説明

パーマネントウェーブ処理方法

【課題】ダメージが蓄積等した毛髪に対しても、乾燥してもウェーブが緩くならず、乾燥状態におけるウェーブ形状を長時間持続することが出来るパーマネントウェーブ処理方法を提供する。
【解決手段】毛髪にパーマネントウェーブを形成するための方法であって、上記毛髪に、還元剤、及び揮発性のアルカリ剤を含むパーマネントウェーブ第一剤を塗布する工程と、毛髪に所望のウェーブ形状を付与するのに対応した直径よりも細い第一ロッドに、上記パーマネントウェーブ第一剤が塗布された毛髪を巻き付ける工程と、上記パーマネントウェーブ第一剤が塗布された毛髪を所定の時間放置し、当該パーマネントウェーブ第一剤を毛髪中に浸透させる工程と、上記第二ロッドが巻きつけられた毛髪に、酸化剤を含むパーマネントウェーブ第二剤を塗布する工程と、からなる、ことを特徴とするパーマネントウェーブ処理方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダメージが蓄積等した毛髪に対しても、乾燥してもウェーブが緩くならず、乾燥状態におけるウェーブ形状を長時間持続することが出来る技術に関する。
【背景技術】
【0002】
毛髪は、主成分のケラチンを構成しているポリペプチド鎖(主鎖)が毛髪の縦方向に多数並び、隣り合った主鎖は、シスチンによって形成されるジスルフィド結合(シスチン結合)、アミノ基の窒素のプラスイオンとカルボキシル基の酸素のマイナスイオンによるイオン(塩)結合、カルボキシル基の酸素と水素による水素結合などの側鎖によってつながって網目構造を形成している。そして、この側鎖によって、毛髪は弾力性に富み、元の形状に戻ろうとする復元力を有している。
【0003】
このような構造を有する毛髪を変形させ、当該変形させた状態を持続させるパーマの通常技術は、第1工程において、還元剤を含有する組成物で、側鎖のジスルフィド結合(S−S結合)を開裂させて一旦復元力を弱め(還元工程)、次いでこのようにして処理された毛髪を一般的には水で濯ぎ、第2工程において、ロッドを使用して、所望の形状が最終的に毛髪に付与される位置に固定して、酸化組成物を塗布することにより、前記ジスルフィド結合を再形成させる(酸化工程)。
ジスルフィド結合は、共有結合であるため、日常の洗髪や整髪では殆ど切断することがなく、この方法によって毛髪に付与したウェーブが持続する。
【0004】
しかしながら、上述したような方法で処理された毛髪は、水分を含んだ状態ではウェーブが保たれているが、乾燥するとウェーブがだれてしまうという問題があった。
このような問題は、ウェーブの形成において、毛髪中のポリペプチド主鎖同士を繋ぐ側鎖のうち、ジスルフィド結合にしか着目していないことに起因していた。即ち、上記第2工程に移る段階において、毛髪中に過剰に水分が残っているために、上記側鎖のうちの水素結合が切断されたままであったり、還元剤と共に使用されるアルカリ剤が残存しているために、上記側鎖のうちのイオン結合が切断されたままであったりする状態で、ウェーブの固定化が図られていることが問題であった。
【0005】
この点、特許文献1では、毛髪を洗髪する工程と、パーマネントウェーブ用第1剤を塗布する工程と、毛髪をロッドに巻き込む工程と、一定温度で7〜15分間加温又は3〜15分放置しテストカールする工程と、毛髪をロッドに巻いたまま、油分、タンパク質、ゲル又は樹脂を含んだ溶液で第1剤を洗い流す工程と、ロッドに熱を与え毛髪が乾燥するまで加温する工程と、パーマネントウェーブ用第2剤を塗布する工程と、5〜15分間放置後、ロッドを外し毛髪に付着した第2剤を洗い流す工程とからなるパーマネント処理方法が提案されている。
また、特許文献2では、毛髪をロッドに巻きつける前、および/または、巻き付けた後に、メルカプタンを1重量%以上7重量%以下、および、ジスルフィドを含む、かつ、ジスルフィド/メルカプタンの配合比率が0.6以上1.5以下であるパーマネントウェーブ第1剤を塗布し、塗布後放置して毛髪を軟化させる工程と、毛髪を水洗した後、風乾により毛髪を乾燥させる工程と、パーマネントウェーブ第2剤を塗布し、塗布後放置し、次いで、前記ロッドを除去後水洗する工程とからなるパーマネントウェーブ処理方法が提案されている。
