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ヒトインスリン様成長因子に対する遺伝子組換え抗体
説明

ヒトインスリン様成長因子に対する遺伝子組換え抗体

IGFが病態の亢進に関与している癌、末端肥大症、糖尿病性合併症等の疾患の治療のための医薬品が求められている。ヒトIGF−IおよびヒトIGF−IIと特異的に結合し、ヒトIGF−IおよびヒトIGF−IIの生物活性を阻害する能力を有する遺伝子組換え抗体または該抗体断片、該抗体または該抗体断片を生産する形質転換体、該抗体または該抗体断片の製造法および該抗体または該抗体断片を有効成分として含有する医薬を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、ヒトインスリン様成長因子−I(以下、hIGF−Iと記す)およびヒトインスリン様成長因子−II(以下、hIGF−IIと記す)と特異的に結合し、ヒトIGF−IおよびヒトIGF−IIの生物活性を阻害する能力を有する遺伝子組換え抗体または該抗体断片、該抗体または該抗体断片を生産する形質転換体、該抗体または該抗体断片の製造法および該抗体または該抗体断片を有効成分として含有する医薬に関する。
【背景技術】
IGFは、乳房、前立腺、肺、結腸などの器官の上皮系細胞の増殖、分化、細胞死(アポトーシス)の制御に重要な役割を果たしており、その生物活性は、IGF受容体(IGF receptor;以下、IGF−Rと表記する)を介在する(Endocrine Reviews,16,3,1995)。また、IGFの代謝を抑制されているだけでなく、IGFの運搬およびIGFの受容体への結合を制御している10種類のIGF結合蛋白質(IGF−binding protein;以下、IGFBPと表記する)が存在する(Journal of Biological Chemistry,264,11843,1989)。
IGFには、一本鎖のポリペプチドからなるIGF−IとIGF−IIの2種類が存在し、いずれもインスリンの前駆体であるプロインスリンとアミノ酸レベルで約40%の相同性を有している(Advances in Cancer Research,68,183,1996)。生体内では、インスリン受容体、IGF−I受容体(以下、IGF−IRと表記する)、IGF−II受容体(以下、IGF−IIRと表記する)、およびインスリン受容体とIGF−IRのハイブリッド受容体が、IGFの受容体として機能している。
インスリン受容体およびIGF−IRは、いずれもチロシンキナーゼ型受容体であり(Endocrine Reviews,16,143,1995、Breast Cancer Research & Treatment,47,235,1998)、両者のアミノ酸レベルでの相同性は約60%である。インスリン受容体およびIGF−IRは、それぞれの特有のリガンドであるインスリンおよびIGF−Iに対して高い結合特異性を有するが、インスリン、IGF−IあるいはIGF−IIのそれぞれとも結合性を有する(Journal of Biological Chemistry,263,11486,1988、Journal of Biological Chemistry,268,7393,1993)。また、インスリン受容体とIGF−IRの各サブユニットからなるハイブリッド受容体は、インスリンよりもIGF−Iに対して高い結合特異性を有しており、IGF−IRとして機能していると考えられているが、生体内での役割は不明である(Endocrine Reviews,16,3−34,1995、Endocrine Reviews,16,143,1995)。IGF−IIRは、IGFファミリーのうちIGF−IIとのみ結合できるが、チロシンキナーゼ活性を有していないためIGF−IIのアンタゴニストとして機能していると考えられている(Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America,94,12981,1997)。以上のように、2種のIGFは、これら4種の受容体に加え、10種のIGF結合蛋白質(以下、IGFBPと表記する)と複雑なネットワークを形成し、生体内で機能している。
IGFは、肉腫、白血病、前立腺癌、乳癌、肺癌、結腸癌、胃癌、食道癌、肝臓癌、膵臓癌、腎臓癌、甲状腺癌、脳腫瘍、卵巣癌、子宮癌等の多種類の癌で発現が認められており、これらの癌細胞に対して強い増殖促進作用を示すことが知られている(British Journal of Cancer,65,311,1992、Anticancer Research,11,1591,1991、Annals of Internal Medicine,122,54、1995、Oncology,54,502,1997、Endocrinology,137,1764,1996)。また、転移性の高い癌では、転移性の低い癌よりもIGF−IIおよびIGF−IRの発現が高いことが知られており(International Journal of Cancer,65,812,1996)、癌の転移にもIGFの関与が示唆されている。IGFの細胞増殖促進作用は、主にIGF−IRを介した作用であるが(Endocrinology,136,4298,1995、Oncogene,28,6071,1999)、一部の乳癌細胞では、IGF−IIがインスリン受容体を介して作用することも知られている(Oncogene,18,2471,1999)。
臨床的および疫学的な検討においても、乳癌(Cancer Epidemiology,Biomarkers & Preventions,11,1566,2002、European Journal of Cancer,29A,492,1993)、神経膠腫、肺癌(Journal of the National Cancer,Insitute,92,737,2000)、大腸癌(Gut,44,704,1999)、前立腺癌(Cancer Research,62,2942,2002、Science,279,563,1998)、卵巣癌(International Journal of Cancer,101,549,2002)、膀胱癌(Journal of Urology,169,714,2003)および骨肉腫などの多くの癌組織におけるIGFあるいはIGF−IR、または血清IGF量の増加が報告されている(Journal of the National Cancer Institute,92,1472,2000)。更に、IGF−IRが発現している癌患者は、予後が不良となることが報告されている(Cancer Research,57,3079,1997)。
また、細胞死誘導活性を有するインターフェロンあるいは腫瘍壊死因子により誘導される大腸癌細胞の細胞死は、IGF−Iにより抑制されることが知られている。また、多形膠芽腫患者由来の初代培養細胞では、放射線感受性の癌細胞と比較して、放射線耐性の癌細胞ではIGF−IRおよびリン酸化IGF−IRの発現量が増大していること、更に放射線感受性の癌細胞の上皮増殖因子受容体の機能を阻害した場合、IGF−IRの発現量が増大することが知られている。以上のことから、IGFは癌細胞の増殖促進効果だけでなく、IGF−IRを介して癌細胞のサバイバルシグナルを増強し、癌細胞の薬剤耐性取得にも関与している(Journal of the National Cancer Institute,93,1852,2001、Oncogene,20,1913,2001、Cancer Research,60,2007,2000、Cancer Research,62,200,2002)。
さらに、癌以外の疾患でも、IGFの関与が示唆されている疾患が報告されている。巨人症、末端肥大症では成長ホルモンの異常分泌により、二次的にIGFが異常発現し、病態の亢進に関与していると考えられている(Growth hormone & IGF Research,13,98,2003)。また、糖尿病性合併症(Science,276,1706,1997、American Journal of Physiology,274,F1045,1998)、リウマチ性関節炎の病態形成にもIGF−Iの関与が示唆されている(Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism,81,50,1996、Arthritis & Rheumatism,39,1556,1996)。
モデル動物を用いた研究においても、IGFと種々の疾患の関係が検討されている。ヒト前立腺癌細胞移植モデルマウスでは、アンドロゲン非依存性増殖能の獲得に伴い、IGF−IおよびIGF−IRの発現が上昇することが知られている(Cancer Research,61,6276,2001)。また、血清中のIGFの大部分は肝臓で生産されるが、肝臓でのみIGF−Iを欠損したマウスでは同所移植した大腸癌の増殖が抑制されることから、血清中のIGFが腫瘍増殖に関与していることも知られている(Cancer Research,62,1030,2002)。IGFを体内局所に発現させたマウスでは、腫瘍の出現あるいは過形成が認められる(Oncogene,22,853,2003、Cancer Reserch,60,1561,2000、Journal of Biological Chemistry,269,13779,1994)。
以上のように、IGF、IGF−RおよびIGFBPは癌の発生、増殖、および転移だけでなく、末端肥大症、糖尿病性合併症やリウマチ性関節炎などにおいても重要な役割を果たしている。
これまでに、IGFとIGF−R間のシグナル伝達を阻害することによる抗腫瘍効果が検討されており、IGF−IRを標的とした抗IGF−IR抗体(Cancer Research,63,5073,2003、WO02/53596)、IGF−R阻害剤(WO99/28347)、あるいは血清中のIGFを抑制できるIGFBPが動物モデルにおいて抗腫瘍効果を示すことが報告されている(Cancer research,62,3530,2002)。
しかし、抗IGF−IR抗体では、マウスに移植されたエストロゲン非依存性増殖を示すヒト乳癌細胞の生着は阻害するものの、エストロゲン依存性増殖を示すヒト乳癌細胞の生着や生着したヒト乳癌細胞の増殖は抑制されないことが示されており、IGF−IRの作用阻害のみでは、十分な抗腫瘍効果が得られないことが示されている(Breast Cancer Research & Treatment,22,101,1992)。
IGFに対する抗体(以下、抗hIGF抗体と表記する)としては、種々の抗体が知られている。代表的なヒトIGF−Iに対する抗体(以下、抗hIGF−I抗体と表記する)としては抗hIGF−Iマウス抗体sm1.2(Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America,81,2389,1984)が、あるいはヒトIGF−IIに対する抗体(以下、抗hIGF−II抗体と表記する)としては、抗hIGF−IIマウス抗体S1F2(Endocrinology,124,870,1989)があげられる。sm1.2は、IGF−IIに対して40%の、SIF2はhIGF−Iに対して10%程度の交差反応性を有しており、両抗体ともそれぞれin vitroでのhIGF−IあるいはhIGF−II依存性の細胞増殖を阻害できることが知られている。
ヒト以外の動物の抗体、例えばマウス抗体をヒトに投与すると、マウス抗体が異物として認識されることにより副作用を惹起するばかりか、投与抗体の消失が早く治療上有用ではない。これらの問題点を解決するため、遺伝子組換え技術を利用してヒト以外の動物の抗体をヒト型キメラ抗体あるいはヒト型相補性決定領域(以下、CDRと表記する)移植抗体などのヒト化抗体にすることが試みられている。ヒト型キメラ抗体とは、抗体の可変領域(以下、V領域と表記する)がヒト以外の動物の抗体で、定常領域(以下、C領域と表記する)がヒト抗体である抗体であり(Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America,81,6851,1984)、ヒト型CDR移植抗体とは、ヒト以外の動物の抗体のV領域中のCDRのアミノ酸配列をヒト抗体の適切な位置に移植した抗体である(Nature,321,522,1986)。これらのヒト化抗体は、マウス抗体などのヒト以外の動物の抗体に比較してヒトへの臨床応用上、様々な利点を有している。例えば、免疫原性および血中での安定性に関しては、ヒト型キメラ抗体では、ヒトに投与した場合、マウス抗体に比べて血中半減期が約6倍伸びたことが報告されている(European Journal of Cancer,29A,492,1993)。ヒト型CDR移植抗体においても、サルを用いた実験でマウス抗体に比べ免疫原性が低下し、血中半減期が延長したことが報告されている(Cancer Research,56,1118,1996、Immunology,85,668,1995)。即ち、ヒト化抗体は、ヒト以外の動物の抗体に比べ、副作用が少なく、その治療効果が長期間持続することが期待される。また、ヒト化抗体は、遺伝子組換え技術を利用して作製するため、様々な形態の分子として作製することができる。最近の蛋白質工学、遺伝子工学の進歩により、ヒト化抗体を含めた抗体からFab、Fab’、F(ab’)、scFv(Science,242,423,1988)、dsFv(Molecular Immunology,32,249,1995)、CDRを含むペプチド(Journal of Biological Chemistry,271,2966,1996)などのより分子量の小さい抗体断片の作製が可能となっている。これらの抗体断片は、完全な抗体分子に比べ分子量が小さい為、標的組織への移行性に優れている(Cancer Research,52,3402,1992)。
【発明の開示】
本発明の目的は、IGF−IおよびIGF−IIと特異的に結合し、ヒトIGF−IおよびヒトIGF−IIの生物活性を阻害する能力を有する遺伝子組換え抗体または該抗体断片、該抗体または該抗体断片を生産する形質転換体、該抗体または該抗体断片の製造法および該抗体または該抗体断片を有効成分として含有する医薬等を提供することにある。
本発明は以下の(1)〜(28)に関する。
(1) ヒトインスリン様成長因子−I(IGF−I)およびヒトインスリン様成長因子−II(IGF−II)と特異的に結合し、ヒトIGF−IおよびヒトIGF−IIの生物活性を阻害する能力を有する遺伝子組換え抗体または該抗体断片。
(2) ヒトIGF−IおよびヒトIGF−IIに対する結合の強さが同程度である(1)に記載の遺伝子組換え抗体または該抗体断片。
(3) バイオセンサービアコアで測定されるヒトIGF−IおよびヒトIGF−IIに対する結合定数が1×10−1以上である(1)または(2)に記載の遺伝子組換え抗体または該抗体断片。
(4) 抗体分子のクラスがIgGである、(1)〜(3)のいずれか1項に記載の遺伝子組換え抗体または該抗体断片。
(5) 遺伝子組換え抗体がヒトIGFに対するモノクローナル抗体の重鎖可変領域(VH)および軽鎖可変領域(VL)の相補性決定領域(CDR)を含む、(1)〜(4)のいずれか1項に記載の遺伝子組換え抗体または該抗体断片。
(6) 遺伝子組換え抗体または抗体断片のVHの相補性決定領域(CDR)1、CDR2およびCDR3が、それぞれ配列番号5、6および7で表される(5)に記載の遺伝子組換え抗体または該抗体断片。
(7) 遺伝子組換え抗体または抗体断片のVLのCDR1、CDR2およびCDR3が、それぞれ配列番号8、9および10で表される(5)に記載の遺伝子組換え抗体または該抗体断片。
(8) 遺伝子組換え抗体または抗体断片のVHのCDR1、CDR2およびCDR3が、それぞれ配列番号5、6および7で表され、VLのCDR1、CDR2およびCDR3が、それぞれ配列番号8、9および10で表される(5)〜(7)のいずれか1項に記載の遺伝子組換え抗体または該抗体断片。
(9) 遺伝子組換え抗体または該抗体活性断片のVHが、配列番号11で表されるアミノ酸配列のうち1番目のGln、11番目のVal、42番目のGly、75番目のSer、77番目のAsn、84番目のAsn、93番目のVal、97番目のAla、98番目のArgから選ばれる少なくとも1つのアミノ酸が置換されたアミノ酸配列または配列番号54で表されるアミノ酸配列のうち49番目のSer、77番目のAsn、84番目のAsn、93番目のVal、97番目のAla、98番目のArgから選ばれる少なくとも1つのアミノ酸が置換されたアミノ酸配列を含む(5)〜(8)のいずれかに1項に記載の遺伝子組換え抗体または該抗体断片。
(10) 遺伝子組換え抗体または該抗体断片のVLが、配列番号14で表されるアミノ酸配列のうち4番目のMet、9番目のAsp、10番目のSer、11番目のLeu、15番目のLeu、22番目のAsn、35番目のTyr、39番目のPro、42番目のPro、45番目のLeu、46番目のLeu、69番目のAsp、70番目のPhe、71番目のThr、82番目のVal、84番目のValから選ばれる少なくとも1つのアミノ酸が置換されたアミノ酸配列または配列番号55で表されるアミノ酸配列のうち4番目のMet、9番目のSer、10番目のSer、11番目のLeu、15番目のVal、35番目のTyr、39番目のPro、42番目のAla、45番目のLeu、46番目のLeu、69番目のAsp、70番目のPhe、71番目のThr、82番目のPheから選ばれる少なくとも1つのアミノ酸が置換されたアミノ酸配列を含む(5)〜(8)のいずれか1項に記載の遺伝子組換え抗体または該抗体断片。
(11) 遺伝子組換え抗体または該抗体断片のVHが配列番号11で表されるアミノ酸配列のうち1番目のGln、11番目のVal、42番目のGly、75番目のSer、77番目のAsn、84番目のAsn、93番目のVal、97番目のAla、98番目のArgから選ばれる少なくとも1つのアミノ酸が置換されたアミノ酸配列または配列番号54で表されるアミノ酸配列のうち49番目のSer、77番目のAsn、84番目のAsn、93番目のVal、97番目のAla、98番目のArgから選ばれる少なくとも1つのアミノ酸が置換されたアミノ酸配列、およびVLが、配列番号14で表されるアミノ酸配列のうち、4番目のMet、9番目のAsp、10番目のSer、11番目のLeu、15番目のLeu、22番目のAsn、35番目のTyr、39番目のPro、42番目のPro、45番目のLeu、46番目のLeu、69番目のAsp、70番目のPhe、71番目のThr、82番目のVal、84番目のValから選ばれる少なくとも1つのアミノ酸が置換されたアミノ酸配列または配列番号55で表されるアミノ酸配列のうち4番目のMet、9番目のSer、10番目のSer、11番目のLeu、15番目のVal、35番目のTyr、39番目のPro、42番目のAla、45番目のLeu、46番目のLeu、69番目のAsp、70番目のPhe、71番目のThr、82番目のPheから選ばれる少なくとも1つのアミノ酸が置換されたアミノ酸配列を含む(5)〜(10)のいずれかに1項に記載の遺伝子組換え抗体または該抗体断片。
(12) 遺伝子組換え抗体または該抗体断片のVHが配列番号11で表されるアミノ酸配列のうち1番目のGln、11番目のVal、42番目のGly、75番目のSer、77番目のAsn、84番目のAsn、93番目のVal、97番目のAla、98番目のArgから選ばれる少なくとも1つのアミノ酸が置換されたアミノ酸配列、およびVLが、配列番号14で表されるアミノ酸配列のうち、4番目のMet、9番目のAsp、10番目のSer、11番目のLeu、15番目のLeu、22番目のAsn、35番目のTyr、39番目のPro、42番目のPro、45番目のLeu、46番目のLeu、69番目のAsp、70番目のPhe、71番目のThr、82番目のVal、84番目のValから選ばれる少なくとも1つのアミノ酸が置換されたアミノ酸配列を含む(5)〜(11)のいずれかに1項に記載の遺伝子組換え抗体または該抗体断片。
(13) 遺伝子組換え抗体または該抗体断片のVHが配列番号54で表されるアミノ酸配列のうち49番目のSer、77番目のAsn、84番目のAsn、93番目のVal、97番目のAla、98番目のArgから選ばれる少なくとも1つのアミノ酸が置換されたアミノ酸配列を含み、かつVLが、配列番号55で表されるアミノ酸配列のうち4番目のMet、9番目のSer、10番目のSer、11番目のLeu、15番目のVal、35番目のTyr、39番目のPro、42番目のAla、45番目のLeu、46番目のLeu、69番目のAsp、70番目のPhe、71番目のThr、82番目のPheから選ばれる少なくとも1つのアミノ酸が置換されたアミノ酸配列を含む(5)〜(11)のいずれかに1項に記載の遺伝子組換え抗体または該抗体断片。
(14) 遺伝子組換え抗体または該抗体断片のVHが配列番号26で表されるアミノ酸配列を含む(5)〜(8)または(12)のいずれかに1項に記載の遺伝子組換え抗体または該抗体断片。
(15) 遺伝子組換え抗体または該抗体断片のVLが配列番号27、28または29で表されるアミノ酸配列を含む請求項5〜8または12のいずれかに1項に記載の遺伝子組換え抗体または該抗体断片。
(16) 遺伝子組換え抗体または該抗体断片のVHが配列番号26で表されるアミノ酸配列を含み、かつVLが配列番号27、28または29で表されるアミノ酸配列を含む(5)〜(8)、(12)、(14)または(15)のいずれかに1項に記載の遺伝子組換え抗体または該抗体断片。
(17) 遺伝子組換え抗体または該抗体断片のVHが配列番号26で表されるアミノ酸配列を含み、かつVLが配列番号27で表されるアミノ酸配列を含む(5)〜(8)、(12)、(14)〜(16)のいずれかに1項に記載の遺伝子組換え抗体または該抗体断片。
(18) 遺伝子組換え抗体または該抗体断片のVHが配列番号26で表されるアミノ酸配列を含み、かつVLが配列番号28で表されるアミノ酸配列を含む(5)〜(8)、(12)、(14)〜(16)のいずれかに1項に記載の遺伝子組換え抗体または該抗体断片。
(19) 遺伝子組換え抗体または該抗体断片のVHが配列番号26で表されるアミノ酸配列を含み、かつVLが配列番号29で表されるアミノ酸配列を含む(5)〜(8)、(12)、(14)〜(16)のいずれかに1項に記載の遺伝子組換え抗体または該抗体断片。
(20) 遺伝子組換え抗体がヒト型CDR移植抗体である(1)〜(19)のいずれか1項に記載の遺伝子組換え抗体または該抗体断片。
(21) 抗体断片が、Fab、Fab’、F(ab’)、一本鎖抗体(scFv)、二量体化可変領域(diabody)、ジスルフィド安定化可変領域(dsFv)およびCDRを含むペプチドから選ばれる抗体断片である(1)〜(19)のいずれか1項に記載の抗体断片。
(22) (1)〜(21)のいずれか1項に記載の遺伝子組換え抗体または該抗体断片をコードするDNA。
(23) (22)に記載のDNAを含有する発現ベクター。
(24) (23)に記載の発現ベクターを導入して得られる形質転換体。
(25) (24)に記載の形質転換体を培地中で培養し、培養物中に(1)〜(21)のいずれか1項に記載の遺伝子組換え抗体または該抗体断片を生成蓄積させ、該培養物から該遺伝子組換え抗体または該抗体断片を単離し、精製する工程を含む、遺伝子組換え抗体または該抗体断片を製造する方法。
(26) (1)〜(21)のいずれか1項に記載の遺伝子組換え抗体または該抗体断片を有効成分として含有する医薬。
(27) (1〜(21)のいずれか1項に記載の遺伝子組換え抗体または該抗体断片を有効成分として含有するIGF関連疾患の治療薬。
(28) IGF関連疾患が、癌、末端肥大症および糖尿病性合併症である(27)に記載の治療薬。
本発明の遺伝子組換え抗体または該抗体断片としては、hIGF−IおよびhIGF−IIと特異的に結合し、hIGF−IおよびhIGF−IIの生物学的活性を阻害する遺伝子組換え抗体または該抗体断片であれば、いかなる遺伝子組換え抗体または該抗体断片も包含されるが、hIGF−IおよびhIGF−IIに対する結合の強さが同程度である遺伝子組換え抗体または該抗体断片が好ましい。
本発明のhIGF−IおよびhIGF−IIと特異的に結合できる遺伝子組換え抗体または該抗体断片は、例えば、hIGF−Iに対するモノクローナル抗体でhIGF−IIに対する交差反応性を有するモノクローナル抗体あるいはhIGF−IIに対するモノクローナル抗体でhIGF−Iに対する交差反応性を有するモノクローナル抗体から、遺伝子工学的手法を用いて作製することができる。
抗体のhIGF−IおよびhIGF−IIに対する結合の強さが同程度であるとは、抗体がhIGF−IおよびhIGF−IIに対して同程度の結合活性を有していることをいう。
結合活性は、公知の測定法により数値化することができる。公知の測定法としては、酵素免疫学的測定法(以下、ELISA法と記す)や表面プラズモン共鳴の原理(Journal of Immunological Method、145,229,1991)などを利用したバイオセンサー法(以下、バイオセンサービアコアと記す)などが用いられる。バイオセンサービアコアによる測定は、2分子間の結合と解離に伴うセンサーチップ表面で生じる微量な質量変化を光学現象により、SPRシグナルとして検出するものである。
ELISA法による測定法としては、例えば、固相化した抗原に対して結合する抗体量を測定するELISA法で得られるIGF−IとIGF−IIに対する結果を比較する方法や、同様のELISA法において抗体の反応時に抗原を同時に添加して、固相化した抗原に結合する抗体量の減少を測定する競合ELISA法(Antibodies;A laboratory Manual,Cold Spring harbor Laboratory,Chapter 14,1988)で得られるIGF−IとIGF−IIに対する結果を比較する方法などによって、抗体のIGF−IおよびIGF−IIの両者に対する結合活性を測定する方法などがあげられる。
抗体がhIGF−IおよびhIGF−IIに対して同程度の結合活性を有していることとは、上記の測定法により数値化された抗体のhIGF−IおよびhIGF−IIに対する結合活性を比較して、抗体のhIGF−Iに対する結合活性を1としたとき、hIGF−IIに対する結合活性が0.1〜10、好ましくは0.2〜5、さらに好ましくは0.5〜2、最も好ましくは1であることをいう。
hIGF−IおよびhIGF−II両者の生物活性を阻害する能力とは、hIGF−IまたはhIGF−IIに特異的な受容体を介するhIGF−IおよびhIGF−IIからのシグナル伝達を阻害して、hIGF−IおよびhIGF−IIの持つ生物学的活性を阻害することなどがあげられ、例えば、hIGF−IおよびhIGF−IIと、hIGF−IまたはhIGF−IIに特異的な受容体との結合を阻害することがあげられる。このような抗体が持つ抗原の生物活性を阻害する活性は、抗体の中和活性ともいう。
hIGF−IおよびhIGF−IIの持つ生物学的活性としては、hIGF−IまたはhIGF−IIに特異的な受容体を介して、細胞の増殖を促進する活性などがあげられる。
hIGF−IまたはhIGF−IIに特異的な受容体とは、hIGF−IまたはhIGF−IIと結合することができる受容体をいい、IGF−I受容体、IGF−II受容体、インスリン受容体およびIGF−Iとインスリン受容体のハイブリッド受容体などがあげられる。
本発明の遺伝子組換え抗体または該抗体断片としては、hIGF−IおよびhIGF−IIと特異的に結合し、hIGF−IおよびhIGF−IIの機能を阻害する能力を有していればいかなる遺伝子組換え抗体または該抗体断片も包含されるが、バイオセンサービアコアで測定されるヒトIGF−IおよびヒトIGF−IIに対する結合定数が好ましくは1×10−1以上、より好ましくは2×10−1以上、さらに好ましくは3×10−1以上、最も好ましくは5×10−1以上である遺伝子組換え抗体または該抗体断片が好適に用いられる。
本発明の遺伝子組換え抗体は、遺伝子工学的手法を用いて作製される抗体をいう。このような遺伝子組換え抗体としては、好ましくはヒト抗体の定常領域を含む遺伝子組換え抗体、より好ましくはヒト抗体の定常領域と可変領域のフレームワーク(以下、FRと記す)を含んでなる遺伝子組換え抗体が望ましい。このような遺伝子組換え抗体は、例えば、ヒト型キメラ抗体、ヒト型相補性決定領域(以下、CDRと記す)移植抗体、遺伝子組換え非ヒト動物によって作製されたハイブリドーマより生産されるヒト抗体、遺伝子工学的手法を用いてモノクローン化されたヒト抗体などがあげられる。また、人為的に作製された抗体遺伝子ライブラリーから選抜された抗体のCDRを、適当なヒト抗体のFRなどと連結させ、さらにヒト抗体の定常領域などと連結させて作製された遺伝子組換え抗体なども含まれる。
ヒト型キメラ抗体は、ヒト以外の哺乳動物の抗体重鎖可変領域(以下、可変領域はV領域、重鎖はH鎖としてHVまたはVHと記す)および抗体軽鎖可変領域(以下、軽鎖はL鎖としてLVまたはVLと記す)とヒト抗体の重鎖定常領域(以下、CHと記す)およびヒト抗体の軽鎖定常領域(以下、CLと記す)とからなる抗体を意味する。ヒト以外の哺乳動物としては、マウス、ラット、ハムスター、ラビットなどのハイブリドーマを作製することが可能であれば、いかなるものも用いることができる。
ヒト型キメラ抗体は、モノクローナル抗体を生産するハイブリドーマより、VHおよびVLをコードするcDNAを取得し、ヒト抗体CHおよびヒト抗体CLをコードする遺伝子を有する宿主細胞用発現ベクターにそれぞれ挿入してヒト型キメラ抗体発現ベクターを構築し、宿主細胞へ導入することにより発現させ、製造することができる。
ヒト型キメラ抗体のCHとしては、ヒトイムノグロブリン(以下、hIgと表記する)に属すればいかなるものでもよいが、hIgGクラスのものが好適であり、更にhIgGクラスに属するγ1、γ2、γ3およびγ4クラスといったサブクラスのいずれも用いることができる。また、ヒト型キメラ抗体のCLとしては、hIgに属すればいかなるものでもよく、κクラスあるいはλクラスのものを用いることができる。
本発明のヒト型キメラ抗体としては、hIGF−IおよびhIGF−IIに特異的に結合し、hIGF−IおよびhIGF−IIの機能を阻害する能力を有するヒト型キメラ抗体であればいかなるものでも含まれるが、具体的には抗hIGFラットモノクローナルKM1468(FERM BP−7978)を元に製造されるヒト型キメラ抗体、VHが配列番号2および/またはVLが配列番号4に記載のアミノ酸配列を含むヒト型キメラ抗体、形質転換体KM3002(FERM BP−7996)により生産される抗hIGFヒト型キメラ抗体KM3002などがあげられる。
ヒト型CDR移植抗体は、ヒト以外の動物の抗体のVHおよびVLのCDRをヒト抗体のVHおよびVL中の適切な位置に移植して作製される抗体を意味する。
ヒト型CDR移植抗体は、ヒト以外の動物の抗体のVHおよびVLのCDRのアミノ酸配列を、ヒト抗体のVHおよびVLのFR配列に移植したV領域のアミノ酸配列を設計し、該アミノ酸配列をコードするcDNAを構築し、ヒト抗体のCHおよびCLをコードする遺伝子を有する宿主細胞用発現ベクターにそれぞれ挿入してヒト型CDR移植抗体発現ベクターを構築し、該発現ベクターを宿主細胞へ導入することによりヒト型CDR移植抗体を発現させ、製造することができる。ヒト以外の動物の抗体のVHおよびVLのCDRのアミノ酸配列を、ヒト抗体のVHおよびVLのFR配列に移植したV領域アミノ酸配列は、数箇所の変異を導入した配列を設計してもよい。この様にして設計されたアミノ酸配列をコードするcDNAは、Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Lab.Press New York,1989、Current Protocols in Molecular Biology、Nucleic Acids Research,10,6487(1982)、Proc.Natl.Acad.Sci.,USA,79,6409(1982)、Gene,34,315(1985)、Nucleic Acids Research,13,4431(1985)、Proc.Natl.Acad.Sci.,USA,82,488(1985)等に記載の部位特異的変異導入法を用いて、取得することができる。置換されるアミノ酸の数は1個以上でありその数は特に限定されないが、上記の部位特異的変異導入法等の周知の技術により、欠失、置換もしくは付加できる程度の数であり、例えば、1〜数十個、好ましくは1〜20個、より好ましくは1〜10個、さらに好ましくは1〜5個である。
