説明

ヒアルロン酸含有止血合成剤

本発明は生物学的吸収性材料およびヒアルロン酸あるいはその派生物が含まれる止血合成剤、この合成剤の製造方法およびこれらの合成剤の使用に関する。特に、前記止血合成剤の製造方法には110℃から200℃の間の乾燥した熱による処理が含まれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は生物学的吸収性材料、好ましくは、ゼラチン、及びヒアルロン酸あるいはその派生物が含まれる止血合成剤に関する。ここに説明される止血合成剤は従来の合成剤に比べて優れた止血特性を有する。
【背景技術】
【0002】
血管が外科的措置を含む物理的外傷によって損傷している場合出血が起こる。損傷の範囲に応じて出血は個人の正常な機能に影響し得るほどの血液の失う場合があるか、あるいは骨のある膨張不可能な空洞に起こる出血の場合には、法外な血液の蓄積による血圧の上昇により柔組織の損傷が引き起こされることがある。出血が放置されても、最後には、血管の、血小板の、そして乳漿の因子の組合せ活動を伴う連鎖反応によって特徴付けられる正常に起こる生理学的作用によって出血は阻止される。この作用は生理学的止血として言及され、その重要な要素は以下で説明される血液の凝固である。狭く浅い出血の場合には、生理学的止血が出血阻止に適切なものである。
【0003】
血液凝固は次の段階にて起こるものとして説明される。
(1)乳漿セリーン プロテアーゼ トロンビンの前駆体であるプロトロンビンの活性剤の形成。プロトロンビン活性剤は酵素因子Xaおよび両方とも活性血小板の表面に現れる2個の補足因子であるVa因子および凝血促進性のリン脂質の複合体(錯体)である。さらに、カルシウムイオンの存在が活性剤の機能には必要である。
(2)プロトロンビンの上記活性剤系による裂け目の2断片化、うち1つは酵素トロンビンである。
(3)凝固物質フィブリンに対する乳漿前駆体フィブリノーゲンのトロンビンによる変換。この反応は数段階を伴い、その第1にはフィブリンモノマーが形成されるフィブリノーゲンからの少量のペプチドの裂け目が含まれ、これによってポリマー化されフィブリンポリマーが形成される。最終段階として、トロンビンにより乳漿因子XIII、フィブリン分子間の共有結合の形成を触媒反応させる酵素が活性化され、これによって溶解抵抗性のある凝固膜が形成されて分子が架橋結合される。
【0004】
プロトロンビン活性剤系を形成するに至る上記の段階(1)では、数個の乳漿プロテアーゼがタンパク質加水分解事象のカスケードにかかわる。これらの血液凝固因子は、最近ではローマ数字を利用してVII因子、VIII因子、XXI因子、XII因子のように言及される。カスケードはカスケード中の次の酵素の連続的なタンパク質加水分解の活性化に関係する。このように、活性化された血液凝固因子はローマ数字の後に「a」を続けてVIIa因子、VIIIa因子、XIIIa因子、IXa因子といったように呼ばれる。
【0005】
しかしながら、より甚だしい損傷、特により大きい動脈にかかわるかあるいはしみ出る出血が粘膜表面からあるいは排液なしに肛に生じるといった損傷から生じる出血は、外科的および/または内科的止血措置の採用を必要とする。外科的な出血阻止には、加熱器具によるかあるいは焼灼剤あるいは加熱空気を加えることによって露出した損壊血管が含まれる組織面を凝固させて、肛中にタンポンを使用することによって塞ぐ損壊血管の結紮あるいは縫合が含まれる。外科的止血は適当な大きさの損傷場所に生物学的吸収性止血スポンジのブロック、プレートあるいはフィルムを貼ることによって助けられても良い。ペーストをつくり出すために通常は塗布前に濡らされる粉末あるいは薄片もまた利用されてきた。
【0006】
この前後関係において、用語「スポンジ」は構造が網状であると同時にその外面よりかなり大きい内面を有すること、網状構造に空洞空間が含まれること、ならびに液体中で自身の重さの何倍をも吸収性のあることを特徴とする多孔質な構造を意味するものと理解される。
【0007】
この止血スポンジあるいは合成剤は、大きな腹部器官(肝臓、脾臓、あるいは腸)の外科手術、胸部外科手術、脳あるいは神経組織の圧力損傷を防止する神経外科手術、他の手段では止めるのが困難な広範な出血が度々起こる整形外科手術、縫合場所からのにじみ出る出血を阻止する血管外科手術、口腔あるいは抜歯のような歯科外科手術、そして鼻血(鬱滞停止)といった外科的措置あるいはその他の損傷のいくつかの場合に出血の抑制を高めるのに有用である。
【0008】
現在ではスポンジの止血効果(あるいは作用形態)はスポンジの多孔性ならびに血液吸収能力に関係していると思われている。従来のゼラチンスポンジは出血場所に粘着するとともに、自身のおよそ45倍の重さ分を吸収する。従来のゼラチンスポンジの均一な多孔性のおかげで血液血小板が捕捉されると同時に凝固カスケードが活性化され、溶解可能フィブリノーゲンが一連の非溶解性フィブリン網に変化する。このように、良好な吸収能力は従来のゼラチンスポンジの作用形態に必要不可欠なものと考えられている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述のように、止血剤として作用する従来のゼラチンスポンジの能力は吸収能力に関係しており、これによるスポンジ容積の増大が不可避である。しかしながら、スポンジが使用説明書通りに使用されない場合にはスポンジの膨張は逆効果につながり得る。普通は、使用説明書に「腔あるいは閉鎖組織空間に置かれる場合は最初に少しだけ圧をかけることが勧められるとともに手当は詰め込みすぎないように行って下さい。」という表現が含まれる。ゼラチンスポンジは流体の吸収に関してその独特な大きさまで膨張し神経損傷の可能性を生じ得る。それにもかかわらず、逆の事象が過去には生じていたので、英国医療具局は米国食品医薬品局とともに、従来スポンジの欠点に多くの注意を払ってきている。
【0010】
従って、十分な出血阻止(止血)効果が維持される一方で、従来の止血スポンジ未満の程度まで膨張するという止血スポンジのニーズがある。明らかに、このようなスポンジはより安全な製品を構成する。
【0011】
本発明は前記合成剤の改善特性と製造方法による止血合成剤を取り扱う。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の発明者等により、驚くべき事に、出血阻止には、サージフォームR, サージフォームR 粉末 あるいは ゲルフォームR 粉末のような従来の合成剤より本発明の止血構成剤の方が効果的であること、すなわち、本発明による合成剤の止血特性は従来の合成剤に比較して改善される事が判明した。
【0013】
さらに、本発明者等はヒアルロン酸(HA)あるいはその派生物を止血合成剤に組込むことによって膨張についての上記問題を解決した。
【0014】
驚いたことに、本発明による止血スポンジの膨張はサージフォームRのような従来のスポンジに比較してかなり減少することが判明した。ここに説明される止血スポンジの使用は従来のスポンジより安全であることが明らかである。
【0015】
上記特性、すなわち、膨張の減少傾向および止血特性の改善は、HAあるいはその派生物の存在によるものであり、例えば、ローレント その他による米国誌「耳喉頭」1986年7月号 181〜186頁、米国特許 6,548,081、米国特許 6,099,952、 米国特許 5,503,848、 米国特許 5,700,476、 欧州特許 1 022 031 およびWO特許 94/17840に説明されるようにスポンジに抗粘着特性を与えるものと知られている。それにもかかわらず、合成剤に改善された止血特性を与えると同時にスポンジの膨張能力を減少させるという驚くべき効果は、上記で特定された先行技術文献のいずれにも説明されてこなかった。
【発明の効果】
【0016】
簡単にまとめると、止血合成剤および特に本発明の止血スポンジには従来の市販で入手可能な止血合成剤およびスポンジと比較して数多くの利点が含まれる。すなわち、
i) スポンジがより安全に利用されるようになる膨張の縮小
ii)止血特性の改善、および
iii) 組織の後処理粘着性を減少させる抗粘性特性の改善
(特許文献1)米国特許 6,548,081(特許文献2)米国特許 6,099,952(特許文献3)米国特許 5,503,848
(特許文献4)米国特許 5,700,476(特許文献5)欧州特許 1 022 031(特許文献5)WO特許 94/17840(特許文献6)米国特許 5,356,883(特許文献7)米国特許 4,851,521(特許文献8)米国特許 6,027,741(特許文献9)米国特許 2003 181689(特許文献10)欧州特許 1 095 064(特許文献11)欧州特許 0 341 745(特許文献12)WO特許 02/18450(特許文献13)WO特許 2004/035629(特許文献14)米国特許 5,548,081
(特許文献15)WO特許 90/13320 (特許文献16)WO特許 2004/028583
(非特許文献1)ローレント その他による米国誌「耳喉頭」1986年7月号 181〜186頁
【0017】
第1の局面では、本発明は生物学的吸収性材料およびヒアルロン酸(HA)あるいはその派生物が含まれる止血スポンジに関する。
【0018】
第2局面では、本発明はi)生物学的吸収性材料、ヒアルロン酸あるいはその派生物および溶剤の混合、ii)i)で得られた混合物の110℃〜200℃間の温度の乾燥した熱による処理の段階が含まれる止血合成剤の製造方法に関する。
【0019】
第3の局面では、本発明は上述の方法によって得られる合成剤に関する。
【0020】
本発明のその他の局面は本発明の止血合成剤の製造方法と同様に医療用途にも向けられる。これらとその他の局面は以下の開示と付録の請求項から明らかになろう。
(発明の詳細説明)
【0021】
止血合成剤の一般的な効果は生理学的な血液凝固反応を高め、これによって血管の開口からのしっかりした血液凝固が形成されるまでの経過時間を短縮することにある。この期間は一般的に「止血時間」として言及される。この意味で、「止血の」という用語は止血時間を短縮する物あるいは剤の効果を意味するとともに、これによって止血が促進されるものと理解されなくてはならない。
【0022】
上で明記されたように、本発明は、生物学的吸収性材料およびヒアルロン酸(HA)あるいはその派生物が含まれるその広範な局面で止血合成剤に向けられる。
【0023】
その他の実施例では、本発明は、i)生物学的吸収性材料とヒアルロン酸あるいはその派生物および溶剤の混合の段階、ii)i)における110〜200℃間の温度の乾燥した熱による獲得された混合物の処理の段階が含まれる止血合成剤の製造方法によって得られる止血合成剤に関する。この方法の明細は以下に説明される通りのものであり得る。
【0024】
