説明

ヒステリシスコンパレータ

【課題】入力信号のひずみが想定もしくは調整できない場合でも適切な出力信号を得る。
【解決手段】ヒステリシスコンパレータは、入力信号をしきい値TH1,TH2に基づいて2値化することを、しきい値TH1,TH2の中心値を変更しながら行う2値化部2、2値化信号のランレングスを2値化処理時のしきい値が同じ2値化信号の信号列毎に測定するランレングス測定部4、ランレングス測定部4の測定結果からランレングスの分布の特徴値を、2値化処理時のしきい値が同じ2値化信号の信号列毎に算出する特徴値算出部5、2値化信号の立ち上がりから次の立ち下がりまでのランレングスの特徴値と2値化信号の立ち下がりから次の立ち上がりまでのランレングスの特徴値とが最も近くなるしきい値TH1,TH2による2値化信号を、最適なしきい値TH1,TH2による2値化結果として出力する制御部6を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電圧レベルが連続的に変化する入力信号を2つの異なる電圧レベルのしきい値に基づいて2値化するヒステリシスコンパレータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、入力信号の周波数や波の数を検出する目的で用いられるヒステリシスコンパレータが知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−082634号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の入力信号の周波数や波の数を検出する目的で用いられるヒステリシスコンパレータでは、入力信号のひずみのために2値化出力の結果がデューティー比が1:1にならないという問題点があった。特許文献1に開示された従来技術では、入力信号のひずみを減少させる効果はあるものの、ひずみを有した入力信号に対する2値化出力のデューティー比の問題を解決できないため、搬送波に重畳した干渉信号などの、入力信号のひずみを予め想定もしくは調整できない信号に対しては問題を解決できない。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、入力信号のひずみが予め想定もしくは調整できない場合であっても適切な出力信号を得ることができるヒステリシスコンパレータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のヒステリシスコンパレータは、入力信号を2つの異なる電圧レベルのしきい値TH1,TH2(TH1>TH2)に基づいて2値化することを、しきい値TH1,TH2の中心値を変更しながら行う2値化手段と、2値化対象期間中に前記2値化手段から出力される2値化信号のランレングスを、2値化処理時のしきい値が同じ2値化信号の信号列ごとに測定するランレングス測定手段と、このランレングス測定手段の2値化対象期間中の測定結果からランレングスの分布の特徴値を、2値化処理時のしきい値が同じ2値化信号の信号列ごとに算出する特徴値算出手段と、2値化信号の立ち上がりから次の立ち下がりまでの第1のランレングスの特徴値T0Hと2値化信号の立ち下がりから次の立ち上がりまでの第2のランレングスの特徴値T0Lとが最も近くなるしきい値TH1,TH2による2値化信号を、2値化対象期間中の最適なしきい値TH1,TH2による2値化結果として出力する制御手段とを備えることを特徴とするものである。
【0007】
また、本発明のヒステリシスコンパレータは、入力信号を2つの異なる電圧レベルのしきい値TH1,TH2に基づいて2値化する2値化手段と、2値化対象期間中に前記2値化手段から出力される2値化信号のランレングスを測定するランレングス測定手段と、このランレングス測定手段の2値化対象期間中の測定結果からランレングスの分布の特徴値を算出する特徴値算出手段と、2値化信号の立ち上がりから次の立ち下がりまでの第1のランレングスの特徴値T0Hと2値化信号の立ち下がりから次の立ち上がりまでの第2のランレングスの特徴値T0Lとが等しくなるように、次の2値化対象期間で前記2値化手段が用いるしきい値TH1,TH2の中心値を変更する制御手段とを備えることを特徴とするものである。
【0008】
