説明

ヒトフィーダー細胞を用いた多能性幹細胞の分化

本発明は、多能性幹細胞分化の分野に関するものである。本発明は、ヒトフィーダー細胞層における多能性幹細胞の分化のための方法を提供する。特に本発明は、ヒトフィーダー細胞層を用いて多能性幹細胞を膵内分泌細胞に分化させるための改善された方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【開示の内容】
【0001】
〔技術分野〕
本発明は、多能性幹細胞分化の分野に関するものである。本発明は、ヒトフィーダー細胞層における多能性幹細胞の分化のための方法を提供する。特に本発明は、ヒトフィーダー細胞層を用いて多能性幹細胞を膵内分泌細胞に分化させるための改善された方法を提供する。
【0002】
〔背景技術〕
多能性幹細胞、例えば胚幹細胞などは、あらゆる成体細胞種に分化する能力を有している。この胚幹細胞は、疾患、感染症、又は先天性異常の結果損傷した器官の、細胞及び組織の移植源となり得る。移植細胞源として利用する胚幹細胞の可能性は、胚幹細胞が目的の細胞種に効果的に分化する際の問題によって制限される。
【0003】
1つの例として、ホリ(Hori)ら(PNAS 99:16105、2002年)は、β細胞に似たホスホイノシチド3−キナーゼ(LY294002)産生細胞の阻害剤で、マウス胚幹細胞を処理することを開示している。
【0004】
別の例において、ブリスチュック(Blyszczuk)ら(PNAS 100:998、2003年)は、Pax4を構成的に発現するマウス胚幹細胞からインスリン産生細胞を発生させることを報告している。
【0005】
ミカレフ(Micallef)らは、レチノイン酸が、Pdx1陽性膵内胚葉を形成する胚幹細胞の関与を調節できることを報告している(Diabetes 54:301、2005年)。
【0006】
スカウディ(Skoudy)らは、アクチビンA(TGFβスーパーファミリーのメンバー)が、マウス胚幹細胞において、膵外分泌遺伝子の発現(p48及びアミラーゼ)並びに膵内分泌遺伝子の発現(Pdx1、インスリン、及びグルカゴン)を増加させることを報告している(Biochem.J.379:749、2004年)。
【0007】
シラキ(Shiraki)らは、胚幹細胞のPdx1陽性細胞への分化を特に強化する増殖因子の影響を研究した。これによると、TGFβ2はより高い割合のPdx1陽性細胞を良好な再現性で産生していることが観察された(Genes Cells.2005年6月;10(6):503〜16.)。
【0008】
ゴードン(Gordon)らは、血清がなく、Wnt信号阻害物質と共にアクチビンが存在する状態において、マウス胚幹細胞からブラキュリ(brachyury)/HNF−3ベータ内胚葉細胞への誘導が起こることを示した(米国特許第2006/0003446A1号)。
【0009】
ゴードン(Gordon)ら(PNAS 103:16806、2006年)は、「前原始線条の形成には、Wnt及びTGF−ベータ/ノーダル/アクチビンの同時信号が必要である」と述べている。
【0010】
トムソン(Thomson)らは、ヒト胚盤胞から胚幹細胞を分離した(Science 282:114、1998年)。同時に、ゲアハート(Gearhart)とその共同研究者らは、胎児生殖腺組織からヒト胚生殖(hEG)細胞株を誘導した(シャムブロット(Shamblott)ら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 95:13726、1998年)。単に白血病阻害因子(LIF)と共に培養することによって分化を防ぐことができるマウス胚幹細胞とは異なり、ヒト胚幹細胞は、非常に特殊な条件下で管理する必要がある(米国特許第6,200,806号;WO99/20741号;WO01/51616号)。
【0011】
ダムール(D’Amour)らは、高濃度のアクチビン及び低濃度の血清の存在下で、ヒト胚幹細胞由来の胚体内胚葉の富化培養の産生について記述している(Nature Biotechnology 2005年)。これらの細胞をマウスの腎臓カプセル下に移植したところ、内胚葉器官の特徴を有した成熟細胞への分化が生じた。ヒト胚幹細胞由来の胚体内胚葉細胞は更に、FGF−10の添加後、Pdx1陽性細胞に分化することができる(米国特許第2005/0266554A1号)。
【0012】
ダムール(D’Amour)ら(Nature Biotechnology−24、1392〜1401(2006年))は、「我々は、ヒト胚幹(hES)細胞を、膵臓ホルモンのインスリン、グルカゴン、ソマトスタチン、膵ポリペプチド及びグレリンを合成することができる内分泌細胞に変換する分化プロセスを開発した。このプロセスは、胚体内胚葉、腸管内胚葉、膵内胚葉及び内分泌前駆体が、内分泌ホルモンを発現する細胞に至る経路と同様の段階を経て、細胞を誘導することにより、生体内の膵臓器官形成を模したものである」と述べている。
【0013】
別の例において、フィスク(Fisk)らは、ヒト胚幹細胞から膵島細胞を生成するためのシステムを報告している(米国特許出願公開第2006/0040387A1号)。この事例では、分化経路は3段階に分かれていた。ヒト胚幹細胞は最初に、酪酸ナトリウム及びアクチビンAの組み合わせを用いて内胚葉に分化させた。この細胞を、ノギンなどのTGFβ拮抗物質を、EGF又はベータセルリンと組み合わせて加えて培養し、Pdx1陽性細胞を生成した。最終分化はニコチンアミドによって誘導した。
【0014】
1つの例において、ベンベニストリー(Benvenistry)らは「我々は、Pdx1の過剰発現が、膵臓性富化遺伝子の発現を強化し、インスリン発現の誘導には生体内にのみ存在する追加の信号が必要である可能性があると結論づける」と述べている(ベンベニストリー(Benvenistry)ら、Stem Cells 2006年;24:1923〜1930)。
【0015】
別の例において、コンディー(Condie)らは「フィーダー層は、ガンマセクレターゼ又はノッチシグナリングを阻害するリガンド又はその他の化合物を含むか又は発現し、これにより、ガンマセクレターゼ又はノッチシグナリングを阻害するリガンド又はその他の化合物を含むか又は発現する多能性状態フィーダー層における多能性細胞の維持を強化し、これにより多能性状態にある多能性細胞の維持が強化される」と開示している(WO2004090110号)。
【0016】
別の例において、ミタリポーバ(Mitalipova)らは「ヒト胚幹細胞は、顆粒膜フィーダー細胞、筋細胞、卵管上皮細胞、骨髄間質細胞、及び皮膚線維芽細胞と共に培養され、その胚幹細胞は多能性表現型を維持する」と開示している(米国特許第20050037488号)。
【0017】
別の例において、シュ(Xu)らは「間葉性及び線維芽細胞様の細胞株が、胚組織から得られ、又は胚幹細胞から分化した。このような細胞株の誘導方法、培地の処理方法、及びフィーダー細胞又は条件付き培地を用いた幹細胞の増殖方法が記述される」と開示している(米国特許第20020072117号)。
【0018】
〔発明の概要〕
〔発明が解決しようとする課題〕
したがって、膵内分泌細胞、膵臓ホルモン発現細胞、又は膵臓ホルモン分泌細胞に分化する可能性を保持しながら、現在の臨床ニーズに対処するために拡張し得る多能性幹細胞株の確立のための条件開発に対する大きなニーズがなお残っている。我々は、多能性幹細胞の膵内分泌細胞への分化の効率を高めるため、別のアプローチを用いた。
【0019】
〔課題を解決するための手段〕
本発明は、多能性幹細胞分化の分野に関するものである。本発明は、ヒトフィーダー細胞層における多能性幹細胞の分化のための方法を提供する。特に本発明は、ヒトフィーダー細胞層を用いて多能性幹細胞を膵内分泌細胞に分化させるための改善された方法を提供する。
【0020】
1つの実施形態において、本発明は、多能性幹細胞の分化のための方法を提供し、その方法は:
a.多能性幹細胞を培養する工程と、
b.その多能性幹細胞を、ヒトフィーダー細胞層上に蒔く(Plating)工程と、
c.その多能性幹細胞の分化を促進する少なくとも1つの因子で、その多能性幹細胞を処理する工程と、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】ヒト胚幹細胞株H9の細胞集団(継代培養第46代)における、分化に関するマーカーCXCR4、Sox−17、FoxA2、HNF−4a、HNF6及びAFPの発現を示す。培養はMEF条件付きマトリゲル(MATRIGEL)培地上で行われ、マウス胚線維芽細胞(MEF)、市販のマウス胚線維芽細胞(MEF−SM)、ヒト皮膚線維芽細胞(D551)、ヒト包皮線維芽細胞(Hs27)、及びヒト膵臓由来間質細胞(HP)に移された細胞と比較されている。
【図2】ヒト胚幹細胞から、胚体内胚葉系譜に特有のマーカーを発現する細胞への分化に対する、ヒトフィーダー細胞層の影響を示す。この図は、ヒト胚幹細胞株H1の細胞集団(継代培養第48代)が、マウス胚線維芽細胞(MEF)、市販のマウス胚線維芽細胞(MEF−SM)、ヒト皮膚線維芽細胞(D551)、ヒト包皮線維芽細胞(Hs27)、及びヒト膵臓由来間質細胞(HP)で培養され、胚体内胚葉系譜に特有のマーカーを発現する細胞に分化した際の、リアルタイムPCRで決定されたCXCR4、Sox−17、及びFoxA2の発現を示す。
【図3】膵内胚葉系譜に特有のマーカーを発現する細胞の形成に対する、ヒトフィーダー細胞層の影響を示す。この図は、ヒト胚幹細胞株H1の細胞集団(継代培養第48代)が、マウス胚線維芽細胞(MEF)、市販のマウス胚線維芽細胞(MEF−SM)、ヒト皮膚線維芽細胞(D551)、ヒト包皮線維芽細胞(Hs27)、及びヒト膵臓由来間質細胞(HP)で培養され、膵内胚葉系譜に特有のマーカーを発現する細胞に分化した際の、リアルタイムPCRで決定されたFoxA2、HNF−4a、HNF−6及びPDX−1の発現を示す。
【図4】膵内分泌系譜に特有のマーカーを発現する細胞の形成に対する、ヒトフィーダー細胞層の影響を示す。この図は、ヒト胚幹細胞株H1の細胞集団(継代培養第48代)が、マウス胚線維芽細胞(MEF)、市販のマウス胚線維芽細胞(MEF−SM)、ヒト皮膚線維芽細胞(D551)、ヒト包皮線維芽細胞(Hs27)、及びヒト膵臓由来間質細胞(HP)で培養され、膵内分泌系譜に特有のマーカーを発現する細胞に分化した際の、リアルタイムPCRで決定されたFoxA2、HNF−4a、HNF−6、NeuroD1、Nkx 2.2、Pax−4、Nkx 6.1、PDX−1、グルカゴン(GCG)、及びインスリン(INS)の発現を示す。
【図5】ヒト胚幹細胞から、胚体内胚葉系譜に特有のマーカーを発現する細胞への分化に対する、ヒトフィーダー細胞層の影響を示す。この図は、ヒト胚幹細胞株H9の細胞集団(継代培養第46代)が、マウス胚線維芽細胞(MEF)、市販のマウス胚線維芽細胞(MEF−SM)、ヒト皮膚線維芽細胞(D551)、ヒト包皮線維芽細胞(Hs27)、及びヒト膵臓由来間質細胞(HP)で培養され、胚体内胚葉系譜に特有のマーカーを発現する細胞に分化した際の、リアルタイムPCRで決定されたCXCR4、Sox−17、及びFoxA2の発現を示す。
【図6】膵内胚葉系譜に特有のマーカーを発現する細胞の形成に対する、ヒトフィーダー細胞層の影響を示す。この図は、ヒト胚幹細胞株H9の細胞集団(継代培養第46代)が、マウス胚線維芽細胞(MEF)、市販のマウス胚線維芽細胞(MEF−SM)、ヒト皮膚線維芽細胞(D551)、ヒト包皮線維芽細胞(Hs27)、及びヒト膵臓由来間質細胞(HP)で培養され、膵内胚葉系譜に特有のマーカーを発現する細胞に分化した際の、リアルタイムPCRで決定されたFoxA2、HNF−4a、HNF−6及びPDX−1の発現を示す。
