説明

パーフルオロアルキル基を有するα,β−不飽和カルボニル化合物およびその製造方法

【課題】本発明は、パーフルオロアルキル基を有するα,β−不飽和カルボニル化合物およびその簡便で効率の良い製造方法を開発する。
【解決手段】スルホキシド類、過酸化物および鉄化合物の存在下、ハロゲン化パーフルオロアルキル類とα,β−不飽和カルボニル化合物とを反応させることにより、医農薬の合成中間体として有用なパーフルオロアルキル基を有するα,β−不飽和カルボニル化合物を効率良く製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パーフルオロアルキル基を有するα,β−不飽和カルボニル化合物およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
α位にパーフルオロアルキル基、β位に水酸基をもつα,β−不飽和カルボニル化合物は、医農薬分野での有用な複素環化合物合成前駆体であり、特にパーフルオロアルキル基がトリフルオロメチル基である化合物は生理活性が高い点で重要である。また、β位にアミノ基をもつα,β−不飽和カルボニル化合物も、医農薬などの合成中間体として有用な化合物であり、例えば、3−アミノアクリル酸誘導体を用いた除草剤や3−アミノ−2−シクロヘキセン−1−オン誘導体を用いた医薬中間体の合成が知られている。
トリフルオロメチル化剤を用いたα位にパーフルオロアルキル基、β位に水酸基をもつα,β−不飽和カルボニル化合物の直接製造方法としては、トリフルオロ酢酸を用いて電極反応でトリフルオロメチル基を導入する方法(非特許文献1)、(4−フルオロフェニル)(3−ニトロフェニル)(トリフルオロメチル)スルホニウム塩を用いてトリフルオロメチル基を導入する方法(特許文献1)が開示されている。しかしながら、前者は、−40℃で反応を行う必要があり、また後者は特殊な反応試剤を用いるため、いずれも工業的には使用し難い。
また、本発明のβ位に無置換または一置換のアミノ基をもつα,β−不飽和カルボニル化合物のα位にトリフルオロメチル基が導入された化合物は知られていない。
【非特許文献1】Chemistry Letters,853ページ,1998年
【特許文献1】米国特許第6,215,021号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、パーフルオロアルキル基を有するα,β−不飽和カルボニル化合物、および簡便で効率の良い該化合物の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは、先の課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、スルホキシド類、過酸化物、鉄化合物および場合によっては酸の存在下、ハロゲン化パーフルオロアルキル類により、α,β−不飽和カルボニル化合物から、一段でパーフルオロアルキル基を有するα,β−不飽和カルボニル化合物が製造できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、一般式(1)












【0005】
【化1】

【0006】
[式中、Rは水素原子、炭素数1から8のアルキル基または炭素数1から8のアルコキシ基を示し、Rは炭素数1から4のアルキル基またはフェニル基を示す。RとRは結合する原子と一体となって環を形成しても良い。Rfは炭素数1から6のパーフルオロアルキル基を示す。Yは置換されていても良い窒素原子を示す。]で表されるパーフルオロアルキル基を有するα,β−不飽和カルボニル化合物(以下「パーフルオロアルキル基を有するα,β−不飽和カルボニル化合物(1)」、あるいは「化合物(1)」ともいう)に関するものである。
また、本発明は、一般式(2)
【0007】
【化2】

【0008】
[式中、RおよびRは上記と同じ内容を示す。Yは、酸素原子または置換されていても良い窒素原子を示す。]で表されるα,β−不飽和カルボニル化合物(以下「α,β−不飽和カルボニル化合物(2)」ともいう)を、一般式(3):R3aS(=O)R3b[式中、R3aおよびR3bは、炭素数1から12のアルキル基または置換されていても良いフェニル基を示す。]で表されるスルホキシド類(以下「スルホキシド類(3)」ともいう)、過酸化物、鉄化合物および場合によっては酸の存在下に、一般式(4):Rf−X[式中、Rfは、炭素数1から6のパーフルオロアルキル基を示し、Xは、ハロゲン原子を示す。]で表されるハロゲン化パーフルオロアルキル類(以下「ハロゲン化パーフルオロアルキル類(4)」ともいう)と反応させることを特徴とする、一般式(1a)






【0009】
【化3】

【0010】
[式中、Rf、R、RおよびYは、上記と同じ内容を示す。]で表されるパーフルオロアルキル基を有するα,β−不飽和カルボニル化合物(以下「パーフルオロアルキル基を有するα,β−不飽和カルボニル化合物(1a)」、あるいは「化合物(1a)」ともいう)の製造方法に関するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明のパーフルオロアルキル基を有するα,β−不飽和カルボニル化合物は、医農薬およびそれらの合成中間体として有用であり、また本発明の製造方法は、該α,β−不飽和カルボニル化合物を高収率で得る製造方法として工業的に有効である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に本発明をさらに詳細に説明する。
一般式(1)、(1a)および(2)において、Rで示される炭素数1から8のアルキル基としては、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、シクロブチル基、シクロプロピルメチル基、2,2−ジメチルプロピル基、2−メチルブチル基、2−メチル−2−ブチル基、3−メチルブチル基、3−メチル−2−ブチル基、ペンチル基、2−ペンチル基、3−ペンチル基、シクロペンチル基、シクロペンチル基、2,3−ジメチル−2−ブチル基、3,3−ジメチルブチル基、3,3−ジメチル−2−ブチル基、2−エチルブチル基、ヘキシル基、2−ヘキシル基、3−ヘキシル基、2−メチルペンチル基、2−メチル−2−ペンチル基、2−メチル−3−ペンチル基、3−メチルペンチル基、3−メチル−2−ペンチル基、3−メチル−3−ペンチル基、4−メチルペンチル基、4−メチル−2−ペンチル基、シクロヘキシル基、2,2−ジメチル−3−ペンチル基、2,3−ジメチル−3−ペンチル基、2,4−ジメチル−3−ペンチル基、4,4−ジメチル−2−ペンチル基、3−エチル−3−ペンチル基、ヘプチル基、2−ヘプチル基、3−ヘプチル基、2−メチル−2−ヘキシル基、2−メチル−3−ヘキシル基、5−メチルヘキシル基、5−メチル−2−ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、6−メチル−2−ヘプチル基、4−メチル−3−ヘプチル基、オクチル基、2−オクチル基、3−オクチル基、2−プロピルペンチル基、2,4,4−トリメチルペンチル基、シクロオクチル基などが例示できる。

