説明

ヒアルロン酸又はその塩の1種、ポリオール及びリドカインの熱滅菌された注射用組成物

本発明は、ヒアルロン酸又はその塩の1種、1種又はそれ以上のポリオール(類)、及びリドカインの水溶液組成物に関する。化粧品目的のために、又は治療目的のために使用される、該組成物は、改善された粘弾性レオロジー特性及び改善された生体内持続性を有する。該ポリオールは、例えば、グリセロール、ソルビトール、プロピレングリコール、マンニトール、エリスリトール、キシリトール、マルチトール及びラクチトールから選ばれる。その特別な特性は、混合物を熱滅菌することにより得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒアルロン酸又はその塩の1種、1種又はそれ以上のポリオール(類)、及びリドカインをベースとする、ジェルの形態での注射用水溶液組成物に関し、熱滅菌された該組成物は、改善された粘弾性レオロジー特性及び長期間の生体内持続性を有し、化粧品目的又は治療目的のためのものである。
【背景技術】
【0002】
ヒアルロン酸ベースの注射用ジェルは、化粧品目的に、生体組織に充填又は代替するために(しわを埋めること、顔の成形又は唇のボリュームを増すこと等)、そしてまたメソセラピー(Mesotherapy)による皮膚の補水の処置に使用するために、何年もの間使用されてきた。
【0003】
ヒアルロン酸ベースの注射用ジェルはまた、多くの治療目的に使用される。例えば、
−滑液の交換又は一時的補充のための剤としての、リウマチ学において、
−括約筋容量又は尿道容量を増加させるための剤としての、泌尿器学/婦人科学において、
−白内障の手術の助剤としての又は緑内障の治療のための、眼科学において、
−活性物質の放出のための剤としての、薬学において、
−骨再建、声帯の容量の増大又は手術組織を製造するための、外科学において。
【0004】
その生体内持続性(即ち、注射部位におけるジェルの滞留時間)を増しそして治療効果の持続を高めるために、ヒアルロン酸ベースのジェルの物理化学的安定性を改善するための多大な努力がなされてきた。
【0005】
従来技術によれば、ヒアルロン酸ベースのジェルの持続性を高めること、及びそれゆえの種々の分解因子に対するその耐性を高めることは、基本的にヒアルロン酸架橋及び/又はグラフト技術によって行われる。
例えば、
−国際公開第2005/012364号パンフレットは、非架橋性及び/又は非グラフト化製品よりもより良い持続性を有する、ヒアルロン酸を含む、架橋及びグラフト化多糖類をベースとするジェルについて記載している。
−国際公開第2004/092222号パンフレットは、少なくとも1種の低分子多糖及び少なくとも1種の高分子多糖を含み、該ジェルは複数の分子量の混合物を有しない製品のものよりもより高い持続性を有する、ヒアルロン酸を含む多糖類をベースとするジェルについて記載している。
−国際公開第2005/085329号パンフレットは、高密度架橋性ヒアルロン酸をベースとするジェルであって該ジェルは長い生体内持続性を有するジェルを得るための製造方法について記載している。
−国際公開第2000/0046252号パンフレットは、二重に架橋されたヒアルロン酸のための方法により高い架橋度を有する、強力な「生体安定性」を有する、ヒアルロン酸をベースとするジェルについて記載している。
【0006】
ポリオールは、少なくとも2つのアルコール基を有する化学式Cxyzの分子の仲間
に属する。該ポリオールの浸透圧を調整するための能力が高いおかげで、当業者は、等浸透圧組成物を得るために、注射用水溶液製剤中にポリオールを導入し得ることを知っている。
【0007】
リドカイン(又はリドカイン塩酸塩)は、化粧品及び医学分野において一般的に使用される局所麻酔薬である。この分子は、特に、注射中及び注射後の痛みを抑えるために、しわを埋めるための製品のような化粧品目的のための製品として長年使用されてきた(コラーゲン及び0.3%のリドカインを含む製品ザイダーム(Zyderm)(登録商標)の場合)。
【0008】
従来技術は、ポリオール及び/又はリドカインを含み得る、ヒアルロン酸ベースのジェルについて記載している。例えば、
−国際公開第2007/077399号パンフレットは、ヒアルロン酸及び粘性のある生体適合性のあるアルコールをベースとし、その滅菌が粘度を増強するジェルについて記載している。
