説明

ヒアルロニダーゼ活性阻害剤

【課題】日常的に手軽かつ安全に摂取でき、ヒアルロニダーゼ活性阻害に優れたヒアルロニダーゼ活性阻害剤を提供する。
【解決手段】このヒアルロニダーゼ活性阻害剤は、ブドウの乳酸発酵物を有効成分として含有する。乳酸発酵物は、ブドウを、ラクトバチルス・プランタルム及び/又はラクトバチルス・ブレビスを少なくとも含む乳酸菌で発酵して得られたものであることが好ましい。また、ブドウの種子及び/又は果皮を原料とすることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブドウの乳酸発酵物を有効成分として含有するヒアルロニダーゼ活性阻害剤に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒアルロン酸は、皮膚、関節液やじん帯などに広く分布し、保水性や柔軟性等の維持等、様々な機能を有している。
【0003】
しかしながら、加齢や紫外線の照射などに伴い、ヒアルロン酸の分解酵素であるヒアルロニダーゼの活性が亢進すると、生体内におけるヒアルロン酸が減少して、組織の柔軟性や潤滑性が失われ、皮膚の老化であるしわやたるみが起きたり、関節痛などが発症する。
【0004】
ヒアルロニダーゼの活性を阻害できれば、加齢等に伴う皮膚の老化や関節痛等の疾患を抑制できることが期待でき、天然成分を利用したヒアルロニダーゼ活性阻害剤が近年種々検討されている。
【0005】
特許文献1には、ブドウ種子及び/又はブドウ搾汁粕の抽出物を有効成分として含有してなるヒアルロニダーゼ活性阻害剤が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−26306号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1のヒアルロニダーゼ活性阻害剤では、その効果は十分ではなかった。
【0008】
したがって、本発明の目的は、日常的に手軽かつ安全に摂取でき、ヒアルロニダーゼ活性阻害に優れたヒアルロニダーゼ活性阻害剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、種々の検討の結果、ブドウの乳酸発酵物を経口摂取することで、ヒアルロニダーゼ活性を効果的に阻害できることを見出し、上記目的を達成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明のヒアルロニダーゼ活性阻害剤は、ブドウの乳酸発酵物及び/又はその抽出物を有効成分として含有することを特徴とする。
【0011】
本発明のヒアルロニダーゼ活性阻害剤は、天然成分を利用したものであり、安全性が高く、日常的に手軽かつ安全に摂取できる。また、これを経口摂取することにより、ブドウやその抽出物をそのまま経口摂取した場合よりもヒアルロニダーゼ活性を効果的に阻害できる。この理由は、詳細は明らかではないが、ブドウに含まれるポリフェノール類が、乳酸発酵により増加すると共に、ポリフェノール類の配糖体が切断されたり、有機酸が結合する等の要因により体内への吸収性が向上してポリフェノール類による生理活性効果が高まり、更には、ポリフェノール類と乳酸菌とが相乗的に作用しているのではないかと考えられる。
【0012】
本発明のヒアルロニダーゼ活性阻害剤の前記乳酸発酵物は、ブドウを、ラクトバチルス・プランタルム及び/又はラクトバチルス・ブレビスを少なくとも含む乳酸菌で発酵して得られたものであることが好ましく、ラクトバチルス・プランタルム及びラクトバチルス・ブレビスを少なくとも含む乳酸菌で発酵して得られたものであることがより好ましい。ラクトバチルス・プランタルム及び/又はラクトバチルス・ブレビスで、ブドウを発酵することにより、ブドウに含まれるポリフェノール類の体内への吸収性が高まり、更には、ラクトバチルス・プランタルム及び/又はラクトバチルス・ブレビスとの相乗作用により、ヒアルロニダーゼ活性を効果的に阻害できる。そして、ブドウを、ラクトバチルス・プランタルムとラクトバチルス・ブレビスとで混合発酵することで、ヒアルロニダーゼ活性をより効果的に阻害できる。
