説明

パーマネントウェーブキット

【課題】剤の垂れ落ちなく、しかも巻き上げられた状態の毛髪束に対してパーマネントウェーブ用剤を行きわたらせることができるパーマネントウェーブキットの提供。
【解決手段】 以下の(1)及び(2)を含むパーマネントウェーブキット。
(1)目開きが120〜260μmで、かつ線径が10〜350μmである流体通過性の織成地等で構成される筒状体を含む毛髪保持具であって、その内部に毛髪束が収納可能であり、収納された該毛髪束をウェーブ状に変形させることが可能であり、かつ該毛髪束を変形させた状態に保持することが可能である毛髪保持具。(2)単一円筒形回転粘度計で与えられる粘度が、測定条件が温度30℃、回転速度10rpmで25,000〜45,000mPa・s、かつ測定条件が温度30℃、回転速度5rpmで150,000〜250,000mPa・sである乳化状パーマネントウェーブ用剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、頭髪を所定の形状に巻き上げ、パーマネントウェーブ用剤を用いて毛髪へ形状を付与するために用いられるパーマネントウェーブキットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、毛髪にパーマネントウェーブを付与する技術としては、頭髪をブロッキングし小さな毛髪束に区分けして、次に、その毛髪束からスライスし取り分けた小毛髪束をロッドと呼ばれる毛髪保持具によって所望のウェーブ形状に巻き上げる方法が知られている。毛髪保持具によって巻き上げられた毛髪束を、パーマネントウェーブ用剤によって化学処理することで、半永久的に持続するパーマネントウェーブを毛髪に付与することができる。
【0003】
これら一連の作業であるブロッキング、スライス及び巻き上げ作業は煩雑であるところ、これらの作業を一層簡単に行うことができ、しかも従来と同様の美しいウェーブ形状を付与できる技術として、本出願人は先に、筒状の毛髪保持具を用い毛髪束を巻き上げる技術を提案した(特許文献1参照)。この技術によれば、従来の巻き上げ作業に比べて一つの毛髪保持具で扱える毛髪量が大幅に増加するので、頭髪を巻き上げるための毛髪保持具の数が飛躍的に減少し、合わせて頭髪への毛髪保持具の装着しやすさも改善することから、巻き上げ作業の簡便性が著しく向上する。
【0004】
前記の技術を更に改良した技術として、本出願人は、毛髪保持具内に巻き上げられた状態で保持された毛髪束を、袋状の毛髪処理器具内に包み、この毛髪処理器具中で、液状のパーマネントウェーブ用剤を馴染ませることで、液だれを防ぎつつ、毛髪保持具内の毛髪束の中心までパーマネントウェーブ用剤を馴染ませる技術を提案した(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−111612号公報
【特許文献2】特開2005−152370号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、前記の従来技術よりも一層簡便に、かつ剤の垂れ落ちなく、しかも筒状の毛髪保持具内で巻き上げられた状態で保持された毛髪束に対してパーマネントウェーブ用剤を馴染ませることのできるパーマネントウェーブキットの提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下の(1)〜(2)を含むパーマネントウェーブキットを提供するものである。
(1)目開きが120〜260μmで、かつ線径が10〜350μmである流体通過性の織成地又は編成地で構成される筒状体を含む毛髪保持具であって、その内部に毛髪束が収納可能であり、収納された該毛髪束をウェーブ状に変形させることが可能であり、かつ該毛髪束を変形させた状態に保持することが可能である毛髪保持具。
(2)単一円筒形回転粘度計で与えられる粘度が、測定条件が温度30℃、回転速度10rpmで25,000〜45,000mPa・s、かつ測定条件が温度30℃、回転速度5rpmで150,000〜250,000mPa・sである乳化状パーマネントウェーブ用剤。
【発明の効果】
【0008】
本発明のパーマネントウェーブキットによれば、塗布補助のための毛髪処理器具を使うことなく、剤の垂れ落ちなく、しかも筒状の毛髪保持具により巻き上げられた状態の毛髪束に対してパーマネントウェーブ用剤を行きわたらせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、本発明のパーマネントウェーブキットにおける毛髪保持具の一実施形態を示す正面図である。
【図2】図2(a)は毛髪保持具に毛髪束を挿入した状態を示す図であり、図2(b)は巻き上げ用糸を引っ張り、毛髪束と共に筒状体を巻き上げる途中の状態を示す斜視図である。
【図3】図3(a)ないし(c)は、図1に示す毛髪保持具に毛髪束を挿通する際に好ましく用いられる毛髪挿入具の例を示す図である。
【図4】図4は、実施例及び比較例で用いた毛髪保持具の形状及び寸法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明のパーマネントウェーブキットをその好ましい実施形態に基づき説明する。本発明のパーマネントウェーブキットは、(1)毛髪保持具及び(2)パーマネントウェーブ用剤を含むものである。以下、それぞれについて説明する。
【0011】
〔毛髪保持具〕
