説明

ヒアルロニダーゼ活性阻害剤および皮膚外用剤

【課題】従来のものに比べ高活性なヒアルロニダーゼ活性阻害剤を提供すること、また乾燥肌の改善効果(保湿効果)や肌荒れ改善効果のみならず、肌のハリ改善効果や肌のツヤ改善効果といった、従来のヒアルロニダーゼ活性阻害剤では得られなかった効果を有する皮膚外用剤を提供すること。
【解決手段】ヒアルロニダーゼ活性阻害剤はホソバヒカゲスゲ(Carex humilis )抽出物を有効成分として含有する。また、皮膚外用剤はホソバヒカゲスゲ(Carex humilis )抽出物を乾燥残留物として0.0001〜10質量%含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は特定の植物抽出物を含有する新規なヒアルロニダーゼ活性阻害剤および皮膚外用剤に関する。さらに詳しくは、ホソバヒカゲスゲ(Carex humilis )抽出物を有効成分として含有する高活性なヒアルロニダーゼ活性阻害剤、およびホソバヒカゲスゲ抽出物を特定量含有する皮膚外用剤に関する。本発明の皮膚外用剤は、肌荒れ改善効果、乾燥肌の改善効果(保湿効果)、肌のハリ改善効果、肌のツヤ改善効果にいずれも優れている。
【背景技術】
【0002】
ヒアルロン酸は、皮膚真皮中の細胞外マトリックスに存在するグリコサミノグリカンの1種であり、皮膚の水分保持に関与している。しかし、加齢により組織中のヒアルロン酸量は減少し、それに伴い、皮膚のみずみずしさが失われていく。
一方、ヒアルロニダーゼは、ヒアルロン酸を分解する酵素であり、ヒアルロン酸中のβ(1→4)結合を加水分解する。そのため、ヒアルロニダーゼの活性を阻害することにより、皮膚真皮中のヒアルロン酸量を維持でき、みずみずしくハリのある肌を保つことができると考えられている(非特許文献1)。
【0003】
また、ヒアルロン酸の中でも高分子ヒアルロン酸は保湿効果を示すが、20kDa 以下の低分子ヒアルロン酸は炎症性サイトカインの産生を促進させる(非特許文献2)ことから、炎症や免疫系の活性化に関与すると考えられている。そのため、高分子ヒアルロン酸を分解して低分子ヒアルロン酸を生成するヒアルロニダーゼの活性を阻害するヒアルロニダーゼ活性阻害剤は、ヒアルロン酸量を維持することによる保湿効果だけでなく、低分子ヒアルロン酸の生成を抑制することによる抗炎症効果や抗アレルギー効果、肌荒れ改善効果などが期待できる。
【0004】
さらに、ヒアルロン酸は皮膚以外の組織、例えば関節腔や関節軟骨、目の硝子体にも多量に存在し、関節内ヒアルロン酸量が減少することで関節痛が誘発されることから、ヒアルロニダーゼ活性阻害剤は関節痛などの予防剤として利用することができる。また、がん細胞の転移過程においては、ヒアルロニダーゼは組織間を移動する際に機能する酵素であることから(非特許文献3)、がんの進行や転移を阻害する薬剤としても利用可能と考えられる。さらに、ヒアルロニダーゼ活性阻害剤はヒアルロン酸含有製剤の安定性を高める効果も期待できる。
【0005】
これまでにヒアルロニダーゼ活性阻害剤として、藻類の熱水抽出物(特許文献1)や羅漢果などの抽出物(特許文献2)、タマリンドハスク抽出物(特許文献3)、インドセンダン、コウスイガヤ、ムラヤコエニギイ、スファランサス、インディクス、カミメボウキ、イボナシツヅラフジなどの抽出物(特許文献4)、ツバキなどの抽出物(特許文献5)などの様々な植物抽出物や、クロモグリク酸ナトリウム(非特許文献4)などの化学合成による化合物が報告されている。
【0006】
