説明

パーソナルケア物品において用いるためのアルカリ中和性捕捉/分配構造体

【課題】パーソナルケア製品における体液捕捉分配部材として用いる不織繊維構造体をラテックスバインダーによって強化する事で、臭気、細菌増殖、皮膚の炎症を減少させた。
【解決手段】かかる構造体は、特定のタイプの架橋性酢酸ビニル−エチレン(VAE)エマルジョンコポリマーラテックスバインダーをそれに適用して架橋することによって強化されている天然及び/又は合成繊維を含む。VAEラテックスバインダーは、クエン酸のような添加された有機酸性化剤も含むものである。有機酸性化剤をそれに加えたVAEベースのバインダーを用いて構造体を強化することによって、得られる構造体に、構造体を通過する尿のような体液のpHを低下させる能力が付与される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]本発明は、吸収性パーソナルケア製品における体液捕捉/分配部材として用いることができる不織繊維構造体に関する。かかる構造体は、構造体を通過するアルカリ性の体液のpHを低下させて、それによって臭気、細菌増殖、及び皮膚の炎症を減少させる能力を構造体に与えるラテックスバインダーによって強化されている。
【背景技術】
【0002】
[0002]使い捨ての吸収性物品の形態のパーソナルケア製品は広範に利用できる。かかる製品としては、例えば、使い捨ておむつ、成人用失禁パンツ、パンティーライナー、生理用ナプキンなどを挙げることができる。かかる物品は、一般に、人体に接触又は近接して装着され、放出される体液を回収し保持するために用いることができる。
【0003】
[0003]通常は、吸収性物品の形態のパーソナルケア製品は、複数の流体操作又は接触手段又は部材を含む。少なくとも1つのかかる部材は主として液体を貯蔵するように意図されており、少なくとも1つの他の部材は主として液体を捕捉/分配するように意図されている。
【0004】
[0004]かかる製品及び物品において用いる貯蔵部材は、しばしば、伝統的に用いられているパルプ繊維材料を混合した超吸収性材料を含む。かかる超吸収性材料は、それ自体の重量の何倍もの(例えば10倍以上の)液体を吸収することができる。最新の製品は、貯蔵部材の全重量の50%を超える濃度である高い濃度の超吸収性材料を用いる。これらの製品は、非常に薄い貯蔵部材によって高い吸収能力を達成し、したがって通常は全体として薄い製品である。超吸収性材料は非常に大量の液体を貯蔵することができるが、これらはしばしば、接触点から吸収性物品のより離れた領域へ液体を分配することはできない。更に、これらのタイプの貯蔵部材は、吸収性物品によって液体が受容されるほど速くは液体を捕捉及び吸収することができない。
【0005】
[0005]吸収性物品の貯蔵部材の上記の流体操作特性を考慮して、吸収性物品においては捕捉/分配層(ADL)部材もしばしば用いられる。ADLは、大量の液体の一時的な捕捉を与え、しばしば捕捉された液体の比較的迅速な分配も可能にする手段又は部材である。而して、ADLは貯蔵部材によって与えられる吸収能力の全体を用いる上で重要な役割を果たす。
【0006】
[0006]幾つかの場合においては、ADLは、表面シートと液体を保持するための吸収性貯蔵コアとの間に配置されている吸収性物品内の副層であってよい。かかるADLの主要な機能は、流入液体を、おむつ又は女性用生理用品のような吸収性物品の外表面から内部の吸収性コアに移動させて、それによって迅速な浸透及び低い再湿潤を与えることである。これらの特性を達成するために、ADLのデザインは通常は、圧縮後にその厚みを速やかに取り戻す良好な圧縮回復を与える嵩高で開放構造の弾性の繊維状不織構造体である。
【0007】
[0007]吸収性物品のADLのための構造体は、歴史的に、天然及び/又は合成繊維を含む不織繊維構造体又はウエブであった。これらの構造体は、ウェットレイイング(wet-laying)又はドライレイイング(dry-laying)、例えばエアレイイング(air-laying)、カーディング、又はこれらの組合せのような技術によって製造することができる。かかる構造体は、次に通常は、エマルジョンコポリマー、即ちラテックスを構造体上又はその中に適用又は浸透させ、次にラテックスを含む構造体を硬化させて強化ADLを形成することによって、化学的に強化又は結合させる。
【0008】
[0008]ADLの製造において用いられているラテックス形態のエマルジョンコポリマーとしては、スチレン−ブタジエン−ラバー(SBR)コポリマー、アクリルベースのコポリマー、及び酢酸ビニルのようなビニルエステルをベースとするコポリマーが挙げられる。これらの種々のタイプのラテックスADLバインダーは、例えば米国特許公開2004/0242106;2004/0103970;2003/0089043;及び2003/0003830;に開示されている。
【0009】
[0009]吸収性物品の形態のパーソナルケア製品によって捕捉され、それを通して分配され、並びに吸収及び貯蔵される尿のような体液は、一般にアルカリ性の液体である。吸収性物品内のかかるアルカリ性の液体は、細菌の成長及びアンモニアの生成を促進させ、それによって臭気、及び物品の着用者に対する皮膚の炎症、即ちおむつかぶれの問題を生じさせる可能性がある。この理由のために、臭気及び皮膚の炎症の問題を最小にする目的で、pH中和剤が、おむつのような物品の吸収性コア又は更には表面シートにもしばしば加えられている。
【0010】