−国際公開第2004/032943号パンフレットは、リドカインを含む局所麻酔剤を含むヒアルロン酸ベースのジェルについて記載している。
−国際公開第98/41171号パンフレットは、ヒアルロン酸、マンニトール及びリドカインをベースとするジェルの形態の注射用組成物について記載している。
−国際公開第2008/068297号パンフレットは、ヒアルロン酸ヒドロゲルの形態での皮下又は皮内注射用インプラントの使用について記載している。これはまた、抗酸化剤としてのマンニトールの使用を開示している。
−リドカインを取り入れた新しいヒアルロン酸充填剤の欧州の評価、G.WAHL、Journal of Cosmetic Dermatology、7巻、2008年11月6日、298−303頁では、ヒアルロン酸及びリドカインを含む皮膚科学的使用のための組成物について記載している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】国際公開第2005/012364号パンフレット
【特許文献2】国際公開第2004/092222号パンフレット
【特許文献3】国際公開第2005/085329号パンフレット
【特許文献4】国際公開第2000/0046252号パンフレット
【特許文献5】国際公開第2007/077399号パンフレット
【特許文献6】国際公開第2004/032943号パンフレット
【特許文献7】国際公開第98/41171号パンフレット
【特許文献8】国際公開第2008/068297号パンフレット
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】G.WAHL、Journal of Cosmetic Dermatology、7巻、2008年11月6日、298−303頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
無架橋又は架橋、グラフト化又は非グラフト化、又は架橋及びグラフト化にかかわらず、この製剤の熱滅菌を伴ったヒアルロン酸をベースとするジェルへのポリオール及びリドカインの添加は:
−ジェルのレオロジー特性における非常に大きな改善、
−生体内におけるヒアルロン酸ベースのジェルの3つの主な分解の種類(ヒアルロニダーゼによる酵素分解、フリーラジカル分解、37℃における熱分解)を無効とすることによってジェルの持続性の改善、
−長時間のジェルのレオロジー安定性における改善及びそれゆえに延長され得る製品の寿命、
を(ポリオールを含まずそしてリドカインを含まないジェルと比較して)得ることが可能になることが、今や見出された。
【課題を解決するための手段】
【0012】
まさに驚くべきことに、ヒアルロン酸ベースのジェルへの1種又はそれ以上のポリオール類及びリドカインの添加は:
−熱滅菌前のジェルのレオロジー特性を改良しない
−(ポリオールを含まずそしてリドカインを含まないジェルと比較して)熱滅菌後のジェルのレオロジー特性を優位に改良する、
ことが実際に見出されてきた。
【0013】
換言すれば、熱滅菌前において、ポリオール及びリドカインを有するヒアルロン酸ベースのジェルの粘弾性特性は、ポリオールを含まずそしてリドカインを含まないヒアルロン酸ベースのジェルのものと同一である。
【0014】
熱滅菌後、ポリオール及びリドカインを有するヒアルロン酸ベースのジェルの粘弾性特性は、ポリオールを含まずそしてリドカインを含まないヒアルロン酸ベースのジェルのものとは異なるものである。ポリオール及びリドカインを有するジェルは、ポリオールを含まずそしてリドカインを含まないヒアルロン酸ベースのジェルと比較して、非常に強固な弾性(より高いG’)及びより弾力のある粘弾性の性質(より低いTanδ)を有する。
【0015】
熱滅菌は、ジェルの構造を大幅に改良し、そしてそれゆえに、その粘弾性特性(レオロジーのパラメーターG’及びG’’における減少/パラメーターTanδにおける増加)を大幅に改良させる。ヒアルロン酸ベースのジェル中のポリオール及びリドカインの存在は、熱滅菌中のレオロジーのパラメーターの変化を大幅に改良する(レオロジーのパラメーターの変化の制限:G’及びG’’における減少を著しく弱める/Tanδにおける増加を著しく弱める)。