しかしながら、従来のヒアルロニダーゼ活性阻害剤は効果が充分でないため、皮膚外用剤に配合する際には大量に配合しなければならない場合があった。そして、ヒアルロニダーゼ活性阻害剤としての植物抽出物を大量に配合すると製剤の安定性が悪くなる可能性があり、臭気、色などの変化を伴うものも多かった。また、化学合成によって得られるヒアルロニダーゼ活性阻害剤は医薬品として使用されているものが多いため、使用上の用量などに注意を要する必要がある。さらに、従来のヒアルロニダーゼ活性阻害剤は、皮膚の保湿効果や抗炎症効果は有していたが、阻害活性が充分でなかったため、肌のハリを改善する効果までは有していなかった。しかも、皮膚外用剤に配合することで、肌のツヤ改善効果をも有するものはなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平10−265399号公報
【特許文献2】特開平6−80576号公報
【特許文献3】特開平8−231347号公報
【特許文献4】特開平7−138180号公報
【特許文献5】特開2003−012489号公報
【特許文献6】仏国特許出願第2000−15098号明細書(仏国特許発明第2816843号明細書)
【特許文献7】仏国特許出願第2002−11628号明細書(仏国特許発明第2844714号明細書)
【特許文献8】仏国特許出願第2006−2294号明細書(仏国特許発明第2898493号明細書)
【特許文献9】韓国特許出願第2007−52002号明細書(韓国特許公開第2008−104759号公報)
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Life Sciences, 2007, Vol.80, No.21, p.1921-1943
【非特許文献2】Matrix Biology, 2002, Vol.21, p.25-29
【非特許文献3】Cancer Research, 1996, Vol.56, No.3, p.651-657
【非特許文献4】Chemical & Pharmaceutical Bulletin, 1985, Vol.33, No.2, p.642-646
【非特許文献5】American Journal of Chinese Medicine, 2004, Vol.32, No.4, p.521-530
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、従来のものに比べ高活性なヒアルロニダーゼ活性阻害剤を提供すること、また保湿効果や肌荒れ改善効果のみならず、肌のハリ改善効果や肌のツヤ改善効果といった、従来のヒアルロニダーゼ活性阻害剤では得られなかった効果を有する皮膚外用剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決するために、皮膚の保湿、抗炎症作用等に関与するヒアルロニダーゼ活性阻害作用について、様々な植物抽出物を用いて鋭意研究を重ねてきた。その結果、ホソバヒカゲスゲ抽出物が優れたヒアルロニダーゼ活性阻害作用を有することを見出した。また、ホソバヒカゲスゲ抽出物を皮膚外用剤に特定量含有させることによって、保湿効果や肌荒れ改善効果のみならず、肌のハリ改善効果や肌のツヤ改善効果をも優位に得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0011】
すなわち、本発明は、ホソバヒカゲスゲ(Carex humilis )抽出物を有効成分として含有するヒアルロニダーゼ活性阻害剤であり、またホソバヒカゲスゲ(Carex humilis )抽出物を乾燥残留物として0.0001〜10質量%含有する皮膚外用剤である。
【0012】
ホソバヒカゲスゲ(Carex humilis )は、カヤツリグサ科スゲ属の多年草であり、北東アジア全体に分布する植物である。ホソバヒカゲスゲ抽出物についてはすでに、5α−レダクターゼ阻害作用(特許文献6)、ホルモンバランスが崩れた肌用スキンケア成分(特許文献7)、老化遅延用化粧品組成物(特許文献8)、チロシナーゼ阻害作用による美白効果(特許文献9)、抗炎症作用(非特許文献5)についての報告がある。
