説明

ヒストンデアセチラーゼ阻害剤

本発明は、ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)の阻害剤であり、および細胞増殖性疾患、例えば、癌、自己免疫、アレルギー性および炎症性疾患、中枢神経系(CNS)の疾患、例えば、神経変性疾患の予防および/または治療並びに再狭窄の予防および/または治療において有用である、カルバメート結合を有するヒドロキサム酸誘導体に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)の阻害剤であり、および細胞増殖性疾患、例えば、癌、自己免疫、アレルギー性および炎症性疾患、中枢神経系(CNS)の疾患、例えば、神経変性疾患の予防および/または治療並びに再狭窄の予防および/または治療において有用である、カルバメート結合を有するヒドロキサム酸誘導体に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒドロキサム酸部分を有する化合物は有用な生物学的活性を有することが示されている。例えば、ヒドロキサム酸部分を有する多くのペプチジル化合物は、亜鉛エンドペプチダーゼの一族であるマトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)を阻害することが知られている。このMMPは生理学的および病理学的組織劣化において鍵となる役割を果たす。したがって、MMPの作用を阻害する能力を有するペプチジル化合物は組織の破壊および炎症に関わる状態の治療または予防に対する有用性を示す。さらに、ヒドロキサム酸部分を有する化合物は、少なくとも部分的にはヒドロキサム酸基の亜鉛結合特性に基づいて、ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)を阻害することが示されている。
【0003】
HDACの阻害は、腫瘍抑制に関連する遺伝子の発現を含めて、遺伝子の発現を抑制することができる。ヒストンデアセチラーゼの阻害は腫瘍抑制遺伝子のヒストンデアセチラーゼ介在転写抑制につながり得る。例えば、ヒストンデアセチラーゼの阻害は癌、血液学的障害、例えば、造血および遺伝子関連代謝障害の治療方法をもたらし得る。より具体的には、転写の調節は細胞分化、増殖、およびアポトーシスにおける主要現象である。ヒストンアセチル化および脱アセチル化が細胞において転写調節を達成する機構である幾つかの証拠が存在する(Grunstein,M.,Nature,389:349−52(1997))。これらの効果は、ヌクレオソーム内のコイル状DNAに対するヒストンタンパク質の親和性が変化することによるクロマチン表面の変化によって生じるものと考えられる。同定されているヒストンには5つの型がある。ヒストンH2A、H2B、H3およびH4はヌクレオソームにおいて見出され、H1はヌクレオソーム間に位置するリンカーである。各々のヌクレオソームは、ヌクレオソーム構造の外側部分に単独で存在するH1を除いて、この核内に各ヒストン型のうちの2つを含む。ヒストンタンパク質が低アセチル化されるとき、DNAホスフェート主鎖に対するヒストンの親和性は高まるものと信じられる。この親和性はDNAをヒストンに強固に結合させ、DNAを転写調節要素および機構に接近不能とする。
【0004】
アセチル化状態の調節は2つの酵素複合体、ヒストンアセチルトランスフェラーゼ(HAT)およびヒストンデアセチラーゼ(HDAC)の間の活性の均衡によって生じる。
【0005】
低アセチル化状態は関連DNAの転写を阻害するものと考えられる。この低アセチル化状態はHDAC酵素を含む巨大多タンパク質複合体によって触媒される。特に、HDACはクロマチン核ヒストンからのアセチル基の除去を触媒することが示されている。
【0006】
幾つかの場合において、悪性表現型の発現にHATまたはHDAC活性の破壊が関与することが示されている。例えば、急性前骨髄球性白血病においては、PMLおよびRARアルファの融合によって生じる腫瘍性タンパク質が、HDACの漸増により、特定の遺伝子転写を抑制するものと思われる(Lin,R.J.ら、Nature 391:811−14(1998))。このようにして、新生細胞は完全に分化することができず、白血病性細胞株の過剰増殖につながる。
【0007】
米国特許第5,369,108号、第5,932,616号、第5,700,811号、第6,087,367号および第6,511,990号(これらの内容は参照によりここに組み込まれる)は、新生細胞の終末分化、細胞成長休止またはアポトーシスを選択的に誘導するのに有用なヒドロキサム酸誘導体を開示する。抗腫瘍剤としてのこれらの生物学的活性に加えて、これらのヒドロキサム酸誘導体は、近年、様々なチオレドキシン(TRX)介在疾患および状態、例えば、炎症性疾患、アレルギー性疾患、自己免疫疾患、酸化性ストレスに関連する疾患または細胞の過剰増殖を特徴とする疾患の治療または予防に有用であるものとして同定されている(2003年2月15日出願の米国出願第10/369,094号、この全内容は参照によりここに組み込まれる)。さらに、これらのヒドロキサム酸誘導体は中枢神経系(CNS)の疾患、例えば、神経変性疾患の治療および脳腫瘍の治療に有用なものとして同定されている(2002年10月16日出願の米国出願第10/273,401号を参照、この全内容は参照によりここに組み込まれる)。
【0008】
上で参照される米国特許において開示されるヒドロキサム酸含有化合物スベロイラニリドヒドロキサム酸(SAHA)によるHDACの阻害は、X線結晶学研究によって示されるように、酵素の触媒部位との直接相互作用によって生じるものと考えられる(Finnin,M.S.ら、Nature 407:188−193(1999))。このHDAC阻害の結果はゲノムに対する一般化された効果はなく、むしろゲノムの小サブセットのみに影響を及ぼすものと信じられる(Van Lint,C.ら、Gene Expression 5:245−53(1996))。HDAC阻害剤と共に培養した悪性細胞株を用いるDNAマクロアレイによってもたらされる証拠は、産生物が変化を受ける遺伝子の数が限定される(1−2%)ことを示す。例えば、培養においてHDAC阻害剤で処理された細胞はサイクリン依存性キナーゼ阻害剤p21の一貫した誘導を示す(Archer,S.Shufen,M.Shei,A.,Hodin,R.PNAS 95:6791−96(1998))。このタンパク質は細胞周期休止において重要な役割を果たす。HDAC阻害剤は、p21遺伝子の領域におけるヒストンの過剰アセチル化状態を増加させ、これによりこの遺伝子を転写機構に接近可能とすることによってp21の転写速度を高めるものと考えられる。発現がHDAC阻害剤による影響を受けない遺伝子は局地的に会合するヒストンのアセチル化の変化を示さない(Dressel,U.ら、Anticancer Research 20(2A):1017−22(2000))。
【0009】
さらに、ヒドロキサム酸誘導体、例えば、SAHAは、腫瘍細胞の成長休止、分化および/またはアポトーシスを誘導する能力を有する(Richonら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,93:5705−5708(1996))。これらの化合物は、動物における腫瘍成長の阻害に有効な用量で毒性を有するものとは思えないため、新生細胞の悪性になる能力に固有の機構を標的とする(Cohen,L.A.ら、Anticancer Research 79:4999−5006(1999))。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ヒドロキサム酸部分を含む化合物に対する様々な用途の観点から、改善された特性、例えば、高められた効力または高められたバイオアベイラビリティを有する新規ヒドロキサム酸誘導体が非常に望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)の阻害剤であり、および細胞増殖性疾患、例えば、癌、自己免疫、アレルギー性および炎症性疾患、中枢神経系(CNS)の疾患、例えば、神経変性疾患の予防および/または治療並びに再狭窄の予防および/または治療において有用である、カルバメート結合を有するヒドロキサム酸誘導体に関する。
【0012】
第1の実施形態において、本発明の化合物は式Iによって示すことができる:
【0013】
【化5】

【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の化合物はHDAC阻害剤として有用であり、および式Iの化合物:
【0015】
【化6】

(式中、
およびRは、互いに独立して、非置換であるかまたは置換され、およびC−C10アルキル、C−C10アルケニル、シクロアルキル、アリール、ヘテロシクリル、ヘテロアリール、C−C10アルキル−C−C10アルケニル、C−C10アルキルシクロアルキル、C−C10アルキルアリール、C−C10アルキルヘテロシクリルおよびC−C10アルキルヘテロアリールから選択され;
およびRは、独立して、水素またはC−C10アルキルであり;並びに
nは4、5、6または7であり;
がフェニルまたは8−キノリニルであるとき、Rはベンジルであり得ない。)
またはこれらの立体異性体、鏡像異性体、ラセミ体、医薬的に許容される塩、溶媒和物、水和物または多形によって示される。
【0016】
別の実施形態において、本発明は下記式の化合物:
【0017】
【化7】

(式中、
は非置換であるかまたは置換され、およびC−C10アルキル、C−C10アルケニル、シクロアルキル、アリール、ヘテロシクリル、ヘテロアリール、C−C10アルキル−C−C10アルケニル、C−C10アルキルシクロアルキル、C−C10アルキルアリール、C−C10アルキルヘテロシクリルおよびC−C10アルキルヘテロアリールから選択され;
は非置換であるかまたは置換され、およびC−C10アルキル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、ヘテロアリール、C−C10アルキルシクロアルキル、C−C10アルキルヘテロシクリルおよびC−C10アルキルヘテロアリールから選択され;
およびRは、独立して、水素またはC−C10アルキルであり;並びに
nは4、5、6、または7である。)
またはこれらの立体異性体、鏡像異性体、ラセミ体、医薬的に許容される塩、溶媒和物、水和物または多形を提供する。
【0018】
一実施形態において、Rは非置換であるかまたは置換され、およびC−C10アルキル、C−C10アルキルヘテロシクリルおよびC−C10アルキルヘテロアリールから選択される。一実施形態において、Rは非置換であるかまたは置換され、およびC−C10アルキル、ヘテロシクリル、ヘテロアリール、C−C10アルキルシクロアルキル、C−C10アルキルヘテロシクリルおよびC−C10アルキルヘテロアリールから選択される。一実施形態において、Rは非置換または置換C−C10アルキルである。本発明の別の実施形態においては、RはC−CアルキルヘテロシクリルまたはC−Cアルキルヘテロアリールである。一実施形態において、ヘテロアリール基は1または2個のヘテロ原子を有する5から6員環である。一実施形態において、複素環基は1または2個のヘテロ原子を有する5から6員環である。一実施形態において、シクロアルキル基は5から6員環である。該複素環、ヘテロアリール、アルキルまたはシクロアルキル基は、場合により、1、2または3つの上記置換基Rsubで置換されていてもよい。本発明のさらに別の実施形態においては、式Iの化合物におけるRは非置換であるかまたは置換され、およびtert−ブチル、(C−C)アルキルピリジル、(C−C)アルキルピロリジニルおよび(C−C)アルキルモルホリニルから選択される。
【0019】
別の実施形態において、式Iの化合物におけるRはフェニルである。別の実施形態においては、式Iの化合物におけるRがフェニルである。該フェニル置換基(1つ以上)は、場合により、1、2または3つの上記置換基Rsubで置換されていてもよい。
【0020】
別の実施形態において、式Iの化合物におけるRはチアゾリルである。別の実施形態においては、式Iの化合物におけるRがチアゾリルである。該チアゾリル置換基(1つ以上)は、場合により、1、2または3つの上記置換基Rsubで置換されていてもよい。
【0021】
別の実施形態において、式Iの化合物におけるRはtert−ブチルである。別の実施形態においては、式Iの化合物におけるRがtert−ブチルである。該tert−ブチル置換基(1つ以上)は、場合により、1、2または3つの上記置換基Rsubで置換されていてもよい。
【0022】
したがって、別の実施形態において、本発明は以下の構造式によって表される化合物:
【0023】
【化8】

(式中、
はチアゾリルまたはtert−ブチルであり;
は非置換であるかまたは置換され、およびC−C10アルキル、C−C10アルケニル、シクロアルキル、アリール、ヘテロシクリル、ヘテロアリール、C−C10アルキル−C−C10アルケニル、C−C10アルキルシクロアルキル、C−C10アルキルアリール、C−C10アルキルヘテロシクリルおよびC−C10アルキルヘテロアリールから選択され;
およびRは、独立して、水素またはC−C10アルキルであり;並びに
nは4、5、6または7である。)
またはこれらの立体異性体、医薬的に許容される塩を提供する。
【0024】
別の実施形態において、本発明は以下の構造式によって表される化合物:
【0025】
【化9】

(式中、
は非置換であるかまたは置換され、およびC−C10アルキル、C−C10アルケニル、シクロアルキル、アリール、ヘテロシクリル、ヘテロアリール、C−C10アルキル−C−C10アルケニル、C−C10アルキルシクロアルキル、C−C10アルキルアリール、C−C10アルキルヘテロシクリルおよびC−C10アルキルヘテロアリールから選択され;
はtert−ブチル、フェニルまたはチアゾリルであり;
およびRは、独立して、水素またはC−C10アルキルであり;並びに
nは4、5、6または7である。)
またはこれらの立体異性体、医薬的に許容される塩を提供する。
【0026】
本発明の別の実施形態において、これらの化合物は式IAの化合物:
【0027】
【化10】

(式中、R、R、RおよびRは式Iの化合物について上で定義される通りであり、およびnは5または6である。)
またはこれらの立体異性体、鏡像異性体、ラセミ体、医薬的に許容される塩、溶媒和物、水和物または多形によって説明される。
【0028】
本発明の一実施形態において、式Iの化合物におけるRおよび/またはRは非置換である。別の実施形態においては、式Iの化合物におけるRおよび/またはRはRsubから独立して選択される1、2または3つの置換基で置換され、ここでRsubはC−C10アルキル、C−C10ハロアルキル、C−C10アルケニル、シクロアルキル、アリール(例えば、フェニル)、ヘテロシクリル、ヘテロアリール、C−C10アルキル−C−C10アルケニル、C−C10アルキルシクロアルキル、C−C10アルキルアリール、C−C10アルキルヘテロシクリル、C−C10アルキルヘテロアリール、ハロゲン、ヒドロキシ、C−C10アルキルオキシ、C−C10ハロアルキルオキシ、アリールオキシ、ニトロ、オキソ、−CN、−C(=O)H、−C(=O)OH、アミノ、N−C−C10アルキルアミノ、N,N−ジC−C10アルキルアミノ、N−アリールアミノ、N,N−ジアリールアミノ、N−C−C10アルキル−N−アリールアミノ、アジド、およびC(=O)OR(ここで、RはアリールまたはC−C10アルキルである)から選択される置換基である。別の実施形態において、式Iの化合物におけるRsubはC−Cアルキル、C−Cハロアルキル、C−Cハロアルキルオキシ、C−Cアルキルオキシ、アリール(例えば、フェニル)、ハロゲンおよびニトロから独立して選択される。このような置換基の具体的で非限定的な例には、Cl、Br、CF、OCH、Ph、NO、OPh、CH、CH(CH、C(CHおよびOCFから選択される1、2または3つの置換基が含まれる。
【0029】
本発明の別の実施形態において、これらの化合物は式IIの化合物:
【0030】
【化11】

(式中、
subはC−Cアルキル、C−Cハロアルキル、C−Cハロアルキルオキシ、C−Cアルキルオキシ、アリール、ハロゲンおよびニトロから独立して選択され;
nは5または6であり;並びに
mは0、1、2または3から選択され;
すべての他の置換基または変数は式Iの下で定義される通りである。)
またはこれらの立体異性体、鏡像異性体、ラセミ体、医薬的に許容される塩、溶媒和物、水和物または多形によって説明される。
【0031】
本発明の別の実施形態において、これらの化合物は式IIAの化合物:
【0032】
【化12】

(式中、R、RおよびR並びにnは式IIの化合物について上で定義される通りである。)
またはこれらの立体異性体、鏡像異性体、ラセミ体、医薬的に許容される塩、溶媒和物、水和物または多形によって説明される。
【0033】
本発明の一実施形態において、式IIの化合物におけるフェニルおよび/またはRは非置換である。別の実施形態においては、式IIの化合物におけるフェニルおよび/またはRは、C−C10アルキル、C−C10ハロアルキル、C−C10アルケニル、シクロアルキル、アリール(例えば、フェニル)、ヘテロシクリル、ヘテロアリール、C−C10アルキル−C−C10アルケニル、C−C10アルキルシクロアルキル、C−C10アルキルアリール、C−C10アルキルヘテロシクリル、C−C10アルキルヘテロアリール、ハロゲン、ヒドロキシ、C−C10アルキルオキシ、C−Ci0ハロアルキルオキシ、アリールオキシ、ニトロ、オキソ、−CN、−C(=O)H、−C(=O)OH、アミノ、N−C−C10アルキルアミノ、N,N−ジC−C10アルキルアミノ、N−アリールアミノ、N,N−ジアリールアミノ、N−C−C10アルキル−N−アリールアミノ、アジド、およびC(=O)OR(ここで、RはアリールまたはC−C10アルキルである)から独立して選択される1、2または3つの置換基で置換される。別の実施形態において、式IIの化合物におけるRsubはC−Cアルキル、C−Cハロアルキル、C−Cハロアルキルオキシ、C−Cアルキルオキシ、アリール、ハロゲンおよびニトロから独立して選択される。このような置換基の具体的で非限定的な例には、Cl、Br、CF、OCH、Ph、NO、OPh、CH、CH(CH、C(CHおよびOCFから選択される1、2または3つの置換基が含まれる。
【0034】
本発明の別の実施形態において、式IIの化合物におけるRは非置換であるかまたは置換され、およびフェニル、フルオレニル、ナフチル、ビフェニル、−CHCHCHPh、シクロプロピル、シクロヘキシル、キノリニル、イソキノリニル、−CH−キノリニル、−CH−イソキノリニル、チアゾリル、CH(Ph)およびC−C10アルキルから選択される。本発明のさらに別の実施形態においては、式IIの化合物におけるRは非置換であるかまたは置換され、およびフェニル、tert−ブチル、(C−C)アルキルピリジル、(C−C)アルキルピロリジニルおよび(C−C)アルキルモルホリニルから選択される。
【0035】
本発明の別の実施形態のうちにあるものは以下の構造式によって表される化合物:
【0036】
【化13】

(式中、
およびRは、互いに独立して、非置換であるかまたは置換され、およびフェニル、フルオレニル、ビフェニル、−CHCHPh、−CHCHCHPh、シクロプロピル、シクロヘキシル、イソキノリニル、−CH−キノリニル、−CH−イソキノリニル、チアゾリル、CH(Ph)およびC−C10アルキルから選択され;
およびRは、独立して、水素またはC−C10アルキルであり;並びに
nは4、5、6、または7である。)
またはこれらの立体異性体、医薬的に許容される塩である。
【0037】
本発明のさらに別の実施形態のうちにあるものは、以下の構造式によって表される化合物:
【0038】
【化14】