図1には、毛髪保持具の一実施形態が示されている。同図に示す毛髪保持具1は、一端の開口部21から他端の開口部22に向けて毛髪束を挿通可能な扁平な筒状体2と、該筒状体2に形成された複数の挿通孔部6A,6Bに順次挿通された巻き上げ用糸7とを有している。毛髪保持具1は、その内部に毛髪束が収納可能であり、収納された該毛髪束をウェーブ状に変形させることが可能であり、かつ該毛髪束を変形させた状態に保持することが可能なものである。毛髪保持具1は、図2(a)に示すように、筒状体2に、毛髪束Hを、一端の開口部21側から他端の開口部22側に向かって挿入した状態で、巻き上げ用糸7を引っ張ることにより、図2(b)に示すように、毛髪束Hを、毛の根元側から見て時計回りの螺旋状に変形させ得るものである。
【0012】
毛髪保持具1について更に詳述すると、図1に示すように、毛髪保持具1は、縦長であり、筒状体2を主体として構成されている。筒状体2は、シート23により形成されており、より具体的には、扁平な筒状体2の一方の面を形成するシート23A及び他方の面を形成するシート23Bからなる。シート23A及びシート23Bは、いずれも帯状をなしており、長手方向に沿う両側端部24A,24Bにおいて、両シート23A,23B間が接合されることにより、一端の開口部21及び他端の開口部22を有する筒状体2が形成されている。シート23A及び他方の面を形成するシート23Bは、同一のものでもよく、あるいは異なるものでもよい。
【0013】
シート23A及びシート23Bには、図1に示すように、筒状体2の巻き上げ用の巻き上げ用糸7を挿通案内する複数個の挿通孔部6A,6Bが設けられている。巻き上げ用糸7は、その一端71が筒状体2の他端の開口部22近傍に係止されており、巻き上げ用糸7は、その一端71側から他端72側に向かって、挿通孔部6A,6Bに順次挿通案内されて筒状体2の外周面に螺旋状に巻き付けられている。巻き上げ用糸7は、これを引っ張って毛髪の巻き上げ操作を行うことができるものであれば良く、糸状のものの他、細長い帯状のもの等であっても良い。
【0014】
巻き上げ用糸7は、図1に示すように、シート23A及びシート23Bにおける両側部に互い違いに形成された挿通孔部6A,6Bに、ジグザグの軌跡を描くように挿通されて、筒状体2に取り付けられている。詳細には、筒状体2は、その両側部に第1の挿通孔部6Aからなる第1の挿通孔部列と、第2の挿通孔部6Bからなる第2の挿通孔部列とを有している。第1の挿通孔部列における隣接する挿通孔部の間隔は一定になっている。第2の挿通孔部列においても同様であり、その間隔は第1の挿通孔部列と同じになっている。そして、各挿通孔部列における挿通孔部6A,6Bは、互いに半ピッチずれるように互い違いに配置されている。
【0015】
毛髪保持具1においては、巻き上げ用糸7は、他端部の開口部22に最も近接した第1の挿通孔部6Aに、シート23Aからシート23Bに向けて挿通され、その位置から斜め右上方に位置する第2の挿通孔部6Bに向けて、シート23Bの外面に沿って配されている(図1参照)。そして、第2の挿通孔部6Bにおいて、シート23Bからシート23Aに向けて挿通されている。第2の挿通孔部6Bに挿通された巻き上げ用糸7は、その位置から斜め左上方に位置する第1の挿通孔部6Aに向けて、シート23Aの外面に沿って配されている。以後、この挿通が繰り返され、巻き上げ用糸7はシート23A又は23B側から見てジグザグの軌跡を描いている。また、このように挿通された巻き上げ用糸7は、筒状体2の周囲に、一端の開口部21側から他端の開口部22方向に向かって反時計回りの螺旋状に巻き付いており、巻き上げ用糸7を引っ張って毛髪の巻き上げ操作を行うときには、筒状体2が、一端の開口部21側から見て時計回りの螺旋状に変形し、それにより、筒状体2内の毛髪束Hも、毛の根元側から見て時計回りの螺旋状に変形する。
【0016】
毛髪保持具1は、巻き上げ用糸7を引っ張り、毛髪を巻き上げた後に、その巻き上げ用糸7を引き出した状態に保持可能なストッパー部3、毛髪を一端開口部21から筒状体2内に挿通させる際に、指を挿通して開口部21の開口を容易とする一対の指掛け部4,4、巻き上げ用糸7の一端71側を筒状体の端部26又はその近傍に係止させる係止片73、巻き上げ用糸7の他端72側に設けられた係止片74を有している。ストッパー部3は、弾性を有するシート片31から形成されており、筒状体2の一端部25に設けられている。シート片31には、貫通孔部32が形成されており、また該貫通孔部32を中心として放射状に延びる一対の切れ目33,33が形成されている。巻き上げ用糸7は、貫通孔部32に挿通されている。巻き上げ用糸7は、図2(b)に示すように、巻き上げ用糸7を引っ張り、筒状体2の巻き上げている途中においては、貫通孔部32内を切れ目33に拘束されずに移動可能であるが、巻き上げ後には、切れ目33に挟まれ拘束されて、巻き上げ用糸7が元の状態に戻ることが阻止される。これにより、筒状体2の巻き上げ状態及び毛髪束Hの巻き上げ状態が安定に維持される。係止片74は、引き出した巻き上げ用糸7をループ状に折り曲げた状態で、筒状体2の指掛け部4等に脱着自在に止着可能になされている。
【0017】
本実施形態のパーマネントウェーブキットにおいては、毛髪保持具1内に毛髪束を保持した状態、つまり図2(b)に示す巻き上げ作業が完了した状態で、該毛髪保持具1の表面(筒状体2の側面)から、毛髪束に対して、パーマネントウェーブ用剤を施し、該剤を毛髪束に馴染ませる。したがって筒状体2は、流体であるパーマネントウェーブ用剤に対して高い透過性を示す必要がある。通常、このような高い透過性を確保するためには、粘度の低いパーマネントウェーブ用剤を用いて該剤を馴染ませる作業を行う。しかしその場合には、パーマネントウェーブ用剤の垂れ落ちの発生が問題となる。したがって、パーマネントウェーブ用剤の垂れ落ちを抑制しつつ、筒状体2に対するパーマネントウェーブ用剤の透過性を向上させるためには、例えば筒状体2を目の粗い織成地等から構成し、かつ高粘度のパーマネントウェーブ用剤の塗布を行えばよい。これによってパーマネントウェーブ用剤の垂れ落ちは抑制できるが、毛髪保持具1の内部に入ったパーマネントウェーブ用剤は、粘度が高い状態を維持していることに起因して、毛髪束の表面を濡らすにとどまり、毛髪束の中心まで行きわたらないという別の問題が発生する。このように、前述した一般的なアプローチによっては、筒状体2に対するパーマネントウェーブ用剤の高い透過性を確保しつつ、毛髪保持具内部の毛髪束の中心までパーマネントウェーブ用剤を行きわたらせるという2つの課題の両立は困難である。
