説明

パーティクル計数装置

【課題】パーティクルの大きさと流速の分布に関する情報を、ユーザが容易に把握可能な態様で表示することのできるパーティクル計数装置を提供する。
【解決手段】測定対象領域に光を照射する光照射手段と、前記測定対象領域に光が照射されたときに生じる散乱光を検出する散乱光検出手段とを備えたパーティクル計数装置において、前記散乱光検出手段からの検出信号に基づき、パーティクルの粒径の指標値(例えば検出信号のピーク電圧)の区分を直交座標系の横軸にとり、パーティクルの流速の指標値の区分を縦軸にとると共に、前記座標系上の、前記流速の指標値の区分及び前記粒径の指標値の区分の組によって定まる位置に、各組に属するパーティクルの個数に応じた色を有する図形を配置して成る分布図を作成して表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体処理装置等の排気中に含まれる粉塵等のパーティクルを検出するパーティクル計数装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体の処理工程で発生し、処理室内を浮遊する粉塵などのパーティクルは、製品の性能等を低下させる原因となる。そこで、半導体処理装置には、その処理室内を浮遊するパーティクルをリアルタイムで検出するパーティクル計数装置が設けられている(例えば、特許文献1を参照)。前記パーティクル計数装置は、例えば処理室からの排気ダクトに配設されており、当該排気ダクト内の測定対象領域に光源からの光を照射する。これにより、該測定対象領域内をパーティクルが通過する際に前記光源からの光がパーティクルによって散乱され、この散乱光が前記パーティクル計数装置に設けられた光検出器によって電気信号(以下、「検出信号」と呼ぶ)に変換される。
【0003】
上記検出信号の一例を図4に示す。パーティクル計数装置は、こうした検出信号を予め定められた閾値電圧と比較し、検出信号が閾値電圧を超えた部分をパーティクル由来の信号ピークと判定してパーティクルの計数を行う。
【0004】
図5は、従来のパーティクル計数装置における検出結果の表示例を示す図である。同図のヒストグラムは縦軸がパーティクルの検出個数を、横軸が光検出器による検出信号上に現れる各パーティクル由来のピークの頂点における検出電圧(図4中の矢印Hの長さ)を示している。前記パーティクル由来のピークの頂点における検出電圧の値は、該パーティクル由来の散乱光の強度に相当し、該散乱光の強度は該パーティクルの粒径に依存する。そのため、このヒストグラムを見れば測定対象領域をどのような大きさの粒子がどの程度の数通過したのかを知ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010-190814号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
また更に、上記検出信号に現れる各パーティクル由来のピークの幅(図4中の矢印Wの長さ)からパーティクルが前記測定対象領域を通過するのに要した時間を求めることができ、この値と前記測定対象領域の長さから各パーティクルの通過速度(即ち、パーティクルの流速)を求めることができる。
【0007】
そこで、図5のようなパーティクルの粒径の分布情報に加えて、こうした流速の分布情報をも表示することができれば、測定対象領域におけるパーティクルの状態をより詳細に知ることが可能となる。しかし、例えばパーティクルの流速分布を表したヒストグラムを別途作成して図5のヒストグラムと並べて表示したとしても、どのような大きさの粒子がどの程度の個数、どのような速さで通過したかをユーザが一度に把握するのは困難である。
【0008】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、パーティクルの大きさと流速の分布に関する情報を、ユーザが容易に把握可能な態様で表示することのできるパーティクル計数装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために成された本発明に係るパーティクル計数装置は、測定対象領域を通過するパーティクルを計数するパーティクル計数装置であって、
a) 測定対象領域に光を照射する光照射手段と、
b) 前記測定対象領域に光が照射されたときに生じる散乱光を検出する散乱光検出手段と、