(式中、
は置換ヘテロアリール基であって、該置換基はアリールであり;
は非置換であるかまたは置換され、およびC−C10アルキル、C−Ci0アルケニル、シクロアルキル、アリール、ヘテロシクリル、ヘテロアリール、C−C10アルキル−C−C10アルケニル、C−C10アルキルシクロアルキル、C−C10アルキルアリール、C−C10アルキルヘテロシクリルおよびC−C10アルキルヘテロアリールから選択され;
およびRは、独立して、水素またはC−C10アルキルであり;並びに
nは4、5、6、または7である。)
またはこれらの立体異性体、医薬的に許容される塩である。
【0039】
一実施形態において、Rのヘテロアリール基は1または2個のヘテロ原子を有する5から6員環である。一実施形態において、Rのアリール置換基は5から6員環である、一実施形態において、Rはフェニル−チアゾリルである。該アリールまたはヘテロアリール基は、場合により、1、2または3つの上記置換基Rsubで置換されていてもよい。
【0040】
別の実施形態において、式Iおよび/またはIIの化合物におけるRは水素である。別の実施形態において、式Iおよび/またはIIの化合物におけるRはメチルである。別の実施形態において、式IAおよび/またはIIAの化合物におけるRは水素である。別の実施形態において、式IAおよび/またはIIAの化合物におけるRはメチルである。
【0041】
別の実施形態において、式Iおよび/またはIIの化合物におけるRは水素である。別の実施形態において、式Iおよび/またはIIの化合物におけるRはメチルである。別の実施形態において、式IAおよび/またはIIAの化合物におけるRは水素である。別の実施形態において、式IAおよび/またはIIAの化合物におけるRはメチルである。
【0042】
別の実施形態において、本発明は式Iの化合物の鏡像異性体を含む。さらに別の実施形態において、本発明は式Iの化合物のラセミ体を含む。
【0043】
本発明の化合物の具体的な例には以下が含まれる:
(S)−[6−ヒドロキシカルバモイル−1−(4−フェニル−チアゾル−2−イルカルバモイル)−ヘキシル]−カルバミン酸ベンジルエステル;
(S)−[6−ヒドロキシカルバモイル−1−(4−フェニル−チアゾル−2−イルカルバモイル)−ヘキシル]−カルバミン酸tert−ブチルエステル;および
(S)−(6−ヒドロキシカルバモイル−1−フェニルカルバモイル−ヘキシル)−カルバミン酸tert−ブチルエステル;
(6−ヒドロキシカルバモイル−1−フェニルカルバモイル−ヘキシル)−カルバミン酸2−モルホリン−4−イル−エチルエステル;
(6−ヒドロキシカルバモイル−1−フェニルカルバモイル−ヘキシル)−カルバミン酸2−ピリジン−2−イル−エチルエステル;
(6−ヒドロキシカルバモイル−1−フェニルカルバモイル−ヘキシル)−カルバミン酸3−クロロ−ベンジルエステル;
(6−ヒドロキシカルバモイル−1−フェニルカルバモイル−ヘキシル)−カルバミン酸2−ピロリジン−1−イル−エチルエステル;
またはこれらの立体異性体、鏡像異性体、ラセミ体、医薬的に許容される塩、溶媒和物、水和物または多形。
【0044】
あらゆる変数(例えば、R、R、R、など)があらゆる構成要素において2回以上現れるとき、各々の出現時のこの定義は他のすべての出現とは無関係である。さらに、置換基および変数の組み合わせはこのような組み合わせが安定な化合物を生じる場合にのみ許容される。置換基から環系内に引かれる線は、指示される結合が置換可能な環原子のいずれにも結合できることを表す。環系が多環式である場合、この結合は近接環上の適切な炭素原子のいずれかのみに結合することが意図される。
【0045】
本発明の化合物上の置換基および置換パターンは、化学的に安定であり、および、以下に記載される方法の他に、当該技術分野において公知の技術によって容易に入手可能な出発物質から容易に合成できる化合物をもたらすように当業者が選択できることは理解される。置換基それ自体が2つ以上の基で置換されている場合、これらの複数の基は、安定な構造が生じる限り、同じ炭素上にあっても異なる炭素上にあってもよいことは理解される。ここで相互に交換可能に用いられる「場合により置換される」または「1つまたはそれ以上の置換基で場合により置換される」または「非置換であるかまたは置換される」という言い回しは「少なくとも1つの置換基で場合により置換される」という言い回しと等価であると理解されるべきであり、このような場合、一実施形態においては、ゼロから3つの置換基を有する。一実施形態において、「場合により置換される」または「1つまたはそれ以上の置換基で場合により置換される」または「非置換であるかまたは置換される」という言い回しは「1、2または3つの置換基で場合により置換される」という言い回しを意味するものと理解されるべきである。
【0046】
ここで用いられる場合、「アルキル」は指定された数の炭素原子を有する分岐および直鎖飽和脂肪族炭化水素基を含もうとするものである。例えば、「C−C10アルキル」におけるようなC−C10は1、2、3、4、5、6、7、8、9または10個の炭素を直線または分岐配置で有する基を含むものと定義される。例えば、「C−C10アルキル」には、具体的には、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、t−ブチル、i−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル等が含まれる。「シクロアルキル」という用語は指定された数の炭素原子を有する単環式飽和脂肪族炭化水素基を意味する。例えば、「シクロアルキル」にはシクロプロピル、メチル−シクロプロピル、2,2−ジメチル−シクロブチル、2−エチル−シクロペンチル、シクロヘキシル等が含まれる。本発明の一実施形態において、「シクロアルキル」は直前に記載される基を含み、および単環式不飽和脂肪族炭化水素基をさらに含む。例えば、この実施形態において定義される「シクロアルキル」にはシクロプロピル、メチル−シクロプロピル、2,2−ジメチル−シクロブチル、2−エチル−シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロペンテニル、シクロブテニル等が含まれる。
【0047】
「アルキレン」という用語は指定された数の炭素原子を有する炭化水素ジラジカル基を意味する。例えば、「アルキレン」には−CH−、−CHCH−等が含まれる。
【0048】
「アルキルアルケニル」、「アルキルシクロアルキル」、「アルキルアリール」、「アルキルヘテロシクリル」または「アルキルヘテロアリール」は、それぞれ、アルケニル、シクロアルキル、アリール、ヘテロシクリルまたはヘテロアリール基に連結するアルキル基を意味する。例えば、「C−Cアルキルアリール」または「C−Cアルキルヘテロアリール」という言い回しにおいて、「C−C」という用語はこの部分のアルキル部分を指し、この部分のアリールまたはヘテロアリール部分における原子数を記述するものではない。
【0049】
炭素原子の数が指定されていない場合、「アルケニル」という用語は、2から10個の炭素原子および少なくとも1つの炭素−炭素二重結合を含む、直鎖、分岐鎖または環状の非芳香族炭化水素基を指す。好ましくは、1つの炭素−炭素二重結合が存在し、4つまでの非芳香族炭素−炭素二重結合が存在し得る。したがって、「C−Cアルケニル」は2から6この炭素原子を有するアルケニル基を意味する。アルケニル基にはエテニル、プロペニル、ブテニル、2−メチルブテニルおよびシクロヘキセニルが含まれる。アルケニル基の直鎖、分岐鎖または環状部分は二重結合を含むことができ、置換アルケニル基が指示される場合には置換されていてもよい。
【0050】
「アルキニル」という用語は、2から10個の炭素原子および少なくとも1つの炭素−炭素三重結合を含む、直鎖、分岐鎖または環状の炭化水素基を指す。3つまでの炭素−炭素三重結合が存在し得る。したがって、「C−Cアルキニル」は2から6個の炭素原子を有するアルキニル基を意味する。アルキニル基にはエチニル、プロピニル、ブチニル、3−メチルブチニル等が含まれる。アルキニル基の直鎖、分岐鎖または環状部分は三重結合を含むことができ、置換アルキニル基が指示される場合には置換されていてもよい。
【0051】
特定の場合には、置換基をゼロを含む炭素の範囲、例えば、(C−C)アルキレン−アリールで定義することができる。アリールがフェニルであると考えられる場合、(C−C)アルキレン−アリールには−CHPh、−CHCHPh、−CHCHCHPh、CH(CH)CHCH(CH)Ph等に加えてフェニルそれ自体が含まれる。
【0052】
ここで用いられる場合、「アリール」は各々の環内に7個までの原子を有するあらゆる安定な単環式または二環式炭素環であって、少なくとも1つの環が芳香族であるものを意味しようとするものである。このようなアリール要素の例には、フェニル、ナフチル、フルオレニル、テトラヒドロナフチル、インダニルおよびビフェニルが含まれる。アリール置換基が二環式であり、および一方の環が非芳香族である場合、結合は芳香族環を介するものであることが理解される。
【0053】
ヘテロアリールという用語は、ここで用いられる場合、各々の環内に7個までの原子を有する安定な単環式または二環式環であって、少なくとも1つの環が芳香族であり、およびO、NおよびSからなる群より選択される1から4個のヘテロ原子を含むものを表す。この定義の範囲内にあるヘテロアリール基には、これらに限定されるものではないが:アクリジニル、カルバゾリル、シンノリニル、キノキサリニル、ピラゾリル、インドリル、ベンゾトリアゾリル、フラニル、チエニル、ベンゾチエニル、ベンゾフラニル、キノリニル、イソキノリニル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、インドリル、ピラジニル、ピリダジニル、ピリジニル、ピリミジニル、ピロリル、テトラヒドロキノリンが含まれる。下記複素環の定義と同様に、「ヘテロアリール」もあらゆる窒素含有へテロアリールのN−酸化物誘導体を含むものと理解される。ヘテロアリール置換基が二環式であり、および一方の環が非芳香族であるか、またはヘテロ原子を含まない場合、結合は、それぞれ、芳香族環またはヘテロ原子含有環を介することが理解される。
【0054】
ここで用いられる「複素環」または「ヘテロシクリル」という用語は、O、NおよびSからなる群より選択される1から4個のヘテロ原子を含む3から10員芳香族または非芳香族複素環を意味し、および二環式環を含もうとするものである。したがって、「ヘテロシクリル」には上記へテロアリールに加えてこれらのジヒドロおよびテトラヒドロ類似体が含まれる。「ヘテロシクリル」のさらなる例には、これらに限定されるものではないが、以下が含まれる:アゼチジニル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾフラニル、ベンゾフラザニル、ベンゾピラゾリル、ベンゾトリアゾリル、ベンゾチオフェニル、ベンゾオキサゾリル、カルバゾリル、カルボリニル、シンノリニル、フラニル、イミダゾリル、インドリニル、インドリル、インドラジニル、インダゾリル、イソベンゾフラニル、イソインドリル、イソキノリル、イソチアゾリル、イソオキサゾリル、ナフトピリジニル、オキサジアゾリル、オキサゾリル、オキサゾリン、イソオキサゾリン、オキセタニル、ピラニル、ピラジニル、ピラゾリル、ピリダジニル、ピリドピリジニル、ピリダジニル、ピリジル、ピリミジル、ピロリル、キナゾリニル、キノリル、キノキサリニル、テトラヒドロピラニル、テトラヒドロチオピラニル、テトラヒドロイソキノリニル、テトラゾリル、テトラゾロピリジル、チアジアゾリル、チアゾリル、チエニル、トリアゾリル、アゼチジニル、1,4−ジオキサニル、ヘキサヒドロアゼピニル、ピペラジニル、ピペリジニル、ピリジン−2−オニル、ピロリジニル、モルホリニル、チオモルホリニル、ジヒドロベンゾイミダゾリル、ジヒドロベンゾフラニル、ジヒドロベンゾチオフェニル、ジヒドロベンゾオキサゾリル、ジヒドロフラニル、ジヒドロイミダゾリル、ジヒドロインドリル、ジヒドロイソオキサゾリル、ジヒドロイソチアゾリル、ジヒドロオキサジアゾリル、ジヒドロオキサゾリル、ジヒドロピラジニル、ジヒドロピラゾリル、ジヒドロピリジニル、ジヒドロピリミジニル、ジヒドロピロリル、ジヒドロキノリニル、ジヒドロテトラゾリル、ジヒドロチアジアゾリル、ジヒドロチアゾリル、ジヒドロチエニル、ジヒドロトリアゾリル、ジヒドロアゼチジニル、メチレンジオキシベンゾイル、テトラヒドロフラニル、およびテトラヒドロチエニル、並びにこれらのN−酸化物。ヘテロシクリル置換基の結合は炭素原子またはヘテロ原子を介して生じ得る。
【0055】
一実施形態において、ここで用いられる「複素環」または「ヘテロシクリル」という用語は、O、NおよびSからなる群より選択される1から4個のヘテロ原子を含む5から10員芳香族または非芳香族複素環を意味し、および二環式基を含もうとするものである。したがって、この実施形態における「ヘテロシクリル」には、上記へテロアリールに加えて、これらのジヒドロおよびテトラヒドロ類似体が含まれる。「ヘテロシクリル」のさらなる例には、これらに限定されるものではないが、以下が含まれる:ベンゾイミダゾリル、ベンゾフラニル、ベンゾフラザニル、ベンゾピラゾリル、ベンゾトリアゾリル、ベンゾチオフェニル、ベンゾオキサゾリル、カルバゾリル、カルボリニル、シンノリニル、フラニル、イミダゾリル、インドリニル、インドリル、インドラジニル、インダゾリル、イソベンゾフラニル、イソインドリル、イソキノリル、イソチアゾリル、イソオキサゾリル、ナフトピリジニル、オキサジアゾリル、オキサゾリル、オキサゾリン、イソオキサゾリン、オキセタニル、ピラニル、ピラジニル、ピラゾリル、ピリダジニル、ピリドピリジニル、ピリダジニル、ピリジル、ピリミジル、ピロリル、キナゾリニル、キノリル、キノキサリニル、テトラヒドロピラニル、テトラヒドロチオピラニル、テトラヒドロイソキノリニル、テトラゾリル、テトラゾロピリジル、チアジアゾリル、チアゾリル、チエニル、トリアゾリル、アゼチジニル、1,4−ジオキサニル、ヘキサヒドロアゼピニル、ピペラジニル、ピペリジニル、ピリジン−2−オニル、ピロリジニル、モルホリニル、チオモルホリニル、ジヒドロベンゾイミダゾリル、ジヒドロベンゾフラニル、ジヒドロベンゾチオフェニル、ジヒドロベンゾオキサゾリル、ジヒドロフラニル、ジヒドロイミダゾリル、ジヒドロインドリル、ジヒドロイソオキサゾリル、ジヒドロイソチアゾリル、ジヒドロオキサジアゾリル、ジヒドロオキサゾリル、ジヒドロピラジニル、ジヒドロピラゾリル、ジヒドロピリジニル、ジヒドロピリミジニル、ジヒドロピロリル、ジヒドロキノリニル、ジヒドロテトラゾリル、ジヒドロチアジアゾリル、ジヒドロチアゾリル、ジヒドロチエニル、ジヒドロトリアゾリル、ジヒドロアゼチジニル、メチレンジオキシベンゾイル、テトラヒドロフラニル、およびテトラヒドロチエニル、並びにこれらのN−酸化物。ヘテロシクリル置換基の結合は炭素原子またはヘテロ原子を介して生じ得る。
【0056】
別の実施形態において、複素環はキノリニル、イソキノリニル、およびチアゾリルから選択される。
【0057】
当業者によって理解されるように、ここで用いられる「ハロ」または「ハロゲン」はクロロ、フルオロ、ブロモおよびヨードを含もうとするものである。
【0058】
「ハロアルキル基」は、クロロ、フルオロ、ブロモおよびヨードを含む1個またはそれ以上のハロゲン原子(例えば、1、2、3、4、5または6個のハロゲン原子)に結合する、指示された数の炭素原子を有するアルキル基である。ハロアルキル基の例はCFである。
【0059】
「アリールオキシ基」は酸素を介して化合物に結合するアリール基(例えば、フェノキシ)である。
【0060】
「アルコキシ」(アルキルオキシ)は、酸素架橋を介して結合する、指示された数の炭素原子を有する環状または非環状のいずれかのアルキル基を表す。したがって、「アルコキシ」または「アルキルオキシ」は上記アルキルおよびシクロアルキルの定義を包含する。アルコキシ基の一例はOCHである。
【0061】
「ハロアルコキシ」(ハロアルキルオキシ)は、酸素架橋を介して結合する、指示された数の炭素原子を有する環状または非環状のいずれかのアルキル基であって、クロロ、フルオロ、ブロモおよびヨードを含む少なくとも1個のハロゲン原子(例えば、1、2、3、4、5または6個のハロゲン原子)に結合するものを表す。ハロアルキルオキシ基の一例はOCFである。
【0062】
「アリールアルコキシ基」(アリールアルキルオキシ)はアルキルアリールのアルキル部分上の酸素を介して化合物に結合するアリールアルキル基(例えば、フェニルメトキシ)を表す。
【0063】
「アリールアミノ基」は窒素を介して化合物に結合するアリール基を表す。
【0064】
ここで用いられる場合、「アリールアルキルアミノ基」はアリールアルキルのアルキル部分上の窒素を介して化合物に結合するアリールアルキル基である。
【0065】
ここで用いられる場合、多くの部分または基が「置換されるかまたは非置換」または「場合により置換される」ものと呼ばれる。部分が置換されると呼ばれるとき、当業者に置換に利用可能であるものとして公知であるこの部分のあらゆる部分が置換され得ることを示す。「1つまたはそれ以上の置換基で場合により置換される」という言い回しは、一実施形態においては、「ゼロから5つの置換基」を意味し、他の実施形態においては、1つの置換基、2つの置換基、3つの置換基、4つの置換基または5つの置換基を意味する。例えば、置換可能な基は水素以外の基(すなわち、置換基)で置換される水素原子であり得る。複数の置換基が存在し得る。複数の置換基が存在するとき、これらの置換基は同じであっても異なっていてもよく、置換は置換可能な部位のいずれで生じてもよい。このような置換の手段は当該技術分野において公知である。本発明の範囲を制限するものと解釈されるべきではない例示の目的で、置換基(ここでは「Rsub」と示される)である基の幾つかの例は以下のものである;C−C10アルキル基、例えば、CH、CH(CH、C(CH等(これらも1つまたはそれ以上の置換基で置換されていてもよい);C−C10ハロアルキル基、例えば、CF(これも1つまたはそれ以上の置換基で置換されていてもよい);C−C10アルキルオキシ基、例えば、OCH(これは置換されていてもよい);C−C10ハロアルキルオキシ基、例えば、OCF;ハロゲンまたはハロ基(F、Cl、Br、I);ヒドロキシル;ニトロ;オキソ;−CN;−COH;−COOH;アミノ;アジド;N−アルキルアミノまたはN,N−ジアルキルアミノ(ここではアルキル基も置換されていてもよい);N−アリールアミノまたはN,N−ジアリールアミノ(ここではアリール基も置換されていてもよい);アリール(例えば、フェニル)、エステル(−C(O)−OR、ここで、Rは、置換されていてもよい、アルキル、アリールのような基である);アリール(これは置換されていてもよい);シクロアルキル(これは置換されていてもよい)、アルキルアリール(これは置換されていてもよい);アルキルヘテロシクリル(これは置換されていてもよい);アルキルシクロアルキル(これは置換されていてもよい)、およびアリールオキシ(例えば、−OPh)。
【0066】
式Iの化合物の遊離形態に加えて、これらの医薬的に許容される塩および立体異性体が本発明に含まれる。ここで例示される特定の化合物の幾つかはアミン化合物のプロトン化塩である。「遊離形態」という用語は非塩形態にあるアミン化合物を指す。包含される医薬的に許容される塩には、ここで説明される特定の化合物について例示される塩だけではなく、式Iの化合物の遊離形態の典型的な医薬的に許容される塩のすべてが含まれる。説明される特定の塩化合物の遊離形態は当該技術分野において公知の技術を用いて単離することができる。例えば、遊離形態は、塩を適切な希塩基水溶液、例えば、希NaOH、炭酸カリウム、アンモニアおよび重炭酸ナトリウム水溶液で処理することによって再生することができる。遊離形態は幾らかは特定の物理特性、例えば、極性溶媒中の溶解度でこれらそれぞれの塩形態と区別することができるが、本発明の目的上、酸および塩基塩は他の点ではこれらそれぞれの遊離形態と医薬的に等価である。
【0067】
多くの有機化合物は、面偏光の面を回転させる能力を有する光学的に活性の形態で存在する。光学的に活性の化合物の記述において、接頭辞DおよびLまたはRおよびSはこのキラル中心(1個以上)に関する分子の絶対配置を示すのに用いられる。接頭辞dおよびlまたは(+)および(−)は化合物による面偏光の回転の符号を示すのに用いられ、(−)はこの化合物が左旋性であることを意味する。(+)またはdを接頭辞として有する化合物は右旋性である。所定の化学構造について、立体異性体と呼ばれるこれらの化合物は、これらが他方の重ねることができない鏡像であることを除いて、同一である。特定の立体異性体を鏡像異性体と呼ぶこともでき、このような異性体の混合物はしばしば鏡像異性体混合物と呼ばれる。鏡像異性体の50:50混合物はラセミ混合物と呼ばれる。ここで説明される化合物の多くは1つまたはそれ以上のキラル中心を有することができ、したがって、異なる鏡像異性形態で存在することができる。所望であれば、キラル炭素をアステリスク(*)で示すことができる。本発明の式においてキラル炭素への結合が直線として示されるとき、キラル炭素の(R)および(S)配置の両者、したがって、鏡像異性体およびこれらの混合物の両者がこの式に包含されることが理解される。当該技術分野において用いられるように、キラル炭素に関する絶対配置を指定することが望まれるとき、キラル炭素への結合のうちの一方を楔(面上部の炭素への結合)で表し、他方を短い平行線の連続または楔(面下部の原子への結合)で表すことができる。(R)または(S)配置をキラル炭素に割り当てるのにCahn−Inglod−Prelog系を用いることができる。
【0068】
本発明のHDAC阻害剤が1個のキラル中心を含むとき、これらの化合物は2つの鏡像異性形態で存在し、本発明は鏡像異性体および鏡像異性体の混合物、例えば、ラセミ混合物と呼ばれる特定の50:50混合物の両者を含む。これらの鏡像異性体は当業者に公知の方法、例えば、ジアステレオ異性体塩(これは、例えば、結晶化によって分離することができる)の形成(CRC Handbook of Optical Resolutions via Diastereomeric Salt Formation by David Kozma(CRC Press、2001)を参照);例えば、結晶化、気−液または液体クロマトグラフィーによって分離することができるジアステレオ異性体誘導体または複合体の形成;一方の鏡像異性体と鏡像異性体特異的試薬との選択的反応、例えば、酵素的エステル化;またはキラル環境における、例えば、キラル支持体、例えば、キラルリガンドが結合するシリカでの、またはキラル溶媒の存在下での、気−液または液体クロマトグラフィーによって分離することができる。望ましい鏡像異性体が上述の分離手順のうちの1つによって別の化学的実体に変換される場合、望ましい鏡像異性形態を遊離させるのにさらなる工程が必要であることは理解されるであろう。代わりに、特定の鏡像異性体を、光学的に活性の試薬、基質、触媒または溶媒を用いる非対称性合成により、または非対称性変換によって一方の鏡像異性体を他方に変換することにより合成することもできる。
【0069】
本発明の化合物のキラル炭素での特定の絶対配置の指定は、これらの化合物の指定された鏡像異性形態が鏡像異性過剰(ee)の状態にあり、換言すると、他の鏡像異性体が実質的に存在しないことを意味するものと理解される。例えば、化合物の「R」形態はこれらの化合物の「S」形態を実質的に含まず、したがって、「S」形態の鏡像異性過剰にある。反対に、化合物の「S」形態はこれらの化合物の「R」形態を実質的に含まず、したがって、「R」形態の鏡像異性過剰にある。鏡像異性過剰は、ここで用いられる場合、特定の鏡像異性体の50%を上回る存在である。例えば、鏡像異性過剰は約60%以上、例えば、約70%以上、例えば、約80%以上、例えば、約90%以上であり得る。特定の実施形態において、特定の絶対配置が指定されるとき、示される化合物の鏡像異性過剰は少なくとも約90%である。より特別な実施形態においては、化合物の鏡像異性過剰は少なくとも約95%、例えば、少なくとも約97.5%、例えば、少なくとも99%鏡像異性過剰である。
【0070】
本発明の化合物が2個以上のキラル炭素を有するとき、2つを上回る光学異性体を有することができ、およびジアステレオ異性形態で存在することができる。例えば、2個のキラル炭素が存在するとき、この化合物は4つまでの光学異性体並びに2対の鏡像異性体((S,S)/(R,R)および(R,S)/(S,R))を有することができる。鏡像異性体の対(例えば、(S,S)/(R,R))は互いの鏡像立体異性体である。鏡像ではない立体異性体(例えば、(S,S)および(R,S))はジアステレオマーである。ジアステレオ異性対は当該技術分野において公知の方法、例えば、クロマトグラフィーまたは結晶化によって分離することができ、各対内の個々の鏡像異性体は上述のように分離することができる。本発明はこのような化合物のジアステレオ異性体の各々およびこれらの混合物を含む。
【0071】
ここで説明されるヒドロキサム酸誘導体は、上述のように、これらの医薬的に許容される塩の形態で調製することができる。
【0072】
本発明の化合物の医薬的に許容される塩は塩基性または酸性部分を含む本発明の化合物から通常の化学的方法によって合成することができる。一般には、塩基性化合物の塩はイオン交換クロマトグラフィーにより、または遊離塩基を化学量論的量または過剰の望ましい塩形成性無機または有機酸と適切な溶媒または様々な溶媒の組み合わせにおいて反応させることにより調製する。同様に、酸性化合物の塩は適切な無機または有機塩基との反応によって形成される。
【0073】
したがって、本発明の化合物の医薬的に許容される塩には、塩基性の本発明の化合物を無機または有機酸と反応させることによって形成される本発明の化合物の通常の非毒性塩が含まれる。例えば、通常の非毒性塩には、無機酸、例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、スルファミン酸、リン酸、硝酸等から誘導されるものに加えて、有機酸、例えば、酢酸、プロピオン酸、コハク酸、グリコール酸、ステアリン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、アスコルビン酸、パモ酸、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸、フェニル酢酸、グルタミン酸、安息香酸、サリチル酸、スルファニル酸、2−アセトキシ−安息香酸、フマル酸、トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンジスルホン酸、シュウ酸、イセチオン酸、トリフルオロ酢酸等から調製される塩が含まれる。
【0074】
本発明の化合物が酸性であるとき、適切な「医薬的に許容される塩」は、無機塩基および有機塩基を含む、医薬的に許容される非毒性塩基から調製される塩を指す。無機塩基から誘導される塩には、アルミニウム、アンモニウム、カルシウム、銅、第二鉄、第一鉄、リチウム、マグネシウム、マンガン含有塩、マンガン、カリウム、ナトリウム、亜鉛等が含まれる。特に好ましいものは、アンモニウム、カルシウム、マグネシウム、カリウムおよびナトリウム塩である。医薬的に許容される有機非毒性塩基から誘導される塩には、一級、二級および三級アミン、天然置換アミンを含む置換アミン、環状アミン並びにイオン交換樹脂、例えば、アルギニン、ベタイン、カフェイン、コリン、N,N’−ジベンジルエチレンジアミン、ジエチルアミン、2−ジエチルアミノエタノール、2−ジメチルアミノエタノール、エタノールアミン、エチレンジアミン、N−エチルモルホリン、N−エチルピペリジン、グルカミン、グルコサミン、ヒスチジン、ヒドラバミン、イソプロピルアミン、リジン、メチルグルカミン、モルホリン、ピペラジン、ピペリジン、ポリアミン樹脂、プロカイン、プリン、テオブロミン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリプロピルアミン、トロメタミン等の塩が含まれる。
【0075】
上述の医薬的に許容される塩および他の典型的な医薬的に許容される塩の調製は、Bergら、「Pharmaceutical Salts,」J.Pharm.Sci.,1977:66:1−19によってより完全に記載される。
【0076】
生理学的条件下では化合物内の脱プロトン化酸性部分、例えば、カルボキシル基がアニオン性であり得、この電荷がプロトン化またはアルキル化塩基性部分、例えば、四級窒素原子のカチオン性電荷に対して内部的に均衡をとって離れるため、本発明の化合物が潜在的に内部塩または双性イオンであることも注目される。
【0077】
記載される活性化合物は、上述のように、これらの水和物の形態でも調製することができる。「水和物」という用語は半水和物、一水和物、二水和物、三水和物、四水和物等を含むが、これらに限定されるものではない。
【0078】
開示される活性化合物は、上述のように、あらゆる有機または無機溶媒、例えば、アルコール、例えば、メタノール、エタノール、プロパノールおよびイソプロパノール、ケトン、例えば、アセトン、芳香族溶媒等との溶媒和物の形態で調製することもできる。
【0079】
開示される活性化合物はあらゆる固体または液体物理形態でも調製することができる。例えば、この化合物は結晶形態、非晶質形態であり得、およびあらゆる粒子径を有することができる。さらに、この化合物の粒子は微粉化され、または凝集した粒状顆粒、粉末、油、油性懸濁液または固体または液体物理形態の他のあらゆる形態であり得る。
【0080】
本発明の化合物は多形をも示し得る。本発明は本発明の化合物の異なる多形をさらに含む。「多形」という用語は、特定の物理特性、例えば、X線回折、IRスペクトル、融点等を有する、物質の特定の結晶状態を指す。
【0081】
本発明はここに開示されるヒドロキサム酸誘導体のプロドラッグをも包含しようとするものである。これらの化合物のいずれのプロドラッグも公知の薬理学的技術を用いて製造することができる。
【0082】
本発明は、上記化合物に加えて、このような化合物の同族体および類似体の使用を包含しようとするものである。この脈絡において、同族体は上記化合物との実質的な構造類似性を有する分子であり、類似体は構造的類似性に関わりなく実質的な生物学的類似性を有する分子である。
【0083】
本発明の化合物は、文献において公知であるか、または実験手順において例示される他の標準操作に加えて、下記スキームに示される反応を用いることによって調製することができる。したがって、以下の説明用スキームは列挙される化合物または説明の目的で用いられるいかなる特定の置換基によっても限定されるものではない。これらのスキームに示される置換基のナンバリングは請求の範囲において用いられるものと必ずしも相関するものではなく、しばしば、明瞭にするため、上述の式Iの定義の下では複数の置換基が許容される場合に、1つの置換基が化合物に結合して示される。
【0084】
スキーム
スキーム1は、本発明のカルバメート誘導体の生成へのアミノスベリン酸の遊離アミンの使用の合成を示す。
【0085】
【化15】

