説明

パール光沢組成物

【課題】製造直後、即ち初期のパール光沢性と白色度(本願ではW値)が高いとともに、高温での保存安定性に優れ白色度の変化が少ないパール光沢組成物を提供すること。
【解決手段】(A)脂肪酸とグリコールとから構成される脂肪酸グリコールエステルであって、ステアリン酸とパルミチン酸との合計量が該脂肪酸の90質量%以上であり、ジステアリン酸グリコールの含有量が45〜75質量%である脂肪酸グリコールエステル、(B)脂肪酸モノアルキロールアミド、(C)アルキル硫酸エステル塩、及び(E)水、を含有し、(C)成分が5〜10質量%であるパール光沢組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パール光沢組成物に関する。さらに詳しくは、シャンプー、リンス、ボディシャンプー、液体洗浄剤等の付加価値を高めるのに好適に使用しうるパール光沢組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、シャンプー、リンス、ボディシャンプー、化粧料、液体洗浄剤等の付加価値を高めるために、パール光沢を与える基剤が用いられている。そこで、パール光沢を付与するための主要成分を濃厚に含むパール光沢組成物が各種検討されている。
【0003】
脂肪酸グリコールエステルはパール光沢組成物における主要成分として各種検討されているが、製品中で直接冷却晶析させる方法や、前もって濃厚分散液を調製し、製品に配合する方法が用いられている。前もって濃厚分散液を調製する方法では、十分なパール光沢を得ようとして脂肪酸グリコールエステルの配合量を増加すると、室温下での粘度が高くなり、流動性が低下する。そこで、特定のノニオン界面活性剤を併用したパール光沢組成物が提案されている(特許文献1参照)。
【0004】
また、強いパール光沢を維持しつつ、濁度の大きいパール光沢組成物を提供することを課題として、脂肪酸グリコールエステル、アルキル硫酸エステル塩、ポリオキシアルキレン型ノニオン界面活性剤及び水を含有してなるパール光沢組成物であって、さらに、脂肪酸0.3〜3重量%を含有してなるパール光沢組成物(特許文献2参照)が提案されている。
【0005】
更に、強いパール光沢を維持しつつ、濁度の大きいパール光沢組成物を提供することを課題として、脂肪酸グリコールエステル及び水を含有してなるパール光沢組成物であって、さらに、脂肪族アルコール、脂肪酸モノグリセリド及び脂肪族エーテルからなる群より選ばれた少なくとも1種の脂肪族化合物を、0.3〜3重量%含有してなるパール光沢組成物が提案されている(特許文献3参照)。
【0006】
しかしこれらの場合、脂肪族アルコール等の特定の晶析添加剤が必要であるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000−212031号公報
【特許文献2】特開2008−255110号公報
【特許文献3】特開2009−19194号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
白色度が高く、きめの細かなパール光沢の質感を有し、高温での保存安定性に優れ、少量の配合で十分なパール感を有するパール光沢組成物を提供することが求められている。さらに、晶析添加剤を添加すること無く、このような優れた性質を有するパール光沢組成物を提供することが求められている。
【0009】
すなわち、本発明の課題は、製造直後、即ち初期のパール光沢性と白色度(本願ではW値)が高いとともに、高温での保存安定性に優れ白色度の変化が少ないパール光沢組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
即ち、本発明の要旨は、
〔1〕(A)脂肪酸とグリコールとから構成される脂肪酸グリコールエステルであって、ステアリン酸とパルミチン酸との合計量が該脂肪酸の90質量%以上であり、ジステアリン酸グリコールの含有量が45〜75質量%である脂肪酸グリコールエステル、
(B)脂肪酸モノアルキロールアミド、
(C)アルキル硫酸エステル塩、及び
