説明

ヒト中枢神経系への損傷を測定するためのコンピュータシミュレーションモデル

コンピュータ化されたモデルが、ヒト脊髄をシミュレーションし、将来の損傷の確率または過去に起こった特定の損傷が起きる見込みについての推測を引き出すことを可能にする。脊髄は、多数の有限要素から形成される複数の2次元グラフによってモデル化される。2次元グラフは、患者の様々な脊椎レベルで、測定された脊髄の位置に対応する位置に積み重ねられる。積み重ねられたグラフは、他の患者から取得した同様のデータと比較することのできる3次元モデルを生成する。モデルは脊髄の全部または一部に加えられる応力のシミュレーションを含むことができ、それによって摂動された3次元モデルが生成され、それを既知の損傷を有する患者から取得した同様のデータと再度比較することができる。したがって、本発明を使用して、特に車両またはスポーツ事故の結果として起こる脊髄損傷の主張を検証することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は医療診断の分野に関し、脊髄損傷の可能性を予測する目的で、ヒト脊髄のコンピュータによるモデリングを行うためのシステム及び方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
本発明は、臨床データ(例えば神経検査)、環境データ(例えば損傷のメカニズム、車両速度や衝撃力ベクトルの患者に対する角度など損傷に固有のデータ)、及び解剖学的データ(例えばMRI、CT、脊髄造影CT、屈曲及び伸展位でのX線撮影など)に基づいた中枢神経系のモデルを提供する。本発明は、中枢神経系の3次元の応力/歪画像を含む数学的モデルを生成する。本発明のモデルはまた、衝撃時の中枢神経系をレンダリングする仮想有限要素を提供する。プログラムはまた、神経損傷の可能性を予測することもできる。
【0003】
神経外科医、整形脊髄外科医及び神経科学者は、脊髄損傷に関する問題に長い間取り組んできた。脊髄損傷は主に自動車事故、ダイビング事故及びスポーツ事故によって起こることが多い。例えば、広く知られている例であるフットボール事故による四肢麻痺などによって、どのようなときに重大な脊髄損傷を負う可能性があるか、またはそのリスクが高いかを予測する必要性が注目されてきた。
【0004】
従来技術では、そのような予測は脊髄造影、コンピュータ断層撮影及び磁気共鳴画像から得られた静止画像に基づいて行われてきた。しかしそのような撮像法は、リスクカテゴリー(risk category)に関する評価を行うために、既知の基準にしたがって中立位での患者の解剖学的構造を解明することに依存する。例えば、頚部脊柱管に狭小化のあるフットボール選手は、脊柱管に狭小化のないフットボール選手より、かなり高いリスクを負っていると考えられる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記の例では狭小化の存在は脊柱管の断面積及び脊髄にかかる相対的な圧迫力のみを考慮している。これまで、脊髄を扱う神経科学者及び脊椎外科医は、脊髄の圧迫の存在及びそれによる虚血を、過剰に、且つおそらく不適当に重要視してきた。したがって、提案されるリスク分析対策は、圧迫に基づいて、かつ圧迫による虚血が原因で脊髄損傷が起きるという仮定に基づいて提案されてきた。
【0006】
しかし、これらの仮定は不正確であることがある。動物モデルでの新しい例によって、神経損傷における伸長及びせん断の重要性が実証された。他の臨床研究では、脊髄損傷が、多くの場合、過度の屈曲、伸展及び側方屈折損傷の際に脊髄にかかる異常な伸長及びせん断力によって起こる可能性があるということを示している。伸長及びせん断の重要性が、中枢神経系の慢性、非外傷性損傷に関連していると思われる。
【0007】
脊椎の伸長及びせん断をモデル化する研究は動物では実証することができるが、当然ヒトでは実証できない。したがって、脊髄の数学的モデルを開発し、脊髄の生化学的に個別な領域(region)又は区域(tract)に対して、外部負荷によって加わる応力の要素分析を適用し、結果的に生じる歪を測定することが望ましい。このようにして、コンピュータシミュレーションプログラムは、ヒト脊髄内部での予測される負荷パターン及び応力を測定することができる。
【0008】
脊髄損傷は診断が困難であることが多い。患者が痛み、神経異常、視界のぼやけ、手の協調運動不全、歩行の変化などの症状を訴えても、MRIスキャナなどで描出された標準画像では何も見られないことがある。患者の体力及び感覚が良好のはずに見えても、患者は依然として苦痛を感じるということもある。本発明は、多くのそのような損傷が脊髄の伸長または圧迫によって生じている、及びそのような伸長または圧迫は従来手段では容易に観察できない、という仮定にある程度基づいている。
【0009】
したがって本発明は脊髄のモデルを提供し、いくつかの歪のパターンを様々な種類の中枢神経系損傷と相関させるように、脊髄内部での負荷パターン及び歪をシミュレーションする方法を提供する。本発明は、モデルが、累積された臨床観察データベースに基づいて情報を発展させることのできる発見的プログラム(huristic prgram)をある程度含む。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明はヒト脊髄のモデルを構築するための方法及び装置を含む。方法の第1の実施形態では、脊髄の位置を患者の複数の脊椎レベルで測定する。測定はX線、CTスキャン法、磁気共鳴画像(MRI)または他の任意の同等手段によって行うことができる。様々な脊椎レベルでの脊髄の位置についての情報を、脊髄の3次元モデルを構成するために後で使用する。