また、特許文献3では、毛髪をロッドに巻き付ける第1の工程と、該巻き付けた毛髪に対して還元剤を含むパーマネント第1剤を塗布して毛髪を膨潤軟化させる第2の工程と、膨潤軟化された毛髪に付着したパーマネント第1剤を洗い流し、または、パーマネント第1剤を中和する酸性の中間処理剤にてパーマネント第1剤の作用を止め、もしくは、前記両方を行う第3の工程と、第3の工程の後における湿潤状態の毛髪を加温しながら一定時間放置する第4の工程と、第4の工程の後に酸化剤を含むパーマネント第2剤を塗布してジスルフィド結合を再結合させる第5の工程とからなるパーマネントウェーブ処理方法が提案されている。
また、特許文献4では、カーラー又はカールペーパーから選択される機械的張力付与手段の周囲にケラチン繊維を巻き付けることにより、張力下でケラチン繊維を機械的にセットする工程であって、前記手段は可撓性で、カールを形成するように自身で閉塞可能であり、次いでケラチンのジスルフィド結合を還元するように還元組成物をケラチン繊維に塗布する工程と、更には任意のすすぎ作業後に、ケラチン繊維を乾燥させる工程と、ケラチン繊維に酸化組成物を塗布して、前記結合を再形成する酸化固定工程とを含むパーマネント再成形方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−212214号公報
【特許文献2】特開2007‐84491号公報
【特許文献3】特開2008‐93050号公報
【特許文献4】特開2008‐208115号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献記載の技術によれば、第1剤が毛髪に塗布された後、第2剤が毛髪に塗布される前の段階において、毛髪からアルカリ成分を除去すると共に、毛髪を乾燥させるので、通常状態の毛髪に対してジスルフィド結合の再形成が施される。そのため、ロッドの巻き付けに忠実で、一連のパーマネント処理の施術後の通常状態においてもウェーブのダレが少ないパーマを実現することが出来る。
しかしながら、カラーリングやパーマなどのダメージを受けた毛髪は、キューティクルが剥がれたり、毛髪内部のコルテックス層に多くの隙間が形成されており、このような毛髪においては、上記特許文献記載の技術をもってしても、パーマネントウェーブそのものがうまくかからない。
また、通常の毛髪を含め、パーマネントをかける際には、毛髪中のジスルフィド結合を一旦開裂させるが、これが不十分であると、所望の形状からなるパーマネントウェーブが得られにくい。
【0008】
そこで、本発明は、ダメージが蓄積等した毛髪に対しても、乾燥してもウェーブが緩くならず、乾燥状態におけるウェーブ形状を長時間持続することが出来るパーマネントウェーブ処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明に係るパーマネントウェーブ処理方法は、毛髪にパーマネントウェーブを形成するための方法であって、上記毛髪に、還元剤、及び揮発性のアルカリ剤を含むパーマネントウェーブ第一剤を塗布する工程と、毛髪に所望のウェーブ形状を付与するのに対応した直径よりも細い第一ロッドに、上記パーマネントウェーブ第一剤が塗布された毛髪を巻き付ける工程と、上記パーマネントウェーブ第一剤が塗布された毛髪を所定の時間放置し、当該パーマネントウェーブ第一剤を毛髪中に浸透させる工程と、上記第二ロッドが巻きつけられた毛髪に、酸化剤を含むパーマネントウェーブ第二剤を塗布する工程と、からなることを特徴とする。
【0010】
また、上記パーマネントウェーブ第二剤を塗布する工程の前工程として、上記第一ロッドを毛髪から取り外し、上記第一ロッドよりも太く、所望のウェーブ形状に適したサイズの第二ロッドに毛髪を巻き付け直す工程、をさらに有するものとしてもよい。
【0011】
また、上記パーマネントウェーブ第一剤を毛髪中に浸透させる工程において、毛髪に赤外線を照射するものとしてもよい。
