説明

ヒト以外の動物のアポリポプロテインA−Iタンパク質の使用方法

この発明は、ヒト以外の動物のアポリポプロテインA-I(ApoA-I)タンパク質を用いる疾患の治療のための方法および組成物を提供する。この発明は、ヒトを含む動物において、脂質異常関連疾患、例えば高脂血症、高リポ蛋白血症、高トリグリセリド血症、高コレステロール血症、HDL欠損症、ApoA-I欠損症、心臓血管疾患、アテローム性動脈硬化症、再発狭窄症、ならびに敗血症ショックおよびウイルス感染症などのその他の疾患を含む疾患を治療するための方法および組成物を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は2002年7月30日出願の米国仮出願第60/399,928号の利益を主張するものであり、その開示の全体を本明細書中に参照により組み入れる。
【0002】
1.
本発明はヒト以外の動物のアポリポプロテインA-I(ApoA-I)タンパク質を用いて疾患を治療するための方法および組成物を提供する。本発明は、ヒトを含む動物において、脂質異常関連疾患、例えば高脂血症、高リポタンパク血症、高トリグリセライド血症、高コレステロール血症、HDLもしくはApoA-I欠損症、心臓血管疾患、冠状動脈疾患、アテローム性動脈硬化症、再発狭窄症、および感染症などのその他の疾患を含む疾患を治療するための方法および組成物を提供する。
【背景技術】
【0003】
2. 発明の背景
循環性コレステロールは2種類の主要なコレステロールキャリア、すなわち低密度リポタンパク(LDL)および高密度リポタンパク(HDL)、 によって運ばれる。LDLは生体内で肝臓(ここでコレステロールが合成されるか、または食物源から得られる)から肝臓外の組織へコレステロールを送達する責任を担っていると考えられている。血漿HDL粒子は、組織コレステロールのスカベンジャーとして作用してコレステロール調節に主要な役割を果たしていると考えられている。
【0004】
アテローム性動脈硬化症は動脈壁内へのコレステロールの蓄積を特徴とする、徐々に進行する疾患である。アテローム性動脈硬化の病変部に沈着する脂質は主として血漿LDL由来であるとの説得力のある証拠がある;従ってLDLは「悪玉」コレステロールとして一般に知られるようになっている。これに対してHDLの血清レベルは冠状動脈性心疾患と逆相関しており、事実、血清HDLのレベルが高いことはネガティブなリスクファクターと見なされている。HDLの各粒子はApoA-Iを少なくとも1コピー含んでいる。血漿中のHDLのレベルが高値であることは冠状動脈疾患に対して防護的であるのみならず、実際にアテローム動脈硬化性プラークの縮小を誘発させうるとの仮説がある(Badimonら, 1992, Circulation 86 (Suppl. III):86-94参照)。従って、HDLは一般的に「善玉」コレステロールとして知られるようになっている。
【0005】
血清コレステロールおよびトリグリセライドを低下させる治療法は現在多数ある(Brown とGoldstein, 「治療法の薬理学的基礎」(The Pharmacological Basis of Therapetutics), 第8版, GoddmanとGilman編, Pergamon Press, N.Y., 1990, 第36章, 874-896頁を参照のこと)。しかし、それらの方法はそれぞれ、効能、副作用、および患者集団の適格性に関して欠点と限界がある。スタチン(例えばMEVACOR(登録商標)、LIPITOR(登録商標))などの抗高脂血症剤は、横紋筋変性などの生命を脅かすような副作用を生じさせうる。さらに、それらの治療法は多額の費用がかかる可能性がある。ヒトApoA-Iを治療に用いることは、その供給に限界があり、血液由来の病原体による疾病伝播の可能性があるという不利な点がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
血清コレステロールを低減させ、血清HDLレベルを上昇させて、冠状動脈性心疾患を予防および/または既に生じている疾患、特にアロテーム動脈硬化症の治療ためのより安全で費用の低額な治療法開発へのニーズがある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
3. 本発明の概要
本発明は、ヒト以外の動物のアポリポプロテインA-I(ApoA-I)タンパク質を用いて疾患を治療するための方法と組成物を提供する。本発明は、ヒトを含む動物において、脂質異常関連疾患、例えば高脂血症、高リポタンパク血症、高トリグリセライド血症、高コレステロール血症、心臓血管疾患、冠状動脈疾患、アテローム性動脈硬化症、再発狭窄症、HDLもしくはApoA-I欠損症、ならびに敗血症ショックおよびインフルエンザを含む感染症などのその他の疾患を含む疾患を治療するための方法および組成物を提供する。本発明の方法はヒト以外の動物のApoA-Iタンパク質の有効量を被験者に投与することを含む。
【0008】
本発明は、その一部を、ヒト以外の動物のApoA-Iタンパク質を用いて、ヒトの脂質異常関連疾患および感染症を治療することができるという本出願人の驚くべき知見に基づいている。そのような脂質異常疾患には、高脂血症、高リポタンパク血症、高コレステロール血症、高トリグリセライド血症、心臓血管疾患、冠状動脈疾患、アテローム性動脈硬化症、再発狭窄症、HDL欠損症もしくはApoA-I欠損症が含まれる。感染症には、敗血症ショックおよびウイルス感染症が含まれる。
【0009】
本発明は、ヒトを含む動物において、脂質異常関連疾患、例えば高脂血症、高リポ蛋白血症、高コレステロール血症、高トリグリセリド血症、心臓血管疾患、冠状動脈疾患、アテローム性動脈硬化症、再発狭窄症、HDL欠損症およびApoA-I欠損症を含む疾患を治療するための方法および組成物を提供する。本発明はまた、ヒトを含む動物において、細菌感染またはウイルス感染関連疾患を治療するための方法および組成物をも提供する。そのような治療方法は、治療的なもの、または予防的なものとすることができる。そのような感染症の治療は、例えば、グラム陰性細菌感染によるエンドトキシン血症の治療を含むことができる。本発明はまた、ヒトを含む動物でのウイルス感染の治療のための方法および組成物を提供する。そのようなウイルス感染には、インフルエンザウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、サイトメガロウイルス、単純ヘルペスウイルスなどが含まれる。
【0010】
本発明はまた、ヒト以外の動物のApoA-Iタンパク質の製造方法、ヒト以外の動物のApoA-Iタンパク質を含む医薬品製剤、ヒト以外の動物のApoA-Iタンパク質-脂質複合体、およびヒト以外の動物のApoA-Iタンパク質-脂質複合体を有効成分として含む医薬組成物をも提供する。本発明はさらにそのような医薬品製剤の製造方法、投与方法、およびヒト以外の動物の該ApoA-Iタンパク質のその他の使用を提供する。
【0011】
3.1 定義
「脂質異常(dyslipidemia)」という用語は、血液中の脂質またはリポタンパク質のいずれかまたは全ての量の何らかの変化を意味する。脂質異常は、高脂血症、高リポ蛋白血症、高コレステロール血症、高トリグリセリド血症、HDL欠損症、およびApoA-I欠損症でありうる。脂質異常関連疾患には、心臓血管疾患、冠状動脈疾患、アテローム性動脈硬化症、または再発狭窄症が含まれる。脂質異常という用語が心臓血管疾患、冠状動脈疾患、アテローム性動脈硬化症、または再発狭窄症の疾患を指すことは理解されるべきである。好ましい実施形態においては、該治療はヒトの疾患のためのものである。
【0012】
「HDL欠損症」および「ApoA-I欠損症」という用語は血液中のHDLまたはApoA-Iの量が低減していることを意味する。HDL欠損症またはApoA-I欠損症はHDLまたはApoA-Iが低レベルであるかまたは正常値より低いレベルである。ある実施形態においては、そのようなHDL欠損症またはApoA-I欠損症はHDLまたはApoA-Iが全く存在しないものであってよい。
【0013】
「ヒト以外の動物のApoA-I」という用語は、ヒトを除く動物から得られたアポリポプロテインA-Iを意味する。ヒト以外の動物のApoA-Iは、ヒトを除く動物の全血、または血液の画分から得ることができる。ある有利な実施形態においては、該ApoA-Iが得られるヒト以外の動物は家畜化されたおよび/または商業的に生産された動物とすることができる。ある実施形態においては、ヒト以外の動物の該ApoA-Iは商業的目的、例えば食肉を得る目的で多数屠殺される動物 (例えば、ウシ、ブタ、ニワトリ、およびシチメンチョウ) から得られる。
【0014】
単数形の「a」、「an」、および「the」は、文脈からそうでないことが明確に読みとれるものでない限りは、複数形をも含むものとする。
【0015】
「ヒト以外の動物のApoA-Iタンパク質」という単数形は、文脈からそうでないことが明確に読みとれるものでない限りは、複数形をも含むものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
4. 発明の詳細な説明
本発明はヒト以外の動物のアポリポプロテインA-I(ApoA-I)タンパク質を用いて疾患を治療するための方法および組成物を提供する。本発明は、ヒトを含む動物において、脂質異常関連疾患、例えば高脂血症、高コレステロール血症、高リポ蛋白血症、高トリグリセリド血症、心臓血管疾患、冠状動脈疾患、アテローム性動脈硬化症、再発狭窄症、HDL欠損症、ApoA-I欠損症、ならびに細菌感染およびウイルス感染を含む感染症などのその他の疾患を含む疾患を治療するための方法および組成物を提供する。
【0017】
本発明は、ヒト以外の動物のApoA-Iタンパク質を用いて、ヒトを含む動物において、脂質異常関連疾患を治療することができるという本出願人の驚くべき知見に、部分的に基づいている。そのような疾患には、高脂血症、高コレステロール血症、高トリグリセリド血症、高リポ蛋白血症、心臓血管疾患、冠状動脈疾患、アテローム性動脈硬化症、再発狭窄症、HDL欠損症、およびApoA-I欠損症が含まれる。ヒト以外の動物の該ApoA-Iタンパク質はヒトを含む動物の感染関連疾患の治療に用いることができる。好ましい実施形態においては、該細菌感染はグラム陰性細菌による敗血症であり、該ウイルス感染はインフルエンザである。
【0018】
都合の良いことに、ヒト以外の動物の血液は、ヒトの血液や遺伝子組換えによるApoA-Iタンパク質より安価であり、はるかに多量に得られ、より安全である。例えば、ウシは、採血されたヒト血液中に認められる免疫不全ウイルス(HIV)および肝炎ウイルスなどの病気を運搬することが知られていないので、ウシの血液から得られた製品はヒト血液をソースとする製品よりもヒトへの使用に安全でありうる。ウシ、ブタ、ニワトリ、およびシチメンチョウからの血液は、食肉への加工、ミルク、皮革生産、およびその他の商業的用途に用いられる管理された家畜から全血として、または血液画分として豊富に入手できる。採取と精製の後、ヒト以外の動物の該ApoA-Iタンパク質は単独でまたは医薬品製剤(例えば、ヒト以外の動物のApoA-Iタンパク質/脂質複合体)として、ヒトの疾患の治療のために用いられる。
【0019】
4.1 治療方法