また、本発明のヒステリシスコンパレータの1構成例において、前記制御手段は、前記特徴値T0Hが前記特徴値T0Lより大きい場合、次の2値化対象期間で前記2値化手段が用いるしきい値TH1,TH2の中心値を一定幅だけ大きくし、前記特徴値T0Hが前記特徴値T0Lより小さい場合、次の2値化対象期間で前記2値化手段が用いるしきい値TH1,TH2の中心値を一定幅だけ小さくし、前記特徴値T0Hと前記特徴値T0Lが等しい場合、現在のしきい値TH1,TH2の中心値を維持することを特徴とするものである。
【0009】
また、本発明のヒステリシスコンパレータは、入力信号を2つの異なる電圧レベルのしきい値TH1,TH2(TH1>TH2)に基づいて2値化する第1の2値化手段と、入力信号をしきい値TH1,TH2と異なる電圧レベルのしきい値TH1b,TH2b(TH1b>TH2b,TH1b>TH1,TH2b>TH2)に基づいて2値化する第2の2値化手段と、入力信号をしきい値TH1,TH2,TH1b,TH2bと異なる電圧レベルのしきい値TH1c,TH2c(TH1c>TH2c,TH1c<TH1,TH2c<TH2)に基づいて2値化する第3の2値化手段と、2値化対象期間中に前記第1、第2、第3の2値化手段から出力される2値化信号のランレングスを、2値化処理時のしきい値が同じ2値化信号の信号列ごとに測定するランレングス測定手段と、このランレングス測定手段の2値化対象期間中の測定結果からランレングスの分布の特徴値を、2値化処理時のしきい値が同じ2値化信号の信号列ごとに算出する特徴値算出手段と、しきい値TH1,TH2における2値化信号の立ち上がりから次の立ち下がりまでの第1のランレングスの特徴値T0Hと2値化信号の立ち下がりから次の立ち上がりまでの第2のランレングスの特徴値T0Lとの大小関係と、しきい値TH1b,TH2bにおける第1のランレングスの特徴値T0Hbと第2のランレングスの特徴値T0Lbとの大小関係と、しきい値TH1c,TH2cにおける第1のランレングスの特徴値T0Hcと第2のランレングスの特徴値T0Lcとの大小関係とに基づいて、次の2値化対象期間で前記第1、第2、第3の2値化手段が用いるしきい値TH1,TH2,TH1b,TH2b,TH1c,TH2cを決定する制御手段とを備えることを特徴とするものである。
【0010】
また、本発明のヒステリシスコンパレータの1構成例において、前記制御手段は、前記特徴値T0Hbと前記特徴値T0Lbが最も近い場合、次の2値化対象期間で前記第1、第2、第3の2値化手段が用いるしきい値TH1,TH2の中心値TBとしきい値TH1b,TH2bの中心値TBbとしきい値TH1c,TH2cの中心値TBcとをそれぞれ一定値だけ大きくし、前記特徴値T0Hcと前記特徴値T0Lcが最も近い場合、次の2値化対象期間で前記第1、第2、第3の2値化手段が用いるしきい値TH1,TH2の中心値TBとしきい値TH1b,TH2bの中心値TBbとしきい値TH1c,TH2cの中心値TBcとをそれぞれ一定値だけ小さくし、前記特徴値T0Hと前記特徴値T0Lが最も近い場合、現在の中心値TB,TBb,TBcを維持することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、入力信号を2つの異なる電圧レベルのしきい値TH1,TH2に基づいて2値化することを、しきい値TH1,TH2の中心値を変更しながら行い、2値化信号のランレングスを測定し、ランレングス測定手段の測定結果からランレングスの分布の特徴値を算出し、2値化信号の立ち上がりから次の立ち下がりまでの第1のランレングスの特徴値T0Hと2値化信号の立ち下がりから次の立ち上がりまでの第2のランレングスの特徴値T0Lとが最も近くなるしきい値TH1,TH2による2値化信号を、2値化対象期間中の最適なしきい値TH1,TH2による2値化結果として出力することにより、入力信号のひずみが予め想定もしくは調整できない場合であっても適切な出力信号を得ることができる。
【0012】
また、本発明では、入力信号を2つの異なる電圧レベルのしきい値TH1,TH2に基づいて2値化し、2値化信号のランレングスを測定し、ランレングス測定手段の測定結果からランレングスの分布の特徴値を算出し、2値化信号の立ち上がりから次の立ち下がりまでの第1のランレングスの特徴値T0Hと2値化信号の立ち下がりから次の立ち上がりまでの第2のランレングスの特徴値T0Lとが等しくなるように、次の2値化対象期間で2値化手段が用いるしきい値TH1,TH2の中心値を変更することにより、入力信号のひずみが予め想定もしくは調整できない場合であっても適切な出力信号を得ることができる。
【0013】
