説明

ヒトサイトメガロウイルス(HCMV)の組換え抗原

本明細書に記載の発明は、HCMV感染に対するヒトB-細胞応答に関与するHCMVタンパク質の抗原領域を同定するための方法、キメラ融合生成物の形態にあるかかる抗原領域を組合せるための方法、ならびに診断および免疫原性薬としてのそれらの使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(本発明の技術分野)
本明細書に記載の本発明は、動物またはヒト身体に直接適用しない診断手段の製造技術分野に関する。
【0002】
また、本発明は、化合物、その製造方法、それらを含有するその使用および組成物のための方法を提供するものであり、特にヒトサイトメガロウイルス感染の検出および診断のための、ならびに該感染の処置および予防のための医薬および診断分野における産業用途に好適である。
【背景技術】
【0003】
(本発明の背景)
早期診断は、患者の生活を十分に改善でき、健康管理および患者の両者について同時救済することが出来るので、治療に関する全ての分野において優先的かつ強く望まれる。本明細書に記載した本発明の特定の場合において、早期診断は、胎児の健康に対して特に懸念を持つ妊婦および感染患者、特に免疫不全に罹患する患者において、サイトメガロウイルス感染の可能性があるかまたは感染が存在する症例において重大な問題である。
【0004】
ヒトサイトメガロウイルス(HCMV)は、ヒトヘルペスウイルス-5、Herpesviridae科の高い宿主特異的ウイルスの俗名である。形態学的には、HCMVは、ほぼ165個の遺伝子をコードしている235 kbpの二本鎖DNAゲノムを持つ科のなかで最大のウイルスである(Dolan et al.、2004、J. Gen. Virol. 85:1301-1312)。全てのヘルペスウイルスのようなHCMVは、宿主中で潜伏および再活性化をうける。該ウイルスは、ヒト集団において流行しており、宿主中で50-90%が再活性化を示す。該ウイルスは、ヒト集団において蔓延しており、社会的経済要因および地理的位置の両方により、50歳までに50-90%の成人が血清陽性となる(Gandhi and Khanna、2004、Lancet Infect. 4:725-738)。ヒトは、HCMVの唯一の保菌宿主生物である。HCMVによる一次感染は、粘膜部位からウイルスを断続的に再活性化および排出化により生涯担体状態となるが、免疫応答性宿主においては無症状および自己限定的である。これに対して、免疫抑制された成人において潜伏期のウイルスの再活性化は、非常に深刻な結果となる肺炎をもたらし得る(Gandhi et al.、2003、Blood Rev. 17:259-264)。さらに、妊娠中に一次感染をおこした妊婦は、流産を引きおこすかまたは先天的に感染した新生児において重度の胎児疾患を引きおこす可能性がある(Revello and Gerna、Clin. Microbiol. Rev. 2002、15:680-715)。
【0005】
HCMV感染の該問題に関する広範な概要については、特定の医学文献を参照されたい。
【0006】
HCMV感染の診断は、血液または体液中のウイルスおよび/またはウイルス生成物を単離すること、特異的ヌクレオチド配列をPCRにより検出すること、および感染に対する応答の際に宿主により生成された特異的抗-HCMV抗体を検出することにより確定されている(Revello and Gerna、Clin. Microbiol. Rev. 2002、15:680-715)。
【0007】
臨床医にとっての主な課題は、妊婦における一次HCMV感染の診断およびその新生児における先天性感染の診断である。双方の場合においては、十分な時間で好適な治療方法を行い、および胎児および新生児への起こり得るダメージを回避するために、ウイルス感染が妊婦の受胎前におこったのか、妊婦の受胎後におこったのかどうかを確定することが重要である。さらに、母親から胎児への垂直移行時期を決定することが重要である。
【0008】
妊娠期間中のセロコンヴァーションおよび新生児における先天的感染の診断は、一般的に様々な種類の抗-HCMVイムノグロブリン(IgG、IgM、IgGの親和力)の存在を検出する試み、および母親とその子供の免疫学的プロファイルを比較する試みにより為される。しかしながら、購入可能な市販アッセイは、全ての患者において正確に感染の診断ができるほど十分な感度や特異性を提供しない。さらに、大部分の現在利用可能なイムノアッセイは、HCMV感染繊維芽細胞培養物から得られた十分に規定されていないウイルス抗原を用いるもので、血清イムノグロブリンを検出するその能力が異なり得る。最終的に、HCMV血清診断における別の課題は、究極の判断基準がない理由から、正確な結果の分類方法である。従って、特異的で、感受性が高く、革新的な診断薬の可用性が望まれる。
【0009】
多くの試験から、HCMVに関する多様な異なる抗原性タンパク質が見出されており、この対応する遺伝子配列もまた決定されてきた。
【0010】
診断目的および治療目的双方のために最も注目されているタンパク質のなかの一つとして、ワクチンの形態において、我々は、pp150、すなわちウイルスの大きなリン酸化外皮タンパク質を挙げるべきであろう、このタンパク質は、HCMVに対して抗体陽性であると知られる血清によって最も確実に検出されることが判っている。このタンパク質と、エプスタイン・バーウイルス・タンパク質、水痘帯状疱疹ウイルスおよびヘルペス単純ウイルスとの間の配列ホモロジーは見出されておらず、そのため他のウイルスタンパク質との交差反応のリスクを低減させる。
【0011】
HCMV抗原は、長い間、様々な方法で得られた抗原混合物として最初に知られ、また利用されてきた。例えば、Greijer および colleagues (Greijer et al.、J. Clin. Microbiol. 1999、37:179-188)は、HCMV IgMの特異的かつ高感受性の早期検出のためにpp52 (UL44)およびpp150(UL32)から得たペプチドの特定の組合せ物を報告したが、一方でpp150 (UL32)、gB(UL55)、およびpp28 (UL99)から得たペプチドの組合せ物を選択して、HCMV IgGとの至適および特異的反応性を得た。これらペプチドの組合せ物を用いて得た結果を基にして、新規かつ高度に特異的な血清診断アッセイを構築した。これらのアッセイは、“究極の判断基準”、即ちビリオン抗原を基にしたELISAにより得られた結果と比較して、IgGおよびIgMに対して各々98.9および96.4%の感度を示した。
【0012】
この試験結果から、高度に規定された合成ペプチドの特定の組合せ物は、現行の血清診断において使用される複合体HCMVビリオン抽出物に代わり得ることを結論づけた。
【0013】
この十年間、いくつかの試験により、HCMV感染の血清学的診断および治療用途(例えば、ワクチン)のための組換え抗原の使用が報告されている。
【0014】
これらの抗原全てが、細菌および哺乳類細胞におけるタンパク質発現を用いる分子生物技術により得られることは強調されるべきであろう。病原体の抗原フラグメントを得るために、ラムダファージ(ファージディスプレー)においてHCMVのゲノムから得られるcDNAフラグメントの発現/提示ライブラリー技術を記載する引用文献はない。
【0015】
国際特許出願番号WO03/010198は、DNA発現のベクター、およびラムダバクテリオファージのタンパク質D(pD)のアミノ末端部分との分子融合物としてのタンパク質提示を開示する。λKM4と呼ばれるこのベクターは発現実験のために使用したもの(例えば、λgt11を参照されたい)とは異なる、即ち外来DNAフラグメントにコードされた組換えタンパク質は、バクテリオファージ自身のタンパク質と共に融合産物として発現され、次いで該カプシド上で提示される。この方法により、ファージは、そのオープンリーディングフレーム(ORF)がpDと一致する場合にのみ該表面上で該タンパク質フラグメントを提示する。200〜1000個のヌクレオチド塩基対(bp)の範囲にある中程度の集団を示すように、ライブラリーにクローニングされるDNAフラグメントのサイズが選択され、そして統計学的理由のために、大部分のアウト・オブ・フレーム配列は、翻訳およびその結果としてファージ表面上での提示を許容しないストップコドンを含む。
【0016】
(本発明の要約)
本発明にて、アフィニティー選択およびファージディスプレー技術の組合せにより、HCMVの特異的抗原フラグメントの同定のための方法が、特に感染個体からの血清パネルをHCMV DNAフラグメントのファージディスプレーライブラリーに対するアフィニティー選択により提供されることを見出した。DNAフラグメントは、HCMVウイルスのゲノムDNAの酵素消化により得られる。この方法に従って、非常に大きなライブラリーから(即ち、多数の異なる配列を発現する)の抗原フラグメントを同定することが可能であることを証明する。従って、同定した抗原フラグメントは、診断目的および治療目的のために使用することができる。また、HCMVタンパク質の抗原領域の組合せは、組換えキメラタンパク質の形態において、個々の抗原フラグメントの抗原特性を保持し、それらを使用する診断アッセイの能力を改善することが判明した。このように、製造された対応するキメラタンパク質は診断目的および治療目的に使用され得る。
【0017】
そのため、本明細書に記載した本発明の目的は、感染個体からの血清パネルを用いて、HCMV DNA フラグメントのファージディスプレーライブラリーに対するアフィニティー選択によりHCMVタンパク質の抗原フラグメントを同定するための方法である。
【0018】
本発明により提供される方法により、診断薬として既知のHCMV抗原の用途を確認できるようになり、また既知の抗原においてヒトの免疫応答を誘発させるエピトープを同定することもできる、またこの部分は本発明のさらなる目的である;さらにHCMVタンパク質の抗原機能を同定することもできる、HCMVタンパク質についてのかかる機能は今までは知られていなかった;最後に、本発明の方法は、本発明のまた別の目的を構成するHCMV遺伝子産物の新規抗原フラグメントも提供する。
【0019】
本発明の別の目的は、上記方法で単離および特徴分析される抗原フラグメントであって、一つの組換えタンパク質として使用されるかまたは「抗原混合物」としてまたはキメラ抗原としてさらなる遺伝子工学技術により組合される抗原フラグメントである。本明細書に記載した発明はまた、該抗原領域に含まれるエピトープにまで及ぶ。
【0020】
診断薬として、およびそれらを含む関連のある診断用補助薬(例えば、酵素結合イムノアッセイまたはキットまたは他の支持体の形態において)としての、組換えタンパク質(選択した抗原の2以上の抗原領域を組み合わせることにより得られる抗原フラグメントおよびキメラ抗原)の使用は、本発明の別の目的を構成するものである。