【0016】
熱滅菌の間のヒアルロン酸ベースのジェルの分解を制限することにより、ポリオール及びリドカインを有するヒアルロン酸ベースのジェルの構造は、ポリオールを含まずそしてリドカインを含まないヒアルロン酸ベースのジェルを用いて得られたものとは異なる。この構造は、特に、強化された弾力性の性質(容量を創出するジェルのより良い能力)を有する。
【0017】
この良好な熱分解に対する耐性は、長時間の室温におけるより良い製品の安定性を、特にジェルに付与する。したがって、本発明により製造された製品は、ポリオール及びリドカインを含まない製品と比較して寿命を延長することができる。
【0018】
ポリオール及びリドカインを含むヒアルロン酸ベースのジェルは、ポリオールを含まずそしてリドカインを含まないものと比較して、生体内でのヒアルロン酸ベースのジェルの3つの分解因子に対するより良い耐性:
−酵素分解に対するより良い耐性
−フリーラジカル分解に対するより良い耐性
−熱分解に対するより良い耐性、
を有することもまた示されてきた。
【0019】
特に、熱分解及びフリーラジカル分解に対する耐性の改善が、全面的に注目に値する。
【0020】
ヒアルロン酸ベースのジェルの分解に対するポリオール及びリドカインの効果の論理的説明に縛られることは望まないが、リドカインは、ポリオールの能力を高め、ヒアルロン
酸ベースのジェルを保護すると仮定される。
【0021】
さらにまた、ヒアルロン酸ベースのジェルへ配合されるポリオール類は、ジェルの外へ移行し得る。
【0022】
ジェルの外部において、ポリオール類は、組織中に拡散し得、そして、例えば、組織水和において又はその他には細胞機構又は生化学的機構における介在により、重要な役割を果たす。
【0023】
最後に、ジェル中のリドカインの存在は、注射中及び注射後の患者の快適さを改善するために興味深いものである。
【0024】
その結果として、本発明によるヒアルロン酸又はその塩の少なくとも1種、1種又はそれ以上のポリオール類及びリドカインをベースとする注射用水溶液組成物は、以下の化粧品目的又は治療目的のための利点:
−滅菌における顕著に少ない分解のため、ジェルのよりよい粘弾性のレオロジー特性(特に容量を創出するより良い性能)、
−生体内におけるジェルの分解の3つの主要な型に対して、ポリオール(類)及びリドカインの作用による、ジェルのより長い生体内持続性、それゆえの、治療のより長期間の効果、
−その寿命期間中のジェルのより良好なレオロジー安定性、
−組織におけるポリオール類の好ましい作用(例えば、組織水和)、
−注射中及び注射後のリドカインの麻酔作用による患者の快適さの改善、
を有する。
【0025】
したがって、本発明は、ヒアルロン酸又はその塩の1種以上、1種以上のポリオール類、及びリドカインをベースとするジェルを含む、熱滅菌された注射用組成物を提供する。
【0026】
該組成物は以下:
−メソセラピーによる生物学的組織の充填又は皮膚の潤いをとり戻すための化粧品目的のために;
−例えば、以下のような治療目的のために:
a)滑液の交換又は一時的補充のための剤としての、リウマチ学において、
b)括約筋容量又は尿道容量を増加させるための剤としての、泌尿器学/婦人科学において、
c)白内障の手術の助剤としての又は緑内障の治療のための、眼科学において、
d)活性物質の放出のための剤としての、薬学において、
e)骨再建、声帯の容量の増大又は手術組織を製造するための、外科学において、
使用される。
【0027】
本発明の実施態様によれば、ヒアルロン酸又はその塩の1種をベースとするジェルは無架橋か又は架橋されたものである。
【0028】
本発明の実施態様によれば、ヒアルロン酸又はその塩の1種の濃度は、0.01mg/mL乃至100mg/mL、そしてヒアルロン酸又はその塩の1種の分子量が1000Da乃至10×106Daである。
【0029】
本発明の一つの特定の実施態様によれば、該架橋は、1種又はそれ以上の他の天然の多糖類とともに、又は、これなしに、無架橋又は既に架橋されているヒアルロン酸上で、エポキシド、エピハロヒドリン及びジビニルスルホンから選ばれる二官能性又は多官能性分
子とともに行われる。
【0030】
