説明

パール光沢組成物

【課題】装置や操作に限定されずに製造可能な、白色度の高いパール光沢組成物を提供すること。
【解決手段】(A)脂肪酸グリコールエステル、(B)脂肪酸モノアルキロールアミド、(C)アルキル硫酸エステル塩、(D)ポリオキシアルキレン型ノニオン界面活性剤、及び(E)水、を含有し、(B)成分と(C)成分とのモル比が、(C)成分/(B)成分=0.50〜0.79である、W値が16〜22のパール光沢組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パール光沢組成物に関する。さらに詳しくは、シャンプー、リンス、ボディシャンプー、液体洗浄剤等の付加価値を高めるのに好適に使用しうるパール光沢組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、シャンプー、リンス、ボディシャンプー、化粧料、液体洗浄剤等の付加価値を高めるために、パール光沢を与える基剤が用いられている。そこで、パール光沢を付与するための主要成分を濃厚に含むパール光沢組成物が各種検討されている。脂肪酸グリコールエステルはパール光沢組成物における主要成分として各種検討されているが、十分なパール光沢を得ようとして脂肪酸グリコールエステルの配合量を増加すると、室温下での粘度が高くなり、流動性が低下する。そこで、特定のノニオン界面活性剤を併用したパール光沢組成物が提案されている(特許文献1参照)。
【0003】
一方、パール光沢の質感の向上のために、結晶の粒度分布が小さく、しっとりと落ち着いたきめの細かな光沢を有するパール光沢組成物(特許文献2参照)が提案されている。また、少量の配合で十分なパール光沢を発現させるために、パール光沢形成粒子が微細であり、強いパール光沢を維持しつつ濁度の高いパール光沢組成物(特許文献3参照)が提案されている。特許文献2で示されるパール光沢組成物の製造時には、晶析操作における冷却速度を高める必要があり、特殊な冷却装置の使用が例示されている。また特許文献3で示されるパール光沢組成物の製造時には、原料の溶融混合液の粘度が高くなると想定され、原料の混合に用いる配合槽内の温度や濃度分布を均一化するために攪拌装置の選定が重要になると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−212031号公報
【特許文献2】特許第3454991号公報
【特許文献3】特開2008−255110号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
パール光沢組成物を化粧料や洗浄剤等に配合する場合、きめの細かなパール光沢の質感を有し、少量の配合で十分なパール感を発現させるためには、パール光沢形成粒子である結晶のサイズが微細な、言い換えれば白色度の高いパール光沢組成物が求められる。しかしながら従来技術で提案された、このようなパール光沢組成物は、その製造時において装置や操作が限定される。一般に、製造設備のスケールが大きくなるほど、冷却操作における冷却速度は低下し、攪拌操作における配合槽内の均一性は低下する傾向にある。生産性の向上のためには、装置や操作に限定されずに製造可能な、白色度の高いパール光沢組成物が求められている。
【0006】
すなわち、本発明の課題は、特許文献1に示されるパール光沢組成物を更に改良して、装置や操作に限定されずに製造可能な、白色度の高いパール光沢組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
即ち、本発明の要旨は、
〔1〕(A)脂肪酸グリコールエステル、
(B)脂肪酸モノアルキロールアミド、
(C)アルキル硫酸エステル塩、
(D)ポリオキシアルキレン型ノニオン界面活性剤、及び
(E)水、
を含有し、(B)成分と(C)成分とのモル比が、(C)成分/(B)成分=0.50〜0.79である、W値が16〜22のパール光沢組成物;並びに
〔2〕(A)脂肪酸グリコールエステル、
(B)脂肪酸モノアルキロールアミド、
(C)アルキル硫酸エステル塩、
(D)ポリオキシアルキレン型ノニオン界面活性剤、及び
(E)水、
