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ヒトミトコンドリアDNAに関する遺伝子検出法
説明

ヒトミトコンドリアDNAに関する遺伝子検出法

【課題】日本人のmtDNAを主要なハプログループに分類できる迅速なmtSNPs検出方法を提供すること、及びその方法を用いて各種疾患の遺伝的危険度を予測する遺伝子検出方法等を提供すること。
【解決手段】ミトコンドリアゲノムのコード領域における20数個の多型に関する遺伝子型を決定することにより、日本人のミトコンドリアゲノムを10個〜12個の代表的なハプログループに分類する方法。MS、2型糖尿病、アテローム血栓性脳梗塞、心筋梗塞に関連するハプログループを同定することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒトミトコンドリアDNAに関する遺伝子検出法、及びそのためのキット等に関する。
【背景技術】
【0002】
ミトコンドリアゲノムにおける母系遺伝的な変異は、過去20万年の間にホモサピエンスがアフリカからアジアへそしてヨーロッパへと拡散する間に、新らたな突然変異がそれに順次追加されて来た結果である(非特許文献1)。ミトコンドリアゲノムの突然変異の発生率は、核ゲノムの突然変異の発生率よりも約10倍高いので、ホモサピエンスの比較的短い歴史の間に蓄積されて来た古代のミトコンドリア多型は、現代人の代謝特性の解明に貢献する可能性がある(非特許文献2)。世界の様々な地域で発見されたミトコンドリアのハプログループは、人類が寒冷な気候とその下での栄養条件に適応的に選択されて来た結果であると推測することができる(非特許文献2〜非特許文献4)。
【0003】
ミトコンドリアハプログループ間で機能的な差が存在する事を示す証拠が、精子運動性(非特許文献5)、敗血症後の生存率(非特許文献6)、及びパーキンソン病に対する感受性(非特許文献7)の研究によって与えられている。初期の研究では、我々は、肥満(非特許文献11)、るい痩(非特許文献12)、2型糖尿病(非特許文献11)、或いはアテローム性動脈硬化症といったエネルギー代謝に関与するものと同じく、例えば寿命(非特許文献8)、パーキンソン病(非特許文献9、10)及びアルツハイマー病といった年齢関連疾患に関与するミトコンドリア単一ヌクレオチド多型(mtSNPs)を同定することを目標としていた。
【0004】
この目的のために、我々は7つの異なる集団に属する672名分の完全ミトコンドリアゲノムの全塩基配列を決定した。各集団はおのおの96名から構成され、百寿者、パーキンソン病罹患者、アルツハイマー病罹患者、肥満者、非肥満者、重度の血管性病変を持つ2型糖尿病、血管性病変を持たない2型糖尿病罹患者の7群であった。
これらの調査結果から、我々は、ヒトのミトコンドリアゲノム多型データベース(http://www.giib.or.jp/mtsnp/index_e.shtml)を構築した。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記mtSNPデータを活用するための遺伝子検出法として、適当なものが開発されていなかったために、これらのデータを十分に生かし切ることができなかった。
本発明は、上記した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、mtDNAの多型(mtSNP)を効果的に検出するための遺伝子検出法等を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、長年に亘ってヒトミトコンドリアゲノムに関する研究を行っている者である。ヒトミトコンドリアDNAは、連鎖した複数のmtSNPを有するハプログループに分類することができる。図3〜図5には、mtSNPに基づくハプログループ分類を示した。このハプログループの分布は、人種間において、かなり大きな隔たりがある。個々の日本人は、主要な10個〜12個のハプログループによって、そのほとんど(約90パーセント以上)を分類することができる。各ハプログループは、数個〜20個程度のmtSNPによって特徴付けられる。例えば、ハプログループFは、8701、9540、10398、10873、15301、16519、12705、16223、16183、16519、3970、13928、16304、248、6392、10310等の位置にmtSNPを有している(その他のハプログループについても、同様の状況が存在する)。ハプログループ分類をするために、これら全てのmtSNPを調べようとするのは、大変な労力が掛かるため大規模な研究には向きにくい。しかしながら、これらのうちのいずれのmtSNPを選択・検出すれば、適切にハプログループを分類することが可能であるかについては明確には知られていなかった。加えて、選択した各mtSNPを迅速かつ的確に検出する方法については開発が十分に進んでいなかった。
【0007】
そこで、本発明者らは、鋭意検討の結果、ミトコンドリアゲノムのコード領域における包括的な多型分析を基にして、全部で186個の核酸プローブを用いて、所定部位の多型を認識する遺伝子検出方法の開発に成功した。この方法により、日本人において少なくとも主要な10個〜12個のハプログループ(10個の場合には、F,B,A,N9a,M7a,M7b,G1,G2,D4及びD5である。11個の場合には、これら10個にM7cを追加することができる。また、12個の場合には、これら11個にN9bを追加することができる。)を分類することにより、基本的には本発明を完成するに至った。
【0008】
つまり、各ハプログループが持っている数個〜20個程度のmtSNPのうち、適当に1個〜5個のmtSNPを選択することにより、表1〜表3に示すmtSNPsを検出すれば、ハプログループの分類が可能であること、及びそのための効率的な検出方法を開発した。
この遺伝子検出方法を利用することにより、上記各ハプログループと、4種類の疾患(すなわち、メタボリックシンドローム(MS)、2型糖尿病、心筋梗塞、及びアテローム血栓性脳梗塞)との関係を大規模に解析した。その結果、次のことがわかった。
【0009】
MSにおいては、ハプログループN9a、G1及びD5において、特に女性の場合には、疾患に対する抵抗性が認められた。
2型糖尿病においては、ハプログループFを持つ者は罹患する危険性が高いこと、ハプログループN9aを持つ者は疾患に対する抵抗性を有すること(特に、女性の場合)、および女性の場合にはハプログループAを持つ者は罹患する危険性が高いことがわかった。
心筋梗塞においては、ハプログループN9bを持つ者が疾患に対する抵抗性を有すること、及びハプログループG1を持つ者は罹患する危険性が高いこと(特に、男性の場合)がわかった。
アテローム血栓性脳梗塞においては、ハプログループAを持つ者は、罹患する危険性が高いこと(特に、女性の場合)がわかった。
【0010】
こうして、上記課題を解決するために、第一の発明に係るヒトミトコンドリアDNAに関する遺伝子検出法は、ヒトミトコンドリアDNAにおいて、配列番号57〜配列番号242に記載の塩基配列を備えた186個の核酸プローブが認識する多型部位のうちの少なくとも5個以上の多型部位を検出することを特徴とする。配列番号57〜配列番号242に記載の塩基配列を備えた186個の核酸プローブは、後述のように、適当な目的(すなわち、aが多型チェック用、bが野生型認識用、pがPCR産物チェック用、mがマクロハプログループMチェック用、nがマクロハプログループNチェック用である)のために設計されたものである。すなわち、これらの核酸プローブは有用な多型部位を認識できることがわかっていることから、これらの多型部位から少なくとも5個以上の多型部位を検出することにより、後述の効果を持つ検出方法とできる。
第一の発明においては、次のmtSNPによってグループ分けされる少なくとも10個のハプログループ、すなわち3970T、13928A、10310Aを有するハプログループFと、8272の9bp欠失を有するハプログループBと、663G、8794Tを有するハプログループAと、5231A、12358G、12372Aを有するハプログループN9aと、2772T、4386Cを有するハプログループM7aと、4071T、4048A、6680C、12811Cを有するハプログループM7bと、709A、4833G、5108C、8200C、15497Aを有するハプログループG1と、709A、4833G、5108C、13563Gを有するハプログループG2と、4883T、5178A、3010Aを有するハプログループD4と、4883T、5178A、10397Gを有するハプログループD5とを検出することが好ましい。
また、これら10個のハプログループに加えて、4071T、4850Tを有するハプログループM7cを合わせた少なくとも11個のハプログループ、或いは、更に11016A、14893Gを有するハプログループN9bを合わせた少なくとも12個のハプログループを検出することもできる。
【0011】
本明細書中において、多型の記載方法は、次の通りである。原則として、各遺伝子について、「多型が生じている位置、データベースに登録されている塩基(A:アデニン、G:グアニン、C:シトシン、T:チミン)>多型塩基」の順で記載する。例えば、「5231G>A」は、5231位のGがAとなっている多型を意味している。また、その多型が生じている遺伝子(rRNAまたはmRNA)の位置について、カッコ書きで情報を示すことがある。例えば、「5231G>A(ND2:syn)」とは、上記多型について、ND2遺伝子において、アミノ酸の変異を伴わない多型(synonymous mutation)であることを意味している。但し、挿入あるいは欠失多型については、「多型が生じている位置(欠失または挿入に関する塩基情報)」の順で記載する。例えば、「8272(9-bp deletion in non-coding region)」とは、8272位の非コード領域における9個の塩基の欠失多型であることを意味している。また、順方向(forward strand)に読んでA/G多型としてデータベースに記録されている場合であっても、逆方向(reverse strand)で読むとT/C多型となる。多くの文献について、「T/C」多型として記載されている場合には、データベース中の記録であるA/G多型と異なることがある。
【0012】
一般にミトコンドリアDNA多型(mtSNPs)或いはミトコンドリアDNAハプログループは、対象となる集団(例えば、日本人・中国人・韓国人を含む東アジア人集団、西洋人集団など)が異なると、その種類・頻度が異なる。このため、日本人以外の集団において、疾患との関係が指摘されているハプログループであっても、必ずしも日本人集団においてそのような関連が認められるわけではない。このため、従来の報告については、集団または疾患が異なる場合には、必ずしも日本人におけるハプログループおよび疾患との関連が裏付けられるわけではない。
【0013】
本発明において、mtSNPを検出する方法としては、従来公知の方法、例えばDNAシークエンス、DNAチップ(或いはDNAマイクロアレイ)、RFLP、PCR−SSOP−Luminex法などの方法を用いることができる。これらの中でも、PCR−SSOP−Luminex法を用いることが好ましい。PCR−SSOP−Luminex法を用いることにより、数百個程度の多型であれば迅速に測定することができる。なお、同方法の詳細については後に詳述する。
第一の発明においては、ヒトミトコンドリアDNAを含む試料から前記10個或いは12個のハプログループが有するmtSNPを含む塩基配列をDNAプライマーを用いてPCR法によって増幅するPCR工程、このPCR工程によって増幅されたDNAフラグメントと前記mtSNPのいずれか一つを認識する核酸プローブとをハイブリッドさせるハイブリッド工程、前記核酸プローブによって認識されたmtSNPを検出する検出工程とを含むことが好ましい。
【0014】
DNAプライマーとしては、適当な長さ(例えば、10塩基以上、好ましくは15塩基以上)のものを合成して用いることができる。PCR工程によって合成されるDNAフラグメントは、表1〜表3に記載のmtSNPを含むものであれば適当な長さのもの(例えば、50塩基対(100塩基対、または150塩基対)〜3000塩基対(2000塩基対、または1000塩基対)の範囲で適当な長さに選択できる)が合成されるようにして、DNAプライマーを設計することができる。また、DNAフラグメントの長さは、190塩基対〜520塩基対であることが好ましい。
DNAプライマーについては、配列番号1、配列番号2、配列番号5、配列番号6、配列番号11〜配列番号18、配列番号21、配列番号22、配列番号25〜配列番号28、配列番号33〜配列番号44、配列番号49〜配列番号52に記載のものを用いることにより、17種類のDNAフラグメントを合成することが好ましい。
【0015】
核酸プローブは、全長が15塩基〜40塩基であり、かつ検出すべきmtSNPの位置が5’末端または3’末端から5塩基以上内側に位置させることが好ましい。核酸プローブのTmは、任意に設定することができるが、一般的にDNAフラグメントの二重鎖をほどいて変性させるための温度である90℃程度よりも十分に低く、かつ室温である25℃よりも十分に高いことが好ましい。そのような温度設定としては、40℃〜70℃(好ましくは、45℃〜65℃)を選択することができる。Tmとしては、簡易式として、4℃x(GまたはC数)+2℃x(AまたはT数)を用いることができる。
また、核酸プローブをDNAフラグメントとハイブリッドさせる際には、複数の核酸プローブを用いる場合に同じ温度設定で実施できることが操作上の簡易性の観点から見て好ましい。そのため、全ての核酸プローブのTmを適当な範囲に収まるように設計することが好ましい。例えば、ハイブリッド工程における温度から20℃(好ましくは15℃)程度までの範囲に収めることが好ましい。例えば、ハイブリッド工程が52℃で行われる場合には、Tmを50℃(好ましくは52℃)〜70℃(好ましくは67℃)の範囲に設定することが好ましい。
【0016】
そのような核酸プローブとして、10個のハプログループを検出する場合には、配列番号66、配列番号74、配列番号75、配列番号78、配列番号83、配列番号86、配列番号88、配列番号90、配列番号99、配列番号107、配列番号115、配列番号116、配列番号128、配列番号133、配列番号134、配列番号147、配列番号157、配列番号158、配列番号163、配列番号174、配列番号181、配列番号188、配列番号193、配列番号221、配列番号222に記載のものを用いることが好ましい。また、12個のハプログループを検出する場合には、更に配列番号138、配列番号180、配列番号213に記載の核酸プローブを用いることが好ましい。
【0017】
遺伝子検出方法としては、PCR−SSOP−Luminex法を用いることが好ましい。この方法は、G&Gサイエンス社が主体となって開発されたものである(非特許文献20)。但し、この方法をmtSNPに応用するのは本発明者らが始めてである。この方法を用いるためには、DNAプライマーはビオチン化されており、核酸プローブは固相化されていると共に、検出工程においては、ストレプトアビジンに結合した蛍光色素を用いることが好ましい。また、核酸プローブは、3’或いは5’の末端のいずれかを固相化、或いは末端ではない適当な位置を固相化しても良い。また、固相化用の担体としては、平板状(プレート)或いは球状のものを用いることができる。
【0018】
第二の発明におけるヒトミトコンドリアDNAに関する遺伝子検出用キットは、ヒトミトコンドリアDNAにおいて、配列番号57〜配列番号242に記載の塩基配列を備えた186個の核酸プローブが認識する多型部位のうちの少なくとも5個以上の多型部位を検出する核酸プローブを備えることができる。また、この発明においては、次のmtSNPによってグループ分けされる少なくとも10個のハプログループ、すなわち3970T、13928A、10310Aを有するハプログループFと、8272の9bp欠失を有するハプログループBと、663G、8794Tを有するハプログループAと、5231A、12358G、12372Aを有するハプログループN9aと、2772T、4386Cを有するハプログループM7aと、4071T、4048A、6680C、12811Cを有するハプログループM7bと、709A、4833G、5108C、8200C、15497Aを有するハプログループG1と、709A、4833G、5108C、13563Gを有するハプログループG2と、4883T、5178A、3010Aを有するハプログループD4と、4883T、5178A、10397Gを有するハプログループD5とを検出するための核酸プローブを備えたことを特徴とする。本発明においては、前記10個のハプログループに加えて、11016A、14893Gを有するハプログループN9bと、4071T、4850Tを有するハプログループM7cを合わせた少なくとも12個のハプログループを検出するための核酸プローブを備えることができる。
【0019】
また、本発明においては、前記ハプログループが有するmtSNPを含む塩基配列をPCR法によって増幅可能なビオチン化されたDNAプライマーセットと、前記ハプログループが有するmtSNPを検出するための核酸プローブが固相化された担体と、ストレプトアビジンに結合した蛍光色素とを備えることが好ましい。そのようなDNAプライマーセットとして、配列番号1、配列番号2、配列番号5、配列番号6、配列番号11〜配列番号18、配列番号21、配列番号22、配列番号25〜配列番号28、配列番号33〜配列番号44、配列番号49〜配列番号52に記載のものを用いることができる。
【0020】
また、核酸プローブとしては、ハプログループが10個の場合には、配列番号66、配列番号74、配列番号75、配列番号78、配列番号83、配列番号86、配列番号88、配列番号90、配列番号99、配列番号107、配列番号115、配列番号116、配列番号128、配列番号133、配列番号134、配列番号147、配列番号157、配列番号158、配列番号163、配列番号174、配列番号181、配列番号188、配列番号193、配列番号221、配列番号222に記載のものを用いることができる。また、ハプログループを11個とする場合には、配列番号180に記載の核酸プローブを、12個とする場合には、更に配列番号138、配列番号213に記載の核酸プローブを用いることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、日本人のmtDNAのハプログループを簡易に検出することができる。このハプログループ分類により、各種の疾患(例えば、MS、2型糖尿病、心筋梗塞、アテローム血栓性脳梗塞など)の遺伝的危険度を予測することができる。この発明を用いることにより、各種の疾患に対する予防が可能となり、高齢者の健康寿命延長・QOL向上・ねたきり防止ならびに今後の医療費削減など、医学的・社会的に大きく貢献できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
次に、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明するが、本発明の技術的範囲は、これらの実施形態によって限定されるものではなく、発明の要旨を変更することなく様々な形態で実施することができる。また、本発明の技術的範囲は、均等の範囲にまで及ぶものである。
【0023】
<ハプログループ分類のためのミトコンドリア多型の選択>
1.10個のハプログループへの分類
本発明者らが作製したヒトミトコンドリアゲノム多型データベース (http://www.giib.or.jp/mtsnp/index_e.shtml) 及び日本人の系統樹(非特許文献13)を使用して、ミトコンドリアハプログループの分類に有用である166個の多型部位を選択した。更に、本発明者らの鋭意検討に基づき、日本人集団において発見された10個の主要なハプログループ(F,B,A,N9b,M7a,M7b,G1,G2,D4,及びD5)を定義するmtSNPsを選択した。これらのmtSNPsを表1に示した。
【0024】
【表1】

