説明

ヒスタミンH3アンタゴニスト活性を有する置換ピリダジン誘導体

本発明は、ヒスタミンHアンタゴニスト活性を有する化合物、およびそれを使用し、調製する方法に関する。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒスタミンHアンタゴニスト活性を有する化合物ならびにその使用および調製の方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒスタミンは、ニューロン活性の十分に確立された調節物質であり、ヒスタミン受容体の少なくとも4つのサブタイプ、すなわちH、H、H、Hが文献において報告されている。ヒスタミンH受容体は、中枢神経系における神経伝達において重要な役割を果たす。H受容体は、主に脳において発現され、大脳皮質、へんとう、海馬、線条体、視床および視床下部に局在化するものであり、末梢(皮膚、肺、心臓血管系、腸、胃腸管など)においても見出されうる。H受容体は、主に脳において発現され、大脳皮質、へんとう、海馬、線条体、視床および視床下部に局在化する。H受容体はまた、ヒスタミン神経末端上にシナプス前性に局在化され、阻害自己受容体として作用する(AlguacilおよびPerez−Garcia、2003年;Passaniら、2004年;Leursら、2005年;Celanireら、2005年;WitKinおよびNelson、2004年)。
【0003】
受容体がヒスタミンによって活性化される場合、ヒスタミン放出が阻害される。H受容体はまた、アセチルコリン、ドーパミン、GABA、グルタミン酸塩およびセロトニンの放出のシナプス前調節に関与する(Repka−Ramirez、2003年;ChazotおよびHann、2001年;Leursら、1998年を参照)。H受容体は、インビトロおよびインビボで高度の構成的または自発的活性を示し(たとえば、受容体はアゴニスト刺激の不在下で活性があり)、それゆえ、受容体に対するリガンドは、アゴニスト、中性アンタゴニストまたはインバースアゴニスト効果を示すことが可能である。
【0004】
CNSにおけるヒスタミンニューロンの位置および機能は、H受容体と相互作用する化合物が、ナルコレプシーまたは睡眠/覚醒障害、摂食行動、摂食障害、肥満、認知、覚醒、記憶、気分障害、気分注意変調(mood attention alteration)、注意欠陥多動性障害(ADHD)、アルツハイマー病/認知症、統合失調症、疼痛、ストレス、片頭痛、乗り物酔い、うつ病、精神障害およびてんかんを含む多数の治療用途において有用性を有する場合があることを示唆する(Leursら、2005年;WitKinおよびNelson、2004年、HancockおよびFox、2004年;Esbenshadeら、2006年)。Hアンタゴニスト/インバースアゴニストであれば、胃腸障害、喘息などの呼吸器障害、炎症、および心筋梗塞において重要でありうる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、H活性を示す化合物が必要とされる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、式I:
【0007】
【化1】

【0008】
(式中、
は、H、−OR、−SR、−SOR、−SO、−NR10、ハロゲン、C1−4アルキル、C4−10シクロアルキル、C1−4ハロアルキル、C6−12アリール、5〜10員ヘテロアリール、または3〜10員ヘテロシクロアルキルであり、ここで前記C1−4アルキル、C4−10シクロアルキル、C1−4ハロアルキル、C6−12アリール、5〜10員ヘテロアリール、および3〜10員ヘテロシクロアルキルの各々は、選択的に1、2、もしくは3のR11によって置換され;
およびRは、独立に、HまたはC1−4アルキルであり;またはRおよびRは、一緒になると、C4−10シクロアルキルまたはフェニルを形成し、ここで前記C4−10シクロアルキルおよびフェニルの各々は、選択的に1、2、もしくは3のハロゲンまたはC1−4アルキルによって置換され;
各Rは、独立に、HまたはC1−4アルキルまたはOHであり;
各Rは、独立に、C1−4アルキルまたはヒドロキシアルキルであり;
各Rは、独立に、ハロゲン、C1−4ハロアルキル、−OH、C1−4アルキル、−O−C1−4アルキル、−NR10、またはCNであり;
は、C1−4アルキル、C4−10シクロアルキル、5〜10員ヘテロアリール、C6−12アリール、C6−12アリールC1−6アルキル、5〜10員ヘテロアリールアルキル、または3〜10員ヘテロシクロアルキルであり;
およびR10は、独立に、H、C1−4アルキル、またはアリールアルキルであり;
各R11は、ハロゲン、−OH、−OC1−4アルキル、C1−4アルキル、C1−4ハロアルキル、または−CNであり;
Xは、OまたはSであり;
mは、2、3、4、5、または6であり;
nは、0、1、または2であり;
yは、0、1、2、3、または4であり;
zは、0、1、2、3、または4である)
の化合物ならびに、その立体異性体および薬学的に許容される塩に関する。
【0009】
式Iの化合物を作製する方法ならびに、特にHアンタゴニスト/インバースアゴニストとしてのその薬学的用途もまた記載される。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本願は、式Iおよび式IAに記載の化合物、式Iまたは式IAに記載の少なくとも1つの化合物と、選択的に1つ以上の追加的な治療剤とを含む医薬組成物ならびに、式Iまたは式IAに記載の化合物を、単独で使用する、またあらゆるプロドラッグ、溶媒和物、薬学的に許容される塩および立体異性体を含む1つ以上の追加的な治療剤と併用する治療の方法について記載する。
【0011】
本発明の好ましい実施形態は、式I:
【0012】
【化2】

【0013】
(式中、
は、H、−OR、−SR、−SOR、−SO、−NR10、ハロゲン、C1−4アルキル、C4−10シクロアルキル、C1−4ハロアルキル、C6−12アリール、5〜10員ヘテロアリール、または3〜10員ヘテロシクロアルキルであり、ここで前記C1−4アルキル、C4−10シクロアルキル、C1−4ハロアルキル、C6−12アリール、5〜10員ヘテロアリール、および3〜10員ヘテロシクロアルキルの各々は、選択的に1、2、もしくは3のR11によって置換され;
およびRは、独立に、HまたはC1−4アルキルであり;またはRおよびRは、一緒になるとC4−10シクロアルキルまたはフェニルを形成し、ここで前記C4−10シクロアルキルおよびフェニルの各々は、選択的に1、2、もしくは3のハロゲンまたはC1−4アルキルによって置換され;
各Rは、独立に、HまたはC1−4アルキルまたはOHであり;
各Rは、独立に、C1−4アルキルまたはヒドロキシアルキルであり;
各Rは、独立に、ハロゲン、C1−4ハロアルキル、−OH、C1−4アルキル、−O−C1−4アルキル、−NR10、またはCNであり;
は、C1−4アルキル、C4−10シクロアルキル、5〜10員ヘテロアリール、C6−12アリール、C6−12アリールC1−6アルキル、5〜10員ヘテロアリールアルキル、または3〜10員ヘテロシクロアルキルであり;
およびR10は、独立に、H、C1−4アルキル、またはアリールアルキルであり;
各R11は、ハロゲン、−OH、−OC1−4アルキル、C1−4アルキル、C1−4ハロアルキル、または−CNであり;
Xは、OまたはSであり;
mは、2、3、4、5、または6であり;
nは、0、1、または2であり;
yは、0、1、2、3、または4であり;
zは、0、1、2、3、または4である)
の化合物ならびに、その立体異性体および薬学的に許容される塩に関する。
【0014】
好ましい実施形態では、Rは、H、−OR、−SR、−SOR、−SO、−NR10、ハロゲン、C1−4アルキル、C1−4ハロアルキル、アリールおよびヘテロアリールからなる群から選択される。他の好ましい実施形態では、Rは、ハロゲン、C1−4アルキル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクロアルキル、または−NR10である。他の実施形態では、Rは、H、ハロゲン、または−NHである。さらに他の実施形態では、Rは、塩化物またはフッ化物である。さらに他の実施形態では、RはORである。好ましい実施形態は、Rが、−SR、−SOR、または−SOであるものである。
【0015】
さらに他の実施形態では、Rは、H、メチル、フェニル、ピロリジニル、ピペリジニル、モルホリニル、チオフェニル、ピリジニル、−OC1−4アルキル、−Oアリール、−OCHアリール、−SC1−4アルキル、−SCHアリール、−SOCHアリール、−SOCHアリール、またはベンゾフラニルである。他の好ましい実施形態では、RはHである。
【0016】
本発明の特定の好ましい実施形態は、RがC1−4アルキルでありかつnが0である化合物を含む。
【0017】
他の好ましい実施形態では、RはHである。さらに他の実施形態では、RはHである。
【0018】
大部分の好ましい実施形態では、R、R、RおよびRは、それぞれHである。
【0019】
いくつかの好ましい実施形態では、RおよびRは、それぞれHである。他の実施形態では、RおよびRは、一緒になると、C4−10シクロアルキルを形成する。いくつかの実施形態では、RおよびRは、一緒になると、フェニルを形成する。
【0020】
本発明のいくつかの好ましい実施形態では、各Rは、独立に、Hまたはメチルである。他の実施形態では、RはHである。
【0021】
特定の実施形態では、各Rはメチルである。特定の他の実施形態では、各Rは、独立に、C1−4アルキルである。
【0022】
本発明の好ましい実施形態は、mが1、2、または3であるものを含む。好ましくは、mは3である。
【0023】
他の好ましい実施形態では、nは0または1である。好ましくは、nは0である。
【0024】
いくつかの実施形態では、yは0である。他の実施形態では、zは1である。
【0025】
大部分の好ましい実施形態では、XはOである。
【0026】
本発明の特に好ましい化合物は、
3−クロロ−6−{4−[3−((R)−2−メチルピロリジン1−イル)プロポキシ]フェニル}ピリダジン;
3−クロロ−6−[4−(3−ピペリジン−1−イル−プロポキシ)−フェニル]ピリダジン;
3−メチル−6−{4−[3−((R)−2−メチル−ピロリジン−1−イル)−プロポキシ]−フェニル}ピリダジン;
3−{4−[3−((R)−2−メチル−ピロリジン−1−イル)−プロポキシ]−フェニル}−6−フェニルピリダジン;
3−{4−[3−((R)−2−メチル−ピロリジン−1−イル)−プロポキシ]−フェニル}−6−ピロリジン−1−イル−ピリダジン;
4−(6−{4−[3−((R)−2−メチルピロリジン−1−イル)−プロポキシ]フェニル}ピリダジン−3−イル)モルホリン;
6−{4−[3−((R)−2−メチル−ピロリジン−1−イル)−プロポキシ]−フェニル}ピリダジン−3−イルアミン;
メチル−(6−{4−[3−((R)−2−メチル−ピロリジン−1−イル)−プロポキシ]フェニル}ピリダジン−3−イル)アミン;
1−(6−{4−[3−((R)−2−メチルピロリジン−1−イル)−プロポキシ]フェニル}ピリダジン−3−イル)ピペリジン−4−オール;
3−クロロ−6−{3−メトキシ−4−[3−((R)−2−メチル−ピロリジン−1−イル)プロポキシ}フェニル}ピリダジン;
3−クロロ−6−[3−メトキシ−4−(3−ピペリジン−1−イル−プロポキシ)フェニル]ピリダジン;
3−クロロ−6−[2−メチル−4−(3−ピペリジン−1−イル−プロポキシ)フェニル]ピリダジン;
5−(6−クロロ−ピリダジン−3−イル)−2−[3−((R)−2−メチル−ピロリジン−1−イル)−プロポキシ]ベンゾニトリル;
5−(6−クロロ−ピリダジン−3−イル)−2−(3−ピペリジン−1−イル−プロポキシ)ベンゾニトリル;
1−クロロ−4−[4−(3−ピペリジン−1−イル−プロポキシ)−フェニル]−6,7−ジヒドロ−5H−シクロペンタ[d]ピリダジン;
3−{4−[3−((R)−2−メチル−ピロリジン−1−イル)−プロポキシ]フェニル}−6−チオフェン−2−イル−ピリダジン;
1−クロロ−4−{4−[3−((R)−2−メチル−ピロリジン−1−イル)−プロポキシ]−フェニル}−6,7−ジヒドロ−5H−シクロペンタ[d]ピリダジン;
3−クロロ−6−{4−[3−((R)−2−メチル−ピロリジン−1−イル)−プロポキシ]−フェニル}−4,5−ジアザ−トリシクロ[6.2.2.02,7]ドデカ−2(7),3,5−トリエン;
3−(5−クロロ−ピリジン−3−イルオキシ)−6−{4−[3−((R)−2−メチル−ピロリジン−1−イル)−プロポキシフェニル}ピリダジン;
3−ベンジルオキシ−6−[4−(3−ピペリジン−1−イル−プロポキシ)フェニル]ピリダジン;
3−ベンジルオキシ−6−{4−[3−((R)−2−メチル−ピロリジン−1−イル)−プロポキシ]フェニル}ピリダジン;
3−メトキシ−6−{4−[3−((R)−2−メチル−ピロリジン−1−イル−プロポキシ]−フェニル}ピリダジン;
3−メトキシ−6−{4−3−ピペリジン−1−イル−プロポキシ)−フェニル]ピリダジン;
3−イソプロポキシ−6−{4−[3−((R)−2−メチル−ピロリジン−1−イル)−プロポキシ]フェニルピリダジン;
3−フェノキシ−6−[4−(3−ピペリジン−1−イル−プロポキシ)フェニル]ピリダジン;
3−(4−フルオロ−ベンジルオキシ)−6−{4−[3−((R)−2メチル−ピロリジン−1−イル)−プロポキシ]フェニル}ピリダジン;
3−{4−[3−((R)−2−メチル−ピロリジン−1−イル)−プロポキシ]−フェニル}−6−(4−トリフルオロメチル−ベンジルオキシ)ピリダジン;
エチル−(6−{4−[3−((R)−2−メチル−ピロリジン−1−イル)−プロポキシ]−フェニル}ピリダジン−3−イル)アミン;
ベンジル−(6−{4−[3−((R)−2−メチル−ピロリジン−1−イル)−プロポキシ]−フェニル}−ピリダジン−3−イル)アミン;
3−{4−[3−((R)−2−メチル−ピロリジン−1−イル−プロポキシ]−フェニル}−6−メチルスルファニルピリダジン;
3−メチルスルファニル−6−[4−(3−ピペリジン−1−イル−プロポキシ)フェニル]ピリダジン;
1−{4−[3−((R)−2−メチル−ピロリジン−1−イル)−プロポキシ]−フェニル}−4−メチルスルファニル−6,7−ジヒドロ−5H−シクロペンタ[d]ピリダジン;
3−ベンジルスルファニル−6−{4−[3−((R)−2−メチル−ピロリジン−1−イル)−プロポキシ]フェニル}ピリダジン;
3−ベンジルスルファニル−6−[4−(3−ピペリジン−1−イル−プロポキシ)−フェニル]ピリダジン;
3−{4−[3−((R)−2−メチル−ピロリジン−1−イル)−プロポキシ]−フェニル}−6−フェニルメタンスルフィニル−ピリダジン;
3−フェニルメタンスルフィニル−6−[4−(3−ピペリジン−1−イル−プロポキシ)フェニル]ピリダジン;
3−{4−[3−((R)−2−メチル−ピロリジン−1−イル)−プロポキシ]−フェニル}−6−フェニルメタンスルホニル−ピリダジン;
3−フェニルメタンスルホニル−6−[4−(3−ピペリジン−1−イル−プロポキシ)フェニル]ピリダジン;
1−メトキシ−4−{4−[3−((R)−2−メチルピロリジン−1−イル)−プロポキシ]−フェニル}6,7−ジヒドロ−5H−シクロペンタ[d]ピリダジン;
1−メトキシ−4−{4−[3−((R)−2−メチル−ピロリジン−1−イル−プロポキシ]−フェニル}フタラジン;
3−ベンゾフラン−2−イル−6−{4−[3−((R)−2−メチル−ピロリジン−1−イル)−プロポキシ]−フェニル}ピリダジン;
1−ベンジルスルファニル−4−{4−[3−((R)−2−メチル−ピロリジン−1−イル)プロポキシ]−フェニル}−6,7−ジヒドロ−5H−シクロペンタ[d]ピリダジン;
3−クロロ−6−{4−[(S)−2−メチル−3−((R)−2−メチルピロリジン−1−イル)−プロポキシ]フェニル}ピリダジン;
3−クロロ−6−{4−[(S)−2−メチル−3−(2−メチルピペリジン−1−イル)プロポキシ]−フェニル}ピリダジン;および
6−{4−[3−((R)−2−メチル−ピロリジン−1−イル)プロポキシ]フェニル}ピリダジン;
およびその薬学的に許容される塩を含む。
【0027】
また、本発明の範囲内に、式Iの少なくとも1つの化合物および少なくとも1つの薬学的に許容される担体または希釈剤を含む医薬組成物が含まれる。本発明の他の実施形態は、少なくとも1つの追加的な治療剤をさらに含む医薬組成物を含む。
【0028】
本発明のもうひとつの実施形態は、式IA:
【0029】
【化3】

