説明

ヒアルロン酸またはその塩およびプロピレングリコールを含有する点眼液

【課題】ベンザルコニウム塩化物濃度を減少させつつも十分な保存効力を有し、且つ従来のヒアルロン酸ナトリウム含有点眼液と同じ物理化学的性質を有する点眼液を探索する。
【解決手段】0.03〜0.5%(w/v)の濃度のヒアルロン酸またはその塩および0.1〜1.0%(w/v)の濃度のプロピレングリコールを含有する水性点眼液であって、該点眼液が0.001〜0.002%(w/v)の濃度のベンザルコニウム塩化物を唯一の防腐剤として含有し、且つ該点眼液の浸透圧比を0.9〜1.1とする濃度のイオン性等張化剤を含有する点眼液。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、0.03〜0.5%(w/v)の濃度のヒアルロン酸またはその塩および0.1〜1.0%(w/v)の濃度のプロピレングリコールを含有する水性点眼液であって、該点眼液が0.001〜0.002%(w/v)の濃度のベンザルコニウム塩化物を唯一の防腐剤として含有し、且つ該点眼液の浸透圧比を0.9〜1.1とする濃度のイオン性等張化剤を含有する点眼液に関する。また、本発明は、0.1または0.3%(w/v)の濃度のヒアルロン酸ナトリウムおよび唯一の防腐剤としてベンザルコニウム塩化物を含有する水性点眼液の保存効力を向上させると共に、該点眼液の動粘度を3.0〜4.0または17〜30mm/sとし、且つ該点眼液の液ダレを防止する方法であって、該点眼液中の濃度が0.1または0.3%(w/v)となる量のヒアルロン酸ナトリウム、該点眼液中の濃度が0.001〜0.002%(w/v)となる量のベンザルコニウム塩化物、該点眼液中の濃度が0.1〜1.0%(w/v)となる量のプロピレングリコール、および該点眼液の浸透圧比が0.9〜1.1となる量のイオン性等張化剤を混合するステップ(a)、該点眼液のpHを6.0〜7.0に調整するステップ(b)、および該点眼液を点眼容器に充填するステップ(c)を含む方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
ドライアイは目が乾く、ゴロゴロするという不快感程度の症状から始まり、悪化すると日常生活に多大な支障をきたす疾患である。ドライアイ患者数は、高齢化社会の到来やパソコンなどのVDT(video display terminal)作業の増大に伴い年々増加しており、米国内の推定患者数は1,000万人以上、わが国においても800万人以上と言われている。
【0003】
ドライアイの病態については完全には明らかとなっていないものの、ドライアイは角結膜上皮障害を引き起こし、究極的には視覚異常が生じることが知られている。したがってドライアイによる角結膜上皮障害を早期且つ適切に治療することは極めて重要である。
【0004】
現在、ドライアイの治療法としては点眼治療が最も一般的であり、我が国においては、ヒアルロン酸ナトリウムを含有する点眼液がドライアイ治療に汎用されている。
【0005】
ヒアルロン酸ナトリウムを含有する点眼液(以下、単に「ヒアルロン酸ナトリウム点眼液」ともいう)については、複数回にわたり使用することを目的とし、キャップなどの開封および再封を自由に行うことができるマルチドーズ型(ヒアレイン(登録商標)点眼液0.1%、ヒアレイン(登録商標)点眼液0.3%など)、および単回の使用を目的としたユニットドーズ型(ヒアレイン(登録商標)ミニ点眼液0.1%、ヒアレイン(登録商標)ミニ点眼液0.3%など)が存在する。
【0006】
マルチドーズ型のヒアルロン酸ナトリウム点眼液については、キャップの開封および再封を行うことから防腐剤としてベンザルコニウム塩化物が添加されている一方、ユニットドーズ型は単回の使用(使いきり)であるので、防腐剤は添加されていない。
【0007】
ベンザルコニウム塩化物などの防腐剤は角膜障害を誘発する危険性が指摘されており、例えば、ベンザルコニウム塩化物については、Clinical and Experimental Ophthalmology, 32, 180−184(2004)(非特許文献1)に開示されているように、濃度依存的に角膜上皮障害を引き起こす可能性があることが知られている。前述したようにドライアイがそもそも角膜上皮障害を伴う疾患であることから、重篤なドライアイ患者にはユニットドーズ型のヒアルロン酸ナトリウム点眼液が用いられている。一方で、生産コストの問題などから、全てのドライアイ患者にユニットドーズ型のヒアルロン酸ナトリウム点眼液を処方することは困難であるため、マルチドーズ型の点眼液中の防腐剤濃度を減少させることで角膜上皮障害の発生リスクを低減化することも考えられる。しかしながら、実際には、点眼液中の防腐剤濃度を減少させればマルチドーズ型として使用するのに十分な保存効力が得られず、また、防腐剤の低減化に伴う配合成分の変化により、該点眼液の物理化学的性質が従来のヒアルロン酸ナトリウム点眼液から異なるものとなることも危惧される。
【0008】
