説明

ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害剤としてのヘテロ環置換ケトン誘導体

本発明は、式Iで表される化合物、並びにその薬学的に許容される塩及び互変異性体に関する。本発明の化合物は、ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)の阻害剤であり、癌を含む細胞増殖疾患の治療に有用である。また、これらは、更に神経変性疾患、精神発達遅滞、統合失調症、炎症性疾患、再狭窄、免疫不全、糖尿病、心血管疾患、及び喘息の治療にも有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)の阻害剤であるヘテロ環置換ケトン誘導体に関する。本発明の化合物は、癌を含む細胞増殖疾患の治療に有用である。本発明の化合物は、更に神経変性疾患、統合失調症、脳卒中等の他の疾患の治療にも有用である。
【背景技術】
【0002】
真核細胞において、核内でDNAが規則的にパッケージングすることが、遺伝子転写の調節に重要な役割を果たす。核DNAはクロマチンと称される小複合体を形成する。該複合体のコアはヒストンと呼ばれる高保存性塩基性タンパク質の8量体である。ヒストンH2A、H2B、H3、及びH4がそれぞれ2分子ずつ会合し、DNAの負荷電リン酸基と相互作用するヒストンの塩基性アミノ酸のまわりに、DNAが巻き付く。1分子のヒストンH1が各巻回コアに結合し、そのコアは、約146のDNA塩基対を包む。複数のコアが順々に、各コアの間に約200のDNA塩基対を有するコンパクトな規則正しい構造に詰め込まれる。
【0003】
ヒストンのアミノ末端尾部は(特にリジンのアセチル化による)翻訳後修飾に付される。ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)及びヒストンアセチルトランスフェラーゼ(HAT)は、ヒストンのアセチル化パターンを決定し、このアセチル化は、他の動的逐次翻訳後修飾と共に、遺伝子発現の調節に関与する複合体を形成する非ヒストンタンパク質に認識され得る「コード(code)」を示すかもしれない。また、このこと及びヒストンデアセチラーゼ(HDAC)が非ヒストン物質を修飾し、多タンパク質複合体を形成する性質が、遺伝子転写、細胞周期の進行及び分化、ゲノム安定性、並びにストレス反応の調節に寄与する。
【0004】
11種のHDACファミリーが既にヒトにおいて同定されており、これらは保存触媒ドメインを有し、2つのクラス、酵母Rpd3に相同性を示すクラスI(1、2、3、8)、並びに酵母Hdalに相同性を示すクラスIIa(4、5、7、9)及びクラスIIb(6、10)に分類される。HDAC11はこれら両方のクラスに相同性を示すが、同時に他の10種のサブタイプとは明確に異なる。HDAC阻害剤(HDACi)は癌やその他疾患の治療薬として期待されているので、これら酵素への関心が高まっている。細胞ベースの分析から第1世代HDACiが見出され、後にクラスI/IIのHDAC阻害剤として同定された。現在のHDAC阻害剤は汎特異的であるか、或いは選択性に欠ける。臨床試験に入ったこれらの薬剤は、同様の副作用(主として疲労、拒食、血液毒性、及び胃腸毒性)を示し、そのために臨床試験において用量制限的になる。HDAC阻害剤の抗癌特性が、特異性の欠如に因るものなのか、1つ又は幾つかの特定のサブタイプにヒットした結果なのかは、全く不明である。効能及び/又は忍容性が向上した高反応性新規化合物の開発への道が拓けるかもしれないので、この疑問には、大きな関心がもたれている。そのため、最近では、癌化学療法を改善するために、異なるクラスメンバーの生物学的機能をよりよく定義するために、また、サブタイプ選択的酵素アッセイを開発し、がん化学療法の改善の資するように、より多くの研究が行われている。
【0005】
クラスIIaのHDACは、yHDA1に相同性を示す高保存性C末端触媒ドメイン(〜420のアミノ酸)と、他のタンパク質とは明確に異なるN末端ドメインとを有する。クラスIIaのHDACの活性は、組織特異的遺伝子発現、特定共同因子の動員、核−細胞質間輸送等を含む、様々なレベルにより制御される。クラスIのHDACは多くが普遍的に発現する一方、クラスIIaのHDACは限られた数の細胞のみに発現する。
【0006】
HDAC阻害剤は、培養物や動物における腫瘍(血液癌及び固形腫瘍の両方を含む)中、広いスペクトルの形質転換細胞における分化誘導、成長停止、及び/又はアポトーシスを引き起こす。この阻害効果は、遺伝子転写の調節に重要な役割をすると考えられる、ヌクレオソームヒストン等のアセチル化タンパク質の蓄積によって部分的にはもたらされると考えられる。提案されたHDAC阻害剤の抗腫瘍効果メカニズムによれば、アセチル化ヒストンが蓄積すると特定数の遺伝子(その発現により腫瘍細胞成長阻害を引き起こす)の転写が活性化(及び抑制)される。HDAC阻害剤とともに培養した細胞の発現プロファイルは、少量の遺伝子発現(発現遺伝子の2〜5%)が変化する(活性化又は抑制される)ことを研究が示しているので、上記モデルを支持する。遺伝子の抑制又は活性化のメカニズムは十分には解明されていないが、これは、ヒストンアセチル化の直接的又は間接的効果から、或いはヒストン以外のタンパク質(例えば転写因子)のアセチル化の増加から、生ずるかもしれない。
【0007】
異なるHDACの様々な機能、HDAC基質の範囲等、HDACファミリーについては解明されるべき点が依然多く残されている。選択的HDAC阻害剤の開発は、それらの生物学的役割や治療薬としてのポテンシャルを定義する上で、重要であるかもしれない。臨床的には、最適投与量、治療のタイミングや期間、並びにHDAC阻害剤と組み合わせる最適な薬剤を明らかにすべきである。
【発明の開示】
【0008】
本発明の化合物は、ヒストンデアセチラーゼ、特にクラスIのヒストンデアセチラーゼの阻害に有用である。該化合物はHDAC1又はHDAC3の阻害剤である。本発明の化合物の一部は、他のHDACサブタイプ(HDAC2等)に対して活性を示す。
【0009】
本発明は下記式I:
【0010】
【化1】

【0011】
[式中、
bは、0、1、2、3、4、又は5であり;
qは、1、2、3、又は4であり;
Yは、C=O、(C=O)NR、O(C=O)NR、又は(CHOであり;
aは、0、1、2、又は3であり;
Hetは、5員の不飽和ヘテロ環(これは、それぞれ独立にN、O、及びSから選ばれる1、2、3、又は4個のヘテロ原子を含むが、該ヘテロ原子のうち2個以上がO又はSであることはない)又は6員の不飽和ヘテロ環(これは、それぞれ独立にN及びOから選ばれる1、2、3、又は4個のヘテロ原子を含む)であり; これらの環は、シアノ、ハロゲン、ヒドロキシ、オキソ、ニトロ、アミノ、C1−6アルキルアミノ、ジ(C1−6アルキル)アミノ、C1−6アルキル、ハロC1−6アルキル、C1−6アルコキシ、ハロC1−6アルコキシ、C3−10シクロアルキル、C2−6アルケニル、C2−6アルキニル、及びC6−10アリールからそれぞれ独立に選ばれる1個以上の置換基で置換されていてもよく;
は、水素、C1−6アルキル、ハロC1−6アルキル、C6−10アリール、5員の不飽和ヘテロ環(これは、それぞれ独立にO、N、及びSから選ばれる1、2、3、又は4個のヘテロ原子を含むが、該ヘテロ原子のうち2個以上がO又はSであることはない)、6員の不飽和ヘテロ環(これは、1、2、又は3個の窒素原子を含む)、或いは8〜10員の不飽和又は部分飽和ヘテロ環(これは、それぞれ独立にO、N、及びSから選ばれるヘテロ原子を含む)であり; これらの環は、シアノ、ハロゲン、ニトロ、オキソ、ヒドロキシ、C1−6アルキル、ハロC1−6アルキル、C1−6アルコキシ、ハロC1−6アルコキシ、C1−6アルキルカルボニル、C1−6アルコキシカルボニル、カルボキシ、C6−10アリール、C6−10アリールオキシ、C6−10アリールカルボニル、及びN(R(Rはそれぞれ独立に水素、C1−6アルキル、C6−10アリール、C1−6アルキルカルボニル、及びC6−10アリールカルボニルから選ばれる)からそれぞれ独立に選ばれる1個以上の置換基で置換されていてもよく;
は、C1−6アルキルであり;
は、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、シアノ、C1−6アルキル、ハロC1−6アルキル、C1−6アルコキシ、ハロC1−6アルコキシ、C3−10シクロアルキル、ハロC3−10シクロアルキル、C2−10アルケニル、C2−10アルキニル、ニトロ、N(R(Rはそれぞれ独立に水素、C1−6アルキル、及びC1−6アルキルカルボニルから選ばれる)、C6−10アリール、C6−10アリールC1−6アルキル、C6−10アリールC1−6アルコキシ、4、5、又は6員の飽和又は部分飽和ヘテロ環(これは、それぞれ独立にN、O、及びSから選ばれる1、2、又は3個のヘテロ原子を含み、C1−4アルキル基で架橋されていてもよい)、5員の不飽和ヘテロ環(これは、それぞれ独立にN、O、及びSから選ばれる1、2、3、又は4個のヘテロ原子を含むが、該ヘテロ原子のうち2個以上がO又はSであることはない)、6員の不飽和ヘテロ環(これは、1、2、又は3個の窒素原子を含む)、或いは7〜13員の飽和、部分飽和、又は不飽和ヘテロ環(これは、それぞれ独立にN、O、又はSから選ばれるヘテロ原子を含む)であり; これらの環は、Rからそれぞれ独立に選ばれる1個以上の置換基で置換されていてもよく;
は、水素又はC1−6アルキルであるか、或いはY−(CR−Rと共にオキソ基を形成し;
及びRは、それぞれ独立に水素又はC1−6アルキルであり;
は、水素又はC1−6アルキルであり;
それぞれのRは、ハロゲン、ヒドロキシ、シアノ、C1−6アルキル、ハロC1−6アルキル、ハロC1−6アルキルカルボニル、ハロC1−6アルキルカルボニルオキシ、C1−6アルコキシ、ハロC1−6アルコキシ、カルボキシ、C1−6アルキルカルボニル、C1−6アルコキシカルボニル、ニトロ、オキソ、SON(R、N(R(Rはそれぞれ独立に水素、C1−6アルキル、C1−6アルキルカルボニル、カルボキシ、及びC1−6アルコキシカルボニルから選ばれる)、C6−10アリール、C6−10アリールC1−6アルキル、5又は6員の飽和又は部分飽和ヘテロ環(これは、それぞれ独立にN、O、又はSから選ばれる1、2、又は3個のヘテロ原子を含み、C1−4アルキル基で架橋されていてもよい)、5員の不飽和ヘテロ環(これは、それぞれ独立にN、O、及びSから選ばれる1、2、3、又は4個のヘテロ原子を含むが、該ヘテロ原子のうち2個以上がO又はSであることはない)、或いは6員の不飽和ヘテロ環(これは、1、2、又は3個の窒素原子を含む)であり; これらの環は、ハロゲン、ヒドロキシ、アミノ、シアノ、C1−6アルキル、ハロC1−6アルキル、C1−6アルコキシ、及びハロC1−6アルコキシからそれぞれ独立に選ばれる1個以上の置換基で置換されていてもよい。
]で表される化合物、又はその薬学的に許容される塩若しくは互変異性体を提供する。
【0012】
bは好ましくは0、1、2、又は3であり、より好ましくは0、1、又は2である。
【0013】
qは好ましくは2、3、又は4であり、より好ましくは3又は4であり、最も好ましくは3である。
【0014】
Yは好ましくはC=O、(C=O)NH、O(C=O)NH、O、又は(CH)Oである。より好ましくは、Y基は、(C=O)NMeである。
【0015】
本発明の一実施態様においては、YはC=O又は(C=O)NRである。
【0016】
他の実施態様においては、YはC=Oである。
【0017】
他の実施態様においては、Yは(C=O)NRである。
【0018】
他の実施態様においては、YはO(C=O)NRである。
【0019】
は好ましくは水素又はメチルであり、より好ましくは水素である。
【0020】
他の実施態様においては、Yは(CHOである。
【0021】
aは好ましくは0、1、又は2である。aはより好ましくは0又は1である。
【0022】
好ましくは、Hetは、置換されていてもよい5員の不飽和ヘテロ環(これは、N、O、及びSからそれぞれ独立に選ばれる1、2、3、又は4個のヘテロ原子を含むが、該ヘテロ原子のうち2個以上がO又はSであることはない)である。
【0023】
一実施態様においては、Hetは、置換されていてもよい、イミダゾリル、オキサゾリル、トリアゾリル、チエニル、フリル、オキサジアゾリル、チアゾリル、又はピラゾリルである。他の実施態様においては、Hetは、置換されていてもよい、イミダゾリル又はチアゾリルである。
【0024】
好ましくは、Hetは、置換されていてもよい、イミダゾリルである。
【0025】
Hetは好ましくは無置換であるか、1、2、又は3個の置換基で置換されている。より好ましくは、Hetは、無置換又は一置換である。好ましい任意の置換基はC1−4アルキル又はC6−10アリールであり、特に好ましくはメチル又はフェニルである。
【0026】
一実施態様においては、Hetは無置換である。
【0027】
誤解を避けるために説明すると、Rは、Het上の任意の置換基と同様に、Hetの置換可能などの位置に結合していてもよい。
【0028】
Het基は特に好ましくはイミダゾリル、メチルイミダゾリル、フェニルイミダゾリル、フェニルオキサゾリル、トリアゾリル、チエニル、フリル、オキサジアゾリル、チアゾリル、オキサゾリル、又はピラゾリルである。一実施態様においては、Hetはイミダゾリル又はチアゾリルである。好ましくは、Hetは、特にイミダゾリルである。
【0029】
具体的なHet基としてはイミダゾール−2−イル、1,3−チアゾール−5−イル、及びイミダゾール−4−イル、さらに具体的に言うと、イミダゾール−2−イル及びイミダゾール−4−イルが挙げられる。
【0030】
好ましくは、RはC6−10アリール、5員の不飽和ヘテロ環(これは、それぞれ独立にN、O、及びSから選ばれる1、2、又は3個のヘテロ原子を含むが、該ヘテロ原子のうち2個以上がO又はSであることはない)、6員の不飽和ヘテロ環(これは、1、2、又は3個の窒素原子を含む)、或いは8、9、又は10員の不飽和又は部分飽和ヘテロ環(これは、それぞれ独立にO、N、及びSから選ばれる1、2、3、又は4個のヘテロ原子を含む)、から選ばれる置換されていてもよい環である。
【0031】
より好ましくは、Rは、置換されていてもよい、フェニル、ナフチル、チエニル、イソオキサゾリル、ピリジニル、ベンゾチエニル、チアゾロトリアゾリル、ジヒドロベンゾジオキシニル、ベンゾチアゾリル、キノリニル、イソキノリニル、キノキサリニル、テトラヒドロイソキノリニル、インドリル、ナフチリジニル、又はジヒドロキノリニルである。
【0032】
は、好ましくは無置換であるか、1、2、又は3個の置換基で置換されている。Rは、より好ましくは無置換、一置換、又は二置換である。好ましい任意の置換基としては、シアノ、ハロゲン、C1−4アルキル、ハロC1−4アルキル、C1−4アルコキシ、ハロC1−4アルコキシ、C6−10アリール、カルボキシ、ニトロ、ヒドロキシ、及びオキソが挙げられる。任意の置換基の典型例としては、シアノ、臭素、塩素、フッ素、メチル、トリフルオロメチル、メトキシ、ジフルオロメトキシ、フェニル、カルボキシ、ニトロ、トリフルオロメトキシ、ヒドロキシ、及びオキソが挙げられる。
【0033】
一実施態様においては、Rは無置換である。
【0034】
従って、特に好ましいR基としては、フェニル、シアノフェニル、ブロモフェニル、クロロフェニル、ジクロロフェニル、フルオロフェニル、ジフルオロフェニル、トリフルオロメチルフェニル、ビス(トリフルオロメチル)フェニル、メトキシフェニル、ジフルオロメトキシフェニル、ビフェニル、ナフチル、チエニル、フェニルイソオキサゾリル、ピリジニル、(クロロ)(メチル)ベンゾチエニル、(メチル)(トリフルオロメチル)チアゾロトリアゾリル、ベンゾチエニル、ジヒドロベンゾジオキシニル、ベンゾチアゾリル、メトキシキノリニル、キノリニル、イソキノリニル、キノキサリニル、メトキシナフチル、テトラヒドロイソキノリニル、メチルキノリニル、インドリル、(ジメチルアミノ)フェニル、(フルオロ)(メトキシ)フェニル、カルボキシフェニル、ジメトキシナフチル、ニトロフェニル、(トリフルオロメトキシ)フェニル、エトキシフェニル、(アセチルアミノ)フェニル、(メトキシカルボニル)フェニル、アミノフェニル、ジメトキシフェニル、(フルオロ)(トリフルオロメチル)フェニル、ヒドロキシフェニル、(フルオロ)キノリニル、キノキサリニル、ナフチリジニル、及び(オキソ)ジヒドロキノリニルが挙げられる。
【0035】
一実施態様においては、Rは、置換されていてもよいC6−10アリールである。
【0036】
一実施態様においては、Rはフェニル又はナフチルである。
【0037】
具体的なR基としてフェニル及び2−ナフチルが挙げられる。
【0038】
は好ましくはメチル、エチル、プロピル、又はブチルである。特に好ましくは、Rは、メチル又はエチルである。
【0039】
好ましくは、Rは水素、ヒドロキシ、C1−6アルキル、ハロC1−6アルキル、C1−6アルコキシ、C3−10シクロアルキル、アセチルアミノ、アミノ、C1−6アルキルアミノ、ジ(C1−6アルキル)アミノ、C6−10アリール、C6−10アリールC1−6アルコキシ、4、5、又は6員の飽和又は部分飽和ヘテロ環(これは、それぞれ独立にN、O、及びSから選ばれる1、2、又は3個のヘテロ原子を含み、C1−4アルキル基で架橋されていてもよい)、5員の不飽和ヘテロ環(これは、それぞれ独立にN、O、及びSから選ばれる1、2、3、又は4個のヘテロ原子を含むが、該ヘテロ原子のうち2個以上がO又はSであることはない)、6員の不飽和ヘテロ環(これは、1、2、又は3個の窒素原子を含む)、或いは8〜13員の飽和、部分飽和、又は不飽和ヘテロ環(これは、それぞれ独立にN、O、及びSから選ばれる1、2、3、又は4個のヘテロ原子を含む)であり; これらの環は、Rからそれぞれ独立に選ばれる1個以上の置換基で置換されていてもよい。
【0040】
一実施態様においては、Rは水素、ジメチルアミノ、フェニル、ナフチル、ピロリジニル、ピペリジニル、アゾニアビシクロ[2.2.1]ヘプタニル、アゾニアビシクロ[2.2.2]オクタニル、ピペラジニル、モルホリニル、チエニル、チアゾリル、イミダゾリル、ピラゾリル、イソオキサゾリル、チアジアゾリル、ピリジニル、インドリル、ベンゾチエニル、ベンゾチアジアゾリル、ベンゾオキサジアゾリル、ジヒドロベンゾフリル、ジヒドロチアゾロピリミジニル、イソキノリル、ジヒドロベンゾジオキシニル、ジヒドロベンゾオキサジニル、tert−ブトキシ、シクロペンチル、メチル、トリフルオロメチル、メトキシ、ジエチルアミノ、ヒドロキシ、ベンズイミダゾリル、ベンゾフラニル、トリアゾロピリミジニル、ジヒドロベンゾオキサゾリル、ジヒドロインドリル、ジヒドロキナゾリニル、ジヒドロフタラジニル、インダゾリル、キノリニル、ベンズイソオキサゾリル、ベンゾトリアゾリル、テトラヒドロベータカルボリニル、ジヒドロイソインドリル、テトラヒドロナフチリジニル、テトラゾリル、ベンジルオキシ、チオモルホリニル、アゼチジニル、テトラヒドロキノリニル、アセチルアミノ、トリアゾリル、チアゾリジニル、又はアミノであり、これらの環は、Rからそれぞれ独立に選ばれる1個以上の置換基で置換されていてもよい。
【0041】
好ましくは、Rは水素、ヒドロキシ、フェニル、ピペラジニル、キノリニル、ピペリジニル、テトラヒドロキノリニル、チアゾリル、ピリジニル、モルホリニル、ピラゾリル、ピロリジニル、メトキシ、ジメチルアミノ、アセチルアミノ、トリアゾリル、チアゾリジニル、アミノ、又はメチルであり、これらの環は、Rからそれぞれ独立に選ばれる1個以上の置換基で置換されていてもよい。
【0042】
一実施態様においては、Rが環状である場合、無置換であるか、或いはRから選ばれる1、2、又は3個の置換基で置換される。Rは好ましくは無置換又は一置換である。
【0043】
好ましいR基はハロゲン、シアノ、C1−6アルキル、C1−6アルコキシ、ハロC1−6アルコキシ、カルボキシ、C1−6アルコキシカルボニル、ニトロ、アミノスルホニル、(C1−6アルキルカルボニル)アミノ、モルホリニル、ピペラジニル、チアゾリル、ピラゾリル、イソオキサゾリル、ピリジニル、オキソ、ハロC1−6アルキル、フェニル、ピロリジニル、又はベンジルであり、これらの環は、C1−6アルキル及びハロC1−6アルキルからそれぞれ独立に選ばれる1個以上の置換基で置換されていてもよい。
【0044】
一実施態様においては、Rが環状である場合、無置換であるか、或いはそれぞれ独立に選ばれる1、2、又は3個の置換基で置換される。
【0045】
一実施態様においては、RはC1−6アルキル、C6−10アリール、又はC6−10アリールC1−6アルキルである。
【0046】
基は特に好ましくはメチル、フェニル、又はベンジルである。
【0047】
は好ましくは水素、ヒドロキシ、フェニル、メチルピペラジニル、フェニルピペラジニル、キノリニル、ピペリジニル、ベンジルピペリジニル、テトラヒドロキノリニル、チアゾリル、ピリジニル、モルホリニル、ピラゾリル、メチルピペリジニル、メチルピロリジニル、メトキシ、ジメチルアミノ、アセチルアミノ、トリアゾリル、ピロリジニル、チアゾリジニル、アミノ、又はメチルである。
【0048】
基の具体例としては、水素、ヒドロキシ、フェニル、1−メチルピペラジン−4−イル、1−フェニルピペラジン−4−イル、キノリン−6−イル、ピペリジン−1−イル、1−ベンジルピペリジン−4−イル、3,4−ジヒドロキノリン−1(2H)−イル、1,3−チアゾール−2−イル、ピリジン−3−イル、ピリジン−4−イル、ピリジン−2−イル、モルホリン−4−イル、1H−ピラゾール−1−イル、1H−ピラゾール−4−イル、1−メチルピペリジン−3−イル、1−メチルピペリジン−2−イル、1−メチルピロリジン−3−イル、メトキシ、ジメチルアミノ、アセチルアミノ、4H−1,2,4−トリアゾール−4−イル、ピロリジン−1−イル、1−メチルピペリジン−4−イル、1,3−チアゾリジン−3−イル、アミノ、及びメチルが挙げられる。
【0049】
は好ましくは水素又はメチルであるか、或いはRはY(CRと共にオキソ基を形成する。
【0050】
一実施態様においては、Rは水素又はC1−6アルキルである。
【0051】
他の実施態様においては、Rは水素又はメチルである。
【0052】
及びRは、好ましくはそれぞれ独立に水素及びC1−4アルキルから選ばれる。特に好ましくは、R及びRは、それぞれ独立に水素及びメチルから選ばれる。
【0053】
一実施態様においては、R及びRはともに水素である。
【0054】
一実施態様においては、Rは水素又はC1−6アルキルである。
【0055】
一実施態様においては、Rは水素又はC1−6アルキルである。
【0056】
は、好ましくはそれぞれ独立に水素、メチル、及びアセチルから選ばれる。
【0057】
本発明の化合物中、α1炭素不斉中心がSの立体化学配置を有するのが好ましい。一実施態様においては、α1炭素不斉中心はRの立体化学配置を有する。
【0058】
また、本発明は下記式II:
【0059】
【化2】