【0086】
有用性
本発明はここで説明されるヒドロキサム酸の使用方法にも関する。ここで示されるように、本発明のヒドロキサム酸誘導体は癌の治療に有用である。加えて、ヒドロキサム酸誘導体が有用であると見出されている広範な他の疾患が存在する。非限定的な例は、ここで説明されるチオレドキシン(TRX)介在疾患、ここで説明される中枢神経系(CNS)の疾患、およびここで説明されるヒドロキサム酸誘導体を含むステント装置を提供することによる再狭窄の治療である。
【0087】
ここで示されるように、本発明のヒドロキサム酸誘導体は癌の治療に有用である。
【0088】
したがって、一実施形態において、本発明は、治療を必要とする被検体における癌の治療方法であって、該被検体に治療上有効な量のここで説明されるヒドロキサム酸誘導体を投与することを含む方法に関する。
【0089】
別の実施形態において、本発明は、医薬の調製におけるここに開示されるヒドロキサム酸のいずれか1つまたはそれ以上の使用に関する。別の実施形態において、本発明は、癌の治療をこのような治療を必要とする被検体において行うための医薬の調製におけるここで開示されるヒドロキサム酸誘導体のいずれか1つまたはそれ以上の使用に関する。
【0090】
ここで提供される化合物、組成物および方法は、固形腫瘍、例えば、皮膚、乳房、脳、子宮頸部カルチノーマ、精巣カルチノーマ等を含む癌の治療に有用であるものと特に考えられる。
【0091】
「癌」という用語は新生細胞の増殖によって生じるあらゆる癌、例えば、固形腫瘍、新生物、カルチノーマ、肉腫、白血病、リンパ腫等を指す。例えば、癌には、これらに限定されるものではないが、以下が含まれる:急性白血病および慢性白血病を含む白血病、例えば、急性リンパ球性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、慢性リンパ急性白血病(CLL)、慢性骨髄性白血病(CML)および毛様細胞白血病;リンパ腫、例えば、皮膚T細胞リンパ腫(CTCL)、非皮膚末梢T細胞リンパ腫、ヒトT細胞リンパ指向性ウイルス(HTLV)に関わるリンパ腫、例えば、成人T細胞白血病/リンパ腫(ATLL)、ホジキン病および非ホジキンリンパ腫、大細胞リンパ腫、散在性大B細胞リンパ腫(DLBCL);バーキットリンパ腫(Burkitt’s lymphoma);原発性中枢神経系(CNS)リンパ腫;多発性骨髄腫;小児固形腫瘍、例えば、脳腫瘍、神経芽細胞腫、網膜芽細胞腫、ウィルム腫瘍(Wilm’s tumor)、骨腫瘍、および軟組織肉腫、成人の通例の固形腫瘍、例えば、頭部および首の癌(例えば、口腔、咽頭および食堂)、尿生殖器の癌(例えば、前立腺、膀胱、腎臓、子宮、卵巣、精巣、直腸および結腸)、肺癌、乳癌。
【0092】
さらなる実施形態において、本発明の化合物、組成物および方法によって治療することができる癌には、これらに限定されるものではないが、以下が含まれる:心臓:肉腫(血管肉腫、繊維肉腫、横紋筋肉腫、脂肪肉腫)、粘液腫、横紋筋腫、繊維腫、脂肪腫および奇形種;肺:気管支原性カルチノーマ(扁平細胞、未分化小細胞、未分化大細胞、アデノカルチノーマ)、肺胞(細気管支)カルチノーマ、気管支アデノーマ、肉腫、リンパ腫、軟骨過誤腫、中皮腫;胃腸:食道(扁平細胞カルチノーマ、アデノカルチノーマ、平滑筋肉腫、リンパ腫)、胃(カルチノーマ、リンパ腫、平滑筋肉腫)、膵臓(管アデノカルチノーマ、インシュリノーマ、グルカゴン産生腫瘍、ガストリン産生腫瘍、カルチノイド腫瘍、VIP産生腫瘍)、小腸(アデノカルチノーマ、リンパ腫、カルチノイド腫瘍、カポジ肉腫、平滑筋腫、血管腫、脂肪腫、神経線維腫、線維腫)、大腸(アデノカルチノーマ、管アデノーマ、絨毛アデノーマ、過誤腫、平滑筋腫);尿生殖器管:腎臓(アデノカルチノーマ、ウィルム腫瘍[腎芽細胞腫]、リンパ腫、白血病)、膀胱および尿道(扁平細胞カルチノーマ、移行細胞カルチノーマ、アデノカルチノーマ)、前立腺(アデノカルチノーマ、肉腫)、精巣(精上皮腫、奇形種、胚性カルチノーマ、テラトカルチノーマ、絨毛癌、肉腫、間質細胞カルチノーマ、線維腫、線維腺腫、腺腫様腫瘍、脂肪腫);肝臓:肝臓癌(肝細胞カルチノーマ)、胆管癌、肝芽腫、血管肉腫、肝細胞アデノーマ、血管腫;骨:骨原性肉腫(骨肉腫)、線維肉腫、悪性線維組織球種、軟骨肉腫、ユーニング肉腫、悪性リンパ腫(網状組織細胞肉腫)、多発性骨髄腫、悪性巨細胞腫瘍、脊索腫、オステオクロンフローマ(osteochronfroma)(骨軟骨外骨症)、良性軟骨腫、軟骨芽細胞腫、軟骨粘液繊維腫、骨様骨腫および巨細胞腫瘍;神経系:頭蓋(骨腫、血管腫、肉芽腫、黄色腫、変形性骨炎)、髄膜(髄膜腫、髄膜肉腫、神経膠腫症)、脳(星状細胞腫、髄芽細胞腫、神経膠腫、上衣細胞腫、胚細胞腫[松果体腫]、多形グリア芽細胞腫、乏突起細胞、シュワン細胞腫、網膜芽細胞腫、先天性腫瘍)、脊髄神経芽細胞腫、髄膜腫、神経膠腫、肉腫);婦人科:子宮(子宮内膜カルチノーマ)、子宮頸部(子宮頸部カルチノーマ、前腫瘍子宮頸部形成異常)、卵巣(卵巣カルチノーマ[漿液性嚢胞アデノカルチノーマ、粘液性嚢胞アデノカルチノーマ、未分類カルチノーマ]、顆粒膜−包膜細胞腫瘍、セルトリ−ライディヒ細胞腫瘍、未分化胚細胞腫、悪性奇形種)、外陰部(扁平細胞カルチノーマ、上皮内カルチノーマ、アデノカルチノーマ、線維肉腫、メラノーマ)、膣(明細胞カルチノーマ、扁平細胞カルチノーマ、ブドウ状肉腫(胚性横紋筋肉腫)、卵管(カルチノーマ);血液学的:血液(骨髄性白血病[急性および慢性]、急性リンパ芽球性白血病、慢性リンパ球性白血病、骨髄増殖性疾患、多発性骨髄腫、骨髄形成異常症候群)、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫[悪性リンパ腫];皮膚:悪性メラノーマ、基底細胞カルチノーマ、扁平細胞カルチノーマ、カポジ肉腫、ほくろ、形成異常母斑、脂肪腫、血管腫、皮膚線維腫、ケロイド、乾癬;および副腎:神経芽細胞腫。したがって、ここで示される「癌性細胞」という用語は上で同定される状態のいずれか1つによって冒されている細胞を含む。
【0093】
ここで示されるように、本発明のヒドロキサム酸誘導体はチオレドキシン(TRX)介在疾患または障害の治療に有用である。
【0094】
したがって、一実施形態において、本発明は治療を必要とする被検体におけるチオレドキシン(TRX)介在疾患または障害の治療方法であって、該被検体に治療上有効な量のここで説明されるヒドロキサム酸誘導体を投与することを含む方法に関する。
【0095】
別の実施形態において、本発明は、チオレドキシン(TRX)介在疾患または障害の治療をこのような治療を必要とする被検体において行うための医薬の調製における、ここで開示されるヒドロキサム酸誘導体のいずれか1つまたはそれ以上の使用に関する。
【0096】
TRX介在疾患の例には、これらに限定されるものではないが、急性および慢性炎症性疾患、自己免疫疾患、アレルギー性疾患、酸化性ストレスに関連する疾患、並びに細胞の過剰増殖を特徴とする疾患が含まれる。
【0097】
非限定的な例は、関節リウマチ(RA)および乾癬性関節炎を含む関節の炎症状態;炎症性腸疾患、例えば、クローン病および潰瘍性大腸炎;脊椎関節症;強皮症;乾癬(T細胞介在乾癬を含む)および炎症性皮膚疾患、例えば、皮膚炎、湿疹、アトピー性皮膚炎、アレルギー性接触皮膚炎、蕁麻疹;血管炎(例えば、壊死性、皮膚性、および過敏性血管炎);好酸性筋炎、好酸性筋膜炎;皮膚または臓器の白血球浸潤を伴う癌、脳虚血を含む虚血性傷害(例えば、外傷、てんかん、出血または脳卒中の結果としての脳障害、これらの各々は神経変性につながり得る);HIV、心不全、慢性、急性または悪性肝疾患、自己免疫甲状腺炎;全身性エリテマトーデス、シェーグレン症候群、肺疾患(例えば、ARDS);急性膵炎;筋萎縮性側索硬化症(ALS);アルツハイマー病;悪疫質/摂食障害;喘息;アテローム性動脈硬化;慢性疲労症候群、発熱、糖尿病(例えば、インシュリン糖尿病または若年性糖尿病);糸球体腎炎;移植片対宿主拒絶(例えば、移植における);出血性ショック;痛覚過敏:炎症性腸疾患;多発性硬化症;ミオパシー(例えば、特に敗血症における、筋タンパク質代謝);骨粗鬆症;パーキンソン病;疼痛;早産;乾癬;再還流傷害;サイトカイン誘導毒性(例えば、敗血症性ショック、内毒素ショック);放射線療法の副作用、側頭下顎関節疾患、腫瘍転位;または緊張、捻挫、軟骨損傷、外傷、例えば、火傷、整形外科手術、感染または他の疾患プロセスから生じる炎症性状態。アレルギー性疾患および状態には、これらに限定されるものではないが、呼吸器アレルギー性疾患、例えば、喘息、アレルギー性鼻炎、過敏性肺疾患、過敏性間質性肺炎、好酸性肺炎(例えば、レフラー症候群、慢性好酸性肺炎)、遅延型過敏症、間質性肺疾患(ILD)(例えば、突発性肺線維症、または関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、強直性脊椎炎、全身性硬化症、シェーグレン症候群、多発性筋炎または皮膚筋炎に関連するILD);全身性アナフィラキシーまたは過敏応答、薬物アレルギー(例えば、ペニシリン、セファロスポリンに対する)、虫刺されアレルギー等が含まれる。
【0098】
ここに示されるように、本発明のヒドロキサム酸誘導体は中枢神経系(CNS)の疾患の治療に有用である。
【0099】
したがって、一実施形態において、本発明は治療を必要とする被検体における中枢神経系(CNS)の疾患の治療方法であって、外被検体に治療上有効な量のここで説明されるヒドロキサム酸誘導体を投与することを含む方法に関する。
【0100】
別の実施形態において、本発明は、中枢神経系(CNS)の疾患の治療をこのような治療を必要とする被検体において行うための医薬の調製における、ここで開示されるヒドロキサム酸誘導体のいずれか1つまたはそれ以上の使用に関する。
【0101】
特定の実施形態において、CNS疾患は神経変性疾患である。さらなる実施形態においては、神経変性疾患は遺伝性神経変性疾患、例えば、ポリグルタミン増大疾患である遺伝性神経変性疾患である。一般には、神経変性疾患は以下のようにグループ分けすることができる:
I.他の顕著な神経学的徴候がない状態で進行性の痴呆を特徴とする障害、例えば、アルツハイマー病;アルツハイマー型の老人性痴呆;およびピック病(脳葉萎縮,)。
II.進行性の痴呆と他の顕著な神経学的異常とを兼ね備える症候群、例えば、A)主として成人において出現する症候群(例えば、ホジキン病、痴呆とパーキンソン病の失調および/または症状とを兼ね備える多発性全身萎縮、進行性核上性麻痺(Steel−Richardson−Olszewski)、散在性レービー体疾患、および皮質歯状核黒質変性症);並びにB)主として小児または若年成人に出現する症候群(例えば、ハラーフォルデン・シュパッツ病および進行性家族性ミオクローヌス性てんかん)。
III.姿勢および運動の徐々に発現する異常の症候群、例えば、振戦麻痺(パーキンソン病)、線条体黒質変性、進行性核上性麻痺、捻転ジストニア(捻転痙攣:変形性筋ジ.ストニア)、痙性斜頚および他の運動障害、家族性振戦、並びにジル・ド・ラ・トゥレット症候群。
IV.進行性失調の症候群、例えば、小脳変性(例えば、小脳皮質変性およびオリーブ橋小脳萎縮症(OPCA));並びに脊髄小脳変性(フリードライヒ失調症および関連障害)。
V.中枢自律神経系機能不全の症候群(シャイ・ドレーガー症候群)。
VI.感覚変化を伴わない筋肉の弱力化および消耗の症候群(運動ニューロン疾患、例えば、筋萎縮性側索硬化症、脊髄筋萎縮症(例えば、小児型脊髄筋萎縮症(Werdnig−Hoffman)、若年型脊髄筋萎縮症(Wohlfart−Kugelberg−Welander)および他の形態の家族性脊髄筋萎縮症)、原発性側索硬化症、および遺伝性痙性対麻痺。
VII.筋肉の弱力化および消耗と感覚変化とを兼ね備える症候群(進行性神経筋萎縮症;慢性家族性多発神経障害)、例えば、腓骨筋萎縮(Charcot−Marie−Tooth)、肥大性間質性多発神経障害(Dejerine−Sottas)、および慢性進行性神経障害の種々の形態。
VIII.進行性の視覚喪失の症候群、例えば、網膜の色素変性(網膜色素変性症)、および遺伝性視神経萎縮(レーバー病)。
【0102】
本発明の化合物は平滑筋細胞の増殖および/または移動の阻害においても有用であり、したがって、例えば、血管形成術および/またはステント移植の後の、再狭窄の予防および/または治療において有用である。
【0103】
一実施形態において、平滑筋細胞の増殖および/または移動の阻害および再狭窄の予防および/または治療が、本発明の化合物の1種類以上を内部または表面上に有する、例えば、表面上にコートされたステント装置を提供することによってなされる。ステント装置は、本発明の化合物を制御可能に放出し、これにより平滑筋細胞の増殖および/または移動を阻害し、および再狭窄を予防および/または治療するように指定される。
【0104】
狭窄および再狭窄は血管の狭小化に関連する状態である。血管の狭窄は、一般には、時間の経過と共に徐々に生じる。対照的に、再狭窄は血管内処置、例えば、バルーン血管形成および/またはステント移植、または血管損傷に続く血管の狭小化に関連する。
【0105】
バルーン血管形成は、典型的には、狭窄性血管を開くために行われる;ステント処理は、通常、バルーン血管形成の後に、またはこれと組み合わせて、血管の開放を維持するために行われる。バルーンカテーテルを狭窄の部位に誘導し、バルーンチップを有効に膨張させて閉塞した血管を拡張することによる血管形成術で狭窄性血管を開放する。拡張した血管の開放を維持する試みにおいて、ステントを血管に移植して血管の開放された区域に対する細胞内支持体を提供し、これによりバルーンカテーテルの解除後に血管がこの閉塞された状態に戻る程度を制限することができる。再狭窄は、典型的には、例えば、バルーン開放、アテローム切除または動脈のレーザー除去処置によってもたらされる、血管形成中に受けた外傷によって生じる。これらの処置に対して、再狭窄は、血管の位置、病変の長さおよび幾つかの他の変数に依存して、約30%から60%の割合で生じる。これは比較的非侵襲性のバルーン血管形成およびステント処理の成功全体を低減させる。
【0106】
再狭窄は平滑筋細胞(SMC)の増殖を含む多くの要素によるものである。SMC増殖は内膜に対する最初の機械的障害によって誘発され、これはバルーン血管形成およびステント移植のときに維持される。このプロセスは早期の血小板活性化および血栓形成、これに続くSMC漸増および移動、並びに、最後に、細胞増殖および細胞外マトリックスの蓄積を特徴とする。損傷を受けた内皮細胞、SMC、血小板、およびマクロファージは再狭窄を促進するサイトカインおよび成長因子を分泌する。SMCの増殖は新生内膜肥厚につながる最終的な共通経路を表す。したがって、細胞周期の特定の調節現象の阻害を目的とする好増殖療法が血管形成後の再狭窄に対するもっとも合理的なアプローチを構成し得る。
【0107】
本発明の化合物は、ここで示されるように、細胞増殖性疾患または状態の治療において強大な可能性を示す強力なHDAC阻害剤である。加えて、本発明の化合物はSMC増殖の強力な阻害剤である。したがって、本発明の化合物の制御可能な放出(例えば、ステント装置からの)はSMC増殖の阻害において、したがって、再狭窄の予防および/または治療において非常に有利である。
【0108】
したがって、一実施形態において、本発明は、本発明のHDAC阻害剤の1種類以上を含むステント装置を提供する。このステント装置は、ステント本体およびこのステント本体の内部または表面上に付与された本発明の化合物の1種類以上を含む。一実施形態において、これらの化合物はステント本体の内部または表面上に位置する送達貯蔵所内に含まれる。別の実施形態において、これらの化合物はステント本体上にコートされる。
【0109】
別の実施形態において、本発明は、平滑筋細胞の増殖および/または移動の阻害において用いるための、ここで説明されるステント装置を提供する。
【0110】
別の実施形態において、本発明は、再狭窄の阻害および/または予防のこれらを必要とする被検体における実施への、ここで説明されるステント装置の使用に関する。
【0111】
別の実施形態において、本発明は、被検体における非新生物平滑筋細胞の増殖および/または移動の阻害への本発明の化合物の使用に関する。
【0112】
別の実施形態において、本発明は、再狭窄の阻害および/または予防のこれらを必要とする被検体における実施への本発明の化合物の使用に関する。
【0113】
別の実施形態において、本発明は、被検体における非新生物平滑筋細胞の増殖および/または移動を阻害するための方法であって、該被検体に本発明の化合物を、該被検体における平滑筋細胞の増殖を阻害するのに有効な量で投与することを含む方法に関する。
【0114】
別の実施形態において、本発明は、被検体における血管形成またはステント移植の後の再狭窄を予防または治療するための方法であって、該被検体に、被検体における際狭窄の予防に有効な量の本発明の化合物を投与することを含む方法に関する。
【0115】
別の実施形態において、本発明は、被検体における血管形成またはステント移植の後の再狭窄を予防または治療するための方法であって、ステント装置を被検体の血管腔内に配置することを含み、該スタントはステント本体および該ステント本体の表面上または内部に付与される本発明の化合物の1種類以上を含む方法に関する。一実施形態において、これらの化合物はステント本体の表面上または内部に位置する送達貯蔵所内に含まれる。別の実施形態においては、これらの化合物はステント表面上にコートされる。
【0116】
さらに別の実施形態において、本発明は、ここで説明されるステント装置および該ステント装置を被検体の血管腔内に配置することが可能な送達カテーテルを含むキットを提供する。
【0117】
ステントは当該技術分野において公知であり、典型的には、冠動脈および末梢血管内に拡張した形態で永久に移植される金属製またはポリマー製装置である。ステントは、典型的には、金属、例えば、ステンレス鋼、タンタル、チタン合金、コバルト合金、シリコーンまたはポリマー、例えば、ポリオレフィンエラストマーおよびポリアミドエラストマーを含む熱可塑性エラストマー、またはこれらの組み合わせから製造することができる。ステントは、典型的には、カテーテルによって血管腔に挿入され、拡張して動脈壁と接触し、これにより管腔の内部支持体を提供する。スタントの例は米国特許第4,733,665号、第4,800,882号および第4,886,062号に開示される。
【0118】
薬物送達系を含むスタントも当該技術分野において公知である。例えば、米国特許第6,273,913号、同第6,383,215号、同第6,238,121号、同第6,231,600号、同第5,837,008号、同第5,824,048号および同第5,679,400号は、すべて、様々な薬剤をコートしたステントを教示する。薬物をステント上にコートする方法も当業者に公知である。
【0119】
本発明に関してこの様々な文法上の形態にある「治療する」という用語は、疾患の状態、疾患の進行、疾患の原因作用物質(例えば、細菌またはウイルス)または他の異常状態の防止(すなわち、化学防御)、治癒、反転、減衰、緩和、最小化、抑制または中断を指す。例えば、治療は疾患の症状の緩和(すなわち、必ずしもすべての症状ではない)または疾患の進行の減衰を含み得る。本発明の方法の幾つかが病因学的作用物質の物理的除去を含むため、熟練技術者は、本発明の化合物を病因学的作用物質への露出に先立って、またはこれと同時に投与する状況(予防的処置)および本発明の化合物を病因学的作用物質への露出の後に(かなり後にでさえも)投与する状況においてこれらが等しく有効であることを理解するであろう。
【0120】
ここで用いられる癌の治療は、動物、例えば、ヒトにおける、癌転移を含む癌の進行の部分的または全体的な阻害、遅延または予防;癌転移を含む癌の再発の阻害、遅延または予防;または癌の発症または発生の予防(化学防御)を指す。
【0121】
ここで用いられる場合、「治療上有効な量」という用語は、望ましい治療または生物学的効果を達成するあらゆる量を包含しようとするものである。治療効果は治療される疾患または障害または望ましい生物学的効果に依存する。このようなものとして、治療効果はこの疾患または障害に関連する症状の重篤性の低下および/またはこの疾患の進行の阻害(部分的または完全な)であり得る。治療応答を達成するのに必要な量は、被検体の年齢、健康、サイズおよび性別に基づいて決定することができる。最適量も、治療に対する被検体の応答の監視に基づいて決定することができる。
【0122】
本発明において、化合物が癌の治療または予防に用いられるとき、望ましい生物学的応答は、動物、例えば、ヒトにおける、癌転移を含む癌の進行の部分的または全体的な阻害、遅延または予防;癌転移を含む癌の再発の阻害、遅延または予防;または癌の発症または発生の予防(化学防御)である。
【0123】
さらに、本発明において、化合物がチオレドキシン(TRX)介在疾患および状態の治療および/または予防に用いられるとき、治療上有効な量は、治療を必要とする被検体におけるTRXの生理学的に適切なレベルを調節、例えば、増加、減少または維持して望ましい治療効果を誘発する量である。治療効果は治療される特定のTRX介在疾患または状態に依存する。このようなものとして、治療効果はこの疾患または障害に関連する症状の重篤性の低下および/またはこの疾患または疾患の進行の阻害(部分的または完全な)であり得る。
【0124】
さらに、本発明において、化合物が中枢神経系(CNS)の疾患または障害の治療および/または予防に用いられるとき、治療上有効な量は治療される特定の疾患または障害に依存する。このようなものとして、治療効果はこの疾患または障害に関連する症状の重篤性の低下および/またはこの疾患または障害の進行の阻害(部分的または完全な)であり得る。
【0125】
加えて、治療上有効な量はヒストンデアセチラーゼを阻害する量であり得る。
【0126】
さらに、治療上有効な量は新生物細胞の終末分化、細胞成長の休止および/またはアポトーシスを選択的に誘導する量、または腫瘍細胞の終末分化を誘導する量であり得る。
【0127】
本発明の方法はヒト癌患者の治療または化学防御を目的とする。しかしながら、この方法が他の被検体における癌の治療において有効であるとも思われる。ここで用いられる「被検体」は、動物、例えば、霊長類(例えば、ヒト)、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、ブタ、イヌ、ネコ、ウサギ、モルモット、ラット、マウスまたは他のウシ、ヒツジ、ウマ、イヌ、ネコ、齧歯類またはネズミの種を含むがこれらに限定されるものではない哺乳動物を指す。
【0128】