(E)水、
を含有し、(C)成分が5〜10質量%であるパール光沢組成物;
〔2〕(A)成分の示差走査熱量計(DSC)を用いて得られる融解終了温度が70〜76℃である、前記〔1〕に記載のパール光沢組成物;
〔3〕(B)成分と(C)成分とのモル比((C)成分/(B)成分)が0.50〜0.95である、前記〔1〕又は〔2〕に記載のパール光沢組成物;
〔4〕(A)成分が10〜50質量%であり、(B)成分が5〜10質量%である、前記〔1〕〜〔3〕のいずれか1項に記載のパール光沢組成物;
〔5〕さらに、(D)ポリオキシアルキレン型ノニオン界面活性剤を含有する、前記〔1〕〜〔4〕のいずれか1項に記載のパール光沢組成物;並びに
〔6〕(D)成分が0.5〜10質量%である、前記〔5〕に記載のパール光沢組成物;に関するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明のパール光沢組成物は、白色度が高く、きめの細かなパール光沢の質感を有し、少量の配合でも十分なパール感を発現することができ、かつ高温での保存安定性に優れ白色度の変化が少ない、という優れた効果を発揮する。しかもかかる効果は、晶析添加剤を配合しない場合であっても十分に発揮される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施例5における(A)成分を、示差走査熱量計で測定して得られたDSC曲線である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明のパール光沢組成物は、脂肪酸グリコールエステルが、脂肪酸とグリコールとから構成される脂肪酸グリコールエステルであって、ステアリン酸とパルミチン酸との合計量が該脂肪酸の90質量%以上であり、ジステアリン酸グリコールの含有量が45〜75質量%である点と、パール光沢組成物中の(C)成分が5〜10質量%である点に大きな特徴を有する。
【0014】
本発明の好ましい態様の一つとして、(A)成分の示差走査熱量計(DSC)を用いて得られる融解終了温度が70〜76℃であるパール光沢組成物が挙げられる。詳細な理由は不明なるも、(A)成分として、示差走査熱量計(DSC)を用いて得られるその融解終了温度が70〜76℃である脂肪酸グリコールエステルを用い、かつ(C)成分をパール光沢組成物の5〜10質量%とすることで、パール光沢形成成分である脂肪酸グリコールエステルを含む微細なパール光沢形成粒子が多量に析出し、白色度が高いパール光沢組成物が容易に得られ、高温での保存安定性も優れたパール光沢組成物が得られる。これは、脂肪酸グリコールエステルの結晶性が向上し、析出し易くなっているためと考えられる。
【0015】
本発明において、パール光沢組成物の白色度を示す値として、後述の実施例に示されるW値を使用することができる。
【0016】
本発明のパール光沢組成物の製造直後の白色度、即ち初期W値は、シャンプー等に光沢性を付与する観点から、14〜24が好ましく、14〜23がより好ましく、15〜23がより好ましく、16〜22が更に好ましい。
【0017】
さらに、本発明のパール光沢組成物は高温での保存安定性にも優れている。例えば、本発明のパール光沢組成物を40℃で2週間保存した後のW値も、シャンプー等に光沢性を付与する観点から、14〜24が好ましく、14〜23がより好ましく、15〜23がより好ましく、16〜22が更に好ましい。
【0018】
[パール光沢組成物]
本発明で用いる(A)成分の脂肪酸グリコールエステルとしては、例えば、式(I):
Y−O−(CHR1CH2O)p−COR2 (I)
(式中、R1は水素原子又はメチル基を表し、R2は炭素数13〜21の直鎖又は分岐鎖の飽和又は不飽和の炭化水素基を示し、Yは水素原子又は−COR2(R2は前記と同じ)を示し、pは1〜3の数で、平均付加モル数を意味する)で表わされるものが挙げられる。
【0019】
上記のように、R2は炭素数13〜21、好ましくは炭素数15〜19の直鎖又は分岐鎖の飽和又は不飽和の炭化水素基である。よって、脂肪酸グリコールエステルが脂肪酸とグリコールとから構成されることを鑑みると、該脂肪酸としては、炭素数14〜22、好ましくは炭素数16〜20の直鎖又は分岐鎖の飽和又は不飽和の脂肪酸が該当する。
