18〜0.10単位増加する。
【0088】
この方法の一実施形態において、全パーキンソン病統一スケール(全UPDRS)の増加は、ラサギリンまたは薬学的に許容されるラサギリンの塩の投与開始後72週において3.10単位未満または2.61単位未満である。
【0089】
この方法の別の実施形態において、投与されるラサギリンの量は1日当たり1mgである。
【0090】
この方法の更なる実施形態は、本明細書中に記載される。
【0091】
本発明はさらに、初期パーキンソン病患者におけるパーキンソン病の進行速度低減用のラサギリンまたは薬学的に許容されるラサギリンの塩を提供する。
【0092】
この使用の更なる実施形態は、本明細書中に記載される。
【0093】
本発明はさらに、初期パーキンソン病患者において症候性の抗パーキンソン治療の必要性を遅らせることにおける使用のためのラサギリンまたは薬学的に許容されるラサギリンの塩を提供する。
【0094】
この使用の更なる実施形態は、本明細書中に記載される。
【0095】
本発明はさらに、症候性の抗パーキンソン病治療を必要とする初期パーキンソン病患者のリスク低減用のラサギリンまたは薬学的に許容されるラサギリンの塩を提供する。
【0096】
この使用の更なる実施形態は、本明細書中に記載される。
【0097】
本発明はさらに、初期パーキンソン病患者における機能低下緩和用のラサギリンまたは薬学的に許容されるラサギリンを提供する。
【0098】
この使用の更なる実施形態は、本明細書中に記載される。
【0099】
本発明はさらに、パーキンソン病の初期の徴候を示す患者の治療用のラサギリンまたは薬学的に許容されるラサギリンの塩を提供する。
【0100】
この使用の更なる実施形態は、本明細書中に記載される。
【0101】
本発明はさらに、初期パーキンソン病患者における疲労緩和用のラサギリンまたは薬学的に許容されるラサギリンの塩を提供する。
【0102】
この使用の更なる実施形態は、本明細書中に記載される。
【0103】
本発明はさらに、初期パーキンソン病患者における非運動性の重症度緩和用のラサギリンまたは薬学的に許容されるラサギリンの塩を提供する。
【0104】
この使用の更なる実施形態は、本明細書中に記載される。
【0105】
本発明はさらに、パーキンソン病患者において臨床的進行を遅らせ且つパーキンソン病の症状を治療することにおける使用のためのラサギリンまたは薬学的に許容されるラサギリンの塩を提供する。
【0106】
この使用の更なる実施形態は、本明細書中に記載される。
【0107】
本発明はさらに、パーキンソン病患者におけるパーキンソン病の症状の進行速度低減用の薬学的に効果的な量のラサギリンまたは薬学的に許容されるラサギリンの塩を含む医薬組成物を提供する。
【0108】
この医薬組成物の更なる実施形態は本明細書中に記載される。
【0109】
本発明はさらに、初期パーキンソン病患者において症候性抗パーキンソン治療の必要性を遅らせることにおける使用のための薬学的に効果的な量のラサギリンまたは薬学的に許容されるラサギリンを含む医薬組成物を提供する。
【0110】
この医薬組成物の更なる実施形態は、本明細書中に記載される。
【0111】
本発明はさらに、症候性の抗パーキンソン治療を必要とするパーキンソン病患者のリスク低減用の薬学的に効果的な量のラサギリンまたは薬学的に許容されるラサギリンの塩を含む医薬組成物を提供する。
【0112】
この医薬組成物の更なる実施形態は、本明細書中に記載される。
【0113】
本発明はさらに、パーキンソン病患者における機能低下緩和用の薬学的に効果的な量のラサギリンまたは薬学的に許容されるラサギリンの塩を含む医薬組成物を提供する。
【0114】
この医薬組成物の更なる実施形態は、本明細書中に記載される。
【0115】
本発明はさらに、パーキンソン病の初期の徴候を示すパーキンソン病患者の治療用の薬学的に効果的な量のラサギリンまたは薬学的に許容されるラサギリンの塩を含む医薬組成物を提供する。
【0116】
この医薬組成物の更なる実施形態は、本明細書中に記載される。
【0117】
本発明はさらに、初期パーキンソン病患者における疲労緩和用の薬学的に効果的な量のラサギリンまたは薬学的に許容されるラサギリンの塩を含む医薬組成物を提供する。
【0118】
この医薬組成物の更なる実施形態は、本明細書中に記載される。
【0119】
本発明はさらに、初期パーキンソン病患者における非運動性症状の重症度緩和用の薬学的に効果的な量のラサギリンまたは薬学的に許容されるラサギリンの塩を含む医薬組成物を提供する。
【0120】
この医薬組成物の更なる実施形態は、本明細書中に記載される。
【0121】
本発明はさらに、パーキンソン病患者において臨床的進行を遅らせ且つパーキンソン病の症状を治療することにおける使用のための薬学的に効果的な量のラサギリンまたは薬学的に許容されるラサギリンの塩を含む医薬組成物を提供する。
【0122】
この医薬組成物の更なる実施形態は、本明細書中に記載される。
【0123】
ここに記載される実施形態の各々において、平均および全UPDRSスコアの数値および範囲は以下の通りであってよい:
上記方法の一実施形態において進行速度は、ラサギリンまたは薬学的に許容されるラサギリンの塩の投与開始後、週あたり0.129未満の平均全UPDRSスコア増加である。特に進行速度は、ラサギリンまたは薬学的に許容されるラサギリンの塩の投与開始後、週あたり0.066未満の平均全UPDRSスコア増加である。さらに、期間は12〜36週である。
【0124】
上記方法の別の実施形態において、進行速度はラサギリンまたは薬学的に許容されるラサギリンの塩の投与開始後、週あたり0.129〜0.059の平均全UPDRSスコア増加である。
【0125】
上記方法の更に別の実施形態において、進行速度はラサギリンまたは薬学的に許容されるラサギリンの塩の投与開始後、週あたり0.099〜0.029の平均全UPDRSスコア増加である。
【0126】
上記方法の更に別の実施形態において、進行速度はラサギリンまたは薬学的に許容されるラサギリンの塩の投与開始後、週あたり0.125〜0.045の平均全UPDRSスコア増加である。
【0127】
上記方法の一実施形態において、進行速度はラサギリンまたは薬学的に許容されるラサギリンの塩の投与開始後、週あたり0.125未満の平均全UPDRSスコア増加である。
【0128】
上記方法の更に別の実施形態において、進行速度はラサギリンまたは薬学的に許容されるラサギリンの塩の投与開始後、週あたり0.108〜0.078の平均全UPDRSスコア増加である。
【0129】
上記方法の更に別の実施形態において、進行速度はラサギリンまたは薬学的に許容されるラサギリンの塩の投与開始後、週あたり0.082〜0.050の平均全UPDRSスコア増加である。
【0130】
上記方法のさらに別の実施形態において、進行速度はラサギリンまたは薬学的に許容されるラサギリンの塩の投与開始後、週あたり0.101〜0.069の平均全UPDRSスコア増加である。
【0131】
上記方法の別の実施形態において、全パーキンソン病統一スケール(全UPDRS)スコアは、ラサギリンまたは薬学的に許容されるラサギリンの塩の投与開始後72週において、3.0未満、2.0未満、1.7未満、1.3〜3.0、または1.3〜2.5である。
【0132】
薬学的に許容される塩の例は、金属または塩基性残基、例えばアミンなどの有機酸塩;アルカリまたは酸性残基、例えばカルボキシ環酸などの有機塩を含むがこれらに限定されない。塩は有機または無機酸を用いて調製してよい。前記酸性塩は、臭化物、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩、スルホン酸塩、ギ酸塩、酒石酸塩、マレイン酸塩、リンゴ酸塩、クエン酸塩、安息香酸塩、サリチル酸塩、アスコルビン酸塩、タンニン酸塩などである。カルボン酸塩は、アルカリ土類金属塩、ナトリウム、カリウムまたはリチウムである。
【0133】
ラサギリンはまた、遊離塩基の形態であってもよい。結晶性ラサギリン塩基の製造方法は、PCT公報WO 2008/076348に記載され、その内容は引用によりここに組み込まれる。
【0134】
ラサギリンは単独で用いられ、パーキンソン病を治療するか、代わりに他のパーキンソン病治療剤、例えば、ブロモクリプチン、ベンズトロピン、レボドーバ、ロピニロール、プラミペキソール、ロチゴチン、カベルゴリン、エンタカポン、トルカポン、アマンタジンまたはセレギリンなどの何れかの補助剤として用いられてもよい。
【0135】
定義
ここで用いられる場合、「症候性の抗パーキンソン治療」とは、ブロモクリプチン、ベンズトロピン、レボドーバ、ロピニロール、プラミペキソール、ロチゴチン、カベルゴリン、エンタカポン、トルカポン、アマンタジンまたはセレギリンのいずれかを含む。
【0136】
ここで用いられる場合、「初期の症候性効果期間」とは、患者にラサギリンを投与した直後に始まる、全UPDRSスコアが低下する期間であり、全UPDRSスコアがもはや低下しなくなったとき、好ましい実施形態においては全UPDRSスコアが上昇し始めるときに終了する期間である。例えば、図12に示されるデータにおいて、初期の症候性効果期間は、1mgの早期開始群については0〜12週である。
【0137】
ここで用いられる場合、「パーキンソン病の進行速度を低減する」とは、PD患者が経験する悪化を緩和することを意味し、これは例えば、ある期間に亘ってラサギリン治療を受けていないPD患者が経験する悪化と比較してUPDRSスコアにより定量化される。
【0138】
ここで用いられる場合、「症候性の抗パーキンソン治療の必要性を遅らせる」とは、ラサギリン治療を受けていない患者と比較してラサギリン治療を受けたパーキンソン病患者の症候性の抗パーキンソン治療の必要性を遅らせることを意味する。
【0139】
ここで用いられる場合、「機能低下」とは、全UPDRSスコアを用いて決定可能な期間に亘ってPD患者の症状を悪化させることを意味する。
【0140】
ここで用いられる場合、「パーキンソン病の初期の徴候」は、以下の1以上を含む:
a)一方の手の安静時4〜8Hzの丸薬丸め振戦;
b)安静時に最大であり、運動時に減少し、睡眠時にはない振戦;
c)運動の硬直および緩徐化(徐脈)、運動の低下(運動低下症)、および運動開始における困難(失動症);
d)口の開きおよびまばたきの減少を伴う仮面状の顔面、これはうつ病と混同されるかもしれない;
e)前かがみになる姿勢;
f)歩行開始における困難;短い歩幅で引きずり歩きになる歩行、および闊歩により揺れないように腰に曲げられた手;
g)時折無意識に早くなる歩調、および時に転倒を避けて走りだす患者(加速歩調);
h)姿勢反射に起因して重力の中心が移動するとき、前方に転倒する傾向(前方突進)または後方に転倒する傾向(逆突進);
i)単調な吃音構語障害の特徴を伴い発声不全になる発語;
j)小字症を生ずる運動機能減少症および抹消筋肉組織の制御障害および日常生活の活動による増加した困難;
k)少ないまばたきおよび顔の表情の欠如;
l)減少した運動;
m)姿勢反射障害;および/または
n)歩行異常の特徴。
【0141】
ここで用いられる場合、PD患者の段階は、症状に依存した以下の5つの異なる段階でHoehnおよびYahrにより記載される(Hoehn MM, Yahr MD, Parkinsonism: onset, progression and mortality. Neurology 1967, 17:427−42)。
【0142】
ステージI:(軽微なまたは初期の疾患):体の片側にのみ発症する症状
ステージII:体の両側に発症するが、姿勢は正常なままである。
【0143】
ステージIII:(中程度の疾患):体の両側に発症し、起立または歩行時の軽度の不均衡がある。しかしながら、独立したままである。
【0144】
ステージIV:(進行疾患):体の両側に発症し、起立または歩行時の身体障害の不安定性。この段階にある人は相当の支援を必要とする。
【0145】
ステージV:重篤で完全に進行した疾患が存在する。ベッドまたは椅子に制限される。
【0146】
