説明

ヒッププロテクター

【課題】着脱を容易にするヒッププロテクターを提供する。
【解決手段】ヒッププロテクター10は、少なくとも臀部を包み込み、上端に形成され、かつ胴を通すための胴挿入穴O1と、下端に形成され、かつ足を通すための2つの足挿入穴O2とを有する身頃と、この身頃に形成されると共に、衝撃を吸収する吸収部材15と、この身頃の上端部の一部と他部とを係止可能とする係止部材17とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒッププロテクターに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、転倒時の大腿骨頚部等の骨折を防止するためにヒッププロテクターが知られている。このようなヒッププロテクターとして、例えば、特許第3059072号(特許文献1)には、図4に示すように、腰周りにおける前身頃111、脇部112及び後身頃113の適宜の部位に衝撃吸収率が50%以上の骨折防護用衝撃吸収材114を設けたパンツ100が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3059072号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、図4に示す上記特許文献1のパンツ100を着用する場合には、胴挿入穴Oに足を挿入する必要があり、脱ぐ場合には、胴挿入穴Oから足を抜く必要がある。筋力が低下し、身体の可動域が狭くなった高齢者などにとって、特許文献1のパンツ100の着脱の動作は負担が大きいため、着脱を容易にするヒッププロテクターが要望されている。
【0005】
したがって、本発明は、着脱を容易にするヒッププロテクターを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のヒッププロテクターは、少なくとも臀部を包み込むと共に、上端に形成され、かつ胴を通すための胴挿入穴と、下端に形成され、かつ足を通すための2つの足挿入穴とを有する身頃と、該身頃に形成されると共に、かつ衝撃を吸収する吸収部材と、該身頃の上端部の一部と他部とを係止可能とする係止部材とを備えている。
【0007】
本発明のヒッププロテクターは、身頃の上端部の一部と他部とを係止可能とする係止部材を備えているので、ヒッププロテクターの着脱時には、係止部材の係止を外すことにより、胴挿入穴を拡大できる。胴挿入穴はヒッププロテクターを着脱する際に足を通す穴であるため、ヒッププロテクターの着脱を容易にできる。したがって、本発明は、着脱を容易にするヒッププロテクターを提供することができる。
【発明の効果】
【0008】
以上説明したように、本発明によれば、着脱を容易にするヒッププロテクターを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施の形態におけるヒッププロテクターを概略的に示す正面図である。
【図2】本発明の実施の形態におけるヒッププロテクターを概略的に示す背面図である。
【図3】本発明の実施の形態におけるヒッププロテクターを構成する係止部材の一部の係止を外した状態を概略的に示す正面図である。
【図4】特許文献1に開示のパンツの正面側斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図1〜図3を参照して、本発明の一実施の形態におけるヒッププロテクター10について説明する。本実施の形態のヒッププロテクター10は、パンツ型の衣類であり、骨強度の低い高齢者などが転倒したときに加えられる衝撃を吸収して、大腿骨頚部等の骨折を防止するために用いられる。
【0011】
図1〜図3に示すように、本実施の形態のヒッププロテクター10は、パンツ型の衣類であり、左前身頃11と、右前身頃12と、後身頃13と、腰ゴム14と、吸収部材15と、吸収部材収容部16と、係止部材17と、伸び止め部18と、裾部19とを備えている。
左前身頃11、右前身頃12、及び後身頃13で構成される身頃の上端は、胴を通すための胴挿入穴O1を構成する。左前身頃11、右前身頃12、及び後身頃13で構成される身頃の下端は、足を通すための2つの足挿入穴O2を構成する。
【0012】