【0020】
パール光沢組成物の初期パール光沢性と初期白色度が高くなるとともに、高温での保存安定性に優れ白色度の変化が少なくなる観点から、ステアリン酸とパルミチン酸との合計量が、脂肪酸グリコールエステルを構成する全脂肪酸中の90質量%以上であり、残りの脂肪酸としては、炭素数14、15、17、19〜22の脂肪酸であることが好ましい。
【0021】
脂肪酸グリコールエステルを構成する脂肪酸としては、好ましくはステアリン酸とパルミチン酸の両者が必須であって、さらにステアリン酸とパルミチン酸との合計量が全脂肪酸の95質量%以上であるものが好ましく、97質量%以上であるものがより好ましく、99質量%以上であるものがさらに好ましく、100質量%であるものがよりさらに好ましい。
【0022】
なお、本発明において、脂肪酸グリコールエステルを構成する脂肪酸とは、脂肪酸グリコールエステルの原料となり得る脂肪酸のことであり、例えば、炭素数1〜3の低級アルコールの脂肪酸エステルとグリコールとのエステル交換により脂肪酸グリコールエステルを製造する場合であっても、脂肪酸として換算する。
【0023】
例えば、パルミチン酸とステアリン酸の混合物とエチレングリコールとの反応からは、ジパルミチン酸エチレングリコール、モノパルミチン酸モノステアリン酸エチレングリコール、及びジステアリン酸エチレングリコールの混合物が得られる。
【0024】
初期パール光沢性と白色度が高いとともに、高温での保存安定性に優れ白色度の変化が少ない観点から、脂肪酸グリコールエステルを構成する全脂肪酸中、ステアリン酸の含有量は、好ましくは63〜84質量%、より好ましくは67〜84質量、さらに好ましくは70〜84質量%である。
【0025】
上記の観点から、脂肪酸グリコールエステルを構成する全脂肪酸中、ステアリン酸とパルミチン酸との質量比(ステアリン酸/パルミチン酸)は、好ましくは63/37〜84/16、より好ましくは65/35〜83/17、更に好ましくは67/33〜82/18である。
【0026】
pは、パール光沢組成物の初期パール光沢性と光沢値が高いとともに、高温での保存安定性に優れ白色度の変化が少ない観点から、1〜3であり、1が好ましい。
【0027】
また、脂肪酸グリコールエステルは、式(I)で表されるように、Yが水素原子である場合のモノカルボン酸エステル、Yが−COR2である場合のジカルボン酸エステルのいずれであってもよいが、初期パール光沢性と白色度が高いとともに、高温での保存安定性に優れ白色度の変化が少ない観点から、Yが−COR2である場合のジカルボン酸エステルが好ましい。ジカルボン酸エステルにおいて、R2は同一であっても、異なっていてもよい。
【0028】
(A)成分としては、結晶性の調整の観点から、2種以上の脂肪酸グリコールエステルが併用されている方が好ましい。2種以上の脂肪酸グリコールエステルを併用する場合、それぞれ調製された脂肪酸グリコールエステルの混合物であってもよく、異なるアルキル鎖長の脂肪酸の混合物とグリコールを用い、それらを反応させて得られた脂肪酸グリコールエステルの混合物であってもよい。
【0029】
脂肪酸グリコールエステルを構成するグリコールとしては、上記の式(I)に対応したもの、即ち、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、ジエチレングリコールが例示される。これらの中で、結晶性の制御の観点からエチレングリコールが好ましい。
【0030】
脂肪酸グリコールエステルのうち、ジステアリン酸グリコールの含有量が、パール光沢組成物の高温条件の保存安定性向上の観点から、45質量%以上が好ましく、初期の白色度の観点から、75質量%以下が好ましい。これらの観点から、45〜75質量%であることが好ましく、47〜72質量%であることがより好ましく、50〜72質量%であることがさらに好ましく、50〜70質量%がより好ましい。75質量%を超えると結晶性が変化し、白色度が低下するものと考えられる。