ここで用いられる場合、「初期PD患者」とは、HoehnおよびYahrにより定義されるパーキンソン病のステージIまたはステージIIのPD患者であり、症候性の抗パーキンソン治療を必要としない。好ましくは、前記PD患者は少なくとも次の9ヶ月症候性の治療を必要としない。初期PD患者は、関連する試験を行うことにより特定されてよい。
【0147】
ここで用いられる場合、パーキンソン病の「臨床的進行を遅らせる」とは、ここに詳細に記載される臨床試験により例示される3つの階層的な主要エンドポイントを達成することを意味する。第1の主要エンドポイントは、ラサギリンの完全な症候性の効果が得られた後の期間、例えばラサギリン投与の第12週の後の期間、ラサギリンによる治療を受けていない患者と比べてより遅い速度の全UPDRSスコア増加である。第2の主要エンドポイントは、ラサギリン治療が遅れた患者と比較したとき、ラサギリン治療の遅延開始により生じる変化を除去するのに十分な期間後の全UPDRSスコアの少ない悪化である。前記期間は必ずラサギリン治療開始後52週を超え;好ましくはラサギリン投与開始後少なくとも72週である。第3の主要エンドポイントは、ラサギリン治療を遅らせた患者と比較して、遅延開始ラサギリン投与の完全な症候性効果が得られた後の期間の全UPDRSスコアの実質的に同じ悪化速度、例えば0.15全UPDRS単位/週である。第3の主要エンドポイントにおける期間は好ましくは24週以上である。
【0148】
全UPDRS(全パーキンソン病統一スケール)スコアは、パーキンソン病症状のレベルまたは重症度を示す。これを用いて治療の間、有効性変数のベースラインからの変化を測定する。UPDRSは3つの部分の試験よりなる。全31項目がパートI、IIおよびIIIの試験に含まれる。各々の項目に0〜4のスコアをつけ、0は障害がないこと、4は最も高い障害の程度を示す。各試験におけるパートI、IIおよびIIIの合計が、全UPDRSスコアを提供する。パートIは、精神作用、挙動および気分を評価するように設計される(項目1〜4)。これは履歴的情報として収集される。パートII(項目5〜17)もまた履歴的情報である。パートIII(項目18〜31)は往診時の運動試験である。
【0149】
パートI:精神作用、挙動および気分
項目1.知能障害
0:なし。
【0150】
1:軽微−事象の部分的記憶を有する一貫した健忘、他の困難性は無い。
【0151】
2:中程度の記憶障害、見当識障害および複雑な問題を扱う際の中性度の困難性がある。家庭で時折後見が必要な軽微ではあるが決定的な機能障害。
【0152】
3:時間および、多くの場合、場所の見当識障害を伴う重篤な記憶障害。問題の取り扱いにおける重篤な記憶障害。
【0153】
4:重篤な記憶障害であり、人に対してのみ見当識が保存されている。問題解決のための判断ができない。個人的介護によりかなりの介助を必要とし、一人にしておくことができない。
【0154】
項目2.思考障害(痴呆または薬物中毒による)
0:なし
1:鮮明な夢
2:見識を保持した良性の幻覚
3:時折のもしくは頻繁な見識のない幻覚または妄想;これは日常活動に支障をきたす可能性がある。
【0155】
4:持続性の幻覚、妄想または病勢盛んな精神疾患。自身で管理することができない。
【0156】
項目3.抑鬱
0:なし。
【0157】
1:通常以上の悲哀または罪悪感。数日または数週間続くことはない。
【0158】
2:鬱状態が続く(1週間以上)。
【0159】
3:自律神経症状(不眠症、食欲不振、体重減少、無関心)を伴う鬱状態が続く。
【0160】
4:自殺念慮または自殺企図を有する自律神経症状を伴う鬱状態が続く。
【0161】
項目4:意欲および自発性
0:正常。
【0162】
1:通常よりも受動的;より消極的。
【0163】
2:選択的(ルーチンでない)活動への自発性の喪失または無関心。
【0164】
3:日常の(ルーチン化した)活動への自発性の喪失または無関心。
【0165】
4:引きこもり、完全な意欲の喪失。
【0166】
パートII:日常生活の活動(スコア0〜4)
項目5.会話
0:正常。
【0167】
1:軽度の障害。理解されるのに困難性はない。
【0168】
2:中程度の障害。時折、発言を繰り返すよう求められる。
【0169】
3:重度の発症。頻繁に発言を繰り返すよう求められる。
【0170】
4:大抵の場合、理解できない。
【0171】
項目6.唾液分泌
0:正常。
【0172】
1:口内の唾液の軽微であるが明らかな増加;夜間に流涎となる可能性がある。
【0173】
2:中程度の唾液の増加;小量の流涎の可能性がある。
【0174】
3:時折流涎を伴う著しい唾液の増加。
【0175】
4:顕著な流涎。常時ティッシュかハンカチを必要とする。
【0176】
項目7.飲み込み
0:正常。
【0177】
1:まれにむせる。
【0178】
2:時折むせる。
【0179】
3:軟らかい食べ物を必要とする。
【0180】
4:経鼻胃チューブまたは胃切開摂食を必要とする。
【0181】
項目8.書字
0:正常。
【0182】
1:軽度に遅いかまたは小さい。
【0183】
2:中程度に遅いかまたは小さい;全ての文字が判読可能。
【0184】
3:重度に障害;全ての文字が判読可能というわけではない。
【0185】
4:大部分の文字が判読不可能
項目9.食物の切り分け、用具の取り扱い
0:正常
1:いくらか緩慢だが介助は必要ない。
【0186】
2:ぎこちなく且つ緩慢だが、ほとんどの食物を切ることができる。いくらか介助が必要。
【0187】
3:他の人に食物を切ってもらう必要があるが、まだ緩慢に食事をとることができる。
【0188】
4:食べさせてもらう必要がある。
【0189】
項目10.着衣
0:正常。
【0190】
1:いくらか緩慢だが、介助は必要ない。
【0191】
2:ボタン留めや腕を袖に通すのに時折介助が必要。
【0192】
3:かなりの介助が必要だが、いくつかのことは自分でできる。
【0193】
4:何もできない。
【0194】
項目11.衛生
0:正常。
【0195】
1:いくらか緩慢だが、介助は必要ない。
【0196】
2:シャワーもしくは入浴に介助が必要、または衛生管理は非常に緩慢である。
【0197】
3:洗浄、歯磨き、髪をとかす、浴室に行くのに介助を必要とする。
【0198】
4:フォーリーカテーテルまたは他の機械的補助。
【0199】
項目12.ベッドでの寝返りおよびシーツの調整
0:正常。
【0200】
1:いくらか緩慢でぎこちないが、介助は必要ない。
【0201】
2:大きな困難を要するが、一人で寝返り打つことができ、またはシーツを整えることができる。
【0202】
3:寝返りを打つことやシーツを整えることを始めることはできるが、一人ではできない。
【0203】
4:できない。
【0204】
項目13.転倒(すくみとは関係ない)
0:なし。
【0205】
1:まれに転倒する。
【0206】
2:時折転倒し、それは1日に1回よりも少ない。
【0207】
3:平均して1日1回転倒する。
【0208】
4:1日複数回転倒する。
【0209】
項目14.歩行時のすくみ
0:なし。
【0210】
1:歩行時まれにすくみ、初めに躊躇するかもしれない。
【0211】
2:歩行時に時折すくむ。
【0212】
3:頻繁にすくむ。時折すくみから転倒する。
【0213】
4:すくみから転倒する。
【0214】
項目15.歩行
0:なし。
【0215】
1:軽度の困難。手を振らないか、または足を引きずるかもしれない。
【0216】
2:中程度の困難があるが、介助をほとんどまたは全く必要としない。
【0217】
3:介助を必要とする歩行の重篤な障害。
【0218】
4:介助を伴っても全く歩くことができない。
【0219】
項目16.振戦
0:なし。
【0220】
1:軽度でまれに存在する。
【0221】
2:中程度;患者にとって厄介である。
【0222】
3:重篤;多くの活動を妨げる。
【0223】
4:顕著;ほとんどの活動を妨げる。
【0224】
項目17.パーキンソン症候群に関連する感覚的不調
0:なし。
【0225】
1:まれにしびれ感、うずき、または軽度の痛みを有する。
【0226】
2:頻繁にしびれ感、うずき、または痛みを有する;苦痛ではない。
【0227】
3:頻繁な有通性の感覚。
【0228】
4:耐え難い痛み。
【0229】
パートIII:運動試験(スコア0〜4)
項目18.発語
0:正常。
【0230】
1:表現、言い回しおよび/または声量の軽微な喪失。
【0231】
2:単調、不明瞭であるが理解可能;中程度に障害されている。
【0232】
3:顕著な障害;理解が困難である。
【0233】
4:理解不可能。
【0234】
項目19.顔の表情
0:正常。
【0235】
1:軽躁(hypomimia)、これは正常な「ポーカーフェイス」かもしれない。
【0236】
2:軽微だが明らかに異常な表情の減少
3:中程度の軽躁;時折開いた口。
【0237】
4:表情の重篤もしくは完全な喪失を伴う仮面顔または固定顔;1/4インチ以上開いた口。
【0238】
項目20.安静時の振戦
a)顔面、唇および顎
b)右手
c)左手
d)右足
e)左足
0:なし
1:軽度で頻繁にある。
【0239】
2:振幅が軽く、ほとんどの時間ある。
【0240】
3:中程度の振幅でほとんどの時間ある。
【0241】
4:顕著な振幅でほとんどの時間にある。
【0242】
項目21.手の動作時または姿勢時振戦
0:なし。
【0243】
1:軽度;動作に伴っておこる。
【0244】
2:中程度の振幅;動作に伴っておこる。
【0245】
3:動作時および姿勢時に中程度の振幅。
【0246】
4:顕著な振幅;食事を妨げる。
【0247】
項目22.硬直(座ってリラックスした患者による主要な関節の受動運動について判断。歯車減少(cogwheeling)は無視した。)
a)首
b)右上肢
c)左上肢
d)右下肢
e)左下肢
0:なし。
【0248】
1:軽度であるか、またはミラー運動または他の運動により活性化されたときのみ検出可能。
【0249】
2:軽度または中程度。
【0250】
3:顕著であるが、全可動域が容易に達成される。
【0251】
4:重篤、可動域の達成には困難を伴う。
【0252】
項目23.フィンガータップ(Finger taps)(患者は各々の手を別々に、なるべく大きな振幅で親指と人差し指とを迅速に継続して軽く叩く)
a)右手
b)左手
0:正常 > 15/5秒。
【0253】
1:少し遅いおよび/または振幅が減少(11〜14.5秒)。
【0254】
2:中程度の障害。明確な早期の疲労。運動中に時折停止するかもしれない(7〜10/5秒)。
【0255】
3:重篤な障害。動作の開始において頻繁な躊躇または運動中に停止する(3−6/5秒)。
【0256】
4:ほとんどできない(0〜2/5秒)。
【0257】
項目24.手の運動(患者は各々の手を別々に、できるだけ大きな振幅で迅速に継続して手を開閉する。)
a)右手
b)左手
0:正常
1:少し遅いおよび/または振幅が減少
2:中程度の障害。明確な早期の疲労。運動中に時折停止するかもしれない。
【0258】
3:重篤な障害。動作の開始において頻繁な躊躇または運動中に停止するかもしれない。
【0259】
4:ほとんどできない。
【0260】
項目25.急速な手の交互運動(出来るだけ大きな振幅での垂直または水平な手の回内回外運動。両方の手を同時に。)
0:正常。
【0261】
1:少し遅いおよび/または振幅が減少
2:中程度の障害。明確な早期の疲労。運動中に時折停止するかもしれない。
【0262】
3:重篤な障害。動作の開始において頻繁な躊躇または運動中に停止するかもしれない。
【0263】
4:ほとんどできない。
【0264】
項目26.脚の機敏さ(患者は脚を全体的に持ち上げ、迅速に継続してかかとで地面を軽く叩く。振幅は約3インチである。)
0:正常。
【0265】
1:少し遅いおよび/または振幅が減少
2:中程度の障害。明確な早期の疲労。運動中に時折停止するかもしれない。
【0266】
3:重篤な障害。動作の開始において頻繁な躊躇または運動中に停止するかもしれない。
【0267】
4:ほとんどできない。
【0268】
項目27.椅子からの立ち上がり(患者は、腕を組んだまま垂直な背部の木製または金属製の椅子から立ち上がることを試みる)
0:正常。
【0269】
1:緩慢、または1度以上の試みが必要かもしれない。
【0270】