また、本発明では、入力信号を2つの異なる電圧レベルのしきい値TH1,TH2に基づいて2値化すると同時に、入力信号をしきい値TH1,TH2と異なる電圧レベルのしきい値TH1b,TH2bに基づいて2値化し、さらに入力信号をしきい値TH1,TH2,TH1b,TH2bと異なる電圧レベルのしきい値TH1c,TH2cに基づいて2値化し、2値化信号のランレングスを測定し、ランレングス測定手段の測定結果からランレングスの分布の特徴値を算出し、しきい値TH1,TH2における2値化信号の立ち上がりから次の立ち下がりまでの第1のランレングスの特徴値T0Hと2値化信号の立ち下がりから次の立ち上がりまでの第2のランレングスの特徴値T0Lとの大小関係と、しきい値TH1b,TH2bにおける第1のランレングスの特徴値T0Hbと第2のランレングスの特徴値T0Lbとの大小関係と、しきい値TH1c,TH2cにおける第1のランレングスの特徴値T0Hcと第2のランレングスの特徴値T0Lcとの大小関係とに基づいて、次の2値化対象期間で第1、第2、第3の2値化手段が用いるしきい値TH1,TH2,TH1b,TH2b,TH1c,TH2cを決定することにより、入力信号のひずみが予め想定もしくは調整できない場合であっても適切な出力信号を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係るヒステリシスコンパレータの構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係るヒステリシスコンパレータの動作を示すフローチャートである。
【図3】本発明の第1の実施の形態に係るヒステリシスコンパレータにおける2値化部とランレングス測定部の動作を説明する図である。
【図4】本発明の第2の実施の形態に係るヒステリシスコンパレータの構成を示すブロック図である。
【図5】本発明の第2の実施の形態に係るヒステリシスコンパレータの動作を示すフローチャートである。
【図6】本発明の第3の実施の形態に係るヒステリシスコンパレータの構成を示すブロック図である。
【図7】本発明の第3の実施の形態に係るヒステリシスコンパレータの動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[第1の実施の形態]
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。図1は本発明の第1の実施の形態に係るヒステリシスコンパレータの構成を示すブロック図である。
本実施の形態のヒステリシスコンパレータは、記憶部1と、2値化部2と、記憶部3と、ランレングス(Run Length)測定部4と、特徴値算出部5と、制御部6とから構成される。
【0016】
図2は本実施の形態のヒステリシスコンパレータの動作を示すフローチャートである。記憶部1は、入力信号を記憶する(ステップS100)。
図3(A)、図3(B)は2値化部2とランレングス測定部4の動作を説明する図であり、図3(A)は入力信号の波形を模式的に示す図、図3(B)は図3(A)に対応する2値化部2の出力を示す図である。
【0017】
2値化部2は、記憶部1に記憶された入力信号を2値化する(ステップS101)。具体的には、2値化部2は、所定の長さの2値化対象期間中の入力信号の電圧が上昇してしきい値TH1以上になったときにハイレベルと判定し、2値化対象期間中の入力信号の電圧が下降してしきい値TH2(TH2<TH1)以下になったときにローレベルと判定することにより、図3(B)のような2値化結果を出力する。この2値化結果は、記憶部3に格納される。なお、2値化対象期間とはヒステリシスコンパレータの動作周期のことであり、ヒステリシスコンパレータは2値化対象期間ごとに2値化処理を行う。
【0018】
続いて、制御部6は、2値化部2のしきい値TH1,TH2を変更する(ステップS102)。このとき、しきい値TH1とTH2との差であるヒステリシス幅W=TH1−TH2を変更せずに、しきい値TH1,TH2と、しきい値TH1,TH2の中心値TBとを変更する(TH1−TB=TB−TH2=W/2)。そして、ステップS101に戻る。こうして、あらかじめ設定された複数の中心値TBの各々について、2値化対象期間中の入力信号の2値化を行う。
【0019】