左前身頃11は、前方左側に位置する生地である。右前身頃12は、前方右側に位置する生地である。左右前身頃11、12は、下腹部を覆い、図1では大腿部前方の上部をさらに覆う。
【0013】
後身頃13は、左前身頃11及び右前身頃12と連続しており、本実施の形態の後身頃13は、左前身頃11及び右前身頃12と同じ生地で連なっている。後身頃13は、臀部を覆い、図1では大腿部後方の上部をさらに覆う。
【0014】
左右前身頃11、12及び後身頃13を構成する生地において、縦方向(上下方向)の伸張応力が0.7N以上2.0N以下であり、横方向(左右方向)の伸張応力が0.2N以上0.9N以下であることが好ましい。生地の伸張応力がこの範囲内の場合、着脱が容易であるとともに、吸収部材15の移動を抑制できる。
【0015】
ここで、上記「伸張応力」とは、JIS L 1096 ストリップ法に準拠した30%伸張応力を意味する。具体的には、レース以外の生地の場合には2.5cm×20cmにカットした試験片を準備し、レースの場合にはレース巾×20cmにカットした試験片を準備し、この試験片を引張試験機(島津製作所社製の商品名「オートグラフ」)のつかみ間(つかみ間隔10cm)に固定し、引張速度30±2cm/分で当該試験片を30%まで引き伸ばしたときの値である。
【0016】
左右前身頃11、12及び後身頃13を構成する生地において、縦方向(上下方向)の伸度が50%以上200%以下であり、横方向(左右方向)の伸度が300%以上500%以下であることが好ましい。生地の伸度がこの範囲内の場合、着脱が容易であるとともに、吸収部材15の移動を抑制できる。
【0017】
ここで、上記「伸度」とは、JIS L 1096 ストリップ法に準拠した破断時の伸張率を意味する。具体的には、レース以外の生地の場合には2.5cm×20cmにカットした試験片を準備し、レースの場合にはレース巾×20cmにカットした試験片を準備し、この試験片を引張試験機(島津製作所社製の商品名「オートグラフ」)のつかみ間(つかみ間隔10cm)に固定し、引張速度30±2cm/分で前記試験片を破断するまで引き伸ばしたときの長さを測定し、破断時の伸張率を求めた値である。
【0018】
左右前身頃11、12及び後身頃13は、例えば、ナイロンなどにポリウレタン弾性繊維を交編したパワーネット、横方向に伸縮性を備えたフライス編等の生地を用いることができる。パワーネットは、ラッセル編みの一種で、例えば、プレーンパワーネット生地、サテンパワーネット生地、ツーウェイラッセル生地、ツーウェイトリコット生地等が挙げられる。地糸の太さは、例えば44〜78dtx程度、弾性糸の太さは、例えば200〜400dtx程度である。
【0019】
腰ゴム14は、左右前身頃11、12及び後身頃13の上端と接続され、本実施の形態では縫合されている。腰ゴム14は、胴部を緊締することが可能である。
腰ゴム14は、足を挿入するための胴挿入穴O1を構成する。つまり、本実施の形態の胴挿入穴O1は、腰ゴム14と、左右前身頃11、12及び後身頃13の上端とで構成されている。
【0020】
左右前身頃11、12と後身頃13との境界を含む左右の側部(脇部)には、衝撃を吸収する吸収部材15がそれぞれ配置されている。吸収部材15は、着用者の保護したい領域に対向するように配置されていれば限定されず、着用時に大腿骨頚部を覆う位置に配置されることが好ましい。吸収部材15は、着用者が転倒した時などにクッションになるため、骨折の防止部材として機能する。
【0021】
吸収部材15は、樹脂製の弾性体であり、例えば、シリコーンゲル等のゲル状材料、ポリウレタン樹脂やポリスチレン樹脂を組成とした連通気泡・独立気泡の発泡体などの低反発フォーム材料、超低硬度ゴム材料、ポリカーボネートのような熱可塑性プラスチック等の材料を用いることができる。また、気泡緩衝材などを用いることも可能である。
【0022】
吸収部材15は、20g以上50g未満の重量を有していることが好ましく、20g以上40g以下の重量を有していることがより好ましい。重量が20g以上の場合には、衝撃を吸収する高い性能を発現できる。重量が50g未満の場合には、吸収部材15が重過ぎないので、着用時に吸収部材15がずれることを抑制できるとともに、係止部材17による係止の確実性を高めることができる。重量が40g以下の場合には、吸収部材15のずれをより抑制できるとともに、係止部材17による係止の確実性をより高めることができる。