各種のヒアルロン酸ベースのジェルは、当該技術分野において知られており、そして架橋及びグラフト化されたジェルは、例えば国際公開第2005/012364号パンフレットに記載されている。
【0031】
本発明の一つの特定の実施態様によれば、ジェルは、他の生体適合性のあるポリマー(例えば、天然の多糖類のような)及び/又は生物に又はジェルに好ましい効果を与える他の活性又は非活性物質を含み得る。
【0032】
本発明の特徴によれば、これらのジェルは、例えば、グリセロール、ソルビトール、プロピレングリコール、キシリトール、マンニトール、エリスリトール、マルチトール及びラクチトールから選ばれる、1種又はそれ以上のポリオール(類)を含む。
【0033】
本発明の実施態様によれば、ジェル中のポリオール濃度は、0.0001乃至500mg/mLでありそしてより詳細には0.0001乃至100mg/mLである。
【0034】
本発明の実施態様によれば、ジェル中のリドカイン濃度は、0.0001乃至500mg/mLでありそしてより詳細には0.001乃至50mg/mLである。
【0035】
本発明の実施態様によれば、滅菌は、乾熱又は湿熱で、好ましくは湿熱で行われる。当業者は、これらの製品の滅菌のために好適な熱滅菌サイクル(滅菌サイクルの温度及び持続期間)を選択し得る。例えば、以下の湿熱滅菌サイクル:
131℃、1分/130℃、3分/125℃、7分/121℃、20分/121℃、10分/100℃、2時間、
が使用され得る。
【実施例】
【0036】
実施例は、本発明を説明するために提案されるものであるが、決して該発明を限定するものではない。以下の実施例で製造された製剤は、pH=7の緩衝溶液中でポリオール及びリドカインと共にか又はこれら無しに、架橋されたヒアルロン酸ナトリウム(NaHA)をベースとするジェルである。
【0037】
架橋されたジェルは、当業者によく知られる技術により製造される。これらのジェルの製造に使用されるヒアルロン酸ナトリウムは、2.5×106Daに相当する分子量を有
する。使用される架橋剤は、ブタンジオールジグリシジルエーテル(BDDE)であり、そして使用される架橋度の定義は:質量(BDDE)/質量(乾燥NaHA)である。
【0038】
ジェルへのポリオールの配合は、必要量のポリオール(質量%で表す)をジェルへ添加しそしてスパチュラで10分間攪拌することにより行われる(最終のジェル50gについて)。
【0039】
ジェルへのリドカインの配合は、必要量のリドカイン(質量%で表す)をジェルへ添加しそしてそのスパチュラで10分間攪拌することにより行われる(最終のジェル50gについて)。
【0040】
ポリオール及びリドカインを有する、及び有さないジェルを製造するにあたり、厳密に同等の条件とするために、ポリオールなし及びリドカインなしの架橋されたジェルをまたスパチュラで10分間混合する(最終のジェル50gについて)。
【0041】
製造されたジェルは、ガラスシリンジへ詰め、そして次ぎに熱滅菌する(121℃、10分)。
【0042】
レオロジーの評価を行うために使用したレオメーターは、プレート形状40mm、ギャップ1000μm、そして分析温度37℃でのAR2000(TAインスツルメンツ社)である。
【0043】
実施例1:ポリオール/リドカインを有するか又はこれらを有さないヒアルロン酸ベースのジェルの間の熱滅菌後の構造上の差異のレオロジーによる説明
A、架橋性NaHA(NaHA 質量=2.5×106Da、NaHA濃度=22.5
mg/mL、架橋度=9%)をベースとするジェルを得る。次にこのジェルを24時間の透析により精製した(再生セルロース、分離限界:質量=60kDa)。150gの精製したジェルをスパチュラで10分間混合した。
得られたジェルを等しい質量(50g)の3つのフラクションに分けた。
B、フラクション番号1を得る。グリセロール1%、ソルビトール1.5%及びリドカイン0.3%をこのフラクションに添加した。そのジェルをスパチュラで10分間混合した。
C、フラクション番号2を得る。グリセロール1%及びソルビトール1.5%をこのフラクションに添加した。そのジェルをスパチュラで10分間混合した。
D、フラクション番号3を得る。適切な濃度のNaClの溶液を、ジェルB及びCのものと同等のヒアルロン酸濃度及び浸透圧を得るために添加した。そのジェルをスパチュラで10分間混合した。