ヒト以外の動物の上記ApoA-Iタンパク質は、動物、とりわけヒトを含む哺乳類で、血清HDL濃度の増加、LCATの活性化、およびコレステロールの流出と逆コレステロール輸送(RCT)が有益であるいかなる疾患の治療にも用いることができる。そのような症状には、限定はされないが、脂質異常、特に高脂血症、高コレステロール血症、高トリグリセリド血症、高リポ蛋白血症、HDL欠損症、ApoA-I欠損症、および冠状動脈疾患などの心臓血管疾患(例えば、狭心症、心筋梗塞、および突然心臓死の治療および予防を含む);アテローム性動脈硬化症(例えば、アテローム性動脈硬化症の治療および予防を含む);再発狭窄症 (例えば、バルーン血管形成術などの医学的操作の結果として生ずるアテローム性動脈硬化性プラークの予防または治療を含む);ならびにその他の疾患、例えば細菌感染(例えば敗血症ショックを誘発しうるエンドトキシン血症を含む)、およびウイルス感染(例えば、インフルエンザAおよびインフルエンザBが含まれる)などが含まれる。
【0020】
ヒト以外の動物の該ApoA-Iタンパク質は動脈壁内へのコレステロールの蓄積を特徴とするヒトの疾患の治療に用いることができる。コレステロールまたはプラークの動脈壁内への蓄積は通常は徐々に進行する疾患である。本発明の方法はその疾患過程の早期に用いてコレステロールの沈着またはアテローム性動脈硬化症、およびそれに併発する疾患の進行を遅延させることができる。本発明のある1実施形態においては、ヒト以外の動物の該ApoA-Iタンパク質をアテローム性動脈硬化症を逆転させるために用いることができる。
【0021】
ある実施形態においては、ヒト以外の動物の該ApoA-Iタンパク質は心臓血管疾患、例えば、International Classification of Disease, 第10版のコード100-199(U.S. Department of Health and Human Services International Classification of Diseases, 第10改訂版)で分類されている疾患の治療に用いることができる。
【0022】
ある実施形態においては、ヒト以外の動物の該ApoA-Iタンパク質は高脂血症、HDL欠損症などを含む脂質異常関連疾患を治療または予防することができる。ある実施形態においては、ヒト以外の動物の該ApoA-Iタンパク質は、コレステロールの流出を促進し、逆コレステロール輸送を促進し、コレステロールエステルの肝臓への送達に役割を果たすことができる。
【0023】
ある実施形態においては、ヒト以外の動物の該ApoA-Iタンパク質は、感染性疾患、好ましくは細菌またはウイルス起原の疾患の治療に用いることができる。ある実施形態においては、該方法は、被験者が感染した際に生じうるエンドトキシンの放出によって誘発される敗血症の治療に用いることができる。何らかの理論に拘束されることは意図していないが、ヒト以外の動物の該ApoA-Iタンパク質は、敗血症ショックの際の細胞の傷害を仲介するサイトカインの放出を低減させるものと考えられる。ある実施形態においては、ヒト以外の動物の該ApoA-Iタンパク質は、後述の抗感染剤、抗炎症剤、昇圧剤、および敗血症の治療に使用される他の薬剤または治療法と併用して用いることができる。
【0024】
ある実施形態においては、該方法は、ウイルス感染の治療または予防に用いることができる。何らかの理論に拘束されることは意図していないが、ヒト以外の動物のApoA-Iタンパク質のα-ヘリックスはウイルス、ウイルス粒子、またはウイルスのコートと結合して感染の予防、ウイルスまたはウイルス粒子の被験者の血流からの除去を容易にすること、またはウイルスの複製サイクルを妨害することができると考えられる。
【0025】
ヒト以外の動物の該ApoA-Iタンパク質は、ヒトを含む被験者でのウイルスに起因する感染を治療または予防するために使用することができる。ある実施形態においては、該ウイルス感染は例えば、インフルエンザウイルス、ライノウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、肝炎ウイルス、サイトメガロウイルス、または単純ヘルペスウイルスの感染とすることができる。
【0026】
ヒト以外の動物の該ApoA-Iタンパク質は単独で、または上記の症状を治療するために使用される後述の他の薬剤と組み合わせて用いることができる。そのような治療法としては、限定はされないが、例えば他の抗ウイルス薬との同時投与または連続投与が含まれる。
【0027】
4.2 ヒト以外の動物のApoA-Iタンパク質
本発明の方法と組成物では、ヒト以外の動物の該ApoA-Iタンパク質は当業者に既知のヒト以外の動物のApoA-Iタンパク質のいかなるものであってもよい。
【0028】
ある実施形態においては、ヒト以外の動物の該ApoA-Iタンパク質は、動物、とりわけヒトを含む哺乳類由来の、血清HDL濃度の増加させること、LCATを活性化させること、およびコレステロールの流出と逆コレステロール輸送(RCT)を促進させることが有益であるいかなる疾患の治療にも有用である、ヒト以外の動物のあらゆるApoA-Iである。ある実施形態においては、ヒト以外の動物の該ApoA-Iタンパク質は、被験者のHDL濃度を増加させ、LCATを活性化し、コレステロールの流出と逆コレステロール輸送を促進させるヒト以外の動物のあらゆるApoA-Iタンパク質である。好ましい1実施形態においては、該被験者はヒトである。
【0029】
アポリポプロテインA-Iタンパク質は、ヒト以外の動物、例えばウシ、ウマ、ヒツジ、サル、ヒヒ、ヤギ、ウサギ、イヌ、ハリネズミ、アナグマ、マウス、ラット、ネコ、モルモット、ハムスター、アヒル、ニワトリ、サケ、およびウナギなど多数の動物で同定されている(Brouilletteら, 2001, Biochim. Biophys. Acta 1531:4-46; Yuら, 1991, Cell Struct. Funct. 16(4):347-55; ChenとAlbers 1983, Biochim. Biophys. Acta 753(1):40-6; Luoら, 1989, J. Lipid Res. 30(11):1735-46; Blatonら, 1977, Biochemistry 16:2157-63; Sparrowら, 1995, J. Lipid Res. 36(3):485-95; Beaubatieら, 1986, J. Lipid Res. 27:140-49; Januzziら, 1992, Genomics 14(4):1081-8; GoulinetとChapman 1993, J. Lipid Res. 34(6):943-59; Colletら, 1997, J. Lipid Res. 38(4):634-44; FrankとMarcel 2000, J. Lipid Res. 41(6):853-72)。
【0030】
ヒト以外の動物種由来のアポリポプロテインA-Iタンパク質はその大きさが類似しており(分子量が約27,000〜28,000)、高い相同性を共有する((Smithら, 1978, Ann. Rev. Biochem. 47:751-7)。例えば、ウシApoA-Iタンパク質は241個のアミノ酸残基を含んでおり、一連の反復する両親媒性のα-ヘリックス領域を形成しうる。ウシApoA-Iタンパク質中には両親媒性のα-ヘリックス領域が10箇所あり、それらは典型的には、残基43-64、65-86、87-97、98-119、120-141、142-163、164-184、185-206、207-217、および218-241の間にある(Sparrowら, 1992, Biochim. Biophys. Acta 1123:145-150、およびSwaney 1980, Biochim. Biophys. Acta 617:489-502を参照のこと)。BLASTプログラムを用いてヒトApoA-Iタンパク質(GenBank 受入番号XM_52106またはNM_000039)とウシApoA-Iタンパク質(GenBank受入番号A56858)のアミノ酸配列を比較すると、それらの配列は77%同一性を示す (Altschulら, 1990, J. Mol. Biol. 215(3):403-10)。
【0031】
ブタApoA-Iタンパク質は約264個のアミノ酸残基を含んでおり、その分子量は約30,280である。GenBank受入番号S31394は、分子量30,254で264個の残基のブタApoA-I配列を提供するが、一方GenBnak受入番号JT0672では分子量30,320で265個の残基のブタApoA-Iタンパク質を提供している(Weiler-Guttlerら, 1990, J. Neurochem. 54(2):444-450; Trieuら, 1993, Gene 123(2):173-79; Trieuら, 1993, Gene 134(2):267-70も参照のこと)。
ニワトリApoA-I前駆体は264個のアミノ酸残基を有している;その配列はGenBank受入番号LPCHA1で提供されている。Jacksonらは雄鶏のApoA-Iが234個のアミノ酸残基を含み分子量は約28,000でヒトのApoA-Iとはイソロイシンの存在によって異なることを述べている(Jacksonら, 1976, Biochim. Biophys. Acta. 420:(2):342-9)。Yangらは、成熟したニワトリのApoA-Iタンパク質は240個のアミノ酸残基を含み、ヒトのApoA-Iとの相同性は50%未満であると報告している(Yangら, 1987, FEBS Lett. 224(2):261-6も参照のこと。またShackelfordとLebherz 1983, J. Biol. Chem. 258(11):7175-7180、Banjerjeeら, 1985, J. Cell Biol. 101(4):1219-1226、Rajavashisthら, 1987, J. Biol. Chem. 262(15):7058-65、Ferrariら, 1987, Gene 60(1):39-46、Bhattacharyyaら, 1991, Gene 104(2):163-168; Lamon-Favaら, 1992, J. Lipid Res. 33(6):831-42も参照のこと)。ニワトリApoA-Iタンパク質の円偏光二色性の研究では、このタンパク質が脂質のない状態では両親媒性α-ヘリックスの束の構造をとっていることが示されている(Kissら, 1999, Biochemistry 38(14):4327-34)。ニワトリ、ヒト、ウサギ、イヌ、およびラットのApoA-Iの二次構造の特徴を比較すると、このタンパク質の、特にN末端側3分の2ではヒトApoA-Iの二次構造が良く保存されたものであることが示されている(Yangら, 1987, FEBS Lett. 224(2):261-6)。
【0032】
シチメンチョウのリポタンパク質の研究では、ヒトApoA-IおよびApoA-IIとの類似性で名付けられたApoAクラスのリポタンパク質が同定されている。シチメンチョウのApoA-Iは約27,000の分子量を有する主たるApoAポリペプチドであった(KelleyとAlaupovic 1976, Atherosclerosis 24(1-2):155-75、KelleyとAlaupovic 1976, Atherosclerosis 24(1-2):177- 87)。アヒルのApoA-Iは約246個のアミノ酸残基を含み、分子量は約28,744である(GenBank受入番号A61448、Guら, 1993, J. Protein Chem. 12(5):585-91)。
【0033】
