説明

ヒトヘルペスウイルスによって引き起こされる感染症および疾病の治療および/または予防に治療上有用な化合物を同定する方法

ヒトヘルペスウイルスの垂直母子伝播経路が見出され、これにより、ヒトヘルペスウイルスによって引き起こされる感染症および疾病の治療および/または予防に有用な可能性のある化合物を同定するのに有用な動物モデルの開発が可能となった。このような化合物を同定する方法は、供試化合物を投与する前または投与した後に、非ヒト雌動物にヒトヘルペスウイルスを試験的に感染させること、その雌を同種の雄と交配させること、および後代においてヒトヘルペスウイルスの有無を分析し、かつ/または後代もしくは母親に対する前記化合物の作用を判定することを含む。あるいは、供試化合物を、母親に代えてヒトヘルペスウイルスを保有する子孫に投与し、その動物に対する作用を分析することもできる。

【発明の詳細な説明】
【発明の背景】
【0001】
発明の分野
本発明は、ヒトヘルペスウイルスによって引き起こされる感染症および疾病を予防および/または治療するのに有用である可能性のある化合物を同定する方法であって、その動物モデルにおけるヒトヘルペスウイルスの垂直伝播から開発された動物モデルの使用を含んでなる方法に関する。
【0002】
発明の背景
ヘルペスウイルスはヘルペスウイルス科(Herpesviridae)に属するものである。これらのウイルスは大型で、約80〜250キロベース(kb)の二本鎖DNA(dsDNA)ゲノムを有し、広範囲の宿主系に見られる。ヒトを含む様々な動物種から約100種のヘルペスウイルスが単離されている。
【0003】
これまでに、1型単純ヘルペスウイルス(HSV−1)、2型単純ヘルペスウイルス(HSV−2)、水痘−帯状疱疹ウイルス(VZV)、サイトメガロウイルス(CMV)、ヒトヘルペスウイルス6(HHV−6)、ヒトヘルペスウイルス7(HHV−7)、エプスタイン−バーウイルス(EBV)およびカポジヘルペスウイルス(HHV−8)の8種類のヒトヘルペスウイルスが報告されている。これらのヒトヘルペスウイルスはさらに様々な亜科に分類されている。αヒトヘルペスウイルス亜科に属するもの(HSV−1、HSV−2およびVZV)は神経向性があるが、γヒトヘルペスウイルス亜科(EBVおよびHHV−8)はリンパ向性がある。CMV、HHV−6およびHHV−7はβヒトヘルペスウイルス亜科に属する。前記ヒトヘルペスウイルスのそれぞれがヒトの疾病、例えば、口唇ヘルペスおよび陰部ヘルペス(HSV−1およびHSV−2)、水痘(VZV)、感染性単球増加症および鼻咽頭癌腫(EBV)、肺炎および網膜炎(CMV)、突発性発疹(HHV−6およびHHV−7)ならびにカポジ肉腫(HHV−8)に関連する。
【0004】
小児期に起こることの多い一次感染の後、ヘルペスウイルスは感染個体の特定の宿主細胞内で潜伏状態となり、その個体に終生留まり、場合によっては二次感染が起こることがある。ヘルペスウイルスの一次感染は、二次感染または再発とはその臨床症状が異なる場合が多い。ヘルペスウイルスの一次感染と再発感染はいずれも中枢神経系(CNS)に感染し、いつでも疾病を招き得る。実際、世界の成人の約90%に感染している神経向性ウイルスHSV−1は、重度のヒト脳炎、アルツハイマー病、ボクサー痴呆、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)関連の痴呆および脳性麻痺などの種々の神経疾患および神経病理学的疾患を伴う新生児、小児および成人の神経組織に感染している最も多いウイルスである。一次感染後、HSV−1は逆軸索輸送によってCNSに到達し、潜伏状態となる。その後、このウイルスは種々の刺激に応答して再び活性化される場合があり、順行性輸送により一次感染領域に到達し、再発性の皮膚粘膜病巣を生じる。
【0005】
ヒトヘルペスウイルスによって引き起こされる臨床徴候には悪性でないものもあるが、脳炎や新生児の全身感染など、その個体の生命を損なう恐れのある病態もある。実際、HSV−1やVZVによって引き起こされる脳炎が広く報告されており、その年間罹患率は100万人のうち約1〜4例である。適切な治療法がないことから、死に至ったり、重度の後遺症が残ったりすることもある。他方、ヒトヘルペスウイルスによって引き起こされる新生児脳炎は、通常周産期HSV−2感染の結果として起こる大病である。3ヶ月齢を過ぎた免疫力の弱い患者では、髄膜炎、髄膜脳炎および脊髄炎にHSV−2を伴っていることが多い。
【0006】
ヒトヘルペスウイルスによって引き起こされる感染症の治療は、通常、アシクロビル、シドフォビル、ファムシクロビル、ガンシクロビル、ペンシクロビル、バラシクロビルまたはフォスカルネットなどの抗ウイルス薬を用いて行われ、アシクロビルはヒト全身性ヘルペスウイルス感染の予防および治療において選択される薬物である。しかしながらやはり、これらの薬剤は一般に相対的に生物学的利用能が低く、潜在的に毒性を有する。
【0007】
ヒトヘルペスウイルスによって引き起こされる感染症および疾病を予防および治療するための抗ウイルス薬はあるものの、前記ウイルスによって引き起こされる感染症の治療および/または予防に有用な新たな化合物を見出す必要がなお存在する。こうしたことから、ヒトヘルペスウイルス関連の研究において使用可能な動物モデルは、ヒトヘルペスウイルスによって引き起こされる感染症および疾病の治療および/または予防に有用な可能性のある化合物を評価するのに価値あるツールとなる。
【発明の概要】
【0008】
ヒトヘルペスウイルスの新規な感染経路が見出され、これにより、治療用として可能性のある化合物、特に、ヒトヘルペスウイルスによって引き起こされる感染症および疾病の予防および/または治療において有用である可能性のある化合物を同定するのに有用な動物モデルの開発が可能となった。詳細には、予防用または治療用として可能性のある化合物の同定を目的として化合物を試験するのに有用な動物モデルは、新規な垂直母子伝播経路に基づいて開発されたものである。このモデルは、供試化合物を投与する前または投与した後に、非ヒト雌動物にヒトヘルペスウイルスを試験的に感染させること、その雌を同種の雄と交配させること、およびその後代においてヒトヘルペスウイルスの有無を分析し、かつ/または後代または母親(ヒトヘルペスウイルスに感染させた非ヒト雌動物)に対する前記化合物の作用を判定することを含む。あるいは、供試化合物を、母親に代えてヒトヘルペスウイルスを保有する子孫に投与することもでき、このような動物に対する作用を分析することができる。
【0009】
本発明によって提供されるもののような方法によれば、(i)母から後代へのウイルスの垂直伝播を予防するのに有用である可能性があり、ワクチンまたは抗ウイルス薬として使用できる化合物を同定することが可能になるとともに、(ii)ヒトヘルペスウイルスによって引き起こされる感染症および疾病の治療または予防に、および/またはこのような疾病に伴う臨床症状の治療に有用である可能性があり、例えば、抗ウイルス薬、神経保護薬、抗神経変性薬などとして使用可能な化合物を評価することも可能となる。
【0010】