B、C及びD、フラクションB,C及びDからそれぞれジェルを得る。
得られたジェルは、ほぼ7.00のpH、ほぼ300mOsm/kgの浸透圧、及び同等のヒアルロン酸濃度を有する。
レオロジー測定(周波数掃引− 0.01乃至100Hz)を、滅菌前のジェルB、C及びDのそれぞれについて行った。
G’(=弾性係数)、G’’(=粘性係数)及びTanδ=G’’/G’の値の比較を、1Hzにおいて行った。
【表1】

レオロジーの差異が無いこと、それゆえ構造上の差異が無いことが、滅菌前の3つのジェルB、C及びDの間で観測された。
ジェルB、C及びDを、1mLのガラスシリンジへ詰め、そして次に121℃において10分間湿式熱滅菌した。
レオロジー測定(周波数掃引− 0.01乃至100Hz)を、滅菌後のジェルB、C及びDのそれぞれについて行った。
G’(=弾性係数)、G’’(=粘性係数)及びtanδ=G’’/G’の比較を、1Hzにおいて行った。
【表2】

注目すべきレオロジーの差異、そしてそれゆえに注目すべき構造上の差異が熱滅菌後の3つのジェルB、C及びDの間で観測された。
熱滅菌後、本発明によるジェル(=ジェルB)は、ポリオールを有さずそしてリドカインを有さないジェル(=ジェルD)よりも注目すべき優れた弾性(より高いG’)及び弾性特性(より低いTanδ)を示した。
ポリオールの存在及びリドカインの存在は、熱滅菌の間ヒアルロン酸ベースのジェルの熱分解を大いに抑制することを可能とする。
【表3】

【0044】
実施例2:ポリオール及びリドカインを有するヒアルロン酸ベースのジェルの酵素分解に対するよりよい耐性の説明
本発明によるジェルB(実施例1参照)の酵素分解に対する耐性をジェルDのそれ(実施例1参照)と比較した。
分解試験を、プレート形状40mm、ギャップ1000μmでのAR2000レオメーター(TAインスツルメンツ社)を用いて行った。
試験ジェルへヒアルロニダーゼの溶液を添加し、スパチュラで1分間ホモジェナイズし、全体を37℃の温度に置きそして、0.3%の変性を課すことにより、分解試験を行った。1HzにおけるパラメーターG’の値はt=5分及びt=40分において測定した。
【表4】

本発明によるジェルは、酵素分解に対しよりよい耐性を有することが認められた。
【0045】
実施例3:ポリオール及びリドカインを有するヒアルロン酸ベースのジェルのフリーラジカルに対するよりよい耐性の説明
本発明によるジェルB(実施例1参照)、ジェルC(実施例1参照)及びジェルD(実
施例1参照)のフリーラジカルに対する耐性を比較した。
分解試験を、プレート形状40mm、ギャップ1000μmでのAR2000レオメーター(TAインスツルメンツ社)を用いて行った。
試験ジェルへ抗酸化剤を添加し、スパチュラで1分間ホモジェナイズし、全体を37℃の温度に置きそして、0.3%の変性を課すことにより、分解試験を行った。1HzにおけるパラメーターG’の値はt=5分及びt=40分において測定した。
【表5】

本発明によるジェルは、フリーラジカルに対し非常によい耐性を有することが認められた。
【0046】
実施例4:ポリオール及びリドカインを有するヒアルロン酸ベースのジェルの熱分解に対するよりよい耐性の説明
本発明によるジェルB(実施例1参照)及びジェルD(実施例1参照)の熱分解に対する耐性を比較した。
試験ジェルを80℃のインキュベーターに8時間導入しそしてパラメーターG’(1Hz)の値をt=0及びt=8日において測定することにより、熱分解試験を行った。
【表6】

本発明によるジェルは、熱分解に対しよりよい耐性を有することが認められた。
【0047】
実施例5:ポリオール及びリドカインを有するヒアルロン酸ベースのジェルの室温における長期間でのよりよいレオロジー安定性の説明
本発明によるジェルB(実施例1参照)、及びジェルD(実施例D参照)を室温(25℃)において8ヶ月貯蔵した。
パラメーターG’(1Hz)の値を、t=0、t=4ヶ月及びt=8ヶ月において測定した。
【表7】

本発明によるジェルは、室温における長期間でのよりよいレオロジー安定性を有することが認められた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒアルロン酸又はその塩の1種、1種又はそれ以上のポリオール(類)、及びリドカインをベースとする、化粧品目的又は治療目的のために使用される、ジェルの形態における注射可能な水溶液組成物であって、