ここで示されるように、本発明のヒドロキサム酸誘導体はヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害剤としての改善された活性を示す。一実施形態において、ヒストンデアセチラーゼの50%阻害に必要な化合物の濃度(IC50)は1000nM未満である。別の実施形態においては、ヒストンデアセチラーゼの50%阻害に必要な化合物の濃度(IC50)は500から1000nMである。別の実施形態においては、ヒストンデアセチラーゼの50%阻害に必要な化合物の濃度(IC50)は100から500nMである。別の実施形態においては、ヒストンデアセチラーゼの50%阻害に必要な化合物の濃度(IC50)は100nM未満である。別の実施形態においては、ヒストンデアセチラーゼの50%阻害に必要な化合物の濃度(IC50)は10から100nMである。別の実施形態においては、ヒストンデアセチラーゼの50%阻害に必要な化合物の濃度(IC50)は50nM未満である。別の実施形態においては、ヒストンデアセチラーゼの50%阻害に必要な化合物の濃度(IC50)は10から50nMである。別の実施形態においては、ヒストンデアセチラーゼの50%阻害に必要な化合物の濃度(IC50)は10nM未満である。別の実施形態においては、ヒストンデアセチラーゼの50%阻害に必要な化合物の濃度(IC50)は1から10nMである。別の実施形態においては、ヒストンデアセチラーゼの50%阻害に必要な化合物の濃度(IC50)は1nM未満である。別の実施形態においては、ヒストンデアセチラーゼの50%阻害に必要な化合物の濃度(IC50)は0.1から1nMである。
【0129】
したがって、一実施形態において、本発明はヒストンデアセチラーゼの活性を阻害する方法であって、ヒストンデアセチラーゼを有効量のここで説明されるヒドロキサム酸化合物の1種類以上と接触させることを含む方法に関する。
【0130】
一実施形態において、ヒドロキサム酸誘導体はクラスIヒストンデアセチラーゼ(クラスI HDACs)の強力な阻害剤である。クラスI HDACには、ヒストンデアセチラーゼ1(HDAC−1)、ヒストンデアセチラーゼ2(HDAC−2)、ヒストンデアセチラーゼ3(HDAC−3)およびヒストンデアセチラーゼ8(HDAC−8)が含まれる。特定の実施形態において、ヒドロキサム酸誘導体はヒストンデアセチラーゼI(HDAC−1)の強力な阻害剤である。別の実施形態において、ヒドロキサム酸誘導体はクラスIIヒストンデアセチラーゼ(クラスII HDAC)の強力な阻害剤である。クラスII HDACには、ヒストンデアセチラーゼ4(HDAC−4)、ヒストンデアセチラーゼ5(HDAC−8)、ヒストンデアセチラーゼ6(HDAC−6)、ヒストンデアセチラーゼ7(HDAC−7)およびヒストンデアセチラーゼ9(HDAC−9)が含まれる。
【0131】
ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)は、この用語がここで用いられる場合、ヌクレオソーム核ヒストンのアミノ末端テール内のリジン残基からのアセチル基の除去を触媒する酵素である。このようなものとして、HDACはヒストンアセチルトランスフェラーゼ(HAT)と共にヒストンのアセチル化状態を調節する。ヒストンのアセチル化は遺伝子発現に影響を及ぼし、HDACの阻害剤、例えば、ヒドロキサム酸系ハイブリッド極性化合物スベロイルアニリドヒドロキサム酸(SAHA)はイン・ビトロで形質転換細胞の成長休止、分化および/またはアポトーシスを誘導し、イン・ビボで腫瘍の成長を阻害する。HDACは構造相同性に基づいてい3つのクラスに分割することができる。クラスI HDAC(HDAC1、2、3および8)は酵母RPD3タンパク質との類似性を有し、核内に位置し、および転写補抑制体と会合した複合体として見出される。クラスII HDAC(HDAC4、5、6、7および9)は酵母HDA1タンパク質に類似し、核および細胞質両者の細胞下局在性を有する。クラスIおよびII HDACの両者はヒドロキサム酸系HDAC阻害剤、例えば、SAHAによって阻害される。クラスIII HDACは構造的にかけ離れたクラスのNAD依存性酵素を形成し、これは酵母SIR2タンパク質に関連し、およびヒドロキサム酸系HDAC阻害剤によっては阻害されない。
【0132】
ヒストンデアセチラーゼ阻害剤またはHDAC阻害剤は、この用語がここで用いられる場合、イン・ビボ、イン・ビトロまたはこの両者でヒストンの脱アセチル化を阻害することができる化合物である。このようなものとして、HDAC阻害剤は少なくとも1種類のヒストンデアセチラーゼの活性を阻害する。少なくとも1種類のヒストンの脱アセチル化を阻害する結果として、アセチル化ヒストンの増加が生じ、アセチル化ヒストンの蓄積がHDAC阻害剤の活性を評価するための適切な生物学的マーカーである。したがって、アセチル化ヒストンの蓄積をアッセイすることができる手順を関心化合物のHDAC阻害活性の決定に用いることができる。ヒストンデアセチラーゼ活性を阻害することができる化合物は他の基質にも結合することができ、このようなものとして他の生物学的に活性の分子、例えば、酵素を阻害できることは理解される。本発明の化合物は上述のヒストンデアセチラーゼのいずれをも、または他のヒストンデアセチラーゼのいずれをも阻害可能であることも理解されるべきである。
【0133】
例えば、HDA阻害剤が投与されている患者において、末梢単核細胞に加えてHDAC阻害剤で処置されている組織におけるアセチル化ヒストンの蓄積を適切な対照に対して決定することができる。
【0134】
特定の化合物のHDAC阻害活性は、イン・ビトロで、例えば、少なくとも1種類のヒストンデアセチラーゼの阻害を示す酵素的アッセイを用いて決定することができる。さらに、特定の組成物で処理された細胞におけるアセチル化ヒストンの蓄積の決定は化合物のHDA阻害活性の決定因子であり得る。
【0135】
アセチル化ヒストンの蓄積のアッセイは文献において公知である。例えば、Marks,P.A.ら、J.Natl.Cancer Inst.,92:1210−1215,2000、Butler,L.M.ら、Cancer Res.60:5165−5170(2000)、Richon,V.M.ら、Proc.Natl.Acad.Sci.,USA,95:3003−3007,1998、およびYoshida,M.ら、J.Biol.Chem.,265:17174−17179,1990を参照のこと。
【0136】
例えば、HDAC阻害剤化合物の活性を決定する酵素的アッセイは以下のように行うことができる。簡潔に述べると、アフィニティ精製ヒトエピトープタグ(フラッグ)HDAC1に対するHDAC阻害剤化合物の効果を、酵素調製品を基質が存在しない状態で、氷上で約20分間、指定された量の阻害剤化合物と共にインキュベートすることによってアッセイすることができる。基質([H]アセチル標識ネズミ赤白血病細胞誘導ヒストン)を添加し、この試料を37℃で20分間、30μlの総容積でインキュベートすることができる。次に、反応を停止させて放出されたアセテートを抽出することができ、放射法放出の量をシンチレーション計数によって決定する。HDAC阻害剤化合物の活性の決定に有用な代替アッセイは、BIOMOL(登録商標) Research Laboratories,Inc.、Plymouth Meeting、PAから入手可能な「HDAC Fluorescent Activity Assay;Drug Discovery Kit−AK−500」である。
【0137】
イン・ビボ研究は以下のように行うことができる。動物、例えば、マウスにHDAC阻害剤化合物を腹腔内注射することができる。選択された組織、例えば、脳、脾臓、肝臓等を投与後の予め決定された時間に単離することができる。ヒストンを、本質的にYoshidaら、J.Biol.Chem.265:17174−17179,1990によって記載されるように、組織から単離することができる。等量のヒストン(約1μg)を15%SDS−ポリアクリルアミドゲル上で電気泳動し、Hybond−Pフィルタ(Amershamから入手可能)に移すことができる。フィルタを3%ミルクでブロックし、ウサギ精製ポリクローナル抗アセチル化ヒストンH4抗体(αAc−H4)および抗アセチル化ヒストンH3抗体(αAc−H3)(Upstate Biotechnology,Inc.)で精査することができる。アセチル化ヒストンのレベルを、セイヨウワサビペルオキシダーゼ結合ヤギ抗ウサギ抗体(1:5000)およびSuperSignal化学発光基質(Pierce)を用いて視覚化することができる。ヒストンタンパク質のローディング対照として、平行ゲルを流し、Coomassie Blue(CB)で染色することができる。
【0138】
加えて、ヒドロキサム酸系HDAC阻害剤はp21WAF1遺伝子の発現を上方調節することが示されている。p21WAF1タンパク質は標準法を用いて、HDAC阻害剤との培養の2時間以内に、様々な形質転換細胞において誘導される。p21WAF1遺伝子の誘導はこの遺伝子のクロマチン領域におけるアセチル化ヒストンの蓄積を伴う。したがって、p21WAF1の誘導はHDAC阻害剤によって形質転換細胞に生じるG1細胞周期休止に関与するものと認めることができる。
【0139】
典型的には、HDAC阻害剤は5つの一般的なクラスに入る:1)ヒドロキサム酸誘導体;2)短鎖脂肪酸(SCFA);3)環状テトラペプチド;4)ベンズアミド;および5)求電子性ケトン。このようなHDAC阻害剤の例を以下に記す。
【0140】
A.ヒドロキサム酸誘導体、例えば:スベロイルアニリドヒドロキサム酸(SAHA)(Richonら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 95,3003−3007(1998));m−カルボキシケイ皮酸ビスヒドロキサミド(CBHA)(Richonら、前掲);ピロキサミド;トリコスタチン類似体、例えば、トリコスタチンA(TSA)およびトリコスタチンC(Kogheら、1998.Biochem.Pharmacol.56:1359−1364);サリチルヒドロキサム酸(Andrewsら、International J.Parasitology 30,761−768(2000));スベロイルビスヒドロキサム酸(SBHA)(米国特許第5,608,108号);アゼライックビスヒドロキサム酸(ABHA)(Andrewsら、前掲);アゼライック−1−ヒドロキサメート−9−アニリド(AAHA)(Qiuら、Mol.Biol.Cell 11,2069−2083(2000));6−(3−クロロフェニルウレイド)カルポイックヒドロキサム酸(3Cl−UCHA);オキサムフラチン[(2E)−5−[3−[(フェニルスルホニル)アミノ]フェニル]−ペンタ−2−エン−4−イノヒドロキサム酸](Kimら、Oncogene,18:2461 2470(1999));A−161906、Scriptaid(Suら、2000 Cancer Research,60:3137−3142);PXD−101(Prolifix);LAQ−824;CHAP;MW2796(Andrewsら、前掲);MW2996(Andrewsら、前掲);または米国特許第5,369,108号、第5,932,616号、第5,700,811号、第6,087,367号および第6,511、990号に開示されるヒドロキサム酸のいずれか。
【0141】
B.環状テトラペプチド、例えば:トラポキシンA(TPX)−環状テトラペプチド(シクロ−(L−フェニルアラニル−L−フェニルアラニル−D−ピペコリニル−L−2−アミノ−8−オキソ−9,10−エポキシデカノイル))(Kijimaら、J Biol.Chem.268,22429−22435(1993));FR901228(FK228、デプシペプチド)(Nakajimaら、Ex.Cell Res.241,126−133(1998));FR225497環状テトラペプチド(H.Moriら、PCT出願WO 00/08048(200年2月17日));アピシジン環状テトラペプチド[シクロ(N−O−メチル−L−トリプトファニル−L−イソロイシニル−D−ピペコリニル−L−2−アミノ−8−オキソデカノイル)](Darkin−Rattrayら、Proc.Natl.Acad.Sci USA 93,1314313147(1996));アピシジンIa、アピシジンIb、アピシジンIc、アピシジンIIa、およびアピシジンIIb(P.Dulskiら、PCT出願WO 97/11366);CHAP、HC−毒素環状テトラペプチド(Boschら、Plant Cell 7,1941−1950(1995));WF27082環状テトラペプチド(PCT出願WO 98/48825);およびクラミドシン(Boschら、前掲)。
【0142】
C.短鎖脂肪酸(SCFA)誘導体、例えば:酪酸ナトリウム(Cousensら、J.Biol.Chem.254,1716−1723(1979));イソバレレート(McBainら、Biochem.Pharm.53:1357−1368(1997));バレレート(McBainら、前掲);酪酸4−フェニル(4−PBA)(Lea and Tulsyan,Anticancer Research,15,879−873(1995));酪酸フェニル(PB)(Wangら、Cancer Research,59,2766−2799(1999));プロピオネート(McBainら、前掲);ブチラミド(LeaおよびTulsyan、前掲);イソブチラミド(LeaおよびTulsyan、前掲);酢酸フェニル(LeaおよびTulsyan、前掲);3−ブロモプロピオネート(LeaおよびTulsyan、前掲);トリブチリン(Guanら、Cancer Research,60,749−755(2000));バルプロ酸、バルプロエートおよびPivanex(商標)。
【0143】
D.ベンズアミド誘導体、例えば:CI−994;MS−275[N−(2−アミノフェニル)−4−[N−(ピリジン−3−イルメトキシカルボニル)アミノメチル]ベンズアミド](Saitoら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 96,4592−4597(1999));およびMS−275の3’−アミノ誘導体(Saitoら、前掲)。
【0144】
E.求電子性ケトン誘導体、例えば:トリフルオロメチルケトン(Freyら、Bioorganic & Med.Chem.Lett.(2002),12,3443−3447;U.S.6,511,990)およびα−ケトアミド、例えば、N−メチル−α−ケトアミド。
【0145】
F.他のHDAC阻害剤、例えば、:天然産生物、プサマプリンおよびデプデシン(Kwonら、1998.PNAS 95:3356−3361)。
【0146】
本発明のヒドロキサム酸化合物は単独で、または治療される疾患または障害に適する治療と組み合わせて投与することができる。別々の投薬処方が用いられる場合、ヒドロキサム酸化合物および他の療法剤は本質的に同じ時間に(同時に)、またはずらして離れた時間に(連続的に)投与することができる。この医薬的に組み合わせはこれらの投薬計画のすべてを含むものと理解される。ヒドロキサム酸化合物および他の療法剤の有益な治療効果が患者によって実施的に同時に実現される限り、様々な方法での投与が本発明に適する。このような有益な効果は、各々の活性薬物の標的血液レベル濃度が実質的に同時に維持されるときに好ましく達成される。
【0147】
当業者は、薬剤のどの組み合わせが有用であるかを治療される疾患、例えば、どの癌、どの神経変性疾患またはどの炎症性疾患が関与するのかに基づいて識別することができるであろう。
【0148】
ヒドロキサム酸誘導体は、HDAC阻害剤のいずれか1種類以上(例えば、上記HDAC阻害剤のいずれか1種類以上)、アルキル化剤、抗生物質、代謝拮抗剤、ホルモン剤、植物派生薬剤、生物製剤、遺伝子治療薬、抗血管形成剤、分化誘導剤、レチノイド受容体修飾因子、細胞毒性/細胞増殖抑制剤、抗増殖剤、HMG−CoAレダクターゼ阻害剤、プレニル−プロテイントランスフェラーゼ阻害剤、細胞周期チェックポイントを妨害する薬剤、細胞増殖および生存信号伝達の阻害剤、アポトーシス誘導剤、細胞成長休止誘導剤、またはこれらのあらゆる組み合わせと組み合わせて投与することができる。加えて、本発明の化合物は、放射線療法と同時投与されるとき、特に有用である。
【0149】
「アルキル化剤」は求核性残基、例えば、DNA産生のためのヌクレオチド前駆体上の化学的実体と反応する。これらは細胞分割のプロセスにこれらのヌクレオチドをアルキル化することによって影響を及ぼし、これらのDNAへの組立を妨げる。
【0150】
アルキル化剤の例には、これらに限定されるものではないが、ビスクロロエチルアミン(窒素マスタード、例えば、クロラムブシル、シクロホスファミド、イホスファミド、メクロレタミン、メルファラン、ウラシルマスタード)、アジリジン(例えば、チオテパ)、アルキルアルコンスルホネート(例えば、ブスルファン)、ニトロソ尿素(例えば、カルムスチン、ロムスチン、ストレプトゾシン)、非古典的アルキル化剤(アルトレタミン、ダカルバジン、およびプロカルバジン)、白金化合物(カルボプラチンおよびシスプラチン)が含まれる。これらの化合物はホスフェート、アミノ、ヒドロキシル、スルフィヒドリル、カルボキシル、およびイミダゾール基と反応する。
【0151】
生理学的条件下で、これらの薬物はイオン化して陽性に荷電したイオンを生成し、これが感受性の核酸およびタンパク質に結合して細胞周期休止および/または細胞の死を導く。アルキル化剤は、細胞周期の特定の相とは無関係にこれらの活性を示すため、細胞周期相非特異的薬剤である。窒素マスタードおよびアルキルアルコンスルホネートがGまたはM相の細胞に対して最も有効である。ニトロソ尿素、窒素マスタード、およびアジリジンはGおよびS相からM相への進行を損なう。Chabner and Collins eds.(1990) 「Cancer Chemotherapy:Principles and Practice」,Philadelphia:JB Lippincott。
【0152】
アルキル化剤は広く様々な新生物疾患に対して活性であり、白血病およびリンパ腫に加えて固形腫瘍の治療における著しい活性を有する。臨床的には、この群の薬物は急性および慢性白血病;ホジキン病;非ホジキンリンパ腫;多発性骨髄腫;原発性脳腫瘍;乳房、卵巣、精巣、肺、膀胱、子宮頸部、頭および首のカルチノーマ、並びに悪性メラノーマの治療において日常的に用いられる。
【0153】
「抗生物質剤」(例えば、細胞毒性抗生物質)はDNAまたはRNA合成を直接阻害することによって作用し、細胞周期全体を通して有効である。抗生物質剤の例には、アントラサイクリン(例えば、ドキソルビン、ダウノルビシン、エピルビシン、イダルビシンおよびアントラセネジオン)、マイトマイシンC、ブレオマイシン、ダクチノマイシン、およびプリカトマイシンが含まれる。これらの抗生物質剤は異なる細胞構成要素を標的とすることによって細胞成長を妨害する。例えば、アントラサイクリンは、一般には、DNAトポイソメラーゼIIの作用を転写的に活性のDNAの領域において妨害し、これがDNA鎖分断につながるものと信じられる。
【0154】
ブレオマイシンは、一般には、鉄をキレート化して活性化複合体を形成し、次にこれがDNAの塩基に結合して鎖分断および細胞の死を生じるものと信じられる。
【0155】
抗生物質剤は、乳房、肺、胃および甲状腺のカルチノーマ、リンパ腫、骨髄性白血病、骨髄腫、および肉腫を含む一連の新生物疾患の全体にわたって療法剤として用いられている。
【0156】
「代謝拮抗剤」(すなわち、アンチメタボライト)は、癌細胞の生理および増殖に不可欠な代謝プロセスを妨害する薬物の群である。活発に増殖する癌細胞は大量の核酸、タンパク質、脂質および他の必須の細胞構成要素の連続的な合成を必要とする。
【0157】
代謝拮抗剤の多くはプリンまたはピリミジンヌクレオシドの合成を阻害し、またはDNA複製の酵素を阻害する。幾つかの代謝拮抗剤は、さらに、リボヌクレオシドおよびRNAの合成並びに/またはアミノ酸代謝並びにタンパク合成をも妨害する。必須の細胞構成要素の合成を妨害することにより、代謝拮抗剤は癌細胞の成長を遅延または休止させることができる。代謝拮抗剤の例には、これらに限定されるものではないが、フルオロウラシル(5−FU)、フルオクスリジン(5−FUdR)、メトトレキセート、ロイコボリン、ヒドロキシ尿素、チオグアニン(6−TG)、メルカプトプリン(6−MP)、シタラビン、ペントスタチン、リン酸フルダラビン、クラドリビン(2−CDA)、アスパラギナーゼ、およびゲムシタビンが含まれる。
【0158】
代謝拮抗剤は、結腸、直腸、乳房、肝臓、胃および膵臓のカルチノーマ、悪性メラノーマ、急性および慢性白血病並びに有毛細胞白血病を含む幾つかの一般形態の癌の治療に広く用いられている。
【0159】
「ホルモン剤」はこれらの標的臓器の成長および発達を調節する薬物の群である。ホルモン剤の幾つかは性ステロイド並びにこれらの誘導体および類似体、例えば、エストロゲン、プロゲストゲン、抗エストロゲン、アンドロゲン、抗アンドロゲンおよびプロゲスチンである。他のホルモン剤はこれらの標的受容体を調節する小分子である。これらのホルモン剤は性ステロイドの受容体のアンタゴニストしての役割を果たし、受容体の発現および生存に必須の遺伝子の転写を下方調節する。このようなホルモン剤の例は合成エストロゲン(例えば、ジエチルスチベストロール)、エストロゲン受容体修飾因子、選択的エストロゲン受容体修飾因子(SERM)、抗エストロゲン(例えば、タモキシフェン、トレミフェン、フルオキシメステロールおよびラロキシフェン)、アンドロゲン受容体修飾因子、選択的アンドロゲン受容体修飾因子(SARM)、抗アンドロゲン(例えば、ビカルタミド、ニルタミド、フルタミド)、アロマターゼ阻害剤(例えば、アミノグルテチミド、アナストロゾールおよびテトラゾール)、黄体形成ホルモン放出ホルモン(LHRH)類似体、ケトコナゾール、酢酸ゴセレリン、ロイプロリド、酢酸メゲストロールおよびミフェプリストンである。
【0160】
ホルモン剤は乳癌、前立腺癌、メラノーマおよび髄膜腫の治療に用いられる。ホルモン剤の主要作用にステロイド受容体が介在するため、60%の受容体陽性乳癌が第一線のホルモン治療に応答し、応答した受容体陰性腫瘍は10%未満であった。具体的には、プロゲストゲンは子宮内膜癌の治療に用いられ、これは、これらの癌がプロゲストゲンによる対抗を受けない高レベルのエストロゲンに晒されている女性において生じるためである。抗アンドロゲンは、主として、ホルモン依存性である前立腺癌の治療に用いられる。これらはテストステロンのレベルを低下させ、これにより腫瘍の成長を阻害するのに用いられる。
【0161】
乳癌のホルモン療法は、新生物性乳癌におけるエストロゲン受容体のエストロゲン依存性活性化のレベルを低減させることを含む。抗エストロゲンは、エストロゲン受容体に結合して活性化補助因子の補充を妨げ、これによりエストロゲンシグナルを阻害することによって作用する。
