説明

パーフルオロアルキル基を有するベンゼン類の製造方法

【課題】パーフルオロアルキル基を有するベンゼン類の製造方法を開発する。
【解決手段】スルホキシド類、過酸化物、鉄化合物および酸の存在下、ハロゲン化パーフルオロアルキル類とベンゼン類とを反応させることにより、医農薬合成中間体や有機導電材料として有用なパーフルオロアルキル基を有するベンゼン類を効率良く製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パーフルオロアルキル基を有するベンゼン類の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
パーフルオロアルキル基を有するベンゼン類、特にアニリン類は、医農薬中間体として極めて重要な化合物である(例えば、特許文献1−9、非特許文献1)。そのためこれらを、パーフルオロアルキル化により製造する方法、特にトリフルオロメチル化により製造する方法については、数多くの報告がある。
アニリン類のベンゼン環を直接パーフルオロアルキル化する方法としては、例えば、特許文献10および非特許文献2に、ヨウ化パーフルオロアルキルまたは臭化トリフルオロメチルを、亜鉛−二酸化イオウまたは亜ジチオン酸ナトリウムの存在下で、アニリン類からパーフルオロアニリン類を製造する方法が開示されている。いずれの試薬も有毒であり、工業的規模では使用し難い。
【0003】
非特許文献3から7に記載のトリフルオロメタンスルホン酸−S−(トリフルオロメチル)ジベンゾチオフェニウムは、アニリン類等のベンゼン環をトリフルオロメチル化できるが、本試剤の製造方法が極めて煩雑で、高価であることが欠点である。
非特許文献8には、ヨウ化トリフルオロメチルを無水トリフルオロ酢酸中で過酸化水素により酸化し、さらにトリフルオロメタンスルホン酸とベンゼンを反応させて得られるトリフルオロメタンスルホン酸(トリフルオロメチル)フェニルヨードニウムを用い、ベンゼン類より、対応するトリフルオロメチルベンゼン類が製造されることが記載されている。しかしながら、反応試剤の製造が煩雑であり、工業的には使用し難い。
非特許文献9には、トリフルオロ酢酸と二フッ化キセノンからなる反応試剤を用いたアニリン類等のベンゼン環のトリフルオロメチル化が開示されている。しかしながら、二フッ化キセノンは、原料となるキセノンが高価であり、また水に不安定なため、工業的規模で用いるには不適当である。
特許文献11には、ベンゼン類とヨウ化パーフルオロアルキルを、ジ−tert−ブチルパーオキシドと反応させることにより、パーフルオロアルキルベンゼン類を得る方法が開示されている。しかし、爆発性の高いジ−tert−ブチルパーオキシドを用いるため、工業的規模では使用し難い。
【0004】
一方、硫酸鉄(II)、ヨウ化パーフルオロブチル、過酸化水素およびジメチルスルホキシドを用い、ベンゼンおよびアニソールのパーフルオロブチル化(非特許文献10)が開示されている。しかしながら、非特許文献10では,ヨウ化トリフルオロメチルおよびヨウ化パーフルオロエチルは,反応性が低いと考えられており,医農薬としての生理活性や機能性材料としての物性の向上が、最も期待されるヨウ化トリフルオロメチルを用いたトリフルオロメチル化に関しては,記載は一切ない。また、非特許文献10には、医農薬中間体として需要の多いアニリン類については、一切検討されておらず、また、この反応条件では、ピリジンを原料とした反応には適用できないとの記載がある。すなわち、パーフルオロアルキル基を導入する芳香族類の種類によっては反応条件等の新たな創意工夫が必要となる。
また、有機導電材料となる1,3,5−トリアルキルベンゼン類のビス(パーフルオロアルキル)化物については、これまでに報告がない。
【0005】
【特許文献1】WO2003103665
【特許文献2】WO2003103658
【特許文献3】WO2003103648
【特許文献4】WO2003103647
【特許文献5】WO2003144333
【特許文献6】WO9418170
【特許文献7】WO9821178
【特許文献8】US4992091
【特許文献9】特開昭63−10749号.
【特許文献10】EP0206951
【特許文献11】US3271441
【非特許文献1】ACS Symposium Series,504巻,26−33ページ,1992年.
【非特許文献2】Journal of Chemical Society,Perkin Transaction I,2293−2299ページ,1990年.
【非特許文献3】Tetrahedron Letters,31巻,3579−3582ページ,1990年.
【非特許文献4】Journal of the American Chemical Society,115巻,2156−2164ページ,1993年.
【非特許文献5】Journal of Organic Chemistry,59巻,5692−5699ページ,1994年.
【非特許文献6】Jornal of Fluorine Chemistry,74巻,77−82ページ,1995年.
【非特許文献7】Journal of Organic Chemistry,68巻,8726−8729ページ,2003年.
【非特許文献8】有機合成化学協会誌,41巻,251−265ページ,1983年.
【非特許文献9】Journal of Organic Chemistry,53巻,4582−4585ページ,1988年.
【非特許文献10】Journal of Organic Chemistry、62巻、7128−7136ページ、1997年.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、パーフルオロアルキル基を有するベンゼン類の簡便で効率の良い製造方法を開発することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
先の課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、スルホキシド類、過酸化物および鉄化合物、さらに酸の存在下、ハロゲン化パーフルオロアルキル類により、ベンゼン類をパーフルオロアルキル化し、一段でパーフルオロアルキル基を有するベンゼン類が製造できることを見出し、本発明を完成するに至った。また、本発明の方法により新規化合物の取得に成功した。すなわち本発明は、一般式(1)
【化6】

[式中、R1aおよびR1bは、それぞれ独立して、炭素数1から12のアルキル基または置換されていてもよいフェニル基を示す。]で表されるスルホキシド類、過酸化物、鉄化合物および場合によっては酸の存在下、一般式(2)
【化7】

[式中、Rfは、炭素数1または2のパーフルオロアルキル基を示し、Xは、ハロゲン原子を示す。]で表されるハロゲン化パーフルオロアルキル類と、一般式(3)
【化8】

[式中、nは1〜5を示し、Yは、水素原子、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1から4のアルキル基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1から4のアルコキシ基、ハロゲン原子、1個または2個の炭素数1から4のアルキル基で置換されていてもよいアミノ基または水酸基を示す。nが2〜5の時、Yは同一または異なっていてもよい。]で表されるベンゼン類とを反応させることを特徴とする、一般式(4)
【化9】