【0011】
各々が対応する各脊椎位置での患者の脊髄断面を表す複数の2次元グラフを組み合わせることによって、3次元モデルを組み立てる。各2次元グラフは、あらかじめ作成された個々の位置での脊髄のモデルから導出される。次いで、脊髄の全部または一部の3次元モデルを生成するように、2次元グラフを好ましくはコンピュータによって積み重ねる。2次元グラフは、数値手段によって3次元モデルを組み立てることを容易にするように、好ましくはデジタル形式でコンピュータ内に保存される。
【0012】
次いで、このように取得した3次元モデルをデータベース内に保存し、同様の方法で旧患者から取得したデータと比較することができる。同様のデータ収集法を使用してあらかじめ収集されたデータとの比較を使用して、患者が特定の種類の脊髄損傷を受けているか、または受ける可能性があるかについての推測を引き出すことができる。
【0013】
別の実施形態では、患者が複数の姿勢をそれぞれとりながら初期測定を行う。例えば、患者が「中立」位で座っているとき、及び患者が頭部を前方に曲げているとき、ならびに患者が頭部を後方に曲げているときに測定を行う。脊髄の3次元モデルは、これらの症例のすべて、及び旧患者から取得した同様のデータと比較されるデータについて生成することができる。
【0014】
さらに別の実施形態では、脊髄の少なくとも一部分に対する応力の付加をシミュレーションする。シミュレーションは、脊髄を形成する材料の弾性特性の知識を使用して行うことができる。この実施形態で作成される3次元モデルは、様々な脊椎レベルにおける脊髄部分の実際の測定値に基づいているので、特定の患者の脊髄を表しているが、加えられた応力の影響も含む。この摂動された脊髄のモデルを旧患者から取得したデータと比較することによって、現患者が受けた損傷の性質についての推測を引き出すことができる。この実施形態の重要な適用例は、自動車事故や他の事故で損傷を負ったと主張する患者の証言の正確さを検証する際の利用である。
【0015】
上述の方法は、好ましくは、患者から取得した初期データの表示を提供し、モデルの構築に使用するために、操作者が患者に関連する画像から1つまたは複数の点を選択することを可能にする装置によって実行される。次いで、装置は脊髄の3次元モデルを生成し、応力をシミュレーションするための制約を追加するというオプションを操作者に与える。装置は、患者の様々な損傷の確率の視覚的表示を提供するようにプログラムすることができる。
【0016】
したがって、本発明は脊髄のモデルを構成するための方法及び装置を提供するという主な目的を有する。
又、本発明は、患者が特定の種類の脊髄損傷を負うであろうという見込みを、医師が予測することを可能にする方法を提供するという他の目的を有する。
又、本発明は、患者が特定の種類の脊髄損傷を負っている可能性を、医師が判断することを可能にする方法を提供するという他の目的を有する。
又、本発明は、脊髄損傷の主張の正確さを評価するための手法を提供するという他の目的を有する。
又、本発明は、脊髄の予測モデルを提供するように、有限要素分析を神経科学の分野に適用するという他の目的を有する。
又、本発明は、より多くの患者からより多くのデータを収集すると有用性が向上するヒューリスティックなプログラムを含む、脊髄の数学的モデルを提供するという他の目的を有する。
【0017】
当業者であれば、以下の図面の簡単な説明、発明を実施するための最良の形態、及び特許請求の範囲を読むことによって、本発明の他の目的及び利点を理解することができるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明は、ヒト脊髄のコンピュータ化モデルを含み、モデルは様々なタイプの将来の脊髄損傷の確率を測定し、かつ過去に脊髄がどのように損傷を受けたかについての推測を引き出すのに有用である。
【0019】
本発明は、脳及び脊髄は応力が加わると伸長及び変形をするという事実を前提としている。そのような応力には、脊椎または頭骸骨の屈曲、伸展及び側方屈折、伸長、回転及び圧迫を含む。中枢神経系(即ち、脳及び脊髄)は、通常の負荷がかかると本来の位置に戻ることができる。しかし、脊柱前彎症または後彎症が原因で、脊髄及び脳幹に過剰な伸長が誘発され、過剰または急激な回転または水平移動によって脳及び脊髄に過剰なせん断力が付加されることがある。脳、脳幹または脊髄の経路内のどこかに突起があることによっても、負荷及び変形に急激な焦点変化が生じ、脳または脊髄損傷を引き起こすことがある。
【0020】
図示の目的で、本発明を頭蓋骨下部及び頚椎及び上位胸椎に関して説明する。ただし、本発明の原理は、脳及び脊髄下部ならびに末梢神経にも適用することができる。本説明で取り上げた例は特に、延髄中間部の脳幹から中位胸椎レベルの脊髄までを扱っている。
【0021】
本発明の方法は、所与の患者の状態を現実的に表現するモデルを導出することができるように、臨床データの収集と脊髄の数学的表現を組み合わせる。図1の(A)及び図1の(B)は臨床データを収集するステップを表す。
【0022】
図1の(A)はデータを取得する患者の脊髄を表す。患者は、走査デバイス(図示せず)の前に座る。走査デバイスとしては、X線装置、CTスキャナ、MRIスキャナ、或は患者の脊椎及び/又は脊髄の画像を形成することのできるあらゆる同等のデバイスを用いることができる。中でも、好ましいデバイスはMRIスキャナである。走査デバイスは図1の(B)のグラフで表されるデータを取得する。
【0023】