ヒト型CDR移植抗体のCHとしては、hIgに属すればいかなるものでもよいが、hIgGクラスのものが好適であり、更にhIgGクラスに属するγ1、γ2、γ3およびγ4クラスといったサブクラスのいずれも用いることができる。また、ヒト型キメラ抗体のCLとしては、hIgに属すればいかなるものでもよく、κクラスあるいはλクラスのものを用いることができる。
本発明のヒト型CDR移植抗体としては、hIGF−IおよびhIGF−IIに特異的に結合し、hIGF−IおよびhIGF−IIの機能を阻害する能力を有するヒト型CDR移植抗体であればいかなるものでも含まれ、好ましくは抗ヒトIGF抗体のVHおよびVLのCDRを含むヒト型CDR移植抗体、ラットハイブリドーマKM1468(FERM BP−7978)により生産される抗hIGFラットモノクローナルKM1468のVHおよびVLのCDRを含むヒト型CDR移植抗体、抗体のVHのCDR1、CDR2、CDR3がそれぞれ配列番号5、6、7および/または抗体のVLのCDR1、CDR2、CDR3がそれぞれ配列番号8、9、10で表されるアミノ酸配列を含むヒト型CDR移植抗体などがあげられる。
これらのヒト型CDR移植抗体組成物のなかでも、抗体のVHが配列番号11で表されるアミノ酸配列のうち1番目のGln、11番目のVal、42番目のGly、75番目のSer、77番目のAsn、84番目のAsn、93番目のVal、97番目のAla、98番目のArgから選ばれる少なくとも1つのアミノ酸が置換されたアミノ酸配列および配列番号54で表されるアミノ酸配列のうち49番目のSer、77番目のAsn、84番目のAsn、93番目のVal、97番目のAla、98番目のArgから選ばれる少なくとも1つのアミノ酸が置換されたアミノ酸配列から選ばれるアミノ酸配列を含むヒト型CDR移植抗体、抗体のVLが配列番号14で表されるアミノ酸配列のうち、4番目のMet、9番目のAsp、10番目のSer、11番目のLeu、15番目のLeu、22番目のAsn、35番目のTyr、39番目のPro、42番目のPro、45番目のLeu、46番目のLeu、69番目のAsp、70番目のPhe、71番目のThr、82番目のVal、84番目のValから選ばれる少なくとも1つのアミノ酸が置換されたアミノ酸配列および配列番号55で表されるアミノ酸配列のうち4番目のMet、9番目のSer、10番目のSer、11番目のLeu、15番目のVal、35番目のTyr、39番目のPro、42番目のAla、45番目のLeu、46番目のLeu、69番目のAsp、70番目のPhe、71番目のThr、82番目のPheから選ばれる少なくとも1つのアミノ酸が置換されたアミノ酸配列から選ばれるアミノ酸配列を含むヒト型CDR移植抗体、抗体のVHが配列番号11で表されるアミノ酸配列のうち1番目のGln、11番目のVal、42番目のGly、75番目のSer、77番目のAsn、84番目のAsn、93番目のVal、97番目のAla、98番目のArgから選ばれる少なくとも1つのアミノ酸が置換されたアミノ酸配列および配列番号54で表されるアミノ酸配列のうち49番目のSer、77番目のAsn、84番目のAsn、93番目のVal、97番目のAla、98番目のArgから選ばれる少なくとも1つのアミノ酸が置換されたアミノ酸配列から選ばれるアミノ酸配列を含み、かつ抗体のVLが配列番号14で表されるアミノ酸配列のうち、4番目のMet、9番目のAsp、10番目のSer、11番目のLeu、15番目のLeu、22番目のAsn、35番目のTyr、39番目のPro、42番目のPro、45番目のLeu、46番目のLeu、69番目のAsp、70番目のPhe、71番目のThr、82番目のVal、84番目のValから選ばれる少なくとも1つのアミノ酸が置換されたアミノ酸配列および配列番号55で表されるアミノ酸配列のうち4番目のMet、9番目のSer、10番目のSer、11番目のLeu、15番目のVal、35番目のTyr、39番目のPro、42番目のAla、45番目のLeu、46番目のLeu、69番目のAsp、70番目のPhe、71番目のThr、82番目のPheから選ばれる少なくとも1つのアミノ酸が置換されたアミノ酸配列から選ばれるアミノ酸配列を含むヒト型CDR移植抗体が好ましく、抗体のVHが配列番号11で表されるアミノ酸配列のうち1番目のGln、11番目のVal、42番目のGly、75番目のSer、77番目のAsn、84番目のAsn、93番目のVal、97番目のAla、98番目のArgから選ばれる少なくとも1つのアミノ酸が置換されたアミノ酸配列を含み、かつ抗体のVLが配列番号14で表されるアミノ酸配列のうち、4番目のMet、9番目のAsp、10番目のSer、11番目のLeu、15番目のLeu、22番目のAsn、35番目のTyr、39番目のPro、42番目のPro、45番目のLeu、46番目のLeu、69番目のAsp、70番目のPhe、71番目のThr、82番目のVal、84番目のValから選ばれる少なくとも1つのアミノ酸が置換されたアミノ酸配列を含むヒト型CDR移植抗体、抗体のVHが配列番号11で表されるアミノ酸配列のうち1番目のGln、11番目のVal、42番目のGly、75番目のSer、77番目のAsn、84番目のAsn、93番目のVal、97番目のAla、98番目のArgから選ばれる少なくとも1つのアミノ酸が置換されたアミノ酸配列を含み、かつ抗体のVLが配列番号55で表されるアミノ酸配列のうち4番目のMet、9番目のSer、10番目のSer、11番目のLeu、15番目のVal、35番目のTyr、39番目のPro、42番目のAla、45番目のLeu、46番目のLeu、69番目のAsp、70番目のPhe、71番目のThr、82番目のPheから選ばれる少なくとも1つのアミノ酸が置換されたアミノ酸配列を含むヒト型CDR移植抗体、抗体のVHが配列番号54で表されるアミノ酸配列のうち49番目のSer、77番目のAsn、84番目のAsn、93番目のVal、97番目のAla、98番目のArgから選ばれる少なくとも1つのアミノ酸が置換されたアミノ酸配列を含み、かつ抗体のVLが配列番号14で表されるアミノ酸配列のうち、4番目のMet、9番目のAsp、10番目のSer、11番目のLeu、15番目のLeu、22番目のAsn、35番目のTyr、39番目のPro、42番目のPro、45番目のLeu、46番目のLeu、69番目のAsp、70番目のPhe、71番目のThr、82番目のVal、84番目のValから選ばれる少なくとも1つのアミノ酸が置換されたアミノ酸配列を含むヒト型CDR移植抗体、抗体のVHが配列番号54で表されるアミノ酸配列のうち49番目のSer、77番目のAsn、84番目のAsn、93番目のVal、97番目のAla、98番目のArgから選ばれる少なくとも1つのアミノ酸が置換されたアミノ酸配列を含み、かつ抗体のVLが配列番号55で表されるアミノ酸配列のうち4番目のMet、9番目のSer、10番目のSer、11番目のLeu、15番目のVal、35番目のTyr、39番目のPro、42番目のAla、45番目のLeu、46番目のLeu、69番目のAsp、70番目のPhe、71番目のThr、82番目のPheから選ばれる少なくとも1つのアミノ酸が置換されたアミノ酸配列を含むヒト型CDR移植抗体がより好ましい。
具体的には、抗体のVHが配列番号26で表されるアミノ酸配列を含むヒト型CDR移植抗体、抗体のVLが配列番号27で表されるアミノ酸配列、配列番号28で表されるアミノ酸配列または配列番号29で表されるアミノ酸配列を含むヒト型CDR移植抗体、抗体のVHが配列番号26で表されるアミノ酸配列を含み、かつ抗体のVLが配列番号27で表されるアミノ酸配列を含むヒト型CDR移植抗体、抗体のVHが配列番号26で表されるアミノ酸配列を含み、かつ抗体のVLが配列番号28で表されるアミノ酸配列を含むヒト型CDR移植抗体および抗体のVHが配列番号26で表されるアミノ酸配列を含み、かつ抗体のVLが配列番号29で表されるアミノ酸配列を含むヒト型CDR移植抗体があげられる。
ヒト抗体としては、遺伝子組換え非ヒト動物から作製されたハイブリドーマより生産されるヒト抗体、あるいは遺伝子工学的手法を用いてモノクローン化されたヒト抗体などがあげられる。
本来ヒト抗体とは、天然にヒト体内に存在する抗体を示すが、最近の遺伝子工学的、細胞工学的、発生工学的な技術の進歩によりモノクローナルなヒト抗体の作製が可能となった。
本発明のヒト抗体としては、hIGF−IおよびhIGF−IIに特異的に結合し、hIGF−IおよびhIGF−IIの機能を阻害する能力を有するヒト抗体であればいかなるものでも含まれるが、具体的には遺伝子工学的手法あるいは細胞工学的手法により、ヒト抗体産生細胞を作製し、該細胞により生産されたヒト抗体や、あるいはヒト抗体産生トランスジェニック非ヒト動物から通常のハイブリドーマ作製法により得られたモノクローナル抗体などが含まれる。
遺伝子工学的手法によりヒト抗体産生細胞を作製する方法としては、例えば、ヒトB細胞から調製した抗体遺伝子をファージ遺伝子に挿入することによりFab(Fragment of antigen binding)、一本鎖抗体等の抗体断片をファージ表面に発現させたヒト抗体ファージライブラリーを作製し、抗原を固定化した基質に対する結合活性を指標として所望の抗原結合活性を有する抗体断片を発現しているファージを回収する方法があげられる。該抗体断片は、更に蛋白質工学的手法により、2本の完全なH鎖および2本の完全なL鎖からなるヒト抗体分子へも変換する方法などがあげられる。
細胞工学的手法によりヒト抗体産生細胞を作製する方法としては、例えば、ヒト末梢血リンパ球を単離し、EBウイルスなどを感染させて不死化させた後、限界希釈法によるクローニングを経て、該抗体を産生する継代培養が可能なリンパ球を単離する方法があげられる。該リンパ球を培養し、該培養物中より目的の抗体を精製し、取得する方法などがあげられる。
人為的に作製された抗体遺伝子ライブラリーから選抜された抗体のCDRを、適当なヒト抗体のFRなどと連結させ、さらにヒト抗体の定常領域などと連結し、遺伝子組換え抗体を作製する場合の人為的抗体遺伝子ライブラリーとしては、抗体産生細胞の集団から作製された抗体遺伝子ライブラリーや、該抗体遺伝子ライブラリーに無作為変異を導入してライブラリーのレパートリーが増大された抗体遺伝子ライブラリーなどが含まれる。
本発明の抗体断片としては、上記抗体の可変領域の一部あるいは全部を含み、hIGF−IおよびhIGF−IIに特異的に結合し、hIGF−IおよびhIGF−IIの機能を阻害する能力を有する抗体活性断片などが含まれる。抗体断片としては、以下に示す、Fab、F(ab’)、Fab’、scFv、diabody、dsFv、CDRを含むペプチドなどがあげられる。
Fabは、IgGを蛋白質分解酵素パパインで処理して得られる断片のうち(H鎖の224番目のアミノ酸残基で切断される)、H鎖のN末端側約半分とL鎖全体がジスルフィド結合で結合した分子量約5万の抗原結合活性を有する抗体断片である。
本発明のFabは、hIGF−IおよびhIGF−IIに特異的に結合し、hIGF−IおよびhIGF−IIの機能を阻害する能力を有する抗体を蛋白質分解酵素パパインで処理して得ることができる。または、該抗体のFabをコードするDNAを原核生物用発現ベクターあるいは真核生物用発現ベクターに挿入し、該ベクターを原核生物あるいは真核生物へ導入することにより発現させ、Fabを製造することができる。
F(ab’)は、IgGを蛋白質分解酵素ペプシンで処理して得られる断片のうち(H鎖の234番目のアミノ酸残基で切断される)、Fabがヒンジ領域のジスルフィド結合を介して結合されたものよりやや大きい、分子量約10万の抗原結合活性を有する抗体断片である。
本発明のF(ab’)は、hIGF−IおよびhIGF−IIに特異的に結合し、hIGF−IおよびhIGF−IIの機能を阻害する能力を有する抗体を蛋白質分解酵素ペプシンで処理して得ることができる。または、下記のFab’をチオエーテル結合あるいはジスルフィド結合させ、作製することができる。
Fab’は、上記F(ab’)のヒンジ領域のジスルフィド結合を切断した分子量約5万の抗原結合活性を有する抗体断片である。
本発明のFab’は、hIGF−IおよびhIGF−IIに特異的に結合し、hIGF−IおよびhIGF−IIの機能を阻害する能力を有するF(ab’)を還元剤ジチオスレイトール処理して得ることができる。または、該抗体のFab’断片をコードするDNAを原核生物用発現ベクターあるいは真核生物用発現ベクターに挿入し、該ベクターを原核生物あるいは真核生物へ導入することにより発現させ、Fab’を製造することができる。
scFvは、1本のVHと1本のVLとを適当なペプチドリンカー(以下、Pと記す)を用いて、VH−P−VLないしはVL−P−VHの順で連結されたポリペプチドで、抗原結合活性を有する抗体断片である。
本発明のscFvは、hIGF−IおよびhIGF−IIに特異的に結合し、hIGF−IおよびhIGF−IIの機能を阻害する能力を有する抗体のVHおよびVLをコードするcDNAを取得し、scFvをコードするDNAを構築し、該DNAを原核生物用発現ベクターあるいは真核生物用発現ベクターに挿入し、該発現ベクターを原核生物あるいは真核生物へ導入することにより発現させ、scFvを製造することができる。
diabodyは、scFvが二量体化した抗体断片で、二価の抗原結合活性を有する抗体断片である。diabodyが持つ二価の抗原結合活性は、同一であることもできるし、一方を異なる抗原結合活性とすることもできる。
本発明のdiabodyは、hIGF−IおよびhIGF−IIに特異的に結合し、hIGF−IおよびhIGF−IIの機能を阻害する能力を有する抗体のVHおよびVLをコードするcDNAを取得し、scFvをコードするDNAをPのアミノ酸配列の長さが8残基以下となるように構築し、該DNAを原核生物用発現ベクターあるいは真核生物用発現ベクターに挿入し、該発現ベタターを原核生物あるいは真核生物へ導入することにより発現させ、diabodyを製造することができる。
dsFvは、VHおよびVL中のそれぞれ1アミノ酸残基をシステイン残基に置換したポリペプチドを該システイン残基間のジスルフィド結合を介して結合させたものをいう。システイン残基に置換するアミノ酸残基はReiterらにより示された方法(Protein Engineering,7,697−704,1994)に従って、抗体の立体構造予測に基づいて選択することができる。
本発明のdsFvは、hIGF−IおよびhIGF−IIに特異的に結合し、hIGF−IおよびhIGF−IIの機能を阻害する能力を有する抗体のVHおよびVLをコードするcDNAを取得し、dsFvをコードするDNAを構築し、該DNAを原核生物用発現ベクターあるいは真核生物用発現ベクターに挿入し、該発現ベクターを原核生物あるいは真核生物へ導入することにより発現させ、dsFvを製造することができる。
CDRを含むペプチドは、VHまたはVLのCDRの少なくとも1領域以上を含んで構成される。複数のCDRを含むペプチドは、直接または適当なペプチドリンカーを介して結合させることができる。
本発明のCDRを含むペプチドは、hIGF−IおよびhIGF−IIに特異的に結合し、hIGF−IおよびhIGF−IIの機能を阻害する能力を有する抗体のVHおよびVLのCDRをコードするDNAを構築し、該DNAを原核生物用発現ベクターあるいは真核生物用発現ベクターに挿入し、該発現ベクターを原核生物あるいは真核生物へ導入することにより発現させ、CDRを含むペプチドを製造することができる。
また、CDRを含むペプチドは、Fmoc法(フルオレニルメチルオキシカルボニル法)、tBoc法(t−ブチルオキシカルボニル法)などの化学合成法によって製造することもできる。
本発明の抗体は、本発明の抗体および抗体断片に放射性同位元素、低分子の薬剤、高分子の薬剤、蛋白質などを遺伝子工学的あるいは化学的に結合させた抗体の誘導体を包含する。
本発明の遺伝子工学的に結合させた抗体の誘導体は、hIGF−IおよびhIGF−IIに特異的に結合し、hIGF−IおよびhIGF−IIの機能を阻害する能力を有する抗体および抗体断片をコードするDNAと、結合させたい蛋白質をコードするDNAを連結させて発現用ベクターに挿入し、該発現ベクターを適当な宿主細胞へ導入し、発現させることにより製造することができる。
本発明の化学的に結合させた抗体の誘導体は、hIGF−IおよびhIGF−IIに特異的に結合し、hIGF−IおよびhIGF−IIの機能を阻害する能力を有する抗体および抗体断片のH鎖あるいはL鎖のN末端側あるいはC末端側、抗体および抗体断片中の適当な置換基あるいは側鎖、さらには抗体および抗体断片中の糖鎖などに放射性同位元素、低分子の薬剤、高分子の薬剤、蛋白質などを化学的手法(抗体工学入門、金光修著、地人書館、1994)により結合させることにより製造することができる。
放射性同位元素としては、131I、125Iなどがあげられ、例えば、クロラミンT法などにより抗体に結合させることができる。
低分子の薬剤としては、ナイトロジェン・マスタード、サイクロフォスファミドなどのアルキル化剤、5−フルオロウラシル、メソトレキセートなどの代謝拮抗剤、ダウノマイシン、ブレオマイシン、マイトマイシンC、ダウノルビシン、ドキソルビシンなどの抗生物質、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビンデシンのような植物アルカロイド、タモキシフェン、デキサメタソンなどのホルモン剤などの抗癌剤(臨床腫瘍学、日本臨床腫瘍研究会編、癌と化学療法社、1996)、またはハイドロコーチゾン、プレドニゾンなどのステロイド剤、アスピリン、インドメタシンなどの非ステロイド剤、金チオマレート、ペニシラミンなどの免疫調節剤、サイクロフォスファミド、アザチオプリンなどの免疫抑制剤、マレイン酸クロルフェニラミン、クレマシチンのような抗ヒスタミン剤などの抗炎症剤(炎症と抗炎症療法、医歯薬出版株式会社、1982)などがあげられる。例えば、ダウノマイシンと抗体を結合させる方法としては、グルタールアルデヒドを介してダウノマイシンと抗体のアミノ基間を結合させる方法、水溶性カルボジイミドを介してダウノマイシンのアミノ基と抗体のカルボキシル基を結合させる方法などがあげられる。
高分子の薬剤としては、ポリエチレングリコール(以下、PEGと記す)、アルブミン、デキストラン、ポリオキシエチレン、スチレンマレイン酸コポリマー、ポリビニルピロリドン、ピランコポリマー、ヒドロキシプロピルメタクリルアミドなどがあげられる。これらの高分子化合物を抗体および抗体断片に結合させることにより、(1)化学的、物理的あるいは生物的な種々の因子に対する安定性の向上、(2)血中半減期の顕著な延長、(3)免疫原性の消失、抗体産生の抑制、などの効果が期待される(バイオコンジュゲート医薬品、廣川書店、1993)。例えば、PEGと抗体を結合させる方法としては、PEG化修飾試薬と反応させる方法などがあげられる(バイオコンジュゲート医薬品、廣川書店、1993)。PEG化修飾試薬としては、リジンのε−アミノ基の修飾剤(特昭61−178926)、アスパラギン酸およびグルタミン酸のカルボキシル基の修飾剤(特昭56−23587)、アルギニンのグアニジノ基の修飾剤(特平2−117920)などがあげられる。
蛋白質としては、免疫担当細胞を活性化するサイトカイン、例えば、ヒトインターロイキン2(以下、hIL−2と記す)、ヒト顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(以下、hGM−CSFと記す)、ヒトマクロファージコロニー刺激因子(以下、hM−CSFと記す)、ヒトインターロイキン12(以下、hIL−12と記す)などがあげられる。また、癌細胞を直接障害する活性を有するリシンやジフテリア毒素などの毒素を用いることができる。例えば、蛋白質との融合抗体ついては、抗体および抗体断片をコードするcDNAと蛋白質をコードするcDNAを連結させた融合抗体をコードするDNAを構築し、該DNAを原核生物あるいは真核生物用発現ベクターに挿入し、該発現ベクターを原核生物あるいは真核生物へ導入することにより発現させ、融合抗体を製造することができる。
以下に、hIGF−IおよびhIGF−IIに特異的に結合し、かつ、hIGF−IおよびhIGF−IIの機能を阻害する能力を有するヒト型キメラ抗体およびヒト型CDR移植抗体の作製方法、該抗体断片の作製方法、ならびにそれらの活性の評価方法、および本発明のヒト化抗体または該抗体断片の使用方法について説明する。
1.ヒト化抗体の作製
(1)ヒト化抗体発現用ベクターの構築
ヒト化抗体発現用ベクターとしては、ヒト抗体のCHおよび/またはCLをコードする遺伝子が組み込まれた抗体発現用ベクターは、動物細胞用発現ベクターにヒト抗体のCHおよびCLをコードする遺伝子をそれぞれクローニングすることにより構築することができる。
ヒト抗体のC領域は任意のヒト抗体のCHおよびCLであることができ、例えば、ヒト抗体のH鎖のIgG1サブクラスのC領域(以下、hCγ1と記す)およびヒト抗体のL鎖のκクラスのC領域(以下、hCκと記す)などがあげられる。ヒト抗体のCHおよびCLをコードする遺伝子としてはエキソンとイントロンからなる染色体DNAあるいはcDNAを用いることもできる。
動物細胞用発現ベクターとしては、ヒト抗体のC領域をコードする遺伝子を組込み発現できるものであればいかなるものでも用いることができる。例えば、pAGE107(Cytotechnology,,133,1990)、pAGE103(Journal of Biochemistry,101,1307,1987)、pHSG274(Gene,27,223,1984)、pKCR(Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America,78,1527,1981)、pSG1βd2−4(Cytotechnology,,173,1990)などがあげられる。動物細胞用発現ベクターに用いるプロモーターとエンハンサーとしては、SV40の初期プロモーターとエンハンサー(Journal of Biochemistry,101,1307,1987)、モロニーマウス白血病ウイルスのLTRプロモーターとエンハンサー(Biochemical & Biophysical Research Communications,149,960,1987)、イムノグロブリンH鎖のプロモーター(Cell,41,479,1985)とエンハンサー(Cell,33,717,1983)などがあげられる。
ヒト化抗体発現用ベクターは、抗体H鎖およびL鎖が別々のベクター上に存在するタイプあるいは同一のベクター上に存在するタイプ(以下、タンデム型と記す)のどちらでも用いることができるが、ヒト化抗体発現ベクターの構築の容易さ、動物細胞への導入の容易さ、動物細胞内での抗体H鎖およびL鎖の発現量のバランスが均衡するなどの点からタンデム型のヒト化抗体発現用ベクターの方が好ましい(Journal of Immunological Methods,167,271,1994)。タンデム型のヒト化抗体発現用ベクターとしては、pKANTEX93(WO97/10354)、pEE18(Hybridoma,17,559,1998)などがあげられる。
構築したヒト化抗体発現用ベクターは、ヒト型キメラ抗体およびヒト型CDR移植抗体の動物細胞での発現に使用できる。
(2)ヒト以外の動物の抗体のV領域をコードするcDNAの取得およびアミノ酸配列の解析
ヒト以外の動物の抗体、例えば、マウス抗体のVHおよびVLをコードするcDNAは以下のようにして取得する。
マウス抗体などを産生するハイブリドーマよりmRNAを抽出し、cDNAを合成する。合成したcDNAをファージあるいはプラスミドなどのベクターにクローニングしてcDNAライブラリーを作製する。該ライブラリーより、マウス抗体のC領域部分あるいはV領域部分をプローブとして用い、VHをコードするcDNAを有する組換えファージあるいは組換えプラスミドおよびVLをコードするcDNAを有する組換えファージあるいは組換えプラスミドをそれぞれ単離する。組換えファージあるいは組換えプラスミド上の目的とするマウス抗体のVHおよびVLの全塩基配列を決定し、塩基配列よりVHおよびVLの全アミノ酸配列を推定する。
ヒト以外の動物としては、マウス、ラット、ハムスター、ラビットなど、ハイブリドーマを作製することが可能であれば、いかなるものも用いることができる。
ハイブリドーマから全RNAを調製する方法としては、チオシアン酸グアニジン−トリフルオロ酢酸セシウム法(Methods in Enzymology,154,3,1987)、また全RNAからmRNAを調製する方法としては、オリゴ(dT)固定化セルロースカラム法(Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Lab.Press New York,1989)などがあげられる。また、ハイブリドーマからmRNAを調製するキットとしては、Fast Track mRNA Isolation Kit(Invitrogen社製)、Quick Prep mRNA Purification Kit(Amercham Pharmacia社製)などがあげられる。
cDNAの合成およびcDNAライブラリー作製法としては、常法(Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Lab.Press New York,1989;Current Protocols in Molecular Biology,Supplement 1−34)、あるいは市販のキット、例えば、Super ScriptTM Plasmid System for cDNA Synthesis and Plasmid Cloning(GIBCO BRL社製)、ZAP−cDNA Synthesis Kit(Stratagene社製)やTimeSaver cDNA Synthesis Kit(Amersham−Pharmacia社製)を用いる方法などがあげられる。
cDNAライブラリーの作製の際、ハイブリドーマから抽出したmRNAを鋳型として合成したcDNAを組み込むベクターは、該cDNAを組み込めるベクターであればいかなるものでも用いることができる。例えば、ZAP Express(Strategies,,58,1992)、pBluescript II SK(+)(Nucleic Acids Research,17,9494,1989)、λZAP II(Stratagene社製)、λgt10、λgt11(DNA Cloning:A Practical Approach,I,49,1985)、Lambda BlueMid(Clontech社製)、λExCell、pT7T3 18U(Amersham−Pharmacia社製)、pcD2(Molecular & Cellular Biology,,280,1983)およびpUC18(Gene,33,103,1985)などのファージあるいはプラスミドベクターが用いられる。
ファージあるいはプラスミドベクターにより構築されるcDNAライブラリーを導入する大腸菌としては該cDNAライブラリーを導入、発現および維持できるものであればいかなるものでも用いることができる。例えば、XL1−Blue MRF’(Journal of Biotechnology,23,271,1992)、C600(Genetics,59,177−190,1968)、Y1088、Y1090(Science,222,778,1983)、NM522(Journal of Molecular Biology,166,1,1983)、K802(Journal of Molecular Biology,16,118,1966)およびJM105(Gene,38,275,1985)などが用いられる。
cDNAライブラリーからのヒト以外の動物の抗体のVHおよびVLをコードするcDNAクローンの選択法としては、放射性同位元素あるいは蛍光標識、あるいは酵素標識したプローブを用いたコロニー・ハイブリダイゼーション法あるいはプラーク・ハイブリダイゼーション法(Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Lab.Press New York,1989)により選択することができる。また、プライマーを調製し、mRNAから合成したcDNAあるいはcDNAライブラリーを鋳型として、Polymerase Chain Reaction(以下、PCR法と記す;Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Lab.Press New York,1989;Current Protocols in Molecular Biology,Supplement 1−34)によりVHおよびVLをコードするcDNAを調製することもできる。
上記方法により選択されたcDNAを、適当な制限酵素等で切断後、pBluescript SK(−)(Stratagene社製)などのプラスミドベクターにクローニングし、通常用いられる塩基配列解析方法、例えば、ジデオキシ法(Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America,74,5463,1977)などの反応を行い、塩基配列自動分析装置、例えば、塩基配列自動分析装置ABI PRISM 377(Applied Biosystems社製)などを用いて解析することで該cDNAの塩基配列を決定することができる。
決定した塩基配列からVHおよびVLの全アミノ酸配列を推定し、既知の抗体のVHおよびVLの全アミノ酸配列(Sequences of Proteins of Immunological Interest,US Dept.Health and Human Services,1991)と比較することにより、取得したcDNAが分泌シグナル配列を含む抗体のVHおよびVLの完全なアミノ酸配列をコードしているかを確認することができる。分泌シグナル配列を含む抗体のVHおよびVLの完全なアミノ酸配列に関しては、既知の抗体のVHおよびVLの全アミノ酸配列(Sequences of Proteins of Immunological Interest,US Dept.Health and Human Services,1991)と比較することにより、分泌シグナル配列の長さおよびN末端アミノ酸配列を推定でき、さらにはそれらが属するサブグループを知ることができる。また、VHおよびVLの各CDRのアミノ酸配列についても、既知の抗体のVHおよびVLのアミノ酸配列(Sequences of Proteins of Immunological Interest,US Dept.Health and Human Services,1991)と比較することによって見出すことができる。
さらに、VHおよびVLの完全なアミノ酸配列を用いて任意のデータベース、例えば、SWISS−PROTやPIR−Proteinなどに対してBLAST法(Journal of Molecular Biology,215,403−410,1990)などの配列の相同性検索を行い、配列の新規性を検討することができる。
(3)ヒト型キメラ抗体発現ベクターの構築
