説明

ヒアルロン酸産生促進剤

【課題】安全で、かつ簡便に用いることができる、ヒトにおけるヒアルロン酸産生能を促進させヒアルロン酸量を増加させるヒアルロン酸産生促進剤を提供する。該剤は皮膚外用剤、飲食品、経口用製剤等に好適に用いられる。
【解決手段】アムラ(Phyllanthus emblica、またはEmblica officinale)の植物体またはその抽出物を含むヒアルロン酸産生促進剤。さらにコラーゲンペプチド、および/または、ショウガ科マンゴージンジャー(Curcuma amada ROXB.)の植物体またはその抽出物を含有してもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はトウダイグサ科アムラ(Phyllanthus emblica、またはEmblica officinale)の植物体またはその抽出物を有効成分として含むヒアルロン酸産生促進剤に関する。さらに詳しくは、ヒトにおけるヒアルロン酸産生能を促進させるヒアルロン酸産生促進剤に関する。該ヒアルロン酸産生促進剤は、ヒト皮膚の老化防止(皮膚のハリや弾力保持)、関節炎等の予防・治療、熱傷の初期の治療等に有効に適用され得る。
【背景技術】
【0002】
近年、老化に関する研究が進められている。皮膚老化の原因は、マクロ的にみれば加齢が重要な因子であるが、それに加えて乾燥、酸化、太陽光(紫外線)等による影響も皮膚老化に関わる直接的な因子として挙げられる。皮膚老化の具体的な現象としては、ヒアルロン酸をはじめとするムコ多糖類の減少、コラーゲンの架橋反応、紫外線による細胞の損傷などが知られている。
【0003】
なかでもヒアルロン酸は、細胞間隙への水分の保持、組織内にジェリー状のマトリックスを形成することに基づく細胞の保持、組織の潤滑性と柔軟性の保持、機械的障害等の外力に対する抵抗、および細菌感染の防止など、多くの機能を有している。例えば、皮膚のヒアルロン酸量は加齢とともに減少し、それに伴い、小ジワやかさつき等の皮膚老化が現れるといわれている。そのため、このような老化した皮膚の改善剤として、ヒアルロン酸やコラーゲンを配合した化粧料が数多く提案されている。しかしながらこれら従来の化粧料は、皮膚表面における保湿効果を発揮するだけであり、本質的に老化肌を改善し得るものではない。また、皮膚細胞賦活剤として各種のビタミン類や生薬類を配合した化粧料が提案されているが、これらもやはり老化肌を改善、治療し得るまでには至っていないのが現状である。
【0004】
さらに、関節液中に含まれるヒアルロン酸は、関節軟骨の表面を覆い、関節機能の円滑な作動に役立っている。正常人関節液中のヒアルロン酸濃度は約2.3mg/mLであるが、慢性関節リウマチの場合、関節液中のヒアルロン酸濃度は約1.2mg/mLと低下し、同時に関節液の粘度も著しく低下する(非特許文献1)。また、化膿性関節炎や痛風性関節炎などでも慢性関節リウマチの場合と同様、ヒアルロン酸含量の低下が起こることが知られている(非特許文献2)。上記疾患において、潤滑機能の改善、関節軟骨の被覆・保護、疼痛抑制および病的関節液の改善若しくは正常化のために、関節液中のヒアルロン酸量を増加させることが考えられる。例えば、慢性関節リウマチ患者にヒアルロン酸ナトリウムの関節注入療法を行うと上記の改善が認められることが報告されている(非特許文献3)。同様に、外傷性関節炎、骨関節炎や変形性関節炎においても、ヒアルロン酸の関節注入療法により上記の改善効果が報告されている。(非特許文献4)。
【0005】
しかしながら、上記疾患の治療は長期にわたり、しかも医師の処方を必要とする。従って、日常生活のなかで手軽に治療することができるヒアルロン酸産生促進剤を含有させた皮膚外用剤が望まれていた。
【0006】
また、熱傷受傷後の治癒過程で、壊死組織の下方から増生してくる肉芽組織の初期から組織全体が肉芽組織に置き換えられるまでの期間では、肉芽中にヒアルロン酸が著しく増加することが知られており(非特許文献5)、熱傷の初期の治療薬としても、ヒアルロン酸産生促進剤が期待されている。
【0007】