【0060】
[式中、
b、q、R、R、R、R、R、R、及びYは、上記式I中のそれらと同義であり;
A及びBの一方はNであり、他方はCHであり;
は、水素又はC1−6アルキルである。
]で表される化合物、又はその薬学的に許容される塩若しくは互変異性体も提供する。
【0061】
式IIの好ましい態様は、必要に応じて上記定義を変更してたものである。Rは好ましくは水素又はメチルである。特に好ましくはRは水素である。
【0062】
また、本発明は下記式III:
【0063】
【化3】

【0064】
[式中、
は、(C=O)又は(C=O)NRであり;
、R、R、R、R、b、及びqは、上記式I中のそれらと同義であり;
A及びBの一方はNであり、他方はCHであり;
は、水素又はC1−6アルキルである。
]で表される化合物、又はその薬学的に許容される塩若しくは互変異性体も提供する。
【0065】
式IIIの好ましい態様は、必要に応じて上記式Iでの定義を変更して得られる。
【0066】
誤解を避けるために説明すると、式II又はIIIの化合物中、Rは環上の置換可能などの位置に結合していてもよい。
【0067】
一実施態様においては、AはNであり、BはCHである。
【0068】
他の実施態様においては、AはCHであり、BはNである。
【0069】
一実施態様においては、Rはヒドロキシ、フェニル、メチルピペラジニル、フェニルピペラジニル、キノリニル、ピペリジニル、ベンジルピペリジニル、テトラヒドロキノリニル、チアゾリル、ピリジニル、モルホリニル、ピラゾリル、メチルピペリジニル、メチルピロリジニル、メトキシ、ジメチルアミノ、アミノ、アセチルアミノ、トリアゾリル、ピロリジニル、チアゾリジニル、又はメチルである。
【0070】
他の実施態様においては、Rはヒドロキシ、フェニル、1−メチルピペラジン−4−イル、1−フェニルピペラジン−4−イル、キノリン−6−イル、ピペリジン−1−イル、1−ベンジルピペリジン−4−イル、3,4−ジヒドロキノリン−1(2H)−イル、1,3−チアゾール−2−イル、ピリジン−3−イル、ピリジン−4−イル、ピリジン−2−イル、モルホリン−4−イル、1H−ピラゾール−1−イル、1H−ピラゾール−4−イル、1−メチルピペリジン−3−イル、1−メチルピペリジン−2−イル、1−メチルピロリジン−3−イル、メトキシ、ジメチルアミノ、アセチルアミノ、4H−1,2,4−トリアゾール−4−イル、ピロリジン−1−イル、アミノ、1−メチルピペリジン−4−イル、1,3−チアゾリジン−3−イル、又はメチルである。
【0071】
は好ましくは水素又はメチルである。
【0072】
上記式Iの化合物のN−オキシドも本発明の範囲に含まれる。通常、このようなN−オキシドはどの窒素原子を変換して形成してもよい。N−オキシドは、含水アルミナの存在下で式Iの化合物をオキソンと反応させる等、従来の手段により形成してよい。
【0073】
上記式Iの化合物のプロドラッグも本発明の範囲に含まれる。通常、このようなプロドラッグは式Iの化合物の官能性誘導体であり、それは、生体内で所望の式Iの化合物に容易に変換される。適当なプロドラッグ誘導体を選択及び調製するための手順については、例えば、バンガード(H.Bundgaard)編、「Design of Prodrugs」、エルゼビア、1985年等に記載されている。
【0074】
プロドラッグは、生物学的に活性な物質(「親薬物」又は「親分子」)の薬理学的に不活性な誘導体であってよい。このような誘導体は体内で変換されて活性薬物を放出する必要があり、親薬物分子よりも優れた送達特性を有する。この生体内での変換は、例えばカルボン酸エステル、リン酸エステル、又は硫酸エステルの化学的又は酵素的加水分解、感受性官能基の還元又は酸化等の代謝過程の結果として、進行するものであってよい。
【0075】
上記式Iの化合物の溶媒和物及びその塩(例えば、水和物)も本発明の範囲に含まれる。
【0076】
本発明の化合物は、不斉中心、キラル軸、及びキラル面を有してよく(エリール(E.L.Eliel)及びウィレン(S.H.Wilen)、「Stereochemistry of Carbon Compounds」、ジョン・ワイリー・アンド・サンズ、ニューヨーク、1994年、1119〜1190頁に記載)、また光学異性体を含む全ての異性体やその混合物と共に、ラセミ化合物、ラセミ混合物、又は個々のジアステレオマーとして存在してよく、このような立体異性体は全て本発明の範囲に含まれる。加えて、本発明で開示する化合物は互変異性体として存在してもよく、一方の互変異性体構造のみを示す場合も、両方の互変異性体構造が本発明の範囲に包まれる。
【0077】
本発明の化合物は複数の異性体構造で存在してもよく、その全てが本発明の範囲に含まれる。
【0078】
任意の構成要素中、任意の変数(R、R等)が2回以上存在する場合、各存在における定義は他の存在として独立している。また、得られる化合物が安定である限り、置換基や変数の組み合わせは許容される。置換基から環構造に引いた線は、その示された結合が置換可能な環原子のいずれかに結合してもよいことを表す。環構造が多環性である場合は、該結合は最も近い環上の適当な炭素原子にのみ結合する。
【0079】
当業者は、後述の方法や当該技術分野で公知の方法によって、容易に入手可能な出発物質から、化学的に安定な本発明の化合物が容易に合成できるように、該化合物上の置換基及び置換パターンを選択することができると理解される。置換基が複数の基で置換されている場合、安定な構造が得られる限りは、該複数の基は同一の炭素上又は異なる炭素上に存在してもよい。「置換されてもよい(optionally substituted)」という語句は、「無置換であるか、1個以上の置換基で置換される」という語句と同義であると解され、この場合、好ましくは0〜3個の置換基を有し、より好ましくは0〜2個の置換基を有する。飽和、部分飽和、又は不飽和ヘテロ環上の置換基は、置換可能な任意の位置に結合していてもよい。
【0080】
本明細書で用いる場合、「アルキル」は特定数の炭素原子を有する分岐状又は直鎖状の飽和脂肪族炭化水素基を包含する。例えば、「C1−6アルキル」は直鎖状又は分岐状構造中に1、2、3、4、5、又は6個の炭素原子を有する基と定義される。具体的には、「C1−6アルキル」としてはメチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、t−ブチル、i−ブチル、ペンチル、ヘキシル等が挙げられる。中でもメチル基が好ましい。「シクロアルキル」は特定数の炭素原子を有する単環式、二環式、又は多環式の飽和脂肪族炭化水素基を意味する。例えば、「C3−10シクロアルキル」としてはシクロプロピル、メチルシクロプロピル、2,2−ジメチルシクロブチル、2−エチルシクロペンチル、シクロヘキシル等が挙げられる。本発明の一実施態様においては、「シクロアルキル」は上記基を包含し、更に単環式不飽和脂肪族炭化水素基も包含する。本実施態様で定義される「シクロアルキル」としては、シクロプロピル、メチルシクロプロピル、2,2−ジメチルシクロブチル、2−エチルシクロペンチル、シクロヘキシル、シクロペンテニル、シクロブテニル、7,7−ジメチルビシクロ[2.2.1]ヘプチル等が挙げられる。好ましいシクロアルキル基は、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、及びシクロヘキシルが好ましい。
【0081】
「アルコキシ」は酸素橋を介して結合した、特定炭素原子数のアルキル基である。従って、「アルコキシ」は上記「アルキル」の定義を包含する。適当なアルコキシ基の例としては、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、i−プロポキシ、n−ブトキシ、s−ブトキシ、及びt−ブトキシが挙げられる。好ましいアルコキシ基は、メトキシ基である。用語「C6−10アリールオキシ」も同様に解釈され、この基の例としてはフェノキシが挙げられる。
【0082】
用語「ハロC1−6アルキル」及び「ハロC1−6アルコキシ」は、1個以上(特に1〜3個)の水素原子がハロゲン原子(特にフッ素又は塩素原子)で置換された、C1−6アルキル基及びC1−6アルコキシ基を意味する。好ましくはフルオロC1−6アルキル基及びフルオロC1−6アルコキシ基であり、特にフルオロC1−3アルキル基及びフルオロC1−3アルコキシ基である。その例としてはCF、CHF、CHF、CHCHF、CHCHF、CHCF、OCF、OCHF、OCHF、OCHCHF、OCHCHF、OCHCF等が挙げられ、格別にはCF、OCF、及びOCHFがである。用語「ハロC3−10シクロアルキル」も同様に解釈できる。
【0083】
用語「ヒドロキシC1−6アルキル」は、1個以上(特に1〜3個)の水素原子がヒドロキシ基で置換されたC1−6アルキル基を意味する。好ましい例としてはCHOH、CHCHOH、及びCHOHCHが挙げられる。
【0084】
用語「C1−6アルキルカルボニル」及び「C1−6アルコキシカルボニル」は、それぞれカルボニル基(C=O)を介して結合した、C1−6アルキル又はC1−6アルコキシである。C1−6アルキルカルボニル基の適当な例としては、メチルカルボニル、エチルカルボニル、プロピルカルボニル、イソプロピルカルボニル、及びtert−ブチルカルボニルが挙げられる。C1−6アルコキシカルボニルの例としては、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、プロポキシカルボニル、イソプロポキシカルボニル、及びtert−ブトキシカルボニルが挙げられる。用語「C6−10アリールカルボニル」も同様に解釈でき、この基の例としてはベンゾイルが挙げられる。
【0085】
本明細書で用いる場合、用語「C2−6アルケニル」は、2〜6個の炭素原子と少なくとも1個の炭素−炭素二重結合を有する直鎖状又は分岐状の非芳香族炭化水素基を表す。好ましくは1個の炭素−炭素二重結合が存在し、最大4個の非芳香族炭素−炭素二重結合が存在してもよい。アルケニル基の例としてはエテニル、プロペニル、ブテニル、及び2−メチルブテニルが挙げられる。アルケニル基の直鎖状又は分岐状の部位が二重結合を含んでいてよく、また置換アルケニル基が示される場合は置換されていてもよい。好ましいアルケニル基としてはエテニル及びプロペニルが挙げられる。
【0086】
用語「C2−6アルキニル」は、2〜6個の炭素原子と少なくとも1個の炭素−炭素三重結合を有する直鎖状又は分岐状の炭化水素基を表す。最大で3個の炭素−炭素三重結合が存在してもよい。アルキニル基の例としては、エチニル、プロピニル、ブチニル、3−メチルブチニル等が挙げられる。アルキニル基の直鎖状又は分岐状の部位が三重結合を含んでよく、また置換アルキニル基が示される場合は置換されていてもよい。好ましいアルキニル基としてはエチニル及びプロピニルが挙げられる。
【0087】
「C6−10アリール」は、6〜10個の原子からなる単環式又は二環式の安定な炭素環(少なくとも1つの芳香族環を有する)を意味する。このようなアリール基の例としては、フェニル、ナフチル、テトラヒドロナフチル、インダニル、テトラヒドロベンゾ[7]アヌレン、インデニル、及びテトラヒドロインデニルが挙げられる。好ましいアリール基はフェニル又はナフチルであり、特にフェニルである。
【0088】
本発明の特定のヘテロ環の例としては、ベンズイミダゾリル、ベンゾフランジオニル、ベンゾフラニル、ベンゾフラザニル、ベンゾピラゾリル、ベンゾトリアゾリル、ベンゾチエニル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾオキサゾロニル、ベンゾチアゾリル、ベンゾチアジアゾリル、ベンゾジオキソリル、ベンゾオキサジアゾリル、ベンゾイソオキサゾリル、ベンゾイソチアゾリル、クロメニル、クロマニル、イソクロマニル、カルバゾリル、カルボリニル、シンノニリル、エポキシジル、フラニル、フラザニル、イミダゾリル、インドリニル、インドリル、インドリジニル、インドリニル、イソインドリニル、インダゾリル、イソベンゾフラニル、イソインドリル、イソキノリル、イソチアゾリル、イソオキサゾリル、ナフトピリジニル、オキサジアゾリル、オキサゾリル、オキサゾリニル、イソオキサゾリニル、オキセタニル、プリニル、ピラニル、ピラジニル、ピラゾリル、ピリダジニル、ピリドピリジニル、ピリダジニル、ピリジニル、ピリミジニル、トリアジニル、テトラジニル、ピロリル、キナゾリニル、キノリル、キノキサリニル、キノリジニル、テトラヒドロピラニル、テトラヒドロチオピラニル、テトラヒドロイソキノリニル、テトラゾリル、テトラゾロピリジル、チアジアゾリル、チアゾリル、チエニル、トリアゾリル、アゼチジニル、1,4−ジオキサニル、ヘキサヒドロアゼピニル、ピペラジニル、ピペリジル、ピリジン−2−オニル、ピロリジニル、イミダゾリニル、ピラゾリニル、ピロリニル、モルホリニル、チオモルホリニル、ジヒドロベンゾイミダゾリル、ジヒドロベンゾフラニル、ジヒドロベンゾチオフェニル、ジヒドロベンゾオキサゾリル、ジヒドロフラニル、ジヒドロイミダゾリル、ジヒドロインドリル、ジヒドロイソオキサゾリル、ジヒドロイソチアゾリル、ジヒドロオキサジアゾリル、ジヒドロオキサゾリル、ジヒドロピラジニル、ジヒドロピラゾリル、ジヒドロピリジニル、ジヒドロピリミジニル、ジヒドロピロリル、ジヒドロキノリニル、ジヒドロテトラゾリル、ジヒドロチアジアゾリル、ジヒドロチアゾリル、ジヒドロチエニル、ジヒドロトリアゾリル、ジヒドロアゼチジニル、ジヒドロイソクロメニル、ジヒドロイミダゾロニル、ジヒドロトリアゾロニル、ジヒドロベンゾジオキシニル、ジヒドロチアゾロピリミジニル、メチレンジオキシベンゾイル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロチエニル、テトラヒドロキノリニル、チアゾリジノニル、イミダゾロニル、イソインドリノニル、オクタヒドロキノリジニル、オクタヒドロイソインドリル、イミダゾピリジニル、アザビシクロヘプタニル、クロメノニル、トリアゾロピリミジニル、ジヒドロベンゾオキサジニル、チアゾロトリアゾリル、アゾニアビシクロヘプタニル、アゾニアビシクロオクタニル、フタラジニル、ナフチリジニル、キナゾリニル、プテリジニル、ジヒドロキナゾリニル、ジヒドロフタラジニル、ジヒドロイソインドリル、テトラヒドロナフチリジニル、テトラヒドロベータカルボリニル、ジベンゾフラニル、ナフチリジニル、ジヒドロクロメニル、ジヒドロベンゾチアゾリル、イミダゾチアゾリル、テトラヒドロインダゾリル、テトラヒドロベンゾチエニル、ヘキサヒドロナフチリジニル、テトラヒドロピリドナフチリジニル、テトラヒドロイミダゾピリジニル、テトラヒドロイミダゾピラジニル、ピロロピリジニル、及びこれらのN−オキシドが挙げられる。ヘテロ環置換基の結合は、炭素原子又はヘテロ原子を介していてもよい。
【0089】
好ましい飽和ヘテロ4員環はアゼチジニルである。
【0090】
好ましい5又は6員の飽和又は部分飽和ヘテロ環はピロリジニル、ピペリジル、ピペラジニル、モルホリニル、アゾニアビシクロ[2.2.1]ヘプタニル、アゾニアビシクロ[2.2.2]オクタニル、及びチオモルホリニルである。
【0091】
好ましい5員の不飽和ヘテロ環はチエニル、チアゾリル、ピラゾリル、イソオキサゾリル、イミダゾリル、チアジアゾリル、オキサゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、フリル、及びオキサジアゾリルである。
【0092】
好ましい6員の不飽和ヘテロ環はピリジニルであり、更に好ましい6員の不飽和ヘテロ環はピリミジニル、ピリダジニル、及びピラジニルである。
【0093】
好ましい8〜10員の飽和、部分飽和、又は不飽和ヘテロ環はベンゾチエニル、イソキノリル、インドリル、ベンゾチアジアゾリル、ベンゾオキサジアゾリル、チアゾロトリアゾリル、ジヒドロベンゾジオキシニル、ジヒドロチアゾロピリミジニル、ジヒドロベンゾオキサジニル、ジヒドロベンゾフラニル、ベンゾチアゾリル、キノリニル、イソキノリニル、ベンズイミダゾリル、ベンゾフラニル、ジヒドロベンゾオキサゾリル、ジヒドロインドリル、ジヒドロキナゾリニル、ジヒドロフタラジニル、インダゾリル、ベンズイソオキサゾリル、ベンゾトリアゾリル、ジヒドロイソインドリル、テトラヒドロナフチリジニル、トリアゾロピリミジニル、キノキサリニル、テトラヒドロイソキノリニル、ナフチリジニル、ジヒドロキノリニル、ジヒドロイソクロメニル、ジヒドロクロメニル、テトラヒドロキノリニル、ジヒドロベンゾチアゾリル、イミダゾチアゾリル、テトラヒドロインダゾリル、テトラヒドロベンゾチエニル、ヘキサヒドロナフチリジニル、テトラヒドロイミダゾピリジニル、テトラヒドロイミダゾピラジニル、及びピロロピリジニルである。
【0094】
好ましい部分飽和ヘテロ13員環はテトラヒドロベータカルボリニルである。
【0095】
本明細書で用いる場合、用語「ハロゲン」はフッ素、塩素、臭素、又はヨウ素であり、その中で、好ましくはフッ素、塩素、又は臭素である。
【0096】
本発明の範囲に含まれる特定の化合物の例としては、
2−[5−(2−ナフチル)−1H−イミダゾール−2−イル]−8−オキソデカン酸;
5−(2−ナフチル)−2−(7−オキソ−1−{[(2−フェニルエチル)アミノ]カルボニル}ノニル)−1H−イミダゾール−1−イウムトリフルオロアセテート;
2−[1−(ヒドロキシメチル)−7−オキソノニル]−5−(2−ナフチル)−1H−イミダゾール−1−イウムトリフルオロアセテート;
5−(2−ナフチル)−2−{7−オキソ−1−[(ピリジン−3−イルメトキシ)メチル]ノニル}−1H−イミダゾール−1−イウムトリフルオロアセテート;
5−(2−ナフチル)−2−(8−オキソノナノイル)−1H−イミダゾール−1−イウムトリフルオロアセテート;
9−ヒドロキシ−9−[5−(2−ナフチル)−1H−イミダゾール−2−イル]ノナン−3−オン;
(−)−9−ヒドロキシ−9−[5−(2−ナフチル)−1H−イミダゾール−2−イル]ノナン−3−オン;
2−(1−ヒドロキシ−1−メチル−7−オキソノニル)−5−(2−ナフチル)−1H−イミダゾール−1−イウムトリフルオロアセテート;
2−(1−メトキシ−7−オキソノニル)−5−(2−ナフチル)−1H−イミダゾール−1−イウムトリフルオロアセテート;
5−(2−ナフチル)−2−{7−オキソ−1−[({[(1S)−1−フェニルエチル]アミノ}カルボニル)オキシ]ノニル}−1H−イミダゾール−1−イウムトリフルオロアセテート;
2−[1−(アニリノカルボニル)−7−オキソノニル]−5−(2−ナフチル)−1H−イミダゾール−1−イウムトリフルオロアセテート;
2−{1−[(ベンジルアミノ)カルボニル]−7−オキソノニル}−5−(2−ナフチル)−1H−イミダゾール−1−イウムトリフルオロアセテート;
1−メチル−4−{2−[5−(2−ナフチル)−1H−イミダゾール−1−イウム−2−イル]−8−オキソデカノイル}ピペラジン−1−イウムビス(トリフルオロアセテート);
4−{2−[5−(2−ナフチル)−1H−イミダゾール−1−イウム−2−イル]−8−オキソデカノイル}−1−フェニルピペラジン−1−イウムビス(トリフルオロアセテート);
2−(1−{[メチル(キノリン−6−イルメチル)アミノ]カルボニル}−7−オキソノニル)−5−(2−ナフチル)−1H−イミダゾール−1−イウムトリフルオロアセテート;
1−[2−({2−[5−(2−ナフチル)−1H−イミダゾール−1−イウム−2−イル]−8−オキソデカノイル}アミノ)エチル]ピペリジニウムビス(トリフルオロアセテート);
1−ベンジル−4−({2−[5−(2−ナフチル)−1H−イミダゾール−1−イウム−2−イル]−8−オキソデカノイル}アミノ)ピペリジニウムビス(トリフルオロアセテート);
2−[1−({[2−(3,4−ジヒドロキノリン−1(2H)−イル)エチル]アミノ}カルボニル)−7−オキソノニル]−5−(2−ナフチル)−1H−イミダゾール−1−イウムトリフルオロアセテート;
1−[1,1−ジメチル−2−({2−[5−(2−ナフチル)−1H−イミダゾール−1−イウム−2−イル]−8−オキソデカノイル}アミノ)エチル]ピペリジニウムビス(トリフルオロアセテート);
5−(2−ナフチル)−2−(7−オキソ−1−{[(1,3−チアゾール−2−イルメチル)アミノ]カルボニル}ノニル)−1H−イミダゾール−1−イウムトリフルオロアセテート;
5−(2−ナフチル)−2−(7−オキソ−1−{[(ピリジン−3−イルメチル)アミノ]カルボニル}ノニル)−1H−イミダゾール−1−イウムトリフルオロアセテート;
5−(2−ナフチル)−2−{7−オキソ−1−[(ピリジン−3−イルアミノ)カルボニル]ノニル}−1H−イミダゾール−1−イウムトリフルオロアセテート;
5−(2−ナフチル)−2−{7−オキソ−1−[(1,3−チアゾール−2−イルアミノ)カルボニル]ノニル}−1H−イミダゾール−1−イウムトリフルオロアセテート;
5−(2−ナフチル)−2−(7−オキソ−1−{[(2−ピリジン−4−イルエチル)アミノ]カルボニル}ノニル)−1H−イミダゾール−1−イウムトリフルオロアセテート;
5−(2−ナフチル)−2−(7−オキソ−1−{[(2−ピリジン−2−イルエチル)アミノ]カルボニル}ノニル)−1H−イミダゾール−1−イウムトリフルオロアセテート;
4−[2−({2−[5−(2−ナフチル)−1H−イミダゾール−1−イウム−2−イル]−8−オキソデカノイル}アミノ)エチル]モルホリン−4−イウムビス(トリフルオロアセテート);
1−[2−({2−[5−(2−ナフチル)−1H−イミダゾール−1−イウム−2−イル]−8−オキソデカノイル}アミノ)エチル]−1H−ピラゾール−1−イウムビス(トリフルオロアセテート);
4−[2−({2−[5−(2−ナフチル)−1H−イミダゾール−1−イウム−2−イル]−8−オキソデカノイル}アミノ)エチル]−1H−ピラゾール−1−イウムビス(トリフルオロアセテート);
1−メチル−3−[({2−[5−(2−ナフチル)−1H−イミダゾール−1−イウム−2−イル]−8−オキソデカノイル}アミノ)メチル]ピペリジニウムビス(トリフルオロアセテート);
1−メチル−4−[({2−[5−(2−ナフチル)−1H−イミダゾール−1−イウム−2−イル]−8−オキソデカノイル}アミノ)メチル]ピペリジニウムビス(トリフルオロアセテート);
1−メチル−2−[(メチル{2−[5−(2−ナフチル)−1H−イミダゾール−1−イウム−2−イル]−8−オキソデカノイル}アミノ)メチル]ピペリジニウムビス(トリフルオロアセテート);
2−[1−({[(1−メチルピロリジニウム−3−イル)メチル]アミノ}カルボニル)−7−オキソノニル]−5−(2−ナフチル)−1H−イミダゾール−1−イウムビス(トリフルオロアセテート);
2−(1−{[(2−メトキシエチル)アミノ]カルボニル}−7−オキソノニル)−5−(2−ナフチル)−1H−イミダゾール−1−イウムトリフルオロアセテート;
2−[1−({[2−(ジメチルアンモニオ)エチル]アミノ}カルボニル)−7−オキソノニル]−5−(2−ナフチル)−1H−イミダゾール−1−イウムビス(トリフルオロアセテート);
2−[1−({[2−(アセチルアミノ)エチル]アミノ}カルボニル)−7−オキソノニル]−5−(2−ナフチル)−1H−イミダゾール−1−イウムトリフルオロアセテート;
4−[2−({2−[5−(2−ナフチル)−1H−イミダゾール−1−イウム−2−イル]−8−オキソデカノイル}アミノ)エチル]−4H−1,2,4−トリアゾール−4−イウムビス(トリフルオロアセテート);
5−(2−ナフチル)−2−(7−オキソ−1−{[(2−ピロリジニウム−1−イルエチル)アミノ]カルボニル}ノニル)−1H−イミダゾール−1−イウムビス(トリフルオロアセテート);
1−メチル−4−({2−[5−(2−ナフチル)−1H−イミダゾール−1−イウム−2−イル]−8−オキソデカノイル}アミノ)ピペリジニウムビス(トリフルオロアセテート);
5−(2−ナフチル)−2−[7−オキソ−1−(1,3−チアゾリジン−3−イルカルボニル)ノニル]−1H−イミダゾール−1−イウムトリフルオロアセテート;
5−(2−ナフチル)−2−(7−オキソ−1−{[(2−ピリジン−3−イルエチル)アミノ]カルボニル}ノニル)−1H−イミダゾール−1−イウムトリフルオロアセテート;
