説明

ヒトの代謝特異体質をinvitroで再現できる単細胞モデルを得る方法

本発明は、レダクターゼ活性を発現する細胞を形質転換するために、ヒトにおいて最大の多様性を示すフェーズIおよびフェーズII薬物生体内変換酵素のセンスおよびアンチセンスmRNAをコードする発現ベクターの使用に基づく。このようなベクターは、他の酵素に影響を及ぼすことなく、個々の酵素発現を調整または改変する(増強または低下させる)ことができる。この単細胞モデルはヒトの代謝特異体質をin vitroで再現することができる。それは創薬研究、特に、新薬の代謝、潜在的特異体質性肝毒性、薬剤相互作用などの研究に適用できる。

【発明の詳細な説明】
【発明の背景】
【0001】
発明の分野
本発明は、ヒトにおいて最大の多様性を示す薬物生体内変換フェーズIおよびIIの酵素のセンスおよびアンチセンスmRNAをコードする発現ベクターによってヒトの代謝特異体質をin vitroで再現できる単細胞モデルを得ることに関する。ウイルス発現ベクターの使用に基づくこのアプローチによれば、組織起源を問わず、細胞種(腫瘍または非腫瘍)も問わず、生体異物に対して活性を有するフェーズIおよび/またはフェーズII生体内変換酵素を発現する能力を付与することができる。上述の生体内変換酵素がCYP酵素である場合、加えて、トランスフェクトされる細胞は十分なシトクロムP450レダクターゼ活性を示す、または発現する必要がある。一般に、ほとんどの一次細胞におけるシトクロムレダクターゼ発現レベルは、本明細書に記載のベクターで形質転換した細胞において好適な酵素活性を可能とするのに十分なものである。しかしながら、CYP酵素をコードするいずれかの配列を含むものによって形質転換される細胞系統が十分なレダクターゼ活性を示さない場合には、2つのアデノウイルスベクター、すなわち、1つは目的のCYP配列を有し、もう1つはCYPレダクターゼの配列を有するものを同時に感染させることができ、その結果、その細胞系統は両酵素の発現が可能となる。その別法として、両遺伝子を同時に細胞に感染させるために、同じアデノウイルス構築物に両遺伝子を包含させるというものもある。
【0002】
発明の背景
ヒトにおける臨床応答の多様性の主因である薬物代謝
薬物代謝はヒトにおける臨床応答の多様性の主因であることが知られている。薬物は、所定の標的組織に対して薬理作用を発揮することに加え、それらが生体内を移動している(吸収、分布および排泄)間に化学的変換を受ける。このプロセスは薬物代謝または生体内変換として知られ、薬物が接触するあらゆる器官または組織で起こり得る。このプロセスは、主としてミクロソームおよび/またはサイトゾル細胞画分に存在し、細胞外空間に及ぶことの少ない、薬物代謝または生体内変換酵素として一般に知られる酵素群によって触媒され、これらにはオキシゲナーゼ、オキシダーゼ、ヒドロラーゼおよび抱合酵素が含まれる(Garattini 1994)。ここで、肝臓は最も関連の深い器官であり、P450(CYP450)シトクロム依存性モノオキシゲナーゼとともに、フラビン−モノオキシゲナーゼ、シトクロムCレダクターゼ、UDP−グルコロニルトランスフェラーゼおよびグルタチオントランスフェラーゼが最も直接的に関与する酵素である(Watkins 1990)。生体異物を代謝する能力の点で次いで重要なのは、腸、肺、皮膚および腎臓である(Krishna 1994)。これらの生体内変換プロセスは、腸管に存在する腐食性微生物によって行われることもある。
【0003】
生体内変換の現象は、薬物のバイオアベイラビリティ、薬理学的応答および毒性の多様性において重要であり、また薬剤使用の改良および開発にとって極めて重要であると理解されている。実際に、生体内変換は最も変動の大きい段階であり、様々な個体に投与した後の血漿薬物レベルに最も大きな影響を及ぼす。薬物が生体内変換される速度ならびに生じる種々の代謝産物の数および存在量(代謝特性)は個体間で変動が大きく、このことは、あるものについては、所定の薬物用量は十分な血漿レベルが得られるので治療上有効であると言えるが、他のものについては、代謝が速くて治療的血漿濃度が得られないので有効でないことを示している。この状況は、薬物代謝に関与する酵素の1つを欠損し、他の集団では十分許容される投与を行った後に予測されるレベルよりもはるかに高い血漿レベルに達する個体においては、いっそう重大である(Meyer 1997)。
【0004】
生体内変換酵素は遺伝子型/表現型の多様性を呈する
ヒト集団の群/個体間の薬物および生体異物代謝における大きな多様性は何度も確認されてきた(Shimada et al 1994)。生体異物による生体内変換酵素の誘導能と遺伝子多型の存在の2つの要因が主としてこれらの違いを担っている。
【0005】
実際に、生体内変換酵素の特徴の1つはそれらが生体異物によって誘導され得ることであり、従って、これらの化合物に曝された結果として酵素の発現が高まる。薬物、環境汚染物質、食品添加物、煙草またはアルコールなどの作用因子は酵素誘導物質として働く(Pelkonen et al 1998)。誘導の「従来の」定義は、適当な刺激に対する応答としての、対応する遺伝子の転写の増強の結果としての酵素の新たな合成を含む。しかしながら、生体異物代謝に関する研究では、この用語は、多くの場合、より広義に、それを引き起こす機構(例えば、転写の増強、mRNAの安定化、翻訳の増強または酵素の安定化など)に関わらず、化学的因子の作用による酵素の量および/または活性の増強を表すのに用いられる(Lin and Lu 1998)。誘導の現象はCYPに限ったものではなく、抱合酵素にも作用する。しかしながら、より深く研究されている誘導プロセスはCYPに作用するものであり、誘導物質は、それらが働き得るCYPイソ酵素に従って分類されている(Pelkonen et al 1998, Lin and Lu 1998)。
【0006】
しかし、生体内変換活性におけるこれらの違いの中には、全てではないにしても、誘導物質の作用に寄与し得るものがある。遺伝的因子、特に遺伝子多型もこの多様性に関与していることも確認されている(Smith et al 1998)。CYPイソ酵素(CYP1A1/2、2A6、2C9、2C19、2D6、2E1)および抱合酵素(N−アセチルトランスフェラーゼおよびグルタチオンS−トランスフェラーゼ)は多型発現する(Blum 1991, Miller et al 1997)。
【0007】
P450の遺伝子多型は、表現型の多様性とともに、薬物代謝における個体差の主因である。これは、突然変異、欠失および/または増幅の結果としての遺伝子変異の存在によるものである。一般に、次の2つの場合がある(Meyer y Zanger 1997):(i)欠陥遺伝子(突然変異したもの、不完全なもの、存在しないなど)を有する対象、そのためにそれらは薬物代謝が劣っている(代謝が遅い);および(ii)機能的遺伝子が倍加または増幅した個体、よって、より高い対処能を示す(超高速代謝)。
【0008】
最も広く研究されている多型は、デブリソキン/スパルテインヒドロキシラーゼ(CYP2D6)(Skoda 1988 ; Kimura et al. 1989; Heim y Meyer 1992)、およびS−メフェニトインヒドロキシラーゼ(CYP2C19)(Wrighton et al. 1993; De Morais 1994; Goldstein et al 1994)のものであり、これらはそれぞれ白色人種集団の7%および5%を超えるものに影響を及ぼし、一般に用いられている30種を超える薬物の代謝に有意な変化をもたらし得る。