【図7】膵内分泌系譜に特有のマーカーを発現する細胞の形成に対する、ヒトフィーダー細胞層の影響を示す。この図は、ヒト胚幹細胞株H9の細胞集団(継代培養第46代)が、マウス胚線維芽細胞(MEF)、市販のマウス胚線維芽細胞(MEF−SM)、ヒト皮膚線維芽細胞(D551)、ヒト包皮線維芽細胞(Hs27)、及びヒト膵臓由来間質細胞(HP)で培養され、膵内分泌系譜に特有のマーカーを発現する細胞に分化した際の、リアルタイムPCRで決定されたFoxA2、HNF−4a、HNF−6、NeuroD1、Nkx 2.2、Pax−4、Nkx 6.1、PDX−1、グルカゴン(GCG)、及びインスリン(INS)の発現を示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
限定するためではなく、開示の明確さのために、本発明の詳細な説明は、以下の小項に分けて、本発明の特定の機能、実施形態又は適用について記述又は説明する。
【0023】
定義
幹細胞は、単独の細胞レベルで自己複製と、分化による後継細胞産生との両方を行う能力によって定義される、未分化の細胞であり、これには自己複製を行う前駆細胞、複製を行わない前駆細胞、及び終末分化細胞が含まれる。幹細胞はまた、生体外において、複数の胚葉層(内胚葉、中胚葉及び外胚葉)からさまざまな細胞系譜の機能に分化する能力、並びに、移植後に複数の胚葉層の組織を形成する能力、及び、胚盤胞への注入後に全てではなくとも実質的にほとんどの組織に寄与する能力によっても特徴付けられる。
【0024】
幹細胞は、発生学的能力によって次のように分類される:(1)分化全能性幹細胞−すべての胚性細胞種及び胚体外細胞種を形成する能力をもつ、(2)分化多能性幹細胞−すべての胚性細胞種を形成する能力をもつ、(3)分化複能性幹細胞−細胞系譜の一部分を形成することができるが、特定の組織、器官、又は生理学的システム内にあるすべてを形成する能力をもつ(例えば、造血幹細胞(HSC)は、HSC(自己複製)、血球限定寡能性前駆細胞及び血中の通常の成分であるあらゆる血球種及び要素(例えば血小板)を含む子孫細胞を生成できる)、(4)分化寡能性幹細胞−細胞系譜のうち、分化多能性幹細胞よりも更に制限された一部を形成する能力をもつ、(5)分化単一性幹細胞−単一の細胞系譜を形成する能力をもつ(例えば精子形成幹細胞)。
【0025】
分化とは、未特化(「関連づけられていない」)又は特化度の低い細胞が、例えば神経細胞又は筋肉細胞といった特化した細胞の機能を取得するプロセスである。分化した細胞、又は分化誘導された細胞とは、ある細胞の系譜内のより特化した(「関連付けられた」)位置に移行したものである。用語「関連付けられた」は、分化プロセスについて用いられる場合、ある細胞が分化の経路を進行しており、通常の環境のもとでは特定の細胞種又は細胞種の一部に向けて分化し続ける段階であり、かつ、通常の環境のもとでは別の細胞種に分化できず、また分化程度の低い細胞種に戻ることもできないような段階まで至っていることを意味する。脱分化とは、細胞の系譜の中で、細胞が分化程度のより低い(関連付けのより低い)段階まで戻るプロセスを意味する。本明細書で使用される場合、細胞の系譜とは、細胞の遺伝形質(すなわちどの細胞がどこから来たか、及びどの細胞を形成できるか)を定義する。細胞の系譜とは、発生及び分化の遺伝体系内に細胞を配置するものである。系譜固有のマーカーとは、関心対象の系譜の細胞の表現型に特有の特性を意味し、関連付けられていない細胞の、関心対象の系譜への分化を評価するのに用いることができる。
【0026】
培養中の細胞を記述するのにはさまざまな用語が使用される。「維持」は、一般に、細胞の成長及び/又は分裂を促進する条件下で増殖培地に細胞を置くことを意味し、細胞の数が増殖する場合も増殖しない場合もある。「継代」とは、ある培養容器から細胞を取り出し、細胞の成長及び/又は分裂を促進する条件下で別の培養容器にその細胞を置くプロセスを意味する。
【0027】
特定の細胞集団、又は細胞株は、継代培養された回数によって言及され、又は特徴付けられる。例えば、10回継代培養された培養細胞集団は、P10培養と記載され得る。初代培養(すなわち、組織から細胞を分離した後の最初の培養)はP0と指定される。最初の継代培養の後、その細胞は2代培養(P1又は継代培養第1代)と呼ばれる。2代目の継代培養後、その細胞は3代培養(P2又は継代培養第2代)となり、以降同様となる。当業者には、継代培養の期間中に数多くの細胞集団倍加があり得ることが理解されるであろう;よって、培養の細胞集団倍加の数は、継代回数よりも大きい。継代培養間の期間中の細胞増殖(すなわち細胞集団倍加の回数)は、さまざまな要素に依存し、この要素には例えば植種密度、基質、培地、成長条件、及び継代培養間の時間が含まれ、これらに限定されない。
【0028】
「β細胞系譜」は、転写因子PDX−1、並びにNGN−3、Nkx2.2、Nkx6.1、NeuroD、Isl−1、HNF−3ベータ、MAFA、Pax4、及びPax6の転写因子のうち少なくとも1つの、陽性遺伝子発現を有する細胞を意味する。β細胞系譜に特有のマーカーを発現する細胞は、β細胞を含む。
【0029】
本明細書で使用される「胚体内胚葉系譜に特有のマーカーを発現する細胞」は、SOX−17、GATA−4、HNF−3ベータ、GSC、Cer1、ノーダル(Nodal)、FGF8、ブラキュリ(brachyury)、ミックスライク(Mixlike)ホメオボックスタンパク質、FGF4 CD48、エオメソダーミン(eomesodermin)(EOMES)、DKK4、FGF17、GATA−6、CXCR4、C−Kit、CD99、又はOTX2のマーカー群のうち少なくとも1つを発現する細胞を意味する。胚体内胚葉系譜に特有のマーカーを発現する細胞には、原条前駆細胞、原条細胞、中内胚葉細胞及び胚体内胚葉細胞が挙げられる。
【0030】
本明細書で使用される「膵内胚葉系譜に特有のマーカーを発現する細胞」は、PDX−1、HNF−1ベータ、HNF−3ベータ、PTF−1アルファ、HNF−6、又はHB9マーカー群のうち少なくとも1つを発現する細胞を意味する。膵内胚葉系譜に特有のマーカーを発現する細胞には、膵内胚葉細胞が挙げられる。
【0031】
本明細書で使用される「膵内分泌系譜に特有のマーカーを発現する細胞」は、NGN−3、NeuroD、Islet−1、PDX−1、NKX6.1、Pax−4、Ngn−3、又はPTF−1アルファマーカー群のうち少なくとも1つを発現する細胞を意味する。膵内分泌系譜に特有のマーカーを発現する細胞には、膵内分泌細胞、膵臓ホルモン発現細胞、及び膵臓ホルモン分泌細胞、並びにβ細胞系譜の細胞が挙げられる。
【0032】
本明細書で使用される「胚体内胚葉(Definitive endoderm)」は、原腸形成中に胚盤葉上層から生じる細胞の特性を有する細胞であり、胃腸管及びその派生器官を形成するものを意味する。胚体内胚葉細胞は、CXCR4、HNF−3ベータ、GATA−4、SOX−17、サーベラス(Cerberus)、OTX2、グースコイド(goosecoid)、c−Kit、CD99、及びMixl1マーカー群を発現する。
【0033】
本明細書で使用される「胚体外内胚葉」は、SOX−7、AFP、及びSPARCマーカー群のうち少なくとも1つを発現する細胞集団を意味する。
【0034】
本明細書で使用される「マーカー」とは、関心対象の細胞において差次的に発現される核酸又はポリペプチド分子である。この文脈において、発現差異とは、陽性マーカーのレベル増大又は陰性マーカーのレベル減少を意味する。マーカー核酸又はマーカーポリペプチドの検出可能なレベルとは、関心対象の細胞において、他の細胞よりも十分に高いか又は低いことであり、これにより関心対象の細胞が、当該技術分野において既知のさまざまな任意の方法を使用して同定され、他の細胞と区別することが可能となる。
【0035】
本明細書で使用される「中内胚葉細胞」は、CD48、エオメソダーミン(eomesodermin)(EOMES)、SOX−17、DKK4、HNF−3ベータ、GSC、FGF17、GATA−6マーカー群のうち少なくとも1つを発現する細胞を意味する。
【0036】
本明細書で使用される「膵内分泌細胞」又は「膵臓ホルモン発現細胞」は、インスリン、グルカゴン、ソマトスタチン、膵ポリペプチド及びグレリンのホルモン群のうち少なくとも1つを発現することができる細胞を意味する。
【0037】
本明細書で使用される「膵臓ホルモン分泌細胞」は、インスリン、グルカゴン、ソマトスタチン、及び膵ポリペプチドのホルモン群のうち少なくとも1つを分泌することができる細胞を意味する。
【0038】
本明細書で使用される「原条前駆細胞」は、ノーダル(Nodal)又はFGF8のマーカー群のうち少なくとも1つを発現する細胞を意味する。
【0039】
本明細書で使用される「原条細胞」は、ブラキュリ(brachyury)、ミックスライク(Mix-like)ホメオボックスタンパク質、又はFGF4のマーカー群のうち少なくとも1つを発現する細胞を意味する。
【0040】
本発明は、多能性幹細胞分化の分野に関するものである。本発明は、ヒトフィーダー細胞層における多能性幹細胞の増殖のための方法を提供する。本発明はまた、ヒトフィーダー細胞層における多能性幹細胞の分化のための方法も提供する。特に本発明は、ヒトフィーダー細胞層を用いて多能性幹細胞を膵内分泌細胞に分化させるための改善された方法を提供する。
【0041】
1つの実施形態において、本発明は、多能性幹細胞の分化のための方法を提供し、その方法は:
a.多能性幹細胞を培養する工程と、
b.その多能性幹細胞を、ヒトフィーダー細胞層上に蒔く工程と、
c.その多能性幹細胞の分化を促進する少なくとも1つの因子で、その多能性幹細胞を処理する工程と、を含む。
【0042】
本発明の方法は、多能性幹細胞の分化のための改善された方法を提供し、この方法において、多能性幹細胞の分化の前に、その多能性幹細胞がヒトフィーダー細胞層上に蒔かれる。多能性幹細胞は、当該技術分野において適切な任意の方法で培養することができる。同様に、多能性幹細胞は、当該技術分野において適切な任意の方法で、ヒトフィーダー細胞層上に蒔かれることができる。多能性幹細胞は、ヒトフィーダー細胞層上に蒔かれた直後に、その多能性幹細胞の分化を促進する少なくとも1つの因子で処置することができる。別の方法として、多能性幹細胞は、ヒトフィーダー細胞層の存在下において一定時間培養した後、その多能性幹細胞の分化を促進する少なくとも1つの因子で処置することができる。例えば、多能性幹細胞は、単層を形成するのに十分な時間、ヒトフィーダー細胞層の存在下において培養することができる。
【0043】
多能性幹細胞は、任意の密度でヒトフィーダー細胞層上に蒔かれることができる。ただし最適な密度は、例えば、使用する多能性幹細胞、ヒトフィーダー細胞層に含まれる細胞、分化細胞種、培養容器の大きさなどの要素によって異なることがある。1つの実施形態において、多能性幹細胞は、ヒトフィーダー細胞層上で5日間培養した後に約60%〜約80%コンフルエントとなるような密度で蒔かれる。
【0044】
本発明における使用に好適な多能性幹細胞には、例えば、ヒト胚幹細胞株H9(NIHコード:WA09)、ヒト胚幹細胞株H1(NIHコード:WA01)、ヒト胚幹細胞株H7(NIHコード:WA07)、及びヒト胚幹細胞株SA002(スウェーデン・セラーティス(Cellartis)社)が挙げられる。また、本発明における使用に好適なものとしては、多能性細胞に特有のマーカー群、ABCG2、cripto、CD9、FoxD3、Connexin43、Connexin45、Oct4、Sox2、Nanog、hTERT、UTF−1、ZFP42、SSEA−3、SSEA−4、Tra1−60、Tra1−81のうち少なくとも1つを発現する細胞がある。