【0012】
また、少なくとも上記第二ロッドは電熱式ロッドであるものとしてもよい。
【0013】
また、上記第一ロッドに上記毛髪を巻きつける工程の前に、上記毛髪に、アニオン性高分子を含有した毛髪補修用第一剤と、カチオン性高分子を含有した毛髪補修用第二剤を順次塗布して、当該アニオン性高分子とカチオン性高分子とを複合化させる工程、を有するものとしてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ダメージ等が蓄積等した毛髪に対しても、乾燥してもウェーブが緩くならず、乾燥状態におけるウェーブ形状を長時間持続することが出来るパーマネントウェーブが提供される。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係るパーマネント処理方法の実施形態について詳述する。
本実施形態に係るパーマネント処理方法の一連の処理は、以下の処理工程を順次行う。
工程1.洗髪
工程2.毛髪の補修
工程3.パーマネントウェーブ第一剤の塗布
工程4.第一ロッドによる巻き付け
工程5.放置
工程6.第一ロッドの取り外し
工程7.酸性リンス・すすぎ(任意)
工程8.第二ロッドによる巻き直し
工程9.パーマネントウェーブ第二剤の塗布
工程10.放置
工程11.第二ロッドの取り外し
工程12.すすぎ・乾燥
【0016】
<工程1.洗髪>
まず、毛髪を洗髪することにより、毛髪に付着した汚れや整髪料等を洗い流すと共に、適度な水分を毛髪に吸収させる。これにより、後の工程における各薬剤の効果的な塗布及び浸透が可能となる。
また、水分が毛髪に浸透するこの段階において、ポリペプチド主鎖間のカルボキシル基の酸素と水素の間で側鎖を形成する水素結合が切断される。なお、当該水素結合は、洗髪を行わない場合であっても、パーマネントウェーブ第1剤の溶媒として用いられる水により切断される。
【0017】
<工程2.毛髪の補修>
次に、パーマネントウェーブを効果的に形成するために、毛髪の補修を行う。この工程は、毛髪がダメージを受けてできた隙間に、タンパク質類似の物質等を補給して埋め込むものである。また詳しくは、アニオン性高分子を主成分として含有する毛髪補修用第一剤と、カチオン性高分子を主成分として含有する毛髪補修用第二剤とを順次塗布することで、毛髪の表面や内部に形成された隙間に、該アニオン性高分子とカチオン性高分子による水不溶性のポリイオンコンプレックス(PIC)を生成させる。これにより、毛髪のツヤやハリ、弾性といったものを補うことができると共に、パーマネントウェーブを形成するための強固な芯を形成することが出来る。
【0018】
毛髪補修用第一剤は、主成分としてアニオン性高分子を含有する。アニオン性高分子としては例えば、加水分解ケラチン、加水分解ケラチンエチル、加水分解コラーゲン、加水分解コラーゲンエチル、加水分解カゼイン、加水分解酵母タンパク、加水分解コムギ、加水分解コンキオリン、加水分解シルク、加水分解シルクエチル、加水分解植物プロテイン、大豆タンパク加水分解物等が挙げられるが、本実施形態では特に、加水分解ケラチンを用いる。
また、本実施形態に用いる加水分解ケラチンは、α−ケラトース(結晶性)、γ−ケラトース(非結晶性)のいずれであってもよい。
【0019】
また、毛髪補修用第一剤のアニオン性を補う成分として、アニオン性界面活性剤を含んでもよい。アニオン性界面活性剤としては例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンスルホコハク酸ラウリル二ナトリウム、ポリオキシエチレンヤシ油脂肪酸モノエタノールアミド硫酸ナトリウム液、ヤシ油脂肪酸メチルアラニンナトリウム液、ヤシ油脂肪酸メチルタウリンナトリウム、N−ヤシ油脂肪酸アシル−L−グルタミン酸トリエタノールアミン、ヤシ油脂肪酸加水分解コラーゲンナトリウム液などが挙げられる。
さらに、毛髪補修用第一剤には他に、ヒアルロン酸、セリシン、及びこれらの塩などを含ませてもよい。
【0020】