一方、ヒト細胞のヒアルロン酸を産生する薬剤としては、インシュリン様成長因子−1や上皮成長因子(非特許文献6)およびインターロイキン−1(非特許文献7)などのサイトカイン、あるいはフォルボールエステル(非特許文献8)などが知られているが、いずれも化粧品、入浴剤や医薬品等として簡便にかつ安心して使用することができるものではない。
【0008】
後述するように、本発明はアムラ抽出物を利用した技術であるが、これまでにアムラ抽出物がMMP活性阻害剤(特許文献1)、血流改善剤(特許文献2)、コラーゲン産生促進剤(特許文献3)、テストステロン−5α−レダクダーゼ阻害剤(特許文献4)等に用いられることなどが報告されている。しかし、アムラ抽出物がヒアルロン酸産生促進効果に優れ、ヒト細胞においてヒアルロン酸量を積極的に増加させる作用を有することは、本発明者が知る限りにおいてこれまで全く知られていなかった。なお、特開2003−300824号公報(特許文献5)には、フィランサス・エンブリカ(=アムラ)がヒアルロニダーゼ活性阻害作用を有し、ヒアルロン酸の分解を抑制することが記載されているが、ヒアルロニダーゼ活性阻害(=酵素活性阻害)は、ヒアルロン酸産生作用を促進させヒアルロン酸量を積極的に増加促進させる作用とは全く別異のもので、両作用に関連性はない。
【0009】
上記の他に本発明に関連する技術を記載した文献として、特開2004−123637号公報(特許文献6)に、コラーゲンペプチドがヒアルロン酸産生促進効果を有することが記載されている。しかし本発明者らは、後掲の実施例欄に示すように、アムラ抽出物がコラーゲンペプチドに比べて極めて優れたヒアルロン酸産生効果を奏することを確認した。またここにさらに特開2005−104886号公報(特許文献7)等に記載のようにコラーゲン合成促進作用、チロシナーゼ阻害作用等を有することが知られているマンゴージンジャー抽出物を組み合せた場合、ヒアルロン酸産生促進効果が相乗的に高まることも確認した。本発明でのヒアルロン酸産生促進とはヒアルロン酸量増加を意味する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2006−282561号公報
【特許文献2】特開2006−335708号公報
【特許文献3】特開2008−156287号公報
【特許文献4】特開2005−145902号公報
【特許文献5】特開2003−300824号公報
【特許文献6】特開2004−123637号公報
【特許文献7】特開2005−104886号公報
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】"Arthritis Rheumatism"、vol.10、p.357(1967)
【非特許文献2】「結合組成」、金原出版、481頁、1984年
【非特許文献3】「炎症」、日本炎症学会、11巻、16頁、1991年
【非特許文献4】「結合組織と疾患」、講談社、246頁、1980年
【非特許文献5】「結合組織と疾患」、講談社、153頁、1980年
【非特許文献6】"Biochemica Biophysica Acta"、1014、p.305(1989)
【非特許文献7】「日本産科婦人科学会」雑誌、41巻、1943頁、1989年
【非特許文献8】"Experimental Cell Research"、vol.148、p.377(1983)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、安全で、かつ簡便に用いることができる、ヒトにおけるヒアルロン酸産生能を促進させてヒアルロン酸量を増加させるヒアルロン酸産生促進剤を提供することを目的とする。本発明のヒアルロン酸産生促進剤は、ヒト皮膚の老化防止(皮膚のハリや弾力保持)、関節炎等の予防・治療、熱傷の初期の治療等に有効に適用され得る。特に、このヒアルロン酸産生促進剤の配合により、皮膚のハリや弾力を保持してシワを防ぎ、うるおいのある若々しい肌の状態を維持することのできる皮膚外用剤が提供される。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは上記課題の解決に向けて広く種々の物質にヒアルロン酸産生促進能を調べた結果、アムラまたはその抽出物に極めて優れたヒアルロン酸産生促進作用を有することを見出した。
【0014】