【0013】
で示される炭素数1から8のアルコキシ基としては、具体的には、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロピルオキシ基、シクロプロピルオキシ基、ブトキシ基、イソブチルオキシ基、sec−ブチルオキシ基、tert−ブチルオキシ基、シクロブチルオキシ基、シクロプロピルメチルオキシ基、2,2−ジメチルプロピルオキシ基、2−メチルブチルオキシ基、2−メチル−2−ブチルオキシ基、3−メチルブチルオキシ基、3−メチル−2−ブチルオキシ基、ペンチルオキシ基、2−ペンチルオキシ基、3−ペンチルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、2,3−ジメチル−2−ブチルオキシ基、3,3−ジメチルブチルオキシ基、3,3−ジメチル−2−ブチルオキシ基、2−エチルブチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、2−ヘキシルオキシ基、3−ヘキシルオキシ基、2−メチルペンチルオキシ基、2−メチル−2−ペンチルオキシ基、2−メチル−3−ペンチルオキシ基、3−メチルペンチルオキシ基、3−メチル−2−ペンチルオキシ基、3−メチル−3−ペンチルオキシ基、4−メチルペンチルオキシ基、4−メチル−2−ペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、2,2−ジメチル−3−ペンチルオキシ基、2,3−ジメチル−3−ペンチルオキシ基、2,4−ジメチル−3−ペンチルオキシ基、4,4−ジメチル−2−ペンチルオキシ基、3−エチル−3−ペンチルオキシ基、ヘプチルオキシ基、2−ヘプチルオキシ基、3−ヘプチルオキシ基、2−メチル−2−ヘキシルオキシ基、2−メチル−3−ヘキシルオキシ基、5−メチルヘキシルオキシ基、5−メチル−2−ヘキシルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、6−メチル−2−ヘプチルオキシ基、4−メチル−3−ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基、2−オクチルオキシ基、3−オクチルオキシ基、2−プロピルペンチルオキシ基、2,4,4−トリメチルペンチルオキシ基、シクロオクチルオキシ基などが例示できる。
【0014】
また、(1)、(1a)および(2)において、Rで示される炭素数1から4のアルキル基としては、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、シクロブチル基、シクロプロピルメチル基などが例示できる。
【0015】
さらに、一般式(3)において、R3aおよびR3bで示される炭素数1から12のアルキル基としては、具体的には、メチル基、ブチル基、ドデシル基などが例示できる。R3aおよびR3bで示される置換されていても良いフェニル基としては、具体的には、フェニル基、p−トリル基、m−トリル基、o−トリル基などが例示できる。R3aおよびR3bは、収率が良い点でメチル基、ブチル基、ドデシル基、フェニル基、p−トリル基が望ましく、メチル基がさらに望ましい。
【0016】
さらに、一般式(1)、(1a)および(4)において、Rfで示される炭素数1から6のパーフルオロアルキル基として具体的には、トリフルオロメチル基、パーフルオロエチル基、パーフルオロプロピル基、パーフルオロイソプロピル基、パーフルオロシクロプロピル基、パーフルオロブチル基、パーフルオロイソブチル基、パーフルオロ−sec−ブチル基、パーフルオロ−tert−ブチル基、パーフルオロシクロブチル基、パーフルオロシクロプロピルメチル基、パーフルオロペンチル基、パーフルオロ−1,1−ジメチルプロピル基、パーフルオロ−1,2−ジメチルプロピル基、パーフルオロネオペンチル基、パーフルオロ−1−メチルブチル基、パーフルオロ−2−メチルブチル基、パーフルオロ−3−メチルブチル基、パーフルオロシクロブチルメチル基、パーフルオロ−2−シクロプロピルエチル基、パーフルオロシクロペンチル基、パーフルオロヘキシル基、パーフルオロ−1−メチルペンチル基、パーフルオロ−2−メチルペンチル基、パーフルオロ−3−メチルペンチル基、パーフルオロイソヘキシル基、パーフルオロ−1,1−ジメチルブチル基、パーフルオロ−1,2−ジメチルブチル基、パーフルオロ−2,2−ジメチルブチル基、パーフルオロ−1,3−ジメチルブチル基、パーフルオロ−2,3−ジメチルブチル基、パーフルオロ−3,3−ジメチルブチル基、パーフルオロ−1−エチルブチル基、パーフルオロ−2−エチルブチル基、パーフルオロ−1,1,2−トリメチルプロピル基、パーフルオロ−1,2,2−トリメチルプロピル基、パーフルオロ−1−エチル−1−メチルプロピル基、パーフルオロ−1−エチル−2−メチルプロピル基またはパーフルオロシクロヘキシル基などが例示できる。