ある好ましい実施形態においては、ヒト以外の動物の該ApoA-Iタンパク質は、食肉またはその他の製品の製造の際に商業目的で屠殺される動物、例えば、ウシ、ヒツジ、ブタ、ヤギ、ニワトリ、アヒル、シチメンチョウ、およびウサギなどから得られる。ヒト、ヒヒ、イヌ、ブタ、ウサギ、ウシ、ハリネズミ、マウス、ラット、ニワトリ、アヒル、およびサケのApoA-I配列の比較では、ApoA-IのN末端ドメインが高度に保存されているのに対し、中央部およびC末端ドメインが動物種間でいくつかの保存的置換があることが示されている(FrankとMarcel 2000, J. Lipid Res. 41(6):853-72、Colletら, 1997, J. Lipid Res. 38(4):634-44)。
【0034】
ヒトApoA-IおよびApoA-Iアゴニストは脂質が存在すると両親媒性のα-ヘリックスを形成する。本明細書中に参照により組み入れる、米国特許第6,004,925号; 第6,376,464号; 第6,329,341号; 第6,046,166号、および第6,037,323号、ならびにBrouilletteら, 2001, Biochim. Biophys. Acta 1531:4-46を参照のこと。何らかの理論に拘束されることは意図していないが、ヒト以外の動物の該ApoA-Iタンパク質は、ヒトの体内で天然のヒトApoA-Iと同等の機能と活性を有していると考えられる。ヒト以外の動物のApoA-Iタンパク質によって形成されるヘリックスは、ヒトにおいて天然のヒトApoA-Iタンパク質と同等の機能と活性を有していると考えられ、それによって脂質結合、コレステロール流出、およびLCAT活性化が行われる。さらに、該両親媒性ヘリックスは(脂質の存在下で)、脂質と結合し、プレ-β様またはHDL様複合体を形成し、レシチン:コレステロールアシルトランスフェラーゼ(LCAT)を活性化し、HDLコレステロールおよび/またはHDLタンパク質を含む血清HDL値を上昇させ、コレステロールの流出を促進する。事実、ヒトでコレステロールの流出を促進することができるヒト以外の動物のApoA-Iタンパク質であればどのようなものでも本発明の方法で用いることができる。
【0035】
ある実施形態においては、ヒト以外の動物のApoA-Iタンパク質は、天然のヒトApoA-IまたはApoA-Iアゴニストと類似の二次構造の特徴を有しているものである。天然のヒトApoA-Iでは、そのタンパク質の二次構造は主としてα-ヘリックスである;その単量体は約10箇所のヘリックス領域を含んでいる(FrankとMarcel 2000, J. Lipid Res. 41(6):852-72、およびBrouilletteら, 2001, Biochim. Biophys. Acta 1531:4-46を参照のこと)。ヒト以外の動物の該ApoA-Iタンパク質のヘリックスの性質および疎水性については、疎水性モーメント(<μH>)、総疎水性度(<H0>)、疎水性面の総疎水性度(H0pho)、および疎水性角(pho角)などで好都合に定量することができる(米国特許第6,004,925号、Eisenberg 1984, J. Mol. Biol. 179:125-142、Eisenberg, 1984, Ann. Rev. Biochem. 53:595-623、Eisenbergら, 1982, Nature 299:371-374を参照のこと)。ある実施形態においては、下記のへリックスの性質および疎水性は単量体のヒト以外の動物のApoA-Iタンパク質に関係するものである。ある実施形態においては、ヘリックスの性質および疎水性はヒト以外の動物のApoA-Iタンパク質中の単一のヘリックスに関係するものである。ある実施形態においては、ヒト以外の動物の該ApoA-Iタンパク質は、約0.45〜約0.65の範囲の、好ましくは約0.50〜約0.60の範囲の疎水性モーメント(<μH>)を有するものである。ある実施形態においては、ヒト以外の動物の該ApoA-Iタンパク質は、約-0.030〜約-0.070の範囲の、総疎水性度(<H0>)を有するものである。ある実施形態においては、ヒト以外の動物の該ApoA-Iタンパク質は、約0.90〜約1.2の範囲の、好ましくは約0.94〜約1.1の範囲の疎水性面の総疎水性度(H0pho)を有するものである。ある実施形態においては、ヒト以外の動物の該ApoA-Iタンパク質は、約160°〜約220°の範囲の、好ましくは約180°〜約200°の範囲の疎水性角(pho角)を有するものである。
【0036】
ある実施形態においては、ヒト以外の動物の該ApoA-Iタンパク質は、両親媒性のα-ヘリックスを含む。別の実施形態においては、ヒト以外の動物の該ApoA-IはLCATを活性化し、コレステロールの流出を促進する。LCATの活性化を測定する方法は例えば、米国特許第6,004,925号、6,046,166号、および6,037,323号に述べられている。また、LCAT活性化活性の多種間および種内比較についてはChenとAlbersの報告も参照のこと(1983, Biochim. Biophys. Acta 753(1):40-6)。ある実施形態においては、ヒト以外の動物の該ApoA-Iタンパク質は約38%以上のヒトLCAT活性化活性を有している。ある実施形態においては、ヒト以外の動物の該ApoA-Iタンパク質は約40%以上、約43%以上、または約45%以上のヒトLCAT活性化活性を有している。
【0037】
ある実施形態においては、ヒト以外の動物の該ApoA-Iタンパク質は天然のヒトApoA-Iとある程度の相同性を有している。相同性という用語は、天然のヒトApoA-Iとアミノ酸残基の同一性が約60%以上、約70%以上、好ましくは約80%以上、最も好ましくは約90%以上であるか、またはBLASTスコア(Altschulら, 1997, Nucleic Acids Res. 25:3389-402)で天然のヒトApoA-I( GenBank受入番号CAA30377)またはGenBank受入番号X07496.1に記載のヌクレオチド配列によってコードされる配列と少なくとも100個のアミノ酸に亘って1 x 10-6であることを意味する。
【0038】
リポ多糖が、グラム陰性菌による敗血症の続発症の原因物質であることは一般的に認められている(Casasら, 1995, J. Surgical Res. 59:544-552)。リポ多糖の影響は直接的なものではないと考えられ、リポ多糖はサイトカインの放出を活性化させ、そのサイトカインが細胞のダメージおよび臓器の機能不全をもたらすものと考えられる。敗血症ショックに強い関わりがある主たるサイトカインの1つは腫瘍壊死因子-α(TNF-α)である。Casasらは、in vivo、ex-vivo、およびin-vitroモデル系でのTNF-αの低減について述べている(1995, J. Surgical Res. 59:544-552、これはその全体を本明細書中に参照により組み入れる)。
【0039】
ヒト以外の動物の該ApoA-Iタンパク質は、敗血症の罹病率を低下させる、それには敗血症に伴う低血圧、アシドーシス、組織障害、および多臓器不全などの障害の改善または軽減が含まれるが、そのような低下をもたらす何らかのヒト以外の動物のApoA-Iタンパク質とすることができる。ある実施形態においては、ヒト以外の動物の該ApoA-Iタンパク質はサイトカインの放出を低減させるが、それには腫瘍壊死因子-αの産生が含まれる。TNF-αの低減は、下記に示すとおり、およびCasasら, 1995, J. Surgical Res. 59:544-552に述べられているとおり、in vivo(リポ多糖をチャレンジさせたときの全血中でのTNF-αの産生)、ex vivo、またはin vitro(ウサギでリポ多糖をチャレンジさせた後のTNF-αのレベルの比較によって)測定することができる。
【0040】
ある実施形態においては、ヒト以外の動物の該ApoA-Iタンパク質は、in vitroの全血アッセイ、ex vivo、またはin vitroのウサギへのリポ多糖のチャレンジのいずれでも、下記のとおり、リポ多糖でのチャレンジで対照と比較してTNF-α産生の約50%を超える低減を示す。ある実施形態においては、ヒト以外の動物の該ApoA-Iタンパク質はin vitroでTNF-α産生の約55%超の低減、好ましくは約60%超の低減、より好ましくは約65%超の低減、最も好ましくは約70%以上の低減を示す。
【0041】
ヒト以外の動物の該ApoA-Iタンパク質は単独で、または脂質、例えばスフィンゴミエリンと複合体化させて医薬品製剤として投与することができる。ヒト以外の動物の該ApoA-Iタンパク質はいかなる投与経路でも、いかなる投与量でも投与することができる。投与経路、投与量、および投与頻度は薬物動態、薬力学などの因子、および患者に特有の、例えば疾病の重篤度などを含む因子に依存することは当業者であれば明白であろう。
【0042】
ヒト以外の動物の該ApoA-Iタンパク質は、高コレステロール血症またはアテローム性動脈硬化症の治療のために、例えば、胆汁酸樹脂、ナイアシン、フィブラート、および/またはスタチン、あるいはそれらの組み合わせなどの、1種以上のコレステロール低下療法と組み合わせて用いることができる。そのような組み合わせ治療法は、各薬剤がコレステロール合成と輸送の異なる標的に対して作用するので特に有益な治療効果を生み出しうる;すなわち、胆汁酸樹脂はコレステロール再循環、カイロミクロン、およびLDL集団に作用し;ナイアシンは主としてVLDLおよびLDL集団に作用し;スタチンはコレステロール合成を阻害してLDL集団を低下させ(およびおそらくはLDL受容体の発現を増加させ);一方ヒト以外の動物の該ApoA-Iタンパク質はRCTに作用し、HDLを増加させ、LCAT活性を増加させ、コレステロールの流出を促進する。
【0043】
例えば、ヒト以外の動物の該ApoA-Iタンパク質またはタンパク質-脂質複合体は脂質異常治療剤、例えばコレスチラミン(QUESTRANS(登録商標))、コレスチポール(COLESTID(登録商標))、コレセベラム(WELCHOL(登録商標))、ロバスタチン(MEVACOR(登録商標))、シンバスタチン(ZOCOR(登録商標))、プラバスタチン(PRAVACHOL(登録商標))、フルバスタチン(LESCOL(登録商標))、アトルバスタチン(LIPITOR(登録商標))、ロスバスタチン(CRESTOR(登録商標))、ピタバスタチン(NK-104)、プラバスタチン/アスピリン(PRAVIGARD(登録商標))、ナイアシン/ロバスタチン(NICOSTATIN(登録商標))、クロフィブラート(ATROMID-S(登録商標))、ジェムフィブロジル(LOPID(登録商標))、フェノフィブラート(TRICOR(登録商標))、ナイアシン(NIASPAN(登録商標))、ならびにApoA-IアゴニストおよびApoA-Iアゴニスト/脂質複合体(その全体を本明細書中に参照により組み入れる、米国特許第6,004,925号、第6,376,474号、第6,046,166号、第6,037,323号、および第6,265,377号)などと共に用いることができる。
【0044】
ヒト以外の動物の該ApoA-Iタンパク質またはタンパク質-脂質複合体は抗微生物剤、抗炎症剤、およびエンドトキシンによって誘発される敗血症ショックの治療のために用いられるその他の薬剤、例えば敗血症を治療するための薬剤は、ドロトレコジン(XIGRIS(登録商標)、PAFASE(登録商標)(ICOS)、E-5531(Eisai)、VX-799(Vertex)、SEGARD(Knoll)、ならびにApoA-IアゴニストおよびApoA-Iアゴニスト/脂質複合体(その全体を本明細書中に参照により組み入れる米国特許第6,329,341号)と組み合わせて用いることができる。
【0045】