【0031】
(A)成分の融解終了温度は、パール光沢組成物の高温条件の保存安定性向上の観点から70℃以上が好ましく、初期の白色度の観点から76℃以下が好ましい。これらの観点から、70〜76℃が好ましく、71〜76℃が好ましく、72〜76℃がさらに好ましく、72〜75℃がより更に好ましい。本明細書において、(A)成分の融解終了温度は示差走査熱量計(DSC)を用いて得られる。具体的な測定条件は、本明細書の実施例に記載されている通りである。
【0032】
(A)成分の融解終了温度を70〜76℃とし、かつジステアリン酸グリコールの含有量を一定にすることが、白色度の高く、高温の保存安定性に優れた結晶となる観点から、好ましい。
【0033】
脂肪酸グリコールエステルのパール光沢組成物中の含有量は、パール光沢付与の観点から10質量%以上が好ましく、15質量%以上がより好ましく、18質量%以上がさらに好ましく、一方流動性の観点から50質量%以下が好ましく、30質量%以下がより好ましく、25質量%以下がさらに好ましい。これらの観点から、脂肪酸グリコールエステルの含有量は、パール光沢組成物中、10〜50質量%が好ましく、15〜30質量%がより好ましく、15〜25質量%がさらに好ましく、18〜25質量%がよりさらに好ましい。
【0034】
本発明で用いる(B)成分の脂肪酸モノアルキロールアミドは、パール光沢の向上に有効であり、例えば、式(II):
3CO−NH−R4OH (II)
(式中、R3は炭素数7〜20の直鎖又は分岐鎖の飽和又は不飽和の炭化水素基を示し、R4はエチレン基又はプロピレン基を示す)で表わされるものが挙げられる。
【0035】
式(II)において、R3としては、炭素数7〜20、好ましくは炭素数9〜17のアルキル基及びアルケニル基が好ましく、具体的には、ウンデシル基、トリデシル基、ヘプタデシル基等が挙げられる。また、R4としては、エチレン基、n−プロピレン基及びイソプロピレン基が挙げられる。
【0036】
脂肪酸モノアルキロールアミドとしては、ラウリン酸モノエタノールアミド、ラウリン酸モノプロパノールアミド、ラウリン酸モノイソプロパノールアミド、ミリスチン酸モノエタノールアミド、パルミチン酸モノエタノールアミド、ステアリン酸モノエタノールアミド、オレイン酸モノエタノールアミド、オレイン酸モノイソプロパノールアミド、ヤシ油脂肪酸モノエタノールアミド、ヤシ油脂肪酸モノプロパノールアミド、ヤシ油脂肪酸モノイソプロパノールアミド、ヤシ科植物油脂肪酸モノエタノールアミド等が挙げられ、それぞれ単独で又は2種以上を混合して用いることができる。これらのなかでは、ヤシ油脂肪酸モノエタノールアミド、ラウリン酸モノエタノールアミド、パルミチン酸モノエタノールアミド及びステアリン酸モノエタノールアミドが好ましい。
【0037】
脂肪酸モノアルキロールアミドのパール光沢組成物中の含有量は、結晶微細化の観点から、5質量%以上が好ましく、6質量%以上がより好ましく、7質量%以上がさらに好ましく、一方パール光沢組成物の粘度の上昇を抑制し、流動性を高める観点から、10質量%以下が好ましい。これらの観点から、脂肪酸モノアルキロールアミドの含有量は、パール光沢組成物中、5〜10質量%が好ましく、6〜10質量%がより好ましく、7〜10質量%がさらに好ましい。
【0038】
本発明で用いる(C)成分のアルキル硫酸エステル塩は、各成分を均一に混合するのに有効であり、例えば、式(III):
5−O−(R6O)r−SO3M (III)
(式中、R5は炭素数8〜20、好ましくは炭素数10〜14の直鎖又は分岐鎖の飽和又は不飽和の炭化水素基を示し、R6はエチレン基又はプロピレン基を示し、エチレン基が好ましい。Mはアルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウムイオン又は炭素数2若しくは3のヒドロキシアルキル置換アンモニウムを示し、rは0〜8の数で、平均付加モル数を意味する)で表わされる、ポリオキシアルキレン基を有していてもよいアルキル硫酸エステル塩等が挙げられる。rは0〜4が好ましく、1〜3がより好ましい。