図1の(B)では、3つの異なる姿勢における患者の脊髄を表す3つの曲線が示されている。曲線21は患者が通常の姿勢で座っているときにとらえた中立位を表す。曲線に沿って配設された有限のシンボルは、様々な脊椎レベルでの脊髄の位置に対応する。そのような各位置における正確な位置は、走査デバイスの出力から測定される。曲線22及び23はそれぞれ、患者が頭部を後方及び前方に曲げているときの脊髄を表す。頭部を前方に曲げている状態は屈曲として知られており、頭部を後方に曲げている状態は伸展として知られている。
【0024】
それぞれの場合において走査デバイスは、各脊椎レベルでの脊髄の重心の、空間における位置を記録し、かつそのような重心の座標を、後にモデルを組み立てる際に使用するために、それぞれデジタルで保存する。
【0025】
実際は、頚椎の動きは非常に複雑であり、そのような動きは、脊髄の上方向へ伸びること及び脊髄の下方向へ圧迫されることをも含む。又、脊髄は、側方屈折及び回転を受けることもある。各脊椎レベルでの脊髄の重心位置のデータを、x、y又はz軸の周りでの脊髄の傾斜角度に関するデータと結び付けることができる。データはまた、狭窄(脊柱管の狭小化)部分の存在を記録するために、圧痕または圧迫の大きさを含むこともできる。使用するデータのタイプが多いほど、モデルをより正確にすることができる。
【0026】
以上、本発明の手順は、患者が1つまたは複数の姿勢にあるときの各脊椎レベルでの脊髄の重心位置についての情報を生成してきた。使用可能な脊髄のモデルを作成するためには、各脊椎に対応する位置での脊髄の構造について、より多くの情報が必要である。
【0027】
したがって本発明の方法は、各脊椎の位置で、脳幹の場合には延髄内部で4ミリメートル長さごとに、脊髄の2次元モデルを作成することも含む。脊椎レベルC7及びT1に関連するこのような2次元モデルを、図2の(A)及び(B)に示す。(脊椎は一般にその位置によって識別されている。7個の頚椎はC1からC7と表され、12個の胸椎はT1からT12として知られている。延髄における位置はM1からM5で表される。)
図2の(A)及び(B)は、表示された数字または文字で示すように、様々な脊髄の構造または領域を識別する凡例を含む。
【0028】
図2の(A)及び(B)で表される2次元断面モデルは、各レベルでの脊髄構造及び神経機能の全範囲を表すと考えられる。これらの2次元モデルは脊髄の解剖学の知識ならびに脊髄の各部分の機能についての最新の実験及び理論に基づいている。場合によっては、人体でのある種の構造物の位置は明確に規定されていない。例えば交感神経線維は、血流量、体温、肺を通る空気量、消化器系を通る食物の移動ならびに性及び泌尿生殖器機能を調節するために非常に重要であることが知られているが、頚髄における交感神経系線維(中間外側細胞柱)の位置は明確に知られていない。そのような場合、頚髄内部におけるこれらの線維の位置について仮定を行う。同様に、呼吸を調節する神経装置も詳しく理解されていない。脊髄のモデルを生成する際、ある脳幹核を同じ神経機能ごとに分類し、ある神経機能に対する伸長及び負荷の影響について基本的な仮定を立てるために、それらに共通の材料特性を帰属させることは有用である。
【0029】
したがって、図2の(A)及び(B)で表すモデルは脊髄の2次元断面を領域に分類しており、各領域は特定の神経機能と関連している。脊髄の知識が進歩するにしたがって、将来得られるであろうより詳しい理解を反映するように、これらのモデルを修正することができる。したがって、これらの2次元の解剖学的モデルの特定の内容は変わる可能性があるが、もとになる本発明の方法論はほぼ不変のままである。
【0030】
図2の(A)及び(B)に示すような中枢神経系の各レベルで作成された2次元の解剖学的モデルから、コンピュータによって簡便に保存され、数値的に操作され得る2次元グラフの形態で、デジタル表現が導かれる。この手順の第1のステップを図3に示す。
【0031】
図3は、所与の位置での脊髄の断面を表し、全体として図2の(A)及び(B)に示す断面図に対応している。ただし図3に示す断面は、大幅に簡略化されている。図3では、ほぼ半円形の領域が示されており、この領域の境界上の点と点の間を延びる直線によって小領域に分割されている。これらの直線は脊髄の領域の境界を既定し、そのような領域は個別の神経機能に対応するように意図されている。図3の境界曲線及び直線は明らかに簡略化されており、容易にデジタル化でき、そしてコンピュータメモリに保存できるように、図示された形態で表される。
【0032】
図3〜図9は、ミシガン州FlintのGeometrics,Inc.から市販されているPRIMEという名のコンピュータプログラムの支援によって作成することができる。PRIMEプログラムは、本発明で使用される有限要素モデルを生成し、その後の分析結果の読み取りを可能にする、マイクロコンピュータを用いた双方向グラフィックプログラムである。したがって、プログラムは各患者に関して生成されたデータを操作することを容易にする。ただし、本発明はこの特定のプログラムの使用に限定されるものではない。図3及び図4に示す5桁の数字は、PRIMEプログラムによって保存された仮想ノードを表す。
【0033】
図4は、本処理における次のステップを表す。図4は図3と同様であるが、図3で示す直線によって既定された各領域が、ここではより小さい領域に再分割されている点が異なる。したがって、図4では脊髄の断面がより多数の有限要素小領域によって表されている。実際は、平均的なメッシュのサイズを小さくすれば、そのような小領域の数は非常に多数にすることができる。メッシュのサイズが小さいほど、モデルの精度はより高くなる。各小領域は図に示す頂点またはノードによって規定され、後の数値処理のために頂点の座標をデジタル形式で保存することができる。
【0034】