2−[1−(アミノカルボニル)−7−オキソノニル]−5−(2−ナフチル)−1H−イミダゾール−1−イウムトリフルオロアセテート;
2−{1−[(メチルアミノ)カルボニル]−7−オキソノニル}−5−(2−ナフチル)−1H−イミダゾール−1−イウムトリフルオロアセテート;
1−(2−フェニル−1,3−チアゾール−5−イル)オクタン−1,7−ジオン;
9−ヒドロキシ−9−(5−フェニル−1H−イミダゾール−2−イル)ノナン−3−オン;
9−メトキシ−9−[2−(2−ナフチル)−1H−イミダゾール−5−イル]ノナン−3−オン;
9−ヒドロキシ−9−[2−(2−ナフチル)−1H−イミダゾール−5−イル]ノナン−3−オン;
2−{1−[(アニリノカルボニル)オキシ]−7−オキソノニル}−5−(2−ナフチル)−1H−イミダゾール−1−イウムトリフルオロアセテート;
2−(1−{[(ベンジルアミノ)カルボニル]オキシ}−7−オキソノニル)−5−(2−ナフチル)−1H−イミダゾール−1−イウムトリフルオロアセテート;並びに
これらの薬学的に許容される遊離塩基、塩、及び立体異性体が挙げられる。
【0097】
薬学的に許容される塩及び立体異性体のみならず、式Iの化合物の遊離塩基も本発明に含まれる。本明細書で例示する特定の化合物の一部は、アミン化合物のプロトン化塩である。2個以上のN原子を含むヘテロ環を有する式Iの化合物は、N原子のいずれか1つ、複数、又は全てがプロトン化されてよい。用語「遊離塩基」は、非塩型のアミン化合物を表す。本発明に含まれる薬学的に許容される塩は、明細書に記載した特定の化合物について例示した塩のみではなく、フリー体の式Iの化合物の典型的な薬学的に許容される塩すべてを包含する。開示した特定の塩の化合物のフリー体は、当該技術分野で公知の方法により単離してもよい。例えば、適当な希薄塩基水溶液(NaOH、炭酸カリウム、アンモニア、重炭酸ナトリウムの希薄水溶液等)でその塩を処理することで、フリー体を再生してもよい。フリー体の化合物は、その塩型とは物性(極性溶媒への溶解性等)の点で幾分異なってもよいが、その酸や塩基の塩は、それ以外は本発明の目的においてそれぞれのフリー体の化合物と薬学的に等価である。
【0098】
本化合物の薬学的に許容される塩は、塩基性又は酸性部分を有する本発明の化合物から、従来の化学的方法によって合成できる。塩基性化合物の塩は、通常は、イオン交換クロマトグラフィーによって、或いは適当な溶媒又は混合溶媒中で遊離塩基を化学量論量又は過剰量の塩形成性無機又は有機酸と反応させることによって、調製する。酸性化合物の塩も同様に、適当な無機又は有機塩基と反応させることで調製できる。
【0099】
即ち、本発明の化合物の薬学的に許容される塩は、本発明の塩基性化合物を無機又は有機酸と反応させて得られる、本発明の化合物の通常の非毒性塩を含む。非毒性塩の例としては、塩酸、臭化水素酸、硫酸、スルファミン酸、リン酸、硝酸等の無機酸や、酢酸、プロピオン酸、コハク酸、グリコール酸、ステアリン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、アスコルビン酸、パモン酸、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸、フェニル酢酸、グルタミン酸、安息香酸、サリチル酸、スルファニル酸、2−アセトキシ安息香酸、フマル酸、トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンジスルホン酸、シュウ酸、イセチオン酸、トリフルオロ酢酸等の有機酸から得られるものが挙げられる。本発明の薬学的に許容される塩は、好ましくは1当量の式Iの化合物と1、2、又は3当量の無機又は有機酸を含む。より好ましくはトリフルオロアセテート塩又は塩化物塩、特にトリフルオロアセテート塩である。
【0100】
本発明の化合物が酸性である場合、「薬学的に許容される塩」は、無機塩基又は有機塩基を含む、薬学的に許容される非毒性塩基から調製される。無機塩基から得られる塩としては、アルミニウム塩、アンモニウム塩、カルシウム塩、銅塩、第二鉄塩、第一鉄塩、リチウム塩、マグネシウム塩、マンガン塩、亜マンガン塩、カリウム塩、ナトリウム塩、亜鉛塩等が挙げられる。特に好ましいものは、アンモニウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、カリウム塩、及びナトリウム塩である。薬学的に許容される有機非毒性塩基から得られる塩としては、第一級、第二級、及び第三級アミン、天然置換アミンを含む置換アミン、環状アミン、塩基性イオン交換樹脂等の塩、例えばアルギニン、ベタイン、カフェイン、コリン、N,N’−ジベンジルエチレンジアミン、ジエチルアミン、2−ジエチルアミノエタノール、2−ジメチルアミノエタノール、エタノールアミン、エチレンジアミン、N−エチルモルホリン、N−エチルピペリジン、グルカミン、グルコサミン、ヒスチジン、ヒドラバミン、イソプロピルアミン、リジン、メチルグルカミン、モルホリン、ピペラジン、ピペリジン、ポリアミン樹脂、プロカイン、プリン、テオブロミン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリプロピルアミン、トロメタミン等の塩が挙げられる。
【0101】
上記の薬学的に許容される塩、及び他の典型的な薬学的に許容される塩の調製については、バーグ(Berg)ら、「Pharmaceutical Salts」、ジャーナル・オブ・ファーマシューティカル・サイエンス(J.Pharm.Sci.)、1977年:66:1−19に、より詳細に記載されている。
【0102】
なお、化合物中の酸性部位(カルボキシル基等)が生理学的条件下でアニオンであってもよく、この電荷が、プロトン化又はアルキル化塩基性部位(四級窒素原子等)のカチオン電荷に対して分子内でバランスをとるかもしれないので、本発明の化合物は分子内塩又は両性イオンを形成する可能性がある。
【0103】
本発明の化合物は、人間又は動物の治療に使用することができる。
【0104】
本発明の化合物は人間及び動物の健康のための様々な用途に使用できる。本発明の化合物は、種々の疾患のうち、癌の治療に有用なヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害剤として使用できる。HDACは、ヒストン等のタンパク質中のリジン残基からアセチル基を除去する反応を触媒し、HDAC阻害剤は、遺伝子発現、細胞分化、細胞周期進行、成長停止、及び/又はアポトーシスに影響を及ぼす等、多様な生物学的機能を示す(ジャーナル・オブ・メディシナル・ケミストリー(J.Med.Chem.)、2003年、46:5097、及びカレント・メディシナル・ケミストリー(Curr.Med.Chem.)、2003年、10:2343参照)。
【0105】
本発明の化合物は細胞増殖疾患の治療に使用される。この場合、本明細書で提供した方法及び組成物で治療できる病状としては、癌(後に詳述する)、神経変性疾患、統合失調症、及び脳卒中が挙げられるが、これらに限定されない。
【0106】
本明細書で提供した化合物、組成物、及び方法は、固形腫瘍を含む癌(皮膚癌、乳癌、脳癌、子宮頸癌、精巣癌等)の治療に、特に有用であると考えられる。本発明の化合物、組成物、及び方法が治療に使用できる癌の例としては、
心臓:肉腫(血管肉腫、線維肉腫、横紋筋肉腫、脂肪肉腫)、粘液腫、横紋筋腫、線維腫、脂肪腫、奇形腫;
肺:気管支癌(扁平上皮細胞癌、未分化小細胞癌、未分化大細胞癌、腺癌)、胞巣状癌(細気管支癌)、気管支腺腫、肉腫、リンパ腫、軟骨性過誤腫、中皮腫;
消化管:食道(扁平上皮細胞癌、腺癌、平滑筋肉腫、リンパ腫)、胃(癌腫、リンパ腫、平滑筋肉腫)、膵臓(導管腺癌、膵島細胞腺腫、グルカゴン産生腫瘍、ガストリン産生腫瘍、カルチノイド腫瘍、ビポーマ)、小腸(腺癌、リンパ腫、カルチノイド腫瘍、カポジ肉腫、平滑筋腫、血管腫、脂肪腫、神経繊維腫、線維腫)、大腸(腺癌、管状腺腫、絨毛腺腫、過誤腫、平滑筋腫);
泌尿生殖器:腎臓(腺癌、ウィルム腫瘍(腎芽腫)、リンパ腫、白血病)、膀胱及び尿道(扁平上皮細胞癌、移行細胞癌、腺癌)、前立腺(腺癌、肉腫)、精巣(精上皮腫、奇形腫、胎生期癌、奇形癌、絨毛癌、肉腫、間質細胞癌、線維腫、線維腺腫、腺腫瘍、脂肪腫);
肝臓:肝癌(肝細胞癌)、胆管癌、肝芽腫、血管肉腫、肝細胞腺腫、血管腫;
:骨肉腫、線維肉腫、悪性線維性組織球腫、軟骨肉腫、ユーイング肉腫、悪性リンパ腫(細網細胞肉腫)、多発骨髄腫、悪性巨細胞腫、脊索腫、骨軟骨腫、良性軟骨腫、軟骨芽細胞腫、軟骨粘液線維腫、類骨腫、巨大細胞腫瘍;
神経系:頭蓋骨(骨腫、血管腫、肉芽腫、黄色腫、変形性骨炎)、髄膜(髄膜腫、髄膜肉腫、神経膠腫症)、脳(星状細胞腫、髄芽腫、神経膠腫、上衣細胞腫、胚細胞腫(松果体腫)、多形性膠芽腫、乏突起膠腫、神経鞘腫、網膜芽腫、先天性腫瘍)、脊髄神経繊維腫、髄膜腫、神経膠腫、肉腫);
婦人科癌:子宮(子宮内膜癌)、頸部(頸癌、前腫瘍子宮頸部形成異常)、卵巣(卵巣癌(漿液性嚢胞腺癌、ムチン性嚢胞腺癌、未分類癌)、顆粒膜−莢膜細胞腫瘍、セルトリ・ライディック細胞腫瘍、未分化胚細胞腫、悪性奇形腫)、外陰(扁平上皮細胞癌、上皮内癌、腺癌、線維肉腫、黒色腫)、膣(明細胞癌、扁平上皮細胞癌、ブドウ状肉腫(胎児性横紋筋肉腫)、卵管(癌);
血液:血液((急性及び慢性)骨髄性白血病、急性リンパ芽球性白血病、慢性リンパ性白血病、骨髄増殖性疾患、多発骨髄腫、骨髄異形成症候群)、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫(悪性リンパ腫);
皮膚:悪性黒色腫、基底細胞癌、扁平上皮細胞癌、カポジ肉腫、異形成母斑症、脂肪腫、血管腫、皮膚線維腫、ケロイド、乾癬;及び
副腎:神経芽細胞腫
が挙げられるが、これらに限定されない。ここで、用語「癌性細胞」は上記のいずれかの状態にある細胞を含む。
【0107】
従って、本発明は、細胞増殖疾患治療に有用な薬剤の製造に使用できる式Iの化合物を提供する。
【0108】
また、本発明は、処置が必要な患者に、有効量の式Iの化合物又はそれを含む組成物を投与することを特徴とする、細胞増殖疾患を治療する方法も提供する。
【0109】
本発明の化合物は、神経変性疾患(ポリグルタミン伸長依存性神経変性、ハンチントン病、ケネディ病、脊髄小脳失調、歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症(DRPLA)、タンパク質凝集依存性神経変性、マシャド・ジョセフ病、アルツハイマー病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、海綿状脳症、プリオン病、及び多発性硬化症(MS)が挙げられるが(WO02/090534及びWO03/083067参照)これらに限定されない。)の治療又は予防にも有用であるかもしれない。
【0110】
従って、本発明は、神経変性疾患の治療又は予防に有用な薬剤の製造に使用するための式Iの化合物を提供する。
【0111】
また、本発明は、処置が必要な患者に、有効量の式Iの化合物又はそれを含む組成物を投与することを特徴とする、神経変性疾患を治療又は予防する方法も提供する。
【0112】
本発明の化合物は、精神発達遅滞、特にX染色体連鎖精神発達遅滞及びルビンスタイン−テイビ症候群の治療又は予防にも有用であるかもしれない。
【0113】
従って、本発明は、精神発達遅滞の治療又は予防に有用な薬剤の製造に使用するための式Iの化合物を提供する。
【0114】
また、本発明は、処置が必要な患者に、有効量の式Iの化合物又はそれを含む組成物を投与することを特徴とする、精神発達遅滞を治療又は予防する方法も提供する。
【0115】
本発明の化合物は、統合失調症の治療又は予防にも有用であってもよい(WO02/090534参照)。
【0116】
従って、本発明は、統合失調症の治療又は予防に有用な薬剤の製造に使用するための式Iの化合物を提供する。
【0117】
また、本発明は、処置が必要な患者に、有効量の式Iの化合物又はそれを含む組成物を投与することを特徴する、統合失調症を治療又は予防する方法も提供する。
【0118】
本発明の化合物は、炎症性疾患の治療又は予防にも有用であってもよい。炎症性疾患としては、脳卒中、リウマチ性関節炎、紅斑性狼瘡、潰瘍性大腸炎、及び外傷性脳損傷が挙げられるが(レオーニ(Leoni)ら、PNAS、99(5):2995−3000(2002年)、スローネン(Suuronen)ら、ジャーナル・オブ・ニューロケミストリー(J.Neurochem.)、87:407−416(2003年)、及びドラッグ・ディスカバリー・トゥデイ(Drug Discovery Today)、10:197−204(2005年)参照)、これらに限定されない。
【0119】
従って、本発明は、炎症性疾患の治療又は予防に有用な薬剤の製造に使用するための式Iの化合物を提供する。
【0120】
また、本発明は、処置が必要な患者に、有効量の式Iの化合物又はそれを含む組成物を投与することを特徴とする、炎症性疾患を治療又は予防する方法も提供する。
【0121】
本発明の化合物は、平滑筋細胞の増殖及び/又は移動の阻害にも有用であり、従って、例えば血管形成及び/又はステント移植の後の、再狭窄の予防及び/又は治療に有用である。
【0122】
従って、本発明は、再狭窄の治療又は予防に有用な薬剤の製造に使用するための式Iの化合物を提供する。
【0123】
また、本発明は、処置が必要な患者に、有効量の式Iの化合物又はそれを含む組成物を投与することを特徴とする、再狭窄を治療又は予防する方法も提供する。
【0124】
一実施態様においては、ステント機器の内部又は上部に1種以上の本発明の化合物を用いたステント装置を提供することによって(例えばステント装置上に本発明の化合物を塗布することによって)、平滑筋細胞の増殖及び/又は移動を阻害し、再狭窄を予防及び/又は治療する。ステント装置は、本発明の化合物の放出を制御し、それにより平滑筋細胞の増殖及び/又は移動を阻害し、再狭窄を予防及び/又は治療できるよう設計されている。
【0125】
狭窄及び再狭窄は血管の狭小化に関する症状である。通常、血管の狭窄は時間と共に徐々に進行する。一方、再狭窄は血管内治療(バルーン血管形成及び/又はステント移植等)や血管損傷の後の血管狭小化に関連して起こる。
【0126】
通常、バルーン血管形成は狭窄血管を開くために行われ、ステント移植は、バルーン血管形成の後、又はそれと一緒に、血管の開通性を維持するために行われる。バルーン血管形成では、先端にバルーンを有するカテーテルを狭窄部位に導入し、先端のバルーンを膨張させることで閉塞した血管を拡張する。拡張した血管の開通性を維持するために、血管にステントを導入してもよく、それにより血管の開口部位に血管内支持材を供給し、バルーンカテーテルを除去した後、血管が閉塞状態に戻るのを制限する。通常、血管形成中に生じた外傷によって、例えば動脈のバルーン拡張、アテローム切除、又はレーザー切断処置による影響の結果、再狭窄が起こる。このような処置の間、血管の位置、損傷の長さ、その他多数の可変要素に応じて、再狭窄が約30%〜約60%の割合で起こる。これにより、非侵襲性バルーン血管形成及びステント移植治療の全体的な成功度合が低下する。
【0127】
再狭窄は、平滑筋細胞(SMC)増殖等の多様な要因によって生じる。バルーン血管形成及びステント移植の間に支持された内膜に対する機械的損傷がSMC増殖を引き起こす。このプロセスは、初期に血小板活性化及び血栓形成、それに続くSMCの動員及び移動、最後の細胞増殖及び細胞外基質蓄積、によって特徴付けられる。損傷を受けた内皮細胞、SMC、血小板、及びマクロファージは、再狭窄を促進するサイトカイン及び成長因子を分泌する。SMCの増殖は、新生内膜過形成につながる最終共通パスウェイを意味する。従って、細胞周期中の特定の制御事象を阻害する抗増殖治療は、最も理にかなった血管形成後の再狭窄に対するアプローチを構成するかもしれない。
【0128】
本発明の化合物は、免疫抑制剤又は免疫賦活剤としても使用でき、従って、免疫反応又は免疫媒介反応、及び疾患(例えば、器官、組織、又は細胞の被移植者における全身性紅斑性狼瘡(SLE)や急性又は慢性移植拒絶反応)の治療又は予防に利用できる(WOO5/013958参照)。
【0129】
本発明の化合物を使用してもよい自己免疫疾患の例としては、自己免疫血液疾患(溶血性貧血、再生不良性貧血、赤芽球貧血、特発性血小板減少症等)、全身性紅斑性狼瘡、甲状腺炎、橋本甲状腺炎、多発性軟骨炎、スクレロドーマ(sclerodoma)、ウェゲナー肉芽腫症、皮膚筋炎、活動性慢性肝炎、重症筋無力症、乾癬、アトピー性皮膚炎、血管炎、スティーブンス・ジョンソン症候群、特発性スプルー(idiopathic sprue)、炎症性自己免疫腸疾患(潰瘍性大腸炎、クローン病等)、内分泌系眼疾患、グレーブス病、サルコイドーシス、多発性硬化症、原発性胆汁性肝硬変、若年性糖尿病(I型糖尿病)、II型糖尿病及びその関連障害、(前部及び後部)ブドウ膜炎、乾性角結膜炎及び春季角結膜炎、間質性肺線維症、乾癬性関節炎、糸球体腎炎(特発性ネフローゼ症候群や最小変化ネフロパシー等のネフローゼ症候群を伴う場合、伴わない場合)、若年性皮膚筋炎、自己抗体媒介疾患、再生不良性貧血、エバンス症候群、自己免疫性溶血性貧血、異常免疫反応及び/又は異常活性化(外傷性又は病原性の免疫調節異常等)を伴う感染症(B型及びC型肝炎感染症、黄色ブドウ球菌感染症、ウイルス性脳炎、敗血症、寄生虫性疾患等、炎症反応(例えばハンセン病)によって疾患が生じる感染症)、並びに循環器疾患(動脈硬化、アテローム性動脈硬化、結節性多発動脈炎、心筋炎等)が挙げられる。
【0130】
従って、本発明は、免疫不全の治療又は予防に有用な薬剤の製造に使用するための式Iの化合物を提供する。
【0131】
また、本発明は、処置が必要な患者に、有効量の式Iの化合物又はそれを含む組成物を投与することを特徴とする、免疫不全を治療又は予防する方法も提供する。
【0132】
本発明の化合物は、糖尿病、心血管疾患、喘息等、その他の疾患の治療又は予防にも有用であってもよい。
【0133】
本発明の化合物は、セル(Cell)、110:479−488(2002年)に記載されているように、心肥大及び心不全の治療又は予防にも有用であってもよい。
【0134】
標準的薬学プラクティスに従い、本発明の化合物を、医薬組成物中、単独で、或いは薬学的に許容される担体、賦形剤、又は希釈剤と一緒に、哺乳動物、好ましくは人間に投与してもよい。一実施態様においては、本発明の化合物を動物に投与してもよい。該化合物は、経口投与又は非経口投与(静脈内投与、筋肉投与、腹腔内投与、皮下投与、直腸投与、局所性投与等)することが可能である。
【0135】
本発明は、1種以上の本発明の化合物と薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物も提供する。その有効成分を含む医薬組成物は、経口使用に適した形態、例えば錠剤、トローチ、ロゼンジ、水性又は油性の懸濁液、分散性の粉末又は顆粒、乳剤、ハード又はソフトカプセル、シロップ、エリキシル剤等であってよい。経口用医薬組成物は当該技術分野で公知の医薬組成物の製造のための方法によって調製してよく、かかる組成物は、薬学的に洗練されており口当たりが良い製剤を得るために、甘味剤、香味剤、着色剤、及び防腐剤からなる群から選択される1種以上の物質を組成物を含んでもよい。錠剤はその有効成分を、錠剤の製造に適している、非毒性の薬学的に許容される賦形剤と一緒に含む。かかる賦形剤としては、不活性希釈剤(例えば、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、ラクトース、リン酸カルシウム、リン酸ナトリウム等);造粒剤及び崩壊剤(例えば、微結晶セルロース、クロスカルメロースナトリウム、コーンスターチ、アルギン酸等);結合剤(デンプン、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、アカシア等);平滑剤(ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、タルク等)が挙げられる。錠剤は被覆されていなくてもよいが、薬物の嫌な味を隠すため、又は消化管での分解や吸収を遅らせ長時間に渡って薬効を持続させるために、公知の方法で錠剤を被覆してもよい。例えば、水溶性味マスキング剤(ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等)や時間遅延剤(エチルセルロース、セルロースアセテートブチレート等)を使用してもよい。
【0136】
経口用製剤はハードゼラチンカプセルの形態であってもよく(この場合、その有効成分を不活性固体希釈剤(炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、カオリン等)と混合する)、又は、ソフトゼラチンカプセルの形態であってもよい(この場合は、その有効成分を水溶性担体(ポリエチレングリコール等)又は油性媒体(ピーナッツ油、流動パラフィン、オリーブ油等)と混合する)。
【0137】
水性懸濁液は、水性懸濁液の製造に適した賦形剤と一緒に活性物質を含む。このような賦形剤は懸濁化剤、分散剤、湿潤剤等であってよく、懸濁化剤の例としてはカルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、トラガカントゴム、アカシアゴム等が挙げられ、分散剤及び湿潤剤の例としては天然リン脂質(レシチン等)、アルキレンオキシドと脂肪酸の縮合生成物(ポリオキシエチレンステアレート等)、エチレンオキシドと長鎖脂肪族アルコールの縮合生成物(ヘプタデカエチレンオキシセタノール等)、脂肪酸及びヘキシトールから得られる部分エステルとエチレンオキシドとの縮合生成物(ポリオキシエチレンソルビトールモノオレエート等)、脂肪酸及び無水ヘキシトールから得られる部分エステルとエチレンオキシドとの縮合生成物(ポリエチレンソルビタンモノオレエート等)等が挙げられる。水性懸濁液は、1種以上の防腐剤(p−ヒドロキシ安息香酸のエチルエステル又はn−プロピルエステル等)、1種以上の着色剤、1種以上の香味剤、及び1種以上の甘味剤(スクロース、サッカリン、アスパルテーム等)を含んでいてもよい。
【0138】
油性懸濁液は、その有効成分を植物油(ラッカセイ油、オリーブ油、ゴマ油、ヤシ油等)中に又は鉱油(流動パラフィン等)中に懸濁させて調製してもよい。油性懸濁液は増粘剤(蜜ろう、固形パラフィン、セチルアルコール等)を含んでもよい。口当たりの良い経口製剤を得るために、上述したような甘味剤及び香味剤を加えてもよい。酸化防止剤(ブチル化ヒドロキシアニソール、α−トコフェロール等)を加えてこれらの組成物を保存してもよい。
【0139】
水を加えて水性懸濁液を調製する場合に適した分散性粉末及び顆粒は、分散又は湿潤剤、懸濁化剤、及び1種以上の防腐剤と一緒に、その有効成分を提供する。適当な分散又は湿潤剤及び懸濁化剤の例は、上述のとおりである。甘味剤、香味剤、着色剤等の追加の賦形剤が加わってもよい。酸化防止剤(アスコルビン酸等)を加えてこれら組成物を保存してもよい。
【0140】
本発明の医薬組成物は、水中油型乳剤の形態であってもよい。その油相は、植物油(オリーブ油、ラッカセイ油等)、鉱油(流動パラフィン等)、又はその混合物であってよい。適当な乳化剤としては、天然リン脂質(大豆レシチン等)、脂肪酸と無水ヘキシトール由来のエステル又は部分エステル(ソルビタンモノオレエート等)、及び該部分エステルとエチレンオキシドの縮合生成物(ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート等)が挙げられる。乳剤は甘味剤、香味剤、防腐剤、及び酸化防止剤を含んでいてもよい。
【0141】
シロップ及びエリキシル剤は、グリセロール、プロピレングリコール、ソルビトール、スクロース等の甘味剤で処方されてもよい。これら製剤は、また、緩和剤、防腐剤、香味剤、着色剤、及び酸化防止剤を含んでもよい。
【0142】
該医薬組成物は、無菌注射可能な水溶液の形態であってもよい。用いることができ、許容される、賦形剤や溶媒として、水、リンガー溶液、及び塩化ナトリウム溶液等張剤がある。
【0143】
