説明

ヒトの性応答を調節するための組み合わせ治療

【課題】使用するのに便利かつ簡単であり、望ましい結果を達成するために一定の投与レジメまたは複数用量さえも必要とせず(すなわち、要求に応じて利用可能である)、非侵襲的であり、性応答性を改善するために迅速かつ予想可能な能力を可能にし、および性応答の質を改善する組成物を提供する。
【解決手段】本発明は、ヒトの性応答を調節するための組成物および方法に関する。この組成物は、α-アドレナリン作用性アンタゴニストおよびホスホジエステラーゼインヒビターを好ましくは含む、2つ以上の薬学的に活性な薬剤を含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、本明細書中に参考として援用される、米国特許仮出願第60/049,947号(1997年5月19日出願)の優先権を主張する。
【0002】
発明の分野
本出願は、要求に応じてヒトの性応答を調節することにおいて有用な組成物およびヒトの性応答を調節するための方法に関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
男性および女性の両方におけるヒトの性応答は、精神学的な影響、ホルモンの影響、および他の生理学的な影響の複雑な相互作用から生じる。男性および女性の両方に共通するヒトの性応答の1つの重要な局面は、それ自身が自律神経系、内分泌系、および循環系の間の相互作用に起因する勃起応答である。
【0004】
勃起性応答の減退は男性において最も一般的であり、インポテンスと呼ばれている。インポテンスは、男性が膣挿入および性交に十分な陰茎勃起を達成または維持することが不可能なことである。多くのアプローチが、インポテンスの処置のために試みられてきた。これらのアプローチには、外部または内部に移植された陰茎用人工装具の使用が含まれる。(例えば、Zumanowskyの米国特許第5,065,744号を参照のこと)。種々の薬物および薬物投与方法もまた、インポテンスの処置のための試みに使用されてきた。例えば、Stuermerの米国特許第3,943,246号には、日用量300〜1500国際単位(I.U.)のオキシトシンまたは分割日用量(daily divided dose)150〜250I.U.のデスアミノオキシトシンの口腔粘膜(buccal)投与および経口投与による男性におけるインポテンスの処置が書かれている。この特許は、100I.U.1日3回14日間の口腔粘膜投与によって、処置した16人の患者のうち12人で勃起不能(impotentia erectionis)の改善が生じたことを述べている。
【0005】
Nestorらの米国特許第4,530,920号は、黄体形成ホルモン放出ホルモンアゴニストの9ペプチドアナログおよび10ペプチドアナログの投与が性行動の誘発または増強、あるいはインポテンスまたは不感症に対する治療に有用で有り得るという可能性を示唆している。Nestorらは、これらのアナログの多数の投与経路を示唆している。これらの投与経路には、口腔粘膜、舌下、経口、非経口(皮下、筋内、および静脈内投与を含む)、直腸、膣などが含まれる。
【0006】
Grunwellらの米国特許第4,139,617号は、ヒトにおけるリビドーの内分泌を介する増強のための19-酸素化-アンドロスト-5-エン(19-oxygenated-androst-5-enes)の口腔粘膜投与経路および他の投与経路を示唆している。
【0007】
Andersonらの米国特許第4,863,911号には、生体酸化可能(biooxidizable)であり、血液脳関門を通過するエストロゲン誘導体を使用して、哺乳動物における性的機能不全を処置するための方法が書かれている。Andersonらの発明の意図する目的の1つは、雄における「精神的インポテンス」の処置である。試験結果は、その研究において使用された薬物が、去勢ラットにおいて乗駕行動、挿入、乗駕潜伏(mount latency)を刺激することを示した。
【0008】
多くの刊行物が、雄におけるインポテンスの処置のために種々の血管拡張剤を使用することを提案してきた。インポテンスの処置のために血管拡張剤を利用する試みは、インポテンスの症例のかなりの率が血管原性、すなわち血管機能不全に起因することが言及されているという事実によって思いつかれた。
【0009】
Vossら(1989年1月31日発行の米国特許第4,801,587号)には、インポテンスの男性の陰茎に局所的適用するための血管拡張剤およびキャリア薬剤を含有する軟膏の使用が書かれている。このVossらの特許はまた、カテーテルを使用してこのような軟膏を陰茎の尿道中へ適用すること、および陰茎の皮膚に血管拡張剤を適用するための多段階レジメを記載する。さらに、Vossらは、陰茎海綿体を取り巻く線維鞘の一部分を外科的に取り除き、それにより血管拡張剤を含有する軟膏の海綿体内への浸透を促進することを提案している。Vossらにより使用を示唆された血管拡張薬には、パパベリン、ヒドララジン、ニトロプルシドナトリウム、フェノキシベンザミン、およびフェントラミンが含まれる。しかし、このVossらの特許は、提案された処置の実際の有効性またはこのような処置に対する応答の性質に関する情報は何も提供していない。
【0010】
Latorreの米国特許第4,127,118号は、注射器および1つ以上の皮下注射針を使用して、血管拡張性薬物を陰茎海綿体内および尿道海綿体内に直接注入することにより雄のインポテンスを処置することを記載している。より詳細には、このLatorreの特許は、塩酸ナイリドリンのような交感神経作用性アミン、塩酸トラゾリンのようなアドレナリン遮断剤、ならびに塩酸イソクスプリンおよびニコチニルアルコールのような直接作用性血管拡張剤の海綿体内注入および尿道海綿体注入を提案している。
【0011】
Brindley,G.S.(Br.J.Pharmac. 87:495-500 1986)は、皮下針を用いて陰茎海綿体内に直接注入した場合、ある種の平滑筋弛緩薬(フェノキシベンザミン、フェントラミン、チモキサミン、イミプラミン、ベラパミル、パパベリン、およびナフチドロフリルを含む)は勃起を引き起こすことを示した。この研究は、「適切な用量のフェノキシベンザミンまたはパパベリンの注入が、数時間持続するたゆまぬ勃起を引き起こす」ことを示した。研究された他の薬物の注入は、約11分間から約6.5時間持続する勃起を誘発した。
【0012】
Zorgniottiら(J.Urol. 133:39-41 (1985))は、パパベリンとフェントラミンとの組合せの海綿体内注入が、そうでなければインポテンスの男性において勃起を生じ得ることを示した。同様に、Althofら(J.Sex Marital Ther. 17(2): 101-112 (1991))は、塩酸パパベリンおよびフェントラミンメシレートの海綿体内注入が注入した患者の約84%において勃起能の改善を生じたことを報告した。しかし、この研究において、中途脱落率(dropout rate)は57%であり、線維性小節が患者の26%に発生し、30%の患者が異常な肝機能値を示し、そして挫傷(bruising)が19%の患者に生じた。