【0018】
これに対して本発明者らは、毛髪保持具1における筒状体2を、流体通過性の織成地又は編成地で構成するとともに、これら織成地又は編成地の目開き及び線径を特定の範囲に設定し、かつ該毛髪保持具1と組み合わせて用いられるパーマネントウェーブ用剤として特定の粘性を有するものを用いることで、筒状体2の表面(外部)からパーマネントウェーブ用剤を擦り込むと、該剤を毛髪束の中心まで行きわたらせることが可能になることを知見したものである。具体的には、指で撫でる・擦る等の外力によってパーマネントウェーブ用剤を、流体通過性の織成地又は編成地の外部から内部へ通過させたときに、該パーマネントウェーブ用剤の粘度を十分に低下させるためのせん断力を与え得る網目特性を有する織成地又は編成地を用い、かつせん断力を与えた状態では粘度が低くなって流動性に富むという粘度挙動を示すパーマネントウェーブ用剤とを組み合わせて用いることで、上述の相反する課題を両立できることが判明した。
【0019】
上述の知見に基づき、本発明においては、筒状体2を構成する流体通過性の織成地又は編成地(以下、両者を総称して「織成地等」という。)は、織成地等に対するパーマネントウェーブ用剤の透過性及び織成地等を透過したパーマネントウェーブ用剤の毛髪束への馴染みの観点から、目開きを120〜260μm、好ましくは150〜240μm、更に好ましくは180〜220μmに設定する。目開きが120μm以上であれば、パーマネントウェーブ用剤が織成地等を通過する際に目詰まりしにくくなるため、毛髪保持具の内部へ入るパーマネントウェーブ用剤の量が十分になる。また、260μm以下であれば、パーマネントウェーブ用剤が織成地等を通過する際に十分なシア(せん断力)が発生しやすくなるため、毛髪保持具の内部へ入るパーマネントウェーブ用剤の毛髪束への馴染みが十分になる。一方、織成地等を構成する繊維の線径に関しては、これを10〜350μm、好ましくは20〜300μm、更に好ましくは30〜250μmに設定する。線径を10μm以上にすることで、パーマネントウェーブ用剤が織成地等を通過する際の外力や巻き上げ用糸を引っ張った際の力によって織成地が変形又は破損しにくくなるため、パーマネントウェーブ用剤が毛髪保持具の内部へ入りやすくなる。また、350μm以下であれば、パーマネントウェーブ用剤が織成地等を通過する際に十分なシア(せん断力)が発生しやすくなるため、毛髪保持具の内部へ入るパーマネントウェーブ用剤の毛髪束への馴染みが十分になる。
【0020】
織成地等の目開き及び線径は、当業者が通常行う方法に従い、JIS Z8801−1の「試験用ふるい−第1部:金属製網ふるい」に記載される「ふるいの目開き」及び「金属線の直径」の検査方法において、金属線を織成地等に用いる繊維に読み替えて測定することにより得られる値である。
【0021】
織成地等として織成地を用いる場合、該織成地の織型に特に制限はなく、例えば平織、綾織、平畳織、綾畳織等を用いることができる。織成地に対するパーマネントウェーブ用剤の透過性が特に良好である観点から、平織及び綾織を用いることが好ましい。これらの要件を満たし、筒状体2に好適な織成地の例としては、目開きが180μmであり、線径が50μmのポリエステル製メッシュシートであるティーロード4817(山中産業社製)、目開きが190μmであり、線径が130μmであるナイロン製メッシュシートNB80(テックジャム社製)、目開きが258μmであり、線径が165μmであるナイロン製メッシュシートNB60(テックジャム社製)等が挙げられる。
【0022】
織成地等を構成する繊維形成材料は、使用目的上の理由から、通常パーマネントウェーブ用剤に含まれる成分に対して化学的に安定なものを用いることが好ましい。また美しいウェーブ形状を保持する観点から、弾性変形が可能なものを用いることが好ましい。そのような繊維形成材料の例としては、ポリアミド、ポリエステル、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル等が挙げられる。
【0023】
先に述べたとおり、筒状体2は、シート23A及びシート23Bから構成されているところ、これら両者が上述の目開き及び線径を有していてもよく、あるいはいずれか一方が上述の目開き及び線径を有していてもよい。更に、シート23A及びシート23Bは、その全域が上述の目開き及び線径を有していてもよく、あるいはその一部が上述の目開き及び線径を有していてもよいが、本発明の課題である、剤の垂れ落ちなく、しかも筒状の毛髪保持具内で巻き上げ保持された状態の毛髪束に対してパーマネントウェーブ用剤を馴染ませるとの観点からは、筒状体2を構成するシート23A及びシート23Bの両者が、半分以上、特に75%以上、とりわけその全域で上述の目開き及び線径を有していることがより好ましい。
【0024】
〔パーマネントウェーブ用剤〕