この無菌注射用製剤は、無菌注射可能な水中油型マイクロエマルジョンであってもよい(ここで、その有効成分を油相に溶解する)。例えば、まずその有効成分を大豆油とレシチンの混合物に溶解してもよい。その油性溶液を水とグリセロールの混合物中に入れ、マイクロエマルジョンを調製する。
【0144】
局所ボーラス注射によって、このような注射可能な溶液又はマイクロエマルジョンを患者の血流中に導入してもよい。或いは、その溶液又はマイクロエマルジョンを、本発明の化合物の血中濃度を一定に保つように投与するのが有利かもしれない。濃度を一定に保つために、連続的静脈内送達装置を使用してもよい。このような装置の例としては、デルテックCADD−PLUS(商標)5400型静脈ポンプが挙げられる。
【0145】
医薬組成物は、筋肉投与又は皮下投与用の、無菌注射可能な水性又は油性の懸濁液の形態であってもよい。この懸濁液は、分散又は湿潤剤、及び上記の適当な懸濁化剤を用いた公知技術に従って調製してよい。このような無菌注射製剤は、非毒性の非経口投与用の希釈剤又は溶媒(1,3−ブタンジオール等)中の溶液又は懸濁液であってよい。更に、溶媒又は懸濁媒として無菌性固定油が従来から使用されている。本目的では、合成モノグリセリド又はジグリセリド等の低刺激の固定油を使用してもよい。加えて、オレイン酸等の脂肪酸を注射製剤の調製に用いてもよい。
【0146】
式Iの化合物を薬剤の直腸投与用の坐薬の形態で投与してもよい。このような組成物は、薬物を適当な無刺激性賦形剤と混合することで得られ、かかる賦形剤は、常温で固体であり、直腸温度で液体であり、そのため直腸内で融解して薬物を放出する。このような物質としては、ココアバター、グリセリンゼラチン、水素化植物油、様々な分子量のポリエチレングリコールとポリエチレングリコール脂肪酸エステルとの混合物等が挙げられる。
【0147】
局所投与する場合は、式Iの化合物を含むクリーム、軟膏、ゼリー、溶液、懸濁液等を用いる。この場合、局所投与は洗口液やうがい薬を含む。
【0148】
本発明の化合物を、適当な鼻腔賦形剤及び送達装置を用いて局所的に経鼻投与してもよく、或いは当業者によく知られる皮膚用パッチ剤の形態で経皮投与してもよい。経皮送達システムの形態で投与する場合、当然ながら、薬剤投与は投与期間に渡って間欠的ではなく連続的に行われるであろう。本発明の化合物は、例えばココアバター、グリセリンゼラチン、水素化植物油、様々な分子量のポリエチレングリコールとポリエチレングリコール脂肪酸エステルとの混合物等の坐剤用基剤として送達してもよい。
【0149】
本発明の化合物を人間に投与する場合、通常はそれを処方する医師が一日用量を決定する。通常、患者の年齢、体重、性別、及び応答性、更には重症度に応じて、用量を決定する。
【0150】
ある一実施態様では、癌治療中の哺乳動物に、適当な量の化合物を投与する。投与は、通常、体重1kg当たり約0.1〜約60mg/日であり、好ましくは体重1kgあたり0.5〜約40mg/日である。
【0151】
本発明の化合物は、また、公知の治療薬や抗癌剤と組み合わせにおいて有用である。従って、本発明は、同時投与、個別投与、又は連続投与のための、式(I)の化合物と公知の治療薬及び/又は抗癌剤との組み合わせを提供する。例えば、本発明の化合物は公知の抗癌剤と組み合わせにおいて有用である。本発明の化合物と他の抗癌剤又は化学療法剤との組み合わせは、本発明の範囲に含まれる。かかる薬剤の例は、デヴィータ(V.T.Devita)及びヘルマン(S.Hellman)編、「Cancer Principles and Practice of Oncology」、第6版、(2001年2月15日)、リッピンコット・ウィリアムス・アンド・ウィルキンス社(Lippincott Williams & Wilkins Publishers)に記載されている。薬剤及び関与する癌の特性に基づき、当業者はどのような組み合わせが有用であるか判断できるであろう。かかる抗癌剤の例としては、他のHDAC阻害剤、エストロゲン受容体調節剤、アンドロゲン受容体調節剤、レチノイド受容体調節剤、細胞傷害剤/細胞増殖抑制剤、抗増殖剤、プレニル−タンパク質トランスフェラーゼ阻害剤、HMG−CoAレダクターゼ阻害剤、他の血管形成阻害剤、細胞増殖及び生存シグナル伝達の阻害剤、アポトーシス誘発剤、及び細胞周期チェックポイント干渉剤が挙げられるが、これらに限定されない。特に、本発明の化合物は放射線治療と併用するとき、特に有用である。
【0152】
一実施態様においては、本発明の化合物は、他のHDAC阻害剤、エストロゲン受容体調節剤、アンドロゲン受容体調節剤、レチノイド受容体調節剤、細胞傷害剤、抗増殖剤、プレニル−タンパク質トランスフェラーゼ阻害剤、HMG−CoAレダクターゼ阻害剤、HIVプロテアーゼ阻害剤、逆転写酵素阻害剤、その他の血管形成阻害剤等の公知の抗癌剤と組み合わせにおいて有用である。
【0153】
他のHDAC阻害剤の例としては、スベロイルアニリドヒドロキサム酸(SAHA)、LAQ824、LBH589、PXD101、MS275、FK228、バルプロ酸、酪酸、及びCI−994が挙げられる。
【0154】
「エストロゲン受容体調節剤」は、そのメカニズムに関わらず、エストロゲンの受容体への結合を干渉又は阻害する化合物に関する。エストロゲン受容体調節剤の例としては、タモキシフェン、ラロキシフェン、イドキシフェン、LY353381、LY117081、トレミフェン、フルベストラント、4−[7−(2,2−ジメチル−1−オキソプロポキシ−4−メチル−2−[4−[2−(1−ピペリジニル)エトキシ]フェニル]−2H−1−ベンゾピラン−3−イル]−フェニル−2,2−ジメチルプロパノアート、4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン−2,4−ジニトロフェニル−ヒドラゾン、及びSH646が挙げられ、これらに限定されない。
【0155】
「アンドロゲン受容体調節剤」は、そのメカニズムに関わらず、アンドロゲンの受容体への結合を干渉又は阻害する化合物に関する。アンドロゲン受容体調節剤の例としては、フィナステライド及びその他の5α−レダクターゼ阻害剤、ニルタミド、フルタミド、ビカルタミド、リアロゾール、及びアビラテロンアセテートが挙げられる。
【0156】
「レチノイド受容体調節剤」は、そのメカニズムに関わらず、レチノイドの受容体への結合を干渉又は阻害する化合物に関する。レチノイド受容体調節剤の例としては、ベキサロテン、トレチノイン、13−cis−レチノイン酸、9−cis−レチノイン酸、α−ジフルオロメチルオルニチン、ILX23−7553、trans−N−(4’−ヒドロキシフェニル)レチナミド、及びN−4−カルボキシフェニルレチナミドが挙げられる。
【0157】
「細胞傷害剤/細胞増殖抑制剤」は、主に細胞の機能に直接干渉することによって細胞死を引き起こすか又は細胞増殖を阻害する化合物、或いは細胞有糸分裂を阻害又は干渉する化合物を表し、アルキル化剤、腫瘍壊死因子、インターカレーター、低酸素症活性化化合物、微小管阻害剤/微小管安定化剤、有糸分裂キナーゼ阻害剤、細胞分裂進行に関与するキナーゼ阻害剤、代謝拮抗物質、生物反応修飾物質、ホルモン/抗ホルモン治療薬、造血成長因子、モノクローナル抗体標的治療剤、トポイソメラーゼ阻害剤、プロテアソーム阻害剤、及びユビキチンリガーゼ阻害剤が含まれる。
【0158】
細胞傷害剤の例としては、セルテネフ、カケクチン、イフォスファミド、タソネルミン、ロニダミン、カルボプラチン、アルトレタミン、プレドニムスチン、ジブロモズルシトール、ラニムスチン、フォテムスチン、ネダプラチン、オキサリプラチン、テモゾロマイド、ヘプタプラチン、エストラムスチン、トシル酸インプロスルファン、トロホスファミド、ニムスチン、塩化ジブロスピジウム、プミテパ、ロバプラチン、サトラプラチン、プロフィロマイシン、シスプラチン、イロフルベン、デキシフォスファミド、cis−アミンジクロロ(2−メチル−ピリジン)白金、ベンジルグアニン、グルフォスファミド、GPX100、(trans,trans,trans)−ビス−μ−(ヘキサン−1,6−ジアミン)−μ−[ジアミン−白金(II)]ビス[ジアミン(クロロ)白金(II)]四塩化物、ジアジリジニルスペルミン、亜ヒ酸、1−(11−ドデシルアミノ−10−ヒドロキシウンデシル)−3,7−ジメチルキサンチン、ゾルビシン、イダルビシン、ダウノルビシン、ビサントレン、ミトキサントロン、ピラルビシン、ピナフィド、バルルビシン、アムルビシン、抗新生物薬、3’−デアミノ−3’−モルホリノ−13−デオキソ−10−ヒドロキシカルミノマイシン、アンナマイシン、ガラルビシン、エリナフィド、MEN10755、及び4−デメトキシ−3−デアミノ−3−アジリジニル−4−メチルスルホニル−ダウノルビシンが挙げられ(WO00/50032参照)、これらに限定されない。
【0159】
低酸素症活性化化合物の一例として、チラパザミンが挙げられる。
【0160】
プロテアソーム阻害剤の例として、ラクタシスチン、ボルテゾミブ、エポキソマイシン、及びペプチドアルデヒド(MG132、MG115、PSI等)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0161】
一実施態様においては、本発明の化合物は、他のHDAC阻害剤(SAHA等)及びプロテアソーム阻害剤と組み合わせにおいて使用されるかもしれない。
【0162】
微小管阻害剤/微小管安定化剤の例としては、パクリタキセル、硫酸ビンデシン、3’,4’−ジデヒドロ−4’−デオキシ−8’−ノルビンカロイコブラスチン、ドセタキソール、リゾキシン、ドラスタチン、ミボブリンイセチオネート、アウリスタチン、セマドチン、RPR109881、BMS184476、ビンフルニン、クリプトフィシン、2,3,4,5,6−ペンタフルオロ−N−(3−フルオロ−4−メトキシフェニル)ベンゼンスルホンアミド、アンヒドロビンブラスチン、N,N−ジメチル−L−バリル−L−バリル−N−メチル−L−バリル−L−プロリル−L−プロリン−t−ブチルアミド、TDX258、エポチロン(例えば米国特許第6,284,781号及び同6,288,237号参照)、及びBMS188797が挙げられる
【0163】
トポイソメラーゼ阻害剤の例としては、トポテカン、ハイカプタミン、イリノテカン、ルビテカン、6−エトキシプロピオニル−3’,4’−O−exo−ベンジリデン−チャルトロイシン、9−メトキシ−N,N−ジメチル−5−ニトロピラゾロ[3,4,5−kl]アクリジン−2−(6H)プロパンアミン、1−アミノ−9−エチル−5−フルオロ−2,3−ジヒドロ−9−ヒドロキシ−4−メチル−1H,12H−ベンゾ[de]ピラノ[3’,4’:b,7]インドリジノ[1,2b]キノリン−10,13(9H,15H)ジオン、ルルトテカン、7−[2−(N−イソプロピルアミノ)エチル]−(20S)カンプトテシン、BNP1350、BNPI1100、BN80915、BN80942、リン酸エトポシド、テニポシド、ソブゾキサン、2’−ジメチルアミノ−2’−デオキシ−エトポシド、GL331、N−[2−(ジメチルアミノ)エチル]−9−ヒドロキシ−5,6−ジメチル−6H−ピリド[4,3−b]カルバゾール−1−カルボキサミド、アスラクリン、(5a,5aB,8aa,9b)−9−[2−[N−[2−(ジメチルアミノ)エチル]−N−メチルアミノ]エチル]−5−[4−ヒドロキシ−3,5−ジメトキシフェニル]−5,5a,6,8,8a,9−へキソヒドロフロ(3’,4’:6,7)ナフト(2,3−d)−1,3−ジオキソール−6−オン、2,3−(メチレンジオキシ)−5−メチル−7−ヒドロキシ−8−メトキシベンゾ[c]−フェナントリジニウム、6,9−ビス[(2−アミノエチル)アミノ]ベンゾ[g]イソギノリン−5,10−ジオン、5−(3−アミノプロピルアミノ)−7,10−ジヒドロキシ−2−(2−ヒドロキシエチルアミノメチル)−6H−ピラゾロ[4,5,1−de]アクリジン−6−オン、N−[1−[2(ジエチルアミノ)エチルアミノ]−7−メトキシ−9−オキソ−9H−チオキサンテン−4−イルメチル]ホルムアミド、N−(2−(ジメチルアミノ)エチル)アクリジン−4−カルボキサミド、6−[[2−(ジメチルアミノ)エチル]アミノ]−3−ヒドロキシ−7H−インデノ[2,1−c]キノリン−7−オン、及びジメスナが挙げられる。
【0164】
有糸分裂キネシン、特にヒト有糸分裂キネシンKSPの阻害剤の例は、PCT公開WO01/30768、WO01/98278、WO02/056880、WO03/050,064、WO03/050,122、WO03/049,527、WO03/049,679、WO03/049,678、WO03/039460、WO03/079973、WO03/099211、WO2004/039774、WO03/105855、WO03/106417、WO2004/087050、WO2004/058700、WO2004/058148、及びWO2004/037171、並びに米国特許出願第2004/132830号及び第2004/132719号に記載されている。一実施態様においては、有糸分裂キネシン阻害剤の例として、KSP阻害剤、MKLP1阻害剤、CENP−E阻害剤、MCAK阻害剤、Kif14阻害剤、Mphosph1阻害剤、及びRab6−KIFL阻害剤が挙げられるが、これらに限定されない。
【0165】
「細胞分裂進行におけるキナーゼの阻害剤」としては、オーロラキナーゼ阻害剤、ポロ様キナーゼ(PLK)阻害剤(特にPLK−1阻害剤)、bub−1阻害剤、及びbub−R1阻害剤が挙げられ、これらに限定されない。
【0166】
「抗増殖剤」としては、アンチセンスRNA及びDNAオリゴヌクレオチド(G3139、ODN698、RVASKRAS、GEM231、INX3001等)、及び代謝拮抗物質(エノシタビン、カルモフール、テガフール、ペントスタチン、ドキシフルリジン、トリメトレキサート、フルダラビン、カペシタビン、ガラシタビン、シタラビンオクホスフェート、フォステアビンナトリウム水和物、ラルチトレキセド、パルチトレキシド、エミテフール、チアゾフリン、デシタビン、ノラトレキセド、ペメトレキセド、ネルザラビン、2’−デオキシ−2’−メチリデンシチジン、2’−フルオロメチレン−2’−デオキシシチジン、N−[5−(2,3−ジヒドロ−ベンゾフリル)スルホニル]−N’−(3,4−ジクロロフェニル)尿素、N6−[4−デオキシ−4−[N2−[2(E),4(E)−テトラデカジエノイル]グリシルアミノ]−L−グリセロ−B−L−マンノ−ヘプトピラノシル]アデニン、アプリジン、エクテイナシジン、トロキサシタビン、4−[2−アミノ−4−オキソ−4,6,7,8−テトラヒドロ−3H−ピリミジノ[5,4−b][1,4]チアジン−6−イル−(S)−エチル]−2,5−チエノイル−L−グルタミン酸、アミノプテリン、5−フルオロウラシル、アラノシン、11−アセチル−8−(カルバモイルオキシメチル)−4−ホルミル−6−メトキシ−14−オキサ−1,11−ジアザテトラシクロ(7.4.1.0.0)−テトラデカ−2,4,6−トリエン−9−イル酢酸エステル、スワインソニン、ロメトレキソール、デクスラゾキサン、メチオニナーゼ、2’−シアノ−2’−デオキシ−N4−パルミトイル−1−B−D−アラビノフラノシルシトシン、3−アミノピリジン−2−カルボキシアルデヒド チオセミカルバゾン等)が挙げられる。
【0167】
モノクローナル抗体標的治療剤は、癌細胞特異的又は標的細胞特異的なモノクローナル抗体に結合した細胞傷害剤又は放射性同位体を含む治療剤を含む。その例としてはベクザーが挙げられる。
【0168】
「HMG−CoAレダクターゼ阻害剤」は、3−ヒドロキシ−3−メチルグルタリル−CoAレダクターゼの阻害剤である。HMG−CoAレダクターゼ阻害剤の例としては、ロバスタチン(MEVACOR(登録商標)、米国特許第4,231,938号、第4,294,926号、及び第4,319,039号参照)、シンバスタチン(ZOCOR(登録商標)、米国特許第4,444,784号、第4,820,850号、及び第4,916,239号参照)、プラバスタチン(PRAVACHOL(登録商標)、米国特許第4,346,227号、第4,537,859号、第4,410,629号、第5,030,447号、及び第5,180,589号参照)、フルバスタチン(LESCOL(登録商標)、米国特許第5,354,772号、第4,911,165号、第4,929,437号、第5,189,164号、第5,118,853号、第5,290,946号、及び第5,356,896号参照)、及びアトルバスタチン(LIPITOR(登録商標)、米国特許第5,273,995号、第4,681,893号、第5,489,691号、及び第5,342,952号参照)が挙げられ、これらに限定されない。本発明の方法で使用してもよい上記及びその他のHMG−CoAレダクターゼ阻害剤の構造式は、ヤルパニ(M.Yalpani)、「Cholesterol Lowering Drugs」、ケミストリー・アンド・インダストリー(Chemistry & Industry)、85〜89頁(1996年2月5日)の87頁、並びに米国特許第4,782,084号及び第4,885,314号に記載されている。本明細書で用いる場合、用語「HMG−CoAレダクターゼ阻害剤」は、HMG−CoAレダクターゼ阻害活性を有する化合物の、薬学的に許容される全てのラクトン体及び開環酸体(即ち、ラクトン環が開き遊離酸を形成している状態)、並びに、その塩及びエステルを包含し、そのために、そのような塩、エステル、開環酸、及びラクトンの使用は本発明の範囲に含まれる。
【0169】
「プレニル−タンパク質トランスフェラーゼ阻害剤」は、プレニル−タンパク質トランスフェラーゼ酵素(ファルネシル−タンパク質トランスフェラーゼ(FPTase)、ゲラニルゲラニル−タンパク質トランスフェラーゼ・タイプI(GGPTase−I)、及びゲラニルゲラニル−タンパク質トランスフェラーゼ・タイプII(GGPTase−II、Rab・GGPTaseとも称される)を含む)のいずれか1種又はその組み合わせを阻害する化合物である。
【0170】
プレニル−タンパク質トランスフェラーゼ阻害剤の例は、以下の出版物及び特許:WO96/30343、WO97/18813、WO97/21701、WO97/23478、WO97/38665、WO98/28980、WO98/29119、WO95/32987、米国特許第5,420,245号、米国特許第5,523,430号、米国特許第5,532,359号、米国特許第5,510,510号、米国特許第5,589,485号、米国特許第5,602,098号、欧州特許公開第0618221号、欧州特許公開第0675112号、欧州特許公開第0604181号、欧州特許公開第0696593号、WO94/19357、WO95/08542、WO95/11917、WO95/12612、WO95/12572、WO95/10514、米国特許第5,661,152号、WO95/10515、WO95/10516、WO95/24612、WO95/34535、WO95/25086、WO96/05529、WO96/06138、WO96/06193、WO96/16443、WO96/21701、WO96/21456、WO96/22278、WO96/24611、WO96/24612、WO96/05168、WO96/05169、WO96/00736、米国特許第5,571,792号、WO96/17861、WO96/33159、WO96/34850、WO96/34851、WO96/30017、WO96/30018、WO96/30362、WO96/30363、WO96/31111、WO96/31477、WO96/31478、WO96/31501、WO97/00252、WO97/03047、WO97/03050、WO97/04785、WO97/02920、WO97/17070、WO97/23478、WO97/26246、WO97/30053、WO97/44350、WO98/02436、及び米国特許第5,532,359号に記載されている。血管形成におけるプレニル−タンパク質トランスフェラーゼ阻害剤の役割の一例が、ヨーロピアン・ジャーナル・オブ・キャンサー(European J.of Cancer)、第35巻、第9号、1394〜1401頁(1999年)に記載されている。
【0171】
「血管形成阻害剤」は、そのメカニズムに関わらず、新たな血管の形成を阻害する化合物を表す。血管形成阻害剤の例としては、チロシンキナーゼ阻害剤(チロシンキナーゼ受容体Flt−1(VEGFR1)及びFlk−1/KDR(VEGFR2)の阻害剤等)、表皮由来、線維芽細胞由来、又は血小板由来成長因子の阻害剤、MMP(マトリクスメタロプロテアーゼ)阻害剤、インテグリン遮断薬、インターフェロン−α、インターロイキン−12、ペントサンポリ硫酸、シクロオキシゲナーゼ阻害剤(アスピリン、イブプロフェン等の非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)や、セレコキシブ、ロフェコキシブ等の選択的シクロオキシゲナーゼ−2阻害剤等、PNAS、第89巻、7384頁(1992年);JNCI、第69巻、475頁(1982年);アーカイブス・オブ・オプサルモロジー(Arch.Opthalmol.)、第108巻、573頁(1990年);アナトミカル・レコード(Anat.Rec.)、第238巻、68頁(1994年);FEBSレターズ(FEBS Letters)、第372巻、83頁(1995年);クリニカル・オルソピディックス(Clin,Orthop.)、第313巻、76頁(1995年);ジャーナル・オブ・モレキュラー・エンドクリノロジー(J.Mol.Endocrinol.)、第16巻、107頁(1996年);ジャパニーズ・ジャーナル・オブ・ファーマコロジー(Jpn.J.Pharmacol.)、第75巻、105頁(1997年);キャンサー・リサーチ(Cancer Res.)、第57巻、1625頁(1997年);セル(Cell)、第93巻、705頁(1998年);インターナショナル・ジャーナル・オブ・モレキュラー・メディシン(Intl.J.Mol.Med.)、第2巻、715頁(1998年);ジャーナル・オブ・バイオロジカル・ケミストリー(J.Biol.Chem.)、第274巻、9116頁(1999年)参照)、ステロイド系抗炎症薬(コルチコステロイド、ミネラルコルチコイド、デキサメタゾン、プレドニゾン、プレドニゾロン、メチルプレド、ベタメタゾン等)、カルボキシアミドトリアゾール、コンブレタスタチンA−4、スクアラミン、6−O−クロロアセチル−カルボニル)−フマギロール、サリドマイド、アンギオスタチン、トロポニン−1、アンギオテンシンII拮抗薬(フェルナンデス(Fernandez)ら、ジャーナル・オブ・ラボラトリー・アンド・クリニカル・メディシン(J.Lab.Clin.Med.)、105:141−145(1985年)参照)、及びVEGFに対する抗体(ネイチャー・バイオテクノロジー(Nature Biotechnology)、第17巻、963〜968頁(1999年10月);キム(Kim)ら、ネイチャー(Nature)、第362巻、841〜844頁(1993年);WO00/44777;及びWO00/61186参照)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0172】
本発明の化合物と組み合わせて使用してもよい、血管形成を調節又は阻害する他の治療薬の例としては、凝固系及び線維素溶解系を調節又は阻害する薬剤が挙げられる(クリニカル・ケミストリー・アンド・ラボラトリー・メディシン(Clin.Chem.La.Med.)、38:679−692(2000年)の総説参照)。凝固系及び線維素溶解系を調節又は阻害する薬剤の例としては、ヘパリン(スロンボシス・アンド・ヘマトシス(Thromb.Haemost.)、80:10−23(1998年)参照)、低分子量ヘパリン、及びカルボキシペプチダーゼU阻害剤(トロンビン活性化線維素溶解阻害剤(TAFIa)の阻害剤としても知られる、トロンボシス・リサーチ(Thrombosis Res.)、101:329−354 (2001)参照)が挙げられるが、これらに限定されない。TAFIa阻害剤は、PCT公開WO03/013,526及び米国特許出願第60/349,925号(2002年1月18日出願)に記載されている。
【0173】