ヒトヘルペスウイルスの垂直母子伝播の発見に基づいて本発明で開発された動物モデルによれば、ヒトヘルペスウイルスによって引き起こされる感染症、特に数種のヒトヘルペスウイルスの神経向性を一貫して再現性よく複製することができ、ヒトヘルペスウイルスによって引き起こされる感染症および疾病を治療および/または予防するための治療薬となり得る化合物を試験するために使用できる。
【0011】
よって、一つの態様において、本発明は治療用として可能性のある化合物を同定する方法に関し、該方法は、供試化合物を投与する前または投与した後に、非ヒト雌動物にヒトヘルペスウイルスを試験的に感染させること、その雌を同種の雄と交配させること、およびその後代においてヒトヘルペスウイルスの有無を分析し、かつ/または後代および/または母親に対するそれら化合物の作用を判定することを含んでなる。
【0012】
他の態様において、本発明は治療用として可能性のある化合物を同定する別法に関し、該方法は、非ヒト雌動物にヒトヘルペスウイルスを試験的に感染させること、その雌を同種の雄と交配させること、ヒトヘルペスウイルスを保有する子孫を選抜すること、前記子孫に供試化合物を投与すること、およびヒトヘルペスウイルスを保有する前記子孫に対して供試化合物によって引き起こされる作用を判定することを含んでなる。
【0013】
他の態様において、本発明は、非ヒト雌動物にヒトヘルペスウイルスを感染させること、その雌を同種の雄と交配させること、およびヒトヘルペスウイルスを保有する子孫を選抜することを含む、ヒトヘルペスウイルスを保有する非ヒト動物を作出する方法に関し、この方法は本発明の別の態様となる。
【発明の具体的説明】
【0014】
本特許出願の発明の対象を理解する助けとするため、本発明について用いるいくつかの用語および表現の意味を以下に記載する。
【0015】
「非ヒト動物」とは、ヒトヘルペスウイルスに感染感受性のある任意の非ヒト動物種を意味し、野生型(wt)のものおよび遺伝子操作型のものの双方、例えば「wt」の遺伝子型または表現型の改変をもたらす突然変異(欠失、挿入または変更)を組み込むように遺伝子操作されたもの、例えばトランスジェニック非ヒト動物、または例えばAPP遺伝子、APOE遺伝子などの遺伝子において突然変異型/欠損型(KO)である非ヒト動物を意味する。前記非ヒト動物は、例えば、魚類、齧歯類、霊長類、ブタなどの非ヒト哺乳類、好ましくは齧歯類、例えば、マウス、ラット、モルモットなどであってよく、特定の実施態様では、使用されるヒトヘルペスウイルスに感染感受性の非ヒト動物は、雌のマウスまたは魚類である。
【0016】
「ヒトヘルペスウイルス」としては、任意のヒトヘルペスウイルス、例えば、HSV−1、HSV−2、VZV、CMV、EBV、HHV−6、HHV−7またはHHV−8およびその混合物が挙げられ、この用語は野生型(wt)ウイルスおよび遺伝子操作型ウイルスを含み、例示すれば、前記ウイルスは、それらの遺伝子のいくつかを欠失するように、またはマーカー、例えば、β−ガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼ、アルカリ性ホスファターゼ、緑色蛍光タンパク質(GFP)、青色蛍光タンパク質(CFP)、赤色蛍光タンパク質(RFP)、黄色蛍光タンパク質(YFP)などの蛍光マーカータンパク質などを組み込むように遺伝子操作されたヒトヘルペスウイルスであり、本発明は、1種類のヒトヘルペスウイルスまたは2種類以上の異なるヒトヘルペスウイルスの混合物に試験的に感染させることによって実施することができる。
【0017】
「治療用として可能性のある化合物」とは、ヒトヘルペスウイルスに試験的に感染させた非ヒト雌動物に対する、またはその後代(子孫)に対する作用、ならびにウイルス存在量に対する作用、例えば、ヒトヘルペスウイルスの垂直母子伝播を予防し、かつ/または試験的に感染させた前記雌またはその後代または後続の世代におけるヒトヘルペスウイルスの存在を少なくする、または排除する作用を持ち得る、あるいは例えばそれらの生存力、それらの挙動、目的の器官における改変、細胞遺伝学的変化または神経病理学的変化に対する結果をもたらし得る化合物を意味する。
【0018】
前記化合物は、例えば、単離されたもの、または1以上の異なる化合物との混合物としての、化学化合物、生体化合物、微生物化合物など、いずれの性質の化合物であってもよく、組成や構造が既知または未知の化合物、既知の治療用途を有する医薬品、生体産物、微生物産物など、例えば、有機または無機化学化合物、ペプチド、タンパク質、核酸、抽出物などを含む。
【0019】
ウイルスの存在量は、本発明による方法の工程d)に関して定義されているいずれかの方法など、常法により測定することができる(下記参照)。例示すれば、ある化合物を「治療用として可能性がある」とするためには、その化合物は、(i)ヒトヘルペスウイルスの垂直母子伝播を防がなければならず(これはヒトヘルペスウイルスに試験的に感染させた雌の後代においてヒトヘルペスウイルスの有無を判定することによって容易に評価することができる)、(ii)試験的に感染させた雌またはヒトヘルペスウイルスを保有するその雌の後代の子孫のウイルス存在量を、供試化合物の投与直前の母親またはその子孫のウイルス存在量に対して少なくとも5%、例えば、供試化合物の投与直前の母親またはその子孫のウイルス存在量に対して少なくとも10%、または少なくとも20%、または少なくとも30%、または少なくとも40%、または少なくとも50%、または少なくとも60%、または少なくとも70%、または少なくとも80%、または少なくとも90%、または少なくとも95%低減させなければならず、かつ/または(iii)試験的に感染させた雌における、またはその雌の後代における、または後続の世代における、例えば、それらの生存力、それらの挙動、目的の器官における改変、細胞遺伝学的変化または神経病理学的変化に対するヒトヘルペスウイルスの結果を回避する、少なくするまたは最小限としなければならない。
【0020】
本発明は、ヒトヘルペスウイルスが母から子へ垂直伝播し得るという発見に基づくものである。よって、ヒトヘルペスウイルスに試験的に感染させ、試験的感染の前または後に治療用として可能性のある化合物を投与した母親の後代、またはその母親自体を分析することにより、ヒトヘルペスウイルスによって引き起こされる感染症および疾病を予防および/または治療する上での前記化合物の治療的使用の可能性を評価することができる。また、前記供試化合物を予め投与していない、ヒトヘルペスウイルスに試験的に感染させた母親の子孫に対して治療用として可能性のある化合物を投与することにより、ヒトヘルペスウイルスによって引き起こされる感染症および疾病を予防および/または治療する上でのその供試化合物の治療的使用の可能性を評価することもできる。
【0021】
従って、一つの態様において、本発明は、治療用として可能性のある化合物を同定する方法(以下「本発明による方法」)に関し、その方法は、
a)非ヒト雌動物にヒトヘルペスウイルスを感染させる工程、
b)治療用として可能性のある供試化合物を前記非ヒト雌動物に投与する工程、
c)ヒトヘルペスウイルスに感染させた前記非ヒト雌動物を、この雌と同種に属する非ヒト雄動物と交配させる工程、および
