ヒアルロン酸蓄積促進用組成物
【課題】皮膚の保湿効果、肌荒れ予防・改善効果、皮膚バリア機能の改善効果、皮膚しわ改善効果、ドライアイの改善・治療効果を有するヒアルロン酸蓄積促進剤及びこれを含有したヒアルロン酸蓄積促進用組成物を提供すること。
【解決手段】本発明は、リュウガンニクを含有することを特徴とするヒアルロン酸蓄積促進剤、また、このヒアルロン酸蓄積促進剤を含有することを特徴とする皮膚保湿用、肌荒れ防止・改善用、しわ・たるみ・はりなどの皮膚老化防止用、ドライアイ予防・治療用組成物である。
【解決手段】本発明は、リュウガンニクを含有することを特徴とするヒアルロン酸蓄積促進剤、また、このヒアルロン酸蓄積促進剤を含有することを特徴とする皮膚保湿用、肌荒れ防止・改善用、しわ・たるみ・はりなどの皮膚老化防止用、ドライアイ予防・治療用組成物である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リュウガンニクを有効成分とし、皮膚の保湿機能、肌荒れ予防・改善機能、皮膚バリア機能、しわ改善機能、ドライアイ予防・治療機能を有するヒアルロン酸蓄積促進剤、及びその剤を含む組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒアルロン酸はD−N−アセチルグルコサミンとD−グルクロン酸が交互に結合した直鎖状の高分子多糖であり、哺乳動物の皮膚、血管、関節、眼球硝子体などの結合組織に広く分布するグリコサミノグルカンの一種である。また、非常に多量の水と結合する性質を有しており(例えば、非特許文献1参照)、細胞間マトリックスの支柱の役目を果たしているコラーゲンと結合して、結合組織、軟骨組織や皮膚組織などに多く分布し、細胞の機能や形態を維持するのに役立っている。
【0003】
皮膚組織において、ヒアルロン酸は真皮層に多く存在し、皮膚の保水性や弾力性に大きく関与している。しかし加齢や外的ストレスにより、皮膚中のヒアルロン酸は減少あるいは低分子化し、その結果、乾燥、かさつきをはじめとしたさまざまな肌荒れ、小じわの形成、皮膚のたるみ、はりの消失等といった皮膚の老化をもたらすと言われている。
【0004】
すなわち、生体内のヒアルロン酸の蓄積を促進することによって、ヒアルロン酸の産生量の減少により生じる肌荒れ・皮膚バリア機能の低下・しわなどを改善することができる。
【0005】
そこで、このような症例の改善方法として、ヒアルロン酸を直接、外用剤、あるいは注射剤として投与する試みがなされてきた。しかし、ヒアルロン酸は高分子の多糖成分であることから経皮吸収は少なく、さらに注射剤による補充療法においても、医師の処方が必要であり、苦痛を伴う治療であることから日常的に使える手法ではない。
【0006】
皮膚外用剤としては、ヒアルロン酸の合成を促進したり(例えば、特許文献1〜3参照)、分解酵素であるヒアルロニダーゼを阻害する技術(例えば、特許文献4〜6参照)がこれまでに開示されてきたが、外用剤は真皮層に対しては働きかけにくいため、真皮層に多く存在するヒアルロン酸の蓄積を高めることは非常に困難である。
【0007】
また、経口摂取により、上述したような効果を高める美容健康食品も数多く開発されている。
【0008】
例えば、ヒアルロン酸を経口摂取する技術(例えば、特許文献7参照)、ヒアルロン酸の構成糖であるN−アセチルグルコサミンを経口摂取する技術(例えば、特許文献8参照)などが挙げられる。しかし、いずれも有効性の発揮される摂取量は数百mg〜数gと非常に多量に摂取する必要があり、且つヒアルロン酸に関しては末端価格でkgあたり数十万円と高価であることから、価格的にも美容健康食品として有効量を継続的に摂取することは難しい。
【0009】
一方ドライアイは、従来、眼乾燥症や涙液減少症、乾性角結膜炎を指す一般用語として用いられていた。しかし、ドライアイの病態概念の範疇は広く、原因不明な場合も多いため、ドライアイは単一の疾患ではなくドライアイ症候群とも呼ぶべき多岐にわたる眼表面の疾患と捉えられるようになってきた。そして現在では、ドライアイとは、角結膜障害の有無を問わず、涙液の量的あるいは質的な異常をきたした状態として定義されており(例えば、非特許文献2参照)、涙液減少症、乏涙症、眼乾燥症、シェーグレン症候群、乾性角結膜炎、スティーブンズ−ジョンソン症候群、眼類天疱胞、眼瞼縁炎、閉眼不全、知覚神経麻痺等の疾患がドライアイの範疇に含まれる。またその他としては、アレルギー性結膜炎に関連したドライアイ、ウイルス性結膜炎後のドライアイ、白内障手術後のドライアイ等も上記ドライアイの範疇に含まれる。
【0010】
近年、コンタクトレンズ装用者の増加、人工的な空調環境の中での生活時間の増加、テレビ・パソコンなどの普及によるVDT[video(visual)display terminal]画面を凝視する機会等の増加により、ドライアイを助長する因子が増加し、コンタクトレンズ装用に関連したドライアイやVDT作業に関連したドライアイ等が増加しつつある。
【0011】
ドライアイを判定する手法の1つとして、シルマー試験と呼ばれるものがある。これは、規格に合った濾紙片を、局所麻酔なしで下眼瞼の中央と耳側1/3位置の中間に置くという手法により実施される。濾紙の涙液で濡れた長さが、1回連続して5分間に5mm以下の場合、涙液欠乏性ドライアイと診断する(例えば、非特許文献3参照)。
【0012】
現在、ドライアイの治療法として原因療法はなく、対症療法が行われているにすぎず、ヒアルロン酸等の粘弾性物質を含有した人工涙液の点眼が主流になっている。
【0013】
しかし、これらの物質は、本来粘着性のたんぱく質で涙を目の表面に定着させる働きを持っているムチンとは物理学的、生理学的にも異なっているため、その治療効果には限界があり、数時間に一回点眼するという患者の負担も大きい。
【0014】
また、点眼療法でドライアイの症状がコントロールできない場合には、涙点プラグによる涙点閉鎖が試みられている(例えば、非特許文献4参照)。これは、涙点部分にシリコン製プラグを挿入することにより、眼内貯留涙液量の増加を目的とするもので、症状に応じて、上または下の涙点、もしくは上下両方の涙点閉鎖を行うが、未だ一般的な治療ではなく、患者の身体的かつ心理的負担も大きい。このように、ドライアイの治療法や治療剤には未だ満足すべきものがないのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開平13−163794号公報
【特許文献2】特開平13−114637号公報
【特許文献3】特開平12−136147号公報
【特許文献4】特開平12−178196号公報
【特許文献5】特開平11−21247号公報
【特許文献6】特開平9−241150号公報
【特許文献7】特開2002−356432号公報
【特許文献8】特開2001−48789号公報
【非特許文献】
【0016】
【非特許文献1】三好照三 他、Bio Industry,Vol.11,p632−642,1994.
【非特許文献2】日本眼科紀要、Vol.43,No.11,p1289−1293,1992.
【非特許文献3】PRACTICAL ORHTHALMOLOGY,Vol.1,No.9,p54−60,1998.