「細胞周期チェックポイント干渉剤」は、細胞周期チェックポイント信号を変換してDNA損傷剤に対する癌細胞の感度を増加するタンパク質キナーゼを阻害する化合物を指す。このような薬剤としては、ATR、ATM、Chk1キナーゼ、Chk2キナーゼ、cdkキナーゼ、及びcdcキナーゼの阻害剤が挙げられ、その具体例としては7−ヒドロキシスタウロスポリン、フラボピリドール、CYC202(サイクラセル)、及びBMS−387032が挙げられる。
【0174】
「細胞増殖及び生存シグナル伝達経路の阻害剤」は、細胞表面受容体及びその表面受容体の下流側の情報伝達カスケードを阻害する薬剤を指す。かかる薬剤としては、EGFR阻害剤(ゲフィチニブ、エルロチニブ等)、ERB−2阻害剤(トラスツズマブ等)、IGFR阻害剤(WO03/059951に開示のもの等)、サイトカイン受容体阻害剤、MET阻害剤、PI3K阻害剤(LY294002等)、セリン/トレオニンキナーゼ(Akt阻害剤等が挙げられるがこれに限定されず、WO03/086404、WO03/086403、WO03/086394、WO03/086279、WO02/083675、WO02/083139、WO02/083140、WO02/083138等に記載されている)、Rafキナーゼ阻害剤(BAY−43−9006等)、MEK阻害剤(CI−1040、PD−098059等)、及びmTOR阻害剤(WyethCCI−779、AriadAP23573等)が挙げられる。このような薬剤は小分子阻害化合物や抗体拮抗薬であってもよい。
【0175】
「アポトーシス誘発剤」としては、TNF受容体ファミリーの活性化剤(TRAIL受容体等)が挙げられる。
【0176】
選択的COX−2阻害剤であるNSAIDとの組み合わせも本発明の範囲に含まれる。本発明の目的において、選択的COX−2阻害剤であるNSAIDは、細胞又はミクロソームアッセイでCOX−2に対するIC50がCOX−1に対するIC50の100倍以上である、COX−1に対してCOX−2阻害特異性を有する物質と定義される。このような物質としては、米国特許第5,474,995号、米国特許第5,861,419号、米国特許第6,001,843号、米国特許第6,020,343号、米国特許第5,409,944号、米国特許第5,436,265号、米国特許第5,536,752号、米国特許第5,550,142号、米国特許第5,604,260号、米国特許第5,698,584号、米国特許第5,710,140号、WO94/15932、米国特許第5,344,991号、米国特許第5,134,142号、米国特許第5,380,738号、米国特許第5,393,790号、米国特許第5,466,823号、米国特許第5,633,272号、及び米国特許第5,932,598号に記載のものが挙げられるが、これらに限定されない(これらの記載内容は、ここに援用される)。
【0177】
本発明の治療方法に特に有用なCOX−2阻害剤は、5−クロロ−3−(4−メチルスルホニル)フェニル−2−(2−メチル−5−ピリジニル)ピリジン、又はその薬学的に許容される塩である。
【0178】
本発明に有用な具体的なCOX−2阻害剤として記載される化合物として、パレコキシブ、CELEBREX(登録商標)、BEXTRA(登録商標)、及びこれらの薬学的に許容される塩が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0179】
血管形成阻害剤の他の例としては、エンドスタチン、ウクライン、ランピルナーゼ、IM862、5−メトキシ−4−[2−メチル−3−(3−メチル−2−ブテニル)オキシラニル]−1−オキサスピロ[2,5]オクタ−6−イル(クロロアセチル)カルバメート、アセチルジナリン、5−アミノ−1−[[3,5−ジクロロ−4−(4−クロロベンゾイル)フェニル]メチル]−1H−1,2,3−トリアゾール−4−カルボキサミド、CM101、スクアラミン、コンブレタスタチン、RPI4610、NX31838、硫酸化マンノペンタオースホスフェート、7,7−(カルボニル−ビス[イミノ−N−メチル−4,2−ピロロカルボニルイミノ[N−メチル−4,2−ピロール]−カルボニルイミノ]−ビス−(1,3−ナフタレンジスルホネート)、及び3−[(2,4−ジメチルピロール−5−イル)メチレン]−2−インドリノン(SU5416)が挙げられ、これらに限定されない。
【0180】
上記「インテグリン遮断薬」は、αβインテグリンへの生理学的リガンドの結合に対して選択的に拮抗、阻害、又は中和作用を示す化合物、αβインテグリンへの生理学的リガンドの結合に対して選択的に拮抗、阻害、又は中和作用を示す化合物、αβインテグリン及びαβインテグリンの両方への生理学的リガンドの結合に対して拮抗、阻害、又は中和作用を示す化合物、並びに毛細管内皮細胞で発現する特定のインテグリンの活性に対して拮抗、阻害、又は中和作用を示す化合物を指す。また、前記用語は、αβ、αβ、αβ、αβ、αβ、αβ、又はαβインテグリンの拮抗薬に関する。また、前記用語は、αβ、αβ、αβ、αβ、αβ、αβ、βα、αβ、又はαβインテグリンの任意の組み合わせの拮抗薬に関する。
【0181】
チロシンキナーゼ阻害剤の具体例としては、N−(トリフルオロメチルフェニル)−5−メチルイソオキサゾール−4−カルボキサミド、3−[(2,4−ジメチルピロール−5−イル)メチリデニル)インドリン−2−オン、17−(アリルアミノ)−17−デメトキシゲルダナマイシン、4−(3−クロロ−4−フルオロフェニルアミノ)−7−メトキシ−6−[3−(4−モルホリニル)プロポキシル]キナゾリン、N−(3−エチニルフェニル)−6,7−ビス(2−メトキシエトキシ)−4−キナゾリンアミン、BIBX1382、2,3,9,10,11,12−ヘキサヒドロ−10−(ヒドロキシメチル)−10−ヒドロキシ−9−メチル−9,12−エポキシ−1H−ジインドロ[1,2,3−fg:3’,2’,1’−kl]ピロロ[3,4−i][1,6]ベンゾジアゾシン−1−オン、SH268、ゲニステイン、STI571、CEP2563、4−(3−クロロフェニルアミノ)−5,6−ジメチル−7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジンメタンスルホネート、4−(3−ブロモ−4−ヒドロキシフェニル)アミノ−6,7−ジメトキシキナゾリン、4−(4’−ヒドロキシフェニル)アミノ−6,7−ジメトキシキナゾリン、SU6668、STI571A、N−4−クロロフェニル−4−(4−ピリジルメチル)−1−フタラジンアミン、及びEMD121974が挙げられる。
【0182】
抗癌化合物以外の化合物との組み合わせも本発明の方法の範囲に含まれる。例えば、本発明の化合物とPPAR−γ(PPAR−ガンマ)作働薬又はPPAR−δ(PPAR−デルタ)作働薬の組み合わせは、ある種の悪性腫瘍の治療に有用である。PPAR−γ及びPPAR−δは、核ペルオキシソーム増殖剤により活性化される受容体γ及びδである。内皮細胞でのPPAR−γの発現、及びその血管形成への影響については既に報告されている(ジャーナル・オブ・カーディオバスキュラー・ファーマコロジー(J.Cardiovasc.Pharmacol.)、1998年、31:909−913;ジャーナル・オブ・バイオロジカル・ケミストリー(J.Biol.Chem.)、1999年、274:9116−9121;インベスティゲイティブ・オプサルモロジー・アンド・ビジュアル・サイエンス(Invest.Ophthalmol Vis.Sci.)、2000年、41:2309−2317参照)。より最近には、PPAR−γ作働薬がインビトロでVEGFに対する血管形成反応を阻害し、トログリタゾンとマレイン酸ロシグリタゾンが共にマウス体内での網膜新生血管形成を阻害することが示された(アーカイブス・オブ・オプサルモロジー(Arch.Opthalmol.)、2001年、119:709−717参照)。PPAR−γ作働薬及びPPAR−γ/α作働薬の例としては、チアゾリジンジオン(DRF2725、CS−011、トログリタゾン、ロシグリタゾン、ピオグリタゾン等)、フェノフィブラート、ゲムフィブロジル、クロフィブレート、GW2570、SB219994、AR−H039242、JTT−501、MCC−555、GW2331、GW409544、NN2344、KRP297、NP0110、DRF4158、NN622、GI262570、PNU182716、DRF552926、2−[(5,7−ジプロピル−3−トリフルオロメチル−1,2−ベンズイソオキサゾール−6−イル)オキシ]−2−メチルプロピオン酸(USSN09/782,856に開示)、及び2(R)−7−(3−(2−クロロ−4−(4−フルオロフェノキシ)フェノキシ)プロポキシ)−2−エチルクロマン−2−カルボン酸(USSN60/235,708及び60/244,697に開示)が挙げられ、これらに限定されない。
【0183】
本発明の他の実施態様においては、本発明の化合物を抗ウイルス薬(癌治療用ガンシクロビルを含むヌクレオシド類似体等)と組み合わせて使用する方法を提供する(WO98/04290参照)。
【0184】
本発明の他の実施態様においては、本発明の化合物を癌治療のために遺伝子治療と組み合わせて使用する方法を提供する。癌治療のための遺伝子戦略の概説については、ホール(Hall)ら、アメリカン・ジャーナル・オブ・ヒューマン・ジェネティックス(Am J Hum Genet)、61:785−789、1997、及びクーフ(Kufe)ら、キャンサー・メディシン(Cancer Medicine)、第5版、876〜889頁、BCデッカー、ハミルトン、2000年に記載されている。遺伝子治療は、腫瘍抑制遺伝子を送達するために用いることができる。このような遺伝子の例としては、組み換えウイルス媒介遺伝子導入によって送達されるp53(米国特許第6,069,134号等参照)、uPA/uPAR拮抗薬(「Adenovirus−Mediated Delivery of a uPA/uPAR Antagonist Suppresses Angiogenesis−Dependent Tumor Growth and Dissemination in Mice」、ジーン・セラピー(Gene Therapy)、1998年8月、5(8)、1105−13)、及びインターフェロンガンマ(ジャーナル・オブ・イムノロジー(J Immunol)、2000年、164:217−222)が挙げられ、これらに限定されない。
【0185】
本発明の化合物を、固有の多剤耐性(MDR)、特に輸送タンパク質の高濃度発現に関連するMDRを有する阻害剤と組み合わせて投与してもよい。このようなMDR阻害剤の例としては、p−糖タンパク質(P−gp)の阻害剤(LY335979、XR9576、OC144−093、R101922、VX853、PSC833(バルスポダール)等)が挙げられる。
【0186】
本発明の化合物を、吐き気や嘔吐(本発明の化合物を単独又は放射線治療と組み合わせて使用した結果として起こる急性嘔吐、遅発性嘔吐、後期嘔吐、及び予期嘔吐が含まれる)を治療するための制吐剤と組み合わせて使用してもよい。嘔吐を予防又は治療するために、本発明の化合物を他の制吐剤(特にニューロキニン−1受容体拮抗薬、5HT3受容体拮抗薬(オンダンセトロン、グラニセトロン、トロピセトロン、ザチセトロン等)、GABAB受容体作働薬(バクロフェン等)、コルチコステロイド(デカドロン(デキサメタゾン)、ケナログ、アリストコート、ナサライド(Nasalide)、プレフェリド(Preferid)、ベネコルテン(Benecorten)、米国特許第2,789,118号、第2,990,401号、第3,048,581号、第3,126,375号、第3,929,768号、第3,996,359号、第3,928,326号、及び第3,749,712号に記載のもの)、抗ドーパミン薬(プロクロルペラジン、フルフェナジン、チオリダジン、メソリダジン等のフェノチアジン等)、メトクロプラミド、ドロナビノール等)と共に使用してもよい。一実施態様においては、ニューロキニン−1受容体拮抗薬、5HT3受容体拮抗薬、及びコルチコステロイドから選ばれる制吐剤を、本発明の化合物の投与によるかもしれない嘔吐感の治療又は予防の補助剤として投与する。
【0187】
本発明の化合物と共に使用するニューロキニン−1受容体拮抗薬については、例えば米国特許第5,162,339号、第5,232,929号、第5,242,930号、第5,373,003号、第5,387,595号、第5,459,270号、第5,494,926号、第5,496,833号、第5,637,699号、第5,719,147号;欧州特許公開EP第0360390号、第0394989号、第0428434号、第0429366号、第0430771号、第0436334号、第0443132号、第0482539号、第0498069号、第0499313号、第0512901号、第0512902号、第0514273号、第0514274号、第0514275号、第0514276号、第0515681号、第0517589号、第0520555号、第0522808号、第0528495号、第0532456号、第0533280号、第0536817号、第0545478号、第0558156号、第0577394号、第0585913号、第0590152号、第0599538号、第0610793号、第0634402号、第0686629号、第0693489号、第0694535号、第0699655号、第0699674号、第0707006号、第0708101号、第0709375号、第0709376号、第0714891号、第0723959号、第0733632号、及び第0776893号;PCT国際特許公開WO90/05525、90/05729、91/09844、91/18899、92/01688、92/06079、92/12151、92/15585、92/17449、92/20661、92/20676、92/21677、92/22569、93/00330、93/00331、93/01159、93/01165、93/01169、93/01170、93/06099、93/09116、93/10073、93/14084、93/14113、93/18023、93/19064、93/21155、93/21181、93/23380、93/24465、94/00440、94/01402、94/02461、94/02595、94/03429、94/03445、94/04494、94/04496、94/05625、94/07843、94/08997、94/10165、94/10167、94/10168、94/10170、94/11368、94/13639、94/13663、94/14767、94/15903、94/19320、94/19323、94/20500、94/26735、94/26740、94/29309、95/02595、95/04040、95/04042、95/06645、95/07886、95/07908、95/08549、95/11880、95/14017、95/15311、95/16679、95/17382、95/18124、95/18129、95/19344、95/20575、95/21819、95/22525、95/23798、95/26338、95/28418、95/30674、95/30687、95/33744、96/05181、96/05193、96/05203、96/06094、96/07649、96/10562、96/16939、96/18643、96/20197、96/21661、96/29304、96/29317、96/29326、96/29328、96/31214、96/32385、96/37489、97/01553、97/01554、97/03066、97/08144、97/14671、97/17362、97/18206、97/19084、97/19942、及び97/21702;並びに英国特許公開第2266529号、第2268931号、第2269170号、第2269590号、第2271774号、第2292144号、第2293168号、第2293169号、及び第2302689号に完全に記載されている。このような化合物の調製については、上記特許及び公報に完全に記載されており、それらの記載内容はここに援用される。
【0188】
一実施態様においては、本発明の化合物と組み合わせて使用するニューロキニン−1受容体拮抗薬は、米国特許第5,719,147号に記載の2−(R)−(1−(R)−(3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル)エトキシ)−3−(S)−(4−フルオロフェニル)−4−(3−(5−オキソ−1H,4H−1,2,4−トリアゾロ)メチル)モルホリン、及びその薬学的に許容される塩から選択される。
【0189】
本発明の化合物を、貧血治療に有用な薬剤と共に投与してもよい。このような貧血治療剤としては、例えば連続的赤血球生成受容体活性化剤(エポエチンアルファ等)が挙げられる。
【0190】
本発明の化合物を、好中球減少の治療に有用な薬剤と共に投与してもよい。このような好中球減少治療剤としては、例えば好中球の産生及び機能を調節する造血成長因子(ヒト顆粒球コロニー刺激因子G−CSF等)が挙げられる。G−CSFの例としてはフィルグラスチムが挙げられる。
【0191】
本発明の化合物は、免疫増強薬物(例えば、レバミゾール、イソプリノシン、ザダキシン)と共に投与してもよい。
【0192】
ビスホスホネート類(ビスホスホネート、ジホスホネート、ビスホスホン酸、ジホスホン酸等を含むと理解される)と組み合わせることで、本発明の化合物を骨癌を含む癌の治療又は予防に用いることもできる。ビスホスホネート類の例としては、エチドロネート(ダイドロネル)、パミドロネート(アレディア)、アレンドロネート(フォサマックス)、リセドロネート(アクトネル)、ゾレドロネート(ゾメタ)、イバンドロネート(ボニバ)、インカドロネート、シマドロネート、クロドロネート、EB−1053、ミノドロネート、ネリドロネート、ピリドロネート、チルドロネート、並びにこれらの薬学的に許容される塩、誘導体、水和物、及び混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0193】
即ち、本発明の範囲には次が含まれる。 本発明の請求項の化合物と次から選択される第2の化合物との組み合わせ: 他のHDAC阻害剤、エストロゲン受容体調節剤、アンドロゲン受容体調節剤、レチノイド受容体調節剤、細胞傷害剤/細胞増殖抑制剤、抗増殖剤、プレニル−タンパク質トランスフェラーゼ阻害剤、HMG−CoAレダクターゼ阻害剤、HIVプロテアーゼ阻害剤、逆転写酵素阻害剤、血管形成阻害剤、PPAR−γ作働薬、PPAR−δ作働薬、抗ウイルス薬、固有多剤耐性阻害剤、制吐剤、貧血治療に有用な薬剤、好中球減少治療に有用な薬剤、免疫増強薬物、細胞増殖及び生存シグナル伝達の阻害剤、細胞周期チェックポイント干渉剤、アポトーシス誘発剤、及びビスホスホネート類。
【0194】
本発明の化合物に関する用語「投与」や、その変形語(例えば化合物を「投与する」)は、該化合物又はそのプロドラッグを、治療を必要とする動物の系に導入することを意味する。本発明の化合物又はそのプロドラッグを1種以上の他の活性物質(細胞傷害剤等)との組み合わせて用いる場合、「投与」及びその変形語は、それぞれ該化合物又はプロドラッグ及び他の活性物質の同時又は逐次導入を包含すると理解される。
【0195】
本明細書で用いる場合、用語「組成物」は、上記のような特定の成分を特定の量含む物、及び、特定の量の成分の組み合わせから直接的又は間接的に得られる物を包含することが意図される。
【0196】
本明細書で用いる場合、用語「治療上有効量」は、組織、系、動物、又は人間において、研究者、獣医、医師、又は他の臨床医学者が求め、生物学的又は医学的応答を引き起こす、活性化合物又は薬剤の量を意味する。
【0197】
用語「癌を治療すること」及び「癌の治療」は、癌の状態にある哺乳動物に投与すること、癌性細胞を殺すことで癌の状態を和らげること、また癌の成長及び/又は転移を結果として阻害する効果を示す。
【0198】
一実施態様においては、上記第2の化合物として使用される血管形成阻害剤は、チロシンキナーゼ阻害剤、表皮由来成長因子阻害剤、線維芽細胞由来成長因子阻害剤、血小板由来成長因子阻害剤、MMP(マトリクスメタロプロテアーゼ)阻害剤、インテグリン遮断薬、インターフェロン−α、インターロイキン−12、ペントサン多硫酸、シクロオキシゲナーゼ阻害剤、カルボキシアミドトリアゾール、コンブレタスタチンA−4、スクアラミン、6−O−クロロアセチル−カルボニル)−フマギロール、サリドマイド、アンギオスタチン、トロポニン−1、及びVEGF抗体から選ばれる。ある実施態様においては、エストロゲン受容体調節剤はタモキシフェン又はラロキシフェンである。
【0199】
治療上有効量の式Iの化合物を放射線治療及び/又は次から選択される化合物の投与と組み合わせて使用する癌治療方法も、本発明の特許請求の範囲に含まれる: 他のHDAC阻害剤、エストロゲン受容体調節剤、アンドロゲン受容体調節剤、レチノイド受容体調節剤、細胞傷害剤/細胞増殖抑制剤、抗増殖剤、プレニル−タンパク質トランスフェラーゼ阻害剤、HMG−CoAレダクターゼ阻害剤、HIVプロテアーゼ阻害剤、逆転写酵素阻害剤、血管形成阻害剤、PPAR−γ作働薬、PPAR−δ作働薬、抗ウイルス薬、固有多剤耐性阻害剤、制吐剤、貧血治療に有用な薬剤、好中球減少治療に有用な薬剤、免疫増強薬物、細胞増殖及び生存シグナル伝達の阻害剤、細胞周期チェックポイント干渉剤、アポトーシス誘発剤、及びビスホスホネート類。
【0200】
本発明の更に他の実施態様においては、治療上有効量の式Iの化合物をパクリタキセル又はトラスツズマブと組み合わせて投与する癌治療方法を提供する。
【0201】
更に、本発明は、治療上有効量の式Iの化合物をCOX−2阻害剤と組み合わせて投与して、癌を治療又は予防する方法を含む。
【0202】
また、本発明は、治療上有効量の式Iの化合物及び次から選択される化合物を含有する、癌の治療又は予防に有用な医薬組成物も含む: 他のHDAC阻害剤、エストロゲン受容体調節剤、アンドロゲン受容体調節剤、レチノイド受容体調節剤、細胞傷害剤/細胞増殖抑制剤、抗増殖剤、プレニル−タンパク質トランスフェラーゼ阻害剤、HMG−CoAレダクターゼ阻害剤、HIVプロテアーゼ阻害剤、逆転写酵素阻害剤、血管形成阻害剤、PPAR−γ作働薬、PPAR−δ作働薬、抗ウイルス薬、細胞増殖及び生存シグナル伝達の阻害剤、細胞周期チェックポイント干渉剤、アポトーシス誘発剤、及びビスホスホネート類。
【0203】
以下、本発明の上記態様及びその他の態様を明確に説明する。
【0204】
上記特許、公報、及び係属中の特許出願は、全て参照により開示に含まれる。
【0205】
下記実施例及び試験において化学的記載に用いた略語は、以下の通り:
BSA(ウシ血清アルブミン);n−BuLi(n−ブチルリチウム);DCM(ジクロロメタン);DEA(ジエチルアミン);DMEM(ダルベッコ改変イーグル培地);DMF(ジメチルホルムアミド);DMSO(ジメチルスルホキシド);EDC.HCl(1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩);EDTA(エチレンジアミン四酢酸);em(エミッション);EtOAc(酢酸エチル);EtOH(エタノール);ex(励起(exitation));HOBt(1−ヒドロキシベンゾトリアゾール);HPLC(高速液体クロマトグラフィー);KCl(塩化カリウム);MeCN(アセトニトリル);MS(質量分析);NMR(核磁気共鳴);PBS(リン酸緩衝生理食塩水);RP(逆相);RT(室温);THF(テトラヒドロフラン);TFA(トリフルオロ酢酸);SEM−Cl([2−(クロロメトキシ)エチル](トリメチル)シラン);TBAF(テトラブチルアンモニウムフルオライド);TBTU(2−(1H−ベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルウロニウムテトラフルオロボレート);TFAA(無水トリフルオロ酢酸);Tris−HCl(トリスヒドロキシメチルアミノエタン);TSA(トリコスタチンA);TsCl(パラトルエンスルホン酸クロライド)。
【0206】
Hetがイミダゾールである場合、下記式IA:
【0207】
【化4】