次に、ランレングス測定部4は、あらかじめ設定された全ての中心値TBについて2値化処理が終了した後に、2値化対象期間中の2値化信号のランレングスを測定する(ステップS104)。ランレングス測定部4は、2値化部2によって2値化され記憶部3に格納された2値化信号の立ち上がりから次の立ち下がりまでの時間tudを測定し、また2値化信号の立ち下がりから次の立ち上がりまでの時間tduを測定することにより、2値化信号のランレングスを測定する(図3(B))。このように、2値化信号のランレングスとは、時間tud,tduのことである。ランレングス測定部4は、以上のようなランレングスの測定を、2値化処理時のしきい値TH1,TH2が同じ2値化信号の信号列ごとに行う。
【0020】
なお、ランレングス測定部4は、サンプリングクロックの周期を1単位として2値化信号のランレングスを測定する。例えば2値化信号のランレングスがサンプリングクロック4個分であれば、このランレングスの大きさは4[samplings]である。サンプリングクロックの周波数は、入力信号の取り得る最高周波数に対して十分に高いものとする。記憶部3は、ランレングス測定部4の測定結果を記憶する。
【0021】
特徴値算出部5は、記憶部3に記憶されているランレングス測定部4の測定結果から、2値化対象期間中のランレングスの特徴値T0を算出する(ステップS105)。ランレングスの特徴値T0としては、平均値、最頻値、中央値がある。また、階級値と度数との積が最大となる階級値をランレングスの特徴値T0としてもよい。特徴値算出部5は、このような算出処理を、2値化信号の立ち上がりから次の立ち下がりまでの第1のランレングスtudと、2値化信号の立ち下がりから次の立ち上がりまでの第2のランレングスtduの各々について、2値化処理時のしきい値TH1,TH2が同じ2値化信号の信号列ごとに行う。特徴値算出部5が算出した特徴値T0は、記憶部3に格納される。
【0022】
制御部6は、第1のランレングスtudの特徴値T0Hと第2のランレングスtduの特徴値T0Lとが最も近くなるしきい値TH1,TH2による2値化信号を、最適なしきい値TH1,TH2による2値化結果として記憶部3から出力させる(ステップS106)。
ヒステリシスコンパレータは、以上のようなステップS100〜S106の処理を2値化対象期間ごとに行う。
【0023】
以上のように、本実施の形態では、第1のランレングスtudの特徴値T0Hと第2のランレングスtduの特徴値T0Lとが最も近くなるしきい値TH1,TH2による2値化信号を、最適なしきい値TH1,TH2による2値化結果として出力することにより、入力信号のひずみが予め想定もしくは調整できない場合であっても適切な出力信号を得ることができる。
【0024】
[第2の実施の形態]
次に、第2の実施の形態について説明する。図4は本発明の第2の実施の形態に係るヒステリシスコンパレータの構成を示すブロック図である。
本実施の形態のヒステリシスコンパレータは、2値化部10と、記憶部11と、ランレングス測定部12と、特徴値算出部13と、制御部14とから構成される。
【0025】
図5は本実施の形態のヒステリシスコンパレータの動作を示すフローチャートである。2値化部10は、入力信号を2値化する(ステップS200)。2値化部10の動作は第1の実施の形態の2値化部2と同様であるが、本実施の形態では2値化部10による2値化結果はそのまま後段の装置に出力される。また、2値化結果は、記憶部11に格納される。
【0026】
次に、ランレングス測定部12は、2値化対象期間中の2値化信号のランレングスを測定する(ステップS201)。ランレングス測定部12は、2値化部10によって2値化され記憶部11に格納された2値化信号の立ち上がりから次の立ち下がりまでの時間tudを測定し、また2値化信号の立ち下がりから次の立ち上がりまでの時間tduを測定することにより、2値化信号のランレングスを測定する。記憶部11は、ランレングス測定部12の測定結果を記憶する。
【0027】
特徴値算出部13は、記憶部11に記憶されているランレングス測定部12の測定結果から、2値化対象期間中のランレングスの特徴値T0を算出する(ステップS202)。特徴値算出部13は、このような算出処理を、2値化信号の立ち上がりから次の立ち下がりまでの第1のランレングスtudと、2値化信号の立ち下がりから次の立ち上がりまでの第2のランレングスtduの各々について行う。特徴値算出部13が算出した特徴値T0は、記憶部11に格納される。
【0028】