【0030】
(式中、
は、−OR、−SR、−SOR、−SO、−OSO、−OCO、−OC(O)R、−OP(O)R、−NR10、ハロゲン、C1−4アルキル、C1−4ハロアルキル、アリールおよびヘテロアリールからなる群から選択され;
およびRは、独立に、HおよびC1−4アルキルからなる群から選択され、ここでRおよびRが双方ともC1−4アルキルである場合、それらは一緒になると、4〜10員の1もしくは2環を形成する場合があり;
は、HおよびC1−4アルキルからなる群から選択され;
は、HおよびC1−4アルキルからなる群から選択され;
は、H、C1−4アルキル、−O−C1−4アルキルおよびCNからなる群から選択され;
は、C1−4アルキル、アリールアルキルおよびヘテロアリールアルキルからなる群から選択され;
は、HおよびC1−4アルキルからなる群から選択され;
およびR10は、独立に、H、C1−4アルキル、C1−4アルキル(ここで1個のC原子は、O、SおよびNからなる群から選択されるヘテロ原子によって置換されている)およびアリールアルキルからなる群から選択され、ここでRおよびR10が双方ともC1−4アルキルであるか、またはRおよびR10のうち一方がC1−4アルキルであり、また他方がC1−4アルキルである(ここで1個のC原子は、O、SおよびNからなる群から選択されるヘテロ原子によって置換されている)場合、それらは一緒になると、4〜7員複素環を形成する場合があり;かつ
nは0または1である)
の化合物に関する。
【0031】
好ましい実施形態では、Rは、−OR、−SR、−SOR、−SO、−NR10、ハロゲン、C1−4アルキル、C1−4ハロアルキル、アリールおよびヘテロアリールからなる群から選択される。他の実施形態では、RはC1−4アルキルであり、かつnは0である。さらに他の好ましい実施形態では、R、R、RおよびRはHである。
【0032】
また、本発明の範囲内に、式IAの少なくとも1つの化合物および少なくとも1つの薬学的に許容される担体または希釈剤を含む医薬組成物が含まれる。本発明の他の実施形態は、少なくとも1つの追加的な治療剤をさらに含む医薬組成物を含む。
【0033】
定義
上記で、また本開示を通して用いられるように、次の用語は、他に指定がない限り、次の意味を有するように理解されるべきである。
【0034】
用語「約」は、本明細書で使用される場合、規定値の±10%の値の範囲を示す。たとえば、語句「約50」は、50の±10%、すなわち45〜55を含む。語句「約10〜100」は、10の±10%および100の±10%、すなわち9〜110を含む。
【0035】
本明細書で使用される場合、形式「xからy(x〜y)」または「xからy(x to y)」または「xからy(x through y)」における値の範囲は、整数x、y、およびその間の整数を含む。たとえば、語句「1から6(1〜6)」または「1から6(1 to 6)」または「1から6(1 through 6)」は、整数1、2、3、4、5、および6を含むように意図される。好ましい実施形態は、同範囲内の個々の各整数、および整数の任意のサブコンビネーション(subcombination)を含む。たとえば、「1から6」における好ましい整数は、1、2、3、4、5、6、1〜2、1〜3、1〜4、1〜5、2〜3、2〜4、2〜5、2〜6などを含んでもよい。
【0036】
「安定な化合物」または「安定な構造」は、本明細書で使用される場合、反応混合物から有用な純度まで単離するほどに十分に頑丈であり、かつ好ましくは、有効な治療剤への調合が可能な化合物を示す。本発明は、あくまで安定な化合物に関する。
【0037】
「置換される」は、本明細書で使用される場合、指定される原子上の任意の1個以上の水素原子が、本明細書中で「置換基」と称される選択される基で置換されること(ただし、置換される原子の価数が大きすぎず、かつ置換によって安定な化合物がもたらされることが条件である)を示す。置換基は、1〜5つ、好ましくは1〜3つ、およびより好ましくは1つの独立に選択される置換基を有する。好ましい置換基は、限定はされないが、F、Cl、Br、I、OH、OR、NH、NHR、NR、NHOH、NO、CN、CF、CFCF、C−Cアルキル、C−Cアルケニル、C−Cアルキニル、C−Cアルコキシ、C−Cシクロアルキル、ヘテロシクリル、C−C10アリール、ヘテロアリール、アリールアルキル、=O、C(=O)R、COOH、COR、O−C(=O)R、C(=O)NRR’、NRC(=O)R’、NRCOR’、OC(=O)NRR’、−NRC(=O)NRR’、−NRC(=S)NRR’、および−SONRR’があげられ、ここでRおよびR’は、それぞれ独立に、水素、C−Cアルキル、またはC−C10アリールである。
【0038】
用語「アルキル」は、本明細書で使用される場合、1〜8個、好ましくは1〜6個、より好ましくは1〜3個の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖アルキル基を示す。典型的なアルキル基は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、イソアミル、ネオペンチル、1−エチルプロピル、3−メチルペンチル、2,2−ジメチルブチル、2,3−ジメチルブチル、ヘキシル、オクチルなどを含む。アルキルを有する基、たとえばアルコキシ、アルコキシカルボニル、およびアルキルアミノカルボニル基のアルキル部分は、上で定義されたアルキルと同じ意味を有する。低級アルキル基は、好ましく、1〜4個の炭素を有する、上で定義されたアルキル基である。「C−Cアルキル」などの名称は、1〜4個の炭素原子を有するアルキル基を示す。アルキル基は、選択的に置換されていてもよい。
【0039】
用語「ハロアルキル」は、本明細書で使用される場合、1〜8個、好ましくは1〜6個、より好ましくは1〜3個の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖アルキル基を示し、ここで少なくとも1つの水素原子は、ハロゲン原子によって置換されている。「C−Cハロアルキル」などの名称は、1〜4個の炭素原子を有するハロアルキル基を示す。好ましいハロアルキル基の例として、−CHF、−CHF、および−CFがあげられる。
【0040】
用語「アルケニル」は、本明細書で使用される場合、少なくとも1つの炭素−炭素二重結合を有する2〜8個の炭素原子の直鎖または分岐炭化水素鎖を示す。名称「C−Cアルケニル」は、2〜8個の炭素原子を有するアルケニル基を示す。アルケニル基の例として、エテニル、プロペニル、イソプロペニル、2,4−ペンタジエニルなどがあげられる。アルケニル基は、選択的に置換されていてもよい。
【0041】
用語「アルキニル」は、本明細書で使用される場合、少なくとも1つの炭素−炭素三重結合を有する2〜8個の炭素原子の直鎖または分岐炭化水素鎖を示す。名称「C−Cアルキニル」は、2〜8個の炭素原子を有するアルキニル基を示す。例として、エチニル、プロピニル、イソプロピニル、3,5−ヘキサジイニルなどがあげられる。アルキニル基は、選択的に置換されていてもよい。
【0042】
用語「シクロアルキル」は、本明細書で使用される場合、3〜10個の炭素原子を有する、飽和または部分的に飽和された単環または二環式アルキル環系を示す。特定の実施形態は3〜6個の炭素原子、好ましくは3もしくは4個の炭素原子を有し、かつ他の実施形態は5もしくは6個の炭素原子を有する。「C−Cシクロアルキル」などの名称は、5〜7個の環炭素原子を有するシクロアルキル基を示す。シクロアルキル基の例として、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、ピネニル、ピナニル、およびアダマンタニルなどの基があげられる。シクロアルキル基は、選択的に置換されていてもよい。
【0043】
用語「アリール」は、本明細書で使用される場合、置換もしくは非置換の、6〜12個の環炭素原子を有する単環または二環式炭化水素芳香環系を示す。例として、フェニルおよびナフチルがあげられる。好ましいアリール基は、非置換または置換のフェニルおよびナフチル基を含む。「アリール」の定義の範囲内に、たとえば、芳香環がシクロアルキル環に縮合された環系を含む縮合環系が含まれる。かかる縮合環系の例として、たとえば、インダン、インデン、およびテトラヒドロナフタレンがあげられる。アリール基は、選択的に置換されていてもよい。
【0044】
用語「複素環」、「複素環式」または「ヘテロシクリル」は、本明細書で使用される場合、1個以上の環炭素原子が、−O−、−N−、または−S−などの少なくとも1個のヘテロ原子によって置換された、置換もしくは非置換の炭素環式基を示す。特定の実施形態は、4〜9員環、好ましくは3〜7員環を含み、また他の実施形態は、5もしくは6員環を含む。窒素および硫黄ヘテロ原子は、選択的に酸化されていてもよく、窒素は、非芳香環中で選択的に置換されていてもよい。複素環は、ヘテロアリールおよびヘテロシクロアルキル基を含むように意図される。複素環基は、選択的に置換されていてもよい。
【0045】
用語「ヘテロアリール」は、本明細書で使用される場合、1個以上の環炭素原子が、O、N、またはSなどの少なくとも1個のヘテロ原子によって置換された、5〜10個の環炭素原子を有する芳香族性基または環系を示す。特定の実施形態は、5もしくは6員環を含む。ヘテロアリール基の例として、ピロリル、フラニル、チエニル、ピラゾリル、イミダゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、イソオキサゾリル、オキサゾリル、オキサチオリル、オキサジアゾリル、トリアゾリル、オキサトリアゾリル、フラザニル、テトラゾリル、ピリジル、ピラジニル、ピリミジニル、ピリダジニル、トリアジニル、ピコリニル、インドリル、イソインドリル、インダゾリル、ベンゾフラニル、イソベンゾフラニル、プリニル、キナゾリニル、キノリル、イソキノリル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾチオフェニル、チアナフテニル、ベンゾキサゾリル、ベンズイソオキサゾリル、シンノリニル、フタラジニル、ナフチリジニル、およびキノキサリニルがあげられる。「ヘテロアリール」の定義の範囲内に、たとえば芳香環がヘテロシクロアルキル環に縮合された環系を含む縮合環系が含まれる。このような縮合環系の例として、たとえば、フタルアミド、フタル酸無水物、インドリン、イソインドリン、テトラヒドロイソキノリン、クロマン、イソクロマン、クロメン、およびイソクロメンがあげられる。ヘテロアリール基は選択的に置換されていてもよい。特定の好ましい実施形態では、ヘテロアリールは、ピリジニル、より好ましくはピリジン−2−イルまたはチエニルである。
【0046】
用語「ヘテロシクロアルキル」は、本明細書で使用される場合、1つ以上の環炭素原子が−O−、−N−、または−S−などの少なくとも1つのヘテロ原子によって置換されたシクロアルキル基を示す。特定の実施形態は、4〜9員環および3〜10員環、好ましくは3〜7員環、より好ましくは、3〜6員環を含み、また他の実施形態は、5もしくは6員環を含む。ヘテロシクロアルキル基の例として、ピロリジニル、ピロリニル、イミダゾリジニル、イミダゾリニル、ピラゾリニル、ピラゾリジニル、ピラザリニル(pyrazalinyl)、ピペリジニル、ピペラジニル、ヘキサヒドロピリミジニル、モルホリニル、チオモルホリニル、テトラヒドロフラニル、ジチオリル、オキサチオリル、ジオキサゾリル、オキサチアゾリル、ピラニル、オキサジニル、オキサチアジニル、およびオキサジアジニル、好ましくは、ピロリジニル、モルホリニル、ピペリジニル、オラザパニル(orazapanyl)、より好ましくは、ピロリジニルまたはピペリジニルがあげられる。ヘテロシクロアルキル基は、選択的に置換されていてもよい。
【0047】
用語「アリールアルキル」は、本明細書で使用される場合、アリール基で置換されたアルキル基を示す。アリールアルキル基の例として、限定はされないが、ベンジル、ブロモベンジル、フェネチル、ベンズヒドリル、ジフェニルメチル、トリフェニルメチル、ジフェニルエチル、ナフチルメチルなど、好ましくはベンジルがあげられる。アリールアルキル基は、選択的に置換されていてもよい。
【0048】
用語「ヘテロアリールアルキル」は、本明細書で使用される場合、ヘテロアリール基で置換されたアルキル基を示す。ヘテロアリールアルキル基は、選択的に置換されていてもよい。
【0049】
用語「アミノ酸」は、本明細書で使用される場合、アミノ基およびカルボキシル基の双方を有する基を示す。アミノ酸の実施形態は、α−アミノ、β−アミノ、γ−アミノ酸を含む。α−アミノ酸は、一般式HOOC−CH(側鎖)−NHを有する。アミノ酸は、そのD、Lまたはラセミ立体配置でありうる。アミノ酸は、天然および非天然部分を含む。天然アミノ酸は、タンパク質中に見出される標準の20α−アミノ酸、たとえばグリシン、セリン、チロシン、プロリン、ヒスチジン、グルタミンなどを含む。天然アミノ酸はまた、非α−アミノ酸(β−アラニン、γ−アミノ酪酸、ホモシステインなど)、希アミノ酸(4−ヒドロキシプロリン、5−ヒドロキシリジン、3−メチルヒスチジンなど)、および非タンパク質アミノ酸(シトルリン、オルニチン、カナバニンなど)を含みうる。非天然アミノ酸は、当該技術分野で周知であり、天然アミノ酸の類似体を含む。Lehninger A.L. 「Biochemistry」、第2版;Worth Publishers(New York)、1975年;71−77頁(この開示内容は参照によって本明細書に援用する)を参照のこと。非天然アミノ酸はまた、α−アミノ酸を含み、ここで側鎖は合成誘導体と置換される。特定の実施形態では、本発明の化合物における置換基は、そのカルボキシル基、すなわち式−C(=O)CH(側鎖)−NHの基のヒドロキシル部分の除去後でのアミノ酸の残基を含む。天然および非天然α−アミノ酸の代表的側鎖は、下の表Aに示される。
【0050】
【表1】