【0208】
[式中、q、R、R、及びRは上記定義の通りであり、Rはtert−ブチル等のC1−6アルキル基である。]で表される化合物を、アンモニウムアセテート等の環化剤と反応させることで、式Iの化合物を調製することができる。通常、この反応はトルエン等の溶媒で還流下で行う。
【0209】
その後、通常の条件下、例えばTFA等の酸及びDCM等の溶媒を用いて、約0℃〜室温でジオキサン保護基を除去できる。
【0210】
式IAの化合物は、下記式IB及び式IC:
【0211】
【化5】

【0212】
[式中、q、R、R、R、及びRは上記定義の通りであり、Lはハロゲン(臭素、ヨウ素等)等の離脱基である。]で表される化合物を、一般にDMF等の溶媒中で室温で反応させることで調製できる。炭酸セシウム等の塩基をエタノール等の溶媒下で加えてもよい。
【0213】
式IBの化合物は、下記式ID:
【0214】
【化6】

【0215】
[式中、q、R、R、及びRは上記定義の通りであり、R’はメチル等のC1−6アルキルである。]で表される化合物を加水分解することで調製できる。通常、この反応は、従来の加水分解条件下、例えば水酸化リチウム等の塩基とTHFや水等の溶媒の存在下で、約室温で行うことができる。
【0216】
が水素であり、Yが(C=O)である式IDの化合物は、水素化ナトリウム等の塩基の存在下及びTHF等の溶媒中約60℃で、式IE及び式IF:
【0217】
【化7】

【0218】
[式中、q、R、R’、R、及びLは上記定義の通りである。]で表される化合物を反応させることで、式IDの化合物を調製することができる。
【0219】
或いは、Yが(C=O)NRである式Iの化合物は、下記式IG及び式IH:
【0220】
【化8】

【0221】
[式中、R、R、R、R、R、R、R、Het、b、及びqは上記定義の通りである。]で表される化合物を反応させることで調製することができる。通常、この反応はEDC.HClやHOBt等のカップリング剤の存在下、DMF等の溶媒中、約室温で行う。
【0222】
がY(CRと共にオキソ基を形成する式Iの化合物は、下記式IJ及び式IK:
【0223】
【化9】

【0224】
[式中、R、R、Het、q、及びR’は上記定義の通りである。]で表される化合物を反応させることで、式Iの化合物を調製することができる。通常、この反応はn−BuLi等の有機金属試薬の存在下、THF等の溶媒中、約−78℃〜室温で行う。
【0225】
式IJの化合物のHet環は、必要に応じて保護基で保護してよい。例えばHetがイミダゾールである場合、N環原子をSEM等の保護基で保護してもよい。水素化ナトリウム等の塩基及びTHF等の溶媒の存在下、約0℃でSEM−X(Xは塩素等のハロゲン)と反応させることで、SEM基を結合させることができる。
【0226】
その後、通常の条件下、例えばTFA等の酸及びDCM等の溶媒の存在下、約0℃〜室温でジオキサン保護基を除去できる。
【0227】
式IJの化合物は、下記式IL及び式IM:
【0228】
【化10】

【0229】
[式中、R、Het、及びLは上記定義の通りである。]で表される化合物を反応させることで調製できる。通常、この反応は、アルゴン雰囲気中、PdCl(PPh等の触媒及びベンゼン等の溶媒の存在下、約60℃で行う。
【0230】
上記の通り、式ILの化合物中、Het環を上記のような適当な保護基で保護してよい。
【0231】
Yは(CHOである式Iの化合物は、下記式IN及び式IO:
【0232】
【化11】

【0233】
[式中、R、R、R、R、R、R、Het、a、b、q、及びLは上記定義の通りである。]で表される化合物を反応させることで調製することができる。通常、この反応は、水素化ナトリウム等の塩基及びTHF等の溶媒の存在下、約0℃〜室温で行う。
【0234】
式IDの化合物を、通常の還元条件下、例えば水素化アルミニウムリチウム等の還元剤の存在下で還元することで、aが1である式INの化合物を調製することができる。
【0235】
中間体及び出発物質の合成が記載されていないとき、これらの化合物は、市販されているか、或いは通常の方法によって又は例示した方法を拡張することによって市販の化合物から合成することができる。
【0236】
公知の方法によって、或いは上記手順、スキーム、及び実施例に記載の方法を拡張することによって、式Iの化合物を、他の式Iの化合物に変換してもよい。
【0237】
がY(CRと共にオキソ基を形成する式Iの化合物中のオキソ基は、通常の条件下でヒドロキシ基に還元することができる。例えば、エタノール等の溶媒の存在下、約0℃で、水素化ホウ素ナトリウム等の還元剤を用いてもよい。
【0238】
がC1−6アルキルであり、Y(CRがヒドロキシである式Iの化合物は、RがY(CRと共にオキソ基を形成している式Iの化合物を、適当な有機金属試薬(R’’Li等)又はグリニャール試薬(R’’−MgX等)と反応させることで、調製することができ、ここで、R’’はC1−6アルキルであり、Xは臭素等のハロゲンであり、通常、この反応は、THF等の溶媒中で約−78℃で行う。
【0239】
通常、ピリジン等の塩基及びトルエン等の溶媒の存在下、約40℃で、下記式IP:
【0240】
【化12】