【非特許文献4】PRACTICAL ORHTHALMOLOGY,Vol.1,No.9,p94−103,1998.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明の目的は、皮膚の保湿効果、肌荒れ予防・改善効果、皮膚バリア機能の改善効果、皮膚しわ改善効果、ドライアイの改善・治療効果を有するヒアルロン酸蓄積促進剤及びこれを含有したヒアルロン酸蓄積促進用組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明者等はこれら課題を解決するために鋭意検討し、リュウガンニクを経口摂取することにより、皮膚の保湿機能、肌荒れ、皮膚バリア機能、しわ、たるみが改善され、美肌効果を発現させることができ、またドライアイが予防・改善できることを見出し、本発明を完成させた。
【0019】
本発明は、
1.リュウガンニク及び/又はその抽出物を含有することを特徴とするヒアルロン酸蓄積促進剤、
2.1記載のヒアルロン酸蓄積促進剤を含む、皮膚の保湿、肌荒れ予防・改善、皮膚バリア、しわ改善用及び/又は皮膚老化防止・改善用組成物、
3.1記載のヒアルロン酸蓄積促進剤を含むドライアイ予防・治療用組成物、
4.ヒアルロン酸、セラミド、N−アセチルグルコサミン、グルコサミンからなる群より選ばれた少なくとも一種以上を含有することを特徴とする1乃至3記載の組成物、
5.食品である1乃至4のいずれかに記載の組成物、
6.医薬である1乃至4のいずれかに記載の組成物、
に関する。
即ち、リュウガンニクを含有することを特徴とするヒアルロン酸蓄積促進剤、また、このヒアルロン酸蓄積促進剤を含有することを特徴とする皮膚保湿用、肌荒れ防止・改善用、皮膚老化防止用、ドライアイ予防・治療用組成物である。
【発明の効果】
【0020】
本発明である、リュウガンニクを含有することを特徴とするヒアルロン酸蓄積促進剤は、経口的に摂取することにより、皮膚の保湿効果が高まり、乾燥や細胞間脂質に由来するバリア機能の低下による肌荒れが著しく改善され、皮膚の真皮層を構成するヒアルロン酸などの細胞外マトリックスの減少に起因する皮膚のしわやたるみといった皮膚の老化を改善することができる。本発明品は、従来のコラーゲン製剤等と比較して非常に安価な製品として提供することができる。
【0021】
また、目が乾く、目がごろごろする、目が疲れやすい、目が重い、目が充血するなどといったドライアイの症状が緩和され、ドライアイを予防・改善することができる。
【0022】
リュウガンニクは長い食経験のある食品素材でもあり、安全性も非常に高く安心して有効量を摂取することができることから、本発明により、安全性・経済性においても非常に優れた、ヒアルロン酸蓄積促進効果による皮膚保湿用、肌荒れ防止・改善用、皮膚老化防止用、ドライアイ予防・治療用組成物を提供することができる。
【0023】
リュウガンニクの乾燥物または抽出物が、ヒアルロン酸蓄積促進作用を有することは、従来知られておらず、それによって皮膚の保湿、肌荒れ、皮膚バリア機能、しわやたるみなどが改善し、またドライアイの予防・改善にも有効であることは、本発明により得られた全く新しい知見である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】陰性荷電コロイド排除法による細胞へのヒアルロン酸蓄積促進評価結果(リュウガンニクエキスを適用しない場合:コントロール)。白く見える部分がヒアルロン酸蓄積部である。
【図2】陰性荷電コロイド排除法による細胞へのヒアルロン酸蓄積促進評価結果(フォルボールエステル100nMを適用した場合)。
【図3】陰性荷電コロイド排除法による細胞へのヒアルロン酸蓄積促進評価結果(デキサメタゾン10nMを適用した場合)。
【図4】陰性荷電コロイド排除法による細胞へのヒアルロン酸蓄積促進評価結果(リュウガンニクエキス0.05mg/mlを適用した場合)。
【図5】陰性荷電コロイド排除法による細胞へのヒアルロン酸蓄積促進評価結果(リュウガンニクエキス0.5mg/mlを適用した場合)。
【図6】陰性荷電コロイド排除法による細胞へのヒアルロン酸蓄積促進評価結果(リュウガンニクエキス5mg/mlを適用した場合)。
【図7】リュウガンニクエキスによる線維芽細胞におけるヒアルロン酸蓄積促進効果の定量評価結果。
【図8】リュウガンニクエキス配合製剤の連用摂取による皮膚保湿性評価結果。
【図9】リュウガンニクエキス配合製剤の連用摂取による皮膚バリア機能・肌荒れ評価結果。
【図10】リュウガンニクエキス配合製剤の連用摂取による皮膚弾力性評価結果。
【図11】リュウガンニクエキス配合製剤の連用摂取(8週間)による皮膚バリア機能・肌荒れ評価結果
【図12】リュウガンニクエキス配合製剤の連用摂取(8週間)による皮膚バリア機能・肌荒れ評価結果(40歳以下)
【図13】リュウガンニクエキス配合製剤の連用摂取(8週間)による実感アンケート結果(乾燥)
【図14】リュウガンニクエキス配合製剤の連用摂取(8週間)による実感アンケート結果(くすみ)
【図15】リュウガンニクエキス配合製剤の連用摂取(8週間)による実感アンケート結果(はり)
【図16】リュウガンニクエキス配合製剤の連用摂取(8週間)による実感アンケート結果(透明感)
【図17】リュウガンニクエキス配合製剤の連用摂取(8週間)による実感アンケート結果(総合実感)
【図18】リュウガンニクエキス配合製剤の連用摂取(8週間)による実感アンケート結果(目の疲れ)
【図19】リュウガンニクエキス配合製剤の連用摂取(8週間)による実感アンケート結果(目の乾燥)
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明におけるリュウガンニク(竜眼肉)とは、中国南方原産の亜熱帯植物であるムクロジ科ユーフォリア属の植物、リュウガン(Euphoria longan (Lour.)Steud.)の仮種皮を指す名称で、この仮種皮(リュウガンニク)を半乾燥させた生薬は中国薬典に収載され、抗不安作用・記憶力改善作用・抗菌作用・免疫増強作用・強壮作用などが明らかになっている(伝統と医療、Vol.5,No.4,1999)。
【0026】
本発明におけるリュウガンニクは、乾燥物、その粉砕物、それら自身を圧搾抽出することにより得られる搾汁、水あるいはアルコール、エーテル、アセトンなどの有機溶媒による粗抽出物、および粗抽出物を液液分配、カラムクロマトグラフィーなどで段階的に精製して得られた抽出物画分などを使用することができる。これらは単独で用いても良く、また2種以上混合して用いても良い。栽培方法や栽培地も特に限定されるものではない。
【0027】
例えば、リュウガンニクの植物体乾燥物1Kgにエタノール3Lを加え、室温で一晩浸漬することにより得た抽出液を、そのままヒアルロン酸蓄積促進作用を有する皮膚賦活剤として使用しても良いし、液液分配、各種クロマトグラフィーを組み合わせて、精製したものを使用しても良い。
【0028】
ヒアルロン酸は、分子量約50万〜300万の粘性を有する酸性ムコ多糖類である。ヒアルロン酸は、例えば鶏冠に多量に(約1%)含まれており、この鶏冠は古くから食用に供されている。ヒアルロン酸を工業的に製造するには、例えば、生体組織を原料とする抽出法と、微生物を用いる醗酵法とがある。また、それらの塩を用いてもよい。