【0039】
式(III)において、R5としては、炭素数8〜20のアルキル基及びアルケニル基が好ましく、具体的には、ラウリル基、ミリスチル基、パルミチル基、ステアリル基等が挙げられる。R6としては、エチレン基、n−プロピレン基及びイソプロピレン基が挙げられる。
【0040】
アルキル硫酸エステル塩の好適例としては、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸トリエタノールアミン、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム(エチレンオキサイド(EO)の平均付加モル数:1〜4)、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸アンモニウム(EOの平均付加モル数:1〜4)及びポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸トリエタノールアミン(EOの平均付加モル数:1〜4)が挙げられ、それぞれ単独であっても2種以上が併用されていてもよい。
【0041】
アルキル硫酸エステル塩のパール光沢組成物中の含有量は、各成分を均一に混合する観点から、5質量%以上が好ましく、6質量%以上がより好ましく、7質量%以上がさらに好ましく、一方結晶微細化による白色度向上の観点から、10質量%以下が好ましく、9質量%以下がより好ましい。これらの観点から、アルキル硫酸エステル塩の含有量は、5〜10質量%が好ましく、6〜9質量%がより好ましく、7〜9質量%がさらに好ましい。アルキル硫酸エステル塩が10質量%を超えると白色度、特に初期のパール光沢が低下するが、これは、結晶が粗大化したためと推定される。
【0042】
本発明のパール光沢組成物中の(B)成分と(C)成分との合計量は、各成分を均一に混合する観点から、10質量%以上が好ましく、白色度向上及び組成物の流動性の観点から、20質量%以下が好ましい。これらの観点から、パール光沢組成物中の(B)成分と(C)成分との合計量は、10〜20質量%が好ましく、12〜20質量%がより好ましく、14〜20質量%がさらに好ましい。
【0043】
本発明のパール光沢組成物中、パール光沢組成物の初期パール光沢性と白色度を高くする観点から、(B)成分と(C)成分とのモル比((C)成分/(B)成分)は0.50〜0.95が好ましく、0.50〜0.90がより好ましく、0.55〜0.90がさらに好ましく、0.60〜0.84がよりさらに好ましく、0.65〜0.79がよりさらに好ましい。
【0044】
本発明には、(D)成分のポリオキシアルキレン型ノニオン界面活性剤を用いることが好ましい。(D)成分は、パール光沢組成物の粘度を低下させるのに有効であり、例えば、ポリオキシエチレン基、ポリオキシプロピレン基等のポリオキシアルキレン基を有するものが挙げられる。ポリオキシアルキレン型ノニオン界面活性剤の具体例としては、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレン脂肪酸モノアルカノールアミド、ポリオキシアルキレン脂肪酸ジアルカノールアミド等が挙げられ、それぞれ単独であっても2種以上が併用されていてもよい。
【0045】
これらのうち、式(IV):
7−O−(R8O)q−H (IV)
(式中、R7は炭素数8〜20、好ましくは炭素数10〜14の直鎖又は分岐鎖の飽和又は不飽和の炭化水素基、R8はエチレン基又はプロピレン基を示し、qは好ましくは1〜12の数で、平均付加モル数を意味する)で表わされるポリオキシアルキレンアルキルエーテルが好ましい。
【0046】
式(IV)において、R7としては、炭素数8〜20のアルキル基又は炭素数8〜20のアルケニル基が好ましい。また、R8としては、エチレン基、n−プロピレン基及びイソプロピレン基が挙げられる。qは、更に好ましくは1〜6、より更に好ましくは3〜6が好ましい。
【0047】