c) 前記散乱光検出手段からの検出信号を処理することにより、測定時間内に測定対象領域を通過したパーティクルの個数、各パーティクルの粒径の指標値、及び各パーティクルの流速の指標値を生成して出力する信号処理手段と、
d) 前記信号処理手段の出力に基づき、パーティクルの粒径の指標値の区分及びパーティクルの流速の指標値の区分のいずれか一方を直交座標系の縦軸に、他方を該座標系の横軸にとると共に、前記座標系上の、前記流速の指標値の区分と前記粒径の指標値の区分の組によって定まる位置に、各組に属するパーティクルの個数に応じた色、模様、及び形状の少なくともいずれかを有する図形を配置して成る分布図を作成する分布図作成手段と、
を有することを特徴としている。
【0010】
ここで、「パーティクルの個数に応じた色」を有する図形を配置するとは、前記直交座標系上の前記各位置に表示する図形の色を前記の各組に属するパーティクルの個数によって変えることを意味している。なお、色を変えるとは、前記図形に付与する色の色相、明度、又は彩度の少なくともいずれか1つを異ならせることを意味しており、典型的には、赤、黄、緑、青といった色相を変えることが考えられるが、グレースケールのように明度のみを変えるようにしてもよい。また、「パーティクルの個数に応じた模様」を有する図形を配置するとは、前記直交座標系上の前記各位置に表示する図形に網掛けやハッチングを付与し、該網掛けの点種若しくは密度、又は前記ハッチングの線種、密度、若しくは線の方向などを前記の各組に属するパーティクルの個数によって変えることを意味している。なお、前記分布図作成手段は、前記各組に属するパーティクルの数が一つ変わるごとに前記図形の色、模様、又は形状を変えるものとしてもよいが、望ましくは、パーティクルの個数を予め定められた間隔で複数の区分(以下「個数区分」と呼ぶ)に分割し、前記パーティクルの個数が前記個数区分のいずれに属するかに応じて前記図形の色、模様、又は形状を変えるものとする。
【0011】
また、前記「粒径の指標値」は、パーティクルの粒径の値そのものであってもよいが、上述の通り、散乱光の強度(即ち、検出信号上に現れる各パーティクル由来のピークの高さ)は、各パーティクルの粒径に依存していることから、該散乱光強度の値を本発明における「粒径の指標値」としてもよい。また、前記「流速の指標値」は、パーティクルの流速の値そのものであってもよいが、上記の通り、パーティクルの流速は、各パーティクルが測定対象領域を通過するのに要した時間(即ち、検出信号上に現れる各パーティクル由来のピークの幅)より求められることから、該通過時間を本発明における「流速の指標値」としてもよい。
【0012】
上記構成を有する本発明のパーティクル計数装置によれば、パーティクル計数の結果を上記のような分布図で示すことにより、パーティクルの粒径分布と流速分布に関する情報を、容易に把握可能な態様でユーザに提示することが可能となる。
【0013】
本発明に係るパーティクル計数装置は、更に、
e) 前記流速の指標値の区分のうちのいずれかをユーザに選択させる選択手段と、
f) 前記選択手段によって選択された区分に属するパーティクルについて、前記粒径の指標値の区分を階級とし、各粒径の指標値の区分に属するパーティクルの個数を各階級の度数としたヒストグラムを作成するヒストグラム作成手段、
を有するものとすることが望ましい。
【0014】
このように、特定の速さで測定対象領域を通過したパーティクルのみについて粒径の分布を示したヒストグラムを作成する機能を設けることにより、測定対象領域を流れるパーティクルの状態をユーザに対してより詳細に示すことが可能となる。
【0015】
また、本発明に係るパーティクル計数装置は、更に、
g) 前記ヒストグラム作成手段によって作成されたヒストグラムと前記分布図作成手段によって作成された分布図とを、前記ヒストグラムの粒径の指標値の区分と前記分布図の粒径の指標値の区分を同一の軸にとって重畳表示する重畳表示手段、
を有するものとすることが望ましい。
【0016】
このように、前記の分布図とヒストグラムを重畳表示することにより、全パーティクルの粒径分布と流速分布に関する情報と、特定の流速区分に属するパーティクルの粒径分布に関する情報とをユーザが一度に把握できるようになり、ユーザの利便性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0017】