しかしながら、ホソバヒカゲスゲ抽出物が優れたヒアルロニダーゼ活性阻害作用を有すること、また、ホソバヒカゲスゲ抽出物を皮膚外用剤に特定量含有させることによって、保湿効果や肌荒れ改善効果のみならず、肌のハリ改善効果や肌のツヤ改善効果が得られることは、未だ報告されていない。
【発明の効果】
【0013】
本発明のヒアルロニダーゼ活性阻害剤は、従来のヒアルロニダーゼ活性阻害剤に比べ低濃度で優れた阻害効果を有する。また本発明の皮膚外用剤は、保湿効果や肌荒れ改善効果のみならず、肌のハリ改善効果や肌のツヤ改善効果をも優位に有するものであり、さらに肌へのなじみ性が良好で、使用後のべたつきが無く、経時安定性に優れるという効果を有する。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明のヒアルロニダーゼ活性阻害剤および皮膚外用剤は、いずれもホソバヒカゲスゲ抽出物を含有する。まず、ホソバヒカゲスゲ抽出物について説明する。
【0015】
〔ホソバヒカゲスゲ抽出物〕
本発明に用いられるホソバヒカゲスゲ抽出物は、カヤツリグサ科スゲ属に属するホソバヒカゲスゲ(Carex humilis )の根、葉、花、種子(中でも好ましくは根)を、そのままもしくは乾燥させた後、各種溶媒にて抽出したものであり、抽出液そのもの、もしくはその希釈物や濃縮物をいう。
【0016】
抽出に用いられる溶媒としては、炭化水素、エステル、ケトン、エーテル、ハロゲン化炭化水素、水溶性のアルコール類及び水などが挙げられる。中でも好ましくは水、低級アルコール、多価アルコールの1種または2種以上を用いたものであり、更に好ましくは水、エタノール、1,3−ブチレングリコールの1種または2種以上を用いたものである。
【0017】
抽出方法は常法に従い、ホソバヒカゲスゲをそのまま、もしくは乾燥させた後、1種または2種以上の溶媒に1時間以上浸漬し、ろ過することで目的の抽出物を得ることができる。抽出は、常圧または加圧、減圧下で、室温または加熱、冷却下で行うことができる。さらに、二酸化炭素などを利用した超臨界抽出法や亜臨界抽出法、水蒸気蒸留など蒸留を用いて抽出する方法、ホソバヒカゲスゲを圧搾して抽出する方法、還流抽出法なども利用することができる。得られた抽出液は、溶媒留去により濃縮したり、カラムクロマトグラフィーや溶媒分画等の処理により精製しても良い。
【0018】
〔ヒアルロニダーゼ活性阻害剤〕
本発明のヒアルロニダーゼ活性阻害剤は、上記ホソバヒカゲスゲ抽出物を有効成分として含有するものであり、医薬品、医薬部外品、食品、化粧品類(例えば、化粧水、乳液、クリーム、ジェル、美容液、パック、オイル、軟膏、スプレー、貼付剤など)として利用することができる。医薬品として利用する場合としては、例えば、関節機能改善剤、眼科手術補助剤、内視鏡用粘膜下注入剤、点眼剤など使われるヒアルロン酸の分解を抑制するための補助剤としての利用が挙げられる。また、変形性関節症や慢性関節リウマチの治療や疼痛の緩和のために、注射剤として使用することもできる。本発明のヒアルロニダーゼ活性阻害剤は、ホソバヒカゲスゲ抽出物に加え必要に応じ、本発明の効果を損なわない範囲内で、医薬品、医薬部外品、食品、化粧品類に添加され得る添加剤を含有していても良い。
【0019】
〔皮膚外用剤〕
本発明の皮膚外用剤は、上記ホソバヒカゲスゲ抽出物を乾燥残留物として0.0001〜10質量%含有するものである。本発明における乾燥残留物の質量は、実際に溶媒を除去して乾燥させた残留物の質量のみならず、残留物に含まれる溶媒量を算出し、その溶媒量を減じた残留物の質量も概念的に包含される。例えば、抽出溶媒が揮発性である場合は、抽出溶媒を105℃〜120℃で完全に留去させ、残存した固形分の質量であり、抽出溶媒が不揮発性である場合は、高速液体クロマトグラフィー等で溶媒量を定量し、それ以外の成分量が乾燥残留物の質量である。
【0020】