【0023】
この吸収部材15を収容するために、吸収部材収容部16が設けられている。吸収部材収容部16は、左右前身頃11、12及び後身頃13の裏面側(肌に接する側)における側部に設けられている。吸収部材収容部16は、左右前身頃11、12及び後身頃13と同様の生地で、左右前身頃11、12及び後身頃13に縫着されている。
【0024】
吸収部材収容部16は開口していてもよいが、吸収部材15の移動を抑制する観点から、内部に吸収部材15を収容した状態で吸収部材収容部16の開口が縫着または留具により係止されていることが好ましい。
【0025】
なお、吸収部材収容部16は、省略されてもよい。この場合、吸収部材15は、例えば、左右前身頃11、12及び後身頃13の側部に縫合されるようにして取り付けられる。
【0026】
係止部材17は、左右前身頃11、12及び後身頃13の上端部の一部と他部とを係止可能とする。係止部材17の係止を外した状態の胴挿入穴O1は、係止部材17を係止した状態の胴挿入穴O1よりも大きい。
【0027】
係止部材17は、例えば、面ファスナー、線ファスナー、点ファスナー、ボタン、フック等である。
【0028】
係止部材17は、左右前身頃11、12及び後身頃13の上端部の少なくとも一部に配置されている。なお、係止部材17が配置される左右前身頃11、12及び後身頃13の上端部は、左右前身頃11、12及び後身頃13の上端(上端縁)であってもよく、左右前身頃11、12及び後身頃13の上端から少し離れた位置をさらに含んでいてもよい。
【0029】
係止部材17は、左右前身頃11、12及び後身頃13の上端から下端の全体に渡って配置されていてもよく、図1及び図3に示すように、上端から下端に向けた一部に配置されていてもよい(上端部に配置されていれば、下端には配置されていなくてもよい)。
着用時の快適性の観点から、係止部材17の最下端は、左右前身頃11、12及び後身頃13の上端と下端との中心より上方に位置することが好ましい。また、同様の観点から、係止部材17の最下端は、吸収部材収容部16の上端よりも上方に位置していてもよい。
また、図1及び図3に示すように、係止部材17が上下方向に形成された2つの面ファスナーである場合、着用時に、上から2つ目(最下端)の面ファスナーの上端位置よりも下方に下腹部が位置することが好ましい。この場合、係止部17aと係止部17bとの接着がより容易になり、ヒッププロテクター10の着用がより容易である。さらに着用快適性も向上する。
【0030】
また、係止部材17は、図1及び図3に示すように上端部の一部に配置されていてもよく、上端部全体に配置されていてもよい。つまり、係止部材17は、左右前身頃11、12及び後身頃13の上端である履き口部としての胴挿入穴O1の任意の位置に配置されていてもよい。
係止部材17は、上端の1箇所に配置されていてもよく、複数箇所に配置されていてもよい。
着用時に係止部材17が外れることを抑制する観点からは、左右前身頃11、12に係止部材17が配置されることが好ましい。この場合、係止部材17は、図1及び図3に示すように前身頃の左右方向の中央部に配置されていてもよく、前身頃の左右方向において中央部より側部寄りに配置されていてもよい。着用時に係止部材17が外れることを抑制する観点に加えて、係止部材17の取り外しが容易である観点からは、図1及び図3に示すように、左右前身頃11、12の左右方向の中央部に係止部材17が配置されることが好ましい。
【0031】
図3に示すように、係止部材17は、左右前身頃11、12及び後身頃13の上端部の一部に形成された係止部17aと、左右前身頃11、12及び後身頃13の上端部の他部に形成された係止部17bとを含むことが好ましい。なお、係止部17a、17bは、互いに係止可能である。係止部材17の係止を外した状態、すなわち、係止部17a、17bを互いに係止しない状態の胴挿入穴O1は、係止部材17を係止した状態、すなわち、係止部17a、17bを互いに係止した状態の胴挿入穴O1よりも大きい。
【0032】
なお、係止部材17は、左右前身頃11、12及び後身頃13の上端部に沿って配置された3以上の係止部を含んでいてもよい。この場合は、係止部材17を係止する際に、胴回りにおける係止位置の調整の選択肢が増える。