[0010]pH低下添加剤を吸収性物品の吸収性コア又は表面シート内に存在させても、同様にかかる物品中に導入することができる既存の商業的に入手できるADL構造体は、かかるADL構造体を通して分配される尿のような体液のアルカリ性を低下させない。実際、幾つかのタイプの強化化学物質を用いて接着結合したADLは、実際には流体のアルカリ性問題を悪化させる可能性がある。例えば、SBR又はアクリルエマルジョンコポリマーは、ADLバインダーとして用いる場合には、不織ADLの製造中の良好な機械の運転性のためにアルカリ性のpHが必要である。これらのタイプのエマルジョンコポリマーは、通常は中性又はアルカリ性のpHで供給され、しばしば良好な機械的安定性を達成するためにアルカリ、例えばアンモニアの後添加が必要である。このタイプのエマルジョンコポリマーの本来の性質のために、これらは尿のアルカリ性を低下させる点では効果がなく、これらは酸性化剤(acidulant)の存在下で用いると更に不安定になる可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国特許公開2004/0242106
【特許文献2】米国特許公開2004/0103970
【特許文献3】米国特許公開2003/0089043
【特許文献4】米国特許公開2003/0003830
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
[0011]上記の留意事項を考慮すると、ADL構造体にpH低下/アルカリ性中和効果を実際に与えることができる強化/結合添加剤を用いる更なるタイプのADL構造体を確認することが有利であろう。而して、かかる強化/結合化学物質を用いるADLは、ADLを通過する体液のpH/アルカリ性を、流体が吸収性貯蔵コアに到達する前に望ましく低下させるように働かせることができる。これによって、相当量のpH/アルカリ性制御剤を吸収性物品のコア又は表面シート中に導入する必要性を排除又は少なくとも減少して、それによってかかる物品の製造及び加工を簡単にすることができる。
【課題を解決するための手段】
【0013】
[0012]一形態においては、ここに記載する発明は、パーソナルケア製品における体液捕捉/分配部材として用いるための不織繊維構造体に関する。かかる構造体は天然又は合成繊維或いはこれらの繊維の組合せを含み、繊維は、架橋性の酢酸ビニル−エチレン(VAE)エマルジョンコポリマーラテックスバインダーをそれに適用して架橋することによって強化されている。このVAEラテックスバインダーはまた、エマルジョンコポリマーの全モノマー含量を基準として約1.0重量%〜約5.0重量%のクエン酸のような添加された有機酸性化剤も含む。有機酸性化剤を添加することによって、得られる構造体によって構造体を通過する体液のpHを好ましくは少なくとも約1.2pH単位低下させて、それによってかかる構造体を用いる吸収性製品に臭気制御及びスキンケアの利益を与えることができる。
【0014】
[0013]他の形態においては、ここに記載する発明は、幼児用おむつ又は成人用失禁用製品の形態のパーソナルケア製品に関する。かかるパーソナルケア製品は、表面シート、吸収性流体貯蔵コア、及び表面シートと吸収性流体貯蔵コアとの間に捕捉/分配層として配置されている上記に記載したタイプの少なくとも1つの不織繊維構造体を含む。
【0015】
[0014]更に他の形態においては、ここに記載する発明は、パーソナルケア製品における体液捕捉/分配部材として用いるのに好適な不織繊維構造体を製造する方法に関する。かかる方法の第1工程においては、約10〜約25pphmのエチレン;約75〜約90pphmの酢酸ビニル;及び約1〜約10pphmの更なる架橋性コモノマー;の乳化重合生成物である架橋性エチレン−酢酸ビニルコポリマーを含む水性エマルジョンコポリマーラテックスバインダーを与える。かかる方法の次の工程においては、水性エマルジョンコポリマーラテックスバインダーに、エマルジョンコポリマー中のモノマーの全重量を基準として約1.0〜約5.0重量%の量の有機酸性化剤を加える。この方法の次の工程においては、酸性化剤を含む水性エマルジョンコポリマーラテックスバインダーを、ウェットレイド又はドライレイドの天然及び/又は合成繊維を含む不織繊維構造体と接触させてラテックスバインダーを含む不織繊維構造体を形成する。この方法の最終工程においては、ラテックスバインダーを含む不織繊維構造体を、コポリマーを架橋させるのに十分な硬化条件にかけて、それによって酸性化剤を含む強化不織繊維構造体を形成する。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[0015]ここでは、パーソナルケア製品の体液吸収部材における流体捕捉/分配層(ADL)として有用な不織繊維構造体を開示する。これらの繊維構造体は、酢酸ビニル/エチレン(VAE)ラテックスバインダーをそれに適用して硬化させることによって強化及び補強されている。ラテックスバインダーには有機酸性化剤が添加されており、これはラテックスによってこのラテックスバインダーで処理された繊維構造体中に保持される。ここで、かかるADL構造体を用いるパーソナルケア製品と共に用いる繊維構造体、VAEバインダー、及び有機酸性化剤を、以下により詳細に記載する。
【0017】
不織繊維構造体:
[0016]不織繊維構造体は周知であり、幼児用おむつ、成人用失禁用製品、及び女性用生理用品のようなパーソナルケア吸収性物品において一般的に用いられている。不織繊維構造体は、一般に摩擦及び/又は粘着及び/又は接着によって一緒に結合されている、製造されたシート、ウエブ、芯、或いは指向的か又はランダムに配向されている繊維の塊である。かかる構造体は、繊維をウエブ又は層に堆積又は配列するための任意の1つの通常の技術によって形成することができる。かかる技術としては、ウエットレイイング、エアレイイング、カーディング、ガーネッティング等、又はかかる技術の組合せが挙げられる。
【0018】
[0017]本発明における不織繊維構造体を形成するのに用いる繊維は、天然又は合成起源のものであってよい。また、天然及び合成繊維の組合せを、本発明において有用な不織構造体において用いることもできる。構造体を形成する繊維は短繊維又は連続フィラメントであってよく、或いはその場で形成することができる。