毛髪補修用第一剤として毛髪に塗布された加水分解ケラチンは、毛髪表面のダメージ部分や、毛髪内部の隙間に入り込む。
【0021】
これに続いて、毛髪補修用第二剤を毛髪に塗布する。
毛髪補修用第二剤は、主成分としてカチオン性高分子を含有する。カチオン性高分子としては例えば、ビニルピロリドン/ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート共重合体、カチオン化セルロース、カチオン性セルロース誘導体、カチオン性ポリサッカライド、キトサン(キトフィルム)等が挙げられるが、本実施形態では特に、カチオン化セルロース、及びキトサンを用いる。
【0022】
また、毛髪補修用第二剤のカチオン性を補う成分として、カチオン性界面活性剤を含んでもよい。カチオン性界面活性剤としては例えば、塩化ラウリルトリメチルアンモニウム、塩化セチルトリメチルアンモニウム、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ジステアリルジメチルアンモニウム等の4級アンモニウム塩、これら4級アンモニウム塩をアルキルピリジニウム塩、あるいはアミン塩に変えたものなどが挙げられる。
【0023】
毛髪補修用第一剤に続いて毛髪補修用第二剤が毛髪に塗布されることで、各剤に含まれるカチオン性高分子とアニオン性高分子とが複合化し、ポリイオンコンプレックス(PIC)が毛髪の表面や内部の隙間に埋め込まれる。
これにより、毛髪内部に、パーマネントウェーブを形成するための強固な芯が形成される。
【0024】
<工程3.パーマネントウェーブ第一剤の塗布>
洗髪された毛髪に対して、パーマネントウェーブ第一剤を均等に塗布する。
このパーマネントウェーブ第一剤には、チオグリコール酸、チオグリコール酸アンモニウム、チオ乳酸等のチオグリコール酸塩類、システイン、システイン塩酸塩等のシステイン酸塩類、システアミン、N−アセチルシステイン等のシステイン誘導体、チオグリセリルアルキルエーテル、メルカプトアルキルアミド、亜硫酸塩、亜硫酸水素塩等の還元剤が含まれる。
このパーマネントウェーブ第一剤の還元作用を受けて、毛髪中のシスチンは水素原子と結合して2つのシステイン残基となり、毛髪中のジスルフィド結合が開裂する。
【0025】
また、パーマネントウェーブ第一剤には、アルカリ剤が含まれる。アルカリ剤としては例えば、アンモニア、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、イソプロパノールアミン、2−メチル−2−アミノ−1−プロパノール、プロパンジアミン−1,3、アルカリ又はアンモニウムの炭素塩又は重炭酸塩、炭酸ナトリウム及び重炭酸ナトリウム、有機炭酸塩、例えば炭酸グアニジン、又はアルカリの水酸化物が挙げられるが、本実施形態では特に、揮発性の強いアルカリ剤が用いられる。
【0026】
この点、近接するポリペプチド主鎖間では、夫々の主鎖のアミノ基の窒素がプラスに、また、カルボキシル基の酸素がマイナスに分かれ、当該プラスとマイナスが引き合ってイオン結合を形成しているところ、この結合力は、毛髪が等電帯(pH4.5〜5.5)にあるとき最大となり、ケラチンは最も安定した状態となっている。そして、パーマネントウェーブ第一剤に含まれるアルカリ成分により、当該イオン結合は切断される。
なお、パーマネントウェーブ第一剤は、液状、ジェル状、クリーム状等、いずれの状態のものであってもよく、この点については特に限定されない。
【0027】
<工程4.第一ロッドによる巻き付け>
次に、パーマネントウェーブ用の第一ロッドに毛髪を巻きつける。
この第一ロッドは、後の工程で用いられる第二ロッドより直径の細いロッドであって、毛髪に所望のウェーブ形状を付与するのに対応した直径よりも細いロッドである。
そして、この第一ロッドに毛髪を巻きつけることで、毛髪表面のキューティクルや内部のコルテックス層において、毛髪が普段の生活やパーマ等によるダメージによってできた隙間を開く、あるいは変形させる。