【0051】
用語「被検体」または「患者」は、本明細書で使用される場合、本明細書中に記載の1つ以上の疾患および症状を患っているかまたは患う可能性を有する哺乳動物、好ましくはヒト、またはヒト小児などの温血動物を示す。
【0052】
「治療有効量」は、本明細書で使用される場合、特定の障害の症候を予防または治療するのに有効な本発明の化合物の量を示す。かかる障害として、限定はされないが、本明細書中に記載の受容体の異常な活性に関連した病理学的および神経障害があげられ、ここでは、治療または予防は、その活性を、受容体を本発明の化合物と接触させることによって阻害する、誘発する、または促進することを含む。
【0053】
用語「薬学的に許容される」は、本明細書で使用される場合、妥当な医学的判断の範囲内で、過剰な毒性、炎症、アレルギー応答、または他の複雑な問題を伴わない、ヒトおよび動物の組織との接触に好適であり、妥当な利益/リスク比に見合う化合物、材料、組成物、および/または剤形を示す。
【0054】
用語「薬学的に許容される賦形剤」は、本明細書で使用される場合、薬学的用途として許容される、すべての溶媒、分散媒、コーティング剤、抗菌剤および抗真菌剤、等張性遅延剤(isotonic delaying agent)および吸収遅延剤(absorption delaying agent)など、たとえば米食品医薬品局によるGenerally Regarded as Safe(GRAS)のステータスとして認められているものを含む。薬学的活性物質のためのかかる媒体および作用剤の使用は、当該技術分野、たとえば「Remington:The Science and Practice of Pharmacy」、第20版;Gennaro A.R.編;Lippincott Williams & WilKins(Philadelphia,PA)、2000年において周知である。任意の従来の媒体または作用剤が活性成分と混合できない場合を除き、治療組成物中でのその使用が考えられる。補助活性成分もまた、組成物に組み込まれていてもよい。
【0055】
用語「単位用量」は、本明細書で使用される場合、患者に投与することができ、かつ容易に処理し、パッケージ化することが可能であり、後に記載のように、活性化合物を、それ自体でまたは薬学的に許容される組成物として含む、物理的かつ化学的に安定な単位用量として維持する単回用量を示す。
【0056】
「薬学的に許容される塩」は、本明細書で使用される場合、親化合物がその酸または塩基塩の作製によって変性された、開示される化合物の誘導体を示す。薬学的に許容される塩の例として、限定はされないが、アミンなどの塩基性残基の鉱酸または有機酸塩;カルボン酸などの酸性残基のアルカリまたは有機塩などがあげられる。薬学的に許容される塩は、従来の非毒性塩または、たとえば非毒性無機もしくは有機酸から形成される親化合物の第4級アンモニウム塩を含む。たとえば、かかる従来の非毒性塩は、塩化水素酸、臭化水素酸、硫酸、スルファミン酸、リン酸、硝酸などの無機酸由来の塩;ならびに酢酸、プロピオン酸、琥珀酸、グリコール酸、ステアリン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、アスコルビン酸、パモン酸、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸、フェニル酢酸、グルタミン酸、安息香酸、サリチル酸、スルファニル酸、2−アセトキシ安息香酸、フマル酸、トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンジスルホン酸、シュウ酸、イセチオン酸などの有機酸から調製される塩を含む。これらの生理学的に許容できる塩は、当該技術分野で公知の方法により、たとえば、水性アルコール中で遊離アミン塩基を過剰な酸とともに溶解させるか、または遊離カルボン酸を水酸化物などのアルカリ金属塩基またはアミンで中和することによって調製される。
【0057】
本明細書中に全体を通して記載される化合物は、他の形態で使用または調製することが可能である。たとえば、多数のアミノを有する化合物は、酸付加塩として使用または調製することが可能である。かかる塩は、化合物の単離および処理特性を改善することが多い。たとえば、試薬、反応条件などに依存し、本明細書中に記載の化合物は、たとえばそれらの塩酸塩またはトシル酸塩として使用または調製することが可能である。同形結晶形態、すべてのキラルおよびラセミ形態、N−オキシド、水和物、溶媒和物、および酸塩水和物もまた、本発明の範囲内に含まれると考えられる。
【0058】
本発明の特定の酸性または塩基性の化合物は、両性イオンとして存在する場合がある。遊離酸、遊離塩基および両性イオンを含む化合物のあらゆる形態は、本発明の範囲内に含まれると考えられる。アミノおよびカルボキシ基の双方を有する化合物が、それらの両性イオン形態で、平衡状態で存在することが多いことは、当該技術分野で周知である。したがって、たとえばアミノおよびカルボキシ基の双方を有する、本明細書中に全体を通して記載される化合物のいずれかはまた、それらの対応する両性イオンに対する言及を含む。
【0059】
「プロドラッグ」は、本明細書で使用される場合、反応の所望される部位に達する活性種の量を最大化するように特に設計された化合物を示し、それら自体として、一般には所望される活性に対して不活性であるかまたは活性が最小であるが、生体内変化を介して生物活性代謝産物に変換される。
【0060】
したがって、プロドラッグは、たとえば、ヒドロキシ、アミノ、またはカルボキシ基が、プロドラッグが哺乳類被検体に投与される場合、切断し、遊離ヒドロキシル、遊離アミノ、またはカルボン酸をそれぞれ形成する任意の基に結合する本明細書中に記載の化合物を含む。例として、限定はされないが、アルコールおよびアミン官能基の酢酸塩、ギ酸塩および安息香酸塩誘導体;ならびに、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、シクロプロピル、フェニル、ベンジル、およびフェネチルエステルなどのアルキル、シクロアルキル、アリール、およびアルキルアリールエステルがあげられる。
【0061】
本明細書中に記載の化合物は、1つ以上の非対称的に置換された炭素および/または硫黄原子を有し、かつ光学的に活性がある形態またはラセミ形態で単離されていてもよい。したがって、特定の立体化学または他の異性体形態が具体的に示されない、かつ/またはアキラルでない限り、あらゆる立体(鏡像、ジアステレオ異性、および/またはメソ形態、キラルまたはラセミのいずれかなど)、あらゆるアキラル、あらゆる幾何学、および/またはあらゆる配座異性体形態を含む、構造のあらゆる異性体形態が意図されている。たとえば、構造が光学的活性形態で存在する、立体形態を含む立体中心を有する構造のかかる異性体形態を調製し、単離する方法は、当該技術分野で周知である。たとえば、立体異性体の混合物は、限定はされないが、ラセミ形態の分解、順相、逆相、およびキラルクロマトグラフィー、優先的塩形成、再結晶化などを含む標準の技術により、あるいはキラル出発原料のいずれかからのキラル合成によるかまたは標的キラル中心の計画的(deliberate)合成により、分離することが可能である。
【0062】
用語「立体異性体」は、本明細書で使用される場合、同一の化学組成を有するが、空間的に原子または基の配置が異なる化合物を示す。
【0063】
用語「治療」および「治療する」は、本明細書で使用される場合、予防(preventive)(予防(prophylactic)など)、根治および/または苦痛緩和治療を含む。また、本明細書で使用される場合、用語「治療」、「治療する(treating)」および「治療する(treat)」は、これらの用語が適用される障害または症状、またはかかる障害または症状の1つ以上の症候の進行を改善、軽減、または阻害することを示す。
【0064】
任意の変数が任意の構成または任意の式において2回以上出現する場合、各出現におけるその定義は、他のすべての出現におけるその定義とは無関係である。置換基および/または変数の組み合わせは、かかる組み合わせが安定な化合物をもたらす場合に限り、許容できる。
【0065】
本明細書で使用される化学式および名称は、基本的化合物を正確かつ精度よく示すものと考えられる。しかし、本発明の性質および値は、これらの式の理論的正確性に全体的にもまたは部分的にも依存しない。したがって、本明細書で使用される式、ならびにそれに対応する指定化合物に帰する化学名は、かかる立体化学が明確に規定される場合を除き、それを任意の特定の互変異性型または任意の特定の光学もしくは幾何学異性体に限定することを含む、本発明を限定するように意図されることは決してないことは理解されている。
【0066】
もうひとつの態様では、本発明は、上記の化合物の薬学的に許容される塩に関する。本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される塩」は、かかる化合物と非毒性酸または塩基付加塩との組み合わせから得られる、本発明の化合物の塩を含む。
【0067】
酸付加塩は、塩化水素酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、硝酸およびリン酸などの無機酸、ならびに酢酸、クエン酸、プロピオン酸、酒石酸、グルタミン酸、サリチル酸、シュウ酸、メタンスルホン酸、パラ−トルエンスルホン酸、琥珀酸、および安息香酸などの有機酸、ならびにそれに関連する無機酸および有機酸を含む。
【0068】
塩基付加塩は、アンモニウムおよびアルカリおよびアルカリ土塁金属の水酸化物、炭酸塩、重炭酸塩などの無機塩基に由来するもの、ならびに脂肪族および芳香族性アミン、脂肪族ジアミン、ヒドロキシアルカミンなどの塩基性有機アミンに由来する塩を含む。したがって、本発明の塩の調製に有用なかかる塩基は、水酸化アンモニウム、炭酸カリウム、重炭酸ナトリウム、水酸化カルシウム、メチルアミン、ジエチルアミン、エチレンジアミン、シクロヘキシルアミン、エタノールアミンなどを含む。
【0069】
薬学的に許容される塩に加え、他の塩が本発明に含まれる。それらは、化合物の精製、他の塩の調製、または化合物もしくは中間体の同定および特徴づけにおける中間体としての役割を果たすことがある。
【0070】
本発明の化合物の薬学的に許容される塩はまた、たとえば水、メタノール、エタノール、ジメチルホルムアミド、酢酸エチルなどとのさまざまな溶媒和物として存在しうる。かかる溶媒和物の混合物もまた、調製することが可能である。かかる溶媒和物の供給源は、結晶化の溶媒から得られ、調製または結晶化の溶媒に固有であり、またはかかる溶媒に対して不定のものであってもよい。かかる溶媒和物は、本発明の範囲内に含まれる。
【0071】
本発明はまた、本明細書で開示される化合物の薬学的に許容されるプロドラッグを包含する。「プロドラッグ」は、本明細書で使用される場合、本発明の範囲内の式を有する活性剤に向けて、被検体の身体内での代謝プロセスによって変換される任意の化合物を含むように意図される。プロドラッグが極めて多数の望ましい医薬品の質(溶解度、バイオアベイラビリティ、製造など)を促進することが知られていることから、本発明の化合物は、プロドラッグ形態で送達してもよい。適切なプロドラッグ誘導体の選択および調製のための従来の手順は、たとえば、「Prodrugs」、Sloane K.B.編;Marcel Dekker(New York)、1992年(その内容全体を参照によって本明細書に援用する)に記載される。
【0072】
本発明の化合物が、さまざまな立体異性体形態で存在しうることは理解されている。したがって、本発明の化合物は、ジアステレオマーおよびエナンチオマーの双方を含む。化合物は、一般的にラセミ酸塩として調製され、そのままで便益的に使用することが可能であるが、個々のエナンチオマーは、必要に応じて、従来の技術によって単離または合成することが可能である。かかるラセミ酸塩および個々のエナンチオマーおよびその混合物は、本発明の一部を形成する。
【0073】
かかる光学的活性形態を調製し、単離する方法は、当該技術分野で周知である。特定の立体異性体は、鏡像体的に純粋であるかまたは鏡像体に富んだ出発原料を使用する立体特異的合成によって調製することが可能である。出発原料または生成物のいずれかの特定の立体異性体は、当該技術分野で公知の技術、たとえばラセミ形態の分解、順相、逆相、およびキラルクロマトグラフィー、再結晶化、酵素分解、または使用されるその目的で試薬によって形成される付加塩の分別再結晶化により、分離し、回収することが可能である。特定の立体異性体を分離し、回収する有用な方法は、Eliel E.L.;Wilen S.H.、「Stereochemistry of Organic Compounds;Wiley(New York)、1994年、およびJacques Jら、「Enantiomers、Racemates,and Resolutions;Wiley(New York)、1981年(各々、その内容全体を参照によって本明細書に援用する)に記載されている。
【0074】
式Iおよび式IAの化合物上に存在する官能基が保護基を含みうることはさらに理解されている。たとえば、式Iおよび式IAの化合物のアミノ酸側鎖置換基は、ベンジルオキシカルボニルまたはt−ブトキシカルボニル基などの保護基で置換することが可能である。保護基は、本質的には、水酸基およびカルボキシル基などの官能基(functionalities)に選択的に付加しかつそれから除去されうる化学官能基として知られている。これらの基は、かかる官能基を、化合物が暴露される化学反応条件に対して不活性にする化合物中に存在する。種々の保護基のいずれかは、本発明で使用してもよい。ラクタムを保護するための好ましい基は、t−ブチルジメチルシリル(「TBDMS」)などのシリル基、ジメトキシベンズヒドリル(「DMB」)、アシル、ベンジル(「Bn」)、およびメトキシベンジル基を含む。ヒドロキシ基を保護するための好ましい基は、TBS、アシル、ベンジル、ベンジルオキシカルボニル(「CBZ」)、t−ブチルオキシカルボニル(「Boc」)、およびメトキシメチルを含む。当業者によって使用される多数の他の標準保護基は、Greene T.W.およびWuts P.G.M.、「Protective Groups in Organic Synthesis」 第2版、Wiley & Sons、1991年に見出すことが可能である。