【0019】
[0018]本発明における不織繊維構造体において用いることができる天然繊維の例としては、セルロース、綿、フラックス、リンネル、及び麻のような植物繊維が挙げられるが、これらに限定されない。天然繊維は、通常はそれらの合成同等品よりも短く、長さが約1.5〜約7mm、より好ましくは長さが約2.5〜約5mmの範囲であってよい。天然繊維の厚さは、それらの不規則的な形態のために「粗度(coarseness)」と言われる。粗度に関する好ましい値は、約2g/10000m〜約10g/10000mの間、最も好ましくは約3〜約5g/10000mの間である。3.4g/10000gの値は3.4デシテックスに等しい。
【0020】
[0019]好ましい天然繊維は、綿毛パルプの形態で供給することができるセルロース繊維である。「綿毛パルプ(fluff pulp)」という用語は、化学処理、機械処理、又は化学処理と機械処理の組合せによって製造され、通常は漂白されており、例えば使い捨て吸収性物品において吸収性媒体として用いることで知られているパルプを指す。
【0021】
[0020]一態様においては、捕捉/分配層として働かせることができる不織繊維構造体において有用なセルロース繊維は、化学的に強化したセルロース繊維を含む。本発明において用いる「化学的に強化した繊維」という用語は、繊維の剛性を増加させ、場合によっては乾燥条件及び水性条件の両方の下でそれに捲縮又は撚りも与える化学的手段によって強化されている任意の繊維を意味する。かかる手段としては、例えば繊維を被覆及び/又は繊維に含侵させる化学的強化剤を加えることが挙げられる。また、かかる手段としては、例えばポリマー鎖を架橋することによって繊維それ自体の化学構造を変化させることによって繊維を強化することも挙げられる。捕捉/分配構造体において化学的強化及び捲縮させたセルロース繊維を用いることは、米国特許5,217,445及びそこに引用されている幾つかの参照文献においてより完全に記載されている。この‘445米国特許はその全部を参照として本明細書中に包含する。
【0022】
[0021]また、合成繊維を用いて、本発明におけるパーソナルケア製品のADL中で用いる不織繊維構造体を形成することもできる。合成、即ち人工の繊維は、例えば天然繊維又は無機源から誘導することができる。天然繊維から誘導される合成繊維の例としては、いずれもセルロースから誘導されるレイヨン及びリヨセルが挙げられるが、これらに限定されない。無機源から誘導される合成繊維としては、全て石油から誘導される、ポリプロピレン繊維又はポリエチレン繊維のようなポリオレフィン繊維、ポリエステル繊維、及びポリアミド繊維が挙げられるが、これらに限定されない。本発明におけるADL構造体において用いるのに好ましい合成繊維は、ポリエチレンテレフタレート(PET)繊維のようなポリエステル繊維である。
【0023】
[0022]本発明におけるADL構造体において有用な合成繊維は、長さが約4〜約25mm、より好ましくは長さが約3〜12mm、最も好ましくは長さが約5〜約6mmの範囲であってよい。合成繊維は、通常は約3〜約30デシテックスの間で厚さが変化してよい。有用な合成繊維のために好ましい厚さは、約4〜約12デシテックスの間、最も好ましくは約6〜約8デシテックスの間である。
【0024】
[0023]一態様においては、本発明におけるADL構造体において有用な合成繊維は、捲縮、好ましくは螺旋捲縮を示す。ここで用いる螺旋捲縮とは、任意の三次元捲縮であり、好ましくは繊維が実質的に螺旋形状を呈するものである。理論に縛られることは望まないが、繊維の螺旋捲縮はそれらの液体捕捉及び分配挙動のために非常に有益であると考えられる。螺旋捲縮によって、かかる繊維によって形成される捕捉/分配部材中の空隙空間が増大すると推測される。しばしば、吸収性物品は、装着した際に装着者によって与えられる若干の圧力に曝され、これによってADL部材内の空隙空間が減少する可能性がある。良好な浸透性及び十分な利用できる空隙空間を有することは、良好な液体の分配及び輸送のために重要である。
【0025】
[0024]本発明におけるADL構造体において有用な合成繊維は、それらの捲縮レベルが大きく変化していてよく、捲縮は、直繊維、中捲縮、又は高捲縮のいずれかとして分類される。より高い捲縮は繊維分離が容易になるが、それらの弾性特性のために例えばエアレイイング装置の頭部アセンブリの内部で繊維が「跳ねる」ので形成能力及びライン速度が遅延する。中捲縮繊維は、エアレイイングプロセスを用いて製造する構造体の好ましい選択肢であり、分離しやすさとライン速度の間の折衷を与える。本発明において用いる合成繊維に関して好ましい捲縮値は、約6〜約20捲縮/インチの間、より好ましくは約8〜約12捲縮/インチの間である。
【0026】
[0025]一態様においては、本発明におけるADLとして有用な不織繊維構造体には、天然繊維及び合成繊維の両方の組合せ、即ちブレンドを含ませることができる。かかるブレンドには少なくとも約10〜約90重量%の合成繊維を含ませることができ、ブレンドの残りの重量%の割合は天然繊維である。約40〜約60重量%の合成繊維と約60〜約40重量%の天然繊維とのブレンドがより好ましい。天然繊維及び合成繊維の両方のブレンドを含むADL構造体は、米国特許公開2007/0167096により完全に記載されている。この‘096米国特許公開はその全部を参照として本明細書中に包含する。
【0027】
VAEラテックスバインダー:
[0026]上記に記載の不織繊維構造体は、特定の選択されたタイプのラテックスバインダー組成物をそれに適用してその後に硬化させることによって強化する。周知なように、ラテックスバインダーは、一般に繊維の交差部に蓄積する水性液形成で不織構造体に適用する。硬化の後、バインダーによって不織構造体を強化及び安定化する粘着性のポリマー膜が形成される。不織体に(例えば圧縮によって)応力を加える場合には、ポリマー膜はその応力に対して抵抗性を示すので、繊維を含む不織体が移動するのが阻止される。
