説明

パーマネントウェーブ用イオン水と、これを用いたパーマネントウェーブの施術方法

【課題】アルカリ剤を使用せずともしっかりしたウェーブを附形できるパーマネントウェーブ用リチウムイオン水と、これを用いたパーマネントウェーブの施術方法を提供する。
【解決手段】アルカリ金属イオンとアルカリ土類金属イオンのうちいずれか一方または双方を含有するパーマネントウェーブ用イオン水である。毛髪へパーマネントウェーブを施術する際は、アルカリ剤を含有しないパーマネントウェーブ用剤と共に、上記パーマネントウェーブ用イオン水を毛髪へ塗布する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、毛髪へパーマネントウェーブを施術する際に使用するパーマネントウェーブ用イオン水と、これを用いたパーマネントウェーブの施術方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のパーマネントウェーブ用剤は、一般的に還元剤を含有する第1剤と、酸化剤を含有する第2剤とで構成される(例えば特許文献1参照)。第1剤には、チオグリコール酸、システイン、アセチルシステインなどの還元剤が含有されており、この還元剤の作用によって、毛髪中のシスチン結合が切断される。また、第1剤の中にはアンモニアなどのアルカリ剤が含有されており、このアルカリ剤によって毛髪を保護するキューティクルが開かれ、第1剤に含まれる還元剤による還元反応(シスチン結合の切断)が促進されることで、良好なウェーブが附形される。一方、第2剤には臭素酸ナトリウム、臭素酸カリウム、過酸化水素水などの酸化剤が含有されており、第1剤の作用によって切断された毛髪中のシスチン結合が、第2剤に含まれる酸化剤の作用によって復元される。パーマネントウェーブの施術の際には、ロッドに巻き付けられた毛髪に対して第1剤が塗布された後に、必要に応じて第1剤が洗い流され、次いで第2剤が塗布される。これにより、毛髪に対してパーマネントウェーブが形成される。最後に、第2剤も洗い流すことで完了である。なお、1種類のパーマネントウェーブ用剤のみを使用する一浴式の施術方法もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−212050号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このように、毛髪へパーマネントウェーブを施術した後はパーマネントウェーブ用剤を洗い流していたが、必ずしもパーマネントウェーブ用剤を完全に洗い流せているとは限らず、パーマネントウェーブ用剤が毛髪中に残存している場合は問題があった。
【0005】
具体的には、最も大きな問題として、パーマネントウェーブ用剤中のアルカリ剤が残存していると、毛髪に対してダメージを与えてしまう。アルカリ剤を使用しなければこのような問題は回避できるが、シスチン結合切断の促進効果が得られないので、しっかりしたウェーブを附形し難くなる。また、パーマネントウェーブ用剤中の還元剤が残存していると、当該還元剤が酸化して例えばジチオグリコールといった酸化物となることで、毛髪のごわつきの原因となる。また、パーマネントウェーブ用剤中の酸化剤が残存していると、毛髪の酸化が必要以上に進行して水分が飛ばされ、しっとり感のない乾燥した毛髪となってしまう。
【0006】
しかも、しっかりしたウェーブを確実に附形するにはパーマネントウェーブ用剤を比較的多量に使用する必要があることから、毛髪中にパーマネントウェーブ用剤が残存し易く上記の問題が生じ易いのが現状であった。
【0007】
そこで本発明者は、上記事情に鑑みて鋭意検討の結果、従来にはなかった全く新しい着想に至り、本発明を完成させるに至った。すなわち、本発明は上記課題を解決するものであって、従来のアルカリ剤を使用せずともしっかりしたウェーブを附形できることで毛髪に優しく、若しくはアルカリ剤と共に使用すればよりしっかりしたウェーブが附形でき、さらには従来のパーマネントウェーブ用剤に代替も可能なパーマネントウェーブ用リチウムイオン水と、これを用いたパーマネントウェーブの施術方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そのための手段として、本発明は次の手段からなる。