を含む原料の溶融混合液から(A)成分を含むパール光沢形成粒子を結晶化させる工程を含むパール光沢組成物の製造方法であって、(B)成分と(C)成分とのモル比が、(C)成分/(B)成分=0.50〜0.79である、パール光沢組成物の製造方法;に関するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明のパール光沢組成物は、白色度が高いため、きめの細かなパール光沢の質感を有し、少量の配合でも十分なパール感を発現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、(C)成分/(B)成分(モル比)とW値との関係を示す図である。図1中、実施例のデータを白抜きのひし形で示し、比較例のデータを黒丸で示している。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明のW値が16〜22のパール光沢組成物は、(A)脂肪酸グリコールエステル、(B)脂肪酸モノアルキロールアミド、(C)アルキル硫酸エステル塩、(D)ポリオキシアルキレン型ノニオン界面活性剤及び(E)水を含有し、(B)成分と(C)成分とのモル比が、(C)成分/(B)成分=0.50〜0.79である点に大きな特徴を有する。これにより、詳細な理由は不明なるも、パール光沢形成成分である脂肪酸グリコールエステルを含む微細なパール光沢形成粒子が多量に析出し、白色度が高いパール光沢組成物が、製造設備のスケールや形式によらず、容易に得られる。なお、本発明において、パール光沢組成物の白色度を示す値として、後述の実施例に示されるW値を使用することができる。W値は、光沢性を付与する観点から、16〜22が好ましく、17〜22がより好ましく、18〜21が更に好ましい。
【0011】
[パール光沢組成物]
本発明で用いる成分(A)の脂肪酸グリコールエステルとしては、例えば、式(I):
Y−O−(CH2CH2O)p−COR1 (I)
(式中、R1は炭素数13〜21の直鎖又は分岐鎖の飽和又は不飽和の炭化水素基を示し、Yは水素原子又は−COR1(R1は前記と同じ)を示し、pは1〜3の数で、平均付加モル数を意味する)で表わされるものが挙げられる。
【0012】
式(I)において、R1としては、炭素数13〜21のアルキル基及びアルケニル基が好ましく、具体的には、ペンタデシル基、ヘプタデシル基、ヘンイコシル基等が挙げられる。また、脂肪酸グリコールエステルは、式(I)で表されるように、Yが水素原子である場合のモノカルボン酸エステル、Yが−COR1である場合のジカルボン酸エステルのいずれであってもよく、ジカルボン酸エステルにおいて、R1は同一であっても、異なっていてもよい。
【0013】
脂肪酸グリコールエステルとしては、融点が50℃以上のものが好ましく、また、結晶性のものが好ましい。従って、脂肪酸グリコールエステルとしては、融点が50℃以上の結晶性のものがより好ましく、具体的には、モノパルミチン酸エチレングリコール、モノステアリン酸エチレングリコール、モノイソステアリン酸エチレングリコール、ジパルミチン酸エチレングリコール、ジステアリン酸エチレングリコール、ジベヘン酸エチレングリコール等のモノエチレングリコール体;これらのジエチレングリコール体;並びにこれらのトリエチレングリコール体等が挙げられ、それぞれ単独であっても2種以上が併用されていてもよい。
【0014】
なお、2種以上の脂肪酸グリコールエステルが併用されている場合、それぞれ調製された脂肪酸グリコールエステルの混合物であってもよく、異なるアルキル鎖長の脂肪酸の混合物とグリコールを用い、それらを反応させて得られた脂肪酸グリコールエステルの混合物であってもよい。例えば、パルミチン酸とステアリン酸の混合物とグリコールとの反応からは、ジパルミチン酸エチレングリコール、モノパルミチン酸モノステアリン酸エチレングリコール、及びジステアリン酸エチレングリコールの混合物が得られる。異なる脂肪酸の混合物とグリコールとを反応させる際に用いられる脂肪酸の混合物において、各脂肪酸が占める割合は85重量%以下であることが好ましい。
【0015】
上記に例示された脂肪酸グリコールエステルにおいて、本発明において好ましい脂肪酸グリコールエステルとしては、ジステアリン酸エチレングリコール、ジパルミチン酸エチレングリコール、モノステアリン酸エチレングリコール、モノパルミチン酸エチレングリコール、及びジベヘン酸エチレングリコール、並びにジパルミチン酸エチレングリコール、モノパルミチン酸モノステアリン酸エチレングリコール、及びジステアリン酸エチレングリコールの混合物が好ましい。
【0016】