医農薬・電子材料およびそれらの合成中間体として有用な点で、トリフルオロメチル基、パーフルオロエチル基、パーフルオロプロピル基、パーフルオロイソプロピル基、パーフルオロブチル基、パーフルオロイソブチル基、パーフルオロ−sec−ブチル基、パーフルオロ−tert−ブチル基またはパーフルオロヘキシル基が望ましく、トリフルオロメチル基またはパーフルオロエチル基がさらに望ましい。
【0017】
さらに、一般式(4)において、Xとしては、具体的には、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子が例示でき、収率が良い点で臭素原子またはヨウ素原子が望ましく、ヨウ素原子がさらに望ましい。
【0018】
さらに、一般式(1)、(1a)、(2)において、YまたはYで示される窒素原子は、アセチル基、プロピオニル基、ピバロイル基、プロパルギル基、ベンゾイル基、p−フェニルベンゾイル基、ベンジル基、p−メトキシベンジル基、トリチル基、4,4’−ジメトキシトリチル基、メトキシエトキシメチル基、フェニルオキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基、tert−ブトキシカルボニル基、9−フルオレニルメトキシカルボニル基、アリル基、p−メトキシフェニル基、トリフルオロアセチル基、メトキシメチル基、2−(トリメチルシリル)エトキシメチル基、アリルオキシカルボニル基、トリクロロエトキシカルボニル基、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基などで置換されていても良い。
【0019】
ここで、一般式(2)で表されるα,β−不飽和カルボニル化合物(2)の具体例としては、アセト酢酸エチル、4−メチル−3−オキソペンタン酸エチル、4−ヒドロキシ−3−ペンテン−2−オン、5−ヒドロキシ−4−ヘプテン−3−オン、アセト酢酸オクチル、3−ヒドロキシ−3−フェニル−2−プロペン酸エチル、2−ヒドロキシ−2−ノネン−4−オン、3−(N−tert−ブトキシカルボニルアミノ)クロトン酸メチル、3−アミノ−2−シクロヘキセン−1−オンなどが挙げられる。
【0020】
また、一般式(3)で表されるスルホキシド類(3)の具体例としては、ジメチルスルホキシド、ジブチルスルホキシド、ジ−sec−ブチルスルホキシド、メチルフェニルスルホキシド、(R)−(+)−メチル−p−トリルスルホキシド、(S)−(−)−メチル−p−トリルスルホキシド、ジフェニルスルホキシドなどが挙げられる。スルホキシド類としては、収率がよく、安価である点で、ジメチルスルホキシド、ジブチルスルホキシド、ジフェニルスルホキシドが好ましく、さらに好ましくはジメチルスルホキシドである。
【0021】
本発明のパーフルオロアルキル基を有するα,β−不飽和カルボニル化合物(1)や(1a)は、以上のα,β−不飽和カルボニル化合物(2)を、スルホキシド類(3)、過酸化物、鉄化合物および場合によって酸の存在下に、ハロゲン化パーフルオロアルキル類(4)と反応させて得られる。
本発明のパーフルオロアルキル基を有するα,β−不飽和カルボニル化合物(1),(1a)の具体例としては、3−オキソ−2−トリフルオロメチルブタン酸エチル、4−メチル−3−オキソ−2−トリフルオロメチルペンタン酸エチル、4−ヒドロキシ−3−トリフルオロメチル−3−ペンテン−2−オン、5−ヒドロキシ−4−トリフルオロメチル−4−ヘプテン−3−オン、3−オキソ−2−トリフルオロメチルブタン酸オクチル、3−ヒドロキシ−3−フェニル−2−トリフルオロメチル−2−プロペン酸エチル、2−ヒドロキシ−3−トリフルオロメチル−2−ノネン−4−オン、3−(N−tert−ブトキシカルボニル)アミノ−2−トリフルオロメチルクロトン酸メチル、3−アミノ−2−トリフルオロメチル−2−シクロヘキセン−1−オンなどが挙げられる。