ヒト以外の動物の該ApoA-Iタンパク質は、動物の、特にヒトを含む哺乳類の、あらゆるウイルス感染関連疾患の治療のために単独でまたは組み合わせて用いることができる。そのような感染性のウイルスには、限定はされないが、インフルエンザウイルス、ライノウイルス、単純ヘルペスウイルス、サイトメガロウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、およびエボラウイルスが含まれる。インフルエンザ感染には、例えば、A型インフルエンザウイルス、B型インフルエンザウイルス、またはC型インフルエンザウイルスによる感染の結果として発症するものが含まれる。ヒト以外の動物の該ApoA-Iタンパク質はあるウイルスに感染したことが既知のまたは感染が疑われる被験者、または上述のウイルスに感染する危険性の大きい被験者の治療または予防に用いることができる。ヒト以外の動物の該ApoA-Iタンパク質はA型、B型、またはC型インフルエンザウイルスによって起こされたヒトインフルエンザの治療または予防に用いることができる。
【0046】
ヒト以外の動物の該ApoA-Iタンパク質は感染の治療に用いられる他の薬剤と組み合わせて用いることができる。例えば、ヒト以外の動物の該ApoA-Iタンパク質はワクチンおよびあらゆる抗感染剤、例えば、フォスカルネット(FOSCAVIR(登録商標))、ガンシクロビル(CYTOVENE(登録商標))、バルガンシクロビル(VALCYTE(登録商標))、アシクロビル(ZOVIRAX(登録商標))、ファムシクロビル(FAMVIR(登録商標))、バルシクロビル(VALTREX(登録商標))、アマンタジン(SYMMTREL(登録商標))、シドフォビル(VISTIDE(登録商標))、リバビリン(REBETOL(登録商標))、リマンタジン(FLUMADINE(登録商標))、 ザナミビル (RELENZA(登録商標))、オセルタミビル(TAMIFLU(登録商標))、サキナビル(INVIRASE(登録商標))、 リトナビル(NORVIR(登録商標))、インジナビル(CRIXIVAN(登録商標))、ネルフィナビル(VIRACEPT(登録商標))、アンプレナビル(AGENERASE(登録商標))、ロピナビル/リトナビル(KALETRA(登録商標))、テノフォビルジソプロキシル(VIREAD(登録商標))、ジダノシン(VIDEX(登録商標))、ラミブジン(EPIVIR(登録商標))、スタブジン(ZERIT(登録商標))、ザルシタビン(VIVID(登録商標))、ジドブジン(RETROVIR(登録商標))、アバカビル(ZIAGEN(登録商標))、アバカビル/ラミブジン/ジドブジン(TRIZIVIR(登録商標))、ラミブジン/ジドブジン(COMBIVIR(登録商標))、ネビラピン(VIRAMUNE(登録商標))、デラビルジン(RESCRIPTOR(登録商標)) およびエファビレンツ(SUSTEVA(登録商標))などと組み合わせて用いることができる。
【0047】
4.3 精製
本発明の方法と組成物に用いるために、ヒト以外の動物の該ApoA-Iタンパク質を当業者には既知の何らかの方法で精製することができる。
【0048】
例えば、ヒト以外の動物の該ApoA-Iタンパク質は、何らかの方法で採取されたヒト以外の動物の血液から精製することができる。有利なのは、該血液が商業的な処理に供される管理された動物からのものである。その血液は全血または全血の画分とすることができる。
【0049】
ヒト以外の動物の該ApoA-Iタンパク質は、溶媒による沈殿または脱塩、逆相クロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、ゲル電気泳動、アフィニティークロマトグラフィー、および類似のものなどの技法で精製することができる。ヒト以外の動物のApoA-Iタンパク質を精製するために用いられる実際の条件は、部分的には、正味の電荷、疎水性、親水性などの因子によって変わり、そのような条件は当業者には明白であろう。
【0050】
当業界で既知の溶媒または脱塩技法をヒト以外の動物の該ApoA-Iタンパク質の精製に用いることができる。例えば、ヒト以外の動物の該ApoA-Iタンパク質は、Peitschら, 1989, Analytical Biochem. 178:301-5に述べられているとおり、尿素、クロロホルム、およびエタノールを適切な濃度で用いて精製することができる。また、ヒト以外の動物の該ApoA-Iタンパク質は米国特許第5,089,602号に述べられているとおり、バッファー溶液中に血漿画分を懸濁することによって精製することもできる。Perssonら, 1998, J. Chromatogr. 711:97-109に述べられているとおり、水性の2相抽出後に温度による相分離の誘発を用いることもできる。
【0051】
アフィニティークロマトグラフィーでの精製では、ヒト以外の動物の該ApoA-Iタンパク質と特異的に結合する任意の抗体を用いることができる。抗体の産生には、種々の宿主動物、限定はされないが、例えばウサギ、マウス、ラットなどを含む動物を、タンパク質を注射することによって免疫することができる。ヒト以外の動物の該ApoA-Iタンパク質は側鎖の官能基または側鎖の官能基に結合させたリンカーによって、BSAなどの適切な担体に結合させることができる。その免疫学的応答を増大させるために、宿主の動物種に応じて種々のアジュバントを用いることができ、そのようなアジュバントとしては限定はされないが、フロイントのアジュバント(完全および不完全)、水酸化アルミニウムなどの無機質ゲル、リゾレシチン、プルロニックポリオール、ポリアニオンなどの界面活性剤、、タンパク質、油性乳剤、キーホールリンペットヘモシアニン、ジニトロフェノール、ならびにBCG(bacilli Calmette-Guerin)およびCorynebacteriumu parvumなどの有用であると考えられるヒトのアジュバントが含まれる。
【0052】
ヒト以外の動物の該ApoA-Iタンパク質に対するモノクローナル抗体は、細胞系の連続的な培養によって抗体分子を産生させることのできる何らかの技法を用いて調製することができる。そのような技法としては、限定はされないが、KohlerとMilstein, 1975, Nature 256:495-497または米国特許第4,376,110号(その全体を本明細書中に参照により組み入れる)によって初めて記載されたハイブリドーマ技法;ヒトB細胞ハイブリドーマ技法(Kosborら, 1983, Immunology Today 4:72;Coteら, 1983, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 80:2026-2030); およびEBV-ハイブリドーマ技法(Coleら, 1985, 「モノクローナル抗体と癌治療」(Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy), ALAN R. Liss, Inc. , pp.77-96(1985))が含まれる。さらに、適切な抗原特異性を有するマウスの抗体分子の遺伝子を、適切な生物学的活性を有するヒト抗体分子の遺伝子とともにスプライシングすることによる「キメラ抗体」の作成のために開発された技法を用いることができる(Morrisonら, 1984, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 81:6851-6855; Neubergerら, 1984, Nature 312:604-608; Takedaら, 1985, Nature 314:452-454、米国特許第4,816,397号; 米国特許第4,816, 567号; これらは参照により本明細書中に組み入れる)。あるいは、「ヒト化」抗体を調製することができる(例えば、Queen, 米国特許第5,585,089号を参照のこと。この特許は本明細書中に参照により組み入れる)。あるいはまた、単鎖抗体の作成のための技法(米国特許第4,946,778号)として記載されているものをタンパク質特異的単鎖抗体の生成に適応させることができる。
【0053】
特異的結合部位を欠いている抗体フラグメントを既知の技法で作成することができる。例えば、そのようなフラグメントとしては、限定はされないが、抗体分子のペプシン消化によって作成することができるF(ab')2フラグメント、およびF(ab')2フラグメントのジスルフィド架橋の還元によって作成することのできるFabフラグメントが含まれる。あるいはまた、Fab発現ライブラリーを構築して(Huseら, 1989, Science 246:1275-1281)、対象とするタンパク質に対して所望の特異性を有するモノクローナルFabフラグメントの迅速で容易な同定を行うことができる。
【0054】
ヒト以外の動物の該ApoA-Iタンパク質に対して特異的な抗体または抗体フラグメントは、例えば、アガロースに付着させ、抗体-アガロース複合体をタンパク質を精製するためのイムノクロマトグラフィーに用いる。Scopes, 1984, 「タンパク質の精製:原理と実際」(Protein Purification : Principles and Practice), Springer-Verlag New York, Inc., NY, Livingstone, 1974, Methods In Enzymology: Immunoaffinity Chromatography of Proteins 34: 723-731を参照のこと。
【0055】
ヒト以外の動物の該ApoA-Iタンパク質は当業者には既知の何らかのクロマトグラフィー法を用いて精製することができる。例えば、ヒト以外の動物の該ApoA-Iタンパク質は、陰イオン交換クロマトグラフィーで精製することができる。本明細書中に参照により組み入れる、Mezdourら, 1987, J. Chromatogr. 20:35-45、Weisweiler, 1987, Clin. Chim. Acta. 169:249-54、およびRossら, 1985, Anal. Biochem. 149:166-68を参照のこと。ヒト以外の動物の該ApoA-Iタンパク質は、典型的にはウロキナーゼ、インターフェロン、アスパラギナーゼ、およびアルブミンなどのタンパク質からエンドトキシンを除去するために用いられている陰イオン交換クロマトグラフィーを用いて精製することができる。Sharma, 1986, Biotech. Applied Biochem. 8:5-22を参照のこと。アポリポプロテインからのエンドトキシンの除去は困難ではあるが、アポリポプロテインAおよびアポリポプロテインEからのエンドトキシンの除去のためのクロマトグラフィー法が記載されている。本明細書中に参照により組み入れる、米国特許第5,834,596号および第6,107,467号を参照のこと。
【0056】
ヒト以外の動物のApoA-Iタンパク質の精製のために用いることのできるその他の精製方法としては、例えば、米国特許第5,525,472号に記載されている方法などがある。
【0057】
4.4 医薬組成物
本発明の方法および組成物に用いるために、ヒト以外の動物の該ApoA-Iタンパク質を当業者には既知の任意の医薬組成物とすることができる。
【0058】
例えば、該医薬組成物は、in vivoでの投与と送達に適した製薬上許容される担体中に、ヒト以外の動物のApoA-Iタンパク質またはヒト以外の動物のApoA-Iタンパク質-脂質複合体(「タンパク質-脂質複合体」)を、有効成分として含有しているものとすることができる。ヒト以外の動物の該ApoA-Iタンパク質は酸性および/または塩基性の末端および/または側鎖を含むことができるので、ヒト以外の動物の該ApoA-Iタンパク質は、該組成物中に遊離の酸もしくは塩基、または製薬上許容される塩のいずれの形でも含むことができる。
【0059】