本発明の特別な実施例では、前記合成剤はスポンジの形態であり得て、つまり、該止血合成剤はスポンジであって良く、この場合、「スポンジ」という用語は構造が網状であると同時にその内側面がその外側面よりもかなり広いという点、網状構造内部に中空空間が含まれるとともに、流体中ではその自重の何倍も吸収性のあるという点で特徴のある多孔質構造を意味するものと理解される。
【0025】
生物学的吸収性のある材料はスポンジ、粉末あるいは薄片の調製に相応しい、既知であると同時に生物学的吸収性のある任意の材料であって良い。相応しい生物学的吸収性材料の例には、ゼラチン、コラーゲン、キチン質、キトサン、アルジネート、例えば、酸化セルロース、酸化再生セルロース、カルボキシルメチルセルロース(CMC)、あるいは水酸エチルセルロース(HEC)といったセルロース、ポリグリコール酸、ポリ酢酸、これらの派生物およびこれらの混合物が含まれる。線状あるいは架橋結合形態、塩類、エステル等のような様々な形態もまた本発明の止血スポンジに含まれる生物学的吸収性材料として利用し得ることが理解されよう。ある実施例では、生物学的吸収性材料は固体であっても良く、用語「固体」とは混合物の熱力学上の相のことを言う。
【0026】
「生物学的吸収性」とは、本前後関係中で、前記止血合成剤が作成される材料は血流にこれらが搬送されるようになる大きさを有する小さな分子量に体内で分解し得ることが説明されるために使用される用語である。前記分解および吸収によって、前記スポンジ材料は徐々に貼付場所から取り除かれよう。例えば、ゼラチンはタンパク質加水分解組織酵素によって吸収性のあるより小さい分子量に分解し得るもので、これによってゼラチンスポンジは普通に組織に貼付される場合約3〜6週間以内に、また、出血表面および粘膜に貼付される場合には普通3〜5日以内に吸収される。
(好ましい実施例)
【0027】
本発明の好ましい実施例では、生物学的吸収性材料はゼラチンである。ゼラチンは生物学的吸収性が高いので他より好まれる。さらに、ゼラチンは生物との共生性が高く、血流に入るとか人組織と長期に接触する時/場合に人のような動物に非毒性であるものである。
【0028】
ゼラチンは普通ブタを元に作られるが、ウシ科のようなその他の動物あるいは魚類も元に作られても良い。ゼラチンはまた合成して作られる、つまり組換え手段によって作られることも可能である。興味深い実施例では、ゼラチンはコラーゲンを変質させることによって調製されることも可能である。ゼラチンは普通このように酸類、塩基類、溶剤類、アルデヒド類、尿素あるいは硫酸塩ドデシルナトリウムおよびグアニジン塩化水素といった洗浄剤による化学的処理によりコラーゲンを変質させて調製される。上記の変質手順によって、コラーゲン分子の特性が修正されて水溶性が増すようになる。
【0029】
さらに、ゼラチンは安定化され得るものでこの点は止血剤としてのスポンジの利用に関して都合が良いものと見なされ、湿気を帯びるようになる時に溶解されようになって崩壊する非安定ゼラチン構造に比べて構造の力学的強度が大きく上昇する。対照的に、安定ゼラチンスポンジは出血場所への貼付後かなりの時間の間その構造が保持される。このスポンジの安定化方法には以下に続く段落で説明される通り化学的架橋結合剤によるかあるいは乾燥した熱による処理が含まれる。
【0030】
たとえ、上記で定義される特にコラーゲンの変質によって調製されるゼラチンが本発明の特に適切な実施例を示していても、コラーゲン、キチン質、キトサン、アルジネート、例えば、酸化セルロース、酸化再生セルロース、カルボキシルメチルセルロース(CMC)、あるいは水酸エチルセルロース(HEC)といったセルロース類、ポリグリコール酸、ポリ酢酸、これらの派生物およびこれらの混合物といった最近では止血目的に利用されるその他の生分解性材料のこれらの生来の形態にあるかあるいは構造的に修正されたものである前記材料類は、本発明の精神と範囲から逸脱するものとは見なされずに利用されても良いものと理解されよう。
【0031】
前にも指摘されたように、本発明の止血スポンジの都合良い特性類はスポンジ中のHAあるいはその派生物の存在によるものである。HAあるいはその派生物の固有の利点のもう一つは分子の優秀な生物学的吸収性のあると同時に生物との共生が可能であるという特性である。
【0032】
HAはD-グルクロン酸およびNアセチル酸D―グルコサミンの交代残留物からなる天然の混成多糖類である。これは元になる物質および調製方法に応じて約50から約13,000kDaまで変動する分子量を有する線状重合体である。HAは細胞前ゲル中に、脊椎動物有機体(その一部が主構成要素の1つである)の結合組織の基本物質中で、関節の関節滑液流体中に、硝子体液中に、そして臍帯中に自然に存在する。HAは皮膚、腱、筋肉および軟骨のような多くの組織の細胞向けの力学上の支持材として生物学的有機体中で重要な役割を演ずる。これは細胞外母体の主構成要素であるが、組織の水和化、細胞移動および分化も合わせた潤滑といった別の機能を有する。ここに説明された目的向けに適当な分子量は、例えば100から3,000kDaの範囲の50から4,000kDaの範囲といった50から5,000kDaの範囲にあろう。本発明の特に好ましい実施例では、HAあるいはその派生物は250から3,500kDaの範囲の、さらに好ましくは500から2,000kDaの範囲といった500から2,500kDaの範囲にある分子量を有する。
【0033】
任意のオプションとして、HA分子は例えば化学的あるいは物理的手段によって架橋結合し得る。本発明の好ましい実施例では、採用されるHAはpHゼロであり、つまり、採用されるHAの水溶液は5から9までの範囲、好ましくは6〜8の範囲、特に約7といった6.5から7.5までの範囲のpH値を示す。本発明で使用されるHAは、任意の元から、例えば、雄鳥の鶏冠から抽出されて良い。あるいはHAは発酵によって得られても良い。
【0034】
HAの派生物には、例えば、HAエステル、米国特許 5,356,883、米国特許 6,548,081、 米国特許 4,851,521、 米国特許 6,027,741、 米国特許 2003 181689、 欧州特許 1 095 064、欧州特許 0 341 745、 WO特許 02/18450 および WO特許 2004/035629に説明される派生物も含まれる。さらに、用語「派生物」にはアルロン酸ナトリウム、アルロン酸カリウム、アルロン酸マグネシウムおよびアルロン酸カルシウムが含まれるが限定はされないヒアルロン酸塩が含まれることも意図される。
【0035】
HA派生物の具体例には次のHA派生物が含まれる。すなわち、有機および/または非有機塩基類を伴う塩化HA、Hyaff(R)、すなわち、脂肪族、芳香脂肪族, 環式脂肪族、芳香族、環式および混成環式化合物系列のアルコールによる使用アルコールのタイプおよび長さに応じて変動し得るエステル化度合を伴うHAエステル、Hyadd(R)、すなわち、使用されるアミンのタイプおよび長さに応じて変動し得るアミン化度合を伴う脂肪族、芳香脂肪族, 環式脂肪族,芳香族、環式および混成環式化合物系列のアミン類を伴うHAのアミド類、Hyoxx(R)、すなわち、N―アセチルD―グルコサミン単位の主要水酸基グループの酸化によって得られるパーカルボキシレートHA派生物、HAのジアセチレート、すなわち、N―アセチルD―グルコサミン単位およびO―硫化HA派生物のジアセチル化からの派生物である。
【0036】
本発明の止血合成剤には特に、「水分無し」の合成剤の全重量をベースにして計算される少なくとも0.5%(重量比)のHAあるいはその派生物、あるいは少なくとも1%(重量比)のHAあるいはその派生物、あるいは少なくとも2%(重量比)のHAあるいはその派生物、あるいは少なくとも3%(重量比)のHAあるいはその派生物、あるいは少なくとも5%(重量比)のHAあるいはその派生物、あるいは少なくとも7%(重量比)のHAあるいはその派生物、あるいは少なくとも8%(重量比)のHAあるいはその派生物、あるいは少なくとも10%(重量比)のHAあるいはその派生物が含まれて良い。本発明の興味深い実施例では、本発明の止血合成剤には、例えば少なくとも25%(重量比)のHAあるいはその派生物の、少なくとも20%(重量比)のHAあるいはその派生物といった少なくとも15%(重量比)のHAあるいはその派生物、好ましくは、例えば少なくとも40%(重量比)のHAあるいはその派生物の、少なくとも35%(重量比)のHAあるいはその派生物といった少なくとも30%(重量比)のHAあるいはその派生物が含まれる。
【0037】
同様に、本発明の止血スポンジには、最大で99%(重量比)の前記生物学的吸収性材料、あるいは最大で95%(重量比)の前記生物学的吸収性材料、あるいは最大で90%(重量比)の前記生物学的吸収性材料といった最大で99.5%(重量比)の前記生物学的吸収性材料、あるいは例えば最大で75%(重量比)の前記生物学的吸収性材料の最大で80%(重量比)の前記生物学的吸収性材料といった最大で85%(重量比)の前記生物学的吸収性材料、好ましくは例えば最大で60%(重量比)の前記生物学的吸収性材料の最大で65%(重量比)の前記生物学的吸収性材料といった最大で70%(重量比)の前記生物学的吸収性材料が普通に含まれる。
【0038】
しかしながら、専門技術者により理解される通り、生物学的吸収性材料はスポンジに満足すべき力学的かつ構造的特性が提供されるようスポンジに相当な量が存在しなければならず、つまりはHAあるいはその派生物の量は好ましくは多すぎないようにしなくてはならない。従って、本発明の好ましい実施例では、スポンジには、例えば最大で70%(重量比)のHAあるいはその派生物の、最大で80%(重量比)のHAあるいはその派生物といった最大で90%(重量比)のHAあるいはその派生物、好ましくは、例えば最大で55%(重量比)のHAあるいはその派生物の、最大で60%(重量比)のHAあるいはその派生物といった最大で65%(重量比)のHAあるいはその派生物、特に、最大で50%(重量比)のHAあるいはその派生物が含まれる。
【0039】
ある化合物の水分子はたとえ該化合物が「乾燥して」、同時に固体であると見なされる場合でも必ず該化合物に拘束され得るという点が良く知られている。本発明の前後関係では、用語「水分無し」とは水分が全く存在しないこと、すなわち水分の不在を意味する。このように化合物に拘束され得る水分子でさえも、上述のように用語「水分無し」が使用される場合には含まれず、例えば、用語「水分無し化合物」とは拘束され得る水分子を全く除外した化合物のことを言う。本発明の止血スポンジに関して約10%(重量比)までといったある残留水分がスポンジ中に存在し得る。この残留水は、しかしながら、スポンジの重量全体の部分としては計算されない。このことはスポンジにある成分(HA、その派生物あるいは生物学的吸収性材料のような)のある特定の重量割合が含まれるといわれる場合に、この重量割合はスポンジの水分無し重量をベースに、つまり例えば上述のように拘束され得るすべての水分を除外したスポンジの全重量について計算されることとなる。
【0040】