また、このように細いロッドに毛髪を巻きつけることで毛髪に張力がかかり、ジスルフィド結合がより開裂しやすくなる。この結果、所望のウェーブ形状が形成しやすい。
【0028】
<工程5.放置>
以上の工程の後、一旦、パーマネントウェーブ第一剤による毛髪中のジスルフィド結合の開裂反応の進行を待つため、約15分程度時間を置く。
この工程では、電熱式ロッドである第一ロッドに通電して第一ロッドを加熱することにより、毛髪をロッド側から加温する。さらにこの際、2μm〜4μm程度の波長帯域の赤外線を照射するとよい。これにより、毛髪中の薬剤成分及び水分に熱エネルギーが与えられ、反応が活発化する。この結果、薬剤が毛髪に均一に浸透する。
また同時に、所定の送風手段により、毛髪に対して送風を行ってもよい。なお、ここで用いる送風手段は、ヒーターやファンを備え、送風を行うことの出来る装置であって、いわゆるドライヤー、パーマの施術対象者の頭部を覆い、送風と空気の吸引を行うことの出来るフード状のパーマ装置などである。
【0029】
この工程における毛髪の放置・乾燥により、パーマネント補修用第一剤中に含まれる水分が蒸発する結果、切断されていた水素結合が再形成される。また併せて、毛髪に浸透していたアルカリ剤の揮発が促進される結果、切断されていたイオン結合が再形成される。
【0030】
<工程5.放置>
パーマネントウェーブ第一剤を毛髪中に浸透させ、毛髪中のジスルフィド結合を十分に開裂させると、当該パーマネントウェーブ第一剤の成分を毛髪から除去する工程7のために、第一ロッドを毛髪から取り外す。
【0031】
<工程7.酸性リンス・すすぎ(任意)>
毛髪中に残存したパーマネントウェーブ第一剤のアルカリ成分を除去する。アルカリ成分の除去は例えば、酸性リンスを塗布してアルカリ成分を中和させるとよい。これにより毛髪中のポリペプチド主鎖間に形成されたイオン結合からなる側鎖の再結合をさらに促進することが出来る。なお、毛髪を流水等ですすぐことにより、中和を図ることもできる。
【0032】
<工程8.第二ロッドによる巻き直し>
次に、パーマネントウェーブ用の第二ロッドに毛髪を巻きつける
この第二ロッドは、前の工程で用いられた第一ロッドより直径の太いロッドであって、所望のウェーブに適した直径からなる。この第二ロッドは、電熱式でない通常のロッドであってもよいが、外部電源から電力の供給を受けて通電することにより加熱する電熱式ロッドを用いてもよく、この場合には、毛髪が熱の影響を受けて、よりしっかりとしたパーマネントウェーブが施される。
この第二ロッドに毛髪を巻きつけた状態で最終的なパーマネントウェーブを形成させ、所望のウェーブが得られる。
【0033】
<工程9.パーマネントウェーブ第二剤の塗布>
本工程では、毛髪内部のポリペプチド主鎖間の側鎖を形成する水素結合やイオン結合が、第二ロッドが巻きつけられた形状で再結合された状態から、毛髪に対してパーマネントウェーブ第二剤を塗布することによりジスルフィド結合を再形成させ、ウェーブの最終的な成形を図る。
【0034】
このパーマネントウェーブ第二剤には、主成分として、臭素酸ナトリウム(NaBrO3)、臭素酸カリウム(KBrO3)、過ホウ酸ナトリウム、過酸化水素水(H2O2)等の酸化剤が含まれる。
このパーマネントウェーブ第二剤の酸化作用によって、システイン残基が酸化され、開裂されたジスルフィド結合を再形成させることが出来る。
【0035】
<工程10.放置>
以上の工程の後、ここで、パーマネントウェーブ第二剤による毛髪中のジスルフィド結合の再形成を待つために、約10分程度時間を置く。
この工程における毛髪の放置により、毛髪に残留していたアルカリ成分は完全に除去され、毛髪中のポリペプチド主鎖間の側鎖を形成するイオン結合の再形成がさらに促される。また、毛髪中の水分が蒸発することにより、同様に側鎖を形成する水素結合の再結合も進行する。さらにこの際、2μm〜4μm程度の波長帯域の赤外線を照射するとよい。これにより、毛髪中の薬剤成分及び水分に熱エネルギーが与えられ、反応が活発化する。この結果、薬剤が毛髪に均一に浸透する