(1)アルカリ金属イオンとアルカリ土類金属イオンのうちいずれか一方または双方を含有する、パーマネントウェーブ用イオン水。
(2)前記アルカリ金属イオン又はアルカリ土類金属イオンが、リチウムイオン、マグネシウムイオン、カルシウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオンから選択される一種又は二種以上である、(1)に記載のパーマネントウェーブ用イオン水。
(3)pHが8.5〜11である、(1)または(2)に記載のパーマネントウェーブ用イオン水。
(4)さらにリジン塩酸塩を含有する、(1)ないし(3)のいずれかに記載のパーマネントウェーブ用イオン水。
(5)前記リジン塩酸塩の含有量が0.5〜10重量%である、(4)に記載のパーマネントウェーブ用イオン水。
(6)毛髪へパーマネントウェーブを施術する際に、アルカリ剤を含有しないパーマネントウェーブ用剤と共に、(1)ないし(3)のいずれかに記載のパーマネントウェーブ用イオン水を毛髪へ塗布する、パーマネントウェーブの施術方法。
(7)毛髪へパーマネントウェーブを施術する際に、アルカリ剤及び還元剤を含有するパーマネントウェーブ用剤と共に、(1)ないし(3)のいずれかに記載のパーマネントウェーブ用イオン水を毛髪へ塗布する、パーマネントウェーブの施術方法。
(8)毛髪へパーマネントウェーブを施術する際に、パーマネントウェーブ用剤に替えて、(4)または(5)に記載のパーマネントウェーブ用イオン水を毛髪へ塗布する、パーマネントウェーブの施術方法。
(9)毛髪へパーマネントウェーブを施術する際に、パーマネントウェーブ用剤に替えて、(1)ないし(3)のいずれかに記載のパーマネントウェーブ用イオン水と、リジン塩酸塩を0.5〜10重量%含有する水溶液と、を毛髪へ塗布する、パーマネントウェーブの施術方法。
【0009】
なお、本発明において「パーマネントウェーブ用剤」とは、一浴式のパーマネントウェーブ用剤と二浴式のパーマネントウェーブ用剤との双方を含む概念である。すなわち、二浴式のパーマネントウェーブ用剤であれば、第1剤及び第2剤を含む概念である。
【発明の効果】
【0010】
本発明のパーマネントウェーブ用イオン水をパーマネントウェーブの施術の際に毛髪に塗布すれば、従来のパーマネントウェーブ用剤(二浴式の場合は第1剤)に含有されていたアルカリ剤を使用しなくても、しっかりしたウェーブを毛髪に附形することができ、毛髪へのダメージを軽減することができる。しかも、毛髪の保水力(保湿力)や柔軟性が向上することで、毛髪のしっとり感を向上することもできる。これにより、仮にパーマネントウェーブ用剤(ニ浴式の場合は第2剤)に含有されている酸化剤が毛髪に残存していても、毛髪のぱさつきを軽減することもできる。
【0011】
一方、本発明のパーマネントウェーブ用イオン水をアルカリ剤と共に使用すれば、毛髪に対するウェーブの附形力(ウェーブ効率)及びウェーブの持続力(ウェーブ保持率)が従来よりも高まる。これにより、アルカリ剤を含めてパーマネントウェーブ用剤の使用量を比較的低減することも可能であり、アルカリ剤等の残存可能性も低減できる。さらに、リジン塩酸塩も併用すれば、従来のパーマネントウェーブ用剤そのものを使用しなくても、毛髪にウェーブを附形することもでき、毛髪へのダメージ、ごわつき、ぱさつき等を回避できる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(実施形態1)
本実施形態1のパーマネントウェーブ用イオン水は、アルカリ金属イオンとアルカリ土類金属イオンのうちいずれか一方または双方を含有しており、毛髪へパーマネントウェーブを施術する際に、従来の一浴式や二浴式のパーマネントウェーブ用剤と共に毛髪へ塗布される。
【0013】