【0029】
セラミドは、スフィンゴシン、脂肪酸および糖が結合した構造を有し、天然に由来するセラミドであって、例えば動物由来の牛脳より抽出したもの、植物由来の小麦、米、大豆、黍、ホウレンソウ等より抽出したもの、酵母等の微生物より抽出したものなどが挙げられる。このセラミドは、公知の方法により得ることができる。例えば、小麦または米糠を原料として、エタノール、アセトンおよび水等の極性溶媒を用いて抽出し、有機溶媒中で再結晶させる方法等である。
【0030】
N−アセチルグルコサミン又はグルコサミンは、カニやエビなどの甲殻類の外殻を由来とする天然多糖類キチンを公知の方法、例えば酸及び酵素により加水分解して得られる。また、それらの塩を用いてもよい。
【0031】
本発明においては、リュウガンニクをヒアルロン酸、セラミド、N−アセチルグルコサミン、グルコサミンと併用することによって、さらに高いヒアルロン酸蓄積促進効果をもたらすことができる。
【0032】
本発明の剤を使用して、肌荒れ改善用、皮膚老化防止用及びドライアイ改善用組成物、並びにこれらを含有する医薬や食品を製造することができる。
【0033】
本発明のヒアルロン酸蓄積促進剤またはヒアルロン酸蓄積促進用組成物は、食品として適用することができる。食品としては、そのまま、又は種々の栄養成分を加えて、若しくは飲食品中に含有し、食品素材として食することができる。例えば、澱粉、乳糖、麦芽糖、植物油脂粉末、カカオ脂末、ステアリン酸などの適当な助剤を添加した後、慣用の手段を用いて、食用に適した形態、例えば、顆粒状、粒状、錠剤、カプセル、ペーストなどに成形して食用に供してもよく、また種々の食品、例えば、ハム、ソーセージなどの食肉加工食品、かまぼこ、ちくわなどの水産加工食品、パン、菓子、バター、粉乳、発酵乳製品に添加して使用したり、水、果汁、牛乳、清涼飲料、茶などの飲料に添加して使用してもよい。
【0034】
本発明において、有効成分たるリュウガンニク、さらにはヒアルロン酸、セラミド、N−アセチルグルコサミン、グルコサミンの有効投与量は、患者の年齢、体重、症状、患者の程度、投与経路、投与スケジュール、製剤形態、素材の阻害活性の強さなどにより適宜選択されるが、好ましくは1日当たりリュウガンニクでは10〜1,500mg、ヒアルロン酸では1〜100mg、セラミドでは0.1〜10mg、N−アセチルグルコサミンおよびグルコサミンでは1〜1,500mg程度とされ、1日に数回に分けて投与してもよい。
【実施例】
【0035】
以下に実施例を挙げて、具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
[実施例1:植物の抽出]
リュウガン(Euphoria longan (Lour.)Steud.)の仮種皮の部分(リュウガンニク)1kgを細切し、水3Lを加え、室温で一晩浸漬した。これを濾過し、抽出液を得た。抽出液を濃縮したところ、その蒸発残分はそれぞれ250gであった。
[実施例2:植物の抽出]
リュウガン(Euphoria longan (Lour.)Steud.)の仮種皮の部分(リュウガンニク)1kgを細切し、99.5%エタノール3Lを加え、室温で一晩浸漬した。これを濾過し、抽出液を得た。抽出液を濃縮したところ、その蒸発残分は75gであった。
【0036】
以下に処方例を挙げて、具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0037】
[処方例1:錠剤の製造]
実施例1で得られたリュウガンニクの水抽出物を用いて、常法に従って、下記の組成の錠剤を製造した。
(組 成) (配合:重量%)
リュウガンニクエキス 50.0
乳糖 37.0
コーンスターチ 12.0
グァーガム 1.0
【0038】
[処方例2:錠剤の製造]
実施例1で得られたリュウガンニクの水抽出物を用いて、常法に従って、下記の組成の錠剤を製造した。
(組 成) (配合:重量%)
リュウガンニクエキス 16.7
乳糖 62.1
コーンスターチ 20.2
グァーガム 1.0
【0039】
[処方例3:錠剤の製造]
実施例1で得られたリュウガンニクの水抽出物を用いて、常法に従って、下記の組成の錠剤を製造した。
(組 成) (配合:重量%)
リュウガンニクエキス 25.0
N−アセチルグルコサミン 12.5
ヒアルロン酸 2.5
セラミド 2.5
セルロース 15.0
デンプン 19.5
植物油脂末 3.0
乳糖 20.0
【0040】
[処方例4:錠剤の製造]
実施例1で得られたリュウガンニクの水抽出物を用いて、常法に従って、下記の組成の錠剤を製造した。
(組 成) (配合:重量%)
リュウガンニクエキス 25.0
グルコサミン 15.0
セラミド 2.5
セルロース 15.0
デンプン 19.5
植物油脂末 3.0
乳糖 20.0
【0041】
[処方例5:ジュースの製造]
実施例1で得られたリュウガンニクの水抽出物を用いて、常法に従って、下記の組成のジュースを製造した。
(組 成) (配合:重量%)
冷凍濃縮温州みかん果汁 5.0
果糖ブドウ糖液糖 11.0
クエン酸 0.2
L−アスコルビン酸 0.02
香料 0.2
色素 0.1
リュウガンニクエキス 0.2
水 83.28
【0042】
本発明である、リュウガンニクによるヒアルロン酸蓄積促進効果は、以下のような試験方法により確認した。
[試験例1:ヒアルロン酸蓄積促進試験]
ヒアルロン酸蓄積促進作用はホルマリン固定赤血球懸濁液を用いた試験(生化学73(2),429-438(2001))を参考にし、その改良法すなわち陰性荷電コロイド排除法を構築して評価した。陰性荷電コロイド排除法の詳細は以下のとおりである。
【0043】
ヒアルロン酸はD−グルクロン酸とD−N−アセチルグルコサミンの繰り返し構造を持ち、そのグルクロン酸の持つカルボキシル基がヒアルロン酸全体に負電荷を持たせている。ヒアルロン酸を持つ細胞はヒアルロン酸存在下において負電荷を持つために、そこに負電荷のコロイド溶液を加えると、ヒアルロン酸存在箇所は負電荷の反発力でコロイドが刷けるため、絵の具(負電荷)を用いてコロイドの刷けが観察できる。陰性荷電コロイド排除法は、この性質を利用して、ヒアルロン酸の蓄積を確認する試験法であり、ヒアルロン酸の総量を見るELISA法(A.J.Fosang et al.,Matrix,10,306−313,1990)に比べて、陰イオンコロイド排除法はマトリックスの状態を可視化できるという点で優れている。この方法を用いて、ヒアルロン酸の蓄積量を、刷けの濃さと太さで目視的に判定できる。刷けた部分、すなわちヒアルロン酸が蓄積されている部位は、顕微鏡下では光が透過するため、白く可視化でき、それ以外は絵の具により、光が透過しない暗い背景として観察されることから、定量する場合は以下の手順で行う。
(1)顕微鏡下で観察した画像を画像解析ソフトであるScion Imageに取り込む。
(2)各画像をモノクロに変換する。
(3)白くみえる部位(ヒアルロン酸蓄積部位)の面積及び明度を測定する。
(4)(3)で測定したヒアルロン酸蓄積部位付近の暗色化した背景3個所をランダムに選択し、その箇所の明度を測定し、平均値を算出する。
(5)(ヒアルロン酸蓄積部位の明度−背景3個所の明度の平均値)×ヒアルロン酸蓄積部位の面積)により、絶対明度(グレー値)を算出する。