【0021】
特にワクチンの形態において、ヒトにおける感染の予防および治癒に有用である製剤を処方するために、有効薬剤としての該抗原フラグメントおよびキメラ抗原を使用することは、本発明の別の目的を構成するものである。
【0022】
本発明の別の目的は、上記抗原フラグメントおよびキメラ抗原をコードしている遺伝子配列であり、特にHCMV感染の予防および治療のための医薬品としての、例えば遺伝子治療としての医薬品としてのその使用である。本発明はまた、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で上記フラグメントの配列とハイブリダイズする該遺伝子配列にまで及ぶ。
【0023】
これらの目的および他の目的は、実施例および図を用いて本明細書にて下記に詳細に説明される。
【0024】
(本発明の詳細な説明)
本発明の主な目的は、HCMV遺伝子産物の組換え抗原フラグメントの提供およびHCMVタンパク質の異なる抗原領域の融合により得た組換えキメラ抗原の提供であって、選択診断および治療手段を開発するために得られた組み換え生成物の使用である。
【0025】
上記に報告したような文献において知られる抗原または抗原フラグメントの他の型を超える本発明のキメラ抗原の使用に関する主な利点は、後記のとおりであり、またこれらの抗原を、感染を検出するために血清サンプルを使用する診断イムノアッセイに使用する場合に明確である:
−溶菌された感染細胞からの全細胞抽出物として調製された、全HCMV抗原の使用に関して、組換えキメラ抗原は、他の非ウイルス物質の存在による非特異的反応を回避し、良好な再現性を提供するという利点をもつ。
−HCMV抗原の一つの抗原領域の使用に関して、該組換えキメラ抗原は、それらを使用するアッセイの感受性を改善するという利点を示す。言い換えると、その使用は、偽陰性応答の出現を低下または排除する。
−一つの抗原領域の混合物または収集物の産業上利用性および製造に関して、この利点は、一つの各フラグメントを別々に製造して、その後にそれらを組み立てるよりもむしろ、3つ以上の抗原領域を含有する改変された構築体を経済的および再現性のある方法により製造することがより簡便であるという点である。
【0026】
これらおよび他の利点は、実施例に示されている。
【0027】
本発明は、HCMV DNAから調製したDNAフラグメントの発現/提示ライブラリーの構築、HCMV感染患者の血清を用いるかかるライブラリーの選択、抗原フラグメントの特徴分析、ならびに選択的な診断手段および治療手段を開発するための該フラグメントの使用を含む。
【0028】
本発明の方法は、アフィニティー選択およびファージディスプレーの能力を有利に組合せるものである。ファージディスプレーとは、当業者により理解されるように、小分子のタンパク質ドメインが、対応する遺伝子情報を含有するバクテリオファージの表面上で提示される発現/提示ライブラリーの選択に基づく方法である。病原体から得られるDNAを用いて構築したファージディスプレー型のライブラリーは、該病原体のタンパク質部分をそのカプシド上で発現し、また対応する遺伝子情報を含むバクテリオファージの回収物と、特異的な血清(病原体との反応性がある)とのインキュベーションを基にしたアフィニティー選択を利用することができる。血清中に存在する抗体と特異的に結合するバクテリオファージは、固体支持体(例えば、磁性ビーズ)に結合したまま(抗体自身により)容易に回収される;これに対して、非特異的なものは洗い流される。直接スクリーニング、すなわち所定の血清の抗体に結合する一つのファージクローンの能力の分析は、後の段階で、すなわち正確には選択の結果として、ライブラリー複雑性(即ち、多数の配列)が実質的に低下された時にのみ実施される。
【0029】
特に、本発明は、配列番号:2、配列番号:4、配列番号:6、配列番号:8、配列番号:10、配列番号:12および配列番号:14、ならびにその混合物からなる群から選択されるアミノ酸配列からなるヒトサイトメガロウイルス(HCMV)抗原フラグメントを対象の範囲とする。
【0030】
別の実施態様に従って、本発明は、本明細書に記載のHCMVタンパク質の少なくとも3つの異なる抗原領域の融合を含有するキメラ組換え抗原を対象の範囲とし、該抗原領域は、HCMV-特異的抗体に結合するB-細胞エピトープであり、好ましくは該HCMV-特異的抗体は、HCMVに感染している対象の血清から抽出される。
【0031】
好ましくは本発明のキメラ抗原において、3つの異なる抗原領域が共有結合またはペプチドリンカーにより結合される;より好ましくは、3つの異なる抗原領域の各々が、配列番号:2、配列番号:4、配列番号:6、配列番号:8、配列番号:10、配列番号:12および配列番号:14の群から選択されるアミノ酸配列からなる。
【0032】
本発明の特定の実施態様に従って、該キメラ抗原は、配列番号:16のアミノ酸配列または配列番号:18のアミノ酸配列を含む。
【0033】
用語「ポリペプチド」とは、一般的には、少なくとも4つの連続するアミノ酸、通常20〜500の連続するアミノ酸を含有するポリペプチド鎖にあてはまる。
【0034】
本明細書において示す用語「エピトープ」とは、T-細胞受容体またはB-細胞受容体によるか、または抗体により認識および結合される抗原分子の部分(即ち、抗体が産生されて、これに結合する大きな分子上の決定基)に関する。本明細書で使用した用語は、天然抗原決定基を擬態し得る天然分子または合成分子の抗原決定基を包含することを意図している。
【0035】
天然抗原決定基を擬態する分子は、「ミモトープ」とも言われ、またこれらの用語は、抗原の一次配列の連続セグメントにより形成されないエピトープに関して互換的に使用され得る。
【0036】
本発明に従って、エピトープは、9〜40のアミノ酸鎖長のポリペプチド鎖である。
【0037】
本明細書において示す用語「抗原フラグメント」または「抗原領域」は、エピトープを含有する抗原分子の領域に関する。
【0038】
本発明に従って、抗原フラグメントは、約50〜約500個のアミノ酸鎖長、好ましくは100〜200のポリペプチド鎖である。
【0039】
本明細書における用語「キメラ構築体」または「融合構築体」は、先に定義したアミノ酸配列の少なくとも1つを含有するポリペプチドを指すために使用される。従って、このポリペプチドは、本発明の単離ポリペプチドと、HCMV遺伝子産物の免疫優性のエピトープを含有し、また細菌細胞での遺伝子発現および複製に必要な重要な核酸配列を含有する他の抗原フラグメントとをコードしている核酸配列を接合させることにより作成した核酸配列によりコードされる。
【0040】
選択的に、もう一方の抗原フラグメントは、HCMVのファージディスプレーライブラリー、例えば本発明に記載の抗原フラグメントおよび/または文献にて知られているHCMVの抗原領域から選択されてもよい。
【0041】
本発明のキメラ抗原は、既知の方法を用いて設計され得る。融合物は、直接的であってもよく(一つのアミノ酸配列のC末端は、一つの共有結合を介してもう一方のN末端に結合される)、またはフレキシブルなリンカードメイン、例えばヒトIgGのヒンジ領域、または小分子アミノ酸、例えばグリシン、セリン、スレオニンまたはアラニン等から構成されるポリペプチドリンカーを様々な長さおよび組合せにて用いてもよい。例えば、該リンカーは、特定の間隔にてセリンまたはスレオニンにより中断されたポリグリシンリピートであってもよい。
【0042】
好ましくは、該リンカーは、アミノ酸配列 Ser-Gly-Gly-Gly-Ser (SGGGSリンカー)を示す、3つのグリシン残基および2つのセリン残基により構成される。
【0043】
本発明の別の目的は、上記したようなキメラ抗原をコードするヌクレオチド配列である。
【0044】
本発明の好ましいヌクレオチド配列は、配列番号:1、配列番号:3、配列番号:5、配列番号:7、配列番号:9、配列番号:11、配列番号:13、配列番号:15および配列番号:16からなる群から選択される。
【0045】
本発明の別の態様に従って、ヌクレオチド配列は、配列番号:1、配列番号:3、配列番号:5、配列番号:7、配列番号:9、配列番号:11および配列番号:13からなる群から選択される少なくとも3つの異なるヌクレオチド配列を含む。
【0046】
上記ヌクレオチド配列のいずれかと共に、ストリンジェントハイブリダイゼーション条件下で請求項8〜10に記載のいずれかに記載の配列とハイブリダイズするヌクレオチド配列もまた、本発明の範囲に含まれ、それによりコードされるキメラ組み換え抗原と共に本発明の範囲にふくまれる。
【0047】
好ましいヌクレオチド配列はDNA配列である。
【0048】
本発明の組換え抗原は、適切な発現ベクターを用いて原核生物または真核生物発現系におけるクローニングおよび発現により製造され得る。当分野で既知のあらゆる方法を用い得る。
【0049】
例えば、本発明の抗原をコードしている該DNA分子は、当分野では十分に既知の技術により好適に構築された発現ベクターに挿入される(Sambrook et al.、1989、Molecular Cloning: a laboratory manual、Cold Spring Harbor Laboratory Press、NYを参照されたい)。かかるベクターは本発明のもう一つの目的である。
【0050】
所望のタンパク質が発現できるためには(この場合では、該抗原フラグメントおよびキメラ抗原)、発現ベクターは、遺伝子発現およびタンパク質産生を可能となるような方法にて、所望のタンパク質をコードするDNAに結合された転写および翻訳調節情報を含有する特異的ヌクレオチド配列もまた含むべきである。まず該遺伝子が転写されるためには、RNAポリメラーゼにより認識可能なプロモーターにより先行されねばならず、これに該ポリメラーゼが結合し、こうして転写プロセスが開始する。使用されている様々なそのようなプロモーターが存在し、これらは様々な効力(強力なおよび弱いプロモーター)にて機能する。
【0051】
真核生物宿主に対して、該宿主の性質によって異なる転写および翻訳調節配列を用い得る。それらは、次のようなウイルス起源、例えばアデノウイルス、ウシパピローマウイルス、サルウイルス等から得ることができ、該調節シグナルは、高レベルの発現をもたらす特定遺伝子と関連がある。例示としては、ヘルペスウイルスのTKプロモーター、SV40初期プロモーター、酵母gal4遺伝子プロモーター等がある。該遺伝子の発現を調節できるように、抑制および活性化が可能な転写開始調節シグナルを選択することが可能である。これら全ての宿主は本発明のさらなる目的である。
【0052】