また、係止部材17は、複数の係止部を含んでいる場合に限定されず、例えば、折り畳んだ面が互いに係止するテープ状の面ファスナーであってもよい。
【0033】
本実施の形態では、係止部材17としての面ファスナーは、図3に示すように、左前身頃11及び右前身頃12の左右方向の中央部における上端から下方に向けて、上下方向の中央部まで、配置されている。
具体的には、図1及び図3に示すように、係止部材17は、左前身頃11の裏面(肌に接する)側に配置された2つの係止部17aと、右前身頃12の表面(露出する)側に配置された2つの係止部17bとを含む。係止部17a、17bのそれぞれは、互いに重なり合うように設けられている。
なお、本実施の形態では、左右前身頃11、12における係止部材17が配置される領域には、伸縮性が低い生地を重ねて縫着し、この伸縮性の低い生地に係止部材17を取り付けている。
【0034】
伸び止め部18は、左右前身頃11、12、及び後身頃13を構成する生地よりも伸縮性が低い生地であり、着用時の動作による吸収部材15の移動を抑制するために設けられている。
なお、伸縮性とは、JIS L 1096 8.14.1 A法(ストリップ法)に準拠して測定される伸度である。
【0035】
伸び止め部18は、吸収部材15よりも前方中央側であって、左右前身頃11、12の上端部から下端部に向けて、延在するようにそれぞれ形成されている。本実施の形態では、伸び止め部18は、吸収部材15の前方中央側であって、上下方向の脇線に沿うようにそれぞれ形成されている。
伸び止め部18は、左右前身頃11、12を主に構成する伸縮性の生地に重ねて形成されてもよく、伸縮性の生地に代えて伸び止め部18を縫合により形成してもよい。伸び止め部18と伸縮性の生地とを重ねて形成する場合には、外観が良好である観点から、伸び止め部18は、裏面(肌に接触する)側に形成されていることが好ましい。
【0036】
伸び止め部18は、例えばマーキゼット、布帛等の織物等の生地を用いることができる。伸び止め部18は、複数の生地を重ねて用いてもよい。
【0037】
伸び止め部18の幅は、例えば10mm以上50mm以下であり、30mm以上40mm以下であることが好ましい。なお、伸び止め部18の幅は、一定であってもよく、一定でなくてもよい。
【0038】
腰部から臀部を被覆する左右前身頃11、12及び後身頃13を構成する生地が伸縮するので、脱着の容易性を確保しつつ、伸び止め部18により不要な伸びが回避されるため、装着した状態で吸収部材15が適正位置でフィットする。仮に着用時に胴部を緊締する腰ゴム14が、着用者によって腰周りに沿って左右方向に大きく引き回された場合であっても、伸縮性生地の上端部から下端部に縫着された伸び止め部18によって、必要以上の引き回しが抑制され、吸収部材15が大腿骨頚部に対向する位置から逸脱することを抑制できる。このため、ヒッププロテクター10の脱着時等の上げ下げ動作や、着用した状態での歩行やリハビリ運動等の生活動作では、吸収部材15が大腿骨頚部等を覆う範囲から逸脱することを抑制し、吸収部材15が小さくても、効果的に保護できる。
【0039】
なお、伸び止め部18は、左右前身頃11、12の上端部から下端部まで延在するように配置されていればよく、上端及び下端を有する場合と、上端及び下端の少なくとも一方を有していない場合とを含む。また、伸び止め部18は、脇線に平行に延在することが好ましいが、湾曲するように延在していてもよい。
【0040】
裾部19は、左右前身頃11、12、及び後身頃13の下端縁の全周と接続され、左右の足を通すことが可能である。裾部19を構成する生地は、左右前身頃11、12及び後身頃13の主な生地よりも伸縮性が低いことが好ましい。この場合、着用時に裾部19が左右の足を緊締するので、裾部19の位置がずれることを抑制できるので、着用時の動作中による吸収部材15のずれを抑制できる。
【0041】
裾部19を構成する生地において、横方向(左右方向)の伸張応力が0.5N以上3.0N以下であることが好ましい。生地の伸張応力がこの範囲内の場合、着用時における裾部19の位置が上方に移動することを効果的に抑制できる。
【0042】