以上の通り、上記構成から成る本発明のパーティクル計数装置によれば、パーティクルの粒径分布と流速分布に関する情報を、容易に把握可能な態様でユーザに提示することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施例に係るパーティクル計数装置の全体構成を示す概略図。
【図2】同実施例のパーティクル計数装置における排気管内の測定対象領域を示す拡大断面図。
【図3】同実施例のパーティクル計数装置における測定結果の表示例を示す図。
【図4】散乱光検出器による検出信号を示す波形図。
【図5】従来のパーティクル計数装置における測定結果の表示例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を実施するための形態について実施例を挙げて詳細に説明する。図1は、本実施例に係るパーティクル計数装置の概略構成図であり、図2は該パーティクル計数装置による測定対象領域付近の拡大断面図である。
【0020】
本実施例に係るパーティクル計数装置は、大きく分けて検出部100と制御/処理部200から構成されている。検出部100は、例えば半導体製造装置の排気管122の途中に設けられている。排気管122内は真空状態ないし真空に近い状態になっており、図2において紙面と垂直な方向に(例えば紙面手前側から裏側に向かって)パーティクルPが流れてくるようになっている。
【0021】
検出部100は、排気管122の壁面に対向配置される光入射窓124と光出射窓126、前記光入射窓124から光出射窓126に向かってレーザ光を照射する光照射部128、前記レーザ光の照射方向と略直交する方向の排気管122の壁面に設けられた検出窓130、前記レーザ光の照射方向に延伸したスリット137を有する遮光板136、検出窓130及びスリット137を通過した散乱光を検出する散乱光検出器132、検出窓130と散乱光検出器132との間に配置された集光レンズ134、等を備えている。
【0022】
光照射部128は、半導体レーザ素子等の光源129と、この光源129が照射するレーザ光をシート状の光に変換するレンズ(図示せず)から成る。光照射部128から照射されたシート状の光は光入射窓124から排気管122内に入射し、排気管122内(真空領域)を通過する。これにより排気管122内の矩形シート状の測定対象領域140に光が照射され、当該領域140を通過するパーティクルPによって散乱光が発生する。前記測定対象領域140で発生した散乱光のうち検出窓130及びスリット137を通過した散乱光は集光レンズ134によって散乱光検出器132に集光される。散乱光検出器132が検出した散乱光はそこで電気信号に変換され、この電気信号(検出信号)は制御/処理部200に設けられた信号処理部210に入力される。
【0023】
制御/処理部200は、図1に示すように、信号処理部210、表示画像生成部220、及び制御部230を機能ブロックとして含んでいる。信号処理部210は、散乱光検出器132からの検出信号に基づいて所定の処理を行うものであり、パーティクルの計数を行う計数部211と、パーティクルの粒径を算出する粒径算出部212と、パーティクルの通過速度を算出する流速算出部213とを備えている。表示画像生成部220は、前記信号処理部210による処理結果を表す画像を生成するものである。制御部230は、上記各部の動作を制御するものであり、該制御部230には、操作ボタンやキーボードを備えた入力部240と、モニタ等から成る表示部250と、信号処理部210における処理結果や入力部240を用いて設定された測定条件等を記憶するためのハードディスク装置などから成る記憶部260とが接続されている。
【0024】
制御/処理部200は、例えば汎用のパーソナルコンピュータにより構成することができ、該コンピュータにインストールされた専用の制御/処理ソフトウエアを実行することにより、各種の制御やデータ処理の機能を達成することができる。なお、制御/処理部200は専用のハードウェアによって構成してもよく、あるいは専用のハードウェアとパーソナルコンピュータを組み合わせて成るものとしてもよい。
【0025】
次に、本実施例に係るパーティクル計数装置の動作について説明する。まず、ユーザが入力部240から測定に必要なパラメータ(サンプリング周波数、閾値電圧、測定時間等)を設定して測定の開始を指示すると、信号処理部210による検出信号の収集が開始される。即ち、光源129による光の照射によって生じた散乱光が散乱光検出器132によって検出され、その検出信号(アナログ電圧)が順次、信号処理部210に送出される。