【0075】
治療目的として、本発明の化合物は、活性剤と被検体の身体内での活性剤の作用部位との接触をもたらす任意の手段によって投与することが可能である。化合物は、医薬品と併用して、個々の治療剤としてかまたはたとえば鎮痛薬などの他の治療剤との併用で利用可能な任意の従来の手段によって投与することが可能である。たとえば式Iおよび式IAの化合物を含む、本発明の方法において使用される化合物は、活性剤と患者の身体内での活性剤の作用部位との接触をもたらす任意の手段によって投与することが可能である。本発明の化合物は、好ましくは、本明細書中に記載の疾患および障害の治療のため、それを必要とする被検体に治療有効量で投与される。
【0076】
治療有効量は、従来の技術の使用により、当業者として担当診断医によって容易に決定することが可能である。有効用量は、疾患または障害の進行のタイプおよび範囲、特定の患者の全体的健康状態、選択される化合物の相対的生物学的有効性、活性剤と適切な賦形剤との調合、ならびに投与の経路を含むいくつかの要素に依存して変化することになる。一般には、化合物は、低い用量レベルで投与され、所望される効果が得られるまで徐々に増加される。
【0077】
一般的な用量範囲は、約0.01mg/kg体重/日〜約100mg/kg体重/日であり、好ましい用量は約0.01mg/kg体重/日〜10mg/kg体重/日である。ヒト成人における好ましい一日用量は、約25、50、100および200mg、ならびにヒト小児における同等の用量を含む。化合物は、1回以上の単位用量形態で投与することが可能である。単位用量は、1日1〜4回の約1〜約500mg投与、好ましくは1日2回の約10mg〜約300mg投与の範囲である。有効用量を説明する他の方法では、経口単位用量は、被検体における約0.05〜20μg/ml、好ましくは約1〜20μg/mlの血清レベルを得るのに必要なものである。
【0078】
本発明の化合物は純粋な化学物質として投与されうるが、医薬組成物として活性成分を提示することが好ましい。
【0079】
一般的にいえば、本発明の治療化合物は、単独でまたは薬学的に許容される担体と組み合わせて、患者に投与することが可能である。したがって、本発明の化合物、たとえば式Iおよび式IAの化合物は、好ましくは、たとえば「Remington’s Pharmaceutical Sciences」(Mack Publishing Co.(Easton,PA)、1980年)(その開示はその内容全体を参照によって本明細書に援用する)に記載される、選択される投与経路および標準的薬務に基づいて選択される薬学的担体と組み合わされる。担体は、組成物の他の成分に適合し、かつそのレシピエントに対して有害でないという意味で許容されなければならない。活性成分と担体の相対的割合は、たとえば、化合物の溶解度および化学的性質、選択される投与経路および標準的薬務によって決定することが可能である。
【0080】
本発明の化合物は、1つ以上の薬学的に許容される賦形剤との混合により、医薬組成物に調合することが可能である。賦形剤は、たとえば「Remington:The Science and Practice of Pharmacy」第20版;Gennaro A.R.編;Lippincott Williams & WilKins(Philadelphia,PA)、2000年に記載される、選択される投与経路および標準的薬務に基づいて選択される。組成物は、速溶、放出調節、または持続放出製剤などのように、活性剤の放出を制御し、および/または遅延させるように調合することが可能である。かかる徐放または持続放出組成物は、たとえば生体適合性、生体分解性ラクチド重合体、ラクチド/グリコライド共重合体、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン共重合体、または当該技術分野で公知の他の固体もしくは半固体ポリマーマトリックスを使用することが可能である。
【0081】
組成物は、経口的手段;静脈内、筋肉内、および皮下経路を含む非経口的手段;局所的または経皮的手段;直腸、膣、舌下および口腔投与を含む経粘膜的手段;眼科手段;あるいは吸入手段による投与のため、調製することが可能である。好ましくは、組成物は、特に錠剤、カプセルまたはシロップの形態での経口投与;特に溶液、懸濁液またはエマルジョンの形態での非経口的投与;特に粉末、点鼻剤、またはエアロゾルの形態での鼻腔内投与;あるいはクリーム、軟膏、溶液、懸濁液エアロゾル、粉末などの局所的投与のため、調製される。
【0082】
経口投与においては、錠剤、ピル、粉末、カプセル、トローチなどは、デンプンまたはセルロースなどの希釈剤または充填剤;微結晶性セルロース、ゼラチン、またはポリビニルピロリドンなどの結合剤;デンプンまたはセルロース誘導体などの崩壊剤;タルクまたはステアリン酸マグネシウムなどの潤滑剤;コロイド状二酸化ケイ素などの流動促進剤;スクロースまたはサッカリンなどの甘味剤;あるいはペパーミントまたはチェリーフレーバーなどの香味剤のうち1つ以上を含有してもよい。カプセルは、先に列挙した賦形剤のいずれかを含有し、半固体または液体担体、たとえばポリエチレングリコールをさらに含有してもよい。固体経口剤形は、糖、セラック、または腸溶剤(enteric agent)のコーティング剤を含有してもよい。液体製剤は、水性もしくは油性懸濁液、溶液、エマルジョン、シロップ、エリキシルなどの形態であってもよく、または使用前の、水または他の適切な媒体との再構成のための乾燥生成物として存在してもよい。かかる液体製剤は、界面活性剤、懸濁化剤、乳化剤、希釈剤、甘味剤および香味剤、染料および保護剤などの従来の添加剤を含有してもよい。
【0083】
組成物はまた、非経口で投与してもよい。注射可能用途として許容される剤形としては、たとえば無菌水溶液または懸濁液を含む。水性担体は、アルコールと水、緩衝媒体などの混合物を含む。非水性溶媒は、アルコールおよびグリコール、たとえばエタノール、およびポリエチレングリコール;オイル、たとえば植物性油;脂肪酸および脂肪酸エステルなどを含む。界面活性剤;たとえばヒドロキシプロピルセルロース;等張剤、たとえば塩化ナトリウム;流体および栄養補充薬(nutrient replenisher);電解質補給液(electrolyte replenisher);活性化合物の放出を制御する作用剤、たとえばモノステアリン酸アルミニウムおよびさまざまな共重合体;抗菌剤、たとえばクロロブタノールまたはフェノール;緩衝液などを含む他の成分を加えてもよい。非経口調合物は、アンプル、使い捨て注射器または複数回用量バイアルに封入してもよい。活性化合物のための他の潜在的に有用な非経口送達システムは、エチレン−酢酸ビニル共重合体粒子、浸透圧ポンプ、移植可能な注入システム、およびリポソームを含む。
【0084】
他の有望な投与モードは、吸入のための調合物を含み、それは、乾燥粉末、エアロゾル、またはドロップなどの手段を含む。それらは、たとえば、ポリオキシエチレン−9−ラウリルエーテル、グリココール酸塩およびデオキシコール酸塩を含有する水溶液、あるいは、点鼻の形態でまたは鼻腔内に適用されるべきゲルとして投与するための油性溶液であってもよい。局所使用のための調合物は、軟膏、クリーム、またはゲルの形態である。一般には、これらの形態は、担体、たとえばワセリン、ラノリン、ステアリルアルコール、ポリエチレングリコール、またはそれらの組み合わせ、および乳化剤、たとえばラウリル硫酸ナトリウムか、またはゲル化剤、たとえばトラガカントのいずれかを含む。経皮投与に適した調合物は、分離したパッチ(discrete patch)として、リザーバまたはマイクロリザーバ(microreservoir)系、接着剤拡散−制御系(adhesive diffusion−controlled system)またはマトリックス分散−型系(matrix dispersion−type system)などの場合に認められうる。口腔投与のための調合物は、たとえばロゼンジまたはトローチを含み、また風味付けされた基剤(flavored base)、たとえばスクロースまたはアカシア、およびグリココール酸塩などの他の賦形剤を含んでもよい。直腸投与に適した調合物は、好ましくは、固体に基づく担体、たとえばココアバターを有する単位用量坐剤として認められ、サリチル酸塩を含んでもよい。
【0085】
1つ以上の無菌容器内に本発明の化合物および/または本明細書中に記載の他の治療化合物を治療有効量で含む、たとえば疼痛の治療において有用な薬学的キットもまた、本発明の範囲内に含まれる。容器の滅菌は、当業者に周知の従来の滅菌方法を用いて実施してもよい。材料の無菌容器は、必要であれば、分離容器または1つ以上のマルチパート(multi−part)容器、たとえばUNIVIAL(商標)2パート(two−part)容器(Abbott Labs(Chicago,Illinois)から入手可能)を含んでもよい。本発明の化合物および/または本明細書中に記載の他の治療化合物は、上記のように、分離されているか、または単一剤形に組み合わされていてもよい。かかるキットは、当業者に容易に理解されるように、必要であれば、さまざまな従来の薬学的キット部品、たとえば1つ以上の薬学的に許容される担体、成分を混合するための追加のバイアルなどのうち1つ以上をさらに含んでもよい。投与されるべき成分の量を示す、挿入物またはラベルのいずれかとしての使用説明書、投与のための指針、および/または成分を混合するための指針もまた、キット中に含めてもよい。
【0086】
本発明の化合物は、ヒスタミン受容体、より好ましくはヒスタミンH受容体に結合するための方法において使用することが可能である。かかる結合は、受容体を式Iまたは式IAの化合物と有効量で接触させることによって達成することが可能である。ヒスタミン受容体は、中枢神経系に位置するか、または中枢神経系に対して末梢に、または両方の位置に位置することが可能である。好ましくは、接触ステップは、水性媒体中で、好ましくは生理学的に関連したイオン強度、pHなどで行われる。
【0087】
さらにもうひとつの態様では、本発明は、ヒスタミン受容体、より好ましくはヒスタミンH受容体に結合する方法であって、それを必要とする患者に、たとえば式Iまたは式IAの化合物を含む本発明の化合物を有効量で投与するステップを含む、方法に関する。
【0088】
特定の好ましい態様では、本方法は、前記患者に式の化合物を治療有効量で投与するステップを含む。
【0089】
いくつかの好ましい実施形態では、ヒスタミン受容体はHヒスタミン受容体である。特定のより好ましい実施形態では、化合物は、H、Hおよび/またはH受容体よりもHヒスタミン受容体に選択的に結合する。特定の好ましい実施形態では、Hヒスタミン受容体は、中枢神経系に位置する。いくつかの他の好ましい実施形態では、式Iまたは式IAの化合物は、ヒスタミン受容体に対して活性を示す。特定の好ましい実施形態では、結合は、カンナビノイド受容体の活性に作用する。他の好ましい実施形態では、結合は、より好ましくは中性アンタゴニストとして、カンナビノイド受容体の活性に拮抗する。さらに他の好ましい実施形態では、結合は、カンナビノイド受容体の活性にインバースアゴニストとして作用する(inversely agonize)。
【0090】
さらに他の好ましい実施形態では、その式Iおよび式IAの化合物は、インビボで、ヒスタミン受容体に対して活性を示す。他の好ましい実施形態では、式Iおよび式IAの化合物は、インビトロで、ヒスタミン受容体に対して活性を示す。
【0091】
本発明の特定の他の好ましい態様では、ヒスタミン、好ましくはHヒスタミン受容体の結合を介した作用、調節または制御が可能な疾患、障害または症状を治療する方法が提供される。より好ましくは、これらの疾患、障害、および/または症状は、ナルコレプシーまたは睡眠/覚醒障害、摂食行動障害、摂食障害、肥満、認知障害、覚醒疾患、記憶障害、気分障害、気分注意変調(mood attention alteration)、注意欠陥多動性障害(ADHD)、アルツハイマー病/認知症、統合失調症、疼痛、ストレス、片頭痛、乗り物酔い、うつ病、精神障害、てんかん、胃腸障害、呼吸器障害、炎症、および心筋梗塞からなる群から選択される。好ましい実施形態では、疾患または障害は、ナルコレプシーまたは睡眠/覚醒障害である。他の好ましい実施形態では、疾患または障害は、注意欠陥多動性障害である。さらに他の実施形態では、疾患または障害は、認知障害である。本明細書中で提供される方法は、かかる治療を必要とする被検体に、本発明の化合物、好ましくは式Iまたは式IAの化合物を治療有効量で投与するステップを含む。
【0092】
特定の好ましい実施形態では、障害は、ナルコレプシーまたは睡眠/覚醒障害である。あるいは、治療される障害は、注意欠陥多動性障害である。
【0093】
当業者が理解するように、上記の教示内容を考慮すると、本発明の極めて多数の改良および変形が可能である。したがって、添付の特許請求の範囲内で、本発明が、本明細書中に詳述される以外にも実行可能であり、かつ本発明の範囲がすべてのかかる変形を包含するように意図されることが理解される。
【0094】
調製の方法
本発明の化合物を、限定はされないが後述される方法を含む当業者に周知の多数の方法で、または有機合成に関する当業者に公知の標準的技術を適用することによるこれらの方法の改良を通じて、調製することができる。本発明と併せて開示されるすべてのプロセスは、ミリグラム、グラム、マルチグラム、キログラム、マルチキログラムまたは商工業規模を含む任意の規模で実行されると考えられる。
【0095】