【0013】
本発明のヒアルロニダーゼ活性阻害剤は、前記抽出物が、水抽出物及び/又はアルコール抽出物であることが好ましい。
【0014】
本発明のヒアルロニダーゼ活性阻害剤は、ブドウの種子及び/又は果皮を原料とすることが好ましい。ブドウの種子や果皮には、アントシアニンやプロアントシアニジンなどが多量に含まれているので、より優れた効果が得られ、更には、安価な原料素材なので、製造コストを抑えることができる。また、ブドウの種子や果皮は、渋みが強く、飲食し難いものであるが、乳酸発酵することにより、渋みなどが改善されて、風味が向上し、飲食し易くなる。
【発明の効果】
【0015】
本発明のヒアルロニダーゼ活性阻害剤は、天然素材由来であることから、安全性が高く、日常的に手軽かつ安全に摂取できる。また、これを経口摂取することにより、ヒアルロニダーゼ活性を効果的に阻害でき、加齢等に伴う生体内のヒアルロン酸の減少を抑制して、皮膚の老化や関節痛等の疾患を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明のヒアルロニダーゼ活性阻害剤によるヒアルロニダーゼ活性阻害を示す図表である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明のヒアルロニダーゼ活性阻害剤は、ブドウの乳酸発酵物及び/又はその抽出物を有効成分として含有してなるものである。
【0018】
本発明において、原料となるブドウとしては、特に限定はなく、白系ブドウ、赤系ブドウ等のいずれでもよい。白系ブドウとしては、シャルドネ種、リースリング種、マスカット種などが挙げられる。赤系ブドウとしては、甲州種、巨峰種、ピオーネ種、カベルネ・フラン種、カベルネ・ソービニヨン種、メルロ種、ピノ・ノアール種、ピノ・ムニエ種、マスカット・ベリーA種、シラー種、ガメイ種、グルナッシュ種、ムールヴェードル種、サンソー種、グロロー種などが挙げられる。なかでも、赤系ブドウの果皮には、アントシアニンやフラボノイドなどが比較的多量に含まれているので、赤系ブドウが好ましく用いられる。原料ブドウの使用部位は、果皮、果肉、果汁、種子のいずれでも良いが、ポリフェノール類の含有量が高く、安価な原料素材であるという理由から、種子、果皮を用いることが好ましい。
【0019】
本発明において、原料ブドウの乳酸発酵に用いる乳酸菌としては、食品として利用可能なものであればいずれも好ましく用いることができる。例えば、エンテロコッカス・フェカリス、エンテロコッカス・フェシウム、エンテロコッカス・アビウム、エンテロコッカス・デュランス、エンテロコッカス・マラドラートス、エンテロコッカス・カセリフラブス、エンテロコッカス・ガリナール、ロイコノストック・クレモリス、ロイコノストック・シトロボラム、ロイコノストック・メゼンテロイデス、ペディオコッカス・セルビシェ、ペディオコッカス・ハロフィルス、ストレプトコッカス・アセトイニカス、ストレプトコッカス・エビウム、ストレプトコッカス・クレモリス、ストレプトコッカス・サーモフィルス、ストレプトコッカス・サングィウス、ストレプトコッカス・ソイエ、ストレプトコッカス・デュランス、ストレプトコッカス・パラシトロボルス、ストレプトコッカス・ラクチス等の乳酸球菌、ラクトバチルス・プランタルム、ラクトバチルス・ブレビス、ラクトバチルス・サリバリウス、ラクトバチルス・カゼイ、ラクトバチルス・アシドフィルス、ラクトバチルス・ヘルベティクス等の乳酸桿菌、ビフィドバクテリウム・ビフィダム、ビフィドバクテリウム・ロングム、ビフィドバクテリウム・ブレーベ等のビフィズス菌等が挙げられる。