上記2(1)に記載のヒト化抗体発現用ベクターのヒト抗体のCHおよびCLをコードする遺伝子の上流に、ヒト以外の動物の抗体のVHおよびVLをコードするcDNAをクローニングし、ヒト型キメラ抗体発現ベクターを構築することができる。例えば、ヒト以外の動物の抗体のVHおよびVLをコードするcDNAを、ヒト以外の動物の抗体のVHおよびVLの3’末端側の塩基配列とヒト抗体のCHおよびCLの5’末端側の塩基配列とから成り、かつ適当な制限酵素の認識配列を両端に有する合成DNAとそれぞれ連結し、それぞれを上記2(1)に記載のヒト化抗体発現用ベクターのヒト抗体のCHおよびCLをコードする遺伝子の上流にそれらが適切な形で発現するようにクローニングし、ヒト型キメラ抗体発現ベクターを構築することができる。また、ヒト以外の動物の抗体のVHおよびVLをコードするcDNAを含むプラスミドを鋳型として、5’末端に適当な制限酵素の認識配列を有するプライマーを用いてPCR法によりVHおよびVLをコードするcDNAを増幅し、それぞれを上記2(1)に記載のヒト化抗体発現用ベクターのヒト抗体のCHおよびCLをコードする遺伝子の上流にそれらが適切な形で発現するようにクローニングし、ヒト型キメラ抗体発現ベクターを構築することができる。
(4)ヒト型CDR移植抗体のV領域をコードするcDNAの構築
ヒト型CDR移植抗体のVHおよびVLをコードするcDNAは、以下のようにして構築することができる。まず、目的のヒト以外の動物の抗体のVHおよびVLのCDRのアミノ酸配列を移植するヒト抗体のVHおよびVLのFRのアミノ酸配列を選択する。ヒト抗体のVHおよびVLのFRのアミノ酸配列としては、ヒト抗体由来のものであれば、いかなるものでも用いることができる。例えば、Protein Data Bankなどのデータベースに登録されているヒト抗体のVHおよびVLのFRのアミノ酸配列、ヒト抗体のVHおよびVLのFRの各サブグループの共通アミノ酸配列(Sequences of Proteins of Immunological Interest,US Dept.Health and HumanServices,1991)などがあげられるが、その中でも、十分な活性を有するヒト型CDR移植抗体を作製するためには、目的のヒト以外の動物の抗体のVHおよびVLのFRのアミノ酸配列とできるだけ高い相同性(少なくとも60%以上)を有するアミノ酸配列を選択することが望ましい。次に、選択したヒト抗体のVHおよびVLのFRのアミノ酸配列に目的のヒト以外の動物の抗体のVHおよびVLのCDRのアミノ酸配列を移植し、ヒト型CDR移植抗体のVHおよびVLのアミノ酸配列を設計する。設計したアミノ酸配列を抗体の遺伝子の塩基配列に見られるコドンの使用頻度(Sequences of Proteins of Immunological Interest,US Dept.Health and Human Services,1991)を考慮して塩基配列に変換し、ヒト型CDR移植抗体のVHおよびVLのアミノ酸配列をコードする塩基配列を設計する。設計した塩基配列に基づき、100塩基前後の長さからなる数本の合成DNAを合成し、それらをPCR法により連結する。この場合、PCRでの反応効率および合成可能なDNAの長さから、VH、VLとも4〜6本の合成DNAを設計することが好ましい。
また、両端に位置する合成DNAの5’末端に適当な制限酵素の認識配列を導入することで、上記2(1)で構築したヒト化抗体発現用ベクターに容易にクローニングすることができる。PCR反応による連結後、PCR産物をpBluescript SK(−)(Stratagene社製)などのプラスミドにクローニングし、上記2(2)に記載の方法により、塩基配列を決定し、所望のヒト型CDR移植抗体のVHおよびVLのアミノ酸配列をコードする塩基配列を有するプラスミドクローンを取得する。
(5)ヒト型CDR移植抗体のV領域のアミノ酸配列の改変
ヒト型CDR移植抗体は、目的のヒト以外の動物の抗体のVHおよびVLのCDRのみをヒト抗体のVHおよびVLのFRに移植しただけでは、その抗原結合活性は元のヒト以外の動物の抗体に比べて低下してしまうことが知られている(BIO/TECHNOLOGY,,266,1991)。この原因としては、元のヒト以外の動物の抗体のVHおよびVLでは、CDRのアミノ酸残基のみならず、FRのいくつかのアミノ酸残基が直接的あるいは間接的に抗原結合活性に関与している。CDRの移植時には、それらアミノ酸残基がヒト抗体のVHおよびVLのFRに由来するアミノ酸残基へと変化してしまうことが考えられている。このため、ヒト型CDR移植抗体では、ヒト抗体のVHおよびVLのFRのアミノ酸配列の中で、直接抗原との結合に関与しているアミノ酸残基、CDRのアミノ酸残基と相互作用するアミノ酸残基、抗体の立体構造を維持するアミノ酸残基および間接的に抗原との結合に関与しているアミノ酸残基を同定し、それらをCDRの由来となったヒト以外の動物の抗体配列中に見出されるアミノ酸残基に改変し、低下した抗原結合活性を上昇させることが行われている(BIO/TECHNOLOGY,,266,1991)。ヒト型CDR移植抗体の作製においては、それら抗原結合活性に関わるFRのアミノ酸残基を如何に効率よく同定するかが、最も重要な点であり、そのためにX線結晶解析(Journal of Molecular Biology,112,535,1977)あるいはコンピューターモデリング(Protein Engineering,,1501,1994)などによる抗体の立体構造の構築および解析が行われている。これら抗体の立体構造の情報は、ヒト型CDR移植抗体の作製に多くの有益な情報をもたらして来たが、その一方、あらゆる抗体に適応可能なヒト型CDR移植抗体の作製法は未だ確立されておらず、現状ではそれぞれの抗体について数種の改変体を作製し、それぞれの抗原結合活性との相関を検討するなどの種々の試行錯誤が必要である。
ヒト抗体のVHおよびVLのFRのアミノ酸残基の改変は、改変用合成DNAを用いて上記2(4)に記載のPCR法を行うことにより、達成できる。PCR後の増幅産物について上記2(2)に記載の方法により、塩基配列を決定し、目的の改変が施されたことを確認する。
(6)ヒト型CDR移植抗体発現ベクターの構築
上記2(1)に記載のヒト化抗体発現用ベクターのヒト抗体のCHおよびCLをコードする遺伝子の上流に、上記2(4)および(5)で構築したヒト型CDR移植抗体のVHおよびVLをコードするcDNAをクローニングし、ヒト型CDR移植抗体発現ベクターを構築することができる。
例えば、上記2(4)および(5)でヒト型CDR移植抗体のVHおよびVLを構築する際に用いる合成DNAのうち、両端に位置する合成DNAの5’末端に適当な制限酵素の認識配列を導入することで、上記2(1)に記載のヒト化抗体発現用ベクターのヒト抗体のCHおよびCLをコードする遺伝子の上流にそれらが適切な形で発現するようにクローニングすることができる。
(7)ヒト化抗体の一過性発現
作製した多種類のヒト化抗体の抗原結合活性を効率的に評価するために、上記2(3)および(6)に記載のヒト化抗体発現ベクター、あるいはそれらを改変した発現ベクターを用いてヒト化抗体の一過性発現を行うことができる。発現ベクターを導入する宿主細胞としては、ヒト化抗体を発現できる宿主細胞であれば、いかなる細胞でも用いることができるが、その発現量の高さから、サル腎臓由来細胞株COS−7細胞(ATCC CRL1651)が一般に用いられる(Methods in Nucleic Acids Research,CRC press,283,1991)。COS−7細胞への発現ベクターの導入法としては、DEAE−デキストラン法(Methods in Nucleic Acids Research,CRC press,283,1991)、リポフェクション法(Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America,84,7413,1987)、発現ベクターの導入後、培養上清中のヒト化抗体の発現量及び抗原結合活性はELISA(Antibodies:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory,Chapter 14,1988;Monoclonal Antibodies;Principles and Practice,Academic Press Limited,1996)などにより測定できる。
(8)ヒト化抗体の安定発現
上記2(3)および(6)に記載のヒト化抗体発現ベクターを適当な宿主細胞に導入することによりヒト化抗体を安定に発現する形質転換細胞を得ることができる。
宿主細胞への発現ベクターの導入法としては、エレクトロポレーション法(Cytotechnology,,133−140,1990)などがあげられる。
ヒト化抗体発現ベクターを導入する宿主細胞としては、ヒト化抗体を発現させることができる宿主細胞であれば、いかなる細胞でも用いることができる。例えば、マウスSP2/0−Ag14細胞(ATCC CRL1581)、マウスP3X63−Ag8.653細胞(ATCC CRL1580)、ジヒドロ葉酸還元酵素遺伝子(以下、dhfrと表記する)が欠損したCHO細胞(Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America,77,4216−4220,1980)、ラットYB2/3HL.P2.G11.16Ag.20細胞(ATCC CRL1662、以下、YB2/0細胞と表記する)などがあげられる。
発現ベクターの導入後、ヒト化抗体を安定に発現する形質転換体は、特開平2−257891に開示されている方法に従い、G418 sulfate(以下、G418と記す)などの薬剤を含む動物細胞培養用培地で培養することにより選択できる。動物細胞培養用培地としては、RPMI1640培地(日水製薬社製)、GIT培地(日本製薬社製)、EX−CELL302培地(JRH社製)、IMDM(GIBCO BRL社製)、Hybridoma−SFM(GIBCO BRL社製)、またはこれら培地にウシ胎児血清などの各種添加物を添加した培地などを用いることができる。得られた形質転換細胞を培地中で培養することで培養上清中にヒト化抗体を発現蓄積させることができる。培養上清中のヒト化抗体の発現量および抗原結合活性は、ELISAにより測定できる。また、形質転換細胞は、特開平2−257891に開示されている方法に従い、dhfr増幅系などを利用してヒト化抗体の発現量を上昇させることができる。
ヒト化抗体は、形質転換細胞の培養上清よりプロテインAカラムを用いて精製することができる(Antibodies:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory,Chapter 8,1988;Monoclonal Antibodies:Principles and Practice,Academic Press Limited,1996)。また、その他に通常、蛋白質の精製で用いられる精製方法を使用することができる。例えば、ゲル濾過、イオン交換クロマトグラフィーおよび限外濾過等を組み合わせて行い、精製することができる。精製したヒト化抗体のH鎖、L鎖あるいは抗体分子全体の分子量は、ポリアクリルアミドゲル電気泳動(以下、PAGEと表記する:Nature,227,680−685,1970)やウエスタンブロッティング法(Antibodies:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory,Chapter 12,1988;Monoclonal Antibodies:Principles and Practice,Academic Press Limited,1996)などで測定することができる。
2.抗体断片の作製
抗体断片は、上記1および2に記載の抗hIGF抗体をもとに遺伝子工学的手法あるいは蛋白質化学的手法により、作製することができる。
遺伝子工学的手法としては、目的の抗体断片をコードする遺伝子を構築し、動物細胞、植物細胞、昆虫細胞、大腸菌などの適当な宿主を用いて発現、精製を行うなどの方法があげられる。
蛋白質化学的手法としては、ペプシン、パパインなどの蛋白質分解酵素を用いた部位特異的切断、精製などの方法があげられる。
抗体断片としては、Fab、F(ab’)、Fab’、scFv、diabody、dsFv、CDRを含むペプチドなどがあげられる。
(1)Fabの作製
Fabは、蛋白質化学的にはIgGを蛋白質分解酵素パパインで処理することにより、作製することができる。パパインの処理後は、元の抗体がプロテインA結合性を有するIgGサブクラスであれば、プロテインAカラムに通すことで、IgG分子やFc断片と分離し、均一なFabとして回収することができる(Monoclonal Antibodies:Principles and Practice,third edition,1995)。プロテインA結合性を持たないIgGサブクラスの抗体の場合は、イオン交換クロマトグラフィーにより、Fabは低塩濃度で溶出される画分中に回収することができる(Monoclonal Antibodies:Principles and Practice,third edition,1995)。
また、Fabは遺伝子工学的には、多くは大腸菌を用いて、また、昆虫細胞や動物細胞などを用いて作製することができる。例えば、上記2(2)、2(4)および2(5)に記載の抗体のV領域をコードするDNAを、Fab発現用ベクターにクローニングし、Fab発現ベクターを作製することができる。Fab発現用ベクターとしては、FabをコードするDNAを組み込み発現できるものであればいかなるものも用いることができる。例えば、pIT106(Science,240,1041,1988)などがあげられる。Fab発現ベクターを適当な大腸菌に導入し、封入体あるいはペリプラズムにFabを生成蓄積させることができる。封入体からは、通常蛋白質で用いられるリフォールディング法により、活性のあるFabとすることができ、また、ペリプラズムに発現させた場合は、培養上清中に活性を持ったFabが漏出する。
リフォールディング後あるいは培養上清からは、抗原を結合させたカラムを用いることにより、均一なFabを精製することができる(Antibody Engineering,A Practical Guide,W.H.Freeman and Company,1992)。
(2)F(ab’)の作製
F(ab’)は、蛋白質化学的にはIgGを蛋白質分解酵素ペプシンで処理することにより、作製することができる。ペプシンの処理後は、Fabと同様の精製操作により、均一なF(ab’)として回収することができる(Monoclonal Antibodies:Principles and Practice,third edition,Academic Press,1995)。また、下記3(3)に記載のFab’をo−PDMやビスマレイミドヘキサンなどのようなマレイミドで処理し、チオエーテル結合させる方法や、DTNB[5,5’−dithiobis(2−nitrobenzoic acid)]で処理し、S−S結合させる方法によっても作製することができる(Antibody Engineering,A Practical Approach,IRL PRESS,1996)。
(3)Fab’の作製
Fab’は、上記3(2)に記載のF(ab’)をジチオスレイトールなどの還元剤で処理して得ることができる。また、Fab’は遺伝子工学的には、多くは大腸菌、また、昆虫細胞や動物細胞などを用いて作製することができる。例えば、上記2(2)、2(4)および2(5)に記載の抗体のV領域をコードするDNAを、Fab’発現用ベクターにクローニングし、Fab’発現ベクターを作製することができる。Fab’発現用ベクターとしては、Fab’をコードするDNAを組み込み発現できるものであればいかなるものも用いることができる。例えばFab’発現ベクターを適当な大腸菌に導入し、封入体あるいはペリプラズムにFab’を生成蓄積させることができる。封入体からは、通常蛋白質で用いられるリフォールディング法により、活性のあるFab’とすることができ、また、ペリプラズムに発現させた場合は、リゾチームによる部分消化、浸透圧ショック、ソニケーションなどの処理により菌を破砕し、菌体外へ回収させることができるリフォールディング後あるいは菌の破砕液からは、プロテインGカラムなどを用いることにより、均一なFab’を精製することができる(Antibody Engineering,A Practical Approach,IRL PRESS,1996)。
(4)scFvの作製
scFvは遺伝子工学的には、ファージまたは大腸菌、また、昆虫細胞や動物細胞などを用いて作製することができる。例えば、上記2(2)、2(4)および2(5)に記載の抗体のV領域をコードするDNAを、scFv発現用ベクターにクローニングし、scFv発現ベクターを作製することができる。scFv発現用ベクターとしては、scFvをコードするDNAを組み込み発現できるものであればいかなるものも用いることができる。例えば、pCANTAB5E(Amersham−Pharmacia社製)、pHFA(Human Antibodies & Hybridomas,,48,1994)などがあげられる。scFv発現ベクターを適当な大腸菌に導入し、ヘルパーファージを感染させることで、ファージ表面にscFvがファージ表面蛋白質と融合した形で発現するファージを得ることができる。また、scFv発現ベクターを導入した大腸菌の封入体からは、通常蛋白質で用いられるリフォールディング法により、活性のあるscFvとすることができ、また、ペリプラズムに発現させた場合は、リゾチームによる部分消化、浸透圧ショック、ソニケーションなどの処理により菌を破砕し、菌体外へ回収することができる。リフォールディング後あるいは菌の破砕液からは、陽イオン交換クロマトグラフィーなどを用いることにより、均一なscFvを精製することができる(Antibody Engineering,A Practical Approach,IRL PRESS,1996)。
(5)diabodyの作製
diabodyは遺伝子工学的には、多くは大腸菌、また、昆虫細胞や動物細胞などを用いて作製することができる。例えば、上記2(2)、2(4)および、2(5)に記載の抗体のVHとVLをリンカーがコードするアミノ酸残基が8残基以下となるように連結したDNAを作製し、diabody発現用ベクターにクローニングし、diabody発現ベクターを作製することができる。diabody発現用ベクターとしては、diabodyをコードするDNAを組み込み発現できるものであればいかなるものも用いることができる。例えば、pCANTAB5E(Amersham Pharmacia社製)、pHFA(Human Antibodies Hybridomas,,48,1994)などがあげられる。diabody発現ベクターを導入した大腸菌の封入体あるいはペリプラズムにdiabodyを生成蓄積させることができる。封入体からは、通常蛋白質で用いられるリフォールディング法により、活性のあるdiabodyとすることができ、また、ペリプラズムに発現させた場合は、リゾチームによる部分消化、浸透圧ショック、ソニケーションなどの処理により菌を破砕し、菌体外へ回収することができる。リフォールディング後あるいは菌の破砕液からは、陽イオン交換クロマトグラフィーなどを用いることにより、均一なscFvを精製することができる(Antibody Engineering,A Practical Approach,IRL PRESS,1996)。
(6)dsFvの作製
dsFvは遺伝子工学的には、多くは大腸菌、また、昆虫細胞や動物細胞などを用いて作製することができる。まず、上記2(2)、2(4)および2(5)に記載の抗体のVHおよびVLをコードするDNAの適当な位置に変異を導入し、コードするアミノ酸残基がシステインに置換されたDNAを作製する。作製した各DNAをdsFv発現用ベクターにクローニングし、VHおよびVLの発現ベクターを作製することができる。dsFv発現用ベクターとしては、dsFvをコードするDNAを組み込み発現できるものであればいかなるものも用いることができる。例えば、pULI9(Protein Engineering,,697,1994)などがあげられる。VHおよびVLの発現ベクターを適当な大腸菌に導入し、封入体あるいはペリプラズムにVHおよびVLポリペプチドを生成蓄積させることができる。封入体あるいはペリプラズムからVHおよびVLポリペプチドを得、混合し、通常蛋白質で用いられるリフォールディング法により、活性のあるdsFvとすることができる。リフォールディング後は、イオン交換クロマトグラフィーおよびゲル濾過などにより、さらに精製することができる(Protein Engineering,,697,1994)。
(7)CDRペプチドの作製
CDRを含むペプチドは、Fmoc法あるいはtBoc法等の化学合成法によって作製することができる。また、CDRを含むペプチドをコードするDNAを作製し、作製したDNAを適当な発現用ベクターにクローニングし、CDRペプチド発現ベクターを作製することができる。発現用ベクターとしては、CDRペプチドをコードするDNAを組み込み発現できるものであればいかなるものも用いることができる。例えば、pLEX(Invitrogen社製)、pAX4a+(Invitrogen社製)などがあげられる。
発現ベクターを適当な大腸菌に導入し、封入体あるいはペリプラズムにCDRペプチドを生成蓄積させることができる。封入体あるいはペリプラズムからCDRペプチドを得、イオン交換クロマトグラフィーおよびゲル濾過などにより、精製することができる(Protein Engineering,,697,1994)。
3.ヒト化抗体または該抗体断片の活性評価方法
培養上清中あるいは精製した抗hIGFヒト化抗体のhIGFに対する結合活性は、ELISA法およびバイオセンサービアコアなどにより測定することができる。また、上記1.(7)に示したhIGF依存的な増殖を示す細胞株のin vivoあるいはin vitroの増殖に対する抗体の影響を検討することにより、hIGFの機能を阻害する本発明の抗体の活性を測定することができる。
(1)ELISAによる活性評価
結合ELISAとは、抗原を96ウェルELISAプレートに固定化し、第一抗体として反応させ、第一抗体を認識することができる標識した二次抗体を反応させて、標識物を検出することにより、抗原と抗体との結合活性を測定する方法である。
具体的には、固定化する抗原としては、hIGF−IやhIGF−IIの精製蛋白質や部分配列を有するペプチドがあげられる。第一抗体としては、ハイブリドーマなどの培養上清あるいは精製抗体などの測定対象物があげられる。第二抗体としては、第一抗体を認識することができる抗体を、ビオチン、酵素、化学発光物質あるいは放射性同位元素などで標識した抗体があげられる。具体的には、西洋ワサビペルオキシダーゼで標識された抗ラットイムノグロブリン(以下、rIgと表記する)マウス抗体などがあげられる。
競合ELISAとは、あらかじめhIGF−IあるいはhIGF−IIをELISAプレートに固定化し、測定対象物である抗体と、hIGF−IあるいはhIGF−IIとを同時に添加して、反応させ、プレートに固定化した抗原と反応対象物である抗体の反応を、反応液中に添加したもう一種あるいは同一の抗原が阻害することを、プレートに結合する一次抗体の量の変化で測定する方法である。抗体の結合量の変化は抗体に対する二次抗体により検出する。また、天然型のhIGFおよびhIGFの部分ペプチドを用いた競合ELISAにより、天然型のhIGFとの反応性および抗原エピトープを解析することができる。抗体がhIGFの立体構造を認識しているか否かは、通常行われる構造的解析法により調べることができる。構造的解析法としては、例えば、X線結晶解析、核磁気共鳴法などがあげられる。
(2)バイオセンサービアコアによる活性評価
バイオセンサービアコアによる測定は、2分子間の結合と解離に伴うセンサーチップ表面で生じる微量な質量変化を光学現象により、SPRシグナルとして検出するものである。本法での測定から導きだされた結合速度定数(以下、Kassと表記する)、解離速度定数(以下、Kdissと表記する)から、K=Kass/Kdissで計算される結合定数(以下、Kと表記する)が算出される。Kは、M−1の単位で表される。バイオセンサービアコアでの測定は、添付の使用説明書に従って至適な測定条件下で行うことができる。至適な測定条件としては、センサーチップへ固定化するリガンドの量は、式1により算出される最小値と式2で算出される最大値の間の範囲であることが好ましい。また、アナライトの結合量は、式3で算出される最大結合量以下であることが好ましい。式1、式2および式3において、リガンドとはセンサーチップに固定化する分子を示し、アナライトとは流路系を介して添加する分子を示し、Sとはリガンドの結合部位数を示す。RUとは、Resonance Unitの略であり、センサーチップ表面での単位面積あたりの質量の変化量を示し、1RU=1pg/mm2に相当する。バイオセンサービアコアでの測定では、最大結合量が維持できるように流速および洗浄条件を設定することにより、蛋白質の結合様式に則った結合定数の解析を行うことができる。
(式1)
最小固定化量(RU)=200×1/S×(リガンドの分子量/アナライトの分子量)
(式2)
最大固定化量(RU)=1000×1/S×(リガンドの分子量/アナライトの分子量)
(式3)
最大結合量=アナライトの分子量×リガンドの固定化量(RU)/リガンドの分子量×S
4.本発明のヒト化抗体または該抗体断片の使用方法
本発明の抗hIGF抗体およびその抗体断片は、hIGF−IおよびhIGF−IIと特異的にかつ同程度の強さで結合し、かつ、その機能を阻害するため、hIGF介在性疾患および異常なhIGFの産生亢進により病態が進行する疾患などの治療に有用であると考えられる。また、ヒト化抗体は、ヒト以外の動物の抗体に比べ、ヒト抗体のアミノ酸配列に由来する部分がほとんどであるため、ヒト体内において免疫原性を示さず、反復投与が可能であり、かつ、その効果が長期間に渡り持続することが期待される。
hIGF介在性疾患および異常なhIGFの産生亢進により病態が進行する疾患としては、癌、末端肥大症および糖尿病合併症などがあげられる。
本発明の抗hIGF抗体およびその抗体断片は、単独で投与することも可能ではあるが、通常は薬理学的に許容される1つあるいはそれ以上の担体と一緒に混合し、製剤学の技術分野においてよく知られる任意の方法により製造した医薬製剤として提供するのが望ましい。
投与経路は、治療に際して最も効果的なものを使用するのが望ましく、経口投与、または口腔内、気道内、直腸内、皮下、筋肉内および静脈内などの非経口投与をあげることができ、蛋白質またはペプチド製剤の場合、望ましくは静脈内投与をあげることができる。
本発明の抗hIGF抗体およびその抗体断片は、単独で投与することも可能ではあるが、通常は薬理学的に許容される1つあるいはそれ以上の担体と一緒に混合し、製剤学の技術分野においてよく知られる任意の方法により製造した医薬製剤として提供するのが望ましい。
投与形態としては、噴霧剤、カプセル剤、錠剤、顆粒剤、シロップ剤、乳剤、座剤、注射剤、軟膏、テープ剤などがあげられる。経口投与に適当な製剤としては、乳剤、シロップ剤、カプセル剤、錠剤、散剤、顆粒剤などがあげられる。
乳剤およびシロップ剤のような液体調製物は、水、ショ糖、ソルビトール、果糖などの糖類、ポリエチレングリコール、プロピレングリコールなどのグリコール類、ごま油、オリーブ油、大豆油などの油類、p−ヒドロキシ安息香酸エステル類などの防腐剤、ストロベリーフレーバー、ペパーミントなどのフレーバー類などを添加剤として用いて製造できる。
カプセル剤、錠剤、散剤、顆粒剤などは、乳糖、ブドウ糖、ショ糖、マンニトールなどの賦形剤、デンプン、アルギン酸ナトリウムなどの崩壊剤、ステアリン酸マグネシウム、タルクなどの滑沢剤、ポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピルセルロース、ゼラチンなどの結合剤、脂肪酸エステルなどの界面活性剤、グリセリンなどの可塑剤などを添加剤として用いて製造できる。
非経口投与に適当な製剤としては、注射剤、座剤、噴霧剤などがあげられる。注射剤は、塩溶液、ブドウ糖溶液あるいは両者の混合物からなる担体などを用いて調製される。
座剤はカカオ脂、水素化脂肪またはカルボン酸などの担体を用いて調製される。
また、噴霧剤は該抗体および抗体断片そのもの、ないしは受容者の口腔および気道粘膜を刺激せず、かつ該抗体および抗体断片を微細な粒子として分散させ吸収を容易にさせる担体などを用いて調製される。
担体として具体的には乳糖、グリセリンなどが例示される。該抗体および抗体断片、さらには用いる担体の性質により、エアロゾル、ドライパウダーなどの製剤が可能である。また、これらの非経口剤においても経口剤で添加剤として例示した成分を添加することもできる。
投与量または投与回数は、目的とする治療効果、投与方法、治療期間、年齢、体重などにより異なるが、通常成人1日当たり10μg/kg〜10mg/kgである。
以下に、実施例により本発明を説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例】
[実施例1]
抗ヒトIGFヒト型CDR移植抗体のVHおよびVLをコードするcDNAの構築
(1)抗ヒトIGFヒト型CDR移植抗体のVHおよびVLのアミノ酸配列の設計
抗ヒトIGFヒト型CDR移植抗体のVHのアミノ酸配列を以下のようにして設計した。
参考例5の1.項で決定した抗hIGFラットモノクローナル抗体KM1468(ラットIgG2b)のVH(配列番号2)のCDRのアミノ酸配列を移植するための、ヒト抗体のVHのFRのアミノ酸配列を以下のようにして選択した。
公的データベースより、抗hIGFラットモノクローナル抗体KM1468のVHのFRと最も高い相同性を有するヒト抗体のFRを検索した結果、抗体CAM(Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America,77,3239−3243,1980)が最も高い81.6%の相同性を有していた。そこで、抗体CAM(以下、Camと記す)のVHのFRのアミノ酸配列を基に、抗hIGFヒト型CDR移植抗体(以下、抗hIGFCDR移植抗体と記す)のVHのアミノ酸配列を以下のようにして設計した。
CamのFRには、アミノ酸配列が一義的に決定されていない箇所が4箇所(13番目、74番目、77番目、90番目)存在し、また、ヒト抗体のVHのFRのアミノ酸配列では一般的でないアミノ酸残基が、3番目と40番目に認められた。そこで、これらのアミノ酸残基については、免疫原性をより低下させるため、ヒト抗体で高い頻度で認められるアミノ酸残基(Sequences of Proteins of Immunological Interest,US Dept.Health and Human Services,1991)へ改変した。このようにして設計したCam由来のFRのアミノ酸配列の適切な位置に、抗hIGFラットモノクローナル抗体KM1468のVHのCDRのアミノ酸配列を移植し、配列番号11に記載のVHのアミノ酸配列CamHV0を設計した。
更に、Camとは異なるヒト抗体FRからなる抗hIGFCDR移植抗体のVHのアミノ酸配列を以下のようにして設計した。
Kabatらは、既知の様々なヒト抗体のVHをそのアミノ酸配列の相同性から3種類のサブグループ(HSG I〜III)に分類し、さらに、それら各サブグループの共通配列を報告している(Sequences of Proteins of Immunological Interest,US Dept.Health and Human Services,1991)。この様な共通配列を有する抗体は、ヒトにおいて、免疫原性が低いことが期待されることから、この共通配列のFRを基に抗hIGFCDR移植抗体のVHのアミノ酸配列を設計した。より活性の高い抗hIGFCDR移植抗体を作製するために、設計にあたってはヒト抗体のVHの3種類のサブグループの共通配列のFRのアミノ酸配列のうち、抗hIGFラットモノクローナル抗体KM1468のVHのFRのアミノ酸配列と最も高い相同性を有するアミノ酸配列を検索した。相同性の検索結果を第1表に示した。第1表に示したように、抗hIGFラットモノクローナル抗体KM1468のVH領域のFRのアミノ酸配列はサブグループIIIのFRのアミノ酸配列と最も高い相同性を有していた。