【0009】
代謝多様性と特異体質の臨床的関連
肝臓酵素による薬物代謝は、種々の酵素が同じ基質、すなわち薬物をめぐって競合する一連の反応として理解しなければならない。薬物の各酵素に対する親和性(K)およびそれにより触媒される反応の動的指標(VMAX)は、薬物代謝全体を見て、この反応の重要性を決定づける。よって、a)その化合物は種々の酵素の基質であるが、基本的に1つの代謝産物を生じる場合、またはb)その代謝にいくつかの酵素が関与し、その結果、種々の代謝産物が生じる場合の、2つの極端な場合が存在し得る。
【0010】
1つ目の場合では、薬物代謝に関与する酵素の異なる発現が、その代謝速度、ひいてはその薬物動態に違いをもたらす。この現象は、一方では不十分な薬物代謝を招き、その結果として生物体内に異常に高い血漿レベルで化合物が蓄積することになり、他方では代謝が速すぎて、適切な治療レベルおよび所望の薬理効果が得られなくなる。
【0011】
2つ目の場合では、薬物の代謝特性が明らかに異なり、すなわち、生じる代謝産物の量および相対的割合が異なる。これは、投与された化合物ではなく、その代謝産物が薬理上活性であるか、または副作用の原因となるより有毒な代謝産物を異常な量で生じる場合に、薬理学的有効性の低下へとつながる。
【0012】
薬物動態的違い(バイオアベイラビリティ、半減期、代謝速度および代謝程度、代謝特性)の直接的一因となる他、薬力学的違い(治療無効性/過大応答、望ましくない作用)の間接的一因ともなる(Miller et al 1997, Smith et al 1998)CYPの遺伝子型表現型の多様性は、特異体質性毒性の根底にあるものである(Pain 1995)。多くの場合、薬物は、その代謝中に細胞に対してより毒性の高い別の代謝産物を生じたり、他の生体分子と相互作用し得るより反応性の高い化学種へと変換されたり(生体内活性化)することがある。この種の反応は、その集団の実質的部分に関連のある例外であり、種々のCYPの発現レベルが単一の他の個体において大きな重要性を持ち得る(Meyer 1992)。
【0013】
CYP発現の変化による作用を推定するために用いるモデル
薬物のin vivo代謝を忠実に再現できるin vitro系を利用可能とすることは、様々な研究グループにより追求されている目標の1つである。本発明者らの研究グループは、ヒト肝細胞の培養および薬物毒物学的研究におけるそれらの使用を開発した(Bort et al 1996, Castell et al. 1997, Gmez-Lechon et al 1997)。しかしながら、これらのモデルでは、生体内変換酵素の発現に限られた範囲で作用を及ぼすことができるに過ぎない。例えば、酵素誘導物質を用いて、CYPの発現レベルを高めることができない(Donato et al. 1995, Guillen et al. 1998, Li 1997)。しかしながら、メチルコラントレン、フェノバルビタールまたはリファムピシンなどの特定の誘導物質を用いたとしても、それらの1つを、他に作用を及ぼさずに選択的に改変することはできない。
【0014】
可能性のある別法として、ヒトCYPの1つを過剰発現するように遺伝的に改変した細胞系統の使用がある(Bort et al. 1999a)。これらの系統は、特定の酵素が所定の化合物の形成に関与するかどうかを判定する上で有用なツールであるが、生体内変換酵素の発現が薬物の代謝特性および肝細胞の代謝速度にどの程度影響を及ぼすかを見出すことはできない。
【0015】
肝細胞におけるシトクロムP450(CYP450)の発現の随意調整のための可能性のある方法論
理想的なモデルは、単純な様式で、ある酵素の個々の発現を、他に影響を及ぼさずに調整することができるものである。誘導の場合、適用可能なものとして、特定の外因性化合物により、濃度依存的に活性化できるプロモーターと発現ベクターとの併用に基づくいくつかの実験的方法論がある。この場合、プロモーターの後に「同じ位相に(in phase)」クローニングされた異種遺伝子の発現が、アクチベーター濃度に依存して増強または低下される。用いられる種々の系の中でも、次のものに着目される。
【0016】
a)細胞の安定的二重トランスフェクションを要するオペロンTn10a(Tet−onおよびTet−off)に基づく系(Gossen et al 1992, 1995; Resnitzky et al 1994)。2つの変異体:Tet−onおよびTet−offがある。「Tet−on」系では、まず、テトラサイクリンと予め一緒にしていなければTRE−CMVプロモーターと結合できないtTAハイブリッドタンパク質の構成的発現を可能とする「pTet−on」ベクター(G418耐性)で細胞をトランスフェクトする。第二の安定的トランスフェクションは、このTRE−CMVプロモーターとともに発現カセットを含むpTREベクター(ハイグロマイシン耐性)を用いて行う。異所遺伝子はこのベクターにクローニングする。テトラサイクリンの不在下では、この異所遺伝子は発現しない。テトラサイクリンを添加すると、用量依存的に、それはtTAタンパク質と結合し、TRE−CMVプロモーターとの結合が可能となり、ひいては、そのタンパク質の発現が可能となる。その一方で、「Tet−off」系は、まず、tTAハイブリッドタンパク質の構成的発現を可能とするpTet−off(G418耐性)で安定的トランスフェクションを行うことからなる。このタンパク質はTRE−CMVプロモーターと結合し、「同じ位相に」あるタンパク質の発現を誘導することができる。それをテトラサイクリンと一緒にすると、この能力を失う。第二の安定的トランスフェクションは、このTRE−CMVプロモーターとともに発現カセットを含むpTREベクターを用いて行うが、異所遺伝子はここにクローニングする。テトラサイクリンの不在下で、異所遺伝子の構成的な高い発現が得られる。テトラサイクリンを添加すると、用量依存的に、それはtTAタンパク質と結合し、その結合の促進を妨げ、ひいては、発現を停止させる。
【0017】
b)GRE−エクジソン系(No et al 1996):この系もまた、細胞の安定的二重トランスフェクションを要する。まず、ハイブリッドタンパク質VgRXRを構成的に発現するpVgRXRベクター(ゼオシン耐性)を用いる。このタンパク質は、エクジソンが予め結合されていなければ、グルココルチコイドにより調節される5xE/GRE P□HSPと結合できない。次に、pIND(G418耐性)でのトランスフェクションを用い、プロモーター5xE/GREP□HSPを伴う発現カセットに異所遺伝子を導入する。エクジソンの不在下では、異所遺伝子の発現は見られない。エクジソンを添加すると、用量依存的に、それはVgRXRタンパク質と結合し、5xE/GRE P□HSPプロモーターとの結合、ひいては、タンパク質の発現が可能となる。
【0018】
c)メタロチオネインプロモーターに基づく系(Stuart et al. 1984)。このメタロチオネインプロモーターは、Zn2+および他の重金属の用量の関数として、「同じ位相に」ある遺伝子の発現を調節する能力を与える。Zn2+の不在下では、異所遺伝子の発現は見られない。Zn2+を加えると、その遺伝子発現は用量依存的に増強される。
【0019】