本発明のある実施例では止血スポンジは乾燥している。この前後関係では、用語「乾燥している」とはある程度の残留水分が含まれ得るがスポンジの水分含有量は空気中の水分と平衡しているスポンジのことを言う。このように、水分含有量は空気中の水分と平衡する場合に存在し得る水分量以下である。
【0041】
本発明の、現在最も好ましい実施例では、HAあるいはその派生物は止血スポンジに組込まれる。用語「組込まれる」によってHA分子は網状スポンジ構造中に多かれ少なかれ一様に分布する、好ましくはHA分子がスポンジ中に全く無いかあるいはあっても「強く残っている場所」だけにしかあり得ないことが理解されるはずである。「強く残っている場所」の存在はスポンジの機能に全く影響しない。このように、用語「組込まれる」とは、ここで使用される場合には、「吸収される」、「混ぜ合わされる」等々の表現と同義で使用され得る。
【0042】
本発明のもう一つの実施例では、HAあるいはその派生物はスポンジの1以上の面に貼付される。
好ましい実施例では、HAあるいはその派生物は出血場所と直接接触するよう意図される表面に貼付され、すなわち、好ましい実施例では、HAあるいはその派生物はスポンジ表面の1面だけ、2面あるいは3面に貼付される。HAあるいはその派生物がスポンジの1面以上に貼付される場合にはHAあるいはその派生物の主要部分は前記表面上に位置するものと理解されよう。しかしながら、スポンジの細孔の大きさは、HAあるいはその派生物の層がスポンジの表面に貼付される場合に、HAあるいはその派生物の分子量が部分的にスポンジの細孔に貫通し得るようにHAあるいはその派生物の一定量がスポンジ中に組込まれてしまって良い。
【0043】
たとえHAあるいはその派生物が本発明の特に適切な実施例を代表するものであっても、そのHAに類似した特性を伴った他の多糖類も、本発明の精神と範囲から逸脱するものとみなされることなく本発明で使用され得ることが理解されよう。本発明のスポンジでHAあるいはその派生物を置換し得る多糖類の例にはアルジネートと同時に、キチン質、キトサン、コンドロイチン硫酸塩、 デルマタン硫酸塩、 ケラチン硫酸塩といった粘液質多糖類が含まれる。
【0044】
上に説明されたように、本発明の止血スポンジの特別な利点の1つは、例えば、米国特許 5,548,081ならびにローレント 等による米国誌「耳喉頭」誌1986年7月号181〜186頁に説明されているように、組織の後操作粘着の回避が可能であるという利点を同様に有するHAあるいはその派生物の抗粘着性特性である。
【0045】
本発明の止血スポンジの主たる利点は、しかしながら、効果的な止血作用を提供する一方で同時に減少した膨張傾向を有するこれらの能力である。止血スポンジの膨張は様々な方法で測定され得る。例えば、膨張傾向はスポンジの水分吸収能力として表現されても良く、吸収される水分が多いほどより大きな膨張(より大きな容積)が得られる。
【0046】
ここで提供される実験類から明らかになるように、本発明の止血スポンジはUSP24により測定される場合の膨張すなわち水分吸収が減少する傾向を有する。従って、本発明の好ましい止血スポンジは水分吸収がより少なく、つまりはサージフォームRといった吸収性のあるゼラチンスポンジより膨張する程度がより少ない。さらに特に、本発明の好ましい実施例では、本発明の止血スポンジによって吸収される水分とサージフォームRのような吸収性のあるゼラチンスポンジによって吸収される水分との間の比はUSP24により測定される場合、最大0.95である。さらに好ましくは、この比は最大0.85あるいは最大0.80といった最大0.90、あるいは例えば最大0.65の、最大0.70といった最大0.75、さらにもっと好ましくは特には最大0.50の、最大0.55といった最大0.60である。
【0047】
もしくは、膨張特性は止血スポンジを過剰な量の蒸留水に浸漬することによって評価され得る。スポンジは引き続いて取り上げられるとともに、過剰な自由水を排水するよう10分間乾燥される。水分吸収前後のスポンジの重量は膨張比の計算用に使用される。すなわち、
(数1)膨張比=(mf-mi)/mi
但し、mfは浸漬かつ過剰水分の除去後のスポンジの重量であり、miは浸漬前のスポンジの当初重量である。
【0048】
もしくはあるいは上記試験に加えて、蒸留水の目盛りを付けたシリンダー中でスポンジの膨張容積が測定され得る。スポンジの既知の重量および容積は事前に湿潤化されかつこねられると同時に計量されてシリンダー内に注がれる。その後、膨張容積が計測されるとともにスポンジの当初質量すなわち事前湿潤化前のスポンジ重量で割られる。
【0049】
本発明の好ましい実施例では、スポンジには、トロンビンあるいはその前駆体、Va因子、VIIa因子、VIIIa因子、IXa因子、Xa因子、XIa因子、XIIa因子、XIIIa因子、およびカルシウムイオンからなるグループから選定される血液凝固因子といったさらに少なくとも1つの血液凝固因子が含まれる。本発明の極めて好ましい実施例では、前記血液凝固因子はトロンビンあるいはその前駆体、特にトロンビン自身である。例から分かる通り、本発明のスポンジ中のトロンビンの存在はさらに止血時間を減少させる。トロンビンは、普通、人のような哺乳動物源から乳漿派生され得る。もしくはトロンビンは組換え手段によって作られても良い。
【0050】
トロンビンはその前駆体同様に専門技術者には既知であると同時にWO特許 90/13320に入念に説明されている従来手段によって止血スポンジに組込まれ得る。
【0051】
トロンビンあるいはその前駆体が本発明のスポンジに組込まれる場合には、スポンジにはさらに自然発生アミノ酸、単糖類あるいは二糖類、ポリグリコール、タンパク質、およびその混合物からなるグループから選定されるトロンビン 安定剤といったトロンビン安定剤が含まれるのが好ましい。
【0052】
自然発生アミノ酸によって生物学的に作られるタンパク質中に見られる任意のアミノ酸には、アルギニン, ヒスチジン, イソロイシン, ロイシン, リジン, メチオニン, フェニルアラニン, トレオニン, トリプトファン, バリン, アラニン, アスパラギン酸塩, システイン、グルタミン酸塩、グリシン、 プロリン、セリーン、タイロジン、グルタミン、および アスパラギンといった2種の立体異性体形態の必須および非必須の食物アミノ酸が含まれている。好ましいアミノ酸はグリシン、リジンおよびアルギニンからなるグループから選定される。
【0053】
適当な単糖類はリボース、アラビノース、キシロース、リキソースといったペントース類およびアロース、アルトロース、 グルコース, マンノース, グロース, イドース, ガラクトース、タロースおよびその派生物、例えば、ペントサミン、へキソサミン、およびグルクロン酸といったヘキソースのDあるいはL形態から選定され得る。複糖類はラクトース、サッカロース、マルトース、フラクトース、およびセルビオースからその派生物を含めて選定され得る。
【0054】
本発明のスポンジの好ましい実施例では、多価アルコールがトロンビン安定剤として使用される。適当な多価アルコールがエチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセロール、ソルビトール、 およびへプチトールのようなマニトール、 イノシトール、シリトール、エリトリトール、 ペンタエリトリトール ペンチトール、ヘキシトールから選定され得る。さらに、ポリプロピレングリコールおよびポリエチレングリコールがトロンビン安定剤として有用である。後者の化合物のグループの中にはポリエチレングリコールが400〜20,000の変動範囲にある好ましくは約6,000といった分子量を有する。
【0055】
本発明の興味深い実施例において、HAあるいはその派生物はトロンビン安定効果をそれ自身に及ぼし、この場合には止血スポンジにはトロンビン安定剤以外何も含まれない。
【0056】
哺乳動物体にはフィブリンの沈殿によって活性化される生来の線維素溶解現象系がある。フィブリン溶解によって、この系が損傷した血管の内肛が開いたままになることが助けられる。しかしながら、迅速な止血が目的とされる状況では、線維素溶解現象作用は本発明による止血スポンジといった止血補助材の止血効果に逆に作用し得る。線維素溶解現象系は、プラスミノーゲンの活性化、活性タンパク質加水分解酵素用の乳漿前駆体、フィブリンにかかわるリジン残留物に拘束されるプラスミンにかかわる。従って、これに抗線維素溶解現象効果のあるこの発明の止血スポンジに組込まれる剤があることは有利であり得る。具体的な例には、アプロチニン、ペップスタチン、ロイペプチンおよびアンチペイン、キモスタチン、メシル酸ガベキサート、フィブロネクチン, ε-アミノ、カプロン酸およびトラネキサム酸からなるグループから選定される抗線維素溶解剤が含まれる。従って、抗線維素溶解現象効果のあるこの発明の止血スポンジに組込まれた剤があることは有利であり得る。抗線維素溶解剤はε-アミノカププロン酸あるいはトラネキサム酸、中でも、トラネキサム酸であるのが最も好ましい。
【0057】
さらに、本発明の止血スポンジには緩衝剤が含まれると良い。緩衝剤にはアセテート、クエン酸塩、リン酸塩、水素リン酸塩、炭酸塩、水素炭酸塩、およびコハク酸塩といったアルカリ金属塩が含まれる。その他の有用な緩衝剤にはイミダゾール、TRIS、および双性陰イオン緩衝系が含まれる。明らかに、上記緩衝剤の混合物も使用され得る
【0058】
ここで説明されるスポンジの優れた膨張特性により、止血効果を提供するスポンジはこれに加えてあるいはこれの代わりとして望ましい作用剤の局部搬送用に使用されても良いことが認められるので、搬送媒体あるいは母体として該スポンジが使用される。望ましい作用剤はスポンジに組込まれ得るかあるいは従来のように、例えば、望ましい作用剤の溶液中のあるいはこれによる、本発明のスポンジの浸漬、浴漬、吹き付けによってあるいはその他の専門家に知られた方法によってスポンジの1面以上に貼付され得る。これは、例えば、臨床医あるいはメーカーによる製品の使用に先立って臨床医によって行われることが可能である。
【0059】
従って、別の局面では、本発明は生物学的吸収性材料およびヒアルロン酸(HA)あるいはその派生物が含まれるスポンジに関係していて、前記スポンジにはさらに少なくとも1種類の望ましい剤、特に、界面活性剤、抗微生物剤、殺虫剤および抗生物質のような抗バクテリア剤、苦痛緩和剤、化学療法剤、麻酔剤、治癒促進剤、ビタミン、ミネラル、アミノ酸、タンパク質、成長因子、細胞、酵素、対比剤、防腐剤、乳化剤、治癒等を促進する架橋結合剤からなるグループから選定される望ましい剤が含まれる。
【0060】
さらに別の局面では、本発明は生物学的吸収性材料およびヒアルロン酸(HA)あるいはその派生物が含まれるスポンジの使用に関するもので、前記スポンジには前記の望ましい剤の局部搬送用にさらに少なくとも1種の望ましい剤が含まれる。
【0061】
さらにもう一つの局面では、本発明はその必要のある患者に対する望ましい剤の局部搬送方法に関するもので、前記方法には生物学的吸収性材料およびヒアルロン酸(HA)あるいはその派生物が含まれるスポンジを前記の望ましい剤が搬送されるよう意図される患者の局部位置に置くことが含まれる。このように、生物学的吸収性材料およびHAあるいはその派生物が含まれるスポンジは特に作用剤の搬送用の媒体として使用される。