ところで、特開2004−359629号公報(特許文献1)、特開2009−196903号公報(特許文献2)、特開2009−161454号公報(特許文献3)には、ヒアルロン酸ナトリウム、ベンザルコニウム塩化物およびプロピレングリコールを含有する点眼剤が開示されてはいるが、該点眼液中のベンザルコニウム塩化物濃度が0.0025%以下でありながら十分な保存効力を有し、且つ従来のヒアルロン酸ナトリウム点眼液と同じ物理化学的性質を有するものについては、一切記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2004−359629号公報
【特許文献2】特開2009−196903号公報
【特許文献3】特開2009−161454号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Clinical and Experimental Ophthalmology, 32, 180−184(2004)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
以上のように、ベンザルコニウム塩化物濃度を減少させつつも十分な保存効力を有し、且つ従来のヒアルロン酸ナトリウム点眼液と同じ物理化学的性質を有する点眼液を探索することは興味深い課題である。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、0.002%(w/v)ベンザルコニウム塩化物が添加されたヒアルロン酸ナトリウム点眼液では十分な保存効力が得られない一方、プロピレングリコールを添加した場合には、ベンザルコニウム塩化物濃度を0.001%(w/v)まで低減化しても十分な保存効力が得られることを見出した。
【0013】
一方で、本発明者らは、ヒアルロン酸ナトリウム点眼液に添加するプロピレングリコールを1%(w/v)超とすると、「2010年11月(改訂第7版) ヒアレイン(登録商標)点眼液0.1%、ヒアレイン(登録商標)点眼液0.3%、ヒアレイン(登録商標)ミニ点眼液0.1%、ヒアレイン(登録商標)ミニ点眼液0.3% 医薬品インタビューフォーム(以下、「ヒアレインインタビューフォーム」ともいう)」に記載のヒアルロン酸ナトリウム点眼液の動粘度および/または浸透圧比の許容幅を超えることを見出し、プロピレングリコールの添加量の上限を1%(w/v)とする本発明を完成させるに至った。
【0014】
さらに、本発明者らは、後述するように、プロピレングリコール含有ヒアルロン酸ナトリウム点眼液が液ダレし難く、また角膜上皮細胞を乾燥から保護するという効果を併せもつことをも見出した。
【0015】
すなわち、本発明は、0.03〜0.5%(w/v)の濃度のヒアルロン酸またはその塩および0.1〜1.0%(w/v)の濃度のプロピレングリコールを含有する水性点眼液であって、該点眼液が0.001〜0.002%(w/v)の濃度のベンザルコニウム塩化物を唯一の防腐剤として含有し、且つ該点眼液の浸透圧比を0.9〜1.1とする濃度のイオン性等張化剤を含有する点眼液(以下、単に「本点眼液」ともいう)である。
【0016】
また、本発明の他の態様は、pHを6.0〜7.0とする量の緩衝剤およびpH調節剤を含有する本点眼液である。
【0017】
また、本発明の他の態様は、0.001〜0.1%(w/v)の濃度のエデト酸塩を含有する本点眼液である。
【0018】
また、本発明の他の態様は、ヒアルロン酸またはその塩の濃度が0.1〜0.3%(w/v)である本点眼液である。
【0019】
また、本発明の他の態様は、プロピレングリコールの濃度が0.25〜0.75%(w/v)である本点眼液である。
【0020】
また、本発明の他の態様は、ベンザルコニウム塩化物の濃度が0.001〜0.0015%(w/v)である本点眼液である。
【0021】
また、本発明の他の態様は、0.03〜0.5%(w/v)の濃度のヒアルロン酸またはその塩、0.1〜1.0%(w/v)の濃度のプロピレングリコール、0.001〜0.002%(w/v)の濃度のベンザルコニウム塩化物、点眼液の浸透圧比を0.9〜1.1とする濃度のイオン性等張化剤、点眼液のpHを6.0〜7.0とする量の緩衝剤およびpH調節剤、並びに0.001〜0.1%(w/v)の濃度のエデト酸塩から実質的になる水性点眼液、である。
【0022】
また、本発明の他の態様は、0.1〜0.3%(w/v)の濃度のヒアルロン酸またはその塩、0.25〜0.75%(w/v)の濃度のプロピレングリコール、0.001〜0.0015%(w/v)の濃度のベンザルコニウム塩化物、点眼液の浸透圧比を0.9〜1.1とする濃度のイオン性等張化剤、点眼液のpHを6.0〜7.0とする量の緩衝剤およびpH調節剤、並びに0.001〜0.1%(w/v)の濃度のエデト酸塩から実質的になる水性点眼液、である。
【0023】