これらの発現ベクターの使用については、いくつかの問題がある。第一に、それらには厳密な用量依存性がなく、多くの場合、有るか無いかの法則で挙動し、あるいは完全にブロックできない。さらに、Tet on/Tet offおよびエクジソンの場合、二回の安定的トランスフェクションが必要であり、肝細胞の異例なトランスフェクション耐性の点から、その成功は極めてまれなものとなる。このため、現在のところ、ヒトにおけるin vitro薬物代謝多様性を再現できる有効な細胞モデルは存在しない。
【発明の開示】
【0020】
よって、本発明の一つの態様は、ヒトの代謝特異体質をin vitroで再現できる単細胞モデルを得る方法に関する。この方法は、薬物生体内変換フェーズIおよびIIの酵素のセンスおよびアンチセンスmRNAをコードする発現ベクターの使用に基づくものである。これらの発現ベクターは、好ましくは、ヒトにおいて最大の多様性を与える薬物生体内変換フェーズIおよびIIのセンスおよびアンチセンスmRNAをコードする異所DNA配列を含む。
【0021】
本発明に開示されている方法は、同じ様式で、他の酵素に影響を及ぼすことなく、個々の酵素発現を調整または改変する(増強または低下)ことを可能とする。本発明によって教示されるものなどの単細胞モデルは、創薬研究、特に、薬物代謝、潜在的特異体質性肝毒性、薬剤相互作用などの研究に使用できる。
【0022】
もう1つの態様では、本発明は、薬物生体内変換フェーズIおよびIIの酵素のセンスおよびアンチセンスmRNAをコードする1以上の発現ベクターを含んでなるキットに関する。このキットを用いて、本発明によって提供されるヒトの代謝特異体質をin vitroで再現できる単細胞モデルを得る方法を実施することができる。
【0023】
本発明の一つの態様によれば、ヒトの代謝特異体質をin vitroで再現できる単細胞モデルを得る方法が提供され、該モデルは、ヒトの代謝特異体質を再現するために、随意にデザインされた薬物生体内変換酵素の表現型特性を形質転換細胞に付与する一組の発現ベクターを含んでなるものであり、
a)フェーズI薬物生体内変換酵素およびフェーズII薬物生体内変換酵素の中から選択される薬物生体内変換酵素をコードする異所DNA配列を含んでなる一組の発現ベクター
{ここで、各発現ベクターは、
(i)フェーズIまたはフェーズII薬物生体内変換酵素のセンスmRNA中に転写されるDNA配列(「センスベクター」)、および
(ii)フェーズIまたはフェーズII薬物生体内変換酵素のアンチセンスmRNA中に転写されるDNA配列(「アンチセンスベクター」)
から選択される、異なるフェーズIまたはフェーズII薬物生体内変換酵素をコードする異所DNA配列を含んでなり、
該発現ベクターで形質転換された細胞におけるその異所DNA配列の発現により、形質転換細胞に、フェーズIまたはフェーズII薬物生体内変換酵素の特定の表現型特性が付与される}
を用いて、レダクターゼ活性を発現する細胞を形質転換し、その発現ベクターを用いて、その異所DNA配列を一時的に発現し、フェーズIまたはフェーズII薬物生体内変換酵素の異なる表現型特性を呈する細胞を得ること、
b)センスベクターおよびアンチセンスベクター双方の前記一組の発現ベクターで形質転換され、その結果、所望のフェーズIまたはフェーズII薬物生体内変換酵素の表現型特性のいずれかを発現する細胞から、ヒトの代謝特異体質をin vitroで再現できる単細胞モデルを構築すること
を含んでなる。
【0024】
本発明により提供される方法によれば、レダクターゼ活性を発現する細胞は一組の発現ベクターを用いて形質転換される。このレダクターゼ活性、CYPレダクターゼの存在は、形質転換される細胞において、それは存在しないか、または不十分であり、発現ベクターに含まれるCYPタンパク質は発現されるが、活性であるとはいえ、薬物酸化反応に寄与できないので、不可欠なものである。
【0025】
NADPH−シトクロムP450レダクターゼ活性は、例えば、3.5cmプレートで細胞を培養すること、および密集度80%に達した際にそれらを用いることを含むアッセイにより、細胞において容易に測定することができる。1mlの20mMリン酸緩衝液(PBS、pH7.4)中、スパチュラを用いてプレートから細胞を剥がし、10〜20秒間音波処理を施し、得られたホモジナイズ物を4℃、9,000gで20分間遠心分離する。この上清(S−9画分)を用いて酵素活性を評価する。このために、S−9画分タンパク質の50μgアリコートを取り、0.1μM EDTA、50μM青酸カリウム、0.05μMシトクロムcおよび0.1μM NADPHを含有する0.1Mリン酸カリウムバッファー(pH7.2)1ml中でインキュベートする。シトクロムcの還元率を分光光度計により550nmで測定する。モル吸光係数20×10M×cm−1を用いて酵素活性を算出し、結果を細胞タンパク質1mg当たりの毎分のシトクロムc還元量として表す。
【0026】
実際に、腫瘍細胞などのヒトまたは動物細胞など、レダクターゼ活性を発現する細胞はいずれでも、本発明による方法を実行するために使用可能である。好ましくは、該細胞は肝細胞、上皮細胞、内皮細胞および胃腸型CaCO−2起源の細胞の中から選択されるヒト細胞である。特定の実施態様では、このヒト細胞は肝細胞またはHepG21細胞である。もう1つの特定の実施態様では、レダクターゼ活性を発現する細胞は、フェーズIまたはフェーズII薬物生体内変換酵素を欠き、本発明の1以上の発現ベクターの組合せに感染し、例えば、正常または単一の表現型を有する肝細胞と同じ代謝能を有する細胞を生じるような特定の濃度でこれらの各々を含む、腫瘍細胞をはじめとするヒトまたは動物細胞である。
【0027】
レダクターゼ活性を発現するこれらの細胞を形質転換させるのに用いられる発現ベクター(以下「本発明による発現ベクター」という)は、これまでに定義されているフェーズI薬物生体内変換酵素およびフェーズII薬物生体内変換酵素の中から選択される薬物生体内変換酵素をコードする異所DNA配列を含んでなる。フェーズIおよびフェーズII薬物生体内変換酵素の例としては、種々のオキシゲナーゼ、オキシダーゼ、ヒドロラーゼおよび抱合酵素が挙げられ、中でも、CYP450依存性モノオキシゲナーゼ、フラビン−モノオキシゲナーゼ、スルホ−トランスフェラーゼ、シトクロムCレダクターゼ、UDP−グルコロニルトランスフェラーゼ、エポキシドヒドロラーゼおよびグルタチオントランスフェラーゼが薬物生体内変換に関与するところの大きい酵素である。
【0028】
一般に、本発明による各発現ベクターは、上記で定義された配列(i)(センス)および(ii)(アンチセンス)の中から選択される、異なるフェーズIまたはフェーズII薬物生体内変換酵素をコードする異所DNA配列を含んでなる。フェーズIまたはフェーズII薬物生体内変換酵素をコードする異所DNA配列をいずれのものでも、本発明による発現ベクターの構築に使用可能である。しかしながら、特定の実施態様では、フェーズIまたはフェーズII薬物生体内変換酵素をコードする異所DNA配列は、CYP 1A1、CYP 1A2、CYP 2A6、CYP 2B6、CYP 2C8、CYP 2C9、CYP 2C18、CYP 2C19、CYP 2D6、CYP 2E1、CYP 3A4、CYP 3A5またはGST(A1)などのCYP450イソ酵素のセンスmRNAまたはアンチセンスmRNA中に転写されるDNA配列、ならびに薬物生体内変換に関与するオキシゲナーゼ、オキシダーゼ、ヒドロラーゼおよび抱合酵素などの酵素のセンスmRNAまたはアンチセンスmRNA中に転写されるDNA配列、例えば、フラビン−モノオキシゲナーゼ、スルホ−トランスフェラーゼ、シトクロムCレダクターゼ、UDP−グルコロニルトランスフェラーゼ、エポキシドヒドロラーゼまたはグルタチオントランスフェラーゼのセンスmRNAまたはアンチセンスmRNA中に転写されるDNA配列からなる群から選択される。本発明による発現ベクターで形質転換された細胞におけるこれらの異所DNA配列の発現は、それらの細胞に、フェーズIまたはフェーズII薬物生体内変換酵素の特定の表現型特性を付与する。
