説明

ヒト前立腺特異的膜抗原(PSMA)をターゲッティングするJ591ミニボディおよびCYSダイアボディならびにこれらを使用するための方法

1つの実施形態では、PSMAに結合するミニボディ単量体が提供される。ミニボディ単量体は、N末端からC末端に、PSMAに結合することができるscFv配列、人工ヒンジ配列、およびヒトIgG CH3配列を含むヌクレオチド配列によりコードされる。別の実施形態では、PSMAに結合するCysDB単量体が提供される。CysDB単量体は、N末端からC末端に、PSMAに結合することができるscFv配列およびシステインテールを含むヌクレオチド配列によりコードされ得る。他の実施形態では、被験者におけるPSMA発現に関連する癌の診断または治療方法が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
連邦政府による資金提供を受けた研究の記載
本発明は、米国国立癌研究所(NCI)により授与された契約番号HHSN261200900051 Cの下、米国政府の支援により行われた。政府は本発明における一定の権利を有する。
【0002】
優先権の主張
本出願は、2009年12月2日に出願された米国仮出願第61/266,134号の利益を主張するものであり、前記出願の主題は、本明細書に完全に記載されているかのように参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
抗体工学の進歩は、種々の薬物動態および結合特性を特徴とするさまざまな抗体フラグメントの開発を可能にした(Wuら 2005年、Wuら 2008年、Wuら 2009年)。ミニボディ(minibody)は、完全長抗体より低い分子量(約80kD)を特徴としながら、抗原に対する二価結合特性を維持する抗体フォーマットである(Huら 1996年)。より小さいサイズのため、ミニボディは、腫瘍組織をターゲッティングする場合の全身からのより速いクリアランスおよび浸透の増大を特徴とする。迅速なクリアランスと組み合わされた強力なターゲッティング能力により、ミニボディは、画像診断に使用され得る最適化された抗体フォーマットである(Wuら 2005年)。腫瘍関連標的CEAに対する最初のミニボディの発見以来、多くのミニボディが、乳癌におけるヒト上皮成長因子受容体2(HER2)、非ホジキンリンパ腫におけるBリンパ球抗原CD20、および前立腺癌における前立腺幹細胞抗原(PSCA)を含む前臨床画像診断用の種々の癌標的に対して開発されている(Huら 1996、Leytonら 2008年、Olafsenら 2004年、Olafsenら 2009年)。例えば、123I標識CEAミニボディが、SPECTによる結腸直腸癌患者のイメージングのため臨床で評価されており、類似の研究が111In-DOTA標識されたミニボディで行われた(Wongら 2004年)。新規イメージング剤の開発は、前立腺癌など、現在の技術ではイメージング不良である特定の癌の診断、管理、および治療に特に不可欠である。
【0004】
あらゆるタイプの癌に対するイメージング剤の開発が、疾患のターゲッティング、病期分類、およびモニタリングを可能にするのに必要とされる。前立腺癌を画像診断するための現在の方法は、比較的不正確なままである。2006年では234,460新規症例および27,350死亡例が推定され、前立腺癌を正確に診断、病期分類、およびモニタリングすることができるイメージング剤が必要とされている(Olsonら 2007年)。
【0005】
前立腺癌に関連する細胞表面バイオマーカー、前立腺特異的膜抗原(PSMA) (Slovin 2005年)は、グルタミン酸カルボキシペプチダーゼ活性を有するII型1回膜貫通タンパク質であるが、PSMAの機能的役割は十分に理解されていない(Olsonら 2007年)。PSMAの発現は、前立腺を別とすれば、脳、小腸、肝臓、腎近位尿細管、および唾液腺を含む正常な組織に比較的限定される(Olsonら 2007年)。
【0006】
前立腺癌におけるPSMA発現は、腫瘍の攻撃性とともに増加し、高悪性度の腫瘍、転移性病変、およびアンドロゲン非依存性疾患で最も高い(Olsonら 2007年)。したがって、PSMAは、イメージング剤によるターゲッティングの良好な候補である癌バイオマーカーである。PSMA発現はまた、肺癌、結腸癌、乳癌、腎臓癌、肝臓癌および膵臓癌腫ならびに肉腫およびメラノーマを含む多くの非前立腺固形腫瘍の新生血管系においてもアップレギュレートされる(Olsonら 2007年)。