ホソバヒカゲスゲ抽出物の配合量は、乾燥残留物として0.0001〜10質量%であり、好ましくは0.0005〜7.5質量%であり、更に好ましくは0.001〜5質量%である。配合量が0.0001質量%未満では肌荒れ改善効果、保湿効果、肌のハリ・ツヤ改善効果を発揮することができず、10%質量を越えると製剤の安定性に問題が生じ易くなり好ましくない。
【0021】
本発明の皮膚外用剤は、性能の更なる向上のために、カルボン酸のα−位にヒドロキシル基を有する有機酸であるα−ヒドロキシ酸(以下、AHAとも表記する)および/またはその塩を含有することが好ましい。AHAとしては、クエン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、グリコール酸などが挙げられ、AHAの塩としては、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、アミン塩、有機アミン塩、塩基性アミノ酸塩等が挙げられ、これらAHAおよびその塩から選ばれる1種または2種以上が用いられる。そのなかでも乳酸またはその塩を含有することが好ましい。AHAおよび/またはその塩の配合量は、0.001〜5質量%、好ましくは0.01〜1質量%である。0.001〜5質量%で含有していれば、肌のキメ改善効果、肌のツヤ改善効果を顕著に高めることができる。
【0022】
本発明の皮膚外用剤は、様々な剤形にて調製することができ、例えば、化粧水、乳液、クリーム、ジェル、美容液、パック、オイル、軟膏、スプレー、貼付剤などとして利用することができる。本発明においては、化粧料や医薬品等の皮膚外用剤に常用されている添加物を、本発明の効果を損なわない範囲で、適宜配合することも可能である。
【実施例】
【0023】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明は下記実施例に制限されるものではない。なお、特に断りのない限り、%は質量%を表す。
【0024】
(A)ホソバヒカゲスゲ抽出物(ヒアルロニダーゼ活性阻害剤)の調製
採取したホソバヒカゲスゲ根を純水で洗浄し乾燥させたもの50gに、500gの70%エタノール水溶液を加え24時間浸漬し抽出した。ろ過後、得られた抽出物を脱臭・脱色処理し、さらに濃縮することによりホソバヒカゲスゲ抽出物粉末(ヒアルロニダーゼ活性阻害剤)を得た。
【0025】
(B)ツバキ花抽出物の調製
乾燥させたツバキ花50gに対し、500gの50%1,3−ブチレングリコール水溶液を加え、室温下で7日間抽出し、ろ過後、−5℃で7日間冷却し、再度ろ過することでツバキ花抽出物を得た。
【0026】
〔実施例1、比較例1、2:ヒアルロニダーゼ活性阻害試験〕
上記ホソバヒカゲスゲ抽出物粉末を80%エタノール水溶液に10mg/mLになるように溶解し、試験に供した。さらに上記ホソバヒカゲスゲ抽出物溶液、クロモグリク酸ナトリウム(MP Biomedicals, Inc.)、上記ツバキ花抽出物は、30%1,3−ブチレングリコール水溶液で適宜希釈し、表1に示す濃度の試験溶液とした。
【0027】
200 μL試験溶液に、0.1M酢酸緩衝液(pH4.0)で調製した400U/mLヒツジ精巣由来ヒアルロニダーゼ溶液を100 μL加え37℃で20分保温した。その後、0.1M酢酸緩衝液(pH4.0)で調製した酵素活性化試薬0.1mg/mL compound 48/80 を添加し、37℃で20分保温した。そこに、500 μLの0.4mg/mL雄鶏とさか由来ヒアルロン酸/0.1M酢酸緩衝液(pH4.0)を加え、37℃で40分間放置し、酵素反応を行った。反応後、200 μLの0.4NのNaOH水溶液を加え氷冷し、酵素反応を停止させた。さらに、200 μLの0.8Mホウ酸ナトリウム水溶液(pH9.1)を加え、100 ℃で5 分加熱した。加熱後氷冷し、6 mLの発色試薬(10N塩酸12.5mLと酢酸87.5mLの混液にp−ジメチルアミノベンズアルデヒド(和光純薬工業社製)を10g溶解し、酢酸で10倍希釈して使用)を加え、37℃で20分間放置して発色させた。酵素反応により生成したN−アセチルグルコサミン量を585nm の吸光度(A585 )として測定した。