本発明で用いるパーマネントウェーブ用剤は、上述した毛髪保持具1との関係で、特定の粘度を有する乳化状のものである点に特徴を有する。具体的には、パーマネントウェーブ用剤を毛髪束に馴染ませる作業の際の剤の飛び散り抑制や、剤のたれ落ちの抑制の観点、及び毛髪保持具内部に保持された毛髪束へのパーマネントウェーブ用剤の良好な馴染み性の観点から、パーマネントウェーブ用剤は、単一円筒形回転粘度計で与えられる粘度が、測定条件が温度30℃、回転速度10rpmで25,000〜45,000mPa・s、好ましくは30,000〜40,000mPa・s、一層好ましくは32,000〜38,000Pa・sである(この測定条件を「測定条件1」という。)。また、パーマネントウェーブ用剤は、測定条件が温度30℃、回転速度5rpmで150,000〜250,000mPa・s、好ましくは155,000〜245,000mPa・s、一層好ましくは160,000〜240,000mPa・sである(この測定条件を「測定条件2」という。)。
【0025】
測定条件1において、パーマネントウェーブ用剤の粘度が25,000mPa・s以上であると、毛髪保持具の外側に塗布したパーマネントウェーブ用剤が織成地を通過し、毛髪保持具の内部に保持されている毛髪束に馴染んだ後、再び、毛髪保持具の外部へ染み出すことなく、剤の垂れ落ちも抑制できる。また、45,000mPa・s以下であると、毛髪保持具の内部に保持された毛髪束へのパーマネントウェーブ用剤の馴染みが十分になる。一方、測定条件2において、パーマネントウェーブ用剤の粘度が150,000mPa・s以上であると、毛髪保持具の外側に塗布したパーマネントウェーブ用剤を毛髪保持具内部に保持された毛髪束に馴染ませるために行う、指で撫でる・擦る等の作業の際にパーマネントウェーブ用剤の垂れ落ちが抑制できる。また、250,000mPa・s以下であると、パーマネントウェーブ用剤が織成地を通過する際に目詰まりしにくくなるため、毛髪保持具の内部へ入るパーマネントウェーブ用剤の量が十分になる。
【0026】
本発明において、パーマネントウェーブ用剤の粘度を測定するときの測定条件1は、織成地等の表面でパーマネントウェーブ用剤を、指で撫でる・擦る等の外力によってせん断力を負荷したときの状態での粘度に対応する。一方、測定条件2は、静置状態に近い状態でのパーマネントウェーブ用剤の粘度に対応する。
【0027】
パーマネントウェーブ用剤の粘度の測定は、上述のとおり単一円筒形回転粘度計によって測定される。具体的には、パーマネントウェーブ用剤を、70mlのガラスビンに65g充填し封入した状態で、30℃の温浴中で1時間保持したのち、東機産業社製TVB−10R粘度計を用いて、ローターNo.T−C、回転速度10rpm又は5rpm、測定時間1分の条件で測定する。
【0028】
パーマネントウェーブ用剤は、当該技術分野において知られている種々の成分を組み合わせて、前記の粘度を満たすように組成物を調製することで得られる。特にパーマネントウェーブ用剤は、(2−1)炭素数16〜22の脂肪族アルコール及び(2−2)イオン性界面活性剤を含むことが、パーマネントウェーブ用剤が織成地を通過する際に発生するシア(せん断力)による粘度低下、及び、塗布後の粘度復帰が速やかに起こる点から好ましい。
【0029】
前記の(2−1)炭素数16〜22の脂肪族アルコールとしては、セタノール、ステアリルアルコール、アラキルアルコール、ベヘニルアルコール等が挙げられる。これらの脂肪族アルコールは、一種又は二種以上を併用することができる。脂肪族アルコールの炭素数が前記の範囲内であることによって、上述した粘度範囲を長期間にわたって保持することが可能になる。パーマネントウェーブ用剤中における(2−1)の含有量は、パーマネントウェーブ用剤を塗布する際の剤の垂れ落ちの抑制、筒状体2を構成する織成地等に対するパーマネントウェーブ用剤の透過性、及び毛髪保持具内の毛髪束へのパーマネントウェーブ用剤の馴染み性の観点から、0.03〜6質量%が好ましく、0.12〜4.8質量%が更に好ましく、0.24〜3.6質量%が一層好ましい。
【0030】
前記の(2−2)イオン性界面活性剤としては、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、アニオン性界面活性剤のいずれをも使用することもできる。複合体を形成しない配合条件又は組み合わせの場合には、これらを2種以上併用しても良い。パーマネントウェーブ用剤中における(2−2)イオン性界面活性剤の含有量は、毛髪保持具内に挿入・保持されている毛髪束へのパーマネントウェーブ用剤の馴染み性の観点から、0.1〜15質量%が好ましく、0.5〜10質量%が更に好ましく、1〜9質量%が一層好ましい。
【0031】
前記の(2−1)及び(2−2)を含むパーマネントウェーブ用剤においては、(2−1)と(2−2)との質量比(2−1)/(2−2)は、好ましくは2.5〜4.2、より好ましくは2.6〜4.1、一層好ましくは2.7〜4.0である。両者の質量比をこの範囲内に設定することで、毛髪保持具1の外側では、剤が垂れ落ちない高い粘度の状態を保ち、織成地等を透過した後では、一時的に毛髪束へ浸透・拡散できる低い粘度になり、剤が毛髪束に行きわたった後は、再び高い粘度の状態に戻るといった粘度挙動が容易に発現する。その結果、パーマネントウェーブ用剤を塗布する際の剤の垂れ落ちの抑制、筒状体2を構成する織成地等に対するパーマネントウェーブ用剤の透過性、毛髪保持具内の毛髪束へのパーマネントウェーブ用剤の馴染み性の条件を満足させることができる。
【0032】