【0013】
インポテンスの処置のために皮下注射針を使用する薬物の海綿体内注入を記載する他の研究には、以下のものが含まれる:Brindley、J.Physiol. 342:24頁(1983);Brindley、Br.J.Psychiatr. 143:312-337 (1983);Virag,Lancet ii:978 (1982);およびViragら、Angiology 35:79-87 (1984)。
【0014】
海綿体内注入はインポテンスの男性において勃起を誘発させるには有用であり得るが、この技術は多数の欠点を有する。明らかな欠点には、疼痛、感染症の危険、性行動の自発性に不都合であり妨害となることが含まれる。持続勃起症(持続的かつ他の疼痛を伴う勃起)もまた、注入法を使用する場合には潜在的な問題であるようである。例えば、Brindley、(1986)を参照のこと。海綿体内注入のいくつかの場合に生じる別の問題には、陰茎における線維性損傷の形成が含まれる。例えば、Corriereら、J.Urol. 140:615-617 (1988)およびLarsenら、J.Urol. 137:292-293(1987)を参照のこと。
【0015】
フェントラミンは、海綿体内に注入された場合に勃起を誘発する可能性を有することが示されているが、これはまた、非特異的勃起不全を有する男性においてその効果を試験するために経口投与されている(Gwinup、Ann.Int.Med. 1988年7月15日、162-163頁)。この研究では、16人の患者が偽薬または50mgの経口投与用量のフェントラミンのいずれかを摂取した。(3人の偽薬処置患者を含む)16人の患者のうち11人が、腫脹し、性的刺激に対してより反応的になり、そして性交を試みるのに1.5時間待った後に膣挿入に十分な勃起を達成し得た。
【0016】
Sondaら、J.Sex & Marital Ther. 16(1): 15-21は、ヨヒンビン摂取が処置されたインポテンスの男性の38%において勃起能の主観的な改善をもたらしたと報告した。しかし、処置された患者のわずか5%のみが完全に満足したと報告した。
【0017】
発明の背景に関して興味深いのは、Stanleyらの米国特許第4,885,173号の開示である。この特許には、口、咽頭、および食道の粘膜組織を通じて薬物吸収を促進すると主張されている棒付きキャンディーの使用により、心血管または腎血管活性を有する薬物を投与する方法が書かれている。Stanleyらの特許は、非常に多くの棒付きキャンディー式に投与される薬物(lollipop-administered drug)が、心血管機能を改善し得ることを提案している。この薬物には、カルシウムチャンネルブロッカー、β−アドレナリン遮断剤、セロトニンレセプター遮断剤、アンギナ遮断剤(angina blocking agent)、他の抗高血圧剤、心刺激剤、および腎血管機能を改善する薬剤を含む、直接的な血管拡張効果を示す薬物が含まれる。
【0018】
Rubinの米国特許第5,059,603号は、インポテンスの処置のために、イソクスプリンおよびカフェイン、ならびにニトログリセリンおよびカフェインを、適切なキャリア化合物と共に、陰茎に局所投与することを記載している。
【0019】
GioccoおよびZorgniottiの特許文献1は、ヒトの性応答を調節するためのフェントラミンメシレートを含む、種々の血管拡張薬の経粘膜投与を記載している。
【0020】
Sildenafil(5-[2-エトキシ-5-(4-メチルピペラジン-1-イルスルホニル)フェニル]-1-メチル-3-プロピル(proplyl)-6,7-ジヒドロ-1-H-ピラゾロ[4,3-d]ピリミジン-7-オン)(ViagraTM,Pfizer,Inc.)は、男性の勃起機能不全のための経口治療薬として有用であることもまた示された。[非特許文献1(これは、その全体が本明細書中に参考として援用される)] 非特許文献2および非特許文献3(この両方ともに、その全体が本明細書中に参考として援用される)もまた参照のこと。特許文献2(本明細書中に参考として援用される)に記載されるSildenafilおよび関連化合物は、ホスホジエステラーゼVインヒビターであり、そしてより詳細にはサイクリックGMP特異的ホスホジエステラーゼインヒビターである。
【0021】
Lowreyの特許文献3は、血管拡張薬(例えば、フェントラミンメシレート、塩酸フェントラミン、および男性および女性の両方において勃起能力または性応答性における改善を可能にする他のもの)を含む経口投与可能な速効性組成物を記載している。
【0022】
代表的には、前述の経口投与可能な組成物は、処置集団において100%未満の成功率を示す。結果はまた、患者において見られる性的応答の質、すなわち、例えば、Sildenafilを用いて達成された比較的硬直性の勃起が変動性であったことを示す。[非特許文献3を参照のこと] それゆえ、勃起機能不全に罹患している個体または性応答の質に満足できない患者におけるヒトの性的応答を調節するための、および特に勃起能力を増強するための有効な組成物および方法についての必要性が当該分野で存在し続けている。理想的には、このような手段は、使用するのに便利かつ簡単であり、望ましい結果を達成するために一定の投与レジメまたは複数用量さえも必要とせず(すなわち、要求に応じて利用可能である)、非侵襲的であり、性応答性を改善するために迅速かつ予想可能な能力を可能にし、および性応答の質を改善する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0023】
【特許文献1】米国特許第5,565,466号明細書
【特許文献2】欧州特許第0702555号明細書
【特許文献3】米国特許第5,731,339号明細書
【非特許文献】
【0024】
【非特許文献1】Martelら、Sildenafil,Drugs of the Future,22:138-143(1997)
【非特許文献2】Boolellら、Int'l.J.Impot.Res.,8:47-52(1996)
【非特許文献3】Boolellら、Br.J.Urol.,78:257-261(1996)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0025】
発明の要旨
本発明は、例えば、種々の生理的機構によって生殖器への血流を改善することによって、2つ以上の薬学的に活性な薬剤(それらの組み合わせは性応答性の改善を生じる)を循環系に投与することにより、男性および女性の両方におけるヒトの性応答を調節するための改善された組成物および方法を提供する。本発明の1つの実施態様において、男性および女性のヒト性応答は、一方は、ホスホジエステラーゼインヒビター(両方のcGMPまたはcAMP特異的ホスホジエステラーゼインヒビターのいずれか)である薬剤、ならびに他方はαアドレナリン作用性アンタゴニストおよび/またはドパミン作用性アゴニストである薬剤である、2つ以上の薬学的に活性な薬剤の有効な応答を調節する量を経口投与可能な処方物でともに投与することによって、要求に応じて調節される。好ましくは、この処方物は、経口投与可能な錠剤中に薬学的に活性な薬剤を含む。