【0241】
[式中、R、R、R、及びbは上記定義の通りである。]で表される適当なイソシアネート化合物と反応させることで、Y(CRがヒドロキシである式Iの化合物を、Y(CRがO(C=O)NH(CRである式Iの化合物に変換してもよい。
【0242】
上記のような一連の合成手順において、あらゆる当該分子上の感応性基又は反応性基を保護することは必要であり、且つ/或いは望ましいかもしれない。従来の保護基の手段を用いてこれを達成してもよい。例えば、グリーン(Greene,T.W.)及びウッツ(Wuts,P.G.M.)、「Protecting Groups in Organic Synthesis」、第3版、ウィリー・インターサイエンス、1999年、及びコシェンスキー(Kocienski,P.J.)、「Protecting Groups」、ティーメ(Thieme)、1994年に記載されている。保護基は、当該技術分野で公知の方法を用いて、適当なそれに続く工程で除去してよい。例えば、BoC保護基が存在する場合、これはTFAやDCM等の溶媒を添加して除去してよい。
【0243】
スキーム
Hetがイミダゾールである式Iの化合物を調製する方法は、スキーム1に示される。水素化ナトリウム等の塩基の存在下、マロン酸tert−ブチルメチルエステルを、適当なハロゲン化アルキルでアルキル化して、ホモロゲートしたマロン酸エステル誘導体を得る。このメチルエステルを通常の条件下で水酸化リチウムを用いて加水分解してモノエステルを得て、該モノエステルは、CsCO等の塩基の存在下、α−ハロケトンでアルキル化できる。トルエン等の高沸点溶媒中で、過剰の酢酸アンモニウムの存在下でこれを加熱し、イミダゾール化合物が生成する。これをトリフルオロ酢酸等の酸で処理することにより、カルボン酸を遊離させ、カルボニル部位のケタール保護基などの付加の保護基を除去する。例えば、EDCIやHOBtを用いて通常の手順により、このカルボン酸をアミンとカップリングさせ、アミドを得る。
【0244】
【化13】

【0245】
スキーム2に示すように、鍵化合物であるtert−ブチルエステルから直接他のリンカーの調製をすることができる。例えば、あらゆる保護基の脱保護の後、エステルを還元することで対応するアルコールが得られる。或いは、このアルコールを様々な求電子剤(エステルを生じるハロゲン化アルキル等)でアルキル化してもよく、これは、アルキル化の前にイミダゾール基をSEM基等の基を用いて保護することを必要とする。
【0246】
【化14】

【0247】
他の合成手順をスキーム3に示す。それは、HDAC阻害剤のヘテロベンジル位にカルボニルやアルコール置換基を形成する。例えば、ヘテロ環(必要に応じてSEM保護基等で保護する)をn−BuLi等の試薬でリチオ化し、ヘテロ環状有機金属試薬を生成させ、これがワインレブアミドに加えられ、対応するケトンが得られる。酸で処理することによりヘテロ環及びカルボニル部位上の保護基(SEM、ケタール等)を除去する。ヘテロ環ケトン中間体を水素化ホウ素ナトリウム等の試薬で対応する第2のアルコールへと還元し、適宜保護基を脱保護した後、所望の阻害剤を再び得ることができる。キラルクロマトグラフィーによって、このアルコールのラセミ混合物を各エナンチオマーへと分離することができる。例えば、キラル固定相上で、超臨界COを溶離液を用いる。
【0248】
【化15】

【0249】
三級アルコールの調製方法をスキーム4に示す。これにより、有機リチウム化合物(MeLi等)やグリニャール試薬等の有機金属試薬を上記ヘテロ環ケトンに付加し、脱保護することで、所望の阻害剤が得られる。
【0250】
【化16】

【0251】
また、水素化ナトリウム等の塩基及びアルキル化剤で処理することにより調製されたアルコールをアルキル化することで、エーテルを調製することができる。スキーム5に示すように、これに関連した方法により、該アルコールを適当なイソシアネートで処理することによってカルバメートを合成することができる。
【0252】
【化17】

【0253】
本明細書で記載した実施例化合物を、下記に記載したアッセイでテストしたところ、10μM未満のIC50値を示すことが分かった。
【0254】
HDAC1アッセイ
アッセイ条件
HDAC1アッセイにより、ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)活性を定量化する。96ウェルのマイクロタイタープレート中、精製したHDAC1の濃度を固定して化合物の連続希釈物を前培養し、その後脱アセチル化の際に蛍光発光するアセチル化リジン含有基質/展開剤を添加して、アッセイを行う。デアセチラーゼ反応を37℃で60分間行い、展開剤溶液を加えて反応を停止し、プレートリーダーで蛍光(ex360nM、em460nM)を測定する。
【0255】
HDAC基質緩衝系
HDAC蛍光活性アッセイの試薬はバイオモル・リサーチ・ラボラトリーズ社(BioMol Research Laboratories、ペンシルバニア州プリマスミーティング)から購入し、特にFluor−de−Lys(商標)基質/展開剤系であることを特徴とする。この試薬は、50mMのストック溶液(KI−104)として独自開発の蛍光基質を含み、また展開剤濃縮物(KI−105)を含む。Fluor−de−Lys基質のリジン残基の脱アセチル化は、専売の展開剤を加えた後に蛍光(ex360nM、em460nM)を測定することで定量する。
【0256】
作用試薬
TSAストック:100%ジメチルスルホキシド(DMSO)中10mMのストック溶液としてTSAを用いる。
アッセイ緩衝液:25mMのトリス/HCl(pH8)、137mMのNaCl、2.7mMのKCl、1mMのMgCl、0.1mg/mlのBSA
希釈基質液:市販の50mMのFluor−de−Lys基質(KI−104)を、使用前に、HDAC分析緩衝液で150μMに希釈する。分析中の最終濃度は30μMである。
希釈展開剤液:市販の20X展開剤濃縮物(KI−105)を、HDAC分析緩衝液中に1:167の比率で加え、希釈する。2μM[最終]TSAをこの溶液に加えると、反応が停止させやすくなる。
HDAC1作用液:新鮮なアリコートの酵素から、HDAC1酵素を、使用前にアッセイ緩衝液中に希釈する。アッセイ中の最終濃度は1〜2nMである。
化合物:試験化合物を、アッセイ緩衝液中の10×5%DMSO溶液として調製すべきである。反応中の最終DMSO濃度は0.5%である。
【0257】
実験計画
96ウェルマイクロプレートを用い、最終容積50μl/ウェルで、以下の条件下で反応を行う。
5μlのDMSO/化合物溶液を添加
アッセイ緩衝液中35μlHeLa HDAC1溶液を添加(或いはネガティブコントロール中の35μlアッセイ緩衝液を添加)
室温で10’インキュベート
150μM基質溶液10μlを添加し反応開始
37℃で1時間インキュベート
50μlの展開剤/4μMTSA溶液を添加して停止
室温で10分間インキュベート
Ex.360nM及びEm.460nMで蛍光を測定
【0258】
HeLa細胞に発現したフラッグ標識HDAClの抽出及び精製プロトコール
一時的にpCDNA3−HDAC1−FLAGでトランスフェクションしたHeLa細胞を、DMEM、抗生物質及びグルタミンを加えた10%のウシ胎仔血清中、10cm培養皿上で80%群まで成長させる。細胞を10mlの冷PBSで洗浄し、2mlのPBS中に回収する。細胞を800×g、4℃で5分間遠心分離し、30mlのPBSで洗浄し、10mlのPBS中に懸濁させ、その数を数え、再度遠心分離し、−80℃で凍結する。
【0259】
凍結した細胞ペレットを、COMPLETEプロテアーゼ阻害剤を含有する1mlの低張緩衝液(LB:20mMのHepes、pH7.9、0.25mMのEDTA、10%のグリセロール)中に再度懸濁させ、氷上で15分間インキュベートし、2ml容量のDounceBホモジナイザー(25ストローク)で均質化する。この均質液に150mMのKCl及び0.5%のNP−40を加え、超音波で2度分解し(30秒間、出力5/6、デューティサイクル90)、4℃で1時間インキュベートする。12000rpm、4℃で30分間遠心分離した後、その上澄(可溶性抽出物)を回収し、BIORAD分析によりタンパク質濃度を決定する。
【0260】
Anti−FLAG M2親和性樹脂(シグマ)をTBSで3回、LBで2回洗浄する。10μlのLB洗浄樹脂/1mgのタンパク質(2〜3μgのFlagged−HDAC1)を可溶性抽出物(1mL)に加え、穏やかに混合しながら4℃で一晩インキュベートする。この樹脂を遠心分離で回収し、LBで1回、LB+0.1%NP40で2回、及び溶出緩衝液(50mMのHepes、pH7.4、5%のグリセロール、100mMのKCl、0.01%のトリトンX−100)で2回洗浄する。
【0261】
樹脂に対して10倍過剰量の溶出緩衝液(100μg/ml−3XFLAGペプチド(シグマ)を含む)を加えることで、アフィニティーで精製したHDACを樹脂から溶出させる。精製HDACの濃度はウエスタンブロット分析で決定する。
【0262】
他のアッセイ方法については文献により公知であり、当業者は容易に実施することができる。
【0263】
以下、本発明を実施例により説明する。
【実施例】
【0264】
実施例1
2−[5−(2−ナフチル)−1H−イミダゾール−2−イル]−8−オキソデカン酸(A4)
ステップ1:[5−(2−エチル−1,3−ジオキソラン−2−イル)ペンチル]マロン酸tert−ブチルメチルエステル(A1)
THF中のNaH(60%、1当量)の0℃の懸濁液(0.1M溶液)に、マロン酸tert−ブチルメチル(1当量)を滴下し、得られた混合物をRTで1時間撹拌し、これをTHF中の2−エチル−2−(5−ヨードペンチル)−1,3−ジオキソラン(0.9当量)の溶液(0.3M)に加えた。得られた混合物を60℃で1時間撹拌し、NHCl溶液を加え、有機層を分離し、NaSOで乾燥し、減圧濃縮して、無色のオイルを得、これを、更に精製することなく使用した。
H NMR(400MHz,CDCl)δ:3.81(4H,s),3.61(3H,s),3.12(1H,t,J=7.4Hz),1.80−1.67(2H,m),1.56−1.43(4H,m),1.34(9H,s),1.29−1.17(6H,m),0.79(3H,t,J=7.5Hz)。
MS(ES)C1832要求値:344,実測値:367(M+Na)
【0265】
ステップ2:2−(tert−ブトキシカルボニル)−7−(2−エチル−1,3−ジオキソラン−2−イル)ヘプタン酸(A2)
THF/HO(2:1)中のA1(1当量)の溶液(0.09M溶液)をLiOH(1.1当量)で処理し、その溶液をRTで3時間撹拌した。6NのHClで反応を停止し、生成物をEtOAcで抽出した。有機層をNaSOで乾燥し、減圧下で溶媒を除去して、白色固体を得、これは、更に精製することなく使用した。
H NMR(400MHz,CDCl)δ:3.86(4H,s),3.16(1H,t,J=7.3Hz),1.90−1.68(2H,m),1.63−1.46(4H,m),1.39(9H,s),1.33−1.15(6H,m),0.84(3H,t,J=7.5Hz)。
MS(ES)C1730要求値:330,実測値:331(M+H)
【0266】
ステップ3:tert−ブチル 7−(2−エチル−1,3−ジオキソラン−2−イル)−2−[5−(2−ナフチル)−1H−イミダゾール−2−イル]ヘプタノエート(A3)
EtOH中のA2(1当量)及びCsCO(0.5当量)の溶液(0.47M溶液)をRTで45分間撹拌し、減圧濃縮した。得られた塩の混合物のDMF溶液(0.27M溶液)に、2−ブロモ−1−(2−ナフチル)エタノン(1当量)を加え、その混合物をN下、RTで2時間撹拌した。DMFを減圧下でトルエンと共沸し、除去した。EtOAcを加え、混合物をろ過し、残渣をEtOAcで洗浄し、合わせたろ液を減圧濃縮した。トルエン中の得られたオイルとNHOAc(20当量)の混合液(0.1M溶液)を還流温度で2時間加熱し、過剰なNHOAc及びHOをディーン・スターク・トラップで除去した。得られた混合物をRTに冷却し、EtOAcで希釈し、飽和NaHCO水溶液及び食塩水で洗浄した。この溶液をNaSOで乾燥し、減圧濃縮し、得られた茶色オイルをシリカゲルクロマトグラフィー(20〜50%のEtOAc/石油エーテル)で精製して、淡褐色の泡状物として表題化合物を得た。
H NMR(400MHz,CDCl)δ:8.15(1H,s),7.89−7.71(4H,m),7.49−7.37(2H,m),7.35(1H,s),3.97(1H,t,J=7.2Hz),3.89(4H,s),2.06−1.87(2H,m),1.65−1.52(4H,m),1.49(9H,s),1.41−1.27(6H,m),0.87(3H,t,J=7.5Hz)。
MS(ES)C2938要求値:478,実測値:479(M+H)
【0267】
ステップ4:2−[5−(2−ナフチル)−1H−イミダゾール−2−イル]−8−オキソデカン酸(A4)
エステル(A3)を0℃でTFA/DCM(3:7、0.2M溶液)で処理し、冷却槽を取り除き、得られた混合物をRTで4時間撹拌した。その溶媒を減圧除去した。得られた粗酸生成物の多くは更なる精製を行うことなく使用し、一部のみRP−HPLCで精製した。
H NMR(400MHz,DMSO)δ:8.37(1H,s),8.15(1H,s),8.12−8.03(1H,m),8.03−7.90(3H,m),7.70−7.53(2H,m),4.03(1H,t,J=7.7Hz),2.48−2.34(4H,m),2.25−2.00(2H,m),1.58−1.42(2H,m),1.39−1.17(4H,s),0.92(3H,t,J=7.3Hz)。
MS(ES)C2326要求値:378,実測値:379(M+H)
【0268】
実施例2
5−(2−ナフチル)−2−(7−オキソ−1−{[(2−フェニルエチル)アミノ]カルボニル}ノニル)−1H−イミダゾール−1−イウムトリフルオロアセテート(B1)
EDC.HCl(1.5当量)、HOBt(1.5当量)、及び実施例1(1当量)のDMF溶液をRTで30分間撹拌し、2−フェニルエチルアミン(1.5当量)を加え、この混合物をRTで一晩撹拌した。得られた反応混合物を、分取RP−HPLC(カラム:C18、溶離液:HO(0.1%TFA)及びMeCN(+0.1%TFA))で精製し、所望の化合物のフラクションを凍結乾燥し、表題化合物B1を白色粉末として得た。
H NMR(400MHz,DMSO−d6)δ:14.45(1H,bs),8.55(1H,bs),8.41(1H,s),8.17(1H,s),8.13−8.05(1H,m),8.04−7.91(3H,m),7.68−7.57(2H,m),7.36−7.17(5H,m),4.03(1H,t,J=7.7Hz),3.48−3.38(2H,m),2.82(2H,t,J=8.1Hz),2.47−2.36(4H,m),2.08−1.94(2H,m),1.53−1.41(2H,m),1.30−1.05(4H,m),0.93(3H,t,J=7.2Hz)。
MS(ES)C3135要求値:481,実測値:482(M+H)
【0269】
実施例3
2−[1−(ヒドロキシメチル)−7−オキソノニル]−5−(2−ナフチル)−1H−イミダゾール−1−イウムトリフルオロアセテート(C2)
ステップ1:7−(2−エチル−1,3−ジオキソラン−2−イル)−2−[5−(2−ナフチル)−1H−イミダゾール−2−イル]ヘプタン−1−オール(C1)
無水THF中の実施例1のA3(1当量)の溶液(0.07M溶液)をLiAlH(2.0当量)で処理し、得られた混合物をRTで2時間撹拌し、飽和NHCl水溶液を加えて反応を停止した。この混合物をEtOAcで抽出し、有機層を食塩水で洗浄し、NaSOで乾燥し、減圧濃縮した。この粗残渣を更に精製することなく使用した。
MS(ES)C2532要求値:408,実測値:409(M+H)
【0270】
ステップ2:2−[1−(ヒドロキシメチル)−7−オキソノニル]−5−(2−ナフチル)−1H−イミダゾール−3−イウムトリフルオロアセテート(C2)
アルコールC1をDCM/TFA(8:2、0.03M溶液)に溶解し、その溶液を2時間撹拌し、その溶媒を減圧除去し、粗残渣を分取RP−HPLC(カラム:C18、溶離液:HO(0.1%TFA)及びMeCN(+0.1%TFA))で精製した。所望のフラクションを凍結乾燥し、白色粉末を得た。
H NMR(400MHz,DMSO−d6)δ:14.41(1H,bs),8.40(1H,s),8.22(1H,s),8.15−8.06(1H,m),8.03−7.92(3H,m),7.70−7.54(2H,m),3.70(2H,d,J=5.9Hz),3.32−3.19(1H,m),2.47−2.32(4H,m),1.88−1.72(2H,m),1.56−1.40(2H,m),1.35−1.15(4H,m),0.92(3H,t,J=7.2Hz)。
MS(ES)C2328要求値:364,実測値:365(M+H)
【0271】
実施例4
5−(2−ナフチル)−2−{7−オキソ−1−[(ピリジン−3−イルメトキシ)メチル]ノニル}−1H−イミダゾール−1−イウムトリフルオロアセテート(D3)
ステップ1:tert−ブチル 7−(2−エチル−1,3−ジオキソラン−2−イル)−2−(5−(2−ナフチル)−1−{[2−(トリメチルシリル)エトキシ]メチル}−1H−イミダゾール−2−イル)ヘプタノエート(D1)
無水THF中の実施例1のA3の0℃溶液(0.06M溶液)にNaH(60%、1.5当量)を段階的に加え、得られた混合物を1時間撹拌し、これにSEM−Cl(1.5当量)を滴下した。この溶液をRTまで温め、更に3時間撹拌した。飽和NHCl水溶液を加えて反応を停止し、得られた混合物をEtOAcで抽出した。有機層を食塩水で洗浄し、NaSOで乾燥し、減圧濃縮した。粗残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(20〜50%のEtOAc/石油エーテル)で精製して、淡褐色の泡状物としてD1を得た。
H NMR(400MHz,CDCl)δ:8.32(1H,s),7.91−7.75(5H,m),7.49−7.37(2H,m),5.43(1H,d,J=10.9Hz),5.26(1H,d,J=10.9Hz),3.90(4H,s),3.86(2H,t,J=7.4Hz),3.57(1H,t,J=8.1Hz),2.27−2.14(2H,m),1.67−1.57(4H,m),1.49(9H,s),1.41−1.27(6H,m),0.96(2H,t,J=7.4Hz),0.87(3H,t,J=7.5Hz),0.07(9H,s)。
MS(ES)C3552Si要求値:608,実測値:609(M+H)
【0272】
ステップ2:7−(2−エチル−1,3−ジオキソラン−2−イル)−2−(5−(2−ナフチル)−1−{[2−(トリメチルシリル)エトキシ]メチル}−1H−イミダゾール−2−イル)ヘプタン−1−オール(D2)
実施例3のステップ1と同様の手法でエステルD1を還元し、アルコールD2を得た。
MS(ES)C3146Si要求値:538,実測値:539(M+H)
【0273】
ステップ3:5−(2−ナフチル)−2−{7−オキソ−1−[(ピリジン−3−イルメトキシ)メチル]ノニル}−1H−イミダゾール−3−イウムトリフルオロアセテート(D3)
D2(1.0当量)の無水THF溶液に、0℃でNaH(60%、1.3当量)を段階的に加えた。得られた混合物をRTで40分間撹拌し、3−ブロモメチルピリジン(1.3当量)を加え、その混合物をRTで1時間撹拌した。溶媒を減圧留去し、残渣をTFA/DCM(1:1)に溶解し、RTで3時間撹拌した。溶媒の減圧留去の後、粗生成物を分取RP−HPLC(カラム:C18、溶離液:HO(0.1%TFA)及びMeCN(+0.1%TFA))で精製し、所望の化合物のフラクションを凍結乾燥し、D3を白色粉末として得た。
H NMR(400MHz,CDCl)δ:8.20(1H,s),8.04(1H,s),7.89−7.71(4H,m),7.67−7.37(6H,m),4.70−4.50(2H,m),4.10−3.95(1H,m),3.75−3.42(2H,m),2.48−2.22(4H,m),2.00−1.80(2H,m),1.55−1.40(2H,m),1.34−1.15(4H,m),1.00(3H,t,J=7.5Hz)。
MS(ES)C2933要求値:455,実測値:456(M+H)
【0274】
実施例5
5−(2−ナフチル)−2−(8−オキソノナノイル)−1H−イミダゾール−1−イウムトリフルオロアセテート(E4)
ステップ1:4−ブロモ−1−{[2−(トリメチルシリル)エトキシ]メチル}−1H−イミダゾール(E1)
無水THF中の5−ブロモ−1H−イミダゾール(1.0当量)の溶液(0.4M溶液)に、0℃でNaH(60%、1.2当量)を段階的に加えた。その混合物を0℃で2時間撹拌し、SEMCl(1.2当量)を加え、RTで12時間撹拌した。飽和NHCl水溶液を加えて反応を停止し、その混合物をEtOAcで抽出した。有機層を食塩水で洗浄し、NaSOで乾燥し、減圧濃縮した。粗残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(20〜50%のEtOAc/石油エーテル)で精製して、オイル状のE1を得た。
H NMR(300MHz,CDCl)δ:7.45(1H,s),7.00(1H,s),5.21(2H,s),3.47(2H,t,J=8.2Hz),0.89(2H,t,J=8.2Hz),0.00(9H,s)。
MS(ES)C17BrNOSi要求値:276/278,実測値:277/279(M+H)
【0275】
ステップ2:4−(2−ナフチル)−1−{[2−(トリメチルシリル)エトキシ]メチル}−1H−イミダゾール(E2)
ベンゼン中のE1(1.0当量)の溶液(0.1M溶液)、2−ナフチルボロン酸(1.5当量)、及び飽和NaCO水溶液に、アルゴン下でPdCl((PPh)を加えた。その混合物を60℃で72時間撹拌し、冷却し、EtOAcで抽出した。有機層を食塩水で洗浄し、NaSOで乾燥し、減圧濃縮した。粗残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(20〜50%のEtOAc/石油エーテル)で精製して、E2を黄色固体として得た。
H NMR(300MHz,CDCl)δ:8.31(1H,s),7.88−7.70(5H,m),7.48−7.39(3H,m),5.28(2H,s),3.54(2H,t,J=8.2Hz),0.94(2H,t,J=8.2Hz),0.00(9H,s)。
MS(ES)C1924OSi要求値:324,実測値:325(M+H)
【0276】
ステップ3:7−(2−メチル−1,3−ジオキソラン−2−イル)−1−(4−(2−ナフチル)−1−{[2−(トリメチルシリル)エトキシ]メチル}−1H−イミダゾール−2−イル)ヘプタン−1−オン(E3)
THF中のE2(1.0当量)の−78℃の溶液(0.1M溶液)に、n−BuLi(1.3当量)のヘキサン溶液を加えた。この溶液を30分間撹拌し、THF中のN−メトキシ−N−メチル−7−(2−メチル−1,3−ジオキソラン−2−イル)ヘプタンアミド(1.5当量)溶液をゆっくり加えた。反応混合物を−78℃で1時間、RTで1時間撹拌した。次いで、水を加え、EtOAcで水相を抽出した。有機抽出物を併せてMgSOで乾燥し、溶媒を減圧除去した。粗残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(20〜50%のEtOAc/石油エーテル)で精製して、E3を黄色固体として得た。
H NMR(300MHz,CDCl)δ:8.32(1H,s),7.96−7.81(4H,m),7.68(1H,s)7.53−7.42(2H,m),5.85(2H,s),3.92(4H,s),3.64(2H,t,J=8.2Hz),3.26(2H,t,J=8.2Hz),1.77(2H,m),1.69−1.36(8H,m),1.31(3H,s),0.97(2H,t,J=8.2Hz),0.19(9H,s)。
MS(ES)C3042Si要求値:522,実測値:523(M+H)
【0277】
ステップ4:1−[5−(2−ナフチル)−1H−イミダゾール−2−イル]ノナン−1,8−ジオン(E4)
ケトンE3をTFA/DCM(1:1)に溶解し、RTで4時間撹拌した。その溶媒を減圧留去した後、粗生成物を分取RP−HPLC(カラム:C18、溶離液:HO(0.1%TFA)及びMeCN(+0.1%TFA)使用)で精製し、所望の化合物のフラクションを凍結乾燥し、E4を白色固体として得た。
H NMR(300MHz,DMSO)δ:8.17(1H,s),7.92−7.79(3H,m),7.76−7.64(2H,m),7.55−7.45(2H,m),3.15(2H,t,J=7.4Hz),2.44(2H,t,J=7.4Hz),2.15(3H,s),1.74(2H,m),1.58(2H,m),1.37(4H,m)。
MS(ES)C2224要求値:348,実測値:349(M+H)
【0278】
実施例6
9−ヒドロキシ−9−[5−(2−ナフチル)−1H−イミダゾール−2−イル]ノナン−3−オン(F3)
ステップ1:6−(2−エチル−1,3−ジオキソラン−2−イル)−1−(4−(2−ナフチル)−1−{[2−(トリメチルシリル)エトキシ]メチル}−1H−イミダゾール−2−イル)ヘキサン−1−オン(F1)
THF中の実施例5のE2(1.0当量)の溶液(0.1M溶液)に、−78℃でn−BuLi(1.3当量)のヘキサン溶液を加えた。この溶液を30分間撹拌し、これにTHF中の6−(2−エチル−1,3−ジオキソラン−2−イル)−N−メトキシ−N−メチルヘキサンアミド(1.5当量)溶液をゆっくりと加えた。反応混合物を−78℃で1時間、更にRTで1時間撹拌した。次いで、水を加え、水相をEtOAcで抽出した。有機抽出物を併せてMgSOで乾燥し、溶媒を減圧除去した。粗生成物を更に精製することなく次のステップに使用した。
MS(ES)C3042Si要求値:523,実測値:524(M+H)
【0279】
ステップ2:6−(2−エチル−1,3−ジオキソラン−2−イル)−1−(4−(2−ナフチル)−1−{[2−(トリメチルシリル)エトキシ]メチル}−1H−イミダゾール−2−イル)ヘキサン−1−オール(F2)
EtOH中のケトンF1の0℃の溶液(0.04M溶液)にNaBH(2.0当量)を加え、その合わせた混合物を1時間撹拌した。これに水をゆっくり加え、水相をEtOAcで抽出した。有機抽出物をMgSOで乾燥し、溶媒を減圧除去した。粗生成物を精製することなく、そのまま次のステップで使用した。
MS(ES)C3044Si要求値:525,実測値:526(M+H)
【0280】
ステップ3:9−ヒドロキシ−9−[5−(2−ナフチル)−1H−イミダゾール−2−イル]ノナン−3−オン(F3)
アルコールF2をTFA/DCM(1:1)に溶解し、RTで4時間撹拌した。飽和NaHCO水溶液で反応を停止し、水相をEtOAcで抽出した。有機抽出物を併せてMgSOで乾燥し、溶媒を減圧除去した。粗生成物をフラッシュクロマトグラフィー(EtOAc/石油エーテル溶離液)で精製し、生成物を白色固体として得た。
H NMR(300MHz,DMSO)δ:8.30(1H,s),7.97−7.75(6H,m),7.58−7.41(2H,m),5.81(1H,brs),4.75(1H,m),2.37(4H,m),1.80(2H,m),1.51−1.19(6H,m),0.88(3H,t,J=7.3Hz)。
MS(ES)C2226要求値:350,実測値:351(M+H)
【0281】
実施例7
(−)−9−ヒドロキシ−9−[5−(2−ナフチル)−1H−イミダゾール−2−イル]ノナン−3−オン(G1)
実施例6のエナンチオマー(F2)を、超臨界流体キラルカラムクロマトグラフィー(カラム:キラルセルOJ−H、流速:9.99ml/分、モディファイヤー:30%MeOH及び0.2%DEA、Tcol=35℃、Pcol=100bar)で分離した。(+)−アルコールをTFA/DCM(1:1)に溶解し、RTで4時間撹拌した。飽和NaHCO水溶液で反応を停止し、水相をEtOAcで抽出した。合わせた有機抽出物をMgSOで乾燥し、溶媒を減圧除去した。粗生成物をフラッシュクロマトグラフィー(EtOAc/石油エーテル溶離液を使用)で精製し、G1を白色固体として得た。
[α]22=−12.6(EtOAc中、c=1.0)。
MS(ES)C2226要求値:350,実測値:351(M+H)
【0282】
実施例8
2−(1−ヒドロキシ−1−メチル−7−オキソノニル)−5−(2−ナフチル)−1H−イミダゾール−1−イウムトリフルオロアセテート(H1)
THF中の実施例6のF1(1.0当量)の溶液(0.03M溶液)に、−78℃、アルゴン下で、メチルリチウム(1.2当量)を加えた。2時間後、水を加え、水相をEtOAcで抽出した。合わせた有機抽出物をMgSOで乾燥し、溶媒を減圧除去した。残渣をTFA/DCM(1:1)に溶解し、4時間撹拌した。溶媒を減圧除去し、所望の物質を分取RP−HPLC(カラム:C18、溶離液:HO(+0.1%TFA)及びMeCN(+0.1%TFA))により単離させた。所望の化合物のフラクションを凍結乾燥し、H1を白色固体として得た。
H NMR(300MHz,CDCl)δ:8.23(1H,s),7.86−7.29(8H,m),2.26(4H,m),2.07−1.80(2H,m),1.63(3H,s),1.45−1.06(6H,m),0.95(3H,t,J=7.5Hz)。
MS(ES)C2329要求値:365,実測値:365(M)
【0283】
実施例9
2−(1−メトキシ−7−オキソノニル)−5−(2−ナフチル)−1H−イミダゾール−1−イウムトリフルオロアセテート(I1)
THF中の実施例6のF2(1.0当量)の溶液に、0℃で、NaH(60%、2.5当量)を加え、その5分後にMeI(2.0当量)を加え、反応混合物を12時間撹拌した。続いて、溶媒を減圧除去し、残渣をTFA/DCM(1:1)に溶解し、4時間撹拌した。飽和NaHCO水溶液で反応を停止し、水相をEtOAcで抽出した。合わせた有機抽出物をMgSOで乾燥し、溶媒を減圧除去した。所望の物質を分取RP−HPLC(カラム:C18、溶離液:HO(+0.1%TFA)及びMeCN(+0.1%TFA))により単離させた。所望の化合物のフラクションを凍結乾燥し、イミダゾール化合物を白色固体として得た。
H NMR(300MHz,CDCl)δ:8.23(1H,s),7.89−7.73(3H,m),7.59(1H,d,J=8.8Hz),7.52−7.39(3H,m),4.68(1H,m),3.24(3H,s),2.30(4H,m),1.85(2H,m),1.42(2H,m),1.32−1.09(4H,m),0.88(3H,t,J=7.3Hz)。
MS(ES)C2328要求値:365,実測値:366(M+H)
【0284】
実施例10
5−(2−ナフチル)−2−{7−オキソ−1−[({[(1S)−1−フェニルエチル]アミノ}カルボニル)オキシ]ノニル}−1H−イミダゾール−1−イウムトリフルオロアセテート(H1)
トルエン中の実施例6のF2(1.0当量)の溶液に、(S)−メチルベンジルイソシアネート(1.3当量)及びピリジン(0.2当量)を加え、その反応混合物を40℃で60時間撹拌した。水を加え、水相をEtOAcで抽出した。合わせた有機抽出物をMgSOで乾燥し、溶媒を減圧除去した。粗残渣をTFA/DCM(1:1)に溶解し、RTで4時間撹拌した。溶媒を減圧除去し、所望の物質を分取RP−HPLC(カラム:C18、溶離液:HO(+0.1%TFA)及びMeCN(+0.1%TFA))により単離させた。所望の化合物のフラクションを凍結乾燥し、イミダゾール化合物を白色固体として得た。
H NMR(300MHz,CDCl)δ:8.05(0.5H,s),7.97(0.5H,s),7.71(3H,m),7.53−7.03(9H,m),6.99(0.5H,d,J=7.3Hz),6.68(0.5H,d,J=7.3Hz),5.95(1H,m),4.69(1H,m),2.29(4H,m),1.93(2H,m),1.54−1.09(10H,m),0.99(1.5H,t,J=7.3Hz),0.97(1.5H,t,J=7.3Hz)。
MS(ES)C3135要求値:498,実測値:499(M+H)
【0285】
上記実施例1〜10に記載の手順、及び上述した本発明の一般的な手法やスキームに記載の手順に従って、以下に示す実施例の化合物を調製した。
【0286】
【表1】