制御部14は、第1のランレングスtudの特徴値T0Hと第2のランレングスtduの特徴値T0Lとを比較し(ステップS203)、特徴値T0Hが特徴値T0Lより大きい場合(ステップS203においてYES)、次の2値化対象期間で2値化部10が用いるしきい値TH1,TH2の中心値TBを一定幅だけ大きくし(ステップS204)、特徴値T0Hが特徴値T0Lより小さい場合(ステップS205においてYES)、次の2値化対象期間で2値化部10が用いるしきい値TH1,TH2の中心値TBを一定幅だけ小さくし(ステップS206)、特徴値T0Hと特徴値T0Lが等しい場合、現在の中心値TBを維持する。ステップS204,S206におけるしきい値TH1,TH2の変更は、第1の実施の形態のステップS102と同様に、ヒステリシス幅Wを変更せずに、しきい値TH1,TH2と中心値TBのみ変更する。
【0029】
ヒステリシスコンパレータは、以上のようなステップS200〜S206の処理を2値化対象期間ごとに行う。したがって、本実施の形態では、第1のランレングスtudの特徴値T0Hと第2のランレングスtduの特徴値T0Lとが等しくなるように、しきい値TH1,TH2の中心値TBを変えることになる。以上のようにして、本実施の形態では、第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0030】
[第3の実施の形態]
次に、本発明の第3の実施の形態について説明する。図6は本発明の第3の実施の形態に係るヒステリシスコンパレータの構成を示すブロック図である。
本実施の形態のヒステリシスコンパレータは、2値化部20a,20b,20cと、記憶部21と、ランレングス測定部22と、特徴値算出部23と、制御部24とから構成される。
【0031】
図7は本実施の形態のヒステリシスコンパレータの動作を示すフローチャートである。2値化部20a,20b,20cは、それぞれ入力信号を2値化する(ステップS300)。2値化部20a,20b,20cの動作は第1の実施の形態の2値化部2と同様であるが、本実施の形態では2値化部20aによる2値化結果はそのまま後段の装置に出力される。
【0032】
また、2値化部20bが2値化処理の際に用いるしきい値TH1b,TH2b(TH1b>TH2b,TH1b>TH1,TH2b>TH2)の中心値TBbは、2値化部20aが2値化処理の際に用いるしきい値TH1,TH2の中心値TBよりも常に大きく(TBb>TB)、2値化部20cが2値化処理の際に用いるしきい値TH1c,TH2c(TH1c>TH2c,TH1c<TH1,TH2c<TH2)の中心値TBcは中心値TBよりも常に小さくなるように(TBc<TB)、制御部24によって制御される。ここで、TBb−TB=TB−TBcである。また、2値化部20aが2値化処理の際に用いるヒステリシス幅W=TH1−TH2と、2値化部20bが2値化処理の際に用いるヒステリシス幅Wb=TH1b−TH2bと、2値化部20cが2値化処理の際に用いるヒステリシス幅Wc=TH1c−TH2cとは等しい(W=Wb=Wc)。2値化部20a,20b,20cによる2値化結果は、記憶部21に格納される。
【0033】
次に、ランレングス測定部22は、2値化対象期間中の2値化信号のランレングスを測定する(ステップS301)。ランレングス測定部22は、2値化部20a,20b,20cによって2値化され記憶部21に格納された2値化信号の立ち上がりから次の立ち下がりまでの時間tudを測定し、また2値化信号の立ち下がりから次の立ち上がりまでの時間tduを測定することにより、2値化信号のランレングスを測定する。ランレングス測定部22は、以上のようなランレングスの測定を、2値化処理時のしきい値が同じ2値化信号の信号列ごとに(すなわち、出力元の2値化部が同じ2値化信号の信号列ごとに)行う。記憶部21は、ランレングス測定部22の測定結果を記憶する。
【0034】
特徴値算出部23は、記憶部21に記憶されているランレングス測定部22の測定結果から、2値化対象期間中のランレングスの特徴値T0を算出する(ステップS302)。特徴値算出部23は、このような算出処理を、2値化信号の立ち上がりから次の立ち下がりまでの第1のランレングスtudと、2値化信号の立ち下がりから次の立ち上がりまでの第2のランレングスtduの各々について、2値化処理時のしきい値が同じ2値化信号の信号列ごとに行う。
【0035】
制御部24は、しきい値TH1,TH2における第1のランレングスtudの特徴値T0Hとしきい値TH1,TH2における第2のランレングスtduの特徴値T0Lとの大小関係と、しきい値TH1b,TH2bにおける第1のランレングスtudの特徴値T0Hbとしきい値TH1b,TH2bにおける第2のランレングスtduの特徴値T0Lbとの大小関係と、しきい値TH1c,TH2cにおける第1のランレングスtudの特徴値T0Hcとしきい値TH1c,TH2cにおける第2のランレングスtduの特徴値T0Lcとの大小関係とに基づいて、次の2値化対象期間で2値化部20a,20b,20cが用いるしきい値TH1,TH2,TH1b,TH2b,TH1c,TH2cを決定する。