【0026】
本発明の別の局面は、第1の薬学的に活性な薬剤、および第2の薬学的に活性な薬剤の組み合わせに関する。ここで第1の薬学的に活性な薬剤は、フェントラミン、フェントラミンメシレート、塩酸フェントラミン、フェノキシベンザミン、ヨヒンビン、有機ニトレート(例えば、ニトログリセリン)、チモキサミン、イミプラミン、ベラパミル、イソクスプリン、ナフチドロフリル、トラゾリンからなる群より選択され、そして第2の薬学的に活性な薬剤は、ホスホジエステラーゼインヒビターからなる群またはドパミン作用性アゴニストより選択される。現在好ましい第1の薬学的に活性な薬剤は、フェントラミンメシレートである。好ましいホスホジエステラーゼインヒビターとしては、キサンチン誘導体、アムリノン、Vesnarinone、ミルリノン、ロリプラム、RO-1724、8-メトキシメチルIBMX、シロスタミド、Zapranast、MY-5445、M&B 22、948、フェノキシモン(phenoximone)、Dipyridamole、IBMX、5-(2'-アルコキシフェニル)ピラゾロ[4,3-d]ピリミジン-7-オン、すなわち、5-[2-エトキシ-5-(4-メチルピペラジン-1-イルスルホニル)フェニル]-1-メチル-3-プロピル-6,7ジヒドロ-1H-ピラゾロ[4,3-d]ピリミジン-7-オンとも言われる、Sildenafil(ViagraTM)(Drugs of the Future22(2):138-143(1997)を参照のこと)、または1-[4-エトキシ-3-(6,7-ジヒドロ-1-メチル-7-オキソ-3-プロピル-1H-ピラゾロ [4,3-d]ピリミジン-5-イル)フェニルスルホニル]4-メチルピペラジン(Boolellら、Int.J.Impot.Res.,8:47-52(1996)を参照のこと)、およびそれらの塩ならびにパパベリンが挙げられる。本発明の実施に有用な好ましいドパミン作用性アゴニストは、アポモルヒネである(Pentech Pharmaceuticals)。
【0027】
本発明の組み合わせに有用な、他の薬学的に活性な薬剤としては、アチパメゾール(atipemazole)、脱アセチルモキシシライトHCl(deacetylmoxisylyte)、デレクアミン(delequamine)HCl、アルプロスタジルが挙げられる。
【0028】
本発明はまた、被験体のヒトにおいて一酸化窒素シンターゼ活性を増強する薬剤と組み合わせてフェントラミンメシレートのようなα-アドレナリン作用性アンタゴニストを含む処方物が意図される。本発明のなお別の実施態様において、2つ以上の薬学的に活性な薬剤は、2つ以上の薬剤がそれらの併用効果を発揮するように同時に循環系に存在する限り、別々に投与され得る。
【0029】
好ましい経口処方物は、迅速に溶解する経口投与可能な錠剤中に少なくとも第1および第2の薬学的に活性な薬剤を組み合わせて含む。迅速に溶解する好ましい錠剤は、約1分〜約10分の崩壊時間を有する。最も好ましいものは、1分未満の崩壊時間を有する、迅速に溶解する錠剤である。本発明の処方物中のフェントラミンメシレートの好ましい経口用量は、好ましくは、約5mg〜約100mgであるが、一方で、例えば、同じ錠剤中のSildenafilの用量は、好ましくは、約5mg〜約150mgである。他の薬学的に活性な薬剤とともに組み合わせて使用される場合、パパベリンの好ましい用量は、75mg、150mg、および300mgである。
【0030】
本発明はまた、チュアブル(chewable)錠中に少なくとも第1および第2の血管拡張剤を組み合わせて含む血管拡張薬処方物に関する。
【0031】
本発明はまた、陰茎に血流を増加させるために有効な量で本発明の組成物を投与することによって(ここで、要求に応じて勃起能力を改善する)、男性のインポテンスの処置または男性の性応答の調節のための改善された方法に関する。
【0032】
好ましくは、男性のインポテンスの処置、またはそうでなければ男性または女性において性応答性を改善するために、本発明の実施に用いられる薬学的に活性な薬剤の量は、この薬剤の投与後約1分から約60分以内の応答性を改善するのに有効である。
【0033】
本発明はまた、本発明の組成物の有効量の経口投与によって、要求に応じて女性の性応答(すなわち、女性の性応答の興奮期、プラトー期、およびオルガズム期)を改善するための方法に関する。
【0034】
本発明の方法および組成物はまた、投与後1時間未満で、男性および女性の両方において性応答を改善する能力によって性交の準備に有用である。
【0035】
本発明はまた、少なくとも第1および第2の薬学的に活性な薬剤、または1つ以上の他の薬剤の能力を改善する、性応答を増強する薬剤の1つである薬学的に活性な薬剤の組み合わせの使用に関する。薬学的に活性な薬剤は、ヒトにおける性応答を要求に応じて改善するため、そしてより詳細には、性的刺激に対する応答での勃起能力を改善するために男性または女性に経口投与するための医薬の製造について組み合わせて使用され得る。
【0036】
医薬を製造するために有用な第1の薬学的に活性な薬剤としては、α-アドレナリン作用性アンタゴニストが挙げられるが、これに限定されない。より詳細には、薬学的に活性な薬剤としては、フェントラミンメシレート、塩酸フェントラミン、フェノキシベンザミン、ヨヒンビン、有機ニトレート、チモキサミン、イミプラミン、ベラパミル、イソクスプリン、ナフチドロフリル、トラゾリン、アチパメゾール(atepamezole)、デアセチルモキシシライト、デレクアミンおよびそれらの塩が挙げられる。
【0037】
本発明の組成物において有用な他の薬学的に活性な薬剤としては、キサンチン誘導体、アムリノン、ミルリノン、ロリプラム、Vesnarinone、RO-1724、8-メトキシメチルIBMX、シロスタミド、Zapranast、MY-5445、M&B 22、948、フェノキシモン、Dipyridamole、IBMX、Sildenafilおよびそのクエン酸塩、ならびにパパベリンに限定されないが、このようなホスホジエステラーゼインヒビターが挙げられる。本発明の組成物において有用なさらに他の薬学的に活性な薬剤としては、ドパミン作用性アンタゴニスト、例えば、アポモルヒネが挙げられる。
【0038】
本発明の実施において有用な任意の薬学的に活性な薬剤は、遊離塩基、薬学的に受容可能な塩類、水和物、およびフェントラミンに関して記載されるような他の形態として用いられ得ることもまた認識される。
【0039】
本発明はまた、以下の項目を提供する。
1.α-アドレナリン作用性アンタゴニスト、ホスホジエステラーゼインヒビター、ドパミン作用性アゴニスト、血管作用性アミン、血管作用性腸管ペプチドからなる群より選択される2つ以上の薬学的に活性な薬剤および必要に応じて薬学的に受容可能なキャリアを含有する組成物。
2.上記α-アドレナリン作用性アンタゴニストが、フェントラミン、塩酸フェントラミン、およびフェントラミンメシレートからなる群より選択される、項目1に記載の組成物。