本明細書に示される例を調製するための一般的経路が、スキーム1〜6に示される。試薬および出発原料は市販されているか、または当業者により、周知の技術によって容易に合成される。合成スキームにおけるすべての置換基は、他に指定がない限り、先に定義された通りである。
【0096】
スキーム1:遷移金属触媒カップリング反応による式Iおよび式IAの化合物の一般的合成
【0097】
【化4】

【0098】
一般式Xのホウ素エーテル誘導体(式中、Rは上で定義される通りであり、かつR11はたとえば低級アルキルである)は、適切な溶媒、たとえばトルエン、ジアルキルエーテル、p−ジオキサンまたはテトラヒドロフラン中、塩基、たとえばアルカリ金属炭酸塩または含窒素塩基、たとえばトリエチルアミンの存在下で、一般式XI(式中、R12およびR13は、臭素または塩素などの適切な脱離基である)の置換アルカンでアルキル化される。次いで、一般式XIIの得られたエーテル誘導体は、塩基および適切な溶媒の存在下で、求核置換反応において、一般式XIIIのアミンと反応し、一般式XIVのホウ素エーテルまたはホウ酸誘導体を提供する。この化合物は、たとえば「Cross−Coupling Reactions. A Practical Guide.」[In:Top.Curr.Chem.、2002年;219頁]Miyaura、Norio編(2002年)、発行元(Springer−Verlag(Berlin,Germany))に記載のように、好適なパラジウム触媒の存在下で、たとえば鈴木カップリング反応に対応する条件下で、一般式XV(式中、R、RおよびRは、上で定義される通りであり、かつR14は適切な脱離基である)のピリダジン誘導体との遷移金属触媒カップリング反応を受け、一般式Iまたは式IA(式中、nおよび置換基R〜Rは上で定義される通りである)の化合物を提供する。このような反応における詳細な方法の例が、実施例1を提供するための手順において例示される。
【0099】
スキーム2:代替の遷移金属触媒カップリング方法による式Iおよび式IAの化合物の一般的合成
【0100】
【化5】

【0101】
一般式XVI(式中、RおよびRは上で定義される通りであり、R11はたとえば低級アルキルまたは水素であり、R15はたとえばアルコールである)のホウ素エーテルまたはホウ酸誘導体、あるいは標準的方法によって脱離基に容易に変換可能なもうひとつの官能基(functionality)は、たとえば「Cross−Coupling Reactions. A Practical Guide.」[In:Top.Curr.Chem.、2002年;219頁]Miyaura、Norio編(2002年)、発行元(Springer−Verlag(Berlin,Germany))に記載のように、適切なパラジウム触媒の存在下で、たとえば鈴木カップリング反応に対応する条件下で、一般式XV(式中、R、RおよびRは上で定義される通りであり、かつR14は好適な脱離基である)のピリダジン誘導体との遷移金属触媒カップリング反応を受け、一般式XVIIの化合物を提供する。この生成物は、一般式XVIII(式中、R16は適切な脱離基、たとえばメシル酸塩、p−トルエンスルホン酸塩または臭素もしくは塩素などのハロゲンである)の化合物に変換される。この中間体XVIIIは、塩基および好適な溶媒の存在下での一般式XIIIの環状アミンとの求核置換反応において、一般式IまたはIA(式中、nおよび置換基R〜Rは上で定義される通りである)の化合物に変換される。
【0102】
このような反応における詳細な方法の例が、実施例43を提供するための手順において例示される。
【0103】
スキーム3:リバースド(reversed)遷移金属触媒カップリング方法による式Iおよび式IAの化合物の一般的合成
【0104】
【化6】

【0105】
スキーム4:リバースド遷移金属触媒カップリング方法による式Iおよび式IAの化合物の一般的合成
【0106】
【化7】

【0107】
スキーム1および2に例示される一般式XIIまたはXVIIの化合物を合成するための遷移金属触媒カップリング方法は、たとえば、フェニルボロンエステルまたは関連する官能基と、好適なパラジウム由来の触媒の存在下でのたとえばハロゲン化ピリダジン誘導体との反応によって特徴づけられる。使用可能な代替物が存在し、ここでは、式XIX(式中、R、R、R12およびR15は上で定義される通りである)の化合物は、たとえば「Cross−Coupling Reactions. A Practical Guide.」[In:Top.Curr.Chem.、2002年;219頁]Miyaura、Norio編(2002年)、発行元(Springer−Verlag(Berlin,Germany))に記載のような一般的方法を用い、式XX(式中、R、R、RおよびR11は上で定義される通りである)のピリダジン含有ホウ素誘導体との反応が可能であり、一般式XVII(式中、置換基R〜R、RおよびR15は上で定義される通りである)の化合物を提供する。式XVIIのこの化合物は、スキーム2に概説される手順により、式IまたはIAの化合物に変換されうる。
【0108】
リバースド遷移金属触媒カップリング方法のこの方法は、一般式XXI(式中、n、R、R、Rは上で定義される通りであり、かつR15は適切な脱離基である)のフェニルエーテルの反応によってさらに例示され、たとえば「Cross−Coupling Reactions. A Practical Guide.」[In:Top.Curr.Chem.、2002年;219頁]Miyaura、Norio編(2002年)、発行元(Springer−Verlag(Berlin,Germany))に記載のような一般的方法を用い、式XX(式中、R、R、RおよびR11は上で定義される通りである)のピリダジン含有ホウ素誘導体との反応が可能であり、一般式IまたはIA(式中、nおよび置換基R〜Rは上で定義される通りである)の化合物を提供する。
【0109】
スキーム5:ピリダジン4−位での求核基との直接置換
【0110】
【化8】

【0111】
XXIIなどの予備形成されたピリダジン誘導体が本明細書中に記載の一般的方法によって使用可能である場合(式中、n、置換基R〜Rは上で定義される通りであり、かつR15は適切な脱離基である)、式IまたはIAの化合物は、適切な塩基の存在下での、さまざまな求核試薬、たとえば好適には化学式HOR、HSR、HNR10によって表される置換アルコール、チオールおよびアミンによる求核置換によって生成することが可能である。
【0112】
このような反応における詳細な方法の例が、実施例20を提供するための手順において例示される。
【0113】
スキーム6:ピリダジン4−位における酸化手順
【0114】
【化9】

【0115】
化合物XXIIIなどの例におけるR基が−SORまたは−SOである場合(式中、R、nおよび置換基R〜Rは上で定義される通りである)、XXIV(式中、Rは上で定義される通りである)などの化合物の酸化反応は、さまざまな酸化剤、たとえばm−クロロ過安息香酸、過酸化水素またはオキソンによって行うことが可能である。所望されるR基が−SORである場合、より低温での水性アルコールまたはテトラヒドロフラン中のオキソンなど、より緩和な条件を使用することが可能である。
【0116】
このような反応における詳細な方法の例が、実施例35を提供するための手順において例示される。
【0117】
スキーム7:中間体1,4−ジケトン誘導体の使用を介したピリダジン合成
【0118】
【化10】

【0119】
一般式XXV(式中、R、R、RおよびRは、上で定義される通りであり、R15は、適切な脱離基であり、かつR17は、たとえば水酸基である)の1,4−ジケトン誘導体は、塩基および適切な溶媒の存在下で、一般式XIII(式中、nおよびRは、上で定義される通りである)の環状アミンと反応し、一般式XXVI(式中、n、R、R、R、R、RおよびR17は、上で定義される通りである)の化合物を提供する。次いで、1,4−ジケトン誘導体XXVIは、たとえばヒドラジン水和物と反応し、式XXVII(式中、n、R、R、R、R、Rは、上で定義される通りである)のピリダジン誘導体を提供する。選択的には、R18(初期には水酸基でありうる)は、塩化チオニルまたはオキシ塩化リンなどの試薬を使用し、たとえば塩素化による同化をさらに必要とし、R18がたとえばハロゲンである例を提供することになる。次いで、生成物は、式IまたはIAの化合物を表し、または、本明細書中に記載の方法により、式IまたはIAのさらなる化合物に容易に同化されうる。
【0120】
3−置換フェノキシプロピルピロリジン誘導体および3−置換フェノキシプロピルピペリジン誘導体を対応するピリダジン誘導体に変換するためのさらにさまざまな方法が、たとえば、「Heterocyclic chemistry」、第4版、Joule J.A.;Mills K.(2000年).発行元:Blackwell Science Ltd.(Oxford,UK)などの複素環化学の標準的教科書に記載のように、利用可能である。
(実施例)
【0121】
実施例1
3−クロロ−6−{4−[3−((R)−2−メチル−ピロリジン−1−イル)プロポキシ]−フェニル}ピリダジン
【0122】
【化11】