本発明の組換え抗原をコードする核酸分子は、組合せた核酸分子が融合タンパク質をコードできるように異種配列に結合され得る。そのように組合せられた核酸分子は、本発明の実施形態の範囲に含まれる。例えば、それらは、アフィニティークロマトグラフィーの1ステップのみにより、組換え抗原を精製できるタンパク質をコードしているDNAと連結されてもよい。この連結/融合タンパク質は、例えばGSTタンパク質のカルボキシ末端で融合生成物を生成させるグルタチオンスルホトランスフェラーゼ(GST)であってもよい。形質転換されたE. coli細胞の細胞質中で発現した対応する組換えタンパク質は、グルタチンオン−セファロース樹脂を用いるアフィニティークロマトグラフィーにより精製され得る。あるいは、結合/融合タンパク質は、組換えタンパク質のカルボキシ末端またはアミノ末端にて融合生成物を生成させるポリヒスチジンタグ(また、His-タグとして知られる)であってもよい。形質転換されたE. coli細胞の細胞質中で発現した対応する組換え産物は、ニッケル・キレートアフィニティークロマトグラフィー(例えば、Qiagen(USA)からのNi-NTA樹脂)を用いるアフィニティークロマトグラフィーにより精製され得る。
【0053】
本発明の抗原フラグメントをコードしているヌクレオチド配列を含むDNA分子は、宿主細胞内で所望の遺伝子配列を複製することができる操作可能に結合した転写および翻訳調節シグナルを有するベクター中に挿入される。導入されたDNAにより安定に形質転換された該細胞は、該発現ベクターを含有する宿主細胞を選択できる1以上のマーカーを導入することにより選択され得る。該マーカーはまた、栄養要求宿主に対する光合成栄養、殺生物耐性、例えば抗生物質、または重金属、例えば銅等を提供する。選択可能なマーカー遺伝子は、発現されるべきDNA遺伝子配列に直接連結されるか、またはコトランスフェクションにより同じ細胞中に導入されることも可能である。さらなるエレメントもまた、本発明のタンパク質の至適合成に必要とされてもよい。
【0054】
特定プラスミドまたはウイルスベクターを選択する際に重要な要因は、次のものに関する:ベクターを含有するレピシエント細胞が容易に、ベクターを含有しないそれらレピシエント細胞から認識および選択され得ること;特定宿主において望まれるベクターのコピー数;および異なる種間の宿主細胞間の"シャトル"ベクターとなり得ることが望ましいかどうか。
【0055】
一旦構築体(複数を含む)を含有するベクター(複数を含む)またはDNA配列が発現のために製造されれば、該DNA構築体を、いずれかの多様な好適な手段;形質転換、トランスフェクション、コンジュゲーション、プロトプラスト融合、電気穿孔法、カルシウムリン酸塩-沈殿、直接マイクロインジェクション等により、適切な宿主細胞中に組み込まれ得る。
【0056】
宿主細胞は、原核生物または真核生物のいずれかであり得る。真核生物宿主の例は、哺乳類細胞、例えばヒト、サル、マウスおよびチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞である。これらの宿主細胞中の発現は、正しいフォールディングまたは正しい部位でのグリコシル化等のタンパク質分子に対する翻訳後修飾を提供する。また、酵母細胞は、グリコシル化などの翻訳後のペプチド修飾を実施できる。強力なプロモーター配列および酵母内で所望のタンパク質の産生に利用され得る高コピー数のプラスミドを利用する多くの組換えDNA方法が存在する。
【0057】
酵母は、クローニングした哺乳類遺伝子産物上のリーダー配列を認識し、リーダー配列を担持するペプチド(即ち、プレペプチド)を分泌する。原核生物宿主の例は、細菌、例えばEscherichia coliである。
【0058】
ベクター(複数含む)の導入後、宿主細胞はベクター含有細胞の増殖のために選択する選択培地で生育される。
【0059】
クローニングされた遺伝子配列(複数含む)の発現により、所望のタンパク質の産生がもたらされる。
【0060】
組換え抗原の精製は、この目的のために知られる方法、即ち抽出、沈殿、クロマトグラフィー、電気泳動等のあらゆる従来方法のいずれか一つにより実行される。本発明の抗原を精製するために優先して使用可能な別の精製方法は、標的タンパク質を結合し、かつカラム内に含まれるゲルマトリックス上で行われ、固定されるモノクローナル抗体を用いるアフィニティークロマトグラフィーである。組換えタンパク質を含有する夾雑調製物をカラムに通過させた。該抗原は、特異的抗体によりカラムに結合されるが、夾雑物は通過する。洗浄後、該抗原をpHまたはイオン強度によりゲルから溶出した。
【0061】
本発明の別の態様は、上記したような組換え抗原の生成のための方法であり、本発明のヌクレオチド配列を含有するベクターにより形質転換した該宿主細胞を培養すること、および所望の生成物を単離することを含む。
【0062】
本発明の別の目的は、上記融合タンパク質をコードしているDNA配列を含むDNA分子、ならびにヌクレオチド配列の実質的同一物である。
【0063】
「ヌクレオチド配列の実質的同一物」には、所定のアミノ酸配列もコードする遺伝子コードの縮重による、あらゆる他の核酸配列を包含する。
【0064】
本発明の別の目的は、得られた該抗原が、同じ生物学的活性、即ち寄生生物に対する抗体に結合する能力を維持する限り、本発明の抗原フラグメントをコードしているヌクレオチド配列の相補物に高ストリンジェントまたは中程度のストリンジェント条件下でハイブリダイズするヌクレオチド配列である。
【0065】
明細書で使用されるとおり、本明細書で使用したとおり用語「ハイブリダイゼーション」は、水素結合による各々2つの核酸分子との会合をいう。通常、ある分子は固体支持体に結合されており、もう一つは溶液中に遊離状態である。
【0066】
そして、この2つの分子は、水素結合を支持する条件下で互いに接触するように位置づけられる。この結合に影響する因子には次のものが包含される:溶媒のタイプおよび用量;反応温度;ハイブリダイゼーション時間;攪拌;固体支持体への液体相分子の非特異的な付着を遮断する薬剤(Denhardt試薬またはBLOTTO);分子濃度;分子の会合速度を増加させる化合物の使用 (デキストランスルフェートまたはポリエチレングリコール);および洗浄条件に続くハイブリダイゼーションのストリンジェンシー。
【0067】
ストリンンジェンシー条件は、ハイブリダイゼーション実験において使用した温度、一価カチオンのモル濃度およびハイブリダイゼーション溶液内のホルムアミドのパーセンテージの関数である。任意の所定の条件対に関するストリンンジェンシーの程度を決定するために、DNA-DNAハイブリドの溶解温度Tmとして表される100%同一性のハイブリドの安定性を決定するためにMeinkothら(1984)の方程式をまず使用する:Tm = 81.5℃ + 16.6 (LogM) + 0.41 (%GC) - 0.61 (% ホルム) - 500/Lであり、ここでMは一価カチオンのモル濃度であり、%GCは、DNA 中のGおよびCヌクレオチドの%であり、%ホルム(form)はハイブリダイゼーション溶液中のホルムアミドの%であり、そしてLは塩基対内のハイブリッドの長さである。1℃毎に、Tmは100% 同一のハイブリドについて計算した値から低下し、許容されるミスマッチの量は約1%増加する。即ち、特定の塩およびホルムアミド濃度で任意の所定のハイブリダイゼーション実験に使用したTmが、Meinkothの方程式により100%ハイブリドとして計算したTmよりも10℃低い場合、約10%までミスマッチが存在してもハイブリダイゼーションはおこる。
【0068】
本明細書で使用したとおり、高ストリンジェント条件は約15%までの配列相違に寛容である条件であるが、中程度のストリンジェント条件は約20%までの配列相違に寛容である条件である。制限しないが、高ストリンジェント(ハイブリッドの計算したTm以下の12-15℃)および中程度(ハイブリッドの計算したTm以下の15-20℃)条件の例は、ハイブリッドの計算したTm以下の適切な温度で、2 X SSC (標準的クエン酸緩衝液)および0.5% SDSの洗浄溶液を使用する。この条件の基本的なストリンンジェンシーは、主として洗浄条件に依存し、特に使用したハイブリダイゼーション条件が、安定なハイブリドと共に安定でないハイブリドを形成させ得る条件である場合である。従って、より高いストリンンジェンシーでの洗浄条件により、安定でないハイブリドが排除される。上記した高ストリンジェントと中程度のストリンジェント洗浄条件にて使用され得る一般的なハイブリダイゼーション条件は、Tm以下のおよそ20℃〜25℃の温度で、6 X SSC(または6 X SSPE)溶液、5 X Denhardt試薬、0.5% SDS、100μg/ml変性断片化されたサケ精子DNAの溶液におけるハイブリダイゼーションである。混合プローブを使用する場合には、SSCの代わりにテトラメチル塩化アンモニウム(TMAC)を使用するのが好ましい(Ausubel、1987-1998)。
【0069】
用語「核酸分子」はまた、DNAおよびRNAのアナログ、例えば修飾された骨格を含有するものも包含する。
【0070】
本発明の別の態様は、医薬品としての上記したキメラ抗原の使用である。特に本発明の一つの主な目的は、HCMV感染の予防または処置のための医薬品製造のための有効成分としてのキメラ抗原の使用である。該医薬組成物は、好ましくは治療上有効量の本発明のキメラ抗原または対応するヌクレオチド配列を含むべきである。このため、本発明のキメラ抗原は、HCMV感染の予防または処置のためのワクチンとして作用し得る。治療用途のためには、医薬品またはワクチンの製造が、別の文献について一般的知識の構想内でおこる場合、本発明の記載において引用した特許文献もまた参照されたい。
【0071】
本発明の別の態様に従って、ポリペプチドワクチンが提供される。2つの主なタイプのポリペプチドワクチンは次のものである:アジュバント物質と混合されたポリペプチドおよび抗原提示細胞(APC)と共に導入されるポリペプチド(Mayordomo et al. 1995、Nature Med. 1:1297)。
【0072】
最も一般的な細胞は、後者のタイプのワクチンとして骨髄および末梢血由来の樹状細胞を使用し、これらの細胞がCTLの活性化を助ける同時刺激分子を発現する。ポリペプチドを提示することは、APCと該ポリペプチドをコードしているポリヌクレオチド(例えば、DNA、RNA)を担持すること、またはAPCと該ポリペプチド自身を担持することにより為し得る。
【0073】