すなわち本発明によれば、アムラ(Phyllanthus emblica、またはEmblica officinale)の植物体またはその抽出物を含むヒアルロン酸産生促進剤が提供される。
【0015】
また本発明は、さらにコラーゲンペプチドおよび/またはショウガ科マンゴージンジャー(Curcuma amada ROXB.)の植物体またはその抽出物を含有する、上記ヒアルロン酸産生促進剤を提供する。
【発明の効果】
【0016】
本発明のヒアルロン酸産生促進剤は優れたヒアルロン酸産生促進作用を有しており、ヒト皮膚の老化防止(皮膚のハリや弾力保持)、関節炎等の予防・治療、熱傷の初期の治療等に有効に適用され得る。特に、本発明のヒアルロン酸産生促進剤を皮膚外用剤(医薬品、医薬部外品、化粧料を含む)等に配合することにより、細胞外マトリックス成分の一つであるヒアルロン酸の産生を促進し、皮膚のハリや弾力を維持してシワを防ぎ、うるおいのある若々しい肌の状態を維持することのできるという効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】実施例におけるヒアルロン酸産生促進効果の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明について詳述する。
【0019】
本発明で用いるアムラ(Phyllanthus emblica、またはEmblica officinale)は、トウダイグサ科コミカンソウ属に属する落葉の亜高木で、インドからマレーシア地域および中国南部にかけて分布しており、インドが原産地と考えられている。アムラは各地方または言語によりそれぞれ固有の名称を有しており、例えば、余柑子、油柑、アンマロク、マラッカノキ、インディアングーズベリー等とも称されている。
【0020】
アムラは生のままでも乾燥したものでも使用することができるが、使用性、製剤化等の点から乾燥粉末あるいは溶媒抽出物として用いることが好ましい。
【0021】
アムラの使用部位としては、特に限定されるものでないが、果実(未熟果実、完熟果実、乾燥果実)、葉、塊根、花、種子等、任意に用いられ得る。中でも果実が好ましく用いられる。アムラの抽出物は常法より得ることができ、例えば、アムラを必要により乾燥した後、抽出溶媒に一定期間浸漬するか、あるいは加熱還流している抽出溶媒と接触させ、次いで濾過し、濃縮して得ることができる。抽出溶媒としては、通常抽出に用いられる溶媒であれば任意に用いることができ、例えば、水、メタノール、エタノール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、グリセリン等のアルコール類、クロロホルム、ジクロルエタン、四塩化炭素、アセトン、酢酸エチル等の有機溶媒を、それぞれ単独あるいは組み合わせて用いることができる。上記溶媒で抽出して得た抽出液をそのまま、あるいは濃縮したエキスを用いるか、あるいはこれらエキスを吸着法、例えばイオン交換樹脂を用いて不純物を除去したものや、ポーラスポリマー(例えばアンバーライトXAD−2)のカラムにて吸着させた後、メタノールまたはエタノールで溶出し、濃縮したものも使用することができる。また分配法、例えば水/酢酸エチルで抽出した抽出物等も用いられる。
【0022】
このようにして得たアムラ抽出物は、安全性が高く、優れたヒアルロン酸産生促進作用を有する。アムラおよびその抽出物にヒアルロン酸産生促進作用があることはこれまで全く知られておらず、本発明者によってこれら作用をもつことが初めて確認されたものである。アムラ抽出物は、例えば太陽化学(株)から「サンアムラ」等として市販もされており、これら市販品を用いてもよい。
【0023】
本発明のヒアルロン酸産生促進剤は、アムラの植物体またはその抽出物のみからなる場合だけでなく、他の成分、例えばコラーゲンペプチド、マンゴージンジャー等と組合せて用いてもよい。本発明者らは、これら成分と組合せた場合、ヒアルロン酸産生促進効果が相乗的に向上し、ヒアルロン酸量が大幅に増加促進されることを確認した。
【0024】