【0123】
2−[4−(3−ブロモプロポキシ)フェニル]−4,4,5,5−テトラメチル−[1,3,2]−ジオキサボロラン
4−(4,4,5,5−テトラメチル−[1,3,2]ジオキサボロラン−2−イル)−フェノール(CAS番号269409−70−3)(10.5g,47mmol)を乾燥CHCN(200mL)に溶解し、乾燥KCO粉(10.4g,75mmol)を導入した。1,3−ジブロモプロパン(38.1mL,375mmol)を滴下添加し、反応混合物を窒素雰囲気下、70℃で7時間加熱した。冷却した反応混合物を濾過し、濾液を油性残渣に蒸発させ、それをシリカゲルのカラムに適用した。溶離剤として、最初にヘキサン、極性を漸増させたヘキサン/酢酸エチルの混合物(25:1、20:1および10:1)での溶出により、放置して結晶化させ、白色の固体にした標題化合物を得た(13.93g,86%)。m.p.62−65℃。
【0124】
(R)−2−メチル−1−{3−[4−(4,4,5,5−テトラメチル−[1,3,2]ジオキサボロラン−2−イル)−フェノキシ]−プロピル}−ピロリジン
2−[4−(3−ブロモプロポキシ)フェニル]−4,4,5,5−テトラメチル−[1,3,2]−ジオキサボロラン(20.47g,60mmol)、(R)−2−メチルピロリジン塩酸塩(7.663g,63mmol)および乾燥KCO粉(24.96g,180mmol)を乾燥CHCN(650mL)中で混合した。窒素雰囲気下、78℃で12時間攪拌後、反応混合物を冷却し、さらなる(R)−2−メチルピロリジン塩酸塩(10.0g,82mmol)を導入し、78℃での加熱を24時間継続した。反応混合物を冷却し、濾過し、濾液を蒸発させた。最初にCHCl、次いでCHCl/EtOH/水性NH(290:10:1)の混合物、その後にこれら溶媒の(90:10:1)および(40:10:1)の混合物で溶出する、シリカゲル上でのクロマトグラフィーは、標題化合物(17.44g,84%)を提供した。材料は播種時に結晶化した。試料を塩酸塩に変換した。m.p.212−214℃。
【0125】
3−クロロ−6−{4−[3−((R)−2−メチル−ピロリジン−1−イル)プロポキシ]フェニル}ピリダジン(実施例1)
Pd(OAc)三量体(2.02g,9.0mmol)およびPhP(9.36g,35.6mmol)を無水THF(300mL)に懸濁し、窒素雰囲気下で10分間激しく撹拌した。3,6−ジクロロピリダジン(26.82g,180mmol)を固体として加え、攪拌を10分間継続した。(R)−2−メチル−1−{3−[4−(4,4,5,5−テトラメチル−[1,3,2]ジオキサボロラン−2−イル)−フェノキシ]−プロピル}−ピロリジン(11.76g,34mmol)を、THF(200mL)とEtOH(100mL)の混合物に溶解し、反応混合物に滴下添加した。飽和NaHCO溶液(360mL)を導入した。反応混合物を、80℃で15時間加熱し、冷却し、残渣に蒸発させ、それをCHCl(300mL)に溶解し、水および飽和NaHCO溶液で洗浄した。CHCl相を、乾燥させ(NaSO)、蒸発させた。生成物を、最初にEtOAc、次いでEtOAc/CHOH(9:1)の混合物で溶出する、シリカゲル上でのISCOクロマトグラフィーによって得て、標題化合物(10.20g,90%)をクリーム固体として得た。m.p.107−108.5℃;H NMR(CDCl)1.10(d,3H,−CH)、2.99(m,2H,−CH−)、3.18(m,2H,−CH−)、4.10(m,2H,−CH−)、7.04(d,2H,Ar−H)、7.50(d,1H,C−H)、7.78(d,1H,C−H)、7.99(d,2H,Ar−H)(代表的シグナルのみ);HPLC保持時間6.893分(溶出溶媒CHCN w/0.1%TFAおよびHO w/0.1%TFA;カラム:Agilent Zorbax RX−C8 4.6mm×150mm w/5μmの粒径;方法:20分間、10〜100%CHCN、さらに4.5分間、100%CHCN;流速:1.6mL/分;システム:Agilent 1100 HPLC)。
【0126】
次の実施例を、実施例1に記載の手順、すなわち適切な3−ハロピリダジンと、(R)−2−メチル−1−{3−[4−(4,4,5,5−テトラメチル−[1,3,2]ジオキサボロラン−2−イル)フェノキシ]プロピル}ピロリジンまたは1−{3−[4−(4,4,5,5−テトラメチル−[1,3,2]ジオキサボロラン−2−イル)−フェノキシ]プロピル}ピペリジンとの遷移金属触媒カップリング反応によって調製した。
【0127】
【表2】

【0128】
【表3】

【0129】
【表4】

【0130】
【表5】

【0131】
実施例20
3−ベンジルオキシ−6−[4−(3−ピペリジン−1−イル−プロポキシ)フェニル]ピリダジン
【0132】
【化12】

【0133】
水素化ナトリウム(0.007g,0.18mmol)を、窒素雰囲気下、無水DMF(4mL)中で撹拌し、ベンジルアルコール(0.016g,0.15mmol)を加えた。15分後、3−クロロ−6−[4−(3−ピペリジン−1−イル−プロポキシ)−フェニル]−ピリダジン(0.05g,0.15mmol)を導入し、反応混合物を室温で5時間撹拌した。沈殿物を、濾過によって回収し、HO(10mL)で洗浄し、真空中で乾燥させ、標題化合物を白色の固体として得た(0.050g,83%)。m.p.138℃;H NMR(CDCl)2.00(m,2H,−CH−)、2.50(m,2H,−CH−)、4.10(m,2H,−CH−)、7.00(d,1H,C−H)、7.05(d,2H,Ar−H)、7.75(d,1H,C−H)、7.95(d,2H,Ar−H)、HPLC保持時間2.612分
【0134】
実施例35
3−{4−[3−((R)−2−メチルピロリジン−1−イル)プロポキシ]フェニル}−6−フェニルメタンスルフィニル−ピリダジン
【化13】

【0135】
3−ベンジルスルファニル−6−{4−[3−((R)−2−メチル−ピロリジン−1−イル)−プロポキシ]−フェニル}−ピリダジン(0.08g,0.19mmol)をCHCOH(3mL)に溶解し、HをHO(0.026mL,0.16mmol)に入れた50%溶液を導入した。反応混合物を、撹拌し、LC−MSによってモニタリングし、5時間後、残渣に蒸発させ、それをHO(20mL)およびCHCl(30mL)で処理した。有機層を、飽和NaHCO溶液(20mL)、飽和塩水(10mL)で洗浄し、乾燥(MgSO)させてから蒸発させ、白色の固体を得た(0.051g,64%)。m.p.145℃。
【0136】
実施例37
3−{4−[3−((R)−2−メチル−ピロリジン−1−イル)−プロポキシ]フェニル}−6−フェニルメタンスルホニル−ピリダジン
【0137】
【化14】

【0138】
3−ベンジルスルファニル−6−{4−[3−((R)−2−メチル−ピロリジン−1−イル)−プロポキシ]−フェニル}−ピリダジン(0.065g,0.15mmol)をCHCHOH(3mL)に溶解し、「オキソン」、ペルオキシ一硫酸カリウム(0.36g,0.23mmol)をHO(1mL)に溶かした溶液を導入した。反応混合物を、撹拌し、LC−MSによってモニタリングし、2時間後、残渣に蒸発させ、それをEtOAc(20mL)で処理し、飽和NaHCO溶液(20mL)、飽和塩水(10mL)で洗浄し、乾燥(MgSO)させてから蒸発させ、白色の固体を得た(0.028g,40%)。m.p.136℃。
【0139】
次の実施例を、実施例20、35および37に記載の手順によって調製した。実施例35〜38などのいくつかの場合、実施例35および37に例示のように記載の化合物を調製するには、さらなる硫黄酸化段階が必要とされる。
【0140】
【表6】

【0141】
【表7】

【0142】
【表8】

【0143】
【表9】

【0144】
実施例43
3−クロロ−6−{4−[(S)−2−メチル−3−((R)−2−メチルピロリジン−1−イル)プロポキシ]−フェニル}ピリダジン
【0145】
【化15】

【0146】
(S)−2−メチル−3−[4−(4,4,5,5−テトラメチル−[1,3,2]ジオキサボロラン−2−イル)−フェノキシ]−プロパン−1−オール
(S)−3−ブロモ−2−メチルプロパン−1−オール(6.2g,40mmol)を、乾燥CHCN(100mL)に溶解し、乾燥KCO粉(10.4g,75mmol)、次いで4−(4,4,5,5−テトラメチル−[1,3,2]ジオキサボロラン−2−イル)−フェノール(11.0g,50mmol)を導入した。反応混合物を、72℃で20時間加熱し、冷却し、濾過した。濾液をオイルに蒸発させ、それをシリカゲルのカラムに適用した。溶離剤として、最初にヘキサン、極性を漸増させたヘキサン/酢酸エチルの混合物(3:2)での溶出により、標題化合物(7.56g,64%)をオイルとして得た。
【0147】
(S)−3−[4−(6−クロロ−ピリダジン−3−イル)−フェノキシ]−2−メチル−プロパン−1−オール
Pd(OAc)三量体(0.84g,3.75mmol)およびPhP(3.9g,15mmol)を、無水THF(200mL)に懸濁し、窒素雰囲気下で10分間激しく撹拌した。3,6−ジクロロピリダジン(8.94g,60mmol)を固体として加え、攪拌を45分間継続した。
【0148】
(S)−2−メチル−3−[4−(4,4,5,5−テトラメチル−[1,3,2]ジオキサボロラン−2−イル)フェノキシ]プロパン−1−オール(4.38g,15mmol)をTHF(50mL)とEtOH(20mL)の混合物に溶かした溶液を反応混合物に滴下添加した。飽和NaHCO溶液(120mL)を導入した。反応混合物を、74℃で24時間加熱し、冷却し、濾過し、残渣に蒸発させ、それをCHCl(300mL)に溶解し、水および飽和NaHCO溶液で洗浄した。CHCl相を、乾燥させ(NaSO)、蒸発させた。標題化合物を、最初にヘキサン/EtOAc(9:1)、極性を漸増させたこれら溶媒の1:2混合物で溶出する、シリカゲル上でのISCOクロマトグラフィーによって得て、標題化合物(3.22g,78%)を白色の固体として得た。m.p.134−138℃;H NMR(CDCl)1.10(d,3H,−CH)、2.22(1H,m、C−H)、3.72(m,2H,−CH−)、4.04(m,2H,−CH−)、7.04(d,2H,Ar−H)、7.51(d,1H,C−H)、7.80(d,1H,C−H)、8.00(d,2H,Ar−H);HPLC保持時間8.843分(溶出溶媒CHCN w/0.1%TFAおよびHO w/0.1%TFA);20分間、10〜100%CHCN。
【0149】
3−クロロ−6−{4−[(S)−2−メチル−3−((R)−2−メチルピロリジン−1−イル)プロポキシ]フェニル}−ピリダジン(実施例43)
(S)−3−[4−(6−クロロ−ピリダジン−3−イル)フェノキシ]−2−メチルプロパン−1−オール(3.0g,10.76mmol)をピリジン(10mL)とTHF(90mL)の混合物に溶解し、溶液を0℃まで冷却した。塩化メタンスルホニル(2.863g,25mmol)を滴下導入し、反応混合物を周囲温度で20時間撹拌した。EtOAc(100mL)およびHO(150mL)を加え、分離し、水層をEtOAc(2×100mL)でさらに抽出した。結合抽出物を、乾燥させ(MgSO)、固体に蒸発させ、それを、ヘキサン/EtOAcの勾配で溶出する、シリカゲル上でのカラムクロマトグラフィーによって精製し、中間体のメタンスルホン酸(R)−3−[4−(6−クロロ−ピリダジン−3−イル)−フェノキシ]−2−メチルプロピルエステルを得た(3.52g,91%)。この中間体(7mmol)を、乾燥CHCN(200mL)中の(R)−2−メチルピロリジン,ベンゼンスルホン酸塩(3.65g,15mmol)および乾燥KCO粉(4.15g,30mmol)で処理した。反応混合物を、還流下で30時間加熱し、冷却し、濾過し、濾液を蒸発させた。残渣を、CHClとEtOHの勾配混合物を含有する10%水性アンモニア溶液で溶出するカラムクロマトグラフィーによって精製し、標題化合物を得た(1.46g,60%)。m.p.152−155℃、H NMR(CDCl)1.18(d,3H,−CH)、1.27(d,3H,−CH)、3.98(m,2H,−CH−)、7.02(d,2H,Ar−H)、7.52(d,1H,C−H)、7.78(d,1H,C−H)、8.02(d,2H,Ar−H);HPLC保持時間7.530分(溶出溶媒CHCN w/0.1%TFAおよびHO w/0.1%TFA);20分間、10〜100%CHCN。
【0150】
次の実施例を、実施例43に記載の手順によって調製した。
【0151】
【表10】