3.上記ホスホジエステラーゼインヒビターが、V型サイクリックGMP特異的ホスホジエステラーゼのインヒビターである、項目1に記載の組成物。
4.上記V型サイクリックGMP特異的ホスホジエステラーゼインヒビターが、1-[4-エトキシ-3-(6,7-ジヒドロ-1-メチル-7-オキソ-3-プロピル-1H-ピラゾロ[4,3d]ピリミジン-5-イル)フェニルスルホニル]-4-メチルピペラジン(Sildenafil)である、項目3に記載の組成物。
5.約5mgから約100mgまでのフェントラミン、および約5mgから約150mgまでの1-[4-エトキシ-3-(6,7-ジヒドロ-1-メチル-7-オキソ-3-プロピル-1H-ピラゾロ[4,3d]ピリミジン-5-イル)フェニルスルホニル]-4-メチルピペラジン(Sildenafil)、および薬学的に受容可能なキャリアを含有する、組成物。
6.約5mgから約100mgまでのフェントラミン、および約5mgから約150mgまでの1-[4-エトキシ-3-(6,7-ジヒドロ-1-メチル-7-オキソ-3-プロピル-1H-ピラゾロ[4,3d]ピリミジン-5-イル)フェニルスルホニル]-4-メチルピペラジン(Sildenafil)を、経口投与可能な錠剤中に含有する組成物であって、該錠剤が約20分未満の崩壊時間を有する、組成物。
7.上記錠剤が約10分未満の崩壊時間を有する、項目6に記載の組成物。
8.上記錠剤が約1分未満の崩壊時間を有する、項目6に記載の組成物。
9.α-アドレナリン作用性アンタゴニストおよびドパミン作用性アゴニストを含有する、組成物。
10.上記α-アドレナリン作用性アンタゴニストが、フェントラミン、塩酸フェントラミン、およびフェントラミンメシレートからなる群より選択される、項目9に記載の組成物。
11.上記ドパミン作用性アゴニストがアポモルヒネである、項目9に記載の組成物。
12.フェントラミンメシレートおよびアポモルヒネを含有する、組成物。
13.20分未満の崩壊時間を有する経口投与可能な錠剤をさらに含有する、項目12に記載の組成物。
14.上記錠剤が、約10分未満の崩壊時間を有する、項目13に記載の組成物。
15.上記錠剤が、約1分未満の崩壊時間を有する、項目13に記載の組成物。
16.α-アドレナリン作用性アンタゴニスト、V型ホスホジエステラーゼのインヒビター、およびドパミン作用性アゴニストを含有する、組成物。
17.経口投与可能な錠剤をさらに含有する、項目16に記載の組成物。
18.上記錠剤が1時間未満の崩壊時間を有する、項目17に記載の組成物。
19.上記錠剤が20分未満の崩壊時間を有する、項目18に記載の組成物。
【0040】
本発明の他の多数の利点は、付随の実施例および添付の請求の範囲を含む、以下の発明の詳細な説明から明らかである。
【発明を実施するための形態】
【0041】
詳細な説明
男性および女性の両方におけるヒト性応答には、内分泌的要素、神経学的な要素および精神学的な要素の間の複雑な相互作用が含まれる。これらの要素は、男性および女性の両方において特定の生理学的応答および解剖学的応答を導く。
【0042】
男性と女性との間には性応答に明らかな差異が存在するが、性応答の1つの共通する局面は勃起応答である。男性および女性の両方における勃起応答は、性的刺激(身体的、精神的またはその両方)に応じた、血液による性器の勃起組織の充血の結果である。
【0043】
男性および女性の両方において勃起組織に送達する血管系は類似である。特に、男性および女性の両方において、性器の勃起組織への動脈循環は、腹部大動脈から分岐する総腸骨動脈に由来する。総腸骨動脈は、内腸骨動脈および外腸骨動脈に分岐する。内陰部動脈は、内腸骨動脈の前幹の2つの終末枝のより小さい方から生じる。女性において、内陰部動脈は外陰唇に供給する浅会陰動脈に分枝する。内陰部動脈はまた、膣前庭球および膣の勃起組織に供給する球動脈に分枝する。海綿体動脈(内陰部動脈の別の分枝)は、陰核の海綿体に供給する。内陰部動脈のさらに別の分枝は、陰核背に供給し、亀頭および陰核周囲の膜性ひだ(男性における包皮に対応する)に終わる陰核背動脈である。
【0044】
男性において、内陰部動脈は、陰茎背動脈(これ自身が左分枝および右分枝に分枝する)および海綿体動脈に分枝する。これら全ては、海綿体に血液を供給する。陰茎背動脈は、女性における陰核背動脈に類似する。一方、男性における海綿体動脈は、女性における同名称の動脈に類似する。
【0045】
男性の勃起応答は、海綿体内および周囲の動脈血管に関係する末梢神経の相互作用により陰茎への血流を制御する自律神経系によって調節される。非興奮状態または非勃起状態では、海綿体に供給する動脈は、相対的に収縮状態に維持されている。それにより、海綿体への血流が制限される。しかし、興奮状態では、動脈に関係する平滑筋は、カテコールアミンの影響下で弛緩し、そして海綿体への血流が著しく増加する。このことが、陰茎の膨張および硬直性を引き起こす。Brindley(前出、(1986))は、平滑筋収縮が弁を開き、このことにより、血液が海綿体から海綿体外静脈(extracavernosal vein)へ流れ得る。Brindley(1986)によれば、関連の平滑筋が弛緩する場合、弁は閉じて、海綿体からの静脈流出を減少させる。海綿体への動脈血流の増加を伴う場合、このことは海綿体の充血および勃起を導く。
【0046】
女性におけるオルガスム前の性応答は異なる期に分解され得る。興奮期およびプラトー期の両方は、男性の勃起応答に類似の様式の血管拡張および動脈血による性器の充血(血管鬱血)を包含する。
【0047】
女性の性応答の興奮期は、膣液の漏出および膣の潤滑を導く、膣壁の血管鬱血により特徴付けられる。さらに、膣胴(vaginal barrel)の内側3分の1は拡張し、そして子宮頸および子宮体は上昇する。このことは、大陰唇の平坦化および上昇ならびに陰核サイズの増大を伴う(Kolodnyら、Textbook of Sexual Medicine、Little and Brown、Boston、MA (1979))。
【0048】
プラトー期は、女性の性応答において興奮期に続き、そして膣の外側3分の1の顕著な血管鬱血により特徴付けられる。この鬱血は、膣口を狭くし、恥骨結合に対する陰核幹(shaft)および陰核亀頭の後退を引き起こす。これらの応答はまた、陰唇の顕著な血管鬱血を伴う(Kolodny、前述(1979))。
【0049】
女性の性応答の血管鬱血の局面は、性器に限定されない。なぜなら、乳輪の充血もまた生じ、時にはそれが先行する乳頭の勃起(通常、興奮期に付随する)を覆い隠すまでになるからである。
【0050】
膣挿入および性交が達成され得ない程度までの男性における勃起応答の減退は、インポテンスと呼ばれる。インポテンスは多くの考えられる原因を有する。この原因はいくつかの一般的な分類に分けられ得る。内分泌に関連するインポテンスは、原発性性腺機能不全、進行性糖尿病、甲状腺機能低下症に起因し得、下垂体腺腫、特発性または後天性性機能低下症、過プロラクチン血症および他の内分泌異常の二次的な続発症の1つとして生じ得る。
【0051】