図5は本処理における次のステップを示す。図5では、様々な有限小領域に、記号、模様、色またはそれに相当するものを用いた識別表示が割り当てられている。所与の色または模様を有するそのような小領域群は、同じ神経機能に関連付けられた脊髄の領域を表す。したがって、図5は、データをデジタル形式で保存しやすくしたままで、脊髄断面のモデルを視覚的に描写する。
【0035】
本処理の次のステップは3次元モデルの構成である。3次元モデルは、図5に示すタイプの複数の2次元グラフを積み重ねることによって作成する。この積み重ねは、好ましくはコンピュータによって電子的に実行される。積み重ねにおける各要素は、断面の重心が走査デバイスによって測定された脊髄の位置に対応するように配置しなければならない。このように、観察する患者に対して特定的にモデルを調整する。
【0036】
図6A〜図6Dに結果の例を示す。図6Aは延髄の3次元モデルの例を表す。図6B〜図6Dはそれぞれ、頚髄上部(cervical-top)、頚髄下部(cervical-bottom)及び胸髄上部(thoracic-top)のモデルを表す。これらのモデルは市販されているソフトウェアを使用してコンピュータディスプレイ上に表示することができ、または図に示すように紙面に印刷することができる。
【0037】
図6A〜図6Dに示す3次元モデルは、脊髄の小部分の表示である。完全な脊髄のモデルは、脊椎の脊椎全体の長さに沿った位置で見た複数の脊髄断面を単純に積み重ねることによって、同様の方法で生成することができる。図7(A)〜(D)は、4つの異なる姿勢の脊髄を示す、完全な脊髄のモデルの例を提供する。
【0038】
図6A〜図6D及び図7(A)〜(D)に示される全ての例では、図示されたモデルは、図4に示すように各断面をモデル化するために使用された有限要素から最終的に導出する、多数の有限要素から構成される。
【0039】
ここで、図6A〜図6D及び図7(A)〜(D)に示す脊髄のモデルは、患者から得られた特定のデータ、及び脊髄の様々な断面の構造のより一般的な解剖学的モデルの両方に基づいていることが分かる。本発明の方法は、様々な患者の脊髄の各断面の構造及びサイズは、ほぼ同じであるという仮定を行っている。したがって本発明は、脊髄の部分の複数の2次元モデルを組み合わせることによってモデルを作成し、各2次元モデルは対応する脊椎の測定位置と一致するように配置される。したがって、各3次元モデルは汎用的なモデルを使用して作成されるが、検査する患者に固有のものである。
【0040】
上述のように導出されたモデルは、様々な方法で使用することができる。主な使用法は、所与のモデルを、旧患者から取得した既知の症状のデータと比較することである。もっとも単純な場合では、中立位のみに関してデータを保存することができる。即ち、複数の患者の脊椎モデルを含むデータベースを作成することができ、各モデルは、中立位で座っている患者から取得したデータによって構築される。データベースにある各患者の症状が既知である場合、新たな入力データを保存された情報と比較して現患者についての推測を引き出すことができる。例えば、現患者が特定の種類の脊髄損傷を受けやすいかどうかを、その患者の脊髄モデルと既知の症状を患う他の患者のモデルの類似性に基づいて予測することができる。あるいは、所与の患者の脊髄が、同様の損傷を受けたことが知られている他の患者の脊髄と、どれほど近似しているかに基づいて、損傷の主張を検証することができる。
【0041】
本明細書で述べた比較は、所与の患者に対して生成されたモデルを観察し、それを他の患者から収集したデータによって保存されたモデルと主観的に比較することによって等、手作業で行うことができる。或は、所与のモデルとデータベースに保存されたモデルのうちのいずれかに共通する特徴を検索するようにプログラムされたコンピュータを使用して、比較を自動化することもできる。自動化された比較は、所与のモデルとデータベースのモデルの間の最小二乗による適合性又はその他の手法による適合性を単純に算出する「総当たり式」計算を含むことができる。或は、比較するモデル同士に共通する可能性のあるわずかな特徴を検索する、より高度なプログラムとすることもできる。本発明はそのようなすべての比較方法を含むものとする。
【0042】
上述の例では、中立位で取得したデータのみを使用して比較が行われている。本方法は、図1の(B)で示されているように、複数の姿勢で取得したデータを使用すると、より精確になる。複数の姿勢に依存する方法は、現患者から取得したデータと他患者から保存したデータの間でより多くの比較を行うことができること以外は、1つの姿勢だけに依存する方法と本質的には同様である。特に、いくつかの異なる姿勢のそれぞれにおいて、所与の患者の脊髄を、他の患者の脊髄の対応する位置と比較することが可能である。
【0043】
本発明の別の重要な実施形態は、脊髄に加えられる応力のシミュレーションを含む。脊髄を構成する材料の弾性特性についての知識を使用して、様々な応力に反応する脊髄の部分の運動をシミュレーションすることができる。脊髄の材料特性は、人間の(解剖用の)死体から採取した脊髄組織の分析から導出することができる。これらの材料特性は、脊髄が様々な応力によってどのように影響を受けるかについての現実的な仮定を行うために使用することができる。
【0044】
こうして、モデルを上述のように構成することから開始する。次いで、モデルに既知の方法で応力を加え、それにより摂動状態の脊髄のモデルを導出する。理論上、脊髄全体または脊髄の一部への応力の付加をシミュレーションすることができ、或は、異なる部分に異なる方法で応力を加えることができる。摂動モデルは上記と同じ構造を有する。即ち、最終的なモデルは複数の積み重ねられた断面を含み、各断面は複数の有限要素で表される脊髄の2次元スライスである。各有限要素に対する様々な種類の応力の付加をシミュレーションすることが理論的に可能であるので、ここでは有限要素を使用することの利点は特に明らかである。