[式中、Y、nおよびRfは前記と同意義を示す。mは、1または2を示す。nが5のとき、mは1である。]で表されるパーフルオロアルキル基を有するベンゼン類の製造方法に関するものである。
また、本発明は、下記一般式(5)
【化10】

[式中、Rfは前記と同じ内容を示し、R、RおよびRは、それぞれ独立して、炭素数1から4のアルキル基を示す。]で表される、パーフルオロアルキル基を有するベンゼン類に関するものである。以下に、本発明を詳細に説明する。
【0008】
Rfは具体的には、トリフルオロメチル基およびパーフルオロエチル基である。医薬品や有機導電材料としての性能が良い点および収率が良い点で、トリフルオロメチル基が望ましい。
1aおよびR1bにおいて、炭素数1から12のアルキル基としては、具体的には、メチル基、ブチル基、ドデシル基等が例示できる。R1aおよびR1bで示される置換されていてもよいフェニル基としては、具体的には、フェニル基、p−トリル基、m−トリル基、o−トリル基等が例示できる。R1aおよびR1bは、収率が良い点でメチル基、ブチル基、フェニル基が望ましく、メチル基がさらに望ましい。
【0009】
Xは、具体的には、フッ素原子、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子が例示できる。収率が良い点でヨウ素原子または臭素原子が望ましく、ヨウ素原子がさらに望ましい。
Yで表される炭素数1から4のアルキル基としては、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、シクロブチル基、シクロプロピルメチル基等が例示できる。また、これらのアルキル基は、ハロゲン原子で置換されていてもよく、具体的には、クロロメチル基、2−クロロエチル基、3−クロロプロピル基、ジフルオロメチル基、3−フルオロプロピル基、トリフルオロメチル基、2−フルオロエチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、2,2,2−トリクロロエチル基等が例示できる。
【0010】
また、Yで表される炭素数1から4のアルコキシ基としては、具体的には、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、シクロプロポキシ基、ブトキシ基、イソブチルオキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、シクロブチルオキシ基、シクロプロピルメトキシ基等が例示できる。また、これらのアルコキシ基は、ハロゲン原子で置換されていても良く、具体的には、クロロメトキシ基、2−クロロエトキシ基、3−クロロプロポキシ基、ジフルオロメトキシ基、3−フルオロプロポキシ基、トリフルオロメトキシ基、2−フルオロエトキシ基、2,2,2−トリフルオロエトキシ基、2,2,2−トリクロロエトキシ基等が例示できる。
Yで表されるハロゲン原子としては、具体的には、フッ素原子、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子が例示できる。
Yで表される炭素数1から4のアルキル基で1個または2個置換されていても良いアミノ基としては、具体的には、アミノ基、メチルアミノ基、エチルアミノ基、プロピルアミノ基、イソプロピルアミノ基、ブチルアミノ基、イソブチルアミノ基、sec−ブチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジプロピルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基、ジブチルアミノ基、ジイソブチルアミノ基、ジ−sec−ブチルアミノ基、エチルメチルアミノ基、メチルプロピルアミノ基、ブチルメチルアミノ基等が例示できる。
【0011】
で表される炭素数1から4のアルキル基としては、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、シクロブチル基、シクロプロピルメチル基等が例示できる。また、これらのアルキル基は、ハロゲン原子で置換されていても良く、具体的には、クロロメチル基、2−クロロエチル基、3−クロロプロピル基、ジフルオロメチル基、3−フルオロプロピル基、トリフルオロメチル基、2−フルオロエチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、2,2,2−トリクロロエチル基等が例示できる。有機導電材料として有用な点で、メチル基が望ましい。
で表される炭素数1から4のアルキル基としては、Rの説明に記載のアルキル基を例示することができる。有機導電材料として有用な点で、メチル基が望ましい。
で表される炭素数1から4のアルキル基としては、Rの説明に記載のアルキル基を例示することができる。有機導電材料として有用な点で、メチル基が望ましい。
【0012】
次に、本発明の製造法について、詳しく述べる。
本反応は、「一般式(1)で表わされるスルホキシド類(以下において、「スルホキシド類(1)」と称す)」をそのまま溶媒として用いてもよい。また、これらのスルホキシド類に対する「一般式(1)で表わされるベンゼン類(以下において、「ベンゼン類(3)」と称す)」、過酸化物、鉄化合物、「一般式(2)で表わされるハロゲン化パーフルオロアルキル類(以下において、「ハロゲン化パーフルオロアルキル類(2)」と称す)」および酸の溶解度に応じて他の溶媒を用いてもよい。用いることのできる溶媒は例えば、水、N,N−ジメチルホルムアミド、酢酸、トリフルオロ酢酸、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、酢酸エチル、アセトン、1,4−ジオキサン、tert−ブチルアルコール、エタノール、メタノール、イソプロピルアルコール、トリフルオロエタノール、ヘキサメチルリン酸トリアミド、N−メチル−2−ピロリドン、N,N,N’,N’−テトラメチル尿素またはN,N’−ジメチルプロピレン尿素等を挙げることができ、適宜これらを組み合わせて用いても良い。収率が良い点で、水、スルホキシド類(1)または水とスルホキシド類(1)の混合溶媒を用いることが望ましい。
ベンゼン類(3)とスルホキシド類(1)とのモル比は、1:1から1:200が望ましく、収率が良い点で1:10から1:100がさらに望ましい。
【0013】