アルカリ金属イオンとしては、リチウム(Li)イオン、ナトリウム(Na)イオン、カリウム(K)イオン、ルビジウム(Rb)イオン、セシウム(Cs)イオン等が挙げられる。アルカリ土類金属イオンとしては、マグネシウム(Mg)イオン、カルシウム(Ca)イオン、ストロンチウム(Sr)イオン、バリウム(Ba)イオン等が挙げられる。これらの中でも、リチウムイオン、マグネシウムイオン、カルシウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオンが好ましい。これらの金属イオンは、1種のみ含有していてもよいし、2種以上混合していてもよい。
【0014】
パーマネントウェーブ用イオン水には、必要に応じてソルビン酸及びエデト酸塩等の酸化防止剤、安息香酸塩及びパラベン等の防腐剤、セタノールその他の高分子化合物からなる粘度調整剤、リン酸水素ナトリウムなどのpH調整剤、オレンジオイル等の芳香剤、乳化剤など、その他の添加剤を任意に配合することができるが、従来のパーマネントウェーブ用剤に含有されている還元剤、アルカリ剤、酸化剤は含有していない。好ましくは、アルカリ金属イオン及び/又はアルカリ土類金属イオンのみを含有する。
【0015】
アルカリ金属イオンやアルカリ土類金属イオンの含有量は特に制限されないが、パーマネントウェーブ用イオン水のpHが8.5〜11、好ましくは9.5〜10.5となるようにする。パーマネントウェーブ用イオン水のpHが8.5未満では、本発明の効果が得られ難く、ウェーブの附形力や保湿力等が低下する。一方、パーマネントウェーブ用イオン水のpHが11を超えると、毛髪へダメージを与えるおそれがある。
【0016】
パーマネントウェーブ用イオン水は、アルカリ金属やアルカリ土類金属の炭酸塩、水酸化物、又はアルカリ金属やアルカリ土類金属そのものをそのまま純水(精製水)と反応させたり、アルカリ金属やアルカリ土類金属の炭酸塩からなる多孔質セラミックを純水へ浸漬することで製造することができる。アルカリ金属やアルカリ土類金属の炭酸塩からなる多孔質セラミックは、アルカリ金属やアルカリ土類金属の炭酸塩を10〜50重量%程度含む粘土を素焼き(焼成)したり、アルカリ金属やアルカリ土類金属の炭酸塩を、例えば粒子径5〜10mm程度の粒子状にして素焼きしたりして得ることができる。
【0017】
アルカリ金属やアルカリ土類金属の炭酸塩を純水へ投入したり、多孔質セラミックを純水へ浸漬すると、アルカリ金属やアルカリ土類金属の炭酸塩が水と反応してアルカリ金属やアルカリ土類金属の水酸化物が生成されて塩基性となり、パーマネントウェーブ用イオン水が得られる。パーマネントウェーブ用イオン水のpH制御の観点からは、多孔質セラミックを純水へ浸漬することが好ましい。なお、アルカリ金属やアルカリ土類金属の水酸化物は水溶性であり、パーマネントウェーブ用イオン水中ではアルカリ金属イオンやアルカリ土類金属イオンと水酸化物イオンとが併存している。アルカリ金属やアルカリ土類金属の炭酸塩の投入量や浸漬時間は、パーマネントウェーブ用イオン水のpHが所定の範囲(8.5〜11)となる範囲で適宜調整すればよい。
【0018】
浸漬も含めて純水との反応は、室温においても可能であるが、反応性を高めるため純水を加熱しておくことも好ましい。加熱する場合は、100℃以下とすればよい。100℃を超える温度に加熱するには、特殊設備が必要となりエネルギーコストも要するからである。純水を加熱する場合は、50〜70℃程度が好ましく、55〜65℃程度がより好ましい。
【0019】
毛髪へパーマネントウェーブを施術する際は、本実施形態1のパーマネントウェーブ用イオン水を毛髪へ塗布する以外は、従来のパーマネントウェーブの施術方法と同様に行えばよい。すなわち、毛髪へパーマネントウェーブを施術する際は、従来のパーマネントウェーブ用剤と共に、本実施形態1のパーマネントウェーブ用イオン水も毛髪へ塗布する。
【0020】
従来のパーマネントウェーブの施術方法としては特に制限されることはなく、例えばコールド一浴式(第1剤のみを常温の状態で施術する方法)、コールド二浴式(第1剤及び第2剤を常温の状態で施術する方法)、加温二浴式(第1剤施術時のみ40〜50℃に加温する方法)などの方法がある。