2:緩慢、または椅子のひじかけから自分で押し上がる。
【0271】
3:後退の傾向があり、1回以上試行しなければならないかもしれないが、介助なしで立ち上がることができる。
【0272】
4:介助なしでは立ち上がることができない。
【0273】
項目28.姿勢
0:正常な直立。
【0274】
1:完全な直立ではなく、軽度の前屈姿勢;高齢者に一般的。
【0275】
2:中程度の前屈姿勢、明らかに正常ではなく、一方の側に軽く傾斜していてもよい。
【0276】
3:脊柱後弯を伴う重篤な前屈姿勢;一方の側に中程度傾斜していてもよい。
【0277】
4:姿勢の極度の異常を伴う顕著な湾曲。
【0278】
項目29.歩行
0:正常。
【0279】
1:緩慢に歩き、短い歩幅で脚を引きずって歩くかもしれないが、加速歩行または前方突進はない。
【0280】
2:歩行に困難を伴うが、ほとんどまたは全く介助を必要としない;加速歩行、短い歩幅、または前方突進があるかもしれない。
【0281】
3:介助を必要とする重篤な障害のある歩行
4:介助なしでは全く歩くことができない。
【0282】
項目30.姿勢の安定性(突然の後方変位に対する応答)
0:正常。
【0283】
1:後方突進するが、介助なしで回復する。
【0284】
2:姿勢反応の欠如;検査員が受け止めなければ転倒する。
【0285】
3:非常に不安定で、自然にバランスを失う傾向がある。
【0286】
4:介助なしでは立つことができない。
【0287】
項目31.体の動作緩慢および運動低下(一般に、緩慢、躊躇、腕の振りの減少、運動の振幅の小ささおよび不足)
0:なし。
【0288】
1:最小の緩慢さ、慎重な正確に動きを与える;人によっては正常。場合によっては振幅が小さいかもしれない。
【0289】
2:動きの緩慢および不足の程度は軽度、明確に正常ではない。または運動の振幅が小さい。
【0290】
3:中程度の緩慢、運動の振幅が不足するか、または小さい。
【0291】
4:顕著な緩慢、動きの振幅が不足するか、または小さい。
【0292】
考察
実験室の研究に基づき、多くの薬剤が推定上、神経保護的効果を有すると考えられてきたが、肯定的な結果評価にも関わらずいずれもPDにおいて神経保護的効果を提供することは立証されていない(Schapira AH, Olanow CW. Neuroprotection in Parkinson disease: mysteries, myths, and misconceptions. JAMA. 2004, 291:358-364)。神経保護的治療を定義する主要な限界のうちの1つは、結果評価の欠如であり、これは潜在的な疾患を正確に反映しこの研究的介入の症候性または薬理学的結果によって交絡されることがない。MAO−Bインヒビターであるラサギリン(Azilect(登録商標))は実験室モデルにおいて、神経保護的効果を有する抗アポトーシス剤であると証明された(Olanow GW. Rationale for considering that propargylamines might be neuroprotective in Parkinson's disease. Neurology. 2006, 66(10 Suppl 4):S69-79)。しかしながらラサギリンは、初期PDにおける単独療法として用いられる場合、(Parkinson Study Group. A controlled trial of rasagiline in early Parkinson disease: the TEMPO Study. Arch Neurol 2002, 59:1937-1943))または運動変動(motor fluctuation)を有するPD患者においてレボドーバの補助剤として用いられる場合、統計学的に有意な抗パーキンソンの利点を提供することが証明され(Parkinson Study Group. A randomized placebo-controlled trial of rasagiline in levodopa-treated patients with Parkinson disease and motor fluctuations: the PRESTO study. Arch Neurol 2005, 62:241-248; Rascol O, Brooks DJ, Melamed E, et al. Rasagiline as an adjunct to levodopa in patients with Parkinson's disease and motor fluctuations (LARGO, Lasting effect in Adjunct therapy with Rasagiline Given Once daily, study): a randomised, double-blind, parallel-group trial. Lancet. 2005-365:947-54)、したがってこれまでに用いられてきた結果評価を用いる神経保護の研究に症候性の交絡を導入することが期待されるかもしれない。
【0293】
症候性の抗PD剤としてのラサギリンの開発のための臨床的研究(「TEMPO研究」)が終了した。TEMPO研究の初め6ヶ月の二重盲無作為化プラセボ対照段階により、ラサギリンがPD患者の治療において単独治療として有効であることが示された(Parkinson Study Group. A Controlled Trial of Rasagiline in Early Parkinson Disease. The TEMPO Study. Arch Neurol, December 2002, Vol 59: 1937-1943)。TEMPOは無作為化開始設計を採用し、TEMPOの結果は1および2mg/dのラサギリンで1年間治療された患者が、6ヶ月治療が遅れた患者に比べてより少ない機能低下を示唆すると考えることができる。しかしながら、当該研究が3つのグループのみを含み、第2フェーズでは全患者が2mgのラサギリンで治療されたため、これは最終的に1mg用量について決定することはできない。全患者が研究の第2段階でラサギリンによる治療を受け、薬剤の症候性効果が最後の試験で推定上釣り合いが取れたため、最後の往診時に観察されるパフォーマンスの差はラサギリンの疾患緩和効果による可能性があるように思われる。これはTEMPO研究の主要な目的ではないため、これらの結果は更なる最終的臨床試験の根拠となった。
【0294】
PDの緩和に効果的な治療のために、疾患過程のできるだけ早期に神経保護が導入されなければならない。これは、通常PDの診断時までに50〜80%の黒質細胞の損失が既に生じているという理由による(Simpins N, Jankovic J. Neuroprotection in Parkinson Disease. Arch Intern Med, July 28, 2003, Vol 163: 1650-1654)。したがって、上記TEMPO研究と異なり、本研究は初期PD患者についてのみ焦点を合わせている。
【0295】
さらにTEMPO研究とは異なり、本研究は1100人の患者で開始することにより、疾患を緩和する効果の示唆を適切に検討し、確認するように設計され、早期および遅延開始群間でアルファ=0.5および15%の脱退(dropout)でベースラインから48−72週の平均変化の1.8UPDRSポイント以上の差を検出する87%の能力を提供する。研究デザインの部分で記載した通り、全UPDRSスコアに基づく主要階層的エンドポイントを設定し、疾患緩和効果を確認した。第1エンドポイントは、12−26週のラサギリン(1または2mg/日)とプラセボ群とで傾き評価(UPDRS単位/週の変化)を比較した。12週間後の各々のラサギリン群とプラセボとの間でUPDRSスコアの進行速度に差がある場合、ラサギリンの完全な症候性効果が確立されたとみなされたときにこれを決定する。疾患緩和剤は、プラセボと比較して進行速度を減少することが期待される。
【0296】
第2エンドポイントは、ラサギリン(1または2mg/日)の早期開始群と遅延開始群でベースラインと第72週との間の全UPDRSスコアの概算変化を比較した。早期および遅延開始群の患者が同じ治療を受けた場合において、フェーズIの終わりに早期開始群で利益が観察されたとき、これを決定する。UPDRSの傾きの非劣性について試験した第3エンドポイントは、早期および遅延開始群で48−72週を評価する。非劣性マージン(non-inferiority margin)の0.15UPDRS単位/日を事前に指定した。このエンドポイントは、群間の差が不変であり(疾患緩和効果により予想される通り)、且つ減少しない(症候性の薬剤により予想される通り)場合に決定するよう設計された。各々の用量について、3つ全てのエンドポイントは研究がポジティブであると示すに足りるものでなければならない。
【表1】

【0297】
以下のダイアグラムに本発明が示され、ここで研究的介入のプラセボ群(遅延開始)の患者への導入によっては、早期開始群の患者に観察されたのと同等の利益は提供されず、この差が数回の往診に亘り継続する。したがって、遅延開始群が早期開始群に追いつかず、進行速度の傾きは収束しなかった(即ち、線は平行なままであった)。この結果は、症候性の利益によっては直ちに説明できず、神経保護的または疾患緩和効果を有する研究的介入と一致する。
【表2】

【0298】

臨床試験−初期PD患者における疾患緩和効果を評価する。
【0299】
見込みのある多施設プラセボ対照二重盲検臨床試験(「ADAGIO」)を行い、ラサギリンが初期PD患者において疾患緩和効果を有することを示した。
【0300】
研究デザイン
無作為化遅延開始デザインを研究のために選択し、これは2つのフェーズからなる:フェーズI−36週の二重盲検プラセボ対照段階およびフェーズII−36週の二重盲検積極的治療段階。以下の図1に示す通り、研究への参加適格があるとわかった後、施設により階層化したブロックによる無作為化スキームに基づき、患者を1:1:1:1の比で以下の4つの治療群の1つに割り当てた。
【0301】
群1. フェーズIおよびフェーズIIで1mg/日のラサギリン;
群2. フェーズIおよびフェーズIIで2mg/日のラサギリン;
群3. フェーズIではプラセボ、その後、フェーズIIでは1mg/日のラサギリン;および
群4. フェーズIではプラセボ、その後、フェーズIIでは2mg/日のラサギリン。
【表3】

【0302】
したがって、「早期開始」の患者は、ラサギリン(1日1回、1または2mg)により72週の治療を受け、「遅延開始」の患者は36週のプラセボの後、36週のラサギリン(1日1回、1または2mg)による治療を受ける。フェーズIの36週の期間、即ちプラセボ対照の期間は、積極的治療とプラセボとの差を確立するのに十分な長さであると見積もられ、平均的な患者が症候性治療を必要とすることなくプラセボのままであることのできる期間である。いずれかの治療群の患者が、試験のプラセボ対照段階の間に更なる抗パーキンソン薬物治療を必要とした場合、患者は直接的にフェーズIIに進むことができる。フェーズIIになると、更なる抗PD治療は許容されない。この段階で患者が更なる薬物治療を必要とする場合、研究を打ち切る。
【0303】
フェーズI:二重盲検プラセボ対照
上記無作為化スキームに基づき、患者はこの段階の間、36週間、1mg/日または2mg/日のラサギリンまたはプラセボ治療を受けた。
【0304】
フェーズII:二重盲検積極的治療
上記無作為化スキームに基づき、全患者は最初の割り当てにしたがって、積極的治療(1mgまたは2mgのラサギリンのいずれか)を受けた。したがって、フェーズIに1mgのラサギリン治療を受けた患者はフェーズIIに1mgの治療を受け続け、フェーズIに2mgのラサギリン治療を受けた患者はフェーズIIに2mgの治療を受け続け、フェーズIにプラセボ治療を受けた患者はフェーズIIに1mgまたは2mgラサギリンのいずれかの治療を受けた。これら後者の患者は、それぞれ「遅延1mg」および「遅延2mg」患者と分類され、研究の全期間に亘って積極的治療を受けた患者−早期開始患者とは区別される。
【0305】
概要
A.プロトコール番号
TVP 1012/500 (ADAGIO)