【0029】
特定の実施態様では、フェーズIまたはフェーズII薬物生体内変換酵素をコードする該異所DNA配列は、フェーズIまたはフェーズII薬物生体内変換酵素のセンスmRNA中に転写されるDNA配列である。
【0030】
もう1つの特定の実施態様では、フェーズIまたはフェーズII薬物生体内変換酵素をコードする該DNA配列は、フェーズIまたはフェーズII薬物生体内変換酵素のアンチセンスmRNA中に転写されるDNA配列である。
【0031】
アンチセンス技術を用いる遺伝子発現調節方法論は主として、その配列が遮断しようとする天然mRNAの配列と相補的なRNA分子またはオリゴデオキシヌクレオチドを細胞に挿入することからなる。これらの分子の特異的かつ選択的結合は、そのメッセンジャーの翻訳および対応するタンパク質の合成を妨げる(Melton 1985, Stein and Cheng 1993, Branch 1998)。この最終的な結果は、選択遺伝子の発現の標的化された不活性化である。この方法論の成功は、細胞内部にアンチセンス分子を挿入する効率的な系を有すること、その分子が標的mRNAとは特異的に相互作用するが、他のmRNAとは相互作用しないこと、および細胞分解系に耐性があることなど、達成が技術的に困難な種々の要因にかかっている。最もよく用いられる2つの手法は、逆方向にクローニングされたcDNAを含む発現ベクターの使用(Melton 1995)(このベクターが細胞内にトランスフェクトされると、その相補的天然RNAとの特異的塩基対形成によって会合する非コードRNAまたはRNA断片(センスを用いない)を発現する)、またはその代わりに、細胞内分解に対して耐性となるように改変したオリゴデオキシヌクレオチドであるオリゴホスホチオレートの使用(Stein and Cheng 1993)を含む。それは細胞内に入り、食作用または飲作用により溶解される。標的mRNAとの特異的結合は予測がより困難であり、従って、特定のmRNAを遮断するのに理想的なオリゴは経験的に決定するしかない[この方法論の成功は、通常のトランスフェクション手順の効率が極めて低い(10%)ことにより極めて限られたものとなっている]。
【0032】
本発明により提供される方法の特定の実施態様では、細胞内のアンチセンスmRNAの供給源として逆方向にクローニングされたcDNAのキャリアーとして使用できる組換えアデノウイルスを構築した。トランスフェクション効率は、約100%と極めて高いことから、この「アンチセンス」分子はほとんど全ての標的細胞において極めて効率的な様式で発現する。他方で、従来のトランスフェクション技術に極めて耐性の高い肝細胞において感染プロセスが簡単なことから、これが選択モデルとなる。提案されたこの方法論の実行可能性は、肝転写因子HNF4のアンチセンスmRNAをコードするアデノウイルスを開発している発明者らが得た最近の結果によって裏付けられる。ヒト肝細胞をこのアンチセンスアデノウイルスでトランスフェクションすると、ウエスタンブロット分析によって示されるように、72時間後に転写因子HNF4の完全な消失が起こる。HNF4とほとんど相同なこのタンパク質は、RXRαとして知られる同じファミリーの別の転写因子である。このタンパク質は変化せず、それにより、アンチセンス遮断が完全に特異的であることが示される。この転写因子の標的化された不活性化は、ある種のCYP、特にCYP2E1の発現の欠損をもたらす。
【0033】
細胞に外因性のDNAを移入するためのほとんどの発現系は、本発明による発現ベクターの構築に使用できる。特定の実施態様では、本発明による発現ベクターは、ウイルスベクター、リポソームまたはミセルビヒクル、例えば、遺伝子療法に有用なリポソームまたはミセルビヒクルの中から選択される。一般に、本発明による方法を実施化するために用いる細胞に感染することが可能なウイルスまたはウイルスベクターのいずれも、本発明による発現ベクターを構築するために使用できる。有利には、発現ベクターは、形質転換細胞において高効率かつ迅速な様式で導入遺伝子を発現できるものを選択する。特定の実施態様では、このウイルスは天然もしくは組換えアデノウイルス、またはその変異体、例えばタイプ5サブグループCアデノウイルスである。
【0034】
このアデノウイルスは、マストアデノウイルス(Mastadenoviridae)属の非発癌ウイルスであり、その遺伝情報は100mu(map units;1mu=360pb)に分けられる36キロベース(kb)の線状二本鎖DNAからなる。その複製サイクルに関する情報は、Greber 1993、Ginsberg 1984およびGrand 1987により提供されている。
【0035】
アデノウイルスは、肝細胞をはじめとする多くの細胞種に容易に感染するので、哺乳類細胞に外因性の遺伝子を移入するのに有用なツールである。具体的には、アデノウイルスは肝細胞トランスフェクションに極めて高い効率(95%以上)を示すというさらなる利点を有する優れた発現ベクターである。さらに、その発現の程度は感染させるウイルスの量に比例し、最後に、この移入遺伝子の発現は他の肝細胞遺伝子の発現に影響を及ぼさない(Castell et al. 1998)。
【0036】
アデノウイルスのDNAにおける異所遺伝子の導入は、(i)そのウイルスは38kbより大きなものは封入できないこと(Jones 1978およびGhosh Choudhury 1987);および(ii)ユニークな制限部位が数少ないことから、その大きなサイズがクローニングの妨げとなる、という2つの要因によって制限される。これらの問題を解決するためにいくつかの方法論が用いられており、そのうち最も広く用いられているものは、McGrory et al. 1988により開発されたもの、すなわち、相同組換えである。要するに、この手順は、不完全なアデノウイルス配列の相同断片を含む、2つのプラスミドpJM17およびpACCMVの使用から本質的になる。その相同の性質は2つのプラスミドの組換えを可能とし、発現されるはずの遺伝子が存在するゲノム内で欠陥(非複製)ウイルスを生じる。McGrory et al. 1988によって開発されたプラスミドpJM17は、その遺伝子座Xbalの3.7muにプラスミドpBRX(ori、ampおよびtet)を有する5型アデノウイルスdl309(Jones 1978)の完全な環状ゲノムを含む大きなプラスミド(40.3kb)である。pJM17は感染力のあるウイルスを生成するのに必要な総ての情報を含むが、その大きさは封入サイズを超えているので、新たなビリオンを生成できない。組換え後の生成されるアデノウイルスが複製可能であるためには、5型アデノウイルスのE1A領域を発現する腎起源293(ATCC CRL 1573)のヒト胎児細胞系統で同時トランスフェクションが行われる(Graham 1977)。このようにすれば、宿主細胞による、トランスで作用する転写因子であるタンパク質E1Aの供給が、その内部での組換えウイルスの増幅を可能とする。その293系統の複製のためには、この組換えウイルスはcys内のE1の特定の部分領域も必要とすることに注意しなければならない。0〜1.3muの間、および9.7mu〜E1末端の間のある部分領域がある。0〜0.28muの間に複製起点を含むITR(内部末端反復配列(internal terminal repeats))があり、0.54〜0.83の間にパッケージングシグナル(Hearing 1987)があり、最後に、9.7mu以降にタンパク質IXの遺伝子周囲のセグメントがある。この理由のため、これらの領域はpACCMV内に維持され、そこでは、E1領域から3kbだけが除去され、293において正常なウイルス複製を妨げることなく、この発現モジュールのための余地が設けられている。