また、本発明は、0.1または0.3%(w/v)の濃度のヒアルロン酸ナトリウムおよび唯一の防腐剤としてベンザルコニウム塩化物を含有する水性点眼液の保存効力を向上させると共に、該点眼液の同粘度を3.0〜4.0または17〜30mm/sとし、且つ該点眼液の液ダレを防止する方法であって、該点眼液中の濃度が0.1または0.3%(w/v)となる量のヒアルロン酸ナトリウム、該点眼液中の濃度が0.001〜0.002%(w/v)となる量のベンザルコニウム塩化物、該点眼液中の濃度が0.1〜1.0%(w/v)となる量のプロピレングリコール、および該点眼液の浸透圧比が0.9〜1.1となる量のイオン性等張化剤を混合するステップ(a)、該点眼液のpHを6.0〜7.0に調整するステップ(b)、および該点眼液を点眼容器に充填するステップ(c)を含む方法(以下、これらを総称して単に「本方法」ともいう)でもある。
【0024】
また、本方法のステップ(a)においては、さらに該点眼液中の濃度が0.001〜0.1%(w/v)となる量のエデト酸塩を混合することが好ましい。
【0025】
また、本方法のステップ(a)においては、該点眼液中の濃度が0.25〜0.75%(w/v)となる量のプロピレングリコールを混合することが好ましい。
【0026】
また、本方法のステップ(a)においては、該点眼液中の濃度が0.001〜0.0015%(w/v)となる量のベンザルコニウム塩化物を混合することが好ましい。
【発明の効果】
【0027】
本点眼液は、該点眼液中のベンザルコニウム塩化物濃度が0.002%(w/v)以下であるにも関らず、プロピレングリコールを含有することで十分な保存効力を奏する一方、ヒアルロン酸またはその塩を含有する点眼液(以下、単に「ヒアルロン酸点眼液」ともいう)として許容される動粘度および浸透圧比を有する。さらに、後述する液ダレ確認試験および角膜上皮細胞保護作用確認試験の結果から明らかなように、本点眼液は液ダレし難く、また角膜上皮細胞を乾燥から保護するという効果をも併せもつ。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】プロピレングリコール含有ヒアルロン酸ナトリウム点眼液が乾燥負荷による角膜上皮細胞障害に及ぼす影響を示すグラフであり、縦軸は生細胞活性である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本点眼液は、0.03〜0.5%(w/v)の濃度のヒアルロン酸またはその塩および0.1〜1.0%(w/v)の濃度のプロピレングリコールを含有する水性点眼液であって、該点眼液が0.001〜0.002%(w/v)の濃度のベンザルコニウム塩化物を唯一の防腐剤として含有し、且つ該点眼液の浸透圧比を0.9〜1.1とする濃度のイオン性等張化剤を含有することを特徴とする。なお、本発明において「水性点眼液」とは水を基剤とする点眼液を意味する。
【0030】
本点眼液は、ドライアイ(眼球乾燥症候群)、シェーグレン症候群、スティーブンス・ジョンソン症候群などの内因性疾患に伴う角結膜上皮障害のみならず、術後、薬剤性、外傷、コンタクトレンズ装用などによる外因性疾患に伴う角結膜上皮障害の治療にも用いることができる。このような本点眼液は、該点眼液中のベンザルコニウム塩化物濃度が0.002%(w/v)以下であるにも関らず、プロピレングリコールを含有することで十分な保存効力を奏する一方、ヒアルロン酸点眼液として許容される動粘度および浸透圧比を有する。さらに本点眼液は、液ダレし難く、また角膜上皮細胞を乾燥から保護するという効果をも併せもつ。
【0031】
本発明におけるヒアルロン酸は、下記一般式(1)で示される化合物である。
【0032】
【化1】

【0033】
[式中、nは自然数を示す]
本発明における「ヒアルロン酸」として好ましいのは、平均分子量が50万〜390万のヒアルロン酸であり、さらに好ましいのは、平均分子量が50万〜120万のヒアルロン酸である。
【0034】
ヒアルロン酸の塩としては、医薬として許容される塩であれば特に制限はなく、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硝酸、硫酸、リン酸などの無機酸との塩、酢酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、クエン酸、酒石酸、アジピン酸、グルコン酸、グルコヘプト酸、グルクロン酸、テレフタル酸、メタンスルホン酸、乳酸、馬尿酸、1,2−エタンジスルホン酸、イセチオン酸、ラクトビオン酸、オレイン酸、パモ酸、ポリガラクツロン酸、ステアリン酸、タンニン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、硫酸ラウリルエステル、硫酸メチル、ナフタレンスルホン酸、スルホサリチル酸などの有機酸との塩;臭化メチル、ヨウ化メチルなどとの四級アンモニウム塩;臭素イオン、塩素イオン、ヨウ素イオンなどのハロゲンイオンとの塩;リチウム、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属との塩;カルシウム、マグネシウムなどのアルカリ土類金属との塩;鉄、亜鉛などとの金属塩;アンモニアとの塩;トリエチレンジアミン、2−アミノエタノール、2,2−イミノビス(エタノール)、1−デオキシ−1−(メチルアミノ)−2−D−ソルビトール、2−アミノ−2−(ヒドロキシメチル)−1,3−プロパンジオール、プロカイン、N,N−ビス(フェニルメチル)−1,2−エタンジアミンなどの有機アミンとの塩などが挙げられる。