d)ヒトヘルペスウイルスに感染させた前記非ヒト雌動物の後代においてヒトヘルペスウイルスの有無を分析し、かつ/または前記後代もしくはヒトヘルペスウイルスに感染させた前記非ヒト雌動物に対する治療用として可能性のある前記化合物の作用を判定する工程
を含んでなり、
工程a)およびb)は任意の順序で行われる。
【0022】
特定の実施態様では、本発明による方法は、工程b)[非ヒト雌動物に治療用として可能性のある供試化合物を投与する工程]の前に、工程a)[非ヒト雌動物にヒトヘルペスウイルスを試験的に感染させる工程]を行うことを含む。本発明による方法のこの特定の実施態様を、以下「方法A」という。
【0023】
他の特定の実施態様では、本発明による方法は、工程a)[非ヒト雌動物にヒトヘルペスウイルスを試験的に感染させる工程]の前に、工程b)[非ヒト雌動物に治療用として可能性のある供試化合物を投与する工程]を行うことを含む。本発明による方法のこの特定の実施態様を、以下「方法B」という。
【0024】
方法Aではまず、非ヒト雌動物にヒトヘルペスウイルスを試験的に感染させる[工程a)]。この感染は、既知のいずれのヒトヘルペスウイルス感染経路を用いて行ってもよく、例えば、嗅覚経路、神経経路または血液経路がある。特定の実施態様では、この感染は、血液経路に従い、腹腔内(i.p.)および/または静脈(i.v.)注射(例えば、静脈穿刺による)により、有利にはi.p.注射または2種類の注射(i.p.+i.v.)により、雌にヒトヘルペスウイルスを投与することによって行う。嗅覚経路による感染は鼻腔内投与により行うことができ、また、鼻腔経路による感染は、例えば、非ヒト動物の鼻にナイフを当てることで左右対称の傷を作り、ウイルスを含む溶液を塗布することによりヒトに見られる風邪を模倣するなど、種々の方法によって行うことができる。試験的に感染させる雌に投与するヒトヘルペスウイルスの量は広範囲で可変であるが、特定の実施態様では、このウイルス量は1〜10プラーク形成単位(pfu)からなる。ウイルスには特異性があり、ヒトヘルペスウイルス宿主の範囲が限定されている(それにより、それらウイルスの天然宿主ではない種の有効感染を回避することができる)にもかかわらず、本明細書に記載の方法に従って非ヒト動物にヒトヘルペスウイルスを感染させると、良好な感染率が得られる。
【0025】
次に、治療用として可能性のある供試化合物を、ヒトヘルペスウイルスに感染させた非ヒト雌動物に投与する[工程b)]。前記化合物は好適な任意の投与経路(例えば、経口、皮下、非経口、例えば、i.v.またはi.p.など)によって、選択された投与経路に適した投与形にて適切な用量で、その予め感染させた雌に投与する。例示すれば、治療用として可能性のある前記化合物は一回量もしくは単一ステップの形態で、または経時的に複数用量もしくは複数ステップで、あるいは供試化合物の連続供給によって投与することができる。
【0026】
次に、ヒトヘルペスウイルスに感染させ、供試化合物を投与した雌を、当業者に公知の常法により、その雌と同種に属する非ヒト雄動物と交配させる[工程c)]。感染させた雌と交配させる雄はヒトヘルペスウイルスフリーであってもなくてもよく、基本的に、雌を妊娠させる能力に影響がない限り(影響は生じないと思われる)、父親が感染しているかMOCK(すなわち、ヒトヘルペスウイルスフリー)であるかは伝播にとって問題ではないので、このことは無関係であると考えられるが、特定の実施態様では、実験計画にMOCK雄が用いられる。最後に、ヒトヘルペスウイルスに感染させた前記非ヒト雌動物の後代におけるヒトヘルペスウイルスの有無を分析し、かつ/または前記後代またはヒトヘルペスウイルスに感染させた前記非ヒト雌動物に対する治療用として可能性のある前記化合物の作用を判定する[工程d)]。
【0027】
特定の実施態様では、試験的に感染させた雌の後代におけるヒトヘルペスウイルスの有無を分析する。この分析は、供試サンプルにおけるヒトヘルペスウイルスの有無を検出することができる好適ないずれの方法によって行ってもよい。このような方法としては、血清学的(免疫学的)方法または遺伝学的方法など、例えば、蛍光、発光、呈色反応などに基づく好適な分子マーカー検出系の使用が挙げられる。例示すれば、ELISAまたはウエスタンブロットタンパク質検出アッセイ、生物発光、蛍光ウイルスなどの使用に基づく方法、ヒトヘルペスウイルスの免疫細胞学的および免疫組織学的検出に基づく方法、細胞単層平板培養アッセイ、ウイルスに基づくDNA同定法、例えば、検出可能なマーカーで標識化したオリゴヌクレオチドプローブの使用に基づく方法、または制限反応もしくは例えばポリメラーゼ連鎖反応(PCR)などに基づく増幅反応などの特異的な酵素反応を実施することに基づく方法が使用できる。特定の実施態様では、後代におけるヒトヘルペスウイルスの存在の分析は、既に確立されたプロトコール[Burgos JS, Ramirez C, Sastre I, Bullido MJ and Valdivieso F. (2003). ApoE4 is more efficient than E3 in brain access by herpes simplex virus type 1. NeuroReport 14(14); 1825-1827; Burgos JS5 Ramirez C, Sastre I, Bullido MJ and Valdivieso F. (2002). Involvement of apolipoprotein E in the hematogenous route of herpes simplex type 1 to the central nervous system. Journal of Virology. 76(23); 12394-12398; Burgos JS, Ramirez C, Tenorio R, Sastre I and Bullido MJ. (2002). Influence of reagents formulation on real-time PCR parameters. Molecular and Cellular Probes. 16; 257-260]に従い、リアルタイム定量的PCRにより、後代の動物に由来するサンプルについて行われる。
【0028】
他の特定の実施態様では、試験的に感染させた雌の後代またはその雌に対する供試化合物の作用を判定する。よって、ヒトヘルペスウイルスの有無は後代および母親の双方で判定することができ、また、後代および/または母親におけるウイルスの存在に関連した病理学的変化も判定できる。前記後代またはその後代の母親に対する供試化合物の作用は、例えば、画像解析(例えば、核磁気共鳴、生物発光、コンピュータ断層撮影法、陽電子放射型断層撮影法、すなわちPET、蛍光など)、組織病理学的技術、ゲノム工学レベルおよびタンパク質工学レベル双方でのウイルスマーカーおよび神経変性マーカーの検出などに基づく種々の常法実験技術によって判定することができる。
【0029】