【0025】
表中、左欄より順に、ハプログループ(Haplogroup)、及び各ハプログループを代表する多型(Polymorphism)を示している。また表中、「*」はアミノ酸の変異を伴わない多型(synonymous mutation)であることを示している。
2.11個または12個のハプログループへの分類
更に、上記10個に加えて、M7cを加えた11個のハプログループを定義するmtSNPs、及び更にN9bを加えた12個のハプログループを定義するmtSNPsを選択した。これらのmtSNPsを表2及び表3に示した。
【0026】
【表2】

【0027】
【表3】

【0028】
表中、左欄より順に、ハプログループ(Haplogroup)、および各ハプログループを代表する多型(Polymorphism)を示している。また表中、「Syn」はアミノ酸の変異を伴わない多型(synonymous mutation)であることを示している。
<多型の遺伝子タイピング>
被験者である日本人から50mmol/L EDTA(ジナトリウム塩)を含む試験管に、7mLの静脈血を採取し、市販のキット(Genomix, Talent, Trieste, Italy)を用いてDNA(ヒトmtDNAを含む試料)を分離した。
DNAをPCR法によって増幅するPCR工程を実施した。このとき使用したDNAプライマーを表4及び表5に示した。表4中のDNA配列は、配列番号1〜配列番号28として、配列表に示した。また、表5中のDNA配列は、配列番号29〜配列番号56として、配列表に示した。これらの配列番号のうち、10個〜12個のハプログループを同定するために必要なDNAフラグメントを合成するためのDNAプライマーは、配列番号1、配列番号2、配列番号5、配列番号6、配列番号11〜配列番号18、配列番号21、配列番号22、配列番号25〜配列番号28、配列番号33〜配列番号44、配列番号49〜配列番号52に記載の34個のものである。これら34個のDNAプライマーを利用することにより、17種類のDNAフラグメントが合成される。本実施形態においては、更に11種類の別のDNAフラグメントを合成するためのDNAプライマーの塩基配列が用いられた。
【0029】
【表4】

【0030】
【表5】

【0031】
表中、左よりフラグメント番号(Fragment)、フォワードプライマー(Forward primer)における位置(positon)及びその塩基配列(Sequence(5'→3'))、リバースプライマー(Reverse primer)における位置(Position)及びその塩基配列(Sequence(5'→3'))、及びDNAフラグメント(Product)の長さ(bp)を示す。
ミトコンドリアの多型は懸濁液アレイ技術(Luminex 100; Luminex, Austin, TX)を用い、シーケンス特異性オリゴヌクレオチド試験法(G&Gサイエンス株式会社、日本)で決定した。詳細な方法については、既報のもの(非特許文献20)を基本として、適宜に増幅条件を変えて行った。なお、条件については、後に詳述する。
【0032】
また、ハプロタイピングのために使用した核酸プローブの塩基配列を表6〜表11に示した。今回のタイピングには、最大で100種類の多型の判定が行えるものを用いた。本発明に係る10個のハプログループを同定するためには、少なくとも配列番号66(3010a)、配列番号74(4048a)、配列番号75(4071a)、配列番号78(4386a)、配列番号83(4833a)、配列番号86(5108a)、配列番号88(5178a)、配列番号90(5231a)、配列番号99(8272a)、配列番号107(8794a)、配列番号115(10310a)、配列番号116(10397a)、配列番号128(12811a)、配列番号133(13563a)、配列番号134(13928a)、配列番号147(15497a)、配列番号157(663a)、配列番号158(709a)、配列番号163(2772a)、配列番号174(3970a)、配列番号181(4883a)、配列番号188(6680a)、配列番号193(8200a)、配列番号221(12358a)、配列番号222(12372a)に記載の塩基配列を備えた核酸プローブを用いればよい。また、11個のハプログループを同定するには、これらに加えて、配列番号180(4850a)に記載の核酸プローブを用いればよい。12個のハプログループを同定するには、更に配列番号138(14893a)、配列番号213(11016a)に記載の核酸プローブを用いればよい。本実施形態では、これらのmtSNPよりも多くのSNPを検出するための多くの核酸プローブが開示されている。
本実施形態においては、186種類の核酸プローブを用いるために、全体を100種類のセット(プローブセットA)と86種類のセット(プローブセットB)とに分けて、タイピングを行った。表6〜表8にはプローブセットAの詳細を、表9〜表11にはプローブセットBの詳細を示した。
【0033】
【表6】

【0034】
【表7】

【0035】
【表8】

【0036】
【表9】

【0037】
【表10】

【0038】
【表11】

【0039】
表6〜表8については、第1のセット(プローブセットA)について、mtDNAにおける位置(Position)、目的(Purpose)、プローブの塩基配列(Sequence)を示している。また、目的の欄については、「a」が多型チェック用、「b」が野生型チェック用、「p」がPCR産物チェック用、「m」及び「n」がマクロハプログループチェック用のものであることを示している。表9〜表11については、第2のセット(プローブセットB)について、上記と同じ意味である。各塩基配列については、配列番号57〜配列番号242として、配列表に示した。
【0040】
PCR−SSOP−Luminex法
方法の基本的な考え方は、非特許文献20に記載の通りである。以下には、この方法をmtSNPに応用した本実施形態の方法について説明する。
図1には、Luminex100フローサイトメトリーで検出するマイクロビーズ(本発明における固相に該当する)の微細構造と特徴を示した。マイクロビーズ(図中の符号(A))は、直径が約5.5μm程度であり、ポリスチレン製である。ビーズ表面にはカルボキシル基が存在している。このカルボキシル基と、アミノ修飾された核酸プローブとを結合することにより、ビーズ表面に核酸プローブが結合されている(本発明における核酸プローブの固相化に該当する)。各ビーズには、一種類の核酸プローブが結合されている。このマイクロビーズには、赤色色素と赤外色素との二種類の色素が割合を変化させつつ配されている(Multi-Analyte Microsphere Carboxylated: Luminex, オースチン社(Austin)、米国テキサス州)。こうして、図中の符号(B)に示すように、最大で100種類のものを混合した状態で、各ビーズの同定が行えるようになっている。
【0041】
複数種類の核酸プローブを備えたマイクロビーズ(但し、各マイクロビーズには一種類の核酸プローブのみ)を適当な割合で混合し、100ビーズ/μLとなるようにしたビーズミックスを調製した(図中の符号(C))。
本実施例においては、表6〜表8に記載の100種類のプローブを第1セット(セットA)とし、表9〜表11に記載の86種類のプローブを第2セット(セットB)として、2セットを用いることで、合計186種類の多型を検出可能な検出系とした。これら186種類のプローブを用いることにより、ヒトミトコンドリアDNAを少なくとも12種類のハプログループ(F,B,A,N9a,N9b,M7a,M7b,M7c,G1,G2,D4及びD5)に分類することができる。
【0042】
図2には、PCR−SSOP−Luminex法の手順を示した。
<PCR工程(Amplification)>
目的とするDNAフラグメントを増幅するPCR反応には、5’末端をビオチン化したプライマーを用いた。mtDNAフラグメントを増幅するために28−plex PCRを行った。2mM塩化マグネシウムを含む1xPCR溶液(30mM KCl、20mM Tris−HCl、pH8.3)、2.5%DMSO、0.2mM dNTPs、0.1μMずつのプライマーセットを混合し、Taq DNAポリメラーゼ(0.625U)と1ngのゲノムDNAを加えて25μLとした。PCR反応は、95℃で10分間処理の後、94℃で20秒間の変性、60℃で30秒間のアニーリング、及び72℃で30秒間の伸長を1サイクルとし、これを50サイクル繰り返した。最後に、72℃で7分間の伸長反応を行った。機器としてGeneAmp9700サーマルサイクラー(アプライドバイオシステムズ社製)を用いた。
【0043】
<ハイブリッド工程(Hybridization)>
増幅したDNAを変性した後、ビーズミックスとハイブリダイズさせた。96ウエルプレートの各ウエルに、5μLの増幅反応後のPCR増幅液、5μLのビーズミックス、及び40μLのハイブリダイズ用緩衝液(1.5M TMAC、62.5mM TB(pH8.0)、0.5mM EDTA、0.125% N−ラウロイルザルコシン)を添加し、全量50μLとした。この混合液を添加した96ウエルプレートについて、95℃で2分間の変性、及び52℃で30分間のハイブリダイゼーションを行った(GeneAmp9700サーマルサイクラーを用いた。)。
図2中には、増幅したDNAを認識するプローブを有するビーズ(1)のみが、DNAと結合する様子が示されている。
【0044】
<ストレプトアビジン−フィコエリトリン反応(SA−PE Reaction)>
次に、上記ビーズミックス−DNAをSA−PEと反応させた。ハイブリッド工程の後、各ウエルに75μLのPBS−Tween(1xPBS(pH7.5)、0.01% Tween−20)を添加し、1000xgで5分間の遠心を行い、上清を取り去った後、再度100μLのPBS−Tweenを添加し、1000xgで5分間の遠心を行い、上清を取り去ることで、マイクロビーズを洗浄した。各ウエルに残ったマイクロビーズに、それぞれ70μLのSA−PE溶液(PBS−Tweenにより、市販品(G&Gサイエンス株式会社製)を100倍希釈したもの)を添加し混合した後、52℃で15分間の反応を行った(GeneAmp9700サーマルサイクラーを用いた。)。
図2中には、ビーズ(1)のプローブにのみビオチン化DNAが結合しているので、そのビオチンにSA−PEが結合する様子が示されている。
【0045】
<検出工程(Measurement)>
次に、反応後のサンプルはLuminex100を用いて、ビーズ種類の同定と、そのビーズにPEが結合しているか否かを検出した。検出には、2種類のレーザを使用して行った。ビーズの種類については、635nmレーザにより同定し、PE蛍光については、532nmレーザを用いて定量した。オリゴビーズに結合したDNAは1測定あたり各々のビーズを最低50個ずつ測定し、定量されたPEの蛍光強度の中央値(MFI)を使用した。
図2中には、各ビーズ(1)〜(3)が同定され、かつビーズ(1)にのみPEが測定されたことから、ビーズ(1)に結合させたプローブが認識するDNAが増幅された様子が示されている。
【0046】
この方法に拠る遺伝子タイピングの精度を確かめるために、91個のDNAサンプルを材料に使用した。これらのDNAサンプルは、ミトコンドリアゲノムの全塩基配列が直接シーケンスによって既に決定されているものである。各例において、ルミネックスシーケンス特異性オリゴヌクレオチドハイブリッドアッセイシステム(PCR−SSOP−Luminex法)によって決定された遺伝子型は、直接シーケンスによって決定されたものと一致した。
【0047】
1.メタボリックシンドロームへの応用
研究対象は、互いに血縁関係の無い40歳以上の日本人1337名(男性883名、女性454名)であった。対象者は、2002年10月から2005年3月の間に、3つの研究参加病院(岐阜県立岐阜病院、多治見病院及び下呂温泉病院)の1つを外来した受診者、或いは入院者である。診断は、成人治療パネルIII(非特許文献16)により提唱されたメタボリックシンドローム(MS)に関する修正定義に基づいて行った。この修正版は、スコットランド西部冠動脈疾患予防研究(非特許文献17)及び女性の健康に関する研究(非特許文献18)においても使用されたものである。但し、それらの研究では、ウエストサイズの代わりに体重指標(BMI)が採用されている。日本人及び他のアジア人集団においては、肥満指標のためのBMI基準を改訂する必要性が最近認識されている(非特許文献19)。このため、我々はこの改定基準を基にして、BMI値が25kg/m以上の者を肥満者とした。
【0048】
対象者が次の5つの因子の内の3つ以上を持っている場合にMSであると診断した。5つの因子とは、(1)25kg/m以上のBMI、(2)トリグリセリド血清濃度が1.65mmol/L(150mg/dL)以上、(3)HDLコレステロール血清濃度が、男性では1.04mmol/L(40mg/dL)未満、女性では1.30mmol/L(50mg/dL)未満、(4)収縮期血圧が130mmHg以上、かつ拡張期血圧が85mmHg以上、及び(5)絶食時血漿グルコース濃度が6.05mmol/L(110mg/dL)以上の5個である。
【0049】
これらの基準に基づき、871名(男性584名、女性287名)がMS患者であると診断された。対照群は、総数466名(男性299名、女性167名)である。対照群者は、参加病院に年に一度の健康チェックのために外来受診した者達である。これらの者は、MSの5つの基準のうちのいずれも有していなかった。また、肥満、高脂血症、異常脂血症、高血圧症、或いは糖尿病の既往歴も何ら有していなかった。代謝性もしくは内分泌性疾患の患者、或いは二次性の糖尿病を引き起こす薬剤を服用する者は、本研究の対象からは除外した。研究プロトコルは、岐阜県国際バイオ研究所のヒト研究に関する倫理委員会により承認され、また各参加者からは個別に書面によるインフォームドコンセントを得た。
上記対象者について、10個のハプログループへの分類を行うため、PCR−SSOP−Luminex法を実施した。
【0050】
<統計的分析>
量的な臨床データは、MS罹患群と対照群との間で、対応のないスチューデントt検定を用いて比較した。質的なデータは、カイ二乗検定によって比較した。
MSと関連する多型は、交絡因子を含む多項ロジスティック回帰分析法により解析した。このとき、交絡因子については、年齢(age)、性別(gender:0=女性、1=男性)、喫煙状態(smoker:0=非喫煙、1=喫煙)、及び各mtSNPの遺伝子型を独立変数とし、MSを従属変数とした。P値、オッズ比(OR)、及び95%信頼区間(CI)を計算した。特に説明しない限り、0.05未満のP値は統計上有意であると考えた。
【0051】
ハプログループを多重比較するために、ボンフェローニ(Bonferroni)の補正を適用した。我々は、10個のハプログループを調べたので、0.05を10で除して、0.005とした。こうして、0.005未満のP値を統計上有意であると見なした。
【0052】
<結果>
1337名の被験者に関する基礎的データを表12に示した。
【表12】