B.プロトコールタイトル
ラサギリンを初期パーキンソン病患者における疾患緩和治療として評価する多施設二重盲検無作為開始プラセボ対照並列群研究
C.臨床試験フェーズ
III B
D.治験の製品(IMP)および用量
1mgまたは2mgのラサギリンまたは対応するプラセボ1錠。
【0306】
E.研究期間
スクリーニング:約4週間までの研究の薬剤治療:36週のプラセボ対照段階の後、36週の積極的治療段階。
【0307】
F.研究対象集団
いずれかの抗PD治療を必要とするほどには障害を発症していない特発性PDを有するごく初期段階の患者。
【0308】
G.研究対象
初期PDにおいて疾患緩和治療としてラサギリンを評価すること。
【0309】
H.研究デザイン
この研究は、2つのフェーズから構成される:フェーズI−36週の二重盲検プラセボ対照段階、およびフェーズII−36週の二重盲検積極的治療段階。研究への参加適格を有するとわかった後、施設により階層化したブロックによる無作為化スキームに基づき、患者を1:1:1:1の比で4つの治療群のうちの1つに割り当てた:
1.フェーズIおよびフェーズIIで1mg/日のラサギリン(1mgの早期開始)
2.フェーズIおよびフェーズIIで2mg/日のラサギリン(2mgの早期開始)
3.フェーズIのプラセボの後、フェーズIIで1mg/日のラサギリン(1mgの遅延開始)
4.フェーズIのプラセボの後、フェーズIIで2mg/日のラサギリン(2mgの遅延開始)
I.フェーズI:二重盲検プラセボ対照
上記無作為化スキームに基づき、患者はこのフェーズの36週間に亘って1mg/日もしくは2mg/日のラサギリンまたはプラセボ治療を受けた。
【0310】
プラセボ対照フェーズのいずれかの段階で検査員が、患者が更なる抗PD治療を必要とすると決定する場合、患者はフェーズIIの研究を継続するだろう。検査員はアンケートによる援助を受けるが、患者の更なる抗PD治療の必要性という点について慎重に考慮するだろう。診療所での定期的な往診はベースラインおよび週4、12、24および36週で行われるだろう。したがって、このフェーズでは全部で5回の定期的な往診があるだろう。安全性の理由または他のいずれかの理由のため、いずれかの時期に予定外の往診を行い、患者の更なる抗PD治療の必要を評価してもよい。
【0311】
II.フェーズII:二重盲検積極的治療
最初の無作為な割り当てに従い、全患者は上記無作為化スキームに基づき、このフェーズの36週間積極的治療(1日あたり1mgまたは2mgいずれかのラサギリン)を受けるだろう。したがって、フェーズIで1mgのラサギリン治療を受けた患者はフェーズで1mgの治療を受け続け、フェーズIで2mgのラサギリン治療を受けた患者はフェーズIIで2mgの治療を受け続け、フェーズIでプラセボ治療を受けた患者はフェーズIIで1mgまたは2mgのラサギリン治療を受けるだろう。研究は盲式のまま続行されるだろう。更なる抗PD治療はこのフェーズでは許容されない。これは、全36週間のフェーズIを終えた後フェーズIIに入る患者および、抗PD治療の必要性のためにフェーズIからフェーズIIに切り替える患者の両方に適用される。検査員が、フェーズIIで患者が更なる抗PD治療を必要とすると決定する場合、患者は尚早に研究から退く。検査員は、アンケートにより援助されるが、患者の更なる抗PD治療の必要性の点については慎重に考慮されるだろう。予定された診療所での往診は、6週間ごとに行われるだろう。したがって、このフェーズでは全部で6回の往診−42、48、54、60、66および72週−があるだろう。安全性または他のいずれかの理由のために、予定外の往診をいずれかの時期に行い、患者の更なる抗PD治療の必要性を評価してもよい。
【0312】
I.患者数
130つの研究場所で約1100人の無作為化患者。
J.包含/除外基準
I.包含基準:
患者は参加適格のための包含基準の全てを満たさなければならない:
1.その診断が少なくとも2つの主要な徴候(安静時の振戦、動作緩慢、硬直)の存在によりスクリーニングで確認され、他にいずれの既知のまたは疑わしい原因も有さない特発性パーキンソン病の男性および女性。振戦がない場合、患者は片側性の発症および持続性の非対称性を有さなければならない。
2.診断書時点から11/2年未満の初期特発性PDの診断を有する患者。
3.試験登録の期間の臨床症状がいずれの抗PD治療も必要とせず、検査員の判断による限り、次の9ヶ月も必要としないであろう患者。
4.インフォームドコンセントを与える意思があり、且つ与えることができる。
II.排除基準:
以下のいずれかの患者は研究から排除されるだろう:
1.30歳未満または80歳を超える患者。
【0313】
2.姿勢反射を喪失した患者。
【0314】
3.いずれかの肢でUPDRS振戦スコア3以上を有する患者。
【0315】
4.スクリーニングでHoehn−Yahr段階のIII以上を有する患者。
【0316】
5.歩行中、すくみを有する患者。
【0317】
6.パーキンソン症の原因として、PDを除外する傾向のある以下のいずれかの特徴を有する患者:
a.パーキンソン症の特徴の段階的進行を伴う度重なる発作(stroke)の病歴
b.度重なる頭部障害の病歴または明確な脳炎の病歴
c.持続的緩解
d.核上注視麻痺
e.小脳徴候
f.早期重篤自律神経性併発
g.Babinski症候
h.脳腫瘍または交通性水頭症の存在
i.MPTP曝露
j.注視発症
7.ラサギリンまたはセレギリンのいずれかを事前に使用した患者。
【0318】
8.ベースラインより前のいずれかの時間の慢性の(3週間を超える)基準についてのいずれか他の抗PD薬物治療(抗コリン作用薬を含む)を有する患者。
【0319】
9.ベースラインの前3ヶ月間、3週間未満いずれかの他の抗PD薬物治療を使用した患者(L−Dopa試験の一部としてのL−Dopaの単回投与を含まない)。
【0320】
10.ベースラインに先立つ3ヶ月間、3週間未満いずれかの他の抗PD薬物治療を使用し、患者を研究に参加させるために抗PD薬物治療を意図的に中止した患者。
【0321】
11.検査員の判断に基づいた、安全且つ完全な研究参加を妨げるかもしれない臨床的に有意な、不安定な医学的な、または外科的な条件を有する患者。前記条件は、病歴、身体検査、実験室試験、胸部X線またはECGにより決定される心血管系、血管系、肺性、肝障害(チャイルド・ピュースコア>5)、腎性、もしくは代謝系障害または悪性疾患を含む。
【0322】
12.検査員の意見で、患者の医療記録に従うかまたはベースラインより前の週の家庭血圧の記録に観察される通り、血圧が十分に制御されない高血圧性患者。
【0323】
13.スクリーニング皮膚試験に基づき黒色腫と診断された患者または黒色腫の病歴を有する患者。生検を受けていない障害の疑いのある患者。
【0324】
14.MMSEスコア<26により定義される有意な認識機能障害を有する患者。
【0325】
15.大鬱病を含む臨床的に有意な精神医学的疾患を有する患者[Beck鬱病目録(短い形式)>15]。
【0326】
16.過去2年以内にアルコールまたは薬物乱用の病歴を有する患者。
【0327】
17.ベースラインより前、60日以内にいずれかの実験的薬物治療を受けた患者。
【0328】
18.ベースラインより前、120日以内にコエンザイムQ10を(1日あたりの用量>300mgで)用いた患者。
【0329】
19.交感神経刺激薬(市販の治療薬−経鼻または経口を含む)、デキストロメトルファン、ペチジンまたはセイヨウオトギリソウをベースラインの7日前以内に用いた患者。
【0330】
20.選択的セロトニン再取り込み阻害薬、三環系および四環系抗うつ薬(以下を除く:単一薬物治療として用いるアミトリプチリン<50mg/日、またはトラゾドン<100mg/日、またはシタロプラム<20mg/日、またはセルトラリン<100mg/日、またはパロキセチン<30mg/日、またはエスシタロプラム<10mg/日)を含む抗うつ剤を用いた患者。
【0331】
21.シプロフロキサシン、効能のあるCYP1A2インヒビターをベースライン前7日以内に用いた患者。
【0332】
22.ベースライン前3ヶ月以内にレセルピンまたはメチルドーパを含むMAOインヒビターを用いるか、またはベースライン前6ヶ月以内に中心的ドーパミンアンタゴニスト活性による制吐薬または抗精神病薬の投与による治療を用いた患者。
【0333】
23.閉経後でなく、外科的に不妊化していない、または適切な避妊[経口避妊薬、IUDまたは長期作用性の注射可能形態の避妊;遮断法(即ち、コンドーム)単独では不十分である]を用いていない女性。スクリーニングにおいてネガティブな妊娠検査(セラムベータHCG)を持たない妊娠可能な女性。看護婦。
【0334】
K.結果判定
I.主要有効性エンドポイント
全UPDRSスコアのベースラインからの変化。
II.第2有効性エンドポイント
全UPDRSスコアのプラセボ対照段階における、ベースラインから最終観察値(LOV)への変化。
III.更なる有効性エンドポイント
1.更なる抗PD治療を必要とする患者の数(%)
2.更なる抗PD治療を必要とする期間
3.修正されたUPDRSのパートIのプラセボ対照段階における、ベースラインからLOVへの変化(バージョン4)
IV.サブ研究
1.パーキンソン疲労スケールのプラセボ対照段階におけるベースラインからLOVへの変化
2.患者報告結果のベースラインからの変化(米国のみ)
3.遺伝薬理学分析のための血液試料は、ベースラインの全患者から採取される。ベースラインで行われなければ、他のいずれかの往診で行ってよい。このサブ研究への参加は、別々のインフォームドコンセントのフォームでの任意保留のIRB/ECおよび患者の承諾である。
IV.安全性および許容性エンドポイント
安全性および許容性は、以下を参照して評価する:
1.許容性
a.研究を中断する患者の数(%)
b.AEのため研究を中断する患者の数(%)
2.安全性基準
a.AEの発生
b.安全性の実験室値
c.生命徴候
d.家庭血圧モニタリング
e.ECG
f.身体検査および神経学的検査
g.皮膚検査
【0335】
L.統計学的方法
I.試料サイズの論理的証拠
積極的治療段階に参加する全部で935人の患者(無作為化した約1100人の患者の15%が脱退)により、以下が提供されるだろう:
2つの治療群間の積極的治療段階において全UPDRSのベースラインからの変化での平均1.8UPDRSポイント以上の統計学的有意差の87%の検出能力。
【0336】
ラサギリン1tng(2mg)の遅延開始群と比較して、ラサギリン1mg(2mg)の早期開始群の傾きの非劣性を検出する99%の検出能力(多重比較の調整のため2.5%の有意レベル、および週あたりの0.15UPDRSポイントの非劣性閾値)。
II.主要有効性エンドポイント
主要有効性エンドポイント
この試験のための主要有効性エンドポイントは、全UPDRSスコアにおけるベースラインからの変化だろう。
III.主要統計分析および多重比較調整
主要有効性分析は階層的な統計的仮説試験からなり、これは主要有効性エンドポイントにも適用されるだろう。
治療群間の多重比較のためのHochberg Step−Up Bonferroni法は(2つの比較:ラサギリン1mgと2mgについて遅延開始軍と比較した早期開始群)、3つの仮説を試験するために階層的方法と組み合わされ、これは以下の手順に従い、実験ごとのタイプI誤差5%を維持するために用いられるだろう:
早期開始群と遅延開始群とを比較する第1の帰無仮説が、アルファレベル5%で両方のラサギリン用量について拒絶される場合、アルファレベルへの調整は行われず、両方の比較は統計学的に有意であることが示されるだろう。
【0337】
第1帰無仮説がアルファレベル5%で用量のうちの1つについて拒絶される場合、5%/2=2.5%のアルファレベルを用いてその他の用量が試験されるだろう。
【0338】
各々の統計学的に有意な用量は、仮説#1の試験により決定される通り、アルファレベル5%および上記仮説#1について記載されるHochberg Step−Up Bonferroni法を用いる仮説#2についてさらに試験されるだろう。
【0339】
各々の統計学的に有意な用量は、仮説#2の試験により決定される通り、アルファレベル5%および上記仮説#1について記載されるHochberg Step−Up Bonferroni法を用いる仮説#3についてさらに試験されるだろう。