【0022】
本発明のパーフルオロアルキル基を有するα,β−不飽和カルボニル化合物(1),(1a)の構造は、核磁気共鳴スペクトル(19F−NMR)によって、−50から−65ppm付近のトリフルオロメチル基に由来するピークなどにより確認することができる。
【0023】
次に、本発明の製造方法について、詳細に述べる。
本発明のパーフルオロアルキル基を有するα,β−不飽和カルボニル化合物(1),(1a)は、α,β−不飽和カルボニル化合物(2)を、スルホキシド類(3)、過酸化物、鉄化合物および場合によって酸の存在下に、ハロゲン化パーフルオロアルキル類(4)と反応させて得られる。
本発明は、スルホキシド類(3)をそのまま溶媒として用いても良いが、反応に害を及ぼさない溶媒を用いることもできる。具体的には、水、N,N−ジメチルホルムアミド、酢酸、トリフルオロ酢酸、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、酢酸エチル、アセトン、1,4−ジオキサン、tert−ブチルアルコール、エタノール、メタノール、イソプロピルアルコール、トリフルオロエタノール、ヘキサメチルリン酸トリアミド、N−メチル−2−ピロリドン、N,N,N’,N’−テトラメチル尿素またはN,N’−ジメチルプロピレン尿素などが挙げることができ、適宜これらを組み合わせて用いても良い。収率が良い点で、水、スルホキシド類(3)、または水とスルホキシド類(3)の混合溶媒を用いることが望ましい。
【0024】
α,β−不飽和カルボニル化合物(2)とスルホキシド類(3)とのモル比は、1:1から1:200が望ましく、収率が良い点で1:10から1:100がさらに望ましい。
α,β−不飽和カルボニル化合物(2)とハロゲン化パーフルオロアルキル類(4)とのモル比は、1:1から1:100が望ましく、収率が良い点で1:1.5から1:10がさらに望ましい。
【0025】
過酸化物は、例えば過酸化水素、過酸化水素−尿素複合体、tert−ブチルペルオキシドまたは過酢酸などを例示することができ、これらを必要に応じて組み合わせて用いても良い。収率が良い点で過酸化水素または過酸化水素−尿素複合体が望ましい。
過酸化水素は、水で希釈して用いても良い。その際の濃度は、3重量%から70重量%であれば良いが、市販の35重量%をそのまま用いても良い。収率が良くかつ安全な点で、水で希釈して10重量%から30重量%とすることがさらに望ましい。
α,β−不飽和カルボニル化合物(2)と過酸化物のモル比は、1:0.1から1:10が望ましく、収率が良い点で1:1.5から1:3がさらに望ましい。
【0026】
鉄化合物は、収率が良い点で鉄(II)塩が望ましく、例えば、硫酸鉄(II)、硫酸鉄(II)アンモニウム、テトラフルオロホウ酸鉄(II)、塩化鉄(II)、臭化鉄(II)またはヨウ化鉄(II)などの無機酸塩や、酢酸鉄(II)、シュウ酸鉄(II)、ビスアセチルアセトナト鉄(II)、フェロセンまたはビス(η−ペンタメチルシクロペンタジエニル)鉄などの有機金属化合物を例示することができ、これらを適宜組み合わせて用いても良い。また、鉄粉、鉄(0)塩または鉄(I)塩と過酸化物のような酸化試薬を組み合わせて、系内で鉄(II)塩を発生させて用いることもできる。その際、反応に用いる過酸化水素をそのまま酸化試薬として用いることもできる。収率が良い点で硫酸鉄(II)、硫酸鉄(II)アンモニウム、テトラフルオロホウ酸鉄(II)、フェロセンまたは鉄粉を用いることが望ましい。
これらの鉄化合物は、固体のまま用いても良いが、溶液として用いることもできる。溶液として用いる場合、溶媒としては上記の溶媒のいずれでも良いが、中でも水が望ましい。その際の鉄化合物溶液の濃度は、収率が良い点で、0.1mol/Lから10mol/Lが望ましく、0.5mol/Lから5mol/Lがさらに望ましい。
α,β−不飽和カルボニル化合物(2)と鉄化合物のモル比は、1:0.01から1:10が望ましく、収率が良い点で1:0.1から1:1がさらに望ましい。
【0027】
反応温度は、20℃から100℃の範囲から適宜選ばれた温度で行うことができる。収率が良い点で20℃から70℃が望ましい。
反応時間は、通常、1〜300分、好ましくは10〜60分程度である。
反応を密閉系で行う場合、大気圧(0.1MPa)から1.0MPaの範囲から適宜選ばれた圧力で行うことができるが、大気圧でも反応は充分に進行する。また、反応の際の雰囲気は、アルゴン、窒素などの不活性ガスでも良いが、空気中でも充分に進行する。
一般式(4)のハロゲン化パーフルオロアルキル類(4)が、室温で気体の場合は、気体のまま用いても良い。その際、アルゴン、窒素、空気、ヘリウム、酸素などの気体で希釈して混合気体としても良く、ハロゲン化パーフルオロアルキル類(4)のモル分率が1%から100%の気体として用いることができる。密閉系で反応を実施する場合、ハロゲン化パーフルオロアルキル類(4)または混合気体を反応雰囲気として用いることができる。その際の圧力は、大気圧(0.1MPa)から1.0MPaの範囲から適宜選ばれた圧力で行うことができるが、大気圧でも反応は充分に進行する。また、開放系でハロゲン化パーフルオロアルキル類(4)または混合気体をバブリングして反応溶液中に導入しても良い。その際のハロゲン化パーフルオロアルキル類(4)または混合気体の導入速度は、反応のスケール、触媒量、反応温度、混合気体のハロゲン化パーフルオロアルキル類(4)のモル分率にもよるが、毎分1mLから200mLの範囲から選ばれた速度で良い。
【0028】
本発明の製造方法では、酸を添加することにより目的物の収率を向上させることができる。酸としては、硫酸、塩酸、臭化水素、ヨウ化水素、硝酸、リン酸、ヘキサフルオロリン酸またはテトラフルホロホウ酸などの無機酸や、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、シュウ酸、p−トルエンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸またはトリフルオロ酢酸などの有機酸を例示することができ、適宜これらを組み合わせて用いても良い。収率が良い点で硫酸が望ましい。
また、硫酸の酸性塩を用いても良い。酸性塩としては、硫酸水素テトラメチルアンモニウム、硫酸水素テトラエチルアンモニウム、硫酸水素テトラブチルアンモニウム、硫酸水素テトラフェニルホスホニウムなどを例示できる。
これらの酸は、希釈して用いても良い。その際の溶媒は上記の溶媒であれば良く、中でも水またはスルホキシド類(3)が望ましい。
α,β−不飽和カルボニル化合物(2)と酸のモル比は、1:0.001から1:5が望ましく、収率が良い点で1:0.01から1:2がさらに望ましい。
【0029】
反応後の溶液から目的物を単離する方法に特に限定はないが、溶媒抽出、カラムクロマトグラフィー、分取薄層クロマトグラフィー、分取液体クロマトグラフィー、再結晶または昇華などの汎用的な方法で目的物を得ることができる。
【0030】
なお、一般式(1)で表される本発明の化合物(1)や一般式(1a)で表される化合物(1a)は、溶媒やpHによっては、イミノ−アミノ互変異性体の平衡混合物となるが、本発明はこれらを全て含むものである。
また、一般式(1)、(1a)または(2)の化合物で、Yが置換されていても良い窒素原子の場合、溶媒やpHによっては、イミノ−アミノ互変異性体の平衡混合物となるが、本発明はこれらを全て含むものである。
さらに、一般式(1a)または(2)の化合物で、Yが酸素原子の場合、溶媒やpHによっては、ケト−エノール互変異性体の平衡混合物となるが、本発明はこれらを全て含むものである。
【実施例】
【0031】
次に本発明を実施例によって詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0032】
(実施例1)
下記の反応式に基づいて、化合物(1a)を製造した。
【0033】
【化4】