(6)無処置群のグレー値を100とした時の、各被験物質投与時のグレー値を算出する。
(7)同様の操作を、取り込んだ画像中の全てのヒアルロン酸蓄積部位について行い、平均値を算出する。
【0044】
具体的には、ヒト皮膚繊維芽細胞を組織培養用プレートで培養したのち、実施例1で調製したリュウガンエキスを0、0.05、0.5、5mg/mLの濃度で、また、ポジティブコントロールとしてPMA(フォルボールエステル:Sigma社製),ネガティブコントロールとしてDXM(デキサメタゾン:Sigma社製)を最終添加濃度でPMAが100nM、DXMが10nMになるように調製し、各16時間作用させた。作用後、培地を除去したのち、2.5mg/mLの濃度の陰イオン性コロイド粒子懸濁液50μL(ホルバイン社、843 PERMANENT GREEN DEEP)を添加し、細胞のヒアルロン酸リッチマトリックスによって排除された領域を顕微鏡下で観察して目視的且つ定量的に活性を判定した。
【0045】
各サンプルのヒアルロン酸蓄積促進作用に対する評価結果を図1〜図6に示し、定量値を図7に示した。
【0046】
図1〜図6より、リュウガンニクエキス無添加のコントロール区(図1)に比較して、リュウガンニクエキス添加区(図4〜図6)では添加濃度依存的に、ヒアルロン酸蓄積部位として観察される白色部位が、太くあるいは長くなり、明度(白色の強さ)の増強されている様子が観察できる。
【0047】
また、これら図1〜図6の結果を定量的に評価した結果である図7に示した通り、リュウガンニクエキス0.5mg/ml添加区では21%、5mg/ml添加区では107%もヒアルロン酸蓄積量が増加し、リュウガンニクエキスは、濃度依存的にヒト繊維芽細胞におけるヒアルロン酸蓄積量を増加させることがわかる。
[試験例2:モニターによる皮膚への有効性評価]
日ごろ慢性的に乾燥肌で肌荒れ傾向のある4名に処方例1の錠剤(1錠あたり300mg)を毎日10錠ずつ、4週間連用摂取させた。摂取前・摂取開始2週間後・摂取開始4週間目に以下の3項目の評価を行った。なお、測定条件を可能な限り同一に保つため洗顔後、室温21℃/湿度36%の恒温室で20分安静にした後測定を行った。
[評価項目1:皮膚保湿性機能の評価]
頬の水分量をSKICON−200(IBS社)にて測定した。測定値は電気伝導度(μS)で表し、この値が大きいほど水分量が多い。従って、水分量をSKICON−200の値を測定することにより、本発明のヒアルロン酸蓄積促進剤の皮膚保湿機能を検討することができる。
【0048】
摂取前・摂取開始2週間後・摂取開始4週間後の皮膚水分量測定結果を図8に示す。処方例1の錠剤を摂取することにより、摂取開始2週間後で9.9%、摂取開始4週間後で45.0%、それぞれ皮膚の水分量が増加した。
[評価項目2:皮膚バリア機能・肌荒れの評価]
経皮水分蒸散量(TEWL)の値が高い程角層のバリア機能が低下し、肌荒れを起こしていることを示している。従って、このTEWLの値を測定することにより、本発明のヒアルロン酸蓄積促進剤の皮膚バリア機能を検討することができる。測定にはTEWAメーター(Courage+Khazaka社)を用い、頬を測定した。
【0049】
摂取前・摂取開始2週間後・摂取開始4週間後の結果を図9に示す。処方例1の錠剤を摂取することにより、摂取前のTEWL値を100%とした場合、摂取開始2週間後で53.6%、摂取開始4週間後で42.6%に経皮水分蒸散量がそれぞれ低下し、皮膚のバリア機能が回復した。
[評価項目3:皮膚弾力性(皮膚のしわ・たるみ・はり)の評価]
頬の皮膚弾力性をキュートメーター(CUTOMETER SEM474、Courage+Khazaka社)を用いて測定した。弾力性の値は加齢などによって、肌のたるみがある状態やはりのない状態では低下している。従って弾力性の値が増加すれば、皮膚がより柔軟性、弾力性を増した引き締まった状態を意味する指標となる。摂取前・摂取開始2週間後・摂取開始4週間後の結果を図10に示す。
【0050】
処方例1の錠剤を摂取することにより、摂取開始2週間後で14.5%、摂取開始4週間後で15.3%、それぞれ皮膚の弾力性が増加した。
【0051】
以上の結果より、リュウガンニクを含有している食品を摂取することにより、皮膚保湿性機能・皮膚バリア機能・肌荒れ・皮膚弾力性(皮膚のしわ・たるみ・はり)が改善することが認められた。
[試験例3:ドライアイの評価]
日ごろ慢性的にドライアイ傾向のある女性3名に処方例1の錠剤(1錠あたり300mg)を毎日10錠ずつ、4週間連用摂取させた。摂取期間前後にドライアイの主な症状である、目が疲れやすい・目が重い・目が充血する・目がごろごろする・目が乾くという5症状について、以下のようにスコア化し、評価を行なった。摂取前・摂取開始2週間後・摂取開始4週間後の結果を表1に示す。スコア値が低いほど、ドライアイの症状が軽い。
【0052】
ドライアイのスコア基準 症状が非常に気になる=2
症状が気になる=1
症状が気にならない=0
【0053】
【表1】
【0054】
以上の結果より、リュウガンニクを含有している食品を摂取することにより、ドライアイの諸症状が改善することが認められた。
[試験例4:モニターによる皮膚への有効性評価(大規模試験)]
20〜65歳の健康な女性38名を(1)処方例1の錠剤(1錠あたり300mg)を毎日10錠ずつ、(2)処方例2の錠剤(1錠あたり300mg)を毎日10錠ずつ、(3)プラセボの3群に分け、ダブルブラインド(二重盲見比較)試験で8週間連用摂取させた。摂取前・摂取開始4週間後・摂取開始8週間目に以下の項目の評価および試験終了後実感アンケート調査を行った。なお、測定条件を可能な限り同一に保つため洗顔後、室温21℃/湿度36%の恒温室で20分安静にした後測定を行った。
[評価項目1:皮膚バリア機能・肌荒れの評価]
経皮水分蒸散量(TEWL)の値が高い程角層のバリア機能が低下し、肌荒れを起こしていることを示している。従って、このTEWLの値を測定することにより、本発明のヒアルロン酸蓄積促進剤の皮膚バリア機能を検討することができる。測定にはTEWAメーター(Courage+Khazaka社)を用い、上腕部を測定した。
【0055】
摂取前・摂取開始2週間後・摂取開始4週間後の結果を図11および12に示す。 (1)の高容量群(H群;リュウガンニクエキスとして1,500mg/日)摂取群で、摂取前のTEWL値を100%とした場合、摂取開始4週間後で90.5%、摂取開始8週間後で75.9%に経皮水分蒸散量がそれぞれ低下し、皮膚のバリア機能が回復した。さらに、40歳以下の群では、摂取8週目で(3)のプラセボ投与群(P群)に対して有意(P<0.05)に低下した。(2)の低容量群(L群;リュウガンニクエキスとして500mg/日)においても、8週間後で、82%に低下し、皮膚のバリア機能が回復した。
[評価項目2:アンケート調査(皮膚の乾燥・くすみ・はり・透明感・総合およびドライアイ)の評価]