【0037】
実施例1は、CYP 1A1、CYP 1A2、CYP 2A6、CYP 2B6、CYP 2C8、CYP 2C9、CYP 2C18、CYP 2C19、CYP 2D6、CYP 2E1、CYP 3A4、CYP 3A5またはGST(A1)などのCYP450イソ酵素のセンスmRNAまたはアンチセンスmRNA中に転写される異所DNA配列を含む組換えアデノウイルスをどのようにして得るかを示す。これらの組換えアデノウイルスを用い、レダクターゼ活性を発現する細胞、例えば、HepG21などの肝起源細胞を形質転換(感染またはトランスフェクト)することができる。
【0038】
本発明により提供される方法の1つの特徴は、これらの細胞を形質転換するのに用いる本発明による発現ベクターの濃度を変更するだけで特定の表現型を有する単細胞モデルが作製されるという汎用性にある。実際に、例えば、細胞の形質転換に用いる本発明による発現ベクターの種類と量を単に変更するだけで、10 3A4および1 2D6を用いた場合の肝臓における薬物代謝を1 3A4および10 2D6を用いた場合と比較可能とするモデルを得ることができる。本発明者らが行った試験では、このモデルの応答は実際に直線的であり、すなわち、本発明による発現ベクターの量が多いほど、限界まで(細胞に細胞変性作用が見られるまで)、より高い活性を発現することが明らかとなった。いくつかの試験で、使用する本発明による発現ベクターにもよるが、約300CFU(コロニー形成単位)まで、これらのベクターで形質転換された細胞(ヒト肝細胞)の他の機能に有意な変化はないことが明らかになっている。
【0039】
本発明による発現ベクターによる細胞の形質転換は、用いる本発明による発現ベクターの他の因子にもよるが、感染またはトランスフェクションなどの、細胞に対する外因性のDNAの移入のための常法により行うことができる。特定の実施態様では、使用する本発明による発現ベクターは組換えアデノウイルスであり、細胞は感染により形質転換できるが、そのためには、細胞は密集度70%でなければならない。要するに、細胞を維持する培養培地を吸引し、基本培地または生理食塩水バッファーで洗浄する(各2または3mlで2回の洗浄を行わなければならない)。ウイルスの使用量は、細胞による発現が望まれる活性量および細胞の感受性によって異なり得る。濃度が1〜50MOI(多重感染度)に達するまで、アデノウイルスを培養培地で希釈する。細胞の維持のために用いる培養量はプレートの大きさによって異なり、最終感染量は最初の容量の1/4に減る。インキュベーション時間は37℃で1時間30分〜2時間の間である。感染細胞における導入遺伝子の活性は、24時間後に検出可能となり、使用する細胞にもよるが、48時間後に最大に達する。特定の細胞が収容するウイルスの最大総量には限界がある。この量は、明らかな細胞傷害作用(形態、細胞機能)が見られるまで、ウイルス量を高めることで判定される。これにより、特定の細胞が許容するウイルス粒子の最大数を確定することができる。
【0040】
本発明による発現ベクターを用いて、レダクターゼ活性を発現する細胞を一時的に形質転換することができる。この一時的形質転換は、特にヒトのCYP系に特徴的な個体多様性(代謝特異体質)を制限するため、フェーズIおよびフェーズII薬物生体内変換酵素の所望の発現バランスが得られるよう、先験的にデザインされる。本発明による種々の発現ベクター(例えば、あるものはフェーズIまたはフェーズII薬物生体内変換酵素を発現でき、またあるものはそれらのアンチセンスmRNAを発現できる)の様々な量を組み合わせて用いることで必要な調整が可能となり、各細胞系が許容するウイルス量を限界とみなし、先験的に確立される。
【0041】
よって、本発明は、該ベクターによって形質転換されたレダクターゼ活性を発現する細胞においてフェーズIまたはフェーズII薬物生体内変換酵素の各々を制御された様式で調整する(増強する、または低下させる)、センスおよびアンチセンス双方の発現ベクターの使用に基づく第一のアプローチであり、その結果、これらの細胞は特定の表現型を随意に再現でき、該細胞に制御した量の発現ベクターを加えるだけで、単純な様式で、考えられるいずれのヒト表現型特性のin vitroモデルでも提供できる。
【0042】
薬剤としての使用において生じる無視できない問題(予測できない望ましくない作用、同じ化合物量での治療活性の過不足など)は、ヒトが薬物を同じようには代謝しないということによるところが大きい。よって、同じ用量でも個体が異なれば異なる血漿レベルに至ることがあり、かつ/または人によっては異なる代謝産物を生じる代謝が起こることがある。多くの場合では、特定の生体内変換酵素の存在量が多いか、少ないために、生じた肝臓代謝産物(またはそれらの相対的割合)は著しく異なる。場合によっては、その作用が毒性の低い代謝産物の産生をもたらす低レベルの酵素が、ある個体で発現が乏しく、その結果、この個体の薬物代謝が、他の個体では少数派である、はるかに毒性の高い代謝産物を産生し得る別の経路に従う。他方で、ある酵素の存在量が異常に高い場合があり、これがより毒性の高い代謝産物の産生をもたらす。これらの違い(代謝特異体質)は新薬となる分子を作出するという困難な課題においてさらなるリスク因子となる。この理由は、最初の臨床試験で有害な作用を示さなかった化合物が、代謝の特異性を有する個体を含むことを考慮して、それらの使用をより大きな集団に拡大した際に、開発の財政的失敗を招きかねない特異体質性毒性をもたらすことがある、という単純なものである。
【0043】
本発明は、ある細胞において、新しい化合物の一般化された臨床使用にその特異性が関連し得るかどうかを研究するために、ヒトでみられるような、ヒト細胞の種々の薬物生体内変換酵素のレベルを随意に操作することを可能とする。
【0044】
よって、別の態様では、本発明は、腫瘍細胞をはじめとするヒトおよび動物細胞などの細胞において、ヒトに見られる代謝多様性を再現することを目的としたこれらの細胞の操作における、フェーズIまたはフェーズII薬物生体内変換酵素の発現ベクター(センスまたはアンチセンス)の使用に関する。このようなベクターは、他のものに影響を及ぼすことなく、ある酵素の発現を随意に改変することができる。このようにすれば、それらに各酵素を所望の量で発現させるように細胞を操作することができ(ウイルスベクターは単独でも組み合わせても使用できるので)、それにより、ヒトに見られる多様性をシミュレーションすることができる。本発明では、ヒトに用いる前に、新薬を投与した際の、ある個体に関する種々の発現レベルの薬物生体内変換酵素の可能性のある関連性を研究および予測し、それにより、ヒトに存在する多様性をin vitroでシミュレーションする、または再現することを可能とする実験的単細胞モデルを構築することができる。さらに、本発明は、開発過程で薬剤の代謝、薬物動態および潜在的肝毒性に対する薬物生体内変換酵素の種々の発現の結果を予測することを可能とする。
【0045】