【0021】
また、パーマネントウェーブ用剤も、従来から公知のパーマネントウェーブ用剤を特に制限無く使用することができる。例えば二浴式であれば、還元剤やアルカリ剤を含有するパーマネントウェーブ用第1剤と、酸化剤を含有するパーマネントウェーブ用第2剤とを、特に制限無く使用できる。但し、アルカリ剤を含有しないパーマネントウェーブ用剤(二浴式の場合は第1剤)を使用することが好ましい。本実施形態のパーマネントウェーブ用イオン水を毛髪に塗布していれば、従来のアルカリ剤を使用せずともしっかりしたウェーブを附形できるので、アルカリ剤による毛髪へのダメージを避けることができるからである。また、アルカリ剤及び還元剤を含有するパーマネントウェーブ用剤(二浴式の場合は第1剤)と共に本実施形態のパーマネントウェーブ用イオン水を毛髪に塗布していれば、従来よりもしっかりしたウェーブを附形することができる。これにより、アルカリ剤を含めて従来のパーマネントウェーブ用剤の使用量を比較的低減することも可能である。
【0022】
二浴式で毛髪へパーマネントウェーブを施術する際は、先ず、毛髪に対して十分量のパーマネントウェーブ用イオン水を塗布したうえで、パーマネントウェーブ用第1剤を塗布する。毛髪へのロッド巻きは、イオン水や第1剤を塗布する前及び/又は後に行う。そして、毛髪にロッドを巻きつけた状態で所定時間保持した後、適宜毛髪を洗浄してからパーマネントウェーブ用第2剤を塗布し、所定時間加熱保持した後に毛髪を洗浄し乾燥すればよい。一浴式であれば、毛髪へのロッド巻きの前及び/又は後に、毛髪に対して十分量のパーマネントウェーブ用イオン水を塗布したうえで、パーマネントウェーブ用剤を塗布し、所定時間加熱保持した後に毛髪を洗浄し乾燥すればよい。
【0023】
毛髪を乾燥して水分を蒸発除去すると、アルカリ金属イオンやアルカリ土類金属イオンと水酸化物イオンとが静電気的に引き合って安定化し、毛髪中に固体水酸化(無水)物が生じる。当該水酸化物は、周りにある水分子を静電気的に引き寄せる吸湿性を有するため、空気中の水分を吸着して毛髪がしっとりなめらかになる。当該効果により、酸化剤の残存に起因する毛髪中の水分蒸散や、還元剤の残存に起因する毛髪のごわつきなどを防ぐこともできる。また、毛髪の乾燥が防がれることで帯電防止効果も期待でき、静電気による毛髪の乱れ(跳ねつき)も防止できる。
【0024】
(実施形態2)
本実施形態2は、上記実施形態1のパーマネントウェーブ用イオン水と共にリジン塩酸塩を毛髪へ塗布することで、従来のパーマネントウェーブ用剤を使用せずに毛髪へウェーブを附形する実施形態である。
【0025】
リジン塩酸塩としては、リジンNaClやリジンHCl等のL−リジン塩酸塩を使用できる。リジン塩酸塩は、毛髪に対するパーマネントウェーブ用イオン水の浸透を助けるほか、毛髪の損傷を修復する機能を有する。これにより、従来の酸化剤を使用せずとも、毛髪へウェーブを附形することができる。なお、本実施形態2の効果は、傷んだ毛髪ほどウェーブ附形効果が高い。
【0026】
リジン塩酸塩は、上記実施形態1のパーマネントウェーブ用イオン水へ含有させることもできるし、実施形態1のパーマネントウェーブ用イオン水とは別の水溶液として使用することもできる。実施形態1のパーマネントウェーブ用イオン水へ含有させる場合は、リジン塩酸塩の含有量を0.5〜10重量%程度、好ましくは3〜10重量%程度とする。パーマネントウェーブ用イオン水とは別の水溶液とする場合も、リジン塩酸塩の濃度(含有量)は0.5〜10重量%程度、好ましくは3〜10重量%程度とすればよい。リジン塩酸塩の含有量が0.5重量%未満では、毛髪修復機能が低すぎて良好なウェーブを附形できない。反対に、リジン塩酸塩の含有量が10重量%を超えると、毛髪へダメージを与えるおそれがある。
【0027】