【0028】
[0027]本発明においてADLとして有用な化学結合不織繊維構造体を製造するのに用いるラテックスバインダーは、酢酸ビニル(VA)とエチレン(E)の乳化共重合によって製造されるものである。かかるVAEコポリマーにおいては、酢酸ビニルモノマーは一般に約75〜約90pphm(全モノマーを基準とする100部あたりの部数)を構成し、エチレンは一般に約10〜約25pphmを構成する。より好ましくは、かかるエマルジョンコポリマーにおいては、酢酸ビニルモノマーは一般に約80〜約90pphmを構成し、エチレンは一般に約10〜約20pphmを構成する。
【0029】
[0028]本発明において用いるVAEエマルジョンコポリマーラテックスバインダーは、一般に架橋性のエマルジョンコポリマーである。「架橋性」とは、コポリマーが、自己架橋メカニズムか、或いは重合後の架橋反応にかけて架橋を形成することができる少なくとも1種類の官能性モノマーをコポリマー骨格中に導入することのいずれかによって架橋にかけることができることを意味する。
【0030】
[0029]好ましい態様においては、エマルジョンコポリマーは、酢酸ビニル及びエチレンのコモノマーに加えて、約1〜約10pphmの少なくとも1種類の更なるタイプの官能性架橋性コモノマーを含む。より好ましくは、少なくとも1種類の更なるタイプの官能性架橋性コモノマーは、バインダーラテックスを形成するエマルジョンコポリマーの約2〜約8pphmを構成する。
【0031】
[0030]本発明において用いる架橋性モノマーとしては、架橋性N−メチロール基、又はC〜Cアルカノールとエーテル化しているそれらの誘導体を含むコモノマーを挙げることができる。これらの誘導体としては、アクリル酸及びメタクリル酸のN−メチロールアミド(例えば、メチロールアクリルアミド及びN−メチロールメタクリルアミド)、N−メチロールアリルカルバメート、イソブトキシメチルアクリルアミド、n−ブトキシメチルアクリルアミド、及びかかる架橋性コモノマーの混合物が挙げられる。他の可能な架橋性コモノマーとしては、米国特許7,056,847(参照として本明細書中に包含する)に開示されているものが挙げられる。
【0032】
[0031]上記に記載の1種類又は複数の架橋性コモノマーに加えて、本発明において用いるバインダーラテックス組成物を形成するエマルジョンコポリマーには、種々の更なる場合によって用いるコモノマーのタイプを含ませることができる。かかる更なる場合によって用いるコモノマーとしては、例えば、約12個以下の炭素原子を含む脂肪族カルボン酸の更なるビニルエステル;それぞれのアルキル基中に約1〜約8個の炭素原子を含むマレイン酸及びフマル酸のジアルキルエステル;並びにC〜Cアルキルアクリレート及びメタクリレート;を挙げることができる。場合によって本発明において用いるエマルジョンコポリマー中に含ませるための他の更なる場合によって用いるコモノマーは、上記で引用した米国特許7,056,847に開示されている。
【0033】
[0032]コポリマーエマルジョンラテックスバインダーは、通常のバッチ、半バッチ、又は半連続乳化重合手順を用いて製造することができる。一般に、モノマーは、水性媒体中、エチレン圧下において、酸化還元開始剤系、及び分散剤又は乳化安定剤として有用な少なくとも1種類の乳化剤の存在下で重合する。VAEエマルジョンコポリマーの乳化重合のために好適な方法は、米国特許5,540,987(参照として本明細書中に包含する)に記載されている。
【0034】
[0033]バッチ法を用いる場合には、酢酸ビニル及び任意の場合によって用いる非官能性モノマーをエチレン圧下で水中に懸濁し、十分に撹拌する一方で重合温度に徐々に加熱する。均一化工程の後に重合工程を行い、この間に開始剤、及びN−メチロールアクリルアミドのような1種類又は複数の官能性モノマーを徐々にか又は連続して加える。官能性モノマーは、その単独重合を最小にして、その代わりにポリマー骨格中への官能性モノマーの導入を促進させるために反応にゆっくりと加える。ゆっくりとした添加手順を用いる場合には、酢酸ビニル及び任意の場合によって用いるコモノマーは、重合反応全体にわたって徐々に加える。
【0035】
[0034]いずれの場合においても、重合は、約25℃〜約80℃、好ましくは約35℃〜約60℃の温度において、低い残留モノマー含量を達成するのに十分な時間、例えば0.5〜約10時間、好ましくは約2〜約6時間行って、1%未満、好ましくは0.2重量%未満の遊離モノマーを有するラテックスを生成させる。重合に関するより低い反応温度範囲によってより制御された転化速度が可能になり、より高いレベルの架橋性モノマーを導入することが可能になる。
【0036】
[0035]開始剤系は、一般に酸化還元系である。還元剤と一緒に過硫酸塩又はペルオキシド開始剤を用いる酸化還元系が好ましい。ペルオキシド開始剤、最も好ましくはtert−ブチルヒドロペルオキシド(tBHP)を用いて重合を開始させることができる。1つの特に好ましい開始剤系は、エマルジョンの全量を基準として約0.05〜約3重量%の間、好ましくは約0.1〜約1重量%の間の量の疎水性ヒドロペルオキシドを、エマルジョンの全量を基準として約0.05〜約3重量%、好ましくは約0.1〜約1重量%の量のアスコルビン酸と組み合わせて含む。酸化還元開始剤系は、重合中にゆっくりと加える。
【0037】
[0036]遊離基の生成を制御するために、しばしば遷移金属を酸化還元系中に導入し、かかる金属としては、鉄塩、例えば塩化第一鉄及び第二鉄、並びに硫酸第一鉄アンモニウムを挙げることができる。重合媒体のための酸化還元系を形成するために遷移金属を使用すること及び添加レベルは周知である。