【0045】
ヒトフィーダー細胞層に含まれる細胞は、多能性幹細胞の分化を促進することができる任意のヒト細胞であり得る。ヒトフィーダー細胞層に含まれる細胞は、成体細胞であり得る。あるいは、ヒトフィーダー細胞層に含まれる細胞は、胎児細胞又は胚細胞であり得る。1つの実施形態において、ヒトフィーダー細胞層は線維芽細胞で構成される。1つの実施形態において、この線維芽細胞は皮膚線維芽細胞である。この皮膚線維芽細胞は、ヒト皮膚線維芽細胞株Detroit 551(CCL−110 ATCC)であり得る。別の実施形態において、この線維芽細胞は包皮線維芽細胞である。このヒト包皮線維芽細胞は、ヒト包皮線維芽細胞株Hs27(CRL−1634 ATCC)であり得る。
【0046】
あるいは、ヒトフィーダー細胞層は、膵臓由来間質細胞で構成される。1つの実施形態において、この膵臓由来間質細胞は、米国特許第20040241761号に開示されている細胞である。別の実施形態において、この膵臓由来間質細胞は、Science 306:2261〜2264(2004年)に開示されている細胞である。別の実施形態において、この膵臓由来間質細胞は、Nature Biotechnology 22:1115〜1124(2004年)に開示されている細胞である。別の実施形態において、この膵臓由来間質細胞は、米国特許第20030082155号に開示されている細胞である。別の実施形態において、この膵臓由来間質細胞は、米国特許第5834308号に開示されている細胞である。別の実施形態において、この膵臓由来間質細胞は、Proc Nat Acad Sci 97:7999〜8004(2000年)に開示されている細胞である。別の実施形態において、この膵臓由来間質細胞は、WO2004011621号に開示されている細胞である。別の実施形態において、この膵臓由来間質細胞は、WO03102134号に開示されている細胞である。別の実施形態において、この膵臓由来間質細胞は、米国特許第2004015805号に開示されている細胞である。別の実施形態において、この膵臓由来間質細胞は、米国特許第6458593号に開示されている細胞である。別の実施形態において、この膵臓由来間質細胞は、WO2006094286号に開示されている細胞である。別の実施形態において、この膵臓由来間質細胞は、ATCC番号PTA−6974のH5f3P6細胞株である。
【0047】
フィーダー細胞層の生成
本出願に記載されているヒトフィーダー細胞層は、多能性幹細胞の分化に有用である。他の細胞種で、これらフィーダー細胞層上で分化することにより利益を得られ得ることが知られており、本発明の組成物は、制限なく、そのような目的に使用することができる。
【0048】
本発明の1つの態様において、フィーダー細胞層は、下記を本質的に含む方法によって生成される:
a.フィーダー層を形成する細胞の培養、及び
b.その細胞の不活性化。
【0049】
フィーダー細胞層を形成する細胞は、好適な培養基質上で培養することができる。1つの実施形態において、好適な培養基質は細胞外マトリックス構成成分であり、例えば、基底膜から誘導されるもの、又は接着分子受容体−リガンド結合の一部を構成することができるものがある。1つの実施形態において、好適な培養基質はマトリゲル(MATRIGEL)(登録商標)(ベクトン・ディッキンソン(Becton Dickenson))である。マトリゲル(登録商標)は、エンゲルブレスホルムスワム(Engelbreth-Holm-Swarm)腫瘍細胞から得られた可溶性精製物で、室温でゲル化し、再構築された基底膜を形成する。別の実施形態において、好適な培養基質はゼラチン(シグマ(Sigma))である。
【0050】
他の細胞外マトリックス構成成分及びその混合物が、代替物として好適である。これには、増殖させる細胞種によって、ラミニン、フィブロネクチン、プロテオグリカン、エンタクチン、ヘパラン硫酸などが、単独又はさまざまな組み合わせとして含まれる。
【0051】
フィーダー細胞層を形成するのに用いられる細胞は、例えば、放射線、化学的不活性剤(例えばミトマイシンc)による処理、その他の効果的な任意の方法によって、不活性化する(すなわち、実質的な複製を不能にする)ことができる。
【0052】
フィーダー細胞層を形成するのに用いられる細胞の培養のために使用される培地は、いくつかの異なる任意の成分を有することができる。この培地は、少なくとも、フィーダー細胞層を形成するのに用いられる細胞株の増殖を担持できなければならない。この培地が更に、多能性幹細胞の増殖を担持すると、便利である。しかしながら、別の方法として、多能性幹細胞の増殖のために、他の因子を添加、ないしはそれを適応させるための処理を行うことができる。
【0053】
1つの実施形態において、膵臓由来間質細胞は、WO2006094286号に開示されている細胞である。
【0054】
膵臓由来細胞の単離:本発明の1つの態様において、膵臓細胞は複数段階の方法により単離され、これらは本質的に次の段階を含む:
a.死体膵臓、生体ドナー又は自家組織膵臓を、酵素溶液で潅流し、
b.潅流した膵臓を機械的に分離し、
c.この消化組織を、ポリスクロース又はフィコール(Ficoll)勾配上に重ねて入れた後、遠心分離によって3つの異なる界面を得て、
d.各界面からこの組織及び細胞を取り出し、
e.この組織及び細胞を、5%未満の血清を含み富栄養となるよう選択した培地の標準的な組織培養プレート内で培養し、及び
f.培地を交換することなく、約2〜4週間、その培養を干渉なしにそのまま置く。
【0055】
死体膵臓の潅流は、当業者に周知の、任意の酵素溶液によって達成することができる。本発明における使用に好適な酵素溶液の例には、リベラーゼ・ハイ(LIBERASE HI)(商標)(ロシュ(Roche)0.5mg/mL)及びDNase I(0.2mg/mL)が含まれる。
【0056】
膵臓組織の機械的分離は、組織プロセッサの使用により迅速に実施することができる。別の方法として、膵臓組織の機械的分離は、リコーディチャンバー(Ricordi Chamber)又は、他の手順に比べて組織の破壊的分離の程度が少なくできるような他の同等の装置を使用して、実施することができる。
【0057】
消化された膵臓組織は次に、ポリスクロース又はフィコール勾配遠心分離にかけ、3つの異なる界面を得る。この3つの界面はそれぞれ、島組織、管組織及び腺房組織の細胞を豊富に含んでいる。1つの実施形態において、この組織及び細胞は、各界面から取り出され、別々に培養される。別の実施形態において、すべての界面から得られた組織及び細胞が合わせて培養される。本発明によって、膵臓間質細胞はこの3つの界面のいずれからも誘導可能であることが明らかにされている。別の方法として、連続勾配を用い、選択した細胞集合を用いて、膵臓間質細胞を生成することができる。
【0058】
本発明により、1つ以上の界面から採集された組織及び細胞は、その細胞集団における間質細胞を選択的に豊富にするため選択された培地において培養される。選択された培地は、富栄養であり、低濃度のグルコース及び血清を含む。一般的に、選択された培地は5%未満の血清を含み、あるいは1〜3%の血清を含み、あるいは約2%の血清を含み;かつ、30mM未満のグルコースを含む。1つの実施形態において、選択された培地には、ドナー膵臓が採取された同じ哺乳類に由来する血清2%が添加される。別の方法として、胎児又は子牛血清、他の種からの血清、又は他の血清添加物又は代替物が、選択された培地への添加に使用することができる。選択された培地の適切な一例は、DMEM(5mMグルコース)、2%ウシ胎児血清(FBS)、100U/μgペニシリン/ストレプトマイシン、インスリン−トランスフェリン−セレニウム(ITS)、2mM L−グルタミン、0.0165mM ZnSO、及び0.38μM 2−メルカプトエタノールで構成される。
【0059】
選択された培地での培養中(「選択段階」)、細胞は低酸素条件又は正常酸素圧条件で培養することができる。低酸素条件では、酸素濃度は20%未満であり、あるいは10%未満であり、あるいは5%未満であるが、1%を超える濃度である。
【0060】
好ましくは、この培養は約2〜4週間、使用される培養基質に典型的には細胞が付着するまで、培地を交換することなく、その選択された培地内に干渉なしにそのまま維持されるべきである。この選択段階は、付着細胞の数において更なる増加がなくなったときに、完了したと見なされる。
【0061】
本発明に従った組織の採集及び培養の方法により、膵臓間質細胞を豊富に含んだ細胞集団が結果として得られたことが明らかにされている。「豊富に含む(enriched)」とは、膵臓間質細胞が、集団の全細胞のうち少なくとも約30%を占め、あるいは約40%を占め、あるいは約50%を占めていることを意味する。
【0062】
別の方法として、1つ以上の界面から採集された組織及び細胞は、その細胞集団における間質細胞を選択的に豊富にするため選択された培地において培養される。選択された培地は、富栄養であり、低濃度のグルコースを含む。一般的に、選択された培地は20%未満の血清を含み、あるいは10〜5%の血清を含み、あるいは約10%の血清を含み;かつ、30mM未満のグルコースを含む。1つの実施形態において、選択された培地には、ドナー膵臓が採取された同じ哺乳類に由来する血清10%が添加される。別の方法として、胎児又は子牛血清、他の種からの血清、又は他の血清添加物又は代替物が、選択された培地への添加に使用することができる。選択された培地の適切な一例は、DMEM(5mMグルコース)、10%ウシ胎児血清(FBS)、100U/μgペニシリン/ストレプトマイシンで構成される。
【0063】
選択された培地での培養中(「選択段階」)、細胞は低酸素条件又は正常酸素圧条件で培養することができる。低酸素条件では、酸素濃度は20%未満であり、あるいは10%未満であり、あるいは5%未満であるが、1%を超える濃度である。
【0064】
これらの培養条件下で、培地は2〜4日間隔で定期的に交換される。
【0065】
本発明に従った組織の採集及び培養の方法により、膵臓間質細胞を豊富に含んだ細胞集団が結果として得られたことが明らかにされている。「豊富に含む(enriched)」とは、膵臓間質細胞が、集団の全細胞のうち少なくとも約30%を占め、あるいは約40%を占め、あるいは約50%を占めていることを意味する。
【0066】
最初の選択段階及び細胞付着の後、この細胞(間質細胞を豊富に含む)を、更に後述する条件下において増殖させる。
【0067】
所望により、間質細胞を豊富に含む細胞集団は、例えば、間質細胞によって発現されるタンパク質マーカーを特異的に識別するような物質(抗体など)に曝露させることにより、膵臓間質細胞を同定及び選択することができ、これにより実質的に純粋な膵臓間質細胞集団を得ることができる。
【0068】
単離された膵臓間質細胞の特性付け:培養又は単離された細胞におけるタンパク質及び核酸マーカーの発現を評価する方法は、当該技術分野において標準となっている。これには、定量的逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)、ノーザンブロット法、iハイブリッド形成(例えば「分子生物学の現行プロトコル(Current Protocols in Molecular Biology)」(オースベル(Ausubel)ら編、2001年補遺)を参照)、イムノアッセイ(断片化した物質の免疫組織化学的解析など)、ウェスタンブロット法、並びに、無傷の細胞内でアクセス可能なマーカーについてはフローサイトメトリー解析(FACS)が挙げられる(例えば、ハーロー(Harlow)及びレーン(Lane)、「抗体の使用:実験室マニュアル(Using Antibodies: A Laboratory Manual)」、ニューヨーク、コールドスプリングハーバーラボラトリープレス(Cold Spring Harbor Laboratory Press)(1998年)を参照)。