コラーゲンペプチドはコラーゲンを酵素処理で分解し、低分子化したものをいう。コラーゲンペプチドの出発原料となるコラーゲンは、特に限定されず、I型からXIII型のコラーゲンのいずれをも用いることが可能であり、これらの混合物である混合型のコラーゲンを用いることもできる。コラーゲンの出所としては、魚類(例えば、ヒラメ、サケ、イワシ、マグロ、サメ等)、動物(例えば、ウシ、ブタ、鳥、クジラ等)等が挙げられる。コラーゲンの抽出・精製は、通常公知の方法を用いて行うことができる。具体的には、例えば、骨、皮、腱、肉、ウキブクロ、鱗等のコラーゲンを含有する組織を粉砕した後、水洗、希塩溶液による抽出、酸若しくはアルカリ溶液による抽出、ペプシン、トリプシンやヒアルロニダーゼ等の酵素による抽出して、塩析や透析等の公知の精製手段を施して、コラーゲンを精製して得ることができる。また、通常公知の方法により、「再生コラーゲン」として得ることも可能である。また、市販のコラーゲンを、コラーゲンペプチドの出発原料として用いることも可能である。そして、ゼラチンは、上述のコラーゲンを、水で加熱抽出して得られる水溶性タンパク質である。本発明においては、通常公知の方法により製造したゼラチンを上記のコラーゲンペプチドの出発原料として用いることも可能であり、市販品を用いることも可能である。コラーゲンペプチドは分子量500〜5000程度のものが好ましく用いられる。コラーゲンペプチドは、例えば「イクオスHDL−50DR」(新田ゼラチン(株)製)、「マリンコラーゲンDF」(チッソ(株)製)等として市販されており、これら市販品を用いてもよい。
【0025】
マンゴージンジャー(Curcuma amada ROXB.)はショウガ科ウコン属に属する植物で、インドの野生に分布または栽培される一年草本である。マンゴージンジャー(C. amada)は生のままでも乾燥したものでも使用することができるが、使用性、製剤化等の点から乾燥粉末あるいは溶媒抽出物として用いることが好ましい。
【0026】
マンゴージンジャーの使用部位としては、全草、葉、塊根、花、種子等、任意に用いられ得る。中でも塊根部が好ましく用いられる。抽出方法は特に限定されるものでなく、上記アムラの抽出方法で記した方法に準じて行うことができる。マンゴージンジャー抽出物は、例えば「マンゴージンジャー乾燥エキスF」(丸善製薬(株)製)等として市販されており、これら市販品を用いてもよい。
【0027】
上記成分を組合せ配合する場合、アムラと、コラーゲンペプチド、マンゴージンジャーのいずれかとでは概ね1:10〜10:1の割合(質量比。乾燥質量)で組合せ配合するのが好ましく、より好ましくは1:5〜5:1である。また3成分系では上記組合せの比率で適宜組み合わせて使用することが好ましい。
【0028】
本発明のヒアルロン酸産生促進剤は、皮膚外用剤に配合してヒトおよび動物に用いることができる他、各種飲食品、飼料(ペットフード等)に配合して摂取させることができる。また医薬製剤としてヒトおよび動物に投与することができる。
【0029】
本発明のアムラを皮膚外用剤に配合する場合、アムラ抽出物の配合量(乾燥質量)は外用剤全量中、0.0001〜70質量%が好ましく、より好ましくは0.001〜30質量%である。さらにコラーゲン、マンゴージンジャーを組み合せて配合する場合、合計量が0.0001〜70質量%程度となるよう配合するのが好ましい。
【0030】
本発明のヒアルロン酸産生促進剤を皮膚外用剤に適用する場合、上記成分に加えて、さらに必要により、本発明の効果を損なわない範囲内で、通常化粧品や医薬品等の皮膚外用剤に用いられる成分、例えば酸化防止剤、油分、紫外線防御剤、界面活性剤、増粘剤、アルコール類、粉末成分、色材、水性成分、水、各種皮膚栄養剤等を必要に応じて適宜配合することができる。
【0031】
さらに、エデト酸二ナトリウム、エデト酸三ナトリウム、クエン酸ナトリウム、ポリリン酸ナトリウム、メタリン酸ナトリウム、グルコン酸等の金属イオン封鎖剤、メチルパラベン、エチルパラベン、ブチルパラベン等の防腐剤、カフェイン、タンニン、ベラパミル、トラネキサム酸およびその誘導体、甘草抽出物、グラブリジン、カリンの果実の熱水抽出物、各種生薬、酢酸トコフェロール、グリチルリチン酸およびその誘導体またはその塩等の薬剤、ビタミンC、アスコルビン酸リン酸マグネシウム、アスコルビン酸グルコシド、アルブチン、コウジ酸等の美白剤、グルコース、フルクトース、マンノース、ショ糖、トレハロース等の糖類なども適宜配合することができる。