第一のタイプのポリペプチドワクチンに従って、ポリペプチドに対する免疫応答を改善するために免疫原性を刺激するアジュバント物質を、ポリペプチドと混合した。免疫学的アジュバントは、一般的に2つの基本タイプに分けられている:アルミニウム塩および油エマルジョン。リン酸アルミニウムおよび水酸化アルミニウム[アルミニウム(alum)]アジュバントは、対応する水溶性ワクチンにより得たアルミニウムを基にした上記ワクチンにおいて、高レベルの抗原に対する抗体を誘導する。多くのアルミニウムを基にしたワクチンは、その調製方法も含めて、例えば米国特許番号5,747,653、6,013,264、6,306,404および6,372,223に開示されるように開発された。しかしながら、アルミニウム化合物は、ワクチンの免疫原性を常に増強するというわけではない。
【0074】
油を基にしたアジュバントの主成分は次のものである:油、乳化剤および免疫刺激剤。乳化された油を基にしたアジュバントの最も初期のタイプは、およそ50:50の油中水型エマルジョンを構成するフロイント不完全アジュバント(IFA)、および結核死菌を含めた類似の調製物であるフロイント完全アジュバント(CFA)である。CFAの強力な抗体刺激効果は、その他アジュバントを上回らない。
【0075】
しかしながら、重度の毒性反応のため、CFAはヒトまたは動物性ワクチンにおいてではなく実験目的のためにのみ使用され得る。ヒトにおけるIFAの使用は、臨床的条件に制限されており、これらのなかで水性ワクチンは比較的無力、アルミニウム化合物は十分なアジュバント活性を提供しない。抗原の免疫原性を増強することによりワクチンアジュバントとして改善されたエマルジョンの例示には、米国特許番号5,961,970に開示されたようなサブミクロンエマルジョン、および例えば米国特許番号5,716,637に開示されたような固体脂肪ナノエマルジョンが挙げられる。
【0076】
本発明のポリペプチドの取込みは、多くの方法により促進され得る。例えば、腸管毒性Escherichia coliの治癒不安定性(heal-labile)エンテロトキシンに関するコレラ毒素Bサブユニットまたは構造的に関連のあるサブユニットBの非毒性誘導体は、米国特許番号5,554,378に開示されたような該組成物に添加されてもよい。
【0077】
本発明の組成物ポリペプチドは、個々を免疫化するために個体に直接投与され得る。あるいは、本発明の実施態様に従って、該ポリペプチドを使用して、既知のモノクローナル抗体の特性および活性を有する新規抗体を生成することができる。これらポリペプチドによるT-細胞のエクスビボ活性化はまた、免疫刺激に関する所望の活性を誘起させ得る。従って、該組成物は、エクスビボ系において抗体を誘導するために使用でき、該誘導された抗体は、感染を処置するために個々に投与され得る。該組成物はまた、エクスビボ系にてT-細胞を刺激するために使用され得、当業者には既知のような養子免疫治療の方法において投与されるべきである。
【0078】
本明細書で使用したとおり用語「治療上有効量」は、標的とする疾患または症状を処置、改善または予防するのに必要な治療剤の量、または検出可能な治療効果または予防効果を示すために必要な治療剤の量を示す。あらゆる化合物について、治療上有効用量を、最初に細胞培養アッセイにおいて、例えば新生物細胞の細胞培養アッセイにおいて、または動物モデル、通常マウス、ウサギ、イヌまたはブタにおいて見積もることが可能である。
【0079】
動物モデルを、好適な濃度範囲および投与経路を決定するために使用できる。その結果、かかる情報を使用して、ヒトにおける有用な用量および投与経路を決定することができる。
【0080】
ヒト被験者のための正確な有効量は、疾患状態の重症度、被験者の一般的健康、年齢、体重および被験者の性別、投与の時期および頻度、薬剤の併用物、反応感受性および治療に対する寛容/応答に依存する。この量は、通常の実験および医師の判断により決定されてよい。組成物は、被験者に個々に投与され得るか、または他の剤、薬剤またはホルモンと併用投与されてもよい。
【0081】
医薬組成物はまた、治療剤の投与のための医薬上許容し得る担体を含有し得る。かかる担体は、該担体が該組成物を受容する個体に有害な抗体産生をそれ自身が誘導せず、また過度な毒性なく投与され得るという条件で、抗体および他のポリペプチド、遺伝子および他の治療剤、例えばリポソームを包含する。好適な担体は、非常にゆっくりと代謝される巨大分子、例えばタンパク質、ポリサッカリド、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、重合アミノ酸、アミノ酸コポリマーおよび不活性ウイルス粒子であってよい。
【0082】
治療用組成物中の医薬上許容し得る担体は、さらに液体、例えば水、生理食塩水、グリセロールおよびエタノールを含有することもできる。さらに、助剤物質、例えば湿潤剤または乳化剤、pH緩衝物質等は、かかる組成物中に存在していてもよい。かかる担体により、該医薬組成物を、患者による経口摂取のために、錠剤、ピル、糖衣剤、カプセル、液剤、ゲル、シロップ、スラリー、懸濁液等として製剤することができる。
【0083】
製剤してから、本発明の該組成物は、患者に直接投与され得る。処置されるべき患者は動物であり得る;特に、ヒト患者を処置できる。
【0084】
この発明において活用される該医薬組成物は、次のものを包含するがこれらに限定しない他のいずれかの経路により投与されてもよい;経口、静脈内、筋肉内、動脈内、随内、髄腔内、脳室内、経皮的や外用適用(transcutaneous applications)(例えば、W098/20734を参照されたい)、皮下的、腹腔内、経鼻、腸内、局所内、舌下、膣内または直腸手段。遺伝子銃または皮下噴射器は、本発明の医薬組成物を投与するために使用され得る。通常、治療用組成物は、注入物質として、液体溶液または懸濁溶液いずれかのように、調製されてもよい;注射の前の液体ビヒクルにおいて、溶液または懸濁液に好適な固体形態。投薬処置は、単回用量のスケジュールまたは複数回スケジュールであってよい。
【0085】
HCMV感染に罹患している哺乳動物を処置する方法は、本発明の態様の代表的なものとして上記したような治療上有効量のワクチンを投与することを含む。
【0086】
本発明の別の目的は、HCMV感染の診断のための、特に感染時の診断のための有効剤として上記したような組換え抗原の使用である。
【0087】
また、少なくとも1つの抗原フラグメントまたは抗原フラグメントの組合せ物またはキメラ抗原を含有するHCMV感染の診断のためのキットもまた本発明の一部である。かかるキットは、急性および/または潜在性のHCMV感染の診断のために有用であり得る。
【0088】
本発明の組換え抗原は、抗体を検出するために既知抗原を用いる任意のアッセイ形式で実質的に用いられ得る。これら全アッセイに共通する態様は、抗原が成分中に存在する任意のかかる抗体に結合できる条件下にて、該抗原を、抗体を含有していると考えられる身体成分に接触させることである。かかる条件とは、通常、過剰抗原を用いる生理的温度、pHおよびイオン強度である。該標本と抗原のインキュベーションは、該抗原を含む免疫複合体の検出により為される。
【0089】
イムノアッセイの設計は、多くのバリエーションの対象となり、多くのフォーマットは当分野では既知である。プロトコールは、例えば固体支持体または免疫沈殿を使用してもよい。大部分のアッセイは、標識した抗体またはポリペプチドの使用を包含する;該標識は、例えば酵素分子、蛍光分子、化学発光分子、放射性分子または染色分子である。免疫複合体からのシグナルを増幅させるアッセイもまた知られている;このアッセイの例は、ビオチンおよびアビジンを利用するアッセイ、酵素標識および酵素媒介イムノアッセイ、例えばELISAアッセイがある。
【0090】
該イムノアッセイは、標準的または競合型の均一系または非均一系形式にて存在し得るがこれらに限定するものではない。非均一系形式においては、該ポリペプチドは、固体マトリックスまたは支持体に通常結合され、インキュベーション後のポリペプチドからサンプルの分離を促進することができる。
【0091】
使用され得る固体支持体の例示は、ニトロセルロース(例えば、膜またはマイクロタイターウェル形態において)、塩化ポリビニル(例えば、シートまたはマイクロタイターウェル)、ポリスチレンラテックス(例えば、ビーズまたはマイクロタイタープレート、フッ化ポリビニリデン(ImmulonTMとして知られている)、ジアゾ化紙、ナイロン膜、活性化ビーズおよびタンパク質Aビーズである。例えば、Dynatech ImmulonTM1 または ImmulonTM2 マイクロタイタープレートまたは0.25インチポリスチレンビーズ(Precision Plastic Ball)は、外因性フォーマットで使用され得る。抗原性ポリペプチドを含有する固体支持体は、通常、試験サンプルからそれを分離した後および結合抗体の検出前に洗浄される。標準的および競合的形式の両方が、当分野ではよく知られている。
【0092】
均一系形式においては、試験サンプルは、溶液中で抗原の組合せ物と共にインキュベートされる。例えば、形成されたいずれかの抗原抗体複合体を沈殿させる条件下であってもよい。これらのアッセイのための標準的および競合型の形式の両方は当分野で知られている。
【0093】
標準的形式では、抗体-抗原複合体を形成する抗体の量は、直接モニターされる。これは、抗-HCMV抗体上のエピトープを認識する標識した抗-異種抗体(例えば、抗-ヒト)が複合体形態により結合するかどうかを決定することにより達成され得る。競合型の形式では、サンプル中の抗体の量は、複合体中の既知の量の標識抗体(または、他の競合リガンド)の結合に対して、競合効果をモニターすることにより推定される。
【0094】
抗-HCMV抗体(または、競合アッセイの場合には、競合抗体の量)を含んでいる形成した複合体は、形式により多くの既知技術のいずれかにより検出される。例えば、複合体中の標識していない抗体は、標識(例えば、酵素標識)と共に複合体を形成した抗異種IgGのコンジュゲートを用いて検出され得る。
【0095】
免疫沈降または凝集アッセイ形式では、組換え抗原および抗体の間の反応により、溶液または懸濁液から沈殿する網状物を形成し、可視層または沈殿フィルムを形成する。抗-HCMV抗体が試験標本中に存在しないならば、可視可能な沈殿物は形成されない。
【0096】
本発明の組換え抗原は、通常、これらのイムノアッセイに使用するためのキットの形態で梱包される。該キットは、通常、抗原の組合せ物(固体マトリックスと既に結合しているか、またはそれらをマトリックスに結合するための試薬と分ける)、コントロール抗体調製物(陽性および/または陰性)、アッセイ形式が標識抗体を要する場合には標識抗体およびこの標識が直接シグナルを生成しないならばシグナル生成試薬(例えば、酵素基質) を、別々の容器に含有する。アッセイを実施するための指示書(例えば、文書、テープ、VCR、CD-ROM等)は、通常キットに包含される。
【0097】