以上の結果から、ヒト抗体のVHのサブグループIIIの共通配列のFRのアミノ酸配列の適切な位置に、抗hIGFラットモノクローナル抗体KM1468のVHのCDRのアミノ酸配列を移植し、配列番号54に記載の抗hIGFCDR移植抗体のVHのアミノ酸配列HV0(3)を設計した。
次に、抗hIGFCDR移植抗体のVLのアミノ酸配列を以下のようにして設計した。参考例5の1.で決定した抗hIGFラットモノクローナル抗体KM1468のVL(配列番号4)のCDRのアミノ酸配列を移植するためのヒト抗体のVLのFRのアミノ酸配列を以下のようにして選択した。
Kabatらは、既知の様々なヒト抗体のVLをそのアミノ酸配列の相同性から4種類のサブグループ(HSG I〜IV)に分類し、さらにそれら各サブグループの共通配列(Sequences of Proteins of Immunological Interest,US Dept.Health and Human Services,1991)を報告している。そこで、ヒト抗体のVLの4種類のサブグループの共通配列のFRのアミノ酸配列のうち、抗hIGFラットモノクローナル抗体KM1468のVLのFRのアミノ酸配列と最も高い相同性を有するFRのアミノ酸配列を検索した。相同性の検索結果を第2表に示した。第2表に示したように、抗hIGFラットモノクローナル抗体KM1468のVL領域のFRのアミノ酸配列はサブグループIVのFRのアミノ酸配列と最も高い相同性を有していた。