【0032】
またこの皮膚外用剤は、外皮に適用される化粧料、医薬部外品等、特に好適には化粧料に広く適用することが可能であり、その剤型も、皮膚に適用できるものであればいずれでもよく、溶液系、可溶化系、乳化系、粉末分散系、水−油二層系、水−油−粉末三層系、軟膏、化粧水、ゲル、エアゾール等、任意の剤型が適用される。
【0033】
使用形態も任意であり、例えば化粧水、乳液、クリーム、パック等のフェーシャル化粧料やファンデーション、口紅、アイシャドウ等のメーキャップ化粧料、芳香化粧料、浴用剤等に用いることができる。
【0034】
また、メーキャップ化粧品であれば、ファンデーション等、トイレタリー製品としてはボディーソープ、石けん等の形態に広く適用可能である。さらに、医薬部外品であれば、各種の軟膏剤等の形態に広く適用が可能である。そして、これらの剤型及び形態に、本発明のヒアルロン酸産生促進剤の採り得る形態が限定されるものではない。
【0035】
本発明のヒアルロン酸産生促進剤を飲食品や飼料等に配合する場合、アムラ抽出物の配合量(乾燥質量)は、それらの種類、目的、形態、利用方法などに応じて、適宜決めることができ、例えば、飲食品全量中に0.1〜90質量%程度とすることができる。特に、保健用飲食品等として利用する場合には、本発明の有効成分を所定の効果が十分発揮されるような量で含有させることが好ましい。
【0036】
飲食品や飼料の形態としては、例えば、顆粒状、粒状、ペースト状、ゲル状、固形状、または、液体状に任意に成形することができる。これらには、飲食品等に含有することが認められている公知の各種物質、例えば、結合剤、崩壊剤、増粘剤、分散剤、再吸収促進剤、矯味剤、緩衝剤、界面活性剤、溶解補助剤、保存剤、乳化剤、等張化剤、安定化剤やpH調製剤などの賦形剤を適宜含有させることができる。
【0037】
本発明のヒアルロン酸産生促進剤を医薬製剤として用いる場合、該製剤は経口的にあるいは非経口的(静脈投与、腹腔内投与、等)に適宜に使用される。剤型も任意で、例えば錠剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤等の経口用固形製剤や、内服液剤、シロップ剤等の経口用液体製剤、または、注射剤などの非経口用液体製剤など、いずれの形態にも公知の方法により適宜調製することができる。これらの医薬製剤には、通常用いられる結合剤、崩壊剤、増粘剤、分散剤、再吸収促進剤、矯味剤、緩衝剤、界面活性剤、溶解補助剤、保存剤、乳化剤、等張化剤、安定化剤やpH調製剤などの賦形剤を適宜使用してもよい。
【0038】
本発明のヒアルロン酸産生促進剤を、皮膚外用剤、飲食品、飼料、医薬製剤等として用いる場合、ヒアルロン酸量低下等が関与する種々の症状や疾病、病態等の治療、予防、改善等に役立つ。具体的適用例としては、例えば、ヒト皮膚の老化防止(皮膚のハリや弾力保持)、関節炎等の予防・治療、熱傷の初期の治療等に好適に用いられる。また上記症状や疾病、病態等の治療、予防、改善等の生理機能をコンセプトとして、その旨を表示した皮膚外用剤、機能性飲食品、疾病者用食品、特定保健用食品等に応用することができる。
【実施例】
【0039】
以下、本発明を実施例に基づきさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0040】
1.試料の整製
以下の試料を調製し、被験試料とした。
・アムラ抽出物: 太陽化学(株)製の「サンアムラ」を用いた。
・コラーゲンペプチド: 市販の魚由来コラーゲンの加水分解物(平均分子量が5000以下)を用いた。
・アムラ抽出物+コラーゲンペプチド: 上記アムラ抽出物とコラーゲンペプチドを1:1(質量比)の割合で混合した試料を用いた。
・アムラ抽出物+コラーゲンペプチド+マンゴージンジャー抽出物: 上記アムラ抽出物と、上記コラーゲンペプチドと、マンゴージンジャー抽出物(マンゴージンジャーの根茎部をエタノールで抽出し溶媒を蒸発させたオイル)を、1:1:1(質量比)の割合で混合した試料を用いた。
【0041】
2.ヒアルロン酸量測定