【0038】
[0037]重合は、一般に約2〜約7の間、より好ましくは約3〜約5の間のpHにおいて行う。pH範囲を保持するためには、通常の緩衝剤系の存在下、例えばアルカリ金属酢酸塩、アルカリ金属炭酸塩、又はアルカリ金属リン酸塩の存在下で運転することが有用である可能性がある。
【0039】
[0038]有用な分散剤/安定剤は、乳化重合において一般的に用いられる乳化剤、界面活性剤、及び保護コロイド、或いはこれらの組合せである。乳化剤は、当該技術において公知のアニオン性、カチオン性、又は非イオン性表面活性化合物であってよい。
【0040】
[0039]好適なアニオン性乳化剤は、例えば、アルキルスルホネート、アルキルアリールスルホネート、アルキルスルフェート、ヒドロキシアルカノールのスルフェート、アルキル及びアルキルアリールジスルホネート、スルホン化脂肪酸、ポリエトキシ化アルカノール及びアルキルフェノールのスルフェート及びホスフェート、並びにスルホコハク酸のエステルである。好適なカチオン性乳化剤は、例えば、アルキル第4級アンモニウム塩、及びアルキル第4級ホスホニウム塩である。好適な非イオン性乳化剤の例は、約6〜約22個の炭素原子を有する直鎖又は分岐鎖アルカノール或いはより高級の脂肪酸又はより高級の脂肪酸アミド又は第1級若しくは第2級のより高級のアルキルアミンのアルキルフェノールに付加した約5〜約50モルのエチレンオキシドの付加生成物;並びに、プロピレンオキシドとエチレンオキシドのブロックコポリマー、及びこれらの混合物である。
【0041】
[0040]用いる乳化剤の量は、一般に、重合において用いるモノマーの約1〜約10、より好ましくは約2〜約8重量%である。乳化剤はその全部を初期充填物に加えることができ、或いは乳化剤の一部、例えばその約25〜約90%を重合中に連続的又は断続的に加えることができる。
【0042】
[0041]また、上記に記載の乳化剤に加えて種々の保護コロイドを用いることもできる。好適なコロイドとしては、合成エマルジョンポリマー技術において公知の、ポリビニルアルコール(PVA)、部分アセチル化ポリビニルアルコール、例えば50%以下アセチル化したPVA、カゼイン、ヒドロキシエチルスターチ、カルボキシメチルセルロース、アラビアガムなどが挙げられる。一般に、これらのコロイドは、全エマルジョンを基準として約0.05〜約4重量%のレベルで用いる。
【0043】
[0042]重合反応は、一般に、残留酢酸ビニルモノマー含量が約1%より低く、好ましくは約0.2%未満になるまで継続する。次に、完成した反応生成物を、雰囲気から密閉しながらほぼ室温に冷却する。
【0044】
[0043]エマルジョンは、例えば約35〜約60重量%の間、好ましくは約50〜約55%の間の比較的高い固形分含量で製造及び使用されるが、これらは所望のように水で希釈することができる。好ましくは、50%の固形分のエマルジョンの粘度は約500cps未満である。
【0045】
[0044]かくして製造されるラテックスの粒径は、用いる非イオン性、カチオン性、又はアニオン性乳化剤、或いは保護コロイドの量によって調節することができる。より小さい粒径を得るためには、より多い量の乳化剤を用いる。一般に、用いる乳化剤の量がより多いと、ラテックスエマルジョン中のコポリマーの平均粒径はより小さい。ラテックスエマルジョン中のVAEベースのコポリマーは、一般に、約−10℃〜約+30℃の範囲、より好ましくは約−5℃〜約+15℃の間のガラス転移温度Tを有する。
【0046】
有機酸性化剤:
[0045]上記に記載したようにしてラテックスバインダー組成物を製造した後で且つラテックスバインダーを不織繊維構造体と接触させる前に、有機酸性化剤を水性のVAEベースのコポリマーを含むラテックスバインダーに加える。有機酸性化剤は、本発明においてバインダーラテックスによって繊維不織構造体中に保持され、かかる構造体にpH低下能力を与える成分である。かかる有機酸は、一般に約2〜約7の範囲の水中でのpKaを有するものである。
【0047】
[0046]人体に近接して用いるのに好適な構造体中に安全に含ませるか又は導入することができる任意の比較的不活性の有機酸化合物を、有機酸性化剤として用いることができる。好ましくは、有機酸性化剤は、2〜約12個の炭素原子を有する脂肪族で飽和のモノ又はポリカルボン酸化合物であってよい。かかる有機酸の例としては、シュウ酸、コハク酸、アジピン酸、グルタル酸、酒石酸、及びクエン酸が挙げられる。クエン酸が最も好ましい有機酸性化剤である。
【0048】
[0047]酸性化剤として用いる有機酸は、VAEベースのコポリマー又はそのコモノマー前駆体と反応しない。有機酸性化剤は更に、酸性化剤を含むラテックスバインダーをその中に導入する不織繊維構造体の全ての成分と化学的に反応してはならない。しかしながら、酸性化剤として好適な有機酸は、ラテックスバインダーの架橋性のVAEベースのコポリマーの架橋を促進する触媒として作用させることができる。この理由のために、ラテックスバインダー組成物に有機酸性化剤を加えることは、幾つかの場合において、バインダーのコポリマーの早期架橋を促進させることによってバインダーエマルジョンを最終的に不安定化するように働く可能性がある。
【0049】
[0048]上記の留意事項を考慮すると、有機酸性化剤は、好ましくは、ラテックスバインダーを不織繊維構造体と接触させる数時間前以内、例えば5時間前以内、又は更には2時間前以内にVAEベースのコポリマーラテックスバインダーに加えなければならない。有機酸性化剤は、一般に、このようにして、VAEベースのコポリマーの全モノマー含量を基準として約1.0重量%〜約5.0重量%の量でVAEベースのコポリマーを含むバインダーラテックスに加える。より好ましくは、有機酸性化剤は、VAEベースのコポリマーの全モノマー含量を基準として約1.0重量%〜約2.0重量%の量でVAEベースのコポリマーを含むバインダーラテックスに加えることができる。