【0007】
PSMAをターゲッティングする完全長抗体が開発されており、このうちの幾つかは、前臨床および臨床開発のさまざまな段階にある(Olsonら 2007年)。PSMAは、最初は、PSMAの細胞内エピトープを認識するマウス抗体(mAb)、7E11により定義された(Olsonら 2007)。7E11 mAbは、後に、軟組織における前立腺癌の検出およびイメージングのためのプロスタシント(Prostascint)と呼ばれるFDA承認SPECTイメージング剤に発展した(Olsonら 2007年)。しかし、7E11は細胞内エピトープを認識することから、プロスタシントは、壊死腫瘍組織の検出に限定される比較的質の悪いイメージング剤である(Olsonら 2007)。完全長抗体の薬物動態特性を有するため、プロスタシントはまた、注入とイメージングの間に長時間を必要とする(Olsonら 2007年)。さらに、プロスタシントは、複数回投与を妨げる強い免疫応答を誘発するマウス抗体である(Olsonら 2007年)。
【0008】
PSMAをターゲッティングするもう1つの完全長抗体、J591が発見され、この後、脱免疫化(deimunized)され、脱免疫化バージョンはhuJ591として知られている(Liuら 1997年、Banderら 2003年)。脱免疫化huJ591は、PSMA上の細胞外エピトープを認識し結合する抗ヒトPSMA抗体である(Banderら 2003年)。huJ591抗体は、前立腺癌に対する可能性のある放射免疫療法剤として開発中である。第I相試験では、ガンマ放出同位体インジウム111およびルテチウム177で標識されたDOTAコンジュゲートhuJ591抗体は、転移部位に対する優れたターゲッティング、無免疫原性を示し、複数回投与は忍容性が良好であった(Banderら 2003年、Milowskyら 2004年、Banderら 2005年、Olsonら 2007年)。前立腺癌を超えて、111In-DOTA huJ591による第I相試験は、進行固形腫瘍の腫瘍新生血管系の特異的ターゲッティングを実証した(Milowskyら 2007年)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Remington:「The Science and Practice of Pharmacy」、第21版、Univ. of Sciences in Philadelphia (USIP)、Lippincott Williams & Wilkins、Philadelphia、PA、2005年
【非特許文献2】Sirkら、Bioconjugate Chem、2008年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
1つの実施形態では、PSMAに結合するミニボディが提供される。この実施形態によれば、ミニボディは、N末端からC末端に、前立腺特異的膜抗原(PSMA)に結合することができるscFv配列、人工ヒンジ配列、およびヒトIgG1 CH3配列を含むヌクレオチド配列によりコードされる。ミニボディ単量体は、細胞で発現される時にミニボディの分泌を可能にするN末端シグナル配列を含むこともできる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本明細書に記載のようなミニボディscFvは、リンカー配列により可変軽鎖ドメイン(VL)に連結された可変重鎖ドメイン(VH)を含む。1つの態様では、scFvは、VHがVLの上流になるようなVHVL配向(配向)にある。このようなscFvを有するミニボディ単量体は、配列番号1または配列番号2を含むヌクレオチド配列を有することができる。別の態様では、scFvは、VLがVHの上流になるようなVLVH配向にある。
【0012】
ミニボディ単量体は、細胞により発現されてもよい。このような実施形態では、細胞により発現されたCysDB単量体は、配列番号10または配列番号11のアミノ酸配列を含むことができる。
【0013】
別の実施形態では、PSMAに結合するcysダイアボディ(CysDB)が提供される。この実施形態によれば、CysDB単量体は、N末端からC末端に、PSMAに結合することができるscFv配列およびシステインテールを含むヌクレオチド配列によりコードされる。CysDBは、細胞で発現される時にミニボディの分泌を可能にするN末端シグナル配列を含むこともできる。
【0014】