各摂取群において、摂取8週間後に「皮膚の乾燥」・「くすみ」・「はり」・「透明感」・「総合的な肌の効果実感」および「目の疲れ」・「目の乾燥」についてアンケート調査を行った。各アンケートについて、〈改善した〉、〈変化なし〉、〈悪化した〉、の3項目より1つを選択してもらった。「総合的な肌の効果実感」については、〈感じられた〉、〈やや感じられた〉、〈あまり感じられなかった〉、〈全く感じなかった〉、の4項目より1つを選択してもらった。各アンケート結果を図13〜18に示す。
【0056】
(1)の高容量群(High;リュウガンニクエキスとして1,500mg/日)及び(2)の低容量群(Low;リュウガンニクエキスとして500mg/日)で、実感アンケートの「皮膚の乾燥」、「くすみ」、「はり」、「透明感」、「総合的な肌の効果実感」、「目の疲れ」、「目の乾燥」の項目で(3)のプラセボ群(Placebo)と比較して改善の傾向がみられた。また、その改善傾向はリュウガンニクエキス摂取量依存的に高まった。
【0057】
以上の結果より、リュウガンニクを含有している食品を摂取することにより、皮膚保湿性機能、皮膚バリア機能、肌荒れ予防・改善、しわ改善、皮膚老化防止およびドライアイが改善することが認められた。
【技術分野】
【0001】
本発明は、リュウガンニクを有効成分とし、皮膚の保湿機能、肌荒れ予防・改善機能、皮膚バリア機能、しわ改善機能、ドライアイ予防・治療機能を有するヒアルロン酸蓄積促進剤、及びその剤を含む組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒアルロン酸はD−N−アセチルグルコサミンとD−グルクロン酸が交互に結合した直鎖状の高分子多糖であり、哺乳動物の皮膚、血管、関節、眼球硝子体などの結合組織に広く分布するグリコサミノグルカンの一種である。また、非常に多量の水と結合する性質を有しており(例えば、非特許文献1参照)、細胞間マトリックスの支柱の役目を果たしているコラーゲンと結合して、結合組織、軟骨組織や皮膚組織などに多く分布し、細胞の機能や形態を維持するのに役立っている。
【0003】
皮膚組織において、ヒアルロン酸は真皮層に多く存在し、皮膚の保水性や弾力性に大きく関与している。しかし加齢や外的ストレスにより、皮膚中のヒアルロン酸は減少あるいは低分子化し、その結果、乾燥、かさつきをはじめとしたさまざまな肌荒れ、小じわの形成、皮膚のたるみ、はりの消失等といった皮膚の老化をもたらすと言われている。
【0004】
すなわち、生体内のヒアルロン酸の蓄積を促進することによって、ヒアルロン酸の産生量の減少により生じる肌荒れ・皮膚バリア機能の低下・しわなどを改善することができる。
【0005】
そこで、このような症例の改善方法として、ヒアルロン酸を直接、外用剤、あるいは注射剤として投与する試みがなされてきた。しかし、ヒアルロン酸は高分子の多糖成分であることから経皮吸収は少なく、さらに注射剤による補充療法においても、医師の処方が必要であり、苦痛を伴う治療であることから日常的に使える手法ではない。
【0006】
皮膚外用剤としては、ヒアルロン酸の合成を促進したり(例えば、特許文献1〜3参照)、分解酵素であるヒアルロニダーゼを阻害する技術(例えば、特許文献4〜6参照)がこれまでに開示されてきたが、外用剤は真皮層に対しては働きかけにくいため、真皮層に多く存在するヒアルロン酸の蓄積を高めることは非常に困難である。
【0007】
また、経口摂取により、上述したような効果を高める美容健康食品も数多く開発されている。
【0008】
例えば、ヒアルロン酸を経口摂取する技術(例えば、特許文献7参照)、ヒアルロン酸の構成糖であるN−アセチルグルコサミンを経口摂取する技術(例えば、特許文献8参照)などが挙げられる。しかし、いずれも有効性の発揮される摂取量は数百mg〜数gと非常に多量に摂取する必要があり、且つヒアルロン酸に関しては末端価格でkgあたり数十万円と高価であることから、価格的にも美容健康食品として有効量を継続的に摂取することは難しい。
【0009】
一方ドライアイは、従来、眼乾燥症や涙液減少症、乾性角結膜炎を指す一般用語として用いられていた。しかし、ドライアイの病態概念の範疇は広く、原因不明な場合も多いため、ドライアイは単一の疾患ではなくドライアイ症候群とも呼ぶべき多岐にわたる眼表面の疾患と捉えられるようになってきた。そして現在では、ドライアイとは、角結膜障害の有無を問わず、涙液の量的あるいは質的な異常をきたした状態として定義されており(例えば、非特許文献2参照)、涙液減少症、乏涙症、眼乾燥症、シェーグレン症候群、乾性角結膜炎、スティーブンズ−ジョンソン症候群、眼類天疱胞、眼瞼縁炎、閉眼不全、知覚神経麻痺等の疾患がドライアイの範疇に含まれる。またその他としては、アレルギー性結膜炎に関連したドライアイ、ウイルス性結膜炎後のドライアイ、白内障手術後のドライアイ等も上記ドライアイの範疇に含まれる。
【0010】
近年、コンタクトレンズ装用者の増加、人工的な空調環境の中での生活時間の増加、テレビ・パソコンなどの普及によるVDT[video(visual)display terminal]画面を凝視する機会等の増加により、ドライアイを助長する因子が増加し、コンタクトレンズ装用に関連したドライアイやVDT作業に関連したドライアイ等が増加しつつある。
【0011】
ドライアイを判定する手法の1つとして、シルマー試験と呼ばれるものがある。これは、規格に合った濾紙片を、局所麻酔なしで下眼瞼の中央と耳側1/3位置の中間に置くという手法により実施される。濾紙の涙液で濡れた長さが、1回連続して5分間に5mm以下の場合、涙液欠乏性ドライアイと診断する(例えば、非特許文献3参照)。
【0012】
現在、ドライアイの治療法として原因療法はなく、対症療法が行われているにすぎず、ヒアルロン酸等の粘弾性物質を含有した人工涙液の点眼が主流になっている。
【0013】
しかし、これらの物質は、本来粘着性のたんぱく質で涙を目の表面に定着させる働きを持っているムチンとは物理学的、生理学的にも異なっているため、その治療効果には限界があり、数時間に一回点眼するという患者の負担も大きい。
【0014】
また、点眼療法でドライアイの症状がコントロールできない場合には、涙点プラグによる涙点閉鎖が試みられている(例えば、非特許文献4参照)。これは、涙点部分にシリコン製プラグを挿入することにより、眼内貯留涙液量の増加を目的とするもので、症状に応じて、上または下の涙点、もしくは上下両方の涙点閉鎖を行うが、未だ一般的な治療ではなく、患者の身体的かつ心理的負担も大きい。このように、ドライアイの治療法や治療剤には未だ満足すべきものがないのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開平13−163794号公報
【特許文献2】特開平13−114637号公報
【特許文献3】特開平12−136147号公報
【特許文献4】特開平12−178196号公報
【特許文献5】特開平11−21247号公報
【特許文献6】特開平9−241150号公報
【特許文献7】特開2002−356432号公報
【特許文献8】特開2001−48789号公報
【非特許文献】
【0016】
【非特許文献1】三好照三 他、Bio Industry,Vol.11,p632−642,1994.
【非特許文献2】日本眼科紀要、Vol.43,No.11,p1289−1293,1992.
【非特許文献3】PRACTICAL ORHTHALMOLOGY,Vol.1,No.9,p54−60,1998.