【0050】
[0049]ラテックスバインダーに加える酸性化剤の量は、好ましくは、構造体内の体液のpHを少なくとも約1.2pH単位の程度低下させる能力を不織繊維構造体に与えるのに有効なものである。より好ましくは、酸性化剤は、少なくとも約2.0単位のpH低下能力を不織構造体に与えるのに十分な量で加える。
【0051】
構造体の製造:
[0050]上記に記載した酸性化剤を含むラテックスバインダー組成物は、これも上記に記載した不織繊維構造体中に繊維を一緒に結合するために用いる。而して、ラテックスバインダー組成物は、機械的に絡合又は熱的に結合したウエブとは対照的に、ウェットレイド又はエアレイド及び化学結合ウエブの形態の構造体を製造する製造プロセスにおいて用いる。或いは、酸性化剤を含むラテックスバインダー組成物は、化学結合剤の不存在下で予め形成した機械的に絡合又は熱的に結合したウエブを後処理及び更に強化するために用いることができる。
【0052】
[0051]化学結合構造体に関する製造プロセスにおいては、ラテックスバインダー組成物は、印刷、泡、飽和、被覆、及び噴霧適用のような当該技術において公知の任意の手段によって、ここに記載する不織繊維構造体に適用することができる。次に、バインダーを含む構造体を、不織巻回品の製造において現在実施されているように、蒸気容器上又はオーブン内で硬化、即ち乾燥することができる。
【0053】
[0052]本発明における不織繊維構造体に関するバインダー添加レベルは、約5〜約40重量%、より好ましくは約10〜約30重量%であってよい。ラテックスバインダー組成物の繊維構造体への噴霧適用を、加熱オーブンを用いる得られたウエブの乾燥及び硬化と組み合わせることが最も好ましい。
【0054】
パーソナルケア吸収性物品:
[0053]ここに記載する酸性化剤を含む化学結合不織繊維構造体は、幼児又は成人の尿のようなアルカリ性の体液を吸収するように意図されているパーソナルケア製品における流体捕捉/分配部材として有用である。而して、本発明における構造体は、例えば幼児用おむつ、成人用失禁用物品及び用具、並びに女性用生理用品のような、湿潤完全性又は弾性が重要な用途において有用である。
【0055】
[0054]おむつのようなパーソナルケア製品における体液捕捉/分配層として不織繊維構造体を用いることは周知である。この機能を果たす構造体は、例えば米国特許5,217,455;5,716,703;7,138,561;7,767,598;及び7,786,341(これらの特許は全て参照として本明細書中に包含する)に記載されている。本発明における不織構造体は、かかる公知の状況におけるADLと同じようにしてADLとして機能させることができる。しかしながら、かかる構造体が示すことが期待される流体操作性に加えて、本発明における不織繊維構造体は、かかる構造体によって取り扱われるアルカリ性の体液のpHを低下させる更なる有益な機能を果たす。
【0056】
[0055]通常は、ADLとしてここに記載する不織繊維構造体を用いることができるパーソナルケア物品は、幼児用おむつ又は成人用失禁用製品の形態であってよい。かかる製品は、一般に、流体透過性の表面シート、吸収性流体貯蔵コア、及び表面シートと吸収性流体貯蔵コアとの間に捕捉/分配層として配置されるここに記載するタイプの少なくとも1つの不織繊維構造体を含む。これらの3つの部材は、勿論、互いに流体連絡状態であるので、物品に接触した体液は表面シートを通過して、ADL構造体によって捕捉される。次に、ADL部材は、捕捉した流体を吸収性流体貯蔵コアに移送且つ分配し、ここでそれを吸収し、吸収性物品を装着者から取り外して廃棄するまで保持する。
【0057】
[0056]ここに記載する酸性化剤を含むVAEベースのラテックスバインダーを用いて不織繊維構造体を強化することは、成人用失禁用製品においてアルカリ性の尿のpHを低下させるのに特に好適な捕捉/分配部材を与えるように働く。アルカリ性の尿に関係する問題(臭気、皮膚の炎症、細菌成長)は、高齢者においてより一般的である。これは、高齢者は、成人の尿のpHを比較的低いpHの幼児の尿と比べて上昇させる可能性がある、制酸薬、骨強化サプリメント、及び他の医薬をより多く摂取するからである。
【実施例】
【0058】
[0057]上記に記載したpH低下性の化学結合不織繊維構造体の製造、並びにかかる構造体が示すことができるpH低下効果を以下の実施例によって示す。
実施例I:
[0058]M&J Fibertech(現在はNeumag Denmark)のエアレイドパイロットウエブ形成装置上で、化学結合エアレイド不織基材を製造した。かかるエアレイド基材は、Weyerhaeuser Companyから商業的に入手できるWeyerhaeuser NB416綿毛パルプから製造した。
【0059】
[0059]50m/分の機械ライン速度を用い、155℃の出口シート温度を用いてエアレイド不織基材を製造した。エアレイド下地材の条件は、55g/m(gsm)の目標坪量、及び0.8〜1.1mmのカリパス範囲から構成されていた。ラテックスバインダーの添加量は最終不織布の14重量%を目標とし、これは12〜13%の希釈液固形分のバインダーラテックスを噴霧適用することによって達成された。
【0060】
[0060]用いたラテックスバインダーエマルジョンは、Celanese Emulsionsから商業的に入手できる自己架橋性酢酸ビニル/エチレン(VAE)エマルジョンコポリマーであるDUR-O-SET Elite(登録商標)33であった。このVAEコポリマーは+10℃のTを有していた。噴霧適用する前に、コポリマーエマルジョン中の全モノマー含量を基準として2.0重量%のエマルジョン中のクエン酸濃度を与えるのに十分な量の10%クエン酸溶液を、酸性化剤としてVAEコポリマーエマルジョンに加えた。