もう1つの態様では、本発明は、フェーズIおよびフェーズII薬物生体内変換酵素のセンスおよびアンチセンスmRNAをコードする1以上の発現ベクターを含んでなるキットに関する。このキットは、本発明によって提供されるヒトの代謝特異体質をin vitroで再現できる単細胞モデルを得る方法を実施するために使用できる。
【実施例】
【0046】
実施例1:組換えアデノウイルスの作製
固有のヒト肝臓バンクからの種々のヒト生体内変換酵素のクローニング
ヒトCYP生体内変換酵素1A1、CYP 1A2、CYP 2A6、CYP 2B6、CYP 2C8、CYP 2C9、CYP 2C18、CYP 2C19、CYP 2D6、CYP 2E1、CYP 3A4、CYP 3A5またはGST(A1)のクローニングに用いる方法論は、このような酵素をコードする配列をフランキングするプライマーオリゴヌクレオチドを用いて、ヒト肝臓cDNAライブラリーにおいてhigh−fidelity RT−PCRを行うことである。
【0047】
逆転写酵素(RT)の反応混合物は、20μl 1×逆転写酵素バッファー、DTT 10mM、dNTP 500μM、3μMプライマーオリゴd(T)、14、60U Rnase OUTおよび250U Rtase Hからなった。この混合物に1μgの全RNAを加えた。42℃で60分間反応の行った後、95℃で5分間加熱し、氷中で急速冷却した。このcDNAを使用まで−20℃で保存した。
【0048】
使用プライマーオリゴヌクレオチド
各CYPに関してそれらのコード配列をフランキングする2対のプライマーオリゴヌクレオチドをデザインした。各プライマーは、その5’末端に、特定の酵素の制限部位に相当する付加的配列を含み、それらをpACCMVベクターにクローニングする[表1参照]。
【0049】
【表1】

【0050】
High Fidelity PCR
新たに合成したcDNA従来のPCRを行う。このPCR反応は次の反応混合物:3μlのcDNA(1/10RT)、3μl バッファー(10×)、50μM dNTP、全1UのHigh Fidelity(Roche)、6μM プライマーオリゴヌクレオチド、および水(最終量30μlまで)とともにサーモサイクラーにて行った。サーモサイクラーで用いるプログラムは、
A)初期変性:95℃3分;
B)下記を4サイクル:
a.サイクルによる変性:95℃40秒
b.環化:58℃45秒(各プライマーで異なる)
c.最終伸張:74℃5分;
C)下記を30サイクル(より特異的):
a.サイクルによる変性:95℃40秒
b.環化62℃45秒(各プライマーで異なる)
c.その後、最終伸張74℃5分。
【0051】
PCRにより増幅された産物をカラムクロマトグラフィー(高純度PCR産物精製キット)で精製し、TEバッファーで溶出した。次に、このPCR産物を1.5%アガロースゲルでの電気泳動により分析し、臭化エチジウムで可視化し、増幅されたcDNAの大きさを確認した。
【0052】
クローニングされた遺伝子の同定。制限酵素による消化。アガロースゲル。分離。
クローニング前に、DNAを、製造者に推奨されているバッファー中、制限酵素とともにインキュベートした。標準的なインキュベーション混合物は、2単位の酵素/DNAμg、10×バッファーおよび蒸留水を含まなければならない。場合により、100μg/mlのBSA、または25℃でのインキュベーションを必要とする酵素もある。
【0053】
pACCCMV組換えプラスミドの作製
apACCMVベクター(ベクター)中へのcDNA断片(挿入配列)のサブクローニングは、同じ制限酵素を用いた付着末端の連結によって行った。この方法論では、センスおよびアンチセンス方向のクローンが生じる。それ自体の連結の他、再環化を防ぐために、予めベクター末端を脱リン酸化する工程を含み、そのために先の試験管には2μlのCIP(20〜30U/;Gibco BRLカタログ番号18009019)を加え、37℃で20分間インキュベートした。次に、さらに2μlのCIPを加え、これを56℃で20分間インキュベートした。酵素を不活性化し、反応を停止させるため、それを75℃で10分間インキュベートした。
【0054】
このベクターと挿入配列は、連結の障害となり得る残留ヌクレオチド、酵素およびバッファーを除去するために、連結前に精製しなければならない。このため、Geneacleanキット(Bio 101カタログ番号1001−200)を用い、TAE−アガロースゲル(Tris酢酸40mMおよびEDTA 2mM中、1%アガロース)のバンドを精製した。
【0055】
両バンドを精製した後、連結のため、次の反応混合物を調製した:
【表2】

【0056】
並行して、挿入配列を含まない対照混合物を調製した。周囲温度で2時間競合させた後、細菌をそれらの連結混合物で形質転換した。
【0057】
付着末端の連結は、次の反応混合物を用いて行った:
【表3】

【0058】
並行して、挿入配列を含まない対照混合物を調製した。周囲温度で2時間競合させた後、細菌をそれらの連結混合物で形質転換した。
【0059】
細菌におけるプラスミドの増幅
冷CaC1溶液で予め処理しておいた細菌を用い、それらを競合させ、プラスミドDNAを受容させるように短時間42℃に置いた。このため、競合細菌100μlに0.1〜1μgのcDNAを加え(連結)、その混合物を氷中に30分間置き、これを1mlのS.O.C.培地(Gibco BRLカタログ番号15544−0189)中でインキュベートした。次に、100μlを、アンピシリン(100μg/ml)を含むLB寒天培地に移し、37℃で一晩置いた。
【0060】
この後、細菌を増殖させ、それらを用い、以下に記載する手順によりプラスミドDNAを増幅および精製した。形質転換した細菌の単離コロニーを、アンピシリンを含むLB培地2〜5ml中で増殖させる。次に、それを8,000rpmで1分間遠心分離し、沈殿を溶解バッファー(グルコース50mM、Tris−HCl 25mM、pH8.0、EDTAおよび4mg/mlのライソザイム)に再懸濁する。この懸濁液を5分間氷上に置き、10,000rpmで5分間遠心分離する。上清を清浄な試験管に移し、500μlのイソプロパノールを加え、15000rpmで10分間遠心分離する。上清を除去し、残渣を70%エタノール(v/v)で洗浄し、乾燥させ、適当な量のTE pH7.5(Tris 10mM、EDTA 1mM)に再懸濁する。
【0061】
制限酵素を用いて適切なコロニーを確認した後、残りの培養物を250mlのフラスコに移し、一晩増殖させてプラスミドを増幅させる。
【0062】
従来のキットを用い、この細菌培養物のプラスミドDNAを精製した(250〜500mlの間)。
【0063】
アデノウイルスの作製。293細胞におけるpJM17プラスミドとpAC−CYPプラスミドの同時トランスフェクション。
プラスミドの同時トランスフェクションは、相同組換えによって生じた組換えウイルスが複製可能な293細胞系統で行う。
【0064】
これらのプラスミドの同時トランスフェクションは、種々の割合を用い、リン酸カルシウム法によって行った。このため、6cm径の数個のプレートに密集度50〜60%で接種した。翌日、種々のプラスミドおよび/またはキャリアーならびに対照を含有する試験管を調製し、各試験管の内容物に500μlのHBS 2X(pH7.15に調整したHepes 50mM、NaCl 140mM、KCl 5mM、グルコース10mMおよびNaHP0 1〜4mM)に滴下し、周囲温度で20分間置いた。次に、それを解離しないように細胞単層上に静かに注ぎ、周囲温度で15分間置き、血清を含む4mlの培地を加え、オーブン内で37℃にて4〜6時間インキュベートし、プレートから培地を除去し、血清または抗生物質を含まない培地1mlを15%グリセロールとともに加え、90秒経過させ、5ml PBSを加える。次に、PBSで2回洗浄してグリセロールを完全に除去し、5mlの培地を加え、これをオーブン内で保存し、細胞溶解が見られるまで、3〜4日ごとに培地を交換する。