本発明の目的である診断上のキットは、このように、当技術分野での専門家にはよく知られている。本発明は、ここで、実施例および図面により、より詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1】図1.細菌発現ベクターpGEX-SN-Flagのプラスミドマップ。
【図2】図2.選択されたファージクローンの略図。対応するネイティブタンパク質の配列と、ファージディスプレーライブラリーから単離された組換えHCMV 抗原フラグメントのアラインメント。図は、各クローンおよびHCMVタンパク質配列上でのその位置の対応するアミノ酸を示す。
【図3】図3.組換えキメラ抗原の略図。HCMV遺伝子産物タンパク質フラグメントをコードするクローンCM-4.4、CM-2.7、CM-1.3、CM-2.10、CM-3.3およびCM-8.3のDNA配列を、GST-EC7-Flag、GST-EC8-FlagおよびGST-EC14 融合タンパク質の構築体に使用した。
【図4】図4. E. coli 細胞における組換え抗原の発現。 A-精製した組換えGST(レーン2)、GST-CM1.3 (レーン3)、GST-CM2.7 (レーン4)、GST-CM4.4 (レーン5)、GST-CM2.10 (レーン6)、GST-CM3.3 (レーン7)、GST-CM7.3 (レーン8)およびGST-CM8.3 (レーン9)の融合タンパク質のSDS-PAGE分析。該組換えタンパク質を、12% アクリルアミドゲルでの電気泳動(0,002 mg/レーン)に供した。KDa、分子量マーカー(レーン1)。 B-精製した組換えGST(レーン2)およびキメラ抗原GST-EC7-Flag (レーン3)およびGST-EC8-Flag (レーン4)のSDS-PAGE分析(12% アクリルアミドゲル)。KDa、分子量マーカー(レーン1)。 C-抗-Flag ホースラディッシュペルオキシダーゼ-コンジュゲートモノクローナル抗体を用いる、精製した組換えGST(レーン1)、およびキメラ抗原GST-EC7-Flag (レーン2)およびGST-EC8-Flag(レーン3)のウェスタンブロット分析。
【0099】
実施例
λディスプレイHCMV DNA ライブラリーの構築体
HCMV (AD169 株)からのゲノム DNAを市販購入した(Advanced Biotechnology、MD、USA)。全DNA(10 μg)を、エンドヌクレアーゼ DNaseI(0.5 ng)(Sigma-Aldrich、USA)を使用してランダムに断片化した。DNAおよびDNaseIの混合物を、20分間15℃でインキュベートし、製造者指示書に従ってDNAフラグメントを“QIAquick PCR 精製 キット” (Qiagen、CA、USA)を用いて精製した。該DNAフラグメントの末端を、該DNAと酵素T4 DNA ポリメラーゼ (New England Biolabs、MA、USA)とを60分15℃でインキュベーションすることにより「平滑化(flattened)」した。次いで、該フラグメントを、フェノール/クロロホルムの抽出とその後のエタノール沈殿により精製した。得られるDNAを、制限部位SpeIおよびNotIをフラグメントの末端に加えることを目的として酵素T4 DNAリガーゼを用いて、20倍モル過剰の「合成アダプター」により連結させた。Beghettoら(Beghetto et al.、Int. J. Parasitol. 2003、33:163-173)により以前に記載された方法に従って、6つのアダプターを使用した。過剰な連結しなかったアダプターを、2%アガロースゲルで電気泳動によりライゲーション混合物から除去し、200bp〜1000塩基対(bp)の分子量範囲にある該DNAフラグメントをゲルから切り出し、製造者指示書に従い「Qiaquick ゲル抽出キット」(Qiagen、CA、USA)により精製した。該ベクターλKM4をSpeI/NotIで消化し、次いでDNAフラグメントと連結させた。ライブラリー構築のために、ベクター(0.4 μ)および挿入物(およそ7 ng)を含めて、6つのライゲーション混合物とする。酵素T4 DNA リガーゼとの終夜4℃でのインキュベーションの後、このライゲーション混合物を、イン・ビトロで「Gigapack gold」(Stratagene、USA)によりパッケージングし、BB4細胞の感染のために播種した(E. coli 株 BB4の細菌細胞; Sambrook et al.、1989、Molecular Cloning: a laboratory manual、Cold Spring Harbor Laboratory Press、NY)。37℃で一晩インキュベーションの後、該ファージを、SM緩衝液を用いてプレートから溶出し(Sambrook et al.、1989、Molecular Cloning:a laboratory manual、Cold Spring Harbor Laboratory Press、NY)、精製し、濃縮し、7%ジメチルスルホキシドを含有するSM緩衝液中に-80℃で貯蔵した。挿入物を有する全ての独立クローン数として計算された該ライブラリーの複雑度は、2x106クローンであった。
【0100】
ヒト血清によるHCMV ディスプレーライブラリーのアフィニティー選択
タンパク質G(Dynabeads Protein-G、Dynal、Norway)により被覆された磁性ビーズを、ヒト血清(10 μl)と共に30分間室温でインキュベートした。次いで、該ビーズを、ブロッキング溶液(PBS中5% スキムミルク粉末、0.05% Tween 20および10mM MgSO4からなる)を用いて1時間37℃でインキュベートした。ライブラリーのおよそ1010ファージ粒子を、該ビーズに加え、弱く攪拌しながらさらに4時間室温でインキュベーションするためにブロッキング溶液(1 ml)に希釈した。該ビーズを、洗浄溶液(1 ml)(PBS、1% TritonX100、10 mM MgSO4)にて10回洗浄した。結合したバクテリオファージを、該ビーズに直接加えた(選択あたり1.2 ml)BB4細胞の感染、その後30分室温でインキュベーションのために増幅させた。NZY-Top Agar (Sambrook et al.、1989、Molecular Cloning: a laboratory manual、Cold Spring Harbor Laboratory Press、NY )を、ビーズ混合物に加え、細胞を直ぐにNZY プレート上に注いだ。該プレートを、12-16時間37℃でインキュベートした。翌日、該ファージを、プレートあたりSM緩衝液(15 ml)を添加して、4時間室温での攪拌により該プレートから回収した。該ファージを、PEG/NaCl(20% ポリエチレングリコール、NaCl 1M)の沈殿により精製し、最終的にSM(5 ml)に懸濁し、+4℃で貯蔵した。
【0101】
ファージ-ELISA
マルチウェルプレート(Maxisorb、Nunc、Denmark)を、抗-ラムダポリクローナル抗体を用いて[NaHCO3(50 mM、pH 9.6)中、0.7 μg/ml]一晩4℃で被覆した。被覆溶液を除いた後、該プレートを、ブロッキング溶液(PBS中5% スキムミルク粉末、0.05% Tween-20)を用いて1時間インキュベートし、その後洗浄緩衝液(PBS、0.05% Tween-20)を用いて2回洗浄した。ファージ溶菌物を含有するブロッキング溶液の混合物(100μl)を、各ウェルに添加し、60分37℃でインキュベートした。ヒト血清(1μl)を、109野生型ファージ粒子、ウサギ血清(1μl)、BB4細胞の細菌抽出物(1μl)、ブロッキング溶液(100μl)中の子ウシ血清(1μl)と共に30分室温でインキュベートした。該プレートを、ファージ溶菌物とのインキュベーション後に5回洗浄し、次いで血清溶液と共に60分間37℃でインキュベートした。該プレートを5回洗浄し、次いで抗-ヒトIgGホースラディッシュペルオキシダーゼ-コンジュゲート抗体(Sigma-Aldrich、USA)を含有するブロッキング溶液と共に30分間インキュベートした。該プレートを、5回洗浄し、TMB液体基質(Sigma-Aldrich、USA)(100μl)を用いて該酵素活性を測定した。15分間発色後、該反応を、2M H2SO4(25μl)の添加により停止させた。最終的に、該プレートを、自動化ELISAリーダー(Multiskan、Labsystem、Finland)を用いて分析し、この結果をOD=OD450nm-OD620nmとして表した。該ELISAデータを、2回の独立アッセイの平均値として評価した。
【0102】
イムノスクリーニング
ファージプラークを、室温で60分間インキュベーションすることにより、該細菌培地からニトロセルロースフィルター(Schleicher & Schuell、Germany)へうつした。該フィルターを、ブロッキング溶液中(PBS中5%スキムミルク粉末、0.05% Tween-20)にて60分間室温でブロッキングした。ヒト血清(40μl)を、BB4細胞の細菌抽出物(40μl)、ブロッキング溶液(4 ml)中の109 野生型λファージ粒子と共にプレインキュベートした。該ブロッキング溶液を除いた後、該フィルターを、攪拌下に3時間室温で血清と共にインキュベートした。次いで、該フィルターを洗浄緩衝液(PBS、0.05% Tween-20)により5回洗浄し、次いでブロッキング溶液中で抗-ヒトIgG アルカリホスファターゼ(alkaline phosphatise)-コンジュゲート抗体(Sigma-Aldrich、USA)と共に60分間室温でインキュベートした。
【0103】
フィルターを5回洗浄した後、発色溶液(基質BCIPおよびNBT、Sigma-Aldrich、USA)(5 ml)を加え、該フィルターを水で洗浄することにより発色を妨害した。陽性と判明したファージクローンを、各ファージプラークから単離し、次いでその後の特徴分析のために増幅させた(Sambrook et al.、1989、Molecular Cloning: a laboratory manual、Cold Spring Harbor Laboratory Press、NY)。
【0104】
陽性クローンの特徴分析
選択したファージのDNA挿入体を続いて配列決定し、現在利用可能な様々なデータベースの配列と比較した(Non-Redundant Genbank CDS、Non-Redundant Database of Genbank Est Division、Non-Redundant Genbank+EMBL+DDBJ+PDB Sequences)。
【0105】
得られた配列を3つに分類できる:
-既知のHCMV抗原のフラグメントをコードする配列;
-ヒト抗体応答において関与することは知られていないが既知のHCMVタンパク質のフラグメントをコードする配列;
-未知タンパク質(例えば、ORF)のフラグメントをコードする配列;
下記表1は、例として、選択されたクローンのいくつかの配列を示す:
表1
【表1−1】


【表1−2】

【0106】
配列CM-2.10は、UL55(Pereira et al.、Virol.、1984 139:73-86)として分類され、ヒト抗体応答により認識される「抗原フラグメント」として同定されていない外膜糖タンパク質 gBのフラグメントをコードしているHCMVゲノムのDNAフラグメントを構成する。該クローンは、該アミノ酸配列TKDTSLQAPPSYEESVYNSGRKGPGPPSSDASTAAPPYTNEQAYQMLLALARLDAEQRAQQNGTDSLDGQTGTH (配列番号:2)を有しており、エピトープを含有するフラグメントとしてのその使用は本発明の範囲対象にふくまれる。
【0107】
配列CM-3.3は、UL71(Davison et al.、J. Gen. Virol. 2003、84:17-28)として分類され、ヒト体液性応答により認識される「抗原」として同定されたことがないポリペプチドをコードしているHCMVゲノムのDNAフラグメントを構成する。該クローンは、該アミノ酸配列AHINTVSCPTVMRFDQRLLEEGDEEDEVTVMSPSPEPVQQQPPVEPVQQQPQGRGSHRRRYKESAPQETLPTNHEREILDLMRHSPDVPREAVMSPTMVTIPPPQIPFVGSAREL(配列番号:4)を有しており、エピトープを含有するフラグメントとしてのその使用は本発明の範囲対象にふくまれる。
【0108】
配列CM-8.3は、UL25として分類され、ヒト抗体応答により認識される「抗原フラグメント」として同定されたことがないテグメント抗原(Lazzarotto et al.、J. Gen. Virol. 2001、82:335-338)のフラグメントをコードしているHCMVゲノムのDNAフラグメントを構成する。該クローンは、該アミノ酸配列SRRSGEPSTVIYIPSSNEDTPADEEAEDSVFTSTRARSATEDLDRMEAGLSPYSVSSDAPSSFELVRETGGTGAAKKPSEKKRSF(配列番号:6)を有しており、エピトープを含有するフラグメントとしてのその使用は本発明の範囲対象にふくまれる。
【0109】
配列CM-7.3は、UL56(Krosky et al.、J. Virol. 1998、72:4721-4728)として分類され、ヒト体液性応答により認識された「抗原フラグメント」として同定されたことがないポリペプチドをコードしているHCMVゲノムのDNAフラグメントを構成する。該クローンはアミノ酸配列LILEEIRRPLPDGTGGDGPEGEAIHLRGREAH(配列番号:8)を有しており、エピトープを含有するフラグメントとしてのその使用は本発明の範囲対象にふくまれる。
【0110】
配列CM-1.3、CM-2.7およびCM-4.4は、UL32として分類され、ヒト抗体応答により認識された「抗原フラグメント」として同定されたことがない大きな構造テグメントリン酸化タンパク質 pp150のフラグメントをコードしている(Jahn et al.、J. Virol. 1987、61:1358-1367) HCMVゲノムのDNAフラグメントを構成する。該クローンは、各アミノ酸配列TSQKPVLGKRVATPHASARAQTVTSTPVQGRLEKQVSGTPSTVPATLLQPQPASSKTTSSRNVTSGAGTSSASSARQPSASASVLSPTEDDVVSPATSPLSMLSSASPSPAKSAPPSPVKGRGSRVGVPSLKPTLGGKAVVGRPPSVPVSGSAPGRLSGS(配列番号:10)、LVDITDTETSAKPPVTTAYKFEQPTLT FGAGVNVPAGAGAAILTPTPVNPSTAPAPAPTPTFAGTQTPVNGNSPWAPTAPLPGDMNPANWPRERAWALKNPHLAYNPFRMPTTSTASQNTVSTTPRRPSTPRAAVTQTASRDAADEVWALRDL(配列番号:12)、およびGSQKPTSGPLNIPQQ QQRHAAFSLVSPQVTKASPGRVRRDSAWDVRPLTETRGDLFSGDEDSDSSDGYPPNRQDPRFTDTLVDITDTEI(配列番号:14)を有しており、エピトープを含有するフラグメントとしてのそれらの使用は本発明の範囲対象にふくまれる。
【0111】
キメラ抗原の構築体
EC7タンパク質産物は、クローンCM-1.3、CM-2.7およびCM-4.4のDNA配列を含有するキメラ分子である。
【0112】
配列番号:14を、オリゴヌクレオチドK749(5’-GGACTAGTGGCAGTCAGAAACCGACCAG-3’)およびK751(5’-GGACTAGTGGCAGTCAGAAACCGACCAG-3’)を用いるクローンCM−4.4のDNA増幅のためのテンプレートとして使用した。該オリゴヌクレオチドK751は、CM-4.4およびCM-2.7を連結させるリンカーSGGGSをコードしている配列を含有する。PCR条件は、25サイクルについて94℃で30”、52℃で30”および72℃で30”であった。
【0113】
配列番号:12を、オリゴヌクレオチドK750(5’-TCTGGTGGCGGTAGCCTGGTGGACATCACGG ATAC-3’)およびK753(5’-CGTGCTACCGCCACCAGAAAGGTCCCTTAAAGCCC AAAC-3’)を用いるクローンCM-2.7のDNAについてのテンプレートとして使用した。該オリゴヌクレオチドK753は、CM-2.7およびCM-1.3を連結させるリンカーSGGGSをコードする配列を含有する。PCR条件は、25サイクルについて94℃で30”、52℃で30”および72℃で30”であった。
【0114】
配列番号:10を、オリゴヌクレオチドK752(5’-TCTGGTGGCGGTAGCACGAGCCAGAAACCGGTGCTG-3’)およびK754(5’-CCGCGGCCGCTGGACACGACATCATCCTCC-3’)を用いるクローンCM-1.3のDNA増幅のためのテンプレートとして使用した。PCR条件は、25サイクルについて94℃で30”、52℃で30”および72℃で30”であった。
【0115】
PCR産物を、“Qiagen 精製キット“(Qiagen、CA、USA)により精製した。配列番号:14および配列番号:12のDNA増幅産物(50 ng)を一緒に混合し、オリゴヌクレオチドK749およびK753を使用することにより、PCR反応におけるテンプレートとして使用した。PCR条件は、30サイクルについて94℃で30”、52℃で30”および72℃で90”であった。得られるDNA増幅物(50 ng)を、“Qiagen 精製キット“(Qiagen、CA、USA)を用いて精製し、次いで配列番号:10のDNA増幅産物(50ng)と混合した。最後に、該DNA混合物を、30サイクルについて94℃で30”、52℃で30”および72℃で120”というPCR条件に従って、K749およびK754を用いることによりDNA増幅のためのテンプレートとして使用した。
【0116】
EC8タンパク質産物は、DNA配列CM-2.10、CM-3.3およびCM-8.3を含有するキメラ分子である。
【0117】
配列番号:4を、オリゴヌクレオチドK761(5’-GGACTAGTGCTCACATTAACACCGTCTC-3’)およびK762(5’-GTGAGCTACCGCCACCAGAAAGTTCACGCGCGGAAC-3’)を用いるクローンCM−3.3のDNA増幅のためのテンプレートとして使用した。
【0118】
オリゴヌクレオチドK762は、配列CM-3.3およびCM-8.3を連結させるリンカーSGGGSをコードしている配列を含む。PCRプロトコールは、25サイクルについて94℃で30”、52℃で30”および72℃で30”であった。
【0119】
配列番号:6を、オリゴヌクレオチドK763(5’-CTTTCTGGTGGCGGTAGCTCACGTCGCTCTGGCG-3’)およびK764(5’−GGTGCTACCGCCACCAGAAAACGATCGTTTCTTTTCGC−3’)を用いるクローンCM-8.3のDNA増幅のためのテンプレートとして使用した。
【0120】
該オリゴヌクレオチドK764は、配列CM-8.3およびCM-2.10を連結させるリンカーSGGGSをコードしている配列を含む。PCRプロトコールは、25サイクルについて94℃で30”、52℃で30”および72℃で30”であった。
【0121】
配列番号:2を、オリゴヌクレオチドK765(5’-TTTTCTGGTGGCGGTAGCACCAAAGACA CGTCGTTAC-3’)およびK766(5’-CCGCGGCCGCTACCGCCACCAGAATGCG-3’)を用いるクローンCM-2.10のDNA増幅のためのテンプレートとして使用した。PCRプロトコールは、25サイクルについて94℃で30”、52℃で30”および72℃で30”であった。
【0122】
PCR産物を、"Qiagen 精製キット"(Qiagen、CA、USA)により精製した。配列番号:6および配列番号:8のDNA増幅産物(50ng)を、一緒に混合して、オリゴヌクレオチドK761およびK764を使用することによるPCR反応においてテンプレートとして使用した。PCRプロトコールは、30サイクルについて94℃で30”、52℃で30”および72℃で90”であった。得られるDNA増幅物(50ng)を精製し、次いで配列番号:2のDNA増幅産物(50ng)と混合した。最後に、該DNA混合物を、30サイクルについて94℃で30”、52℃で30”および72℃で120”というPCR条件に従って、オリゴヌクレオチドK761およびK766を用いることによるDNA増幅のためのテンプレートとして使用した。
【0123】
EC14タンパク質産物は、クローンCM-2.7、CM-2.10およびCM-1.3のDNA配列を含有するキメラ分子である。
【0124】
配列番号:12を、オリゴヌクレオチドK825(5’-GGGGATCCCACTAGTCGTGCTGGCCAGCCG CTG-3’)およびK826(5’-GGTGCTACCGCCACCAGAAAGGTCCCTTAAAGC CCAAAC-3’)を用いるクローンCM-2.7のDNAのためのテンプレートとして使用した。該オリゴヌクレオチドK826は、CM-2.7およびCM-2.10を連結させるリンカーSGGGSをコードする配列を含有する。
【0125】
配列番号:2を、オリゴヌクレオチドK827(5’CCTTTCTGGTGGCGGTAGCACCAAAG ACACGTCGTTACAG-3’)およびK828(5’-GAGACTACCACCCCCGGAATGCGTG CCAGTCTGTCCG-3’)を用いるクローンCM-2.10のDNA増幅のためのテンプレートとして使用した。
【0126】