裾部19を構成する生地において、横方向(左右方向)の伸度が200%以上500%以下であることが好ましい。生地の伸度がこの範囲内の場合、着用時における裾部19の位置が上方に移動することを効果的に抑制できる。
【0043】
ここで、上記「伸張応力」及び「伸度」は、左右前身頃11、12及び後身頃13の「伸張応力」及び「伸度」と同様に測定して得られる値である。
【0044】
裾部19は、例えば、レース、パワーネットなどの生地を用いることができる。
【0045】
続いて、ヒッププロテクター10の着脱の動作について説明する。
まず、ヒッププロテクター10を着用する時の動作について説明する。すなわち、係止部材17を外すと、身頃の上端部の一部と他部とが係止されないので、胴挿入穴O1を広げることができる。この状態で胴挿入穴O1に左右の足を挿入し、左右の足挿入穴O2に左右の足をそれぞれ挿入し、ヒッププロテクター10を上方に移動し、左右前身頃11、12及び後身頃13で臀部を覆う。このとき、吸収部材15は、大腿骨頚部などの保護したい領域を覆う。この状態で、係止部材17を係止することにより、身頃の上端部の一部と他部とが係止するので、ヒッププロテクター10が着用者に固定される。
次に、ヒッププロテクター10を脱ぐ時の動作について説明する。すなわち、係止部材17を外すと、身頃の上端部の一部と他部とが係止されないので、胴挿入穴O1を広げることができる。この状態でヒッププロテクター10を下方にずらし、足挿入穴O2から左右の足をそれぞれ抜いて、胴挿入穴O1から左右の足を抜く。
【0046】
以上説明したように、本実施の形態の第一の局面におけるヒッププロテクター10は、少なくとも臀部を包み込むと共に、上端に形成され、かつ胴を通すための胴挿入穴O1と、下端に形成され、かつ足を通すための2つの足挿入穴O2とを有する身頃(左前身頃11、右前身頃12及び後身頃13)と、該身頃に形成されると共に、衝撃を吸収する吸収部材15と、該身頃の上端部の一部と他部とを係止可能とする係止可能な係止部材17とを備えている。
【0047】
本実施の形態の第一の局面におけるヒッププロテクターは、左前身頃11、右前身頃12及び後身頃13の上端部の一部と他部とを係止可能とする係止部材17を備えているので、ヒッププロテクター10の着脱時には、係止部材17の係止を外すことにより、胴挿入穴O1を大きくすることができる。胴挿入穴O1はヒッププロテクター10を着脱する際に足を通す穴であるため、着用者が胴挿入穴O1に足を挿入しやすくなるので、ヒッププロテクター10の着脱を容易にできる。
【0048】
また、本実施の形態の第一の局面におけるヒッププロテクター10は、左前身頃11、右前身頃12及び後身頃13の上端部の一部と他部とを係止可能とする係止部材17を備えているので、着用時には係止部材17により上端部の一部と他部とを係止することによりヒッププロテクター10を固定することができる。このため、ヒッププロテクター10の着用時に着用者が動作しても、係止部材17のずれにより、吸収部材15が移動することを抑制できる。したがって、吸収部材15により、着用者の保護したい領域を保護できるヒッププロテクターを実現できる。
【0049】
本実施の形態の第二の局面におけるヒッププロテクター10は、少なくとも臀部を包み込むと共に、上端に形成され、かつ胴を通すための胴挿入穴O1と、下端に形成され、かつ足を通すための2つの足挿入穴O2とを有する身頃と、該身頃に形成されると共に、衝撃を吸収する吸収部材15と、該身頃の上端部の一部と他部とを係止可能とする係止部材17とを備え、吸収部材15は20g以上50g未満の重量を有している。
【0050】
本発明者は、吸収部材15を有するヒッププロテクター10において、吸収部材15の重量が上記範囲内の場合には、着用時に係止部材17の係止が外れにくいことを見出した。このため、ヒッププロテクター10の着用時に、腰周りでの安定性を高めることができるので、着用者の動作による吸収部材15のずれを抑制できる。したがって、本実施の形態の第二の局面におけるヒッププロテクター10によれば、着脱を容易にすると共に、着用時の吸収部材15の保護機能を高めることができる。
【0051】
また、本実施の形態の第二の局面におけるヒッププロテクター10によれば、吸収部材15の重量が軽いので、ヒッププロテクター10の着用感を向上することもできる。