【非特許文献4】PRACTICAL ORHTHALMOLOGY,Vol.1,No.9,p94−103,1998.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明の目的は、皮膚の保湿効果、肌荒れ予防・改善効果、皮膚バリア機能の改善効果、皮膚しわ改善効果、ドライアイの改善・治療効果を有するヒアルロン酸蓄積促進剤及びこれを含有したヒアルロン酸蓄積促進用組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明者等はこれら課題を解決するために鋭意検討し、リュウガンニクを経口摂取することにより、皮膚の保湿機能、肌荒れ、皮膚バリア機能、しわ、たるみが改善され、美肌効果を発現させることができ、またドライアイが予防・改善できることを見出し、本発明を完成させた。
【0019】
本発明は、
1.リュウガンニク及び/又はその抽出物を含有することを特徴とするヒアルロン酸蓄積促進剤、
2.1記載のヒアルロン酸蓄積促進剤を含む、皮膚の保湿、肌荒れ予防・改善、皮膚バリア、しわ改善用及び/又は皮膚老化防止・改善用組成物、
3.1記載のヒアルロン酸蓄積促進剤を含むドライアイ予防・治療用組成物、
4.ヒアルロン酸、セラミド、N−アセチルグルコサミン、グルコサミンからなる群より選ばれた少なくとも一種以上を含有することを特徴とする1乃至3記載の組成物、
5.食品である1乃至4のいずれかに記載の組成物、
6.医薬である1乃至4のいずれかに記載の組成物、
に関する。
即ち、リュウガンニクを含有することを特徴とするヒアルロン酸蓄積促進剤、また、このヒアルロン酸蓄積促進剤を含有することを特徴とする皮膚保湿用、肌荒れ防止・改善用、皮膚老化防止用、ドライアイ予防・治療用組成物である。
【発明の効果】
【0020】
本発明である、リュウガンニクを含有することを特徴とするヒアルロン酸蓄積促進剤は、経口的に摂取することにより、皮膚の保湿効果が高まり、乾燥や細胞間脂質に由来するバリア機能の低下による肌荒れが著しく改善され、皮膚の真皮層を構成するヒアルロン酸などの細胞外マトリックスの減少に起因する皮膚のしわやたるみといった皮膚の老化を改善することができる。本発明品は、従来のコラーゲン製剤等と比較して非常に安価な製品として提供することができる。
【0021】
また、目が乾く、目がごろごろする、目が疲れやすい、目が重い、目が充血するなどといったドライアイの症状が緩和され、ドライアイを予防・改善することができる。
【0022】
リュウガンニクは長い食経験のある食品素材でもあり、安全性も非常に高く安心して有効量を摂取することができることから、本発明により、安全性・経済性においても非常に優れた、ヒアルロン酸蓄積促進効果による皮膚保湿用、肌荒れ防止・改善用、皮膚老化防止用、ドライアイ予防・治療用組成物を提供することができる。
【0023】
リュウガンニクの乾燥物または抽出物が、ヒアルロン酸蓄積促進作用を有することは、従来知られておらず、それによって皮膚の保湿、肌荒れ、皮膚バリア機能、しわやたるみなどが改善し、またドライアイの予防・改善にも有効であることは、本発明により得られた全く新しい知見である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】陰性荷電コロイド排除法による細胞へのヒアルロン酸蓄積促進評価結果(リュウガンニクエキスを適用しない場合:コントロール)。白く見える部分がヒアルロン酸蓄積部である。
【図2】陰性荷電コロイド排除法による細胞へのヒアルロン酸蓄積促進評価結果(フォルボールエステル100nMを適用した場合)。
【図3】陰性荷電コロイド排除法による細胞へのヒアルロン酸蓄積促進評価結果(デキサメタゾン10nMを適用した場合)。
【図4】陰性荷電コロイド排除法による細胞へのヒアルロン酸蓄積促進評価結果(リュウガンニクエキス0.05mg/mlを適用した場合)。
【図5】陰性荷電コロイド排除法による細胞へのヒアルロン酸蓄積促進評価結果(リュウガンニクエキス0.5mg/mlを適用した場合)。
【図6】陰性荷電コロイド排除法による細胞へのヒアルロン酸蓄積促進評価結果(リュウガンニクエキス5mg/mlを適用した場合)。
【図7】リュウガンニクエキスによる線維芽細胞におけるヒアルロン酸蓄積促進効果の定量評価結果。
【図8】リュウガンニクエキス配合製剤の連用摂取による皮膚保湿性評価結果。
【図9】リュウガンニクエキス配合製剤の連用摂取による皮膚バリア機能・肌荒れ評価結果。
【図10】リュウガンニクエキス配合製剤の連用摂取による皮膚弾力性評価結果。
【図11】リュウガンニクエキス配合製剤の連用摂取(8週間)による皮膚バリア機能・肌荒れ評価結果
【図12】リュウガンニクエキス配合製剤の連用摂取(8週間)による皮膚バリア機能・肌荒れ評価結果(40歳以下)
【図13】リュウガンニクエキス配合製剤の連用摂取(8週間)による実感アンケート結果(乾燥)
【図14】リュウガンニクエキス配合製剤の連用摂取(8週間)による実感アンケート結果(くすみ)
【図15】リュウガンニクエキス配合製剤の連用摂取(8週間)による実感アンケート結果(はり)
【図16】リュウガンニクエキス配合製剤の連用摂取(8週間)による実感アンケート結果(透明感)
【図17】リュウガンニクエキス配合製剤の連用摂取(8週間)による実感アンケート結果(総合実感)
【図18】リュウガンニクエキス配合製剤の連用摂取(8週間)による実感アンケート結果(目の疲れ)
【図19】リュウガンニクエキス配合製剤の連用摂取(8週間)による実感アンケート結果(目の乾燥)
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明におけるリュウガンニク(竜眼肉)とは、中国南方原産の亜熱帯植物であるムクロジ科ユーフォリア属の植物、リュウガン(Euphoria longan (Lour.)Steud.)の仮種皮を指す名称で、この仮種皮(リュウガンニク)を半乾燥させた生薬は中国薬典に収載され、抗不安作用・記憶力改善作用・抗菌作用・免疫増強作用・強壮作用などが明らかになっている(伝統と医療、Vol.5,No.4,1999)。
【0026】
本発明におけるリュウガンニクは、乾燥物、その粉砕物、それら自身を圧搾抽出することにより得られる搾汁、水あるいはアルコール、エーテル、アセトンなどの有機溶媒による粗抽出物、および粗抽出物を液液分配、カラムクロマトグラフィーなどで段階的に精製して得られた抽出物画分などを使用することができる。これらは単独で用いても良く、また2種以上混合して用いても良い。栽培方法や栽培地も特に限定されるものではない。
【0027】
例えば、リュウガンニクの植物体乾燥物1Kgにエタノール3Lを加え、室温で一晩浸漬することにより得た抽出液を、そのままヒアルロン酸蓄積促進作用を有する皮膚賦活剤として使用しても良いし、液液分配、各種クロマトグラフィーを組み合わせて、精製したものを使用しても良い。
【0028】
ヒアルロン酸は、分子量約50万〜300万の粘性を有する酸性ムコ多糖類である。ヒアルロン酸は、例えば鶏冠に多量に(約1%)含まれており、この鶏冠は古くから食用に供されている。ヒアルロン酸を工業的に製造するには、例えば、生体組織を原料とする抽出法と、微生物を用いる醗酵法とがある。また、それらの塩を用いてもよい。
【0029】
セラミドは、スフィンゴシン、脂肪酸および糖が結合した構造を有し、天然に由来するセラミドであって、例えば動物由来の牛脳より抽出したもの、植物由来の小麦、米、大豆、黍、ホウレンソウ等より抽出したもの、酵母等の微生物より抽出したものなどが挙げられる。このセラミドは、公知の方法により得ることができる。例えば、小麦または米糠を原料として、エタノール、アセトンおよび水等の極性溶媒を用いて抽出し、有機溶媒中で再結晶させる方法等である。
【0030】
N−アセチルグルコサミン又はグルコサミンは、カニやエビなどの甲殻類の外殻を由来とする天然多糖類キチンを公知の方法、例えば酸及び酵素により加水分解して得られる。また、それらの塩を用いてもよい。
【0031】
本発明においては、リュウガンニクをヒアルロン酸、セラミド、N−アセチルグルコサミン、グルコサミンと併用することによって、さらに高いヒアルロン酸蓄積促進効果をもたらすことができる。
【0032】
本発明の剤を使用して、肌荒れ改善用、皮膚老化防止用及びドライアイ改善用組成物、並びにこれらを含有する医薬や食品を製造することができる。
【0033】