【0045】
応力をシミュレーションすることによって、モデルが、上述の静的モデルで使用されたものと同じ種類のデータ構造を使用して表示されるようになるので、応力を加えられたモデルを旧患者から取得した脊髄モデルと直接比較することが簡単である。上述のように、比較は、所与のモデルをデータベースからのモデルと視覚的及び主観的に比較することによって、手動により、又は自動化された手段で行うことができる。応力を加えたモデルをデータベースから取ったモデルと比較する手順は、例えば、事故が起きた瞬間に脊髄に応力が加えられたことが既知であるとき、自動車事故で脊髄損傷を起こす可能性の程度を判断する際に特に有用である。また、一連の様々なシミュレーションされた応力をモデルに付加することによって各結果を実際のデータと比較する実験をすることができる。それを行うことによって、所与の患者が損傷を受けたかどうか、及びどのように損傷を受けたかに関して推測を引き出すことができる。事故の際、所与の患者の脊髄に加えられた負荷の正確な性質及び程度に関する推測も引き出すことができる。
【0046】
図8(A)〜(D)は延髄のM3位置の、脊髄に応力が加えられたモデルの図を示し、図9(A)〜(D)は頚髄のC5位置の同等の図を示す。
【0047】
図8(A)〜(D)は、脊椎位置C3とC4の間に20ミリメートルの軸方向伸長及び4ミリメートルの「ピンチ」が加えられた場合の、M3断面を表す。4つの応力構成要素、すなわち、軸方向応力(SZ)(図8(D))、側方応力(SX)(図8(B))、軸方向−側方せん断力(SXZ)(図8(C))、及びフォンミーゼス応力(SVM)(図8(A))についての結果が示されている。9つの応力構成要素及び3つの変形構成要素が考えられる。図8(A)〜(D)及び図9(A)〜(D)では、仮想応力構成要素が左側の数字の列によって示されている。そのような数字はそれぞれ、脊髄断面のモデルにおける同様のコードに対応する色または模様コードと関連している。したがって、モデルを視覚的に検査することによっても、加えられた応力を明確に視認することができる。
【0048】
実際の患者の損傷データを検討することによって、脊髄に加えられた応力について仮説を立てることができる。応力の性質及び強度は様々である。一方では重度の中枢神経系障害が表れるフットボール損傷の原因となった応力、あるいはより軽度の慢性的な損傷が表れる脊椎狭窄状態で脊髄に加えられる慢性的応力をモデル化することができる。
【0049】
患者に関して取得したデータとデータベースに保存されているデータの比較は次のように行うことができる。データベースは、好ましくは、応力/歪と、応力/歪エネルギーと、各脊髄断面(すなわち、M1、M2・・・C1、C2など)の転位結果とを含む。各断面及び各断面内の各要素に関して、有限要素モデルの頂点またはノードでの応力/歪データが、頂点の変形または非変形座標とともに保存されている。データベースは数百または数千の症例ファイルを有することができ、各症例ファイルには、臨床観察に基づく全体的な障害評価とともに応力結果が含まれている。保存されている各断面を、検査する患者に関して取得したデータと比較するために、各頂点での歪エネルギーを比較することができ、かつ検査中の患者データと最小の累積差異を示す、データベース内の症例を探すことができる。この比較から、データベース内の各症例との一致の可能性を判断することができ、したがって検査している患者が負う障害のタイプの予測を判断することができる。この分析では、数値最終要素の歪エネルギーが脊髄障害の予測指標であると仮定する。
【0050】
従来技術で行われてきた脊髄への損傷の影響に関するシミュレーションとは異なり、本発明は、そのような構造が中枢神経系に直接影響するような程度のときを除いて、中枢神経系を取り囲む筋骨格構造にではなく、中枢神経系にかかる応力の分析に独自に重点を置いている。車両損傷に関連する従来技術による既知の研究では、中枢神経系自体にかかる応力を分析したものはない。
【0051】
本発明は、負荷及び応力を脊髄損傷に関連付けた、以下に記載する仮定に基づく最初の方法であると考えられる。その仮定とは次の通りである。
i) 伸長及びせん断は、ミエリン及び軸索損傷をもたらす、
ii) 共通の神経機能に関連する脊髄の領域に、共通の材料特性を割り当てることができる、
iii)変形及び応力を、確定された臨床患者病歴における既知の神経異常と関連付けることが可能である、
iv) 中枢神経系損傷の数学的な確率を信頼性とともに予測する、神経障害データベースを発展させることができる。
【0052】
上述の方法では、脊髄は均一の材料特性(すなわち、硬度、弾性など)を有すると仮定されてきた。即ち、臨床研究から得られた情報に基づいて、脊髄は断面全体にわたって不均質の弾性特性を有すると仮定された。本方法は、脊髄の様々な機能要素のそれぞれに異なる材料特性を割り当てることによって、更に改良することができる。より高度なこのモデルでは、脊髄を可変の断面の変形可能な柱とみなすことができる。
【0053】
又、上述の方法では、脊髄の各部分の直径は、すべての患者で同じであると仮定された。第1段階の近似では、これは妥当な仮定である。しかし、脊髄の直径には患者によってばらつきがあり、このばらつきは約50%ほどにもなることがある。これらの差異を考慮に入れることによって、モデルをさらに改良することができる。患者に行う初期測定には、各脊椎レベルでの脊髄の位置だけでなく、そのような各位置での脊髄の直径も含むことができる。次いで後者の情報を、サイズが測定されたサイズと一致するまたはほぼ測定されたサイズである、検査患者の脊髄の2次元グラフを作成することによって、モデルに組み込むことができる。