毛髪へパーマネントウェーブを施術する際は、従来のパーマネントウェーブ用剤に替えて、実施形態1のパーマネントウェーブ用イオン水と共にリジン塩酸塩を毛髪へ塗布する以外は、従来のパーマネントウェーブの施術方法と同様に行えばよい。具体的には、毛髪をロッド巻きする前及び/又は後に、毛髪に対して十分量のリジン塩酸塩含有パーマネントウェーブ用イオン水を塗布したり、実施形態1のパーマネントウェーブ用イオン水と共にリジン塩酸塩水溶液を塗布したうえで、所定時間加熱保持した後、毛髪を洗浄し乾燥すればよい。これにより、従来のパーマネントウェーブ用剤を使用せずに、毛髪へウェーブを附形することができる。これによれば、従来のパーマネントウェーブ用剤を一切使用していないので、毛髪に優しいパーマネントウェーブの施術方法となる。
【実施例】
【0028】
(保存安定性試験)
本発明のパーマネントウェーブ用イオン水の保存安定性(pH安定性)について評価した。パーマネントウェーブ用イオン水は、炭酸リチウム(実施例1用)、炭酸マグネシウム(実施例2用)、炭酸カルシウム(実施例3用)をそれぞれ含有する粘度を85℃にて焼成し、各実施例用の多孔質セラミックを作製した。得られたセラミック1kgをそれぞれ異なる水槽にてpHが10.0となるまで、室温にて130リットルの精製水に浸漬し、実施例1(リチウムイオン含有)、実施例2(マグネシウムイオン含有)、実施例3(カルシウムイオン含有)のパーマネントウェーブ用イオン水を得た。
【0029】
各実施例のイオン水を、表1に示す条件にて恒温槽で保存した際のpH挙動を測定した。その結果も表1に示す。なお、表1中の数値はpHを示す。
【表1】

【0030】
表1の結果から、全ての実施例において同様の挙動を示し、例え50℃で3ヶ月経過してもpHは殆ど変化せず保存安定性に優れることが確認できた。なお、高温に曝されるほど保存安定性が劣る傾向が確認された。したがって、常温保存であればより長期間安定して保存可能であることが推認される。
【0031】
(実施形態1の効果確認試験1)
次に、上記各実施例のパーマネントウェーブ用イオン水によって、アルカリ剤を使用せずに毛髪へパーマネントウェーブを施術した際の結果について評価した。被験者3人の頭部を左右に分け、右側にはそれぞれ各実施例のイオン水を塗布したうえで、システアミン等の還元剤のみを5重量%含有する第1剤(アルカリ剤非含有)を塗布した。一方、左側にはイオン水を塗布せずに、市販のパーマネントウェーブ用剤(ブランチェ社製、商品名:フィノチオウェーブ)の第1剤(アルカリ剤含有)を塗布した(比較例1)。次いで、同一径のロッドを同数毛髪へ巻いて10分間自然放置したあと、頭部全体に上記市販品の第2剤を塗布して10分間50℃に加熱した。その後、ロッドを外してから充分に毛髪を洗浄してウェーブの状態を目視にて観察した。その結果を表2に示す。
【0032】
【表2】

【0033】
表2の結果から、各実施例ともに従来のアルカリ剤を含有するパーマネントウェーブ用剤と遜色なく毛髪へウェーブを附形できることが確認された。すなわち、本発明のパーマネントウェーブ用イオン水を使用すれば、アルカリ剤を使用せずともしっかりしたウェーブを附形できることが確認された。
【0034】
(実施形態1の効果確認試験2)
次に、アルカリ剤と共に上記各実施例のパーマネントウェーブ用イオン水を使用して毛髪へパーマネントウェーブを施術した際の結果について評価した。被験者3人の頭部を左右に分け、右側のみにそれぞれ各実施例のイオン水を塗布したうえで、頭部全体にアルカリ剤を含有する上記市販品の第1剤を塗布した。その後は実施形態1の効果確認試験1と同様にして施術し、ウェーブの状態を目視にて観察した。その結果を表3に示す。
【0035】
【表3】

【0036】
表3の結果から、各実施例ともに従来のアルカリ剤を含有するパーマネントウェーブ用剤よりもさらにしっかりとしたウェーブを附形できることが確認された。すなわち、本発明のパーマネントウェーブ用イオン水をアルカリ剤と共に使用すれば、従来よりもよりしっかりしたウェーブを附形できることが確認された。
【0037】
(実施形態2の効果確認試験)