【0062】
用語「局部位置」は患者の身体の一部、腎臓、脾臓、心臓等のような特に内部器官を意味するものと意図される。
【0063】
特に、前記の望ましい剤は抗微生物剤であって良い。抗微生物剤は、抗生物質およびスルフォンアミド、抗ビールス合成物、抗真菌性剤、および抗感染剤、といった殺菌性あるいは静菌薬剤から選定されて良い。抗生物質は、例えば、β-ラクタム、ペニシリン、 セファロスポリン、モノバクタム、マクロライド, ポリミクシン, テトラサイクリン, クロラムフェニコール, トリメトプリム、アミノ配糖体、クリンダマイシン、および メトロニダゾールから選定されて良く、スルフォンアミドは例えばサルファジミジン あるいはサルファジメトキシンから選定されて良い。抗真菌性剤はアンホテリシンB、 ケトコナゾール、およびミコナゾールから、また抗ビールス剤はイドクスリジンおよびアジドチミジンから選定されて良い。適当な抗感染剤は、例えば、ハロゲン、クロロヘキシジン、第4級アンモニウム合成物、およびトリクロサンから選定されて良い。殺菌性あるいは静菌薬合成物の別の例には特に銀イオン複合体の形態の銀イオンが含まれる。適当な抗微生物剤のもう一つの例は、特に、トブラマイシン硫酸塩のようにその塩として使用され得るトブラマイシンである。
【0064】
望ましい剤はカルボプラチンのような化学療法剤であっても良い。
【0065】
界面活性剤は陰イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤、非イオン界面活性剤および表面活性生物学的修正剤からなるグループから選定されても良い。
【0066】
陰イオン界面活性剤の例にはカリウムラウ硫酸塩、トリエタノールアミンステア硫酸塩、ナトリウムラウリル硫酸塩、ナトリウムドデシル硫酸塩、アルキルポリオキシエチレン硫酸塩、ナトリウムアルジネート、ジオクチルナトリウム硫化コハク酸塩、ホスファチジン酸グリセロール、ホスファチジンイノシトール, ホスファチジンセリーン、ホスファチジン酸および塩、グリセリルエステル、ナトリウムカーボキシメチルセルロース、胆汁酸およびその塩、コール酸、ジオキシコール酸、グリココール酸、タウロコール酸、グリコジオキシコール酸およびカルシウムカーボキシメチルセルロースからなるグループから選定される界面活性剤が含まれる。特に、ナトリウムラウリル硫酸塩が好ましい。
【0067】
陽イオン界面活性剤の例には第4級アンモニウム合成物、ベンザルコ二ウム塩化物、セチルトリメチルアンモニウム臭化物、キトサン、およびラウリルメチルベンジルアンモニウム塩化物からなるグループから選定される界面活性剤が含まれる。
【0068】
非イオン界面活性剤の例には、ポリキシエチレン脂肪質アルコールエーテル、ポリキシエチレンソービタン脂肪酸エーテル、ポリキシエチレン脂肪酸エーテル、ソービタンエステル、グルセロールモノステア硫酸塩、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、セチルアルコール、セトステアリルアルコール、ステアリルアルコール、アリール アルキルポリエーテルアルコール、ポリオキシエチレンーポリオキシプロピレン、コポリマー、ポラクサミン、メチルセルロース、ヒドロキシセルロース、ヒドロキシ プロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、非結晶質セルロース、多糖類、澱粉質、澱粉派生物、ヒドロキシエチル澱粉質、ポリビニルアルコール、およびポリビニルピロリドンからなるグループから選定される界面活性剤が含まれる。
【0069】
生物学的界面活性剤の例には例えば、アルブミンおよびカゼインが含まれる。
【0070】
防腐剤の例には安息香酸、ソルビン酸、パラペン(例えば、メチルーp―ヒドロキシ安息香酸、エチルーp―ヒドロキシ安息香酸、プロピルーp―ヒドロキシ安息香酸、ブチルーp―ヒドキシ安息香酸およびその混合物)、ベンジルアルコール、クロルヘキシジンあるいはベンザルコ二ウム塩化物が含まれる。
【0071】
本発明の興味深い実施例では、本発明の止血スポンジに上面シートが備えられ、つまり前記止血スポンジの少なくとも1面が上面シートによって被覆されて良い。ある実施例では、該上面シートは生分解性ではない。本発明のある例では、上面シートは除去可能であると同時に、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンあるいは実質的に水分不浸透性であるその他の材料の薄いプラスチックフィルムから構成される。専門家はこの目的のために望ましくかつ必要とされる力学特性のあるその他の相応しい材料に気が付こう。理解される通り、この上面シートは、普通、生分解性が無く、その後除去されなくてはならない。上記材料は、通常、透明であるが、特に手術領域がかなりの血液量で覆われているかあるいは充満している場合には、外科手術中および/または後に上面シートが特定されるのに同様な問題が提起され得る。この点により外科医あるいはその補助要員による上面シートの存在が見過ごされる危険が明らかに増す。理解される通り、非生分解性の上面シートが体内に残された場合には、これにより問題の患者に関して深刻な臨床状況が起こり得る。従って、本発明の好ましい実施例では、染料がその上面シートあるいは上面シートの部分上あるいは内に含まれて上面シートの視認性が改善されている。
【0072】
もう一つの尚一層好ましい本発明の実施例では、上面シートが生分解性材料から調製される。例えば、適切な生分解性材料の例には参照してここに含まれるWO特許 2004/028583の6頁第3行から7頁第32行に言及されるポリマー材料が含まれる。この場合には上面シートは手術後必ずしも除去の必要はなく体内に残されても良い。
【0073】
本発明のスポンジは望ましい形状および/または使用目的と入手可能な処理器具に応じて寸法が調製され得る。通常は、しかしながら、本発明のスポンジの厚みは2〜10ミリといった1〜20ミリの範囲であろう。該スポンジ厚は1ミリ以上であることが好ましい。
【0074】
止血スポンジは殺菌処理を受けるのが好ましい。殺菌の好ましい方法にはスポンジを乾燥した熱、酸化エチレン(EtO)、あるいは放射線に暴露することが含まれるが、その他の殺菌方法も予想され得る。乾燥した熱による殺菌は通常110〜200℃間の温度でのスポンジの加熱によって行われる。特に、温度は110〜160℃の範囲、例えば110〜140℃の変動幅、あるいは120〜180℃の変動幅、あるいは130〜170℃の変動幅、あるいは130〜160℃の変動幅、あるいは120〜150℃の変動幅にあって良い。さらに、時間は1〜4時間といった例えば1時間と5〜3時間の間、あるいは2〜4時間の特に15分から6時間の間の時間未満であって良い。
【0075】
EtOによる殺菌方法は専門技術者には知られているものである。
【0076】
さらにもう一つの実施例では、殺菌はベータあるいはガンマ放射線の照射を加えて行われても良い。一回当たりの放射量は、通常、例えば、20〜60kGy、あるいは25〜50kGy、あるいは15〜25kGy、の特に約15kGy、20kGyあるいは25kGyの10〜60kGyの変動範囲にある。この処理によりスポンジの生物負荷が減少すると同時に、生成物中の分子連鎖の架橋結合が付加され得る。
【0077】
ある特別な実施例では、本発明の止血スポンジはスポンジを安定させる化学的架橋結合剤で処理されなかったが、その代わりに、下記に説明されるように乾燥した熱により処理された。このように、ある好ましい実施例では本発明の止血スポンジには化学的架橋結合剤が含まれない。用語、化学的架橋結合剤は生物学的吸収性材料のスポンジの安定化が可能である任意の合成物として理解されるべきである。この合成物は時々「活性化剤」として言及される。様々な合成物がこのスポンジを化学的に架橋結合すると同時にアルデヒド、特にグルタルジアルデヒドおよびフォルムアルデヒド、アシルアジド、carboiimide(carbodiimide:カルボジイミド?)、ヘクサメチレンジイソシアン酸エステル、ポリエーテル酸化物、1,4―ブタンジオールジグリシジルエーテル、タンニン酸、アルドース砂糖、例えば、D―フラクトース、ゲニピンおよび染料介在光酸化を含めて使用されたがこれに限定はされない。具体的合成物には1−(3−ジメチルアミノプロピル)―3エチルcarboiimide(carbodiimide:カルボジイミド?) 塩化水素(EDC)、ジチオビス(プロピオン酸ジヒドラジド)(DTP)、1−エチルー3(3−ジメチルアミノープロピル)―carboiimide(carbodiimide:カルボジイミド?)(EDAC)が含まれるがこれに限定はされない。このように、本発明の好ましい実施例では、止血合成物は上記の化学的架橋結合剤のものでは処理されなかったので、該止血合成物には上記の化学的架橋結合剤あるいは該合成物を安定化させるために使用された結果として存在するその残留物のいずれもが含まれていない。
【0078】
上で指摘されたように、本発明の止血スポンジは医薬品として使用され得る。特に、本発明の止血スポンジは医科、獣医科、あるいは歯科の外科手術において止血補助材あるいは止血補助材の調製に使用し得る。従って、さらなる局面で、本発明はその必要のある患者の止血を促進する方法に関するもので、前記方法には出血が生じている領域の少なくとも1部分への本発明の止血スポンジの貼付が含まれる。なおさらなる局面で、本発明は出血場所への本発明による止血スポンジの貼付が含まれる出血阻止方法に関する。
【0079】
止血スポンジを表面に貼付する前に、通常は塩水溶液中で濡らされる。本発明の発明者等により、貼付前に濡れたスポンジは、止血する時間が同じスポンジが乾燥状態ですなわち貼付前にスポンジを濡らさずに貼付される場合よりも少なくなることが判明した。このように、好ましい実施例では前記スポンジは表面に貼付される前に濡らされる。止血スポンジはその後引き続き表面に直接貼付され得るとともに、表面に貼付後、圧によって、例えばパッド、手当用品、織布、フィルム等によってあるいは医療慣行において普通に使用されるその他の材料によって然るべき場所に任意に保たれる。表面に貼付後然るべき場所にスポンジが保持されるために好ましい材料とは必要に応じて塩水溶液で濡らした外科用包帯あるいは綿包帯である。
【0080】
本発明の止血スポンジは、例えば椎弓切除全面臀部取替えおよび臀部修正、膝手術、脊髄融合等に関連する整形外科処置のような出血の抑制が望まれる一連の外科処置で、CABG(冠動脈バイパス手術)、弁取替え、大動脈手術、腹部大動脈瘤、頸動脈内壁除去およびなかでも大腿骨―膝窩バイパスに関連するような心臓胸郭/心臓血管処置で使用され得る。
【0081】