本発明のヒアルロン酸蓄積促進剤またはヒアルロン酸蓄積促進用組成物は、食品として適用することができる。食品としては、そのまま、又は種々の栄養成分を加えて、若しくは飲食品中に含有し、食品素材として食することができる。例えば、澱粉、乳糖、麦芽糖、植物油脂粉末、カカオ脂末、ステアリン酸などの適当な助剤を添加した後、慣用の手段を用いて、食用に適した形態、例えば、顆粒状、粒状、錠剤、カプセル、ペーストなどに成形して食用に供してもよく、また種々の食品、例えば、ハム、ソーセージなどの食肉加工食品、かまぼこ、ちくわなどの水産加工食品、パン、菓子、バター、粉乳、発酵乳製品に添加して使用したり、水、果汁、牛乳、清涼飲料、茶などの飲料に添加して使用してもよい。
【0034】
本発明において、有効成分たるリュウガンニク、さらにはヒアルロン酸、セラミド、N−アセチルグルコサミン、グルコサミンの有効投与量は、患者の年齢、体重、症状、患者の程度、投与経路、投与スケジュール、製剤形態、素材の阻害活性の強さなどにより適宜選択されるが、好ましくは1日当たりリュウガンニクでは10〜1,500mg、ヒアルロン酸では1〜100mg、セラミドでは0.1〜10mg、N−アセチルグルコサミンおよびグルコサミンでは1〜1,500mg程度とされ、1日に数回に分けて投与してもよい。
【実施例】
【0035】
以下に実施例を挙げて、具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
[実施例1:植物の抽出]
リュウガン(Euphoria longan (Lour.)Steud.)の仮種皮の部分(リュウガンニク)1kgを細切し、水3Lを加え、室温で一晩浸漬した。これを濾過し、抽出液を得た。抽出液を濃縮したところ、その蒸発残分はそれぞれ250gであった。
[実施例2:植物の抽出]
リュウガン(Euphoria longan (Lour.)Steud.)の仮種皮の部分(リュウガンニク)1kgを細切し、99.5%エタノール3Lを加え、室温で一晩浸漬した。これを濾過し、抽出液を得た。抽出液を濃縮したところ、その蒸発残分は75gであった。
【0036】
以下に処方例を挙げて、具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0037】
[処方例1:錠剤の製造]
実施例1で得られたリュウガンニクの水抽出物を用いて、常法に従って、下記の組成の錠剤を製造した。
(組 成) (配合:重量%)
リュウガンニクエキス 50.0
乳糖 37.0
コーンスターチ 12.0
グァーガム 1.0
【0038】
[処方例2:錠剤の製造]
実施例1で得られたリュウガンニクの水抽出物を用いて、常法に従って、下記の組成の錠剤を製造した。
(組 成) (配合:重量%)
リュウガンニクエキス 16.7
乳糖 62.1
コーンスターチ 20.2
グァーガム 1.0
【0039】
[処方例3:錠剤の製造]
実施例1で得られたリュウガンニクの水抽出物を用いて、常法に従って、下記の組成の錠剤を製造した。
(組 成) (配合:重量%)
リュウガンニクエキス 25.0
N−アセチルグルコサミン 12.5
ヒアルロン酸 2.5
セラミド 2.5
セルロース 15.0
デンプン 19.5
植物油脂末 3.0
乳糖 20.0
【0040】
[処方例4:錠剤の製造]
実施例1で得られたリュウガンニクの水抽出物を用いて、常法に従って、下記の組成の錠剤を製造した。
(組 成) (配合:重量%)
リュウガンニクエキス 25.0
グルコサミン 15.0
セラミド 2.5
セルロース 15.0
デンプン 19.5
植物油脂末 3.0
乳糖 20.0
【0041】
[処方例5:ジュースの製造]
実施例1で得られたリュウガンニクの水抽出物を用いて、常法に従って、下記の組成のジュースを製造した。
(組 成) (配合:重量%)
冷凍濃縮温州みかん果汁 5.0
果糖ブドウ糖液糖 11.0
クエン酸 0.2
L−アスコルビン酸 0.02
香料 0.2
色素 0.1
リュウガンニクエキス 0.2
水 83.28
【0042】
本発明である、リュウガンニクによるヒアルロン酸蓄積促進効果は、以下のような試験方法により確認した。
[試験例1:ヒアルロン酸蓄積促進試験]
ヒアルロン酸蓄積促進作用はホルマリン固定赤血球懸濁液を用いた試験(生化学73(2),429-438(2001))を参考にし、その改良法すなわち陰性荷電コロイド排除法を構築して評価した。陰性荷電コロイド排除法の詳細は以下のとおりである。
【0043】
ヒアルロン酸はD−グルクロン酸とD−N−アセチルグルコサミンの繰り返し構造を持ち、そのグルクロン酸の持つカルボキシル基がヒアルロン酸全体に負電荷を持たせている。ヒアルロン酸を持つ細胞はヒアルロン酸存在下において負電荷を持つために、そこに負電荷のコロイド溶液を加えると、ヒアルロン酸存在箇所は負電荷の反発力でコロイドが刷けるため、絵の具(負電荷)を用いてコロイドの刷けが観察できる。陰性荷電コロイド排除法は、この性質を利用して、ヒアルロン酸の蓄積を確認する試験法であり、ヒアルロン酸の総量を見るELISA法(A.J.Fosang et al.,Matrix,10,306−313,1990)に比べて、陰イオンコロイド排除法はマトリックスの状態を可視化できるという点で優れている。この方法を用いて、ヒアルロン酸の蓄積量を、刷けの濃さと太さで目視的に判定できる。刷けた部分、すなわちヒアルロン酸が蓄積されている部位は、顕微鏡下では光が透過するため、白く可視化でき、それ以外は絵の具により、光が透過しない暗い背景として観察されることから、定量する場合は以下の手順で行う。
(1)顕微鏡下で観察した画像を画像解析ソフトであるScion Imageに取り込む。
(2)各画像をモノクロに変換する。
(3)白くみえる部位(ヒアルロン酸蓄積部位)の面積及び明度を測定する。
(4)(3)で測定したヒアルロン酸蓄積部位付近の暗色化した背景3個所をランダムに選択し、その箇所の明度を測定し、平均値を算出する。
(5)(ヒアルロン酸蓄積部位の明度−背景3個所の明度の平均値)×ヒアルロン酸蓄積部位の面積)により、絶対明度(グレー値)を算出する。
(6)無処置群のグレー値を100とした時の、各被験物質投与時のグレー値を算出する。
(7)同様の操作を、取り込んだ画像中の全てのヒアルロン酸蓄積部位について行い、平均値を算出する。
【0044】
具体的には、ヒト皮膚繊維芽細胞を組織培養用プレートで培養したのち、実施例1で調製したリュウガンエキスを0、0.05、0.5、5mg/mLの濃度で、また、ポジティブコントロールとしてPMA(フォルボールエステル:Sigma社製),ネガティブコントロールとしてDXM(デキサメタゾン:Sigma社製)を最終添加濃度でPMAが100nM、DXMが10nMになるように調製し、各16時間作用させた。作用後、培地を除去したのち、2.5mg/mLの濃度の陰イオン性コロイド粒子懸濁液50μL(ホルバイン社、843 PERMANENT GREEN DEEP)を添加し、細胞のヒアルロン酸リッチマトリックスによって排除された領域を顕微鏡下で観察して目視的且つ定量的に活性を判定した。
【0045】
各サンプルのヒアルロン酸蓄積促進作用に対する評価結果を図1〜図6に示し、定量値を図7に示した。
【0046】
図1〜図6より、リュウガンニクエキス無添加のコントロール区(図1)に比較して、リュウガンニクエキス添加区(図4〜図6)では添加濃度依存的に、ヒアルロン酸蓄積部位として観察される白色部位が、太くあるいは長くなり、明度(白色の強さ)の増強されている様子が観察できる。
【0047】
また、これら図1〜図6の結果を定量的に評価した結果である図7に示した通り、リュウガンニクエキス0.5mg/ml添加区では21%、5mg/ml添加区では107%もヒアルロン酸蓄積量が増加し、リュウガンニクエキスは、濃度依存的にヒト繊維芽細胞におけるヒアルロン酸蓄積量を増加させることがわかる。
[試験例2:モニターによる皮膚への有効性評価]
日ごろ慢性的に乾燥肌で肌荒れ傾向のある4名に処方例1の錠剤(1錠あたり300mg)を毎日10錠ずつ、4週間連用摂取させた。摂取前・摂取開始2週間後・摂取開始4週間目に以下の3項目の評価を行った。なお、測定条件を可能な限り同一に保つため洗顔後、室温21℃/湿度36%の恒温室で20分安静にした後測定を行った。
[評価項目1:皮膚保湿性機能の評価]
頬の水分量をSKICON−200(IBS社)にて測定した。測定値は電気伝導度(μS)で表し、この値が大きいほど水分量が多い。従って、水分量をSKICON−200の値を測定することにより、本発明のヒアルロン酸蓄積促進剤の皮膚保湿機能を検討することができる。
【0048】
摂取前・摂取開始2週間後・摂取開始4週間後の皮膚水分量測定結果を図8に示す。処方例1の錠剤を摂取することにより、摂取開始2週間後で9.9%、摂取開始4週間後で45.0%、それぞれ皮膚の水分量が増加した。