注射可能な組成物としては、水性または油性のビヒクル中に有効成分を含有する、滅菌した懸濁液、溶液、または乳剤が含まれる。該組成物はまた、製剤化のための添加剤、例えば懸濁化剤、安定化剤、および/または分散剤などを含有することができる。このような注射用組成物は単位投与剤型、例えばアンプル中に入れた形態または多数回投与用の容器に容れた形態で提供することができ、保存剤を添加することもできる。
【0060】
あるいは、該注射用組成物は適切なビヒクルを用いて使用前に再構成するための粉末の形態で提供することができ、そのようなビヒクルには、限定されないが、滅菌済の発熱性物質不含の水、バッファー、ブドウ糖溶液などが含まれる。この目的のために、ヒト以外の動物のApoA-Iタンパク質を凍結乾燥することができ、または同時凍結乾燥したタンパク質-脂質複合体を調製することができる。保存しておく組成物は単位剤型の形態で供給してin vivoでの使用前に再構成することができる。
【0061】
送達を延長するためには、ヒト以外の動物の該ApoA-Iタンパク質を、例えば、皮下、皮内、または筋肉内注射などのインプランテーションによる投与のためにデポー組成物として製剤化することができる。従って、例えば、ヒト以外の動物の該ApoA-Iタンパク質は適切なポリマー性または疎水性材料(例えば、許容される油の中に乳剤として)またはイオン交換樹脂を用いて製剤化するか、またはわずかに溶ける誘導体、例えばヒト以外の動物のApoA-Iタンパク質のわずかに溶ける塩として製剤化することができる。
【0062】
あるいは、経皮吸収のために有効成分を徐々に放出させる粘着性のディスクまたはパッチとして製造された経皮送達系を用いることができる。この目的のために、有効成分の経皮浸透を容易にするために浸透増強剤を用いることができる。虚血性心疾患および高コレステロール血症の患者に用いるためのニトログリセリンパッチ中にヒト以外の動物のApoA-Iタンパク質またはタンパク質-脂質複合体を取り込むことによって特に有益なものが得られる。
【0063】
経口投与については、該医薬組成物は、例えば、製薬上許容される賦形剤、例えば結合剤(例えば、アルファ化トウモロコシデンプン、ポリビニルピロリドン、またはヒドロキシプロピルメチルセルロースなど);増量剤(例えば、乳糖、微結晶性セルロース、またはリン酸水素カルシウムなど);滑沢剤(例えばステアリン酸マグネシウム、タルク、またはシリカなど);崩壊剤(例えば、バレイショデンプンまたはグリコール酸ナトリウムデンプンなど);または湿潤剤(例えばラウリル硫酸ナトリウムなど)などとともに従来の方法で調製した錠剤またはカプセル剤の形態とすることができる。その錠剤は当業界ではよく知られた方法でコーティングを施すことができる。ウシApoA-Iタンパク質の経口用医薬組成物は、米国特許第5,359,030号、第5,438,040号、第5,681,811号、第6,191,105号、第6,309,633号、および第6,380,405号(これらは本明細書中に参照により組み入れる)に述べられているとおり、NOBEX(登録商標)(Protein Delivery Inc.)ポリマーとコンジュゲートさせることができる。経口投与用の液体製剤は、例えば、溶液、シロップ、もしくは懸濁液の形態とすることができ、またはそのような製剤は使用前に水もしくはその他の適切なビヒクルで再構成するための乾燥製剤として提供することができる。そのような液体組成物は、製薬上許容される添加剤、例えば懸濁化剤(例えば、ソルビトールシロップ、セルロース誘導体、または硬化食用脂肪など);乳化剤(例えば、レシチンまたはアラビアゴムなど);非水性ビヒクル(例えば亜麻仁油、油性エステル、エチルアルコール、または分画した植物油など);および保存剤(例えば、メチルもしくはプロピル-p-ヒドロキシ安息香酸またはソルビン酸)などとともに従来の方法で調製することができる。該組成物は緩衝塩、香料、着色剤、および甘味料を適宜含有することができる。経口投与用の組成物は活性化合物の放出を調節するために適した剤型とすることができる。
【0064】
頬側投与には、該組成物は従来法で製剤化した錠剤または薬用ドロップの形態とすることができる。直腸および経膣投与には、該有効成分を溶液(浣腸液とするため)、坐剤、または軟膏として製剤化することができる。
【0065】
吸入での投与には、該有効成分は、適切な推進剤、例えばジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素、またはその他の適切なガスを用いて、加圧容器またはネブライザーからエアロゾルスプレーの形態で都合よく送達させることができる。加圧エアロゾルの場合には、投与単位はある計量された量を送達するバルブを装着することによって測りとることができる。吸入基または噴霧器に用いるための、例えば、ゼラチンのカプセル剤またはカートリッジは、該化合物と乳糖またはデンプンなどの適切な粉末ベースの混合粉末を含有させて製剤化することができる。
【0066】
該組成物は、所望により、該有効成分を含有している1以上の単位剤型を含むことができるパックまたはディスペンサー装置の形態で提供することができる。そのパックまたはディスペンサー装置には使用説明書を添付することができる。
【0067】
長い保存寿命を有する安定なヒト以外の動物のApoA-Iタンパク質製剤は、再製剤化用のバルクの調製、または被験者への投与の前に滅菌水または適切な滅菌緩衝溶液によって再構成することができる個々のアリコートまたは投与単位の調製のいずれかのために、ヒト以外の動物のApoA-Iタンパク質を凍結乾燥することによって作成することができる。
【0068】
ヒト以外の動物の該ApoA-Iタンパク質はタンパク質-脂質複合体の形態で製剤化し投与することができる。特に該複合体がHDL、とりわけプレ-β-1、またはプレ-β-2 HDL集団と類似の大きさと密度を有している場合には、該複合体の循環血液中での半減期は延長しているはずであるので、このアプローチにはいくつかの利点がある。このタンパク質-脂質複合体は下記の多数の方法のいずれかによって都合よく調製することができる。長い保存寿命を有する安定な組成物は凍結乾燥によって作成することができる−好ましいアプローチとしては下記の同時凍結乾燥法である。本明細書中に参照により組み入れる米国特許第6,287,590号を参照のこと。ヒト以外の動物の該ApoA-Iタンパク質-脂質複合体は医薬組成物とすることができる。本明細書中に参照により組み入れる米国特許第6,306,433号を参照のこと。凍結乾燥したヒト以外の動物の該ApoA-Iタンパク質-脂質複合体は医薬品製剤のためのバルクを調製するため、または被験者への投与の前に滅菌水または適切な滅菌緩衝溶液で再水和することによって再構成することができる個々のアリコートまたは投与単位を調製するために用いることができる。
【0069】
当業者にはよく知られた種々の方法を該タンパク質-脂質小胞または複合体を調製するために用いることができる。この目的のために、リポソームまたはプロテオリポソーム組成物を調製するために利用することのできる多数の方法を用いることができる、例えば、ヒト以外の動物の該ApoA-Iタンパク質を適切な脂質と同時超音波処理して(バスまたはプローブ型ソニケーターを用いて)、小胞を形成させることができる。あるいはまた、該タンパク質をあらかじめ形成させた脂質小胞と組み合わせてタンパク質-脂質小胞を自然に形成させることができる。また別の方法では、該タンパク質-脂質小胞を界面活性剤透析法;例えば、タンパク質、脂質、および界面活性剤の混合物を透析して界面活性剤を除去し、タンパク質-脂質小胞を再構成もしくは形成させる方法によって形成させることができる(Jonasら, 1986, Methods in Enzymol. 128:553-582を参照のこと)。
【0070】
上述のアプローチは実行可能ではあるが、それらの方法の各々には、費用、収率、再現性、および安全性の点で、特有の製造上の問題がある。HDLと類似の特徴を有するタンパク質またはタンパク質-リン脂質複合体を調製するための単純な方法が開発された。その方法をヒト以外の動物のApoA-Iタンパク質-脂質複合体の調製に用いることができ、その方法には次のような利点がある。(1)含有させる成分の大多数または全てが、設計された複合体の形成に用いられ、他の方法でよく見られる出発材料の浪費が避けられる。(2)保管中に非常に安定である凍結乾燥した化合物が形成される。この結果得られた複合体は、通常は使用直前に再構成することができる。(3)得られた複合体は、複合体形成後から使用前まで通常はそれ以上精製する必要はない。(4)コール酸塩などの界面活性剤を含む毒性化合物は入り込まない。さらに、この製造方法はスケールアップが容易であり、GMPに準拠した製造 (例えば、エンドトキシンのない環境での製造など) に適している。
【0071】
該方法では、各成分を同時に溶解させる溶媒系中で該タンパク質と脂質は組み合わせ、その溶媒系は凍結乾燥によって完全に除去することができる。この目的のためには、溶媒のペアは両親媒性のタンパク質と疎水性の脂質の同時溶解を確実に行うために注意深く選択されねばならない。1実施形態においては、粒子中に取り込まれることとなるヒト以外の動物の該ApoA-Iタンパク質を水性溶媒もしくは有機溶媒、または溶媒の混合物(溶媒1)中に溶解させることができる。(リン)脂質成分は、溶媒1と互いに混和しうる水性溶媒もしくは有機溶媒、または溶媒の混合物(溶媒2)中に溶解し、2つの溶液を混合する。あるいはまた、該タンパク質と脂質を共溶媒系;すなわち互いに混和しうる溶媒の混合物中に取り込むことができる。脂質に対するタンパク質の適切な比率は、得られる複合体が適切な物理的および化学的性質を有するもの;通常は(必ずしもそうでなくともよいが)HDLの大きさに類似のもの、となるようにまず経験的に定められる。得られた混合物を凍結し、乾燥するまで凍結乾燥する。時には、凍結乾燥を容易にするためにさらに別の溶媒をその混合物に添加しなければならないことがある。この凍結乾燥組成物は長期間保存でき、安定な状態を保つ。
【0072】
例えば、ヒト以外の動物のApoA-Iタンパク質およびリン脂質は別々にメタノール中に溶解し、それらを併せ、その後凍結乾燥前にキシレンと混合することができる。該タンパク質と脂質は双方とも2種類の溶媒の混合物に添加することができる。あるいはまた、メタノール中に該タンパク質を溶解した溶液を、キシレン中に脂質を溶解した溶液と混合することができる。該タンパク質が塩析されることを避けるために溶媒系から塩を排除することに注意を払うべきである。該タンパク質と脂質をメタノール/キシレン中に同時に溶解させたものを含んでいる溶液を凍結乾燥して粉末とする。
【0073】
凍結乾燥した該組成物は、該タンパク質-脂質複合体の溶液または懸濁液を得るために再構成することができる。この目的のために、該凍結乾燥粉末を水性溶液を用いて再水和して適切な体積とする(1 mLあたり5 mgのタンパク質とすることが多いが、これは静脈内注射用に好都合である)。ある実施形態においては、該凍結乾燥粉末はリン酸緩衝食塩液または生理食塩液で再水和する。再水和を容易に行うためにその混合物を撹拌またはボルテックスにかけることができ、多くの場合、この再水和ステップは該複合体の脂質成分の相転移温度以上の温度で行うべきである。数分以内に、再水和した脂質-タンパク質複合体の澄明な溶液が得られる。
【0074】