もうひとつの実施例では、本発明の止血合成剤は粉末あるいは薄片の形態である。この合成剤は、生物学的吸収性材料の粉末あるいは薄片およびヒアルロン酸あるいはその派生物の粉末あるいは薄片が含まれる合成剤、すなわち、各粉末粒子あるいは薄片に生物学的吸収性材料あるいはヒアルロン酸あるいはその派生物のいずれかが含まれる合成剤を含むよう用意される。この合成剤は、各粉末粒子あるいは薄片に生物学的吸収性材料とヒアルロン酸の両方あるいはその派生物が含まれる合成剤をさらに含むよう用意される。
【0082】
このように、さらなる局面では、本発明の止血スポンジの独特の形状は修正され得る。例えば、本発明のスポンジは本技術における既知の方法によって、例えば、回転床、押出し、粒状化および集約ミキサーにおける処理、ミリング(例えば、ハンマーミルあるいは遠心分離ミルを利用して)、あるいは吹き付け乾燥によって粉末あるいは薄片にミリングされ得る。この粉末あるいは薄片は「そのまま」使用されて良いが、使用前に事前に塩水のような液体により濡らされてペーストにしても良い。
【0083】
用語「ペースト」は「ゲル」、「懸濁液」等々と同様の単語と相互に交換可能に使われて良い。この前後関係において、用語「ペースト」とは液体媒体中に生物学的吸収性材料が分散する固体あるいは半固体分散系のことを言う。生物学的吸収性材料はまたゲルあるいはペースト形成剤としても言及され得る。さらに、ペーストには水を越える強力な粘性があることが特徴である。
【0084】
ペーストは液体媒体中で、特に水溶性媒体中で生物学的吸収性材料(上述の)の粒子を懸濁させて得られ得る。通常、約1〜20ミリリットルの液体媒体が生物学的吸収性材料グラム当たりに採用される。液体媒体は水溶性媒体であるのが好ましい。さらに好ましくは、水溶性媒体にはそこに溶解されるナトリウム塩化物のような塩が含まれる。水溶性媒体は塩水であるのが最も好ましい。
【0085】
従って、さらなる局面では、本発明は生物学的吸収性材料およびヒアルロン酸(HA)あるいはその派生物が含まれる粉末合成剤に関する。
【0086】
尚、本発明のさらに別の局面は水分、生物学的吸収性材料およびヒアルロン酸(HA)あるいはその派生物が含まれるペーストに関する。挙げられた重量割合はペーストの固体材料だけをベースに計算されることが理解されよう。
【0087】
粉末およびペーストの様相に関する詳細と明細は上で検討されたスポンジの様相と同じであると同時に、適当な場合にはいつでもスポンジ、スポンジに存在する付加成分に存在するHAあるいはその派生物の量に関する記述は、必要な変更を加えて本発明の粉末およびペーストの様相に適用されることを意味する。
【0088】
さらなる局面では、本発明は本発明の止血合成剤の調製方法に関する。
【0089】
特別な実施例では、本発明はi)生物学的吸収性材料、ヒアルロン酸あるいはその派生物と溶剤の混合の段階、ii)110〜200℃間の温度で乾燥した熱により段階i)で得られた混合物を処理する段階が含まれる止血合成剤の製造方法に関する。
【0090】
ヒアルロン酸は一般的に高温で不安定であると考えられている。従って、本発明の発明者等が上述の方法により調製されたヒアルロン酸が含まれるスポンジによりヒアルロン酸無しの類似のスポンジより出血の強さが大きく減少したことを発見した時は驚きであった(例6に示される通り)。このように、HAはたとえ乾燥した熱で処理されたとしても活性であったことが示された。
【0091】
本発明の前後関係において、用語「乾燥した熱」とは飽和水蒸気の存在無しに処理が行われるという事実のことを言及している。これらの温度での通常の処理は、飽和水蒸気の存在する例えば蒸気養生とあるいは飽和水蒸気の存在しないすなわち乾燥した熱によるものと区別される。段階ii)における乾燥した熱で混合物を処理する適切な時間は温度により変化するが、通常は15分間から6時間まで、特に30分から4時間の間といった、例えば、1〜4時間あるいは1〜3時間あるいは1〜2時間の変動幅であり得る。
【0092】
乾燥した熱による混合物の処理の段階はa)混合物の三次元構造の安定化、b)殺菌、c) 内毒素の除去が含まれる多くの作用を有する。
【0093】
安定化の作用は少しでもスポンジを崩壊しにくくすると同時にこれによってスポンジの取扱い能力が左右されるので止血スポンジにとって特に重要である。殺菌の作用および内毒素の除去は止血合成剤のあらゆる形態にとって当然重要である。
【0094】
前記方法には別の実施例では段階ii)による処理前に段階i)で得られる混合物の追加の乾燥段階が含まれ得る。
【0095】
生物学的吸収性材料とヒアルロン酸あるいはその派生物および溶剤の混合の方法ならびに止血合成剤の乾燥の方法に関する詳細と明細は、本発明のその他の方法に関して行われ得る下記の説明通りである。
【0096】
本発明はまた上述の方法によって得られる止血合成剤にも関する。前もって化学剤が止血スポンジを架橋結合するために使用された。上述の方法によって得られる止血合成剤の利点は、化学的架橋結合剤の使用に関係ないので化学剤中の残留物が回避されるという点である。
【0097】
上記によって得られ得る止血合成剤の様相に関する詳細と明細は、上に検討されたスポンジに関するものと同じ粉末および薄片の様相であるということが理解されなくてはならないと同時に、これにより適切な場合にはいつでも、スポンジに存在する生物学的吸収性材料、HAあるいはその派生物の量、スポンジに存在する追加成分、合成剤の形態等に関する記述は、必要な変更を加えて上記の方法により得られる止血合成剤の様相に適用されることとなる。
【0098】
生物学的吸収性材料およびヒアルロン酸(HA)あるいはその派生物が含まれる止血合成剤は、例えば、スポンジあるいは粉末あるいは薄片の形態かどうかの止血合成剤の形態に依存し得る多くの様々な方法によって調製され得る。ヒアルロン酸がスポンジに塗布されるべきかどうかあるいはスポンジと一体の部分であるかどうかといったその他の様相は、製造方法の選択に影響し得る。従って、生物学的吸収性材料およびヒアルロン酸(HA)あるいはその派生物が含まれる止血合成剤がスポンジの形態である場合には、前記スポンジはその他の製造方法が予想されても以下の方法の1つによって調製され得る。
【0099】
このように、ある実施例では、本発明は生物学的吸収性材料およびヒアルロン酸あるいはその派生物が含まれる止血スポンジの調製方法にも関しており、前記方法にはi)生物学的吸収性材料のスポンジの110〜200℃間の温度の乾燥した熱による処理の段階、ii)段階i)で得られるスポンジのヒアルロン酸あるいはその派生物中での浸漬の段階が含まれる。
【0100】
乾燥した熱によりスポンジを処理する段階i)は上述のように行われ得る。いずれの理論にも束縛されることなく、本発明の発明者等は、スポンジのHAあるいはその派生物の溶液中への浸漬によって前記HAあるいはその派生物は、HAあるいはその派生物の溶液が前記スポンジの1面以上に塗布される方法と対比してスポンジと一体の成分となるものと信じる。しかしながら、勿論、これはスポンジが溶液中にどれくらい長く浸漬されるかによって変化し得る。従って、スポンジがHAあるいはその派生物の溶液中にわずかな間だけ浸漬されるだけである場合には、スポンジの1面以上にこれを塗布するのと同様であり得る。好ましい実施例では、前記方法にはさらに段階ii)で得られるスポンジの乾燥段階が含まれる。前記乾燥は下に説明されるように行われ得る。
【0101】
もう一つの実施例では、本発明は、前記方法に生物学的吸収性材料およびヒアルロン酸(HA)あるいはその派生物が含まれる止血スポンジを調製する方法に関するもので、前記HAあるいはその派生物は前記スポンジに組込まれ、前記方法にはi)生物学的吸収性材料、ヒアルロン酸あるいはその派生物および溶剤の混合、ii)前記混合物の乾燥の段階が含まれる。
【0102】
前記方法にはある実施例ではさらに段階ii)で得られる混合物の安定化の段階が含まれ得る。この安定化の方法には下に説明される方法、例えば、乾燥した熱によるあるいは化学的架橋結合剤による安定化のいずれかが含まれる。
【0103】
上記方法のいずれかの特別な実施例では、生物学的吸収性材料、ヒアルロン酸あるいはその派生物および溶剤の混合は以下の代案のいずれかによって行われ得る。すなわち、a)生物学的吸収性材料とヒアルロン酸あるいはその派生物の混合ならびにその後の引き続く溶剤の添加、b)生物学的吸収性材料の溶液とヒアルロン酸溶液の混合、c)生物学的吸収性材料とヒアルロン酸あるいはその派生物の溶液との混合、d)生物学的吸収性材料の溶液のヒアルロン酸あるいはその派生物との混合
【0104】
さらには、前記混合は泡立て、攪拌、回転、静的混合、静止混合、あるいは遠心力分離、等の力学的影響下で特に実施されても良い。
【0105】
例えば、単独生成物のブレンド用の一連の静的混合装置を設計・製造するBollin Dale社製の多くの様々な静的混合装置が存在する。静的混合は時々静止混合とも呼ばれる。添加装置および内部注入器の適用によって、色、風味あるいは酸が生成物の流れに導入可能である。
【0106】
このように、生物学的吸収性材料およびヒアルロン酸(HA)あるいはその派生物が含まれ、前記HAあるいはその派生物が前記スポンジに組込まれる止血スポンジの調製方法には、特に次の段階、すなわち、i)特に、ゼラチン、コラーゲン、キチン質、キトサン、アルジネート、セルロース、酸化セルロース、酸化再生セルロース、カルボキシルメチルセルロース(CMC)、水酸エチルセルロース(HEC)ポリグリコール酸、ポリ酢酸、これらの派生物およびこれらの混合物からなるグループから選定され得る生物学的吸収性材料の攪拌されたあるいは泡立てられた溶液の供給、ii)HAあるいはその派生物の溶液の供給、iii)上記i)およびii)で供給された溶液の混合、iv)前記混合物の乾燥が含まれ得る。
【0107】
生物学的吸収性材料およびヒアルロン酸(HA)あるいはその派生物が含まれ、前記HAあるいはその派生物が前記スポンジに組込まれる止血スポンジの前記調製方法には、特に、さらにスポンジの安定化段階が含まれる。
【0108】
本発明の好ましい実施例では、上述の溶剤および/または溶液は水溶液である。前記水溶液には特にさらに1種以上の塩類、緩衝剤類あるいは上述のもののいずれかといったその他の適当な化合物が含まれ得る
【0109】
好ましい生物学的吸収性材料はゼラチンである。ある事例では、溶液は泡立てられるか攪拌されるかあるいはその他の力学的力を受ける必要があり、その結果望ましい質感が得られる。本発明の好ましい実施例では、攪拌されたあるいは泡立てされた溶液の質感は攪拌されたクリームのものに類似している。生物学的吸収性材料の適当な濃度は選択材料に応じて変化しようが、通常は10%から20%(重量/容積比)の変動幅といった5%から30%(重量/容積比)の変動幅にあろう。温度は25℃から60℃までの変動幅に維持されるのが好ましく、35℃から55℃までの変動幅であるとさらに好ましい。
【0110】
好ましい実施例では、前記の混合は実施例b)すなわち、生物学的吸収性材料のヒアルロン酸あるいはその派生物の溶液の混合によって行われ得る。
【0111】