【0036】
制御部24は、特徴値T0HとT0Lの組と、特徴値T0HbとT0Lbの組と、特徴値T0HcとT0Lcの組のうち、特徴値T0HbとT0Lbが最も近い場合、すなわちT0HとT0Lの差の絶対値と、T0HbとT0Lbの差の絶対値と、T0HcとT0Lcの差の絶対値のうち、T0HbとT0Lbの差の絶対値が最も小さい場合(ステップS303においてYES)、次の2値化対象期間で2値化部20a,20b,20cが用いるしきい値の中心値TB,TBb,TBcをそれぞれ一定値だけ大きくする(ステップS304)。また、制御部24は、特徴値T0HcとT0Lcが最も近い場合、すなわちT0HとT0Lの差の絶対値と、T0HbとT0Lbの差の絶対値と、T0HcとT0Lcの差の絶対値のうち、T0HcとT0Lcの差の絶対値が最も小さい場合(ステップS305においてYES)、次の2値化対象期間で2値化部20a,20b,20cが用いるしきい値の中心値TB,TBb,TBcをそれぞれ一定値だけ小さくする(ステップS306)。また、制御部24は、特徴値T0HとT0Lが最も近い場合、すなわちT0HとT0Lの差の絶対値と、T0HbとT0Lbの差の絶対値と、T0HcとT0Lcの差の絶対値のうち、T0HとT0Lの差の絶対値が最も小さい場合、現在のしきい値の中心値TB,TBb,TBcを維持する。
【0037】
ステップS304,S306におけるしきい値TH1,TH2,TH1b,TH2b,TH1c,TH2cの変更は、第1の実施の形態のステップS102と同様に、ヒステリシス幅W,Wb,Wcを変更せずに、しきい値TH1,TH2,TH1b,TH2b,TH1c,TH2cと中心値TB,TBb,TBcのみ変更する。ステップS304においては、例えば変更後の中心値TBが変更前の中心値TBbと等しくなるように変更すればよく、ステップS306においては、例えば変更後の中心値TBが変更前の中心値TBcと等しくなるように変更すればよい。
【0038】
ヒステリシスコンパレータは、以上のようなステップS300〜S306の処理を2値化対象期間ごとに行う。したがって、本実施の形態では、特徴値T0HとT0Lが等しくなるように、しきい値TH1,TH2,TH1b,TH2b,TH1c,TH2cと中心値TB,TBb,TBcを変えることになる。以上のようにして、本実施の形態では、第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0039】
第1〜第3の実施の形態のヒステリシスコンパレータは、例えばCPU、記憶装置およびインタフェースを備えたコンピュータとこれらのハードウェア資源を制御するプログラムによって実現することができる。CPUは、記憶装置に格納されたプログラムに従って第1〜第3の実施の形態で説明した処理を実行する。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明は、入力信号を2つの異なる電圧レベルのしきい値に基づいて2値化する技術に適用することができる。
【符号の説明】
【0041】
1,3,11,21…記憶部、2,10,20a,20b,20c…2値化部、4,12,22…ランレングス測定部、5,13,23…特徴値算出部、6,14,24…制御部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力信号を2つの異なる電圧レベルのしきい値TH1,TH2(TH1>TH2)に基づいて2値化することを、しきい値TH1,TH2の中心値を変更しながら行う2値化手段と、
2値化対象期間中に前記2値化手段から出力される2値化信号のランレングスを、2値化処理時のしきい値が同じ2値化信号の信号列ごとに測定するランレングス測定手段と、
このランレングス測定手段の2値化対象期間中の測定結果からランレングスの分布の特徴値を、2値化処理時のしきい値が同じ2値化信号の信号列ごとに算出する特徴値算出手段と、
2値化信号の立ち上がりから次の立ち下がりまでの第1のランレングスの特徴値T0Hと2値化信号の立ち下がりから次の立ち上がりまでの第2のランレングスの特徴値T0Lとが最も近くなるしきい値TH1,TH2による2値化信号を、2値化対象期間中の最適なしきい値TH1,TH2による2値化結果として出力する制御手段とを備えることを特徴とするヒステリシスコンパレータ。