脂肪酸グリコールエステルのパール光沢組成物中の含有量は、パール光沢付与の観点から、15重量%以上が好ましく、流動性の観点から、30重量%以下が好ましい。これらの観点から、脂肪酸グリコールエステルの含有量は、パール光沢組成物中、15〜30重量%が好ましく、15〜25重量%がより好ましく、18〜25重量%がさらに好ましい。
【0017】
本発明で用いる成分(B)の脂肪酸モノアルキロールアミドは、光沢の向上に有効であり、例えば、式(II):
2CO−NH−R3OH (II)
(式中、R2は炭素数7〜20の直鎖又は分岐鎖の飽和又は不飽和の炭化水素基を示し、R3はエチレン基又はプロピレン基を示す)
で表わされるものが挙げられる。
【0018】
式(II)において、R2としては、炭素数7〜20のアルキル基及びアルケニル基が好ましく、具体的には、ウンデシル基、トリデシル基、ヘプタデシル基等が挙げられる。また、R3としては、エチレン基、n−プロピレン基及びイソプロピレン基が挙げられる。
【0019】
脂肪酸モノアルキロールアミドとしては、ラウリン酸モノエタノールアミド、ラウリン酸モノプロパノールアミド、ラウリン酸モノイソプロパノールアミド、ミリスチン酸モノエタノールアミド、パルミチン酸モノエタノールアミド、ステアリン酸モノエタノールアミド、オレイン酸モノエタノールアミド、オレイン酸モノイソプロパノールアミド、ヤシ油脂肪酸モノエタノールアミド、ヤシ油脂肪酸モノプロパノールアミド、ヤシ油脂肪酸モノイソプロパノールアミド、ヤシ科植物油脂肪酸モノエタノールアミド等が挙げられ、それぞれ単独で又は2種以上を混合して用いることができる。これらのなかでは、ヤシ油脂肪酸モノエタノールアミド、ラウリン酸モノエタノールアミド、パルミチン酸モノエタノールアミド及びステアリン酸モノエタノールアミドが好ましい。
【0020】
脂肪酸モノアルキロールアミドのパール光沢組成物中の含有量は、光沢付与の観点から、5重量%以上が好ましく、パール光沢組成物の粘度の上昇を抑制し、流動性を高める観点から、15重量%以下が好ましい。これらの観点から、脂肪酸モノアルキロールアミドの含有量は、パール光沢組成物中、5〜15重量%が好ましく、6〜12重量%がより好ましく、7〜10重量%がさらに好ましい。
【0021】
本発明で用いる成分(C)のアルキル硫酸エステル塩は、各成分を均一に混合するのに有効であり、例えば、式(III):
4−O−(R5O)r−SO3M (III)
(式中、R4は炭素数8〜20の直鎖又は分岐鎖の飽和又は不飽和の炭化水素基を示し、R5はエチレン基又はプロピレン基を示し、Mはアルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウムイオン又は炭素数2若しくは3のヒドロキシアルキル置換アンモニウムを示し、rは0〜8の数で、平均付加モル数を意味する)で表わされる、ポリオキシアルキレン基を有していてもよいアルキル硫酸エステル塩等が挙げられる。
【0022】
式(III)において、R4としては、炭素数8〜20のアルキル基及びアルケニル基が好ましく、具体的には、ラウリル基、ミリスチル基、パルミチル基、ステアリル基等が挙げられる。R5としては、エチレン基、n−プロピレン基及びイソプロピレン基が挙げられる。rは0〜4が好ましい。
【0023】
アルキル硫酸エステル塩の好適例としては、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸トリエタノールアミン、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム(エチレンオキサイド(EO)の平均付加モル数:1〜4)、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸アンモニウム(EOの平均付加モル数:1〜4)及びポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸トリエタノールアミン(EOの平均付加モル数:1〜4)が挙げられ、それぞれ単独であっても2種以上が併用されていてもよい。
【0024】
アルキル硫酸エステル塩のパール光沢組成物中の含有量は、各成分を均一に混合する観点から、5重量%以上が好ましく、流動性の観点から、15重量%以下が好ましい。これらの観点から、アルキル硫酸エステル塩の含有量は、5〜15重量%が好ましく、6〜11重量%がより好ましく、7〜10重量%がさらに好ましい。
【0025】