例示すれば、ヒトヘルペスウイルスに試験的に感染させた雌またはその雌の子孫に対する供試化合物の作用は、(1)その雌前世代および後代の生存力分析、(2)雌前世代および後代の挙動分析、(3)雌前世代および後代の画像研究、(4)後代の細胞遺伝学的分析、および(5)神経病理学的研究から選択される少なくとも1つの分析または研究を行うことにより判定することができる。
【0030】
(1)雌前世代および子孫の生存力分析: 生存率は後代および雌前世代の双方においてこの分析により判定し、供試化合物により、化合物を投与した動物における生存力パーセンテージが対照に対して向上するかどうかを評価する。
【0031】
(2)雌前世代および子孫の挙動分析: 動物モデルにおける疾病の徹底研究には、動物の挙動分析が含まれる。この研究は子孫および雌前世代の双方において脳機能に対するウイルス感染の作用を調べるのに有用なものである。特定の実施態様では、この動物モデルはネズミモデルであり、この場合、この疾病のネズミモデルの挙動分析は3つの実験段階に再分割することができる:(i)健康状態と神経反射を評価する段階;(ii)運動能力と知覚能力を分析する段階;および(iii)特定の神経病理に関してバリデートした特定の試験を用いたモデル特異的な段階。一般に、第一段階[(i)]では、動物の体重、動物の外被の状態、研究者の手が触れたときの反応、聴覚反射、視覚反射、嗅覚力、および社会的挙動を調べる。第二段階[(ii)]は、特定の次の試験を行う際に動物の状態が適切かどうかを調べるための一連の試験からなる。この試験群は、とりわけ、聴力、視力、運動機能または動作の協調性の試験を含む。第三段階[(iii)]では、文献に記載されているものをはじめ、試験下の病態に特異的な試験を行うが、その基本的な特徴は、バリデート可能で再現性のある標準化試験であることである。例示すれば、マウスの記憶力を調べるためのアルツハイマー病動物モデルに最もよく用いられる試験として、モリスタンクがある。この試験では、タンクの外側に置いた一連の目印だけを用いて浴槽に沈めたプラットフォームの位置をマウスが思い出せるかどうかを分析する。パーキンソン病動物モデルでは、ロータロッドで学習能力を試験する。この試験ではマウスの運動学習を分析することができる。マウスは加速された円筒の動きに適応しなければならず、これによって運動協調性とその学習を評価する。
【0032】
(3)雌前世代および子孫における画像研究: 脳レベルで、また、着目する他の器官での変化を試験する目的で、非侵襲的、かつ、動物を犠牲にすることなく種々の試験を行うことを可能にする小動物の画像技術を適用することができる。この目的で最もよく用いられる技術としては、核磁気共鳴(NMR)、陽電子放射型断層撮影法(PET)、コンピュータ断層撮影法(CAT)、高分解X線、ならびに酵素反応および蛍光タンパク質、例えば、GFPを含む遺伝子構築物を注入する方法に基づく生物発光画像法(BLI)がある。in vivoで形態学的変化および病理学的変化を検出するため、また、雌前世代および後代においてヒトヘルペスウイルスをモニタリングするために、様々な画像解析技術を用いることができる。
【0033】
(4)後代における細胞遺伝学的分析: この目的のためには、試験的に感染させた母親の後代における染色体異常、構造遺伝学的変化、およびコピー数の変動を、これらの遺伝学的結果を検討することにより研究することができる。そのために、子孫の細胞遺伝学的マップならびに蛍光in situハイブリダイゼーション[FISH]により構造変化を探索するための手法が実行される。検討する染色体の構造変動は、欠失、倍加、逆位、および/または転座であり得る。検討する染色体の数的変動としては、倍数体、半数体および/または異数体がある。場合によっては、前記染色体変動の伝播を検討することもできる。
【0034】
(5)雌前世代および子孫における神経病理学的研究: 雌前世代およびその雌の子孫において変性の徴候を示す脳領域は、組織病理学的技術によって判定することができる。さらに、α−シヌクレイン、APP(アミロイド前駆体タンパク質)、ApoE(アポリポタンパク質E)、タウリン酸化状態などの神経変性神経マーカーを、免疫組織化学的技術によって検討することもできる。特定のニューロン集団の欠損を判定する目的で、着目するこれらの抗原を、ドーパミン作動性ニューロンを標識化するチロシンヒドロキシラーゼ、またはコリン作動性ニューロンマーカーであるアセチルコリントランスフェラーゼなどの特異的ニューロン型マーカーとともに検出することができる。この場合、神経変性プロセスに関与するタンパク質マーカーを種々の感染条件下で分析し、それらを内在タンパク質における変動と比較する。免疫組織化学的研究の補足として、神経侵害および神経変性に関与する細胞およびウイルス遺伝子のmRNAを、対応するメッセンジャーのRT−PCRによる定量分析、ならびにウエスタンブロット技術による粗抽出物の総タンパク質レベルの量的変動性によって分析することができる。
【0035】
本明細書に記載の実施例1〜3で得られた結果は、(i)ヒトヘルペスウイルスの垂直母子伝播と、主として子孫の血液および脳におけるウイルスの局在;(ii)母親へのアシクロビルの投与が非処置動物の子孫に見られる死亡率レベルを引き下げること;(iii)母親をアシクロビルで処置した際には、母親および後代の双方において、分析した種々の器官におけるウイルスの存在レベルが引き下げられること;および(iv)アシクロビルの経口投与のほうが皮下投与よりも有効であることを示している。
【0036】
従って、本発明は、試験的に感染させた母親から後代へのヒトヘルペスウイルスの垂直伝播の存在を示す。本発明者らがいずれかの仮説に結びつけようとしなくとも、新生児のウイルス量は母親と共有している血液中により多く見られることから、このような母子垂直伝播は主として血液系路によって起こると考えられる。この仮説によれば、母親は妊娠中血液を通じて後代にウイルスを供給している。従って、後代にヒトヘルペスウイルスが存在するということは、母親における供試化合物がその母親のヘルペスウイルスを排除することができず、ゆえにヘルペスウイルスがその子孫に存在するということを示す。これに対し、後代にヒトヘルペスウイルスが存在しないということは、母親における供試化合物が母親のヘルペスウイルスを排除できるか、または垂直母子伝播を防ぐことができ、ゆえに抗ウイルス薬として作用し得ることを示す。
【0037】
予め感染させた母親に供試化合物を投与することを含む方法Aは、母親または後代に対して、ヒトヘルペスウイルスの存在の結果としての生存率、挙動、目的の器官の変化、および/または神経病理における作用を有するか、または抗ウイルス薬としての作用を有することから、有用である可能性のある化合物の同定を可能とする(試験的に感染させた母親にウイルスが存在しない、またはウイルスの存在量が少なくなっていれば、その投与化合物は抗ウイルス薬として有用である可能性がある)。
【0038】
方法Bではまず、治療用として可能性のある供試化合物を非ヒト雌動物に投与し[工程b)]、次に、この前処置した雌をヒトヘルペスウイルスに感染させる[工程a)]。これらの工程は、方法Aに関して定義した工程a)およびb)を行う場合と同様にして行う。方法Bの工程c)およびd)は方法Aの場合と同じであり、同様にして行う。
【0039】