ヒアルロニダーゼ活性阻害率は以下の式を用いて算出した。結果を表1に示す。
阻害率(%)=(A585Control−A585Sample)/(A585Control−A585Blank)×100
【0028】
【表1】

【0029】
表1の結果から、ホソバヒカゲスゲ抽出物は、従来の植物抽出物や合成化合物よりも優れたヒアルロニダーゼ活性阻害作用を示し、また従来のものより低濃度においても阻害活性を示すことが明らかとなった。
【0030】
〔実施例2、3、4、比較例3、4、5、6:官能評価〕
上記ヒアルロニダーゼ活性阻害試験に供したホソバヒカゲスゲ抽出物粉末の80%エタノール水溶液、上記ヒアルロニダーゼ活性阻害試験に供したツバキ花抽出物の30%1,3−ブチレングリコール水溶液、クロモグリク酸ナトリウムを使用して、表2に示す化粧水(皮膚外用剤)を調製し、7項目について下記評価基準により評価を行なった。結果を表2に示す。
【0031】
【表2】

【0032】
(評価項目及び評価基準)
(1)肌荒れ改善効果
肌荒れを生じている20名の女性(25才〜52才)をパネラーとし、皮膚外用剤を1日2回ずつ2週間使用した後の肌の状態について下記のように官能評価を行った。
2点:肌荒れが明らかに改善してきたと感じた場合。
1点:肌荒れがやや改善してきたと感じた場合。
0点:肌荒れ改善効果が全く見られない、または肌荒れが悪化したと感じた場合。
【0033】
さらに、20名の評価を加算し、合計点を下記の基準で判定した。
◎:35点以上(非常に優れた肌荒れ改善効果を有する皮膚外用剤)
○:30点以上35点未満(優れた肌荒れ改善効果を有する皮膚外用剤)
△:15点以上30点未満(わずかに肌荒れ改善効果を有する皮膚外用剤)
×:15点未満(肌荒れ改善効果を有しない皮膚外用剤)
【0034】
(2)乾燥肌の改善効果(保湿効果)
肌の乾燥を感じている20名の女性(25才〜56才)をパネラーとし、皮膚外用剤を1日2回、4 週間使用したのち、洗顔後30分後における肌の状態について下記のように官能評価を行った。
2点:洗顔後の肌のつっぱり感が明らかに改善されたと感じた場合。
1点:洗顔後の肌のつっぱり感がやや改善されたと感じた場合。
0点:洗顔後の肌のつっぱり感に変化を感じない、または以前よりもつっぱり感が悪化したと感じた場合。
【0035】
さらに、20名の評価を加算し、合計点を下記の基準で判定した。
◎:35点以上(非常に優れた乾燥肌の改善効果を有する皮膚外用剤)
○:30点以上35点未満(優れた乾燥肌の改善効果を有する皮膚外用剤)
△:15点以上30点未満(わずかに乾燥肌の改善効果を有する皮膚外用剤)
×:15点未満(乾燥肌の改善効果を有しない皮膚外用剤)
【0036】
(3)肌のハリ改善効果
20名の女性(25才〜56才)をパネラーとし、皮膚外用剤を1日2回、4週間使用後の肌の状態について下記のように官能評価を行った。
2点:肌のハリが明らかに改善したと感じた場合。
1点:肌のハリがやや改善したと感じた場合。
0点:肌に変化を感じなかった、または肌のハリが悪くなったと感じた場合。
【0037】
さらに、20名の評価を加算し、合計点を下記の基準で判定した。
◎:35点以上(非常に優れた肌のハリ改善効果を有する皮膚外用剤)
○:30点以上35点未満(優れた肌のハリ改善効果を有する皮膚外用剤)
△:15点以上30点未満(わずかに肌のハリ改善効果を有する皮膚外用剤)
×:15点未満(肌のハリ改善効果を有しない皮膚外用剤)
【0038】
(4)肌のツヤ改善効果
20名の女性(25才〜56才)をパネラーとし、皮膚外用剤を1日2回、2週間使用後の肌の状態について下記のように官能評価を行った。
2点:明らかに肌のツヤが改善したと感じた場合。