【0035】
本発明における「ヒアルロン酸の塩」としては、下記一般式(2)で示されるナトリウム塩(以下、「ヒアルロン酸ナトリウム」ともいう)が好ましい。
【0036】
【化2】

【0037】
[式中、mは自然数を示す]
本発明における「ヒアルロン酸またはその塩」は、水和物または溶媒和物の形態をとっていてもよい。
【0038】
ヒアルロン酸に幾何異性体または光学異性体が存在する場合は、当該異性体またはそれらの塩も本発明の範囲に含まれる。また、ヒアルロン酸にプロトン互変異性が存在する場合には、当該互変異性体またはそれらの塩も本発明の範囲に含まれる。
【0039】
ヒアルロン酸またはその塩、水和物もしくは溶媒和物に、結晶多形および結晶多形群(結晶多形システム)が存在する場合には、それらの結晶多形体および結晶多形群(結晶多形システム)も本発明の範囲に含まれる。ここで、結晶多形群(結晶多形システム)とは、それら結晶の製造、晶出、保存などの条件および状態(なお、本状態には製剤化した状態も含む)により、結晶形が変化する場合の各段階における個々の結晶形およびその過程全体を意味する。
【0040】
「ヒアルロン酸またはその塩」は、有機合成化学の分野における通常の方法に従って製造することもできるし、特開平1−115902号公報に記載された方法に従って製造することもできる。また、本発明の「ヒアルロン酸またはその塩」は、Sigma社などにより市販されているものを用いることもでき、例えば、「ヒアルロン酸ナトリウム」はSigma社から市販されている(カタログ番号:H5388)。
【0041】
本点眼液は「ヒアルロン酸またはその塩」以外の有効成分を含有することもできるが、好ましくは、「ヒアルロン酸またはその塩」を唯一の有効成分として含有する。
【0042】
本点眼液中の「ヒアルロン酸またはその塩」の濃度は、0.03〜0.5%(w/v)であり、好ましくは0.1〜0.3%(w/v)であり、さらに好ましくは0.1%(w/v)または0.3%(w/v)である。
【0043】
前記「ヒアルロン酸またはその塩の濃度」は、「ヒアルロン酸(フリー体)」および「ヒアルロン酸の塩」の濃度の両方を意味するものとする。例えば、「0.1%(w/v)ヒアルロン酸またはその塩」とは、点眼液中の「ヒアルロン酸(フリー体)」の濃度が0.1%(w/v)である場合と、「ヒアルロン酸の塩」の濃度が0.1%(w/v)である場合の両方を意味する。
【0044】
本点眼液中の「プロピレングリコール」の濃度は、0.1〜1.0%(w/v)であり、好ましくは0.25〜0.75%(w/v)である。
【0045】
ベンザルコニウム塩化物は、下記一般式(3)で示される化合物である。
【0046】
【化3】

【0047】
[式中、Rは炭素数8〜18のアルキル基を示す。]
本発明の「ベンザルコニウム塩化物」として好ましいのは、上記一般式(3)においてRが「C1225」を示すもの(以下、「ベンザルコニウム塩化物(C12)」ともいう)である。
【0048】
本点眼液中の「ベンザルコニウム塩化物」の濃度は、0.001〜0.002%(w/v)であり、好ましくは0.001〜0.0015%(w/v)である。
【0049】
本発明において、「ベンザルコニウム塩化物を唯一の防腐剤として含有する」とは、本点眼液がベンザルコニウム塩化物を含有する一方で、ベンゼトニウム塩化物、クロルヘキシジングルコン酸塩、パラベン類、ソルビン酸およびその塩、クロロブタノール、ホウ酸、ホウ砂ならびに亜塩素酸塩のいずれをも含有しないことを意味する。
【0050】
本発明において、「点眼液の浸透圧比を0.9〜1.1とする濃度のイオン性等張化剤を含有する」とは、本点眼液に、プロピレングリコールなどに加えて、イオン性等張化剤をさらに添加することで、本点眼液の浸透圧比が「0.9〜1.1」の範囲に調整されることを意味する。なお、本点眼液の浸透圧比は自動浸透圧分析装置を用いて容易に測定することができる。
【0051】
本発明に用いられるイオン性等張化剤とは、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウムなどのイオン性の等張化剤を意味する。
【0052】
本点眼液は、該点眼液のpHを6.0〜7.0とする量の緩衝剤およびpH調節剤を含有することが好ましい。本発明において、「点眼液のpHを6.0〜7.0とする量の緩衝剤およびpH調節剤を含有する」とは、本点眼液に緩衝剤およびpH調節剤を添加することで、本点眼液のpHが「6.0〜7.0」の範囲に調整されることを意味しており、本点眼液のpHを該範囲に調整できるのであれば、緩衝剤およびpH調節剤の添加量(濃度)は特に限定されない。
【0053】
本発明における「緩衝剤」の具体例としては、リン酸ナトリウム、リン酸水素ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、酢酸ナトリウム、イプシロン−アミノカプロン酸などを挙げることができるが、イプシロン−アミノカプロン酸が特に好ましい。ただし、ホウ酸およびホウ砂は本発明における「緩衝剤」には含まれない。