【0069】
本発明に従って単離された膵臓間質細胞は、とりわけ、CD117、NCAM、ABCG2、サイトケラチン7、8、18、又は19のタンパク質マーカー群のうち少なくとも1つが実質的に欠如している点で特徴付けられる。ある具体的な実施形態において、本発明に従って単離された膵臓間質細胞は、CD44、CD73、CD90及びCD105のタンパク質マーカー群のうち少なくとも1つが実質的に陽性であると特徴付けられる。
【0070】
膵臓間質細胞の増殖:更なる態様において、本発明は、本発明に従って得られた膵臓間質細胞の増殖方法を提供する。前述のように、島組織、管組織断片及び外分泌組織の不均質な混合物を含み得る膵臓消化物は、目的の間質細胞を選択的に豊富に含むよう、好ましくは培地を交換することなく2〜4週間、選択された低血清培地で培養される。結果として得られた、膵臓間質細胞を豊富に含む細胞集団は、増殖培地に切り替えられ、細胞集団中の膵臓間質細胞が増殖される。
【0071】
本発明における使用に適した増殖培地は、ペニシリン/ストレプトマイシン(P/S)及び濃度2%〜20%の血清、あるいは約5〜10%の血清を含むDMEMなどの培地から構成することができる。1つの実施形態において、増殖培地はDMEM(1000mg/L D−グルコース;862mg/Lグルタミン)、及び10%ウシ胎児血清から構成される。別の実施形態において、増殖培地には、ドナー膵臓が採取された同じ哺乳類に由来する血清が添加される。別の方法として、胎児又は子牛の血清、又は他の血清添加物又は代替物(例えば血清アルブミン)が、増殖培地への添加に使用することができる。
【0072】
更に、この間質細胞は、本発明の細胞の増殖を刺激する物質を含むよう定められた増殖培地において培養することにより、増殖することができる。これらの因子には例えば、ニコチンアミド、TGF−βファミリーのメンバー(TGF−β1、2、及び3を含む)、骨形態発生タンパク質(BMP−2、−4、6、−7、−11、−12、及び−13)、血清アルブミン、線維芽細胞増殖因子ファミリー、血小板由来増殖因子−AA及び−BB、血小板富化血漿、インスリン増殖因子(IGF−I、II)、成長分化因子(GDF−5、−6、−8、−10、11)、グルカゴン様ペプチド−I及びII(GLP−I及びII)、GLP−1及びGLP−2ミメトボディ(mimetobody)、エキセンジン−4、レチノイン酸、副甲状腺ホルモン、インスリン、プロゲステロン、アプロチニン、ハイドロコルチゾン、エタノールアミン、ベータメルカプトエタノール、表皮増殖因子(EGF)、ガストリンI及びII、銅キレート化剤(トリエチレンペンタミンなど)、TGF−α、フォルスコリン、酪酸ナトリウム、アクチビン、ベータセルリン、インスリン−トランスフェリン−セレニウム(ITS)、肝細胞増殖因子(HGF)、ケラチノサイト増殖因子(KGF)、ウシ下垂体抽出物、膵島新生関連タンパク質(INGAP)、プロテアソーム阻害剤、ノッチ経路阻害剤、ソニック・ヘッジホッグ(sonic hedgehog)阻害剤、又はこれらの組み合わせが挙げられる。あるいは、この間質細胞は、条件付き培地において培養することにより増殖することができる。「条件付き培地」とは、ある細胞集団がある基本的に定められた細胞培養培地において成長し、その培地の可溶性因子に寄与することを意味する。そのような使用の場合、その細胞は培地から取り出され、その細胞が生成した可溶性因子が残る。この培地が次に、別の細胞集団を育てるのに使用される。
【0073】
特定の実施形態において、膵臓間質細胞は標準の組織培養プレートで培養される。別の方法としては、培養プレートは細胞外マトリックスタンパク質でコーティングすることができ、これにはマトリゲル(MATRIGEL)(登録商標)、低増殖因子マトリゲル(MATRIGEL)(登録商標)、ラミニン、コラーゲン、ゼラチン、テナシン、フィブロネクチン、ビトロネクチン、トロンボスポンジン、胎盤抽出物又はこれらの組み合わせが挙げられる。
【0074】
更に、膵臓間質細胞は、低酸素又は正常酸素圧条件下で生体外において増殖することができる。
【0075】
多能性幹細胞の分化
本発明の1つの実施形態において、多能性幹細胞は、その多能性を維持したまま、培養で増殖される。多能性幹細胞は次にヒトフィーダー細胞層に移されてから、分化する。経時的な細胞の多能性の変化は、多能性に関連するマーカー発現のレベル変化を検出することによって決定することができる。別の方法として、多能性の変化は、分化に関連するマーカー発現の、又は別の細胞種に関連するマーカー発現の、レベル変化を検出することによって監視することができる。
【0076】
多能性細胞は、その多能性細胞が別の細胞種に分化するのを促進する少なくとも1つの因子によって処理される。他の細胞種は、その胚体内胚葉系譜に特有のマーカーを発現する細胞であり得る。あるいは、その細胞種は、膵臓内胚葉系譜に特有のマーカーを発現する細胞であり得る。あるいは、その細胞種は、膵内分泌系譜に特有のマーカーを発現する細胞であり得る。あるいは、その細胞種は、β細胞系譜に特有のマーカーを発現する細胞であり得る。
【0077】
本発明の方法に従って処理された多能性幹細胞は、当該技術分野において好適な任意の方法によって、他のさまざまな細胞種に分化し得る。例えば、本発明の方法に従って処理された多能性幹細胞は、神経細胞、心臓細胞、肝細胞などに分化し得る。
【0078】
例えば、本発明の方法に従って処理された多能性幹細胞は、WO2007030870号に開示されている方法に従って、神経前駆細胞及び心筋細胞に分化することができる。
【0079】
別の例において、本発明の方法に従って処理された多能性幹細胞は、米国特許第6,458,589号に開示されている方法に従って、肝細胞に分化することができる。
【0080】
膵内分泌系譜に特有のマーカーを発現する細胞への、多能性幹細胞の分化
本発明の1つの態様において、膵内分泌系譜に特有のマーカーを発現する細胞は、次の段階を含む複数段階の方法により、多能性幹細胞から形成される:
a.多能性幹細胞を培養し、
b.ヒトフィーダー細胞層上にその多能性細胞を蒔き、
c.その多能性細胞が、胚体内胚葉系譜に特有のマーカーを発現する細胞に分化し、
d.胚体内胚葉系譜に特有のマーカーを発現する細胞が、膵内胚葉系譜に特有のマーカーを発現する細胞に分化し、
e.膵内胚葉系譜に特有のマーカーを発現する細胞が、膵内分泌系譜に特有のマーカーを発現する細胞に分化する。
【0081】
胚体内胚葉系譜に特有のマーカーは、SOX−17、GATA4、Hnf−3ベータ、GSC、Cer1、ノーダル(Nodal)、FGF8、ブラキュリ(brachyury)、ミックスライク(Mix-like)ホメオボックスタンパク質、FGF4 CD48、エオメソダーミン(eomesodermin)(EOMES)、DKK4、FGF17、GATA6、CXCR4、C−Kit、CD99、及びOTX2から成る群から選択される。本発明における使用に好適なのは、胚体内胚葉系譜に特有のマーカーを少なくとも1つ発現する細胞である。本発明の1つの態様において、胚体内胚葉系譜に特有のマーカーを発現する細胞は、原条前駆細胞である。別の態様において、胚体内胚葉系譜に特有のマーカーを発現する細胞は、中内胚葉細胞である。別の態様において、胚体内胚葉系譜に特有のマーカーを発現する細胞は、胚体内胚葉細胞である。
【0082】
膵内胚葉系譜に特有のマーカーは、Pdx1、HNF−1ベータ、PTF1a、HNF−6、HB9及びPROX1から成る群から選択される。本発明における使用に好適なのは、膵内胚葉系譜に特有のマーカーを少なくとも1つ発現する細胞である。本発明の1つの態様において、膵内胚葉系譜に特有のマーカーを発現する細胞は、膵内胚葉細胞である。
【0083】
膵内分泌系譜に特有のマーカーは、NGN−3、NeuroD、Islet−1、Pdx−1、NKX6.1、Pax−4、Ngn−3、及びPTF−1アルファから成る群から選択される。1つの実施形態において、膵内分泌細胞は、インスリン、グルカゴン、ソマトスタチン、及び膵ポリペプチドのホルモン群のうち少なくとも1つを発現することができる。本発明における使用に好適なのは、膵内分泌系譜に特有のマーカーのうち少なくとも1つを発現する細胞である。本発明の1つの態様において、膵内分泌系譜に特有のマーカーを発現する細胞は、膵内分泌細胞である。膵内分泌細胞は、膵臓ホルモン発現細胞であり得る。あるいは、膵内分泌細胞は、膵臓ホルモン分泌細胞であり得る。
【0084】
本発明の1つの態様において、膵内分泌細胞は、β細胞系譜に特有のマーカーを発現する細胞である。β細胞系譜に特有のマーカーを発現する細胞は、Pdx1と、NGN−3、Nkx2.2、Nkx6.1、NeuroD、Isl−1、HNF−3ベータ、MAFA、Pax4、及びPax6の転写因子のうち少なくとも1つと、を発現する。本発明の1つの態様では、β細胞系譜に特有のマーカーを発現する細胞は、β細胞である。
【0085】
例えば、多能性幹細胞は、ダムール(D’Amour)ら、Nature Biotechnology 24、1392〜1401(2006年)に開示されている方法に従って、膵内分泌系譜に特有のマーカーを発現する細胞に分化することができる。
【0086】
胚体内胚葉系譜に特有のマーカーを発現する細胞の形成:多能性幹細胞は、当該技術分野の任意の方法、又は本発明に提示されている任意の方法によって、胚体内胚葉系譜に特有のマーカーを発現する細胞に分化することができる。
【0087】
例えば、多能性幹細胞は、ダムール(D’Amour)ら、Nature Biotechnology 23、1534〜1541(2005年)に開示されている方法に従って、胚体内胚葉系譜に特有のマーカーを発現する細胞に分化することができる。
【0088】
例えば、多能性幹細胞は、シノザキ(Shinozaki)ら、Development 131、1651〜1662(2004年)に開示されている方法に従って、胚体内胚葉系譜に特有のマーカーを発現する細胞に分化することができる。
【0089】
例えば、多能性幹細胞は、マクレイン(McLean)ら、Stem Cells 25、29〜38(2007年)に開示されている方法に従って、胚体内胚葉系譜に特有のマーカーを発現する細胞に分化することができる。
【0090】
例えば、多能性幹細胞は、ダムール(D’Amour)ら、Nature Biotechnology 24、1392〜1401(2006年)に開示されている方法に従って、胚体内胚葉系譜に特有のマーカーを発現する細胞に分化することができる。
【0091】
例えば、多能性幹細胞は、血清が存在しない状態でアクチビンAを含む培地において多能性幹細胞を培養し、次にアクチビンA及び血清で培養し、次にアクチビンA及び別の濃度の血清で細胞を培養することにより、胚体内胚葉系譜に特有のマーカーを発現する細胞に分化することができる。この方法の一例が、Nature Biotechnology 23、1534〜1541(2005年)に開示されている。
【0092】
例えば、多能性幹細胞は、血清が存在しない状態でアクチビンAを含む培地において多能性幹細胞を培養し、次にアクチビンA及び別の濃度の血清で細胞を培養することにより、胚体内胚葉系譜に特有のマーカーを発現する細胞に分化することができる。この方法の一例が、ダムール(D’Amour)ら、Nature Biotechnology(2005年)に開示されている。
【0093】