前記のイオン性界面活性剤のうち、カチオン性界面活性剤としては、モノ長鎖アルキル4級アンモニウム塩又はジ長鎖アルキル4級アンモニウム塩が好ましい。具体的には、セトリモニウムクロリド、ステアルトリモニウムクロリド、ベヘントリモニウムクロリド、ステアラルコニウムクロリド、ベンザルコニウムクロリド、ジアルキル(C12−18)ジモニウムクロリド等が挙げられる。両性界面活性剤としてはイミダゾリン、カルボベタイン、アミドベタイン、スルホベタイン、ヒドロキシスルホベタイン、アミドスルホベタイン等が挙げられる。アニオン界面活性剤としては、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキル又はアルケニルエーテル硫酸塩、アルキル又はアルケニル硫酸塩、オレフィンスルホン酸塩、アルカンスルホン酸塩、飽和又は不飽和脂肪酸塩、アルキル又はアルケニルエーテルカルボン酸塩、α−スルホ脂肪酸塩、N−アシルアミノ酸、リン酸モノ又はジエステル、スルホコハク酸エステル等が挙げられる。アルキルエーテル硫酸塩としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩が挙げられる。これらアニオン界面活性剤のアニオン性基の対イオンとしては、ナトリウムイオン、カリウムイオン等のアルカリ金属イオン;カルシウムイオン、マグネシウムイオン等のアルカリ土類金属イオン;アンモニウムイオン;炭素数2又は3のアルカノール基を1〜3個有するアルカノールアミン(例えばモノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン等)が挙げられる。
【0033】
上述した各種のイオン性界面活性剤のうち、毛髪保持具内に挿入・保持されている毛髪束へのパーマネントウェーブ用剤の馴染み性の観点から、カチオン性界面活性剤を用いることが好ましい。イオン性界面活性剤としてカチオン性界面活性剤を用いる場合、該カチオン性界面活性剤として、下記一般式(1)で表されるものを用いることが、パーマネントウェーブ用剤が織成地等を通過する際に発生するシア(せん断力)による粘度低下、及び、塗布後の粘度復帰が速やかに起こる点から好ましい。
【0034】
【化1】

【0035】
一般式(1)で表されるカチオン性界面活性剤の好適な具体例としては、パーマネントウェーブ用剤が織成地等を通過する際に発生するシア(せん断力)による粘度低下、及び、塗布後の粘度復帰が速やかに起こる点から、アルキルトリメチルアンモニウム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、脂肪酸アミドプロピルエチルジモニウム塩、アルコキシアルキルトリモニウム塩などが好適なものとして挙げられる。アルキルトリメチルアンモニウム塩としては、ラウリルトリモニウムクロリド、ミリスチルトリモニウムクロリド、パルミチルトリモニウムクロリド、ステアリルトリモニウムクロリド、ベヘントリモニウムクロリドが、ジアルキルジメチルアンモニウム塩としては、ジココジモニウムクロリド、ジアルキル(C12−18)アルキルジモニウムクロリド、ジセチルジモニウムクロリド、ジステアリルジモニウムクロリドが、脂肪酸アミドプロピルエチルジモニウム塩としては、クオタニウムー33、イソアルキル(C10−40)アミノプロピルエチルジモニウムエトサルフェートが、アルキルベンザルコニウム塩としては、セタルコニウムクロリド、ステアラルコニウムクロリドが、アルコキシアルキルトリモニウム塩としては、ステアロキシプロピルトリモニウムクロリド、ヒドロキシプロピルトリモニウムクロリドハニーがより好ましい。
【0036】
また、一般式(1)で表されるカチオン性界面活性剤以外のカチオン性界面活性剤として、アルキルアルキレングリコールアンモニウム塩、ジアルキルヒドロキシアルキルアンモニウム塩、アルギニン誘導体、グアニジン誘導体、ピリジン誘導体などを用いることもできる。アルキルアルキレングリコールアンモニウム塩としては、PEG−2オレアンモニウム、PEG−5ステアリルアンモニウムクロリド、PEG−5ステアリルメチルアンモニウムクロリド、PPG−25ジエチルモニウムクロリド、PPG−42ジエチルモニウムクロリドが、ジアルキルヒドロキシアルキルアンモニウム塩としては、ジココイルエチルヒドロキシエチルモニウムメトサルフェート、ジパルミトイルエチルヒドロキシエチルモニウムメトサルフェート、ジステアロイルエチルヒドロキシエチルモニウムメトサルフェートが、アルギニン誘導体として、アルキル(C12、C14)オキシヒドロキシプロピルアルギニンHClが、グアニジン誘導体として、酢酸(ミリスタミド/パルタミド)ブチルグアニジンが、ピリジン誘導体として、ラウリルピリジニウムクロリド、セチルピリジニウムクロリド等が挙げられる。
【0037】
パーマネントウェーブ用剤は、上述した(2−1)及び(2−2)の成分に加え、(2−3)油剤を含むことも好ましい。この油剤は、エステル油、炭化水素油、高級脂肪酸、シリコーン油から選ばれる少なくとも1種からなる。パーマネントウェーブ用剤がこれらの油剤を含むことによって、パーマネントウェーブ用剤が織成地等を通過する際のシアにより粘度低下した後の粘度復帰がより速やかに起こるという有利な効果が奏される。パーマネントウェーブ用剤中における(2−3)油剤の含有量は、毛髪保持具内に挿入・保持されている毛髪束へのパーマネントウェーブ用剤の馴染み性の観点から、0.01〜10質量%が好ましく、0.05〜5質量%が更に好ましく、0.1〜3質量%が一層好ましい。
【0038】