【0340】
以下は、主要有効性分析の3つの仮説および統計学的モデルである:
1.仮説#1:PC段階でのプラセボに対するラサギリンの傾きの優位性
:傾き(ラサギリン)−傾き(プラセボ)=0
:傾き(ラサギリン)−傾き(プラセボ)≠0
ここで、傾きは1週間あたりの全UPDRSのベースラインからの変化のモデル評価である。
【0341】
この分析において、試験のPC段階におけるベースライン後の利用可能な観察の全てが分析されるだろう(ITTデータ分析セット、12、24および36週)。
【0342】
ラサギリン1mgおよび2mgについてのプラセボ群は、1つのプラセボ群と組み合わされるだろう。
【0343】
統計学的モデルは、ランダムな切片および傾きを有する反復測定混合線形モデル(Repeated Measures Mixed Linear Model)だろう(SAS(登録商標) MIXED procedure with RANDOM sub-command)。当該モデルは以下の固定効果を含む:治療群、治療相互作用による試験における連続する週、施設およびベースライン全UPDRSスコア。個々の患者の切片および週の効果もまた、ランダム効果として当該モデルに含まれるだろう。切片および傾き評価の間の非構造化共分散マトリクスが用いられるだろう。
【0344】
2つの比較は、当該モデルに由来するだろう:ラサギリン1mg群のプラセボ群の傾きとの差およびラサギリン2mg群のプラセボ群の傾きとの差。
【0345】
2.仮説#2:72週での早期開始の遅延開始に対する優位性
=LSM(72週の早期開始群)−LSM(72週の遅延開始群)=0
=LSM(72週の早期開始群)−LSM(72週の遅延開始群)≠0
ここでLSMは最小自乗平均である。
【0346】
この分析において、PC段階の少なくとも24週間の治療を含む積極的段階に入る全患者の観察および48、54、60、66または72週からの積極的治療段階の利用可能な少なくとも1つの全UPDRS測定が分析されるだろう(ACTEデータ分析セット)。
【0347】
統計学的モデルは、反復測定モデル(SAS(登録商標) MIXED procedure with REPEATED subcommand)だろう。当該モデルは、以下の固定効果を含むだろう:治療的相互作用による試験におけるカテゴリー週、施設、およびベースライン全UPDRSスコア。患者内の反復観察のための非構造化共分散マトリクスが用いられるだろう。当該モデルが収束しない場合、より少ないパラメータを有するより簡便な共分散構造、例えば異種自己回帰(1)(ARH(1))または自己回帰(1)(AR(1))が用いられるだろう。
【0348】
全UPDRSのベースラインからの変化の第72週でのLSMが、ラサギリン1mg早期開始群とラサギリン1mg遅延開始群との間、ならびにラサギリン2mg早期開始群とラサギリン2mg遅延開始群との間で比較されるだろう。
【0349】
3.仮説#3:積極的段階における遅延開始に対する早期開始の傾きの非劣性
:傾き(早期開始群)−傾き(遅延開始群)>0.15
:傾き(早期開始群)−傾き(遅延開始群)≦0.15
この分析において、PC段階で少なくとも24週間の治療を含む積極的段階に入る全患者の観察、および48、54、60、66または72週からの積極的治療の利用可能な少なくとも1つの全UPDRS測定が分析されるだろう(ACTEデータ分析セット)。
【0350】
統計学的モデルは、ランダムな切片および傾きを有する反復測定混合線形モデルだろう(SAS(登録商標) MIXED procedure with RANDOM sub-command)。当該モデルは、以下の固定効果を含む:治療群、治療的相互作用による試験中の連続的な週、施設およびベースライン全UPDRSスコア。個々の患者の切片および週の効果は、ランダム効果としてモデル中に含まれてもよい。切片および傾き評価の間の非構造化共分散マトリクスが用いられるだろう。
【0351】
治療群間での傾きの差異に関する非劣性試験が行われるだろう。
【0352】
片側の95%信頼区間(CI)が、ラサギリン1mg早期開始群とラサギリン1mg遅延開始群の傾きの間、およびラサギリン2mg早期開始群とラサギリン2mg遅延開始ラサギリン群の傾きの間の差について計算されるだろう。傾き間での片側95%CIの上限値が1週間あたり0.15UPDRSポイントの非劣性マージンに交差しない場合、早期開始群の傾きの遅延開始群の傾きに対する劣性帰無仮説は拒絶されるだろう。
【0353】
IV.盲式分散評価
サンプルサイズ計算に用いられた分散評価が適切であるか否かを調べるために、患者の1/3が試験を終えた後、分散幅の盲式評価が行われるだろう。早期の脱退率の盲式評価は、この時点でも行われるだろう。分散評価が予測されたものよりも10%以上大きいか、または早期脱退率が20%より高い場合、スポンサーはプロトコールの修正により研究を拡大してもよい。
【0354】
V.第2有効性エンドポイント
各々の統計学的に有意な用量は、主要分析により決定されるが、これは多重比較のため階層的な方法を用いてさらに試験され、プラセボ対照段階におけるベースラインからLOVへの全UPDRS変化について遅延開始ラサギリン群と早期開始とを比較するだろう。
【0355】
患者の選択
いずれかの性別および人種の未治療PD患者が、この研究に含まれる。診断は2つの主要な症候(安静時の振戦、動作緩慢、硬直)を有することに基づき、安静時振戦が存在しない場合、患者は持続性の非対称性により片側性発症を有さなければならない。特殊または二次患者は除外された。他の登録基準は、診断時から18ヶ月未満の疾患継続期間および、検査員が判断する限りで、患者が次の9ヶ月治療を必要としないという決定を含んでいた。いずれかの抗パーキンソン症薬物治療によるベースライン前の>3週間の治療を有する患者は、研究に参加適格があった。120日前以内に、ラサギリン、セレギリンまたはコエンザイムQ10(1日>300mgの用量)の事前使用は禁止された。
【0356】
診断誤差は、特発性PDを持たない患者を含めることにつながるかもしれないという初期PD集団における問題であったため、包含および排除基準の厳密なセットを規定した。
【0357】
包含基準
患者は、参加するための包含基準の全てを満たさなければならない:
1.少なくとも2つの主要な症候(安静時の振戦、動作緩慢、硬直)の存在により診断がスクリーニングで確認され、他のいずれかの既知または疑わしいパーキンソン症の原因を持たない特発性のパーキンソン病を有する男性および女性。振戦がない場合、患者は片側性の発症および持続性の非対象性を有さなければならない。
【0358】
2.診断書の時期から1年未満の初期特発性PDの診断を有する患者。
【0359】
3.研究登録の時点での臨床的条件がいずれかの抗PD治療を必要とせず、検査員が判断する限り、次の9ヶ月いずれの抗PD治療も必要としない患者。
【0360】
4.インフォームドコンセントを提供する意図があり、且つ提供することができる。
【0361】
排除基準
以下のいずれかが患者を研究から排除するだろう:
1.30歳未満または80歳を超える患者。
【0362】
2.姿勢反射を喪失した患者。
【0363】
3.いずれかの肢でUPDRS振戦スコア3以上を有する患者。
【0364】
4.スクリーニングでHoehn−Yahr段階のIII以上を有する患者。
【0365】
5.歩行中、すくみを有する患者。
【0366】
6.パーキンソン症の原因として、PDを除外する傾向のある以下のいずれかの特徴を有する患者:
a.パーキンソン症の特徴の段階的進行を伴う度重なる発作(stroke)の病歴
b.度重なる頭部障害の病歴または明確な脳炎の病歴
c.持続的緩解
d.核上注視麻痺
e.小脳徴候
f.早期重篤自律神経性併発
g.Babinski症候
h.脳腫瘍または交通性水頭症の存在
i.MPTP曝露
j.注視発症
7.ラサギリンまたはセレギリンのいずれかを事前に使用した患者。
【0367】
8.ラサギリンまたはセレギリンのいずれかを事前に使用した患者。
【0368】
9.ベースラインより前のいずれかの時間の慢性の(3週間を超える)基準についてのいずれか他の抗PD薬物治療(抗コリン作用薬を含む)を有する患者。
【0369】
10.ベースライン前の3ヶ月間、3週間未満いずれかの他の抗PD薬物治療を使用した患者(L−Dopa試験の一部としてのL−Dopaの単回投与を含まない)。
【0370】
11.ベースラインに先立つ3ヶ月間、3週間未満いずれかの他の抗PD薬物治療を使用し、患者を研究に参加させるために抗PD薬物治療を意図的に中止した患者。
【0371】
12.検査員の判断に基づいた、安全且つ完全な研究参加を妨げるかもしれない臨床的に有意な、不安定な医学的な、または外科的な条件を有する患者。前記条件は、病歴、身体検査、実験室試験、胸部X線またはECGにより決定される心血管系、血管系、肺性、肝障害(チャイルド・ピュースコア>5)、腎性、もしくは代謝系障害または悪性疾患を含む。
【0372】
12.検査員の意見で、患者の医療記録に従うかまたはベースラインより前の週の家庭血圧の記録に観察される通り、血圧が十分に制御されない高血圧性患者。
【0373】
13.スクリーニング皮膚試験に基づき黒色腫と診断された患者または黒色腫の病歴を有する患者。生検を受けていない障害の疑いのある患者。
【0374】
14.MMSEスコア<26により定義される有意な認識機能障害を有する患者。
【0375】
15.大鬱病を含む臨床的に有意な精神医学的疾患を有する患者[Beck鬱病目録(短い形式)>15]。
【0376】
16.過去2年以内にアルコールまたは薬物乱用の病歴を有する患者。
【0377】
17.ベースラインより前60日以内にいずれかの実験的薬物治療を受けた患者。
【0378】
18.ベースラインより前120日以内にコエンザイムQ10(1日あたりの用量>300mgで)を用いた患者。
【0379】
19.交感神経刺激薬(市販の治療薬−経鼻または経口を含む)、デキストロメトルファン、ペチジンまたはセイヨウオトギリソウをベースラインの7日前以内に用いた患者。
【0380】
20.選択的セロトニン再取り込み阻害薬、三環系および四環系抗うつ薬(以下を除く:単一薬物治療として用いるアミトリプチリン<50mg/日、またはトラゾドン<100mg/日、またはシタロプラム<20mg/日、またはセルトラリン<100mg/日、またはパロキセチン<30mg/日、またはエスシタロプラム<10mg/日)を含む抗うつ剤を用いた患者。
【0381】
21.シプロフロキサシン、効能のあるCYP1A2インヒビターをベースラインの前7日以内に用いた患者。
【0382】
22.ベースラインの前3ヶ月以内にレセルピンまたはメチルドーパを含むMAOインヒビターを用いるか、またはベースラインの前6ヶ月以内に中心的ドーパミンアンタゴニスト活性による制吐薬または抗精神病薬の投与による治療を用いた患者。
【0383】
23.閉経後でなく、外科的に不妊化していない、または適切な避妊[経口避妊薬、IUDまたは長期作用性の注射可能形態の避妊;遮断法(即ち、コンドーム)単独では不十分である]を用いていない女性。スクリーニングにおいてネガティブな妊娠検査(セラムベータHCG)を持たない妊娠可能な女性。
【0384】
合計1176人の患者を治療群に無作為化した。ベースラインの個体群統計を表1に示す。患者の平均年齢は62.2±9.6歳であり、男性718人(61.1%)および女性458人(38.9%)であり、診断からの平均期間は4.5±4.6月であり、平均全UPDRSスコアは20.4±8.5であった。プラセボ段階では85の中止があった(7%)。
【表4】

【0385】
研究評価
往診は図1に示す時点で行う。第4週以外の各々の往診でUPDRS評価を行う。各々の往診で行われる他の評価は、クオリティオブライフ、有害事象報告および標準実験室評価の基準を含んでいた。全ての研究往診時、同じ検査員により患者の全UPDRSを評価した。
【0386】
安全性および許容性
研究を中断する患者の数(%)と、有害事象(AE)により研究を中断する患者の数により、許容性を評価する。安全性評価は、有害事象の発生率、実験室値、生命徴候、家庭血圧モニタリング、ECG、資格のある皮膚科医による身体的および神経学的検査を含む。