以上の結果から、ヒト抗体のVLのサブグループIVの共通配列のFRのアミノ酸配列の適切な位置に、抗hIGFラットモノクローナル抗体KM1468のVLのCDRのアミノ酸配列を移植し、配列番号14に記載の抗hIGFCDR移植抗体のVLのアミノ酸配列LV0を設計した。
また、2番目に相同性の高いヒト抗体のVLはサブグループIであった。そこで、サブグループIの共通配列のFRのアミノ酸配列の適切な位置に抗hIGFラットモノクローナル抗体KM1468のVLのCDRのアミノ酸配列を移植し、配列番号55に記載の抗hIGFCDR移植抗体のVLのアミノ酸配列LV0(1)を設計した。
上記で設計した抗hIGFCDR移植抗体のVHのアミノ酸配列CamHV0およびHV0(3)、ならびにVLのアミノ酸配列LV0およびLV0(1)は、選択したヒト抗体のFRのアミノ酸配列に抗hIGFラットモノクローナル抗体KM1468のCDRのアミノ酸配列のみを移植した配列であるが、一般にヒト型CDR移植抗体では、CDRのアミノ酸配列の移植のみでは抗原との結合活性が低下してしまうことが多く、それを回避するため、ヒト抗体とヒト以外の動物の抗体で異なっているFRのアミノ酸残基のうち、抗原との結合活性に影響を与えると考えられるアミノ酸残基をCDRのアミノ酸配列とともに移植することが行われている。そこで、本実施例においても、抗原との結合活性に影響を与えると考えられるFRのアミノ酸残基を以下のようにして同定した。
まず、上記で設計した抗hIGFCDR移植抗体のVHのアミノ酸配列CamHV0とHV0(3)、および抗hIGFCDR移植抗体のVLのアミノ酸配列LV0とLV0(1)からなる4通りの組み合わせのヒト型CDR移植抗体[以下、CamHV0のアミノ酸配列を有するVHとLV0のアミノ酸配列を有するVLを組み合わせた抗hIGFCDR移植抗体をCamHV0/LV0などと記す;CamHV0/LV0、CamHV0/LV0(1)、HV0(3)LV0およびHV0(3)LV0(1)。]のV領域の三次元構造をコンピューターモデリングの手法を用いて構築した。三次元構造座標作製に関してはソフトウェアAbM(Oxford Molecular社製)を、三次元構造の表示についてはソフトウェアPro−Explore(Oxford Molecular社製)、RasMol(Glaxo社製)またはViewer Lite(Accelrys Inc.社製)を用いて、それぞれ添付の使用説明書に従い、行った。同様に、抗hIGFラットモノクローナル抗体KM1468のV領域の三次元構造のコンピューターモデルも構築した。更に、それぞれのヒト型CDR移植抗体V領域のFRのアミノ酸配列において、抗hIGFラットモノクローナル抗体KM1468のV領域のアミノ酸配列中に認められるアミノ酸残基と異なっている残基について、抗hIGFラットモノクローナル抗体KM1468のアミノ酸配列中のアミノ酸残基に改変したアミノ酸配列からなる改変体の三次元構造モデルを同様に構築し、抗hIGFラットモノクローナル抗体KM1468、およびそれぞれの改変体の元となった4通りの組み合わせのヒト型CDR移植抗体のV領域の三次元構造を比較した。
その結果、改変体のV領域のFRのアミノ酸残基の中で抗原結合部位の三次元構造を変化させ、抗体の抗原との結合活性に影響を与えると考えられる残基として、CamHV0では1番目のGln、97番目のAla、98番目のArgを選択した。さらに、三次元構造モデルからでは抗体の活性への影響は明らかではなかったが、42番目のアミノ酸は一般にGlyであるのに対して、抗hIGFラットモノクローナル抗体KM1468ではThrであり、本アミノ酸残基が抗hIGFラットモノクローナル抗体KM1468において特異的な役割を果たしている可能性が考えられたため、本残基も改変候補として選択した。同様に、HV0(3)では49番目のSer、77番目のAsn、84番目のAsn、93番目のVal、97番目のAla、98番目のArgを、LV0では4番目のMet、9番目のAsp、10番目のSer、11番目のLeu、15番目のLeu、22番目のAsn、35番目のTyr、39番目のPro、42番目のPro、45番目のLeu、46番目のLeu、69番目のAsp、70番目のPhe、71番目のThr、82番目のVal、84番目のValを、LV0(1)では4番目のMet、9番目のSer、10番目のSer、11番目のLeu、15番目のVal、35番目のTyr、39番目のPro、42番目のAla、45番目のLeu、46番目のLeu、69番目のAsp、70番目のPhe、71番目のThr、82番目のPheをそれぞれ選択した。
このようにして選択したアミノ酸残基のうち、少なくとも1つを抗hIGFラットモノクローナル抗体KM1468のV領域のアミノ酸配列中のアミノ残基へ改変し、様々な改変を有するヒト型CDR移植抗体のVHおよびVLのアミノ酸配列を設計した。
(2)CamHV0をコードするcDNAの構築
実施例1(1)で設計したアミノ酸配列CamHV0をコードするcDNAを以下のようにして構築した。
まず、設計したアミノ酸配列のN末端に配列番号2の1番目から19番目のアミノ酸配列に相当する抗hIGFラットモノクローナル抗体KM1468のH鎖の分泌シグナル配列を連結した。該配列を配列番号12に示した。次に、該アミノ酸配列を遺伝子コドンに変換した。1つのアミノ酸残基に対して複数の遺伝子コドンが存在する場合は、抗体の遺伝子の塩基配列に見られる使用頻度(Sequences of Proteins of Immunological Interest,US Dept.Health and Human Services,1991)を考慮した。
変換した遺伝子コドンを連結して、該アミノ酸配列をコードするcDNAの塩基配列を設計し、配列番号13に示した。該塩基配列の5’末端と3’末端に、ヒト化抗体発現用ベクターへクローニングするための制限酵素認識配列を含むPCR反応時の増幅用プライマーの結合塩基配列をそれぞれ付加し、CamHV0をコードする塩基配列とした。該塩基配列を5’末端側から約150塩基ずつ計4本の塩基配列に分割し(隣り合う塩基配列は、その末端に約20塩基の重複配列を有するようにする)、それらをセンス鎖、アンチセンス鎖の交互の順にして、配列番号30、31、32および33で表される4本の合成オリゴDNA(ファスマック社製)を合成した。
各合成オリゴDNAを最終濃度が0.1μMとなるようにKOD−plus polymerase(TOYOBO社製)に添付の反応液に加え、更に0.4μM T3プライマー(Takara Bio社製)、0.4μM T7プライマー(Takara Bio社製)および1単位のKOD−plus polymerase(TOYOBO社製)を用いて、合計50μLとし、PCR反応を行った。反応条件は94℃30秒間、60℃30秒間、72℃60秒間のサイクルを35サイクルで行った。反応後、該反応液を1.5%アガロース電気泳動により分画し、約0.5kbp付近の遺伝子断片を、ゲル抽出キット(QIAGEN社製)を用いて回収した。回収した遺伝子断片を制限酵素EcoRI(Takara Bio社製)およびXhoI(Takara Bio社製)を用いて、消化反応を行った後に、該反応液を1.5%アガロース電気泳動により分画し、制限酵素処理された遺伝子断片をゲル抽出キット(QIAGEN社製)を用いて回収した。
pBluescript II SK(−)(以下、pBSと記す)(Stratagene社製)を上記遺伝子断片と同様に制限酵素EcoRI(Takara Bio社製)およびXhoI(Takara Bio社製)を用いて、消化反応を行った後、分画、回収し、Ligation high(TOYOBO社製)を用いて添付説明書に従いpBSとCamHV0遺伝子断片の連結反応を行った。連結反応により得られた組換えプラスミドDNA溶液を用いて大腸菌DH5α株を形質転換し、形質転換株よりミニプレップ(QIAGEN社製)を用いて、添付説明書に従いプラスミドDNAを調製し、BigDye Terminator Cycle Sequencing FS Ready Reaction Kit ver.3(Applied Biosystems社製)を用いて塩基配列を解析し、目的のアミノ酸配列CamHV0をコードする塩基配列を含む、第1図に示したプラスミドpBS/CamHV0を取得した。
(3)抗hIGFCDR移植抗体のVHの改変体をコードするcDNAの構築
実施例1(1)で設計した抗hIGFCDR移植抗体のVHの改変体をコードするcDNAの構築は以下のように行った。改変後のアミノ酸残基の遺伝子コドンについては、抗hIGFラットモノクローナル抗体KM1468で見られる遺伝子コドンとなるように行った。また、PCR反応はKOD−plus polymerase(TOYOBO社製)を使用し、添付説明書に従って行った。
以下で使用した合成オリゴDNAはファスマック社製のものを使用した。
(3−1) 1番目のGlnをGluへ、97番目のAlaをThrへ、98番目のArgをThrへそれぞれ改変した改変体のアミノ酸配列(以下、QARと記す)をコードするcDNAの構築
実施例1(2)で得られたpBS/CamHV0を鋳型として、配列番号38で表される合成オリゴDNAと配列番号41で表される合成オリゴDNAを用いて、94℃30秒間、58℃45秒間、72℃60秒間のサイクルを35サイクルの条件でPCR反応を行った。反応後、実施例1(2)と同様にして該反応液を1.5%アガロース電気泳動により目的の遺伝子断片を分画、回収した後、回収した遺伝子断片をpBSにクローニングして、目的のアミノ酸配列QARをコードする、配列番号17で示されるcDNAを含むプラスミドpBS/QARを取得した。
(3−2) 1番目のGlnをGluへ、42番目のGlyをThrへ、97番目のAlaをThrへ、98番目のArgをThrへ改変した改変体のアミノ酸配列(以下、QGARと記す)をコードするcDNAの構築
実施例1(2)で得られたpBS/CamHV0を鋳型として、配列番号38で表される合成オリゴDNAと配列番号39で表される合成オリゴDNAを用いて約250bpの5’−QG遺伝子断片を、また、配列番号40で表される合成オリゴDNAと配列番号41で表される合成オリゴDNAを用いて約250bpの3’−GAR遺伝子断片を、それぞれ上記(3−1)と同様にしてPCR反応で増幅後、1.5%アガロース電気泳動により目的の遺伝子断片を分画、回収した。回収したそれぞれの遺伝子断片、5’−QG遺伝子断片の5’末端に位置するT3プライマー(Takara Bio社製)および3’−GAR遺伝子断片の3’末端に位置するT7プライマー(Takara Bio社製)を用いて上記(3−2)と同様にしてPCR反応を行った。反応後、実施例1(2)と同様にして該反応液を1.5%アガロース電気泳動により約500bpの遺伝子断片を分画、回収した後、回収した遺伝子断片をpBSにクローニングして、目的の配列番号26で示されるアミノ酸配列QGARをコードする、配列番号18で示されるcDNAを含むプラスミドpBS/QGARを取得した。
(4)LV0をコードするcDNAの構築
実施例1(1)で設計したアミノ酸配列LV0をコードするcDNAを以下のようにして構築した。
まず、設計したアミノ酸配列のN末端に配列番号4の1番目から22番目のアミノ酸配列に相当する抗hIGFラットモノクローナル抗体KM1468のL鎖の分泌シグナル配列を連結した。該配列を配列番号15に示した。次に、該アミノ酸配列を遺伝子コドンに変換した。1つのアミノ酸残基に対して複数の遺伝子コドンが存在する場合は、抗体の遺伝子の塩基配列に見られる使用頻度(Sequences of Proteins of Immunological Interest,US Dept.Health and Human Services,1991)を考慮した。
変換した遺伝子コドンを連結して、該アミノ酸配列をコードするcDNAの塩基配列を設計し、配列番号16に示した。該塩基配列の5’末端と3’末端にヒト化抗体発現用ベクターへクローニングするための制限酵素認識配列を含むPCR反応時の増幅用プライマーの結合塩基配列をそれぞれ付加した。設計した塩基配列を5’末端側から約150塩基ずつ計4本の塩基配列に分割し(隣り合う塩基配列は、その末端に約20塩基の重複配列を有するようにする)、それらをセンス鎖、アンチセンス鎖の交互の順にして、配列番号34、35、36および37で表される4本の合成オリゴDNAを合成した。
各合成オリゴDNAを用いて、実施例1の(2)と同様にしてPCR反応からpBSへのクローニングまでの操作を行い、目的のアミノ酸配列LV0をコードする、配列番号16で示されるcDNAを含む、第1図に示したプラスミドpBS/LV0を取得した。
(5)抗hIGFCDR移植抗体のVLの改変体をコードするcDNAの構築
実施例1(1)で設計した抗hIGFCDR移植抗体のVLの改変体のアミノ酸配列をコードするcDNAの構築は以下のように行った。改変後のアミノ酸残基の遺伝子コドンについては、抗hIGFラットモノクローナル抗体KM1468で見られる遺伝子コドンとなるように行った。また、PCR反応はKOD−plus polymerase(TOYOBO社製)を使用し、添付説明書に従って行った。
(5−1) 4番目のMetをLeuへ、9番目のAspをThrへ、10番目のSerをThrへ、11番目のLeuをMetへ、15番目のLeuをProへ、22番目のAsnをThrへ、35番目のTyrをPheへ、42番目のProをSerへ、45番目のLeuをProへ、46番目のLeuをTrpへ、69番目のAspをSerへ、70番目のPheをTyrへ、71番目のThrをSerへ、82番目のValをAlaへ、84番目のValをThrへそれぞれ改変した改変体のアミノ酸配列(以下、Allと記す)をコードするcDNAの構築
アミノ酸配列Allをコードする、配列番号19で示されるcDNAの塩基配列を5’末端側から約150塩基ずつ計4本の塩基配列に分割し(隣り合う塩基配列は、その末端に約20塩基の重複配列を有するようにする)、それらをセンス鎖、アンチセンス鎖の交互の順にして、配列番号46、47、48および49で表される合成オリゴDNAを合成した。
各オリゴDNAを用い実施例1(2)と同様にして、PCR反応からpBSへのクローニングまでの操作を行い、目的のアミノ酸配列Allをコードする、配列番号19で示されるcDNAを含むプラスミドpBS/Allを取得した。
(5−2) 42番目のProをSerへ、45番目のLeuをProへ、46番目のLeuをTrpへ、82番目のValをAlaへ、84番目のValをThrへそれぞれ改変した改変体のアミノ酸配列(以下、PLLVVと記す)をコードするcDNAの構築
実施例1(4)で得られたpBS/LV0を鋳型として、配列番号42で表される合成オリゴDNAと配列番号50で表される合成オリゴDNAを用いて、5’−PLL遺伝子断片を、また、配列番号44で表される合成オリゴDNAと配列番号49で表される合成オリゴDNAを用いて3’−VV遺伝子断片をそれぞれ上記(3−1)と同様にしてPCR反応を行った。反応後、実施例1(2)と同様にして該反応液を1.5%アガロースゲル電気泳動により目的の遺伝子断片を分画、回収した。回収したそれぞれの遺伝子断片、5’−PLL遺伝子断片の5’末端に位置するT3プライマー(Takara Bio社製)および3’−VV遺伝子断片の3’末端に位置するT7プライマー(Takara Bio社製)を用いて上記(3−1)と同様にしてPCR反応からpBSへのクローニングまでの操作を行い、目的のアミノ酸配列PLLVVをコードする、配列番号20で示されるcDNAを含むプラスミドpBS/PLLVVを取得した。
(5−3) 22番目のAsnをThrへ、42番目のProをSerへ、45番目のLeuをProへ、46番目のLeuをTrpへ、82番目のValをAlaへ、84番目のValをThrへそれぞれ改変した改変体のアミノ酸配列(以下、NPLLVVと記す)をコードするcDNAの構築
実施例1(4)で得られたpBS/LV0を鋳型として、配列番号42で表される合成オリゴDNAと配列番号43で表される合成オリゴDNAを用いて、上記(3−1)と同様にしてPCR反応を行い、NPLL遺伝子断片を増幅し、実施例1(2)と同様にして該反応液を1.5%アガロースゲル電気泳動により目的の遺伝子断片を分画、回収した。回収したNPLL遺伝子断片および配列番号50で表される合成オリゴDNAを用いて上記(3−1)と同様にしてPCR反応を行い、5’−NPLL遺伝子断片を増幅し、実施例1(2)と同様にして該反応液を1.5%アガロースゲル電気泳動により目的の遺伝子断片を分画、回収した。回収した5’−NPLL遺伝子断片、上記(5−2)で得られた3’−VV遺伝子断片、T3プライマー(Takara Bio社製)およびT7プライマー(Takara Bio社製)を用いて、上記(3−2)と同様にしてPCR反応から、pBSへのクローニングまでの操作を行い、目的のアミノ酸配列NPLLVVをコードする、配列番号21で示されるcDNAを含むプラスミドpBS/NPLLVVを取得した。
(5−4) 22番目のAsnをThrへ、35番目のTyrをPheへ、42番目のProをSerへ、45番目のLeuをProへ、46番目のLeuをTrpへそれぞれ改変した改変体のアミノ酸配列(以下、NYPLLと記す)をコードするcDNAの構築
上記(5−4)で得られたpBS/NPLLVVを鋳型として、配列番号50で表される合成オリゴDNAと配列番号53で表される合成オリゴDNAを用いて、上記(3−1)と同様にしてPCR反応を行い、5’−NYPLL−1遺伝子断片を回収した。一方、実施例1(4)で得られたpBS/LV0を鋳型として、配列番号44で表される合成オリゴDNAとT7プライマー(Takara Bio社製)を用いて、上記(3−1)と同様にしてPCR反応を行い、3’−LV0遺伝子断片を回収した。5’−NYPLL−1遺伝子断片、3’−LV0遺伝子断片、T3プライマー(Takara Bio社製)およびT7プライマー(Takara Bio社製)を用いて、上記(3−2)と同様にしてPCR反応から、pBSへのクローニングまでの操作を行い、目的のアミノ酸配列NYPLLをコードする、配列番号22で示されるcDNAを含むプラスミドpBS/NYPLLを取得した。
(5−5) 22番目のAsnをThrへ、35番目のTyrをPheへ、42番目のProをSerへ、45番目のLeuをProへ、46番目のLeuをTrpへ、69番目のAspをSerへ、70番目のPheをTyrへ、71番目のThrをSerへ、82番目のValをAlaへ、84番目のValをThrへそれぞれへ改変した改変体のアミノ酸配列(以下、NYPLL3Allと記す)をコードするcDNAの構築
上記(5−4)で得られたpBS/NYPLLを鋳型として、配列番号45で表される合成オリゴDNAと配列番号50で表される合成オリゴDNAを用いて、上記(3−1)と同様にしてPCR反応を行い、5’−NYPLL−2遺伝子断片を回収した。一方、上記(5−1)で得られたpBS/Allを鋳型として、配列番号44で表される合成オリゴDNAおよびT7プライマー(Takara Bio社製)を用いて、上記(3−1)と同様にしてPCR反応を行い、3’−3All遺伝子断片を回収した。5’−NYPLL−2遺伝子断片、3’−3All遺伝子断片、T3プライマー(Takara Bio社製)およびT7プライマー(Takara Bio社製)を用いて、上記(3−2)と同様にしてPCR反応から、pBSへのクローニングまでの操作を行い、目的の配列番号27に示されるアミノ酸配列NYPLL3Allをコードする、配列番号23で示されるcDNAを含むプラスミドpBS/NYPLL3Allを取得した。
(5−6) 42番目のProをSerへ、45番目のLeuをProへ、69番目のAspをSerへ、70番目のPheをTyrへ、71番目のThrをSerへそれぞれ変換した改変体のアミノ酸配列(以下、PLDFTと記す)をコードするcDNAの構築
実施例1(4)で得られたpBS/LV0を鋳型として、配列番号51で表される合成オリゴDNAとM13RVプライマー(Takara Bio社製)を用いて、上記(3−1)と同様にしてPCR反応を行い、5’−PL遺伝子断片を回収した。一方、pBS/LV0を鋳型として、配列番号52で表される合成オリゴDNAとM13M20プライマー(Takara Bio社製)を用いて、上記(3−1)と同様にしてPCR反応を行い、3’−DFT遺伝子断片を回収した。5’−PL遺伝子断片、3’−DFT遺伝子断片、M13RVプライマー(Takara Bio社製)およびM13M20プライマー(Takara Bio社製)を用いて、上記(3−2)と同様にしてPCR反応から、pBSへのクローニングまでの操作を行い、目的の配列番号28に示されるアミノ酸配列PLDFTをコードする、配列番号24で示されるcDNAを含むプラスミドpBS/PLDFTを取得した。
(5−7) 42番目のProをSerへ、45番目のLeuをProへ、46番目のLeuをTrpへ、69番目のAspをSerへ、70番目のPheをTyrへ、71番目のThrをSerへそれぞれ変換した改変体のアミノ酸配列(以下、PLLDFTと記す)をコードするcDNAの構築
上記で得られたpBS/PLLVVを鋳型として、配列番号45で表される合成オリゴDNAとM13RVプライマー(Takara Bio社製)を用いて、上記(3−1)と同様にしてPCR反応を行い、5’−PLL遺伝子断片を回収した。5’−PLL遺伝子断片、上記(5−6)で得られた3’−DFT遺伝子断片、M13RVプライマー(Takara Bio社製)およびM13M20プライマー(Takara Bio社製)を用いて、上記(3−2)と同様にしてPCR反応から、pBSへのクローニングまでの操作を行い、目的の配列番号29に示されるアミノ酸配列PLLDFTをコードする、配列番号25で示されるcDNAを含むプラスミドpBS/PLLDFTを取得した。
[実施例2]
抗hIGFCDR移植抗体の発現
(1)抗hIGFCDR移植抗体発現ベクターの構築
WO97/10354に記載のヒト化抗体発現用ベクターpKANTEX93の適当な位置に実施例1(2)および(4)で取得したアミノ酸配列CamHV0またはアミノ酸配列LV0をコードするcDNAおよびこれらの改変体のアミノ酸配列をコードするcDNAを挿入し、各種抗hIGFCDR移植抗体発現ベクターを以下のようにして構築した。
アミノ酸配列CamHV0、QARおよびQGARをコードするcDNAとpKANTEX93をそれぞれ制限酵素NotIおよびApaIで処理し、1.5%アガロースゲル電気泳動により、それぞれ約0.5kbp、12kbpの遺伝子断片を分離、回収した。Ligation high(TOYOBO社製)を用いてpKANTEX93とアミノ酸配列CamHV0、QARおよびQGARをコードする遺伝子断片を連結し、プラスミドpKANTEX93/CamHV0、pKANTEX93/QARおよびpKANTEX93/QGARを取得した。
次にVLcDNAを挿入するため、アミノ酸配列LV0、NYPLL3All、PLDFTおよびPLLDFTをコードするcDNAと上記で得られたpKANTEX93/CamHV0、pKANTEX93/QARおよびpKANTEX93/QGARをそれぞれ制限酵素EcoRIおよびBsiWIで処理した後、1.5%アガロースゲル電気泳動により、それぞれ約0.45kbp、12.5kbpの遺伝子断片を分離し、ゲル抽出キット(QIAGEN社製)を用いて回収した。Ligation high(TOYOBO社製)を用いてpKANTEX93/CamHV0、pKANTEX93/QARまたはpKANTEX93/QGARと各種VL遺伝子断片とを連結反応させ、連結反応により得られた組換えプラスミドDNA溶液を用いて大腸菌DH5α株を形質転換し、形質転換株よりミニプレップ(QIAGEN社製)を用いて、添付説明書に従いプラスミドDNAを調製し、BigDye Terminator Cycle Sequencing FS Ready Reaction Kit ver.3(Applied Biosystems社製)を用いて塩基配列を解析し、第2図に示したプラスミドpKANTEX93/CamHV0/LV0、pKANTEX93/QAR/LV0、pKANTEX93/QGAR/LV0、pKANTEX93/CamHV0/NYPLL3All、pKANTEX93/QGAR/PLDFTおよびpKANTEX93/QGAR/PLLDFTを取得した。
(2)抗hIGFCDR移植抗体の動物細胞を用いた安定発現
抗hIGFCDR移植抗体の動物細胞を用いた安定発現は、以下のように行った。
実施例2の(1)で得られた各抗hIGFCDR移植抗体発現ベクターの10μgを4×10細胞のラットミエローマ細胞株YB2/0細胞(ATCC CRL1581)へエレクトロポレーション法(Cytotechnology,,133−140,1990)により導入後、40mLのH−SFM(5)培地[FCSを5%含むH−SFM(Gibco BRL社製)]に懸濁し、96ウェル培養プレート(住友ベークライト社製)に200μL/ウェルずつ分注した。37℃、5%COインキュベーター内で24時間培養した後、G418を0.5mg/mLになるように添加して1〜2週間培養した。G418耐性を示す形質転換体のコロニーが出現し、コンフルエントになったウェルより培養上清を回収し、実施例2(5)に記載のヒトIgG定量ELISAを行い抗hIGFCDR移植抗体発現細胞の選択を行った。
培養上清中に抗hIGFCDR移植抗体の発現が認められたウェルの形質転換体については、dhfr遺伝子増幅系を利用して抗体発現量を増加させる目的で、G418を0.5mg/mL、dhfr遺伝子産物のジヒドロ葉酸還元酵素(以下、DHFRと表記する)の阻害剤であるメソトレキセート(以下、MTXと表記する;SIGMA社製)を50nM含むH−SFM(5)に1〜2×10細胞/mLになるように懸濁し、24ウェル培養プレート(Greiner社製)に1mLずつ分注した。37℃、5%COインキュベーター内で1〜2週間培養して、50nM MTX耐性を示す形質転換株を誘導した。形質転換体がウェルにコンフルエントになった時点で培養上清中の抗hIGFCDR移植抗体の濃度を、実施例2(5)に記載のヒトIgG定量ELISAに準じて行い抗体発現量を確認した。
培養上清中に抗hIGFCDR移植抗体の発現が認められたウェルの形質転換体については、上記と同様の方法により、MTX濃度を100nM、200nMと順次上昇させ、最終的にG418を0.5mg/mL、MTXを200nMの濃度で含むH−SFM(5)で増殖可能かつ、抗hIGFCDR移植抗体を高発現する形質転換体を得た。該形質転換体の培養上清中に含まれるヒトIgGの定量を実施例2(5)に記載のヒトIgG定量ELISAにより行い、抗hIGFCDR移植抗体の発現量の最も多いMTX耐性形質転換体を取得した。MTX耐性形質転換体は必要に応じて、1〜2回の限界希釈法による単一細胞化を行い、抗hIGFCDR移植抗体の発現量の最も多い形質転換クローンを取得した。
以下において、各抗hIGFCDR移植抗体をそれぞれのV領域のアミノ酸配列を組み合わせて、プラスミドpKANTEX93/CamHV0/LV0が導入された形質転換体から生産される抗hIGFCDR移植抗体をCamHV0/LV0と、プラスミドpKANTEX93/QAR/LV0が導入された形質転換体から生産される抗hIGFCDR移植抗体をQAR/LV0と、プラスミドpKANTEX93/QGAR/LV0が導入された形質転換体から生産される抗hIGFCDR移植抗体をQGAR/LV0と、プラスミドpKANTEX93/CamHV0/NYPLL3Allが導入された形質転換体で生産される抗hIGFCDR移植抗体からCamHV0/NYPLL3Allと、プラスミドpKANTEX93/QGAR/PLDFTが導入された形質転換体から生産される抗hIGFCDR移植抗体をQGAR/PLDFTとおよびプラスミドpKANTEX93/QGAR/PLLDFTが導入された形質転換体から生産される抗hIGFCDR移植抗体をQGAR/PLLDFTとそれぞれ称す。
(3)抗hIGFCDR移植抗体の培養上清からの精製
実施例2(2)で得られた各抗hIGFCDR移植抗体を発現する形質転換体を、G418を0.5mg/mL、MTXを200nM、を含むGIT培地(大日本製薬社製)500mLに、1〜2×10細胞/mLとなるように懸濁し、2Lローラーボトル(ファルコン社製)に分注した。37℃インキュベーター内で7〜8日間培養し、コンフルエントになった時点で培養上清を回収した。培養上清約1LよりProsep−A(Bioprocessing社製)カラムを用いて、添付の説明書に従い、各種抗hIGFCDR移植抗体を精製した。
(4)抗hIGFCDR移植抗体の抗原への結合活性の評価(結合ELISA)
ELISAプレートに固定化する抗原としては、hIGF−I(藤沢薬品社製)とメチル化BSA(SIGMA社製)とのコンジュゲートを作製して、使用した。すなわち、蒸留水に溶解したメチル化BSAを、メチル化BSA:hIGF−I=1:8(重量比)になるように4℃で混合し、10秒間ボルテックスミキサーで攪拌して、メチル化BSAとhIGF−Iのコンジュゲートを取得した(以下、mBSA−hIGF−Iと記す)。
96ウェルELISAプレート(Greiner社製)に、上述のmBSA−hIGF−IをhIGF−Iの濃度として20ng/mLで50μL/ウェルで分注し、4℃で一晩放置して吸着させた。PBSで洗浄後、1%BSAを含むPBS(以下、BSA−PBSと記す)を100μL/ウェルで加え、室温で1時間反応させて残存する活性基をブロックした。BSA−PBSを捨て、各種形質転換体の培養上清あるいは精製した各種抗hIGFCDR移植抗体を50μL/ウェルで分注し、室温で2時間反応させた。反応後、各ウェルを0.05%Tween20を含むPBS(以下、Tween−PBSと記す)で洗浄後、2000倍に希釈したHRP標識化抗ヒトIgG抗体(American Qualex社製)を二次抗体として50μL/ウェルで加えて室温で1時間反応させた。反応後、Tween−PBSで洗浄後、ABTS基質液[2,2’−アジノ−ビス(3−エチルベンゾチアゾリン−6−スルホン酸)アンモニウムの0.55gを1Lの0.1Mクエン酸緩衝液(pH4.2)に溶解し、使用直前に過酸化水素水を1μL/mLで添加した溶液]を50μL/ウェルで加えて発色させ、415nmの吸光度(以下、OD415と記す)をプレートリーダーEmax(Molecular Devices社製)を用いて測定した。
(5)ヒトIgG定量ELISA(サンドイッチELISA)
96ウェルELISAプレート(Greiner社製)に、抗ヒトIgG抗体(American Qualex社製)をPBSで2000倍に希釈し、50μL/ウェルで分注し、4℃で一晩放置して吸着させプレートを作製した。BSA−PBSを用いて残存する活性基をブロックする操作以降の操作は、上記の実施例2(4)に記載の結合ELISAと同様に行った。
[実施例3]
抗hIGFCDR移植抗体の反応性の確認
実施例2(3)で得られた各種抗hIGFCDR移植抗体の精製標品については、実施例2(4)に記載の結合ELISA、または下記に示す実施例3(2)に記載のバイオセンサービアコア(ビアコア社製)を用いたhIGFとの結合親和性の測定法などを用いて、hIGFへの結合活性を検討した。以下の検討において、抗hIGFヒト型キメラ抗体KM3002は、参考例6(4)に記載の方法に従って精製したものを用いた。
(1)mBSA−hIGF−Iに対する結合ELISA
実施例2(3)に記載した方法により精製した各種抗hIGFCDR移植抗体のmBSA−hIGF−Iへの結合活性を検討した。結果を第3図に示した。第3図aに示したように、抗hIGFラットモノクローナル抗体KM1468のCDRのみをヒト抗体CamのFRおよびVLのサブグループIVの共通配列のFRに移植した抗hIGFCDR移植抗体CamHV0/LV0では、抗hIGFヒト型キメラ抗体KM3002に比べ、hIGF−Iに対する結合活性が約1/50に低下していた。そこで、各FRのアミノ酸を改変することによりhIGF−I結合活性の増加を検討した。
抗hIGFCDR移植抗体CamHV0/LV0からVHの1番目のGlnをGluへ、97番目のAlaをThrへ、98番目のArgをThrへそれぞれ改変した抗hIGFCDR移植抗体QAR/LV0では、第3図aに示したように、CamHV0/LV0に比べてhIGF−Iに対する結合活性の増加は認められなかった。しかし、1番目のGlnをGluへ、97番目のAlaをThrへ、98番目のArgをThrへのアミノ酸改変に加えて、42番目のGlyをThrへ改変した抗hIGFCDR移植抗体QGAR/LV0では、第3図aに示したように、CamHV0/LV0と比較して約25倍の結合活性の上昇が認められ、その活性は、抗hIGFヒト型キメラ抗体KM3002の結合活性の約1/2であった。
以上の結果から、CamHV0の1番目のGlnをGluへ、97番目のAlaをThrへ、98番目のArgをThrへのアミノ酸改変に加えて、42番目のGlyをThrへ改変することでhIGF−Iに対する結合活性を上昇させることが可能であること、また、三次元構造モデルでは活性への寄与が不明であった42番目のGlyは、本抗体の活性に非常に重要な役割を果たしていることが明らかとなった。
一方、VLの改変体については、抗hIGFCDR移植抗体CamHV0/LV0からVLの22番目のAsnをThrへ、35番目のTyrをPheへ、42番目のProをSerへ、45番目のLeuをProへ、46番目のLeuをTrpへ、69番目のAspをSerへ、70番目のPheをTyrへ、71番目のThrをSerへ、82番目のValをAlaへ、84番目のValをThrへそれぞれ改変した抗hIGFCDR移植抗体CamHV0/NYPLL3AllのhIGF−Iに対する結合活性は、第3図aに示したように、抗hIGFCDR移植抗体CamHV0/LV0と比較して約25倍の結合活性の上昇が認められ、その活性は、抗hIGFヒト型キメラ抗体KM3002の結合活性の約1/2の結合活性であった。以上の結果から、上記のVLの改変によってhIGF−Iに対する結合活性を上昇させることが可能であることが明らかとなった。そこで、アミノ酸配列がQGARであるVHとアミノ酸配列がNYPLL3AllであるVLとを組み合わせた抗hIGFCDR移植抗体QGAR/NYPLL3AllのhIGF−Iに対する結合活性を検討した。結果を第3図bに示した。その結果、このようなVHとVLを組み合わせた抗hIGFCDR移植抗体QGAR/NYPLL3Allは、抗hIGFヒト型キメラ抗体KM3002と同等の結合活性を示すことが確認された。
次に、VLの改変体NYPLL3Allの10残基の改変したアミノ酸残基の中から、活性上昇に重要なアミノ酸残基を特定するため、改変アミノ酸残基数が少ないアミノ酸配列がPLDFTであるVLの改変体およびPLLDFTであるVLの改変体と、アミノ酸配列がQGARであるVHの改変体とをぞれぞれ組み合わせた抗hIGFCDR移植抗体QGAR/PLDFTおよび抗hIGFCDR移植抗体QGAR/PLLDFTのhIGF−Iに対する結合活性を検討した。
結果を第3図bに示した。その結果、これら2種類の抗hIGFCDR移植抗体QGAR/PLDFTおよび抗hIGFCDR移植抗体QGAR/PLLDFTは、抗hIGFヒト型キメラ抗体KM3002と同等のhIGF−Iへの結合活性を示すことが明らかとなった。
(2)バイオセンサービアコアを用いた結合親和性の測定
抗hIGFヒト型キメラ抗体KM3002と上記の実施例2(3)で精製した各種抗hIGFCDR移植抗体のhIGF−IまたはhIGF−IIへの結合活性をバイオセンサーBiacore2000(ビアコア社製)を用いて以下のようにして、結合親和性として測定した。サンプルの希釈と測定中の反応緩衝液には、HBS−EP(10mM HEPES、150mM NaCl、3mM EDTA、0.005% Tween20 pH7.4)(ビアコア社製)を用いた。
センサーチップCM−5(ビアコア社製)に、アミンカップリングキット(ビアコア社製)を用いて、18.5pg/mmでリコンビナントhIGF−I(藤沢薬品社製)を、26.7pg/mmでhIGF−II(R&D社製)を固定化し、アナライトとして10μg/mLより2倍希釈で5段階に希釈した各種抗体を、流速5μL/分で4分間添加し、結合反応を観察した後、5分間にわたって解離反応を観察した。解離反応後、30mM塩酸の5μLを1回添加してセンサーチップ表面を再生した。反応は25℃で行った。各濃度における反応曲線から、結合速度定数Kassおよび解離速度定数Kdissを算出し、これから各抗体の結合定数K(M−1)を算出した。結果を第3表に示した。