【請求項2】
入力信号を2つの異なる電圧レベルのしきい値TH1,TH2に基づいて2値化する2値化手段と、
2値化対象期間中に前記2値化手段から出力される2値化信号のランレングスを測定するランレングス測定手段と、
このランレングス測定手段の2値化対象期間中の測定結果からランレングスの分布の特徴値を算出する特徴値算出手段と、
2値化信号の立ち上がりから次の立ち下がりまでの第1のランレングスの特徴値T0Hと2値化信号の立ち下がりから次の立ち上がりまでの第2のランレングスの特徴値T0Lとが等しくなるように、次の2値化対象期間で前記2値化手段が用いるしきい値TH1,TH2の中心値を変更する制御手段とを備えることを特徴とするヒステリシスコンパレータ。
【請求項3】
請求項2記載のヒステリシスコンパレータにおいて、
前記制御手段は、前記特徴値T0Hが前記特徴値T0Lより大きい場合、次の2値化対象期間で前記2値化手段が用いるしきい値TH1,TH2の中心値を一定幅だけ大きくし、前記特徴値T0Hが前記特徴値T0Lより小さい場合、次の2値化対象期間で前記2値化手段が用いるしきい値TH1,TH2の中心値を一定幅だけ小さくし、前記特徴値T0Hと前記特徴値T0Lが等しい場合、現在のしきい値TH1,TH2の中心値を維持することを特徴とするヒステリシスコンパレータ。
【請求項4】
入力信号を2つの異なる電圧レベルのしきい値TH1,TH2(TH1>TH2)に基づいて2値化する第1の2値化手段と、
入力信号をしきい値TH1,TH2と異なる電圧レベルのしきい値TH1b,TH2b(TH1b>TH2b,TH1b>TH1,TH2b>TH2)に基づいて2値化する第2の2値化手段と、
入力信号をしきい値TH1,TH2,TH1b,TH2bと異なる電圧レベルのしきい値TH1c,TH2c(TH1c>TH2c,TH1c<TH1,TH2c<TH2)に基づいて2値化する第3の2値化手段と、
2値化対象期間中に前記第1、第2、第3の2値化手段から出力される2値化信号のランレングスを、2値化処理時のしきい値が同じ2値化信号の信号列ごとに測定するランレングス測定手段と、
このランレングス測定手段の2値化対象期間中の測定結果からランレングスの分布の特徴値を、2値化処理時のしきい値が同じ2値化信号の信号列ごとに算出する特徴値算出手段と、
しきい値TH1,TH2における2値化信号の立ち上がりから次の立ち下がりまでの第1のランレングスの特徴値T0Hと2値化信号の立ち下がりから次の立ち上がりまでの第2のランレングスの特徴値T0Lとの大小関係と、しきい値TH1b,TH2bにおける第1のランレングスの特徴値T0Hbと第2のランレングスの特徴値T0Lbとの大小関係と、しきい値TH1c,TH2cにおける第1のランレングスの特徴値T0Hcと第2のランレングスの特徴値T0Lcとの大小関係とに基づいて、次の2値化対象期間で前記第1、第2、第3の2値化手段が用いるしきい値TH1,TH2,TH1b,TH2b,TH1c,TH2cを決定する制御手段とを備えることを特徴とするヒステリシスコンパレータ。
【請求項5】
請求項4記載のヒステリシスコンパレータにおいて、
前記制御手段は、前記特徴値T0Hbと前記特徴値T0Lbが最も近い場合、次の2値化対象期間で前記第1、第2、第3の2値化手段が用いるしきい値TH1,TH2の中心値TBとしきい値TH1b,TH2bの中心値TBbとしきい値TH1c,TH2cの中心値TBcとをそれぞれ一定値だけ大きくし、前記特徴値T0Hcと前記特徴値T0Lcが最も近い場合、次の2値化対象期間で前記第1、第2、第3の2値化手段が用いるしきい値TH1,TH2の中心値TBとしきい値TH1b,TH2bの中心値TBbとしきい値TH1c,TH2cの中心値TBcとをそれぞれ一定値だけ小さくし、前記特徴値T0Hと前記特徴値T0Lが最も近い場合、現在の中心値TB,TBb,TBcを維持することを特徴とするヒステリシスコンパレータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−227813(P2012−227813A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−95013(P2011−95013)
【出願日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【出願人】(000006666)アズビル株式会社 (1,808)
【Fターム(参考)】