【0053】
表中において、最左欄は上段から順に、年齢(Age)、性別(女性/男性)(Gender)、BMI(Body mass index)、喫煙率(Smoker)、高血圧(Hypertension)、収縮期血圧(Systolic blood pressure)、拡張期血圧(Diastolic blood pressure)、高脂血症(Hypercholesterolemia)、全コレステロール(Total cholesterol)、中性脂肪(Triglycerides)、HDL−コレステロール(HDL-cholesterol)、糖尿病(Diabetes mellitus)、空腹時血糖値(Fasting blood glucose)、ヘモグロビンAlc(Glycosylated hemoglobin)を意味している。また、最上段は左から順に、被験者全員(All subjects)におけるMS群(MS)の値と対照群(Controls)の値とP値(P value)、女性(Women)におけるMS群の値と対照群の値とP値、男性(Men)におけるMS群の値と対照群の値とP値とをそれぞれ示している。また、各値において、「±」が付してあるものは、平均値±SDで示した。喫煙率については、1日あたり10本以上の喫煙数がある者を喫煙者とした。高血圧については、収縮期血圧が140mmHg以上、または拡張期血圧が90mmHg以上、或いは両基準を満たす者、または高血圧薬を服用している者とした。糖尿病については、絶食時血漿グルコース濃度が126mg/dL(6.93mmol/L)以上、またはヘモグロビンAlcが6.5%以上、或いは両基準を満たす者、または抗糖尿病薬を服用している者とした。高脂血症については、全コレステロール値が220mg/dL(5.72mmol/L)以上、または高脂血症剤を服用している者とした。
【0054】
年齢及び性別(女/男比率)については、いずれもMS罹患群と対照群との間で統計的な差異は認められなかった。BMI、トリグリセリド、絶食時血糖濃度、及びヘモグロビンAlc(HbA1c)比率は、対照群に比べるとMS罹患群においては有意に高かった。HDLコレステロールはMS罹患群では対照群に比べて有意に低かった。喫煙率、高血圧症、高コレステロール血症及び真性糖尿病は、対照群に比較してMS罹患群では有意に高かった。
年齢、性別、喫煙状態を補正して多項ロジスティック回帰分析を行った結果、P値が0.05未満で、ハプログループN9aがMSに対する抵抗性に関連した。また、ハプログループN9a,G1,D5の3グループの女性は、MSに対する抵抗性に関連することが明らかとなった(表13)。
【0055】
【表13】

【0056】
表中において、左欄より順に、変数(Variable)、P値(P value)、オッズ比(OR)、95%信頼区間(95%CI)を示している。また、上段より被験者全員(All subjects)における従来の危険因子(Conventional risk factors)である年齢(Age)・性別(Gender)・喫煙率(Smoking)と遺伝的危険因子(Genetic risk factors)であるハプログループN9aを、女性における従来の危険因子である年齢・喫煙率と遺伝的危険因子であるハプログループN9a、G1、D5を、男性における従来の危険因子である年齢・喫煙率と遺伝的危険因子(該当するハプログループなし)をそれぞれ意味している。
我々は、ハプログループの多重比較について、0.005未満のP値が得られた場合に、その関連が有意であると考えた。この基準に基づくと、ハプログループN9aは、女性ではMSに対する抵抗性に有意に関係していた。ステップワイズ前向き選択法の結果、女性については、ハプログループN9aがMSに対する保護因子であることが明らかになった(表14)。しかしながら、男性については、これらのハプログループのうちのいずれもMSとの関連は示されなかった。
【0057】
【表14】

【0058】
女性の場合は、ステップワイズ前向き選択法の結果、年齢、ハプログループN9a,G1及びD5が、MSに対して独立的な危険因子、或いは保護因子であることが明らかとなった。ハプログループN9a,G1及びD5のMSからの保護作用についての全体としての貢献度は、0.0361であった。これは女性の場合には、ミトコンドリアゲノム多型がMSに対する感受性に影響する重要な遺伝因子であることを示している。
表15には、mtSNPsのうち、MSに対する保護因子或いは危険因子として関連するものを示した。
【0059】
【表15】

【0060】
表中、「*」は表1において示すように、10個のハプログループを代表させるために用いた多型マーカであることを示している。また、表中の太字で示したP値は、0.005未満であることを示している。
年齢、性別及び喫煙状態を補正した多項ロジスティック回帰分析によれば、ハプログループD4aを代表するmtSNPである15314G>A(Cytb:A190T)が、全対象者でMSへの抵抗性に関連することが明らかとなった(P<0.05)。
更に、ハプログループN9aを代表する3個のmtSNPsである5231G>A、12372G>A、及び12358A>G、ハプログループN9a2a1を代表するmtSNPである15067T>C、及びサブハプログループG5b1bを代表するmtSNPである3759A>Gは、MSに対する抵抗性と関連があった。これと対照的に、3個のmtSNPs、すなわちサブハプログループF1を代表する12406G>A、サブハプログループD4b2bを代表する9296C>T、及びサブハプログループB4cを代表する15346G>Aは、MSへの感受性に関連があった(P<0.05)。
【0061】
女性の場合には、年齢及び喫煙状態を補正した多項ロジスティック回帰分析の結果、ハプログループN9aを代表する3個のmtSNPsである5231G>A、12372G>A、及び12358A>Gが、それぞれ危険率(P)が0.0009、0.0042、及び0.0042で、MSに対する抵抗性と関係することが明らかになった。更に、サブハプログループN9a2a1を代表するmtSNPである15067T>Cも、MSへの抵抗性と関係していた。
ハプログループG1を代表する2個のmtSNPsである8200T>C及び15497G>A、サブハプログループG1aを代表するmtSNPである15860A>G、サブハプログループG5b1bを代表するmtSNPである3759A>Gは、MSに対する抵抗と関係があった。
【0062】
対照的に、2つのmtSNPs、即ちサブハプログループF1を代表する12406G>A、及びサブハプログループD5を代表する10397A>Gは、MSへの感受性と関係があった(P<0.05)。
男性の場合は、ハプログループN9b1を代表するmtSNPである5147G>AがMSへの感受性に関係があった(P<0.05)。
我々は166個の異なるmtSNPsに対して修正ボンフェローニ法を適用したが、これらのP値のうちのいずれも有意レベルが0.0003以下を示さなかった。
【0063】
表16に示すように、ステップワイズ前向き選択法によれば、ハプログループN9aを代表するmtSNPである5231G>Aが、女性の場合にはMSに対する保護因子であることが明らかとなった(P=0.0003)。
4個のmtSNPs、すなわち5231G>A、8200T>C、3759A>G、及び15314G>AのMSへの保護作用の全体としての貢献度は、0.0552であった。これは、女性の場合には、これらのmtSNPsがMSへの感受性に影響する重要な遺伝因子であることを示唆している。
【0064】
【表16】