上記ヒアルロン酸溶液あるいはその派生物はゲルの形態で供給され得るのも好ましい。HAあるいはその派生物の正確な濃度は使用されるHAあるいはその派生物に大きく依存し得る。一般的に言えば、溶液は液体が過ぎてもまた粘性が過ぎても良くない。本発明者等により良好な結果は1%から5%(重量/容積比)特に2%から4%(重量/容積比)の濃度を使用して得られたことが判明した。混合時に生物学的吸収性材料の非均一な混合物に至る可能性のある攪拌されたあるいは泡立てられた溶液の冷却を回避するためには、HA溶液は25℃から50℃の変動範囲、例えば、25℃から40℃の変動範囲、あるいは25℃から35℃の変動範囲の温度といったわずかに高い温度に保たれるのが好ましい。
【0112】
生物学的吸収性材料と溶剤の混合は、生物学的吸収性材料の凝固が回避されるように、通常、機械的な影響下で行われる。このように、混合中、および/または直後には、生成混合物は、好ましくは、専門技術者にとって分かっている通りの、高速の回転、泡立て、回転、遠心分離がされるかあるいはその他の類の機械的な影響を受けなくてはならない。HAあるいはその派生物の溶液は引き続き生物学的材料あるいはその派生物の前記溶液と混合される。
【0113】
混合後、生成混合物は適当な盆に注入されるかあるいは細かく穿孔されたテフロンシート上あるいは例えば、およそ0.4〜0.6センチといった平均直径0.1〜1.5センチの孔の付いたシリコンシート上に置かれて得ると同時に、乾燥が、その後、特に、約30℃といった25℃〜35℃の間の温度であって良い、約20℃〜40℃の温度で6時間〜20時間の間行われる。時間は特に約12〜24時間であって、通常は約16時間であって良い。望まれる場合には、生成スポンジ材料は約110℃〜200℃の変動範囲といった高温の乾燥した熱による処理によって安定化され得る。安定化時間は温度によって変わるが通常は約15分から6時間までであろう。乾燥した熱による安定化は上述のように行われ得る。
【0114】
代替実施例では、スポンジは2溶液の混合物の冷凍乾燥によって調製される。
【0115】
尚、もう一つの局面では、本発明は生物学的吸収性材料およびヒアルロン酸(HA)あるいはその派生物が含まれる止血スポンジの調製方法に関するもので、前記HAあるいはその派生物はスポンジの1面以上に塗布され、前記方法にはi)生物学的吸収性材料が含まれるスポンジの提供、ii)HAあるいはその派生物の溶液の提供、iii)HAあるいはその派生物のスポンジの1面以上への前記溶液の塗布、ならびにiv)生成スポンジの乾燥の段階が含まれる。
【0116】
前記方法には、ある実施例では、さらにスポンジの安定化の段階が含まれて良く、前記安定化は特に次の段階i)、iii)および/またはiv)の1つ以上の後に行われて良い。安定化方法は下述されるもののうちのいずれかであり得ると同時に、これには乾燥によるおよび/または化学的架橋結合剤によるその処理が含まれるがこれには限定されない。
【0117】
特に、生物学的吸収性材料はゼラチン、コラーゲン、キチン質、キトサン、アルジネート、セルロース、酸化セルロース、酸化再生セルロース、カルボキシルメチルセルロース(CMC)、水酸エチルセルロース(HEC)ポリグリコール酸、ポリ酢酸、これらの派生物およびこれらの混合物からなるグループから選定されて良い。上述と同様に、スポンジは市販で入手可能なサージフォームRスポンジといったゼラチンスポンジが好ましい。HA溶液は乾燥段階と上述と同様であるのが好ましい。HA溶液は専門技術者にとって既知の任意の従来技術によってスポンジの1面以上に塗布され得る。HAあるいはその派生物の塗布はスポンジの吹き付けあるいは塗布といった方法によって行われ得る。
【0118】
本発明による止血粉末あるいは薄片はある実施例では生物学的吸収性材料のスポンジのミリングならびにその後のHAあるいはその派生物の粉末あるいは薄片との混合によって調製される。
【0119】
もう一つの実施例では、生物学的吸収性材料およびヒアルロン酸あるいはその派生物が含まれるスポンジのミリングによって調製され得る。前記スポンジの粉末あるいは薄片へのミリングは、例えば、回転床、押出し、粒状化、および集約ミキサー処理、ミリング(例えば、ハンマーミルあるいは遠心分離ミルを使用する)あるいは吹き付け混合による既知の技術方法によって行われて良い。この粉末あるいは薄片は「そのまま」使用されても良いかあるいは使用前に塩水といった液体で事前に濡らされても良く、これによってペーストができる。このペーストの調製は上述のように行われて良い。
【0120】
生物学的吸収性材料あるいは生物学的吸収性材料とHAあるいはその派生物が含まれるスポンジは特に安定化されたものであり得る。
【0121】
上述の安定化段階は特に記述がない限り任意の方法で行われて良い。スポンジの安定化の好ましい方法には110℃から200℃の間の温度でのスポンジの加熱が含まれる。特に温度は110℃から160℃の間の変動幅で、例えば、110℃から140℃の間の変動幅、あるいは120℃から180℃の間の変動幅、あるいは130℃から170℃の間の変動幅、あるいは130℃から160℃の間の変動幅、120℃から150℃の間の変動幅、であって良い。時間は温度に応じて変化するが特に、1時間〜4時間、例えば1.5時間〜3時間の間あるいは2時間〜4時間の間といった15分と6時間の間であって良い。
【0122】
しかしながら、このスポンジのその他の安定化方法には時々活性化剤として言及されるスポンジの化学的架橋結合剤による処理が含まれる。この適切な架橋結合剤の例には接着剤、特に、グルタルジアルデヒドおよびフォルムアルデヒド、アシルアジド、carboiimide(carbodiimide:カルボジイミド?)、ヘクサメチレンジイソシアン酸エステル、ポリエーテル酸化物、1,4―ブタンジオールジグリシジルエーテル、タンニン酸、アルドース砂糖、例えばD−フラクトース、ゲニピンおよび染料媒介光酸化剤が含まれるがこれに限定はされない。特定の化合物には1−(3−ジメチルラミノプロピル)―3―エチルカーボリミド 塩化水素(EDC)、ジチオビス(プロピオン酸 ジヒドラジド) (DTP)、1−エチル3−(3−ジメチルラミノープロピル)―カルボジイミド(EDAC)が含まれるが限定はされない。
【0123】
上記方法に言及される乾燥段階は特に約20℃から40℃の温度で、通常、6〜20時間の間、で行われて良く、特に温度は約300℃といった25℃から約35℃の間であって良い。時間は特に約12時間から約24時間の間で、通常は約16時間の間であって良い。
【0124】
乾燥段階はもう一つの実施例では冷凍乾燥によって行われて良い。
【0125】
上記方法のすべてには追加の殺菌段階が含まれ、前記段階は一般的に上記方法の段階後に行われる。好ましい殺菌方法には止血合成剤を乾燥した熱、エチレン酸化物(EtO)あるいは放射線に当てることが含まれるが、その他の殺菌方法が見込まれても良い。乾燥した熱による殺菌は通常、110℃から200℃の間の温度のスポンジの加熱によって行われて良い。特に、温度は110℃から160℃の変動幅、例えば、110℃から140℃の変動幅あるいは120℃から180℃の変動幅、あるいは130℃から170℃の変動幅、あるいは130℃から160℃の変動幅、あるいは120℃から150℃の変動幅であって良い。さらには時間は、例えば、1時間から5〜3時間までの間、あるいは2時間から4時間の、1時間から4時間までの間といった特に15分間から6時間までの間であって良い。
【0126】
もう一つの実施例では、殺菌はEtOによるスポンジの処理によって行われ得る。このEtOを伴う合成剤の殺菌方法は専門技術者には良く知られている。さらにもう一つの実施例では殺菌はベータあるいはガンマ放射線のような放射線を加えることによって行われて良い。通常1回当たりの照射量は10〜60kGyの変動幅、例えば、20〜60kGyあるいは25〜50kGy、特に20kGyあるいは25kGyにある。この処理によりスポンジの生物負荷減るとともに、生成物の分子連鎖の架橋結合が付加され得る。本発明のある実施例では、止血合成剤は乾燥した熱による処理によって安定化される。この処理もまた殺菌作用を有し得るので、この実施例に関して殺菌の段階は安定化段階と同じであって良い。
【0127】
本発明の発明者等は驚くべきことに乾燥した熱あるいはEtOにより殺菌されたスポンジはeビームにより殺菌されたスポンジよりより安定しているようであることを発見した。
【0128】
本発明はさらに以下の非限定的な事例によって例示される。
【実験値】
【0129】
以下のものにおいて同一なものであって市販で入手可能なスポンジサージフォームR およびスポンゴスタンR は参照が相互交換可能に利用されて良い。
【0130】
USP24による水分吸収の測定は吸収性ゼラチンスポンジから約10ミリグラムの部分を切断し、正確に重さを量ると同時に水のビーカーに入れる。完全に濡れるまでかつすべての空気が追い出されるまで、組織が壊れないよう注意して指の間でゆっくりこねる。スポンジの部分を水から持ち上げると同時に2枚の吸収紙の間をしっかりと絞りながら2回ふき取る。絞られたスポンジを約20ミリリットルの水が含まれるタラ重量計測ビン中に降ろすと同時に2分間そのままにする。適当な鈎つき器具を使ってスポンジを水から持ち上げ、5秒間排水させるとともに、スポンジを廃棄する。再度ビンと水の重量を計量し、水中の損失分がスポンジによって吸収された水分の重量を示す。
【0131】
ブタの脾臓の例―外科処置
ブタは脾臓血管が太いので選択された動物で、血液量が多くかつ各動物に関する数多くの止血上の比較が可能となった。試験合成剤は毎回の脾臓でなされる外科切開に適用された。止血剤の無い場合に各調査の開始時および最後に12分の一貫した出血を示す塩水湿潤ガーゼを使用してネガティブコントロールが行われた。
【0132】
主要試験パラメーターは止血時間あるいは出血の強さの減少である。
【0133】
中間線腹部切開が脾臓を露出するために行われた。長さ10〜15センチで深さ2ミリの切開が脾臓の中で行われた。試験合成剤(あるいは制御剤)は2分間デジタル圧により加えられ、合成剤が除かれると同時に、出血強さの評価が行われた。引き続き出血強度の評価が5〜7分間の30秒ごとに行われた。
【0134】
約20の切開が各ブタの脾臓に行われた。
【0135】
例1―スポンジ#1
HAゲル(重量/容積比)は1,500〜1,800kDaの分子量のStreptococus (レンサ球菌)Equi spヒアルロン酸ナトリウム塩(バイオケミカ)から調製された。該ゲルは泡立てされたばかりのゼラチン(16.7%(重量/容積比))に添加された。HAの添加直後に、混合物はゼラチンの凝固が回避されるよう高速で回転された。不均一な混合物が回避されるためには、温度が室温以下であってはならない。混合後、混合物は盆に注入されるかあるいは細かく穿孔されたテフロンシート上に置かれ、次いでおよそ30℃かつ相対湿度10%で約16時間の間空気が乾燥された。こうして調製されたスポンジは通常約25%〜50%(重量/重量比)のHA含有量を有した。