【0054】
本発明における「pH調節剤」としては、本点眼液のpHを調節できるものであれば特に限定されないが、具体例としては、希塩酸、水酸化ナトリウムなどを挙げることができる。
【0055】
本点眼液は、従来のヒアルロン酸ナトリウム点眼液と同程度の動粘度を有する。例えば、本点眼液中のヒアルロン酸またはその塩の濃度が0.1%(w/v)の場合、その動粘度は、ヒアレイン(登録商標)点眼液0.1%またはヒアレイン(登録商標)ミニ点眼液0.1% 医薬品インタビューフォームに記載された「3.0〜4.0mm/s」の範囲内にある。また、本点眼液中のヒアルロン酸またはその塩の濃度が0.3%(w/v)の場合、その動粘度は、ヒアレイン(登録商標)点眼液0.3%またはヒアレイン(登録商標)ミニ点眼液0.3% 医薬品インタビューフォームに記載された「17〜30mm/s」の範囲内にある。
【0056】
本点眼液は、0.001〜0.1%(w/v)の濃度のエデト酸塩を含有することが好ましい。ここで、本発明における「エデト酸塩」とは、エデト酸一ナトリウム、エデト酸二ナトリウム、エデト酸三ナトリウム、エデト酸四ナトリウムなどのエデト酸(エチレンジアミン四酢酸)の塩およびこれらの水和物を意味する。本発明の「エデト酸塩」として好ましいのは、エデト酸二ナトリウム二水和物(以下、「エデト酸ナトリウム水和物」ともいう)である。
【0057】
本点眼液には、必要に応じて製薬学的に許容される添加剤を添加することができるが、本点眼液は、好ましくは、含有されることが明記されていない添加剤であって、本点眼液の効果に影響を及ぼすものを含有せず、さらに好ましくは、含有されることが明記されていない添加剤を含有しない。
【0058】
本発明は、上述した本点眼液の好ましい態様として、0.03〜0.5%(w/v)の濃度のヒアルロン酸またはその塩、0.1〜1.0%(w/v)の濃度のプロピレングリコール、0.001〜0.002%(w/v)の濃度のベンザルコニウム塩化物、点眼液の浸透圧比を0.9〜1.1とする濃度のイオン性等張化剤、点眼液のpHを6.0〜7.0とする量の緩衝剤およびpH調節剤、並びに0.001〜0.1%(w/v)の濃度のエデト酸塩から実質的になる水性点眼液を提供する。本態様の水性点眼液においても、ヒアルロン酸またはその塩の濃度が0.1〜0.3%(w/v)であり、プロピレングリコールの濃度が0.25〜0.75%(w/v)であり、ベンザルコニウム塩化物の濃度が0.001〜0.0015%(w/v)であることが好ましい。
【0059】
本方法において、「保存効力を向上させる」とは、0.002%(w/v)以下の濃度のベンザルコニウム塩化物を含有するヒアルロン酸ナトリウム点眼液について、防腐剤の添加量を増大させることなしに、該点眼液を規定の保存効力試験(例えば、第十五改正日本薬局方の保存効力試験)に合格せしめることを意味する。
【0060】
本方法において、「液ダレを防止する」とは、ヒアルロン酸ナトリウム点眼液を点眼容器に充填した後、点眼操作を行った場合に、プロピレングリコールを含有しないヒアルロン酸ナトリウム点眼液と比較して、点眼液が点眼容器の先端から外部につたってしまう現象(液ダレ)の発生頻度を低減せしめることを意味する。
【0061】
本方法のステップ(a)においては、ヒアルロン酸ナトリウム、ベンザルコニウム塩化物、プロピレングリコールおよびイオン性等張化剤以外の成分を混合することもできるが、特に、ヒアルロン酸ナトリウム点眼液中の濃度が0.001〜0.1%(w/v)となる量のエデト酸塩を混合することが好ましい。
【0062】
本方法のステップ(b)は、ヒアルロン酸ナトリウム点眼液に緩衝剤およびpH調節剤を添加して、そのpHを「6.0〜7.0」の範囲に調整することを意味する。ヒアルロン酸ナトリウム点眼液のpHを該範囲に調整できるのであれば、緩衝剤およびpH調節剤の添加量(濃度)は特に限定されない。
【0063】
本方法のステップ(c)において、ヒアルロン酸ナトリウム点眼液を充填する点眼容器は、通常、点眼容器として用いられる容器であれば特に限定されないが、ポリエチレン製点眼容器が特に好ましい。
【0064】
本方法においては、ステップ(a)、(b)および(c)以外のステップを含むこともできる。
【0065】
以下に、保存効力試験、動粘度測定試験、液ダレ確認試験および角膜上皮細胞保護作用確認試験の結果ならびに製剤例を示すが、これらの例は本発明をよりよく理解するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。
【実施例】
【0066】
[保存効力試験]
プロピレングリコールがヒアルロン酸点眼液の保存効力に与える影響を確認するため、保存効力試験を行った。
【0067】
(試料調製)
<比較処方1、2>