【0052】
本実施の形態の第三の局面におけるヒッププロテクター10は、少なくとも臀部を包み込むと共に、上端に形成され、かつ胴を通すための胴挿入穴O1と、下端に形成され、かつ足を通すための2つの足挿入穴O2とを有する身頃と、該身頃に形成されると共に、衝撃を吸収する吸収部材15と、該身頃の上端部の一部と他部とを係止可能とする係止部材17とを備え、該身頃を構成する生地において、縦方向の伸張応力が0.7N以上2.0N以下であり、横方向の伸張応力が0.2N以上0.9N以下である。
【0053】
本実施の形態の第四の局面におけるヒッププロテクター10は、少なくとも臀部を包み込むと共に、上端に形成され、かつ胴を通すための胴挿入穴O1と、下端に形成され、かつ足を通すための2つの足挿入穴O2とを有する身頃と、該身頃に形成されると共に、衝撃を吸収する吸収部材15と、該身頃の上端部の一部と他部とを係止可能とする係止部材17とを備え、該身頃を構成する生地において、縦方向の伸度が50%以上200%以下であり、横方向の伸度が300%以上500%以下である。
【0054】
本発明者は、係止部材17によりヒッププロテクター10の着脱の容易性を確保できるので、身頃を構成する生地の伸張応力及び/または伸度を上記のように特定しても、ヒッププロテクター10の着脱を容易にできることを見出した。つまり、係止部材17によりヒッププロテクター10の着脱の容易性を確保できるので、身頃を構成する生地の伸びによりヒッププロテクター10の着脱の容易性を確保する必要性を低減できる。このため、本実施の形態の第三及び第四の局面におけるヒッププロテクター10の身頃を構成する生地の伸びを過度に高める必要がない。身頃を構成する生地の伸びが過度に高い場合には、吸収部材15が動作に伴い移動しやすい。したがって、本実施の形態の第三及び第四の局面におけるヒッププロテクター10によれば、身頃を構成する生地の伸びを上記のように特定することで、吸収部材15のずれを抑制できる。したがって、本実施の形態の第三及び第四の局面におけるヒッププロテクター10は、着脱を容易にするとともに、吸収部材15による着用者の保護機能を高めることができる。
【0055】
また、本実施の形態の第三及び第四の局面におけるヒッププロテクター10によれば、身頃を構成する生地の伸びが適度であるため、ヒッププロテクター10の着用感を向上することもできる。
【0056】
ここで、本実施の形態のヒッププロテクター10は、男性用であっても女性用であっても適用可能であるが、男性用のヒッププロテクターの場合には、左右前身頃11、12に排尿のための開口部がさらに形成されていてもよい。
【0057】
今回開示された実施の形態及び実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した実施の形態及び実施例ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0058】
10 ヒッププロテクター、11 左前身頃、12 右前身頃、13 後身頃、14 腰ゴム、15 吸収部材、16 吸収部材収容部、17 係止部材、17a,17b 係止部、18 伸び止め部、19 裾部、O1 胴挿入穴、O2 足挿入穴。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも臀部を包み込むと共に、上端に形成され、かつ胴を通すための胴挿入穴と、下端に形成され、かつ足を通すための2つの足挿入穴とを有する身頃と、
前記身頃に形成されると共に、衝撃を吸収する吸収部材と、
前記身頃の上端部の一部と他部とを係止可能とする係止部材とを備えた、ヒッププロテクター。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−96042(P2013−96042A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−242264(P2011−242264)
【出願日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【出願人】(000001339)グンゼ株式会社 (919)
【Fターム(参考)】