【0136】
例2―スポンジ#2の調製
HAゲル(2%(重量/容積比))が1,500から1,800kDaの分子量のStreptococcus(レンサ球菌) Equi spヒアルロン酸ナトリウム塩(バイオケミカ)から調製された。ゲルは発泡したばかりのゼラチン(16.7%(重量/容積比))に添加された。HAの添加直後、混合物はゼラチンの凝固を回避するよう高速で回転された。不均一な混合物が回避されるためには、温度は室温以下であってはならない。混合後、混合物は盆に注入されるかあるいは細かく穿孔されたテフロンシート上に置かれ、引き続き静かに冷凍乾燥(7時間後の生成物温度は30℃)された。このように調製されたスポンジは例1で調製されたスポンジに比較してより多くの多孔性構造を有した。さらに、この方法はより厚さの厚いスポンジを調製するのに適切であったことが判明した。
【0137】
例3―スポンジ#3の調製
HAゲル(2(重量/容積比))が1,500から1,800kDa の分子量のStreptococcus (レンサ球菌)Equi spヒアルロン酸ナトリウム塩(バイオケミカ)から調製された。ゲルはゼラチンスポンジ((サージフォームR) )の上面上に塗布され、引き続き温度およそ30℃、かつ相対湿度10%で約16時間空気が乾燥された。このようにして調製されたスポンジは通常少なくとも3%(重量/重量比)の含有量を有する。
【0138】
例4―USP24による水分吸収量の測定
スポンジ#1は上述の水分吸収試験(USP24)を受けた。USP24の方法はHA無しの吸収性ゼラチンスポンジ用に意図されている。USP24方法では、スポンジのこねりがゼラチンスポンジに関して最適化された。本発明のスポンジに関するこねりは好ましくはさらにゆっくりでなくてはならない。
【0139】
吸収特性は市販で入手可能なゼラチンスポンジサージフォームRと比較された。次の結果が得られた。
【0140】
【表1】

【0141】
分かる通り、スポンジ#1によって吸収される水と吸収性ゼラチンスポンジによって吸収される水との間の比は27.2/56.5=0.48であった。
【0142】
さらに湿潤スポンジの視認検査によって、スポンジ#1はサージフォームRスポンジが膨張した程度より相当少なく膨張したことが明らかであった。
【0143】
例5−ブタ脾臓の例における止血有効性の評価
この検討の目的は、ブタの脾臓に行われた小さな、自由に出血する切開部に貼付した場合に市販で入手可能なゼラチンスポンジ(サージフォームR)と比較した本発明のスポンジの有効性を比較することであった。スポンジ(6.5平方センチ)が殺菌塩水中で事前に濡らされ、引き続きできるだけゆっくりこねられた後に貼られた。
【0144】
ブタは各動物に関する多くの止血上の比較を可能にする多量の血液量と同時に太い脾臓血管を有するので選択された動物であった。スポンジは試験期間中に脾臓の複数の外科切開部に1ヶ所毎に貼付された。ブタは安楽死されると同時に麻酔からの回復は許されなかった。
【0145】
主要な試験パラメーターは止血時間であった。
【0146】
中間線腹部切開が脾臓を露出させるために行われた。1.0センチの切開(深さ2ミリ)が脾臓部に行われた。2ヶ所の切開が塩水で濡らしたガーゼにより一貫した出血を示すために行われるとともに、3ヶ所の切開が試験される各スポンジに関して行われた。
【0147】
試験スポンジ(あるいは制御剤)にデジタル圧が2分間加えられた。止血評価がデジタル圧の追加の30秒につき30秒毎に行われた。塩水に濡らしたガーゼを使用してネガティブコントロールが止血剤の無い状態で12分を越える一貫した出血を示すよう調査の開始時および終了時に行われた。
【0148】
試験は止血が少なくとも5分以内に停止しない場合、および/または前回の検査中に出血が減少しないでスポンジが飽和した場合には停止された。以下の結果が得られた。
【0149】
【表2】

【0150】
前回のブタ脾臓例に見られるものより長い止血時間を示すサージフォームRに関する理由は比較的小さなスポンジ(6.5平方センチ)によって説明されることができた。
【0151】
得られた結果から分かるように、本発明のスポンジの止血特性(スポンジ#1および#3)はサージフォームRに比較して明らかに優れていた。特に、スポンジ#1はサージフォームRに比較して少なくとも2分の止血平均時間の差を有して極めて有効であった。
【0152】
例6―ブタ脾臓例における出血強さの縮小の評価
次の様々な合成剤が試験された。
HA入りおよび無し(S4対S1)のゼラチンスポンジ
HA入りおよび無し(S9対S8)の酸化セルロースのスポンジ
HA入りおよび無し(S3対S2)のゼラチン粉末
トロンビン入り(S7)ゼラチンスポンジ
【0153】
S1スポンジは市販で入手可能なゼラチンスポンジスポンゴスタンR.であった。S4は例1のもとで説明された通りに調製されると同時にその後引き続き紙袋に入れて150℃で90分間オーブンに入れて乾燥した熱で処理された。S7スポンジはスポンゴスタンRであって、これがさらに1000U/ミリリットルのトロンビン溶液中に浸漬された。
【0154】
S8スポンジは、サージセルRと呼ばれる市販で入手可能な酸化セルロースのスポンジであった。S9スポンジはHAのゲル状態の市販で入手可能なスポンジサージセルRをスポンジ中のHAの濃度が10%重量/重量比になるまで濡らして調製された。HA付きのスポンジはその後引き続き冷凍乾燥された。
【0155】
HA(S2)無しの粉末はスポンゴスタンRスポンジのミリングによって調製されると同時に、塗布の直前に粉末がペーストを得るために塩水と混合された。HA(S3)入り粉末は同様にしてスポンゴスタンRのミリングによって調製されると同時に、その後引き続き前記ミリングによって得られた粉末がHA粉末と混合されるとともに、その後、塗布直前にこの混合物にペーストを得るために塩水が添加された。
【0156】
要約すると、サンプル類の止血有効性は次の方法によって評価された。切開が脾臓内に行わると同時に、生じる出血の強さが0〜5まで変動するスケールで評価された。引き続き問題のサンプルは切開部に貼付されると同時に、事前に決められた間隔で、サンプルは切開部から取り除かれると同時に、出血の強さはサンプルが再貼付される前に評価された。粉末サンプルおよび酸化セルロースサンプルはHA無しの合成剤に関してもまた出血強さの減少に大きく影響しそうである切開部から取り除かれなかった。出血強さはこれらの事例においてサンプルを通過する血液漏れ量によって評価された。各実験は7回の繰り返し(4匹のブタに分散される)が各タイプのサンプルに関して行われる前に、止血(スケールで0)が起こらなかった場合には、各ブタに関して3回の繰り返しつまり全部で12回の繰り返しが行われた参照サンプルに関しては除いて、7分後に完了した。
【0157】
出血強さの減少は実験の開始時と完了時の間の評価出血強さの差として各実験に関して計算された。これらの数値から生ずる平均値が下表に示されている。
【0158】
【表3】

【0159】
結果:結果によりゼラチンスポンジ、ゼラチン粉末、およびHA入り酸化セルロースのスポンジの存在により出血強さがHA無しの同一スポンジおよび粉末よりも減少することが示されている(S4対S1、S3対S2、およびS9対S8)。
【0160】
さらに、結果によりまたHA入りゼラチンスポンジはトロンビン入りゼラチンスポンジ(S4対S7)よりも出血強さのより大きな減少が生じることも示されている。
【0161】
同様な検討において、HA入りでないあるいは重量比10%HA入りLyostyptコラーゲン圧迫包帯(市販で入手可能)の出血強さの減少が測定された。HAの入っていないLyostyptコラーゲン圧迫包帯に関しては、出血強さの平均減少値は1.00であることが判明する一方で、重量比10%HA入りLyostyptコラーゲン圧迫包帯では1.43であることが判明した。このように、このタイプの止血合成剤もまたHAの存在が出血強さの減少を向上させるようである。
【0162】
Lyostyptコラーゲン圧迫包帯は出血強さの評価のために切開部から取り除かれることはなかった。
【0163】
例7―ブタ脾臓見本における止血時間、貼付方法の効果およびスポンジ中のトロンビンの存在の評価
スポンジは例1で説明された通りに調製された。引き続き、各スポンジは次のように処理された。試験サンプルBは湿らされると同時に、殺菌塩水で一杯のびんの中で30秒間こねられると同時に貼付前に絞り取られた。試験サンプルBは貼付前に事前に濡らされたガーゼ上に置かれた。
【0164】
試験サンプルDおよびEは殺菌塩水2ミリリットルの入った瓶中に入れられた。スポンジは極めてゆっくりこねられると同時に、すべての塩水がスポンジ全体に吸収されるのを確実にするため上下がひっくり返された。最大1分後、スポンジの底面が「Parafilm」 の上面フィルム上に上向きに置かれると同時に貼付の準備がされた。
【0165】
試験サンプルFおよびGは2ミリリットルの瓶に入れられた。トロンビン溶液(1000U/ミリリットル)およびスポンジが極めてゆっくりとこねられると同時に、トロンビン溶液がすべてスポンジ全体に確実に吸収されるよう上下がひっくり返された。最大1分後、スポンジの底面側が「Parafilm」の上面フィルムの上側に置かれると同時にその後、貼付の用意がなされた。
【0166】
試験サンプルJ、およびKは乾燥して貼付された。
【0167】
試験サンプルLは試験サンプルDおよびEに関して説明されたように塩水により濡らされた。
【0168】
結果
【0169】
【表4】

【0170】
結果によりスポンジが濡れて貼付される場合止血時間はスポンジが乾燥して貼付される場合よりも短いことが示されている。(D対JおよびE対K)
【0171】
さらに、トロンビンで濡れたスポンジはトロンビン塩水で濡らした場合よりも尚一層止血時間を短縮するようである。(F対DおよびG対E)
【0172】
より大きな分子量のHAもまたより小さい分子量のHAより止血時間を短縮するようである。(E対D、およびG対F)
【0173】
例8:物質の搬送媒体としての本発明のスポンジの使用
本発明はトブラマイシン硫酸塩の放出に関して市販で入手可能なサージフォームRと比較された。
【0174】
両方の調製とも直径14ミリの小さなスポンジ切断されると同時にトブラマイシン硫酸塩溶液中に浸漬された。媒体として役立つ調製物からのトブラマイシン硫酸塩の放出がUSP HPLC方法を利用するトブラマイシン硫酸塩の条件によって測定された。実際の放出はフランツ拡散細胞中で起こると同時に、サンプルが0、10、30、60、120、1440、2880および3975分後に取り上げられた。トブラマイシン硫酸塩の量は標準溶液をベースに計算された。
【0175】
結果はゼラチンおよびHAが含まれるスポンジが市販で入手可能なゼラチンスポンジは3975分の調査の連続で放出したものより多くのトブラマイシン硫酸塩を放出する傾向があることであった。
【0176】