本発明のパール光沢組成物中の(B)成分と(C)成分との合計量は、各成分を均一に混合する観点から、10重量%以上が好ましく、流動性の観点から、24重量%以下が好ましい。これらの観点から、パール光沢組成物中の(B)成分と(C)成分との合計量は、10〜24質量%が好ましく、12〜22重量%がより好ましく、14〜20重量%がさらに好ましい。
【0026】
本発明のパール光沢組成物中の(B)成分と(C)成分とのモル比は、(C)成分/(B)成分=0.50〜0.79であることが、白色度が高く、きめの細かなパール光沢の質感を有するパール光沢組成物を得るために重要である。(B)成分と(C)成分とのモル比は、各成分を均一に混合する観点及び流動性の観点から、0.50以上である。また、白色度の高いパール光沢組成物を得る観点から、0.79以下でなければならない。これらの観点から、パール光沢組成物中の(B)成分と(C)成分とのモル比は、(C)成分/(B)成分=0.50〜0.79であり、0.55〜0.79が好ましく、0.60〜0.79がより好ましい。特に、上限値である0.79は臨界点としての技術的意義を有している。0.79が臨界点となる理由は明らかではないが、(C)成分のアルキル硫酸エステル塩と(B)成分の脂肪酸モノアルキロールアミドは互いに水素結合しやすく、水中では(C)成分と(B)成分とからなる連続的な構造が生成していると一般に考えられているところ、配合槽内の(B)成分のモル濃度が(C)成分のモル濃度に対してある決まった相対値を上回ることによって初めて前記の連続的な構造が変化し、(A)成分の脂肪酸グリコールエステルの結晶化に影響を与えることによるものと推定される。
【0027】
本発明で用いる成分(D)のポリオキシアルキレン型ノニオン界面活性剤は、パール光沢組成物の粘度を低下させるのに有効であり、例えば、ポリオキシエチレン基、ポリオキシプロピレン基等のポリオキシアルキレン基を有するものが挙げられる。ポリオキシアルキレン型ノニオン界面活性剤の具体例としては、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレン脂肪酸モノアルカノールアミド、ポリオキシアルキレン脂肪酸ジアルカノールアミド等が挙げられ、それぞれ単独であっても2種以上が併用されていてもよい。これらのうち、式(IV):
6−O−(R7O)q−H (IV)
(式中、R6は炭素数8〜20の直鎖又は分岐鎖の飽和又は不飽和の炭化水素基、R7はエチレン基又はプロピレン基を示し、qは1〜12、好ましくは1〜6の数で、平均付加モル数を意味する)で表わされるポリオキシアルキレンアルキルエーテルが好ましい。
【0028】
式(IV)において、R6としては、炭素数8〜20のアルキル基又は炭素数8〜20のアルケニル基が好ましい。また、R7としては、エチレン基、n−プロピレン基及びイソプロピレン基が挙げられる。qは3〜6が好ましい。
【0029】
ポリオキシアルキレン型ノニオン界面活性剤のHLBは、パール光沢組成物の乳化を抑制し、粘度を制御する観点から、18未満が好ましく、9〜15がより好ましく、9〜12がさらに好ましい。なお、HLBとは、親水性−親油性のバランス(Hydrophilic-Lipophilic Balance)を示す指標であり、本発明においては、小田・寺村らによる式:
HLB=(Σ無機性値/Σ有機性値)×10
を用いて算出したときの値である。
【0030】
ポリオキシアルキレン型ノニオン界面活性剤のパール光沢組成物中の含有量は、パール光沢組成物の粘度を低下させる観点から、0.5重量%以上が好ましく、良好なパール光沢を得る観点から、10重量%以下が好ましい。これらの観点から、ポリオキシアルキレン型ノニオン界面活性剤の含有量は、パール光沢組成物中、0.5〜10重量%が好ましく、0.5〜8重量%がより好ましく、1〜5重量%がさらに好ましい。
【0031】
本発明のパール光沢組成物は水を含有し、パール光沢組成物における水の含有量は、パール光沢組成物の濃度及び粘度調整の観点から、25〜70重量%が好ましく、40〜70重量%がより好ましく、50〜65重量%がさらに好ましい。
【0032】
本発明のパール光沢組成物は、任意成分として、(1)脂肪酸、(2)脂肪族アルコール、(3)脂肪酸モノグリセリド、及び(4)脂肪族エーテルからなる群より選ばれるいずれかの晶析添加剤を用いてもよい。より具体的には、特開2009−019194号公報に記載の晶析添加剤を用いることができる。