ヒアルロン酸ナトリウム0.3g、塩化ナトリウム0.7g、塩化カリウム0.15g、イプシロン−アミノカプロン酸0.2g、エデト酸ナトリウム水和物0.01gおよびベンザルコニウム塩化物(C12)0.0025gを水に溶解して100mLとし、希塩酸および/または水酸化ナトリウムを添加してpH6.0としたものを比較処方1、pH7.0としたものを比較処方2とした。
【0068】
<比較処方3、4>
ベンザルコニウム塩化物(C12)の添加量を0.002gとした点を除いては上記比較処方1および2と同様にして調製された。
【0069】
<処方1>
ヒアルロン酸ナトリウム0.3g、塩化ナトリウム0.7g、プロピレングリコール0.25g、イプシロン−アミノカプロン酸0.2g、エデト酸ナトリウム水和物0.01gおよびベンザルコニウム塩化物(C12)0.001gを水に溶解して100mLとし、希塩酸および/または水酸化ナトリウムを添加してpH6.0とした。
【0070】
<処方2>
ヒアルロン酸ナトリウムの添加量を0.1g、ベンザルコニウム塩化物(C12)の添加量を0.0012gとした点を除いては上記処方1と同様にして調製された。
【0071】
(試験方法)
保存効力試験は、第十五改正日本薬局方(以下、単に「日本薬局方」ともいう)の保存効力試験法に準拠して行った。本試験では、試験菌として、Esherichia Coli(E.coli)、Pseudomonas aeruginosa(P.aeruginosa)、Staphylococcus aureus(S.aureus)、Candida albicans(C.albicans)およびAspergillus niger(A.niger)を用いた。
【0072】
(試験結果)
試験結果を表1に示す。表1中、「N.D.」は、菌が検出されなかったことを示す。
【0073】
【表1】

【0074】
(考察)
表1に示された通り、ヒアルロン酸ナトリウム点眼液は、0.0025%(w/v)ベンザルコニウム塩化物存在下では許容されるpHの範囲内(pH6.0および7.0)において、「日本薬局方 参考情報 保存効力試験 カテゴリーIA」の判定基準に適合したが、0.002%(w/v)ベンザルコニウム塩化物存在下ではpH6.0において同判定基準に不適合であり、十分な保存効力を有さないことが明らかとなった。次いで、0.25%(w/v)プロピレングリコール存在下で、保存効力がより弱くなるpH6.0における保存効力を評価したところ、0.1%(w/v)ヒアルロン酸ナトリウム点眼液では、ベンザルコニウム塩化物濃度0.0012%(w/v)で「日本薬局方 参考情報 保存効力試験 カテゴリーIA」の判定基準に適合し、また、0.3%(w/v)ヒアルロン酸ナトリウム点眼液では、ベンザルコニウム塩化物濃度0.001%(w/v)でも同基準に適合し、それぞれ十分な保存効力を有することが明らかとなった。以上から、ヒアルロン酸点眼液では、プロピレングリコールを添加することで、ベンザルコニウム塩化物濃度を0.002%(w/v)以下としても十分な保存効力を奏することが示された。
【0075】
[動粘度測定試験]
プロピレングリコールを配合したヒアルロン酸点眼液の浸透圧比を0.9〜1.1に調整した場合の該点眼液の動粘度を確認するため、動粘度測定試験を行った。
【0076】
(試料調製)
<比較処方>
ヒアルロン酸ナトリウム0.3g、イプシロン−アミノカプロン酸0.2g、塩化ナトリウム0.8g、ベンザルコニウム塩化物(C12)0.0015gおよびエデト酸ナトリウム水和物0.01gを水に溶解して100mLとし、希塩酸および/または水酸化ナトリウムを添加してpH6.5、浸透圧比1.0としたものを比較処方とした。
【0077】
<処方1〜5>
塩化ナトリウムとプロピレングリコールの添加量を適宜変化させて浸透圧比を1.0に調整した点(表2参照)を除いては、上記比較処方と同様にして調製された。
【0078】
(試験方法)
ヒアレインインタビューフォームの4頁には、0.3%(w/v)ヒアルロン酸ナトリウム点眼液の浸透圧比および動粘度の許容幅が、それぞれ「0.9〜1.1」および「17〜30mm/s」であることが記載されている。そこで、プロピレングリコールおよびイオン性等張化剤を用いてヒアルロン酸ナトリウム点眼液の浸透圧比を「0.9〜1.1」に調整した後、該点眼液の動粘度を測定した。なお、動粘度測定試験は、「日本薬局方 一般試験法 粘度測定法 第1法 毛細管粘度計法」に従い、測定温度30℃における動粘度を測定した。また、浸透圧比は、「日本薬局方 一般試験法 浸透圧測定法」に従い、自動浸透圧分析装置(アークレイ社製)を用いて測定した。
【0079】
(結果)
結果を表2に示す。
【0080】
【表2】

【0081】
(考察)
表2から明らかなように、プロピレングリコールの配合濃度が1%(w/v)以下では、0.3%(w/v)ヒアルロン酸ナトリウム点眼液の動粘度が許容範囲内(17〜30mm/s)となった一方、それ以上の濃度では動粘度の許容範囲を超えることが示された。また、上記結果より、プロピレングリコールの配合濃度が1%(w/v)以下であれば、0.1%(w/v)ヒアルロン酸ナトリウム点眼液の動粘度も許容範囲内(3.0〜4.0mm/s)となるものと推測される。以上より、ヒアルロン酸点眼液にプロピレングリコールを配合する場合、その配合濃度を1.0%(w/v)以下とする必要性があることが示された。