[評価項目2:皮膚バリア機能・肌荒れの評価]
経皮水分蒸散量(TEWL)の値が高い程角層のバリア機能が低下し、肌荒れを起こしていることを示している。従って、このTEWLの値を測定することにより、本発明のヒアルロン酸蓄積促進剤の皮膚バリア機能を検討することができる。測定にはTEWAメーター(Courage+Khazaka社)を用い、頬を測定した。
【0049】
摂取前・摂取開始2週間後・摂取開始4週間後の結果を図9に示す。処方例1の錠剤を摂取することにより、摂取前のTEWL値を100%とした場合、摂取開始2週間後で53.6%、摂取開始4週間後で42.6%に経皮水分蒸散量がそれぞれ低下し、皮膚のバリア機能が回復した。
[評価項目3:皮膚弾力性(皮膚のしわ・たるみ・はり)の評価]
頬の皮膚弾力性をキュートメーター(CUTOMETER SEM474、Courage+Khazaka社)を用いて測定した。弾力性の値は加齢などによって、肌のたるみがある状態やはりのない状態では低下している。従って弾力性の値が増加すれば、皮膚がより柔軟性、弾力性を増した引き締まった状態を意味する指標となる。摂取前・摂取開始2週間後・摂取開始4週間後の結果を図10に示す。
【0050】
処方例1の錠剤を摂取することにより、摂取開始2週間後で14.5%、摂取開始4週間後で15.3%、それぞれ皮膚の弾力性が増加した。
【0051】
以上の結果より、リュウガンニクを含有している食品を摂取することにより、皮膚保湿性機能・皮膚バリア機能・肌荒れ・皮膚弾力性(皮膚のしわ・たるみ・はり)が改善することが認められた。
[試験例3:ドライアイの評価]
日ごろ慢性的にドライアイ傾向のある女性3名に処方例1の錠剤(1錠あたり300mg)を毎日10錠ずつ、4週間連用摂取させた。摂取期間前後にドライアイの主な症状である、目が疲れやすい・目が重い・目が充血する・目がごろごろする・目が乾くという5症状について、以下のようにスコア化し、評価を行なった。摂取前・摂取開始2週間後・摂取開始4週間後の結果を表1に示す。スコア値が低いほど、ドライアイの症状が軽い。
【0052】
ドライアイのスコア基準 症状が非常に気になる=2
症状が気になる=1
症状が気にならない=0
【0053】
【表1】
【0054】
以上の結果より、リュウガンニクを含有している食品を摂取することにより、ドライアイの諸症状が改善することが認められた。
[試験例4:モニターによる皮膚への有効性評価(大規模試験)]
20〜65歳の健康な女性38名を(1)処方例1の錠剤(1錠あたり300mg)を毎日10錠ずつ、(2)処方例2の錠剤(1錠あたり300mg)を毎日10錠ずつ、(3)プラセボの3群に分け、ダブルブラインド(二重盲見比較)試験で8週間連用摂取させた。摂取前・摂取開始4週間後・摂取開始8週間目に以下の項目の評価および試験終了後実感アンケート調査を行った。なお、測定条件を可能な限り同一に保つため洗顔後、室温21℃/湿度36%の恒温室で20分安静にした後測定を行った。
[評価項目1:皮膚バリア機能・肌荒れの評価]
経皮水分蒸散量(TEWL)の値が高い程角層のバリア機能が低下し、肌荒れを起こしていることを示している。従って、このTEWLの値を測定することにより、本発明のヒアルロン酸蓄積促進剤の皮膚バリア機能を検討することができる。測定にはTEWAメーター(Courage+Khazaka社)を用い、上腕部を測定した。
【0055】
摂取前・摂取開始2週間後・摂取開始4週間後の結果を図11および12に示す。 (1)の高容量群(H群;リュウガンニクエキスとして1,500mg/日)摂取群で、摂取前のTEWL値を100%とした場合、摂取開始4週間後で90.5%、摂取開始8週間後で75.9%に経皮水分蒸散量がそれぞれ低下し、皮膚のバリア機能が回復した。さらに、40歳以下の群では、摂取8週目で(3)のプラセボ投与群(P群)に対して有意(P<0.05)に低下した。(2)の低容量群(L群;リュウガンニクエキスとして500mg/日)においても、8週間後で、82%に低下し、皮膚のバリア機能が回復した。
[評価項目2:アンケート調査(皮膚の乾燥・くすみ・はり・透明感・総合およびドライアイ)の評価]
各摂取群において、摂取8週間後に「皮膚の乾燥」・「くすみ」・「はり」・「透明感」・「総合的な肌の効果実感」および「目の疲れ」・「目の乾燥」についてアンケート調査を行った。各アンケートについて、〈改善した〉、〈変化なし〉、〈悪化した〉、の3項目より1つを選択してもらった。「総合的な肌の効果実感」については、〈感じられた〉、〈やや感じられた〉、〈あまり感じられなかった〉、〈全く感じなかった〉、の4項目より1つを選択してもらった。各アンケート結果を図13〜18に示す。
【0056】
(1)の高容量群(High;リュウガンニクエキスとして1,500mg/日)及び(2)の低容量群(Low;リュウガンニクエキスとして500mg/日)で、実感アンケートの「皮膚の乾燥」、「くすみ」、「はり」、「透明感」、「総合的な肌の効果実感」、「目の疲れ」、「目の乾燥」の項目で(3)のプラセボ群(Placebo)と比較して改善の傾向がみられた。また、その改善傾向はリュウガンニクエキス摂取量依存的に高まった。
【0057】
以上の結果より、リュウガンニクを含有している食品を摂取することにより、皮膚保湿性機能、皮膚バリア機能、肌荒れ予防・改善、しわ改善、皮膚老化防止およびドライアイが改善することが認められた。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リュウガンニク及び/又はその抽出物を含有することを特徴とするヒアルロン酸蓄積促進剤。
【請求項2】
請求項1記載のヒアルロン酸蓄積促進剤を含む、皮膚の保湿、肌荒れ予防・改善、皮膚バリア、しわ改善用及び/又は皮膚老化防止・改善用組成物。
【請求項3】
請求項1記載のヒアルロン酸蓄積促進剤を含むドライアイ予防・治療用組成物。
【請求項4】
ヒアルロン酸、セラミド、N−アセチルグルコサミン、グルコサミンからなる群より選ばれた少なくとも一種以上を含有することを特徴とする請求項1乃至請求項3記載の組成物。
【請求項5】
食品である請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の組成物。
【請求項6】
医薬である請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の組成物。
【請求項1】
リュウガンニク及び/又はその抽出物を含有することを特徴とするヒアルロン酸蓄積促進剤。
【請求項2】
請求項1記載のヒアルロン酸蓄積促進剤を含む、皮膚の保湿、肌荒れ予防・改善、皮膚バリア、しわ改善用及び/又は皮膚老化防止・改善用組成物。
【請求項3】
請求項1記載のヒアルロン酸蓄積促進剤を含むドライアイ予防・治療用組成物。
【請求項4】
ヒアルロン酸、セラミド、N−アセチルグルコサミン、グルコサミンからなる群より選ばれた少なくとも一種以上を含有することを特徴とする請求項1乃至請求項3記載の組成物。
【請求項5】
食品である請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の組成物。
【請求項6】
医薬である請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の組成物。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2011−116759(P2011−116759A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−4449(P2011−4449)
【出願日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【分割の表示】特願2004−233986(P2004−233986)の分割
【原出願日】平成16年8月11日(2004.8.11)
【出願人】(593106918)株式会社ファンケル (310)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【分割の表示】特願2004−233986(P2004−233986)の分割
【原出願日】平成16年8月11日(2004.8.11)
【出願人】(593106918)株式会社ファンケル (310)
【Fターム(参考)】
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