例えば、多能性幹細胞は、血清が存在しない状態でアクチビンA及びWntリガンドを含む培地において多能性幹細胞を培養し、次にWntリガンドを除去し、アクチビンA及び血清で細胞を培養することにより、胚体内胚葉系譜に特有のマーカーを発現する細胞に分化することができる。この方法の一例が、Nature Biotechnology 24、1392〜1401(2006年)に開示されている。
【0094】
膵内胚葉系譜に特有のマーカーを発現する細胞の形成:胚体内胚葉系譜に特有のマーカーを発現する細胞は、当該技術分野の任意の方法、又は本発明に提示されている任意の方法によって、膵内胚葉系譜に特有のマーカーを発現する細胞に分化することができる。
【0095】
例えば、胚体内胚葉系譜に特有のマーカーを発現する細胞は、ダムール(D’Amour)ら、Nature Biotechnology 24、1392〜1401(2006年)に開示されている方法に従って、膵内胚葉系譜に特有のマーカーを発現する細胞に分化することができる。
【0096】
例えば、胚体内胚葉系譜に特有のマーカーを発現する細胞は更に、その胚体内胚葉系譜に特有のマーカーを発現する細胞を、線維芽細胞増殖因子及びヘッジホッグ信号経路阻害物質KAAD−シクロパミンで処理し、次に線維芽細胞増殖因子及びKAAD−シクロパミンを含む培地を除去し、次いでその細胞を、レチノイン酸、線維芽細胞増殖因子及びKAAD−シクロパミンを含む培地で培養することにより、膵内胚葉系譜に特有のマーカーを発現する細胞に分化することができる。この方法の一例が、Nature Biotechnology 24、1392〜1401(2006年)に開示されている。
【0097】
膵内分泌系譜に特有のマーカーを発現する細胞の形成:膵内胚葉系譜に特有のマーカーを発現する細胞は、当該技術分野の任意の方法、又は本発明に開示されている任意の方法によって、膵内分泌系譜に特有のマーカーを発現する細胞に分化することができる。
【0098】
例えば、膵内胚葉系譜に特有のマーカーを発現する細胞は、ダムール(D’Amour)ら、Nature Biotechnology 24、1392〜1401(2006年)に開示されている方法に従って、膵内分泌系譜に特有のマーカーを発現する細胞に分化することができる。
【0099】
例えば、膵内胚葉系譜に特有のマーカーを発現する細胞は更に、その膵内胚葉系譜に特有のマーカーを発現する細胞を、DAPT及びエキセンジン4を含む培地で培養し、次にDAPT及びエキセンジン4を含む培地を除去し、次いでその細胞を、エキセンジン1、IGF−1及びHGFを含む培地で培養することにより、膵内分泌系譜に特有のマーカーを発現する細胞に分化することができる。この方法の一例が、Nature Biotechnology 24、1392〜1401(2006年)に開示されている。
【0100】
例えば、膵内胚葉系譜に特有のマーカーを発現する細胞は更に、その膵内胚葉系譜に特有のマーカーを発現する細胞を、エキセンジン4を含む培地で培養し、次にエキセンジン4を含む培地を除去し、次いでその細胞を、エキセンジン4、IGF−1及びHGFを含む培地で培養することにより、膵内分泌系譜に特有のマーカーを発現する細胞に分化することができる。この方法の一例が、ダムール(D’Amour)ら、Nature Biotechnology(2006年)に開示されている。
【0101】
例えば、膵内胚葉系譜に特有のマーカーを発現する細胞は更に、その膵内胚葉系譜に特有のマーカーを発現する細胞を、DAPT及びエキセンジン4を含む培地で培養することにより、膵内分泌系譜に特有のマーカーを発現する細胞に分化することができる。この方法の一例が、ダムール(D’Amour)ら、Nature Biotechnology(2006年)に開示されている。
【0102】
例えば、膵内胚葉系譜に特有のマーカーを発現する細胞は更に、その膵内胚葉系譜に特有のマーカーを発現する細胞を、エキセンジン4を含む培地で培養することにより、膵内分泌系譜に特有のマーカーを発現する細胞に分化することができる。この方法の一例が、ダムール(D’Amour)ら、Nature Biotechnology(2006年)に開示されている。
【0103】
多能性幹細胞の単離、増殖及び培養
多能性幹細胞の特徴付け
多能性幹細胞は、1つ以上の段階特異性胚抗原(SSEA)3又は4、並びに指定された抗体Tra−1−60及びTra−1−81を使用して検出可能なマーカーを発現し得る(トムソン(Thomson)ら、Science 282:1145、1998年)。生体外での多能性幹細胞の分化は、SSEA−4、Tra−1−60、及びTra−1−81発現(存在する場合)の逸失、並びにSSEA−1の発現増加を引き起こす。未分化の多能性幹細胞は通常、アルカリホスファターゼ活性を有しており、これは、4%パラホルムアルデヒドで細胞を固定してから、メーカー(ベクター・ラボラトリーズ(Vector Laboratories)、カリフォルニア州バーリンゲーム)の記述に従い、ベクターレッド(Vector Red)を基質として成長させることにより、検出することができる。未分化の多能性幹細胞はまた、典型的にOct−4及びTERTを発現し、これはリアルタイムPCRで検出される。
【0104】
増殖した多能性幹細胞の別の好ましい表現型は、内胚葉、中胚葉、及び外胚葉組織の3つすべての胚葉の細胞に分化する可能性を有する。多能性幹細胞の多能性は、例えば、細胞を重症複合免疫不全(SCID)マウスに注入し、固定剤(例えば4%パラホルムアルデヒド)を用いて形成する奇形種を固定し、次にそれを組織学的に調べ、3つの胚葉に由来する細胞種の証拠を探すことによって、確認することができる。別の方法としては、胚様体を形成し、3つの胚葉に関連するマーカーの存在についてその胚様体を評価することにより、多能性を決定することができる。
【0105】
増殖した多能性幹細胞株は、標準G帯技法を用いて核型を決定し、対応する霊長類の公開されている核型と比較することができる。「通常の核型」を有する細胞、すなわち正倍数体であり、ヒト染色体がすべて存在し、明らかな改変がないような細胞を得ることが望ましい。
【0106】
多能性幹細胞の取得源
使用が可能な多能性幹細胞の種類には、妊娠後に形成された組織から誘導された多能性細胞の確立株が含まれ、その妊娠後に形成された組織としては、前胚組織(例えば胚盤胞)、胚組織、又は妊娠中任意の時に採取した胎児組織(典型的には妊娠約10〜12週以前であるが必ずしもその必要はない)が挙げられる。非制限的な例としては、ヒト胚幹細胞又はヒト胚生殖細胞の確立株であり、これは例えば、ヒト胚幹細胞株H1、H7、及びH9(ワイセル(WiCell))である。また想到されるのは、このような細胞の最初の確立又は安定化中に本開示の組成物を使用することであり、この場合、採取源細胞は、採取源組織から直接得られた初代多能性細胞となる。また好適なのは、フィーダー細胞の存在しない状態ですでに培養された多能性幹細胞集団から得られた細胞である。また好適なのは、突然変異体ヒト胚幹細胞株であり、例えばBG01v(ブレサジェン(BresaGen)、ジョージア州アセンズ)である。
【0107】
1つの実施形態において、ヒト胚幹細胞は、トムソン(Thomson)ら(米国特許第5,843,780号;Science 282:1145、1998年;Curr.Top.Dev.Biol.38:133 ff.、1998年;Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.92:7844、1995年)の記述に従って調製される。
【0108】
多能性幹細胞の培養
1つの実施形態において、多能性幹細胞は典型的に、さまざまな方法でその多能性幹細胞を担持するフィーダー細胞層上で培養される。別の方法としては、多能性幹細胞は、フィーダー細胞が実質的に含まれないにもかかわらず、実質的な分化を進行させずに多能性各細胞の増殖を担持するような培養系において、培養される。フィーダーを含まない培地中での、分化を伴わない多能性幹細胞増殖は、事前に他の細胞種で培養することによって条件付きにした培地を使用することによって担持される。別の方法としては、フィーダーを含まない培地中での、分化を伴わない多能性幹細胞増殖は、化学的に定義された培地を使用することにより担持される。
【0109】
例えば、ロイビノフ(Reubinoff)ら(Nature Biotechnology 18:399〜404(2000年))及びトンプソン(Thompson)ら(Science 1998年11月6日:Vol.282.no.5391、pp.1145〜1147)は、マウス胚線維芽細胞フィーダー細胞層を用いて、ヒト胚盤胞から得た多能性幹細胞株の培養を開示している。
【0110】
リチャーズ(Richards)ら(Stem Cells 21:546〜556、2003年)は、ヒト多能性幹細胞培養を担持する能力について、ヒト成人、胎児及び新生児のフィーダー細胞層11種類のパネルを評価した。リチャーズ(Richards)らは、「成人皮膚線維芽細胞フィーダーで培養されたヒト胚幹細胞株は、ヒト胚幹細胞の形態学的特徴を保持し、多能性を維持している」と述べている。
【0111】
米国特許第20020072117号は、フィーダーを含まない培養における初代多能性幹細胞の増殖を担持する培地を生成する細胞株について開示している。ここで使用された細胞株は、胚組織から得られ、又は胚幹細胞から分化した、間葉性及び線維芽細胞様の細胞株である。米国特許第20020072117号はまた、初代フィーダー細胞層としてのこの細胞株の使用についても開示している。
【0112】
別の例として、ワン(Wang)ら(Stem Cells 23:1221〜1227、2005年)は、ヒト胚幹細胞から誘導されたフィーダー細胞層上でのヒト多能性幹細胞の長期的な増殖に関する方法を開示している。
【0113】
別の例として、ストイコビッチ(Stojkovic)ら(Stem Cells 2005 23:306〜314、2005年)は、ヒト胚幹細胞の自発的分化から誘導されたフィーダー細胞系を開示している。
【0114】
更に別の例において、ミヤモト(Miyamoto)ら(Stem Cells 22:433〜440、2004年)はヒト胎盤から得られたフィーダー細胞の採取源を開示している。
【0115】
アミット(Amit)ら(Biol.Reprod 68:2150〜2156、2003年)は、ヒト包皮から誘導されたフィーダー細胞層を開示している。
【0116】
別の例として、イヌンザ(Inzunza)ら(Stem Cells 23:544〜549、2005年)は、ヒト出生直後の包皮線維芽細胞から得られたフィーダー細胞層を開示している。
【0117】
米国特許第6642048号は、フィーダーを含まない培養における初代多能性幹(pPS)細胞の増殖を担持する培地、及びそのような培地の生成に有用な細胞株を開示している。米国特許第6642048号は、「本発明には、胚組織から得られ、又は胚幹細胞から分化した、間葉性及び線維芽細胞様の細胞株が含まれる。このような細胞株の誘導、培地の処理、及び条件付き培地を使用した幹細胞の増殖の方法は、本開示に記述及び説明されている」と述べている。
【0118】
別の例として、WO2005014799号は、哺乳類細胞の維持、増殖及び分化のための条件付き培地を開示している。WO2005014799号は、「本発明に関連して生成される培養培地は、ハツカネズミ細胞、特に、MMH(Metハツカネズミ肝細胞)と呼ばれる分化かつ不死化した形質転換肝細胞の細胞分泌活動によって条件付けられる」と述べている。
【0119】
別の例において、シュ(Xu)ら(Stem Cells 22:972〜980、2004年)は、ヒトテロメラーゼ逆転写酵素を過剰発現するよう遺伝子組換えを行ったヒト胚幹細胞誘導体から得られた、条件付き培地を開示している。
【0120】