【0026】
信号処理部210に送出された検出信号は計数部211にて閾値電圧と比較される。検出信号は、上述の図4に示すように、通常は閾値電圧を下回っており、パーティクルによる散乱光が検出されたときに閾値電圧を超えるようになっている。計数部211は、この検出信号が一旦閾値電圧を超え、その後再び閾値電圧を下回った時点で1つのパーティクルが通過したと判定する。
【0027】
散乱光検出器132からの検出信号は、粒径算出部212にも送出され、ここで各パーティクルに対応した検出信号の強度から該パーティクルの粒径が算出される。このとき、本実施形態に係るパーティクル測定装置では、上述のパーティクル計数の際と同様に、信号強度が閾値を超えてから再び閾値を下回るまでの時間域(図4の矢印Wで示す時間域)を、1つのパーティクル由来の散乱光が検出されている時間域として扱い、該時間域における信号強度の最大値、すなわち該パーティクル由来のピークの高さ(図4の矢印H)を各パーティクルに対応した検出信号の強度(即ち、散乱光の強度)として決定する。
【0028】
なお、入射光Iがパーティクルに照射されたときに発生する散乱光強度Iscattは以下の式で表される。
【0029】
【数1】

【0030】
なお、aはパーティクル半径、λは入射光の波長、nはパーティクルの屈折率、θは入射光の進行方向と散乱光の観測方向のなす角度、rはパーティクルから検出器までの距離を示す。式(1)より、散乱光強度はパーティクル半径aの6乗に比例し、光の波長λの4乗に反比例することがわかる。散乱光強度は検出部100における検出信号の強度に対応するため、各パーティクルによる検出信号の強度が分かれば、それに基づいて該パーティクルの半径を求めることができる。
【0031】
具体的には、例えば、散乱光検出器132による検出信号の強度とパーティクルの粒径との関係を表した換算式や対応テーブルを予め記憶部260に記憶しておき、粒径算出部212が該換算式又は対応テーブルを参照して前記各パーティクルに対応した信号強度から該パーティクルの粒径を決定する。
【0032】
また更に、散乱光検出器132からの検出信号は、流速算出部213にも送出され、ここで測定対象領域140を通過する際の各パーティクルの通過速度(流速)が算出される。このとき、本実施形態に係るパーティクル測定装置では、上記同様に、信号強度が閾値を超えてから再び閾値を下回るまでの間、即ちパーティクル由来のピークの幅(図4の矢印Wで示す時間域)を、1つのパーティクルが測定対象領域140を通過している時間域と判定し、該時間域の幅(即ち、パーティクルが測定対象領域140を通過するのに要した時間)で、パーティクルの流通方向に沿った測定対象領域140の長さ(即ち、上記シート状の光の厚さw1、又はスリット137の開口幅w2)を除算することにより該パーティクルの通過速度を算出する。
【0033】
上記のような測定及び信号処理が行われている間、表示部250にはパーティクルの通過状況に関する情報(例えば、一定時間の間に通過したパーティクルの数やその粒径、通過速度など)がリアルタイムで表示される。そして、測定が終了すると、一連の測定結果(測定中の各時点におけるパーティクルの通過数や、測定中に通過したパーティクル数の合計、各パーティクルの粒径や流速など)が測定結果ファイルとして記憶部260に格納される。各ファイルにはヘッダー情報が記録され、その下に検出で得られたデータが順に格納される。また、データ取得前に設定したパラメータデータも記憶部260に保存される。記憶部260に保存されたファイルは適宜読み出して表示部250に表示させることができる。
【0034】
図3に上記測定結果ファイルの表示例を示す。ユーザが入力部240を操作して測定結果ファイルの内容を表示するよう制御部230に指示すると、ユーザにより指定された測定結果ファイルが記憶部260から表示画像生成部220へと読み出され、該測定結果ファイルに基づいて測定結果を表すグラフが作成されて表示部250の画面上に表示される。図3の例では、読み出した測定結果ファイルの内容を二つのグラフで表し、それらを一つのウィンドウの上下に並べて表示している。
【0035】