ベンゼン類(3)とハロゲン化パーフルオロアルキル類(2)とのモル比は、ベンゼン類(3)に対しハロゲン化パーフルオロアルキル類(2)が当量かまたは過剰となることが望ましく、例えば、1:1から1:100が望ましく、収率が良い点で1:1から1:10がさらに望ましい。後述する実施例1と比較例3の結果からわかるように、ベンゼン類(3)ハロゲン化パーフルオロアルキル類(2)とのモル比を上記のように設定しても、ハロゲン化パーフルオロブチルを導入する場合は高い収率が得られない。ベンゼン類(3)ハロゲン化パーフルオロアルキル類(2)との上記モル比で得られる効果は、炭素数1または2の場合に特徴的に得られる。
【0014】
本発明で用いることのできる過酸化物は例えば、過酸化水素、過酸化水素−尿素複合体、tert−ブチルペルオキシドまたは過酢酸等を例示することができ、これらを必要に応じて組み合わせて用いてもよい。収率が良く、操作が容易な点で過酸化水素または過酸化水素−尿素複合体が望ましい。
過酸化水素は、水で希釈して用いてもよい。その際の濃度は、3から70重量%であればよいが、市販の35重量%過酸化水素をそのまま用いてもよい。収率が良くかつ安全な点で、10から30重量%過酸化水素水を用いることがさらに望ましい。
ベンゼン類(3)と過酸化物のモル比は、1:0.1から1:10が望ましく、収率が良い点で1:1.5から1:3が望ましい。
【0015】
本発明で用いることのできる鉄化合物は、収率が良い点で鉄(II)塩が望ましく、例えば、硫酸鉄(II)、硫酸鉄(II)アンモニウム、テトラフルオロホウ酸鉄(II)、塩化鉄(II)、臭化鉄(II)またはヨウ化鉄(II)等の無機酸塩や、酢酸鉄(II)、シュウ酸鉄(II)、ビスアセチルアセトナト鉄(II)、フェロセンまたはビス(η−ペンタメチルシクロペンタジエニル)鉄等の有機金属化合物を例示することができ、これらを適宜組み合わせて用いても良い。また、鉄粉、鉄(0)塩または鉄(I)塩と過酸化物のような酸化試薬を組み合わせて、系内で鉄(II)塩を発生させて用いることもできる。その際、反応に用いる過酸化水素をそのまま酸化試薬として用いることもできる。収率が良い点で硫酸鉄(II)、硫酸鉄(II)アンモニウム、テトラフルオロホウ酸鉄(II)およびフェロセンを単独で、または鉄粉を過酸化水素で酸化して発生した鉄(II)塩を用いることが望ましい。
【0016】
これらの鉄化合物は、固体のまま用いても良いが、溶液として用いることもできる。溶液として用いる場合、溶媒としては上記の溶媒のいずれでも良いが、中でも水が望ましい。その際の鉄化合物溶液の濃度は、0.1から10mol/Lが望ましく、0.5から5mol/Lがさらに望ましい。
ベンゼン類(3)と鉄化合物のモル比は、1:0.01から1:10が望ましく、収率が良い点で、1:0.1から1:1がさらに望ましい。
反応温度は、0℃から120℃の範囲から適宜選ばれた温度で行うことができる。収率が良い点で20℃以上が望ましく、過酸化物の分解を抑制する点で100℃以下が望ましい。また、本反応は発熱反応であるため、反応のスケールにもよるが、室温で反応を開始しても、自発的に系内の温度は40℃程度から70℃程度に上昇する。この温度範囲でも、目的物を収率良く得ることができる。
反応を密閉系で行う場合、大気圧(0.1MPa)から1.0MPaの範囲から適宜選ばれた圧力で行うことができるが、大気圧でも反応は充分に進行する。また、反応の際の雰囲気は、アルゴン、窒素等の不活性ガスでも良いが、空気中でも充分に進行する。
【0017】
ハロゲン化パーフルオロアルキル類(2)が、室温で気体の場合は、気体のまま用いても良い。その際、アルゴン、窒素、空気、ヘリウム、酸素等の気体で希釈して混合気体としても良く、ハロゲン化パーフルオロアルキル類(2)のモル分率が1から100%の気体として用いることができる。密閉系で反応を実施する場合、ハロゲン化パーフルオロアルキル類(2)または混合気体を反応雰囲気として用いることができる。その際の圧力は、大気圧(0.1MPa)から1.0MPaの範囲から適宜選ばれた圧力で行うことができるが、大気圧でも反応は充分に進行する。また、開放系でハロゲン化パーフルオロアルキル類(2)または混合気体をバブリングして反応溶液中に導入しても良い。その際のハロゲン化パーフルオロアルキル類(2)または混合気体の導入速度は、反応のスケール、触媒量、反応温度、混合気体のハロゲン化パーフルオロアルキル類(2)のモル分率にもよるが、毎分1mLから200mLの範囲から選ばれた速度で良い。
【0018】
本法では、酸を添加することにより目的物の収率が向上することがある。添加する酸は、硫酸、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硝酸、リン酸、ヘキサフルオロリン酸またはテトラフルホロホウ酸等の無機酸や、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、シュウ酸、p−トルエンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸またはトリフルオロ酢酸等の有機酸のいずれでも良く、適宜これらを組み合わせて用いても良い。収率が良い点で硫酸を単独で用いることが望ましい。
これらの酸は、希釈して用いても良い。その際の溶媒は上記の溶媒であれば良く、中でも水またはスルホキシド類が望ましい。希釈して用いる場合の酸の濃度は、0.1から10mol/Lが望ましく、0.5から5mol/Lがさらに望ましい。
ベンゼン類(3)と酸のモル比は、1:0.001から1:5が望ましく、収率が良い点で、1:0.01から1:2がさらに望ましい。
反応後の溶液から目的物を単離する方法に特に限定はないが、溶媒抽出、カラムクロマトグラフィー、分取薄層クロマトグラフィー、分取液体クロマトグラフィー、再結晶または昇華等の汎用的な方法で目的物を得ることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明は、医農薬中間体や有機導電材料等、広範な工業的用途がある化合物であると期パーフルオロアルキルを有するベンゼン類を効率良く製造する方法として有効である。
【実施例】
【0020】
次に本発明を実施例および比較例によって詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、下記実施例および比較例における生成率および収率は、ベンゼン類を基準として算出した。
【0021】
(実施例1)
【化11】