慢性の全身性疾患(例えば、肝硬変、慢性腎不全、悪性疾患および他の全身性疾患)もまた、インポテンスを引き起こし得る。中枢神経系に起因する神経原性のインポテンスは、外傷、てんかん、新生物、および脳卒中により生じる側頭葉の障害、脊髄髄内損傷(intramedullary spinal lesion)、対麻痺、および脱髄障害により引き起こされ得る。末梢神経系に起因するインポテンスの神経原性の原因は、体性または自律神経性のニューロパシー、骨盤新生物、肉芽腫、外傷、およびその他を含む。インポテンスの泌尿器学的な原因には、完全な前立腺切除、局所的な外傷、新生物、ペーロニー病、およびその他が含まれる。さらに、上記のように、実際にはインポテンスの症例の有意な割合が血管性である。
【0052】
男性インポテンスの症例の半分程度が、精神性であり得る。なぜなら、容易に突き止められる障害の器官の原因が存在しないからである。インポテンスの基礎となる器官の原因が存在しそうな場合でさえ、精神的な要因はこの障害において役割を担い得る。
【0053】
本発明は、要求時における勃起応答の循環的局面を、迅速に溶解する経口投与処方物を使用して、循環に投与される血管作用性薬剤を用いて変更するように設計される。
【0054】
多数の薬学的に活性な薬剤は、血管拡張薬として実証された全身的効力、あるいは血管拡張薬として作用するおよび/または性的応答を改善するかのいずれかの実証された他の能力に基づいて、本発明の実施において使用され得る。本発明の組成物中において有用な薬学的に活性な薬剤には、α−アドレナリン作用性アンタゴニスト、ドパミン作用性アゴニスト、交感神経作用性アミン類および血管平滑筋の直接的弛緩を示す薬剤として一般的に分類される薬剤が挙げられる。例示的なα−アドレナリン作用性アンタゴニストには、フェントラミン、塩酸フェントラミン、フェントラミンメシレート、フェノキシベンザミン、トラゾリン、ジベナミン、ヨヒンビンなどが挙げられる。フェントラミンメシレートは、本発明の実施における使用のために好ましいα−アドレナリン作用性薬剤血管拡張薬である。本発明の組成物に有用な他のα−アドレナリン作用性薬剤には、アチパメゾール、デアセチルモキシシリトおよびデレクアミン(delequamine)およびそれらの塩が挙げられる。
【0055】
フェントラミンは非溶媒和形態および水和形態(例えば、半水和(hemi-hydrate))を含む溶媒和形態で存在し得る。一般に、薬学的に受容可能な溶媒(例えば、水、エタノールなど)との溶媒和形態は、本発明の目的のための非溶媒和形態と等価である。フェントラミンは、有機酸および無機酸との薬学的に受容可能な塩を形成し得る。塩形成のための適切な酸の例は、塩酸および臭化水素酸のようなハロゲン化水素酸(hydrohamic acid);ならびに硫酸、リン酸、酢酸、クエン酸、シュウ酸、マロン酸、サリチル酸、リンゴ酸、フマル酸、コハク酸、アスコルビン酸、マレイン酸、メタンスルホン酸、トルエンスルホン酸、ならびに当業者に公知である他の鉱酸およびカルボン酸のような他の酸である。塩は、従来の方法で、遊離の塩基形態を十分な量の所望の酸と接触させて塩を生成することにより調製される。遊離の塩基形態は、塩を適切な塩基性希薄水溶液(例えば、希薄の水性の水酸化ナトリウム、炭酸カリウム、重炭酸アンモニウムおよび重炭酸ナトリウム)で処理することにより再生され得る。遊離の塩基形態はそのそれぞれの塩の形態とは特定の物理的特性(例えば、極性溶媒に対する溶解度)においていくらか異なるが、他の点では、本発明の目的のための、そのそれぞれの遊離の塩基形態と等価である。フェントラミンはまた、適切なまたは従来の結晶化手順を使用して、その結晶多形相形態または結晶形態を形成し得る。
【0056】
本発明の方法での使用を意図される例示的な交感神経作用性アミンはナイリドリンであり、そして血管拡張活性を有する他の交感神経作用性アミンの使用もまた本発明により包含される。
【0057】
ニコチン酸(またはニコチニルアルコール)は、本発明の実施に有用な直接的な血管拡張活性を有する。
【0058】
有機ニトレート(例えば、ニトログリセリンおよび硝酸アミル)は、その血管平滑筋を弛緩する能力によって顕著な血管拡張活性を有し、それゆえ本発明による使用が意図される。本発明の実施に有用な他の血管作用性薬剤には、チモキサミン、イミプラミン、ベラパミル、ナフチドロフリルおよびイソクスプリンが挙げられるが、これらに制限されない。
【0059】
本発明の組合せにおいて有用な、第2の薬学的に活性な薬剤(例えば、ホスホジエステラーゼインヒビター)には、例えば、Beavoら:Advances in Second Messenger and Phosphoprotein Research 22:1-38(Greengardら編、(1988))および当該分野において公知である他のものに記載される、ホスホジエステラーゼのファミリーおよび/またはサブタイプのいずれかを阻害するインヒビターのようなホスホジエステラーゼインヒビターが挙げられる(が、これらに限定されない)。例示的なホスホジエステラーゼインヒビターには、キサンチン誘導体、アムリノン、ミルリノン、ロリプラム、Vesnarinone、RO-1724、8-メトキシメチルIBMX、シロスタミド、Zapranast、MY-5445、M&B22、948、フェノキシモン(phenoximone)、Dipyridamole、IBMX、5-(2'-アルコキシフェニル)ピラゾロ[4,3-d]ピリミジン-7-オン、ならびに、特に、Sildenafilおよびパパベリンが挙げられる。
【0060】
α−アドレナリン作用性アンタゴニスト(例えば、フェントラミン)およびホスホジエステラーゼインヒビター(Sildenafil)との組み合わせで有用である他の薬剤には、α−アドレナリン作用性受容体アンタゴニストアチパメゾール、デアセチルモキシシリトHClおよびデレクアミンHClが挙げられる。他の組成物には、ドパミン作用性アゴニスト(例えば、アポモルヒネ(apomorpine))と組み合わせたフェントラミンおよび/またはSildenafilが挙げられる。
【0061】
一酸化窒素シンターゼ活性を増加する薬剤もまた、本発明の特定の組成物における包含に対して意図される。
【0062】
本発明の組成物が単一の処方で同時に投与されることが好ましい一方で、循環中において同時に存在する限りは、別々に投与されることもまた、意図される。
【0063】
本発明の組成物は、付加的な効果を示し得、個々の成分または各薬剤の作用に関する相乗的効果は、他の活性を増強し得る。2つ以上の薬学的に活性な薬剤の組み合わせを使用することによって、個々の薬剤の、単一の薬剤で必要とされるよりも少ない用量が使用され得ることが、予想される。
【0064】
組成物はまた、要求に応じて、勃起能力を迅速に改善するために、単回の用量を提供することによって持続的な治療の必要性を排除する。
【0065】