【0034】
二口フラスコの容器内をアルゴンで置換した。ジメチルスルホキシド4.0mL、アセト酢酸エチル0.126mL(1.0mmol)、ヨウ化トリフルオロメチルの3.0mol/Lジメチルスルホキシド溶液1.0mL、1.0mol/L硫酸鉄(II)水溶液0.3mLおよび30%過酸化水素水0.2mLを加えた。40から50℃で20分間撹拌した後、反応溶液を室温まで冷却した。2,2,2−トリフルオロエタノールを内部標準物質とした19F−NMRにより、3−オキソ−2−トリフルオロメチルブタン酸エチルの生成を確認した(生成率47%)。
19F−NMR(重ジメチルスルホキシド):δ−63.7.
MS(m/z):198[M]
【0035】
(実施例2)
下記の反応式に基づいて、化合物(1a)を製造した。
【化5】

【0036】
二口フラスコの容器内をアルゴンで置換した。ジメチルスルホキシド4.0mL、4−メチル−3−オキソペンタン酸エチル0.161mL(1.0mmol)、ヨウ化トリフルオロメチルの3.0mol/Lジメチルスルホキシド溶液1.0mL、1.0mol/L硫酸鉄(II)水溶液0.3mLおよび30%過酸化水素水0.2mLを加えた。40から50℃で20分間撹拌した後、反応溶液を室温まで冷却した。2,2,2−トリフルオロエタノールを内部標準物質とした19F−NMRにより、4−メチル−3−オキソ−2−トリフルオロメチルペンタン酸エチルの生成を確認した(生成率20%)。
19F−NMR(重ジメチルスルホキシド):δ−63.7.
MS(m/z):226[M]

【0037】
(実施例3)
下記の反応式に基づいて、化合物(1a)を製造した。
【0038】
【化6】

【0039】
二口フラスコの容器内をアルゴンで置換した。ジメチルスルホキシド4.0mL、2,4−ペンタンジオン0.043mL(0.042mmol)と4−ヒドロキシ−3−ペンテン−2−オン0.060mL(0.58mmol)の混合物、ヨウ化トリフルオロメチルの3.0mol/Lジメチルスルホキシド溶液1.0mL、1.0mol/L硫酸鉄(II)水溶液0.3mLおよび30%過酸化水素水0.2mLを加えた。40から50℃で20分間撹拌した後、反応溶液を室温まで冷却した。2,2,2−トリフルオロエタノールを内部標準物質とした19F−NMRにより、3−トリフルオロメチル−2,4−ペンタンジオンの生成を確認した(生成率64%)。また、19F−NMRにより4−ヒドロキシ−3−トリフルオロメチル−3−ペンテン−2−オンが微量生成していることも確認した。
3−トリフルオロメチル−2,4−ペンタンジオン
19F−NMR(重ジメチルスルホキシド):δ−62.7.
MS(m/z):168[M]
4−ヒドロキシ−3−トリフルオロメチル−3−ペンテン−2−オン
19F−NMR(重ジメチルスルホキシド):δ−51.3.
【0040】
(実施例4)
下記の反応式に基づいて、化合物(1a)を製造した。
【0041】
【化7】