【0022】
アルゴンで置換した二口フラスコに、ベンゼン90μL、ジメチルスルホキシド2.0mL、硫酸の1Nジメチルスルホキシド溶液2.0mL、ヨウ化トリフルオロメチルの3.0mol/L ジメチルスルホキシド溶液1.0mL([ベンゼン]:[ヨウ化トリフルオロメチル]=1:3)、30%過酸化水素水0.2mLおよび1.0mol/L硫酸鉄(II)水溶液0.3mLを加え、20分間撹拌した。撹拌中に反応系の温度は、40から50℃となった。その後、反応溶液を室温まで冷却した。2,2,2−トリフルオロエタノールを内部標準物質とした19F−NMRにより、トリフルオロメチルベンゼンの生成を確認した(生成率22%)。反応溶液に水を加えて炭酸水素ナトリウム水溶液で中和し、目的物を酢酸エチルに抽出した。抽出液を濃縮後、カラムクロマトグラフィーで精製することにより、トリフルオロメチルベンゼンを無色オイルとして得た(0.021g、収率14%)。
H−NMR(重クロロホルム):δ7.74(m,5H).
13C−NMR(重クロロホルム):δ124.3(q,JCF=266.4Hz),125.3(q,JCF=3.0Hz),128.8,130.8(q,JCF=31.5Hz),131.8.
19F−NMR(重クロロホルム):δ−63.1.
MS(m/z):146[M]
【0023】
(実施例2)
【化12】

アルゴンで置換した二口フラスコに、アニリン90μL、ジメチルスルホキシド2.67mL、硫酸の1Nジメチルスルホキシド溶液2.0mL、ヨウ化トリフルオロメチルの3.0mol/Lジメチルスルホキシド溶液0.33mL([アニリン]:[ヨウ化トリフルオロメチル]=1:1)、30%過酸化水素水0.2mLおよび1.0mol/L硫酸鉄(II)水溶液0.3mLを加え、20分間撹拌した。撹拌中に反応系の温度は、40から50℃となった。その後、反応溶液を室温まで冷却した。19F−NMRおよびGC−MSにより得られた分子量と保持時間を、市販の標準試料と比較することにより、2−トリフルオロメチルアニリン(生成率8.8%)、4−トリフルオロメチルアニリン(生成率7.7%)および2,4−ビス(トリフルオロメチル)アニリン(生成率4.7%)の生成を確認した。
2−トリフルオロメチルアニリン
19F−NMR(重ジメチルスルホキシド):δ−63.0.
MS(m/z):161[M]
4−トリフルオロメチルアニリン
19F−NMR(重ジメチルスルホキシド):δ−61.3.
MS(m/z):161[M]
2,4−ビス(トリフルオロメチル)アニリン
19F−NMR(重クロロホルム):δ−62.0,−63.7.
MS(m/z):229[M]
【0024】
(実施例3)
アルゴンで置換した二口フラスコに、アニリン90μL、ジメチルスルホキシド2.67mL、硫酸の1Nジメチルスルホキシド溶液2.0mL、ヨウ化トリフルオロメチルの3.0mol/Lジメチルスルホキシド溶液0.33mL([アニリン]:[ヨウ化トリフルオロメチル]=1:1)、30%過酸化水素水0.2mLおよび1.0mol/L硫酸鉄(II)水溶液1.0mLを加え、20分間撹拌した。撹拌中に反応系の温度は、40から50℃となった。その後、反応溶液を室温まで冷却した。19F−NMRにより、2−トリフルオロメチルアニリン(生成率15%)、4−トリフルオロメチルアニリン(生成率7.2%)および2,4−ビス(トリフルオロメチル)アニリン(生成率2.1%)の生成を確認した。
【0025】
(実施例4)
アルゴンで置換した二口フラスコに、アニリン90μL、ジメチルスルホキシド4.67mL、ヨウ化トリフルオロメチルの3.0mol/Lジメチルスルホキシド溶液0.33mL([アニリン]:[ヨウ化トリフルオロメチル]=1:1)、30%過酸化水素水0.2mLおよび1.0mol/L硫酸鉄(II)水溶液1.0mLを加え、20分間撹拌した。撹拌中に反応系の温度は、40から50℃となった。その後、反応溶液を室温まで冷却した。19F−NMRにより、2−トリフルオロメチルアニリン(生成率22%)、4−トリフルオロメチルアニリン(生成率13%)および2,4−ビス(トリフルオロメチル)アニリン(生成率0.9%)の生成を確認した。
【0026】
(実施例5)
二口フラスコにフェロセン0.056g(0.3mmol)を量り取り、容器内をアルゴンで置換した。さらに、アルゴン気流中で、アニリン90μL、ジメチルスルホキシド2.67mL、硫酸の1Nジメチルスルホキシド溶液2.0mL、ヨウ化トリフルオロメチルの3.0mol/Lジメチルスルホキシド溶液0.33mL([アニリン]:[ヨウ化トリフルオロメチル]=1:1)および30%過酸化水素水0.2mLを加えて密閉し、20分間撹拌した。撹拌中に反応系の温度は、40から50℃となった。その後、反応溶液を室温まで冷却した。19F−NMRにより、2−トリフルオロメチルアニリン(生成率9.0%)、4−トリフルオロメチルアニリン(生成率4.4%)および2,4−ビス(トリフルオロメチル)アニリン(生成率2.3%)の生成を確認した。
【0027】
(実施例6)
二口フラスコにフェロセン0.18g(1.0mmol)を量り取り、容器内をアルゴンで置換した。さらに、アルゴン気流中で、アニリン90μL、ジメチルスルホキシド2.67mL、硫酸の1Nジメチルスルホキシド溶液2.0mL、ヨウ化トリフルオロメチルの3.0mol/Lジメチルスルホキシド溶液0.33mL([アニリン]:[ヨウ化トリフルオロメチル]=1:1)および30%過酸化水素水0.2mLを加え、20分間撹拌した。撹拌中に反応系の温度は、40から50℃となった。その後、反応溶液を室温まで冷却した。19F−NMRにより、2−トリフルオロメチルアニリン(生成率5.1%)および4−トリフルオロメチルアニリン(生成率3.0%)の生成を確認した。
【0028】
(実施例7)
二口フラスコにビス(η−ペンタメチルシクロペンタジエニル)鉄0.33g(1.0mmol)を量り取り、容器内をアルゴンで置換した。さらに、アルゴン気流中で、アニリン90μL、ジメチルスルホキシド2.67mL、硫酸の1Nジメチルスルホキシド溶液2.0mL、ヨウ化トリフルオロメチルの3.0mol/Lジメチルスルホキシド溶液0.33mL([アニリン]:[ヨウ化トリフルオロメチル]=1:1)および30%過酸化水素水0.2mLを加え、20分間撹拌した。撹拌中に反応系の温度は、40から50℃となった。その後、反応溶液を室温まで冷却した。19F−NMRにより、2−トリフルオロメチルアニリン(生成率19%)、4−トリフルオロメチルアニリン(生成率8.6%)、2,6−ビス(トリフルオロメチル)アニリン(生成率2.5%)および2,4−ビス(トリフルオロメチル)アニリン(生成率1.3%)の生成を確認した。
【0029】
(実施例8)
アルゴンで置換した二口フラスコに、アニリン90μL、ジメチルスルホキシド2.67mL、塩酸の1Nジメチルスルホキシド溶液2.0mL、ヨウ化トリフルオロメチルの3.0mol/Lジメチルスルホキシド溶液0.33mL([アニリン]:[ヨウ化トリフルオロメチル]=1:1)、30%過酸化水素水0.2mLおよび1.0mol/L塩化鉄(II)水溶液1.0mLを加え、20分間撹拌した。撹拌中に反応系の温度は、40から50℃となった。その後、反応溶液を室温まで冷却した。19F−NMRにより、2−トリフルオロメチルアニリン(生成率5.2%)、4−トリフルオロメチルアニリン(生成率2.6%)および2,4−ビス(トリフルオロメチル)アニリンの生成を確認した。
【0030】
(実施例9)
アルゴンで置換した二口フラスコに、アニリン90μL、ジメチルスルホキシド2.67mL、酢酸の1Nジメチルスルホキシド溶液2.0mL、ヨウ化トリフルオロメチルの3.0mol/Lジメチルスルホキシド溶液0.33mL([アニリン]:[ヨウ化トリフルオロメチル]=1:1)、30%過酸化水素水0.2mLおよび1.0mol/L酢酸鉄(II)水溶液1.0mLを加え、20分間撹拌した。撹拌中に反応系の温度は、40から50℃となった。その後、反応溶液を室温まで冷却した。19F−NMRにより、2−トリフルオロメチルアニリン(生成率3.0%)、4−トリフルオロメチルアニリン(生成率1.3%)および2,4−ビス(トリフルオロメチル)アニリンの生成を確認した。
【0031】
(実施例10)
アルゴンで置換した二口フラスコに、アニリン90μL、ジメチルスルホキシド2.67mL、テトラフルオロホウ酸の1Nジメチルスルホキシド溶液2.0mL、ヨウ化トリフルオロメチルの3.0mol/Lジメチルスルホキシド溶液0.33mL([アニリン]:[ヨウ化トリフルオロメチル]=1:1)、30%過酸化水素水0.2mLおよび1.0mol/Lテトラフルオロホウ酸鉄(II)水溶液1.0mLを加え、20分間撹拌した。撹拌中に反応系の温度は、40から50℃となった。その後、反応溶液を室温まで冷却した。19F−NMRにより、2−トリフルオロメチルアニリン(生成率8.2%)、4−トリフルオロメチルアニリン(生成率2.9%)、2,6−ビス(トリフルオロメチル)アニリン(生成率8.5%)および2,4−ビス(トリフルオロメチル)アニリン(生成率4.3%)の生成を確認した。
【0032】
(実施例11)
アルゴンで置換した二口フラスコに、アニリン90μL、ジメチルスルホキシド4.67mL、ヨウ化トリフルオロメチルの3.0mol/Lジメチルスルホキシド溶液0.33mL([アニリン]:[ヨウ化トリフルオロメチル]=1:1)、30%過酸化水素水0.2mLおよび1.0mol/Lテトラフルオロホウ酸鉄(II)水溶液0.3mLを加え、20分間撹拌した。撹拌中に反応系の温度は、40から50℃となった。その後、反応溶液を室温まで冷却した。19F−NMRにより、2−トリフルオロメチルアニリン(生成率24%)、4−トリフルオロメチルアニリン(生成率12%)および2,4−ビス(トリフルオロメチル)アニリン(生成率1.8%)の生成を確認した。
【0033】
(実施例12)
【化13】