得られた再構成組成物のアリコートをとって、その調製物中の該複合体のサイズ分布が所望のもの、例えばHDLのサイズ分布となっているかを確認するために特性を調べることができる。ゲルろ過クロマトグラフィーをこの目的に用いることができる。例えば、Pharmacia Superose 6 FPLCゲルろ過クロマトグラフィーシステムを用いることができる。用いるバッファーは50mMのリン酸バッファー, pH7.4中に150mM NaClを含むものである。典型的なサンプル量は1 mLあたり5 mgのタンパク質を含有する複合体20〜200 μLである。カラムの流速は0.5 mL/分である。分子量とストークス直径が既知の一連のタンパク質およびヒトHDLを、カラムを較正するための標準品として用いる。該タンパク質と脂質複合体は、254 nmまたは280 nmの波長の光の吸光度または分散でモニターする。
【0075】
ヒト以外の動物の該ApoA-Iタンパク質は種々の脂質と複合体化することができ、そのような脂質には、飽和、不飽和、天然、および合成の、脂質および/またはリン脂質が含まれる。適切な脂質としては、限定はされないが、小さなアルキル鎖のリン脂質、卵黄ホスファチジルコリン、ダイズホスファチジルコリン、ジパルミトイルホスファチジルコリン、ジミリストイルホスファチジルコリン、ジステアロイルホスファチジルコリン、1-ミリストイル-2-パルミトイルホスファチジルコリン、1-パルミトイル-2-ミリストイルホスファチジルコリン、1-パルミトイル-2-ステアロイルホスファチジルコリン、1-ステアロイル-2-パルミトイルホスファチジルコリン、ジオレオイルホスファチジルコリン、ジオレオホスファチジルエタノールアミン、ジラウロイルホスファチジルグリセロールホスファチジルコリン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルイノシトール、スフィンゴミエリン、スフィンゴ脂質、ホスファチジルグリセロール、ジホスファチジルグリセロール、ジミリストイルホスファチジルグリセロール、ジパルミトイルホスファチジルグリセロール、ジステアロイルホスファチジルグリセロール、ジオレオイルホスファチジルグリセロール、ジミリストイルホスファチジン酸、ジパルミトイルホスファチジン酸、ジミリストイルホスファチジルエタノールアミン、ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン、ジミリストイルホスファチジルセリン、ジパルミトイルホスファチジルセリン、脳ホスファチジルセリン、脳スフィンゴミエリン、ジパルミトイルスフィンゴミエリン、ジステアロイルスフィンゴミエリン、ホスファチジン酸、ガラクトセレブロシド、ガングリオシド、セレブロシド、ジラウリルホスファチジルコリン、(1,3)-D-マンノシル-(1,3)ジグリセリド、アミノフェニルグリコシド、3-コレステリル-6'-(グリコシルチオ)ヘキシルエーテルグリコリピド、ならびにコレステロールおよびその誘導体が含まれる。
【0076】
従って、好ましい実施形態においては、ヒト以外の動物のApoA-Iタンパク質はスフィンゴミエリンとの複合体として投与される。ヒト以外の動物の該ApoA-Iタンパク質-脂質複合体は医薬組成物とすることができる。
【0077】
4.5 投与方法
本発明の方法および組成物での使用には、ヒト以外の動物の該ApoA-Iタンパク質を当業者には既知の投与方法のいずれかで投与することができる。
【0078】
例えば、ヒト以外の動物の該ApoA-Iタンパク質またはタンパク質-脂質複合体は循環中での生物利用率を確保するような適切な投与経路であればいずれの経路によっても投与することができる。このことは非経口投与経路で良好に行うことができ、そのような経路には、静脈内(IV)、筋肉内(IM)、皮内、皮下(SC)、および腹腔内(IP)注射が含まれる。しかし、その他の投与経路も用いることができる。例えば、胃腸管からの吸収は経口投与経路(摂取、頬側、および舌下経路を含むがそれらに限定されない)によって行いうるが、但し、例えば口腔粘膜、胃、および/または小腸の厳しい環境中での有効成分の分解を避ける、または最小限に止めるための適切な組成物(例えば、腸溶性コーティング)が用いられる。あるいは、経膣や経直腸投与などの粘膜組織を介する投与を利用して、胃腸管内での分解を回避または最小にすることができる。あるいはまた、該組成物は、皮膚を介して(例えば経皮的に)、または吸入によって投与することができる。好ましい投与経路はレシピエントの状態、年齢、およびコンプライアンスによって変わりうるものであることは理解されよう。
【0079】
ヒト以外の動物の該ApoA-Iタンパク質またはタンパク質-脂質複合体は治療的または予防的に用いることができる。すなわち、ヒト以外の動物の該ApoA-Iタンパク質またはタンパク質-脂質複合体は、アテローム性動脈硬化症状の出現またはアテローム性動脈硬化症の診断の前後に投与することができる。用いられるヒト以外の動物の該ApoA-Iタンパク質またはタンパク質-脂質複合体の実際の投与量は、該医薬組成物の投与経路、薬物動態、および薬力学、治療しようとする被験者と疾患の特徴によって変わりうる。循環血漿中の濃度が約5 mg/Lから約3 g/Lとなるように投与量を調整することができる。ある実施形態においては、ヒト以外の動物のApoA-Iタンパク質は、約0.5 mg/kgから約100 mg/kgの間の投与量で週に約1回、注射によって投与することができる。別の実施形態においては、投与量は約0.1から約1000 mg/kg /日である。別の実施形態においては、投与量は約0.1から約100 mg/kg/日である。別の実施形態においては、投与量は約0.1から約5 mg/kg/日である。さらにまた別の実施形態においては、望ましい血清中レベルは、約0.5-100 mg/kg/hrの量を連続点滴することによって、または間欠的に点滴することによって維持することができる。
【0080】
ヒト以外の動物の該ApoA-Iタンパク質またはヒト以外の動物の該ApoA-Iタンパク質-脂質複合体の投与頻度は該医薬組成物の投与経路、薬物動態、および薬力学、治療しようとする被験者と疾患の特徴によって変わりうることは、当業者であれば明白であろう。ヒト以外の動物の該ApoA-Iタンパク質は、例えば、1日に約1回、1日に約2回、1日に約3回、1日に約4回、またはそれよりも高頻度で投与することができる。デポー組成物では、例えば、ヒト以外の動物の該ApoA-Iタンパク質、ヒト以外の動物の該ApoA-Iタンパク質-脂質複合体、またはそれらの医薬組成物を、例えば1週間に約1回、1ヶ月に約1回、または6ヶ月毎に約1回投与することができる。
【0081】
ヒト以外の動物の該ApoA-Iタンパク質またはApoA-Iタンパク質-脂質複合体の投与量および投与方法は治療のコースを通じて変えることができる。例えば、ヒト以外の動物の該ApoA-Iタンパク質またはApoA-Iタンパク質-脂質複合体を、1ヶ月間週に約1回投与し、その後1ヶ月あたり週に約1回投与することができる。ヒト以外の動物の該ApoA-Iタンパク質またはApoA-Iタンパク質-脂質複合体を、例えば、1ヶ月間週に約1回投与し、その後週1回を約3ヶ月間、約6ヶ月間、約9ヶ月間、約12ヶ月間、約24ヶ月間、約48ヶ月間、または約60ヶ月間投与することができる。ヒト以外の動物の該ApoA-Iタンパク質を、例えば2ヶ月間週約1回投与した後、6ヶ月間月に約1回投与することができる。
【0082】
ある実施形態においては、ヒト以外の動物の該ApoA-Iタンパク質は間欠的に投与することができる、すなわち、間隔をおいて投与が行われるかまたは投与スケジュールにヒト以外の動物の該ApoA-Iの投与のない期間があるようにすることができる。そのような間隔または投与が行われない期間は、患者に固有の各種の要素および疾患の進行度合いによって変わりうることは当業者であれば明白であろう。例えば、ヒト以外の動物の該ApoA-Iタンパク質を、1ヶ月間週に約1回投与した後、3ヶ月間月に1回投与し、その後約6ヶ月間投与せず、この投与サイクルを反復することができる。このような投与スケジュールは例示のためにのみここに示したものであり、限定するものと見なすべきでない。
【0083】
ヒト以外の動物の該ApoA-Iタンパク質またはApoA-Iタンパク質-脂質複合体の投与を心臓血管系の危険性が低減するまで継続することができる。そのような心臓血管系の危険性は当業者であれば既知の何らかの方法でモニターすることができる。心臓血管系の危険性のモニタリングは、例えば、HDLレベルの測定、血管造影、運動負荷、および類似の方法で行うことができる。
【0084】
ヒト以外の動物のApoA-Iタンパク質の毒性と治療上の効能は、細胞培養または実験動物で、LD50(試験した集団の50%が致死する投与量)およびED50(試験した集団の50%で治療が有効であった投与量)を測定するための標準的な薬学的方法を用いて求めることができる。毒性と治療効果との間の投与量比が治療指数であり、それはLD50/ED50比で表すことができる。治療指数の大きなヒト以外の動物のApoA-Iタンパク質が好ましい。
【0085】
4.6 構造の分析
ヒト以外の動物の該ApoA-Iタンパク質の活性は、天然のヒトApoA-IおよびApoA-Iアゴニストとの構造的類似性によるものと考えられる。好ましくは、ヒト以外の動物の該ApoA-Iタンパク質は天然のヒトApoA-IまたはApoA-Iアゴニストと二次構造、特に両親媒性のα-ヘリックスの存在が類似している。
【0086】
ヒト以外の動物の該ApoA-Iタンパク質のヘリックスの性質は、米国特許第6,004,925号、第6,046,166号、および第6,265,377号(その全体を本明細書中に参照により組み入れる)に記載されているとおり、円偏光二色性(CD)、蛍光スペクトル、および核磁気共鳴(NMR)によって、都合よく決定することができる。
【0087】
ヒト以外の動物の該ApoA-Iタンパク質の円偏光二色性スペクトルは、例えば、ヒト以外の動物の該ApoA-Iタンパク質のヘリックスの性質を決定するために用いることができる。特に、190 nmから260 nmの間の遠紫外円偏光二色性スペクトルを、222 nmの平均残基楕円率(mean redisue ellipticity)を測定することによって、または参照スペクトルと比較することによって、タンパク質のヘリックスの性質の決定に用いることができる。
【0088】
蛍光スペクトルは、ヒト以外の動物の該ApoA-Iタンパク質の二次構造の特性を決定するために用いることができる。例えば、蛍光測定は、標識タンパク質、例えばトリプトファン(TrpまたはW)またはナフチルアラニン(Nal)を用いて、150Wのキセノンランプを備えたFluoromax分光光度計および、例えば290 nmと450 nmの間を記録する光電子増倍管で行うことができる。
【0089】
ヒト以外の動物の該ApoA-Iタンパク質の核磁気共鳴(NMR)スペクトル分析でヒト以外の動物の該ApoA-Iタンパク質の一次元およびに次元スペクトルを得ることができる。大きなタンパク質では、一次元スペクトルでのHα共鳴のアップフィールド(ネガティブ)シフトがタンパク質のヘリックスの性質を決定する迅速で好都合な方法となりうる。
【0090】
4.7 生物学的活性
4.7.l 脂質異常に対する活性
ヒト以外の動物の該ApoA-Iタンパク質の脂質異常に対する活性は、LCAT活性化活性の定量によって測定することができる。LCAT活性化活性のアッセイは当業者には既知の任意のLCAT活性化活性アッセイを用いて行うことができる。例えば、ヒト以外の動物のApoA-Iタンパク質のヒトLCAT活性化能は、米国特許第号6,004,925号、第6,046,166号、および第6,265,377号(その全体を本明細書中に参照により組み入れる)に記載されているようなLCATアッセイ法によって測定することができる。種間のLCAT活性化活性は、例えば、Chenら, 1983, Biochim. Biophys. Acta 753(1):40-6(その全体を本明細書中に参照により組み入れる)に述べられているように測定することができる。