【0152】
実施例45
6−{4−[3−((R)−2−メチル−ピロリジン−1−イル)プロポキシ]フェニル}ピリダジン
【0153】
【化16】

【0154】
1,2−ジメトキシエタン(25mL)および水(11.5mL)中、(R)−2−メチル−1−{3−[4−(4,4,5,5−テトラメチル−[1,3,2]ジオキサボロラン−2−イル)−フェノキシ]プロピル}−ピロリジン(1.1g,3.2mmol)、3−クロロピリダジン(0.485g,4.24mmol)およびテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(0.258g,0.223mmol)、KCO(1.19g,8.6mmol)を組み合わせて、アルゴンで脱気した。反応物を、85℃で15時間加熱し、室温まで冷却し、セライトを通して濾過し、CHCl(30mL)に溶解し、水および飽和NaHCO溶液で洗浄した。CHCl層を、乾燥させ(NaSO)、蒸発させた。生成物を、5〜15%MeOH/DCM/0.5%NHOHで溶出する、シリカゲル上でのISCOクロマトグラフィーによって精製した。HCl塩をMeOH−エーテル−HClから調製し、白色の固体を得た。m.p.198−201℃;LCMS m/z=298(M+1)。
【0155】
本発明の化合物は、特に治療剤として有用である。特に、本化合物は、H受容体との相互作用に有用である。一実施形態では、本発明は、疾患および障害、たとえば本明細書に開示されるものを治療または予防するための方法であって、かかる治療または予防を必要とする被検体に、本発明の化合物を治療有効量で投与するステップを含む、方法を提供する。
【0156】
さらなる実施形態では、本発明は、H活性を阻害するための方法であって、本発明の化合物を有効な阻害をもたらすのに十分な量で提供するステップを含む、方法を提供する。特に、本発明の化合物を投与し、ナルコレプシーまたは他の睡眠/覚醒障害、たとえば閉塞性睡眠時無呼吸/呼吸低下症候群、および交代勤務睡眠障害;摂食行動、摂食障害、肥満、認知、覚醒、記憶、気分障害、気分注意変調、注意欠陥多動性障害(ADHD)、アルツハイマー病/認知症、統合失調症、疼痛、ストレス、片頭痛、乗り物酔い、うつ病、精神障害、てんかん、胃腸障害、呼吸器障害(喘息など)、炎症、および心筋梗塞などの疾患および障害を治療することが可能である。特定の実施形態では、本化合物を投与し、ナルコレプシーまたは他の睡眠/覚醒障害、たとえば閉塞性睡眠時無呼吸/呼吸低下症候群、および交代勤務睡眠障害;肥満、認知、注意欠陥多動性障害(ADHD)、および認知症を治療することが可能である。他の実施形態では、本化合物を投与し、ナルコレプシーまたは他の睡眠/覚醒障害、たとえば閉塞性睡眠時無呼吸/呼吸低下症候群、および交代勤務睡眠障害を治療することが可能であり、またはそれらを使用し、肥満を治療することが可能であり、またはそれらを使用し、認知障害を治療することが可能であり、またはそれらを使用し、注意欠陥多動性障害(ADHD)を治療することが可能であり、またはそれらを使用し、認知症を治療することが可能である。
【0157】
本発明の化合物は、Hの阻害および、それによる本明細書中に記載の症状の治療における有用性について示しているかまたは示すことが予想されている。かかる有用性は、たとえば、下記に示されるような次のアッセイを用いて示すことが可能である。それらは、本開示の範囲を限定するものとして、意図されておらず、また解釈されるべきではない。
【0158】
ラットHアッセイ:
細胞系の開発および膜の調製
ラットH受容体cDNAを、ラットヒスタミンH受容体の445−アミノ酸全体をコードする、Genbankファイル#NM_053506のbp#338〜1672に対応する配列を有するラット視床、視床下部、線条体および前頭前野からプールされた逆転写RNAからPCR増幅した。これをpIRES−neo3哺乳類発現ベクターに改変し、それをCHO−A3細胞系(Euroscreen(Belgium))に安定的に形質移入した後、限界希釈法によってクローン選択を行った。細胞を採取し、細胞ペレットを凍結させた(−80℃)。細胞ペレットを、5nM EDTAおよびプロテアーゼ阻害剤のカクテル(Complete Protease Inhibitior Tablets、Roche Diagnostics)を有する5mMトリス−HCl(pH7.5)に再懸濁した。細胞を、ポリトロン細胞ホモジナイザーを使用して破壊し、懸濁液を4℃、1000×gで10分間遠心分離した。ペレットを廃棄し、上清を4℃、40,000×gで30分間遠心分離した。この膜ペレットを、0.6mM EDTA、5mM MgClおよびプロテアーゼ阻害剤とともに50mMトリス−HCl(pH7.5)を含有する膜緩衝液で洗浄し、上記のように遠心分離し、最終ペレットを、膜緩衝液+250mMスクロースに再懸濁し、−80℃で凍結させた。
【0159】
放射性リガンド結合
膜を、50mMトリスHCl(pH7.4)、5mM MgCl、0.1%BSAに再懸濁した。膜懸濁液(ウェルあたり10μgのタンパク質)を、[H]−N−α−メチルヒスタミン(約1nMの最終濃度)、さまざまな濃度(0.01nM〜30μM)での試験化合物および80μlの最終容量でのシンチレーション近接(proximity)ビーズ(Perkin Elmer,FlashBlueGPCR Scintillating Beads)を有する96ウェルマイクロタイタープレートで、室温で4時間インキュベートし、光から保護した。非特異的結合を、10μMクロベンプロピットの存在下で測定した。受容体に結合した(したがって、シンチレーションビーズと近接状態での)放射性リガンドを、MicroBetaシンチレーションカウンターを使用して測定した。
【0160】
GTPγS結合
膜を、1mM EDTA、0.17mg/mlのジチオトレイトール、100mM NaCl、30μg/mlのサポニンおよび5mM MgClを含有する20mMヘペス(pH7.4)に再懸濁した。インバースアゴニスト活性の測定のため、増加する濃度の試験化合物を、10μg/ウェルの膜タンパク質、5μM GDP、シンチレーション近接ビーズ(Perkin Elmer,FlashBlueGPCR Scintillating Beads)および[35S]−GTPγS(0.1nMの最終濃度)を有する96ウェルマイクロタイタープレートでインキュベートした。暗所で、室温で45分間インキュベート後、マイクロタイタープレートを1000×gで5分間遠心分離し、膜に結合した放射能を、MicroBetaシンチレーションカウンターを使用して計数した。非特異的結合を、10μM GTPの存在下で測定した。結合[35S]−GTPγSの低下は、このアッセイにおけるH受容体のインバースアゴニスト活性を示唆する。試験化合物のアンタゴニスト活性を、次の条件下での類似実験において測定した。膜を、1mM EDTA、0.17mg/mlのジチオトレイトール、200mM NaCl、30μg/mlのサポニンおよび20mM MgClを含有する20mMヘペス(pH7.4)に再懸濁した。膜を、増加する濃度の試験化合物、20μM GDP、シンチレーション近接ビーズおよび[35S]−GTPγS(0.1nMの最終濃度)+30nMのR−α−メチルヒスタミンを有するマイクロタイタープレート内、10μg/ウェルの膜タンパク質でインキュベートした。マイクロタイタープレートを、上記のようにインキュベートし、処理した。R−α−メチルヒスタミンで刺激される[35S]−GTPγS結合の低下は、このアッセイにおけるH受容体アンタゴニスト活性を示唆する。
【0161】
ヒトHアッセイ:
方法:
ヒトH受容体(GenBank:NM_007232)を安定的に発現するCHO細胞を採取し、細胞ペレットを凍結させた(−80℃)。細胞ペレットを、5nM EDTAおよびプロテアーゼ阻害剤のカクテル(Complete Protease Inhibitior Tablets,Roche Diagnostics)を有する5mMトリス−HCl(pH7.5)に再懸濁した。細胞を、ポリトロン細胞ホモジナイザーを使用して破壊し、懸濁液を4℃、1000×gで10分間遠心分離した。ペレットを廃棄し、上清を4℃、40,000×gで30分間遠心分離した。この膜ペレットを、0.6mM EDTA、5mM MgClおよびプロテアーゼ阻害剤とともに50mMトリス−HCl(pH7.5)を含有する膜緩衝液で洗浄し、上記のように遠心分離し、最終ペレットを、膜緩衝液+250mMスクロースに再懸濁し、−80℃で凍結させた。
【0162】
放射性リガンド結合
膜を、50mMトリスHCl(pH7.4)、5mM MgCl、0.1%BSAに再懸濁した。膜懸濁液(ウェルあたり10μgのタンパク質)を、[H]−N−α−メチルヒスタミン(約1nMの最終濃度)、さまざまな濃度(0.01nM〜30μM)での試験化合物および80μlの最終容量でのシンチレーション近接ビーズ(Perkin Elmer,FlashBlueGPCR Scintillating Beads)を有する96ウェルマイクロタイタープレートで、室温で4時間インキュベートし、光から保護した。非特異的結合を、10μMクロベンプロピットの存在下で測定した。受容体に結合した(したがって、シンチレーションビーズと近接状態での)放射性リガンドを、MicroBetaシンチレーションカウンターを使用して測定した。
【0163】
GTPγS結合
膜を、1mM EDTA、0.17mg/mlのジチオトレイトール、100mM NaCl、30μg/mlのサポニンおよび5mM MgClを含有する20mMヘペス(pH7.4)に再懸濁した。インバースアゴニスト活性の測定のため、増加する濃度の試験化合物を、10μg/ウェルの膜タンパク質、5μM GDP、シンチレーション近接ビーズ(Perkin Elmer,FlashBlueGPCR Scintillating Beads)および[35S]−GTPγS(0.1nMの最終濃度)を有する96ウェルマイクロタイタープレートでインキュベートした。暗所で、室温で45分間インキュベート後、マイクロタイタープレートを1000×gで5分間遠心分離し、膜に結合した放射能を、MicroBetaシンチレーションカウンターを使用して計数した。非特異的結合を、10μM GTPの存在下で測定した。結合[35S]−GTPγSの低下は、このアッセイにおけるH受容体のインバースアゴニスト活性を示唆する。試験化合物のアンタゴニスト活性を、次の条件下での類似実験において測定した。膜を、1mM EDTA、0.17mg/mlのジチオトレイトール、200mM NaCl、30μg/mlのサポニンおよび20mM MgClを含有する20mMヘペス(pH7.4)に再懸濁した。膜を、増加する濃度の試験化合物、20μM GDP、シンチレーション近接ビーズおよび[35S]−GTPγS(0.1nMの最終濃度)+30nMのR−α−メチルヒスタミンを有するマイクロタイタープレート内、10μg/ウェルの膜タンパク質でインキュベートした。マイクロタイタープレートを、上記のようにインキュベートし、処理した。R−α−メチルヒスタミンで刺激される[35S]−GTPγS結合の低下は、このアッセイにおけるH受容体アンタゴニスト活性を示唆する。
【0164】
本発明と関連して使用してもよい他のアッセイを下記に示す。本発明の実施例は、次のインビボモデルにおいて試験することができる。
【0165】
ラットにおける覚醒促進活性の評価
試験化合物の覚醒促進活性を評価するために用いられる方法は、EdgarおよびSeidel,「Journal of Pharmacology and Experimental Therapeutics」、283:757−769頁、1997年によって記載され、その内容全体を参照によって本明細書中に援用する方法に基づく。
【0166】
本発明の化合物は、覚醒促進活性における有用性を示しているかまたは示すことが予想される。
【0167】
Dipsogeniaモデル:
ラットにおけるヒスタミンアゴニスト誘発による水飲みの抑制。ヒスタミン、およびH−選択的アゴニスト(R)−α−メチルヒスタミン(RAMH)は、末梢性または中枢性のいずれかで投与される場合、ラットにおける水飲み行動を誘発し(Kraly F.S.,June K.R. 1982年 Physiol.Behav.28:841頁;Leibowitz S.F. 1973年 Brain Res.63:440頁;Ligneau X.、Lin J−S.、Vanni−Mercier G.,Jouvet M.、Muir J.L.、Ganellin C.R.、Stark H.、Elz S.、Schunack W.、Schwartz J−C. 1998年 J Pharmcol.Exp.Ther.287:658−66頁;Clapham J.およびKilpatrick G.J. 1993年 Eur.J.Pharmacol.232:99−103頁)、その効果は、H受容体アンタゴニストチオペラミドおよびシプロキシファンによって遮断される。本発明の化合物は、RAMH誘発による水飲み行動を遮断することを示しているかまたはそれが予想される。
【0168】
新物体弁別(Novel object discrimination):
新物体弁別(NOD;novel object recognitionとも称される)は、EnnaceurおよびDelacourによって最初に記述された短期視覚認知記憶についてのアッセイである(Ennaceur A.およびDelacour J. (1988年) Behav Brain Res 31:47−59頁)。
【0169】
社会認知:
社会認識(SR)は、ThorおよびHolloway(1982年)によって最初に記述された短期社会(嗅覚)記憶についてのアッセイである(Thor D.およびHolloway W. (1982年) J Comp Physiolog Psychcol 96:1000−1006頁)。
【0170】
本発明の化合物は、Hの阻害と、それによる本明細書中に記載の症候の治療における有用性を示しているかまたは示すことが予想される。
【0171】
表Bは、本発明の実施例1〜45におけるヒトへの結合データをあげる。本明細書中に記載のヒトHの方法における実施例1〜45に対する結合定数(K)を、次の範囲、すなわち「+++」が50nM未満;「++」が51〜100nM;「+」が>101nMであることを示すように文字記述子によって表す。
【0172】
【表11】

【0173】
【表12】

【0174】
本発明が、詳細に示される特定の実施形態の観点から本明細書中に記載されている一方、このような実施形態が、本発明の一般的原則の例として示され、かつ本発明が必ずしもそれに限定されないことは理解されるべきである。任意の所与の材料、プロセスステップまたは化学式における特定の変更および変形は、本発明の真の趣旨および範囲から逸脱することなく、当業者にとって容易に理解され、すべてのかかる変更および変形は、以下に続く特許請求の範囲内であると考えられるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iの化合物またはその立体異性体もしくは薬学的に許容される塩であって、
【化17】