【0054】
本発明の主な特徴は、脊髄の有意義な有限要素モデルの構成、及びそのようなモデルと旧患者から取得された同様のデータの比較であることが理解されるであろう。データベースに表示される患者の数が多いほど、本発明はより有用になり得る。したがって、本発明は一部には、所与の患者の状態に関する予測及び/または推測を行うために、過去に観察されたデータから学習することのできるヒューリスティック(heuristic)なコンピュータプログラムを含む。
【0055】
上記の方法で適用されたような有限要素分析は、エンジニアリングプログラムで一般に使用される。先に述べたように、本発明で使用される有限要素モデルは、有限要素モデルの構成に特に適しているPRIMEとよばれるコンピュータプログラムの支援を使用して作成することができる。PRIMEプログラムは、ノード、曲線、線、領域及び要素を扱うように設計されており、それらはすべて上述のモデルの構築に使用することができるので、本発明を実行する際には首尾よく機能する。但し、本発明は何らかの特定のプログラムの使用に限定はされない。有限要素モデルの構成及び操作を容易にする他のソフトウェアを使用して、本方法を実行することもできる。或は、本明細書に記載された情報に基づいて、当業者が同じ目的の新しいソフトウェアを書くこともできる。
【0056】
上述の方法を実行するための装置が図10のブロック図に示されている。一実施形態では、装置はディスプレイデバイス14及び16に接続された中央処理装置(CPU)10を含む。ディスプレイによって作成された画像上で特定の点を選択するために使用することができるように、マウスまたはライトペンまたはそれと同等の構成を有する指示デバイス12がCPUに接続されている。データベース18がCPUに接続されており、データベースは旧患者の脊髄状態についての情報を含む。データベースはデータを格納するCDROMを含むことができ、または別の形態で提供されてもよい。データベース内のデータは、元の患者データ、元の患者データから導出された患者の脊髄モデル、ならびに患者に観察された脊髄損傷の性質について及びその他の情報を含むことができる。CPUをパーソナルコンピュータまたはより大型のコンピュータまたはそれと同等の構成の一部とすることができる。
【0057】
装置は、上述のように取得した対象患者の測定値を含むデータを、入力として受け取る。ブロック20で示すこれらのデータは、CDROMに保存される、またはこれと同等の、CPUによってデータの使用を可能にする任意の手段に保存することもできる。上述したように、患者データはX線、CTスキャン、磁気共鳴画像(MRI)、または患者がとる様々な姿勢で、様々な脊椎レベルで、患者の脊髄画像を使用者が指示しデジタル化することのできる任意の手段によって、取得することができる。
【0058】
ブロック20で保存されたデータは、ディスプレイデバイス14に表示するためにCPUによってフォーマット化される。したがって、使用者はディスプレイデバイス14上で患者の脊髄画像または様々な姿勢の脊髄の複数の画像を見ることができる。次いで操作者は、指示デバイス12を使用してディスプレイに示された画像上の1つまたは複数の点を選択する。選択するべきデータ点の数に関して固定的な要求はないが、一般に点の数が多いほど、最終的なモデルはより精密になる。
【0059】
操作者がデータ点の選択を終了したことをシステムに対して指示すると、システムは上述した方法を使用して脊髄のモデルの構成を開始する。CPUは、図2の(A)及び図2の(B)に図示されているような、様々な脊椎の位置での脊髄の断面構造の表示が保存されているメモリを含む。CPUは前述のように保存されたこれらの表示を使用して、患者に関連する実際のデータに基づいた脊髄の1つまたは複数のモデルを構成する。そして、CPUは、このように生成されたモデルをディスプレイデバイス16に表示することができる。
【0060】
上述のようにモデルを完了した後、操作者はさらに適切な制約を指定し、脊髄特性のデータベースから生物物理学的な材料特性を選択することができる。操作者はまた、仮想の物理的負荷条件を指定することもできる。次いで、後者のいずれかまたは全ての情報を使用して、指定した形状、制約、材料特性及び物理的負荷から生じる、3次元の脊髄組織変形、応力及び歪エネルギーを計算することができる。本方法のこの部分の結果を、ディスプレイデバイス14によって示されるディスプレイ上に重ね合わせることができる。したがって、デバイス14は患者の脊髄の元の画像及び最大変形及び応力の予測位置の両方を示すことができる。
【0061】
上記のステップを実行した後、システムは患者の脊髄のデジタルモデルをブロック18で示すデータベースと比較することによって、脊髄障害の予測を提供することができる。ブロック18で示すデータベースは、好ましくは、形状、負荷条件、変形、応力の合力、歪エネルギーの合力及び既知の臨床的な障害結果についての情報を含む。比較の結果は、3次元のデジタル確率障害マップとして表示することができ、デバイス14で表示される元の画像上に重ね合わせることができる。好ましくは、ディスプレイデバイス上に示される画像は、市販されているソフトウェアを使用して、3次元空間で回転し見ることができる。
【0062】
本処理の最後において、操作者に、検査する患者に関して構成した脊髄のデジタルモデルの結果をブロック18のデータベースに加える機会が与えられている。したがって、データベースに加えられた情報は、システムの内部「知識」を増加させ、将来の症例において予測を行う際のシステムの有用性を向上させることができる。データベースの情報がより多いほど、そのような予測を行うシステムの能力もより高くなる。