試験的に感染させる前に供試化合物を雌に投与することを含む方法Bは、ウイルスの母子伝播を防ぐことができるワクチンまたは薬剤として有用な、治療用として可能性のある化合物の同定を可能とする。ワクチンとして有用である可能性のある化合物を同定するためには、試験感染の対象となる雌は、ヒトヘルペスウイルス感染の徴候がない雌、有利には、ヒトヘルペスウイルスフリーである雌(MOCK)でなければならず、このため、このような雌は、これまでに記載されているいずれかの方法により、ヒトヘルペスウイルスの存在を検出し、そのようなウイルスに接触したかどうかを判定することを可能とする常法のいずれかによって予め分析する。試験的に感染させた雌の後代にヒトヘルペスウイルスが存在しなければ、その母親に投与した治療用として可能性のある化合物は、そのウイルスの垂直母子伝播を防ぐことができるワクチンまたは薬剤として有用である可能性があることが示される。この方法Bも同様に、母親または後代に対して、ヒトヘルペスウイルスの存在の結果としての生存率、挙動、目的の器官の変化、および/または神経病理における作用を示す化合物の同定を可能とする。
【0040】
他の態様では、本発明は、治療用として可能性のある化合物を同定するための別法(以下「方法C」)に関し、その方法は、
i)非ヒト雌動物にヒトヘルペスウイルスを感染させる工程、
ii)ヒトヘルペスウイルスに感染させた前記非ヒト雌動物を、この雌と同種に属する非ヒト雄動物と交配させる工程、
iii)ヒトヘルペスウイルスに感染させた前記非ヒト雌動物の後代においてヒトヘルペスウイルスの有無を分析し、ヒトヘルペスウイルスを保有する子孫を選抜する工程、
iv)治療用として可能性のある供試化合物を、ヒトヘルペスウイルスを保有する前記子孫に投与する工程、および
v)ヒトヘルペスウイルスを保有する前記子孫に対する治療用として可能性のある前記供試化合物の作用を判定する工程
を含んでなる。
【0041】
方法Cではまず、非ヒト雌動物にヒトヘルペスウイルスを試験的に感染させる[工程i)]。この試験的感染は、方法Aの工程a)で行うものと同様の方法で行う。次に、ヒトヘルペスウイルスに感染させた雌を、方法Aの工程c)で行うものと同様の方法で、その雌と同種に属する非ヒト雄動物と交配させる[工程ii)] 。次に、ヒトヘルペスウイルスに感染させた非ヒト雌動物の後代におけるヒトヘルペスウイルスの存在を分析し、ヒトヘルペスウイルスを保有する子孫を選抜する[工程iii)]。試験的に感染させた雌の後代におけるヒトヘルペスウイルスの存在は、方法Aの工程d)に関して示したものと同様の好適ないずれかの方法により分析する。次に、そのヒトヘルペスウイルスを保有する子孫に、一回量もしくは単一ステップの形態で、または経時的に複数用量もしくは複数ステップで、あるいは方法Aの工程b)に関して示したものと同様に供試化合物の連続供給によって、治療用として可能性のある供試化合物を投与し、最後に、ヒトヘルペスウイルスを保有する前記子孫に対する治療用として可能性のある前記供試化合物の作用を判定する。この作用は、ヒトヘルペスウイルスを保有する動物のウイルス存在量の全面的または部分的減少からなってよく、この場合、治療用として可能性のある前記化合物は抗ウイルス薬として有用である可能性があるか、またはその動物におけるヒトヘルペスウイルスの存在の結果に関わる、生存率、挙動、目的の器官の変化、および/または神経病理において作用を有する化合物であり、この目的で、ヒトヘルペスウイルスを保有する前記子孫に対して、(1)生存力分析、(2)挙動分析、(3)画像研究、(4)細胞遺伝学的分析および(5)神経病理学的研究から選択される少なくとも1つの分析または研究を行う。
【0042】
ヒトヘルペスウイルスは、例えば、口唇ヘルペスおよび陰部ヘルペス、水痘、感染性単球増加症、鼻咽頭癌腫、肺炎、網膜炎、突発性発疹、カポジ肉腫、CNS感染、神経疾患および神経病理学的障害(例えば、脳炎、アルツハイマー病、ボクサー痴呆、HIV関連痴呆、脳性麻痺、髄膜炎、髄膜脳炎および脊髄炎など)などの種々のヒト疾病に関連することから、治療用として可能性のある前記化合物は、その病態がヒトヘルペスウイルスによって引き起こされるものである限り、その治療または予防のために使用可能である。よって、特定の実施態様では、これまでに定義した方法A、BおよびCのいずれかによって同定され得る治療用として可能性のある化合物は、ワクチン、抗ウイルス薬、神経保護薬、または抗神経変性薬である。
【0043】
他の態様において、本発明は、ヒトヘルペスウイルスを保有する非ヒト動物を作出する方法に関し、その方法は、
a)非ヒト雌動物にヒトヘルペスウイルスを感染させる工程、
b)ヒトヘルペスウイルスに感染させた前記非ヒト雌動物を、この雌と同種に属する非ヒト雄動物と交配させる工程、および
c)ヒトヘルペスウイルスを保有する子孫を選抜する工程
を含んでなる。
【0044】
前記方法ではまず、非ヒト雌動物にヒトヘルペスウイルスを試験的に感染させるが[工程a)]、これは方法Aの工程a)で行うものと同様の方法で行い、次に、ヒトヘルペスウイルスに感染させた雌を、方法Aの工程c)で行うものと同様の方法で、その雌と同種に属する非ヒト雄動物と交配させ[工程b)]、最後に、ヒトヘルペスウイルスに感染させた前記非ヒト雌動物の後代においてヒトヘルペスウイルスの有無を分析し、ヒトヘルペスウイルスを保有する子孫を選抜する[工程c)]。試験的に感染させた雌の後代におけるヒトヘルペスウイルスの有無は、方法Aの工程d)に関して示したものと同様の方法にて好適な方法によって分析する。
【0045】
このようにして得られたヒトヘルペスウイルスを保有する子孫も本発明のさらなる態様をなす。よって、他の態様において、本発明は、これまでに記載した方法に従って得られる、ヒトヘルペスウイルスを保有する非ヒト動物に関する。本発明により提供されるヒトヘルペスウイルスを保有する非ヒト動物は、ヒトヘルペスウイルスに感染させた非ヒト動物の子孫であることを特徴とする。さらに、前記非ヒト動物は、そのヒトヘルペスウイルスが主として中枢神経系(CNS)および/または血液、例えば、脳、脊髄および/または血液に存在するという特徴を有する。実施例1および図5で示されるように、ここでもまた、感染した母親の14週齢後代で、垂直伝播によるHSV−1感染の標的器官がCNSおよび血液であるということが認められ、これまでの結果の確証が得られた。さらにまた、雄と雌の双方で、三叉神経節に高レベルのウイルスが見られた。性差間の主要な違いの1つとして性腺でのコロニー形成があり、HSV−1は精巣には検出されない。特定の実施態様では、本発明により提供されるヒトヘルペスウイルスを保有する非ヒト動物は魚類、齧歯類、霊長類またはブタ、例えば、マウス、ラット、モルモット、サルまたはブタであり、雄・雌いずれでもあり得る。これらの動物は治療用として可能性のある化合物であるかどうかを試験・調査するための動物モデルとしても使用できるし、ヒトヘルペスウイルスを保有する新規な子孫の前世代としても使用できる。
【0046】
よって、他の態様において、本発明は、ヒトヘルペスウイルスを保有する非ヒト動物を作出する別法に関し、その方法は、