本明細書に記載のようなCysDB scFvは、リンカー配列により可変軽鎖ドメイン(VL)に連結された可変重鎖ドメイン(VH)を含む。1つの態様では、scFvは、VHがVLの上流になるようなVHVL配向にある。このようなscFvを有するCysDB単量体は、配列番号6または配列番号7を含むヌクレオチド配列を有することができる。別の態様では、scFvは、VLがVHの上流になるようなVLVH配向にある。このようなscFvを有するCysDB単量体は、配列番号8または配列番号9を含むヌクレオチド配列を有することができる。
【0015】
CysDBは、細胞により発現されてもよい。幾つかの実施形態では、細胞により発現されたCysDBは、アミノ酸配列配列番号12、配列番号13、配列番号14または配列番号15を含むことができる。
【0016】
別の実施形態では、被験者におけるPSMA発現に関連する癌の診断方法が提供される。このような方法は、診断剤にコンジュゲートされた抗PSMAミニボディまたはcysダイアボディを、PSMA発現に関連する癌を有するまたは有することが疑われる被験者に投与するステップと、標識されたミニボディまたはcysダイアボディをin vivoで可視化するイメージング方法に被験者を曝すステップと、標識されたミニボディまたはcysダイアボディが腫瘍部位に局在化する場合、被験者が、PSMA発現に関連する癌を有すると判定するステップとを含む。
【0017】
別の実施形態では、被験者におけるPSMA発現に関連する癌の治療方法が提供される。このような方法は、医薬組成物の治療有効量を被験者に投与するステップを含み、該組成物は、抗PSMAミニボディまたは抗PSMA cysダイアボディを含む。1つの態様では、抗PSMAミニボディまたは抗PSMA cysダイアボディが治療剤にコンジュゲートされる。
【0018】
被験者におけるPSMA発現に関連する癌は、肺癌、結腸直腸癌、乳癌、腎臓癌、肝臓癌、膀胱癌、膵臓癌またはメラノーマであり得る。
【0019】
上記のような方法において使用することができるミニボディは、本明細書に記載のような任意の適切なミニボディであってもよく、または配列番号10もしくは配列番号11を含んでもよい。上記のような方法において使用することができるcysダイアボディは、本明細書に記載のような任意の適切なミニボディであってもよく、または配列番号12、配列番号13、配列番号14もしくは配列番号15を含んでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】J591ミニボディの模式図である。本図は、標的PSMAに結合するVHVL配向でのミニボディを表す(図1A)。VHVL配向でのJ591ミニボディの発現構築物の模式図である(図1B)。SP=シグナルペプチド、VH -可変重鎖ドメイン、VL -可変軽鎖ドメイン、L - 18アミノ酸リンカー、H/E -人工ヒンジ/伸長(extension)、ヒトIgG1由来のCH3。
【図2】脱免疫化(ライン3; 配列番号5; 配列番号19) J591 V領域、マウス(ライン2; 配列番号4; 配列番号18) J591 V領域、およびヒト複合体(ライン1; 配列番号3; 配列番号17) J591 V領域のアミノ酸配列間の比較を示す図である。HCライン(ライン1)に沿って強調された残基は、HCとマウスV領域の間の違いを示す。脱免疫化ライン(ライン3)に沿って強調された残基は、オリジナルの脱免疫化プロセスの結果としての脱免疫化V領域とマウスV領域の間の違いを示す。2つの星は、脱免疫化により導入された2つのプロリンを示す。
【図3A】J591ヒト複合体体VHVLミニボディヌクレオチド配列(配列番号1)および対応する翻訳アミノ酸配列(配列番号10)を示す図である。
【図3B】J591ヒト複合体体VHVLミニボディヌクレオチド配列(配列番号1)および対応する翻訳アミノ酸配列(配列番号10)を示す図である。
【図4A】J591 2P VHVLミニボディヌクレオチド配列(配列番号2)および対応する翻訳アミノ酸配列(配列番号11)を示す図である。
【図4B】J591 2P VHVLミニボディヌクレオチド配列(配列番号2)および対応する翻訳アミノ酸配列(配列番号11)を示す図である。
【図5】cysダイアボディ(CysDB)の模式図(A)、VLVH配向でのCysDBの発現構築物の模式図(B)、およびVHVL配向でのCysDBの発現構築物の模式図(C)である。SS=シグナル配列、VH=可変重鎖ドメイン、VL=可変軽鎖ドメイン、L リンカー(5または8アミノ酸であってもよい)、GGS=システインテール(Gly-Gly-Cys)。