【0063】
2つの別個のディスプレイデバイス14及び16が示されているが、本発明は画像を重ね合わせる、又は分割画面に表示する、又は他の方法で画像を操作する適切なソフトウェアを使用して、単一のディスプレイデバイスでも実行することができる。
【0064】
本発明で使用した有限要素モデリングは急性の脊髄または脳損傷に限定されるとみなすべきではない。頚髄狭窄などの慢性的な神経系の病変、及び場合によっては脊髄空洞症、カウザルギー、顎関節症候群などの症状にも適用可能であり、これらは、幾何的な側面及び考察の類似性によって上記の方法を容易に利用できる。
【0065】
本発明は、読者が当業者であれば明らかなように、更に修正することができる。そのような修正は、添付の特許請求の範囲の精神及び範囲内であるとみなされるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】(A)は本発明にしたがって脊髄の位置を測定する、安静、座位の患者の脊髄の向きを表す図、(B)は、本発明にしたがって、患者が様々な姿勢をとりながら測定を行う、様々な脊椎レベルに対応する、患者の脊髄の一部分の位置を示すグラフの図である。
【図2】C7及びT1脊椎に対応する2つの垂直位置の、本発明の3次元有限要素モデルを構成する際に使用される脊髄の機能モデルを含む脊髄の断面図である。
【図3】患者の脊髄の一部分の断面図であり、本発明のモデルを使用して断面を領域に分割することを示す図である。
【図4】図3と同様であるが、本発明にしたがって、断面をモデル化しコンピュータ・メモリに保存することができる複数の有限要素領域が追加されている図である。
【図5】図3及び4と同様であるが、様々な有限要素領域がそれぞれの機能を図示するために様々な識別表示を割り当てられている図である。
【図6A】本発明にしたがって、図5で示したタイプの2次元モデルを積み重ねることによって構成された、脊髄の一部分の3次元モデルを示す図である。
【図6B】本発明にしたがって、図5で示したタイプの2次元モデルを積み重ねることによって構成された、脊髄の一部分の3次元モデルを示す図である。
【図6C】本発明にしたがって、図5で示したタイプの2次元モデルを積み重ねることによって構成された、脊髄の一部分の3次元モデルを示す図である。
【図6D】本発明にしたがって、図5で示したタイプの2次元モデルを積み重ねることによって構成された、脊髄の一部分の3次元モデルを示す図である。
【図7】(A)〜(D)は、本発明にしたがって構成された、様々な姿勢の脊髄の3次元モデルを示す図である。
【図8】(A)〜(D)は、本発明にしたがって構成された、M3位置での、脳幹下部(延髄)の摂動された部分を示す図である。
【図9】図8と同様であるが、C5脊椎位置すなわち第5頚椎の脊髄に関連する図である。
【図10】本発明にしたがって製作された装置のブロック図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脊髄の数学的モデルを作成する方法であって、
a)脊髄の位置を患者の複数の脊椎レベルで測定するステップと、
b)前記複数の脊椎レベルに対応する位置で患者の脊髄断面を表示する複数の2次元グラフを構成するステップと、
c)脊髄の少なくとも一部分の3次元モデルを生成するように、ステップ(a)で測定した位置にしたがって前記複数の2次元グラフを積み重ねるステップとを含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
更に、患者に複数の姿勢をとらせ、前記測定するステップが前記複数の姿勢のそれぞれについて行われ、ステップ(a)から(c)が前記複数の姿勢のそれぞれについて行われることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記脊髄の3次元モデルをデータベースに保存されているデータと比較するステップをさらに含み、前記データベースが他患者から取得した同様のデータを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記脊髄の3次元モデルをデータベースに保存されているデータと比較するステップをさらに含み、前記データベースが他患者から取得した同様のデータを含むことを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項5】
ステップ(b)が、脊髄の少なくとも一部分に加えられる応力をシミュレーションするステップを含み、前記3次元モデルが摂動された状態の脊髄の少なくとも一部分を示すことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記脊髄の3次元モデルをデータベースに保存されているデータと比較するステップをさらに含み、前記データベースが他患者から取得した同様のデータを含むことを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記2次元グラフが脊髄断面を複数の有限要素に分割することによって生成され、ステップ(c)で生成される前記3次元モデルが前記複数の有限要素から形成されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項8】
脊髄の少なくとも一部分の数学的モデルを作成する方法であって、
a)脊髄の位置を患者の複数の脊椎レベルで測定するステップと、
b)複数の縦方向位置での患者の脊髄断面を表示する複数の2次元グラフを構成し、前記2次元グラフが複数の有限要素から組み立てられ、前記複数の有限要素が、前記要素が位置する脊髄の領域の神経機能にしたがってコード化されるステップと、