上記1.で得た各試料のヒアルロン酸産生促進作用を評価した。すなわち、24ウェルプレートに、5.0×104細胞/ウェルの濃度でヒト真皮線維芽細胞を播種し、コンフルエント状態にしたところで、上記1.の各試料群(最終濃度5μg/mL)を含む500μLのDMEM(0.5%FBS)培養液を添加した。添加後、72時間インキュベーションした後、ELISA法にてヒアルロン酸産生量を測定した。なお対照例(コントロール)として、DMSO/PBS溶液(試料添加なし)を用いた。測定にはHyaluronan assay kit(生化学バイオビジネス社製)を用いた。結果を図1に示す。同図中、縦軸はヒアルロナン(hyaluronan。ヒアルロン酸と同義)産生量(ng/mL)を示す。
【0042】
図1の結果から明らかなように、アムラ抽出物含有培地で培養した細胞でのヒアルロン酸量が、コントール細胞でのヒアルロン酸量に比べ大幅に増加した。すなわちアムラ抽出物に極めて優れたヒアルロン酸産生促進効果があることが確認された。なおコラーゲンペプチドは対照例とほぼ同程度であった(図1では対照例よりもわずかに低いグラフとして示されているが、これは測定誤差による)。またアムラ抽出物に、コラーゲンペプチドを組み合せた試料や、ここにさらにマンゴージンジャーを組合せた試料では、アムラ単独の場合に比べてヒアルロン酸産生促進作用効果が相乗的に向上した。
【0043】
なお上記試験(ヒアルロン酸量測定)方法は、通常ヒアルロン酸産生促進効果を評価する方法として用いられており、ヒアルロニダーゼ分解抑制効果を評価する方法ではないとされている。ヒアルロニダーゼ分解抑制効果の評価では、上述のような72時間という短期間でヒアルロン酸量が1.5倍以上(対コントロール)という極めて高いヒアルロン酸量の増加は考えられず、少なくともヒアルロン酸産生促進作用が関与しないとこのような結果になり得ない。
【0044】
以下に配合処方例を示す。なお以下において「POE」は「ポリオキシエチレン」を意味する。各植物抽出物の配合量は乾燥質量である。
【0045】
[配合例1:キャンディー]
砂糖 2000mg
水飴 1926mg
ハトムギ抽出物 2mg
ハス胚芽抽出物 2mg
ヒアルロン酸産生促進剤:アムラ抽出物(乾燥質量) 30mg
香料 40mg
(合計)4000mg
【0046】
[配合例2:錠剤]
ショ糖エステル 70mg
結晶セルロース 74mg
メチルセルロース 36mg
グリセリン 25mg
シカクマメ抽出物(乾燥質量) 300mg
コラーゲンペプチド 90mg
ハトムギ抽出物 10mg
ヒアルロン酸産生促進剤:アムラ抽出物(乾燥質量) 90mg
N−アセチルグルコサミン 180mg
ヒアルロン酸 150mg
ビタミンE 30mg
ビタミンB6 20mg
ビタミンB2 10mg
α−リポ酸 20mg
コエンザイムQ10 40mg
セラミド(コンニャク抽出物) 55mg
L−プロリン 300mg
(合計)1500mg
【0047】
[配合例3:ソフトカプセルA]
食用大豆油 528mg
ハトムギ抽出物(乾燥質量) 8mg
ハス胚芽抽出物(乾燥質量) 16mg
ヒアルロン酸産生促進剤:アムラ抽出物(乾燥質量) 135mg
ローヤルゼリー 70mg
マカ 60mg
GABA(=γ−アミノ酪酸) 30mg
ミツロウ 60mg
ゼラチン 375mg
グリセリン 113mg
グリセリン脂肪酸エステル 105mg
(合計)1500mg
【0048】
[配合例4:ソフトカプセルB]
玄米胚芽油 650mg
ヒアルロン酸産生促進剤:
(内訳)
アムラ抽出物(乾燥質量) 185mg
マンゴージンジャー抽出物(乾燥質量) 185mg
コラーゲンペプチド 185mg
ハトムギ抽出物(乾燥質量) 50mg
レスベラトロール 5mg
エラスチン 180mg
DNA 30mg
葉酸 30mg
(合計)1500mg
【0049】
[配合例5:顆粒]
ヒアルロン酸産生促進剤:
(内訳)
コラーゲンペプチド 70mg
アムラ抽出物(乾燥質量) 140mg
ハトムギ抽出物 20mg
ハス胚芽抽出物 40mg
ビタミンC 150mg
大豆イソフラボン 270mg
還元乳糖 360mg
大豆オリゴ糖 36mg
エリスリトール 36mg
デキストリン 30mg
香料 24mg
クエン酸 24mg