【図6】J591 cysダイアボディ(CysDB) VH-5-VLヌクレオチド配列(配列番号6)および対応する翻訳アミノ酸配列(配列番号12)を示す図である。
【図7】J591 cysダイアボディ(CysDB) VH-8-VLヌクレオチド配列(配列番号7)および対応する翻訳アミノ酸配列(配列番号13)を示す図である。
【図8】J591 cysダイアボディ(CysDB) VL-5-VHヌクレオチド配列(配列番号8)および対応する翻訳アミノ酸配列(配列番号14)を示す図である。
【図9】J591 cysダイアボディ(CysDB) VL-8-VHヌクレオチド配列(配列番号9)および対応する翻訳アミノ酸配列(配列番号15)を示す図である。
【図10】pcDNA 3.1/myc-His (-)バージョンA、B、Cのベクターマップを示す図である。Invitrogen Corp.社製のこの発現ベクターは、哺乳動物発現のためのCMVプロモーターおよび選択のためのネオマイシン耐性を特徴とする。
【図11】CHO-K1細胞によるJ591ミニボディの発現を確認する代表的なウェスタンブロット分析を示す図である。レーン1は分子量マーカー試料に対応し、レーン2は空ベクター試料に対応し、レーン3は陽性対照ミニボディ試料に対応し、レーン4はJ591 HC VLVH試料に対応し、レーン5はJ591 HC VHVL試料に対応し、レーン6はJ591 2P VLVH試料に対応し、およびレーン7はJ591 2P VHVL試料に対応する。
【図12】図12A:J591ミニボディのフローサイトメトリー分析を表すグラフである。ヒストグラムは細胞数対PEシグナル(FL2-H)をプロットする。J591 HC VLVHミニボディに関するフローサイトメトリー分析を表すグラフを示す図である。図12B:J591ミニボディのフローサイトメトリー分析を表すグラフである。ヒストグラムは細胞数対PEシグナル(FL2-H)をプロットする。J591 HC VHVLミニボディに関するフローサイトメトリー分析を表すグラフを示す図である。図12C:J591ミニボディのフローサイトメトリー分析を表すグラフである。ヒストグラムは細胞数対PEシグナル(FL2-H)をプロットする。J591 2P VLVHミニボディに関するフローサイトメトリー分析を表すグラフを示す図である。図12D:J591ミニボディのフローサイトメトリー分析を表すグラフである。ヒストグラムは細胞数対PEシグナル(FL2-H)をプロットする。J591 2P VHVLミニボディに関するフローサイトメトリー分析を表すグラフを示す図である。
【図13】精製J591ミニボディのSDS-PAGE分析を示す図である。精製J591ミニボディタンパク質は、非還元条件(レーン1)および還元条件(lane 2)下でSDS-PAGEゲルに添加された。ゲルはGelCode Blue (Pierce, Thermo Scientific社)で染色された。ミニボディはゲルに添加するため1/5に希釈された。
【図14】精製J591ミニボディのサイズ除外クロマトグラフィー(SEC)分析を示す図である。グラフは220nm UV吸光度(mAU) vs.時間(分)をプロットする。4μgのJ591ミニボディがTSK-GEL Super SW3000カラムに添加された。参照を提供するため、タンパク質分子量標準もカラムに別に流された。凝集体対ミニボディタンパク質(単量体としてここでは標識された)のパーセンテージは、曲線下の面積を計算して判定された。
【図15】J591ミニボディタンパク質がELISAによりPSMAに結合することを図示する図である。96ウェルELISAプレートは、1μg/mlでの精製組換えPSMAタンパク質により被覆された。精製J591ミニボディタンパク質(1、●)は2μg/mlの開始濃度で導入され、および3回目の希釈物により10回連続希釈された。同一の希釈が陰性対照ミニボディ(2、■)について行われた。試料は各希釈で3通り行われ、誤差バーは標準偏差を表す。第1インキュベーション後、結合ミニボディは、アルカリホスファターゼにコンジュゲートされたヤギ抗ヒトIgG (Fc特異的)抗体を用いて検出され、およびpNPP溶液で展開された。吸光度は405nmで検出された。