熱滅菌され、その効果が改善された粘弾性レオロジー特性及び改善された生体内持続性であるところの組成物。
【請求項2】
前記滅菌が、湿熱により行われることを特徴とする、請求項1に記載の注射用水溶液組成物。
【請求項3】
前記ヒアルロン酸又はその塩の1種の濃度が、0.01mg/mL乃至100mg/mLであり及び前記ヒアルロン酸又はその塩の1種の分子量が1000Da乃至10×106
Daであることを特徴とする、請求項1に記載の注射用水溶液組成物。
【請求項4】
前記ポリオール濃度が0.0001乃至100mg/mLであることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の注射用水溶液組成物。
【請求項5】
前記リドカイン濃度が0.0001乃至50mg/mLであることを特徴とする、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の注射用水溶液組成物。
【請求項6】
前記ヒアルロン酸又はその塩の1種をベースとするジェルが無架橋であることを特徴とする、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の注射用水溶液組成物。
【請求項7】
前記ヒアルロン酸又はその塩の1種をベースとするジェルが架橋されているものであることを特徴とする、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の注射用水溶液組成物。
【請求項8】
前記ヒアルロン酸又はその塩の1種をベースとするジェルが、1種又はそれ以上のその他の天然の多糖類とともに、又は、これなしに架橋されているものであることを特徴とする、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の注射用水溶液組成物。
【請求項9】
前記ヒアルロン酸又はその塩の1種をベースとするジェルが、エポキシド、エピハロヒドリン及びジビニルスルホンから選ばれる二官能性又は多官能性分子とともに架橋されるものであることを特徴とする、請求項7又は8に記載の注射用水溶液組成物。
【請求項10】
前記ポリオールが、例えば、グリセロール、ソルビトール、マンニトール、プロピレングリコール、エリスリトール、キシリトール、マルチトール及びラクチトールから選ばれることを特徴とする、請求項1乃至9のいずれか1項に記載の注射用水溶液組成物。
【請求項11】
生体組織を充填するか又は代替するために使用される、請求項1乃至10のいずれか1項に記載の注射用水溶液組成物。
【請求項12】
しわを埋めること、顔の成形又は唇のボリュームを増すために使用される、請求項1乃至10のいずれか1項に記載の注射用水溶液組成物。
【請求項13】
メソセラピー(Mesotherapy)による皮膚の補水の処置に使用される、請求項1乃至10のいずれか1項に記載の注射用水溶液組成物。
【請求項14】
生体組織を分離、代替又は増加するために又は該組織の容量を増すために使用される、請求項1乃至10のいずれか1項に記載の注射用水溶液組成物。
【請求項15】
―滑液の交換又は一時的補充のための剤としての、リウマチ学において、
―括約筋容量又は尿道容量を増加させるための剤としての、泌尿器学/婦人科学において、
―白内障の手術の助剤としての又は緑内障の治療のための、眼科学において、
―活性物質の放出のための剤としての、薬学において、
―骨再建、声帯の容量の増大又は手術組織を製造するための、外科学において、
使用される、請求項1乃至10のいずれか1項に記載の注射用水溶液組成物。

【公表番号】特表2012−508217(P2012−508217A)
【公表日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−535154(P2011−535154)
【出願日】平成21年11月4日(2009.11.4)
【国際出願番号】PCT/FR2009/052134
【国際公開番号】WO2010/052430
【国際公開日】平成22年5月14日(2010.5.14)
【出願人】(511111840)アンタイス エス.エイ. (2)
【Fターム(参考)】