【0065】
<考察>
我々は1337名に基づく大規模な関連解析を行い、10種類の主要なミトコンドリアハプログループのそれぞれとMSとの間の関係を調査した。これらのハプログループのうち、N9a、G1、及びD5の3つは、女性の場合には、MSに対する抵抗性と有意に関係していた。ハプログループN9aに特有なmtSNPsの大部分は、5231G>A及び12372G>Aを含む同義変異であるが、これらは本研究の遺伝子タイピングを行うのに使用した。
このハプログループにおいて、機能的な多型としては、150C>T及び338C>Tが候補として挙げられる。これらはミトコンドリアゲノムの非コード領域にある。150C>T置換はイタリアの百寿者で最初に報告された(非特許文献21)。また、以前に我々は、この置換がフィンランド人と日本人共に健康な長寿と関連していることを報告した(非特許文献22)。このように、150C>Tは、女性ではMSに対する抵抗性を付与する可能性がある。
【0066】
ハプログループM9aに特異的なmtSNPsのうちで、NADHデヒドロゲナーゼサブユニット5遺伝子産物(ND5)において、Thr8Ala置換を惹き起こす12358A>Gは、機能的な多型の一つであるかも知れない。
ND5はmtDNAにコードされたサブユニットの7個の内の一つであるが、これらのサブユニットは呼吸鎖複合体I(NADH:ユビキノン酸化還元酵素、EC1.6.5.3)の約41個のポリペプチドに含まれる。複合体Iは、NADHから電子を受け取り、それをユビキノン(補酵素Q10)に転送する。その際に得られたエネルギーを用いて、ミトコンドリア内膜を通してプロトンを輸送する。ND5は、おそらく疎水性蛋白質断片の構成成分である。このサブユニットは、複合体Iの機能には欠かすことができない。ND5遺伝子における各種のミスセンス変異(例えば、12706T>C(F24L)、12770A>G(E145G)、13045A>C(M237L)、13084A>T(S250C)、13513G>A(D393N)、13042G>A(A236T)、13730A(E465G))が、レーバー遺伝性視神経萎縮症(LHON)(非特許文献23)、リー症候群(非特許文献24)、或いはミトコンドリア性ミオパチー、脳症、乳酸アシドーシス及び脳卒中様症状を呈する症候群(MELAS)(非特許文献25)の患者において報告されている。従って、12358A>Gによって惹き起こされたThr8Ala置換がND5サブユニット及び複合体Iの機能に影響を及ぼす可能性がある。12358A>Gがミトコンドリアの機能に対して与える影響については、このハプログループを持つmtDNAを導入した細胞を用いた実験により調査されるべきである。
【0067】
150C>Tと12358A>Gの両SNPsを持つハプログループN9aを有する女性の代謝的特徴は、内臓肥満、インスリン抵抗性及び脂質代謝に影響を与え、それによってMSに対する抵抗性が与えられるものと考えられる。
ハプログループG1に特有のmtSNPsのなかでは、15323G>A(Cytb:A193T)または15497G>A(Cytb:G251S)のいずれかは、機能的多型のようである。
国立長寿医療研究センターの加齢に関する縦断的研究(NILS−LSA)の一部としての我々の以前の調査によれば、15497G>A(Cytb:G251S)が、日本人集団の中年及び年配者層における肥満と関係していることが明らかとなった(非特許文献26)。
【0068】
年齢及び喫煙状態を補正した統計解析によれば、15497Gを持つ女性に比較すると、15497Aを持つ女性では、体重、BMI、ウエスト及びヒップ廻りのサイズ、脂肪量、脂肪以外の質量、腹腔内脂肪、及びトリグリセリドが有意に大きい事が分かった。また、血漿インスリン濃度は、15497Gを持つ女性に比べると、15497Aを持つ女性の方が20%高かった。ところが、絶食時血漿グルコース及びヘモグロビンAlcは、2つの集団の間で有意差は見られなかった。これらの結果は、15497Aが、高血圧症、高血糖或いは高コレステロール血症(これらはMSを構成する因子である)を伴わない単純肥満に関係することを示唆している。こうして、15497Aを伴うハプログループG1がMSに対する抵抗性を獲得しているとの本研究の結果は、グルコース及びコレステロール代謝が15497A対立遺伝子を持つ女性では比較的正常であるとの我々の既報と一致するものである。ミトコンドリアの酸化的リン酸化系は、細胞活動のために必要な主要なエネルギー源である。上記の結果は、チトクロームbc1複合体におけるミトコンドリアのエネルギー保存効率の上昇によって、結果としてエネルギー消費の減少を惹き起こしたということかも知れない(非特許文献10)。別の可能性として、複合体IIIのユビキノン結合部位の一つであるQ0部位でユビキノンの還元を抑制することが、結果として脂肪酸のベータ酸化を減少させ、脂肪を蓄積させるのかも知れない。アンドリューらは、251位のグリシンがアスパラギン酸に置換された場合に、Qp部位にある271位のグルタミン残基との間の電荷反撥を惹き起こすので、Mt15498G>A突然変異に起因するG251D置換が病因であると主張している(非特許文献27)。この置換は、Qp部位の構造を変え、ヒドロキノン結合を損なう可能性がある。251位のグリシンをセリンに置換しても、271位のグルタミン酸との間に電荷反発を惹き起こさないと考えられるが、この置換がQp部位に対するユビキノンの親和性に影響を及ぼすことは推測し得る。
【0069】
我々は、ハプログループD5に関しても、同様にmtSNPデータベース(http://www.giib.or.jp/mtsnp/search_mtSNP_e.html)を用いて、ミトコンドリアゲノムにおける機能的なmtSNPsを探索した。ハプログループD5に属するサブハプログループの間で、サブハプログループD5a1、D5a2、及びD5b2は、日本人集団においては高頻度に観察される。我々の以前の研究によれば、3名の日本人の百寿者(個体番号TCsq0012(女性、100歳)、個体番号GCsq0022(男性、102歳)、個体番号TCsq0030(女性、100歳))は、各々ハプログループD5a1、D5a2、及びD5b2を持っていた(非特許文献13、図1B)。また、我々は、5178C>A多型(ND2:L237M)を特徴とするハプログループDが長寿に関係していること、及びこの多型が加齢に関連する疾患に対する抵抗性を与えるということを報告している(非特許文献8)。5178C>Aに加え、更にハプログループD5を持つ者は、ミトコンドリアゲノムの非コード領域に150C>T塩基多型を持っている。150C>T変異が、日本人百寿者とフィンランドの90歳以上の高齢者の両者において、各々の対照群に比較してより頻繁に検出されることを我々は最近報告した(非特許文献22)。今回の研究で明らかとなったように、ハプログループD5がMSに対して防御的効果を示すという結果は、150C>Tが長寿と関係しているという以前の我々の報告に一致するものである。
【0070】
ミトコンドリアには組換え機構が存在しないので、各ハプログループ或いはサブハプログループにおけるmtSNPsの全ては、相互に強固にリンクしている。従って、今回の研究において調査されたmtSNPsのあるものが、MSに対する抵抗性を担っている他のミトコンドリア遺伝子の機能的多型と、連鎖不平衡の関係にあるということがあり得る。
女性の場合、ハプログループN9a、G1及びD5は、MSに対する抵抗性と関連していた。一方、男性の場合には、このような関係は見出されなかった。遺伝的変異が肥満に関係する度合いが、男性に比して女性ではより高いとの考えを支持する他の証拠がある(非特許文献28、29)。クマジーらは、性相互作用により遺伝子型を導入し、脂肪重量をメンデル混合モデルにて分析したところ、男性では脂肪重量の分散値全体の37%を主な遺伝子が担い、一方女性では43%が担っていた(非特許文献)。しかしながら、我々の知る限りでは、mtDNA多型とMSとの関係における性別の影響に関してほとんど報告がない。以前の関連解析には、核遺伝子多型とMSとの関係について調査がされている。
【0071】
山田らは、アポリポ蛋白A−V遺伝子プロモーター領域における単一ヌクレオチド多型がMSと関係することを示した(投稿中)。これらmtSNPs及び核SNPsの遺伝子タイピングは、MSの遺伝的危険度を予測するのに有益であり、かつMSの一次予防に貢献できる。
このように、本実施形態によれば、日本人のmtDNAを10個のハプログループに分類することにより、ハプログループとMSとの関係が示された。
【0072】
2.2型糖尿病への応用
研究対象は、互いに血縁関係の無い40歳以上の日本人2906名(男性1938名、女性968名)であった。対象者は、2002年10月から2005年3月の間に、3つの研究参加病院(岐阜県立岐阜病院、多治見病院および下呂温泉病院)の1つを外来した受診者、或いは入院患者であった。2型糖尿病患者は、絶食時血漿グルコースレベルが6.99mmol/L(126mg/dL)以上、またはヘモグロビンAlc(Glycosylated hemoglobin)濃度が6.5%以上を示す者、或いは糖尿病に対する薬物治療下にあった。2型糖尿病は、世界保健機構により承認された基準に従って定義した。これらの基準に基づいて、研究対象集団中の1289名の被験者(男性890名、女性399名)が、2型糖尿病患者であると診断された。残りの1617名(男性1048名、女性569名)は対照群とした。対照群は、研究参加病院に例年の健康チェックのために外来受診した者である。対照群は、絶食時血漿グルコースレベルが6.11mmol/L(110mg/dL)未満であり、ヘモグロビンAlcが5.6%未満を示し、かつ2型糖尿病の既往歴ならびに2型糖尿病に対する薬物治療を受けた経験が無い者であった。
研究プロトコルは、岐阜県国際バイオ研究所のヒト研究に関する倫理委員会により承認され、また各参加者からは個別に書面によるインフォームドコンセントを得た。
上記対象者について、10個のハプログループへの分類を行うため、PCR−SSOP−Luminex法を実施した。
【0073】
<統計的分析>
数量的な臨床データは、2型糖尿病患者群と対照群との間で、対応のないスチューデントt検定を用いて比較した。質的なデータは、カイ二乗検定によって比較した。
2型糖尿病と関連する多型は、交絡因子を含む多項ロジスティック回帰分析法により解析した。このとき、交絡因子については、年齢(age)、性別(gender:0=女性、1=男性)、喫煙状態(smoker:0=非喫煙、1=喫煙)、および各mtSNPの遺伝子型を独立変数とし、2型糖尿病を従属変数とした。P値、オッズ比(OR)、および95%信頼区間(CI)を計算した。特に説明しない限り、0.05未満のP値は統計上有意であると考えた。
【0074】
ハプログループを多重比較するために、ボンフェローニ(Bonferroni)の補正を適用した。我々は、10個のハプログループを調べたので、0.05を10で除して、0.005とした。こうして、0.005未満のP値を統計上有意であると見なした。
【0075】
<結果>
2906名の被験者に関する基礎的データを表17に示した。
【表17】

【0076】
表中において、最左欄は上段から順に、年齢(Age)、性別(女性/男性)(Gender)、BMI(Body mass index)、喫煙率(Smoker)、高血圧(Hypertension)、収縮期血圧(Systolic blood pressure)、拡張期血圧(Diastolic blood pressure)、高脂血症(Hypercholesterolemia)、全コレステロール(Total cholesterol)、中性脂肪(Triglycerides)、HDL−コレステロール(HDL-cholesterol)、空腹時血糖値(Fasting blood glucose)、ヘモグロビンAlc(Glycosylated hemoglobin)を意味している。また、最上段は左から順に、被験者全員(All subjects)における2型糖尿病患者群(Type 2 diabetes)の値と対照群(Controls)の値とP値(P value)、女性(Women)における2型糖尿病患者群の値と対照群の値とP値、男性(Men)における2型糖尿病患者群の値と対照群の値とP値とをそれぞれ示している。また、各値において、「±」が付してあるものは、平均値±SDで示した。喫煙率については、1日あたり10本以上の喫煙数がある者を喫煙者とした。高血圧については、収縮期血圧が140mmHg以上、または拡張期血圧が90mmHg以上、或いは両基準を満たす者、または高血圧薬を服用している者とした。高脂血症については、全コレステロール値が220mg/dL(5.72mmol/L)以上、または高脂血症剤を服用している者とした。
【0077】
年齢は2型糖尿病患者群において対照群よりも低かったが、BMI、収縮期および弛緩期血圧、トリグリセリド、絶食時血漿グルコース濃度、およびヘモグロビンAlc(HbA1c)比率は、対照群に比べると2型糖尿病患者群においては有意に高かった(P<0.05)。
年齢とHDLコレステロールは、対照群に比して2型糖尿病患者者の方が有意に低かった(P<0.05)。喫煙率、高血圧症、高コレステロール血症は、対照群に比較して2型糖尿病患者群では有意に高かった(P<0.05)。女性/男性の比率は、対照群に比して2型糖尿病患者群の方が有意に低かった(P<0.05)。
年齢、性別、喫煙状態を補正して多項ロジスティック回帰分析を行った結果を表18に示した。
【0078】
【表18】

【0079】
表中において、左欄より順に、変数(Variable)、P値(P value)、オッズ比(OR)、95%信頼区間(95%CI)を示している。また、上段より被験者全員(All subjects)における従来の危険因子(Conventional risk factors)である年齢(Age)・性別(Gender)・喫煙率(Smoking)と遺伝的危険因子(Genetic risk factors)であるハプログループF、N9aを、女性における従来の危険因子である年齢・喫煙率と遺伝的危険因子であるハプログループN9a、F、Aを、男性における従来の危険因子である年齢・喫煙率と遺伝的危険因子であるハプログループFをそれぞれ意味している。
【0080】
表に示す通り、P値が0.05未満で、ハプログループFを持つ被験者が、2型糖尿病罹患のリスクが有意に高いことが明らかとなった。これとは対照的に、ハプログループN9aを持つ被験者は、2型糖尿病に罹患するリスクが低い傾向を示した(P = 0.023, オッズ率 0.64(95% CI 0.43-0.94))。ハプログループN9aを持つ女性は、2型糖尿病罹患のリスクが有意に低かった(P =0.0042, オッズ率 0.27(95% CI 0.10-0.62))。一方、ハプログループFおよびAを持つ女性は2型糖尿病罹患のリスクが高い傾向を示した(Fについては、P = 0.0165, オッズ率 1.78(95% CI 1.11-2.89);Aについては、P = 0.0405, オッズ率 1.67(95% CI 1.02-2.73))。ハプログループFを持つ男性は、2型糖尿病に罹患するリスクが高かった(P = 0.0482, オッズ率1.43(95% CI 1.00-2.05))。
我々は、ハプログループの多重比較について、0.005未満のP値が得られた場合に、その関連が有意であると考えた。この基準に基づくと、ハプログループFは、全ての被験者について2型糖尿病に対する感受性に有意に関与していた(P = 0.0028)。一方、女性について、ハプログループN9aは、2型糖尿病に対する抵抗性に有意に関与していた( P = 0.0042)。
表19には、ステップワイズ前向き選択法による解析結果を示した。
【0081】
【表19】

【0082】
表より、ハプログループFは全ての被験者について、2型糖尿病に対する危険因子であることが明らかとなった(P = 0.0035)。
女性の場合には、ハプログループN9aは2型糖尿病に対する防御因子であり(P = 0.0013)、ハプログループFとAは2型糖尿病に対して独立な危険因子である可能性が示された(Fについて、P = 0.0227;Aについて、P = 0.0374)。しかし男性の場合には、これらのハプログループのいずれも、2型糖尿病との関連性を示さなかった。
女性の場合、ハプログループN9a、F、およびAの2型糖尿病への抵抗性に対する総合的な寄与は0.0152(3つのハプログループの寄与率(R2)の和)であった。これはミトコンドリアゲノム多型が、特に女性においては、2型糖尿病への感受性に影響する重要な遺伝要因であることを示唆している。
表20には、mtSNPsのうち、2型糖尿病に対する保護因子或いは危険因子として関連するものを示した。
【0083】
【表20】