なお、この工程において、第二ロッドとして電熱式ロッドを用いた場合には、当該第二ロッドに通電して第二ロッドを加熱することにより、毛髪をロッド側から加温してもよい。また同時に、所定の送風手段により、毛髪に対して送風を行う。
なお、ここで用いる送風手段も前記と同様に、ヒーターやファンを備え、送風を行うことの出来る装置であって、いわゆるドライヤー、パーマの施術対象者の頭部を覆い、送風と空気の吸引を行うことの出来るフード状のパーマ装置などである。
【0036】
<工程11.第二ロッドの取り外し>
以上の工程によりパーマネントウェーブが形成されると、第二ロッドを取り外す。
【0037】
<工程12.すすぎ・乾燥>
そして最後に毛髪をすすいで、毛髪に付着した余計な薬剤等を除去した後、乾燥させてパーマが仕上がる。
【0038】
以上の本実施形態によれば、ポリペプチド主鎖間の側鎖として形成されるイオン結合や水素結合を、所望のウェーブ形状で結合した状態から、ジスルフィド結合を再結合させるため、乾燥しても緩くなることがなく、乾燥状態におけるウェーブ形状を長時間持続させることが出来る。
また、ダメージが蓄積等し、キューティクルが剥がれたり、コルテックス層に隙間が形成されたような毛髪に対しても、しっかりとしたパーマネントウェーブを付与することが出来る。
また、第一ロッドとして、毛髪に所望のウェーブ形状を付与するのに対応した直径よりも細いものを用いた状態で、パーマネントウェーブ第一剤による反応を進行させるため、毛髪のジスルフィド結合を開裂させやすい。この結果、ストレートパーマを含め、所望のウェーブ形状からなるパーマネント形状が得られやすい。
さらに、パーマネントウェーブ用第一剤において、揮発性のアルカリ剤を用いることで、アルカリ成分の除去を作為的に行わなくとも、時間の経過と共に揮発するので、処理工程を単純化させることが出来る。
【0039】
なお、本実施形態においては、第一ロッドを第二ロッドに巻き直すことにより、より効果的なパーマネントウェーブを実現しているが、所望のウェーブ形状に適したロッドのみを第一ロッドとして用い、これに毛髪を巻き付け、第二ロッドに巻き直すことなく、最終工程のすすぎ・乾燥工程の前段階で第一ロッドをはずすことにより、一連のパーマネントウェーブ処理を行うものとすることもできる。この場合には、下記1〜10の工程からなる。
工程1.洗髪
工程2.毛髪の補修
工程3.パーマネントウェーブ第一剤の塗布
工程4.第一ロッドによる巻き付け
工程5.放置
工程6.酸性リンス(任意)
工程7.パーマネントウェーブ第二剤の塗布
工程8.第一ロッドの取り外し
工程9.すすぎ・乾燥
【0040】
また、以下の工程のように、パーマネントウェーブ第二剤の塗布工程の前に第一ロッドを取り外し、適宜毛髪をストレートにした状態でパーマネントウェーブ第二剤を塗布することで、ストレートパーマとして応用することが出来る。
工程1.洗髪
工程2.毛髪の補修
工程3.パーマネントウェーブ第一剤の塗布
工程4.第一ロッドによる巻き付け
工程5.放置
工程6.酸性リンス(任意)
工程7.第一ロッドの取り外し
工程8.パーマネントウェーブ第二剤の塗布
工程9.すすぎ・乾燥
【0041】
また上述した実施形態におけるいずれの放置工程においても、2μm〜4μm程度の波長帯域の赤外線を毛髪に照射するものとしてもよい。これにより、毛髪中の薬剤成分及び水分に熱エネルギーが与えられ、反応が活発化する。この結果、薬剤が毛髪に均一に浸透する。
【0042】
また、本実施形態においては、各種の薬剤に既知の添加剤を必要に応じて加えることができる。添加剤としては例えば、保湿剤類、油脂類、ラノリン類、高級アルコール類、フッ素化合物、シリコーン類、界面活性剤類(陽イオン界面活性剤類、陰イオン界面活性剤類、非イオン界面活性剤類、両性界面活性剤類)、増粘・ゲル化剤類、防腐剤類、キレート剤類、pH調整剤・酸・アルカリ類、溶剤類、抗炎症剤類、香料、色素等を挙げることができ、これらを適宜配合することが出来る。
【0043】