【0033】
晶析添加剤の含有量は、パール光沢組成物中、微細な結晶の過剰生成による光沢劣化や濁度低下を防止する観点から、0.3〜3重量%が好ましく、0.5〜2.1重量%がより好ましい。また、前記晶析添加剤の含有量は、脂肪酸グリコールエステル100重量部に対して、1〜20重量部が好ましく、1.5〜20重量部がより好ましく、1.5〜15重量部がさらに好ましく、3〜10重量部がさらに好ましい。
【0034】
パール光沢組成物には、さらに、pH調整剤、防腐剤、塩類、アルコール類、ポリオール類等を適宜配合してもよい。
【0035】
[パール光沢組成物の製造方法]
本発明のパール光沢組成物の製造方法は、(A)〜(E)を含む原料の溶融混合液から、脂肪酸グリコールエステルを含むパール光沢形成粒子を結晶化させる方法であれば特に限定されない。具体的な方法としては、例えば、(A)〜(E)を含む原料の混合物を加熱した後、冷却する方法;(E)水及び(B)〜(C)の界面活性剤等を含む混合物と、溶融状態の(A)とを混合した後、冷却する方法等が挙げられる。
【0036】
本発明の製造方法においては、(B)成分と(C)成分とのモル比が(C)成分/(B)成分=0.50〜0.79となるように、より好ましくは0.55〜0.79となるように、さらに好ましくは0.60〜0.79となるように、両成分を配合する。その他の成分については、上記のパール光沢組成物の説明に記載の量を採用することができる。
【0037】
原料の溶融混合液の温度は、脂肪酸グリコールエステルの融点以上の温度が好ましく、混合物の沸点以下の温度が好ましい。また、脂肪酸グリコールエステルの融点より1〜30℃高い温度がより好ましく、1〜20℃高い温度がさらに好ましい。
【0038】
冷却温度は、脂肪酸グリコールエステルを十分に結晶化させる観点から、脂肪酸グリコールエステルの融点より5℃以下が好ましく、脂肪酸グリコールエステルの融点より10℃以下がより好ましく、15℃以下がさらに好ましい。
【0039】
また、冷却は、形状が均一なパール光沢形成粒子を得る観点から、温度分布がより均一となる緩やかな冷却が好ましい。かかる観点から、冷却速度は0.1〜5℃/minが好ましく、0.1〜3℃/minがより好ましく、0.1〜2℃/minがさらに好ましい。
【0040】
パール光沢形成粒子が結晶化した後は、さらに冷却して、結晶を安定化させることが好ましく、液温が10〜45℃、好ましくは15〜40℃となるまで冷却することが望ましい。
【0041】
原料の溶融及び冷却は、溶解液が分離しないように、攪拌しながら行うことが好ましい。
【0042】
冷却は、温度分布がより均一となる方法が好ましい。具体的な方法としては、例えば、溶融混合液をジャケットが付帯した配合槽で調製し、ジャケットに冷媒水を通水する方法等があげられる。
【0043】
配合槽の大きさは、特に限定されないが、例えば0.3Lから20m3の配合槽を使用することができる。工業的スケールで大量生産する場合、100Lから20m3の配合槽を使用することが好ましい。このような工業的スケールの配合槽を使用する場合、通常、冷却工程全体にわたって冷却速度を所望の範囲に制御することが困難であり、付帯の冷却設備に大きな負荷がかかることになる。本発明は、冷却速度を常時制御する必要はなく、原料の組成を特定範囲に調整するだけで、製造設備のスケールや形式によらず、白色度が高いパール光沢組成物を簡便に得ることができる。
【実施例】
【0044】
各実施例及び各比較例で得られたパール光沢組成物の諸性質は、以下の方法によって測定した。
【0045】
<パール光沢組成物のパール光沢>
パール光沢組成物を水で20倍(重量比)に希釈し、肉眼にてパール光沢の外観を観察し、以下の基準に従って評価する。なお、気泡の混入しているものは遠心分離に掛け、脱泡を行う。
【0046】
〔評価基準〕
A:きめの細かいシルキーな光沢が認められる。
B:メタリックな光沢が認められる。
C:光沢がない。
【0047】
<パール光沢組成物の白色度>
ポリオキシエチレン(2)ラウリルエーテル硫酸ナトリウムを19.5重量%含む水溶液で、パール光沢組成物を33.3倍(重量比)に希釈したものを、黒色のフォルダに装着した丸型セル(日本電色製、35Φ×15H、パーツNo.2301)に1gを測り取り、色彩色差計(KONICA MINOLTA製、CR-400)でL(明度)、b(色相・彩度)を暗室などの遮光した条件下で測定し、ASTM(米国材料試験協会)が定義(E-313)する次式により求める。