【0065】
組換えプロセスを行った後、ウイルスを293細胞内で複製し、それらの内部で溶解を成し遂げる(2〜6日)。次に、ウイルスをクローニングするが、そのために半固形寒天で覆ったプレート内で、クローニングするDMEMにてウイルスの1/10〜1/100連続希釈液を調製し、各希釈液0.5mlを、293細胞を含む6cm径プレートに加え、これらの細胞をオーブン内で37℃にて1時間、15分ごとに振盪しながらインキュベートする。次に、培地を除去し、その単層を、45℃に予熱した寒天1.3%MEM 2×(1:1v/v)の混合物6mlで覆い、オーブン内で37℃にてインキュベートする。7〜9日後、はげたパッチ、すなわち、293細胞単層が変化した領域が見られる。これらのはげたパッチを選択し、293細胞の新しいプレートで増殖させる。
【0066】
PEG8000沈殿法によるアデノウイルスの精製
CsCl勾配(方法A)、あるいは、同様の結果をもたらす簡単な方法としてポリエチレングリコール(方法B)を用いた遠心分離により、純粋なウイルス原液を調製した。
【0067】
方法A
293細胞が溶解した際、上清を取り、MgCl 1mMおよび0.1%Nonidet p40を含むPBSに回収する。
【0068】
方法B
この場合には、細胞はすでに溶解を受けているので、培地を除去することはできない。Nonidet p40を、0.1%となるまで加える。次に、それを周囲温度で10分間振盪し、20,000gで10分間遠心分離する。上清を清浄な試験管に移し、0.5Vの20%PEG−8000/NaCl 2.5Mを加え、4℃で1時間振盪しながらインキュベートする。次に12,000gで10分間遠心分離し、その沈殿を、次のバッファー:NaCl 135mM、KCl 5mM、MgCl 1mMおよびTris−HCl 10mM pH7.4中、最初の培地量の1/100〜1/50で再懸濁する。次に、それを同じバッファーを用い、4℃で一晩透析し、0.22μmフィルターで濾過してその原液を除菌する。最後にアリコートとし、100μg/mlのBSAとともに−70℃で保存した。
【0069】
上記の手順に従い、CYP生体内変換酵素CYP 1A1、CYP 1A2、CYP 2A6、CYP 2B6、CYP 2C8、CYP 2C9、CYP 2C18、CYP 2C19、CYP 2D6、CYP 2E1、CYP 3A4、CYP 3A5またはGST(A1)をコードするDNA配列を含む組換えアデノウイルスを作製した。これらの組換えアデノウイルス(本発明による発現ベクター)は、接頭辞「Ad」(アデノウイルス)に酵素名を続け、すなわち、それぞれAd−1A1、Ad−1A2、Ad−2A6、Ad−2B6、Ad−2C8、Ad−2C9、Ad−2C18、Ad−2C19、Ad−2D6、Ad−2E1、Ad−3A4、Ad−3A5およびAd−GST(A1)と呼称した。
【0070】
実施例2:組換えアデノウイルスによる、Cレダクターゼシトクロム活性を発現する細胞の形質転換
実施例1で得られた組換えアデノウイルス[Ad−1A1、Ad−1A2、Ad−2A6、Ad−2B6、Ad−2C8、Ad−2C9、Ad−2C18、Ad−2C19、Ad−2D6、Ad−2E1、Ad−3A4、Ad−3A5およびAd−GST(A1)]を用い、感染によりHepG21細胞を形質転換した。
【0071】
密集度70%でHepG21細胞の培養物を含む培養培地を吸引した。細胞を各2〜3mlの基本培地または生理食塩水バッファーで2回洗浄した。広域のヒト代謝多様性を包含する単細胞モデルを作製するためのウイルス使用量は広範に異なった。1〜50MOIの濃度に達するまでアデノウイルスを培養培地で希釈した。細胞を維持するための培地の使用量はプレートサイズによって異なり、最終感染量は通常量の1/4に減る。インキュベーション時間は37℃で1時間30分〜2時間維持した。感染細胞における導入遺伝子の活性は、用いる細胞にもよるが、24後に検出可能となり、48時間後に最大に達する。特定の細胞が収容するウイルスの最大総量には限界がある。この量は、明らかな細胞傷害作用(形態、細胞機能)が見られるまで、ウイルス量を高めることで判定される。これにより、特定の細胞が許容するウイルス粒子の最大数を確定することができた。
【0072】
図2および3は、薬物代謝に関連のあるヒト酵素の発現を随意にいかにして改変することができるかという具体例を示す。特に、図2は、Ad−2E1の種々のクローンを感染させたHepG21細胞におけるmRNAの増加を示し、一方、図3は、種々の濃度のAd−3A4を感染させ、テストステロンとともにインキュベートしたHepG21細胞における活性の上昇を示す。
【0073】
参照文献
【表4】







【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】アンチセンスRNAによるHNF4の発現の遮断およびCYP2E1の抑制を示す。
【図2】Ad−2E1として識別される組換えアデノウイルスの種々のクローンを感染させたHepG21細胞におけるmRNAの増強を示す棒グラフ。
【図3】Ad−3A4として識別され、テストステロンとともにインキュベートした種々の濃度の組換えアデノウイルスを感染させたHepG21細胞における活性の増強を示すグラフ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトの代謝特異体質をin vitroで再現できる単細胞モデルを得る方法であって、該モデルが、ヒトの代謝特異体質を再現するために、随意にデザインされた薬物生体内変換酵素の表現型特性を形質転換細胞に付与する一組の発現ベクターを含んでなるものであり、
a)フェーズI薬物生体内変換酵素およびフェーズII薬物生体内変換酵素の中から選択される薬物生体内変換酵素をコードする異所DNA配列を含んでなる一組の発現ベクター
{ここで、各発現ベクターは、
(i)フェーズIまたはフェーズII薬物生体内変換酵素のセンスmRNA中に転写されるDNA配列(「センスベクター」)、および
(ii)フェーズIまたはフェーズII薬物生体内変換酵素のアンチセンスmRNA中に転写されるDNA配列(「アンチセンスベクター」)
の中から選択される、異なるフェーズIまたはフェーズII薬物生体内変換酵素をコードする異所DNA配列を含んでなり、
上述の発現ベクターの1以上で形質転換された細胞におけるその異所DNA配列の発現により、形質転換細胞に、フェーズIまたはフェーズII薬物生体内変換酵素の特異的表現型特性が付与される}
を用いて、レダクターゼ活性を発現する細胞を形質転換し、その発現ベクターを用いて、その異所DNA配列を一時的に発現し、フェーズIまたはフェーズII薬物生体内変換酵素の異なる表現型特性を呈する細胞を得ること、および
b)センスベクターおよびアンチセンスベクター双方の前記一組の発現ベクターで形質転換され、その結果、所望のフェーズIまたはフェーズII薬物生体内変換酵素の表現型特性のいずれかを発現する細胞から、ヒトの代謝特異体質をin vitroで再現できる単細胞モデルを構築すること
を含んでなる、方法。
【請求項2】