なかでも、ラクトバチルス・プランタルム、ラクトバチルス・ブレビスが好ましく、ラクトバチルス・プランタルムとラクトバチルス・ブレビスとを併用することがより好ましい。ブドウを、ラクトバチルス・プランタルム及び/又はラクトバチルス・ブレビスとを含む乳酸菌で混合発酵することにより、ブドウに含まれるポリフェノール類が増加し、更には、ポリフェノール類の配糖体が切断されたり、有機酸が結合してこれらの体内への吸収性が高まり、ヒアルロニダーゼの活性阻害が向上する。また、渋み、苦味、青臭さが低減され、風味が向上する。更にまた、ポリフェノール類と、ラクトバチルス・プランタルム及び/又はラクトバチルス・ブレビスとが相乗的に作用して、ヒアルロニダーゼ活性阻害が相乗的に向上し、更にはこれらの乳酸菌が持つ様々な生理活性効果が得られる。その結果、加齢等に伴う生体内のヒアルロン酸の減少が抑制され、加齢等に伴う皮膚の老化や関節痛等の疾患を抑制できる。
【0020】
ブドウの乳酸発酵物の抽出に用いる溶媒としては、特に限定は無い。水、メタノールやエタノール等のアルコール等が挙げられる。好ましくは、安全性や抽出効率が高いという理由から、エタノールが適している。
【0021】
本発明のヒアルロニダーゼ活性阻害剤は、例えば以下のようにして製造することができる。
【0022】
まず、原料ブドウを粉砕し、ブドウ粉砕物を得る。好ましくは、粒径が100μm以下となるまで粉砕する。ブドウ粉砕物の粒径が100μm以下であれば、ザラツキ感が無くなり、食感の良いものとなり、更には、乳酸菌による発酵効率も向上する。原料ブドウとしては、ブドウの種子及び果皮を含むものが好ましく、それによって、ポリフェノール成分に富む乳酸発酵物が得られる。なお、ブドウの種子、果皮を原料ブドウとして用いる場合、種子や果皮を含むブドウの果実そのものを用いてもよく、ブドウの果実から果肉や果汁を回収して残った種子や果皮を含む残渣を用いてもよい。
【0023】
原料ブドウの粉砕方法は、湿式粉砕が好ましい。湿式粉砕は、例えば、磨砕機、カッター等を用いて行うことができる。
【0024】
次に、得られたブドウ粉砕物に適当量の水を加え、加熱殺菌して培地を調製する。
【0025】
培地中のブドウ粉砕物の濃度は、10〜40質量%が好ましく、25〜35質量%がより好ましい。ブドウ粉砕物の濃度が10質量%未満であると、乾燥コストがかさんだり、嵩比重が小さくなり製剤化に不都合が生じる。また、ブドウ粉砕物の濃度が40質量%を超えると、粘度が上昇して攪拌し難くなり、乳酸発酵が不均一に行われる傾向にあり、更には、乳酸菌の増殖に時間がかかって生産性が低下する。
【0026】
加熱殺菌は、110〜125℃で、10〜30分間行うことが好ましく、115〜120℃で、10〜20分間行うことがより好ましい。上記条件で加熱殺菌を行うことにより、ポリフェノール類を破壊することなく、雑菌などの繁殖を抑制できる。
【0027】
次に、上記培地に、乳酸菌を添加して乳酸発酵を行う。乳酸菌としては、前述したように、ラクトバチルス・プランタルム及び/又はラクトバチルス・ブレビスを少なくとも含むものが好ましい。より好ましくは、ラクトバチルス・プランタルムとラクトバチルス・ブレビスとを少なくとも含むものを用いる。
【0028】
乳酸菌の添加量は特に限定されないが、培地1リットルに対して、1×10〜1×1010個となるように添加することが好ましく、ラクトバチルス・プランタルムの菌体数が1×10〜5×10個、ラクトバチルス・ブレビスの菌体数が1×10〜5×10個となるように添加することがより好ましい。