【0162】
LHRH類似体は、前立腺癌の治療において、テストステロンのレベルを低下させて腫瘍の成長を低減させるのに用いられる。
【0163】
アロマターゼ阻害剤はホルモン合成に必要な酵素を阻害することによって作用する。閉経後の女性においては、主要なエストロゲン源はアロマターゼによるアンドロステネジオンの変換によるものである。
【0164】
エストロゲン受容体修飾因子は、機構に関わりなく、受容体へのエストロゲンの結合を妨害または阻害する化合物を指す。エストロゲン受容体修飾因子の例には、これらに限定されるものではないが、タモキシフェン、ラロキシフェン、イドキシフェン、LY353381、LY117081、トレミフェン、フルベストラント、4−[7−(2,2−ジメチル−1−オキソプロポキシ−4−メチル−2−[4−[2−(1−ピペリジニル)エトキシ]フェニル]−2H−1−ベンゾピラン−3−イル]−フェニル−2,2−ジメチルプロパノエート、4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン−2,4−ジニトロフェニル−ヒロラゾン、およびSH646が含まれる。
【0165】
アンドロゲン受容体修飾因子は、機構にかかわらず、受容体へのアンドロゲンの結合を妨害または阻害する化合物を指す。アンドロゲン受容体修飾因子の例には、フィナステリドおよび他の5α−レダクターゼ阻害剤、ニルタミド、フルタミド、ビカルタミド、リアロゾール、並びに酢酸アビラテロンが含まれる。
【0166】
「植物派生剤」は、植物から誘導され、またはこれらの薬剤の分子構造に基づいて修飾された薬物の群である。これらは、細胞分裂に必須の細胞構成要素の組立を妨げることによって細胞の複製を阻害する。
【0167】
植物派生剤の例には、ビンカアルカロイド(例えば、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビンデシン、ビンゾリジンおよびビノレルビン)、ポドフィロトキシン(例えば、エトポシド(VP−16)およびテニポシド(VM−26))、タキサン(例えば、パクリタキセルおよびドセタキセル)が含まれる。これらの植物派生剤は、一般には、チューブリンに結合して有糸分裂を阻害する抗有糸分裂剤として作用する。ポドフィロトキシン、例えば、エトポシドはトポイソメラーゼIIと相互作用し、これがDNA鎖の分断につながることによってDNA合成を妨害するものと信じられる。
【0168】
植物派生剤は多くの形態の癌の治療に用いられる。例えば、ビンクリスチンは白血病、ホジキンおよび非ホジキンリンパ腫、および小児腫瘍神経芽細胞腫、横紋筋肉腫、およびウィルム腫瘍の治療において用いられる。ビンブラスチンはリンパ腫、精巣癌、腎細胞カルチノーマ、菌状息肉腫、およびカポジ肉腫に対して用いられる。ドキセタキセルは進行した乳癌、非小細胞肺癌(NSCLC)、および卵巣癌に対する有望な活性を示している。
【0169】
エトポシドは広範囲の新生物に対して活性であり、このうち、小細胞肺癌、精巣癌、およびNSCLGが最も応答性である。
【0170】
「生物製剤」は、単独で、または化学療法および/または放射線療法との組み合わせで用いられるとき、癌/腫瘍退化を誘発する生体分子の群である。生物製剤の例には、免疫調節性タンパク質、例えば、サイトカイン、腫瘍抗原に対するモノクローナル抗体、腫瘍抑制遺伝子、および癌ワクチンが含まれる。
【0171】
サイトカインは多大な免疫調節活性を有する。幾つかのサイトカイン、例えば、インターロイキン−2(IL−2、アルデスロイキン)およびインターフェロン−α(IFN−α)は抗腫瘍活性を示し、転移性腎細胞カルチノーマおよび転移性悪性メラノーマの患者の治療が認められている。IL−2はT細胞介在免疫応答に重要なT細胞成長因子である。幾らかの患者に対するIL−2の選択的抗腫瘍効果は自己と非自己とを識別する細胞介在免疫応答の結果であるものと信じられる。
【0172】
インターフェロン−αは重複する活性を有する23の関連するサブタイプを含む。IFN−αは多くの固形および血液学的悪性腫瘍に対する活性を示しており、後者は特に感受性であるものと思われる。
【0173】
インターフェロンの例には、インターフェロン−α、インターフェロン−β(線維芽細胞インターフェロン)およびインターフェロン−γ(線維芽細胞インターフェロン)が含まれる。他のサイトカインの例には、エリスロポエチン(エポエチン−α)、顆粒球−CSF(フィルグラスチン)、および顆粒球、マクロファージ−CSF(サルグラモスチン)が含まれる。サイトカイン以外の他の免疫調節剤には、桿菌カルメッテ−グエリン(Calmette−Guerin)、レバミソール、およびオクトレオチド、天然ホルモン・ソマトスタチンの効果を模倣する長期作用性オクタペプチドが含まれる。
【0174】
さらに、抗癌治療は、腫瘍ワクチンアプローチにおいて用いられる抗体および試薬での免疫療法による治療を含むことができる。この治療クラスにおける主要薬物は、単独の、または化合物、例えば、毒素または癌細胞に対する化学療法剤/細胞毒性剤を坦持する抗体である。腫瘍抗原に対するモノクローナル抗体は腫瘍が発現する抗原、好ましくは、腫瘍特異的抗原に対して誘発された抗体である。例えば、モノクローナル抗体HERCEPTIN(登録商標)(トランスツズマブ)は、転移性乳癌を含む幾つかの乳癌において過剰発現するヒト表皮成長因子受容体2(HER2)に対して生じる。HER2タンパク質の過剰発現は診療所におけるより活動的な疾患および予後の悪さに関連する。HERCEPTIN(登録商標)は、腫瘍がHER2タンパク質を過剰発現する転移性乳癌の環の治療に単一の薬剤として用いられる。
【0175】
腫瘍抗原に対するモノクローナル抗体の他の例はRITUXAN(登録商標)(リツキシマブ)であり、これはリンパ腫細胞上のCD20に対して生じ、正常および悪性CD20+pre−Bおよび成熟B細胞を選択的に枯渇させる。
【0176】
RITUXANは再発性または難治性低悪性度または濾胞性のCD20+、B細胞非ホジキンリンパ腫の患者の治療に単一の薬剤として用いられる。MYELOTARG(登録商標)(ゲンツズマブオゾガミシン)およびCAMPATH(登録商標)(アレムツズマブ)が、用いることができる腫瘍抗原に対するモノクローナル抗体のさらなる例である。
【0177】
加えて、モノクローナル抗体標的化治療薬の例には、癌細胞特異的または標的細胞特異的モノクローナル抗体に結合した細胞毒性剤または放射性同位体を有する治療薬が含まれる。例にはBexxarが含まれる。
【0178】
腫瘍抑制遺伝子は細胞の成長および分裂周期を阻害し、したがって、新形成の発生を妨げるように機能する遺伝子である。腫瘍抑制遺伝子における突然変異は細胞に阻害信号のネットワークのうちの1つまたはそれ以上の構成要素を無視させ、細胞周期チェックポイントを乗り切り、およびより高い割合の制御された細胞成長−癌を生じる。腫瘍抑制遺伝子の例には、Duc−4、NF−1、NF−2、RB、p53、WT1、BRCA1およびBRCA2が含まれる。
【0179】
DPC4は膵臓癌に関与し、細胞分裂を阻害する細胞質経路に関与する。NF−1はRas、細胞質阻害性タンパク質を阻害するタンパク質をコードする。NF−1は神経系の神経線維腫および褐色細胞腫並びに骨髄性白血病に関与する。NF−2は髄膜種、シュワン細胞腫、および神経系の上衣細胞腫に関与する核タンパク質をコードする。RBはPRBタンパク質、細胞周期の主要阻害剤である核タンパク質をコードする。RBは網膜芽細胞腫に加えて骨、膀胱、小細胞肺および乳癌に関与する。P53は、細胞分裂を調節し、およびアポトーシスを誘導することができるp53タンパク質をコードする。p53の突然変異および/または休止は広範囲の癌において見出される。WT1は腎臓のウィルム腫瘍に関与する。BRCA1は乳癌および卵巣癌に関与し、BRCA2は乳癌に関与する。腫瘍抑制遺伝子は、この腫瘍抑制機能を発揮する場合、腫瘍細胞内に移すことができる。
【0180】
癌ワクチンは腫瘍に対する身体の特異的免疫応答を誘導する薬剤の群である。研究および開発および臨床試験中の癌ワクチンのほとんどは腫瘍関連抗原(TAA)である。TAAは、腫瘍細胞上に存在し、正常細胞上には比較的存在しないか、または少ない構造(すなわち、タンパク質、酵素または炭水化物)である。腫瘍細胞にかなり独特であるため、TAAは、認識し、およびこれらの破壊を生じるための標的を免疫系にもたらす。TAAの例には、ガングリオシド(GM2)、前立腺特異的抗原(PSA)、α−フェトプロテイン(AFP)、癌胎児性抗原(CEA)(大腸癌および他のアデノカルチノーマ、例えば、乳、肺、消化管、および膵臓癌によって産生される)、メラノーマ関連抗原(MART−1、gap100、MAGE1,3チロシナーゼ)、パピローマウイルスE6およびE7断片、自己腫瘍細胞および同種腫瘍細胞の全細胞またはタンパク質/溶解物が含まれる。
【0181】
近年の開発は、癌の治療に用いられる伝統的な細胞毒性およびホルモン療法に加えて、癌の治療のためのさらなる療法を導入している。例えば、多くの形態の遺伝子療法が前臨床または臨床試験を受けている。したがって、本発明の別の実施形態は、ここで開示される化合物の、癌の治療のための遺伝子療法と組み合わせての使用である。癌を治療する遺伝学的戦略の概要については、Hallら(Am J Hum Genet 61:785−789,1997)およびKufeら(Cancer Medicine,5th Ed,pp 876−889,BC Decker,Hamilton 2000)を参照のこと。遺伝子療法はあらゆる腫瘍抑制性遺伝子の送達に用いることができる。このような遺伝子の例には、これらに限定されるものではないが、組換えウイルス介在遺伝子移送によって送達することができる(例えば、米国特許第6,069,134号を参照)P53、uPA/uPARアンタゴニスト(「Adenovirus−Mediated Delivery of a uPA/uPAR Antagonist Suppresses Angiogenesis−Dependent Tumor Growth and Dissemination in Mice,」 Gene Therapy,August 1998;5(8):1105−13)、およびインターフェロンガンマ(J Immunol 2000; 1 64:217−222)が含まれる。
【0182】
加えて、腫瘍の血管新生(血管形成)の阻害に基づくアプローチが現在開発途上にある。この概念の目的は、新たに構築される腫瘍血管系によってもたらされる栄養および酸素供給から腫瘍を切り離すことである。「血管形成阻害剤」は、機構に関わらず、新規血管の形成を阻害する化合物を指す。血管形成阻害剤の例には、これらに限定されるものではないが、チロシンキナーゼ阻害剤、例えば、チロシンキナーゼ受容体Flt−1(VEGFR1)およびFlk−1/KDR(VEGFR2)の阻害剤、表皮誘導、線維芽細胞誘導、または血小板誘導成長因子の阻害剤、MMP(マトリックスメタロプロテアーゼ)阻害剤、インテグリンブロッカー、インターフェロン−α、インターロイキン−12、ペントサンポリスルフェート、シクロオキシゲナーゼ阻害剤が含まれ、これには、非ステロイド系抗炎症剤(NSAID)、例えば、アスピリンおよびイブプロフェンに加えて、選択的シクロオキシゲナーゼ−2阻害剤、例えば、セレコキシブおよびロフェコキシブ(PNAS,Vol.89,p.7384(1992);JNCI,Vol.69,p.475(1982);Arch.Opthalmol,Vol.108,p.573(1990);Anat.Rec,Vol.238,p.68(1994);FEBS Letters,Vol.372,p.83(1995);Clin,Orthop.Vol.313,p.76(1995);J.Mol Endocrinol.,Vol.16,p.107(1996);Jpn.J.Pharmacol,Vol.75,p.105(1997);Cancer Res.,Vol.57,p.1625(1997);Cell,Vol.93,p.705(1998);Intl.J.Mol.Med.,Vol.2,p.715(1998);J.Biol.Chem.,Vol.274,p.9116(1999))、ステロイド系抗炎症剤(例えば、副腎皮質ステロイド、ミネラロコルチコイド、デキサメタゾン、プレドニゾン、プレドニゾロン、メチルプレド、ベタメタゾン)、カルボキシアミドトリアゾール、コンブレタスタチンA−4、スクアラミン、6−O−クロロアセチル−カルボニル)−フマギロール、タリドミド、アンジオスタチン、トロポニン−1、アンジオテンシンIIアンタゴニスト(Fernandezら、J.Lab.Clin.Med.105:141−145(1985)を参照)、およびVEGFに対する抗体(Nature Biotechnology,Vol.17,pp.963−968(1999年10月);Kimら、Nature,362,841−844(1993);WO 00/44777;およびWO 00/61186を参照)が含まれる。
【0183】
血管形成を調節または阻害し、および本発明の化合物と組み合わせて用いることもできる他の治療薬には、凝血および繊維素溶解系を調節または阻害する薬剤が含まれる(Clin.Chem.La.Med.38:679−692(2000)の総説を参照)。凝血および繊維素溶解経路を調節または阻害する薬剤の例には、これらに限定されるものではないが、ヘパリン(Thromb.Haemost.80:10−23(1998)を参照)、低分子量ヘパリンおよびカルボキシペプチダーゼU阻害剤(活性トロンビン活性化可能な繊維素溶解阻害剤[TAFIa]の阻害剤としても知られる)(Thrombosis Res.101 :329−354(2001)を参照)が含まれる。TAFIa阻害剤はPCT公開WO 03/013,526および米国逐次第60/349,925号(2002年1月18日出願)に記載されている。
【0184】
血管形成阻害剤の他の例には、これらに限定されるものではないが、エンドスタチン、ウクライン、ランピルナーゼ、M862、5−メトキシ−4−[2−メチル−3−(3−メチル−2−ブテニル)オキシラニル]−1−オキサスピロ[2,5]オクト−6−イル(クロロアセチル)カルバメート、アセチルジナナリン、5−アミノ−1−[[3,5−ジクロロ−4−(4−クロロベンゾイル)フェニル]メチル]−1H−1,2,3−トリアゾール−4−カルボキサミド、CM101、スクアラミン、コンブレタスタチン、RPI4610、NX31838、硫酸化マンノペントースホスフェート、7,7−(カルボニル−ビス[イミノ−N−メチル−4,2−ピロロカルボニルイミノ[N−メチル−4,2−ピロール]−カルボニルイミノ]−ビス−(1,3−ナフタレンジスルホネート)、および3−[(2,4−ジメチルピロル−5−イル)メチレン]−2−インドリノン(SU5416)が含まれる。
【0185】
加えて、癌治療は新生物細胞の終末分化の誘導によっても試みられている。適切な分化剤には以下の参考文献(これらの内容は参照によりここに組み込まれる)のいずれか1つ以上に開示される化合物が含まれる。
【0186】
a)極性化合物(Marksら(1987);Friend,C.,Scher,W.,Holland,J.W.,and Sato,T.(1971) Proc.Natl.Acad.Sci.(USA) 68:378−382;Tanaka,M.,Levy,J.,Terada,M.,Breslow,R.,Rifkind,R.A.,and Marks,P.A.(1975) Proc.Natl.Acad.Sci.(USA) 72:1003−1006;Reuben,R.C..Wife,R.L.,Breslow,R.,Rifkind,R.A.,and Marks,P.A.(1976) Proc.Natl.Acad.Sci.(USA) 73:862−866);
b)ビタミンDおよびレチノール酸の誘導体(Abe,E.,Miyaura,C、,Sakagami,H.,Takeda,M.,Konno,K.,Yamazaki,T.,Yoshika,S.,and Suda,T.(1981) Proc.Natl.Acad.Sci.(USA) 78:4990−4994;Schwartz,E.L.,Snoddy,J.R.,Kreutter,D.,Rasmussen,H.,and Sartorelli,A.C.(1983) Proc.Am.Assoc.Cancer Res.24:18;Tanenaga,K.,Hozumi,M.,and Sakagami,Y.(1980) Cancer Res.40:914−919);
c)ステロイドホルモン(Lotem,J.and Sachs,L.(1975) Int.J.Cancer 15:731−740);
d)成長因子(Sachs,L.(1978) Nature(Lond.) 274:535,Metcalf,D.(1985) Science,229:16−22);
e)プロテアーゼ(Scher,W.,Scher,B.M.,and Waxman,S.(1983) Exp.Hematol.11:490−498; Scher,W.,Scher,B.M.,and Waxman,S.(1982) Biochem.& Biophys.Res.Comm.109:348−354);
f)腫瘍プロモーター(Huberman,E.and Callaham,M.F.(1979) Proc.Natl.Acad.Sci.(USA) 76:1293−1297;Lottem,J.and Sachs,L.(1979) Proc.Natl.Acad.Sci.(USA) 76:5158−5162);および
g)DNAまたはRNA合成の阻害剤(Schwartz,E.L.and Sartorelli,A.C.(1982) Cancer Res.42:2651−2655、Terada,M.,Epner,E.,Nudel,U.,Salmon,J.,Fibach,E.,Rifkind,R.A.,and Marks,P.A.(1978) Proc.Natl.Acad.Sci.(USA) 75:2795−2799;Morin,M.J.and Sartorelli,A.C.(1984) Cancer Res.44:2807−2812;Schwartz,E.L.,Brown,B.J.,Nierenberg,M.,Marsh,J.C,and Sartorelli,A.C.(1983) Cancer Res.43:2725−2730; Sugano,H.,Furusawa,M.,Kawaguchi,T.,and Ikawa,Y.(1973)、Bibl.Hematol.39:943−954; Ebert,P.S.,Wars,I.,and Buell,D.N.(1976) Cancer Res.36:1809−1813;Hayashi,M.,Okabe,J.,and Hozumi,M.(1979) Gann 70:235−238)。
【0187】
「レチノイド受容体修飾因子」は、機構に関わらず、受容体へのレチノイドの結合を妨害または阻害する化合物を指す。このようなレチノイド受容体修飾因子の例には、ベキサロテン、トレチノイン、13−シス−レチノイン酸、9−シス−レチノイン酸、α−ジフルオロメチロルニチン、ILX23−7553、トランス−N−(4’−ヒドロキシフェニル)レチナミド、およびN−4−カルボキシフェニルレチナミドが含まれる。
【0188】
「細胞毒性/細胞増殖抑制剤」は、主として細胞の機能を直接妨害するか、または細胞の有糸分裂を阻害または妨害することによって、細胞死を生じるか、または細胞増殖を阻害する化合物を指し、これには、アルキル化剤(例えば、上述のもの)、腫瘍壊死因子、インターカレーター、低酸素床活性化性化合物、微小管阻害剤/微小管安定化剤、有糸分裂キネシンの阻害剤、有利分裂の進行に関わるキナーゼの阻害剤、造血性成長因子、トポイソメラーゼ阻害剤、生物学的応答改変剤、プロテアソーム阻害剤およびユビキチンリガーゼ阻害剤が含まれる。加えて、細胞毒性/細胞増殖抑制剤には代謝拮抗剤;ホルモン/抗ホルモン治療薬、および上述の治療薬を標的とするモノクローナル抗体のいずれもが含まれる。
【0189】
細胞毒性剤の例には、これらに限定されるものではないが、セルテネフ、カケクチン、イホスファミド、タソネルミン、ロニダミン、アルトレタミン、プレドニムスチン、ジブロモドゥルシトール、ラニムスチン、ホテムスチン、ネダプラチン、オキサリプラチン、テモゾロミド、ヘプタプラチン、エストラムスチン、イムプロスルファントシレート、トロホスファミド、ニムスチン、塩化ジブロスピジウム、プミテパ、ロバプラチン、サトラプラチン、プロフィロマイシン、シスプラチン、イロフルベン、デキシホスファミド、シス−アミンジクロロ(2−メチル−ピリジン)白金、ベンジルグアニン、グルホスファミド、GPX100、(トランス,トランス,トランス)−ビス−mu−(ヘキサン−1,6−ジアミン)−mu−[ジアミン−白金II]ビス[ジアミン(クロロ)白金II]四塩化物、ジアリジヂニルスペルミン、三酸化ヒ素、1−(11−ドデシルアミノ−10−ヒドロキシウンデシル)−3,7−ジメチルキサンチン、ゾルビシン、イダルビシン、ダウノルビシン、ビスアントレン、ミトキサントロン、ピラルビシン、ピナフィド、バルルビシン、アムルビシン、アンチネオプラストン、3’−デアミノ−3’−モルホリノ−13−デオキソ−10−ヒドロキシカルミノマイシン、アンナマイシン、ガラルビシン、エリナフィド、MEN10755、および4−デメトキシ−3−デアミノ−3−アジリジニル−4−メチルスルホニル−ダウノルビシン(WO 00/50032を参照)が含まれる。
【0190】
低酸素症活性化性化合物の一例はチラパザミンである。
【0191】
プロテアソーム阻害剤の例には、これらに限定されるものではないが、ラクタシスチンおよびボルテゾミブが含まれる。
【0192】
微小管阻害剤/微小管安定化剤の例には、パクリタキセル、硫酸ビンデシン、3’,4’−ジデヒドロ−4’−デオキシ−8’−ノルビンカロイコブラスチン、ドセタキソール、リゾキシン、ドラスタチン、イセチオン酸ミボブリン、アウリスタチン、セマドチン、RPR109881、BMS184476、ビンフルニン、クリプトフィシン、2,3,4,5,6−ペンタフルオロ−N−(3−フルオロ−4−メトキシフェニル)ベンゼンスルホンアミド、アンビドロビンブラスチン、N,N−ジメチル−L−バリル−L−バリル−N−メチル−L−バリル−L−プロリル−L−プロリン−t−ブチルアニリド、TDX258、エポチロン(例えば、米国特許第6,284,781号および第6,288,237号を参照)およびBMS188797が含まれる。
【0193】