抗hIGFCDR移植抗体CamHV0/LV0は、抗hIGFヒト型キメラ抗体KM3002に比べ、hIGF−IまたはhIGF−IIに対するKが、それぞれ約1/17、約1/6に低下していた。
抗hIGFCDR移植抗体QAR/LV0では、抗hIGFCDR移植抗体CamHV0/LV0に比べて結合親和性の増加は殆ど認められないが、抗hIGFCDR移植抗体QGAR/LV0では、hIGF−IおよびhIGF−IIに対するKが、抗hIGFCDR移植抗体CamHV0/LV0に比べて、約5倍増加した。
一方、VLの抗hIGFCDR移植抗体CamHV0/NYPLL3Allでは、hIGF−IまたはhIGF−IIに対するKが、抗hIGFCDR移植抗体CamHV0/LV0に比べて、それぞれ約8倍、約5倍増加していた。更に、抗hIGFCDR移植抗体QGAR/NYPLL3Allでは、hIGF−IまたはhIGF−IIに対するKが、抗hIGFCDR移植抗体CamHV0/LV0に比べて、それぞれ約14倍、約10倍増加していた。
改変アミノ酸残基が最適化されたアミノ酸配列PLDFTまたはアミノ酸配列PLLDFTを有するVLとアミノ酸配列QGARを有するVHを組み合わせた抗hIGFCDR移植抗体QGAR/PLDFTまたは抗hIGFCDR移植抗体QGAR/PLLDFTのhIGF−IまたはhIGF−IIに対する結合親和性は、抗hIGFCDR移植抗体QGAR/NYPLL3Allおよび抗hIGFヒト型キメラ抗体KM3002とほぼ同等であり、改変アミノ酸残基の減少よる活性低下は認められなかった。
[実施例4]
抗hIGFCDR移植抗体のhIGF依存性増殖阻害効果
上記実施例2(3)で得られた抗hIGFCDR移植抗体精製標品のhIGF依存性増殖に対する阻害活性を以下のようにして確認した。
ヒト大腸癌細胞株HT−29(ATCC HTB−38)をTF/BSA培地[D−MEM/F−12(Gibco BRL社製)に10μg/mLのヒトトランスフェリン(Gibco BRL社製)、200μg/mLのBSAを添加した培地]で5×10細胞/mLに調製し、96ウェル培養用プレートに100μL/ウェルで分注した。さらに、TF/BSA培地で40〜80ng/mLの濃度に希釈したhIGF−IあるいはhIGF−IIを50μL/ウェルで、TF/BSA培地で各濃度に希釈した各抗hIGFCDR移植抗体を50μL/ウェルで添加し、37℃、5%COインキュベーター内で5日間培養した。培養後、細胞増殖試薬WST−1(Roche社製)を20μL/ウェルで分注し、さらに、37℃、5%COインキュベーター内で2〜3時間培養した後に、OD450nmの吸光度(以下、OD450と表記する)をプレートリーダーEmax(Molecular Devices社製)を用いて測定した。
結果を第4図から第6図にそれぞれ示した。各抗hIGFCDR移植抗体のhIGF依存性増殖に対する阻害活性は、上記実施例3の結合ELISAによるhIGF−Iとの結合活性およびバイオセンサービアコアを用いて測定したhIGFとの結合親和性の測定結果と良く相関していた。即ち、高いhIGFとの結合親和性を有する抗hIGFCDR移植抗体は、高いhIGF依存性増殖に対する阻害活性を有しており、作製した抗hIGFCDR移植抗体のうち、抗hIGFCDR移植抗体QGAR/NYPLL3All、抗hIGFCDR移植抗体QGAR/PLDFT、抗hIGFCDR移植抗体QGAR/PLLDFTは、抗hIGFヒト型キメラ抗体KM3002と同等のhIGF依存性増殖に対する阻害活性を有していることが示された。
以上の結果は、本実施例で作製した抗hIGFCDR移植抗体QGAR/NYPLL3All、抗hIGFCDR移植抗体QGAR/PLDFTおよび抗hIGFCDR移植抗体QGAR/PLLDFTが、hIGF−I、hIGF−IIに対する高い結合親和性およびhIGF−I、hIGF−IIの生物活性に対する高い中和活性を有していることを示している。また、これらの抗hIGFCDR移植抗体は、そのほとんどのアミノ酸残基がヒト抗体の配列に由来することから、hIGFの機能がその病態形成に関わる様々なヒト疾患の治療薬として有用である。
参考例
(参考例1)
抗hIGFモノクローナル抗体の作製
(1)非ヒト動物の免疫
組換え型hIGF−I(R&D社製)は、免疫原性を高める目的で以下の方法でメチル化BSA(SIGMA社製)とのコンジュゲートを作製し、免疫原とした。すなわち、2回蒸留水に溶解したメチル化BSAを、メチル化BSA:hIGF−I=1:4(重量比)になるように4℃で混合し、10秒間ボルテックスミキサーで攪拌した。その後、連結針付きシリンジを用いて完全フロインドアジュバントあるいは不完全フロインドアジュバントと容量比1:1で混合し、免疫原(以下、メチル化BSA−hIGF−Iアジュバンドと記す)とした。
5週令雌SDラットに、完全フロインドアジュバントを用いて上記のように調製したメチル化BSA−hIGF−Iアジュバンド(100μgのhIGF−I相当量)を投与し、2週間後より不完全フロインドアジュバントを用いて同様に調製した免疫原を1週間に1回、計4回投与した。
眼底静脈叢より採血し、その血清中の抗体価を参考例1(4)項に示す結合ELISAで調べ、十分な抗体価を示したラットから最終免疫3日後に脾臓を摘出した。
脾臓をMEM培地(日水製薬社製)中で細断し、ピンセットでほぐし、遠心分離(1200rpm、5分間)した後、上清を捨て、トリス−塩化アンモニウム緩衝液(pH7.65)で1〜2分間処理し、赤血球を除去し、MEM培地で3回洗浄し、細胞融合に使用した。
(2)マウス骨髄腫細胞の調製
8−アザグアニン耐性マウス骨髄腫細胞株P3−U1を通常培地で培養し、細胞融合時に2×10個以上の細胞を確保して、細胞融合に使用した。
(3)ハイブリドーマの作製
参考例1(1)項で得られたラット脾細胞と(2)項で得られた骨髄腫細胞とを10:1になるよう混合し、遠心分離(1200rpm、5分間)した後、上清を捨て、沈澱した細胞に37℃で攪拌しながら、1.0×10個のラット脾細胞あたり0.2〜1.0mLの融合培地(2gのPEG−1000、2mLのMEM、0.7mLのジメチルスルホキシドの混液)を加え、1〜2分間毎に1〜2mLのMEM培地を数回加えた後、さらに、MEM培地を加えて全量が50mLになるようにした。遠心分離(900rpm、5分間)した後、上清を捨て、緩やかに細胞をほぐした後、100mLのHAT培地{通常培地[RPMI−1640培地に1.5mMグルタミン、50μM 2−メルカプトエタノール、10μg/mLジェンタマイシンおよび10%牛胎児血清(以下、FCSと記す)を加えた培地]に0.1mMヒポキサンチン、15μMチミジンおよび0.4μMアミノプテリンを加えた培地}に懸濁した。
この懸濁液を96ウェル培養用プレートに100μL/ウェルずつ分注し、5%COインキュベーター中、37℃で10〜14日間培養した。この培養上清を参考例1(4)項に示す結合ELISAを用いて、メチル化BSA−hIGF−Iに反応して、陰性対照であるメチル化BSA−BSA[BSAを用いて上記参考例1(1)と同様の反応を行い作製したコンジュゲート]に反応しないウェルを選び、さらにHT培地(HAT培地からアミノプテリンを除いた培地)と通常培地に換え、2回の単一細胞化を行い、抗hIGF−Iラットモノクローナル抗体産生ハイブリドーマを確立した。
その結果、第7図に示した反応性を有する抗hIGFラットモノクローナル抗体KM1468、抗hIGFラットモノクローナルKM1469、抗hIGFラットモノクローナルKM1470、抗hIGFラットモノクローナルKM1471、抗hIGFラットモノクローナルKM1472および抗hIGFラットモノクローナルKM1473をそれぞれ産生する6クローンのハイブリドーマを取得した。各ハイブリドーマが産生する抗体のサブクラスを、サブクラスタイピングキットを用いたELISAにより検討した結果、いずれもIgG2bであった。
(4)モノクローナル抗体の選択(結合ELISA)
ELISAプレートに固定化する抗原としては、参考例1(1)で作製したメチル化BSA−hIGF−Iおよび陰性対照としてメチル化BSA−BSAを用いた。96ウェルELISAプレート(Greiner社製)に、上述の抗原をhIGF−IあるいはBSAの濃度として10μg/mLで50μL/ウェルで分注し、4℃で一晩放置して吸着させた。PBSで洗浄後、1%BSAを含むPBS(以下、BSA−PBSと記す)を100μL/ウェルで加え、室温で1時間反応させて残存する活性基をブロックした。BSA−PBSを捨て、被免疫ラット抗血清、抗hIGF−Iモノクローナル抗体産生ハイブリドーマの培養上清あるいは精製した抗hIGF−Iラットモノクローナル抗体を50μL/ウェルで分注し、室温で2時間反応させた。反応後、各ウェルを0.05%Tween 20を含むPBS(以下、Tween−PBSと記す)で洗浄後、4000倍に希釈したペルオキシダーゼ標識ウサギ抗ラットIg抗体(DAKO社製)を二次抗体として50μL/ウェルで加えて室温で1時間反応させた。反応後、Tween−PBSで洗浄後、ABTS基質液[2,2’−アジノ−ビス(3−エチルベンゾチアゾリン−6−スルホン酸)アンモニウムの0.55gを1Lの0.1Mクエン酸緩衝液(pH4.2)に溶解し、使用直前に過酸化水素水を1μL/mLで添加した溶液]を50μL/ウェルで加えて発色させ、415nmの吸光度(以下、OD415と記す)をプレートリーダーEmax(Molecular Devices社製)を用いて測定した。
(5)モノクローナル抗体の精製 プリスタン処理した8週令Balb/cヌード雌マウスに参考例1(3)で得られたハイブリドーマを5〜20×10細胞/匹でそれぞれ腹腔内注射した。10〜21日後に、ハイブリドーマが腹水癌化したマウスから、腹水を採取(1〜8mL/匹)し、遠心分離(3000rpm、5分間)して固形分を除去した。その後、カプリル酸沈殿法(Antibodies,A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory,1988)によりIgG画分を精製し、精製モノクローナル抗体とした。
(参考例2)
抗hIGF−Iラットモノクローナル抗体の反応性の検討
(1)hIGF−Iの天然の立体構造に対する反応性
参考例1(3)で選択された6種類の抗hIGF−Iラットモノクローナル抗体の液相系における天然の立体構造を保つhIGF−Iに対する反応性を、以下に示す競合ELISAで調べた。
参考例1(4)に示した、参考例1(1)で作製したメチル化BSA−hIGF−Iを固定化したプレートを準備し、20μg/mLより5倍希釈で段階的に希釈したhIGF−Iを50μL/ウェルで分注後、抗hIGF−Iラットモノクローナル抗体の精製抗体を希釈した溶液(抗hIGFラットモノクローナル抗体KM1468:6.0μg/mL、抗hIGFラットモノクローナルKM1470:1.0μg/mL、抗hIGFラットモノクローナルKM1471:0.16μg/mL、抗hIGFラットモノクローナルKM1472:7.0μg/mL、抗hIGFラットモノクローナルKM1473:1.2μg/mL)を50μL/ウェルで分注し、混合して室温で2時間反応させた。反応後、Tween−PBSで洗浄後、4000倍に希釈したペルオキシダーゼ標識ウサギ抗ラットIg抗体(DAKO社製)を50μL/ウェルで加えて室温で1時間反応させた。反応後、Tween−PBSで洗浄後、ABTS基質液[2,2’−アジノ−ビス(3−エチルベンゾチアゾリン−6−スルホン酸)アンモニウムの0.55gを1Lの0.1Mクエン酸緩衝液(pH4.2)に溶解し、使用直前に過酸化水素水を1μL/mLで添加した溶液]を50μL/ウェルで加えて発色させ、OD415をプレートリーダーEmax(Molecular Devices社製)を用いて測定した。
第8図に示したように、抗hIGF−Iラットモノクローナル抗体はいずれもhIGF−Iの液層中の天然の立体構造と反応性を示した。また、本系において、最も高い感度を示した抗hIGFラットモノクローナル抗体KM1468では、液相系に含まれる16ng/mLまでの濃度の天然の立体構造を有するhIGF−Iを検出可能であった。
(2)抗hIGFラットモノクローナルKM1468のhIGF−Iの競合的ELISAでの反応性
抗hIGFラットモノクローナルKM1468は、上記(1)においてhIGF−Iの立体構造を認識している可能性が示唆された。しかしながら、抗hIGFラットモノクローナル抗体KM1468は、アミノ酸一次配列を認識している可能性も考えられるため、hIGF−I部分ペプチドとの反応性を解析した。
(2−1)hIGF−Iの部分ペプチドの合成
WO01/64754に記載の方法に従って、hIGF−Iの部分ペプチドを合成した。合成したペプチドは、hIGF−Iの1−18番目(配列番号56、以下、p1−18と記す)、14−30番目(配列番号57、以下、p14−30と記す)、24−35番目(配列番号58、以下、p24−35と記す)、29−41番目(配列番号59、以下、p29−41と記す)、36−47番目(配列番号60、以下、p36−47と記す)、41−56番目(配列番号61、以下、p41−56と記す)、52−70番目(配列番号62、以下、p52−70と記す)、53−61番目(配列番号63、以下、p53−61と記す)、61−70番目(配列番号64、以下、p61−70と記す)に相当するペプチドであり、hIGF−Iの全長を網羅するように設計した。上記ペプチドにおいては、内部に存在するCysについては、SerあるいはAlaに置換した配列を合成した。また、41−56番目に相当する配列については、内部のCysを有する配列(配列番号65、以下、p41−56Cと記す)も合成した。
(2−2)抗hIGFラットモノクローナルKM1468の抗原認識部位の解析
上記(2−1)で合成した各種ペプチドを用いて、抗hIGFラットモノクローナルKM1468の抗原認識部位の解析を以下に示す競合ELISAで検討した。
参考例1(4)に示したように抗原を固定化したプレートを準備し、4.0μg/mLに希釈した抗hIGFラットモノクローナルKM1468を50μL/ウェルで分注後、50μg/mLより3倍希釈で段階的に希釈した各種ペプチド溶液の単独あるいは種々の組合せ、あるいはhIGF−Iを50μL/ウェルで分注し、混合して室温で1時間反応させた。反応後、Tween−PBSで洗浄後、二次抗体として4000倍に希釈したペルオキシダーゼ標識ウサギ抗ラットIg抗体(DAKO社製)を50μL/ウェルで加えて室温で1時間反応させた。反応後、Tween−PBSで洗浄後、ABTS基質液[2,2’−アジノ−ビス(3−エチルベンゾチアゾリン−6−スルホン酸)アンモニウムの0.55gを1Lの0.1Mクエン酸緩衝液(pH4.2)に溶解し、使用直前に過酸化水素水を1μL/mLで添加した溶液]を50μL/ウェルで加えて発色させ、OD415をプレートリーダーEmax(Molecular Devices社製)を用いて測定した。結果は、抗体のみを添加した時のOD415を100とした相対値(%)で表示した。
結果を第9図に示した。第9図に示したように、抗hIGFラットモノクローナルKM1468のhIGF−Iに対する結合は、hIGF−Iにより濃度依存的に阻害されたが、各種ペプチドでは、単独あるいは組合せに拘わらず、阻害活性は認められなかった。以上の結果は、抗hIGFラットモノクローナル抗体KM1468が、hIGF−Iの単なるアミノ酸一次配列ではなく、hIGF−Iの立体構造を認識していることを強く示唆する。
(3)抗hIGFラットモノクローナルKM1468の競合的ELISAによる交差反応性の確認
精製した抗hIGFラットモノクローナルKM1468のhIGF−IIおよびヒトインスリンに対する交差反応性を、以下に示した競合ELISAで検討した。抗原としては、hIGF−I(Pepro Tech社製)、hIGF−II(Pepro Tech社製)およびヒトインスリン(和光純薬社製)を使用した。
参考例1(1)で作製したメチル化BSA−hIGF−I抗原、あるいは参考例1(1)と同様に作製したメチル化BSA−hIGF−II抗原を、参考例1(4)項に示した方法に従って、メチル化BSA−hIGF−I抗原は0.1μg/mLの濃度で、メチル化BSA−hIGF−II抗原は1.0μg/mLの濃度でそれぞれ固定化したプレートを準備し、0.6μg/mLに希釈した抗hIGFラットモノクローナル抗体KM1468を25μL/ウェルで分注後、20μg/mLより4倍希釈で段階的に希釈したhIGF−I、hIGF−IIあるいはヒトインスリンを25μL/ウェルで分注し、混合して室温で1時間反応させた。反応後、Tween−PBSで洗浄後、二次抗体として抗hIGFラットモノクローナルKM1468の場合は、1000倍に希釈したペルオキシダーゼ標識ウサギ抗ラットIg抗体(DAKO社製)を50μL/ウェルで加えて使用した。反応後、Tween−PBSで洗浄後、ABTS基質液[2,2’−アジノ−ビス(3−エチルベンゾチアゾリン−6−スルホン酸)アンモニウムの0.55gを1Lの0.1Mクエン酸緩衝液(pH4.2)に溶解し、使用直前に過酸化水素水を1μL/mLで添加した溶液]を50μL/ウェルで加えて発色させ、OD415をプレートリーダーEmax(Molecular Devices社製)を用いて測定した。結果は、抗体のみを添加した時のOD415を100として相対値(%)で表示した。
結果を第10図に示した。第10図Aに示したように、抗hIGFラットモノクローナルKM1468のhIGF−Iに対する結合は、hIGF−IおよびhIGF−IIで強く阻害された。同様に、第10図Bに示したように、抗hIGFラットモノクローナルKM1468のhIGF−IIに対する結合は、hIGF−IおよびhIGF−IIで強く阻害された。すなわち、抗hIGFラットモノクローナルKM1468は、hIGF−IとhIGF−IIの両方に同程度の強さで反応できることを示している。一方、抗hIGFラットモノクローナルKM1468のhIGF−IあるいはhIGF−IIへの結合は、ヒトインスリンでは阻害されなかった。
(参考例3)
抗IGF抗体とIGFとの反応性の確認
抗hIGFラットモノクローナル抗体KM1468と二種類の市販抗hIGF抗体との、抗原への反応性の比較を以下のようにして検討した。抗体としては、抗hIGFラットモノクローナルKM1468、市販の抗hIGF−I抗体であるsm1.2(Upstate biotechnology社製)および市販の抗hIGF−II抗体であるS1F2(Upstate biotechnology社製)を用いた。抗原としては、hIGF−I(Pepro Tech社製)、hIGF−II(Pepro Tech社製)およびヒトインスリン(和光純薬社製)を使用した。
(1)表面プラズモン共鳴を用いた結合強度の測定
抗hIGFラットモノクローナルKM1468と、抗原であるhIGF−IあるいはhIGF−IIに対する結合活性を解析するために、抗hIGFラットモノクローナルKM1468、市販の抗hIGF−I抗体sm1.2、および市販の抗hIGF−II抗体S1F2の3種の抗体の、hIGF−IおよびhIGF−IIに対する結合強度を表面プラズモン共鳴(surface plasmon resonance)を利用したバイオセンサーBiacore2000(ビアコア社製)を用いて以下のように測定した。アナライトの希釈並びに測定中の反応緩衝液としては、HBS−EP(10mM HEPES、150mM NaCl、3mM EDTA、0.005% Tween20 pH7.4)(ビアコア社製)を用いた。
センサーチップCM−5(ビアコア社製)に、アミンカップリング(ビアコア社製)を用いて、36.0pg/mmでhIGF−Iをあるいは41.7pg/mmでhIGF−IIを固定化し、測定物として20μg/mLより2倍希釈で6段階に希釈した3種類の抗体を、流速20μL/分で2分間添加した後、5分間にわたって測定物の解離を観察した。反応は25℃で行った。各濃度における結合反応曲線から、結合速度定数Kass、並びに解離速度定数Kdissを算出し、これから各抗体の結合定数K(M−1)を算出した。結合定数Kは、K=Kass/Kdissで計算される。結果を第4表に示した。