1点:やや肌のツヤが改善したと感じた場合。
0点:肌に変化を感じなかった、または肌のツヤが悪くなったと感じた場合。
【0039】
さらに、20名の評価を加算し、合計点を下記の基準で判定した。
◎:35点以上(非常に優れた肌のツヤ改善効果を有する皮膚外用剤)
○:30点以上35点未満(優れた肌のツヤ改善効果を有する皮膚外用剤)
△:15点以上30点未満(わずかに肌のツヤ改善効果を有する皮膚外用剤)
×:15点未満(肌のツヤ改善効果を有しない皮膚外用剤)
【0040】
(5)肌へのなじみ性
20名の女性(25才〜56才)をパネラーとし、洗顔した後に皮膚外用剤を使用した時の感触について下記のように官能評価を行った。
2点:使用時に肌へのなじみが良いと感じた場合。
1点:使用時に肌へのなじみがやや悪いと感じた場合。
0点:使用時に肌へのなじみが明らかに悪いと感じた場合。
【0041】
さらに、20名の評価を加算し、合計点を下記の基準で判定した。
◎:35点以上(非常に優れた肌へのなじみ性を有する皮膚外用剤)
○:30点以上35点未満(優れた肌へのなじみ性を有する皮膚外用剤)
△:15点以上30点未満(わずかに肌へのなじみ性を有する皮膚外用剤)
×:15点未満(肌へのなじみ性を有しない皮膚外用剤)
【0042】
(6)使用後のべたつき
20名の女性(25才〜56才)をパネラーとし、洗顔した後に皮膚外用剤を使用して10分後の肌の感触について下記のように官能評価を行った。
2点:べたつきが無いと感じた場合。
1点:肌がややべたつくと感じた場合。
0点:肌が非常にべたつくと感じた場合。
【0043】
さらに、20名の評価を加算し、合計点を下記の基準で判定した。
◎:35点以上(使用後のべたつきが無い皮膚外用剤)
○:30点以上35点未満(使用後のべたつきが殆ど無い皮膚外用剤)
△:15点以上30点未満(使用後のべたつきが少し有る皮膚外用剤)
×:15点未満(使用後のべたつきが有る皮膚外用剤)
【0044】
(7)経時安定性
化粧料を透明ガラス容器に密封して0℃、25℃、40℃でそれぞれ3ヶ月間保存し、その外観を観察して、下に示す2段階で評価した。
○:安定性良好(いずれの温度においても外観の変化がない。)
×:安定性不良(いずれかの温度において、沈殿を生じるまたは分離する。もしくは変色を生じる。)
【0045】
実施例2、3、4の結果から、本発明によるホソバヒカゲスゲ抽出物の成分を用いた化粧水は、肌荒れ改善効果、保湿効果だけでなく、肌のハリ・ツヤ改善効果をも優位に有しており、かつ肌へのなじみ性、べたつき等の使用感も優れ、安定性も良好であることが理解できる。
【0046】
一方、ヒアルロニダーゼ活性阻害剤を含有していない比較例3では、肌荒れ改善効果、保湿の持続効果、肌のハリ・ツヤ改善効果のいずれにおいても、十分な効果が得られなかった。また、比較例4、5の化粧水はヒアルロニダーゼ活性阻害剤として知られているツバキ花抽出物を含有するが、肌荒れ改善効果、保湿効果、肌のハリ・ツヤ改善効果のいずれにおいても、比較例3と同様に、効果が認められなかった。また、クロモグリク酸ナトリウムを配合した比較例6でも、比較例3と同様に、肌荒れ改善効果、保湿効果、肌のハリ・ツヤ改善効果は得られなかった。
【0047】
〔実施例5、6、比較例7、8:官能評価〕
上記(A)で得られたホソバヒカゲスゲ抽出物粉末、クロモグリク酸ナトリウムを使用して、表3に示す乳液を調製し、実施例2〜4と同様の方法により評価を行なった。なお、ホソバヒカゲスゲ抽出物粉末を含有する乳液の調製は、上記(A)で得られたホソバヒカゲスゲ抽出物粉末を表3に示す多価アルコールとノニオン性界面活性剤成分にあらかじめ溶解した後、他の成分に配合することにより行った。結果を表3に示す。
【0048】
【表3】

【0049】