トポイソメラーゼ阻害剤の幾つかの例は、トポテカン、ヒカプタミン、イリノテカン、ルビテカン、6−エトキシプロピオニル−3’,4’−O−エクソ−ベンジリデン−カルトロイシン、9−メトキシ−N,N−ジメチル−5−ニトロピラゾロ[3,4,5−kl]アクリジン−2−(6H)プロパンアミン、1−アミノ−9−エチル−5−フルオロ−2,3−ジヒドロ−9−ヒドロキシ−4−メチル−1H、12H−ベンゾ[de]ピラノ[3’,4’:b,7]−インドリジノ[1,2b]キノリン−l0、13(9H、15H)ジオン、ルルトテカン、7−[2−(N−イソプロピルアミノ)エチル]−(20S)カムプトテシン、BNP1350、BNPI1100、BN80915、BN80942、リン酸エトポシド、テニポシド、ソブゾキサン、2’−ジメチルアミノ−2’−デオキシ−エトポシド、GL331、N−[2−(ジメチルアミノ)エチル]−9−ヒドロキシ−5,6−ジメチル−6H−ピリド[4,3−b]カルバゾール−1−カルボキサミド、アズラクリン、(5a,5aB,8aa,9b)−9−[2−[N−[2−(ジメチルアミノ)エチル]−N−メチルアミノ]エチル]−5−[4−ヒドロキシ−3,5−ジメトキシフェニル]−5,5a,6,8,8a,9−ヘキソヒドロフロ(3’,4’:6,7)ナフト(2,3−d)−1,3−ジオキソ−6−オン、2,3−(メチレンジオキシ)−5−メチル−7−ヒドロキシ−8−メトキシベンゾ[c]−フェナントリジニウム、6,9−ビス[(2−アミノエチル)アミノ]ベンゾ[g]イソギノリン−5,10−ジオン、5−(3−アミノプロピルアミノ)−7,10−ジヒドロキシ−2−(2−ヒドロキシエチルアミノメチル)−6H−ピラゾロ[4,5、1−de]アクリジン−6−オン、N−[1−[2(ジエチルアミノ)エチルアミノ]−7−メトキシ−9−オキソ−9H−チオキサンテン−4−イルメチル]ホルムアミド、N−(2−(ジメチルアミノ)エチル)アクリジン−4−カルボキサミド、6−[[2−(ジメチルアミノ)エチル]アミノ]−3−ヒドロキシ−7H−インデノ[2,1 −c]キノリン−7−オン、およびジメスナである。
【0194】
有糸分裂キネシン、特に、ヒト有糸分裂キネシンの阻害剤の例は、PCT公開WO 01/30768、WO01/98278、WO03/050,064、WO03/050,122、WO03/049,527、WO03/049,679、WO03/049,678およびWO03/39460および係属PCT出願US03/06403(2003年3月4日出願)、US03/15861(2003年5月19日出願)、US03/15810(2003年5月19日出願)、US03/18482(2003年6月12日出願)およびUS03/18694(2003年6月12日出願)に記載されている。一実施形態において、有糸分裂キネシンの阻害剤には、これらに限定されるものではないが、KSPの阻害剤、MKLP1の阻害剤、CENP−Eの阻害剤、MCAKの阻害剤、Kif14の阻害剤、Mphosph1の阻害剤およびRab6−KIFLの阻害剤が含まれる。
【0195】
「有糸分裂の進行に関わるキナーゼの阻害剤」には、これらに限定されるものではないが、オーロラキナーゼ阻害剤、ポロ様キナーゼ(PLK)の阻害剤(特に、PLK−1の阻害剤)、bub−1の阻害剤およびbub−R1の阻害剤が含まれる。
【0196】
「抗増殖剤」には、アンチセンスRNAおよびDNAオリゴにヌクレオチド、例えば、G3139、ODN698、RVASKRAS、GEM231、およびINX3001、並びに代謝拮抗剤、例えば、エノシタビン、カンノフル、テガフル、ペントシタチン、ドキシフルリジン、トリメトレキセート、フルダラビン、カペシタビン、ガロシタビン、シタラビンオクホスフェート、ホステアビンナトリウム水和物、ラルチトレキセド、パルチトレキシド、エミテフル、チアゾフリン、デシタビン、ノラトレキセド、ペメトレキセド、ネルザラビン、2’−デオキシ−2’−メチリデンシチジン、2’−フルオロメチレン−2’−デオキシシチジン、N−[5−(2,3−ジヒドロ−ベンゾフリル)スルホニル]−N’−(3,4−ジクロロフェニル)尿素、N6−[4−デオキシ−4−[N2−[2(E),4(E)−テトラデカジエノイル]グリシルアミノ]−L−グリセロ−B−L−マンノ−ヘプトピラノシル]アデニン、アプリジン、エクテイナスシジン、トロキサシタビン、4−[2−アミノ−4−オキサ−4,6,7,8−テトラヒドロ−3H−ピリミジノ[5,4−b][1,4]チアジン−6−イル−(S)−エチル]−2,5−チエノイル−L−グルタミン酸、アミノプテリン、5−フルオロウラシル、アラノシン、11−アセチル−8−(カルバモイルオキシメチル)−4−ホルミル−6−メトキシ−14−オキソ−1,11−ジアザテトラシクロ(7.4.1.0.0)−テトラデカ−2,4,6−トリエン−9−イル酢酸エステル、スワインソニン、ロメトレキソール、デクスラゾキサン、メチオニナーゼ、2’−シアノ−2’−デオキシ−N4−パルミトイル−1−B−D−アラビノフラノシルシトシンおよび3−アミノピリジン−2−カルボキサルデヒドチオセミカルバゾンが含まれる。
【0197】
「HMG−CoAレダクターゼ阻害剤」は3−ヒドロキシ−3−メチルグルタリール−CoAレダクターゼの阻害剤を指す。用いることができるHMG−CoAレダクターゼ阻害剤の例には、これらに限定されるものではないが、ロバスタチン(MEVACOR(登録商標);米国特許第4,231,938号、第4,294,926号および第4,319,039号を参照)、シムバスタチン(ZOCOR(登録商標);米国特許第4,444,784号、同第4,820,850号および同第4,916,239号を参照)、プラバスタチン(PRAVACHOL(登録商標);米国特許第4,346,227号、同第4,537,859号、同第4,410,629号、同第5,030,447号および同第5,180,589号を参照)、フルバスタチン(LESCOL(登録商標);米国特許第5,354,772号、同第4,911,165号、同第4,929,437号、同第5,189,164号、同第5,118,853号、同第5,290,946号および同第5,356,896号を参照)およびアトルバスタチン(LIPITOR(登録商標);米国特許第5,273,995号、同第4,681,893号、同第5,489,691号および同第5,342,952号を参照)が含まれる。本発明の方法において用いることができるこれらの、およびさらなるHMG−CoAレダクターゼ阻害剤の構造式は、M.Yalpani,「Cholesterol Lowering Drugs」,Chemistry & Industry,pp.85−89(1996年2月5日)の第87頁並びに米国特許第4,782,084号および第4,885,314に記載されている。ここで用いられるHMG−CoAレダクターゼ阻害剤という用語は、すべての医薬的に許容されるラクトンおよび開環形態(すなわち、ラクトン環が開環して遊離酸を形成する場合)に加えて、阻害活性を有する塩を含み、したがって、HMG−CoAレダクターゼを有する化合物のクラスター形態にあるこのような塩、エステル、開放酸およびラクトン形態の使用が本発明の範囲内にある。
【0198】
「プレニル−プロテイントランスフェラーゼ阻害剤」は、ファメシル−プロテイントランスフェラーゼ(FPTaee)、I型ゲラニルゲラニル−プロテイントランスフェラーゼ(GGPTase−I)、およびII型ゲラニルゲラニル−プロテイントランスフェラーゼ(GGPTase−II、別名Rab GGPTase)を含む、プレニル−プロテイントランスフェラーゼ酵素のいずれか1種類またはいずれかの組み合わせを阻害する化合物を指す。
【0199】
プレニル−プロテイントランスフェラーゼ阻害剤の例は以下の刊行物および特許に見出すことができる:WO96/30343、WO97/18813、WO97/21701、WO97/23478、WO97/38665、WO98/28980、WO98/29119、WO95/32987、米国特許第5,420,245号、米国特許第5,523,430号、米国特許第5,532,359号、米国特許第5,510,510号、米国特許第5,589,485号、米国特許第5,602,098号、欧州特許公開0 618 221、欧州特許公開0 675 112、欧州特許公開0 604 181、欧州特許公開0 696 593、WO94/19357、WO95/08542、WO95/11917、WO95/12612、WO95/12572、WO95/10514号、米国特許第5,661,152号、WO95/10515、WO95/10516、WO95/24612、WO95/34535、WO95/25086、WO96/05529、WO96/06138、WO96/06193、WO96/16443、WO96/21701、WO96/21456、WO96/22278、WO96/24611、WO96/24612、WO96/05168、WO96/05169、WO96/00736号、米国特許第5,571,792号、WO96/17861、WO96/33159、WO96/34850、WO96/34851、WO96/30017、WO96/30018、WO96/30362、WO96/30363、WO96/31111、WO96/31477、WO96/31478、WO96/31501、WO97/00252、WO97/03047、WO97/03050、WO97/04785、WO97/02920、WO97/17070、WO97/23478、WO97/26246、WO97/30053、WO97/44350、WO98/02436、および米国特許第5,532,359号。
【0200】
血管形成に対するプレニル−プロテイントランスフェラーゼ阻害剤の役割の例については、European J.of Cancer,Vol.35,No.9,pp.1394−1401(1999)を参照のこと。
【0201】
「細胞周期チェックポイントを妨害する薬剤」は、細胞周期チェックポイント信号を伝達するプロテインキナーゼを阻害し、これによりこの癌細胞をDNA損傷性薬剤に感受性とする化合物を指す。このような薬剤にはATR、ATM、Chk1およびChk2キナーゼの阻害剤並びにcdkおよびcdcキナーゼ阻害剤が含まれ、7−ヒドロキシスタウロスポリン、フラボピリドール、CYC202(シクラセル)およびBMS−387032によって具体的に例示される。
【0202】
「細胞増殖および生存信号伝達経路の阻害剤」は、細胞表面受容体およびこれらの表面受容体の下流の信号伝達カスケードを阻害する薬剤を指す。このような薬剤には、EGFRの阻害剤(例えば、ゲフィチニブおよびエルロチニブ)、ERB−2の阻害剤(例えば、トラスツズマブ)、IGFRの阻害剤、サイトカイン受容体の阻害剤、METの阻害剤、PI3Kの阻害剤(例えば、LY294002)、セリン/トレオニンキナーゼ(Aktの阻害剤、例えば、WO 02/083064、WO 02/083139、WO 02/083140およびWO 02/083138に記載されるものを含むがこれらに限定されるものではない)、Rafキナーゼの阻害剤(例えば、BAY−43−9006)、MEKの阻害剤(例えば、CI−1040およびPD−098059)およびmTORの阻害剤(例えば、Wyeth CCI−779)が含まれる。このような薬剤には小分子阻害剤化合物および抗体アンタゴニストが含まれる。
【0203】
「アポトーシス誘導剤」にはTNF受容体ファミリー構成要素(TRAIL受容体を含む)の賦活因子が含まれる。
【0204】
本発明は選択的COX−2阻害剤であるNSAIDとの組み合わせも包含する。本明細書の目的上、COX−2の選択的阻害剤であるNSAIDは、細胞またはミクロソームアッセイによって評価されるCOX−1のIC50を上回るCOX−2のIC50の割合による測定で、COX−1を少なくとも100倍上回るCOX−2阻害の特異性を有するものと定義される。このような化合物には、これらに限定されるものではないが、米国特許第5,474,995号、米国特許第5,861,419号、米国特許第6,001,843号、米国特許第6,020,343号、米国特許第5,409,944号、米国特許第5,436,265号、米国特許第5,536,752号、米国特許第5,550,142号、米国特許第5,604,260号、米国特許第5,698,584号、米国特許第5,710,140号、WO94/15932号、米国特許第5,344,991号、米国特許第5,134,142号、米国特許第5,380,738号、米国特許第5,393,790号、米国特許第5,466,823号、米国特許第5,633,272号、および米国特許第5,932,598号(これらのすべては参照によりここに組み込まれる)に開示されるものが含まれる。
【0205】
本発明の治療方法において特に有用であるCOX−2の阻害剤は:3−フェニル−4−(4−(メチルスルホニル)フェニル)−2−(5H)−フラノン;および5−クロロ−3−(4−メチルスルホニル)フェニル−2−(2−メチル−5−ピリジニル)ピリジン;またはこれらの医薬的に許容される塩である。
【0206】
COX−2の特異的阻害剤として記載され、したがって、本発明において有用である化合物には、これらに限定されるものではないが:パレコキシブ、CELEBREX(登録商標)およびBEXTRA(登録商標)またはこれらの医薬的に許容される塩が含まれる。
【0207】
上で用いられる場合、「インテグリンブロッカー」は、αβインテグリンへの生理学的リガンドの結合と選択的に拮抗し、これを阻害し、または相殺する化合物、αβインテグリンへの生理学的リガンドの結合と選択的に拮抗し、これを阻害し、または相殺する化合物、αβインテグリンおよびαβインテグリンの両者への生理学的リガンドの結合と選択的に拮抗し、これを阻害し、または相殺する化合物、および毛細管内皮細胞上に発現する特定のインテグリン(1種類以上)の活性と拮抗し、これを阻害し、または相殺する化合物を指す。この用語はαβ、αβ、αβ、αβ、αβ、αβおよびαβインテグリンのアンタゴニストをも指す。この用語はαβ、αβ、αβ、αβ、αβ、αβ、αβ、αβおよびαβインテグリンのあらゆる組み合わせのアンタゴニストをも指す。
【0208】
チロシンキナーゼ阻害剤の幾つかの具体的な例には、N−(トリフルオロメチルフェニル)−5−メチルイソオキサゾル−4−カルボキサミド、3−[(2,4−ジメチルピロル−5−イル)メチリデニル]インドリン−2−オン、17−(アリルアミノ)−17−デオキシゲルダナマイシン、4−(3−クロロ−4−フルオロフェニルアミノ)−7−メトキシ−6−[3−(4−モルホリニル)プロポキシル]キナゾリン、N−(3−エチニルフェニル)−6,7−ビス(2−メトキシエトキシ)−4−キナゾリンアミン、BIBX1382、2,3,9,10,11,12−ヘキサヒドロ−10−(ヒドロキシメチル)−10−ヒドロキシ−9−メチル−9,12−エポキシ−1H−ジインドロ[1,2,3−fg:3’,2’,1’−kl]ピロロ[3,4−i][1,6]ベンゾジアゾシン−1−オン、SH268、ゲニステイン、STI571、CEP2563、4−(3−クロロフェニルアミノ)−5,6−ジメチル−7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジンメタンスルホネート、4−{3−ブロモ−4−ヒドロキシフェニル}アミノ−6,7−ジメトキシキナゾリン、4−(4’−ヒドロキシフェニル)アミノ−6,7−ジメトキシキナゾリン、SU6668、STI571A、N−4−クロロフェニル−4−(4−ピリジルメチル)−1−フタラジンアミン、およびEMD121974が含まれる。
【0209】
抗癌化合物以外の化合物との組み合わせも本発明の方法に包含される。例えば、ここで請求される化合物とPPAR−γ(すなわち、PPAR−ガンマ)アゴニストおよびPPAR−δ(すなわち、PPAR−デルタ)アゴニストとの組み合わせは特定の悪性腫瘍の治療において有用である。PPAR−γおよびPPAR−δは核ペロキシソーム増殖因子活性化受容体γおよびδである。内皮細胞上でのPPAR−γの発現および血管形成へのこの関与は文献において報告されている(J.Cardiovasc.Pharmacol.1998; 31:909−913;J.Biol Chem.1999; 274:9116−9121;Invest.Ophthalmol Vis.Sci.2000; 41:2309−2317を参照)。より最近では、PPAR−γアゴニストがイン・ビトロでVEGFに対する血管形成応答を阻害することが示されている;トログリタゾンおよびマレイン酸ロシグリタゾンの両者はマウスにおける網膜新血管形成の発生を阻害する(Arch.Ophthamol.2001; 119:709−717)。PPAR−γアゴニストおよびPPAR−γ/αアゴニストの例には、これらに限定されるものではないが、チアゾリジンジオン(例えば、DRF2725、CS−011、トログリタゾン、ロシグリタゾン、およびピオグリタゾン)、フェノフィブレート、ゲムフィブロジル、クロフィブレート、GW2570、SB219994、AR−H039242、JTT−501、MCC−555、GW2331、GW409544、NN2344、KRP297、NP0110、DRF4158、NN622、GI262570、PNU182716、DRF552926、2−[(5,7−ジプロピル−3−トリフルオロメチル−1,2−ベンゾイソオキサゾル−6−イル)オキシ]−2−メチルプロピオン酸(USSN 09/782,856に開示される)、および2(R)−7−(3−(2−クロロ−4−(4−フルオロフェノキシ)フェノキシ)プロポキシ)−2−エチルクロマン−2−カルボン酸(USSN 60/235,708および60/244,697に開示される)が含まれる。
【0210】
本発明の化合物は先天的多剤耐性(MDR)、特に、トランスポータータンパク質の高レベルの発現に関連するMDRの阻害剤と組み合わせて投与することもできる。このようなMDR阻害剤には、p−糖タンパク質(P−gp)、例えば、LY335979、XR9576、OC144−093、R101922、VX853およびPSC833(バルスポダル)が含まれる。
【0211】
本発明の化合物は、本発明の化合物を単独で、または放射線療法と共に用いることから生じ得る、急性、遅発性、遅延相、および予測性嘔吐を含む、悪心または嘔吐の治療に制吐剤と組み合わせて用いることができる。嘔吐を予防または治療するため、本発明の化合物を他の制吐剤、特に、ニューロキニン−1受容体アンタゴニスト、5HT3受容体アンタゴニスト、例えば、オンダンセトロン、グラニセトロン、トロピセトロン、およびザチセトロン、GABAB受容体アゴニスト、例えば、バクロフェン、副腎皮質ステロイド、例えば、Decadron(デキサメタゾン)、Kenalog、Aristocort、Nasalide、Preferid、Benecortenまたは他のもの、例えば、米国特許第2,789,118号、第2,990,401号、第3,048,581号、第3,126,375号、第3,929,768号、第3,996,359号、第3,928,326号および第3,749,712号に開示されるもの、抗ドーパミン作動薬、例えば、フェノチアジン(例えば、プロクロルペラジン、フルフェナジン、チオリダジンおよびメソリダジン)、メトクロプラミドおよびドロナビノールと共に用いることができる。一実施形態においては、ニューロキニン−1受容体アンタゴニスト、5HT3受容体アンタゴニストおよび副腎皮質ステロイドから選択される制吐剤を補助剤として、本発明の化合物の投与で生じ得る嘔吐の治療または予防のために投与する。
【0212】
本発明の化合物に関連して有用であるニューロキニン−1受容体アンタゴニストは、例えば、米国特許第5,162,339号、同第5,232,929号、同第5,242,930号、同第5,373,003号、同第5,387,595号、同第5,459,270号、同第5,494,926号、同第5,496,833号、同第5,637,699号、同第5,719,147号;欧州特許公開第EP0360390号、第0394989号、第0428434号、第0429366号、第0430771号、第0436334号、第0443132号、第0482539号、第0498069号、第0499313号、第0512901号、第0512902号、第0514273号、第0514274号、第0514275号、第0514276号、第0515681号、第0517589号、第0520555号、第0522808号、第0528495号、第0532456号、第0533280号、第0536817号、第0545478号、第0558156号、第0577394号、第0585913号、第0590152号、第0599538号、第0610793号、第0634402号、第0686629号、第0693489号、第0694535号、第0699655号、第0699674号、第0707006号、第0708101号、第0709375号、第0709376号、第0714891号、第0723959号、第0733632号および第0776893号、PCT国際特許公開WO90/05525、WO90/05729、WO91/09844、WO91/18899、WO92/01688、WO92/06079、WO92/12151、WO92/15585、WO92/17449、WO92/20661、WO92/20676、WO92/21677、WO92/22569、WO93/00330、WO93/00331、WO93/01159、WO93/01165、WO93/01169、WO93/01170、WO93/06099、WO93/09116、WO93/10073、WO93/14084、WO93/14113、WO93/18023、WO93/19064、WO93/21155、WO93/21181、WO93/23380、WO93/24465、WO94/00440、WO94/01402、WO94/02461、WO94/02595、WO94/03429、WO94/03445、WO94/04494、WO94/04496、WO94/05625、WO94/07843、WO94/08997、WO94/10165、WO94/10167、WO94/10168、WO94/10170、WO94/11368、WO94/13639、WO94/13663、WO94/14767、WO94/15903、WO94/19320、WO94/19323、WO94/20500、WO94/26735、WO94/26740、WO94/29309、WO95/02595、WO95/04040、WO95/04042、WO95/06645、WO95/07886、WO95/07908、WO95/08549、WO95/11880、WO95/14017、WO95/15311、WO95/16679、WO95/17382、WO95/18124、WO95/18129、WO95/19344、WO95/20575、WO95/21819、WO95/22525、WO95/23798、WO95/26338、WO95/28418、WO95/30674、WO95/30687、WO95/33744、WO96/05181、WO96/05193、WO96/05203、WO96/06094、WO96/07649、WO96/10562、WO96/16939、WO96/18643、WO96/20197、WO96/21661、WO96/29304、WO96/29317、WO96/29326、WO96/29328、WO96/31214、WO96/32385、WO96/37489、WO97/01553、WO97/01554、WO97/03066、WO97/08144、WO97/14671、WO97/17362、WO97/18206、WO97/19084、WO97/19942およびWO97/21702並びに英国特許公開第2 266 529号、第2 268 931号、第2 269 170号、第2 269 590号、第2 271 774号、第2 292 144号、第2 293 168号、第2 293 169号、および第2 302 689号において十分に説明されている。このような化合物の調製は前記特許および刊行物に十分に説明されており、これらは参照によりここに組み込まれる。