抗hIGFラットモノクローナルKM1468のhIGF−Iに対するKは7.86×10−1であり、hIGF−IIに対するKは8.63×10−1であった。抗hIGFラットモノクローナル抗体KM1468のhIGF−IおよびhIGF−IIに対するKの比は、ほぼ1:1であり、抗hIGFラットモノクローナル抗体KM1468はhIGF−IおよびhIGF−IIの両者に同程度に強力に結合できることが示された。一方、市販の抗hIGF−Iモノクローナル抗体sm1.2のhIGF−Iに対するKは1.86×10−1、hIGF−IIに対するKは7.35×10−1であった。抗hIGFラットモノクローナルKM1468のhIGF−IおよびhIGF−IIに対するKは、市販の抗hIGF−I抗体sm1.2のKと比較してhIGF−Iに対しては約42倍、hIGF−IIに対しては約120倍であった。また、市販の抗hIGF−II抗体S1F2のhIGF−Iに対するKは4.62×10−1、hIGF−IIに対するKは2.4×10−1であった。抗hIGFラットモノクローナルKM1468のhIGF−IおよびhIGF−IIに対するKは、市販の抗hIGF−II抗体S1F2のKと比較してhIGF−Iに対しては約18倍、hIGF−IIに対しては約3.6倍であった。すなわち抗hIGFラットモノクローナルKM1468は、市販の抗hIGF−I抗体であるsm1.2および市販の抗hIGF−II抗体であるS1F2と比較して、hIGF−I、hIGF−IIのそれぞれに強い結合力を有していることが示された。
(参考例4)
hIGF−I発現細胞の増殖に対する抗hIGFラットモノクローナルKM1468の影響
(1)hIGF−I発現細胞の構築
以下のようにしてヒト肺癌細胞株A549細胞(ATCC CCL−185)にhIGF−I遺伝子を導入した形質転換体を作製した。
(1−1)hIGF−I遺伝子のクローニングおよび発現ベクターの作製
1×10個のヒト肺癌細胞株PC−9細胞(British Journal of Cancer,39,15,1976)から、RNA調製キットRNeasy(QIAGEN社製)を用いて、添付の使用説明書に従い、45.6μgの全RNAを調製した。調製した全RNAのうち5μgを使用して、Superscript II(GIBCO−BRL社製)を用いて、添付の使用説明書に従い、cDNAを合成した。
合成したcDNAを鋳型として、PCRによってhIGF−I遺伝子をクローニングした。hIGF−I遺伝子増幅用のプライマーとして、配列番号66と配列番号67に示した塩基配列をそれぞれ有する合成DNAを設計した。それぞれの合成DNAは5’末端にプラスミドpBluescript II SK(−)(Stratagene社製)、並びにpKANTEX93(WO97/10354)へクローニングするための制限酵素認識配列を含んでいる。実際には、上述で得られたヒト肺癌細胞株PC−9細胞から合成したcDNAの20ngを50μLのKOD(+)DNA Polymerase添付KOD(+)Buffer 1(東洋紡績社製)、0.2mMdNTPs、2mM塩化マグネシウム、1μMの配列番号66と67に示した塩基配列をそれぞれ有する合成DNAを含む緩衝液に添加し、DNAサーマルサイクラーGeneAmp PCR System 9600(PERKIN ELMER社製)を用いて、94℃にて1分間加熱した後、2.5単位のKOD DNA Polymerase(東洋紡績社製)を添加し、94℃にて30秒間、62℃にて30秒間、72℃にて30秒間のサイクルを30サイクル行った。それぞれの反応液50μLを制限酵素EcoRI(Takara Shuzo社製)およびSalI(Takara Shuzo社製)で消化後、アガロースゲル電気泳動し、QIAquick Gel Extraction Kit(QIAGEN社製)を用いて、約0.5kbのhIGF−1をコードする遺伝子のPCR産物を回収した。
次に、プラスミドpBluescript II SK(−)(Stratagene社製)を制限酵素EcoRIおよびSalIで消化後、Calf Intestine Alkaline Phosphatase(以下、CIAPと表記する;Takara Shuzo社製)で末端を脱リン酸化して得られたDNA0.1μgと、上記で得られたそれぞれのPCR産物約0.1μgを滅菌水に加えて7.5μLとしLigation high(東洋紡績社製)7.5μLを加えて16℃で一晩反応させた。このようにして得られた組換えプラスミドDNA溶液を用いて大腸菌DH5α株(東洋紡績社製)を形質転換した。形質転換株より各プラスミドDNAを調製し、BigDye Terminator Cycle Sequencing FS Ready Reaction Kit(Applied Biosystems社製)を用いて添付の説明書に従い、反応を行い、塩基配列自動分析装置ABI PRISM 377(Applied Biosystems社製)を用いて塩基配列を決定した。その結果、目的であるhIGF−Iをコードする遺伝子配列を有する第11図に示したプラスミドpBS(II)SK(−)/hIGF−Iを得た。
次に、上記で得られたpBS(II)SK(−)/hIGF−IのhIGF−Iをコードする遺伝子を含む制限酵素断片(EcoRI−KpnI)とpKANTEX93のEcoRI−KpnI断片とを連結して、第11図に示したプラスミドpKANTEX93/hIGF−Iを構築した。プラスミドpKANTEX93/hIGF−Iの塩基配列を上記と同様に塩基配列自動分析装置ABI PRISM 377を用いて決定した。その結果、目的のhIGF−Iをコードする遺伝子を含むプラスミドpKANTEX93/hIGF−Iを得た。
(1−2)hIGF−I形質転換体の作製
上記(1−1)で得られたプラスミドpKANTEX93/hIGF−Iを動物細胞に導入して、hIGF−I発現細胞を以下のよう作製した。
プラスミドpKANTEX93/hIGF−Iを制限酵素AatII(東洋紡績社製)で処理して直鎖状化した後、8μgを4×10細胞のヒト肺癌細胞株A549細胞(ATCC CCL−185)へエレクトロポレーション法(Cytotechnology,3,133−140,1990)により導入後、15mLのRPMI培地[10%FCS、50μg/mLゲンタマイシン(ナカライテスク社製)を含むRPMI1640培地(Invitrogen社製)]に懸濁し、T75フラスコ(スミロン社製)に移した。37℃、5%COインキュベーター内で24時間培養した後、G418を0.2mg/mLになるように添加して1〜2週間培養した。G418耐性を示すA549/hIGF−I形質転換株(以下、A549/hIGF−Iと表記する)が取得された。
(2)A549/hIGF−I細胞の培養上清に産生されたhIGF−Iの定量
上記(1)で作製したA549/hIGF−I細胞内において導入したhIGF−I遺伝子が発現して、該細胞がhIGF−Iを産生しているかを確認するために、以下の実験を行った。
A549/hIGF−I細胞あるいはA549細胞をRPMI培地で培養を行った後、培養上清を回収して、培養上清中に含まれるhIGF−I量を以下のELISA法により測定した。
参考例1(4)に示した、メチル化BSA−hIGF−Iを固定化したプレートを準備し、陽性対象として2μg/mLより5倍希釈で段階的に希釈したhIGF−I、あるいはA549/hIGF−I細胞またはA549細胞の培養上清を25μl/ウェルで分注後、BSA−PBSで0.6μg/mLに希釈した抗hIGFラットモノクローナルKM1468の精製抗体を分注し、混合して室温で2時間反応させた。反応後Tween−PBSで洗浄後、1000倍に希釈したペルオキシダーゼ標識ウサギ抗ラットIg抗体(DAKO社製)を50μL/ウェルで分注し、室温1時間で反応させた。反応後、Tween−PBSで洗浄後、1000倍希釈した抗ラットIgG−HRP(DAKO社製)を50μL/ウェルで分注し、室温で1時間反応させた。反応後、Tween−PBSで5回洗浄した後、ABTS基質溶液[2,2’−アジノ−ビス(3−エチルベンゾチアゾリン−6−スルホン酸)アンモニウムの0.55gを1Lの0.1Mクエン酸緩衝液(pH4.2)に溶解し、使用直前に過酸化水素水を1μL/mLで添加した溶液]を50μl/ウェルで加えて発色させ、OD415をプレートリーダーEmaxを用いて測定した。
結果を第12図に示した。第12図Aに示したように、hIGF−I遺伝子が導入されていないA549細胞の培養上清に対してhIGF−I遺伝子が導入されたA549/hIGF−I細胞の培養上清では、明らかに結合活性は低下していることから、A549/hIGF−I細胞はhIGF−Iを発現していることが示された。
(3)抗hIGFラットモノクローナルKM1468のhIGF−I発現細胞の増殖に対する影響
細胞自身が産生するhIGF−Iに依存した細胞増殖(以下オートクリン細胞増殖と表記する)を抗hIGFラットモノクローナル抗体KM1468が阻害できるかを、上記(1)で作製したhIGF−I遺伝子導入細胞A549/hIGF−I細胞を用いて、調べた。
A549/hIGF−I細胞あるいはA549細胞を10%FCS、50μg/mLゲンタマイシン(ナカライテスク社製)を含むRPMI1640培地(Invitrogen社製)(以下、RPMI培地と表記する)で培養した後、それぞれ2×10個/mLの細胞密度になるように10μg/mLのヒトトランスフェリン(GIBCO社製)、200μg/mL BSA(Invitrogen社製)を含むDMEM/F12培地(−FCS,−Phenol red)(Invitrogen社製)(以下、無血清培地と表記する)に懸濁した。
A549/hIGF−I細胞あるいはA549細胞の細胞懸濁液を96ウェルプレート(スミロン社製)に100μL/ウェルで分注した後、各ウェルに無血清培地で200μg/mLより5倍希釈系で段階的に希釈した抗hIGFラットモノクローナルKM1468を100μL/ウェルで添加し、37℃、5%COインキュベーター内で5日間培養した。培養後、細胞増殖試薬WST−1(Roche社製)を20μL/ウェルで分注し、さらに、37℃、5%COインキュベーター内で4時間培養した後に、OD450をプレートリーダーEmax(Molecular Devices社製)を用いて測定した。
結果を第13図に示した。横軸は、培養時の各ウェル中の抗hIGFラットモノクローナルKM1468濃度を示した。破線に示される抗hIGFラットモノクローナルKM1468非添加のA549/hIGF−I細胞の増殖性は、実線に示されるhIGF−Iを産生しないA549細胞の増殖性と比較した場合、明らかに増加している。これは、A549/hIGF−I細胞が自己産生するhIGF−IによってA549/hIGF−I細胞自身の増殖を促すオートクリン増殖を示しているものである。この第13図に表されるようなオートクリン増殖は、A549/hIGF−I細胞の培養時に抗hIGFラットモノクローナルKM1468を添加した場合に、濃度依存的に阻害された。一方、A549細胞の増殖性には、抗hIGFラットモノクローナルKM1468は影響を及ぼさなかった。すなわち、抗hIGFラットモノクローナルKM1468は、細胞自身が生産するhIGF−Iによるオートクリン細胞増殖を阻害できることが示された。
(4)抗hIGFラットモノクローナルKM1468のhIGF−I発現細胞の足場非依存性増殖への影響
癌化した細胞は、軟寒天中などの細胞接着のない浮遊状態にも関わらず増殖することができる足場非依存性増殖能を有している。この足場非依存性増殖能は、細胞の造腫瘍性と非常に密接に関連しており、hIGF−Iが関与していると考えられている。抗hIGFラットモノクローナル抗体KM1468が細胞の足場非依存性増殖を阻害できるかを、上記(1)で作製したA549/hIGF−I細胞を用いて、以下のようにして調べた。
暖めた0.3% agar noble(Difco社製)を含む、RPMI培地(以下、agar−RPMI培地と記す)を、12ウェルプレート(Costar社製)に1mL/ウェルで分注し、数十分室温で放置してゲル化させたプレートを準備した。A549/hIGF−I細胞あるいはA549細胞をRPMI培地で培養した後、1×10個/mLの細胞密度になるように暖めたagar−RPMI培地に懸濁した。
A549/hIGF−I細胞あるいはA549細胞の細胞懸濁液を、1mL/ウェルで各ウェルに層積した。数分間室温で放置し、ゲル化させた後、37℃、5%COインキュベーター内で4週間培養した。培養後、各ウェル内に形成されたコロニー数を顕微鏡下で測定した。
結果を第14図に示した。第14図に示したようにhIGF−Iを産生するA549/hIGF−I細胞の足場非依存性の細胞増殖性は、A549細胞の足場非依存性の細胞増殖性と比較して上昇していた。また、A549/hIGF−I細胞の軟寒天中での培養時に10μg/mLの抗hIGFラットモノクローナルKM1468を添加した場合には、足場非依存性の細胞増殖は、抗hIGFラットモノクローナル抗体KM1468の添加により完全に阻害された。すなわち、足場非依存性の細胞増殖にはhIGF−Iが関与しており、hIGF−I依存的な足場非依存性の細胞増殖は、抗hIGFラットモノクローナルKM1468により阻害されることが示された。
(5)抗hIGFラットモノクローナルKM1468のhIGF−I発現細胞に対する腫瘍増殖阻害効果
上記(1)で作製したA549/hIGF−I細胞を用いて、hIGF−Iが関与するin vivo腫瘍形成に対する、抗hIGFラットモノクローナルKM1468の腫瘍増殖阻害効果を、以下のように検討した。
A549/hIGF−I細胞あるいはA549細胞をRPMI培地で培養した後、それぞれ1×10個/mLの細胞密度になるようにPBSに懸濁した。
A549/hIGF−I細胞あるいはA549細胞の細胞懸濁液の100μLを6週齢、ヌードマウスBalb/c Ajc−1 nu(メス)の右胸部に皮下移植した。マウス1匹当たりの移植した細胞数は、1×10個となる。移植直後から、マウス1匹につき500μgの抗hIGFラットモノクローナルKM1468を1週間に2回、合計8回にわたって尾静脈から投与した。陰性対象として、同一の腫瘍皮下移植マウスに対してPBS投与を同時に行った。細胞移植から5日間経過時点から、腫瘍体積を測定した。腫瘍体積(mm3)は、腫瘍の長径、短径および高さから、長径×短径×高さ×0.5236の式を用いて、算出した。
結果を第15図に示した。A549細胞とhIGF−Iを生産しているA549/hIGF−I細胞を移植したマウスの間で、皮下腫瘍の増殖性を比較したとき、A549/hIGF−I細胞を移植したマウスの皮下腫瘍の方が、腫瘍の増殖は亢進していた。また、A549/hIGF−I細胞を移植したマウスでは、抗hIGFラットモノクローナルKM1468を投与した場合、皮下腫瘍の増殖は、顕著に阻害された。このことは、抗hIGFラットモノクローナルKM1468が、hIGF−Iの阻害によりin vivoにおいても腫瘍の増殖を阻害できることを明確に示している。
(参考例5)
抗hIGF抗体KM1468の遺伝子クローニング
抗hIGFラットモノクローナルKM1468のV領域をコードするcDNAを以下のようにして、単離、解析した。
(1)抗hIGFラットモノクローナルKM1468産生ハイブリドーマからのmRNAの調製
5×10個の抗hIGFラットモノクローナルKM1468産生ハイブリドーマ細胞KM1468(FERM BP−7978)より、mRNAの調製キットであるFast Track mRNA Isolation Kit(Invitrogen社製)を用いて、添付の使用説明書に従い、ハイブリドーマKM1468細胞由来のmRNAを27μg調製した。
(2)抗hIGFラットモノクローナルKM1468のH鎖およびL鎖cDNAライブラリーの作製
上記(1)で取得したハイブリドーマKM1468細胞のmRNAの5μgから、TimeSaver cDNA Synthesis Kit(Amersham−Pharmacia社製)を用いて、添付の使用説明書に従い、両端にEcoRI−NotIアダプター配列が連結されたcDNAを合成した。合成したcDNAの全量を20μLの滅菌水に溶解後、アガロースゲル電気泳動にて分画し、IgGクラス抗体のH鎖に対応する約1.5kbのcDNA断片とκクラスのL鎖に対応する約1.0kbのcDNA断片をQIAquick Gel Extraction Kit(QIAGEN社製)を用いてそれぞれ約1.0μg回収した。次に、λZAPII Predigested EcoRI/CIAP−Treated Vector Kit(Stratagene社製)を用いて、VHとVLそれぞれのcDNA断片0.1μg相当と、キットに添付されている制限酵素EcoRIで消化後、Calf Intestine Alkaline Phosphataseで末端を脱リン酸化されたλZAPIIベクターの1μgを、添付の使用説明書に従い、連結した。連結後のそれぞれの反応液のうち2.5μLをGigapack III Gold Packaging Extracts(Stratagene社製)を用いて、添付の使用説明書に従い、λファージにパッケージングし、抗hIGFラットモノクローナル抗体KM1468のH鎖cDNAライブラリーとして5×10個、L鎖cDNAライブラリーとして4×10個のファージクローンを取得した。次に、各々のファージを常法(Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Lab.Press New York,1989)に従い、ナイロンメンブレンフィルターHybond−N+(Amersham−Pharmacia社製)上に固定した。
(3)抗hIGFラットモノクローナルKM1468のH鎖およびL鎖のcDNAのクローニング
上記(2)で作製した抗hIGFラットモノクローナル抗体KM1468のH鎖cDNAライブラリー、L鎖cDNAライブリーのナイロンメンブレンフィルターを、ECL Direct Nucleic Acid Labelling and Detection Systems(Amersham−Pharmacia社製)を用いて、添付の使用説明書に従い、マウス抗体のC領域のcDNA[H鎖はマウスCγ2bのcDNA断片(Nature,283,786 1980)、L鎖はマウスCκのcDNA断片(Cell,22,197,1980)]をプローブとして検出し、プローブに強く結合したファージクローンをH鎖、L鎖各10クローン取得した。次に、λZAPII Predigested EcoRI/CIAP−Treated Vector Kit(Stratagene社製)の使用説明書に従い、invivo excision法により各ファージクローンをプラスミドに変換した。こうして得られた各プラスミドに含まれるcDNAの塩基配列をBigDye Terminator Cycle Sequencing FS Ready Reaction Kit(Applied Biosystems社製)を用いて、添付の使用説明書に従って反応を行い、塩基配列自動分析装置ABI PRISM 377(Applied Biosystems社製)を用いて決定した。その結果、cDNAの5’末端に開始コドンと推定されるATG配列が存在する完全長の機能的なH鎖cDNAを含むプラスミドpKM1468H5−2およびL鎖cDNAを含むプラスミドpKM1468L5−1を得た。
(4)抗hIGFラットモノクローナルKM1468のV領域のアミノ酸配列の解析
プラスミドpKM1468H5−2に含まれていた抗hIGFラットモノクローナル抗体KM1468のVHの全塩基配列を配列番号1に、それから推定された抗hIGFラットモノクローナル抗体KM1468のVHの全アミノ酸配列を配列番号2に、プラスミドpKM1468L5−1に含まれていた抗hIGFラットモノクローナル抗体KM1468のVLの全塩基配列を配列番号3に、それから推定された抗hIGFラットモノクローナル抗体KM1468のVLの全アミノ酸配列を配列番号4にそれぞれ示した。なお、配列番号2および4に記載したアミノ酸配列にそれぞれ対応する塩基配列は、配列番号1および3に記載したもの以外に無数に存在するが、それらはすべて本発明の範囲に包含される。既知の抗体の配列データ(Sequences of Proteins of Immunological Interest,US Dept.Health and Human Services,1991)との比較および精製した抗hIGFラットモノクローナルKM1468のVHおよびVLのN末端アミノ酸配列をプロテインシーケンサーPPSQ−10(Shimadzu社製)を用いて解析した結果との比較から、単離した各々のcDNAは分泌シグナル配列を含む抗hIGFラットモノクローナルKM1468のH鎖およびL鎖をコードする完全長cDNAであり、VHについては、配列番号2に示したアミノ酸配列の1から19番目が、VLについては、配列番号4に示したアミノ酸配列の1から22番目が分泌シグナル配列であることが明らかとなった。
次に、抗hIGFラットモノクローナルKM1468のVHおよびVLのアミノ酸配列の新規性について検討した。配列解析システムとしてGCG Package(version 10.0、Genetics Computer Group社製)を用い、既存の蛋白質のアミノ酸配列データベース[SWISS−PROT(Release 39.0)、PIR−Protein(Release 65.0)]をBLAST法(Journal of Molecular Biology,215,403−410,1990)により検索した。その結果、VHおよびVLともに完全に一致する配列は認められず、抗hIGFラットモノクローナルKM1468のVHおよびVLは新規なアミノ酸配列を有していることが確認された。
また、抗hIGFラットモノクローナルKM1468のVHおよびVLのCDRを、既知の抗体のアミノ酸配列と比較することにより同定した。抗hIGFラットモノクローナル抗体KM1468のVHのCDR1、2および3のアミノ酸配列をそれぞれ配列番号5、6および7に、VLのCDR1、2および3のアミノ酸配列をそれぞれ配列番号8、9および10にそれぞれ示した。
(参考例6)
抗hIGFヒト型キメラ抗体の作製
(1)抗hIGFヒト型キメラ抗体発現ベクターの構築
WO97/10354に記載のヒトIgG1、κクラスの抗体を発現できるヒト化抗体発現用ベクターpKANTEX93と参考例5(3)で得られた抗hIGFラットモノクローナル抗体KM1468のH鎖およびL鎖cDNAを含むプラスミドを用いて抗hIGFラットモノクローナル抗体KM1468に由来する抗hIGF−Iヒト型キメラ抗体発現ベクターを以下のようにして構築した。
まず、KM1468のVHおよびVLcDNAをアミノ酸配列が変化しないように発現ベクターpKANTEX93に挿入するため、PCRによって抗hIGFラットモノクローナル抗体KM1468のVHおよびVLcDNAを再構築した。プライマーとして、VHcDNA用に配列番号68と配列番号69の塩基配列をそれぞれ有する合成DNAを、VLcDNA用に配列番号70と配列番号71の塩基配列をそれぞれ有する合成DNAを設計した。それぞれの合成DNAは5’末端にpKANTEX93へクローニングするための制限酵素認識配列を含んでいる。実際には、参考例5(3)で得られたプラスミドpKM1468H5−2の20ngを50μLのKOD DNA Polymerase添付PCR Buffer #1(東洋紡績社製)、0.2mM dNTPs、1mM塩化マグネシウム、0.5μMの配列番号67と68に示した塩基配列を有する合成DNAを含む緩衝液に添加し、DNAサーマルサイクラーGeneAmp PCR System 9600(PERKIN ELMER社製)を用いて、94℃にて3分間加熱した後、2.5単位のKOD DNA Polymerase(東洋紡績社製)を添加し、98℃にて15秒間、65℃にて2秒間、74℃にて30秒間のサイクルを25サイクル行った。同様に、参考例5(3)で得られたプラスミドpKM1468L5−1の20ngを50μLのKOD DNA Polymerase添付PCR Buffer #1(東洋紡績社製)、0.2mM dNTPs、1mM塩化マグネシウム、0.5μMの配列番号69と70に示した塩基配列を有する合成DNAを含む緩衝液に添加し、上記と同様の方法でPCRを行なった。それぞれの反応液10μLをアガロースゲル電気泳動した後、QIAquick Gel Extraction Kit(QIAGEN社製)を用いて、約0.5kbのVHのPCR産物、約0.43kbのVLのPCR産物をそれぞれ回収した。
次に、プラスミドpBluescript II SK(−)(Stratagene社製)を制限酵素SmaI(Takara Shuzo社製)で消化後、Calf Intestine Alkaline Phosphatase(以下、CIAPと表記する;Takara Shuzo社製)で末端を脱リン酸化して得られたDNA0.1μgと、上記で得られたそれぞれのPCR産物約0.1μgを滅菌水に加えて7.5μLとし、TaKaRa DNA Ligation Kit Ver.2のsolution I(Takara Shuzo社製)7.5μL、制限酵素SmaI(Takara Shuzo社製)0.3μLを加えて22℃で一晩反応させた。このようにして得られた組換えプラスミドDNA溶液を用いて大腸菌DH5α株(東洋紡績社製)を形質転換した。形質転換株より各プラスミドDNAを調製し、BigDye Terminator Cycle Sequencing FS Ready Reaction Kit(Applied Biosystems社製)を用いて添付の説明書に従い、反応を行い、塩基配列自動分析装置ABI PRISM 377(Applied Biosystems社製)を用いて塩基配列を決定した。こうして目的の塩基配列を有する第16図に示したプラスミドpKM1468VHおよびpKM1468VLを得た。
次に、上記で得られたpKM1468VHのVHcDNAを含む制限酵素断片(NotI−ApaI)をヒト化抗体発現用ベクターpKANTEX93のNotI−ApaI部位に挿入し、第17図に示したプラスミドpKANTEX1468Hを構築した。さらに、上記で得られたpKM1468VLのVLcDNAを含む制限酵素断片(EcoRI−BsiWI)をプラスミドpKANTEX1468HのEcoRI−BsiWI部位に挿入し、第17図に示したプラスミドpKANTEX1468Chiを構築した。プラスミドpKANTEX1468Chiを用いて、BigDye Terminator Cycle Sequencing FS Ready Reaction Kit(Applied Biosystems社製)を用いて添付の説明書に従い、反応を行い、塩基配列自動分析装置ABI PRISM 377(Applied Biosystems社製)を用いてVHおよびVLcDNAの塩基配列を決定した結果、目的のVHおよびVLcDNAがクローニングされたプラスミドが得られたことを確認した。
(3)抗hIGFヒト型キメラ抗体の動物細胞を用いた安定発現
上記(2)で得られた抗hIGFキメラ抗体発現ベクターpKANTEX1468Chiを用いて抗hIGFヒト型キメラ抗体の動物細胞での発現を以下のようにして行った。
プラスミドpKANTEX1468Chiを制限酵素AatII(東洋紡績社製)で処理して直鎖状化した後、10μgを4×10細胞のラットミエローマ細胞株YB2/0細胞(ATCCCRL1581)へエレクトロポレーション法(Cytotechnology,3,133−140,1990)により導入後、40mLのH−SFM(5)培地[FCSを5%含むH−SFM(Gibco BRL社製)]に懸濁し、96ウェル培養プレート(住友ベークライト社製)に200μL/ウェルずつ分注した。37℃、5%COインキュベーター内で24時間培養した後、G418を0.5mg/mLになるように添加して1〜2週間培養した。G418耐性を示す形質転換体のコロニーが出現し、コンフルエントになったウェルより培養上清を回収し、上清中の抗hIGFヒト型キメラ抗体の濃度を後述の本参考例(5)に示す結合ELISAにより測定した。
培養上清中に抗hIGFキメラ抗体の発現が認められたウェルの形質転換体については、dhfr遺伝子増幅系を利用して抗体発現量を増加させる目的で、G418を0.5mg/mL、dhfr遺伝子産物のDHFRの阻害剤であるMTX(SIGMA社製)を50nM含むH−SFM(5)に1〜2×10細胞/mLになるように懸濁し、24ウェル培養プレート(Greiner社製)に1mLずつ分注した。37℃、5%COインキュベーター内で1〜2週間培養して、50nM MTX耐性を示す形質転換体を誘導した。形質転換体がウェルにコンフルエントになった時点で培養上清中の抗hIGFヒト型キメラ抗体の濃度を後述の本参考例(5)に示す結合ELISAにより測定した。培養上清中に抗hIGFヒト型キメラ抗体の発現が認められたウェルの形質転換体については、上記と同様の方法により、MTX濃度を100nM、200nMと順次上昇させ、最終的にG418を0.5mg/mL、MTXを200nMの濃度で含むH−SFM(5)で増殖可能かつ、抗hIGFヒト型キメラ抗体を高発現する形質転換体を得た。得られた形質転換体については、2回の限界希釈法による単一細胞化を行い、抗hIGFヒト型キメラ抗体の発現の最も高い形質転換体を得た。抗hIGFラットモノクローナル抗体KM1468に由来する抗hIGFヒト型キメラ抗体産生形質転換細胞株としては、形質転換体KM3002があげられる。なお、形質転換体KM3002は、平成14年4月2日付けで独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センター(日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6 郵便番号305−8566)にFERM BP−7996として寄託されている。
(4)抗hIGFキメラ抗体の培養上清からの精製
参考例5(3)で得られた抗hIGFヒト型キメラ抗体を発現する形質転換細胞株KM3002を、G418を0.5mg/mL、MTXを200nM、Daigo’s GF21(和光純薬社製)を5%の濃度で含むH−SFMに1〜2×10細胞/mLとなるように懸濁し、175cm2フラスコ(Greiner社製)に100mLずつ分注した。37℃、5%COインキュベーター内で5〜7日間培養し、コンフルエントになった時点で培養上清を回収した。培養上清約1LよりProsep−A(Bioprocessing社製)カラムを用いて、添付の説明書に従い、抗hIGFヒト型キメラ抗体KM3002を精製し、約10.2mgの精製蛋白質を取得した。得られた抗hIGFヒト型キメラ抗体KM3002の約4μgを、公知の方法(Nature,227,680−685,1970)に従って電気泳動し、分子量および精製度を調べた。その結果を第18図に示した。精製した抗hIGFキメラ抗体KM3002は、非還元条件下では分子量が約150キロダルトン(以下、Kdと表記する)の1本のバンドが、還元条件下では約50Kdと約25Kdの2本のバンドが認められた。これらの分子量は、IgGクラスの抗体は、非還元条件下では分子量は約150Kdであり、還元条件下では分子内のS−S結合が切断され、約50Kdの分子量を持つH鎖と約25Kdの分子量を持つL鎖に分解されるという報告(Antibodies:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory,Chapter 14,1988;Monoclonal Antibodies:Principles and Practice,Academic Press Limited,1996)と一致し、抗hIGFヒト型キメラ抗体KM3002が正しい構造の抗体分子として発現されていることが確認された。また、精製した抗hIGFキメラ抗体KM3002のH鎖およびL鎖のN末端アミノ酸配列をプロテインシーケンサーPPSQ−10(Shimadzu社製)を用いて解析した結果、抗hIGF抗体KM1468のH鎖およびL鎖のN末端アミノ酸配列と一致することを確認した。
(5)抗hIGFキメラ抗体KM3002のhIGFに対する反応性
抗hIGFラット抗体KM1468および抗hIGFキメラ抗体KM3002のhIGF−Iに対する反応性を参考例1(4)に示したELISAにより検討した。ただし、ELISAプレートに固定化したメチル化BSA−hIGF−Iの濃度は、0.5μg/mL、二次抗体として、ラット抗体の場合は、4000倍に希釈したペルオキシダーゼ標識ウサギ抗ラットIg抗体(DAKO社製)、キメラ抗体の場合は、1000倍に希釈したペルオキシダーゼ標識マウス抗ヒトIgG1抗体(Southern Biotechnology社製)を用いて行った。第19図に示したように、抗hIGFキメラ抗体KM3002は、hIGF−Iに対する抗体濃度依存的な結合活性を示した。また、その活性は、二次抗体が異なるため、直接の比較は困難であるが、抗hIGFラット抗体KM1468と同等であることが示唆された。
【産業上の利用可能性】
本発明は、ヒトインスリン様成長因子−I(以下、hIGF−Iと記す)およびヒトインスリン様成長因子−II(以下、hIGF−IIと記す)と特異的にかつ同程度の強さで結合し、ヒトIGF−IおよびヒトIGF−IIの生物活性を阻害する能力を有する遺伝子組換え抗体または該抗体断片、該抗体または該抗体断片を生産する形質転換体、該抗体または該抗体断片の製造法および該抗体または該抗体断片を有効成分として含有する医薬を提供することを目的とする。
【図面の簡単な説明】
第1図は、プラスミドpBS/CamHV0およびpBS/LV0の造成工程を示した図である。
第2図は、プラスミドpKANTEX93/CamHV0/LV0の造成工程を示した図である。
第3図は、抗hIGFCDR移植抗体のhIGF−Iに対する特異的な反応性を示した図である(結合ELISA)。横軸は抗体濃度を、縦軸は結合活性を吸光度(415nm)でそれぞれ示す。aには、□で示した抗hIGFヒト型キメラ抗体KM3002、○で示した抗hIGFCDR移植抗体CamHV0/LV0、△で示した抗hIGFCDR移植抗体QAR/LV0、■で示した抗hIGFCDR移植抗体QGAR/LV0および●で示した抗hIGFCDR移植抗体CamHV0/NYPLL3Allの結果を、bには□で示した抗hIGFヒト型キメラ抗体KM3002、○で示した抗hIGFCDR移植抗体CamHV0/LV0、◇で示した抗hIGFCDR移植抗体QGAR/LV0、△で示した抗hIGFCDR移植抗体QGAR/NYPLL3All、●で示した抗hIGFCDR移植抗体QGAR/PLDFTおよび■で示した抗hIGFCDR移植抗体QGAR/PLLDFTの結果をそれぞれ示す。
第4図は、抗hIGFCDR移植抗体のhIGF−IまたはhIGF−II依存的な細胞増殖阻害効果を示した図である。aは10ng/mLのhIGF−I存在下、bは20ng/mLのhIGF−II存在下での結果をそれぞれ示す。横軸が抗体濃度(μg/mL)、縦軸が細胞の増殖の値を吸光度(OD450nm)でそれぞれ示す。図中実線はhIGF−IまたはhIGF−II添加かつ抗体非添加時の細胞増殖のベースラインを、破線はhIGF−IまたはhIGF−II非添加かつ抗体非添加時の細胞増殖のベースラインをそれぞれ示す。□は抗hIGFヒト型キメラ抗体KM3002、○は抗hIGFCDR移植抗体CamHV0/LV0、△は抗hIGFCDR移植抗体QAR/LV0、■は抗hIGFCDR移植抗体QGAR/LV0の結果をそれぞれ示す。
第5図は、抗hIGFCDR移植抗体のhIGF−IまたはhIGF−II依存的な細胞増殖阻害効果を示した図である。aは10ng/mLのhIGF−I存在下、bは20ng/mLのhIGF−II存在下での結果をそれぞれ示す。横軸が抗体濃度(μg/mL)、縦軸が細胞の増殖の値を吸光度(OD450nm)でそれぞれ示す。図中実線はhIGF−IまたはhIGF−II添加かつ抗体非添加時の細胞増殖のベースラインを、破線はhIGF−IまたはhIGF−II非添加かつ抗体非添加時の細胞増殖のベースラインをそれぞれ示す。□は抗hIGFヒト型キメラ抗体KM3002、○は抗hIGFCDR移植抗体CamHV0/LV0、△は抗hIGFCDR移植抗体QGAR/LV0、◇は抗hIGFCDR移植抗体CamHV0/NYPLL3All、■は抗hIGFCDR移植抗体QGAR/NYPLL3Allの結果をそれぞれ示す。
第6図は、抗hIGFCDR移植抗体のhIGF−IまたはhIGF−II依存的な細胞増殖阻害効果を示した。aは10ng/mLのhIGF−I存在下、bは20ng/mLのhIGF−II存在下での結果をそれぞれ示した。横軸が抗体濃度(μg/mL)、縦軸が細胞の増殖の値を吸光度(OD450nm)でそれぞれ示す。図中実線はhIGF−IまたはhIGF−II添加かつ抗体非添加時の細胞増殖のベースラインを、破線はhIGF−IまたはhIGF−II非添加かつ抗体非添加時の細胞増殖のベースラインをそれぞれ示す。□は抗hIGFヒト型キメラ抗体KM3002、◇は抗hIGFCDR移植抗体QGAR/LV0、■は抗hIGFCDR移植抗体QGAR/PLDFT、●は抗hIGFCDR移植抗体QGAR/PLLDFT、▲は抗hIGFCDR移植抗体QGAR/NYPLL3Allの結果をそれぞれ示す。
第7図は、抗hIGFラットモノクローナル抗体のhIGF−Iに対する特異的な反応性を示した図である(結合ELISA)。図中、黒塗りのバーはメチル化BSA−hIGF−Iを抗原に、白抜きのバーはメチル化BSA−BSAを抗原に用いた時の結果を示す。
第8図は、抗hIGFラットモノクローナル抗体の液相系における天然の立体構造を有するhIGF−Iに対する反応性を示した図である(競合ELISA)。◇は抗hIGFラットモノクローナル抗体KM1468、■は抗hIGFラットモノクローナル抗体KM1470、△は抗hIGFラットモノクローナル抗体KM1471、×は抗hIGFラットモノクローナル抗体KM1472、○は抗hIGFラットモノクローナル抗体KM1473の結果をそれぞれ示す。
第9図は、抗hIGFラットモノクローナル抗体KM1468のhIGF−Iに対する結合における各種ペプチドによる阻害活性を示した図である。横軸は各種ペプチド濃度(μg/mL)、縦軸は結合活性(%)をそれぞれ示す。Aには●で示したp1−18、□で示したp24−35、■で示したp29−41、△で示したp36−47、◇で示したp61−70、◆で示したp14−30、×で示したp41−56の結果を、Bには○で示したhIGF−I、●で示したp41−56C、□で示したp52−70、■で示したp1−18およびp41−56C、△で示したp1−18およびp52−70、▲で示したp41−56Cおよびp52−70、◇で示したp1−18、p41−56Cおよびp52−70の結果をそれぞれ示す。
第10図は、抗hIGFラットモノクローナルKM1468のhIGF−IおよびhIGF−IIへの結合に対する、hIGF−I、hIGF−IIおよびヒトインスリンでの阻害活性を示した図である。Aが抗hIGFラットモノクローナル抗体KM1468とhIGF−Iとの結合、Bが抗hIGFラットモノクローナル抗体KM1468とhIGF−IIとの結合に対する各因子による阻害をそれぞれ示す。横軸が各種因子濃度(μg/mL)、縦軸が因子非添加時を100%としたときの結合活性(%)を示す。■はhIGF−I、○はhIGF−II、△はヒトインスリンの結果をそれぞれ示す。
第11図は、プラスミドpBS(II)SK(−)/hIGF−1およびpKANTEX93/hIGF−Iの造成工程を示した図である。
第12図は、A549/hIGF−I細胞におけるhIGF−Iの発現を示した図である。Aは、組換えhIGF−I蛋白質による阻害度を示す。横軸は添加した組換えhIGF−I蛋白質の濃度、縦軸は結合活性(OD415)を示す。破線は組換えhIGF−I蛋白質非添加時の結果を示す。Bは、A549細胞およびA549/hIGF−I細胞の培養上清中に含まれるhIGF−Iを示す。白抜きはA549細胞、網掛けはA549/hIGF−I細胞をそれぞれ示す。
第13図は、抗hIGFラットモノクローナル抗体KM1468のhIGF−I発現細胞に対する細胞増殖阻害効果を示した図である。破線は抗hIGFラットモノクローナルKM1468非添加のA549/hIGF−I細胞の増殖性を、実線は抗hIGFラットモノクローナルKM1468非添加のA549細胞の細胞増殖をそれぞれ示す。■は抗hIGFラットモノクローナルKM1468を添加したA549/hIGF−I細胞の増殖性を、○は抗hIGFラットモノクローナルKM1468を添加したA549細胞の増殖性をそれぞれ示す。
第14図は、抗hIGFラットモノクローナル抗体KM1468の足場非依存性増殖阻害効果を示した図である。図中の白抜きのカラムはA549細胞のコロニー形成数を、網掛けのカラムはA549/hIGF−I細胞の形成数を、黒塗りのカラムは抗hIGFラットモノクローナルKM1468を添加したA549/hIGF−I細胞の形成数をそれぞれ示す。
第15図は、抗hIGFラットモノクローナルKM1468の抗腫瘍効果を示した図である。横軸は腫瘍移植後の経過日数を、縦軸は腫瘍体積をそれぞれ示す。A549細胞を移植したマウスのうち、●は抗hIGFラットモノクローナルKM1468非添加時を、○は抗hIGFラットモノクローナルKM1468添加時をそれぞれ示す。A549/hIGF−I細胞を移植したマウスのうち、■は抗hIGFラットモノクローナルKM1468非添加時を、□は抗hIGFラットモノクローナルKM1468添加時をそれぞれ示す。
第16図は、プラスミドpKM1468VHおよびpKM1468VLの造成工程を示した図である。
第17図は、プラスミドpKANTEX1468Chiの造成工程を示した図である。
第18図は、精製した抗hIGFヒト型キメラ抗体KM3002のSDS−PAGE(4〜15%グラジエントゲルを使用)の電気泳動パターンを示した図である。左側が非還元条件、右側が還元条件でそれぞれ電気泳動を行った図である。レーンMが非還元時は高分子量マーカーおよび還元時は低分子量マーカー、レーン1が抗hIGFヒト型キメラ抗体KM3002の泳動パターンをそれぞれ示す。
第19図は、抗hIGFラットモノクローナル抗体KM1468および抗hIGFヒト型キメラ抗体KM3002のhIGF−Iに対する反応をそれぞれ示す。横軸が抗体濃度(μg/mL)、縦軸が結合活性(OD415)をそれぞれ示す。○が抗hIGFラットモノクローナル抗体KM1468、●が抗hIGFヒト型キメラ抗体KM3002の反応性をそれぞれ示す。
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【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10】