【0084】
表中、「*」は表1において示すように、10個のハプログループを代表させるために用いた多型マーカであることを示している。また、表中の太字で示したP値は、0.005未満であることを示している。
年齢および喫煙状態を補正した多項ロジスティック回帰分析の結果、ハプログループFを代表する3個のmtSNPである3970C>T、10310G>Aおよび13928G>C、ハプログループF1を代表するmtSNPである12406G>A(配列番号223の塩基配列を持つ核酸プローブを用いることにより検出可能である。本実施形態においては検出されている。)、ハプログループF1b1aを代表するmtSNPである13928G>Cが、全ての被験者に関して、糖尿病と関連性を持つことが明らかになった(P = 0.0014 [10310G>A] , P = 0.0025 [12406G>A], P = 0.0028 [3970C>T], P=0.0028 [13928G>C]。これらは149 個のmtSNP の比較に対しての無修正値(ボンフェローニの補正を行っていない値)である)。個々のmtSNPについては、各ハプロタイプに対応していることから、ハプロタイプに適用した有意水準(P<0.005)で判断を行った。
【0085】
サブハプログループA1a1aを代表するmtSNPである14944C>T(配列番号141の塩基配列を持つ核酸プローブを用いることにより検出可能である。本実施形態においては検出されている。)、サブハプログループF1b1aまたはN9b1を代表するmtSNPである5147G>A(配列番号87の塩基配列を持つ核酸プローブを用いることにより検出可能である。本実施形態においては検出されている。)、サブハプログループB5b3を代表するmtSNPである8856G>A(配列番号201の塩基配列を持つ核酸プローブを用いることにより検出可能である。本実施形態においては検出されている。)、およびサブハプログループF1b1aを代表するmtSNPである14476G>A(配列番号137の塩基配列を持つ核酸プローブを用いることにより検出可能である。本実施形態においては検出されている。)を保持する被験者は、0.05未満のP値で2型糖尿病に対する危険性が高かった。
対照的に、サブハプログループN9a2a1を代表するmtSNPである15067T>C(配列番号143の塩基配列を持つ核酸プローブを用いることにより検出可能である。本実施形態においては検出されている。)、サブハプログループN9aを代表する2個のmtSNPである5231G>Aおよび12372G>A、並びにサブハプログループD4aを代表するmtSNPである15314G>A(配列番号237の塩基配列を持つ核酸プローブを用いることにより検出可能である。本実施形態においては検出されている。)を保持する被験者は、0.05未満のP値で2型糖尿病に抵抗性を示した。
【0086】
女性については、年齢および喫煙状態を補正した多項ロジスティック回帰分析の結果、ハプログループN9aを代表する2個のmtSNPである5231G>Aおよび12372G>Aが、糖尿病に対する抵抗性に関係することが明らかになった( P = 0.0025 , P = 0.0035。これは149 個のmtSNP の比較に対しての無修正値である)。これに対し、サブハプログループA1a1aを代表するmtSNPである14944C>Tは、糖尿病に対する危険性が高かった(P = 0.0035)。更に、サブハプログループF1を代表するmtSNPである12406G>A、ハプログループFを代表する3個のmtSNPである13928G>C、10310G>A、および3970C>T、サブハプログループA1aを代表するmtSNPである4655G>A(配列番号176の塩基配列を持つ核酸プローブを用いることにより検出可能である。本実施形態においては検出されている。)、サブハプログループB5b3を代表するmtSNPである8856G>A、ハプログループAを代表する2個のmtSNPである663A>Gおよび8794C>Tを保持する被験者は、0.05未満のP値で2型糖尿病に対するリスクが高いことがわかった。
【0087】
これに対し、ハプログループN9aを代表するmtSNPである12358A>G、サブハプログループN9a2a1を代表するmtSNPである15067T>Cを持つ女性は、0.05未満のP値で2型糖尿病に対するリスクが低いことがわかった。
男性の場合には、年齢および喫煙状態を補正した多項ロジスティック回帰分析の結果、ハプログループFを代表するmtSNPである10310G>Aを持つと、0.05未満のP値で2型糖尿病に対するリスクが高いことがわかった。
表21に示すように、ステップワイズ前向き選択法によれば、ハプログループFを代表するmtSNPである10310G>Aが全被験者で2型糖尿病に対する危険因子であることが明らかになった(P = 0.0018)。
【0088】
【表21】

【0089】
表中、「*」は表1において示すように、10個のハプログループを代表させるために用いた多型マーカであることを示している。また、表中の太字で示したP値は、0.005未満であることを示している。
女性の場合には、ハプログループN9aを代表するmtSNPである5231G>Aが、2型糖尿病に対する防御因子であることが明らかになった(P = 0.0006)。他方、サブハプログループA1a1aを代表するmtSNPである14944C>Tは、2型糖尿病に対する危険因子であった(P = 0.0036)。7個のmtSNPs、すなわち5231G>A、14944C>T、12406G>A、8762T>C、8856G>A、12358A>G、および8383T>Cの糖尿病に対する感受性ならびに/若しくは防御性への総合的な寄与は0.0364(7個のmtSNPsの寄与率(R2)の和)であった。
【0090】
男性の場合には、サブハプログループF4aを代表するmtSNPである7861T>C(配列番号191の塩基配列を持つ核酸プローブを用いることにより検出可能である。本実施形態においては検出されている。)は、2型糖尿病に対する危険因子であった(P = 0.0005)。4個のmtSNPs、すなわち7861T>C、1391T>C(配列番号160の塩基配列を持つ核酸プローブを用いることにより検出可能である。本実施形態においては検出されている。)、10310G>A、および15047G>A(配列番号236の塩基配列を持つ核酸プローブを用いることにより検出可能である。本実施形態においては検出されている。)の2型糖尿病に対する感受性への総合的な寄与は0.0101(4個のmtSNPsの寄与率(R2)の和)であった。
これらの結果は、上記のmtSNPsが、特に女性の場合には2型糖尿病に対する感受性に影響する重要な遺伝因子であることを示している。
【0091】
<考察>
我々は、2906名の被験者に基づく大規模な関連解析を行い、2型糖尿病と10個の主要なミトコンドリアハプログループとの間の関係を調査した。これらのハプログループのうち、ハプログループFは全ての被験者で2型糖尿病のリスクに有意に関係していた。女性の場合には、ハプログループN9aは、2型糖尿病に対する抵抗性に有意に関係していた。一方、ハプログループFおよびハプログループAは、2型糖尿病に対するリスクに関係していた。男性の場合には、ハプログループFは、2型糖尿病のリスクと関係していた。
【0092】
我々は、ミトコンドリアDNA配列の解析から、日本人集団がマクロハプログループNとMとに分割されることを報告した(非特許文献13)。マクロハプログループMは、10個の強固なmtSNPsがリンクしたマクロハプログループNとは異なっている。マクロハプログループNには、4個の主要なハプログループ、すなわちF、B、A、およびN9aが含まれる。他方、マクロハプログループMには、6個の主要なハプログループ、すなわちM7a、M7b、G1、G2、D4およびD5が含まれる。こうして、日本人集団は、これら10個の主なハプログループに分類される。
【0093】
ハプログループFに特異なmtSNPに、13928G>Cトランスバージョンは、潜在的な機能的多型の1つである。このmtSNPは、NADH脱水素酵素サブユニット5遺伝子産物(ND5)中で、S531T置換を起こすことが知られている。ND5はmtDNAにコードされたサブユニットの7個の内の一つであるが、これらのサブユニットは呼吸鎖複合体I(NADH:ユビキノン酸化還元酵素、EC1.6.5.3)の約41個のポリペプチドに含まれている。複合体Iは、NADHから電子を受け取り、それをユビキノン(補酵素Q10)に転送する。その際に得られたエネルギーを用いて、ミトコンドリア内膜を通してプロトンを輸送する。
【0094】
ND5は、複合体Iの機能には欠かすことができない。その理由は、ND5遺伝子中の様々なミスセンス変異が、レーバー遺伝性視神経萎縮症(LHON)(非特許文献23)、リー症候群(非特許文献32)、またはミトコンドリア性ミオパチー、脳症、乳酸アシドーシスおよび脳卒中様症状から成る症候群(MELAS)(非特許文献7)に罹患する患者において報告されているからである。従って、13928G>Cによって惹き起こされるS531T置換が、ND5サブユニットおよび複合体Iの機能に影響を及ぼすと考えることができる。13928G>C(ND5:S531T)がミトコンドリア機能に及ぼす具体的な作用については、このハプログループを伴うmtDNAを持つ細胞質雑種細胞系統を使う実験によって確認することができ得る。
【0095】
ハプログループFを持つ個人の代謝特性は、おそらくインスリン分泌ならびに/あるいはインスリン抵抗性に影響を与えることによって、2型糖尿病に対する抵抗性を得るものと思われる。ハプログループFに属するサブハプログループ(F1a、F1b、F1c、F2a、F3、F4a、およびF4b)の内、サブハプログループF1bは16189G>C多型によって定義される。この多型はハプログループBにおいても検出されること、およびハプログループBは本研究では糖尿病に関係しなかったことから、16189T>C多型は2型糖尿病とは関係しないと判断される。
【0096】
ハプログループN9aに特有のmtSNPsは、ほとんど同義突然変異である。これらの同義突然変異のうち、5231G>Aおよび12372G>Aは、本研究の遺伝子タイピングに使用した。このハプログループに於ける機能的な多型として考えられる候補は、150C>Tおよび338C>Tであるが、これらはミトコンドリアゲノムの非コード領域にある。150C>T置換は、イタリアの百寿者で最初に報告された(非特許文献30)。また我々は、この置換がフィンランドと日本の両国で共に健康的な長寿者と関連していることを報告している(非特許文献31)。このため、150C>Tは、女性の場合には2型糖尿病に対する抵抗性を授与するものと考えられる。
【0097】
ハプログループN9aに特異なmtSNPsのうちでは、12358A>GがND5サブユニットにT8A置換(8位のスレオニンをアラニンに置換する)を惹き起こすことから、潜在的な機能的な多型であると考えられる。12358A>Gによって惹き起こされたT8A置換が、ND5サブユニットおよび複合体Iの機能に影響を与えるかも知れない。12358A>G(ND5:T8A)がミトコンドリア機能に与える具体的な作用については、細胞実験によって調査することができ得る。150C>Tと12358A>Gの両者を備えたハプログループN9aを持つ女性の代謝特性は、2型糖尿病に対する抵抗性の機構を理解するために更なる調査が望まれる。
【0098】
本研究において、女性の場合には、ハプログループAが2型糖尿病への感受性と関連を持つことを見出した。ハプログループAは8794C>T突然変異を特徴とするが、この変異はATPaseサブユニット6においてH90Y置換(90位のヒスチジンをチロシンに置換する)を惹き起こす。FoF1−ATPaseは、核DNAにコードされた10−16個のサブユニットおよびmtDNAにコードされた2個のサブユニット(ATPase6およびATPase8)から構成される。ATP6遺伝子は、サブユニットaをコードする。サブユニットaは、ATPaseのFoセクタを横断してプロトンを輸送する際に重要な役割を果たす。L156R置換を惹き起こす8993T>Gトランスバージョン、およびL156P置換を惹き起こす8993T>Cトランジションは、NARP(神経障害、運動失調、および色素視神経網膜炎)症候群(非特許文献32、33)の原因となる病原性突然変異である。従って、8794C>Tによって惹き起こされたH90Y置換がATP6サブユニットとFoF1−ATPase(複合体V)の機能に影響を与える可能性がある。
【0099】
ミトコンドリア機能および代謝に対する8794C>T(ATP6:H90Y)の実際の効果については、この多型と2型糖尿病に対する感受性との関係を理解するために更なる調査が望まれる。ミトコンドリアには組換え機構が存在しないので、各ハプログループあるいはサブハプログループに於けるmtSNPsの全ては、相互に強く連鎖している。従って、本研究で調べたmtSNPsのいくつかが連鎖不均衡にあって、2型糖尿病に対する感受性若しくは抵抗性を実際に担う他のミトコンドリア遺伝子の機能的な多型にそのmtSNPが連鎖している可能性がある。女性の場合、ハプログループN9aは2型糖尿病に対する抵抗性に関係していたが、この関係は男性の場合には検出されなかった。
【0100】
遺伝的変異と肥満との関係は、男性の場合に比べると女性の方が強いという考えを支持する他の証拠がある(非特許文献34、35)。Comuzzieらは、性相互作用により遺伝子型を導入し、脂肪重量をメンデル混合モデルにて分析したところ、男性では脂肪重量の分散値全体の37%を主な遺伝子が担い、女性では43%を担っていた(非特許文献35)。これまでに、核遺伝子多型と糖尿病との間の関係についての関連解析がいくつか認められる。グルコキナーゼをコードする遺伝子の多型(非特許文献36)、インスリン受容体基質1(非特許文献37)、ペルオキシソーム増殖因子活性性受容体γ(非特許文献38)、カルパイン−10(非特許文献39)、およびアディポネクチン(非特許文献40)は、糖尿病に関連するものと報告されている。
しかしながら、ミトコンドリアDNA多型と2型糖尿病との関係に対する性別の果たす影響に関しては、今までのところほとんど報告が見られない。本明細書が、初めての報告である。
このように、本実施形態によれば、日本人のmtDNAを10個のハプログループに分類することにより、ハプログループと2型糖尿病との関係が示された。このことにより、2型糖尿病の予防が可能となり、高齢者の健康寿命延長・QOL向上・ねたきり防止ならびに今後の医療費削減など、医学的・社会的に大きく貢献できる。
【0101】
3.心筋梗塞への応用
研究対象は、互いに血縁関係の無い40歳以上の日本人2137名(男性1442名、女性695名)であった。対象者は、2002年10月から2005年3月までに3つの参加病院(岐阜県立岐阜病院、岐阜県立多治見病院、岐阜県立下呂温泉病院)の一つを外来した受診者、或いは入院患者であった。心筋梗塞を伴う1181名(男性920名、女性261名)の対象者は、全てが冠動脈造影と左室造影検査によって、病態が確認された。残りの956名(男性522名、女性434名)は、対照群とした。対照群は、研究参加病院に例年の健康チェックのために外来受診した者であった。対照群は、うっ血性心不全、末梢性動脈閉塞性疾患、動脈硬化性疾患、梗塞性・出血性脳卒中、他の脳疾患、および他の血栓・塞栓・出血性疾患の既往歴が無い者であった。
研究プロトコールは、ヘルシンキ宣言に従っており、三重大学医学部、岐阜県国際バイオ研究所、各参加病院の倫理委員会によって承認され、また各参加者からは個別に書面によるインフォームドコンセントを得た。
上記対象者について、12個のハプログループへの分類を行うため、PCR−SSOP−Luminex法を実施した。
【0102】
<統計的分析>
数量的な臨床データは、心筋梗塞患者群と対照群との間で、対応のないスチューデントt検定、またはマン・ホイットニーU検定(the Mann−Whitney U test)を用いて比較した。質的なデータは、カイ二乗検定によって比較した。
心筋梗塞と関連する多型は、交絡因子を含む多項ロジスティック回帰分析法により解析した。このとき、交絡因子については、年齢(age)、性別(gender:0=女性、1=男性)、BMI、喫煙状態(smoker:0=非喫煙、1=喫煙)、高血圧、糖尿病、高コレステロール血症、高尿酸血症および各mtSNPの遺伝子型を独立変数とし、心筋梗塞を従属変数とした。P値、オッズ比(OR)、および95%信頼区間(CI)を計算した。特に説明しない限り、0.05未満のP値は統計上有意であると考えた。
【0103】
ハプログループを多重比較するために、ボンフェローニ(Bonferroni)の補正を適用した。我々は、12個のハプログループを調べたので、0.05を12で除して、0.004とした。こうして、0.004未満のP値を統計上有意であると見なした。
<結果>
2137名の被験者に関する基礎的データを表22に示した。
【0104】
【表22】