W値=(7L2−40Lb)/700
【0048】
W値はパール光沢組成物の白さ、言いかえれば濁度を表す指標として用いる。W値が高いほどパール光沢組成物は白く濃くなる。
【0049】
<脂肪酸グリコールエステルの融点>
示差走査熱量計(Thermo plus DSC8230, Rigaku製)を用い、脂肪酸グリコールエステルを5℃/minで昇温し、得られる融解のピークトップを融点とする。
【0050】
実施例1〜7及び比較例1〜9
表1及び表2に示す脂肪酸グリコールエステル、脂肪酸モノアルキロールアミド、アルキル硫酸エステル塩、ポリオキシアルキレン型ノニオン界面活性剤、水及びその他成分を、T.Kアジホモミクサーf model(プライミクス株式会社製、2L仕様)にて、80℃で混合し、その後、0.2℃/minの冷却速度、攪拌回転数30r/minで20℃まで冷却し、パール光沢組成物を得た。
【0051】
【表1】

【0052】
【表2】

【0053】
注)組成は重量%を示す。カッコ内の数字はエチレンオキサイドの付加モル数を示す。
ジ脂肪酸エチレングリコール:パルミチン酸(C16)/ステアリン酸(C18)=50/50(重量比)の混合物とエチレングリコールとのエステル、融点:61.8℃
1)ヤシ油脂肪酸モノエタノールアミド(川研ファインケミカル製、商品名:アミゾールCME):平均分子量267.1(但し、この平均分子量は、原料のヤシ油脂肪酸の平均炭素数を12.8として算出した値である。)
2)ポリオキシエチレン(2)ラウリルエーテル硫酸ナトリウム(花王製、商品名:エマールE−27C):分子量376.6
3)ポリオキシエチレン(1)ラウリルエーテル硫酸アンモニウム(花王製、商品名:エマール125A):分子量327.5
【0054】
以上の結果より、実施例1〜7のパール光沢組成物は、きめ細かくシルキーなパール光沢を有し、W値も高いことが分かる。これに対し、(C)成分と(B)成分とのモル比(C)成分/(B)成分の値が0.79よりも大きいパール光沢組成物は、メタリックなパール光沢を有するもののW値が低いことがわかる。
【0055】
特に、上記モル比の値が0.79である例(実施例2、5、7)においては、W値はそれぞれ18.6、19.7、20.7であったのに対して、上記モル比の値が0.79よりも僅かに大きい例(比較例2;モル比=0.81)においては、W値は14.7であった。このように、モル比の値の0.79という値は、得られるパール光沢組成物の光沢の質を規定する臨界点であることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明のパール光沢組成物は、シャンプー、リンス、ボディシャンプー、液体洗浄剤等に好適に用いられるものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)脂肪酸グリコールエステル、
(B)脂肪酸モノアルキロールアミド、
(C)アルキル硫酸エステル塩、
(D)ポリオキシアルキレン型ノニオン界面活性剤、及び
(E)水、
を含有し、(B)成分と(C)成分とのモル比が、(C)成分/(B)成分=0.50〜0.79である、W値が16〜22のパール光沢組成物。
【請求項2】
パール光沢組成物中の(A)脂肪酸グリコールエステルの含有量が15〜30重量%である、請求項1に記載のパール光沢組成物。
【請求項3】
(A)脂肪酸グリコールエステル、
(B)脂肪酸モノアルキロールアミド、
(C)アルキル硫酸エステル塩、
(D)ポリオキシアルキレン型ノニオン界面活性剤、及び
(E)水、
を含む原料の溶融混合液から(A)成分を含むパール光沢形成粒子を結晶化させる工程を含むパール光沢組成物の製造方法であって、(B)成分と(C)成分とのモル比が、(C)成分/(B)成分=0.50〜0.79である、パール光沢組成物の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2011−195470(P2011−195470A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−61301(P2010−61301)
【出願日】平成22年3月17日(2010.3.17)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】