a)ヒトヘルペスウイルスに感染させた非ヒト雌動物に由来する、ヒトヘルペスウイルスを保有する第一の非ヒト動物を、前記第一の動物と同種に属するが性の異なる第二の非ヒト動物と交配させる工程、および
b)ヒトヘルペスウイルスを保有する子孫を選抜する工程
を含んでなる。
【0047】
この方法は、ヒトヘルペスウイルスに感染させた非ヒト雌動物の子孫である、本発明により提供されるヒトヘルペスウイルスを保有する第一の非ヒト動物を、同種に属するが性の異なる第二の非ヒト動物と交配させることを含む。この第二の動物はMOCK動物であっても、あるいはまた、ヒトヘルペスウイルスに感染させた非ヒト雌動物の子孫である、本発明により提供されるヒトヘルペスウイルスを保有する非ヒト動物であってもよい。これらの動物の交配は、これまでに記載されているような常法にて行う。次に、子孫におけるヘルペスウイルスの有無を分析し、ヒトヘルペスウイルスを保有する子孫を選抜し、これをヒトヘルペスウイルスを保有する新規な非ヒト動物を交配させるため、再現目的で動物モデルとして使用できる。
【0048】
以下の実施例は本発明を説明するのに役立つものであり、その範囲を限定するものではない。
【実施例】
【0049】
実施例1
ヒトヘルペスウイルスの垂直母子伝播
この試験法に含まれる動物は総てC57B1/6系統に由来する14週齢の雌マウスとした。成体マウス(雌)16個体を前世代として用い、胎児21個体、新生児77個体および成体後代13個体を用いた。試験は、Centro de Biologia Molecular (Molecular Biology Center) Severo Ochoaのアニマルハウスの職員の指導の下、動物実験ガイダンス(the Guidance on the Operation of Animals, Scientific Procedures, 1986年施行)を遵守して行った。動物には総て検疫期間を設け、接種および解剖の際にはコンタミネーションに注意を払って処置した。
【0050】
動物を用量10プラーク形成単位(pfu)の1型単純ヘルペスウイルス(HSV−1)KOS株(Dr. L. Carrasco, Centre de Biologia Molecular Severo Ochoa, Universidad Autonoma of Madrid)に腹膜感染させた。潜伏感染が既に確立している感染37日後に(潜伏状態となるのは感染28日後と考えられる)、それらの雌を雄マウスと交配させ、分娩1〜100日後の間、子孫の死亡率を分析した。感染した母親とMOCKの母親の子孫との間の比較はカプラン−メイヤーグラフによって行った。結果を図1に示すが、感染した母親の子孫の生存率に減少が見られる。分娩後1日または2日目の新生児のHSV−1の垂直伝播における性差に依存する死亡率をさらに分析したところ、図2に示すように、雄の新生児死亡率(45%)は雌(15%)よりも高いパーセンテージであることが認められた。
【0051】
他方、誕生前日に胎児を取り出し、それらの器官を解剖し、冷凍した。次に、HSV−1 DNAを抽出し、種々の器官(脳、脊髄、胎盤)で定量的リアルタイムPCRにより定量し(pfu相当として表す)、マウスアクチン遺伝子に関して標準化した(ngで表す)。常法(NucleoSpin(登録商標), カタログ番号K3053-2, ClonTech, USA)を用いてDNAを抽出した。サンプルの交差コンタミネーションとPCRの偽陽性は、手袋を頻繁に替えること、ピペットを専用にすること、および三段階の主要なPCR工程を厳密に分けることによって注意深く防いだ。定量的PCRはLightCyclerサーマルサイクラー(Roche Diagnostics Ltd, Lewes, UK)を用いて行い、その反応混合物はプライマー1μMとMgCl 2mMを含むものとした。PCR反応の陽性対照としてはβ−アクチンプライマー(配列番号1および配列番号2)を用いた(379塩基対[bp]のアンプリコン、すなわち増幅産物を得るため)。さらに、ウイルスDNAポリメラーゼ(pol)遺伝子の120bp断片の配列を増幅するのに特異的なプライマー[配列番号3および配列番号4]、ならびにウイルスチミジンキナーゼ(TK)遺伝子の110bp断片の塩基配列を増幅するのに特異的なプライマー[配列番号5および配列番号6]を用いた。PCR条件は、95℃1分を1サイクルの後、95℃30秒、55℃(β−アクチンおよびTKの場合)または60℃(polの場合)で30秒、および72℃40秒を45サイクルとした。定量的リアルタイムPCR標準曲線を最適とするウイルス濃度間隔をpfuで表した。β−アクチン遺伝子を較正するため、この内在遺伝子の単位としてナノグラム(ng)を用いた。増幅産物の同定は、変性曲線の分析、ゲル電気泳動および制限分析によって行った。分析した遺伝子断片に対して、ウイルスポリメラーゼ(pol)の場合(23bpと97bpの2つの断片が生じる)およびウイルスTKの場合(35bpと75bpの2つの断片が生じる)にはエンドヌクレアーゼAva1を用い、また、β−アクチンの場合(220bpと159bpの2つの断片が生じる)には酵素NlaIVを用いて制限分析を行った。胎児におけるウイルスDNA検出結果を図3に示し、新生児におけるウイルス存在量を図4に示す。
【0052】
感染した母親に由来する成体におけるウイルス存在量を性別に図5に示す。この結果は雄5個体と雌8個体に当たる。この図5に見られるように、感染した母親の14週齢後代においてもまた、垂直伝播によるHSV−1感染の標的器官がCNSおよび血液であることが認められ、初期の結果が確認された。さらに、雄でも雌でも、三叉神経節に高レベルのウイルスが見られた。性差間の主要な違いの1つは性腺のコロニー形成であり、HSV−1は精巣には検出されなかった。
【0053】
これまでに記載されたネズミモデルを用い、母親から子へのHSV−1の垂直血液系伝播の有効性を評価した。分娩前の雌、新生児(誕生1または2日後)および分娩後の母親におけるウイルス血症、ならびに後者2区分の合計を図6に示す。このグラフは、感染がウイルス血症に依存し、血液投与経路によるワクチンおよび抗ウイルス薬の分析に有用であることを示す。
【0054】
実施例2
ヒトヘルペスウイルスの垂直母子伝播に対する抗ウイルス薬の作用
実施例1はHSV−1の垂直母子伝播の存在を示す。これらの結果は、分娩1日後の子孫の血液および脳、ならびに誕生1日前の胎児のCNSの双方にHSV−1が見られたかどうかを示す。この一連の結果は、HSV−1の垂直伝播を妨げることが、後代のCNSにおいてHSV−1を排除する結果、子孫に対して有効な治療特性(ワクチン、抗ウイルス薬または神経保護特性)を持ち得ることを意味している。この仮説に基づき、本発明者らは、ウサギ、ラットまたはマウスにおいて非催奇形性であるか、または胎児毒性があることが分かっている従来の抗ヘルペス選択薬のアシクロビルの抗ウイルス的役割を評価することにした。この目的で、雌成体で潜伏感染を確立した後、アシクロビルで処置して交配し、それらの母親と後代の分析を行った。
【0055】
材料および方法