油剤としては、モノグリセロール、ジグリセロール、トリグリセロール等の炭素数12〜30の脂肪酸とグリセリンとの縮合物;乳酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピル、ミリスチン酸イソプロピル、イソステアリン酸イソプロピル、イソステアリン酸コレステリル、ヒドロキシステアリン酸コレステリル等の炭素数が2〜30の脂肪酸と炭素数が2〜30の1価アルコールの縮合物;(ヒドロキシステアリン酸/ステアリン酸/ロジン酸)ジペンタエリスリチル等の環状又は鎖状の糖類と炭素数が12〜30の脂肪酸の縮合物等のエステル油、流動パラフィン、流動イソパラフィン、固体パラフィン、スクワラン、スクワレン、ワセリン、ミネラルオイル、イソデカン、イソヘキサデカン等の炭化水素油;ラウリン酸、ミリスチン酸、18−メチルエイコサン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、ベヘン酸、セロチン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、リシノレン酸等の炭素数12〜30の飽和又は不飽和の脂肪酸、カルナウバロウ、キャンデリラロウ、ミツロウ、ゲイロウ、オレンジ果皮ロウ等のロウ;アボガド油、オリーブ油、シア油、ダイズ油、パーム油、ヒマシ油、ヒマワリ油、ホホバ油、ミンク油、ヤシ油等の油脂又は水添化油脂;ジメチコン/ポリオキシエチレンコポリマー、ステアリルメチコン、アモジメチコン、フェニルジメチコン、ジフェニルジメチコン、ジメチコン等のシリコーン油が挙げられる。
【0039】
パーマネントウェーブ用剤は、これをパーマネントウェーブ第1剤として用いる場合には、ケラチン還元性物質を、またパーマネントウェーブ第2剤として用いる場合には、ケラチン酸化性物質を配合する。ケラチン還元性物質としては、例えば、チオグリコール酸又はその塩類、システイン又はその塩類、アセチルシステイン、又は亜硫酸ソーダ等が挙げられ、化粧品及び医薬部外品等に通常用いられる還元剤であれば、特に限定されることなく使用できる。ケラチン酸化性物質としては、例えば、過酸化水素、臭素酸ナトリウム、臭素酸カリウム等の臭素酸塩などが挙げられ、化粧品及び医薬部外品等に通常用いられる還元剤であれば、特に限定されることなく使用できる。
【0040】
また、パーマネントウェーブ用剤は、上述した各種の成分以外に、通常のパーマネントウェーブ用剤に用いられている成分や化粧品分野で用いられる成分を、目的に応じて加えることができる。このような任意成分としては、可溶化剤、浸透促進剤、希釈剤、有機溶剤、pH調整剤、アルカリ剤、毛髪補修剤、キレート剤、防腐剤、酸化防止剤、保湿剤、紫外線吸収剤、香料などが挙げられる。
【0041】
本発明のパーマネントウェーブキットを用いたパーマネントウェーブ処理方法には、パーマネントウェーブ第1剤のみを使用する一浴式と、パーマネントウェーブ第1剤及びパーマネントウェーブ第2剤を使用する二浴式がある。それぞれについて、本発明のパーマネントウェーブキットを用いたパーマネントウェーブ処理方法について具体的に説明する。
【0042】
〔一浴式パーマネントウェーブ処理方法〕
1)頭髪をブロッキング(区分け)して取り分けたそれぞれの毛髪束を、毛髪保持具1内に挿入する。具体的には毛髪挿入具を用いて、毛髪束を一端の開口部21から筒状体2の内部へ挿入することが好ましい。毛髪挿入具は、一方の端部に毛髪束を係止するための係止部を有し、他方の端部に把持部を有しており、毛髪保持具1内に、筒状体2の一端の開口部21から前記係止部が突出し、他端の開口部22から前記把持部が突出した状態とされて使用し得るものが好ましい。このような毛髪挿入具としては、例えば、図3に示すようなもの等を用いることができる。また、特許文献1に記載のもの等を用いることもできる。図3に示す各毛髪挿入具5A〜5Cにおいては、符号51が係止部を示し、符号52が把持部を示している。毛髪挿入具5Aにおいては、可撓性を有する扁平帯状の合成樹脂製本体の端部が2本に分割されており、その分割部分同士がループ状に連結されて係止部51を形成している。毛髪挿入具5Bは、可撓性を有する扁平帯状の合成樹脂製本体の端部に矩形状の貫通孔51aが設けられ、該貫通孔51aに一端を有するスリット51bが設けられている。貫通孔51a及びスリット51bが係止部51を構成している。毛髪挿入具5Cは、紐ないし糸状体をループ状にした係止部51及び紐ないし糸状体からなる把持部52を有している。毛髪挿入具は、上記のものに制限されず、筒状体2内に毛髪束を挿通し得る各種公知のもの等を特に制限なく用いることができる。
2)図2(a)及び図2(b)に示す手順に従い、毛髪束を保持した状態の毛髪保持具1を巻き上げて、毛髪束の巻き上げ状態を保持する。
3)毛髪保持具内の毛髪束を軽く湿らせるか又は乾燥した状態で、該パーマネントウェーブ第1剤、すなわち上述のパーマネントウェーブ用剤(ケラチン還元性物質を含む)を塗布する。
4)該毛髪保持具表面の該パーマネントウェーブ第1剤を内部へ擦り込む。
5)所定の時間、毛髪束を該パーマネントウェーブ第1剤で処理する。
6)該毛髪保持具表面と内部に付着した該パーマネントウェーブ第1剤を水ですすぎ流す。
7)すすぎ水が滴らない程度まで水気を除くか、そのままの状態で所定の時間静置する。
8)毛髪束から該毛髪保持具1を外したのちに髪を水ですすぐか、又は該毛髪保持具1を装着した状態ですすいだのちに毛髪保持具1を外す。
【0043】
〔二浴式パーマネントウェーブ処理方法1〕
1)ないし6)は、上述の手順と同じである。
7)すすぎ水が滴らない程度まで水気を除き、パーマネントウェーブ第2剤、すなわち上述のパーマネントウェーブ用剤(ケラチン酸化性物質を含む)を塗布する。
8)毛髪保持具表面のパーマネントウェーブ第2剤を内部へ擦り込む。
9)所定の時間、毛髪束をパーマネントウェーブ第2剤で処理する。
10)毛髪束から毛髪保持具1を外したのちに髪に付着したパーマネントウェーブ第2剤を水ですすぎ流すか、又は毛髪保持具1を装着した状態でパーマネントウェーブ第2剤をすすぎ流したのちに毛髪保持具1を外す。
【0044】
〔二浴式パーマネントウェーブ処理方法2〕
1)ないし6)は、上述の手順と同じである。