実施例5、6の結果から、本発明によるホソバヒカゲスゲ抽出物の成分を用いた乳液は、肌荒れ改善効果、保湿効果、肌のハリ・ツヤ改善効果に優れており、かつ肌へのなじみ性、べたつき等の使用感も優れ、安定性も良好であった。特に、ホソバヒカゲスゲ抽出物とAHA塩(乳酸ナトリウム)を併用した実施例6の製剤では、肌荒れ改善効果、保湿効果だけでなく、肌のハリ・ツヤ改善効果が顕著に高まっていた。
【0050】
一方、ヒアルロニダーゼ活性阻害剤を含有していない比較例7では、肌荒れ改善効果、保湿の持続効果、肌のハリ・ツヤ改善効果のいずれにおいても、十分な効果が得られなかった。また、クロモグリク酸ナトリウムとAHA塩(乳酸ナトリウム)を併用した比較例8でも、比較例7と同様に、肌荒れ改善効果、保湿効果、肌のハリ・ツヤ改善効果は得られなかった。
【0051】
〔実施例7、8、比較例9:官能評価〕
上記(A)で得られたホソバヒカゲスゲ抽出物粉末を使用して、表4に示すクリームを調製し、実施例2〜4と同様の方法により評価を行なった。なお、ホソバヒカゲスゲ抽出物粉末を含有するクリームの調製は、乳液の場合と同様に、上記(A)で得られたホソバヒカゲスゲ抽出物粉末を表4に示す多価アルコールとノニオン性界面活性剤成分にあらかじめ溶解した後、他の成分に配合することにより行った。結果を表4に示す。
【0052】
【表4】

【0053】
実施例7、8の結果から、本発明によるホソバヒカゲスゲ抽出物の成分を用いたクリームは、ヒアルロニダーゼ活性阻害剤を含有していない比較例9と比べて、肌荒れ改善効果、保湿効果、肌のハリ・ツヤ改善効果に優れており、かつ肌へのなじみ性、べたつき等の使用感、安定性とも良好であった。特に、ホソバヒカゲスゲ抽出物とAHA塩(乳酸ナトリウム)を併用した実施例8の製剤では、肌荒れ改善効果、保湿効果だけでなく、肌のハリ・ツヤ改善効果が顕著に高まっていた。
【0054】
〔総括〕
以上詳述の通り、本発明のヒアルロニダーゼ活性阻害剤は、従来のものよりも低濃度で高い活性を示すことが明らかとなった。そのため、本発明のヒアルロニダーゼ活性阻害剤の有効成分であるホソバヒカゲスゲ抽出物を含有する皮膚外用剤は、従来のヒアルロニダーゼ活性阻害剤を含有する皮膚外用剤で認められる肌荒れ改善効果、乾燥肌の改善効果(保湿効果)よりも単に優れるだけでなく、かかる従来の皮膚外用剤では得られなかった肌のハリ・ツヤ改善効果をも優位に有していた。また、肌へのなじみ性、べたつき等の使用感も優れ、安定性も良好であった。さらに、本発明によるホソバヒカゲスゲ抽出物とAHAまたはその塩とを併用した皮膚外用剤は、肌のハリ改善効果や肌のツヤ改善効果が顕著に増強していた。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明のヒアルロニダーゼ活性阻害剤は、医薬品、医薬部外品、食品、化粧品類(例えば、化粧水、乳液、クリーム、ジェル、美容液、パック、オイル、軟膏、スプレー、貼付剤など)として利用することができる。また、本発明の皮膚外用剤は、医薬品、医薬部外品、化粧品類として利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホソバヒカゲスゲ(Carex humilis )抽出物を有効成分として含有するヒアルロニダーゼ活性阻害剤。
【請求項2】
ホソバヒカゲスゲ(Carex humilis )抽出物を乾燥残留物として0.0001〜10質量%含有する皮膚外用剤。

【公開番号】特開2011−105622(P2011−105622A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−260518(P2009−260518)
【出願日】平成21年11月13日(2009.11.13)
【出願人】(000004341)日油株式会社 (896)
【出願人】(501255239)東亜化成株式会社 (6)
【出願人】(302009590)バイオランド・リミテッド (8)
【Fターム(参考)】