本発明の1つの局面に従って、薬学的に活性な薬剤(例えば、ホスホジエステラーゼインヒビターと組み合わされる血管拡張性薬剤)が、迅速に溶解する錠剤処方物、迅速に溶解するチュアブル錠剤処方物、溶液、発泡性の処方物、カシェ剤、チューインガム、および他の経口投与が可能な処方物の形態で経口投与される。これらは、血管拡張性物質の循環への迅速な導入を可能にし、その結果、単回の処方物の投与後の短い時間内に勃起能力を改善する。しかし、標準的な硬い錠剤または他の薬学的に受容可能な投薬量形態のような別の投薬量形態もまた、本発明の範囲内に含まれる。本発明の別の局面において、組み合わせ(または個々の薬剤)は、膣または直腸の坐剤、ゲル、クリーム、ローション、または他の薬物送達媒体を介して投与され得る。
【0066】
従って、本発明の組成物および方法はより便利であり、そして、薬物の持続的または毎日の投与の結果として生じ得る任意の副作用を最小にする手助けをする。さらに、本発明の方法は、血管拡張剤の海綿体内(intracavernosal)注射のような他の方法により可能になるよりも、性的な活動においてより自発的に可能となるが、薬学的に活性な薬剤の特定の組み合わせは、海綿体内注射によって投与され得る。
【0067】
以下に示される実施例は、本発明の説明を意図し、そして添付の請求の範囲に示されるような本発明の範囲を限定することは意図しない。
【0068】
実施例1は、迅速に溶解する経口処方物を使用して投与した場合に、フェントラミンメシレートの薬学的バイオアベイラビリティーの組み合わせの経口投与のための、迅速に溶解する処方物を記載する。実施例2は、女性の勃起性の応答を調節することにおける本発明の実施に関係する。実施例3は、男性の自発的な勃起に対するフェントラミンおよびホスホジエステラーゼインヒビターの効果についての研究を記載する。
【実施例】
【0069】
実施例1
血管拡張性薬剤の経口投与のための迅速に溶解する処方物
本発明の1つの局面は、全身循環への薬学的に活性な薬剤の迅速な送達、それにより性的な刺激に応答する改善された勃起能力の開始を迅速に(要求に応じて)発現することを可能にするための、迅速に溶解する経口投与される組成物に関する。好ましくは、組成物は、2つ以上の薬学的に活性な薬剤の組み合わせを含む。好ましくは、2つ以上の薬剤の1つはホスホジエステラーゼインヒビターであり、そして他は、α-アドレナリン作用性アンタゴニストおよび/またはドパミン作用性アゴニストである。本発明はまた、性的な刺激に応答して勃起する能力における、「要求に応じて」の改善のための、チュアブル錠剤、発泡性の処方物、カシェ剤、チューインガム、溶液、ロゼンジ、トローチ剤、散剤、溶液、懸濁剤、乳剤、またはカプセル化された散剤もしくはカプセル化された結晶(カプセルは、ゼラチン型または他の型であり得る)を含む、他の経口投与される処方物に関する。上記から明らかであるように、組成物は、経口経路以外によって投与され得るが、経口経路が好ましい。組成物は、局所的に、経粘膜的に、注射によって、経皮的に、および他の薬物送達媒体を介する他の方法によって投与され得る。坐剤(直腸または膣)、クリーム、ゲル、または当該分野で周知の他の薬物送達媒体を含む、他の薬物送達媒体もまた、本発明の組成物を投与するために使用され得る。
【0070】
フェントラミンメシレートおよびシルデナフィル(Sildenafil)を含む迅速に溶解する錠剤の例示的な処方物を、以下に示す。
【0071】
【表1】

表1に示す成分(および以下に示される錠剤処方物に使用される成分)を微細に分け、そして約400mgの総重量を有する錠剤に圧縮成形する前に完全に混合する。混合および錠剤の成形の他の方法は、当業者に容易に明らかである。この方法によって調製される錠剤の物理的な特徴として、10.7Kpの平均的な硬度、約0.20インチの平均的な厚さ、および約0.71分の平均的な崩壊時間が挙げられる。
【0072】
表1に示すように、崩壊剤であるクロスカルメロースナトリウムNF(Ac-Di-Sol(登録商標)としてFMC Corporationから入手可能)を、錠剤の溶解を速めるために使用したが、以下に記載するような他の崩壊剤を、同じ効果を達成するために使用し得る。
【0073】
本発明の実施において有用な錠剤は、他の薬学的賦形剤、薬学的に受容可能な塩、キャリア、および当該分野で周知の他の物質を含み得る。緩衝剤、香味剤、および不活性な増量剤(例えば、ラクトース、スクロース、コーンスターチ)、結合剤(例えば、アカシア、コーンスターチ、またはゼラチン)。崩壊剤(例えば、ポテトスターチ、および鎮痛性の酸、ならびに他の市販されている崩壊剤(Explotab(登録商標)ナトリウムスターチグリコレート、Polyplasdone XL(登録商標) crospovidone NF、Starch 1500(登録商標) 予めゼラチン状にしたスターチNFを、含む)。Gissingerら「A Comparative Evaluation of the Properties of Some Tablet Disintegrants」、Drug Development and Industrial Pharmacy 6(5):511-536(1980)はまた、他の崩壊剤、および錠剤の崩壊時間を測定するための方法を記載しており、そして本明細書中で参考として援用する。錠剤の崩壊時間を測定するための方法はまた、European Pharmacopeia 1980およびU.S. Pharmacopeiaにも示されている。これらもまた、本明細書中で参考として援用されている。本発明の実施のために好ましい溶解時間は、約20分未満である。2分以下の溶解時間がより好ましい。1分未満の溶解時間が最も好ましい。好ましい溶解時間は、血管拡張性薬剤自体の薬物動態学的特性に依存して変化し得る。
【0074】
本発明の実施において有用な処方物は、処方物が迅速な溶解および活性な成分の改善されたバイオアベイラビリティーの特性を維持している限りは、変化し得る。
【0075】
迅速に崩壊する錠剤処方物の別の例が、Pebleyらの米国特許第5,298,261号(’261特許)に記載されている。これは本明細書中で参考として援用されている。’261特許は、薬物、およびマトリックスの平衡な凝固点より低いが、その崩壊温度より上で真空乾燥されているマトリックスネットワークを含有する迅速に溶解する錠剤を記載している。’261特許に示されるマトリックスネットワークは、好ましくは、ゴム、炭水化物、および薬物を含む。好ましいゴムとして、アカシア、グアーゴム、キサンチン、カラゲナン、またはトラガカントが挙げられる。’261特許に記載される好ましい炭水化物として、マンニトール、デキストロース、スクロース、ラクトース、マルトース、マルトデキストリン、またはコーンシロップの固形物が挙げられる。
【0076】
別の迅速に溶解する薬物キャリアが、Ecanowの米国特許第5,079,018号(’018特許)に記載されている。これは、本明細書中で参考として援用されている。’018特許は、薬物、可溶物の仮の骨格構造、水和性のゲルまたは発泡体形成物質(好ましくは、タンパク質様の物質)を含む、容易に溶解するキャリアを記載している。
【0077】
他の例示的な処方物を以下に示す。
【0078】
【表2】

【0079】
【表3】