【0029】
乳酸発酵は、温度27〜37℃、pH3〜7、培養時間24〜72時間の条件で行うことが好ましく、より好ましくは、温度30〜33℃、pH4.5〜6、培養時間40〜50時間の条件で行う。
【0030】
このようにして乳酸発酵して得られるブドウの乳酸発酵物は、乳酸発酵前の状態に比べてポリフェノール含量が増加し、かつ、ポリフェノール類の体内への吸収性が高められている。この理由としては、乳酸発酵により、ポリフェノール類の配糖体が切断されたり、有機酸が結合したものによると考えられる。また、この乳酸発酵物には、乳酸発酵物の固形分100mg中に、乳酸菌が1×10〜1×1010個含まれていることが好ましい。ラクトバチルス・プランタルム、ラクトバチルス・ブレビスは、同発酵物の固形分100mg中に、ラクトバチルス・プランタルムの菌体数が5×10〜5×10個、ラクトバチルス・ブレビスの菌体数が5×10〜5×10個含まれていることが好ましい。
【0031】
そして、上記乳酸発酵物を、60〜80℃で、5〜10分間加熱殺菌し、必要に応じて、ガラクトオリゴ糖、ショ糖などの糖類や、果汁などを加えることで、液状のヒアルロニダーゼ活性阻害剤が得られる。
【0032】
また、加熱殺菌後の上記乳酸発酵物を乾燥、粉末化することで、粉末状のヒアルロニダーゼ活性阻害剤が得られる。加熱殺菌後の乳酸発酵物の乾燥方法としては、例えば熱風乾燥、噴霧乾燥、ドラム乾燥、真空乾燥などが挙げられるが、ポリフェノール類の破壊が少なく、優れた生理活性を維持し易いという理由から凍結乾燥が好ましい。凍結乾燥は、例えば、発酵物を−60〜−40℃で1〜3時間凍結し、圧力0.1mbr以下、時間24〜48時間、温度20〜30℃の条件で行うことが好ましい。
【0033】
また、粉末化した乳酸発酵物を、水、メタノールやエタノール等のアルコール等の抽出媒体を用いて抽出することで、乳酸発酵物の抽出物が得られる。抽出方法としては、粉末化した乳酸発酵物を抽出媒体に懸濁させ、20〜40℃で、2〜48時間振とうする方法等が挙げられる。
【0034】
このようにして得られる抽出物を、そのままあるいは固形物を濾過除去したものをヒアルロニダーゼ活性阻害剤として用いてもよく、更に、濃縮あるいは乾燥粉末化したものをヒアルロニダーゼ活性阻害剤として用いてもよい。
【0035】
本発明のヒアルロニダーゼ活性阻害剤は、ヒアルロニダーゼ活性阻害の点において優れた効果を示し、これを経口摂取することにより、加齢等に伴う生体内のヒアルロン酸の減少を抑制でき、皮膚の老化や関節痛等の疾患を抑制できる。そして、医薬品、食品等の各種分野で用いられ、医薬の有効成分、食品原料等として使用することができる。
【0036】
例えば、医薬品とする場合には、薬学的に許容される基材や担体と共に製剤化し、医薬組成物として提供することができる。医薬組成物の形態としては、丸剤、散剤、錠剤、顆粒剤、カプセル剤、シロップ剤、液剤、ゼリー剤、トローチ剤等の剤型が例示できる。
【0037】
また、本発明のヒアルロニダーゼ活性阻害剤を飲食品に添加して摂取する場合には、一般の食品の他、特定保健用食品、栄養補助食品、機能性食品等に配合して用いることができる。
【0038】
本発明のヒアルロニダーゼ活性阻害剤の有効摂取量は、成人一日当り、固形分換算で100mg〜3gが好ましい。
【実施例】
【0039】
以下、実施例を用いて、本発明を具体的に説明する。
【0040】
[測定方法]
・総ポリフェノールの測定方法
試料100mgを80%メタノール10mlに溶解させ、振とうしながら3時間、室温で抽出した。抽出液を1/5濃度に希釈した溶液について、没食子酸を標準物質としたFolin−Ciocalteu法で測定した。
【0041】
・DPPHラジカル消去活性の測定方法