ポリオキシアルキレン型ノニオン界面活性剤のHLBは、パール光沢組成物の乳化を抑制し、粘度を制御する観点から、18未満が好ましく、9〜15がより好ましく、9〜12がさらに好ましい。なお、HLBとは、親水性−親油性のバランス(Hydrophilic-Lipophilic Balance)を示す指標であり、本発明においては、小田・寺村らによる式:
HLB=(Σ無機性値/Σ有機性値)×10
を用いて算出したときの値である。
【0048】
ポリオキシアルキレン型ノニオン界面活性剤のパール光沢組成物中の含有量は、パール光沢組成物の粘度を低下させる観点から、0.5質量%以上が好ましく、1質量%以上がより好ましく、2質量%以上がさらに好ましく、一方良好なパール光沢を得る観点から、10質量%以下が好ましく、8質量%以下がより好ましく、6質量%以下がさらに好ましい。これらの観点から、ポリオキシアルキレン型ノニオン界面活性剤の含有量は、パール光沢組成物中、0.5〜10質量%が好ましく、0.5〜8質量%がより好ましく、1〜6質量%がさらに好ましく、2〜6質量%がより好ましい。
【0049】
本発明のパール光沢組成物は(E)成分として水を含有し、パール光沢組成物における水の含有量は、パール光沢組成物の濃度及び粘度調整の観点から、25〜70質量%が好ましく、40〜70質量%がより好ましく、50〜65質量%がさらに好ましい。
【0050】
パール光沢組成物には、さらに、pH調整剤、防腐剤、塩類、アルコール類、ポリオール類等を適宜配合してもよい。
【0051】
[パール光沢組成物の製造方法]
本発明のパール光沢組成物の製造方法は、(A)成分〜(C)成分、(E)成分を含む原料の溶融混合液から、脂肪酸グリコールエステルを含むパール光沢形成粒子を結晶化させる方法であれば特に限定されない。具体的な方法としては、例えば、(A)成分〜(C)成分及び(E)成分を含む原料の混合物を加熱した後、冷却する方法;(E)成分及び(B)成分〜(C)成分の界面活性剤等を含む混合物と、溶融状態の(A)成分とを混合した後、冷却する方法等が挙げられる。なお、本発明においては、必要に応じて原料の溶融混合液に(D)成分を添加してもよい。
【0052】
本発明の製造方法においては、(C)成分が5〜10質量%になるように配合する。その他の成分については、上記のパール光沢組成物の説明に記載の量を採用することができる。
【0053】
原料の溶融混合液の温度は、(A)成分の融解終了温度以上の温度が好ましく、(A)成分の沸点以下の温度が好ましい。また、(A)成分の融解終了温度より1〜20℃高い温度がより好ましく、1〜10℃高い温度がさらに好ましい。
【0054】
冷却は、形状が均一なパール光沢形成粒子を得る観点から、温度分布がより均一となる緩やかな冷却が好ましい。かかる観点から、冷却速度は0.1〜5℃/minが好ましく、0.1〜3℃/minがより好ましく、0.1〜2℃/minがさらに好ましい。
【0055】
パール光沢形成粒子が結晶化した後は、さらに冷却して、結晶を安定化させることが好ましく、液温が10〜45℃、好ましくは15〜40℃となるまで冷却することが望ましい。
【0056】
原料の溶融及び冷却は、溶解液が分離しないように、攪拌しながら行うことが好ましい。
【0057】
冷却は、温度分布がより均一となる方法が好ましい。具体的な方法としては、例えば、溶融混合液をジャケットが付帯した配合槽で調製し、ジャケットに冷媒水を通水する方法等があげられる。
【0058】
配合槽の大きさは、特に限定されないが、例えば0.3Lから20m3の配合槽を使用することができる。工業的スケールで大量生産する場合、100Lから20m3の配合槽を使用することが好ましい。このような工業的スケールの配合槽を使用する場合、通常、冷却工程全体にわたって冷却速度を所望の範囲に制御することが困難であり、付帯の冷却設備に大きな負荷がかかることになる。本発明は、冷却速度を常時制御する必要はなく、原料の組成を特定範囲に調整するだけで、製造設備のスケールや形式によらず、白色度が高いパール光沢組成物を簡便に得ることができる。
【0059】
得られたパール光沢組成物は、界面活性剤等の適宜洗浄剤成分と混合して、洗浄剤とすることができる。
【0060】