配列番号:10を、オリゴヌクレオチドK829(5’-CATTCCGGGGGTGGTAGTCTCACGA GCCAGAAACCGG-3’)およびK830(5’-CCAGACTCGAGTCACCCGCGGCCGCTACCGCCACCAGAGCTGCC-3’)を用いるクローンCM-1.3のDNA増幅のためのテンプレートとして使用した。
【0127】
PCR産物を、"Qiagen 精製キット"(Qiagen、CA、USA)により精製した。配列番号:12および配列番号:2のDNA増幅産物(50 ng)を一緒に混合し、オリゴヌクレオチドK825およびK828を使用することにより、PCR反応におけるテンプレートとして使用した。PCR条件は、30サイクルについて94℃で30”、50℃で30”および72℃で90”であった。得られるDNA増幅物(50ng)を、"Qiagen 精製キット"(Qiagen、CA、USA)により精製し、次いで配列番号:10のDNA増幅産物(50ng)と混合した。最後に、該DNA混合物を、30サイクルについて94℃で30”、50℃で30”および72℃で120”というPCR条件に従って、K825およびK830を用いることによりDNA増幅のためのテンプレートとして使用した
【0128】
下記表2は、例として、EC7およびEC8キメラ抗原のDNA配列を示す:
表2
【表2−1】

【表2−2】

【0129】
該キメラタンパク質EC7は、該アミノ酸配列TSGSQKPTSGPLNIPQQQQRHAAFSLVSPQVTKASPGRVRRDSAWDVRPLTETRGDLFSGDEDSDSSDGYPPNRQDPRFTDTLVDITDTEISGGGSLVDITDTETTAYKFEQPTLTFGAGVNVPAGAGAAILTPTPVNPSTAPAPAPTPTFAGTQTPVNGNSPWAPTAPLPGDMNPANWPRERAWALKNPHLAYNPFRMPTTSTASQNTVSTTPRRPSTPRAAVTQTASRDAADEVWALRDLSGGGSTSQKPVLGKRVATPHASARAQTVTSTPVQGRVEKQVSGTPSTVPATLLQPQPASSKTTSSRNVTSGARTSSASARQPSASASVLSPTEDDVVSPSGGGSGR(配列番号:16)を有しており、マルチプルHCMVタンパク質フラグメントを含有する組換え抗原としてのその使用は本発明の範囲対象にふくまれる。
【0130】
該キメラタンパク質EC8は、該アミノ酸配列TSAHINTVSCPTVMRFDQRLLEEGDEEDEVTVMSPSPEPVQQQPPVEPVQQQPQGRGSHRRRYKESAPQETLPTNHEREILDLMRHSPDVPREAVMSPTMVTIPPPQIPFVGSARELSGGGSSRRSGEPSTVIYIPSSNEDTPADEEAEDSVFTSTRARSATEDLDRMEAGLSPYSVSSDAPSSFELVRETGGTGAAKKPSEKKRSFSGGGSTKDTSLQAPPSYEESVYNSGRKGPGPPSSDASTAAPPYTNEQAYQMLLALARLDAEQRAQQNGTDSLDGQTGTHSGGGSGR(配列番号:18)を有しており、マルチプルHCMVタンパク質フラグメントを含有する組換え抗原としてのその使用は本発明の範囲対象にふくまれる。
【0131】
該キメラタンパク質EC14は、該アミノ酸配列PLVDITDTETSAKPPVTTAYKFEQPTLTFGAGVNVPAGAGAAILTPTPVNPSTAPAPAPTPTFAGTQTPVNGNSPWAPTAPLPGDMNPANWPRERAWALKNPHLAYNPFRMPTTSTASQNTVSTTPRRPSTPRAAVTQTASRDAADEVWALRDLSGGGSTKDTSLQAPPSYEESVYNSGRKGPGPPSSDASTAAPPYTNEQAYQMLLALARLDAEQRAQQNGTDSLDGQTGTHSGGGSLTSQKPVLGKRVATPHASARAQTVTSTPVQGRLEKQVSGTPSTVPATLLQPQPASSKTTSSRNVTSGAGTSSASSARQPSASASVLSPTEDDVVSPATSPLSMLSSASPSPAKSAPPSPVKGRGSRVGVPSLKPTLGGKAVVGRPPSVPVSGSAPGRLSGSSGGGSGR(配列番号:36)を有しており、マルチプルHCMVタンパク質フラグメントを含有する組換え抗原としてのその使用は本発明の範囲対象にふくまれる。
【0132】
E.coli細胞の細胞質においてGSTとの融合産物としての組換え抗原の発現に関するDNAベクターの構築体
選択されたHCMVファージクローンをコードしているDNAフラグメントを、タンパク質グルタチオンスルホトランスフェラーゼ(GST)との融合産物としてクローニングし、その特異性および選択性を決定することを目的として細菌細胞の細胞質内で可溶性タンパク質として発現させた。クローンCM-2.10、CM-3.3、CM-8.3、CM-7.3、CM-1.2、CM-1.3、CM-1.5、CM-2.7、CM-2.11およびCM-4.4のDNA配列を制限酵素SpeIおよびNotIで消化した。消化されたDNAを、予めSpeIおよびNotIエンドヌクレアーゼを用いて消化したベクターpGEX-SN(Minenkova et al.、International Journal of Cancer、2003、106:534-44)にクローニングし、GSTタンパク質のカルボキシ末端で融合産物を生成させた。また、キメラ抗原EC7、EC8およびEC14をコードしているDNAを、ベクターpGEX-SNおよびpGEX-SN-Flagにクローニングし、GST-融合産物を生成させた。該プラスミドpGEX-SN-Flagを、SpeI-NotI消化pGEX-SN ベクター中にオリゴヌクレオチドK718(5’-GGCCGCGGAGACTACAAAGACGACGATGACAA ATGAG-3’)およびK719(5’-AATTCTCATTTGTCATCGTCGTCTTTGTAGTC TCCGC-3’)をアニーリングすることにより得た短いdsDNA配列を挿入することにより構築した(図1を参照されたい)。得られるプラスミドを使用して、標準的プロトコール(Sambrook et al.、1989、Molecular Cloning:、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor)に従い、コンピテントE.coli 細胞を形質転換した。
【0133】
組換え抗原の生物学的特徴分析
組換えGST融合タンパク質を、形質転換したE.coli細胞の細胞質で発現させ、製造者指示書に従いグルタチンオン−セファロース樹脂(Amersham Pharmacia Biotech、Sweden)によるアフィニティークロマトグラフィーにより精製した。タンパク質精製度および濃度を、各々SDS-PAGE(ドデシル硫酸ナトリウム-ポリアクリルアミドゲル電気泳動)分析およびブラッドフォードアッセイにより評価した。
【0134】
組換えキメラ抗原GST-EC7-FlagおよびGST-EC8-Flagも、一次抗体として抗-FLAG-M2モノクローナル抗体(1μg/ml; Sigma-Aldrich、USA)、二次抗体としてアルカリフォスファターゼ-コンジュゲートヤギ抗-マウス-IgG抗体(希釈1:10000; Sigma-Aldrich、USA)および基質としてニトロテトラゾリウム(NBT)+5-ブロモ-4-クロロ-3-インドシルリン酸塩(BCIP)を用いる、ウェスタンブロット分析に供した。
【0135】
アフィニティー精製組換え産物を、PBSで透析し、1mg/mlの濃度にPBSにより希釈し、使用するまで−20℃で貯蔵した。精製産物の収量は、細菌培養物の4 mg/リットル〜15 mg/リットルであった。
【0136】
HCMV感染個体由来の血清IgG抗体と、一つの組換え抗原フラグメントとの免疫反応性:IgG Rec-ELISA
GST融合産物のELISA性能を、被覆緩衝液(50mM NaHCO3、pH9.6)中1μg/mlの濃度で一つの抗原フラグメントを用いてMaxisorb-マルチウェルプレート(Nunc)を被覆することにより行った。一晩4℃でプレートをインキュベーションした後、ブロッキング緩衝液(PBS中、5%無脂肪乾燥ミルク、0.05%Tween-20)と共に1時間37℃でインキュベートし、その後1:100にブロッキング溶液で希釈したHCMV-血清陽性および血清陰性の個体からの血清と共に1時間37℃でインキュベートした。該プレートを、PBS中0.05%Tween-20を用いて広範囲に洗浄し、次いでブロッキング溶液で1:7500に希釈した抗-ヒト-IgGアルカリフォスファターゼ-コンジュゲート抗体(Sigma-Aldrich、USA)を各ウェルに添加した。37℃にて30分後に、該プレートを洗浄し、発色溶液(10% ジエタノールアミン、pH 9.8、0.5mM MgCl2、0.05% NaN3)中の色原体基質p-ニトロフェニルリン酸塩(pNPP; Sigma-Aldrich、USA)と共にインキュベートした。その結果を、自動化ELISAリーダー(Multiskan Labsystems、Finland)を用いて、405nmおよび620nmの光学密度(OD)の違いとして記録した。各血清サンプルについて、該アッセイを2回行い、平均値を計算した。
【0137】
下記表3を、36人のHCMV-血清陽性および33人のHCMV-血清陰性の個体からの血清サンプルを用いる、GST融合タンパク質として発現した一つの抗原フラグメントを基にしたELISAアッセイの結果をまとめる。
【0138】
血清サンプル中のHCMV-特異的IgGの決定を、製造者指示書に従い全細胞のHCMV抗原アッセイETI-CYTOK-G PLUS(Diasorin、Saluggia、Italy)により行った。全ての組換え抗原について、カットオフ値を、HCMV IgG 陰性血清から得られた吸光度の平均値+3標準偏差として決定した。コントロールとして、野生型GSTタンパク質に対するIgG反応活性を各血清について評価した。一つの組換え抗原に対して陽性IgG反応活性を決定するために使用した診断基準は、カットオフ値よりも高いODGST-抗原であり、かつODGSTよりも高いODGST-抗原であった。表3の各列に数と対応する反応血清の%を報告する。
【0139】
表3
【表3】

【0140】