【図16】J591ミニボディがPSMA+細胞系に結合することを図示する、フローサイトメトリー分析を表すグラフである。全てのヒストグラムは細胞数vs. PEシグナル(FL2-H)をプロットする。J591ミニボディタンパク質および陰性対照ミニボディ(1)(いずれも20μg/ml)は、PSMA+細胞系LNCaP (AおよびB)およびCWR22rv1 (CおよびD)への結合についてテストされた。細胞はこの後、2次抗ヒトIgG (Fc特異的)-PEコンジュゲート抗体で染色された。1×105細胞/ポイントおよび分析は5,000イベント/ポイントで行われた。(A) J591ミニボディ(2)結合LNCaP細胞、(B) J591-DOTAミニボディ(2)結合LNCaP細胞(C)、J591ミニボディ(2)結合CWR細胞(D)、J591-DOTAミニボディ(2)結合CWR細胞。
【図17】LNCaP細胞におけるJ591ミニボディの内在化を示す代表画像である。LNCaP細胞は、12ウェルプレートでポリ-d-リジン被覆カバースリップに播種された。増殖2日後、細胞は、1次抗体またはミニボディと共に30分間4℃でインキュベーションする前に30分間4℃で予冷された。第1インキュベーション後の指定された時点で、細胞は固定され、透過処理され、および2次抗ヒトIgG-アレクサ488で染色された。カバースリップがスライドに同時にマウントされ、および封入剤内のDAPIで対比染色された。スライドは、Leica SP2-1P-FCS共焦点顕微鏡で63×油浸レンズを用いて調べられた。
【図18】CWR22rv1細胞におけるJ591ミニボディの内在化を示す代表画像である。CWR22rv1細胞は、12ウェルプレートでポリ-d-リジン被覆カバースリップに播種された。増殖2日後、細胞は、1次抗体またはミニボディと共に30分間4℃でインキュベーションする前に30分間4℃で予冷された。第1インキュベーション後の指定された時点で、細胞は固定され、透過処理され、および2次抗ヒトIgG-アレクサ488で染色された。カバースリップがスライドに同時にマウントされ、および封入剤内のDAPIで対比染色された。スライドは、Leica SP2-1P-FCS共焦点顕微鏡で63×油浸レンズを用いて調べられた。
【図19】131I標識および111In-DOTA標識J591ミニボディの細胞関連放射能の取り込みおよび保持を図示するグラフである。CWR22rv1細胞への結合時の経時的な細胞関連放射能の取り込みおよび保持。細胞膜、細胞溶解物(内在化)、および合計(膜+内在化)画分からの放射能は、カウント毎分(cpm)として表される。CWR22rv1細胞は、実験の前日に5x105細胞/ウェルで24ウェルプレートに播種された。細胞は、過剰の(A) 131I標識または(B) 111In-DOTA標識J591ミニボディと共に、インキュベーション前に4℃で予冷された。各時点で、放射性標識ミニボディを含有する上清が除去され、細胞は酸性グリシン緩衝液でストリッピングされて膜画分を得、細胞が溶解された。各時点は3通りに行われた。Yバーは標準偏差を表す。
【図20】131I標識対111In-DOTA標識J591ミニボディの細胞関連放射能を比較するグラフである。CWR22rv1細胞への結合時の経時的な初期細胞関連放射能のパーセンテージとして表された合計細胞関連放射能(膜+内在化)。このプロットは、131I標識(下の線)および111In-DOTA標識J591ミニボディ(上の線)の両方を示す。
【図21】図21A:64Cu-DOTA-J591ミニボディを注入されたCWR22rv1およびPC3異種移植片を有するマウスの代表的な連続マイクロPET/CT画像を図示する図である。代表的なマウスが注入後複数回連続スキャンされた。CWR22rv1腫瘍は(+)腫瘍として、PC3腫瘍は(-)腫瘍として表されている。注入後4時間でのCTスキャンを示す図である。冠状および横断面が示されている。図21B:64Cu-DOTA-J591ミニボディを注入されたCWR22rv1およびPC3異種移植片を有するマウスの代表的な連続マイクロPET/CT画像を図示する図である。代表的なマウスが注入後複数回連続スキャンされた。CWR22rv1腫瘍は(+)腫瘍として、PC3腫瘍は(-)腫瘍として表されている。注入後4時間でのPET/CTオーバーレイ画像を示す図である。冠状および横断面が示されている。図21C:64Cu-DOTA-J591ミニボディを注入されたCWR22rv1およびPC3異種移植片を有するマウスの代表的な連続マイクロPET/CT画像を図示する図である。代表的なマウスが注入後複数回連続スキャンされた。CWR22rv1腫瘍は(+)腫瘍として、PC3腫瘍は(-)腫瘍として表されている。注入後4時間での代表的なマウスの冠状PET/CTオーバーレイ3D投影を示す図である。図21D:64Cu-DOTA-J591ミニボディを注入されたCWR22rv1およびPC3異種移植片を有するマウスの代表的な連続マイクロPET/CT画像を図示する図である。代表的なマウスが注入後複数回連続スキャンされた。CWR22rv1腫瘍は(+)腫瘍として、PC3腫瘍は(-)腫瘍として表されている。注入後43時間での代表的なマウスの冠状PET/CTオーバーレイ3D投影を示す図である。