式中、
は、H、−OR、−SR、−SOR、−SO、−NR10、ハロゲン、C1−4アルキル、C4−10シクロアルキル、C1−4ハロアルキル、C6−12アリール、5〜10員ヘテロアリール、または3〜10員ヘテロシクロアルキルであり、ここで、前記C1−4アルキル、C4−10シクロアルキル、C1−4ハロアルキル、C6−12アリール、5〜10員ヘテロアリール、および3〜10員ヘテロシクロアルキルの各々は、選択的に1、2、もしくは3のR11によって置換されるものであり;
およびRは、独立に、HまたはC1−4アルキルであり;またはRおよびRは、一緒になると、C4−10シクロアルキルまたはフェニルを形成し、ここで、前記C4−10シクロアルキルおよびフェニルの各々は、選択的に1、2、もしくは3のハロゲンまたはC1−4アルキルによって置換されるものであり;
各Rは、独立に、HまたはC1−4アルキルまたはOHであり;
各Rは、独立に、C1−4アルキルまたはヒドロキシアルキルであり;
各Rは、独立に、ハロゲン、C1−4ハロアルキル、−OH、C1−4アルキル、−O−C1−4アルキル、−NR10、またはCNであり;
は、C1−4アルキル、C4−10シクロアルキル、5〜10員ヘテロアリール、C6−12アリール、C6−12アリール、C1−6アルキル、5〜10員ヘテロアリールアルキル、または3〜10員ヘテロシクロアルキルであり;
およびR10は、独立に、H、C1−4アルキル、またはアリールアルキルであり;
各R11は、ハロゲン、−OH、−OC1−4アルキル、C1−4アルキル、C1−4ハロアルキル、または−CNであり;
Xは、OまたはSであり;
mは、2、3、4、5、または6であり;
nは、0、1、または2であり;
yは、0、1、2、3、または4であり;
zは、0、1、2、3、または4である、
化合物またはその立体異性体もしくは薬学的に許容される塩。
【請求項2】
は、H、−OR、−SR、−SOR、−SO、−NR10、ハロゲン、C1−4アルキル、C1−4ハロアルキル、アリールおよびヘテロアリールからなる群から選択されるものである、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
は、ハロゲン、C1−4アルキル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクロアルキル、または−NR10である、上記請求項のいずれか1つに記載の化合物。
【請求項4】
は、H、ハロゲン、または−NHである、上記請求項のいずれか1つに記載の化合物。
【請求項5】
は、塩化物またはフッ化物である、上記請求項のいずれか1つに記載の化合物。
【請求項6】
は、ORである、上記請求項のいずれか1つに記載の化合物。
【請求項7】
は、−SR、−SOR、または−SOである、上記請求項のいずれか1つに記載の化合物。
【請求項8】
は、H、メチル、フェニル、ピロリジニル、ピペリジニル、モルホリニル、チオフェニル、ピリジニル、−OC1−4アルキル、−Oアリール、−OCHアリール、−SC1−4アルキル、−SCHアリール、−SOCHアリール、−SOCHアリール、またはベンゾフラニルである、上記請求項のいずれか1つに記載の化合物。
【請求項9】
は、Hである、上記請求項のいずれか1つに記載の化合物。
【請求項10】
は、C1−4アルキルであり、かつnは0である、上記請求項のいずれか1つに記載の化合物。
【請求項11】
は、Hである、上記請求項のいずれか1つに記載の化合物。
【請求項12】
は、Hである、上記請求項のいずれか1つに記載の化合物。
【請求項13】
、R、RおよびRは、それぞれHである、上記請求項のいずれか1つに記載の化合物。
【請求項14】
およびRは、それぞれHである、上記請求項のいずれか1つに記載の化合物。
【請求項15】
およびRは、一緒になると、C4−10シクロアルキルを形成する、上記請求項のいずれか1つに記載の化合物。
【請求項16】
およびRは、一緒になると、フェニルを形成する、上記請求項のいずれか1つに記載の化合物。
【請求項17】
各Rは、独立に、Hまたはメチルである、上記請求項のいずれか1つに記載の化合物。
【請求項18】
は、Hである、上記請求項のいずれか1つに記載の化合物。
【請求項19】
各Rは、メチルである、上記請求項のいずれか1つに記載の化合物。
【請求項20】
各Rは、独立に、C1−4アルキルである、上記請求項のいずれか1つに記載の化合物。
【請求項21】
mは、2または3である、上記請求項のいずれか1つに記載の化合物。
【請求項22】
mは、3である、上記請求項のいずれか1つに記載の化合物。
【請求項23】
nは、0または1である、上記請求項のいずれか1つに記載の化合物。
【請求項24】
nは、0である、上記請求項のいずれか1つに記載の化合物。
【請求項25】
yは、0である、上記請求項のいずれか1つに記載の化合物。
【請求項26】
zは、1である、上記請求項のいずれか1つに記載の化合物。
【請求項27】
Xは、Oである、上記請求項のいずれか1つに記載の化合物。
【請求項28】
3−クロロ−6−{4−[3−((R)−2−メチルピロリジン1−イル)プロポキシ]フェニル}ピリダジン;
3−クロロ−6−[4−(3−ピペリジン−1−イル−プロポキシ)−フェニル]ピリダジン;
3−メチル−6−{4−[3−((R)−2−メチル−ピロリジン−1−イル)−プロポキシ]−フェニル}ピリダジン;
3−{4−[3−((R)−2−メチル−ピロリジン−1−イル)−プロポキシ]−フェニル}−6−フェニルピリダジン;
3−{4−[3−((R)−2−メチル−ピロリジン−1−イル)−プロポキシ]−フェニル}−6−ピロリジン−1−イル−ピリダジン;
4−(6−{4−[3−((R)−2−メチルピロリジン−1−イル)−プロポキシ]フェニル}ピリダジン−3−イル)モルホリン;
6−{4−[3−((R)−2−メチル−ピロリジン−1−イル)−プロポキシ]−フェニル}ピリダジン−3−イルアミン;
メチル−(6−{4−[3−((R)−2−メチル−ピロリジン−1−イル)−プロポキシ]フェニル}ピリダジン−3−イル)アミン;
1−(6−{4−[3−((R)−2−メチルピロリジン−1−イル)−プロポキシ]フェニル}ピリダジン−3−イル)ピペリジン−4−オール;
3−クロロ−6−{3−メトキシ−4−[3−((R)−2−メチル−ピロリジン−1−イル)プロポキシ}フェニル}ピリダジン;
3−クロロ−6−[3−メトキシ−4−(3−ピペリジン−1−イル−プロポキシ)フェニル]ピリダジン;
3−クロロ−6−[2−メチル−4−(3−ピペリジン−1−イル−プロポキシ)フェニル]ピリダジン;
5−(6−クロロ−ピリダジン−3−イル)−2−[3−((R)−2−メチル−ピロリジン−1−イル)−プロポキシ]ベンゾニトリル;
5−(6−クロロ−ピリダジン−3−イル)−2−(3−ピペリジン−1−イル−プロポキシ)ベンゾニトリル;
1−クロロ−4−[4−(3−ピペリジン−1−イル−プロポキシ)−フェニル]−6,7−ジヒドロ−5H−シクロペンタ[d]ピリダジン;
3−{4−[3−((R)−2−メチル−ピロリジン−1−イル)−プロポキシ]フェニル}−6−チオフェン−2−イル−ピリダジン;
1−クロロ−4−{4−[3−((R)−2−メチル−ピロリジン−1−イル)−プロポキシ]−フェニル}−6,7−ジヒドロ−5H−シクロペンタ[d]ピリダジン;
3−クロロ−6−{4−[3−((R)−2−メチル−ピロリジン−1−イル)−プロポキシ]−フェニル}−4,5−ジアザ−トリシクロ[6.2.2.02,7]ドデカ−2(7),3,5−トリエン;
3−(5−クロロ−ピリジン−3−イルオキシ)−6−{4−[3−((R)−2−メチル−ピロリジン−1−イル)−プロポキシフェニル}ピリダジン;
3−ベンジルオキシ−6−[4−(3−ピペリジン−1−イル−プロポキシ)フェニル]ピリダジン;
3−ベンジルオキシ−6−{4−[3−((R)−2−メチル−ピロリジン−1−イル)−プロポキシ]フェニル}ピリダジン;
3−メトキシ−6−{4−[3−((R)−2−メチル−ピロリジン−1−イル−プロポキシ]−フェニル}ピリダジン;
3−メトキシ−6−{4−3−ピペリジン−1−イル−プロポキシ)−フェニル]ピリダジン;
3−イソプロポキシ−6−{4−[3−((R)−2−メチル−ピロリジン−1−イル)−プロポキシ]フェニルピリダジン;
3−フェノキシ−6−[4−(3−ピペリジン−1−イル−プロポキシ)フェニル]ピリダジン;
3−(4−フルオロ−ベンジルオキシ)−6−{4−[3−((R)−2メチル−ピロリジン−1−イル)−プロポキシ]フェニル}ピリダジン;
3−{4−[3−((R)−2−メチル−ピロリジン−1−イル)−プロポキシ]−フェニル}−6−(4−トリフルオロメチル−ベンジルオキシ)ピリダジン;
エチル−(6−{4−[3−((R)−2−メチル−ピロリジン−1−イル)−プロポキシ]−フェニル}ピリダジン−3−イル)アミン;
ベンジル−(6−{4−[3−((R)−2−メチル−ピロリジン−1−イル)−プロポキシ]−フェニル}−ピリダジン−3−イル)アミン;
3−{4−[3−((R)−2−メチル−ピロリジン−1−イル−プロポキシ]−フェニル}−6−メチルスルファニルピリダジン;
3−メチルスルファニル−6−[4−(3−ピペリジン−1−イル−プロポキシ)フェニル]ピリダジン;
1−{4−[3−((R)−2−メチル−ピロリジン−1−イル)−プロポキシ]−フェニル}−4−メチルスルファニル−6,7−ジヒドロ−5H−シクロペンタ[d]ピリダジン;
3−ベンジルスルファニル−6−{4−[3−((R)−2−メチル−ピロリジン−1−イル)−プロポキシ]フェニル}ピリダジン;
3−ベンジルスルファニル−6−[4−(3−ピペリジン−1−イル−プロポキシ)−フェニル]ピリダジン;
3−{4−[3−((R)−2−メチル−ピロリジン−1−イル)−プロポキシ]−フェニル}−6−フェニルメタンスルフィニル−ピリダジン;
3−フェニルメタンスルフィニル−6−[4−(3−ピペリジン−1−イル−プロポキシ)フェニル]ピリダジン;
3−{4−[3−((R)−2−メチル−ピロリジン−1−イル)−プロポキシ]−フェニル}−6−フェニルメタンスルホニル−ピリダジン;
3−フェニルメタンスルホニル−6−[4−(3−ピペリジン−1−イル−プロポキシ)フェニル]ピリダジン;
1−メトキシ−4−{4−[3−((R)−2−メチルピロリジン−1−イル)−プロポキシ]−フェニル}6,7−ジヒドロ−5H−シクロペンタ[d]ピリダジン;
1−メトキシ−4−{4−[3−((R)−2−メチル−ピロリジン−1−イル−プロポキシ]−フェニル}フタラジン;
3−ベンゾフラン−2−イル−6−{4−[3−((R)−2−メチル−ピロリジン−1−イル)−プロポキシ]−フェニル}ピリダジン;
1−ベンジルスルファニル−4−{4−[3−((R)−2−メチル−ピロリジン−1−イル)プロポキシ]−フェニル}−6,7−ジヒドロ−5H−シクロペンタ[d]ピリダジン;
3−クロロ−6−{4−[(S)−2−メチル−3−((R)−2−メチルピロリジン−1−イル)−プロポキシ]フェニル}ピリダジン;
3−クロロ−6−{4−[(S)−2−メチル−3−(2−メチルピペリジン−1−イル)プロポキシ]−フェニル}ピリダジン;および
6−{4−[3−((R)−2−メチル−ピロリジン−1−イル)プロポキシ]フェニル}ピリダジン;
からなる群から選択される請求項1に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩。
【請求項29】
請求項1に記載の少なくとも1つの化合物および少なくとも1つの薬学的に許容される担体または希釈剤を含む医薬組成物。
【請求項30】
少なくとも1つの追加的な治療剤をさらに含む、請求項29に記載の医薬組成物。
【請求項31】
患者における、ナルコレプシーまたは睡眠/覚醒障害、摂食行動障害、摂食障害、肥満、認知障害、覚醒疾患、記憶疾患、気分障害、気分注意変調、注意欠陥多動性障害(ADHD)、アルツハイマー病/認知症、統合失調症、疼痛、ストレス、片頭痛、乗り物酔い、うつ病、精神障害、てんかん、胃腸障害、呼吸器障害、炎症、および心筋梗塞からなる群から選択される障害を治療する方法であって、前記患者に、請求項1〜28のいずれか1つに記載の化合物の治療有効量を投与する工程を含む、方法。
【請求項32】
前記疾患は、ナルコレプシーまたは睡眠/覚醒障害である、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記疾患は、注意欠陥多動性障害である、請求項31に記載の方法。
【請求項34】
前記疾患は、認知障害である、請求項31に記載の方法。

【公表番号】特表2011−510991(P2011−510991A)
【公表日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−545097(P2010−545097)
【出願日】平成21年1月28日(2009.1.28)
【国際出願番号】PCT/US2009/032187
【国際公開番号】WO2009/097306
【国際公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【出願人】(509021085)セファロン、インク. (24)
【Fターム(参考)】