【0082】
[液ダレ確認試験]
プロピレングリコールがヒアルロン酸点眼液の液ダレに及ぼす影響を確認するため、液ダレ確認試験を行った。
【0083】
(試薬調製)
・プロピレングリコール非含有処方
市販の「ヒアレイン(登録商標)点眼液0.1%」を使用した。
【0084】
・プロピレングリコール含有処方
ヒアルロン酸ナトリウム(0.1g)、緩衝剤(イプシロン−アミノカプロン酸)、塩化ナトリウム、プロピレングリコール、ベンザルコニウム塩化物(C12)およびエデト酸ナトリウム水和物を水に溶解して100mL(浸透圧比:0.9〜1.1)とし、希塩酸および/または水酸化ナトリウムを添加してpH6.5とした。
【0085】
(試験方法)
ポリエチレン製点眼容器にプロピレングリコール非含有処方またはプロピレングリコール含有処方5mLを充填し、健常人5名が点眼時に行うのと同じ操作を6回ずつ実施した。操作毎に、液ダレ(点眼液が点眼容器の先端から外部につたってしまう現象)が生じたか否かを評価した。
【0086】
(結果)
結果を表3に示す。
【0087】
【表3】

【0088】
(考察)
表3から明らかなように、プロピレングリコール非含有処方では液ダレする場合があったのに対し、プロピレングリコール含有処方では液ダレは全く認められなかった。以上から、本点眼液では従来のプロピレングリコールが配合されていないヒアルロン酸点眼液に比べ、液ダレ性が改善していることが示された。
【0089】
[角膜上皮細胞保護作用確認試験]
プロピレングリコール含有ヒアルロン酸点眼液が乾燥負荷による角膜上皮細胞障害に及ぼす影響を検討するため、角膜上皮細胞保護作用確認試験を行った。
【0090】
(試験方法)
SV40不死化ヒト角膜上皮細胞:(HCE−T:理化学研究所、バイオリソースセンター、Cell No.:RCB2280)を96ウエルプレートに播種(1×10細胞/ウエル)し、SHEM培地で1日培養した。翌日、培地を0.25%(w/v)プロピレングリコール、0.03%(w/v)ヒアルロン酸ナトリウムまたは0.25%(w/v)プロピレングリコールおよび0.03%(w/v)ヒアルロン酸ナトリウム含有D−MEM/F12培地に交換した後、前記角膜上皮細胞を1時間培養した(以下、それぞれ、「プロピレングリコール単独群」、「ヒアルロン酸単独群」または「プロピレングリコール/ヒアルロン酸併用群」ともいう)。なお、被験物質不含有D−MEM/F12培地に交換した後、前記角膜上皮細胞を1時間培養した群を「基剤群」とした。培養後、各群の培地を被験物質不含有D−MEM/F12培地に交換してから、乾燥負荷を7.5分間行った。負荷後、Cell Proliferation Assay Kit)(Promega社製、カタログ番号:G3580)を用いて、生細胞活性(490nmの吸光度に相当する)を測定した。
【0091】
(結果)
試験結果を図1に示す。
【0092】
(考察)
図1から明らかなように、乾燥負荷による角膜上皮細胞の生細胞活性の低下(基剤群参照)は、プロピレングリコールまたはヒアルロン酸の単独処置では十分には抑制されなかった(プロピレングリコール単独群、ヒアルロン酸単独群参照)。一方で、プロピレングリコール/ヒアルロン酸ナトリウム併用群においては、驚くべきことに該生細胞活性の低下が有意に抑制されることが確認された。以上の結果より、プロピレングリコール含有ヒアルロン酸点眼液は、角膜上皮細胞を乾燥から保護する作用を有するものと考えられる。
【0093】
[製剤例]
製剤例を挙げて本発明の薬剤をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの製剤例にのみ限定されるものではない。
【0094】
(処方例1)
点眼剤(0.1%(w/v)) 100ml中
ヒアルロン酸ナトリウム 0.1g
イプシロンアミノカプロン酸 0.2g
塩化ナトリウム 0.6g
プロピレングリコール 0.5g
ベンザルコニウム塩化物(C12) 0.001〜0.002g
エデト酸ナトリウム水和物 0.001〜0.1g
希塩酸 適量
水酸化ナトリウム 適量
滅菌精製水 適量
滅菌精製水にヒアルロン酸ナトリウムおよびそれ以外の上記成分を加え、これらを十分に混合することで、pH6.0〜7.0、浸透圧比0.9〜1.1である0.1%(w/v)ヒアルロン酸ナトリウム点眼液を調製できる。
【0095】
(処方例2)
点眼剤(0.3%(w/v)) 100ml中
ヒアルロン酸ナトリウム 0.3g
イプシロンアミノカプロン酸 0.2g
塩化ナトリウム 0.5g
プロピレングリコール 0.75g
ベンザルコニウム塩化物(C12) 0.001〜0.002g
エデト酸ナトリウム水和物 0.001〜0.1g
希塩酸 適量
水酸化ナトリウム 適量
滅菌精製水 適量
滅菌精製水にヒアルロン酸ナトリウムおよびそれ以外の上記成分を加え、これらを十分に混合することで、pH6.0〜7.0、浸透圧比0.9〜1.1である0.3%(w/v)ヒアルロン酸ナトリウム点眼液を調製できる。