次に、従来のパーマネントウェーブ用剤に替えて、上記各実施例のパーマネントウェーブ用イオン水と共にリジン塩酸塩を使用して毛髪へパーマネントウェーブを施術した際の結果について評価した。被験者3人の頭部を4ブロックに分け、上記各実施例のパーマネントウェーブ用イオン水のみを塗布したブロック(比較例2)、上記各実施例のパーマネントウェーブ用イオン水に加えてリジン塩酸塩3重量%含有水溶液を塗布したブロック(3%ブロック)、上記各実施例のパーマネントウェーブ用イオン水に加えてリジン塩酸塩5重量%含有水溶液を塗布したブロック(5%ブロック)、上記各実施例のパーマネントウェーブ用イオン水に加えてリジン塩酸塩10重量%含有水溶液を塗布したブロック(10%ブロック)とした。次いで、同一径のロッドを同数毛髪へ巻いて10分間50℃に加熱したあと、ロッドを外してから充分に毛髪を洗浄してウェーブの状態を目視にて観察した。その結果を表4に示す。
【0038】
【表4】

【0039】
表4の結果から、本発明のパーマネントウェーブ用イオン水と共にリジン塩酸塩を使用すれば、従来のパーマネントウェーブ用剤を使用せずとも毛髪へウェーブを附形できることが確認された。また、リジン塩酸塩の濃度(含有量)は、5重量%以上とすることが好ましいことも確認された。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルカリ金属イオンとアルカリ土類金属イオンのうちいずれか一方または双方を含有する、パーマネントウェーブ用イオン水。
【請求項2】
前記アルカリ金属イオン又はアルカリ土類金属イオンが、リチウムイオン、マグネシウムイオン、カルシウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオンから選択される一種又は二種以上である、請求項1に記載のパーマネントウェーブ用イオン水。
【請求項3】
pHが8.5〜11である、請求項1または請求項2に記載のパーマネントウェーブ用イオン水。
【請求項4】
さらにリジン塩酸塩を含有する、請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のパーマネントウェーブ用イオン水。
【請求項5】
前記リジン塩酸塩の含有量が0.5〜10重量%である、請求項4に記載のパーマネントウェーブ用イオン水。
【請求項6】
毛髪へパーマネントウェーブを施術する際に、アルカリ剤を含有しないパーマネントウェーブ用剤と共に、請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のパーマネントウェーブ用イオン水を毛髪へ塗布する、パーマネントウェーブの施術方法。
【請求項7】
毛髪へパーマネントウェーブを施術する際に、アルカリ剤及び還元剤を含有するパーマネントウェーブ用剤と共に、請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のパーマネントウェーブ用イオン水を毛髪へ塗布する、パーマネントウェーブの施術方法。
【請求項8】
毛髪へパーマネントウェーブを施術する際に、パーマネントウェーブ用剤に替えて、請求項4または請求項5に記載のパーマネントウェーブ用イオン水を毛髪へ塗布する、パーマネントウェーブの施術方法。
【請求項9】
毛髪へパーマネントウェーブを施術する際に、パーマネントウェーブ用剤に替えて、請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のパーマネントウェーブ用イオン水と、リジン塩酸塩を0.5〜10重量%含有する水溶液とを毛髪へ塗布する、パーマネントウェーブの施術方法。



【公開番号】特開2013−28545(P2013−28545A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−164101(P2011−164101)
【出願日】平成23年7月27日(2011.7.27)
【出願人】(507097246)株式会社FRASCO (2)
【Fターム(参考)】