成分の混合後、錠剤を直接的な圧縮によって調製する。表2および3に従って調製した錠剤の物理的特徴は、表1に従って調製した錠剤について記載した特徴と非常に類似する。
【0080】
本発明のホスホジエステラーゼインヒビター、ドパミン作用性アゴニスト、および一酸化窒素合成酵素のエンハンサーは、フェントラミンメシレートとは異なるバイオアベイラビリティーの特徴を有し得ると、認識されている。しかし、上記の情報は、本発明の特定の経口投与可能な処方物を最適化することにおいて有用な特定の特徴を同定した。
【0081】
上記の研究は、迅速に溶解する処方物を使用して行ったが(好ましい実施態様として)、活性な薬剤の組み合わせの迅速な吸収を可能にし、そして勃起能力における対応する改善を可能にする他の処方物が、本発明の範囲内である。例えば、本発明はまた、表4に示すチュアブル錠剤処方物を含む。
【0082】
【表4】

多数の薬学的に活性な薬剤が、血管拡張剤としてのそれらの実証された効力に基づいて、本発明の実施に従って組成物中で使用され得る。有用な血管拡張性薬物として、α-アドレナリン作用性アンタゴニスト、交感神経作用性アミン、ドパミン作用性アゴニストとして一般的に分類される薬物、ならびに血管の平滑筋の弛緩を直接指向する薬剤が挙げられる。
【0083】
上記に議論されるように、本発明の組成物において有用な例示的なα-アドレナリン作用性アンタゴニストとして、塩酸フェントラミン、フェントラミンメシレート、フェノキシベンザミン、トラゾリン、ジベナミン、ヨヒンビンなどが挙げられる。フェントラミンメシレートが、本発明の実施においては好ましい。本発明の方法における使用のために意図される例示的な交感神経作用性アミンはナイリドリンであるが、血管拡張活性を有する他の交感神経作用性アミンもまた、本発明によって意図される。
【0084】
本発明の組成物中で有用であるドパミン作用性アゴニストのうちの1つは、アポモルヒネである。
【0085】
ニコチン酸(または、ニコチニルアルコール)は、直接的な血管拡張活性を有し、これは本発明の組成物において有用である。パパベリンはまた、非特異的な平滑筋弛緩剤であり、これは血管拡張活性を有し、そして海綿体への、単独またはフェントラミンのような他の薬物と組み合わせてのいずれかでの直接的な注射によって、男性の性交不能を処置するために使用されている。
【0086】
有機ニトレート(例えば、ニトログリセリンおよび硝酸アミル)はまた、血管平滑筋を弛緩させるそれらの能力によって、際立った血管拡張活性を有する。本発明の実施における使用の他の血管作用性薬物として、チモキサミン、イミプラミン、ベラパミル、ナフチドロフリル、イソクスプリンなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0087】
本発明の組み合わせにおいて有用なホスホジエステラーゼインヒビターのうちの1つは、例えば、Beavoら:Advances in Second Messenger and Phosphoprotein Research 22:1-38(Greengardら編)(1988)に示されているホスホジエステラーゼイソ酵素の任意のファミリーおよび/またはサブタイプを阻害するホスホジエステラーゼインヒビターであるが、これに限定されない。例示的なホスホジエステラーゼインヒビターとして、キサンチン誘導体、アムリノン、ミルリノン、ロリプラム、ベスナリノン、RO-1724、8-メトキシメチル、IBMX、シロスタミド、ザプラナスト(Zapranast)、MY-5445、M&B 22、948、フェノキシモン(phenoximone)、ジピリダモール、IBMX、シルデナフィル、およびパパベリンが挙げられる。
【0088】
本発明の実施の1つの局面において、これらの薬学的に活性な試薬は、迅速に溶解する経口投与される処方物中で、またはトローチ剤、ロゼンジ、チュアブル錠剤、発泡性の処方物、散剤、溶液のような他の処方物、および全身的な循環への血管拡張性薬剤の迅速な送達を提供し、そして本発明に従って勃起能力における迅速な改善を提供する他の処方物中で投与される。しかし、本発明に従う薬学的に活性な試薬の組み合わせは、他の経口的に利用可能な投与量形態において、または上記により詳細に議論されるような他の薬物送達媒体によって、投与され得る。
【0089】
各投与経路についてのそれぞれの薬学的に活性な試薬の適切な用量は、当業者によって容易に決定される。説明の目的で、本発明の各血管拡張性薬剤の適切な用量を決定するために、当業者は、出発点として、血管拡張因子またはホスホジエステラーゼインヒビターの通常の発表されている投与量を使用し得る。市販によって入手可能な血管拡張因子についての通常の経口用量は、Medical Economic Data, Montvale New Jerseyによって毎年出版されるPhysician’s Desk Reference、および入手可能な医学的文献中に見出され得る。
【0090】
例として、Pavabid(登録商標)経口塩酸パパベリン(oral papaverine hydrochloride)は、Marion Merrell Dowから入手可能であり、そしてその血管拡張効果を達成するためには12時間ごとに150mgが標準的に投与される。
【0091】
Searleから入手可能なCalon(登録商標)(塩酸ベラパミル)の経口用量は、12時間ごとに薬物の120mgから約240mgまでで、個々の患者を力価測定することによって決定され、特異的な用量は、薬物に対する個々の患者の応答に依存する。
【0092】
Daytohimbin(登録商標)(Dayton Pharmaceuticals)、Yocon(登録商標)(Palisades Pharmaceuticals)、およびYohimex(登録商標)(Kramer)として入手可能な塩酸ヨヒンビンは全て、1日に3回、5.4mgとして経口投与される。
【0093】
塩酸イミプラミンは、GeigyよりTofranil(登録商標)として入手可能であり、そして1日あたり50mgから約150mgまでの範囲の総用量で1日に4回経口投与される。
【0094】
パモ酸イミプラミンもまた、Geigyより入手可能であり、150mg/日の経口維持用量で投与される。
【0095】
ホスホジエステラーゼインヒビターであるVesnarinoneの代表的な経口投与量は、約60mgである。
【0096】
Sildenafilは、25mgおよび50mgを含む種々の用量で有効であることが示されている(Boolellら、Br. J. Urology, 78:257-261(1996)を参照のこと)。
【0097】
本発明の好ましい実施態様は、約5mgから約125mgのSildenafilと組み合わせて、約5mgから約100mgのフェントラミンメシレートを含む。
【0098】