7)すすぎ水が滴らない程度まで水気を除き、通常用いられるパーマネントウェーブ第2剤(ケラチン酸化性物質を含む)を塗布する。
7)所定の時間、毛髪束をパーマネントウェーブ第2剤で処理する。
8)毛髪束から毛髪保持具1を外したのちに髪に付着したパーマネントウェーブ第2剤を水ですすぎ流すか、又は毛髪保持具1を装着した状態でパーマネントウェーブ第2剤をすすぎ流したのちに毛髪保持具1を外す。
【0045】
〔二浴式パーマネントウェーブ処理方法3〕
1)及び2)は、上述の手順と同じである。
3)通常用いられるパーマネントウェーブ第1剤(ケラチン還元性物質を含む)を塗布する。
4)所定の時間、毛髪束をパーマネントウェーブ第1剤で処理する。
5)毛髪保持具表面・内部のパーマネントウェーブ第1剤を水ですすぎ流す。
6)すすぎ水が滴らない程度まで水気を除き、パーマネントウェーブ第2剤、すなわち上述のパーマネントウェーブ用剤(ケラチン酸化性物質を含む)を塗布する。
7)毛髪保持具表面のパーマネントウェーブ第2剤を内部へ擦り込む。
8)所定の時間、毛髪束をパーマネントウェーブ第2剤で処理する。
9)毛髪束から毛髪保持具1を外したのちに髪に付着したパーマネントウェーブ第2剤を水ですすぎ流すか、又は毛髪保持具1を装着した状態でパーマネントウェーブ第2剤をすすぎ流したのちに毛髪保持具1を外す。
【0046】
以上、本発明をその好ましい実施形態に基づき説明したが、本発明は前記の実施形態に制限されない。例えば前記の実施形態においては、毛髪保持具1における巻き上げ手段として巻き上げ用糸7を備えたものを用いたが、これに代えて他の巻き上げ手段を採用してもよい。
【実施例】
【0047】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。しかしながら本発明の範囲は、かかる実施例に制限されない。特に断らない限り、「%」及び「部」はそれぞれ「質量%」及び「質量部」を意味する。
【0048】
〔実施例1ないし6並びに比較例1ないし12〕
織成地等として、以下の表1に記載のメッシュシートを用いた。また、パーマネントウェーブ用剤として、以下の表2に記載のパーマネントウェーブ第2剤を用いた。これらを種々組み合わせ使用した実施例と比較例について、パーマネントウェーブ用剤がメッシュシートを透過して反対側の毛髪束まで到達したか(剤の透過性の評価)、及びメッシュシートを透過した後にパーマネントウェーブ用剤が毛髪束全体に拡散し馴染んだか(剤の馴染み性の評価)を、下記の評価手順と評価基準に従って行った。これらの結果を表3及び表4に示す。
【0049】
〔評価手順〕
1.日本人女性の毛髪で、長さ25cm、質量4.5g、厚み約0.2cm、幅2.5cmの板状毛髪束トレスを3枚作製する。
2.幅3cm、深さ0.5cmの溝に手順1で作成した板状トレスを順に3枚重ねて置き、更にその上に、表3及び表4の組み合わせに従って、表1に記載のメッシュシート1枚を重ねて置く。評価に使用するメッシュシートは、2.0×5.0cmの長方形の窓を開けた樹脂板に貼り付け、窓から露出したメッシュシート部分を使い評価を行う。
3.表3及び表4の組み合わせに従って、メッシュシートの表面へ表2に記載のパーマネントウェーブ用剤を3g付着させる。
4.パーマネントウェーブ用剤がメッシュシートを透過して反対側の毛髪束まで到達し馴染むようにパーマネントウェーブ用剤を指で擦り込む作業を20秒間行う。
5.手順4の作業の終了1分後に、メッシュシートのみを剥がし、以下の評価基準に従って、メッシュシートに対するパーマネントウェーブ用剤の透過性と、メッシュシートを通過したパーマネントウェーブ用剤の毛髪束への馴染み性の評価を行った。更にそれらの結果から、総合判定を以下の基準に従い行った。
【0050】
〔メッシュシートに対するパーマネントウェーブ用剤の透過性の評価〕
最も上側のトレスの表面へのパーマネントウェーブ用剤の付着状態を下記基準に基づき評価し、パーマネントウェーブ用剤のメッシュシート透過性をスコア1〜2で判定した。
[判定基準]
1:パーマネントウェーブ用剤の付着ない、又は局所的に僅かに付着
2:パーマネントウェーブ用剤が十分に広がって付着
【0051】
〔メッシュシート通過したパーマネントウェーブ用剤の毛髪束への馴染み性の評価〕
上側からトレスを順に丁寧に剥がし、最も下側のトレスへの剤の付着状態を下記の付着状態の判定基準に基づき評価し、パーマネントウェーブ用剤の毛髪への馴染み性をスコア1〜2で判定した。
[判定基準]
1:パーマネントウェーブ用剤の付着ない、又は局所的に僅かに付着
2:パーマネントウェーブ用剤が十分に広がって付着
【0052】
〔総合判定〕
上述の評価方法及び基準に従って、メッシュシートに対するパーマネントウェーブ用剤の透過性とメッシュシートを通過したパーマネントウェーブ用剤の毛髪束への馴染み性の評価を行い、両評価結果がともにスコア2の場合に、総合判定を合格、それ以外を不合格とした。
【0053】
【表1】

【0054】
【表2】

【0055】
【表3】

【0056】
【表4】

【0057】
〔実施例7ないし9並びに比較例13及び14〕
織成地等として、表1に記載のメッシュシート「ティーロード4817」を用い、図1に従って毛髪保持具を作製した。この毛髪保持具の詳細は以下に述べるとおりである。また、パーマネントウェーブ用剤として、表5に記載の粘度と含有質量比(2−1)/(2−2)の異なるパーマネントウェーブ第2剤を用いた。これらを組み合わせ使用した実施例と比較例について、パーマネントウェーブ用剤がメッシュシートを透過して反対側の毛髪束まで到達したか(剤の透過性の評価)、メッシュシートを透過した後にパーマネントウェーブ用剤が毛髪束全体に拡散し馴染んだか(剤の馴染み性の評価)、及び塗布中のパーマネントウェーブ用剤の垂れ落ちの有無(垂れ落ち性の評価)の評価を、下記の評価手順と評価基準に従って行った。更にそれらの結果から、総合判定を以下の基準に従い行った。結果を表6に示す。