【0387】
結果および考察
1.12−36週のプラセボ対照(PC)段階における傾きの比較
a)4つの研究部門に無作為化を行った
b)群はベースラインで比較可能であった
c)SAPに従って1つのプラセボ部門に基づき分析を行った
d)傾きの分離分析:
i)12、24および36週に亘って事前に決めたモデルは線形性を示した
ii)線形性基準を満たさない
iii)代替の分類モデル結果を用いて結果を確認した。
【0388】
図9は、研究のフェーズIの12、24および36週の各々の往診における、ベースラインからの全UPDRSスコアの変化を示す。
【0389】
図10Aおよび10Bは、研究のフェーズIの12〜36週の傾きの比較を示す。
【0390】
以下の表2は、プラセボ、1mgおよび2mgの群についてのPCフェーズ(12〜36週)における傾きを比較する。
【表5】

【0391】
2.PC段階の第36週での全UPDRSスコアのベースラインから最終観察値(LOV)までの変化
図11Aおよび11Bは、プラセボ、1mgおよび2mgの群について、第36週での全UPDRSのLOVへの変化を示す。
【0392】
3.第72週(積極的段階の終わり)での比較
2つの用量は異なる挙動を示したので、遅延開始と早期開始との比較は1mgと2mgとで別々に行った。
【0393】
図12は、1mg遅延開始および1mg早期開始群について、12、24、36、42、28、54、60、66および72週での全UPDRSスコアの変化を示す。
【0394】
図13は、2mg遅延開始および2mg早期開始群について、12、24、36、42、48、54、60、66および72週での全UPDRSスコアの変化を示す。
【0395】
図14Aおよび14Bは、1mg遅延開始、1mg早期開始群、2mg遅延開始群、および2mg早期開始群について、第72週での調整平均を示す。
【0396】
以下の表3は、1mg遅延開始、1mg早期開始群、2mg遅延開始および2mg早期開始群について、第72週の比較を示す。
【表6】

【0397】
4.積極的段階(48〜72週)における傾きの非劣性
図15Aおよび15Bは、1mg遅延開始、1mg早期開始群、2mg遅延開始および2mg早期開始群についての48−72週の傾きの概算を示す。
【0398】
以下の表4は、1mg遅延開始、1mg早期開始群、2mg遅延開始および2mg早期開始群についての48−72週の積極的段階における傾きの非劣性を示す。
【表7】

【0399】
5.更なる有効性エンドポイント分析
図16Aおよび16Bは、プラセボ、1mgおよび2mgの群について、PD段階において更なる抗PD治療を必要とした患者の%を示す。
【0400】
図17は、プラセボ、1mgおよび2mgの群について、PD段階において更なる抗PD治療の期間を示す。
【0401】
図18Aおよび18Bは、プラセボ、1mgおよび2mgの群について、PC段階のUPDRSバージョン4(日常生活の非運動性側面の経験)のパートIにおける、ベースラインから最終観察値(「LOV」)への変化の調整平均を示す。
【0402】
図19Aおよび19Bは、プラセボ、1mgおよび2mgの群について、PC段階のパーキンソン疲労スケール(PFS)のベースラインからLOVへの変化の調整平均を示す。
【0403】
以下の表5は、プラセボ、1mgおよび2mgの群について、PC段階における更なる抗PC治療の期間を比較する。
【表8】

【0404】
上記結果から以下のことが示される:
a)プラセボに対してラサギリン1mgおよび2mgの両方が、ADAGIOプラセボ対照(PC)段階においてTEMPOで観察される症候性効果を再現した;
b)1mgの治療に関する統計的分析計画において事前に決められた通り、FDAの要件に従って、疾患緩和効果が立証された;
c)疾患緩和効果は2mgの治療については明らかではなかった;
d)PC段階の終わりには、以下についてラサギリン1mgおよび2mgの薬効も立証された:
i)更なる抗PD治療の必要性
ii)パーキンソン疲労スケール
iii)UPDRSバージョン4のパートI(1mgのみ)
【0405】
ここで記載される結果もまた、他の初期PD患者と比較した場合、初期PD患者におけるラサギリンによる治療がより遅い進行速度を呈することを示す。現在の研究におけるポジティブな結果は、ラサギリンによる早期治療が以降の薬物の開始によっては得られず、且つ少なくとも18ヶ月持続する利益を提供することを証明した。
【0406】
ここに記載される結果はさらに、初期PD患者へのラサギリン投与は、PDの進行速度を遅らせることを示す。進行速度は、0.139スコア(全UPDRSの変化)/週から0.066スコア(全UPDRSの変化)/週へ改善した。
【0407】
ここでの結果もまた、ラサギリンを初期PD患者に投与することにより、遅延治療を受ける初期PD患者と比較して、全UPDRSスコアの変化の初期差が維持されることを示す。全UPDRSスコアの変化の差は、第48週および第72週の間で1.7スコアに維持される。
【0408】
ここでの結果もまた、初期PD患者へのラサギリン投与により第72週での全UPDRSの変化が減少することを示す。第72週での全UPDRSの変化は2.8であり、これは全UPDRSスコアの63.3%の減少に相当する。
【0409】
したがって、ここでの結果は、初期PD患者へのラサギリンの投与は疾患緩和効果を立証すること示す。
【0410】
6.2mg用量の結果の分析
ラサギリン1mg/日の早期開始は、主要エンドポイント分析の全てのエンドポイントを充足する:第12週および36週の間でプラセボよりも小さいUPDRSポイント/週の悪化(早期開始=0.09±0.02、プラセボ=0.14±0.01;P=0.013);ベースラインと第72週の間での遅延開始よりも少ないUPDRSスコアの悪化(早期開始=2.82±0.53、遅延開始=4.52±0.56;P=0.025)、および第48週および72週の間のUPDRSポイント/週の遅延開始に対する悪化の非劣性(早期開始0.085±0.02、遅延開始=0.085±0.02;P<0.001)。ラサギリン2mg/日の早期開始は、ベースラインと第72週の間でUPDRSスコアの悪化が遅延開始よりも小さくなかったため(早期開始=3.47±0.5、遅延開始=3.11±0.5;P=0.06)、全てのエンドポイントを充足しなかった。
【0411】
主要な分析は、全UPDRSスコアに基づき、3つの階層的なエンドポイントから構成された。第1エンドポイントは、ラサギリン(1または2mg/日)とプラセボ群とで12−36週の傾きの概算(UPDRS単位/週)を比較した。これは、完全なラサギリンの症候性効果が確立された12週間後、各々のラサギリン群とプラセボ群との間に進行速度の差があるかどうかを決定する。疾患緩和剤は、プラセボと比較して進行速度を遅らせることが期待されるだろう。第2エンドポイントは、ラサギリン(1または2mg/日)早期開始と遅延開始群との間でベースラインと第72週との間の全UPDRSスコアの概算変化を比較した。これは、早期および遅延開始群が同じ治療を受けた場合、フェーズIの終わりに早期開始群において観察される利益が研究の終わりにまだ存在するかどうかを決定する。第3エンドポイントは、早期および遅延開始群において48−72週の間でUPDRSの傾きの非劣性について試験した。0.15UPDRS単位/週の非劣性マージンを事前に規定した。このエンドポイントは、群間での差異が持続的なものであり(疾患緩和効果により予想される通り)、減少しない(症候性剤により予想される通り)かどうかを決定するようにデザインされている。各々の用量については、3つのエンドポイント全てが、研究がポジティブであると示すのに十分でなければならない。
【0412】
第2エンドポイントは、フェーズIでのベースラインと最終観察値との間の全UPDRSの変化である。サンプルサイズはTEMPO研究に基づき、1100人の患者が87%の検出能力を提供し、ベースラインから48〜72週の平均変化においてアルファ=0.15および15%の脱退を伴う、早期および遅延開始群間での≧1.8UPDRSの差を検出することを示した。
【0413】
第1主要エンドポイントについては、ベースラインおよび第12週以降の評価を有する全患者が分析に含められた。第2および第3の主要エンドポイントについて、少なくとも24週間のフェーズIの治療および48週以降の評価を有する全患者が含められた。安全性評価には全無作為患者を含めた。
【0414】
共分散の混合モデル反復測定分析により統計学的分析を行い、これは以下の固定効果を含んでいた:治療群、試験の週、治療的相互作用による週、施設、およびベースライン全UPDRSスコア。組合せたプラセボ群を用いて第1エンドポイントを分析した。エンドポイント2および3については、異なる共変量効果が2つの用量間で観察されたため、当該モデルは各々の用量について別々にフィットさせた。実験ごとの0.5のタイプI誤差を維持するため、階層的な方法を用いて、各々の用量内で多数の主要エンドポイントを計上し、Hochberg step−up Bonferroniを用いて試験する2つの用量を計上した。これは、各々の用量について別々に試験した。多数の帰属戦略を含む種々の感受性および支持的分析を用い、結果を確認し、失ったデータを処理した。第2エンドポイントについては、ANCOVAを用い、フェーズIのベースラインと最終観察値の全UPDRSスコアの調整平均変化を評価した。
【0415】
症候性効果がこの非常に緩徐な患者のコホートにおける疾患緩和効果をマスクする可能性に対処するために、高い(上部四分位数)ベースライン全UPDRSスコアを有する患者において事後hoc(post-hoc)サブ群分析を行った。
【0416】
1164人(99%)の患者を第1主要エンドポイント分析に含め、996人(85%)を第2および第3主要エンドポイント分析に含めた。治療群間に個体群統計の有意な差異はなかった。診断時からの平均疾患期間は、4.5ヶ月であり、平均全UPDRSは20.4であった。各々の用量についての主要分析および第2エンドポイントを含む3つのエンドポイントの結果を以下の表6に示す。
【表9】

【0417】
ラサギリン1mg/日
表6に示す通り、12−36週の傾きの概算はラサギリン対プラセボについてより遅いUPDRS悪化速度を示す(−0.05±0.02;P=0.01)。早期開始群は、ベースラインと第72週との間の平均全UPDRSスコアに、遅延開始群よりも少ない悪化を有していた(−1.68±0.75、P=0.025)。早期および遅延開始群について48−72週の間には傾きの概算の非劣性が存在した(0.00;P<0.001;90%CI:[−0.04,0.04])。したがって、ラサギリン1mg/日は3つ全ての分析エンドポイントを充足した。第1主要エンドポイントについてのモデルはUPDRS単位/週における線形性を仮定し;結果を代替の分類モデルにより確認した。第2主要エンドポイントの結果を、事前に決定した数種の感受性および確認分析により確認した。
【0418】
以下の表7に示す通り、第2エンドポイント(フェーズIでのベースラインと最終観察値との間の全UPDRSスコアの変化)について、ラサギリン1mg/日はプラセボよりも優れていた(−3.01±0.43;P<0.001)。
【表10】

【0419】
ラサギリン2mg/日
表6にも示す通り、12週と36週との間の傾きの概算は、プラセボ群と比較したラサギリンのUPDRSスコアのより少ない悪化を示す(−0.07±0.02;P<0.001)。しかしながら、ベースラインと第72週との間での全UPDRSスコアの悪化は、早期および遅延開始群との間で有意に異なるものではなかった(0.36±0.68;P=0.60)。早期および遅延開始群との間に48−72週の間の傾きの概算の非劣性が存在した(0.03;P<0.001;90%CI:[−0.01,0.06])。したがって、ラサギリン2mg/日は、主要分析の3つのエンドポイント全てを充足せず、この用量について結果はネガティブであると考えられる。第2エンドポイントについては、ラサギリンはプラセボよりも優れていた(−3.15±0.43;P<0.001)。
【0420】
事後hocサブ群分析