【0061】
[0061]得られた化学結合不織基材は、幼児用おむつ及び成人用失禁用製品のようなパーソナルケア吸収性物品における捕捉/分配層として用いるのに好適な不織構造体に加工することができる。かかる構造体は、有利には、かかる構造体を通過するアルカリ性の体液中にクエン酸を放出する。得られる体液のpHの低下は、吸収性物品内での臭気及び細菌成長を抑制し、並びに物品の着用者に関する皮膚の炎症を最小にするように働く。
【0062】
実施例II:
[0062]ラテックスバインダーで強化したADL不織基材をシミュレートするために、Whatman CR-4紙を種々のエマルジョンコポリマーラテックス組成物で処理し、硬化させた。かくして製造されたそれぞれの不織布試料を、次に、それぞれの処理された不織布試料を合成尿と接触させ、次にこの接触の結果としての尿におけるpH低下を測定することによって、その尿pH低下効果に関して試験した。
【0063】
[0063]試験において用いた合成尿は、2Lの脱イオン水中の18.0gのNaClから製造した。次に、アンモニア水を用いて液体を8.5のpHに調節した。かくして製造された合成尿は、1.005g/cmの比重、及び52ダイン/cmの表面張力を有していた。
【0064】
[0064]Whatman紙基材の処理において用いるために、幾つかのバインダー配合物を製造した。これらの配合物は、添加剤を用いるか又は用いないVAEエマルジョンコポリマー(Elite(登録商標)33)、及び種々の添加剤を用いるか又は用いないスチレン−ブタジエンラバー(SBR)エマルジョンコポリマー(Genflo(登録商標)3060)を含んでいた。これらのバインダー配合物及びそれらの特徴を表1に示す。
【0065】
【表1】

【0066】
[0065]試験のために用いた不織基材は、1つの場合においては未処理のWhatman CR-4紙から、他の場合においては試験する種々のバインダー配合物でパッドを飽和させ、150℃において2分間オーブン乾燥し、次に試験する前に一定の温度及び湿度において一晩コンディショニングしたWhatman CR-4紙から製造した。添加剤を基配合物と混合した直後に、バインダー配合物を不織基材上に加えた。試験のために製造した幾つかの不織基材の特性を表2に示す。
【0067】
【表2】

【0068】
[0066]表2の基材のそれぞれのpH低下効果を求めるために、それぞれの基材を円錐形状のフィルターに成形し、100mLのpH8.5の合成尿をこのフィルターを通して注いだ。それぞれが評価する基材試料を通過した後の尿試料のpHを測定した。これらの測定値から、試験したそれぞれの基材タイプによって試験液体に与えられた尿pHの低下を求めることができる。試験結果を表3に示す。
【0069】
【表3】

【0070】
[0067]上表におけるデータは、クエン酸のような酸性化剤をVAEラテックスバインダーに加えることによって、かかるバインダーで強化された不織基材に、基材を通過する合成尿のpHを大きく低下させる能力を与えることができることを示す。このデータは、特に添加されたアンモニア安定剤の存在下においてSBRラテックスバインダーで強化された不織基材は、それを通過する合成尿のpHを大きくは低下させないことを更に示す。クエン酸のような酸性化剤をSBRラテックスバインダーに加える試みは、SBRラテックスバインダーを凝集させるか、或いはクエン酸を含むSBRラテックスバインダーで強化した構造体に対して大きなpH低下効果を与えなかった。
【0071】
[0068]本発明の代表的な態様を特に記載したが、種々の他の修正は、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく当業者に明らかで、当業者によって容易に実施することができると理解されるであろう。したがって、特許請求の範囲はここに示す例及び記載に限定されるとは意図しておらず、むしろ、特許請求の範囲は、本発明が関係する技術の当業者によってその均等物として扱われる全ての特徴を含む本発明において存在する全ての特許性のある新規な特徴を包含すると解釈される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コポリマーの全モノマー含量を基準として約1.0重量%〜約5.0重量%の有機酸性化剤を含む架橋性酢酸ビニル−エチレン(VAE)エマルジョンコポリマーラテックスバインダーをそれに適用して架橋することによって強化されている天然又は合成繊維或いはかかる繊維の組合せを含む、パーソナルケア製品における体液捕捉/分配部材として用いるための不織繊維構造体。
【請求項2】
合成繊維がポリエステル繊維を含む、請求項1に記載の不織繊維構造体。
【請求項3】
天然繊維が綿毛パルプ繊維を含む、請求項1に記載の不織繊維構造体。
【請求項4】
綿毛パルプ繊維がセルロース綿毛パルプ繊維を含む、請求項3に記載の不織繊維構造体。
【請求項5】
構造体中の繊維が約40〜約60重量%の合成繊維及び約40〜約60重量%の天然繊維のブレンドを含む、請求項1に記載の不織繊維構造体。
【請求項6】
合成繊維が捲縮加工されている、請求項1に記載の不織繊維構造体。
【請求項7】
繊維構造体が、エアレイド、カーデッド、又はエアレイド/カーデッドウエブを含む、請求項1に記載の不織繊維構造体。
【請求項8】
ラテックスバインダー中の架橋性VAEエマルジョンコポリマーが、約75〜約90pphmの酢酸ビニル;約10〜約25pphmのエチレン;及び約1〜約10pphmの少なくとも1種類の更なる架橋性コモノマー;を含む、請求項1に記載の不織繊維構造体。
【請求項9】
少なくとも1種類の更なる架橋性コモノマーが、架橋性N−メチロール基又はC〜Cアルカノールとエーテル化しているそれらの誘導体を含む、請求項8に記載の不織繊維構造体。
【請求項10】