この試験法に含まれる動物は総てC57B1/6系統に由来する14週齢の雌マウスとした。各分析群につき、動物の入手状態によってマウス成体2〜3個体と新生児13〜25個体を用いた。試験は、Centro de Biologia Molecular Severo Ochoaのアニマルハウスの職員の指導の下、動物実験ガイダンス(the Guidance on the Operation of Animals (Scientific Procedures, 1986年施行)を遵守して行った。動物には総て検疫期間を設け、接種および解剖の際にはコンタミネーションに注意を払って処置した。動物を用量10pfuの1型単純ヘルペスウイルス(HSV−1)KOS株(Dr. L. Carrasco, Centre de Biologia Molecular Severo Ochoa, Universidad Autonoma of Madrid)に腹膜感染させた。潜伏感染が既に確立している感染37日後に、それらのマウスを対照群(処置無し)、経口アシクロビル群および皮下アシクロビル群(投与がより緩慢)に相当する3つの異なる容器に分け、交配前5日から誕生までアシクロビル処置を行い、感染後42日目に交配させた。第一のマウス群には処置は行わなかった。経口アシクロビル群には、少なくとも8時間の間隔で(投与後のアシクロビルの血漿半減期は2.9時間であるため)1日3回薬物の2.5mg/ml希釈液100μlを投与した。もう一方の動物群には、前群と同じく1日3回(8時間おき)2.5mg/ml希釈液のアシクロビル100μlを皮下注射した。よって、1個体1回当たりに投与したウイルス濃度は0.25mgとなり(1個体当たり10mg/kg、上記で挙げられた80kg/kgの毒性限界とはほど遠い)、1日総量は0.75mg/日であった。出産日にアシクロビル投与は打ち切り、その後の分析のために母親と個々の後代を安楽死させた。
【0056】
成体動物の解剖器官は下記の通りである:血液、卵巣、副腎、脊髄、脳、小脳および三叉神経節。全脳を中脳、脳室および大脳皮質の3つの領域に大まかに分けた。新生児では、解剖器官は血液、脊髄および脳とした。常法(NucleoSpin(登録商標), カタログ番号K3053-2, ClonTech, USA)を用いてDNAを抽出した。種々の器官のウイルス存在量を定量的PCRにより分析した。サンプルの交差コンタミネーションとPCRの偽陽性は、手袋を頻繁に替えること、ピペットを専用にすること、および三段階の主要なPCR工程を厳密に分けることによって注意深く防いだ。定量的PCRはLightCyclerサーマルサイクラー(Roche Diagnostics Ltd, Lewes, UK)を用いて行い、その反応混合物はプライマー1μMとMgCl 2mMを含むものとした。PCR反応の陽性対照としてはβ−アクチンプライマー(配列番号1および配列番号2)を用いた(379bpの産物を得る)。ウイルスの検出には、ウイルスポリメラーゼ(pol)遺伝子配列に特異的なプライマーを用いた(配列番号3および配列番号4)(120bpのアンプリコン)。PCR条件は、95℃10分を1サイクルの後、95℃30秒、55℃(β−アクチンの場合)または60℃(ウイルスポリメラーゼの場合)で30秒を45サイクル、そして最終サイクル72℃40秒とした。定量的PCR標準曲線を最適とするために用いるウイルス濃度範囲をプラーク形成単位(pfu)で表した。β−アクチン遺伝子を較正するため、この内在遺伝子の単位としてナノグラム(ng)を用いた。増幅産物の同定は、変性曲線の分析、ゲル電気泳動および制限分析によって行った。
【0057】
結果および考察
誕生および屠殺の後、後代の生存率と母親および新生児のウイルス存在量を分析した。動物成体は全試験過程中、無症候のままで、死亡はなかった。これに対して、種々の動物群の子孫は様々な死亡率を示した。つまり、対照群の新生児は死亡率7.1%(14個体のうち1個体が死亡)を示し、皮下アシクロビル投与群は死亡率4.0%(25個体のうち1個体)を示し、最後に、経口投与群では死亡は見られなかった(17個体で死亡無し)。これら3つの子孫群では、雌と雄の個体数に有意な違いはなかった(1:1.66比)。
【0058】
種々の器官のウイルスレベルについては、図7に見られるように、2種類の投与経路による1日量0.75mgでのアシクロビル投与は、母親および後代の双方でウイルス存在量の有意な減少をもたらしたものと評価された。アシクロビル皮下投与の使用の有効性は、母親(図7A)および後代(図7B)の双方において、経口投与の場合よりも小さかった。しかしながらやはり、皮下アシクロビルによる動物中のウイルスの排除は有意なものであり、母親の総ての分析器官、特に後代のCNSにおいてウイルスレベルの著しい減少が見られた。アシクロビルの経口投与は、母親、ひいては子孫におけるウイルスの排除にいっそう有効であった。この点で、母親の血液および三叉神経節では実質的にウイルスレベルは検出できず、一方、経口処置動物の脳ではウイルスレベルの減少は96%であった。子孫に関しては、母親におけるアシクロビルの経口投与が、総ての分析器官でウイルスレベルのほぼ完全な排除をもたらした。
【0059】
結論
実施した試験から推察される結論としては基本的に次の通りである。(i)新たな試験において垂直伝播現象が確認され、ここでもまた、ウイルスが主として子孫個体の血液と脳に局在していることが分かった。(ii)母親をアシクロビルで処置すると、非処置動物の子孫に見られる死亡率が引き下げられることが示された。(iii)母親をアシクロビルで処置した際には、母親とその後代の双方で、分析した種々の器官のウイルス存在レベルが減少することが認められた。最後に、(iv)アシクロビルの経口投与のほうが、この抗ウイルス薬の皮下投与よりも著しく有効性が高いことが認められた。
【0060】
この試験から推察される展望は、アシクロビルだけでなく、他の抗ウイルス薬、ワクチンまたは神経保護薬もHSV−1の垂直伝播およびその後のCNSに対する作用を防ぎ得ることを示す。
【0061】
実施例3
ヒトヘルペスウイルスの垂直母子伝播に対する抗ウイルス薬の投与形の作用
実施例1および2で見られた結果が、アシクロビルの経口投与のほうが皮下注射よりも有効性が高いことを示すことから、飲料としてアシクロビルを投与する試験を行った。この試験では、14個体(対照5個体とアシクロビル処置9個体)のマウスを用い、アシクロビルは2種類の所定用量(4個体は250mg/ml、5個体は500mg/ml)で飲料として自由摂取で用いた。これまでの試験では、経口および皮下の双方で、1日3回、1回当たり0.25mgのアシクロビル(2.5mg/ml希釈液100μl)を投与した。マウスが1日に約3ml飲むと仮定して、2種類の実施希釈液を用いた(250mg/mlでは最終的な1日量が0.75mgとなり、500mg/mlでは最終的な1日量が1.50mgとなる)。アシクロビルの投与は膣栓が見られた日に開始し、この際にマウスの水入れをアシクロビル入りの新しいものに交換する。得られた結果は、飲用水とともにアシクロビルを摂取(高用量)したアシクロビル処置マウスの生存率のほうが高いことを示す。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】分娩後に生存した、HSV−1に感染した母親の子孫マウス(新生児から成体まで)のパーセンテージとそれらのMOCK母の子孫との比較を示したカプラン−マイヤーグラフである。