アルゴンで置換した二口フラスコに、2−トルイジン110μL、ジメチルスルホキシド2.67mL、硫酸の1Nジメチルスルホキシド溶液2.0mL、ヨウ化トリフルオロメチルの3.0mol/Lジメチルスルホキシド溶液0.33mL([トルイジン]:[ヨウ化トリフルオロメチル]=1:1)、30%過酸化水素水0.2mLおよび1.0mol/L硫酸鉄(II)水溶液0.3mLを加え、20分間撹拌した。撹拌中に反応系の温度は、40から50℃となった。その後、反応溶液を室温まで冷却した。19F−NMRデータの文献値との比較および質量分析により、2−メチル−4−トリフルオロメチルアニリン(生成率17%)の生成を確認した。
2−メチル−4−トリフルオロメチルアニリン
19F−NMR(重ジメチルスルホキシド):δ−61.1.
MS(m/z):175[M]
【0034】
(実施例13)
【化14】

二口フラスコに2−アニシジン0.12g(1.0mmol)を量り取り容器内をアルゴンで置換した。さらに、アルゴン気流中で、ジメチルスルホキシド2.67mL、硫酸の1Nジメチルスルホキシド溶液2.0mL、ヨウ化トリフルオロメチルの3.0mol/Lジメチルスルホキシド溶液0.33mL([2−アニシジン]:[ヨウ化トリフルオロメチル]=1:1)、30%過酸化水素水0.2mLおよび1.0mol/L硫酸鉄(II)水溶液0.3mLを加えて密閉し、20分間撹拌した。撹拌中に反応系の温度は、40から50℃となった。その後、反応溶液を室温まで冷却した。19F−NMRデータの文献値との比較および質量分析により、2−メトキシ−6−トリフルオロメチルアニリン(生成率13%)の生成を確認した。
2−メトキシ−4−トリフルオロメチルアニリン
19F−NMR(重ジメチルスルホキシド):δ−61.1.
MS(m/z):191[M]
【0035】
(実施例14)
【化15】