別の例において、米国特許第20070010011号は、多能性幹細胞の維持のために化学的に定義された培養培地を開示している。
【0121】
別の培養系では、胚幹細胞の増殖を促進することができる増殖因子を添加した、無血清培地を用いている。例えば、チェオン(Cheon)ら(BioReprod DOI:10.1095/biolreprod.105.046870、2005年10月19日)は、胚幹細胞の自己複製の引き金となることができるさまざまな増殖因子を添加した、条件なし血清代替(SR)培地に胚幹細胞を維持する、フィーダーを含まない無血清培養系を開示している。
【0122】
別の例において、レベンスタイン(Levenstein)ら(Stem Cells 24:568〜574、2006年)は、bFGFを添加した培地を用いて、線維芽細胞又は条件付き培地のない状態で、ヒト胚幹細胞を長期的に培養する方法を開示している。
【0123】
別の例において、米国特許第20050148070号は、血清なし、及び線維芽細胞フィーダー細胞なしの定義された培地においてヒト胚幹細胞を培養する方法を開示している。この方法は次のものを含む:アルブミン、アミノ酸、ビタミン、ミネラル、少なくとも1種のトランスフェリン又はトランスフェリン代替物、少なくとも1種のインスリン又はインスリン代替物を含有する培養培地であって、哺乳類胎児血清を本質的に含まず、線維芽細胞増殖因子信号受容体を活性化することができる線維芽細胞増殖因子100ng/mLを含む、培養培地内で幹細胞を培養し、ここでその増殖因子は線維芽細胞フィーダー層のみ以外の取得源から供給され、この培地は、フィーダー細胞又は条件付き培地を含まず、分化していない状態で幹細胞の増殖を担持する。
【0124】
別の例において、米国特許第20050233446号は、分化していない霊長類始原幹細胞を含む幹細胞の培養に有用な、定義された培地を開示している。この培地は溶液状態で、培養される幹細胞と比べて、実質的に等張性である。所与の培養において、特定の培地は、基本培地、及び、始原幹細胞の未分化増殖を実質的に担持するのに必要な、bFGF、インスリン、及びアスコルビン酸の所定量を含む。
【0125】
別の例において、米国特許第6800480号は、「1つの実施形態において、霊長類由来の始原幹細胞を実質的に未分化状態で増殖するための細胞培養培地が提供され、これには、霊長類由来の始原幹細胞の増殖を担持するのに効果的な、低浸透圧で内毒素の少ない基本培地が含まれる。この基本培地は、霊長類由来の始原幹細胞の増殖を担持するのに効果的な栄養豊富な血清と、フィーダー細胞及びフィーダー細胞から誘導された細胞外マトリックス構成成分から成る群から選択される基質とを合わせたものである。この培地は更に、非必須アミノ酸、抗酸化性物質、及びヌクレオシド類とピルビン酸塩から成る群から選択される第一増殖因子を含む」と述べている。
【0126】
別の例において、米国特許第20050244962号は、「1つの態様において、本発明は、霊長類胚幹細胞の培養の方法を提供する。哺乳類胎児血清を本質的に含まない(好ましくは、いかなる動物血清も本質的に含まない)培養において、及び線維芽細胞フィーダー層のみ以外の取得源から供給された線維芽細胞増殖因子の存在下で、この幹細胞が培養される。好ましい形態において、この線維芽細胞フィーダー層は、以前は幹細胞培養を維持するのに必要であったが、十分な線維芽細胞増殖因子の添加によりこれが不要になっている」と述べている。
【0127】
更なる例において、WO2005065354号は、本質的にフィーダーも血清も含まない、定義された等張性培養培地を開示しており、この培地は次のものを含む:a.基礎培地;b.本質的に未分化の哺乳類幹細胞の増殖を担持するのに十分な量のbFGF;c.本質的に未分化の哺乳類幹細胞の増殖を担持するのに十分な量のインスリン;及びd.本質的に未分化の哺乳類幹細胞の増殖を担持するのに十分な量のアスコルビン酸。
【0128】
別の例において、WO2005086845号は未分化の幹細胞の維持方法を開示しており、この方法は、望ましい結果を達成するために十分な時間、細胞を未分化の状態で維持するのに十分な量の、トランスフォーミング増殖因子−ベータ(TGFβ)タンパク質ファミリーのメンバー、線維芽細胞増殖因子(FGF)タンパク質ファミリーのメンバー、又はニコチンアミド(NIC)に、幹細胞を曝露させることを含む。
【0129】
多能性幹細胞は、好適な培養基質上に蒔かれることができる。1つの実施形態において、好適な培養基質は細胞外マトリックス構成成分であり、例えば、基底膜から誘導されるもの、又は接着分子受容体−リガンド結合の一部を構成することができるものがある。1つの実施形態において、好適な培養基質はマトリゲル(MATRIGEL)(登録商標)(ベクトン・ディッキンソン(Becton Dickenson))である。マトリゲル(登録商標)は、エンゲルブレスホルムスワム(Engelbreth-Holm-Swarm)腫瘍細胞から得られた可溶性精製物で、室温でゲル化し、再構築された基底膜を形成する。
【0130】
他の細胞外マトリックス構成成分及びその混合物が、代替物として好適である。これには、増殖させる細胞種によって、ラミニン、フィブロネクチン、ゼラチン、プロテオグリカン、エンタクチン、ヘパラン硫酸などが、単独又はさまざまな組み合わせとして含まれる。
【0131】
多能性幹細胞は、好適な分布で、また、細胞の生存、増殖、及び望ましい特性の保持を促進する培地の存在下で、基質上に蒔かれることができる。これらすべての特性は、播種分布に注意を払うことにより利益が得られ、これは当業者によって容易に決定され得る。
【0132】
好適な培地は、例えば次の構成成分から生成することができる:ダルベッコ(Dulbecco)改良型イーグル(Eagle)培地(DMEM)、ギブコ(Gibco)#11965−092;ノックアウトのダルベッコ(Dulbecco)改良型イーグル(Eagle)培地(KO DMEM)、ギブコ(Gibco)#10829−018;ハム(Ham)F12/50%DMEM基礎培地;200mM L−グルタミン、ギブコ(Gibco)#15039−027;非必須アミノ酸溶液、ギブコ(Gibco)11140−050;β−メルカプトエタノール、シグマ(Sigma)#M7522;ヒト遺伝子組換え塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)、ギブコ(Gibco)#13256−029。
【0133】
本発明は更に次の実施例により説明されるが、これらにより限定されるものではない。
【実施例】
【0134】
(実施例1)
ヒト膵細胞株の確立
膵臓の調製−臨床的移植に不適のヒト膵臓を、研究用途用の適切な合意の後、国立疾病研究互助組織(National Disease Research Interchange、ペンシルバニア州フィラデルフィア)から取得した。この膵臓を、臓器保存溶液から氷上のステンレススチール製皿に移し、余分の組織をすべて除去した。膵管に18ゲージのカテーテルを挿入し、ダルベッコ(Dulbecco)のリン酸緩衝生理食塩水(DPBS)に溶かした、リベラーゼ・ハイ(LIBERASE HI)(商標)酵素(ロシュ(Roche)−0.5mg/mL)及びDNase I(0.2mg/mL)を含む酵素溶液を、膵臓に注入した。
【0135】
急速な機械的分離とその次の酵素消化−酵素を染み込ませた膵臓を、組織プロセッサ内で、1回当たり3〜5秒間のパルスを3〜5回行い、均質化した。この分離した組織を、磁気攪拌子の入った500mLトリプシン処理フラスコ(ベルコ(Bellco))2本に移した。この後、酵素溶液50〜100mLを各フラスコに加えた。このフラスコを、浸漬可能な攪拌プレート上に乗せ、37℃の水浴内に置き、中程度の攪拌速度で10分間インキュベートした。攪拌を止め、微細な消化組織をフラスコから取り出して、DPBS、5%ウシ胎児血清(FBS)及び0.1mg/mL DNase I(DPBS+)の入った250mL試験管に移し、4℃にして消化プロセスを止めた。フラスコに50〜100mLの酵素溶液を再び満たし、水浴に戻して、更に10分間、攪拌を再開した。再び、フラスコを取り出して、微細な消化組織を回収し、氷上の250mL試験管に移した。このプロセスを膵臓が完全に消化されるまで、更に3〜5回繰り返した。
【0136】
同時酵素消化を伴う機械的勾配分離−Diabetes 37:413〜420(1988年)に記述されている方法に従い、酵素を染み込ませた膵臓を処理した。簡単に言うと、余分の組織をすべて除去し、上記のように酵素溶液を注入した。次に、この膵臓をビーズ入りリコーディチャンバー(Ricordi Chamber)に入れ、組織の大きな塊を保持するためにメッシュサイズ400〜600μmのスクリーンで覆った。チャンバーを覆い、酵素溶液を約37℃でチャンバー内に循環させ、このチャンバーを振盪して、ビーズが膵臓組織を破砕し、同時に酵素が膵臓を消化するようにした。適切な分離及び消化が達成された時点で、消化を止め、組織を採取した。
【0137】
組織分離−採取した組織を4℃で5分間、150×gで遠心分離にかけた。上澄みを吸引し、組織をDPBS+であと2回洗浄した。最後の洗浄後、精製のために、組織を不連続勾配に適用した。消化した組織をポリスクロース(メディアテック(Mediatech)、バージニア州)に、10mLのポリスクロース溶液当たり1〜2mLの組織ペレットの比率で入れて、密度1.108g/mLで懸濁させた。組織懸濁液を次に丸底のポリカーボネート製遠心管に移し、密度1.096及び1.037のポリスクロース溶液を注意して遠心管に適用した。最後にDMEMの層で、不連続精製勾配を完成した。勾配管を4℃で20分間、ブレーキを使用せずに2000rpmで遠心分離した。遠心分離の後、組織を各界面(3界面)から採取し、上記のようにDPBSで数回洗浄し、50mL試験管に回収した。
【0138】
更なる細胞塊の分離−所望により、上記のプロトコルを用いて得られた大きな細胞塊を更に分離し、より小さな塊又は単細胞の懸濁液にすることができる。最後の洗浄の後、各分画から得た組織を、200U/mL DNase Iを含む10mL 1Xトリプシン/EDTA溶液中に懸濁させた。試験管を水浴に入れ、ほぼ単細胞の懸濁液となるまで、10mL血清用ピペットで繰り返し吸い上げては戻すことを5〜6分間繰り返した。4℃のDPBS+を加えて消化を止め、この試験管を800rpmで5分間遠心分離にかけた。細胞懸濁液をDPBS+で洗浄し、下記のように培養した。
【0139】
膵臓細胞の培養−最後の洗浄の後、各界面から得た細胞を、DMEM、2%FBS、100U/μgペニシリン/ストレプトマイシン、ITS、2mM L−グルタミン、0.0165mM ZnSO4(シグマ(Sigma))、及び0.38μM 2−メルカプトエタノール(イントロビジェン(Invitrogen)、カリフォルニア州)中に再懸濁させた(以降、「選択された培地」と呼ぶ)。細胞懸濁液6mLをT−25組織培養フラスコに播種し、細胞懸濁液12mLをT−75フラスコに播種した。このフラスコを、5%COで37℃のインキュベーター内に置いた。2〜4週間の培養後、完全な培地交換を実施し、付着している細胞を、DMEM(2750mg/L D−グルコース、862mg/Lグルタミン)(ギブコ(Gibco)、カリフォルニア州)、5%FBS(ハイクローン(HyClone)、ユタ州)、1%P/S、0.0165mM ZnSO4の中での培養に戻す(以降、「増殖培地」と呼ぶ)。これを、コンフルエント近くに達するまで置き(この段階を「継代培養0」又は「P0」と呼ぶ)、この段階で細胞が継代された。続く細胞培養は、増殖培地で細胞5000個/cmであった。培養は、約70%〜90%コンフルエントで、7〜10日ごとに継代された。精製勾配の後に得られた3つの分画それぞれから、間質細胞が分離されたことが示された。