【0042】
二口フラスコの容器内をアルゴンで置換した。ジメチルスルホキシド4.0mL、3,5−ヘプタンジオン0.074mL(0.055mmol)と5−ヒドロキシ−4−ヘプテン−3−オン0.061mL(0.045mmol)の混合物、ヨウ化トリフルオロメチルの3.0mol/Lジメチルスルホキシド溶液1.0mL、1.0mol/L硫酸鉄(II)水溶液0.3mLおよび30%過酸化水素水0.2mLを加えた。40から50℃で20分間撹拌した後、反応溶液を室温まで冷却した。2,2,2−トリフルオロエタノールを内部標準物質とした19F−NMRにより、4−トリフルオロメチル−3,5−ヘプタンジオンの生成を確認した(生成率66%)。また、19F−NMRにより5−ヒドロキシ−4−トリフルオロメチル−4−ヘプテン−3−オンも微量生成していることを確認した。
4−トリフルオロメチル−3,5−ヘプタンジオン
19F−NMR(重ジメチルスルホキシド):δ−62.5.
MS(m/z):196[M]
5−ヒドロキシ−4−トリフルオロメチル−4−ヘプテン−3−オン
19F−NMR(重ジメチルスルホキシド):δ−50.7.
【0043】
(実施例5)
下記の反応式に基づいて、化合物(1a)を製造した。
【0044】
【化8】

【0045】
二口フラスコの容器内をアルゴンで置換した。ジメチルスルホキシド4.0mL、アセト酢酸オクチル0.228mL(1.0mmol)、ヨウ化トリフルオロメチルの3.0mol/Lジメチルスルホキシド溶液1.0mL、1.0mol/L硫酸鉄(II)水溶液0.3mLおよび30%過酸化水素水0.2mLを加えた。40から50℃で20分間撹拌した後、反応溶液を室温まで冷却した。2,2,2−トリフルオロエタノールを内部標準物質とした19F−NMRにより、3−オキソ−2−トリフルオロメチルブタン酸オクチルの生成を確認した(生成率33%)。
H−NMR(重ジメチルスルホキシド):δ0.87(t,3H,J=6.9Hz),1.22−1.35(m,10H),1.61(tt,2H,J=6.7Hz,6.7Hz)2.34(s,3H),4.21(t,2H,J=6.7Hz),5.38(q,1H,JHF=9.0Hz).
19F−NMR(重ジメチルスルホキシド):δ−63.7(d,JFH=9.0Hz).
MS(m/z):281[M−1]
【0046】
(実施例6)
下記の反応式に基づいて、化合物(1a)を製造した。







【0047】
【化9】

【0048】
二口フラスコの容器内をアルゴンで置換した。ジメチルスルホキシド4.0mL、3−オキソ−3−フェニルプロピオン酸エチル0.157mL(0.091mmol)と3−ヒドロキシ−3−フェニル−2−プロペン酸エチル0.015mL(0.009mmol)の混合物、ヨウ化トリフルオロメチルの3.0mol/Lジメチルスルホキシド溶液1.0mL、1.0mol/L硫酸鉄(II)水溶液0.3mLおよび30%過酸化水素水0.2mLを加えた。40から50℃で20分間撹拌した後、反応溶液を室温まで冷却した。2,2,2−トリフルオロエタノールを内部標準物質とした19F−NMRにより、3−オキソ−3−フェニル−2−トリフルオロメチルプロピオン酸エチルの生成を確認した(生成率49%)。また、19F−NMRにより3−ヒドロキシ−3−フェニル−2−トリフルオロメチル−2−プロペン酸エチルも微量生成していることを確認した。
3−オキソ−3−フェニル−2−トリフルオロメチルプロピオン酸エチル
H−NMR(重ジメチルスルホキシド):δ1.09(t,3H,J=7.1Hz),4.17(q,2H,J=7.1Hz),6.31(q,1H,JHF=8.5Hz),7.58−7.63(m,2H),7.71−7.77(m,1H),8.05−8,09(m,2H).
19F−NMR(重ジメチルスルホキシド):δ−63.4(d,JFH=8.5Hz).
MS(m/z):260[M]
3−ヒドロキシ−3−フェニル−2−トリフルオロメチル−2−プロペン酸エチル
19F−NMR(重ジメチルスルホキシド):δ−57.1.
【0049】
(実施例7)
下記の反応式に基づいて、化合物(1a)を製造した。
【0050】
【化10】



【0051】
二口フラスコに2,4−ノナンジオン0.066g(0.042mmol)と2−ヒドロキシ−2−ノネン−4−オン0.090g(0.058mmol)の混合物を量り取り、容器内をアルゴンで置換した。ジメチルスルホキシド4.0mL、ヨウ化トリフルオロメチルの3.0mol/Lジメチルスルホキシド溶液1.0mL、1.0mol/L硫酸鉄(II)水溶液0.3mLおよび30%過酸化水素水0.2mLを加えた。40から50℃で20分間撹拌した後、反応溶液を室温まで冷却した。2,2,2−トリフルオロエタノールを内部標準物質とした19F−NMRにより、3−トリフルオロメチル−2,4−ノナンジオンの生成を確認した(生成率52%)。また、19F−NMRにより2−ヒドロキシ−3−トリフルオロメチル−2−ノネン−4−オンも微量生成していることを確認した。
3−トリフルオロメチル−2,4−ノナンジオン
H−NMR(重ジメチルスルホキシド):δ0.85(t,3H,J=7.1Hz),1.17−1.31(m,4H),1.49(tt,2H,J=7.2Hz,7.2Hz)2.28(s,3H),2.65(t,2H,J=7.2Hz),5.45(q,1H,JHF=9.3Hz).
19F−NMR(重ジメチルスルホキシド):δ−62.6(d,JFH=9.3Hz).
MS(m/z):224[M]
2−ヒドロキシ−3−トリフルオロメチル−2−ノネン−4−オン
19F−NMR(重ジメチルスルホキシド):δ−50.7.
【0052】
(実施例8)
下記の反応式に基づいて、化合物(1)を製造した。
【0053】
【化11】