更なる架橋性コモノマーがアクリル酸及びメタクリル酸のN−メチロールアミドから誘導される、請求項9に記載の不織繊維構造体。
【請求項11】
ラテックスバインダーの架橋コポリマーが約−10℃〜約+30℃の範囲のガラス転移温度Tを有する、請求項1に記載の不織繊維構造体。
【請求項12】
架橋性エマルジョンコポリマーラテックスバインダーが、アニオン性乳化剤及び/又は非イオン性乳化剤である少なくとも1種類の乳化剤を安定剤として含む、請求項1に記載の不織繊維構造体。
【請求項13】
ラテックスバインダー中の有機酸性化剤が、約2〜約12個の炭素原子を有し、約2〜約7の水中でのpKaを有するモノ又はポリカルボン酸である、請求項1に記載の不織繊維構造体。
【請求項14】
ラテックスバインダー中の有機酸性化剤が、シュウ酸、コハク酸、アジピン酸、グルタル酸、酒石酸、クエン酸、及びこれらの組合せから選択される、請求項13に記載の不織繊維構造体。
【請求項15】
有機酸性化剤がクエン酸である、請求項13に記載の不織繊維構造体。
【請求項16】
構造体を通過する体液のpHを少なくとも約1.2pH単位の程度低下させるのに有効な量の有機酸性化剤を含む架橋性酢酸ビニル−エチレン(VAE)エマルジョンコポリマーラテックスバインダーをそれに適用して架橋することによって強化されている天然又は合成繊維或いはかかる繊維の組合せを含む、パーソナルケア製品における体液捕捉/分配部材として用いるための不織繊維構造体。
【請求項17】
表面シート、吸収性流体貯蔵コア、及び表面シートと吸収性流体貯蔵コアとの間に捕捉/分配層として配置されている請求項1に記載の少なくとも1つの不織繊維構造体を含む、幼児用おむつ又は成人用失禁用製品の形態のパーソナルケア製品。
【請求項18】
(a)約10〜約25pphmのエチレン;約75〜約90pphmの酢酸ビニル;及び約1〜約10pphmの少なくとも1種類の更なる架橋性コモノマー;の乳化重合生成物である架橋性エチレン−酢酸ビニルコポリマーを含む水性エマルジョンコポリマーラテックスバインダーを与え;
(b)水性エマルジョンコポリマーラテックスバインダーに、エマルジョンコポリマー中のモノマーの全重量を基準として約1.0〜約5.0重量%の有機酸性化剤を加え;
(c)酸性化剤を含む水性エマルジョンコポリマーラテックスバインダーを、ウェットレイド又はドライレイドの天然及び/又は合成繊維を含む不織繊維構造体と接触させてラテックスバインダーを含む不織繊維構造体を形成し;そしてその後に
(d)ラテックスバインダーを含む不織繊維構造体を、コポリマーを架橋させるのに十分な硬化条件にかけて、それによって酸性化剤を含む強化不織繊維構造体を形成する;
ことを含む、パーソナルケア製品における体液捕捉/分配部材として用いるのに好適な不織繊維構造体を製造する方法。
【請求項19】
不織繊維構造体の合成繊維がポリエステル繊維を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
不織繊維構造体の天然繊維が綿毛パルプ繊維を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
不織繊維構造体の繊維がセルロース綿毛パルプ繊維を含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
不織繊維構造体中の繊維が、約40〜約60重量%の合成繊維及び約40〜約60重量%の天然繊維のブレンドを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項23】
不織繊維構造体の合成繊維が捲縮加工されている、請求項18に記載の方法。
【請求項24】
不織繊維構造体が、エアレイド、カーデッド、又はエアレイド/カーデッドウエブを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項25】
エチレン−酢酸ビニルコポリマーの更なる架橋性コモノマーが架橋性N−メチロール基又はC〜Cアルカノールとエーテル化しているそれらの誘導体を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項26】
更なる架橋性コモノマーがアクリル酸及びメタクリル酸のN−メチロールアミドから誘導される、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
ラテックスバインダーの架橋コポリマーが約−10℃〜約+30℃の範囲のガラス転移温度Tを有する、請求項18に記載の方法。
【請求項28】
架橋性エマルジョンコポリマーラテックスバインダーが、アニオン性乳化剤及び/又は非イオン性乳化剤である少なくとも1種類の乳化剤を安定剤として含む、請求項18に記載の方法。
【請求項29】
ラテックスバインダーに加える有機酸性化剤が、約2〜約12個の炭素原子を有し、約2〜約7の水中でのpKaを有するモノ又はポリカルボン酸である、請求項18に記載の方法。
【請求項30】
ラテックスバインダーに加える有機酸性化剤が、シュウ酸、コハク酸、アジピン酸、グルタル酸、酒石酸、クエン酸、及びこれらの組合せから選択されるカルボン酸である、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
有機酸性化剤がクエン酸である、請求項29に記載の方法。

【公開番号】特開2012−179355(P2012−179355A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−37449(P2012−37449)
【出願日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【出願人】(500175107)セラニーズ・インターナショナル・コーポレーション (77)
【Fターム(参考)】