ラサギリン2mg/日の症候性効果は、非常に緩徐なUPDRSスコアを有する患者において疾患緩和利益をマスクするかもしれないという可能性に対処するため、主要および第2分析をベースライン全UPDRSスコア(>25.5)の上位四分位数の患者について行った。ラサギリン2mg/日の治療を受けた患者について、早期開始および遅延開始群のベースラインと第72週の間のUPDRS悪化の差は、他の3つの四分位数に対する上位四分位数のベースラインUPDRSスコアを有する患者について有意に異なっていた(P=0.03)。この相互作用は、これらのサブ群が別々に考慮されてもよいことを示唆する。
【表11】

【表12】

【0421】
両方の用量の上位四分位数の患者は、表8に示す通り、3つの主要エンドポイント全てを充足する。ラサギリン2mg/日の上位四分位数のサブ群については、ベースラインと第72週との間で早期開始患者が遅延開始患者よりも悪化が少なかった(−3.63±1.72;P=0.038;N=114)。ラサギリン1mg/日により治療される上位四分位数の早期開始患者もまた、ベースラインと第72週との間で遅延開始患者と比較して全UPDRSの悪化はより少なかった(−3.40±1.66;P=0.044,N=105)。表9に示す通り、ベースラインUPDRSスコアのより低い3つの四分位数の患者のサブ群(≦25.5)については、いずれの用量も主要エンドポイントのすべてを充足しなかった。
【0422】
2mg用量のより強い症候性効果は、この非常に軽微な患者個体群における早期開始治療に関連する利益をマスクするかもしれない。実際に、最高のベースラインUPDRSスコアにより四分位数の患者を評価する事後hocサブ群分析は、早期開始ラサギリン2mg/日が遅延開始(−3.63UPDRS単位)との比較において、第72週で有意な利益を提供し、比較的小さなサンプルサイズにも関わらず、全ての主要エンドポイントが充足されたことを示した。この効果は以下のダイアグラムに示される:
【表13】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
初期パーキンソン病患者においてパーキンソン病の進行速度を低減する方法であって、当該方法が、初期パーキンソン病患者のパーキンソン病の進行速度を低減するのに効果的な量のラサギリンまたは薬学的に許容されるラサギリンの塩を初期パーキンソン病患者に定期的に投与することを含む方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、前記患者がブロモクリプチン、ベンズトロピン、レボドーバ、ロピニロール、プラミペキソール、ロチゴチン、カベルゴリン、エンタカポン、トルカポン、アマンタジンまたはセレギリン治療を受けない方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法であって、前記患者がラサギリンまたは薬学的に許容されるラサギリンの塩以外のいずれかのパーキンソン病治療を受けない方法。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか1項に記載の方法であって、前記パーキンソン病の進行速度を全UPDRSスコアにより定量化し、全UPDRSスコアの増加がパーキンソン病の症状の進行を示し、ある期間に亘る全UPDRS増加の増分がパーキンソン病の進行速度を示す方法。
【請求項5】
請求項4に記載の方法であって、前記期間がラサギリンまたは薬学的に許容されるラサギリンの塩の投与開始後12、24、または36週である方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法であって、前記進行速度が、ラサギリンまたは薬学的に許容されるラサギリンの塩の投与の初めの症候性効果期間後、週あたり0.15単位未満の平均全UPDRSスコア増加である方法。
【請求項7】
請求項6に記載の方法であって、前記進行速度が、ラサギリンまたは薬学的に許容されるラサギリンの塩の投与の初めの症候性効果期間後、週あたり0.15〜0.05単位の平均全UPDRSスコア増加である方法。
【請求項8】
請求項6に記載の方法であって、前記進行速度が、ラサギリンまたは薬学的に許容されるラサギリンの塩の投与の初めの症候性効果期間後、週あたり0.15〜0.07単位の平均全UPDRSスコア増加である方法。
【請求項9】
請求項6に記載の方法であって、前記進行速度が、ラサギリンまたは薬学的に許容されるラサギリンの塩の投与の初めの症候性効果期間後、週あたり0.11〜0.07単位の平均全UPDRSスコアの増加である方法。
【請求項10】
請求項4に記載の方法であって、前記期間が、ラサギリンまたは薬学的に許容されるラサギリンの塩の投与開始後48、54、60、66または72週である方法。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法であって、投与されるラサギリンの量が1日あたり1mgである方法。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法であって、前記薬学的に許容されるラサギリンの塩がラサギリンメシレートである方法。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか1項に記載の方法であって、前記初期パーキンソン病患者がHoehn−Yahr評価に従うステージIの患者である方法。
【請求項14】
請求項1〜12のいずれか1項に記載の方法であって、前記初期パーキンソン病患者が症状により25未満のUPDRS総スコアをもたらす患者である方法。
【請求項15】
請求項1〜12のいずれか1項に記載の方法であって、前記初期パーキンソン病患者が症状により17.5未満のUPDRS総スコアをもたらす患者である方法。
【請求項16】
請求項1〜12のいずれか1項に記載の方法であって、前記初期パーキンソン病患者が、12ヶ月前以内に症状がパーキンソン病の徴候であると診断された患者である方法。
【請求項17】
請求項1〜12のいずれか1項に記載の方法であって、前記初期パーキンソン病患者が、6ヶ月前以内に症状がパーキンソン病の徴候であると診断された患者である方法。
【請求項18】
請求項1〜12のいずれか1項に記載の方法であって、前記初期パーキンソン病患者が、1ヶ月前以内に症状がパーキンソン病の徴候であると診断された患者である方法。
【請求項19】
パーキンソン病患者においてパーキンソン病の進行速度を低減する方法であって、当該方法が、パーキンソン病の進行速度を低減するのに効果的な量のラサギリンまたは薬学的に許容される塩を52週間を超える期間に亘って定期的にパーキンソン病患者に投与することを含む方法。
【請求項20】
請求項19に記載の方法であって、前記患者が初期パーキンソン病患者である方法。
【請求項21】
初期パーキンソン病患者において症候性抗パーキンソン症治療の必要性を遅らせる方法であって、症候性抗パーキンソン治療の必要性を遅らせるのに効果的な量のラサギリンまたは薬学的に許容されるラサギリンの塩を初期パーキンソン病患者に定期的に投与することを含む方法。
【請求項22】
請求項21に記載の方法であって、症候性抗パーキンソン症治療の必要性の遅れがラサギリンまたは薬学的に許容されるラサギリンの塩の投与開始後34週間を超える方法。
【請求項23】
請求項21または22に記載の方法であって、投与されるラサギリンの量が1日あたり1mgである方法。
【請求項24】
請求項21〜23のいずれか1項に記載の方法であって、前記薬学的に許容されるラサギリンの塩がラサギリンメシレートである方法。
【請求項25】
症候性抗パーキンソン症治療を必要とするパーキンソン病患者のリスクを低減する方法であって、症候性抗パーキンソン症治療を必要とするリスクを低減するのに効果的な量のラサギリンまたは薬学的に許容されるラサギリンの塩を36週間に亘って当該患者に定期的に投与することを含む方法。
【請求項26】
請求項25に記載の方法であって、投与が52週間を超える方法。
【請求項27】
請求項25または26に記載の方法であって、前記リスクが40〜60%低減される方法。
【請求項28】
請求項25〜27のいずれか1項に記載の方法であって、投与されるラサギリンまたは薬学的に許容されるラサギリンの塩の量が1日あたり1mgである方法。
【請求項29】
請求項25〜28のいずれか1項に記載の方法であって、前記薬学的に許容されるラサギリンの塩がラサギリンメシレートである方法。
【請求項30】
初期パーキンソン病患者の機能低下を緩和する方法であって、患者が初期パーキンソン病患者であると特定することと、当該機能低下を緩和するのに効果的な量のラサギリンまたは薬学的に許容されるラサギリンの塩をそのように特定された患者に定期的に投与することとを含む方法。
【請求項31】
請求項30に記載の方法であって、初期パーキンソン病患者の機能低下が、全UPDRSスコアにより定量化され、全UPDRSスコアの増加が機能低下を示す方法。
【請求項32】
請求項31に記載の方法であって、前記全UPDRSスコアの増加がラサギリンまたは薬学的に許容されるラサギリンの塩の投与開始後72週において3.97未満である方法。
【請求項33】
請求項30〜32のいずれか1項に記載の方法であって、投与されるラサギリンの量が1日あたり1mgである方法。
【請求項34】
請求項30〜33のいずれか1項に記載の方法であって、前記薬学的に許容されるラサギリンの塩がラサギリンメシレートである方法。
【請求項35】
パーキンソン病患者において機能低下を緩和する方法であって、機能低下を緩和するのに効果的な量のラサギリンまたは薬学的に許容されるラサギリンの塩を、52週間を超える期間に亘って当該患者に定期的に投与することを含む方法。
【請求項36】
請求項35に記載の方法であって、機能低下を全UPDRSスコアにより定量化し、全UPDRSスコアの増加が機能低下を示す方法。
【請求項37】
請求項36に記載の方法であって、ラサギリンまたは薬学的に許容されるラサギリンの塩の投与開始後72週において、全UPDRSスコアの増加が3.97未満である方法。
【請求項38】
請求項35〜37のいずれか1項に記載の方法であって、投与されるラサギリンの量が1日あたり1mgである方法。
【請求項39】
請求項35〜38のいずれか1項に記載の方法であって、前記薬学的に許容されるラサギリンの塩がラサギリンメシレートである方法。
【請求項40】
請求項35〜39のいずれか1項に記載の方法であって、前記患者が初期パーキンソン病患者である方法。
【請求項41】
パーキンソン病の初期の徴候を示す患者の治療方法であって、パーキンソン病の初期の徴候を示す患者を特定することと、当該患者を治療するのに効果的な量のラサギリンまたは薬学的に許容されるラサギリンの塩をそのように特定された患者に定期的に投与することとを含む方法。
【請求項42】
請求項41に記載の方法であって、投与されるラサギリンまたは薬学的に許容されるラサギリンの塩の量が1日あたり1mgである方法。
【請求項43】
請求項41または42に記載の方法であって、前記薬学的に許容されるラサギリンの塩がラサギリンメシレートである方法。
【請求項44】
初期パーキンソン病患者において疲労を緩和する方法であって、疲労を緩和するのに効果的な量のラサギリンまたは薬学的に許容されるラサギリンの塩を初期パーキンソン病患者に定期的に投与することを含む方法。
【請求項45】
請求項44に記載の方法であって、ラサギリンにより治療されていない患者に比べて、パーキンソン疲労スケールが0.05〜0.23低減される方法。
【請求項46】
初期パーキンソン病患者において非運動性症状の重症度を緩和する方法であって、非運動性症状の重症度を緩和するのに効果的な量のラサギリンまたは薬学的に許容されるラサギリンの塩を初期パーキンソン病患者に定期的に投与することを含む方法。
【請求項47】
請求項46に記載の方法であって、前記非運動性症状がUPDRSバージョン4パート1により規定される方法。
【請求項48】
請求項48に記載の方法であって、バージョン4パート1に規定される通り、ラサギリンによる治療を受けなかった患者と比較して、UPDRSスコアの変化が少なくとも0.23である方法。
【請求項49】