【図2】HSV−1に感染した母親の新生児(分娩後1日目または2日目)の性差による死亡率の結果を示した棒グラフである。
【図3】HSV−1に感染した母親の胎児(誕生前)の脊髄、脳および胎盤におけるウイルス存在量と感染新生児のパーセンテージを示した棒グラフである。
【図4】HSV−1に感染した母親の新生児の血液および脳におけるウイルス存在量と感染胎児のパーセンテージを示した棒グラフである。
【図5】感染した母親から生まれた14週齢の雄および雌成体の脳、脊髄、血液、性腺および三叉神経節におけるウイルス存在量を示した棒グラフである。
【図6】分娩前の雌、新生児、分娩後の雌のウイルス血症および誕生後の新生児と母親の合計を示した棒グラフである。
【図7】母親に対するアシクロビルの作用(図7A)、特に血液、脳および三叉神経節におけるウイルス存在量、ならびに後代に対するアシクロビルの作用(図7B)、特に血液、脳および脊髄におけるウイルス存在量を示した棒グラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療用として可能性のある化合物を同定する方法であって、
a)非ヒト雌動物にヒトヘルペスウイルスを感染させる工程、
b)治療用として可能性のある供試化合物を前記非ヒト雌動物に投与する工程、
c)ヒトヘルペスウイルスに感染させた前記非ヒト雌動物を、この雌と同種に属する非ヒト雄動物と交配させる工程、および
d)ヒトヘルペスウイルスに感染させた前記非ヒト雌動物の後代においてヒトヘルペスウイルスの有無を分析し、かつ/または前記後代もしくはヒトヘルペスウイルスに感染させた前記非ヒト雌動物に対する治療用として可能性のある前記化合物の作用を判定する工程
を含んでなり、
工程a)およびb)が任意の順序で行われる、方法。
【請求項2】
工程a)が工程b)の前に行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程b)が工程a)の前に行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
治療用として可能性のある化合物を同定する方法であって、
i)非ヒト雌動物にヒトヘルペスウイルスを感染させる工程、
ii)ヒトヘルペスウイルスに感染させた前記非ヒト雌動物を、この雌と同種に属する非ヒト雄動物と交配させる工程、
iii)ヒトヘルペスウイルスに感染させた前記非ヒト雌動物の後代においてヒトヘルペスウイルスの有無を分析し、ヒトヘルペスウイルスを保有する子孫を選抜する工程、
iv)治療用として可能性のある供試化合物を、ヒトヘルペスウイルスを保有する前記子孫に投与する工程、および
v)ヒトヘルペスウイルスを保有する前記子孫に対する治療用として可能性のある前記供試化合物の作用を判定する工程
を含んでなる、方法。
【請求項5】
前記非ヒト動物が魚類または非ヒト哺乳類である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記非ヒト哺乳類が齧歯類、霊長類およびブタから選択されるものである、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記齧歯類がマウス、ラットおよびモルモットから選択されるものである、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記ヒトヘルペスウイルスが1型単純ヘルペスウイルス(HSV−1)、2型単純ヘルペスウイルス(HSV−2)、水痘−帯状疱疹ウイルス(VZV)、サイトメガロウイルス(CMV)、ヒトヘルペスウイルス6(HHV−6)、ヒトヘルペスウイルス7(HHV−7)、エプスタイン−バーウイルス(EBV)およびカポジヘルペスウイルス(HHV−8)、ならびにその混合物から選択されるものである、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記後代またはヒトヘルペスウイルスに感染させた前記非ヒト雌動物に対する供試化合物の作用の判定が、(1)生存力分析、(2)挙動分析、(3)画像研究、(4)細胞遺伝学的分析および(5)神経病理学的研究から選択される少なくとも1つの分析または研究を行うことを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
ヒトヘルペスウイルスを保有する前記子孫に対する供試化合物の作用の判定が、(1)生存力分析、(2)挙動分析、(3)画像研究、(4)細胞遺伝学的分析および(5)神経病理学的研究から選択される少なくとも1つの分析または研究を行うことを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項11】
ヒトヘルペスウイルスを保有する非ヒト動物を得る方法であって、
a)非ヒト雌動物にヒトヘルペスウイルスを感染させる工程、
b)ヒトヘルペスウイルスに感染させた前記非ヒト雌動物を、この雌と同種に属する非ヒト雄動物と交配させる工程、および
c)ヒトヘルペスウイルスを保有する子孫を選抜する工程
を含んでなる、方法。
【請求項12】
請求項11に記載の方法に従って得られる、ヒトヘルペスウイルスを保有する非ヒト動物。
【請求項13】
ヒトヘルペスウイルスに感染させた非ヒト雌動物の子孫であることを特徴とする、ヒトヘルペスウイルスを保有する非ヒト動物。
【請求項14】
前記ヒトヘルペスウイルスが主として脳、脊髄および/または血液中に存在している、請求項12または13に記載の非ヒト動物。
【請求項15】
ヒトヘルペスウイルスを保有する非ヒト動物を作出する方法であって、
a)請求項12〜14のいずれか一項に記載のヒトヘルペスウイルスを保有する第一の非ヒト動物を、前記第一の動物と同種に属するが性の異なる第二の非ヒト動物と交配させる工程、および
b)ヒトヘルペスウイルスを保有する子孫を選抜する工程
を含んでなる、方法。
【請求項16】
前記第二の動物が、MOCK動物およびヒトヘルペスウイルスを保有する非ヒト動物から選択されるものである、請求項15に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2007−533315(P2007−533315A)
【公表日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−508917(P2007−508917)
【出願日】平成17年4月21日(2005.4.21)
【国際出願番号】PCT/ES2005/000209
【国際公開番号】WO2005/101956
【国際公開日】平成17年11月3日(2005.11.3)
【出願人】(504434051)ウニベルシダッド・アウトノマ・デ・マドリッド (7)
【出願人】(593005895)コンセホ・スペリオール・デ・インベスティガシオネス・シエンティフィカス (67)
【氏名又は名称原語表記】CONSEJO SUPERIOR DE INVESTIGACIONES CIENTIFICAS
【Fターム(参考)】