【0105】
表中において、最左欄は上段から順に、対象数(No. of subjects)、年齢(Age)、性別(男性/女性)(Gender)、BMI(Body mass index)、喫煙率(Smoker)、高血圧(Hypertension)、収縮期血圧(Systolic blood pressure)、拡張期血圧(Diastolic blood pressure)、高脂血症(Hypercholesterolemia)、全コレステロール(Total cholesterol)、中性脂肪(Triglycerides)、HDL−コレステロール(HDL-cholesterol)、2型糖尿病(Type-2 diabetes)、空腹時血糖値(Fasting blood glucose)、ヘモグロビンAlc(Glycosylated hemoglobin)を意味している。また、最上段は左から順に、被験者全員(All subjects)における心筋梗塞(MI)の値と対照群(Controls)の値とP値(P value)、男性(Male)における心筋梗塞患者群の値と対照群の値とP値、女性(Female)における心筋梗塞患者群の値と対照群の値とP値とをそれぞれ示している。また、各値において、「±」が付してあるものは、平均値±SDで示した。喫煙率については、1日あたり10本より多くの喫煙数がある者を喫煙者とした。高血圧については、収縮期血圧が140mmHgより大きい、または拡張期血圧が90mmHg未満、或いは両基準を満たす者、または高血圧薬を服用している者とした。2型糖尿病については、空腹時血糖値が126mg/dL(6.93mmol/L)より大きい、またはヘモグロビンAlcが6.5%より大きい、或いは両基準を満たす者、または抗糖尿病薬を服用している者とした。高脂血症については、全コレステロール値が220mg/dL(5.72mmol/L)より大きい、または高脂血症剤を服用している者とした。
【0106】
年齢、高血圧、中性脂肪、空腹時血糖、ヘモグロビンAlcでは心筋梗塞患者群と対照群との間に差がなかった。性別、BMI、喫煙率、高コレステロール血症(HC)、糖尿病については、心筋梗塞患者群のほうが対照群よりも有意に高値であった。HDLコレステロールは、対照群よりも心筋梗塞患者群の方が、有意に低値であった。
年齢、性別、喫煙歴、BMI、糖尿病、高血圧、高コレステロール血症の有無を補正して多項ロジスティック回帰分析を行った結果を表23に示した。
【0107】
【表23】

【0108】
表中において、左欄より順に、変数(Variable)、P値(P value)、オッズ比(OR)、95%信頼区間(95%CI)を示している。また、上段より被験者全員(All subjects)における従来の危険因子(Conventional risk factors)である性別(Gender)・高コレステロール血症(HC)・2型糖尿病(Type-2 diabetes)・BMIと遺伝的危険因子(Genetic risk factors)であるハプログループN9b,G1,M7cを、男性における従来の危険因子である高コレステロール血症・2型糖尿病・BMIと遺伝的危険因子であるハプログループN9b,G1を、女性における従来の危険因子である高コレステロール血症と遺伝的危険因子(該当なし)を、それぞれ意味している。
【0109】
ハプログループN9bは、被験者全員(P = 0.0019)、および男性(P = 0.0007)において、心筋梗塞に対して抵抗性が認められた。また、ハプログループM7cは、被験者全員において、有意に心筋梗塞に対して抵抗性が認められた(P = 0.0357)。一方、男性の場合には、ハプログループG1が心筋梗塞のリスクが高い傾向があった(P<0.05)。
表24には、ステップワイズ前向き選択法による解析結果を示した。
【0110】
【表24】

【0111】
表より、ハプログループN9bは、被験者全員において、心筋梗塞のリスクが低いことが明らかとなった(P = 0.0018)。
男性の場合には、高コレステロール血症、糖尿病とともに、ハプログループN9bは、心筋梗塞に対して独立した抵抗性の因子であった(P = 0.0005)。また、女性の場合には、心筋梗塞に関連したハプログループは認められなかった。
表25には、mtSNPsのうち、心筋梗塞に対する保護因子或いは危険因子として関連するものを示した。
【0112】
【表25】

【0113】
表中、「*」は表3において示すように、12個のハプログループを代表させるために用いた多型マーカであることを示している。また、表中の太字で示したP値は、0.004未満であることを示している。
年齢、性別、喫煙状態、BMI、2型糖尿病、高血圧、高コレステロール血症を補正した多項ロジスティック回帰分析の結果、ハプログループN9bを代表する2個のmtSNPである11016G>A(ND4:Ser86Asn)、14893A>G(Cytb:syn)、およびハプログループB4bを代表する4820G>A(ND2:syn)の3個のmtSNPsが、心筋梗塞に抵抗性を示すことがわかった(P < 0.005)。一方、ハプログループMを代表するmtSNPである10398A>G(ND3:Thr114Ala)と8701A>G(ATP6:Thr59Ala)の2個のmtSNPsが、心筋梗塞に感受性が有ることがわかった(P < 0.005)。
【0114】
男性の場合には、年齢、喫煙歴、BMI、2型糖尿病、高血圧、高コレステロール血症を補正した多項ロジスティック回帰分析の結果、ハプログループN9bを代表する2個のmtSNPである11016G>Aと14893A>Gが、心筋梗塞に抵抗性を示すことがわかった(各々P = 0.0006, P= 0.0007)。さらにハプログループN9b+Yを代表するmtSNPである5147G>Aは、心筋梗塞に対して抵抗性を示した。また、ハプログループB4bを代表するmtSNPである4820G>Aと6023G>Aは、男性の場合には、心筋梗塞に対して抵抗性があった(P < 0.05)。一方、ハプログループG1を代表するmtSNPである8200T>Cは、心筋梗塞に感受性があることがわかった(P = 0.034)。
【0115】
女性の場合には、ハプログループD4aを代表するmtSNPである10410T>Cは、心筋梗塞に感受性があることがわかった(P = 0.0012)。また、ハプログループD4aを代表する他の3個のmtSNPである15314G>A、8473T>C、14979T>C、ハプログループMを代表する3個のmtSNPである8701A>G、10398A>G、10400C>T、ハプログループBを代表するmtSNPである8272d9、およびハプログループN9aを代表するmtSNPである5231G>Aは、それぞれ心筋梗塞に対する危険性が高かった(P < 0.05)。
表26に示すように、ステップワイズ前向き選択法による解析結果を示した。
【0116】
【表26】