出発点として確立された経口投与量を使用して、特異的な投与経路のための最適な投与量を、Giocoら、米国特許第5,565,466号に記載されているようなドップラー超音波速度計を使用して、薬物の投与の前に患者の性器の血液循環のベースラインの動脈血流を測定することによって決定し得る。他の方法(例えば、サーモグラフィー、例えば、RigiScanTM(Dacomed Corp.、Minneapolis, MN)を使用するプレチスモグラフィー、放射分析法またはシンチグラム法、および当該分野で周知の他の方法)もまた、性器中の血流を評価するために利用し得る。Boolellら、Br. J. Urol., 78:257-261(1996)およびBoolellら、Int. J. Impot. Res., 8:47-52(1996)を参照のこと。確立されたベースラインの血流を用いて、それぞれの血管拡張因子の種々の投与量を、本発明に含まれる組成物を使用して投与し得、そして血流に対するそれらの影響を測定し得る。ヒトにおける性的な応答を調節または増強するために必要な血流における増大の大きさは、一人一人変化し得るが、Zorgniottiら、PCT/US94/09048に記載されているように容易に決定される。さらに、個々の患者を、最適な投与量が決定されるまで、それぞれの血管拡張因子の種々の用量で力価測定し得る。
【0099】
血管流の研究もまた、International Index of Erectile Function(Rosenら、Urology, 49:822-830(1997);本明細書中で参考として援用されている)によって測定されるような勃起能力の改善によって証明されるように、性的な応答性の評価と結び付けられ得る。
【0100】
男性および女性の両方での使用についての本発明の好ましい実施態様は、本発明の迅速に溶解する経口処方物中での、約5mgから約100mgまでのフェントラミンメシレートおよび約5から約150mgまでのSildenafilの、性交の約1分から約1時間前および性交の準備中での投与を含む。
【0101】
実施例2
女性の性的な応答の調節
上記に議論されるように、男性および女性の性器の血管の解剖学的構造の間、およびこの血管系によって促進される性的応答には取り決められた類似点が存在する。男性および女性の両方において、勃起性の応答は、物理的または心理的刺激のもとで、性器への血流が、性器につながる動脈中での平滑筋の弛緩によって増大する場合に起こる。
【0102】
本発明の方法および組成物は、ペニスの楽な進入を促進するために十分な膣の潤滑を生じる能力が低下していることによって、および勃起性の応答に関連し得る損傷した性的応答性の他の症状によって証明されるような、その性的応答が損傷している女性において性的応答を改善または増強するために使用され得る。
【0103】
男性の性的応答の場合と同様に、女性の勃起性の応答における臨床的に診断された任意の機能不全の非存在下において、本発明の方法は、正常な女性の性的応答を増強するために使用され得る。本発明の「要求に応じて」の局面は、組織への血流の増大による女性の性的応答の興奮状態、プラトー、およびオルガスムの段階に関連する高まった感覚を伴う、性的な刺激に対するより迅速な応答を可能にする。
【0104】
実際には、本発明の方法および組成物を使用する女性の性的応答の増強は、上記のような男性について記載される方法とほぼ同じ方法で行う。
【0105】
薬学的に活性な試薬の特定の組み合わせの適切な用量を、上記のように容易に決定し得る。女性の応答を、Masters, W.H.およびJohnson, V.E.、Human Sexual Response, Little, Brown, and Co., Boston(1966)(これは、本明細書中で参考として援用されている)に記載されている方法を使用して測定し得る。ドップラー超音波速度計、例えば、等温血流トランスデューサーを使用するサーモグラフィー、放射性シンチグラム法、フォトプレチスモグラフィーを含む、血流を測定するための方法、および当該分野で周知の他の方法を使用し得る。さらに、女性の膣の性的応答のプラトー期の特徴である、末端部の1/3の収縮の測定は、ストレーンゲージまたは筋肉の収縮または筋肉の緊張を測定するための他のデバイスを含むが、これらに限定されない、当該分野で周知の方法および機器を使用して測定し得る。
【0106】
増強された性的応答はまた、本発明の方法による血管拡張因子の投与によってもたらされる感覚における任意の変化を記載するために、女性の被験体に単純に質問することによるより主観的な様式でも測定し得る。適切な偽薬のコントロールもまた、努力が血管拡張因子の投与に直接起因しているかどうかを確認するために行われるはずである。
【0107】
しかし、本発明の範囲に含まれる任意の薬学的に活性な試薬を使用し得、そしてそれらの投与量を上記のように決定し得る。
【0108】
実施例3
フェントラミンとホスホジエステラーゼインヒビターとの組み合わせ
非特異的ホスホジエステラーゼインヒビターとして知られるパパベリンは、フェントラミンメシレートと組み合わせて、示される用量未満でパパベリンをSildenafilと置き換えたことを除いて、表5に示される迅速に溶解する処方物中で組み合わせた。投与量は以下のとおりである:
【0109】
【表5】

20分未満の崩壊時間を有する経口投与可能な錠剤中で40mgのフェントラミンメシレートのみを用いた場合の応答速度は、勃起機能の国際的指標によって測定した場合、代表的には34%から38%である(Rosenら、Urology, 49:822-830(1997)、本明細書中で参考として援用される)。
【0110】
しかし、150mgのパパベリンと組み合わせた40mgのフェントラミンの組み合わせは、処置される被験体の約10%において、自発的な勃起を生じた。300mgのパパベリンと組み合わせた40mgのフェントラミンを受容する被験体は、約30%の自発的な勃起の発生率を有した。
【0111】
性的な刺激なしでフェントラミンメシレートのみを受容するこれらの患者は、自発的な勃起を示さなかった。
【0112】
フェントラミンとパパベリンとの組み合わせが、睡魔(70%)、眩暈感(30%)、結膜の充血(40%)、および悪寒(20%)の増大した発生率を生じることにもまた、注目した。全ての被験体のうちの10%が、以下の1つ以上を示した:便秘、勃起の感覚、頭痛、鼻の欝血、下痢、胸妬け、または紅潮。
【0113】
本発明は、好ましい実施態様によって記載されているが、本明細書中に示される実施例は、本発明の範囲を制限することは意図しない。これは、要求に応じて勃起能力を改善し得る経口投与される処方物を通じての薬物の投与の際に、全身的な循環に吸収され得る任意の薬理学的な血管拡張剤の使用を意図する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書中に記載の組成物。

【公開番号】特開2009−280621(P2009−280621A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−203172(P2009−203172)
【出願日】平成21年9月2日(2009.9.2)
【分割の表示】特願平10−550529の分割
【原出願日】平成10年5月19日(1998.5.19)
【出願人】(501392534)リプロス セラピューティクス インコーポレイテッド (3)
【Fターム(参考)】