さらに、10%重量比HAが含まれるコラーゲンスポンジが同一の設定条件にて調査された。上記に関して、結果によりトブラマイシン硫酸塩の放出がHAによるコラーゲンスポンジからはゼラチンスポンジ(サージフォームR)からよりもよりも多いことが判明した。
【0177】
さらに、本調査からカルボプラチンの放出、重量比10%HAのコラーゲンスポンジおよび市販で入手可能なサージフォームが類似の調査で試験された。カルボプラチンの放出に関して得られた結果によりHAが含まれる調製品はゼラチンスポンジよりもより多く試験物質を放出するトブラマイシン について見られた傾向が確認された。上記結果により本発明およびHAが含まれるコラーゲンスポンジは様々な物質向けの媒体として利用可能であることならびにその放出はゼラチンスポンジからよりも多いようであることが判明した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生物学的吸収性材料とヒアルロン酸(HA)あるいはその派生物が含まれる止血合成剤
【請求項2】
前記合成剤に水を除いた全合成剤重量ベースで計算された少なくとも0.5%(重量比)のHAあるいはその派生物、あるいは少なくとも1%(重量比)のHAあるいはその派生物、あるいは少なくとも2%(重量比)のHAあるいはその派生物、あるいは少なくとも3%(重量比)のHAあるいはその派生物、あるいは少なくとも5%(重量比)のHAあるいはその派生物、あるいは少なくとも7%(重量比)のHAあるいはその派生物、あるいは少なくとも8%(重量比)のHAあるいはその派生物、あるいは少なくとも10%(重量比)のHAあるいはその派生物、あるいは例えば少なくとも25%(重量比)のHAあるいはその派生物といった少なくとも20%(重量比)のHAあるいはその派生物のような少なくとも15%(重量比)のHAあるいはその派生物、あるいは、好ましくは例えば少なくとも40%(重量比)のHAあるいはその派生物のような少なくとも35%(重量比)のHAあるいはその派生物が含まれるといった少なくとも30%(重量比)のHAあるいはその派生物が含まれる請求項1による止血合成剤
【請求項3】
前記HA派生物がHAの塩あるいはエステルである請求項2による止血合成剤
【請求項4】
前記生物学的吸収性材料がゼラチン、コラーゲン、キチン質、キトサン、アルジネート、例えば、酸化セルロース、酸化再生セルロース、カルボキシルメチルセルロース(CMC)あるいは、水酸エチルセルロース(HEC)などのセルロース、ポリグリコール酸、ポリ酢酸、これらの派生物およびこれらの混合物からなるグループから選定される請求項1から請求項3までのいずれかの請求項による止血合成剤
【請求項5】
前記合成剤に、例えば最大95%(重量比)の前記生物学的吸収性材料あるいは最大90%(重量比)の前記生物学的吸収材といった最大99%(重量比)の前記生物学的吸収性材料、あるいは、例えば最大75%(重量比)の前記生物学的吸収性材料の最大80%(重量比)の前記生物学的吸収性材料といった最大85%(重量比)の前記生物学的吸収性材料料、好ましくは、例えば最大60%(重量比)の前記生物学的吸収性材料の最大65%(重量比)の前記生物学的吸収性材料といった最大70%(重量比)の前記生物学的吸収材が含まれる請求項1から請求項4までのいずれかの請求項による止血合成剤
【請求項6】
さらに少なくとも一つの血液凝固因子が含まれ、前記血液凝固要因がトロンビン、あるいはその前駆体、Va因子、VIIa因子、VIlla因子、IXa因子、Xa因子、XIa因子、XIIa因子、XIIIa因子およびカルシウムイオンからなるグループから選定される請求項1から請求項5までのいずれかの請求項による止血合成剤
【請求項7】
さらに、自然発生アミノ酸、単糖、二糖、あるいは複糖の糖類、ポリグリコール、蛋白質およびその混合物が含まれるグループから選定されるトロンビン安定剤が含まれる請求項6による止血合成剤
【請求項8】
さらに少なくとも一つの抗線維素溶解剤が含まれ、前記線維素溶解剤がアプロチニン、ペップスタチン、ロイペプチン、アンチペイン、チモスタチン、ガベキサート、メシレート 、 フィブロネクチン, ε-アミノカプロン酸、およびトラネキサム酸からなるグループから選定される請求項1から請求項7までのいずれかの請求項による止血合成剤
【請求項9】
前記合成剤がスポンジの形態である請求項1から請求項8までのいずれかの請求項による止血合成剤
【請求項10】
前記スポンジがサージフォームのように吸収性のあるゼラチンスポンジより少ない水分を吸収する請求項9による止血スポンジ
【請求項11】
請求項1から請求項11までのいずれかの請求項による止血スポンジによって吸収される水分とサージフォームのような吸収性ゼラチンスポンジによって吸収される水分との間の比がUSP24により測定された場合に最大で0.95である請求項10による止血スポンジ
【請求項12】
前記HAあるいはその派生物が前記スポンジに組込まれた請求項9から請求項11までのいずれかの請求項による止血スポンジ
【請求項13】
前記HAあるいはその派生物がスポンジの一面以上に塗布された請求項9から請求項11までのいずれかの請求項による止血スポンジ
【請求項14】
前記止血スポンジの少なくとも一面が上面シートによって被覆された請求項9から請求項13までのいずれかの請求項による止血スポンジ
【請求項15】
前記上面シートが取り外し可能である請求項14による止血スポンジ
【請求項16】
前記合成剤が粉末あるいは薄片の形態である請求項1から請求項8までのいずれかの請求項による止血スポンジ
【請求項17】
前記合成剤が乾燥している請求項1から請求項16までのいずれかの請求項による止血スポンジ
【請求項18】
前記合成剤が水分を含むペースト状である請求項1から請求項8までのいずれかの請求項による止血スポンジ
【請求項19】
内科、獣医あるいは歯科の外科手術における止血補助品としての請求項1から請求項18までのいずれかの請求項による止血の合成剤あるいはスポンジの使用
【請求項20】
内科、獣医あるいは歯科の外科手術に用いられる止血補助品の調製向けの請求項1から請求項18までのいずれかの請求項による止血の合成剤あるいはスポンジの使用
【請求項21】
作用剤の搬送用媒体としての請求項1から請求項18までのいずれかの請求項による止血合成剤あるいはスポンジの使用
【請求項22】
出血場所に請求項1から請求項18までのいずれかの請求項による止血合成剤の塗布あるいはスポンジの貼付が含まれる出血抑制方法
【請求項23】
i)生物学的吸収性材料およびヒアルロン酸あるいはその派生物および溶剤の混合する段階、ii)110〜200℃間の温度の乾燥熱を利用してi)で得られる混合物を処理する段階が含まれる止血合成剤の製造方法
【請求項24】
前記方法に、段階ii)により混合物を処理する前に段階i)で得られる混合物の乾燥段階がさらに含まれる請求項23による方法
【請求項25】
前記方法にi)生物学的吸収性材料の110〜200℃間の温度の乾燥した熱を利用するスポンジの処理段階、ii)i)で得られたスポンジをヒアルロン酸あるいはその派生物に浸漬する段階が含まれる請求項9による止血スポンジの調製方法
【請求項26】
前記方法にさらに段階ii)で得られるスポンジの乾燥段階が含まれる請求項25による方法
【請求項27】
前記方法にi)生物学的吸収性材料、ヒアルロン酸あるいはその派生物および溶剤の混合ならびにii)前記混合物の乾燥段階が含まれる請求項12による止血スポンジの調製方法
【請求項28】
前記方法にさらに段階ii)で得られる混合物の安定化段階が含まれる請求項27による方法
【請求項29】
生物学的吸収性材料、ヒアルロン酸あるいはその派生物および溶剤の混合が、次の代案、a) ヒアルロン酸あるいはその派生物との生物学的吸収性材料の混合ならびにその後に続く溶剤の添加、b)生物学的吸収性材料の溶液のヒアルロン酸あるいはその派生物溶液との混合、c)生物学的吸収性材料のヒアルロン酸あるいはその派生物の溶液との混合、d)生物学的吸収性材料溶液のヒアルロン酸あるいはその派生物との混合、のいずれかによって実施され得る請求項23から請求項28までのいずれかの請求項による方法
【請求項30】
前記混合が、泡立て、攪拌、回転、静的混合、静止混合あるいは遠心分離といった機械的影響下で実施される請求項23から請求項29までのいずれかの請求項による方法
【請求項31】
前記方法にi)生物学的吸収性材料が含まれるスポンジの提供、ii)HAあるいはその派生物の溶液、iii)スポンジの一面以上への前記HAあるいはその派生物の溶液の塗布、ならびにiv)生成スポンジの乾燥が含まれる請求項13による止血スポンジの調製方法
【請求項32】
前記方法にさらに段階i)、iii)および/またはiv)のうちの1段階以上の後にスポンジの安定化段階が含まれる請求項31による方法
【請求項33】
前記安定化に110〜200℃間の温度の乾燥した熱による混合物あるいはスポンジの処理あるいは混合物あるいはスポンジの化学的な架橋結合が可能な混合物による処理が含まれる請求項28および請求項32のいずれかによる方法
【請求項34】
前記方法にさらに混合物あるいはスポンジの安定化段階が含まれる請求項23から請求項33までのいずれかの請求項による方法
【請求項35】
生物学的材料がゼラチン、コラーゲン、キチン質、キトサン、アルジネート、セルロース、酸化セルロース、酸化再生セルロース、カルボキシルメチルセルロース(CMC)、水酸エチルセルロース(HEC)ポリグリコール酸、ポリ酢酸、これらの派生物およびこれらの混合物からなるグループから選定される請求項23から請求項34までのいずれかの請求項による方法
【請求項36】
前記HA溶液あるいはその派生物がゲルの形態で提供される請求項23から請求項35までのいずれかの請求項による方法
【請求項37】
前記乾燥が約30℃といった約20℃から40℃間の温度で実施される請求項24あるいは請求項26から請求項36までのいずれかの請求項による方法
【請求項38】
前記乾燥が約16時間といった約6時間から約24時間の間行われる請求項24あるいは請求項26から請求項37までのいずれかの請求項による方法
【請求項39】
前記乾燥が冷凍乾燥によって行われる請求項24あるいは請求項26から請求項36までのいずれかの請求項による方法
【請求項40】
請求項23および請求項24、請求項29および請求項30ならびに請求項34から請求項39までのいずれかの請求項による方法によって得られる止血合成剤

【公表番号】特表2008−505132(P2008−505132A)
【公表日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−519618(P2007−519618)
【出願日】平成17年7月7日(2005.7.7)
【国際出願番号】PCT/DK2005/000475
【国際公開番号】WO2006/005340
【国際公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(500037724)
【Fターム(参考)】