【0140】
(実施例2)
膵臓間質細胞の培養
実施例1に従って分離された膵臓細胞を、選択された培地において2〜4週間、低酸素条件(5%CO、3%O、及び92%N)又は正常酸素圧条件(5%CO、20%O、及び75%N)のいずれかで培養した。次に培養を増殖培地に切り替え、週に2〜3回栄養補給した。最初の培養期間後、低酸素条件及び正常酸素圧条件で培養されたプレートに、付着した細胞が観察された。更に、最初の培養2〜4週間が経過後、プレート上には膵島状又は膵管構造はほとんど残っていなかった。
【0141】
(実施例3)
フィーダー細胞層上で培養した多能性幹細胞における分化に関連する遺伝子の発現
ヒト胚幹細胞株H9は、ワイセル研究所(WiCell Research Institute, Inc)(ウィスコンシン州マディソン)から入手され、入手源から提供された説明に従って培養された。不活性化された初代マウス胚線維芽細胞(MEF)上に維持された未分化H9ヒト胚幹細胞を、60%FBS、20%DMSO、及び20%DMEM/F12(イントロビジェン(Invitrogen)/ギブコ(GIBCO))に、20%ノックアウト血清代替物、100nM MEM非必須アミノ酸、0.5mMベータメルカプトエタノール、2mM L−グルタミンと、4ng/mLヒト塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)(すべてイントロビジェン(Invitrogen)/ギブコ(GIBCO))を加えた中で、−1℃/分の速度で低温保存し、窒素蒸気中に保管した。この細胞を解凍し、ミトマイシン(mitocycin)c処理D551ヒト皮膚線維芽細胞を細胞数52,000個/cmの密度で播種した上に蒔いた。D551細胞上での3代継代培養後、多能性細胞を採取し、8ng/mL bFGFを添加した不活性化MEFの培養から、条件付き培地のマトリゲル(MATRIGEL)に移した。マトリゲル(1:30)上に適用されたヒト胚幹細胞を、60mm組織培養プレートに入れ、加湿組織培養インキュベーター内で、37℃、5%COの雰囲気中で培養した。コンフルエントに達したら(蒔いてから約5〜7日後)、ヒト胚幹細胞を、1mg/mLディスパーゼ(イントロビジェン(Invitrogen)/ギブコ(GIBCO))で25〜40分間処理した。細胞がプレートから遊離したら、2mLの血清用ピペットで繰り返しピペット操作を行い、望ましいコロニーサイズを達成した。細胞を1000rpmで5分間遠心分離にかけ、ペレットを再懸濁させ、マトリゲル(MATRIGEL)をコーティングした細胞培養プレート上の新しい培養培地内で、1:3〜1:4の細胞の比率で蒔いた。マトリゲル(MATRIGEL)上で5〜10回の継代培養後、多能性H9細胞を、数多くのさまざまなフィーダー細胞に移した。簡単に言うと、細胞は、ES細胞培地内のフィーダー上で培養され、このES細胞培地はDMEM/F12(イントロビジェン(Invitrogen)/ギブコ(GIBCO))に、20%ノックアウト血清代替物、100nM MEM非必須アミノ酸、0.5mMベータメルカプトエタノール、2mM L−グルタミンと、4ng/mLヒト塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)(すべてイントロビジェン(Invitrogen)/ギブコ(GIBCO))を加えたものから成り、これを組織培養処理された6ウェルプレート内に入れられた。プレートは、0.1%ゼラチン(シグマ(Sigma))でコーティングされ、37℃で最低4時間インキュベートしてから、フィーダーを播種することによって調製された。播種の直前に、ゼラチンを吸引し、6ウェルプレートの各ウェルにフィーダー細胞懸濁液を配分した。細胞を5日間増殖させてから、分化プロトコルを開始した。
【0142】
ヒト皮膚線維芽細胞株D551(ATCC No.CCL−110)、ヒト包皮線維芽細胞株Hs27(ATCC No.CRL−1634)、及びヒト膵臓由来間質細胞株(WO2006094286号に開示)の、多能性を維持する能力が評価された。D551ヒトフィーダー細胞が、EMEM(ATCC 30−2003)に10%FBSを添加した中で培養された。コンフルエントに達したら、細胞をミトマイシン−C処理によって不活性化し、EMEM、10%FBS、及び5%DMSO中で、−1℃/分の速度で低温保存し、窒素蒸気中に保管した。この細胞を37℃で解凍し、ゼラチンコーティングした組織培養プレートに、10%FBSを加えたEMEM中で、52,000/cmの割合で播種した。Hs27ヒトフィーダー細胞が、DMEM(ATCC 30−2002)に10%FBSを添加した中で培養された。コンフルエントに達したら、細胞をミトマイシン−C処理によって不活性化し、DMEM、10%FBS、及び5%DMSO中で、−1℃/分の速度で低温保存し、窒素蒸気中に保管した。この細胞を37℃で解凍し、ゼラチンコーティングした組織培養プレートに、10%FBSを加えたDMEM中で、55,000/cmの割合で播種した。ヒト膵臓由来間質細胞株が、コンフルエントに達するまでDMEM及び10%FBS中で培養され、ミトマイシン−C処理された。この細胞を90%FBS及び10%DMSO中で、−1℃/分の速度で低温保存し、窒素蒸気中に保管した。この細胞を37℃で解凍し、ゼラチンコーティングした組織培養プレートに、10%FBSを加えたDMEM中で、43,000/cmの割合で播種した。市販のマウス胚線維芽細胞(MEFSM)、及び新たに誘導されたマウス胚線維芽細胞(MEF)上に蒔かれたヒト胚幹細胞の培養物が、対照標準として含められた。
【0143】
不活性化ヒトフィーダー細胞のプレートをPBSで洗浄し、胚幹細胞をES培地に播種した。胚幹細胞をヒトフィーダー細胞層上で5日間培養した。この後、マウス胚線維芽細胞(MEF、図1)、市販のマウス胚線維芽細胞(MEF−SM、図1)、ヒト皮膚線維芽細胞(D551、図1)、ヒト包皮線維芽細胞(Hs27、図1)及びWO2006094286号に開示されているヒト膵臓由来間質細胞株(HP、図1)の上で培養されたヒト胚幹細胞のCXCR4、Sox−17、Fox−A2、HNF−4a、HNF−6及びAFPの発現が、リアルタイムPCRにより測定された。代表的な実験結果を図1に示す。結果は、マトリゲル(MATRIGEL)(Off MG、図1)上でのヒト胚幹細胞に対して正規化された。CXCR4、Sox−17、Fox−A2、HNF−4a、HNF−6及びAFPは、分化に関連するマーカーである。ヒトフィーダー細胞層上でのヒト胚幹細胞の培養は、これらのマーカー発現の低下をもたらした。これらのデータから、ヒト皮膚線維芽細胞株D551、ヒト包皮線維芽細胞Hs27、及びWO2006094286号に開示されたヒト膵臓由来間質細胞株は、ヒト胚幹細胞の多能性を維持したことが示されている。
【0144】
(実施例4)
ヒトフィーダー細胞層上で、膵内分泌系譜に特有のマーカーを発現する細胞への、ヒト胚幹細胞の分化
ヒト胚幹細胞株H1及びH9は、ワイセル研究所(WiCell Research Institute, Inc)(ウィスコンシン州マディソン)から入手され、入手源から提供された説明に従って培養された。不活性化された初代マウス胚線維芽細胞(MEF)上に維持された未分化H1&H9ヒト胚幹細胞を、60%FBS、20%DMSO、及び20%DMEM/F12(イントロビジェン(Invitrogen)/ギブコ(GIBCO))に、20%ノックアウト血清代替物、100nM MEM非必須アミノ酸、0.5mMベータメルカプトエタノール、2mM L−グルタミンと、4ng/mLヒト塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)(すべてイントロビジェン(Invitrogen)/ギブコ(GIBCO))を加えた中で、−1℃/分の速度で低温保存し、窒素蒸気中に保管した。この細胞を解凍し、ミトマイシン(mitocycin)C処理D551ヒト皮膚線維芽細胞を細胞数52,000個/cmの密度で播種した上に蒔いた。D551細胞上での3代継代培養後、多能性細胞を採取し、8ng/mL bFGFを添加した不活性化MEFの培養から、条件付き培地のマトリゲル(MATRIGEL)に移した。マトリゲル(1:30)上に蒔かれたヒト胚幹細胞を、60mm組織培養プレートに入れ、加湿組織培養インキュベーター内で、37℃、5%COの雰囲気中で培養した。コンフルエントに達したら(蒔いてから約5〜7日後)、ヒト胚幹細胞を、1mg/mLディスパーゼ(イントロビジェン(Invitrogen)/ギブコ(GIBCO))で25〜40分間処理した。細胞がプレートから遊離したら、2mLの血清用ピペットで繰り返しピペット操作を行い、望ましいコロニーサイズを達成した。細胞を1000rpmで5分間遠心分離にかけ、ペレットを再懸濁させ、マトリゲル(MATRIGEL)をコーティングした細胞培養プレート上の新しい培養培地内で、1:3〜1:4の細胞の比率で蒔いた。マトリゲル(MATRIGEL)上で11回の継代培養後、多能性H1&H9細胞を、下記のように数多くのさまざまなフィーダー細胞に移した。簡単に言うと、細胞は、ES細胞培地内のフィーダー上で培養され、このES細胞培地はDMEM/F12(イントロビジェン(Invitrogen)/ギブコ(GIBCO))に、20%ノックアウト血清代替物、100nM MEM非必須アミノ酸、0.5mMベータメルカプトエタノール、2mM L−グルタミンと、4ng/mLヒト塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)(すべてイントロビジェン(Invitrogen)/ギブコ(GIBCO))を加えたものから成り、これを組織培養処理された6ウェルプレート内に入れられた。プレートは、0.1%ゼラチン(シグマ(Sigma))でコーティングされ、37℃で最低4時間インキュベートしてから、フィーダーを播種することによって調製された。播種の直前に、ゼラチンを吸引し、6ウェルプレートの各ウェルにフィーダー細胞懸濁液を配分した。細胞を5日間増殖させてから、分化プロトコルを開始した。
【0145】
ヒトフィーダー細胞層がヒト胚幹細胞の分化を担持する能力が評価された。胚幹細胞を、ミトマイシンC不活性化ヒトフィーダー細胞層上で5日間培養した。市販のマウス胚線維芽細胞(MEF−SM)、及び新たに誘導されたマウス胚線維芽細胞(MEF)上に蒔かれたヒト胚幹細胞の培養物が、対照標準として含められた。
【0146】
ヒト胚幹細胞株H9(図2)及びH1(図5)の細胞集団の、胚体内胚葉系譜に特有のマーカーを発現する細胞への分化を、ヒト皮膚線維芽細胞(D551、図2及び5)、ヒト包皮線維芽細胞(HS27、図2及び5)、並びにWO2006094286号で開示されているヒト膵臓由来間質細胞株(HP、図2及び5)が担持する能力が、評価された。市販のマウス胚線維芽細胞(MEF−SM、図2及び5)並びに新たに誘導されたマウス胚線維芽細胞(MEF、図2及び5)の上で培養された胚幹細胞集団が、対照標準として含められた。アクチビンA(100ng/mL)が、フィーダー細胞層上で培養されたヒト胚幹細胞集団に添加された。細胞は、アクチビンAの存在下で継続的に培養され、3日後に採取された。胚体内胚葉に特有のマーカーを発現するレベルが、リアルタイムPCRによって解析された(図2及び5)。図2及び5に示す結果は、分化プロトコル開始前の細胞(D0)に正規化されている。
【0147】
アクチビンAは、マウス胚線維芽細胞及びヒトフィーダー細胞層上で培養された細胞において、CXCR4、Sox−17及びFox−A2の発現の増加を引き起こした。これらのデータから、ヒトフィーダー細胞層は、ヒト胚幹細胞が、胚体内胚葉系譜に特有のマーカーを発現する細胞に分化するのを担持できることが示唆されている。