【0213】
一実施形態において、本発明の化合物に関連して有用なニューロキニン−1受容体アンタゴニストは:米国特許第5,719,147号に記載される、2−(R)−(1−(R)−(3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル)エトキシ)−3−(S)−(4−フルオロフェニル)−4−(3−(5−オキソ−1H,4H−1,2,4−トリアゾロ)メチル)モルホリン、またはこれらの医薬的に許容される塩から選択される。
【0214】
本発明の化合物は貧血の治療において有用な薬剤と共に投与することもできる。このような貧血治療薬は、例えば、連続赤血球形成受容体賦活因子(例えば、エポエチンアルファ)である。
【0215】
本発明の化合物は好中球減少症の治療において有用な薬剤と共に投与することもできる。このような好中球減少症治療薬は、例えば、好中球の産生および機能を調節する造血性成長因子、例えば、ヒト顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)である。G−CSFの例にはフィルグラスチムが含まれる。
【0216】
本発明の化合物は免疫学的賦活薬、例えば、レバミソール、イソプリノシンおよびZadaxinと共に投与することもできる。
【0217】
本発明の化合物は骨癌を含む癌の治療または予防にもビスホスホネート(ビスホスホネート、ジホスホネート、ビスリン酸および二リン酸を含むものと理解される)との組み合わせで有用であり得る。ビスホスホネートに例には、これらに限定されるものではないが:エチドロネート(Didronel)、パミドロネート(Aredia)、アレンドロネート(Fosamax)、リセドロネート(Actonel)、ゾレドロネート(Zometa)、イバンドロネート(Boniva)、インカドロネートまたはシマドロネート、クロドロネート、EB−1053、ミノドロネート、ネリドロネート、ピリドロネートおよびチルドロネートが含まれ、これにはこれらのあらゆるすべての医薬的に許容される塩、誘導体、水和物および混合物が含まれる。
【0218】
したがって、本発明の範囲は、ここで請求される化合物の以下から選択される第2化合物との組み合わせでの使用を包含する:HDAC阻害剤(例えば、上述のHDAC阻害剤のいずれか1種類以上)、アルキル化剤、抗生物質剤、代謝拮抗剤、ホルモン剤、植物派生剤、生物製剤、遺伝子治療薬、抗血管形成剤、分化誘導剤、レチノイド受容体修飾因子、細胞毒性/細胞増殖抑制剤、抗増殖剤、HMG−CoAレダクターゼ阻害剤、プレニル−プロテイントランスフェラーゼ阻害剤、細胞周期チェックポイントを妨害する薬剤、細胞増殖および生存信号伝達の阻害剤、アポトーシス誘導剤、細胞成長休止誘導剤、ビスホスホネート、またはこれらのあらゆる組み合わせ。
【0219】
癌の治療方法であって、治療上有効な量の式Iの化合物を放射線療法と組み合わせて、および/またはアルキル化剤、抗生物質剤、代謝拮抗剤、ホルモン剤、植物派生剤、生物製剤、遺伝子治療薬、抗血管形成剤、分化誘導剤、レチノイド受容体修飾因子、細胞毒性/細胞増殖抑制剤、抗増殖剤、HMG−CoAレダクターゼ阻害剤、プレニル−プロテイントランスフェラーゼ阻害剤、細胞周期チェックポイントを妨害する薬剤、細胞増殖および生存信号伝達の阻害剤、アポトーシス誘導剤、細胞成長休止誘導剤、ビスホスホネート、またはこれらのあらゆる組み合わせから選択される化合物と組み合わせて投与することを含む方法も請求の範囲内に含まれる。
【0220】
本発明は、癌の治療または予防に有用な医薬組成物であって、治療上有効な量の式Iの化合物および以下から選択される化合物を含有する医薬組成物も含む:アルキル化剤、抗生物質剤、代謝拮抗剤、ホルモン剤、植物派生剤、生物製剤、遺伝子治療薬、抗血管形成剤、分化誘導剤、レチノイド受容体修飾因子、細胞毒性/細胞増殖抑制剤、抗増殖剤、HMG−CoAレダクターゼ阻害剤、プレニル−プロテイントランスフェラーゼ阻害剤、細胞周期チェックポイントを妨害する薬剤、細胞増殖および生存信号伝達の阻害剤、アポトーシス誘導剤、細胞成長休止誘導剤、ビスホスホネート、またはこれらのあらゆる組み合わせ。
【0221】
本発明のヒドロキサム酸誘導体を用いる投薬計画は、タイプ、種、年齢、体重、性別および治療する癌のタイプ;治療しようとする疾患の重篤性(すなわち、段階);投与経路;患者の腎および肝機能;並びに用いられる化合物またはこれらの塩を含む様々な要素に従って選択することができる。通常の技術を有する医師または獣医師はこの疾患の処置、例えば、予防、(完全な、または部分的な)阻害または進行の停止に必要な薬物の有効量を容易に決定し、および処方することができる。
【0222】
経口投与には、適切な1日投薬量は、例えば、1日1回、1日2回または1日3回、連続(毎日)または断続的(例えば、週3−5日)に経口投与される、約5−4000mg/mである。例えば、所望の疾患の治療に用いられるとき、ヒドロキサム酸の用量は毎日約2mgから約2000mgの範囲であり得る。
【0223】
このヒドロキサム酸誘導体は1日1回(QD)、または複数の1日用量に分割して、例えば、1日2回(BID)、および1日3回{TID)投与される。したがって、1日1回投与については、適切に調製された医薬は必要とされる1日用量のすべてを含有する。したがって、1日2回投与については、適切に調製された医薬は必要な1日用量の半分を含有する。したがって、1日3回投与については、適切に調製された医薬は必要な1日用量の1/3を含有する。
【0224】
加えて、投与は連続的、すなわち、毎日であっても、断続的であってもよい。ここで用いられる「断続的」または「断続的に」という用語は、規則的または不規則的のいずれかの間隔での停止および開始を意味する。例えば、HDAC阻害剤の断続的投与は毎週1から6日の投与であり得、または周期的な投与(例えば、2から8連続週の毎日投与、次いで1週までの投与なしの休止期間)を意味することがあり、または隔日での投与を意味することもある。
【0225】
典型的には、約1.0mg/mLから約10mg/mLの濃度のヒドロキサム酸誘導体を含む静脈内処方を調製することができる。一例において、1日の総用量が約10から約1500mg/mとなるような十分な容積の静脈内処方を患者に1日で投与することができる。
【0226】
好ましくは当該技術分野において公知の手順に従って約5から約12の範囲のpHで調製される皮下処方は、以下に記載される適切な緩衝剤および等張剤をも含む。これらは1日用量のHDAC阻害剤を1回以上の1日皮下投与、例えば、毎日1、2または3回で送達するように処方することができる。
【0227】
本発明の化合物に関しての「投与」という用語およびこれらの変形(例えば、化合物を「投与する」)は、この化合物またはこの化合物のプロドラッグを治療を必要とする動物の系内に導入することを意味する。本発明の化合物またはこれらのプロドラッグが1種類以上の他の活性薬剤(例えば、細胞毒性剤等)と組み合わせて提供されるとき、「投与」およびこの変形は、各々、この化合物およびこれらのプロドラッグ並びの他の薬剤の同時および連続導入を含むものと理解される。
【0228】
これらの化合物は鼻腔内形態で、適切な鼻腔内ビヒクルの局所使用により、または当業者に公知の経皮皮膚パッチの形態を用いる経皮経路を介して投与することもできる。経皮送達系の形態で投与するには、もちろん、投与はこの投薬計画を通して断続的であるよりもむしろ連続的である。ここで説明される様々な投与方式が単に具体的な実施形態を記載するものであり、本発明の広範な範囲を制限するものと解釈されるべきではないことは、当業者には明らかなはずである。
【0229】
本発明の化合物は哺乳動物、好ましくは、ヒトに単独で、または、好ましくは、医薬的に許容される坦体、添加物または希釈剤と組み合わせて医薬組成物の形態で、標準の医薬実務に従って投与することができる。これらの化合物は経口投与することができ、または、静脈内、筋肉内、腹腔内、皮下、直腸および局所投与経路を含めて、非経口投与することができる。
【0230】
本発明の別の態様において、本発明の化合物は哺乳動物、好ましくは、ヒトに、この哺乳動物に単独で、または医薬的に許容される坦体、添加物または希釈剤と組み合わせて医薬組成物の形態で、本発明の化合物の代謝前駆体化合物を投与することによって投与することができる。このような代謝前駆体化合物は米国特許出願第60/388,621号(整理番号21114PV、2002年6月14日出願)、第60/403,830号(整理番号21114PV2、2002年8月15日出願)および第60/426,940号(整理番号21114PV3、2002年11月15日出願)に記載されている。KSPの阻害剤でもあるこのような代謝前駆体化合物を含有する組成物もこれらの米国特許出願に記載されている。
【0231】
ここで用いられる場合、「組成物」という用語は、指定された成分を指定された量で含有する生成物に加えて、指定された量での指定された成分の組み合わせから、直接または間接的に、生じるあらゆる生成物を包含しようとするものである。
【0232】
活性成分を含有する医薬組成物は、経口用途に適する形態、例えば、錠剤、トローチ、ロゼンジ、水性または油性懸濁液、分散性粉末または顆粒、エマルジョン、ハードまたはソフトカプセル、またはシロップまたはエリキシルであり得る。経口用途を目的とする組成物は医薬組成物を製造するための技術分野に公知のあらゆる方法に従って調製することができ、このような組成物は、医薬的に洗練されて口当たりのよい調製品を提供するため、甘味料、香味料、着色料および保存剤からなる群より選択される1種類上の薬剤を含むことができる。錠剤は、錠剤の製造に適する非毒性の医薬的に許容される添加物と混合された活性成分を含有する。これらの添加物は、例えば、不活性希釈剤、例えば、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、ラクトース、リン酸カルシウムまたはリン酸ナトリウム;造粒および崩壊剤、例えば、微結晶セルロース、ナトリウムクロスカルメロース、コーンスターチ、またはアルギン酸;結合剤、例えば、デンプン、ゼラチン、ポリビニル−ピロリドンまたはアラビアゴム、並びに潤滑剤、例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸またはタルクであり得る。錠剤はコートされていなくてもよく、または公知の技術によってコートされ、薬物の不快な味を遮蔽するか、または消化管内での崩壊および吸収を遅延させ、これにより長期間にわたる持続作用をもたらすこともできる。例えば、水溶性の味遮蔽材料、例えば、ヒドロキシプロピル−メチルセルロースまたはヒドロキシプロピルセルロース、または時間遅延材料、例えば、エチルセルロース、酪酸酢酸セルロースを用いることができる。
【0233】
経口用途の処方は、活性成分が不活性固体希釈剤、例えば、炭酸カルシウム、リン酸カルシウムまたはカオリンと混合されているハードゼラチンカプセルとして、または活性成分が水溶性坦体、例えば、ポリエチレングリコールまたは油媒体、例えば、ピーナッツ油、液体パラフィン、またはオリーブ油と混合されているソフトゼラチンカプセルとして提示することもできる。
【0234】
水性懸濁液は、水性懸濁液の製造に適する添加物と混合された活性物質を含む。このような添加物は懸濁剤、例えば、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、トラガカントゴムおよびアラビアゴムであり;分散および湿潤剤は天然ホスファチド、例えば、レシチン、またはアルキレンオキシドと脂肪酸との縮合生成物、例えば、ポリオキシエチレンステアレート、またはエチレンオキシドと長鎖脂肪族アルコールとの縮合生成物、例えば、ヘプタデカエチレンオキシセタノール、またはエチレンオキシドと脂肪酸およびヘキシトールから誘導される部分エステルとの縮合生成物、例えば、ポリオキシエチレンソルビトールモノオレエート、またはエチレンオキシドと脂肪酸および無水ヘキシトールから誘導される部分エステルとの縮合生成物、例えば、ポリエチレンソルビタンモノオレエートであり得る。水性懸濁液は1種類以上の保存剤、例えば、エチルまたはn−プロピルp−ヒドロキシベンゾエート、1種類以上の着色料、1種類以上の香味料、および1種類以上の甘味料、例えば、スクロース、サッカリンまたはアスパルテームを含むこともできる。
【0235】
油性懸濁液は活性成分を植物油、例えば、ラッカセイ油、オリーブ油、ゴマ油またはココナッツ油、または鉱油、例えば、液体パラフィンに懸濁させることによって処方することができる。油性懸濁液は濃厚剤、例えば、蜜蝋、ハードパラフィンまたはセチルアルコールを含むことができる。甘味料、例えば、上述のものおよび香味料を添加して口当たりのよい経口調製品を提供することができる。これらの組成物は酸化防止剤、例えば、ブチル化ヒドロキシアニソールまたはアルファ−トコフェロールを添加することによって保存することができる。
【0236】
水を添加することによる水性懸濁液の調製に適する分散性粉末および顆粒は、分散または湿潤剤、懸濁剤および1種類以上の保存剤と混合された活性成分を提供する。適切な分散または湿潤剤および懸濁剤は上で既に言及されたものによって例示される。さらなる添加物、例えば、甘味料、香味料および着色料が存在していてもよい。これらの組成物は酸化防止剤、例えば、アスコルビン酸を添加することによって保存することができる。
【0237】
本発明の医薬組成物は水中油エマルジョンの形態であってもよい。油相は植物油、例えば、オリーブ油またはラッカセイ油、または鉱油、例えば、液体パラフィンまたはこれらの混合物であり得る。適切な乳化剤は天然ホスファチド、例えば、ダイズレシチン、並びに脂肪酸および無水ヘキシトールから誘導されるエステルまたは部分エステル、例えば、ソルビタンモノオレエート、並びに該部分エステルとエチレンオキシドとの縮合生成物、例えば、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエートであり得る。これらのエマルジョンは甘味料、香味料、保存剤および酸化防止剤を含むこともできる。
【0238】
シロップおよびエリキシルは甘味料、例えば、グリセロール、プロピレングリコール、ソルビトールまたはスクロースと共に処方することができる。このような処方は緩和剤、保存剤、香味料および着色料並びに酸化防止剤を含むこともできる。
【0239】
これらの医薬組成物は無菌注射用水溶液の形態であってもよい。用いることができる許容し得るビヒクルおよび溶媒のうちには、水、リンゲル液および等張性塩化ナトリウム溶液がある。
【0240】
無菌注射用調製品は、活性成分が油相に溶解している無菌注射用水中油マイクロエマルジョンであってもよい。例えば、まず活性成分をダイズ油およびレシチンの混合物に溶解することができる。次に、この油溶液を水およびグリセロール混合液に導入し、処理してマイクロエマルジョンを形成する。
【0241】
注射用溶液またはマイクロエマルジョンは局所ボーラス注射によって患者の血流に導入することができる。代わりに、この溶液またはマイクロエマルジョンを本発明の化合物の一定の循環濃度を維持するような方法で投与することが有利であり得る。このような一定濃度を維持するため、連続静脈内送達装置を用いることができる。このような装置の一例は、Deltec CADD−PLUS(商標)モデル5400静脈内ポンプである。
【0242】
これらの医薬組成物は、筋肉内および皮下投与用の無菌注射用水性または油性懸濁液の形態であってもよい。この懸濁液は、公知技術に従い、上で言及されている適切な分散または湿潤剤および懸濁剤を用いて処方することができる。無菌注射用調製品は非毒性の非経口的に許容し得る希釈剤または溶媒中の無菌注射用溶液または懸濁液、例えば、1,3−ブタンジオール中の溶液であってもよい。加えて、無菌の不揮発性油が溶媒または懸濁媒体として慣習的に用いられる。この目的で、合成モノまたはジグリセリドを含むあらゆるブランドの不揮発性油を用いることができる。加えて、脂肪酸、例えば、オレイン酸に注射剤の調製における用途が見出される。
【0243】
式Iの化合物は薬物の直腸投与用の座剤の形態で投与することもできる。これらの組成物は、薬物を、常温で固体であるが直腸温度では液体であり、したがって、直腸内で溶融して薬物を放出する適切な非刺激性賦形剤と混合することによって調製することができる。このような物質には、カカオ脂、グリセリン化ゼラチン、水素化植物油、様々な分子量のポリエチレングリコールの混合物およびポリエチレングリコールの脂肪酸エステルが含まれる。
【0244】
局所用途には、式Iの化合物を含有するクリーム、軟膏、ゼリー、溶液または懸濁液等が用いられる。(この用途の目的上、局所用途にはマウスウォッシュおよび含嗽薬が含まれる。)
本発明の化合物は、鼻腔内形態で、適切な鼻腔内ビヒクルおよび送達装置の局所使用により、または経皮経路を介し、当業者に公知の経皮皮膚パッチの形態を用いて投与することができる。経皮送達系の形態で投与するには、もちろん、投与はこの投薬計画を通して断続的であるよりもむしろ連続的である。本発明の化合物は、基材、例えば、カカオ脂、グリセリン化ゼラチン、水素化植物油、様々な分子量のポリエチレングリコールの混合物およびポリエチレングリコールの脂肪酸エステルを用いる座剤として送達することもできる。
【0245】
本発明は、新生物細胞の終末分化、細胞成長休止および/またはアポトーシスの誘導に本発明のヒドロキサム酸誘導体を用い、これによりこのような細胞の増殖を阻害する方法も提供する。これらの方法はイン・ビボまたはイン・ビトロで実施することができる。
【0246】
一実施形態において、本発明は、新生物細胞の終末分化、細胞成長休止および/またはアポトーシスを選択的に誘導し、これによりこのような細胞の増殖を阻害するためのイン・ビトロ方法であって、これらの細胞を有効量のここで説明されるヒドロキサム酸誘導体のいずれか1種類と接触させることによる方法を提供する。
【0247】
特定の実施形態において、本発明は、新生物細胞の終末分化を選択的に誘導し、これによりこのような細胞の増殖を阻害するイン・ビトロ方法に関する。この方法は、これらの細胞を適切な条件下で有効量のここで説明されるヒドロキサム酸化合物の1種類以上と接触させることを含む。
【0248】
別の実施形態において、本発明は、新生物細胞の細胞成長休止を選択的に誘導し、これによりこのような細胞の増殖を阻害するイン・ビトロ方法に関する。この方法は、これらの細胞を適切な条件下で有効量のここで説明されるヒドロキサム酸化合物の1種類以上と接触させることを含む。
【0249】
別の実施形態において、本発明は、新生物細胞のアポトーシスを選択的に誘導し、これによりこのような細胞の増殖を阻害するイン・ビトロ方法に関する。この方法は、これらの細胞を適切な条件下で有効量のここで説明されるヒドロキサム酸化合物の1種類以上と接触させることを含む。
【0250】
別の実施形態において、本発明は、腫瘍内の腫瘍細胞の終末分化を誘導するイン・ビトロ方法であって、これらの細胞を有効量のここで説明されるヒドロキサム酸化合物のいずれか1種類以上と接触させることを含む方法に関する。
【0251】
本発明の方法はイン・ビトロで実施することができる。新生物細胞の最終分化、細胞成長休止および/またはアポトーシスを選択的に誘導する方法並びにHDACを阻害する方法がこれらの細胞をイン・ビボで接触させることを含み、すなわち、治療を必要とする新生物細胞または腫瘍細胞を宿す被検体に化合物を投与することによるものであることも考慮される。
【0252】
したがって、本発明は、被検体における新生物細胞の終末分化、細胞成長休止および/またはアポトーシスを選択的に誘導し、これにより被検体におけるこのような細胞の増殖を阻害するためのイン・ビボ方法であって、該被検体に有効量のここで説明されるヒドロキサム酸誘導体のいずれか1種類を投与することによる方法を提供する。
【0253】
特定の実施形態において、本発明は、新生物細胞の終末分化を選択的に誘導し、これにより被検体におけるこのような細胞の増殖を阻害する方法に関する。この方法は該被検体に有効量のここで説明されるヒドロキサム酸誘導体の1種類以上を投与することを含む。
【0254】
別の実施形態において、本発明は、新生物細胞の細胞成長休止を選択的に誘導し、これにより被検体におけるこのような細胞の増殖を阻害する方法に関する。この方法は該被検体に有効量のここで説明されるヒドロキサム酸誘導体の1種類以上を投与することを含む。
【0255】
別の実施形態において、本発明は、新生物細胞のアポトーシスを選択的に誘導し、これにより被検体におけるこのような細胞の増殖を阻害する方法に関する。この方法は該被検体に有効量のここで説明されるヒドロキサム酸誘導体の1種類以上を投与することを含む。
【0256】
別の実施形態において、本発明は、新生物細胞の増殖を特徴とする腫瘍患者の治療方法に関する。この方法は該患者にここで説明されるヒドロキサム酸誘導体の1種類以上を投与することを含む。化合物の量はこのような新生物細胞の終末分化を選択的に誘導し、細胞成長休止を誘導し、および/またはアポトーシスを誘導し、これによりこれらの増殖を阻害するのに有効なものである。
【実施例】
【0257】
提供される実施例は本発明のさらなる理解を補助しようとするものである。用いられる特定の物質、種および条件は本発明の説明を目的とするものであり、これらの合理的な範囲を制限しようとするものではない。
【0258】
実施例1−合成
本発明の化合物を、以下に例示される合成スキーム1に概略が示される一般法によって調製した。
【0259】
スキーム1は、本発明のカルバメート誘導体の生成へのアミノスベリン酸の遊離アミンの使用の合成を説明する。
【0260】
【化16】