【0287】
【表2】

【0288】
【表3】

【0289】
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I:
【化1】

[式中、bは、0、1、2、3、4、又は5であり;
qは、1、2、3、又は4であり;
Yは、C=O、(C=O)NR、O(C=O)NR、又は(CHOであり;
aは、0、1、2、又は3であり;
Hetは、5員の不飽和ヘテロ環(これは、それぞれ独立にN、O、及びSから選ばれる1、2、3、又は4個のヘテロ原子を含むが、該ヘテロ原子のうち2個以上がO又はSであることはない)又は6員の不飽和ヘテロ環(これは、それぞれ独立にN及びOから選ばれる1、2、3、又は4個のヘテロ原子を含む)であり; これらの環は、シアノ、ハロゲン、ヒドロキシ、オキソ、ニトロ、アミノ、C1−6アルキルアミノ、ジ(C1−6アルキル)アミノ、C1−6アルキル、ハロC1−6アルキル、C1−6アルコキシ、ハロC1−6アルコキシ、C3−10シクロアルキル、C2−6アルケニル、C2−6アルキニル、及びC6−10アリールからそれぞれ独立に選ばれる1個以上の置換基で置換されていてもよく;
は、水素、C1−6アルキル、ハロC1−6アルキル、C6−10アリール、5員の不飽和ヘテロ環(これは、それぞれ独立にO、N、及びSから選ばれる1、2、3、又は4個のヘテロ原子を含むが、該ヘテロ原子のうち2個以上がO又はSであることはない)、6員の不飽和ヘテロ環(これは、1、2、又は3個の窒素原子を含む)、或いは8〜10員の不飽和又は部分飽和ヘテロ環(これは、それぞれ独立にO、N、及びSから選ばれるヘテロ原子を含む)であり; これらの環は、シアノ、ハロゲン、ニトロ、オキソ、ヒドロキシ、C1−6アルキル、ハロC1−6アルキル、C1−6アルコキシ、ハロC1−6アルコキシ、C1−6アルキルカルボニル、C1−6アルコキシカルボニル、カルボキシ、C6−10アリール、C6−10アリールオキシ、C6−10アリールカルボニル、及びN(R(Rはそれぞれ独立に水素、C1−6アルキル、C6−10アリール、C1−6アルキルカルボニル、及びC6−10アリールカルボニルから選ばれる)からそれぞれ独立に選ばれる1個以上の置換基で置換されていてもよく;
は、C1−6アルキルであり;
は、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、シアノ、C1−6アルキル、ハロC1−6アルキル、C1−6アルコキシ、ハロC1−6アルコキシ、C3−10シクロアルキル、ハロC3−10シクロアルキル、C2−10アルケニル、C2−10アルキニル、ニトロ、N(R(Rはそれぞれ独立に水素、C1−6アルキル、及びC1−6アルキルカルボニルから選ばれる)、C6−10アリール、C6−10アリールC1−6アルキル、C6−10アリールC1−6アルコキシ、4、5、又は6員の飽和又は部分飽和ヘテロ環(これは、それぞれ独立にN、O、及びSから選ばれる1、2、又は3個のヘテロ原子を含み、C1−4アルキル基で架橋されていてもよい)、5員の不飽和ヘテロ環(これは、それぞれ独立にN、O、及びSから選ばれる1、2、3、又は4個のヘテロ原子を含むが、該ヘテロ原子のうち2個以上がO又はSであることはない)、6員の不飽和ヘテロ環(これは、1、2、又は3個の窒素原子を含む)、或いは7〜13員の飽和、部分飽和、又は不飽和ヘテロ環(これは、それぞれ独立にN、O、及びSから選ばれるヘテロ原子を含む)であり; これらの環は、Rからそれぞれ独立に選ばれる1個以上の置換基で置換されていてもよく;
は、水素又はC1−6アルキルであるか、或いはY−(CR−Rと共にオキソ基を形成し;
及びRは、それぞれ独立に水素又はC1−6アルキルであり;
は、水素又はC1−6アルキルであり;
それぞれのRは、ハロゲン、ヒドロキシ、シアノ、C1−6アルキル、ハロC1−6アルキル、ハロC1−6アルキルカルボニル、ハロC1−6アルキルカルボニルオキシ、C1−6アルコキシ、ハロC1−6アルコキシ、カルボキシ、C1−6アルキルカルボニル、C1−6アルコキシカルボニル、ニトロ、オキソ、SON(R、N(R(Rはそれぞれ独立に水素、C1−6アルキル、C1−6アルキルカルボニル、カルボキシ、及びC1−6アルコキシカルボニルから選ばれる)、C6−10アリール、C6−10アリールC1−6アルキル、5又は6員の飽和又は部分飽和ヘテロ環(これは、それぞれ独立にN、O、又はSから選ばれる1、2、又は3個のヘテロ原子を含み、C1−4アルキル基で架橋されていてもよい)、5員の不飽和ヘテロ環(これは、それぞれ独立にN、O、及びSから選ばれる1、2、3、又は4個のヘテロ原子を含むが、該ヘテロ原子のうち2個以上がO又はSであることはない)、或いは6員の不飽和ヘテロ環(これは、1、2、又は3個の窒素原子を含む)であり; これらの環は、ハロゲン、ヒドロキシ、アミノ、シアノ、C1−6アルキル、ハロC1−6アルキル、C1−6アルコキシ、及びハロC1−6アルコキシからそれぞれ独立に選ばれる1個以上の置換基で置換されていてもよい。]で表される化合物、又はその薬学的に許容される塩若しくは互変異性体。
【請求項2】
式II:
【化2】

[式中、b、q、R、R、R、R、R、R、及びYは請求項1の定義の通りであり;
A及びBの一方はNであり、他方はCHであり;
は、水素又はC1−6アルキルである。]で表される、請求項1に記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩若しくは互変異性体。
【請求項3】
YがC=O、(C=O)NH、(C=O)NMe、O(C=O)NH、O、又は(CH)Oである、請求項1又は2に記載の化合物。
【請求項4】
式III:
【化3】

[式中、Yは、(C=O)又は(C=O)NRであり;
、R、R、R、R、b、及びqは請求項1の定義の通りであり;
A及びBの一方はNであり、他方はCHであり;
は、水素又はC1−6アルキルである。]で表される、請求項1又は2に記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩若しくは互変異性体。
【請求項5】
がC6−10アリール、5員の不飽和ヘテロ環(これは、それぞれ独立にN、O、及びSから選ばれる1、2、又は3個のヘテロ原子を含むが、該ヘテロ原子のうち2個以上がO又はSであることはない)、6員の不飽和ヘテロ環(これは、1、2、又は3個の窒素原子を含む)、或いは8、9、又は10員の不飽和又は部分飽和ヘテロ環(これは、それぞれ独立にO、N、及びSから選ばれる1、2、3、又は4個のヘテロ原子を含む)から選択される、置換されてもよい環である、請求項1ないし4のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項6】
が水素、ジメチルアミノ、フェニル、ナフチル、ピロリジニル、ピペリジニル、アゾニアビシクロ[2.2.1]ヘプタニル、アゾニアビシクロ[2.2.2]オクタニル、ピペラジニル、モルホリニル、チエニル、チアゾリル、イミダゾリル、ピラゾリル、イソオキサゾリル、チアジアゾリル、ピリジニル、インドリル、ベンゾチエニル、ベンゾチアジアゾリル、ベンゾオキサジアゾリル、ジヒドロベンゾフリル、ジヒドロチアゾロピリミジニル、イソキノリル、ジヒドロベンゾジオキシニル、ジヒドロベンゾオキサジニル、tert−ブトキシ、シクロペンチル、メチル、トリフルオロメチル、メトキシ、ジエチルアミノ、ヒドロキシ、ベンズイミダゾリル、ベンゾフラニル、トリアゾロピリミジニル、ジヒドロベンゾオキサゾリル、ジヒドロインドリル、ジヒドロキナゾリニル、ジヒドロフタラジニル、インダゾリル、キノリニル、ベンズイソオキサゾリル、ベンゾトリアゾリル、テトラヒドロベータカルボリニル、ジヒドロイソインドリル、テトラヒドロナフチリジニル、テトラゾリル、ベンジルオキシ、チオモルホリニル、アゼチジニル、テトラヒドロキノリニル、アセチルアミノ、トリアゾリル、チアゾリジニル、又はアミノであり、これらの環は、Rからそれぞれ独立に選ばれる1個以上の置換基で置換されていてもよく、
がハロゲン、シアノ、C1−6アルキル、C1−6アルコキシ、ハロC1−6アルコキシ、カルボキシ、C1−6アルコキシカルボニル、ニトロ、アミノスルホニル、(C1−6アルキルカルボニル)アミノ、モルホリニル、ピペラジニル、チアゾリル、ピラゾリル、イソオキサゾリル、ピリジニル、オキソ、ハロC1−6アルキル、フェニル、ピロリジニル、又はベンジルであり、これらの環は、C1−6アルキル及びハロC1−6アルキルからそれぞれ独立に選ばれる1個以上の置換基で置換されていてもよい、
請求項1ないし5のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれか1項に記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩若しくは互変異性体と、薬学的に許容される担体とを含有する医薬組成物。
【請求項8】
治療に用いられるための請求項1ないし6のいずれか1項に記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩若しくは互変異性体。
【請求項9】
請求項1ないし6のいずれか1項に記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩若しくは互変異性体の使用であって、HDAC活性を調節することで改善する疾患の治療又は予防用医薬の製造のための前記使用。
【請求項10】
請求項1ないし6のいずれか1項に記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩若しくは互変異性体の使用であって、細胞増殖疾患、神経変性疾患、精神発達遅滞、統合失調症、炎症性疾患、再狭窄、免疫不全、糖尿病、心血管疾患、又は喘息の治療又は予防用医薬を製造するための前記使用。
【請求項11】
細胞増殖疾患、神経変性疾患、精神発達遅滞、統合失調症、炎症性疾患、再狭窄、免疫不全、糖尿病、心血管疾患、又は喘息を治療又は予防する方法であって、かかる処置を必要とする患者に、有効量の請求項1に記載の化合物又はそれを含有する組成物を投与することを特徴とする方法。

【公表番号】特表2009−520800(P2009−520800A)
【公表日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−546643(P2008−546643)
【出願日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【国際出願番号】PCT/GB2006/050472
【国際公開番号】WO2007/072080
【国際公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【出願人】(501209427)イステイチユート・デイ・リチエルケ・デイ・ビオロジア・モレコラーレ・ピ・アンジエレツテイ・エツセ・ピー・アー (90)
【Fターム(参考)】