【図11】

【図12】

【図13】

【図14】

【図15】

【図16】

【図17】

【図18】

【図19】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトインスリン様成長因子−I(IGF−I)およびヒトインスリン様成長因子−II(IGF−II)と特異的に結合し、ヒトIGF−IおよびヒトIGF−IIの生物活性を阻害する能力を有する遺伝子組換え抗体または該抗体断片。
【請求項2】
ヒトIGF−IおよびヒトIGF−IIに対する結合の強さが同程度である請求の範囲1に記載の遺伝子組換え抗体または該抗体断片。
【請求項3】
バイオセンサービアコアで測定されるヒトIGF−IおよびヒトIGF−IIに対する結合定数が1×10−1以上である請求の範囲1または2に記載の遺伝子組換え抗体または該抗体断片。
【請求項4】
抗体分子のクラスがIgGである、請求の範囲1〜3のいずれか1項に記載の遺伝子組換え抗体または該抗体断片。
【請求項5】
遺伝子組換え抗体が、ヒトIGFに対するモノクローナル抗体の重鎖可変領域(VH)および軽鎖可変領域(VL)の相補性決定領域(CDR)を含む、請求の範囲1〜4のいずれか1項に記載の遺伝子組換え抗体または該抗体断片。
【請求項6】
遺伝子組換え抗体、または抗体断片のVHの相補性決定領域(CDR)1、CDR2およびCDR3が、それぞれ配列番号5、6および7で表される請求の範囲5に記載の遺伝子組換え抗体または該抗体断片。
【請求項7】
遺伝子組換え抗体または抗体断片のVLのCDR1、CDR2およびCDR3が、それぞれ配列番号8、9および10で表される請求の範囲5に記載の遺伝子組換え抗体または該抗体断片。
【請求項8】
遺伝子組換え抗体、または抗体断片のVHのCDR1、CDR2およびCDR3が、それぞれ配列番号5、6および7で表され、VLのCDR1、CDR2およびCDR3が、それぞれ配列番号8、9および10で表される請求の範囲5〜7のいずれか1項に記載の遺伝子組換え抗体または該抗体断片。
【請求項9】
遺伝子組換え抗体または該抗体活性断片のVHが、配列番号11で表されるアミノ酸配列のうち1番目のGln、11番目のVal、42番目のGly、75番目のSer、77番目のAsn、84番目のAsn、93番目のVal、97番目のAla、98番目のArgから選ばれる少なくとも1つのアミノ酸が置換されたアミノ酸配列または配列番号54で表されるアミノ酸配列のうち49番目のSer、77番目のAsn、84番目のAsn、93番目のVal、97番目のAla、98番目のArgから選ばれる少なくとも1つのアミノ酸が置換されたアミノ酸配列を含む請求の範囲5〜8のいずれかに1項に記載の遺伝子組換え抗体または該抗体断片。
【請求項10】
遺伝子組換え抗体または該抗体断片のVLが、配列番号14で表されるアミノ酸配列のうち4番目のMet、9番目のAsp、10番目のSer、11番目のLeu、15番目のLeu、22番目のAsn、35番目のTyr、39番目のPro、42番目のPro、45番目のLeu、46番目のLeu、69番目のAsp、70番目のPhe、71番目のThr、82番目のVal、84番目のValから選ばれる少なくとも1つのアミノ酸が置換されたアミノ酸配列または配列番号55で表されるアミノ酸配列のうち4番目のMet、9番目のSer、10番目のSer、11番目のLeu、15番目のVal、35番目のTyr、39番目のPro、42番目のAla、45番目のLeu、46番目のLeu、69番目のAsp、70番目のPhe、71番目のThr、82番目のPheから選ばれる少なくとも1つのアミノ酸が置換されたアミノ酸配列を含む請求の範囲5〜8のいずれか1項に記載の遺伝子組換え抗体または該抗体断片。
【請求項11】
遺伝子組換え抗体または該抗体断片のVHが配列番号11で表されるアミノ酸配列のうち1番目のGln、11番目のVal、42番目のGly、75番目のSer、77番目のAsn、84番目のAsn、93番目のVal、97番目のAla、98番目のArgから選ばれる少なくとも1つのアミノ酸が置換されたアミノ酸配列または配列番号54で表されるアミノ酸配列のうち49番目のSer、77番目のAsn、84番目のAsn、93番目のVal、97番目のAla、98番目のArgから選ばれる少なくとも1つのアミノ酸が置換されたアミノ酸配列、およびVLが、配列番号14で表されるアミノ酸配列のうち、4番目のMet、9番目のAsp、10番目のSer、11番目のLeu、15番目のLeu、22番目のAsn、35番目のTyr、39番目のPro、42番目のPro、45番目のLeu、46番目のLeu、69番目のAsp、70番目のPhe、71番目のThr、82番目のVal、84番目のValから選ばれる少なくとも1つのアミノ酸が置換されたアミノ酸配列または配列番号55で表されるアミノ酸配列のうち4番目のMet、9番目のSer、10番目のSer、11番目のLeu、15番目のVal、35番目のTyr、39番目のPro、42番目のAla、45番目のLeu、46番目のLeu、69番目のAsp、70番目のPhe、71番目のThr、82番目のPheから選ばれる少なくとも1つのアミノ酸が置換されたアミノ酸配列を含む請求の範囲5〜10のいずれかに1項に記載の遺伝子組換え抗体または該抗体断片。
【請求項12】
遺伝子組換え抗体または該抗体断片のVHが配列番号11で表されるアミノ酸配列のうち1番目のGln、11番目のVal、42番目のGly、75番目のSer、77番目のAsn、84番目のAsn、93番目のVal、97番目のAla、98番目のArgから選ばれる少なくとも1つのアミノ酸が置換されたアミノ酸配列、およびVLが、配列番号14で表されるアミノ酸配列のうち、4番目のMet、9番目のAsp、10番目のSer、11番目のLeu、15番目のLeu、22番目のAsn、35番目のTyr、39番目のPro、42番目のPro、45番目のLeu、46番目のLeu、69番目のAsp、70番目のPhe、71番目のThr、82番目のVal、84番目のValから選ばれる少なくとも1つのアミノ酸が置換されたアミノ酸配列を含む請求の範囲5〜11のいずれかに1項に記載の遺伝子組換え抗体または該抗体断片。
【請求項13】
遺伝子組換え抗体または該抗体断片のVHが配列番号54で表されるアミノ酸配列のうち49番目のSer、77番目のAsn、84番目のAsn、93番目のVal、97番目のAla、98番目のArgから選ばれる少なくとも1つのアミノ酸が置換されたアミノ酸配列を含み、かつVLが、配列番号55で表されるアミノ酸配列のうち4番目のMet、9番目のSer、10番目のSer、11番目のLeu、15番目のVal、35番目のTyr、39番目のPro、42番目のAla、45番目のLeu、46番目のLeu、69番目のAsp、70番目のPhe、71番目のThr、82番目のPheから選ばれる少なくとも1つのアミノ酸が置換されたアミノ酸配列を含む請求の範囲5〜11のいずれかに1項に記載の遺伝子組換え抗体または該抗体断片。
【請求項14】
遺伝子組換え抗体または該抗体断片のVHが配列番号26で表されるアミノ酸配列を含む請求の範囲5〜8または12のいずれかに1項に記載の遺伝子組換え抗体または該抗体断片。
【請求項15】
遺伝子組換え抗体または該抗体断片のVLが配列番号27、28または29で表されるアミノ酸配列を含む請求の範囲5〜8または12のいずれかに1項に記載の遺伝子組換え抗体または該抗体断片。
【請求項16】
遺伝子組換え抗体または該抗体断片のVHが配列番号26で表されるアミノ酸配列を含み、かつVLが配列番号27、28または29で表されるアミノ酸配列を含む請求の範囲5〜8、12、14または15のいずれかに1項に記載の遺伝子組換え抗体または該抗体断片。
【請求項17】
遺伝子組換え抗体または該抗体断片のVHが配列番号26で表されるアミノ酸配列を含み、かつVLが配列番号27で表されるアミノ酸配列を含む請求の範囲5〜8、12、14〜16のいずれかに1項に記載の遺伝子組換え抗体または該抗体断片。
【請求項18】
遺伝子組換え抗体または該抗体断片のVHが配列番号26で表されるアミノ酸配列を含み、かつVLが配列番号28で表されるアミノ酸配列を含む請求の範囲5〜8、12、14〜16のいずれかに1項に記載の遺伝子組換え抗体または該抗体断片。
【請求項19】
遺伝子組換え抗体または該抗体断片のVHが配列番号26で表されるアミノ酸配列を含み、かつVLが配列番号29で表されるアミノ酸配列を含む請求の範囲5〜8、12、14〜16のいずれかに1項に記載の遺伝子組換え抗体または該抗体断片。
【請求項20】
遺伝子組換え抗体がヒト型CDR移植抗体である請求の範囲1〜19のいずれか1項に記載の遺伝子組換え抗体または該抗体断片。
【請求項21】
抗体断片が、Fab、Fab’、F(ab’)、一本鎖抗体(scFv)、二量体化可変領域(diabody)、ジスルフィド安定化可変領域(dsFv)およびCDRを含むペプチドから選ばれる抗体断片である請求の範囲1〜19のいずれか1項に記載の抗体断片。
【請求項22】
請求の範囲1〜21のいずれか1項に記載の遺伝子組換え抗体または該抗体断片をコードするDNA。
【請求項23】
請求の範囲22に記載のDNAを含有する発現ベクター。
【請求項24】
請求の範囲23に記載の発現ベクターを導入して得られる形質転換体。
【請求項25】
請求の範囲24に記載の形質転換体を培地中で培養し、培養物中に請求項1〜21のいずれか1項に記載の遺伝子組換え抗体または該抗体断片を生成蓄積させ、該培養物から該遺伝子組換え抗体または該抗体断片を単離し、精製する工程を含む、遺伝子組換え抗体または該抗体断片を製造する方法。
【請求項26】
請求の範囲1〜21のいずれか1項に記載の遺伝子組換え抗体または該抗体断片を有効成分として含有する医薬。
【請求項27】
請求の範囲1〜21のいずれか1項に記載の遺伝子組換え抗体または該抗体断片を有効成分として含有するIGF関連疾患の治療薬。
【請求項28】
IGF関連疾患が、癌、末端肥大症および糖尿病性合併症である請求項27に記載の治療薬。

【国際公開番号】WO2005/028515
【国際公開日】平成17年3月31日(2005.3.31)
【発行日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−514152(P2005−514152)
【国際出願番号】PCT/JP2004/014453
【国際出願日】平成16年9月24日(2004.9.24)
【出願人】(000001029)協和醗酵工業株式会社 (276)
【Fターム(参考)】