【0148】
ヒト胚幹細胞株H9(図3)及びH1(図6)の細胞集団から誘導され、胚体内胚葉系譜に特有のマーカーを発現する細胞集団の、膵内胚葉系譜に特有のマーカーを発現する細胞への分化を、ヒト皮膚線維芽細胞(D551、図3及び6)、ヒト包皮線維芽細胞(HS27、図3及び6)、並びにWO2006094286号で開示されているヒト膵臓由来間質細胞株(HP、図3及び6)が担持する能力が、評価された。市販のマウス胚線維芽細胞(MEF−SM、図3及び6)並びに新たに誘導されたマウス胚線維芽細胞(MEF、図3及び6)の上で培養された胚幹細胞集団が、対照標準として含められた。フィーダー細胞層上で培養されたヒト胚幹細胞から誘導された胚体内胚葉に特有のマーカーを発現する細胞集団に対し、1μMレチノイン酸、0.25uM KAAD−シクロパミン及びFGF−10(50ng/mL)が添加された。細胞は8日後に採取された。膵内胚葉系譜に特有のマーカーを発現するレベルが、リアルタイムPCRによって解析された(図3及び6)。図3及び6に示されている結果は、D0遺伝子発現に対して正規化されている。
【0149】
レチノール酸0.25μM KAADシクロパミン、及びFGF−10の処理により、マウス胚線維芽細胞上、及びヒトフィーダー細胞層上で培養された細胞において、Fox−A2、HNF−4a、HNF−6及びPDX−1の発現の増加が引き起こされた。これらのデータから、ヒトフィーダー細胞層は、ヒト胚幹細胞株H9(図3)及びH1(図6)の細胞集団から、膵内胚葉系譜に特有のマーカーを発現する細胞へと誘導された、膵内胚葉系譜に特有のマーカーを発現する細胞の分化を、担持できることが示されている。
【0150】
ヒト胚幹細胞株H9(図4)及びH1(図7)の細胞集団から誘導され、膵内胚葉系譜に特有のマーカーを発現する細胞集団の、膵内分泌系譜に特有のマーカーを発現する細胞への分化を、ヒト皮膚線維芽細胞(D551、図4及び7)、ヒト包皮線維芽細胞(HS27、図4及び7)、並びにWO2006094286号で開示されているヒト膵臓由来間質細胞株(HP、図4及び7)が担持する能力が、評価された。市販のマウス胚線維芽細胞(MEF−SM、図4及び7)並びに新たに誘導されたマウス胚線維芽細胞(MEF、図4及び7)の上で培養された胚幹細胞集団が、対照標準として含められた。γ−セクレターゼ阻害剤DAPT(1μM)、エキセンジン−4、IGF−1及びHGF(すべて50ng/mL)を、フィーダー細胞層上で培養されたヒト胚幹細胞から誘導された、膵内胚葉系譜に特有のマーカーを発現する細胞集団に加えた。9日間の培養後、膵内分泌細胞に特有のマーカー発現のレベルが、リアルタイムPCRで解析された(図4及び7)。図4及び7に示されている結果は、D0遺伝子発現に対して正規化されている。
【0151】
γ−セクレターゼ阻害剤、エキセンジン−4、IGF−1及びHGFの処理により、マウス胚線維芽細胞上、及びヒトフィーダー細胞層上で培養された細胞において、Fox−A2、HNF−4a、HNF−6、neuro−D1、Nkx2.2、Pax−4、Nkx6.1、PDX−1、グルカゴン、及びインスリンの発現の増加が引き起こされた。これらのデータから、ヒトフィーダー細胞層は、ヒト胚幹細胞株H9(図3)及びH1(図6)の細胞集団から、膵内胚葉系譜に特有のマーカーを発現する細胞へと誘導された、膵内分泌系譜に特有のマーカーを発現する細胞の分化を、担持できることが示されている。インスリン及びグルカゴンの発現は、マウスフィーダー細胞層上よりも、ヒトフィーダー細胞層上で培養された細胞の方が高かった。これらのデータから、ヒトフィーダー細胞層は、ヒト胚幹細胞分化を担持する能力がより高いことが示されている。
【0152】
本明細書全体にわたって引用されている文献は、参照により全体が本明細書に組み込まれる。本発明のさまざまな態様が、例及び好ましい実施形態に対して参照により上記に説明されているが、本発明の権利範囲は前述の説明によって定義されるものではなく、特許法の原則のもとに適切に解釈される下記の特許請求の範囲によって定義されるものであることが理解されるであろう。
【0153】
〔実施態様〕
(1) a.多能性幹細胞を培養する工程と、
b.該多能性幹細胞を、ヒトフィーダー細胞層上に蒔く工程と、
c.該多能性幹細胞の分化を促進する少なくとも1つの因子で、該多能性幹細胞を処理する工程と、を含む、多能性幹細胞を分化させる方法。
(2) 前記ヒトフィーダー細胞層が、皮膚線維芽細胞を含む、実施態様1に記載の方法。
(3) 前記ヒトフィーダー細胞層が、包皮線維芽細胞を含む、実施態様1に記載の方法。
(4) 前記ヒトフィーダー細胞層が、膵臓由来間質細胞を含む、実施態様1に記載の方法。
(5) 前記多能性幹細胞が、胚幹細胞である、実施態様1に記載の方法。
(6) 前記胚幹細胞が、ヒト胚幹細胞である、実施態様5に記載の方法。
(7) 前記膵臓由来間質細胞が、NCAM、ABCG2、サイトケラチン7、サイトケラチン8、サイトケラチン18、及びサイトケラチン19からなる群から選択される少なくとも1つのタンパク質マーカーの発現において実質的に陰性である、実施態様4に記載の方法。
(8) 前記膵臓由来間質細胞が、CD44、CD73、CD90及びCD105からなる群から選択される少なくとも1つのタンパク質マーカーの発現において実質的に陽性である、実施態様4に記載の方法。
(9) 前記多能性幹細胞が、胚体内胚葉系譜に特有のマーカーを発現する細胞に分化する、実施態様1に記載の方法。
(10) 前記多能性幹細胞が、膵内胚葉系譜に特有のマーカーを発現する細胞に分化する、実施態様1に記載の方法。
【0154】
(11) 前記多能性幹細胞が、膵内分泌系譜に特有のマーカーを発現する細胞に分化する、実施態様1に記載の方法。
(12) 前記多能性幹細胞を培養する前記工程が、細胞外マトリックス上で達成される、実施態様1に記載の方法。
(13) 前記多能性幹細胞を培養する前記工程が、ヒトフィーダー細胞層上で達成される、実施態様1に記載の方法。
(14) a.多能性幹細胞を培養する工程と、
b.該多能性幹細胞を、ヒトフィーダー細胞層上に蒔く工程と、
c.該多能性幹細胞の分化を促進する少なくとも1つの因子で、該多能性幹細胞を処理する工程と、
d.該多能性幹細胞の分化を促進する少なくとも1つの因子で処理した多能性幹細胞を、糖尿病を有するヒトの患者に移植する工程と、を含む、糖尿病を治療する方法。
(15) 前記多能性幹細胞の前記分化を促進する少なくとも1つの因子で該多能性幹細胞を処理する前記工程が、該多能性幹細胞を膵内分泌系譜の細胞へと分化させる、実施態様14に記載の方法。
(16) 前記多能性幹細胞の前記分化が、2つ又はそれ以上の工程で達成され、各工程において、胚体内胚葉系譜、膵内胚葉系譜、及び膵内分泌系譜のうち1つ以上への細胞の分化を促進する少なくとも1つの因子によって細胞を処理することが必要である、実施態様15に記載の方法。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a.多能性幹細胞を培養する工程と、
b.該多能性幹細胞を、ヒトフィーダー細胞層上に蒔く工程と、
c.該多能性幹細胞の分化を促進する少なくとも1つの因子で、該多能性幹細胞を処理する工程と、を含む、多能性幹細胞を分化させる方法。
【請求項2】
前記ヒトフィーダー細胞層が、皮膚線維芽細胞を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ヒトフィーダー細胞層が、包皮線維芽細胞を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記ヒトフィーダー細胞層が、膵臓由来間質細胞を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記多能性幹細胞が、胚幹細胞である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記胚幹細胞が、ヒト胚幹細胞である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記膵臓由来間質細胞が、NCAM、ABCG2、サイトケラチン7、サイトケラチン8、サイトケラチン18、及びサイトケラチン19からなる群から選択される少なくとも1つのタンパク質マーカーの発現において実質的に陰性である、請求項4に記載の方法。
【請求項8】
前記膵臓由来間質細胞が、CD44、CD73、CD90及びCD105からなる群から選択される少なくとも1つのタンパク質マーカーの発現において実質的に陽性である、請求項4に記載の方法。
【請求項9】
前記多能性幹細胞が、胚体内胚葉系譜に特有のマーカーを発現する細胞に分化する、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記多能性幹細胞が、膵内胚葉系譜に特有のマーカーを発現する細胞に分化する、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記多能性幹細胞が、膵内分泌系譜に特有のマーカーを発現する細胞に分化する、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記多能性幹細胞を培養する前記工程が、細胞外マトリックス上で達成される、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記多能性幹細胞を培養する前記工程が、ヒトフィーダー細胞層上で達成される、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
a.多能性幹細胞を培養する工程と、
b.該多能性幹細胞を、ヒトフィーダー細胞層上に蒔く工程と、
c.該多能性幹細胞の分化を促進する少なくとも1つの因子で、該多能性幹細胞を処理する工程と、
d.該多能性幹細胞の分化を促進する少なくとも1つの因子で処理した多能性幹細胞を、糖尿病を有するヒトの患者に移植する工程と、を含む、糖尿病を治療する方法。
【請求項15】
前記多能性幹細胞の前記分化を促進する少なくとも1つの因子で該多能性幹細胞を処理する前記工程が、該多能性幹細胞を膵内分泌系譜の細胞へと分化させる、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記多能性幹細胞の前記分化が、2つ又はそれ以上の工程で達成され、各工程において、胚体内胚葉系譜、膵内胚葉系譜、及び膵内分泌系譜のうち1つ以上への細胞の分化を促進する少なくとも1つの因子によって細胞を処理することが必要である、請求項15に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2010−535035(P2010−535035A)
【公表日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−520192(P2010−520192)
【出願日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際出願番号】PCT/US2008/071775
【国際公開番号】WO2009/048675
【国際公開日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【出願人】(596159500)ライフスキャン・インコーポレイテッド (100)
【氏名又は名称原語表記】Lifescan,Inc.
【住所又は居所原語表記】1000 Gibraltar Drive,Milpitas,California 95035,United States of America
【Fターム(参考)】