試料100mgを80%メタノール10mlに溶解させ、振とうしながら3時間、室温で抽出した。抽出液を50〜200倍に希釈した溶液について、DPPHラジカル消去活性を須田らの方法に従い測定した。
すなわち、測定溶液2mlに200mM MES(2−Morpholinoethanesulphonic acid)緩衝液(pH6.0)1ml、蒸留水200μl、50%メタノール800μlを順次加えた溶液に、200μM DPPH(1,1−diphenyl−2−picrylhydrazyl)メタノール溶液を1ml添加し、室温で20分放置した後520nmの吸光度を測定した。
標準物質としてTroloxを用い、検量線を作成してTrolox相当量で表した。
【0042】
・ヒアルロニダーゼ活性阻害率の測定方法
試料100μlにヒアルロニダーゼ(牛睾丸由来850U/mg、シグマ社)40Uを、酢酸緩衝液50μlに溶解して添加し、37℃、20分間反応させた。次に、酢酸緩衝液に0.01%濃度に溶解したCompound48/80(ナカライテスク社)溶液100μlを添加し、37℃、20分間加温した。次に、ヒアルロン酸ナトリウム(和光純薬工業社)を、酢酸緩衝液に0.08%濃度に溶解し、その250μlを添加して、37℃、40分間反応させた。反応後、0.4N−NaOH溶液100μlを添加して、反応を停止させた。次に、9.9%濃度に溶解したホウ酸溶液(1N−NaOH溶液でpH9.1に調整)100μlを氷冷下で添加した後、沸騰水中で3分間加熱した。次に、p−ジメチルアミノベンズアルデヒド試薬(p−ジメチルアミノベンズアルデヒドの10g、10N−HClの12.5ml、酢酸の87.5mlを混合し、使用直前に酢酸で10倍に希釈したもの)3mlを添加し、37℃、20分間加温した後、585nmの吸光度を測定した。
ヒアルロニダーゼを添加しないものをブランクとし、試料を添加しないものをコントロールとし、下式によりヒアルロニダーゼ活性阻害率を求めた。
ヒアルロニダーゼ活性阻害率(%)
=〔(A−B)−(C−D)〕/(A−B)×100
A;コントロールの吸光度
B;コントロールのブランクの吸光度
C;試料の吸光度
D;試料のブランクの吸光度
【0043】
(実施例1)
甲州種のブドウ果皮及び種子を1kgに、1Lの水を加え、微粒磨砕機を用いて湿式粉砕し、粒径100μm以下のブドウ粉砕物を得た。このブドウ粉砕物の総ポリフェノール含有量は、没食子酸相当量で10mgであり、DPPHラジカル消去活性は、Trolox相当量で67μmolであった。
上記ブドウ粉砕物2kgに、水1Lを加え、pHを6とし、120℃、20分間加熱殺菌して培地を調製した。
上記培地に、ラクトバチルス・プランタルムを5ml(菌体数5×10個)、ラクトバチルス・ブレビスを5ml(菌体数5×10個)を加え、培養温度を33±1℃に維持し、48時間発酵した。
発酵終了後、70℃で10分間加熱殺菌し、−40℃に凍結させた後、圧力0.1mbr以下、24時間、30℃の条件で凍結乾燥して、粉末状のブドウの乳酸発酵物を250g得た。このブドウの乳酸発酵物100mg中には、ラクトバチルス・プランタルムの死菌体が5×10個、ラクトバチルス・ブレビスの死菌体が5×10個含まれていた。また、総ポリフェノール含有量は、没食子酸相当量で23mgであり、DPPHラジカル消去活性は、Trolox相当量で242μmolであった。
上記粉末状のブドウの乳酸発酵物の100mgを、含水メタノール(水20%、メタノール80%)の10mlに懸濁させ、室温(25℃)で4時間振とうして抽出を行った。抽出後、懸濁液を濾過処理して固形物が除去された抽出液を得た。この抽出液を、エバポレーターを使ってメタノールを除去し、0.1M酢酸緩衝液(pH4.0)で全量を10mlに調整して、ヒアルロニダーゼ活性阻害剤(ブドウの乳酸発酵物のメタノール抽出物)を得た。