(合計)1200mg
【0050】
[配合例6:ドリンク剤(50mL)]
ヒアルロン酸産生促進剤 15mg
(内訳)
マンゴージンジャー抽出物(乾燥質量) 5mg
コラーゲンペプチド 5mg
アムラ抽出物(乾燥質量) 5mg
ハトムギ抽出物(乾燥質量) 2mg
還元麦芽糖水飴 28mg
エリスリトール 8mg
クエン酸 2mg
香料 1.3mg
N−アセチルグルコサミン 1mg
ヒアルロン酸 0.5mg
ビタミンE 0.3mg
α−リポ酸 0.2mg
コエンザイムQ10 1.2mg
水 残余
【0051】
[配合例7:美容液]
(配合成分) (質量%)
(A相)
95%エチルアルコール 10.0
POE(20)オクチルドデカノール 1.0
パントテニルエチルエーテル 0.1
ヒアルロン酸産生促進剤:アムラ抽出物(乾燥質量) 1.5
メチルパラベン 0.15
(B相)
水酸化カリウム 0.1
(C相)
グリセリン 5.0
ジプロピレリングリコール 10.0
亜硫酸水素ナトリウム 0.03
カルボキシビニルポリマー 0.2
精製水 残余
【0052】
[配合例8:パック]
(配合成分) (質量%)
(A相)
ジプロピレングリコール 5.0
ポリオキシエチレン(60モル)硬化ヒマシ油 5.0
(B相)
ヒアルロン酸産生促進剤:
(内訳)
アムラ抽出物(乾燥質量) 0.01
コラーゲンペプチド 0.01
オリーブ油 5.0
酢酸トコフェロール 0.2
エチルパラベン 0.2
香料 0.2
(C相)
亜硫酸水素ナトリウム 0.03
ポリビニルアルコール(ケン化度90、重合度2000) 13.0
エタノール 7.0
精製水 残余
【0053】
[配合例9:乳液]
(配合成分) (質量%)
マイクロクリスタリンワックス 1.0
ミツロウ 2.0
ラノリン 20.0
流動パラフィン 10.0
スクワラン 5.0
ソルビタンセスキオレイン酸エステル 4.0
POE(20)ソルビタンモノオレイン酸エステル 1.0
プロピレングリコール 7.0
ヒアルロン酸産生促進剤:
(内訳)
アムラ抽出物(乾燥質量) 10.0
コラーゲンペプチド 1.0
マンゴージンジャー抽出物(乾燥質量) 5.0
亜硫酸水素ナトリウム 0.01
エチルパラベン 0.3
香料 適量
精製水 残余
【0054】
[配合例10:クリーム]
(配合成分) (質量%)
固形パラフィン 5.0
ミツロウ 10.0
ワセリン 15.0
グリセリンモノステアリン酸エステル 2.0
POE(20)ソルビタンモノラウリン酸エステル 3.0
石けん粉末 0.1
硼砂 0.2
ヒアルロン酸産生促進剤:アムラ抽出物(乾燥質量) 0.05
亜硫酸水素ナトリウム 0.03
エチルパラベン 0.3
香料 適量
精製水 残余
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明により、安全で長期使用によっても副作用がなく、かつ簡便に用いることができ、しかもヒアルロン酸産生量増大に極めて優れるヒアルロン酸産生促進剤が提供される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アムラ(Phyllanthus emblica、またはEmblica officinale)の植物体またはその抽出物を含むヒアルロン酸産生促進剤。
【請求項2】
さらにコラーゲンペプチドおよび/またはショウガ科マンゴージンジャー(Curcuma amada ROXB.)の植物体またはその抽出物を含有する、請求項1記載のヒアルロン酸産生促進剤。

【図1】
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【公開番号】特開2010−229111(P2010−229111A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−80673(P2009−80673)
【出願日】平成21年3月27日(2009.3.27)
【特許番号】特許第4420358号(P4420358)
【特許公報発行日】平成22年2月24日(2010.2.24)
【出願人】(000001959)株式会社資生堂 (1,748)
【Fターム(参考)】