アルゴンで置換した二口フラスコに、2−クロロアニリン105μL、ジメチルスルホキシド2.67mL、硫酸の1Nジメチルスルホキシド溶液2.0mL、ヨウ化トリフルオロメチルの3.0mol/Lジメチルスルホキシド溶液0.33mL([2−クロロアニリン]:[ヨウ化トリフルオロメチル]=1:1)、30%過酸化水素水0.2mLおよび1.0mol/L硫酸鉄(II)水溶液0.3mLを加え、20分間撹拌した。撹拌中に反応系の温度は、40から50℃となった。その後、反応溶液を室温まで冷却した。19F−NMRデータの文献値との比較および質量分析により、2−クロロ−4−トリフルオロメチルアニリン(生成率15%)の生成を確認した。
2−クロロ−4−トリフルオロメチルアニリン
19F−NMR(重ジメチルスルホキシド):δ−61.6.
MS(m/z):194[M−H],196[M+H]
【0036】
(実施例15)
【化16】

アルゴンで置換した二口フラスコに、2−トリフルオロメチルアニリン125μL、ジメチルスルホキシド2.67mL、硫酸の1Nジメチルスルホキシド溶液2.0mL、ヨウ化トリフルオロメチルの3.0mol/Lジメチルスルホキシド溶液0.33mL([2−トリフルオロメチルアニリン]:[ヨウ化トリフルオロメチル]=1:1)、30%過酸化水素水0.2mLおよび1.0mol/L硫酸鉄(II)水溶液0.3mLを加え、20分間撹拌した。撹拌中に反応系の温度は、40から50℃となった。その後、反応溶液を室温まで冷却した。19F−NMRおよびGC−MSにより得られた分子量と保持時間を、市販の標準試料と比較することにより、2,4−ビス(トリフルオロメチル)アニリン(生成率13%)の生成を確認した。
2,4−ビス(トリフルオロメチル)アニリン
19F−NMR(重クロロホルム):δ−62.0,−63.7.
MS(m/z):229[M]
【0037】
(実施例16)
【化17】

アルゴンで置換した二口フラスコに、N,N−ジメチルアニリン125μL、ジメチルスルホキシド2.67mL、硫酸の1Nジメチルスルホキシド溶液2.0mL、ヨウ化トリフルオロメチルの3.0mol/Lジメチルスルホキシド溶液0.33mL([N,N−ジメチルアニリン]:[ヨウ化トリフルオロメチル]=1:1)、30%過酸化水素水0.2mLおよび1.0mol/L硫酸鉄(II)水溶液0.3mLを加え、20分間撹拌した。撹拌中に反応系の温度は、40から50℃となった。その後、反応溶液を室温まで冷却した。19F−NMRデータの文献値との比較および質量分析により、N,N−ジメチル−2−トリフルオロメチルアニリン(生成率18%)の生成を確認した。
N,N−ジメチル−2−トリフルオロメチルアニリン
19F−NMR(重ジメチルスルホキシド):δ−60.6.
MS(m/z):188[M−H]
【0038】
(実施例17)
【化18】

二口フラスコにフェロセン0.056g(0.3mmol)を量り取り、容器内をアルゴンで置換した。さらに、アルゴン気流中で、メシチレン140μL、ジメチルスルホキシド2.0mL、硫酸の1Nジメチルスルホキシド溶液2.0mL、ヨウ化トリフルオロメチルの3.0mol/Lジメチルスルホキシド溶液1.0mL([メシチレン]:[ヨウ化トリフルオロメチル]=1:3)および30%過酸化水素水0.2mLを加えて密閉し、20分間撹拌した。撹拌中に反応系の温度は、40から50℃となった。その後、反応溶液を室温まで冷却した。2,2,2−トリフルオロエタノールを内部標準物質とした19F−NMRにより、1,3,5−トリメチル−2,4−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン(生成率26%)および1,3,5−トリメチル−2−トリフルオロメチルベンゼン(生成率68%)の生成を確認した。実施例1と同様の操作により、1,3,5−トリメチル−2,4−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼンを白色固体として(0.064g、収率25%)および1,3,5−トリメチル−2−トリフルオロメチルベンゼンを淡黄色オイルとして(0.090g、収率48%)得た。
1,3,5−トリメチル−2,4−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン
H−NMR(重クロロホルム):δ2.53(m,9H),6.97(s,1H).
13C−NMR(重クロロホルム):δ17.2(heptet,JCF=4.4Hz),21.9(q,JCF=4.9Hz),125.6(q,JCF=276.4Hz),127.8(q,JCF=28.4Hz),134.5,138.7(heptet,JCF=1.9Hz),140.1.
19F−NMR(重クロロホルム):δ−53.2(m).
MS(m/z):256[M]
1,3,5−トリメチル−2−トリフルオロメチルベンゼン
H−NMR(重クロロホルム):δ2.27(s,3H),2.42(q,JHF=3.4Hz,6H),6.87(s,2H).
13C−NMR(重クロロホルム):δ20.8,21.3(q,JCF=4.0Hz),124.8(q,JCF=28.0Hz),126.2(q,JCF=275.7Hz),130.8,137.3(q,JCF=2.0Hz),140.9.
19F−NMR(重クロロホルム):δ−54.0(m).
MS(m/z):188[M]
【0039】
(実施例18)
アルゴンで置換した二口フラスコに、メシチレン140μL、ジメチルスルホキシド4.0mL、ヨウ化トリフルオロメチルの3.0mol/Lジメチルスルホキシド溶液1.0mL([メシチレン]:[ヨウ化トリフルオロメチル]=1:3)、30%過酸化水素水0.2mLおよび1.0mol/L硫酸鉄(II)水溶液0.3mLを加え、20分間撹拌した。撹拌中に反応系の温度は、40から50℃となった。その後、反応溶液を室温まで冷却した。2,2,2−トリフルオロエタノールを内部標準物質とした19F−NMRにより、1,3,5−トリメチル−2,4−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン(生成率11%)および1,3,5−トリメチル−2−トリフルオロメチルベンゼン(生成率72%)の生成を確認した。
【0040】
(実施例19)
【化19】