【0117】
表中、「*」は表3において示すように、12個のハプログループを代表させるために用いた多型マーカであることを示している。また、表中の太字で示したP値は、0.004未満であることを示している。
2個のmtSNP(11016G>A (N9a)、4820G>A (B4b))は、全対照者にとって心筋梗塞に抵抗性を示した(それぞれP = 0.0009, P = 0.0019)。10個のmtSNP(11016G>A, 4820G>A, 8793T>C, 856A>G,4850C>T, 9833T>C, 8200T>C, 10410T>C, 9296C>T and 15508C>T)の総合的な寄与は0.0197(上記10個の寄与率(R2)の総和)であった。
【0118】
男性の場合には、ハプログループN9bを代表するmtSNPである14893A>Gは、防御的な因子であった(P = 0.0005)。4個のmtSNP(14893A>G, 4820G>a, 8200T>C, 8793T>C)の総合的な寄与は0.0137(上記4個の寄与率(R2)の総和)であった。
女性の場合には、ハプログループD4aを代表するmtSNPである10410T>Cは、心筋梗塞に対する危険因子であった(P = 0.0012)。5個のmtSNP(10410T>C, 9296C>T, 10398A>G, 856A>G, 9833T>C)の総合的な寄与は0.0320(上記5個の寄与率(R2)の総和)であった。
【0119】
<考察>
我々は、12種類の主要なミトコンドリアハプログループと心筋梗塞との関係に付いて、2137名の日本人を対象とした大規模な関連解析を行った。年齢、性別、喫煙履歴、BMI、糖尿病、高血圧、高コレステロール血症の有無で補正したところ、全対象者について、ハプログループN9bを持つ者は心筋梗塞の罹患率は有意に低値であった(P=0.0019)。特に、男性の場合には、ハプログループN9bは、心筋梗塞の罹患率は有意に低値であった(P=0.0007)。ハプログループN9bは、4カ所の多型(10607, 11016, 13183, 14893)で特徴付けられる。このハプログループは、東アジア全体で見ると、大変まれであり中国南部と韓国にはほとんど認められない。一方、土着の琉球人とアイヌ人を含めた日本人には最もよく認められる(非特許文献13)。
【0120】
遺伝子型タイピングに用いられる2個のmtSNPである11016G>Aと13183A>Gとを除くと、ハプログループN9bを特徴付けるほとんどのmtSNPは同義置換である(例えば、5147G>A, 10607C>T, 14893A>G 。非特許文献41)。ハプログループN9bを特徴付けるmtSNPのうち、心筋梗塞の危険性に関連する可能性のある機能的多型としては、2つの多型、すなわち11016G>A(ND4: Ser>Asn)と13183A>G(ND5: Ile>Val)がある。アミノ酸残基が、種の中で保存されているかどうか確認するために、この2個の多型について、mtSNPデータベースに登録された61種類の哺乳類のアミノ酸配列と比較した。13183A>G多型は、グランサム値(Grantham value)が29であり保存的置換であった(非特許文献42)。また、61種類の哺乳類の中で、この位置のアミノ酸は多様性があるために、機能的多型の一つである可能性は低かった。
【0121】
一方、11016G>A多型については、Ser>Asnはグランサム値は46であり、保存的置換としての値は高くなかった。しかし、61種類の哺乳類の中で、この位置のアミノ酸がセリンであったのは、3種類の生物種(ヒト、シロガオオマキザル、およびアフリカサバンナゾウ)で認められるのみであった。従って、セリンは、ヒトにとって特徴的なアミノ酸の一つである可能性が高い。
【0122】
ハプログループM7cは、2個の多型(4071, 4850)によって特徴付けられる。ハプログループM7cは、全対象者において、心筋梗塞が有意に低かった(P<0.05)。このハプログループは、中国全体では最も多様性が高いが(76%±11%)、アイヌでは存在せず、本州人には頻度が少ないが、マレーシアサバー州の住民とフィリピン人にはよく見られる(非特許文献13)。ハプログループM7cに属するHNsq0160は、9017T>C(グランサム値89のI164Tとなる)を伴い、百寿者に認められる。したがって、ハプログループM7cは、心筋梗塞に対抗し、長寿に関係が深いと思われる。
【0123】
本研究では、男性の場合には、ハプログループG1は、心筋梗塞の危険因子であった(P<0.05)。ハプログループGの本幹には、3個のmtSNPs(709, 4833, 5108)がある(非特許文献10、13)。近年、8200位と15497位のmtSNPsがハプログループG1の決定に用いられるようになった(非特許文献13、43)。15323G>Aと15497G>Aは、Cytbに非同義置換を生じる多型であり、これらが機能的な多型である可能性がある。15323G>Aにより生じるAla193Thrと、15497G>Aにより生じるGly251Serの2つのアミノ酸置換のグランサム値は、それぞれ58、56である。CytbにおけるGly251は、61種類の哺乳類中、55種類で保存されている。国立長寿研究所の加齢研究(NILS−LSA)で行われた研究によれば、15497G>Aは、中年・初老日本人対象における肥満に関係があった(非特許文献26)。
【0124】
また、本発明者らの研究成果によれば、年齢と喫煙状態の補正をすると、女性の場合には、体重、BMI、ウエスト・ヒップ比、脂肪量、脂肪のない量(fat-free mass)、腹腔内脂肪、中性脂肪は、15497G型に比べると、15497A型の方が有意に増加していた。また、血糖とヘモグロビンAlcには違いが見られなかったが、血清中インシュリン量は、15497G型より15497A型の方が20%高値であった。したがってこれらの観察では、15497Aは、高血圧、高血糖、高コレステロール血症を伴わない単純肥満と関係があることが示唆された。したがって、Cytb遺伝子の15497G>A多型は、不完全なサイトクロムb分子を形成し、エネルギー代謝の減少を引き起こすような、重要な多型である可能性がある。
【0125】
15498G>A多型によるGly251Asp置換は、病的であると言われている。この位置のグリシンがアスパラギン酸に変わると、複合体IIIのユビキノン結合部位のQp部位の残基であるGlu271によって、電気的な斥力を生じることになる(非特許文献27、44)。そうすると、Qp部位の構造を変化させ、ヒドロキノン結合が弱くなる。15497G>Aにより生じるGly251Ser置換は、Glu271による斥力を生じることにならないが、この置換はQp部位のユビキノンとの結合に影響を与える可能性が高い。
【0126】
本研究の当初の目的は、心筋梗塞に対抗する或いは危険性のあるハプログループを明らかにする事であった。しかし、我々が予想しなかった事に、サブハプログループB4b、D4a、マクロハプログループMで示されるmtSNPが心筋梗塞に関連している事が示唆された。厳格な基準(P>0.005)で選んだ多型の中には、サブハプログループB4b、D4a、マクロハプログループMと心筋梗塞との間に有意な関連が示された。心筋梗塞・冠動脈疾患を含む心疾患と、核DNAの変異との間の関係を評価した報告が多く認められる。現在までに、心筋梗塞と関係のある多くの遺伝子(例えば、connexin 37, plasminogen-activator inhibitor type 1, and stromelysin-1遺伝子など)が報告されている。冠動脈疾患の遺伝的リスクを診断するシステムが、これらの核DNA多型を基礎として展開されている(非特許文献45)。mtDNAと核DNAとの多型が、心筋梗塞の予測をする情報を与えることが判明し、それによって、この疾患の一次予防に有用であろう。
【0127】
近年、脳梗塞などの動脈硬化性疾患とミトコンドリア多型やハプロタイプの関係を論じた報告が散見される。Finnilaらは、コンホメーション感受性ゲル電気泳動(conformation sensitive gel electrophoresis:CSGE)とダイレクト・シークエンス法を用いることによって、患者群と対照群のmtDNAのコード領域の全塩基配列を決定し、12308A>G多型によって見いだされるハプログループUが、偏頭痛において後頭葉発作のリスクの構成要素になることを示した(非特許文献46、47)。
【0128】
我々の大規模研究によれば、男性の場合には、ハプログループN9bは心筋梗塞の発症が有意に低くなる保護因子であった。一方、女性の場合には、そのような関係は見られなかった。この理由については、現段階では不明である。
一般的に、女性が冠動脈疾患や心筋梗塞に罹患する危険性は男性の危険性に比べると10歳程度の遅れがあることから考えると、同世代の男性と女性が心臓疾患に罹患する理由は異なっているのかも知れない。性ホルモンであるエストロゲンは、血管壁や血管運動神経系に対して、NOやPGI2の生産、血管内皮細胞からのエンドセリン1の放出抑制などの好ましい影響を及ぼす(非特許文献48)。このため、エストロゲンなどの性ホルモン量が男女で異なることにより、心筋梗塞に関与するmtSNPが男性と女性とで異なるのかも知れない。
【0129】
最近数年間の間に、心筋梗塞と核DNAにコードされる遺伝子中の多型との関係を調べた報告が相次いでいる(非特許文献45)。対象となった遺伝子としては、例えばシクロオキシゲナーゼ2(非特許文献49)、ロイコトリエンA4ヒドロゲナーゼ(非特許文献50)、5−リポキシゲナーゼ活性化蛋白質(非特許文献51)、リンフォトキシンα(非特許文献52)、LGALS2コード化ガレクチン2(非特許文献53)、細胞骨格蛋白パラディン、チロシンキナーゼ、2つのGタンパク結合受容体(非特許文献54)などがある。また、初期の心筋梗塞と遺伝子中の多型との関係を調べた報告として、対象とされた遺伝子には、血小板脱顆粒中のVAMP8、リボ核蛋白をコードするHNRPUL1(非特許文献55)、プラスミノーゲン・アクチベータ・インヒビター・タイプ1(非特許文献56)、血清マトリックスメタロプロテアーゼ3(非特許文献57)がある。そうすると、mtDNAの多型と核DNAの多型との両者が、心筋梗塞などの冠状動脈疾患に対する遺伝的リスクを評価するために役立ち、疾患の一次予防に寄与すると思われる。
このように、本実施形態によれば、日本人のmtDNAを12個のハプログループに分類することにより、心筋梗塞の遺伝的危険度を予測することができた。このことにより、心筋梗塞の予防が可能となり、高齢者の健康寿命延長・QOL向上・ねたきり防止ならびに今後の医療費削減など、医学的・社会的に大きく貢献できる。
【0130】
4.アテローム血栓性脳梗塞への応用
研究対象は、互いに血縁関係の無い40歳以上の日本人1081名(男性641名、女性440名)であった。対象者は、2002年10月から2005年3月までに3つの参加病院(岐阜県立岐阜病院、岐阜県立多治見病院、岐阜県立下呂温泉病院)の一つを外来した受診者、或いは入院患者であった。アテローム血栓性脳梗塞を伴う患者群は、346名(男性234名、女性112名)であった。患者群について虚血性や出血性脳卒中の鑑別は、新たに突然発症した神経学的な巣症状や徴候が24時間以上持続すること、および脳CT或いは脳MRI(または、その両者の検査)により確認された。脳卒中の分類は、Classification of Cerebrovascular Diseases III (非特許文献58)を用いて決定した。心原性塞栓症とラクナ梗塞、一過性脳虚血発作、脳血管奇形、脳腫瘍、外傷性脳血管障害、心臓弁膜症を伴うか心房細動、心臓弁膜症を伴わない心房細動に関する患者は除外した。735名(男性407名、女性328名)の健常者である対照群は、健康診断のために参加病院を受診した者であった。対照群には、虚血性あるいは出血性脳卒中、冠動脈疾患、末梢性動脈閉塞性疾患、他の動脈硬化性疾患、他の血栓、塞栓、出血性疾患の既往歴は無かった。
研究プロトコールは、ヘルシンキ宣言に従っており、三重大学医学部、岐阜県国際バイオ研究所、各参加病院の倫理委員会によって承認され、また各参加者からは個別に書面によるインフォームドコンセントを得た。
上記対象者について、11個のハプログループへの分類を行うため、PCR−SSOP−Luminex法を実施した。
【0131】
<統計的分析>
数量的な臨床データは、アテローム血栓性脳梗塞患者群と対照群との間で、対応のないスチューデントt検定、またはマン・ホイットニーU検定(the Mann−Whitney U test)を用いて比較した。質的なデータは、カイ二乗検定によって比較した。
アテローム血栓性脳梗塞と関連する多型は、交絡因子を含む多項ロジスティック回帰分析法により解析した。このとき、交絡因子については、年齢(age)、性別(gender:0=女性、1=男性)、BMI(body mass index)、喫煙状態(smoker:0=非喫煙、1=喫煙)、高血圧、糖尿病、高コレステロール血症、高尿酸血症および各mtSNPの遺伝子型を独立変数とし、アテローム血栓性脳梗塞を従属変数とした。P値、オッズ比(OR)、および95%信頼区間(CI)を計算した。特に説明しない限り、0.05未満のP値は統計上有意であると考えた。
ハプログループを多重比較するために、ボンフェローニ(Bonferroni)の補正を適用した。我々は、11個のハプログループを調べたので、0.05を11で除して、0.0045とした。こうして、0.0045未満のP値を統計上有意であると見なした。
【0132】
<結果>
1081名の被験者に関する基礎的データを表27に示した。
【表27】

【0133】
表中において、最左欄は上段から順に、対象数(No. of subjects)、年齢(Age)、性別(女性/男性)(Gender)、BMI(Body mass index)、喫煙率(Smoker)、高血圧(Hypertension)、収縮期血圧(Systolic blood pressure)、拡張期血圧(Diastolic blood pressure)、高脂血症(Hypercholesterolemia)、全コレステロール(Total cholesterol)、中性脂肪(Triglycerides)、HDL−コレステロール(HDL-cholesterol)、2型糖尿病(Type-2 diabetes)、空腹時血糖値(Fasting blood glucose)、ヘモグロビンAlc(Glycosylated hemoglobin)を意味している。また、最上段は左から順に、被験者全員(All subjects)におけるアテローム血栓性脳梗塞患者群(CI)の値と対照群(Controls)の値とP値(P value)、男性(Male)におけるアテローム血栓性脳梗塞患者群の値と対照群の値とP値、女性(Female)におけるアテローム血栓性脳梗塞患者群の値と対照群の値とP値とをそれぞれ示している。また、各値において、「±」が付してあるものは、平均値±SDで示した。喫煙率については、1日あたり10本より多くの喫煙数がある者を喫煙者とした。高血圧については、収縮期血圧が140mmHgより大きい、または拡張期血圧が90mmHg未満、或いは両基準を満たす者、または高血圧薬を服用している者とした。2型糖尿病については、空腹時血糖値が126mg/dL(6.93mmol/L)より大きい、またはヘモグロビンAlcが6.5%より大きい、或いは両基準を満たす者、または抗糖尿病薬を服用している者とした。高脂血症については、全コレステロール値が220mg/dL(5.72mmol/L)より大きい、または高脂血症剤を服用している者とした。
【0134】
BMI、喫煙率、高コレステロール血症、総コレステロール値、中性脂肪、HDLコレステロール、空腹時血糖値、ヘモグロビンAlcはアテローム血栓性脳梗塞患者の全員と対照群とでは差がなかった。年齢、高血圧、収縮期血圧、拡張期血圧、2型糖尿病では、アテローム血栓性脳梗塞患者群の方が対照群よりも有意に高値であった(P < 0.005)。反対に、女性/男性比は、アテローム血栓性脳梗塞患者群が対象群よりも有意に低かった(P = 0.0001)。BMI、喫煙率、高コレステロール血症については、いずれも疾患群と対照群との間に差異は認められなかった。
表28には、カイ二乗検定により、ミトコンドリアハプログループの分布を評価した結果を示した。
【0135】
【表28】

【0136】
表に示す通り、全対象者を評価した場合には、N9a(P = 0.0174, OR = 0.435)とM7c(P = 0.0260, OR = 0.251)の二つのハプログループが、アテローム血栓性脳梗塞に関連していることがわかった。女性の場合には、ハプログループN9aは、オッズ比0.139で疾患の危険性が低い傾向があった(P = 0.0073)。
年齢、性別、喫煙歴、BMI、2型糖尿病、高血圧、高コレステロール血症の有無を補正して多項ロジスティック回帰分析を行った結果を表29に示した。
【0137】
【表29】

【0138】
表中において、左欄より順に、変数(Variable)、P値(P value)、オッズ比(OR)、95%信頼区間(95%CI)を示している。また、上段より被験者全員(All subjects)における従来の危険因子(Conventional risk factors)である性別(Gender)・2型糖尿病(Type-2 diabetes)・高血圧(Hypertension)と遺伝的危険因子(Genetic risk factors)(対象となるハプログループなし)を、女性における従来の危険因子である高血圧・2型糖尿病と遺伝的危険因子であるハプログループAを、男性における従来の危険因子である2型糖尿病・高血圧と遺伝的危険因子(該当なし)を、それぞれ意味している。
【0139】
女性の場合には、ハプログループAでアテローム血栓性脳梗塞への感受性(オッズ比2.09)が認められた(P=0.0409)。なお、全員を対象とした場合、および、男性の場合には、いずれのハプログループについても有意差は認められなかった。
表30には、mtSNPsのうち、アテローム血栓性脳梗塞に対する保護因子或いは危険因子として関連するものを示した。
【0140】
【表30】

【0141】
年齢、性別、喫煙状態、BMI、2型糖尿病、高血圧、高コレステロール血症を補正した多項ロジスティック回帰分析の結果、全対象群では、ハプログループD5のサブハプログループであるハプログループD5b1bを代表するmtSNPの3759A>Gは、アテローム血栓性脳梗塞に対する抵抗性を示すことがわかった(P < 0.05)。また、ハプログループA1のサブハプログループであるハプログループA1a1aを代表するmtSNPの14944C>Tと、ハプログループD5のサブハプログループであるハプログループD5a2を代表するmtSNPの1310C>Tは、アテローム血栓性脳梗塞に罹患しやすいことがわかった(P < 0.05)。
女性の場合には、年齢、喫煙歴、BMI、2型糖尿病、高血圧、高コレステロール血症で補正した多項ロジスティック回帰分析の結果、ハプログループA1a1aを代表するmtSNPである14944C>Tが、アテローム血栓性脳梗塞に罹りやすいことがわかった(P < 0.05)。男性の場合には、ハプログループD5a2(ハプログループD5のサブハプログループ)を代表するmtSNPである1310C>Tが、アテローム血栓性脳梗塞に罹患しやすいことがわかった(P < 0.05)。
表31には、ステップワイズ前向き選択法による解析結果を示した。
【0142】
【表31】