【0054】
二口フラスコにフェロセン0.056g(0.3mmol)を量り取り、容器内をアルゴンで置換した。3−(N−tert−ブトキシカルボニルアミノ)クロトン酸メチル0.215g(1.0mmol)、ジメチルスルホキシド4.0mL、ヨウ化トリフルオロメチルの3.0mol/Lジメチルスルホキシド溶液1.0mLおよび30%過酸化水素水0.2mLを加えた。40から50℃で20分間撹拌した後、反応溶液を室温まで冷却した。2,2,2−トリフルオロエタノールを内部標準物質とした19F−NMRにより、3−(N−tert−ブトキシカルボニル)アミノ−2−トリフルオロメチルクロトン酸メチルの生成を確認した(生成率67%)。カラムクロマトグラフィーにより3−(N−tert−ブトキシカルボニルアミノ)−2−トリフルオロメチルクロトン酸メチルを淡黄色オイルとして得た(0.214g、収率50%)。
H−NMR(重クロロホルム):δ1.50(s,9H),2.60(q,JHF=2.45Hz,3H),3.81(s,3H),11.22(brs,1H).
13C−NMR(重クロロホルム):δ17.1(q,JCF=4.4Hz),27.3,52.0,82.2,98.3(q,JCF=32.1Hz),124.5(q,JCF=269.5Hz),146.7,161.4(q,JCF=1.88Hz),167.3.
19F−NMR(重クロロホルム):δ−52.3(d,JHF=2.45Hz).
MS(m/z):283[M]

【0055】
(実施例9)
下記の反応式に基づいて、化合物(1)を製造した。
【0056】
【化12】

【0057】
二口フラスコに3−アミノ−2−シクロヘキセン−1−オンを0.11g(1.0mmol)量り取り、容器内をアルゴンで置換した。ジメチルスルホキシド4.0mL、ヨウ化トリフルオロメチルの3.0mol/Lジメチルスルホキシド溶液1.0mL、1.0mol/L硫酸鉄(II)水溶液0.3mLおよび30%過酸化水素水0.2mLを加えた。40から50℃で20分間撹拌した後、反応溶液を室温まで冷却した。2,2,2−トリフルオロエタノールを内部標準物質とした19F−NMRにより、3−アミノ−2−トリフルオロメチル−2−シクロヘキセン−1−オンの生成を確認した(生成率88%)。カラムクロマトグラフィーにより3−アミノ−2−トリフルオロメチル−2−シクロヘキセン−1−オンを白色固体として得た(0.152g、収率85%)。
H−NMR(重メタノール):δ1.89(tt,J=6.5,6.0Hz,2H),2.32(t,J=6.5Hz,2H),2.58(t,J=6.0Hz,2H).
13C−NMR(重メタノール):δ21.4,31.9,38.1(q,JCF=1.3Hz),99.8(q,JCF=26.3Hz),127.2(q,JCF=272.7Hz),168.9,195.6.
19F−NMR(重メタノール):δ−57.4.
MS(m/z):179[M]
【0058】
(実施例10)(化合物(1)の製造)
二口フラスコに3−アミノ−2−シクロヘキセン−1−オンを0.11g(1.0mmol)量り取り、容器内をアルゴンで置換した。ジメチルスルホキシド2.0mL、硫酸の1Nジメチルスルホキシド溶液1.0mL、ヨウ化トリフルオロメチルの3.0mol/Lジメチルスルホキシド溶液1.0mL、1.0mol/L硫酸鉄(II)水溶液0.3mLおよび30%過酸化水素水0.2mLを加えた。40から50℃で20分間撹拌した後、反応溶液を室温まで冷却した。2,2,2−トリフルオロエタノールを内部標準物質とした19F−NMRにより、3−アミノ−2−トリフルオロメチル−2−シクロヘキセン−1−オンの生成を確認した(生成率56%)。
【0059】
(実施例11)(化合物(1)の製造)
二口フラスコに3−アミノ−2−シクロヘキセン−1−オンを0.11g(1.0mmol)およびフェロセンを0.056g(0.3mmol)量り取り、容器内をアルゴンで置換した。ジメチルスルホキシド2.0mL、硫酸の1Nジメチルスルホキシド溶液1.0mL、ヨウ化トリフルオロメチルの3.0mol/Lジメチルスルホキシド溶液1.0mLおよび30%過酸化水素水0.2mLを加えた。40から50℃で20分間撹拌した後、反応溶液を室温まで冷却した。2,2,2−トリフルオロエタノールを内部標準物質とした19F−NMRにより、3−アミノ−2−トリフルオロメチル−2−シクロヘキセン−1−オンの生成を確認した(生成率49%)。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明のパーフルオロアルキル基を有するα,β−不飽和カルボニル化合物は、医農薬分野での有用な化合物の合成前駆体であり、医農薬などの合成中間体などの用途として有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)
【化1】