【図22】注入後19時間および43時間での64Cu-DOTA-J591ミニボディの体内分布を図示する棒グラフである。目的とする異種移植片腫瘍および選択された正常組織における64Cu-DOTA-J591ミニボディの体内分布をプロットするグラフ。体内分布は、重量(g)で割られた注入量の%としてプロットされている(%ID/g)。各データポイントは、注入後19時間(n=8)および43時間(n=4)でのマウス群の平均%ID/gを表す。誤差バーは標準偏差を表す。
【図23】図23A:124I-J591ミニボディを注入されたCWR22rv1およびPC3異種移植片を有するマウスの代表的な連続マイクロPET画像を図示する図である。代表的なマウスが注入後複数回連続スキャンされた。CWR22rv1腫瘍は(+)腫瘍として、PC3腫瘍は(-)腫瘍として表されている。注入後4時間でのCTスキャンを示す図である。冠状および横断面が示されている。図23B:124I-J591ミニボディを注入されたCWR22rv1およびPC3異種移植片を有するマウスの代表的な連続マイクロPET画像を図示する図である。代表的なマウスが注入後複数回連続スキャンされた。CWR22rv1腫瘍は(+)腫瘍として、PC3腫瘍は(-)腫瘍として表されている。注入後4時間でのPET/CTオーバーレイ画像を示す図である。冠状および横断面が示されている。図23C:124I-J591ミニボディを注入されたCWR22rv1およびPC3異種移植片を有するマウスの代表的な連続マイクロPET画像を図示する図である。代表的なマウスが注入後複数回連続スキャンされた。CWR22rv1腫瘍は(+)腫瘍として、PC3腫瘍は(-)腫瘍として表されている。注入後4、20、および44時間での冠状PET/CTオーバーレイ画像を示す図である。
【図24】注入後19時間および44時間での124I-J591ミニボディの体内分布を図示する棒グラフである。目的とする異種移植片腫瘍および選択された正常組織における124I-J591ミニボディの体内分布をプロットするグラフ。体内分布は、重量(g)で割られた注入量の%として表されている(%ID/g)。各データポイントは、注入後19時間および44時間でのマウス群(19時間でn=4、44時間でn=2)の平均%ID/gを表す。誤差バーは標準偏差を表す。
【図25】一過性トランスフェクトCHO-K1細胞における以下のミニボディバリアント: (1) J591 HC VLVHミニボディ(J591 VLVH Mb)、(2) J591 HC VHVLミニボディ(J591 VHVL Mb)、(3) J591 2P VLVHミニボディ(J591 VLVH** Mb)および(4) J591 2P VHVLミニボディ(J591 VHVL** Mb)の発現レベルを図示する棒グラフである。huJ591 HC VHVLは、一過性トランスフェクションからの最も高い発現(6.7pg/mL)を示した。
【図26】64Cu-DOTA-J591ミニボディの注入後4時間、20時間および43時間での体内分布比(すなわち、組織に対する陽性腫瘍比)を示す棒グラフである。体内分布比には、肝臓(Liv)、腎臓(Kid)および軟組織(Soft)と比較された陽性腫瘍(Pos)の比が含まれた。誤差バーは平均標準誤差(SEM)を表す。
【図27】124I-J591ミニボディの注入後4時間、20時間および43時間での体内分布比(すなわち、組織に対する陽性腫瘍比)を示す棒グラフである。体内分布比には、肝臓(Liv)、腎臓(Kid)および軟組織(Soft)と比較された陽性腫瘍(Pos)の比が含まれた。誤差バーは平均標準誤差(SEM)を表す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本開示は、前立腺特異的膜抗原(PSMA)をターゲッティングする抗体または機能的抗体フラグメントに関する。PSMA抗体またはこの機能的抗体フラグメントは、抗PSMAコンジュゲートを形成するのに診断剤、治療剤またはナノ粒子などの物質にコンジュゲートすることができる。同様に開示されるのは、PSMAの過剰発現に関連する癌または他の状態を診断、可視化、モニタリング、または治療するためのPSMA抗体、機能的PSMA抗体フラグメントまたは抗PSMAコンジュゲートの使用を含む方法である。