【産業上の利用可能性】
【0096】
本発明のヒアルロン酸点眼液は、該点眼液中のベンザルコニウム塩化物濃度が0.002%(w/v)以下であるにも関らず、プロピレングリコールを含有することで十分な保存効力を奏する一方、ヒアルロン酸点眼液として許容される浸透圧比および動粘度を有する。さらに、本発明のヒアルロン酸点眼液は液ダレし難く、また角膜上皮細胞を乾燥から保護するという効果をも併せもつため、より有効にドライアイを治療できる点眼液となることが期待される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
0.03〜0.5%(w/v)の濃度のヒアルロン酸またはその塩および0.1〜1.0%(w/v)の濃度のプロピレングリコールを含有する水性点眼液であって、該点眼液が0.001〜0.002%(w/v)の濃度のベンザルコニウム塩化物を唯一の防腐剤として含有し、且つ該点眼液の浸透圧比を0.9〜1.1とする濃度のイオン性等張化剤を含有する、点眼液。
【請求項2】
該点眼液のpHを6.0〜7.0とする量の緩衝剤およびpH調節剤を含有する、請求項1に記載の点眼液。
【請求項3】
0.001〜0.1%(w/v)の濃度のエデト酸塩を含有する、請求項1または2に記載の点眼液。
【請求項4】
ヒアルロン酸またはその塩の濃度が0.1〜0.3%(w/v)である、請求項1に記載の点眼液。
【請求項5】
プロピレングリコールの濃度が0.25〜0.75%(w/v)である、請求項1に記載の点眼液。
【請求項6】
ベンザルコニウム塩化物の濃度が0.001〜0.0015%(w/v)である、請求項1に記載の点眼液。
【請求項7】
0.03〜0.5%(w/v)の濃度のヒアルロン酸またはその塩、0.1〜1.0%(w/v)の濃度のプロピレングリコール、0.001〜0.002%(w/v)の濃度のベンザルコニウム塩化物、点眼液の浸透圧比を0.9〜1.1とする濃度のイオン性等張化剤、点眼液のpHを6.0〜7.0とする量の緩衝剤およびpH調節剤、並びに0.001〜0.1%(w/v)の濃度のエデト酸塩から実質的になる水性点眼液。
【請求項8】
ヒアルロン酸またはその塩の濃度が0.1〜0.3%(w/v)であり、プロピレングリコールの濃度が0.25〜0.75%(w/v)であり、ベンザルコニウム塩化物の濃度が0.001〜0.0015%(w/v)である、請求項7に記載の点眼液。
【請求項9】
0.1%(w/v)の濃度のヒアルロン酸ナトリウムおよび唯一の防腐剤としてベンザルコニウム塩化物を含有する水性点眼液の保存効力を向上させると共に、該点眼液の動粘度を3.0〜4.0mm/sとし、且つ該点眼液の液ダレを防止する方法であって、
該点眼液中の濃度が0.1%(w/v)となる量のヒアルロン酸ナトリウム、該点眼液中の濃度が0.001〜0.002%(w/v)となる量のベンザルコニウム塩化物、該点眼液中の濃度が0.1〜1.0%(w/v)となる量のプロピレングリコール、および該点眼液の浸透圧比が0.9〜1.1となる量のイオン性等張化剤を混合するステップ(a);
該点眼液のpHを6.0〜7.0に調整するステップ(b);および
該点眼液を点眼容器に充填するステップ(c)を含む、方法。
【請求項10】
0.3%(w/v)の濃度のヒアルロン酸ナトリウムおよび唯一の防腐剤としてベンザルコニウム塩化物を含有する水性点眼液の保存効力を向上させると共に、該点眼液の動粘度を17〜30mm/sとし、且つ該点眼液の液ダレを防止する方法であって、
該点眼液中の濃度が0.3%(w/v)となる量のヒアルロン酸ナトリウム、該点眼液中の濃度が0.001〜0.002%(w/v)となる量のベンザルコニウム塩化物、該点眼液中の濃度が0.1〜1.0%(w/v)となる量のプロピレングリコール、および該点眼液の浸透圧比が0.9〜1.1となる量のイオン性等張化剤を混合するステップ(a);
該点眼液のpHを6.0〜7.0に調整するステップ(b);および
該点眼液を点眼容器に充填するステップ(c)を含む、方法。
【請求項11】
ステップ(a)において、さらに該点眼液中の濃度が0.001〜0.1%(w/v)となる量のエデト酸塩を混合する、請求項9または10に記載の方法。
【請求項12】
ステップ(a)において、該点眼液中の濃度が0.25〜0.75%(w/v)となる量のプロピレングリコールを混合する、請求項9または10に記載の方法。
【請求項13】
ステップ(a)において、該点眼液中の濃度が0.001〜0.0015%(w/v)となる量のベンザルコニウム塩化物を混合する、請求項9または10に記載の方法。



【図1】
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【公開番号】特開2013−28599(P2013−28599A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−140951(P2012−140951)
【出願日】平成24年6月22日(2012.6.22)
【出願人】(000177634)参天製薬株式会社 (177)
【Fターム(参考)】