二口フラスコにペンタメチルベンゼン0.15g(1.0mmol)およびフェロセン0.056g(0.3mmol)を量り取り、容器内をアルゴンで置換した。さらに、アルゴン気流中で、ジメチルスルホキシド4.0mL、ヨウ化トリフルオロメチルの3.0mol/Lジメチルスルホキシド溶液1.0mL([ペンタメチルベンゼン]:[ヨウ化トリフルオロメチル]=1:3)および30%過酸化水素水0.2mLを加えて密閉し、20分間撹拌した。撹拌中に反応系の温度は、40から50℃となった。その後、反応溶液を室温まで冷却した。2,2,2−トリフルオロエタノールを内部標準物質とした19F−NMRにより、1,2,3,4,5−ペンタメチル−6−トリフルオロメチルベンゼンの生成を確認した(生成率40%)。実施例1と同様の操作により、1,2,3,4,5−ペンタメチル−6−トリフルオロメチルベンゼンを淡黄色固体として得た(0.078g、収率36%)。
H−NMR(重クロロホルム):δ2.19(s,6H),2.22(s,3H),2.32(q,JHF=3.0Hz,6H).
13C−NMR(重クロロホルム):δ16.6,17.3,17.7(q,JCF=4.8Hz),125.9(q,JCF=26.7Hz),126.5(q,JCF=276.6Hz),132.8(q,JCF=1.8Hz),133.8,138.1.
19F−NMR(重クロロホルム):δ−51.3.
MS(m/z):216[M]
【0041】
(実施例20)
二口フラスコにペンタメチルベンゼン0.15g(1.0mmol)を量り取り、容器内をアルゴンで置換した。さらに、アルゴン気流中で、ジメチルスルホキシド2.0mL、硫酸の1Nジメチルスルホキシド溶液2.0mL、ヨウ化トリフルオロメチルの3.0mol/Lジメチルスルホキシド溶液1.0mL([ペンタメチルベンゼン]:[ヨウ化トリフルオロメチル]=1:3)、30%過酸化水素水0.2mLおよび1.0mol/L硫酸鉄(II)水溶液0.3mLを加えて密閉し、20分間撹拌した。撹拌中に反応系の温度は、40から50℃となった。その後、反応溶液を室温まで冷却した。2,2,2−トリフルオロエタノールを内部標準物質とした19F−NMRにより、1,2,3,4,5−ペンタメチル−6−トリフルオロメチルベンゼンの生成を確認した(生成率18%)。
【0042】
(実施例21)
【化20】

アルゴンで置換した二口フラスコに、4−トリフルオロメチルアニリン124μL、ジメチルスルホキシド2.0mL、硫酸の1Nジメチルスルホキシド溶液2.0mL、ヨウ化トリフルオロメチルの3.0mol/Lジメチルスルホキシド溶液1.0mL([4−トリフルオロメチルアニリン]:[ヨウ化トリフルオロメチル]=1:3)、1.0mol/L硫酸鉄(II)水溶液0.5mLおよび30%過酸化水素水0.5mLを加え、30分間撹拌した。反応中に反応系の温度は40から50℃となった。その後、反応溶液を室温まで冷却した。19F−NMRにより、2,4−ビス(トリフルオロメチル)アニリン(生成率28%)および2,4,6−トリス(トリフルオロメチル)アニリン(生成率55%)の生成を確認した。シリカゲルカラムクロマトグラフィーで生成することにより、2,4−ビス(トリフルオロメチル)アニリンを淡黄色オイルとして(44mg、19%)、2,4,6−トリス(トリフルオロメチル)アニリンを無色固体として得た(122mg、41%)。
2,4−ビス(トリフルオロメチル)アニリン
19F−NMR(重クロロホルム):δ−62.0,−63.7.
MS(m/z):229[M]
2,4,6−トリス(トリフルオロメチル)アニリン
H−NMR(重ジメチルスルホキシド):δ6.53(brs,2H),7.89(s,2H).
13C−NMR(重ジメチルスルホキシド):δ113.5(q,JC−F=30.9Hz),114.9(q,JC−F=34.3Hz),123.3(q,JC−F=272.6Hz),123.5(q,JC−F=270.3Hz),127.8,145.9
19F−NMR(重ジメチルスルホキシド):δ−60.5,−63.2.
MS(m/z):297[M]
【0043】
(実施例22)
【化21】