【0022】
PSMA抗体およびこの機能的フラグメント
PSMA抗体または機能的PSMA抗体フラグメントが、本明細書に記載された実施形態により本明細書で提供される。PSMA抗体または機能的抗体フラグメントは、PSMAに特異的に結合する、またはPSMAと免疫学的に反応する免疫グロブリンまたは免疫グロブリン関連分子の1つもしくは複数の部分を含む分子である。用語「修飾抗体」には、細胞内抗体、キメラ抗体、完全ヒト抗体、ヒト化抗体、およびヘテロコンジュゲート抗体(例えば、二重特異性抗体、ダイアボディ、トリアボディ、およびテトラボディ)など、免疫グロブリンの遺伝子改変形態または他の修飾形態が含まれるが、これらに限定されない。用語「機能的抗体フラグメント」には、Fab'、F(ab')2、Fab、Fv、rIgG、scFvフラグメント、単一ドメインフラグメント、ペプチボディ、ミニボディおよびcysダイアボディを含むがこれらに限定されない、抗体の1つもしくは複数の抗原結合フラグメント単独または他の分子との組み合わせが含まれる。用語scFvとは、伝統的な二本鎖抗体の重鎖および軽鎖の可変ドメインが結合されて一本鎖を形成する一本鎖Fv抗体を指す。
【0023】
1つの実施形態では、修飾抗体または機能的抗体フラグメントは、抗PSMAミニボディである。1つの実施形態では、抗PSMA抗体はJ591ミニボディである。抗PSMAミニボディは、下記のようなin vivoイメージングおよび体内分布に対して最適化された薬力学的特性を有する抗PSMA抗体フラグメントを有する。「ミニボディ」は、各単量体が、ヒンジ配列などのリンカーによりヒトIgG1 CH3ドメインに連結された一本鎖可変フラグメント(scFv)である、ホモ二量体である。1つの実施形態では、ヒンジ配列はヒトIgG1ヒンジ配列(EPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGP; 配列番号16)である。別の実施形態では、ヒンジ配列は人工ヒンジ配列である。人工ヒンジ配列は、ヒトIgG1ヒンジの一部およびGlySerリンカー配列を含んでもよい。1つの実施形態では、人工ヒンジ配列は、ヒトIgG1ヒンジのほぼ最初の14または15残基と、これに続く8、9または10アミノ酸長であるGlySerリンカー配列を含む。別の実施形態では、人工ヒンジ配列は、IgG1ヒンジのほぼ最初の15残基と、これに続く10アミノ酸長であるGlySerリンカー配列を含む。
【0024】
scFvは、VHVLまたはVLVH配向を有することができ、VHVL配向は、scFvの可変重鎖ドメイン(VH)が可変軽鎖領域(VL)から上流であることを意味し、VLVH配向は、scFvのVLがVHから上流であることを意味する。本明細書では、「上流」は、アミノ酸のN末端に向かって、またはヌクレオチド配列の5'末端に向かってという意味である。VHおよびVLは、アミノ酸リンカー配列により互いに連結されている。アミノ酸リンカーは、任意の適切な長さであることができる。1つの実施形態では、リンカーはGly-Serリッチであり、および約15〜20アミノ酸長である。別の実施形態では、リンカーはGly-Serリッチであり、および18アミノ酸長である。
【0025】
本明細書に記載された実施形態によれば、抗PSMAミニボディの各単量体は、N末端からC末端に、以下のエレメント、すなわち、(a) PSMAに結合することができるscFv配列、(b)人工ヒンジ配列、および(c)ヒトIgG CH3配列を含むヌクレオチド配列によりコードされてもよい。ミニボディは、本明細書に記載のような細胞、細胞系または他の適切な発現系により発現することができる。故に、シグナル配列は、細胞または細胞系で発現される時にミニボディの分泌を可能にするようにscFvのN末端に融合され得る。幾つかの実施形態では、ヌクレオチド配列は配列番号1または配列番号2である。細胞または細胞系により発現される時、ヌクレオチドは転写され、アミノ酸配列に翻訳される。幾つかの実施形態では、発現アミノ酸配列は配列番号10または配列番号11である。
【0026】