c)脊髄の少なくとも一部分の3次元モデルを生成するように、ステップ(a)で測定した脊髄の位置にしたがって前記複数の2次元グラフを積み重ねるステップとを含み、前記3次元モデルが前記複数の有限要素から形成されることを特徴とする方法。
【請求項9】
患者がとる複数の姿勢のそれぞれについてステップ(a)から(c)を繰り返すステップをさらに含むことを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記3次元モデルを同様の方法で他患者から収集したデータと比較するステップをさらに含むことを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記3次元モデルを同様の方法で他患者から収集したデータと比較するステップをさらに含むことを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項12】
ステップ(b)が、脊髄の少なくとも一部分に加えられる応力をシミュレーションするステップもさらに含み、前記2次元グラフ及び前記3次元モデルが摂動された状態の脊髄を示すことを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項13】
前記3次元モデルを同様の方法で他患者から収集したデータと比較するステップをさらに含むことを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項14】
脊髄の数学的モデルを作成する装置であって、
a)脊髄の位置を患者の複数の脊椎レベルで測定する手段と、
b)複数の脊椎位置で患者の脊髄断面を表示する複数の2次元グラフを構成する手段と、
c)脊髄の少なくとも一部分の3次元モデルを生成するように、前記測定手段によって測定した測定位置にしたがって、前記複数の2次元グラフを積み重ねる手段とを含むことを特徴とする装置。
【請求項15】
前記脊髄の3次元モデルをデータベースに保存されているデータと比較する手段をさらに含み、前記データベースが他患者から取得した同様のデータを含むことを特徴とする請求項14に記載の装置。
【請求項16】
脊髄の少なくとも一部分に加えられる応力をシミュレーションする手段をさらに含み、前記3次元モデルが摂動された状態の脊髄の少なくとも一部分を示すことを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記脊髄の3次元モデルをデータベースに保存されているデータと比較する手段をさらに含み、前記データベースが他患者から取得した同様のデータを含むことを特徴とする請求項16に記載の装置。
【請求項18】
前記構成する手段が脊髄断面を複数の有限要素に分割する手段を含み、前記3次元モデルが複数の有限要素から形成されることを特徴とする請求項14に記載の装置。
【請求項19】
脊髄の少なくとも一部分の数学的モデルを作成する装置であって、
a)脊髄の位置を患者の複数の脊椎レベルで測定する手段と、
b)複数の縦方向位置での患者の脊髄断面を表示する複数の2次元グラフを構成する手段と、ここで、前記2次元グラフが複数の有限要素から組み立てられ、前記複数の有限要素は、前記要素が位置する脊髄の領域の神経機能にしたがってコード化され、
c)脊髄の少なくとも一部分の3次元モデルを生成するように、前記測定手段で測定した前記脊椎レベルでの前記脊髄の位置にしたがって前記複数の2次元グラフを積み重ねる手段とを含み、前記3次元モデルが前記複数の有限要素から形成されることを特徴とする装置。
【請求項20】
前記3次元モデルを同様の方法で他患者から収集したデータと比較する手段をさらに含むことを特徴とする請求項19に記載の装置。
【請求項21】
前記構成する手段が脊髄の少なくとも一部分に加えられる応力をシミュレーションする手段を含み、前記2次元グラフ及び前記3次元モデルが摂動された状態の脊髄を示すことを特徴とする請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記3次元モデルを同様の方法で他患者から収集したデータと比較する手段をさらに含むことを特徴とする請求項21に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図6D】
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【図7】
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【図10】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2007−508048(P2007−508048A)
【公表日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−534208(P2006−534208)
【出願日】平成16年9月30日(2004.9.30)
【国際出願番号】PCT/US2004/032566
【国際公開番号】WO2005/038396
【国際公開日】平成17年4月28日(2005.4.28)
【出願人】(506117024)コンピューテーショナル バイオダイナミクス, エルエルシー (1)
【氏名又は名称原語表記】COMPUTATIONAL BIODYNAMICS, LLC
【住所又は居所原語表記】984 First  Colonial Road, Suite 305, Virginia Beach, VA 23454 United States
【Fターム(参考)】