[式中、Rは水素原子、炭素数1から8のアルキル基または炭素数1から8のアルコキシ基を示し、Rは炭素数1から4のアルキル基またはフェニル基を示す。RとRは結合する原子と一体となって環を形成しても良い。Rfは炭素数1から6のパーフルオロアルキル基を示す。Yは置換されていても良い窒素原子を示す。]で表されるパーフルオロアルキル基を有するα,β−不飽和カルボニル化合物。
【請求項2】
一般式(1)のRが炭素数1から8のアルコキシ基であり、Rが炭素数1から4のアルキル基であり、Rfがトリフルオロメチル基である請求項1に記載のパーフルオロアルキル基を有するα,β−不飽和カルボニル化合物。
【請求項3】
一般式(1)のRとRが結合する原子と一体となってシクロヘキセン環を形成し、Rfがトリフルオロメチル基である請求項1に記載のパーフルオロアルキル基を有するα,β−不飽和カルボニル化合物。
【請求項4】
一般式(2)
【化2】


[式中、Rは水素原子、炭素数1から8のアルキル基または炭素数1から8のアルコキシ基を示し、Rは炭素数1から4のアルキル基またはフェニル基を示す。RとRは結合する原子と一体となって環を形成しても良い。Yは酸素原子または置換されていても良い窒素原子を示す。]で表されるα,β−不飽和カルボニル化合物を、一般式(3):R3aS(=O)R3b[式中、R3aおよびR3bは、炭素数1から12のアルキル基または置換されていても良いフェニル基を示す。]で表されるスルホキシド類、過酸化物、鉄化合物および場合によっては酸の存在下に、一般式(4):Rf−X[式中、Rfは、炭素数1から6のパーフルオロアルキル基を示し、Xは、ハロゲン原子を示す。]で表されるハロゲン化パーフルオロアルキル類と反応させることを特徴とする、一般式(1a)
【化3】


[式中、Rf、R、RおよびYは、上記と同じ内容を示す。]で表されるパーフルオロアルキル基を有するα,β−不飽和カルボニル化合物の製造方法。
【請求項5】
一般式(2)のRが、炭素数1から8のアルコキシ基であり、Rが炭素数1から4のアルキル基であり、Yが置換されていても良い窒素原子である請求項4に記載のパーフルオロアルキル基を有するα,β−不飽和カルボニル化合物の製造方法。
【請求項6】
一般式(2)のRとRが結合する原子と一体となってシクロヘキセン環を形成し、Yが置換されていても良い窒素原子である請求項4に記載のパーフルオロアルキル基を有するα,β−不飽和カルボニル化合物の製造方法。
【請求項7】
一般式(4)のXが、ヨウ素原子または臭素原子である請求項4から6のいずれかに記載のパーフルオロアルキル基を有するα,β−不飽和カルボニル化合物の製造方法。
【請求項8】
一般式(4)のRfがトリフルオロメチル基またはパーフルオロエチル基である請求項4から7のいずれかに記載のパーフルオロアルキル基を有するα,β−不飽和カルボニル化合物の製造方法。
【請求項9】
鉄化合物が、硫酸鉄(II)、硫酸鉄(II)アンモニウム、テトラフルオロホウ酸鉄(II)、塩化鉄(II)、臭化鉄(II)、ヨウ化鉄(II)、酢酸鉄(II)、シュウ酸鉄(II)、ビスアセチルアセトナト鉄(II)、フェロセン、ビス(η−ペンタメチルシクロペンタジエニル)鉄または鉄粉である請求項4から8のいずれかに記載のパーフルオロアルキル基を有するα,β−不飽和カルボニル化合物の製造方法。
【請求項10】
鉄化合物が、硫酸鉄(II)またはフェロセンである請求項4から9のいずれかに記載のパーフルオロアルキル基を有するα,β−不飽和カルボニル化合物の製造方法。
【請求項11】
過酸化物が、過酸化水素、過酸化水素−尿素複合体、tert−ブチルペルオキシドまたは過酢酸である請求項4から10のいずれかに記載のパーフルオロアルキル基を有するα,β−不飽和カルボニル化合物の製造方法。
【請求項12】
過酸化物が、過酸化水素である請求項4から11のいずれかに記載のパーフルオロアルキル基を有するα,β−不飽和カルボニル化合物の製造方法。
【請求項13】
酸が、硫酸、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硝酸、リン酸、ヘキサフルオロリン酸、テトラフルオロホウ酸、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、シュウ酸、p−トルエンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸またはトリフルオロ酢酸である請求項4から12のいずれかに記載のパーフルオロアルキル基を有するα,β−不飽和カルボニル化合物の製造方法。
【請求項14】
酸が、硫酸である請求項4から13のいずれかに記載のパーフルオロアルキル基を有するα,β−不飽和カルボニル化合物の製造方法。
【請求項15】
一般式(3)のR3aおよびR3bが、メチル基である請求項4から14のいずれかに記載のパーフルオロアルキル基を有するα,β−不飽和カルボニル化合物の製造方法。
【請求項16】
反応温度が20℃から100℃の範囲から選ばれた温度である請求項4から15のいずれかに記載のパーフルオロアルキル基を有するα,β−不飽和カルボニル化合物の製造方法。
【請求項17】
反応圧が大気圧(0.1MPa)から1.0MPaの範囲から選ばれた圧力である請求項4から16のいずれかに記載のパーフルオロアルキル基を有するα,β−不飽和カルボニル化合物の製造方法。

【公開番号】特開2008−280250(P2008−280250A)
【公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−123138(P2007−123138)
【出願日】平成19年5月8日(2007.5.8)
【出願人】(000003300)東ソー株式会社 (1,901)
【出願人】(591180358)東ソ−・エフテック株式会社 (91)
【出願人】(000173762)財団法人相模中央化学研究所 (151)
【Fターム(参考)】