これらの添加剤を例示すると、保湿剤類としては、1,3−ブチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等の多価アルコール類、コラーゲン、ゼラチン、エラスチン、コラーゲン分解ペプチド、エラスチン分解ペプチド、ケラチン分解ペプチド、シルク蛋白分解ペプチド、大豆蛋白分解ペプチド、小麦蛋白分解ペプチド、カゼイン分解ペプチド等の蛋白質・ペプチド類およびその誘導体、アルギニン、セリン、グリシン、グルタミン酸、トリメチルグリシン等のアミノ酸類、アロエ抽出物、ハマメリス水、ヘチマ水、カモミラエキス、カンゾウエキス等の植物抽出成分類、ヒアルロン酸ナトリウム、クエン酸塩、コンドロイチン硫酸、乳酸ナトリウム、2−ピロリドン−5−カルボン酸ナトリウム等が挙げられる。
【0044】
油脂類としては、ヒマシ油、ヤシ油、パーム油、パーム殻油、サフラワー油、オリーブ油、アボカド油、ゴマ油、月見草油、小麦胚芽油、マカデミアナッツ油、ヘーゼルナッツ油、ローズヒップ油、メドウフォーム油、ティーツリー油、ハッカ油、トウモロコシ油、ナタネ油、ヒマワリ油、綿実油、大豆油、落花生油、コメヌカ油、液状シア脂、ホホバ油等の植物油脂類、流動パラフィン、スクワラン、軽質流動パラフィン、セレシン、パラフィンロウ、ポリエチレン、マイクロクリスタリンワックス、ワセリン等の炭化水素等、コハク酸ジ2−エチルヘキシル、パルミチン酸イソプロピル等のエステル類、ミツロウ、キャンデリラロウ、カルナバロウ、ライスワックス、鯨ロウ、セラック、綿ロウ、モクロウ、水添ホホバ油等のロウ類が挙げられる。
【0045】
ラノリン類としては、液状ラノリン、還元ラノリン、吸着精製ラノリン等のラノリン類が挙げられる。高級アルコール類としては、ラウリルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、ミリスチルアルコール、オレイルアルコール、セトステアリルアルコール等の直鎖アルコール類、モノステアリルグリセリンエーテル(バチルアルコール)、2−デシルテトラデシノール、ラノリンアルコール、コレステロール、フィトステロール、ヘキシルドデカノール、イソステアリルアルコール、オクチルドデカノール等の分枝鎖アルコール等が挙げられる。
【0046】
フッ素系化合物としては、パーフルオロポリエーテル、ポリパーフルオロエトキシメトキシジフルオロヒドロキシエチル、ポリパーフルオロエトキシメトキシジフルオロメチルジステアリルアミド、ポリパーフルオロエトキシメトキシジフルオロエチルポリエチレングリコールリン酸等のフッ素系化合物誘導体類が挙げられる。
【0047】
シリコーン類としては、低粘度ジメチルポリシロキサン、高粘度ジメチルポリシロキサン、環状ジメチルシロキサン(デカメチルシクロペンタシロキサン)、メチルフェニルポリシロキサン、ジフェニルポリシロキサン、シリコーン樹脂、シリコーンゴム、カチオン変性ポリシロキサン、ポリエーテル変性ポリシロキサン、フッ素変性ポリシロキサン等が挙げられる。
【0048】
陽イオン界面活性剤類としては、塩化セチルトリメチルアンモニウム、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ベヘニルトリメチルアンモニウム、塩化アルキルトリメチルアンモニウム、塩化ジステアリルジメチルアンモニウム、エチル硫酸ラノリン脂肪酸アミノプロピルエチルジメチルアンモニウム等が挙げられる。
【0049】
陰イオン界面活性剤類としては、脂肪酸塩、アルキル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキル硫酸塩、ポリオキシエチレン脂肪アミン硫酸塩、アシルN−メチルタウリン塩、アルキルエーテルリン酸エステル塩、N−アシルアミノ酸塩等が挙げられる。
【0050】
非イオン界面活性剤類としては、多価アルコール脂肪酸部分エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、アルキルジメチルアミンオキサイド、アルキルポリグリコシド、アルキルグリコシド等が挙げられる。
【0051】