レダクターゼ活性を発現する前記細胞が、腫瘍細胞をはじめとするヒトまたは動物細胞である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
レダクターゼ活性を発現する前記細胞が、肝細胞、上皮細胞、内皮細胞および胃腸型CaCO−2細胞の中から選択されるヒト細胞である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記フェーズIおよびフェーズII薬物生体内変換酵素が、オキシゲナーゼ、オキシダーゼ、ヒドロラーゼおよび抱合酵素の中から選択されるものである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記フェーズIおよびフェーズII薬物生体内変換酵素が、CYP450依存性モノオキシゲナーゼ、フラビン−モノオキシゲナーゼ、スルホ−トランスフェラーゼ、シトクロムCレダクターゼ、UDP−グルコロニルトランスフェラーゼ、エポキシドヒドロラーゼおよびグルタチオントランスフェラーゼの中から選択されるものである、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
フェーズIまたはフェーズII薬物生体内変換酵素をコードする前記異所DNA配列が、CYP450イソ酵素のセンスmRNAまたはアンチセンスmRNA中に転写されるDNA配列、ならびに薬物生体内変換に関与するオキシゲナーゼ、オキシダーゼ、ヒドロラーゼおよび抱合酵素のセンスmRNAまたはアンチセンスmRNA中に転写されるDNA配列の群の中から選択されるものである、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
フェーズIまたはフェーズII薬物生体内変換酵素をコードする前記異所DNA配列が、CYP 1A1、CYP 1A2、CYP 2A6、CYP 2B6、CYP 2C8、CYP 2C9、 CYP 2C18、CYP 2C19、CYP 2D6、CYP 2E1、CYP 3A4、CYP 3A5、GST(A1)のセンスmRNAまたはアンチセンスmRNA中に転写されるDNA配列、およびフラビン−モノオキシゲナーゼ、スルホ−トランスフェラーゼ、シトクロムCレダクターゼ、UDP−グルコロニルトランスフェラーゼ、エポキシドヒドロラーゼまたはグルタチオントランスフェラーゼのセンスmRNAまたはアンチセンスmRNA中に転写されるDNA配列の群の中から選択されるものである、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
フェーズIまたはフェーズII薬物生体内変換酵素をコードする前記異所DNA配列が、フェーズIまたはフェーズII薬物生体内変換酵素のセンスmRNA中に転写されるDNA配列である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
フェーズIまたはフェーズII薬物生体内変換酵素をコードする前記異所DNA配列が、フェーズIまたはフェーズII薬物生体内変換酵素のアンチセンスmRNA中に転写されるDNA配列である、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
フェーズI薬物生体内変換酵素およびフェーズII薬物生体内変換酵素の中から選択される薬物生体内変換酵素をコードする異所DNA配列を含んでなる前記発現ベクターが、ウイルスベクター、リポソームおよびミセルビヒクルの中から選択されるものである、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記発現ベクターが天然または組換えアデノウイルスである、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
フェーズI薬物生体内変換酵素およびフェーズII薬物生体内変換酵素の中から選択される薬物生体内変換酵素をコードする異所DNA配列を含んでなる、様々な量の発現ベクターの併用を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
ヒトにおいて見られる代謝多様性をその細胞中で再現することを目的とする、レダクターゼ活性を発現する細胞の操作における、フェーズIまたはフェーズII薬物生体内変換酵素のセンスまたはアンチセンス発現ベクターの使用。
【請求項14】
薬物の代謝および/または薬物動態および/または潜在的特異体質性肝毒性および/または潜在的薬剤相互作用を研究する方法であって、その薬物を、請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法に従って得られた、ヒトの代謝特異体質をin vitroで再現できる単細胞モデルと接触させることを含んでなる、方法。
【請求項15】
フェーズIおよびフェーズII薬物生体内変換酵素のセンスおよびアンチセンスmRNAをコードする1以上の発現ベクターを含んでなる、キット。
【請求項16】
フェーズIおよびフェーズII酵素ならびにシトクロムP450レダクターゼの一組のアデノウイルス発現ベクターを用いることにより、制御可能な様式で生体異物を代謝する能力を任意の細胞系統に付与する方法であって、形質転換細胞に、生体異物を代謝するように随意にデザインされた表現型特性を付与するために、その細胞種を前記アデノウイルス発現ベクターでトランスフェクションすることを含んでなり、形質転換される細胞種の特徴に応じて、次の状況:
a)シトクロムP450レダクターゼ活性を発現する細胞種の、生体異物生体内変換に関与するP450酵素をコードする異所DNA配列を含んでなる一組の発現ベクターによる形質転換(この場合、各発現ベクターは、異なるCYP酵素のセンスmRNAを転写する異所DNA配列を含んでなる)、
b)ある細胞種の、フェーズIまたはフェーズII酵素の中から選択される薬物生体内変換酵素をコードする異所DNA配列を含んでなる一組の発現ベクターによる形質転換(この場合、各発現ベクターは、異なるフェーズIまたはフェーズII薬物生体内変換酵素のセンスmRNAを転写する異所DNA配列を含んでなる)、
c)CYP遺伝子を含むが、CYPレダクターゼを発現しない細胞種の、そのCYP酵素をコードする異所DNA配列ならびにCYPレダクターゼをコードする配列を含んでなる一組の発現ベクターによる形質転換(この場合、各発現ベクターは、CYP酵素のセンスmRNAかCYPレダクターゼのセンスmRNAのいずれかを転写する異所DNA配列を含んでなる)
の一つが想定され、
ここで、前記形質転換細胞内での前記異所配列の全ての発現により、該細胞に一時的な生体異物代謝特性が付与されることを特徴とする、方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2007−518411(P2007−518411A)
【公表日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−549878(P2006−549878)
【出願日】平成16年1月19日(2004.1.19)
【国際出願番号】PCT/EP2004/000339
【国際公開番号】WO2005/068611
【国際公開日】平成17年7月28日(2005.7.28)
【出願人】(504355789)アドバンスド、イン、ビートロウ、セル、テクノロジーズ、ソシエダッド、リミターダ (9)
【氏名又は名称原語表記】ADVANCED IN VITRO CELL TECHNOLOGIES, S.L.
【Fターム(参考)】