【0058】
〔評価手順〕
1.図1に従って作製した毛髪保持具を使いビューラックス製の植え込みトレス13.5g、長さ25cmを巻き上げる。
2.毛髪保持具の表面全体に、均一になるように表5に記載のパーマネントウェーブ用剤を6.8g塗布し、この作業中の剤の垂れ落ちの有無を確認する。
3.塗布後、パーマネントウェーブ用剤がメッシュシートを透過して反対側の毛髪束まで到達し馴染むようにパーマネントウェーブ用剤を指で擦り込む作業を60秒間行い、その後4分間静置する。
4.静置後に毛髪保持具を外し、露出した毛髪束の表面と内側の剤の馴染み状態を確認する。
【0059】
〔パーマネントウェーブ用剤の垂れ落ちの評価〕
毛髪保持具の表面全体に、均一になるように表5に記載のパーマネントウェーブ用剤を塗布する際の剤の垂れ落ちの有無を下記の評価基準に従い行った。
1.塗布する際に、剤の垂れ落ちが僅かにあった、又は、垂れ落ちがあった。
2.塗布する際に、剤の垂れ落ちがなかった。
【0060】
〔毛髪束への剤の馴染みの評価〕
静置後に毛髪保持具を外し、露出した毛髪束の表面と内側の剤の馴染み状態を下記の評価基準に従い、行った。
1.毛髪束の表面のみに剤が付着している、又は、内部の一部に剤が付着している。
2.毛髪束の表面及び内部に剤が付着している。
【0061】
〔総合判定〕
上述の評価の結果、毛髪束への剤の馴染みの評価及び垂れ落ちの評価のスコアがともに2の場合を合格とし、それ以外の場合を不合格とした。
【0062】
〔毛髪保持具〕
図1に従い作製した毛髪保持具1は、メッシュシートで構成された筒状体の内部へ、図3に示した毛髪挿入具を使い毛髪束を挿入し、巻き上げ用糸7を引っ張ることで、毛髪束をウェーブ形状に変形させるために用いる。各部位の寸法は図4に示すとおりである。各部位には次の材料を用いた。筒状体2はティーロード4817(山中産業社製)として入手できる熱融着性ポリエステル繊維のメッシュ素材(オープニング180μm、オープニングエリア68%、繊径50μm)、巻き上げ用糸7は材質がポリエチレンテレフタレート製で線径1.0mm、巻き上げ用糸7の両端の係止片73,74及び毛髪束挿入時に開口部21を広げるための指掛け部4は材質がPET/PP芯鞘構造のスパンボンド不織布エルベス(坪量70g/m2)を用いた。
【0063】
【表5】

【0064】
【表6】

【符号の説明】
【0065】
1 毛髪保持具
2 筒状体
21 一端部の開口部
22 他端部の開口部
23,23A,23B シート
24A,24B 側端部
25 一端部
26 他端部
3 ストッパー部
31 シート片
32 貫通孔部
33 切れ目
4 指掛け部
5A〜5C 毛髪束挿入具
6A,6B 挿通孔部
7 巻き上げ用糸
71 一端
72 他端
73,74 係止片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の(1)及び(2)を含むパーマネントウェーブキット。
(1)目開きが120〜260μmで、かつ線径が10〜350μmである流体通過性の織成地又は編成地で構成される筒状体を含む毛髪保持具であって、その内部に毛髪束が収納可能であり、収納された該毛髪束をウェーブ状に変形させることが可能であり、かつ該毛髪束を変形させた状態に保持することが可能である毛髪保持具。
(2)単一円筒形回転粘度計で与えられる粘度が、測定条件が温度30℃、回転速度10rpmで25,000〜45,000mPa・s、かつ測定条件が温度30℃、回転速度5rpmで150,000〜250,000mPa・sである乳化状パーマネントウェーブ用剤。
【請求項2】
パーマネントウェーブ用剤が、以下の(2−1)及び(2−2)を含む請求項1記載のパーマネントウェーブキット。
(2−1)炭素数16〜22の脂肪族アルコール。
(2−2)イオン性界面活性剤。
【請求項3】
パーマネントウェーブ用剤に含まれる(2−1)と(2−2)の質量比が、(2−1)/(2−2)=2.5〜4.2である請求項2記載のパーマネントウェーブキット。
【請求項4】
パーマネントウェーブ用剤が、更にエステル油、炭化水素油、高級脂肪酸、シリコーン油から選ばれる少なくとも1種の(2−3)油剤を含む請求項2又は3記載のパーマネントウェーブキット。
【請求項5】
(2−2)のイオン性界面活性剤が下記一般式(1)で表されるカチオン性界面活性剤である請求項2ないし4のいずれかに記載のパーマネントウェーブキット。
【化1】

【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかに記載のパーマネントウェーブキットを用い、毛髪保持具内でウェーブ状に変形され保持された状態の毛髪束へ、パーマネントウェーブ用剤を馴染ませるパーマネントウェーブ処理方法であって、
該パーマネントウェーブ用剤にせん断力を加えつつ、該毛髪保持具を構成する筒状体の外部から内部へ該パーマネントウェーブ用剤を通過させる工程を含むパーマネントウェーブ処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−156285(P2011−156285A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−22494(P2010−22494)
【出願日】平成22年2月3日(2010.2.3)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】