図3の上段のグラフは、測定時間内に検出された全てのパーティクルについて、散乱光検出器132からの検出信号上に現れる各パーティクル由来のピークの高さ(即ち、ピーク電圧)を横軸に取り、パーティクルの個数を縦軸にとったヒストグラムである。このヒストグラムは、前記ピーク電圧の値を予め定められた間隔で以て複数の区間(以下、「電圧区分」と呼ぶ)に分割して、各電圧区分をヒストグラムの階級とし、各電圧区分に属しているパーティクルの個数が各階級の度数となるようにして生成されたものである。前記ピーク電圧は各パーティクルによる散乱光の強度を表しており、更に、散乱光の強度はパーティクルの粒径に依存している。従って、このヒストグラムにより、測定時間内においてどのような大きさのパーティクルがどの程度の数検出されたかを知ることができる。なお、このヒストグラムにおける各階級の度数の総和は測定時間内に検出されたパーティクルの総数に等しくなる。
【0036】
図3の下段のグラフは、測定時間内に検出された全てのパーティクルについて、その流速分布及び前記ピーク電圧の分布を示した分布図と、所定の流速で測定対象領域を通過したパーティクルについて前記ピーク電圧の分布を表したヒストグラム(以下、「部分ヒストグラム」と呼ぶ)とを重畳したものである。このグラフの横軸は、前記分布図と部分ヒストグラムとで共通して用いられるものであり、前記上段のグラフの横軸と同様の電圧区分を示している。また、このグラフの左側の縦軸は前記の部分ヒストグラムで用いられるものであり、パーティクルの個数を表している。右側の縦軸は前記の分布図で用いられるものであり、パーティクルの流速を所定の間隔(ここでは10 m/s間隔)で複数の区間に分割したもの(以下、「流速区分」と呼ぶ)を表している。
【0037】
前記分布図は、上記の通り横軸に電圧区分を、縦軸(図中右側のもの)に流速区分をとったものであり、各電圧区分と流速区分との交点に当たる位置に該電圧区分と流速区分の組合せで規定される矩形の区画を設け、各電圧区分と流速区分の組合せに属するパーティクルの個数に応じて各区画を色分け表示したものである。図3の例では、パーティクルの個数を「1〜10個」、「11〜100個」、「101〜1000個」、「1001個以上」の4つの区分(以下、「個数区分」と呼ぶ)に分類し、前記矩形区画を前記個数区分に応じた異なる色(図中では網掛け)で表示している。なお、パーティクルの個数が「0個」であった区画については図形を表示しない(即ち、矩形区画を無色透明とする)ものとした。
【0038】
一方、前記部分ヒストグラムは、上記の通り横軸に電圧区分を、縦軸(図中左側のもの)にパーティクルの個数をとったものであり、上記流速区分のうちのいずれか1つの区分に属するパーティクルのみについて、前記各電圧区分(階級)に属するパーティクルの個数が各階級の度数となるようにして作成されたものである。該部分ヒストグラムの横軸は、前記分布図の横軸と単位及びスケールが同一となっており、更に、前記分布図における各矩形区画の幅は、前記部分ヒストグラムの各階級の幅と同一となっている。これにより、両者の対応関係をユーザが容易に把握することができる。すなわち、ある流速区分に関する部分ヒストグラムの各階級の度数を色に変換したものが前記分布図の当該流速区分に対応する行(横の並び)に相当する。
【0039】
前記部分ヒストグラムとして表示する流速区分は、ユーザが入力部240を介して所望の流速区分を指定することによって適宜切り替えることができる。流速区分の指定は、例えば、図3のような表示画面上で、下段のグラフの右側の縦軸上に表示された流速区分の中から適当なものをクリックすることにより行われる。これにより、指定された流速区分に関する部分ヒストグラムが前記分布図の下に重ねて表示され、更に現在選択されている流速区分が例えば図3のように矢印で示される(同図では120〜129 m/sの区分が選択されている)。即ち、この部分ヒストグラムによれば、測定時間中にどのような大きさのパーティクルがどの程度の数通過したかを流速区分別に知ることが可能となる。なお、一つの部分ヒストグラムにおける度数の総和は、その流速区分に属するパーティクルの総数と等しくなり、各流速区分に関する部分ヒストグラムの同一階級の度数同士を全て加算すると、図3上段のヒストグラムと等しくなる。
【0040】
なお、ユーザが入力部240を介して所定の指示を入力することにより、前記分布図の表示/非表示を切り替えることもできる。部分ヒストグラムに分布図を重畳表示した状態では、パーティクル全体の流速の分布及び粒径の分布に関する情報と、特定の流速区分における粒径の分布に関する情報とをユーザが同時に参照することができる。一方、分布図を非表示とすれば、部分ヒストグラムをより見やすい状態で表示することができる。