【0091】
4.7.2 抗ウイルス活性
ヒト以外の動物の該ApoA-Iタンパク質はその抗ウイルス活性を当業者には既知の何らかの抗ウイルスアッセイ法でアッセイすることができる。アッセイは、in vivoまたはin vitroで行うことができる。一般に、Deshpandeら, 2001, Bioorg. Med Chem. Lett. 1:2393-2396およびFurutaら, 2002, Antimicrob. Agents Chemother. 46: 977-981を参照のこと。
【0092】
プラーク低減アッセイは、ウイルス、例えばコクサッキーウイルスB3、インフルエンザウイルスA、および1型単純ヘルペスウイルス(HSV-1)などに対する薬剤の抗ウイルス活性を測定するための、絶対的標準法(gold standard)として受け入れられている。抗ウイルス活性のスクリーニングまたはウイルス感受性の試験に用いられるその他の方法としては、色素取り込みアッセイ(Langfordら, 1995, Antiviral Res. 27:355-365; McLarenら, 1983, Antiviral Res. 3:223-234; Pauwelsら, 1988, J. Virol. Methods 20:309-321; Takeuchiら, 1991, J. Virol. Methods 33:61-71; Watanabeら, 1994, J. Virol. Methods 48:257-265を参照のこと)、ELISA(Leahyら, 1994, J. Virol. Methods 48:93-108; Mycら, 1999, J. Virol. Methods 77:165-177; Rabalaisら, 1987, Antimicrob. Agents Chemother. 31:946-948を参照のこと)、フローサイトメトリー分析(Pavicら, 1997, Antimicrob. Agents Chemother. 41:2686-2692; Steele-Mortimerら, 1990, J. Virol. Methods 27:241-252を参照のこと)、核酸ハイブリダイゼーション(Rimmelzwaanら, 1998, J. Virol.Methods 74:57-66、およびStandring-Coxら, 1996, J. Virol. Methods 56:3-11)、および細胞変性効果(CPE)阻害アッセイ(Schmidtkeら, 2001, J. Virol. Methods 95:133-143を参照のこと)が含まれる。ある実施形態においては、ヒト以外の動物の該ApoA-Iタンパク質の抗ウイルス活性はα-1-酸性糖タンパク質アッセイ(Sidwellら, 2002, Antiviral Chem. Chemother. 12:359
-365を参照のこと)を利用して評価できる。α-1-酸性糖タンパク質は、炎症、妊娠、および癌などの症状に関連する急性期タンパク質である。このタンパク質は市販のキット(Saikin Kagaku Institute, 仙台, 日本)を用いて単純な放射状免疫拡散法でアッセイすることができる。
【0093】
4.7.3 敗血症に対する活性
細菌感染におけるヒト以外の動物の該ApoA-Iタンパク質の活性は当業者には既知の任意の方法で調べることができる。グラム陰性菌による敗血症に対するヒト以外の動物の該ApoA-Iタンパク質の活性は当業者には既知の任意の方法で測定することができる。ヒト以外の動物の該ApoA-Iタンパク質の、サイトカイン、特にTNF-αの放出を低減または妨げる活性は、例えば、CasasらおよびDeschらが述べている方法を用いて調べることができる(Casasら, 1995, J. Surgical Res. 59:544-552, Deschら, 1989, Lymphokine Res. 8:141-147;これらはその全体を本明細書中に参照により組み入れる)。
【0094】
TNF-α産生を測定するためのin vitroの方法には、CasasらまたはDeschら(その全体を本明細書中に参照により組み入れる)によって述べられている全血アッセイ法が含まれる。TNF-α産生のためのex vivoおよびin vivo法は、CasasらまたはDeschらが述べている方法とすることができる。それらの方法では、当業者には既知のニュージーランド白色ウサギまたはその他の適切なモデル動物を用いることができる。
【0095】
4.8 その他の使用
本発明は、ヒトを含む動物での脂質異常関連疾患の治療のための方法を提供する。本発明はまた、ヒト以外の動物の該ApoA-Iタンパク質、ヒト以外の動物のApoA-Iタンパク質医薬組成物、ヒト以外の動物のApoA-Iタンパク質-脂質複合体、およびヒト以外の動物のApoA-Iタンパク質-脂質複合体の医薬組成物のその他の使用をも提供する。
【0096】
ヒト以外の動物の該ApoA-Iタンパク質は血清HDLの、例えば診断目的での測定のためのin vitroのアッセイ法に用いることができる。ヒト以外の動物のApoA-Iタンパク質は血清のHDL成分と関連しているので、ヒト以外の動物のApoA-Iタンパク質はHDL集団のための「マーカー」として用いることができる。さらに、ヒト以外の動物のApoA-Iタンパク質はRCTに有効なHDLの亜集団のためのマーカーとして用いることができる。この目的のために、ヒト以外の動物のApoA-Iタンパク質を患者の血清サンプル中に添加またはそのサンプルと混合し;適切なインキュベーション時間の後、HDL成分を、取り込まれたヒト以外の動物のApoA-Iタンパク質を検出することによってアッセイすることができる。このことはヒト以外の動物の標識ApoA-Iタンパク質(例えば、放射性標識、蛍光標識、酵素標識、色素など)を用いて、またはApoA-Iタンパク質に特異的な抗体(または抗体フラグメント)を用いたイムノアッセイによって行うことができる。
【0097】
あるいはまた、ヒト以外の動物の標識ApoA-Iタンパク質を造影法(例えばCATスキャン、MRIスキャン)で用いて循環系の可視化、またはRCTのモニター、または脂肪線(fatty streak)、アテローム性動脈硬化病変部など(HDLがコレステロール流出に働くはずの場所)へのHDLの蓄積を可視化するために用いることができる。
【0098】
ヒト以外の動物の該ApoA-Iタンパク質はまた、米国特許第6,355,451号(本明細書中に参照により組み入れる)に述べられているとおり、診断用として用いることもできる。例えば、標識されたヒト以外の動物のApoA-Iタンパク質、ヒト以外の動物のApoA-Iタンパク質の断片、または相補的ペプチドまたはタンパク質を、診断用のヒト以外の動物のApoA-Iタンパク質を作成するために用いることができる。
【0099】
本発明の種々の実施形態を記載してきた。上記の説明と例示は本発明の例示を意図したものであって限定することを意図していない。事実、当業者であれば、本発明の種々の実施形態に対して、本発明の思想または添付の特許請求の範囲から逸脱することなく変更を行うことができることは明白であろう。
【0100】
本明細書中に引用した参照文献の全ては、あらゆる目的のためにその全体を本明細書中に参照により組み入れる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂質異常関連疾患に罹患しているヒトを治療する方法であって、該方法がヒト以外の動物のApoA-Iタンパク質の有効量を該被験者に投与することを含む、上記方法。
【請求項2】
前記脂質異常関連疾患が高コレステロール血症である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記脂質異常関連疾患が心臓血管疾患である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記脂質異常関連疾患がアテローム性動脈硬化症である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記脂質異常関連疾患が再発狭窄症である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記脂質異常関連疾患がHDLまたはApoA-I欠損症である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記脂質異常関連疾患が高トリグリセライド血症である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
感染症に罹患した被験者を治療する方法であって、該方法がヒト以外の動物のApoA-Iタンパク質の有効量を該被験者に投与することを含む、上記方法。
【請求項9】
前記感染症が細菌性のものである、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記感染症が敗血症ショックである、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記感染症がウイルス性のものである、請求項8に記載の方法
【請求項12】
前記ウイルスがインフルエンザウイルスである、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記ウイルスがヒト免疫不全ウイルスである、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記ウイルスがサイトメガロウイルスである、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記ウイルスが単純ヘルペスウイルスである、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
ヒト以外の動物のApoA-Iタンパク質および製薬上許容される担体、賦形剤、または希釈剤を含んでなる、医薬組成物。
【請求項17】
ヒト以外の動物のApoA-Iタンパク質および脂質を含んでなる、ヒト以外の動物のApoA-Iタンパク質-脂質複合体。
【請求項18】
ヒト以外の動物のApoA-Iタンパク質-脂質複合体を含んでなる医薬組成物。
【請求項19】
前記脂質がスフィンゴミエリンである、請求項18に記載の組成物。
【請求項20】
凍結乾燥粉末の形態である、請求項19に記載の組成物。
【請求項21】
溶液の形態である、請求項19に記載の組成物。
【請求項22】
前記被験者がヒトである、請求項1または8に記載の方法。
【請求項23】
ヒト以外の動物の前記ApoA-Iタンパク質がウシのものである、請求項1または8に記載の方法。
【請求項24】
ヒト以外の動物の前記ApoA-Iタンパク質がニワトリ由来のものである、請求項1または8に記載の方法。
【請求項25】
ヒト以外の動物の前記ApoA-Iタンパク質がシチメンチョウ由来のものである、請求項1または8に記載の方法。
【請求項26】
ヒト以外の動物の前記ApoA-Iタンパク質がブタ由来のものである、請求項1または8に記載の方法。
【請求項27】
前記被験者に約0.5 mg/kgから約100 mg/kgのヒト以外の動物の前記ApoA-Iタンパク質が投与される、請求項1または8に記載の方法。
【請求項28】
前記組成物が経口的に投与される、請求項26に記載の組成物の投与方法。
【請求項29】
前記組成物が静脈内に投与される、請求項26に記載の方法。
【請求項30】
前記組成物が吸入によって投与される、請求項26に記載の方法。
【請求項31】