パーキンソン病患者において臨床的進行を遅らせ且つパーキンソン病症状を治療する方法であって、当該患者において臨床的進行を遅らせ且つパーキンソン病の徴候および症状を治療するのに効果的な量のラサギリンまたは薬学的に許容されるラサギリンを当該パーキンソン病患者に定期的に投与することを含む方法。
【請求項50】
請求項49に記載の方法であって、ラサギリンの量が1日あたり1mgである方法。
【請求項51】
請求項49または50に記載の方法であって、前記患者がブロモクリプチン、ベンズトロピン、レボドーバ、ロピニロール、プラミペキソール、ロチゴチン、カベルゴリン、エンタカポン、トルカポン、アマンタジンまたはセレギリンによる治療を受けない方法。
【請求項52】
請求項49〜51のいずれか1項に記載の方法であって、前記患者が、ラサギリンまたは薬学的に許容されるラサギリンの塩以外のいずれかのパーキンソン病のための治療を受けない方法。
【請求項53】
請求項49〜52のいずれか1項に記載の方法であって、前記患者の平均全UPDRSスコアが、ラサギリンまたは薬学的に許容されるラサギリンの塩の投与の初めの症候性効果期間後に、1週間あたり0.15単位未満増加する方法。
【請求項54】
請求項53に記載の方法であって、前記患者の平均全UPDRSスコアが、ラサギリンまたは薬学的に許容されるラサギリンの塩の投与の初めの症候性効果期間後に、1週間あたり0.15〜0.05単位増加する方法。
【請求項55】
請求項53に記載の方法であって、前記患者の平均全UPDRSスコアが、ラサギリンまたは薬学的に許容されるラサギリンの塩の投与の初めの症候性効果期間後に、1週間あたり0.15〜0.07単位増加する方法。
【請求項56】
請求項53に記載の方法であって、前記患者の平均全UPDRSスコアが、ラサギリンまたは薬学的に許容されるラサギリンの塩の投与の初めの症候性効果期間後に、1週間あたり0.11〜0.07単位増加する方法。
【請求項57】
請求項49〜56のいずれか1項に記載の方法であって、ラサギリンまたは薬学的に許容されるラサギリンの塩の投与開始後72週間において全UPDRSスコアの増加が3.97未満である方法。
【請求項58】
請求項49〜56のいずれか1項に記載の方法であって、ラサギリンまたは薬学的に許容されるラサギリンの塩の投与開始後72週間において全UPDRSスコアの増加が3.35未満である方法。
【請求項59】
請求項49〜58のいずれか1項に記載の方法であって、前記薬学的に許容されるラサギリンの塩がラサギリンメシレートである方法。
【請求項60】
請求項49〜59のいずれか1項に記載の方法であって、前記患者が初期パーキンソン病患者である方法。
【請求項61】
請求項60に記載の方法であって、前記初期パーキンソン病患者がHoen−Yahr評価に従うステージIの患者である方法。
【請求項62】
請求項60に記載の方法であって、前記初期パーキンソン病患者が、症状が25未満のUPDRS全スコアをもたらす患者である方法。
【請求項63】
請求項60に記載の方法であって、前記初期パーキンソン病患者が、症状が17.5未満のUPDRS運動スコアをもたらす患者である方法。
【請求項64】
請求項60に記載の方法であって、前記初期パーキンソン病患者が、12ヶ月前以内に症状がパーキンソン病の徴候であると診断された患者である方法。
【請求項65】
請求項60に記載の方法であって、前記初期パーキンソン病患者が、6ヶ月前以内に症状がパーキンソン病の徴候であると診断された患者である方法。
【請求項66】
請求項60に記載の方法であって、前記初期パーキンソン病患者が、1ヶ月前以内に症状がパーキンソン病の徴候であると診断された患者である方法。
【請求項67】
請求項1、19、25、35または49に記載の方法であって、前記パーキンソン病患者が、全UPDRSスコアが25.5を超える患者である方法。
【請求項68】
請求項67に記載の方法であって、投与されるラサギリンの量が1日あたり1mgである方法。
【請求項69】
請求項68に記載の方法であって、前記患者の平均全UPDRSスコアが、ラサギリンまたは薬学的に許容されるラサギリンの塩の投与の初めの症候性効果期間後、1週間あたり0.28単位未満増加する方法。
【請求項70】
請求項68に記載の方法であって、前記患者の平均全UPDRSスコアが、ラサギリンまたは薬学的に許容されるラサギリンの塩の投与の初めの症候性効果期間後、1週間あたり0.28〜0.10単位未満増加する方法。
【請求項71】
請求項68に記載の方法であって、前記患者の平均全UPDRSスコアが、ラサギリンまたは薬学的に許容されるラサギリンの塩の投与の初めの症候性効果期間後、1週間あたり0.18〜0.10単位未満増加する方法。
【請求項72】
請求項68〜71のいずれか1項に記載の方法であって、ラサギリンまたは薬学的に許容されるラサギリンの塩の投与開始後72週において、全UPDRSスコアの増加が3.10未満である方法。
【請求項73】
請求項67に記載の方法であって、投与されるラサギリンの量が1日あたり2mgである方法。
【請求項74】
請求項73に記載の方法であって、ラサギリンまたは薬学的に許容されるラサギリンの塩の投与の初めの症候性効果期間後、前記患者の平均全UPDRSスコアが1週間あたり0.28単位未満増加する方法。
【請求項75】
請求項73に記載の方法であって、ラサギリンまたは薬学的に許容されるラサギリンの塩の投与の初めの症候性効果期間後、前記患者の平均全UPDRSスコアが1週間あたり0.28〜0.01単位未満増加する方法。
【請求項76】
請求項73に記載の方法であって、ラサギリンまたは薬学的に許容されるラサギリンの塩の投与の初めの症候性効果期間後、前記患者の平均全UPDRSスコアが1週間あたり0.09〜0.01単位未満増加する方法。
【請求項77】
請求項73〜76のいずれか1項に記載の方法であって、ラサギリンまたは薬学的に許容されるラサギリンの塩の投与開始後72週において全UPDRSスコアの増加が2.61未満である方法。
【請求項78】
初期パーキンソン病患者におけるパーキンソン病の症状の進行速度低減用のラサギリンまたは薬学的に許容されるラサギリンの塩。
【請求項79】
初期パーキンソン病患者において症候性抗パーキンソン治療の必要性を遅らせることにおける使用のためのラサギリンまたは薬学的に許容されるラサギリンの塩。
【請求項80】
症候性抗パーキンソン治療を必要とする初期パーキンソン病患者のリスク低減用のラサギリンまたは薬学的に許容されるラサギリンの塩。
【請求項81】
初期パーキンソン病患者における機能低下緩和用のラサギリンまたは薬学的に許容されるラサギリンの塩。
【請求項82】
パーキンソン病の初期の徴候を示す患者の治療用のラサギリンまたは薬学的に許容されるラサギリンの塩。
【請求項83】
初期パーキソン病患者における疲労緩和用のラサギリンまたは薬学的に許容されるラサギリンの塩。
【請求項84】
初期パーキンソン病患者における非運動性症状の重症度緩和用のラサギリンまたは薬学的に許容されるラサギリンの塩。
【請求項85】
パーキソン病患者において、臨床的進行を緩和し且つパーキソン病の症状を治療することにおける使用のためのラサギリンまたは薬学的に許容されるラサギリンの塩。
【請求項86】
初期パーキンソン病患者におけるパーキンソン病の症状の進行速度低減用の薬学的に効果的な量のラサギリンまたは薬学的に許容されるラサギリンの塩を含む医薬組成物。
【請求項87】
初期パーキンソン病患者において症候性抗パーキソン症治療の必要性を遅らせることにおける使用のための薬学的に効果的な量のラサギリンまたは薬学的に許容されるラサギリンの塩を含む医薬組成物。
【請求項88】
症候性抗パーキンソン治療を必要とする初期パーキンソン病患者のリスク低減用の薬学的に効果的な量のラサギリンまたは薬学的に許容されるラサギリンの塩を含む医薬組成物。
【請求項89】
初期パーキンソン病患者における機能低下緩和用の薬学的に効果的な量のラサギリンまたは薬学的に許容されるラサギリンの塩を含む医薬組成物。
【請求項90】
パーキンソン病の初期の徴候を示す患者の治療用の薬学的に効果的な量のラサギリンまたは薬学的に許容されるラサギリンの塩を含む医薬組成物。
【請求項91】
初期パーキンソン病患者における疲労緩和用の薬学的に効果的な量のラサギリンまたは薬学的に許容されるラサギリンの塩を含む医薬組成物。
【請求項92】
初期パーキンソン病患者における非運動性の症状の重症度緩和用の薬学的に効果的な量のラサギリンまたは薬学的に許容されるラサギリンの塩を含む医薬組成物。
【請求項93】
パーキンソン病患者において臨床的進行を遅らせ且つパーキンソン病の症状を治療することにおける使用のための薬学的に効果的な量のラサギリンまたは薬学的に許容されるラサギリンの塩を含む医薬組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8A】
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【図8B】
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【図9】
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【図10A】
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【図10B】
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【図11A】
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【図11B】
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【図12】
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【図13】
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【図14A】
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【図14B】
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【図15A】
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【図15B】
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【図16A】
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【図16B】
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【図17】
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【図18A】
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【図18B】
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【図19A】
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【図19B】
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【公表番号】特表2011−522892(P2011−522892A)
【公表日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−513503(P2011−513503)
【出願日】平成21年6月12日(2009.6.12)
【国際出願番号】PCT/US2009/003528
【国際公開番号】WO2009/151625
【国際公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【出願人】(501079705)テバ ファーマシューティカル インダストリーズ リミティド (283)
【Fターム(参考)】