洗浄剤中、本発明のパール光沢組成物(純分)は、好ましくは0.5〜5質量%、より好ましくは1〜3質量%であることが好ましい。
【実施例】
【0061】
以下、本発明の態様を実施例によりさらに記載し、開示する。かかる実施例は単なる本発明の例示であり、何ら限定を意味するものではない。
【0062】
各実施例及び各比較例で得られたパール光沢組成物の諸性質は、以下の方法によって測定した。
【0063】
<パール光沢組成物のパール光沢性>
パール光沢組成物を水で20倍(質量比)に希釈し、肉眼にてパール光沢の外観を観察し、以下の基準に従って評価した。なお、気泡の混入しているものは遠心分離に掛け、脱泡を行った。
【0064】
〔パール光沢の評価基準〕
A:きめの細かいシルキーな光沢が認められる。
B:ややきめの粗い光沢が認められる。
C:光沢がない。
D:分離が認められる。
【0065】
<パール光沢組成物の白色度>
ポリオキシエチレン(2)ラウリルエーテル硫酸ナトリウム(花王製、商品名:エマールE−27C、濃度27%)を19.5質量%含む水溶液で、パール光沢組成物3gを33.3倍(質量比)に希釈した洗浄剤(100g)を作成した。黒色のフォルダに装着した丸型セル(日本電色製、35Φ×15H、パーツNo.2301)に前記洗浄剤1gを測り取り、色彩色差計(KONICA MINOLTA製、CR-400)でL(明度)、b(色相・彩度)を暗室などの遮光した条件下で測定した。次いで、ASTM(米国材料試験協会)が定義(E-313)する次式によりW値を求めた。
W値=(7L2−40Lb)/700
【0066】
W値はパール光沢組成物の白さ、言いかえれば濁度を表す指標として用いた。W値が高いほどパール光沢組成物は白く濃くなる。
【0067】
パール光沢組成物の製造直後のパール光沢及びW値(即ち、初期パール光沢及び初期W値)を前記と同様にして評価した。また、このパール光沢組成物を40℃で2週間保存したときのパール光沢、およびW値を評価し、製造直後からの外観の変化を下記基準に従って目視で評価した。
【0068】
〔パール光沢の変化の評価基準〕
A:変化は感じられない
B:やや劣化した
C:明らかに劣化した、もしくは分離などの異常が認められる
【0069】
<(A)成分の融解終了温度>
それぞれ調製された脂肪酸グリコールエステルの混合物を(A)成分として用いる場合は、所定の割合で混合した脂肪酸グリコールエステルの混合物(10g)を密閉したガラス瓶(50g)の容器で80℃(80℃で溶融しない場合は溶融する温度)まで昇温し溶融させた。あるいは、一種類の脂肪酸グリコールエステルを(A)成分として用いる場合は、その脂肪酸グリコールエステル(10g)を密閉したガラス瓶(50g)の容器で80℃(80℃で溶融しない場合は溶融する温度)まで昇温し溶融させた。
【0070】
この容器を水に浸して、20℃まで急冷(30℃/分)し固化させた。20℃で5分保存することで固化した(A)成分を、示差走査熱量計(Thermo plus DSC8230, Rigaku製)を用い、5℃/minで昇温し、吸熱が終了する温度を融解終了温度とした。なお、実施例5の例を図1に示す。
【0071】
実施例1〜8及び比較例1〜6
表1及び表2に示す(A)成分〜(E)成分及びその他成分((F)成分)を、ジャケット付きセパラブルフラスコにて、80℃で混合した。その後、0.2℃/minの冷却速度、攪拌回転数100r/minで20℃まで冷却し、パール光沢組成物を得た。なお、表中の数値は、各成分の純分を示す。
【0072】
【表1】

【0073】
【表2】

【0074】
注)表中の組成値は質量%を示す。カッコ内の数字はエチレンオキサイドの付加モル数を示す。
1)ジ脂肪酸エチレングリコール(花王製、商品名:エマノーン3201MH−V)、ジパルミチン酸エチレングリコール:エチレングリコールパルミテートステアレート:ジステアリン酸エチレングリコール=0.25:0.50:0.25(質量比)の混合物
2)ジ脂肪酸エチレングリコール(東邦化学製、商品名:ペグノールEDS98−K)、ジパルミチン酸エチレングリコール:モノパルミチン酸モノステアリン酸エチレングリコール:ジステアリン酸エチレングリコール=0:0:1(質量比)