【0261】
アミド形成の手順(他のアミドに用いられる類似の方法):
【0262】
【化17】

【0263】
(7S)−tert−ブトキシカルボニルアミノ−7−フェニルカルバモイル−ヘプタン酸メチルエステル
乾燥CHCl(5mL)中の(2S)−tert−ブトキシカルボニルアミノ−オクタン二酸8−メチルエステル(130mg、0.429mmol)の出発溶液に、アニリン(60μL、0.658mmol)、HOBT(61mg、0.45mmol)およびEDCI(148mg、0.772mmol)を添加した。この反応物をRTで16時間攪拌した後、EtOAc(30mL)で希釈した。この溶液を1M HCl(20mL)、飽和NaHCO(20mL)、HO(20mL)、および食塩水(20mL)で洗浄した。有機層を乾燥させて濾過し、減圧下で濃縮して濃厚油を得、これをカラムクロマトグラフィー(シリカゲル;ヘキサン:EtOAc 3:1)によって精製して生成物を白色固体として得た。H NMR(CDCl)δ10.30(brs,1H),7.65(t,J=7.4Hz,2H),7.32(d,J=7.4Hz,2H),7.05(m,1H),5.20(br,d,1H),4.40(m,1H),3.70(s,3H),2.26(t,J=7.0Hz,2H),2.0−1.5(m,17H)。MS(EI):計算値(MH)379,exp(MH)379。
【0264】
Boc脱保護の手順(他の関連物質に用いられる類似の方法)
【0265】
【化18】

【0266】
(7S)−アミノ−7−フェニルカルバモイル−ヘプタン酸メチルエステル
(7S)−tert−ブトキシカルボニルアミノ−7−フェニルカルバモイル−ヘプタノン酸メチルエステル(31.0g、82.0mmol)の溶液にメタンスルホン酸(11.7mL、0.18mol)を添加した。1.5時間攪拌した後、溶媒を除去し、残滓をクロロホルム(600mL)で希釈した。飽和NaCOを徐々に添加することによって溶媒をpH8に調整した。有機相を集め、水層をクロロホルムで抽出した(2×50mL)。合わせた溶液をNaSOで乾燥させた。溶媒を除去することでアミンを得、これをさらに精製することなく用いた。H NMR(DMSO−d)δ8.01(s,br,1H),7.65(t,J=7.4Hz,2H),7.32(d,J=7.4Hz,2H),7.05(m,1H),3,90−3.70(m,4H),2.26(t,J=7.0Hz,2H),2.15(m,1H),2.0−1.5(m,7H)。MS(EI):計算値(MH)279,exp(MH)279。
【0267】
カルバメート形成の一般手順
(7S)−アミノ−7−フェニルカルバモイル−ヘプタノン酸メチルエステルの溶液に適切な試薬ROC(O)Clを添加するか、またはアミンを活性化(例えば、イソシアネートまたはCDI)して適切なアルコールで失活させた。この溶液をRTで一晩攪拌した。溶媒を除去し、この中間体を次工程において直接用いた。
【0268】
ヒドロキサム酸形成の一般手順:
前反応からの残滓をDMFに溶解した。この溶液に50%ヒドロキシルアミン水溶液を少しずつ添加した。この混合物をRTで4日間攪拌した。反応溶液を、生成物の沈殿が始まるまで、減圧下で濃縮した。残滓に水を徐々に添加して沈殿を完了させた。固体を集め、EtOAcと共に摩砕した。固体を集め、高真空ポンプの下で乾燥させた。
【0269】
【化19】

【0270】
[6−ヒドロキシカルバモイル−1−(4−フェニル−チアゾル−2−イルカルバモイル)−ヘキシル]カルバミン酸ベンジルエステル
H NMR(DMSO−d)δ12.20(br,s,1H),10.30(br,s,2H),8.60(br,s,1H),7.80−7.00(m,11H),4.82(s,2H),4.06(m,1H),2.06(t,J=7.0Hz,2H),2.0−1.4(m,8H)。MS(EI):計算値(MH)497,exp(MH)497。
【0271】
【化20】

【0272】
[6−ヒドロキシカルバモイル−1−(4−フェニル−チアゾル−2−イルカルバモイル)−ヘキシル]−カルバミン酸tert−ブチルエステル
H NMR(DMSO−d)δ10.30(br,s,2H),7.80−7.00(m,6H),4.06(m,1H),2.06(t,J=7.0Hz,2H),2.0−1.4(m,17H)。MS(EI):計算値(MH)463,exp(MH)463。
【0273】
【化21】

【0274】
(6−ヒドロキシカルバモイル−1−フェニルカルバモイル−ヘキシル)−カルバミン酸tert−ブチルエステル
H NMR(DMSO−d)δ10.30(br,s,2H),8.60(br,s,2H),7.40(d,J=7.4Hz,2H),7.20(t,J=7.4Hz,2H),6.96(t,J=7.4Hz,1H),4.06(m,1H),2.06(t,J=7.0Hz,2H),2.0−1.4(m,17H)。MS(EI):計算値(MH)380,exp(MH)380。
【0275】
【化22】

【0276】
(6−ヒドロキシカルバモイル−1−フェニルカルバモイル−ヘキシル)−カルバミン酸2−モルホリン−4−イル−エチルエステル
H NMR(CDOD):δ7.58(d,J=7.4Hz,2H),7.31(t,J=7.4Hz,2H),7.10(t,7=7.4Hz,1H),4.48−4.43(m,1H),4.39−4.36(m,1H),4.22−4.19(m,1H),4.04−4.01(m,1H),3.83−3.63(m,3H),3.61−3.58(2H,m),3.44−3.42(m,2H),3.22−3.08(m,2H),2.09(t,J=7.0Hz,2H),1.86−1.80(m,1H),1.77−1.66(m,1H),1.64−1.58(m,2H),1.54−1.35(m,4H)。MS(EI):計算値(MH)437,exp(MH)437。
【0277】
【化23】

【0278】
(6−ヒドロキシカルバモイル−1−フェニルカルバモイル−ヘキシル)−カルバミン酸2−ピリジン−2−イル−エチルエステル
MS(EI):計算値(MH)429,exp(MH)429。
【0279】
【化24】

【0280】
(6−ヒドロキシカルバモイル−1−フェニルカルバモイル−ヘキシル)−カルバミン酸3−クロロ−ベンジルエステル
MS(EI):計算値(MH)448,exp(MH)448。
【0281】
【化25】

【0282】
(6−ヒドロキシカルバモイル−1−フェニルカルバモイル−ヘキシル)−カルバミン酸2−ピロリジン−1−イル−エチルエステル
MS(EI):計算値(MH)421,exp(MH)421。
【0283】
実施例2−新規化合物によるHDAC阻害
HDAC1−フラグアッセイ
新規化合物を、ヒストンデアセチラーゼ、サブタイプ1(HDAC1)を阻害するこれらの能力について、イン・ビトロ脱アセチル化アッセイを用いて試験した。このアッセイの酵素源は、安定に発現する哺乳動物細胞から免疫精製されたエピトープタグ・ヒトHDAC1複合体であった。基質はアセチル化リジン側鎖を含む商業製品(Biomol Research Laboratories,Inc.、Plymouth Meeting、PA)からなるものであった。精製HDAC1複合体と共にインキュベートすることによる基質の脱アセチル化で蛍光体が生成され、これは脱アセチル化のレベルに直接比例する。Kmの基質濃度を酵素の調製に用い、脱アセチル化アッセイを濃度が増加する新規化合物の存在下で行って脱アセチル化反応の50%阻害(IC50)に必要な化合物の濃度を半定量的に決定した。
【0284】
結果
実施例1に記載される化合物のIC50値を上述の方法に従って決定した。すべての化合物が脱アセチル化反応の50%を約150nM未満の濃度で阻害することができた。これらの化合物のうちの幾つかは脱アセチル化反応の50%を約50nM未満の濃度で阻害することができた。これらの化合物のうちの幾つかは脱アセチル化反応の50%を約20nM未満の濃度で阻害することができた。幾つかの化合物は脱アセチル化反応の50%を約15から20nMの濃度範囲で阻害することができた。幾つかの化合物は脱アセチル化反応の50%を約10から15nMの濃度範囲で阻害することができた。幾つかの化合物は脱アセチル化反応の50%を約5から10nMの濃度範囲で阻害することができた。幾つかの化合物は脱アセチル化反応の50%を約10nM未満の濃度で阻害することができた。
【0285】
実施例3−細胞株におけるHDAC阻害
MTSアッセイ:
本発明の新規化合物を、ネズミ赤白血病細胞株SC9の増殖を阻害するこれらの能力について試験した。
【0286】
MTSアッセイ、別名Cell Titer 96 Aqueous One Solution Cell Proliferation Assayは、増殖、細胞毒性または化学受容性アッセイにおいて生存可能な細胞の数を決定するための比色法である。MTS試薬は新規テトラゾリウム化合物[3−(4,5−ジメチルチアゾル−2−イル)−5−(3 −カルボキシメトキシフェニル)−2−(4−スルホフェニル)−2H−テトラゾリウム、内部塩]および電子結合性試薬(フェナジンエトスルフェート;PES)を含む。ネズミ赤白血球細胞(SC−9)をビヒクルまたは濃度が増加する化合物と共に48時間インキュベートした。少量のMTS試薬を培養ウェルに直接添加し、1−4時間インキュベートした後、96ウェルプレートリーダーを用で490nmの吸光度を記録することによって細胞増殖を定量した。490nm吸光度によって測定されるフォルマザン生成物の量が培養における生存細胞の数に直接比例する。
【0287】
結果
新規化合物の選択群からのSC9細胞ベースのMTSアッセイの結果は、これらの化合物が5000nM未満の濃度で細胞の増殖を阻害できることを示す。これらの化合物のうちの幾つかは細胞の増殖を1000nM未満の濃度で阻害することができる。これらの化合物のうちの幾つかは細胞の増殖を約500−1000nMの濃度範囲で阻害することができる。幾つかの他の化合物は細胞の増殖を約100−500nMの濃度範囲で阻害することができる。幾つかの他の化合物は細胞の増殖を100nM未満の濃度で阻害することができる。幾つかの他の化合物は細胞の増殖を約50−100nMの濃度範囲で阻害することができる。幾つかの他の化合物は細胞の増殖を50nM未満の濃度で阻害することができる。幾つかの他の化合物は細胞の増殖を25nM未満の濃度で阻害することができる。幾つかの他の化合物は細胞の増殖を10nM未満の濃度で阻害することができる。
【0288】
本発明を、これらの実施形態を参照して、詳細に示し、および説明したが、当業者は、形態および詳細における様々な変更を説明される発明の意味から逸脱することなくなし得ることを理解するであろう。むしろ、本発明の範囲は下記請求の範囲によって定義される。
【0289】
米国仮出願第60/604,469号は参照によりこの全体がここに組み込まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の構造式:
【化1】

(式中、
およびRは、互いに独立して、非置換であるかまたは置換され、およびC−C10アルキル、C−C10アルケニル、シクロアルキル、アリール、ヘテロシクリル、ヘテロアリール、C−C10アルキル−C−C10アルケニル、C−C10アルキルシクロアルキル、C−C10アルキルアリール、C−C10アルキルヘテロシクリルおよびC−C10アルキルヘテロアリールから選択され;
およびRは、独立して、水素またはC−C10アルキルであり;並びに
nは4−7であり;
がフェニルまたは8−キノリニルであるとき、Rはベンジルであり得ない。)
によって表される化合物またはこれらの立体異性体、鏡像異性体、ラセミ体、医薬的に許容される塩、溶媒和物、水和物または多形。
【請求項2】
およびRが、互いに独立して、非置換であるか、またはRsubから独立して選択される1、2または3つの置換基で置換され、
ここで、
subはC−C10アルキル、C−C10ハロアルキル、C−C10アルケニル、シクロアルキル、アリール、ヘテロシクリル、ヘテロアリール、C−C10アルキル−C−C10アルケニル、C−C10アルキルシクロアルキル、C−C10アルキルアリール、C−C10アルキルヘテロシクリル、C−C10アルキルヘテロアリール、ハロゲン、ヒドロキシ、C−C10アルキルオキシ、C−C10ハロアルキルオキシ、アリールオキシ、ニトロ、オキソ、−CN、−C(=O)H、−C(=O)OH、アミノ、N−C−C10アルキルアミノ、N,N−ジC−C10アルキルアミノ、N−アリールアミノ、N,N−ジアリールアミノ、N−C−C10アルキル−N−アリールアミノ、アジド、およびC(=O)OR(ここで、RはアリールまたはC−C10アルキルである)から選択され、
並びに他のすべての置換基および変数が請求項1において定義される通りである、
請求項1に記載の化合物またはこれらの立体異性体、鏡像異性体、ラセミ体、医薬的に許容される塩、溶媒和物、水和物または多形。
【請求項3】
およびRが、互いに独立して、非置換であるかまたは置換され、およびフェニル、ナフチル、フルオレニル、ビフェニル、ベンジル、−CHCHPh、−CHCHCHPh、シクロプロピル、シクロヘキシル、キノリニル、イソキノリニル、−CH−キノリニル、−CH−イソキノリニル、チアゾリル、CH(Ph)およびC−C10アルキルから選択され、ここで、Rがフェニルまたは8−キノリニルであるとき、Rはベンジルではあり得ず;
並びに他のすべての置換基および変数が請求項1において定義される通りである、
請求項1に記載の化合物またはこれらの立体異性体、鏡像異性体、ラセミ体、医薬的に許容される塩、溶媒和物、水和物または多形。
【請求項4】
およびRが、互いに独立して、非置換であるか、またはRsubから選択される1、2または3つの置換基で置換され;
ここで、
subはC−Cアルキル、C−Cハロアルキル、C−Cハロアルキルオキシ、C−Cアルキルオキシ、アリール、ハロゲンおよびニトロから独立して選択され;
並びに他のすべての置換基および変数が請求項3において定義される通りである、
請求項3に記載の化合物またはこれらの立体異性体、鏡像異性体、ラセミ体、医薬的に許容される塩、溶媒和物、水和物または多形。
【請求項5】
およびRが水素である、請求項1に記載の化合物。
【請求項6】
式IA:
【化2】

(式中、
nは5または6であり;
並びに他のすべての置換基および変数は請求項1において定義される通りである。)
の構造によって表される請求項1に記載の化合物またはこれらの立体異性体、鏡像異性体、ラセミ体、医薬的に許容される塩、溶媒和物、水和物または多形。
【請求項7】
式II:
【化3】

(式中、
およびnは請求項1において定義される通りであり;
subはC−Cアルキル、C−Cハロアルキル、C−Cハロアルキルオキシ、C−Cアルキルオキシ、アリール、ハロゲンおよびニトロから独立して選択され;並びに
mは0、1、2および3から選択され;
並びに他のすべての置換基および変数は請求項1において定義される通りである。)
の構造によって表される請求項1に記載の化合物またはこれらの立体異性体、鏡像異性体、ラセミ体、医薬的に許容される塩、溶媒和物、水和物または多形。
【請求項8】
式IIA:
【化4】

(式中、
nは5または6であり;
並びに他のすべての置換基および変数は請求項7において定義される通りである。)
の構造によって表される請求項7に記載の化合物またはこれらの立体異性体、鏡像異性体、ラセミ体、医薬的に許容される塩、溶媒和物、水和物または多形。
【請求項9】
医薬的に有効な量の請求項1に記載の化合物、および医薬的に許容し得る坦体を含有する医薬組成物。
【請求項10】
哺乳動物における癌の治療または予防において有用な医薬の調製への請求項1に記載の化合物の使用。
【請求項11】
以下から選択される化合物:
(S)−[6−ヒドロキシカルバモイル−1−(4−フェニル−チアゾル−2−イルカルバモイル)−ヘキシル]−カルバミン酸ベンジルエステル;
(S)−[6−ヒドロキシカルバモイル−1−(4−フェニル−チアゾル−2−イルカルバモイル)−ヘキシル]−カルバミン酸tert−ブチルエステル;および
(S)−(6−ヒドロキシカルバモイル−1−フェニルカルバモイル−ヘキシル)−カルバミン酸tert−ブチルエステル;
またはこれらの立体異性体、鏡像異性体、ラセミ体、医薬的に許容される塩、溶媒和物、水和物または多形。
【請求項12】
以下から選択される化合物:
(6−ヒドロキシカルバモイル−1−フェニルカルバモイル−ヘキシル)−カルバミン酸2−モルホリン−4−イル−エチルエステル;
(6−ヒドロキシカルバモイル−1−フェニルカルバモイル−ヘキシル)−カルバミン酸2−ピリジン−2−イル−エチルエステル;
(6−ヒドロキシカルバモイル−1−フェニルカルバモイル−ヘキシル)−カルバミン酸3−クロロ−ベンジルエステル;
(6−ヒドロキシカルバモイル−1−フェニルカルバモイル−ヘキシル)−カルバミン酸2−ピロリジン−1−イル−エチルエステル;
またはこれらの立体異性体、医薬的に許容される塩。
【請求項13】
医薬的に有効な量の請求項11または12に記載の化合物、および医薬的に許容される坦体を含有する医薬組成物。
【請求項14】
哺乳動物における癌の治療または予防において有用な医薬の調製への請求項11または12に記載の化合物の使用。

【公表番号】特表2008−510821(P2008−510821A)
【公表日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−530043(P2007−530043)
【出願日】平成17年8月22日(2005.8.22)
【国際出願番号】PCT/US2005/029913
【国際公開番号】WO2006/026260
【国際公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【出願人】(390023526)メルク エンド カムパニー インコーポレーテッド (924)
【氏名又は名称原語表記】MERCK & COMPANY INCOPORATED
【Fターム(参考)】