このヒアルロニダーゼ活性阻害剤のヒアルロニダーゼ活性阻害率は、0.2mg/ml濃度のもので46%であり、0.5mg/ml濃度のもので68%であり、0.8mg/ml濃度のもので87%であった。
【0044】
(実施例2)
実施例1において、培地に、ラクトバチルス・ブレビスを5ml(菌体数5×10個)加え、培養温度を33±1℃に維持し、48時間発酵した以外は、実施例1と同様にしてヒアルロニダーゼ活性阻害剤(ブドウの乳酸発酵物のメタノール抽出物)を得た。
このヒアルロニダーゼ活性阻害剤のヒアルロニダーゼ活性阻害率は、0.5mg/ml濃度のもので62%であった。
【0045】
(実施例3)
実施例1において、培地に、ラクトバチルス・プランタルムを5ml(菌体数5×10個)加え、培養温度を33±1℃に維持し、48時間発酵した以外は、実施例1と同様にしてヒアルロニダーゼ活性阻害剤(ブドウの乳酸発酵物のメタノール抽出物)を得た。
このヒアルロニダーゼ活性阻害剤のヒアルロニダーゼ活性阻害率は、0.5mg/ml濃度のもので58%であった。
【0046】
(比較例1)
実施例1で用いたブドウ粉砕物2kgに、水1Lを加え、pHを6とし、120℃、20分間加熱殺菌して培地を調製した。この培地を−40℃に凍結させた後、圧力0.1mbr以下、24時間、30℃の条件で凍結乾燥して凍結乾燥物を得た。得られた凍結乾燥物100mgを、含水メタノール(水20%、メタノール80%)の10mlに懸濁させ、室温(25℃)で4時間振とうして抽出を行った。抽出後、懸濁液を濾過処理して固形物が除去された抽出液を得た。この抽出液を、エバポレーターを使ってメタノールを除去し、0.1M酢酸緩衝液(pH4.0)で全量を10mlに調整してヒアルロニダーゼ活性阻害剤を得た。このヒアルロニダーゼ活性阻害剤のヒアルロニダーゼ活性阻害率は、0.2mg/ml濃度のもので22%であり、0.5mg/ml濃度のもので35%、0.8mg/ml濃度のもので35%であった。
【0047】
実施例1〜3及び比較例1の試験結果を図1にまとめて記す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブドウの乳酸発酵物及び/又はその抽出物を有効成分として含有することを特徴とするヒアルロニダーゼ活性阻害剤。
【請求項2】
前記乳酸発酵物は、ブドウを、ラクトバチルス・プランタルム及び/又はラクトバチルス・ブレビスを少なくとも含む乳酸菌で発酵して得られたものである、請求項1に記載のヒアルロニダーゼ活性阻害剤。
【請求項3】
前記乳酸発酵物は、ブドウを、ラクトバチルス・プランタルム及びラクトバチルス・ブレビスを少なくとも含む乳酸菌で発酵して得られたものである、請求項2に記載のヒアルロニダーゼ活性阻害剤。
【請求項4】
前記抽出物が、水抽出物及び/又はアルコール抽出物である請求項1〜3のいずれか1項に記載のヒアルロニダーゼ活性阻害剤。
【請求項5】
ブドウの種子及び/又は果皮を原料とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載のヒアルロニダーゼ活性阻害剤。

【図1】
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【公開番号】特開2013−100243(P2013−100243A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−244375(P2011−244375)
【出願日】平成23年11月8日(2011.11.8)
【出願人】(597106806)日本・バイオ株式会社 (4)
【Fターム(参考)】