3)ジ脂肪酸エチレングリコール、ジパルミチン酸エチレングリコール:エチレングリコールパルミテートステアレート:ジステアリン酸エチレングリコール=0.05:0.30:0.65(質量比)の混合物
4)ジ脂肪酸エチレングリコール、ジパルミチン酸エチレングリコール:エチレングリコールパルミテートステアレート:ジステアリン酸エチレングリコール=0.09:0.41:0.49(質量比)の混合物
5)ヤシ油脂肪酸モノエタノールアミド(川研ファインケミカル製、商品名:アミゾールCME):平均分子量267.1(但し、この平均分子量は、原料のヤシ油脂肪酸の平均炭素数を12.8として算出した値である。)
6)ポリオキシエチレン(2)ラウリルエーテル硫酸ナトリウム(花王製、商品名:エマールE−27C、濃度27%):分子量376.6(但し、表中の組成値はポリオキシエチレン(2)ラウリルエーテル硫酸ナトリウムの有効分)
7)ポリオキシエチレン(4)ラウリルエーテル[HLB:9.7](花王株式会社製、商品名:エマルゲン504k)
ただし、()内の数値は平均付加モル数を示す。
【0075】
以上の結果より、実施例1〜8のパール光沢組成物は、きめ細かくシルキーなパール光沢を有し、W値も高く、かつ40℃2週間保存後でもパール光沢とW値が変化しないことがわかる。さらに、実施例1〜8のパール光沢組成物は、脂肪族アルコール等の晶析添加剤を含有しなくても、このような優れた効果を発揮するものであることが分かった。
【0076】
一方、(C)成分の量が10質量%を超えた例(比較例1及び2)では、初期の光沢やW値に劣る傾向が見られた。ジステアリン酸グリコールの含有量が45%未満の例(比較例3〜5)では、40℃で2週間保存後の光沢やW値の変化が大きいことが分かった。さらに、ジステアリン酸グリコールの含有量が75質量%を超えた例(比較例6)でも、初期の光沢やW値に劣る傾向が見られた。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明のパール光沢組成物は、シャンプー、リンス、ボディシャンプー等の液体洗浄剤等に好適に用いられるものである。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)脂肪酸とグリコールとから構成される脂肪酸グリコールエステルであって、ステアリン酸とパルミチン酸との合計量が該脂肪酸の90質量%以上であり、ジステアリン酸グリコールの含有量が45〜75質量%である脂肪酸グリコールエステル、
(B)脂肪酸モノアルキロールアミド、
(C)アルキル硫酸エステル塩、及び
(E)水、
を含有し、(C)成分が5〜10質量%であるパール光沢組成物。
【請求項2】
(A)成分の示差走査熱量計(DSC)を用いて得られる融解終了温度が70〜76℃である、請求項1に記載のパール光沢組成物。
【請求項3】
(B)成分と(C)成分とのモル比((C)成分/(B)成分)が0.50〜0.95である、請求項1又は2に記載のパール光沢組成物。
【請求項4】
(A)成分が10〜50質量%であり、(B)成分が5〜10質量%である、請求項1〜3のいずれか1項に記載のパール光沢組成物。
【請求項5】
さらに、(D)ポリオキシアルキレン型ノニオン界面活性剤を含有する、請求項1〜4のいずれか1項に記載のパール光沢組成物。
【請求項6】
(D)成分が0.5〜10質量%である、請求項5のいずれか1項に記載のパール光沢組成物。


【図1】
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【公開番号】特開2013−67578(P2013−67578A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−206562(P2011−206562)
【出願日】平成23年9月21日(2011.9.21)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】