下記表4は、妊娠中に最近のHCMV再活性化または二次HCMV感染を示した25人の女性からの血清サンプル(CA1-CA25)を用いるIgG Rec-ELISAアッセイの結果を示す。血清サンプル中のHCMV-特異的IgGの決定を、全細胞のHCMV抗原アッセイETI-CYTOK-G PLUS(Diasorin、Saluggia、Italy)によるか、または一つの組換え抗原のイムノアッセイを用いて行った。各GST-融合産物について、カットオフ値を、HCMV 血清陰性被験者(n=20)由来の血清により得た吸光度の平均+3SDとして決定した。ETI-CYTO-K PLUS、GST-CM2.10、GST-CM3.3、GST-CM8.3、GST-CM7.3、GST-CM1.3、GST-CM2.7およびGST-CM4.4のためのカットオフ値は、0.2、0.073、0.078、0.101、0.089、0.145、0.147および0.138各々であった。太字の値は陽性応答を示す。全てのアッセイは国際標準を参照せずに行われため、この標準アッセイにより得られた光学密度の数値は他のものとは比較できないことに注意されたい。
【0141】
表4
【表4】

下記表5は、一つの組換え抗原(IgG Rec-ELISA)により得られた結果と比較した市販アッセイ(ETI-CYTOK-G PLUS)の性能特性を示す。表5から、CMV-3.3抗原フラグメントを基としたRec-ELISAを例外として、該アッセイの特異性および陽性予測値の両方(偽陽性の出現を示す3番目および5番目の列を参照されたい)が、本発明の組換え抗原フラグメントを用いる場合に最大(100%)に達したことが明らかとなった。
【0142】
表5
【表5】

【0143】
組換えキメラ抗原とHCMV感染個体の血清由来のIgG抗体との免疫反応性
組換えキメラ抗原に関するELISAの能力を、被覆緩衝液中で各々0.5μg/ml、2μg/mlおよび3μg/mlの濃度のGST-EC7-Flag、GST-EC8-FlagおよびGST-EC14を用いて、Maxisorb プレート(Nunc)を被覆することにより行った。4℃で終夜インキュベーションの後、プレートを、ブロッキング緩衝液(PBS溶液中、5%無脂肪乾燥ミルク、0.05%Tween-20)と共に1時間37℃でインキュベートし、次いでブロッキング溶液により1:100希釈した血清サンプルと共に1時間37℃でインキュベートした。該プレートを、PBS中で0.05% Tween-20で洗浄し、ブロッキング溶液にて1:20000希釈した抗-ヒト-IgGホースラディッシュペルオキシダーゼ-コンジュゲート抗体(1mg/ml; Sigma-Aldrich、USA)を各ウェルに加えた。最後に、プレートを色原基質テトラメチルベンジジン(TMB; Sigma-Aldrich、USA)とインキュベートして、酵素活性を明らかにした。結果を、自動ELISAリーダー(Labsystem Multiskan、Finland)により検出した450および620nmでの吸光度(光学密度、OD)の差違として記録した。各血清サンプルについて、該アッセイを2回行い、平均値を計算した。
【0144】
下記表6は、36人のHCMV-血清陽性(C1-C36)および33人のHCMV-血清陰性(N1-N33)個体からの血清サンプルを用いる、キメラ抗原EC7-Flag、EC8-FlagおよびGST-EC14のいずれかを用いるELISAアッセイの結果、または全細胞のHCMV抗原アッセイETI-CYTOK-G PLUS (Diasorin、Saluggia、Italy)の結果を示す。各キメラ抗原について、カットオフ値を、HCMV血清陰性被験者からの血清により得た吸光度の平均+3SDとして決定した。ETI-CYTO-K PLUS、GST-EC7-Flag、GST-EC8-FlagおよびGST-EC14に対するカットオフ値は、各々0.296、0.296、0.273および0.203であった。太字で示した値は陽性応答を示す。全てのアッセイは国際標準を参照せずに行われため、この標準アッセイにより得られた光学密度の数値は他のものとは比較できないことに注意されたい。
【0145】
表6
【表6−1】

【表6−2】

【0146】
下記表7は、EC7およびEC8キメラ抗原(IgG Rec-ELISA)を用いて得た結果と比較した、市販アッセイ(ETI-CYTOK-G PLUS)の性能特性を示す。表7から、該アッセイの感受性(偽陰性の出現を示す第2番目の列を参照されたい)は、本発明のキメラ抗原を使用する場合に、最高値に達することが明らかとなった。また、溶菌した全細胞のCMV抗原を用いる市販試験ETI-CYTOK-G、およびキメラ抗原EC7またはEC14によるIgG rec-ELISAのいずれも、組換え抗原を用いて行われるアッセイが通常伴う再現性のレベルを維持しながら、同じ性能特性を示す。
【0147】
表7
【表7】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
HCMVタンパク質の少なくとも3つの異なる抗原領域の融合体を含有するキメラ組換え抗原であって、該抗原領域はHCMV-特異的抗体に結合するB-細胞エピトープであり、ここで3つの該抗原領域の一つが配列番号:2または配列番号:12のアミノ酸配列からなる、キメラ組換え抗原。
【請求項2】
HCMV-特異的抗体が、HCMVに感染している被験者の血清から抽出される、請求項1に記載のキメラ抗原。
【請求項3】
3つの異なる抗原領域が、共有結合によるかまたはペプチドリンカーにより結合される、請求項1または2に記載のキメラ抗原。
【請求項4】
キメラ抗原が配列番号:2および配列番号:12の両方のアミノ酸配列を含有する、請求項1に記載のキメラ抗原。
【請求項5】
キメラ抗原がさらに配列番号:10のアミノ酸配列を含む、請求項1〜4のいずれかに記載のキメラ抗原。
【請求項6】
キメラ抗原がさらに配列番号:14のアミノ酸配列を含む、請求項1〜3のいずれかに記載のキメラ抗原。
【請求項7】
配列番号:4、配列番号:6および配列番号:8からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項1〜3のいずれかに記載のキメラ抗原。
【請求項8】
配列番号:16のアミノ酸配列を含む、請求項1〜3のいずれかに記載のキメラ抗原。
【請求項9】
配列番号:18のアミノ酸配列を含む、請求項1〜3のいずれかに記載のキメラ抗原。
【請求項10】
配列番号:36のアミノ酸配列を含む、請求項1〜3のいずれかに記載のキメラ抗原。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれかに記載のキメラ抗原をコードしている、ヌクレオチド配列。
【請求項12】
配列番号:15のヌクレオチド配列を含む、請求項11に記載のヌクレオチド配列。
【請求項13】
配列番号:17のヌクレオチド配列を含む、請求項11に記載のヌクレオチド配列。
【請求項14】
配列番号:35のヌクレオチド配列を含む、請求項11に記載のヌクレオチド配列。
【請求項15】
ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で、請求項11〜14のいずれかに記載の配列とハイブリダイズする、ヌクレオチド配列。
【請求項16】
請求項15に記載のヌクレオチド配列によりコードされた、キメラ組換え抗原。
【請求項17】
DNA配列である、請求項11〜15のいずれかに記載のヌクレオチド配列。
【請求項18】
請求項17に記載のDNA配列を含む、ベクター。
【請求項19】
請求項18に記載のベクターにより形質転換された宿主細胞。
【請求項20】
請求項19に記載の宿主細胞を培養すること、および所望の生成物を単離することを含む、請求項1〜10または16のいずれかに記載の抗原を産生する方法。
【請求項21】
HCMV感染の診断のための有効成分としての請求項1〜10または16のいずれかに記載の抗原の使用。
【請求項22】
請求項1〜10または16のいずれかに記載の抗原の少なくとも1つを含むHCMV感染を検出するための診断薬。
【請求項23】
請求項22に記載の診断薬の少なくとも1つを含有する、HCMV感染の診断のためのアッセイキット。
【請求項24】
試験サンプルを請求項22に記載の診断薬と接触させることを含む、HCMV感染の診断方法。
【請求項25】
試験サンプルがHCMV抗体の存在について試験されるものであり、
下記ステップ:
(i)試験サンプルを請求項22の診断薬と共にインキュベートすること、
(ii)抗体-診断薬複合体を形成させること、および
(iii)該複合体の存在を検出すること、
を含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
試験サンプルがHCMV感染している疑いがある被験者の血清または血漿である、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
医薬品として請求項1〜10または16のいずれかに記載の抗原の使用。
【請求項28】
HCMV感染の予防または処置のための医薬品の製造のための有効成分として、請求項1〜10または16のいずれかに記載の抗原の使用。
【請求項29】
医薬品としての請求項11〜15のいずれかに記載のヌクレオチド配列の使用。
【請求項30】
HCMV感染の処置または予防に有用な医薬品の製造のための、請求項11〜15のいずれかに記載のヌクレオチド配列の使用。
【請求項31】
アジュバントと共に請求項1〜10または16に記載の抗原の少なくとも1つを含んでいる免疫調節ワクチン。
【請求項32】
アジュバントが、アルミニウム塩および水中油型エマルジョンからなる群から選択される、請求項31に記載のワクチン。
【請求項33】
請求項1〜10または16のいずれかに記載の抗原の少なくとも1つを含有している、特にワクチンの形態にある、医薬組成物。
【請求項34】
請求項11〜15のいずれかに記載のヌクレオチド配列の少なくとも1つを含有している、特にワクチンの形態にある、医薬組成物。
【請求項35】
ヒトおよび/または動物の用途として好適な請求項33または34に記載の組成物。
【請求項36】
治療上有効量の請求項31〜35のいずれかに記載のワクチンを投与することを含む、HCMV感染に罹っている哺乳動物を処置する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2010−517544(P2010−517544A)
【公表日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−548617(P2009−548617)
【出願日】平成20年2月5日(2008.2.5)
【国際出願番号】PCT/EP2008/000876
【国際公開番号】WO2008/095677
【国際公開日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【出願人】(591043248)シグマ−タウ・インドゥストリエ・ファルマチェウチケ・リウニテ・ソシエタ・ペル・アチオニ (92)
【氏名又は名称原語表記】SIGMA−TAU INDUSTRIE FARMACEUTICHE RIUNITE SOCIETA PER AZIONI
【Fターム(参考)】