両性界面活性剤類としては、アルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン、アルキルアミドジメチルアミノ酢酸ベタイン、2−アルキル−N−カルボキシ−N−ヒドロキシイミダゾリニウムベタイン等を挙げることができる。
【0052】
増粘・ゲル化剤としては、グアーガム、キサンタンガム、カラギーナン、アルギン酸、トラガントガム、デンプン誘導体、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシビニルポリマー、アクリル酸・メタアクリル酸アルキル共重合体、ポリビニルアルコール、アクリル樹脂アルカノールアミン液等を挙げることができる。
【0053】
防腐剤としては、p−ヒドロキシ安息香酸エステル類、安息香酸塩類、フェノキシエタノール、4級アンモニウム塩類等を挙げることができる。
【0054】
キレート剤としては、エデト酸塩、ホスホン酸類、ポリアミノ酸類等を挙げることができる。pH調整剤・酸・アルカリ類としては、リン酸、リンゴ酸、酒石酸、炭酸、フマル酸、クエン酸、乳酸、グリコール酸、コハク酸、塩酸、硫酸、硝酸若しくはそれらの塩類、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、リン酸水素二ナトリウム、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、アルギニン、アンモニア水、アミノメチルプロパノール若しくはそれらの塩類等を挙げることができる。
【0055】
溶剤類としては、水、エタノールやデカメチルシクロペンタシロキサンの他にも、2−プロパノール等の低級アルコール類等を例示することができる。抗炎症剤類としては、グリチルリチン酸、カルベノキソロン二ナトリウムをはじめとする甘草誘導体、アラントイン、グアイアズレン、アロエ、α−ビサボロール等が挙げられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
毛髪にパーマネントウェーブを形成するための方法であって、
上記毛髪に、還元剤、及び揮発性のアルカリ剤を含むパーマネントウェーブ第一剤を塗布する工程と、
毛髪に所望のウェーブ形状を付与するのに対応した直径よりも細い第一ロッドに、上記パーマネントウェーブ第一剤が塗布された毛髪を巻き付ける工程と、
上記パーマネントウェーブ第一剤が塗布された毛髪を所定の時間放置し、当該パーマネントウェーブ第一剤を毛髪中に浸透させる工程と、
上記第二ロッドが巻きつけられた毛髪に、酸化剤を含むパーマネントウェーブ第二剤を塗布する工程と、からなる、
ことを特徴とするパーマネントウェーブ処理方法。
【請求項2】
上記パーマネントウェーブ第二剤を塗布する工程の前工程として、上記第一ロッドを毛髪から取り外し、上記第一ロッドよりも太く、所望のウェーブ形状に適したサイズの第二ロッドに毛髪を巻き付け直す工程、をさらに有する、
請求項1記載のパーマネントウェーブ処理方法。
【請求項3】
上記パーマネントウェーブ第一剤を毛髪中に浸透させる工程において、毛髪に赤外線を照射する、
請求項1又は2記載のパーマネントウェーブ処理方法。
【請求項4】
少なくとも上記第二ロッドは電熱式ロッドである、
請求項1乃至3いずれかの項に記載のパーマネントウェーブ処理方法。
【請求項5】
上記第一ロッドに上記毛髪を巻きつける工程の前に、上記毛髪に、アニオン性高分子を含有した毛髪補修用第一剤と、カチオン性高分子を含有した毛髪補修用第二剤を順次塗布して、当該アニオン性高分子とカチオン性高分子とを複合化させる工程、を有する、
請求項1乃至4いずれかの項に記載のパーマネントウェーブ処理方法。

【公開番号】特開2011−36486(P2011−36486A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−187557(P2009−187557)
【出願日】平成21年8月12日(2009.8.12)
【出願人】(598060475)クレイダ.株式会社 (3)
【Fターム(参考)】