【0143】
表中、「*」は表2において示すように、11個のハプログループを代表させるために用いた多型マーカであることを示している。
全対照群において、3個のmtSNP(すなわち、ハプログループD5b1bを代表する3759A>G、ハプログループM7cを代表する4850C>T、およびハプログループD4b2aを代表する14287T>C)がアテローム血栓性脳梗塞に抵抗性があることがわかった(P < 0.05)。また、2個のmtSNP(すなわち、ハプログループD5a2を代表する1310C>T、およびハプログループA1a1aを代表する14944C>T)が、アテローム血栓性脳梗塞に感受性があることがわかった(P < 0.05)。これら5個のmtSNPの総合的な寄与(各mtSNPの寄与率(R2)の総和)は、0.121であった。
女性の場合には、ハプログループN9aを代表するmtSNPである5231G>Aは、アテローム血栓性脳梗塞に対して抵抗性が認められた(P = 0.0214)。男性の場合には、ハプログループD5a2を代表するmtSNPである1310C>Tは、アテローム血栓性脳梗塞に対する感受性が認められた(P = 0.0235)。
【0144】
<考察>
我々は1081名の日本人に基づく大規模な関連解析を行い、11個の主要なミトコンドリアハプログループのそれぞれとアテローム血栓性脳梗塞との間の関係を調査した。カイ二乗検定によって、患者群と対照群との間の定性的な比較を行ったところ、ミトコンドリアハプログループN9aとM7cについては、有意に(P<0.05)疾患の罹患率が低いことがわかった。また、女性の場合には、ハプログループN9aは、アテローム血栓性脳梗塞の罹患率が低くなる傾向が認められた(P = 0.0073)。
多項ロジスティック回帰分析法によれば、女性の場合には、ハプログループAは、アテローム血栓性脳梗塞に有意に(P<0.05)関係していた。ハプログループN9a及びM7cと、アテローム血栓性脳梗塞との関係は、2型糖尿病についての補正を行うと、消失するようにも見える。ハプログループM7cについての理由は明確ではないものの、前記応用例に示すように、ハプログループN9aは、メタボリック症候群と2型糖尿病に対して抵抗性があることがわかった。
これは、ミトコンドリアハプログループとアテローム血栓性脳梗塞との関係を調べた最初の報告である。
【0145】
ハプログループAを代表するmtSNPである8794C>Tは、ATPaseサブユニット6においてH90Y置換(90位のヒスチジンをチロシンに置換する)を引き起こす。ATP6遺伝子は、サブユニットaをコードしている。サブユニットaは、ATPase(Complex V)のFoセクタを横断してプロトンを輸送する際に重要な役割を果たす(非特許文献13)。His90Tysの置換のグランサム値は83であることから(非特許文献42)、この多型は機能的多型である可能性がある。L156R置換を引き起こす8993T>Gトランスバージョンは、NARP(神経障害、運動失調、および色素視神経網膜炎)症候群(非特許文献32、33)の原因となる病原性突然変異である。従って、8794C>Tによって惹き起こされたH90Y置換がATP6サブユニットとFoF1−ATPase(Complex V)の機能に影響を与える可能性がある。しかしながら、ミトコンドリア機能および代謝に対する8794C>T(ATP6:H90Y)の実際の効果については未知であることから、この多型とアテローム血栓性脳梗塞に対する感受性との関係を理解するために更なる調査が望まれる。また、前述(2型糖尿病への応用)のように、この多型と2型糖尿病との関係も明らかとなった。
【0146】
本実施形態によれば、女性の場合には、ハプログループAとアテローム血栓性脳梗塞との関係が示されたが、男性の場合には、そのような関係は認められなかった。性別による相違の原因は、今のところ不明である。一般的に、女性が冠動脈疾患や心筋梗塞に罹患する危険性は男性の危険性に比べると10歳程度の遅れがあることから考えると、同世代の男性と女性が心臓疾患に罹患する理由は異なっているのかも知れない。性ホルモンであるエストロゲンは、血管壁や血管運動神経系に対して、NOやPGI2の生産、血管内皮細胞からのエンドセリン1の放出抑制などの好ましい影響を及ぼす(非特許文献48)。このため、エストロゲンなどの性ホルモン量が男女で異なることにより、心筋梗塞に関与するmtSNPが男性と女性とで異なるのかも知れない。
【0147】
虚血性脳卒中は多くの病因に基づく不均一な疾患であるが、小動脈及び大動脈に発生することが一般的である。脳卒中と頸動脈アテローム血栓に関しては、いくつかの遺伝的リスクに関する報告がある(非特許文献59、60、61)。頸動脈での脈管内膜−中膜壁厚(IMT)は、無症状アテローム血栓性脳梗塞の代理指標であり、将来の虚血性脳卒中に対する強力な予測指標である。近親関係(双子、兄弟、及び家族)の調査結果によれば、IMTには遺伝的な関連が認められるが、関連する遺伝子は同定されていない。細胞間物質(stromelysin-1、及びマトリックスメタロプロテイナーゼ3)、炎症(インターロイキン6)、脂質代謝(肝リパーゼ、アポリポ蛋白E、コレステロールエステルトランスファ蛋白、パラオキソナーゼ)、及び凝固系(ファクターVライデン、フィブリノーゲン)に関与する遺伝子の機能的な変異があるとIMTが高いという報告がある。更に、ラクナ脳梗塞は、アテローム血栓性脳梗塞の初期において発症原因の元になることが示唆されている。ラクナ脳梗塞を含む血栓性梗塞は、アメリカ人やヨーロッパ各国人に比べて、日本人を含むモンゴリアンを起源とする東アジア人に多く発症する(非特許文献62、63、64、65)。ミトコンドリアDNAのDループ中の高変異部位における16189T>Cトランジションは、インスリン抵抗性糖尿病、2型糖尿病、ラクナ脳梗塞に罹患しやすいという報告がある。フィニーラらによれば、mtSNPの12308A>Gによって代表されるミトコンドリアハプログループUは、片頭痛における後頭梗塞の危険性が高い危険因子であることが示された(非特許文献66、67)。
このように本実施形態によれば、mtDNAのハプログループを検出することにより、アテローム血栓性脳梗塞の遺伝的危険度を予測することができる。このことにより、アテローム血栓性脳梗塞の予防が可能となり、高齢者の健康寿命延長・QOL向上・ねたきり防止ならびに今後の医療費削減など、医学的・社会的に大きく貢献できる。
【0148】
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【非特許文献51】Helgadottir A, Manolescu A, Thorleifsson G, Gretarsdottir S, Jonsdottir H, Thorsteinsdottir U, Samani NJ, Gudmundsson G, Grant SF, Thorgeirsson G, Sveinbjornsdottir S, Valdimarsson EM, Matthiasson SE, Johannsson H, Gudmundsdottir O, Gurney ME, Sainz J, Thorhallsdottir M, Andresdottir M, Frigge ML, Topol EJ, Kong A, Gudnason V, Hakonarson H, Gulcher JR, Stefansson K (2004) The gene encoding 5-lipoxygenase activating protein confers risk of myocardial infarction and stroke. Nat Genet 36: 233-239
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【非特許文献53】Ozaki K, Inoue K, Sato H, Iida A, Ohnishi Y, Sekine A, Sato H, Odashiro K, Nobuyoshi M, Hori M, Nakamura Y, Tanaka T (2004) Functional variation in LGALS2 confers risk of myocardial infarction and regulates lymphotoxin-alpha secretion in vitro. Nature 429: 72-75
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【図面の簡単な説明】
【0149】
【図1】Luminex100で検出するマイクロビーズの微細構造と特徴を示す図である。
【図2】PCR−SSOP−Luminex法の手順の概要を示す図である。
【図3】mtSNPに基づくハプログループ分類を示す図(1)である。図の下端には、ハプログループ及びサブハプログループを示している(図4及び図4においても同じである)。
【図4】mtSNPに基づくハプログループ分類を示す図(2)である。
【図5】mtSNPに基づくハプログループ分類を示す図(3)である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトミトコンドリアDNAにおいて、配列番号57〜配列番号242に記載の塩基配列を備えた186個の核酸プローブが認識する多型部位のうちの少なくとも5個以上の多型部位を検出することを特徴とするヒトミトコンドリアDNAに関する遺伝子検出法。
【請求項2】
ヒトミトコンドリアDNAにおいて、次のmtSNPによってグループ分けされる少なくとも10個のハプログループ、すなわち3970T、13928A、10310Aを有するハプログループFと、8272の9bp欠失を有するハプログループBと、663G、8794Tを有するハプログループAと、5231A、12358G、12372Aを有するハプログループN9aと、2772T、4386Cを有するハプログループM7aと、4071T、4048A、6680C、12811Cを有するハプログループM7bと、709A、4833G、5108C、8200C、15497Aを有するハプログループG1と、709A、4833G、5108C、13563Gを有するハプログループG2と、4883T、5178A、3010Aを有するハプログループD4と、4883T、5178A、10397Gを有するハプログループD5とを検出することを特徴とする請求項1に記載のヒトミトコンドリアDNAに関する遺伝子検出法。
【請求項3】
前記10個のハプログループに加えて、11016A、14893Gを有するハプログループN9bと、4071T、4850Tを有するハプログループM7cを合わせた少なくとも12個のハプログループを検出することを特徴とする請求項1または2に記載のヒトミトコンドリアDNAに関する遺伝子検出法。
【請求項4】
ヒトミトコンドリアDNAを含む試料から前記10個または12個のハプログループが有するmtSNPを含む塩基配列をDNAプライマーを用いてPCR法によって増幅するPCR工程、このPCR工程によって増幅されたDNAフラグメントと前記mtSNPのいずれか一つを認識する核酸プローブとをハイブリッドさせるハイブリッド工程、前記核酸プローブによって認識されたmtSNPを検出する検出工程とを含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のヒトミトコンドリアDNAに関する遺伝子検出法。
【請求項5】
前記核酸プローブは、全長が15塩基〜40塩基であり、かつ検出すべき前記mtSNPの位置が5’末端または3’末端から5塩基以上内側に位置することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のヒトミトコンドリアDNAに関する遺伝子検出法。
【請求項6】
前記DNAフラグメントの全長は、190塩基対〜520塩基対であることを特徴とする請求項4または5に記載のヒトミトコンドリアDNAに関する遺伝子検出法。
【請求項7】
前記DNAプライマーは、配列番号1、配列番号2、配列番号5、配列番号6、配列番号11〜配列番号18、配列番号21、配列番号22、配列番号25〜配列番号28、配列番号33〜配列番号44、配列番号49〜配列番号52に記載のものであり、前記PCR工程においては、少なくとも17種類のDNAフラグメントを合成し、前記検出工程においては、配列番号66、配列番号74、配列番号75、配列番号78、配列番号83、配列番号86、配列番号88、配列番号90、配列番号99、配列番号107、配列番号115、配列番号116、配列番号128、配列番号133、配列番号134、配列番号147、配列番号157、配列番号158、配列番号163、配列番号174、配列番号181、配列番号188、配列番号193、配列番号221、配列番号222に記載の核酸プローブを用いることを特徴とする請求項4〜6のいずれかに記載のヒトミトコンドリアDNAに関する遺伝子検出法。
【請求項8】
前記検出工程においては、更に配列番号138、配列番号180、配列番号213に記載の核酸プローブを用いることを特徴とする請求項7に記載のヒトミトコンドリアDNAに関する遺伝子検出法。
【請求項9】
前記DNAプライマーはビオチン化されており、前記核酸プローブは固相化されていると共に、前記検出工程においては、ストレプトアビジンに結合した蛍光色素を用いるPCR−SSOP−Luminex法であることを特徴とする請求項4〜8のいずれかに記載のヒトミトコンドリアDNAに関する遺伝子検出法。
【請求項10】
ヒトミトコンドリアDNAにおいて、配列番号57〜配列番号242に記載の塩基配列を備えた186個の核酸プローブが認識する多型部位のうちの少なくとも5個以上の多型部位を検出する核酸プローブを備えたことを特徴とするヒトミトコンドリアDNAに関する遺伝子検出用キット。
【請求項11】
ヒトミトコンドリアDNAにおいて、次のmtSNPによってグループ分けされる少なくとも10個のハプログループ、すなわち3970T、13928A、10310Aを有するハプログループFと、8272の9bp欠失を有するハプログループBと、663G、8794Tを有するハプログループAと、5231A、12358G、12372Aを有するハプログループN9aと、2772T、4386Cを有するハプログループM7aと、4071T、4048A、6680C、12811Cを有するハプログループM7bと、709A、4833G、5108C、8200C、15497Aを有するハプログループG1と、709A、4833G、5108C、13563Gを有するハプログループG2と、4883T、5178A、3010Aを有するハプログループD4と、4883T、5178A、10397Gを有するハプログループD5とを検出するための核酸プローブを備えたことを特徴とする請求項10に記載のヒトミトコンドリアDNAに関する遺伝子検出用キット。
【請求項12】
前記10個のハプログループに加えて、11016A、14893Gを有するハプログループN9bと、4071T、4850Tを有するハプログループM7cを合わせた少なくとも12個のハプログループを検出するための核酸プローブを備えたことを特徴とする請求項11に記載のヒトミトコンドリアDNAに関する遺伝子検出用キット。
【請求項13】
前記ハプログループが有するmtSNPを含む塩基配列をPCR法によって増幅可能なビオチン化されたDNAプライマーセットと、前記ハプログループが有するmtSNPを検出するための核酸プローブが固相化された担体と、ストレプトアビジンに結合した蛍光色素とを備えたことを特徴とする請求項11または12に記載のヒトミトコンドリアDNAに関する遺伝子検出用キット。
【請求項14】
前記DNAプライマーセットは、配列番号1、配列番号2、配列番号5、配列番号6、配列番号11〜配列番号18、配列番号21、配列番号22、配列番号25〜配列番号28、配列番号33〜配列番号44、配列番号49〜配列番号52に記載のものであり、前記核酸プローブは、配列番号66、配列番号74、配列番号75、配列番号78、配列番号83、配列番号86、配列番号88、配列番号90、配列番号99、配列番号107、配列番号115、配列番号116、配列番号128、配列番号133、配列番号134、配列番号147、配列番号157、配列番号158、配列番号163、配列番号174、配列番号181、配列番号188、配列番号193、配列番号221、配列番号222に記載のものであることを特徴とする請求項13に記載のヒトミトコンドリアDNAに関する遺伝子検出用キット。

【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−330151(P2007−330151A)
【公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−165296(P2006−165296)
【出願日】平成18年6月14日(2006.6.14)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 2005年(平成17年)12月14日 日本ミトコンドリア学会発行の「国際学術集会 ミトコンドリアと生命2009」に発表
【出願人】(597144060)
【出願人】(506023806)
【出願人】(399077674)G&Gサイエンス株式会社 (21)
【出願人】(597112472)財団法人岐阜県研究開発財団 (25)
【Fターム(参考)】