【0041】
以上のように、本実施例に係るパーティクル計数装置によれば、測定結果を上記のような分布図で示すことにより、パーティクルの粒径分布と流速分布に関する情報をユーザが容易に把握可能な態様で表示することが可能となる。また、特定の流速で測定対象領域を通過したパーティクルのみについて粒径の分布を示した部分ヒストグラムを作成して表示する機能を設けたことにより、測定対象領域を流れるパーティクルの状態をより詳しく知ることができるようになる。また、こうした分布図と部分ヒストグラムを重畳表示することにより、全パーティクルに関する粒径と流速の分布に関する情報と、特定の流速区分におけるパーティクルの粒径分布に関する情報とを一度に把握できるようになり、ユーザの利便性を向上させることができる。
【0042】
以上、実施例を用いて本発明を実施するための形態について説明を行ったが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨の範囲で適宜変更が許容されるものである。例えば、上記実施例では分布図上において各電圧区分と各流速区分の組合せによって定まる位置にそれぞれ矩形の図形を表示し、該図形に前記組合せに属するパーティクルの個数に応じた色を付与するものとしたが、前記図形は矩形に限定されるものではなく各種の形状とすることができる。また、パーティクルの個数に応じて前記図形を色分けするのでなく、前記図形中に表示する模様の違いや図形自体の形状の違いによってパーティクルの個数を表すようにしてもよい。
【符号の説明】
【0043】
100…検出部
129…光源
132…散乱光検出器
140…測定対象領域
200…制御/処理部
210…信号処理部
211…計数部
212…粒径算出部
213…流速算出部
220…表示画像生成部
230…制御部
240…入力部
250…表示部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象領域を通過するパーティクルを計数するパーティクル計数装置であって、
a) 測定対象領域に光を照射する光照射手段と、
b) 前記測定対象領域に光が照射されたときに生じる散乱光を検出する散乱光検出手段と、
c) 前記散乱光検出手段からの検出信号を処理することにより、測定時間内に測定対象領域を通過したパーティクルの個数、各パーティクルの粒径の指標値、及び各パーティクルの流速の指標値を生成して出力する信号処理手段と、
d) 前記信号処理手段の出力に基づき、パーティクルの粒径の指標値の区分及びパーティクルの流速の指標値の区分のいずれか一方を直交座標系の縦軸に、他方を該座標系の横軸にとると共に、前記座標系上の、前記流速の指標値の区分と前記粒径の指標値の区分の組によって定まる位置に、各組に属するパーティクルの個数に応じた色、模様、及び形状の少なくともいずれかを有する図形を配置して成る分布図を作成する分布図作成手段と、
を有することを特徴とするパーティクル計数装置。
【請求項2】
更に、
e) 前記流速の指標値の区分のうちのいずれかをユーザに選択させる選択手段と、
f) 前記選択手段によって選択された区分に属するパーティクルについて、前記粒径の指標値の区分を階級とし、各粒径の指標値の区分に属するパーティクルの個数を各階級の度数としたヒストグラムを作成するヒストグラム作成手段、
を有することを特徴とする請求項1に記載のパーティクル計数装置。
【請求項3】
更に、
g) 前記ヒストグラム作成手段によって作成されたヒストグラムと前記分布図作成手段によって作成された分布図とを、前記ヒストグラムの粒径の指標値の区分と前記分布図の粒径の指標値の区分を同一の軸にとって重畳表示する重畳表示手段、
を有することを特徴とする請求項2に記載のパーティクル計数装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−88198(P2013−88198A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−227255(P2011−227255)
【出願日】平成23年10月14日(2011.10.14)
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)