二口フラスコに2,6−ジクロロフェノール162mg、フェロセン56mgを量り取り、容器内をアルゴンで置換した。ジメチルスルホキシド2.0mL、硫酸の1Nジメチルスルホキシド溶液2.0mL、ヨウ化トリフルオロメチルの3.0mol/Lジメチルスルホキシド溶液1.0mL([2,6−ジクロロフェノール]:[ヨウ化トリフルオロメチル]=1:3)および30%過酸化水素水0.2mLを加え、10時間撹拌した。反応中に反応系の温度は40から50℃となった。その後、反応溶液を室温まで冷却した。19F−NMRにより、2,6−ジクロロ−4−トリフルオロメチルフェノール(生成率12%)の生成を確認した。
2,6−ジクロロ−4−トリフルオロメチルフェノール
H−NMR(重ジメチルスルホキシド):δ7.81(2H,s),11.24(1H,brs).
13C−NMR(重ジメチルスルホキシド):δ121.2(q,JC−F=33.7Hz),122.7,123.1(q,JC−F=271.9Hz),125.8(q,JC−F=3.8Hz),152.7.
19F−NMR(重ジメチルスルホキシド):δ−60.4.
MS(m/z):230[M]
【0044】
(比較例1)
非特許文献10に記載の条件により、ヨウ化パーフルオロブチルに替えて、ヨウ化トリフルオロメチルを用いて、以下の様に実験を行った。アルゴンで置換した二口フラスコに、ベンゼン5.0mmol、ジメチルスルホキシド7.0mL、ヨウ化トリフルオロメチルの1.0mmol([ベンゼン]:[ヨウ化トリフルオロメチル]=5:1)、過酸化水素水3.0mmolおよび硫酸鉄(II)0.7mmolを加え、20分間撹拌した。撹拌中に反応系の温度は、40から50℃となった。その後、反応溶液を室温まで冷却した。2,2,2−トリフルオロエタノールを内部標準物質とした19F−NMRにより、トリフルオロメチルベンゼンの生成を確認した(生成率3.0%)。
【0045】
(比較例2)
非特許文献10に記載の方法に、さらに酸を添加し、以下の様に実験を行った。アルゴンで置換した二口フラスコに、ベンゼン5.0mmol、ジメチルスルホキシド7.0mL、ヨウ化トリフルオロメチルの1.0mmol([ベンゼン]:[ヨウ化トリフルオロメチル]=5:1)、過酸化水素水3.0mmol、硫酸5.0mmolおよび硫酸鉄(II)0.7mmolを加え、20分間撹拌した。撹拌中に反応系の温度は、40から50℃となった。その後、反応溶液を室温まで冷却した。2,2,2−トリフルオロエタノールを内部標準物質とした19F−NMRにより、トリフルオロメチルベンゼンの生成を確認した(生成率5.0%)。
上記比較例1および2に示したとおり、非特許文献10と同一条件下およびさらに酸を添加した条件で、ヨウ化トリフルオロメチルを用いたトリフルオロメチル化を検討したところ、トリフルオロメチルベンゼンの収率は、前者で3%、後者で5%と低い値に留まった。
【0046】
(比較例3)
【化22】

実施例1のヨウ化トリフルオロメチルをヨウ化パーフルオロブチル([ベンゼン]:[ヨウ化トリフルオロブチル]=1:3)に替えて、同様に実験を行った。2,2,2−トリフルオロエタノールを内部標準物質とした19F−NMRにより、パーフルオロブチルベンゼンの生成を確認した(生成率6.0%)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)
【化1】

[式中、R1aおよびR1bは、それぞれ独立して、炭素数1から12のアルキル基または置換されていてもよいフェニル基を示す。]で表されるスルホキシド類、過酸化物および鉄化合物の存在下、下記一般式(2)
【化2】

[式中、Rfは、炭素数1または2のパーフルオロアルキル基を示し、Xは、ハロゲン原子を示す。]で表されるハロゲン化パーフルオロアルキル類と、下記一般式(3)
【化3】

[式中、nは1〜5を示し、Yは、水素原子、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1から4のアルキル基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1から4のアルコキシ基、ハロゲン原子、1個または2個の炭素数1から4のアルキル基で置換されていてもよいアミノ基または水酸基を示す。nが2〜5の時、Yは同一または異なっていてもよい。]で表されるベンゼン類とを反応させることを特徴とする、一般式(4)
【化4】

[式中、Y、nおよびRfは前記と同意義を示す。mは、1または2を示す。nが5のとき、mは1である。]で表されるパーフルオロアルキル基を有するベンゼン類の製造方法。
【請求項2】
酸を加えることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
一般式(3)で表わされるベンゼン類と一般式(2)で表わされるハロゲン化パーフルオロアルキル類のモル比が、1:1から1:100である請求項1または2のいずれかに記載の製造方法。
【請求項4】
一般式(3)で表わされるベンゼン類と一般式(2)で表わされるハロゲン化パーフルオロアルキル類のモル比が、1:1.5から1:10である請求項1から3のいずれかに記載の製造方法。
【請求項5】
Xがヨウ素または臭素である、請求項1から4のいずれかに記載の製造方法。
【請求項6】
鉄化合物が、硫酸鉄(II)、硫酸鉄(II)アンモニウム、テトラフルオロホウ酸鉄(II)、塩化鉄(II)、臭化鉄(II)、ヨウ化鉄(II)、酢酸鉄(II)、シュウ酸鉄(II)、ビスアセチルアセトナト鉄(II)、フェロセン、ビス(η−ペンタメチルシクロペンタジエニル)鉄または鉄粉である、請求項1から5のいずれかに記載の製造方法。
【請求項7】
鉄化合物が、硫酸鉄(II)、テトラフルオロホウ酸鉄(II)、フェロセンまたはビス(η−ペンタメチルシクロペンタジエニル)鉄である、請求項1から6のいずれかに記載の製造方法。
【請求項8】
過酸化物が、過酸化水素あるいはその水溶液、過酸化水素−尿素複合体、tert−ブチルペルオキシドまたは過酢酸である請求項1から7のいずれかに記載の製造方法。
【請求項9】
過酸化物が、過酸化水素あるいはその水溶液である請求項1から8のいずれかに記載の製造方法。
【請求項10】
酸が、硫酸、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硝酸、リン酸、ヘキサフルオロリン酸、テトラフルオロホウ酸、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、シュウ酸、p−トルエンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸またはトリフルオロ酢酸である請求項2から9のいずれかに記載の製造方法。
【請求項11】
酸が、硫酸またはテトラフルオロホウ酸である請求項2から10のいずれかに記載の製造方法。
【請求項12】
1aおよびR1bが、メチル基である請求項1から11のいずれかに記載の製造方法。
【請求項13】
反応温度が20℃から100℃の範囲から選ばれた温度である、請求項1から12のいずれかに記載の製造方法。
【請求項14】
反応圧が大気圧(0.1MPa)から1.0MPaの範囲から選ばれた圧力である請求項1から13のいずれかに記載の製造方法。
【請求項15】
下記一般式(5)
【化5】

[式中、Rfは前記と同じ内容を示し、R、RおよびRは、それぞれ独立して、炭素数1から4のアルキル基を示す。]で表される、パーフルオロアルキル基を有するベンゼン類。

【公開番号】特開2008−137992(P2008−137992A)
【公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−285340(P2007−285340)
【出願日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【出願人】(000003300)東ソー株式会社 (1,901)
【出願人】(591180358)東ソ−・エフテック株式会社 (91)
【出願人】(000173762)財団法人相模中央化学研究所 (151)
【Fターム(参考)】