前記組成物が1日1回投与される、請求項26に記載の方法。
【請求項32】
前記組成物が1日2回投与される、請求項26に記載の方法。
【請求項33】
前記組成物が1日3回投与される、請求項26に記載の方法。
【請求項34】
前記組成物が1日4回投与される、請求項26に記載の方法。
【請求項35】
前記組成物が週に約1回投与される、請求項26に記載の方法。
【請求項36】
前記組成物が月に約1回投与される、請求項26に記載の方法。
【請求項37】
前記組成物が約6ヶ月毎に投与される、請求項26に記載の方法。
【請求項38】
前記組成物が1ヶ月間、週に約1回投与される、請求項26に記載の方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂質異常関連疾患に罹患しているヒトを治療する方法であって、該方法がヒト以外の動物の精製されたApoA-Iタンパク質の有効量を該被験者に投与することを含む、上記方法。
【請求項2】
前記脂質異常関連疾患が高コレステロール血症である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記脂質異常関連疾患が心臓血管疾患である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記脂質異常関連疾患がアテローム性動脈硬化症である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記脂質異常関連疾患が再発狭窄症である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記脂質異常関連疾患がHDLまたはApoA-I欠損症である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記脂質異常関連疾患が高トリグリセライド血症である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
感染症に罹患した被験者を治療する方法であって、該方法がヒト以外の動物の精製されたApoA-Iタンパク質の有効量を該被験者に投与することを含む、上記方法。
【請求項9】
前記感染症が細菌性のものである、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記感染症が敗血症ショックである、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記感染症がウイルス性のものである、請求項8に記載の方法
【請求項12】
前記ウイルスがインフルエンザウイルスである、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記ウイルスがヒト免疫不全ウイルスである、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記ウイルスがサイトメガロウイルスである、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記ウイルスが単純ヘルペスウイルスである、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
ヒト以外の動物の精製されたアポリポプロテインA-Iタンパク質(ApoA-Iタンパク質)および製薬上許容される担体、賦形剤、または希釈剤を含んでなる、医薬組成物。
【請求項17】
ヒト以外の動物の精製されたApoA-Iタンパク質および脂質を含んでなる、ヒト以外の動物のApoA-Iタンパク質-脂質複合体であって、該複合体が、LCAT(レシチンコレステロールアシルトランスフェラーゼ)活性を活性化し、コレステロール流出を促進し、ならびに、ヒトへの投与に適しているものである、上記複合体
【請求項18】
請求項17に記載のヒト以外の動物のApoA-Iタンパク質-脂質複合体を含んでなる医薬組成物。
【請求項19】
前記脂質がスフィンゴミエリンである、請求項18に記載の組成物。
【請求項20】
凍結乾燥粉末の形態である、請求項19に記載の組成物。
【請求項21】
溶液の形態である、請求項19に記載の組成物。
【請求項22】
前記被験者がヒトである、請求項1または8に記載の方法。
【請求項23】
ヒト以外の動物の精製された前記ApoA-Iタンパク質がウシのものである、請求項1または8に記載の方法。
【請求項24】
ヒト以外の動物の精製された前記ApoA-Iタンパク質がニワトリ由来のものである、請求項1または8に記載の方法。
【請求項25】
ヒト以外の動物の精製された前記ApoA-Iタンパク質がシチメンチョウ由来のものである、請求項1または8に記載の方法。
【請求項26】
ヒト以外の動物の精製された前記ApoA-Iタンパク質がブタ由来のものである、請求項1または8に記載の方法。
【請求項27】
前記被験者に約0.5 mg/kgから約100 mg/kgのヒト以外の動物の精製された前記ApoA-Iタンパク質が投与される、請求項1または8に記載の方法。
【請求項28】
前記組成物が経口的に投与される、請求項26に記載の組成物の投与方法。
【請求項29】
前記組成物が静脈内に投与される、請求項26に記載の方法。
【請求項30】
前記組成物が吸入によって投与される、請求項26に記載の方法。
【請求項31】
前記組成物が1日1回投与される、請求項26に記載の方法。
【請求項32】
前記組成物が1日2回投与される、請求項26に記載の方法。
【請求項33】
前記組成物が1日3回投与される、請求項26に記載の方法。
【請求項34】
前記組成物が1日4回投与される、請求項26に記載の方法。
【請求項35】
前記組成物が週に約1回投与される、請求項26に記載の方法。
【請求項36】
前記組成物が月に約1回投与される、請求項26に記載の方法。
【請求項37】
前記組成物が約6ヶ月毎に投与される、請求項26に記載の方法。
【請求項38】
前記組成物が1ヶ月間、週に約1回投与される、請求項26に記載の方法。
【請求項39】
ヒト以外の動物のApoA-Iタンパク質が、約38%以上のヒトレシチン-コレステロールアシルトランスフェラーゼ(LCAT)活性化活性を有する、請求項16に記載の医薬組成物。
【請求項40】
ヒト以外の動物のApoA-Iタンパク質が、約40%以上のヒトLCAT活性化活性を有する、請求項16に記載の医薬組成物。
【請求項41】
ヒト以外の動物のApoA-Iタンパク質が、約43%以上のヒトLCAT活性化活性を有する、請求項16に記載の医薬組成物。
【請求項42】
ヒト以外の動物のApoA-Iタンパク質が、約45%以上のヒトLCAT活性化活性を有する、請求項16に記載の医薬組成物。
【請求項43】
ヒト以外の動物のApoA-Iタンパク質が、約1〜約350mgの量である、請求項16に記載の医薬組成物。
【請求項44】
ヒト以外の動物のApoA-Iタンパク質が、約1〜約35mgの量である、請求項43に記載の医薬組成物。
【請求項45】
ヒト以外の動物のApoA-Iタンパク質が、約7〜約35mgの量である、請求項44に記載の医薬組成物。
【請求項46】
ヒト以外の動物の精製されたApoA-Iタンパク質がウシのものである、請求項16に記載の医薬組成物。
【請求項47】
ヒト以外の動物の精製されたApoA-Iタンパク質がニワトリのものである、請求項16に記載の医薬組成物。
【請求項48】
ヒト以外の動物の精製されたApoA-Iタンパク質がシチメンチョウのものである、請求項16に記載の医薬組成物。
【請求項49】
ヒト以外の動物の精製されたApoA-Iタンパク質がブタのものである、請求項16に記載の医薬組成物。
【請求項50】
ヒト以外の動物のApoA-Iタンパク質が、天然のヒトApoA-Iタンパク質と約60%以上の相同性を有するものである、請求項16に記載の医薬組成物。
【請求項51】
ヒト以外の動物のApoA-Iタンパク質が、天然のヒトApoA-Iタンパク質と約70%以上の相同性を有するものである、請求項50に記載の医薬組成物。
【請求項52】
ヒト以外の動物のApoA-Iタンパク質が、天然のヒトApoA-Iタンパク質と約80%以上の相同性を有するものである、請求項51に記載の医薬組成物。
【請求項53】
ヒト以外の動物のApoA-Iタンパク質が、天然のヒトApoA-Iタンパク質と約90%以上の相同性を有するものである、請求項52に記載の医薬組成物。
【請求項54】
ヒト以外の動物のApoA-Iタンパク質が、約1〜約350mgの量である、請求項17に記載のApoA-Iタンパク質-脂質複合体。
【請求項55】
ヒト以外の動物のApoA-Iタンパク質が、約1〜約35mgの量である、請求項54に記載のApoA-Iタンパク質-脂質複合体。
【請求項56】
ヒト以外の動物のApoA-Iタンパク質が、約7〜約35mgの量である、請求項55に記載のApoA-Iタンパク質-脂質複合体。
【請求項57】
ヒト以外の動物のApoA-Iタンパク質が、約38%以上のヒトLCAT活性化活性を有する、請求項17に記載のApoA-Iタンパク質-脂質複合体。
【請求項58】
ヒト以外の動物のApoA-Iタンパク質が、約40%以上のヒトLCAT活性化活性を有する、請求項17に記載のApoA-Iタンパク質-脂質複合体。
【請求項59】
ヒト以外の動物のApoA-Iタンパク質が、約43%以上のヒトLCAT活性化活性を有する、請求項17に記載のApoA-Iタンパク質-脂質複合体。
【請求項60】
ヒト以外の動物のApoA-Iタンパク質が、約45%以上のヒトLCAT活性化活性を有する、請求項17に記載のApoA-Iタンパク質-脂質複合体。
【請求項61】
ヒト以外の動物のApoA-Iタンパク質が、天然のヒトApoA-Iタンパク質と約60%以上の相同性を有するものである、請求項17に記載のApoA-Iタンパク質-脂質複合体。
【請求項62】
ヒト以外の動物のApoA-Iタンパク質が、天然のヒトApoA-Iタンパク質と約70%以上の相同性を有するものである、請求項61に記載のApoA-Iタンパク質-脂質複合体。
【請求項63】
ヒト以外の動物のApoA-Iタンパク質が、天然のヒトApoA-Iタンパク質と約80%以上の相同性を有するものである、請求項62に記載のApoA-Iタンパク質-脂質複合体。
【請求項64】
ヒト以外の動物のApoA-Iタンパク質が、天然のヒトApoA-Iタンパク質と約90%以上の相同性を有するものである、請求項63に記載のApoA-Iタンパク質-脂質複合体。
【請求項65】
ヒト以外の動物のApoA-Iタンパク質がウシのものである、請求項17に記載のApoA-Iタンパク質-脂質複合体。
【請求項66】
ヒト以外の動物のApoA-Iタンパク質がニワトリのものである、請求項17に記載のApoA-Iタンパク質-脂質複合体。
【請求項67】
ヒト以外の動物のApoA-Iタンパク質がシチメンチョウのものである、請求項17に記載のApoA-Iタンパク質-脂質複合体。
【請求項68】
ヒト以外の動物のApoA-Iタンパク質がブタのものである、請求項17に記載のApoA-Iタンパク質-脂質複合体。

【公表番号】特表2006−508045(P2006−508045A)
【公表日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−524902(P2004−524902)
【出願日】平成15年7月29日(2003.7.29)
【国際出願番号】PCT/US2003/023458
【国際公開番号】WO2004/010939
【国際公開日】平成16年2月5日(2004.2.5)
【出願人】(503131490)エスペリオン セラピューティクス,インコーポレイテッド (7)
【Fターム(参考)】