別の実施形態では、修飾抗体または機能的抗体フラグメントは、抗PSMA cysダイアボディ(CysDB)であり、抗PSMA cysダイアボディ(CysDB)が提供される。「ダイアボディ」は、第1のポリペプチド鎖上で2つのドメイン間の対合を可能にするには短過ぎるペプチドリンカーにより結合された第1のポリペプチド鎖(VH-VL)において、軽鎖可変ドメイン(VL)に結合された重(VH)鎖可変ドメインを含む第1のポリペプチド鎖、ならびに第2のポリペプチド鎖上で2つのドメイン間の対合を可能にするには短過ぎるペプチドリンカーにより結合された第2のポリペプチド鎖(VL-VH)において、重鎖可変ドメインVHに連結された軽鎖可変ドメイン(VL)を含む第2のポリペプチド鎖を含む。短い連結は、第1および第2のポリペプチド鎖の相補的ドメイン間の鎖対合を強制し、ならびに2つの機能的抗原結合部位を有する二量体分子のアセンブリを促進する。したがって、ペプチドリンカーは、このようなアセンブリを促進する任意の適切な長さ、例えば、5から10アミノ酸長の間であってもよい。以下にさらに記載されるように、幾つかのcysダイアボディは、5または8アミノ酸長であるペプチドリンカーを含んでもよい。抗PSMA CysDBは、おおよその分子量55kDaを有する一本鎖Fv (scFv)フラグメントを含む2つの同一単量体により形成されるホモ二量体抗体フォーマットである。1つの実施形態では、抗PSMAはJ591 CysDBである。上記抗PSMAミニボディと同様に、本明細書に記載された抗PSMA CysDBは、in vivoイメージングおよび体内分布に使用することができる最適化された薬力学的特性を有する抗PSMA抗体フラグメントを有する。
【0027】
本明細書に記載された実施形態によれば、CysDBの各単量体は、N末端からC末端に、以下のエレメント、すなわち、(a) PSMAに結合することができるscFv配列、(b)システインテールを含むヌクレオチド配列によりコードされてもよい。CysDBは、本明細書に記載のような細胞または細胞系により発現することができる。故に、シグナル配列は、細胞または細胞系で発現される時にミニボディの分泌を可能にするようにscFvのN末端に融合され得る。幾つかの実施形態では、ヌクレオチド配列は、配列番号6、配列番号7、配列番号8または配列番号9である。細胞または細胞系により発現される時、ヌクレオチドは転写され、アミノ酸配列に翻訳される。幾つかの実施形態では、発現アミノ酸配列は、配列番号12、配列番号13、配列番号14または配列番号15である。
【0028】
幾つかの実施形態によれば、CysDB scFv配列は、上記ミニボディscFv配列に類似する。故に、scFvは、VHVLまたはVLVH配向を有することができ、VHVL配向は、scFvの可変重鎖ドメイン(VH)が可変軽鎖領域(VL)から上流であることを意味し、VLVH配向は、scFvのVLがVHから上流であることを意味する。抗体可変領域は、上記のようなGlySerリンカーにより結合される。システインテール(Gly-Gly-Cys)は、C末端に付着される。このシステインテールは、ダイアボディ複合体が共有システイン結合を形成できるようにし、および放射性標識などの機能的部分の部位特異的コンジュゲーションに対し利用可能な硫黄残基の選択肢を提供する。
【0029】
複数のCysDBが、CEA、Her2 (トラスツズマブ/ハーセプチン(登録商標))、PSCA、およびCD20(リツキシマブ/リツキサン(登録商標))を含む種々の標的に対するさまざまな親抗体から成功裏に改変された。CysDBフォーマットの種々のバリエーションは、結合および発現レベルに関して最も高い見込みを示す4つの特定のバージョンにより評価された。個々の抗体ごとに、重および軽鎖可変ドメインは異なる様式で結合する。このため、異なるリンカー長の使用は、立体構造的柔軟性および可動域を可能にしてジスルフィド結合の形成を確保する。幾つかの実施形態では、2つのリンカー長バリアントは、5アミノ酸リンカーまたは8アミノ酸リンカーのどちらかを有する。各リンカー長バリアントは、適正な折り畳みおよび安定性が達成されるのを確保するために両方の配向(VL-リンカー-VH-CysテールおよびVH-リンカー-VL-Cysテール)を用いて開発することができる。幾つかの実施形態によれば、本明細書に記載された方法において使用することができる4つのCysDBバリアント、すなわち、VH5VL、VH8VL、VL5VH、およびVL8VHが構築された(図6〜9参照)。各CysDBバリアントは成功裏に発現されたが、結果は使用された親抗体に応じて変わる可能性がある。全4つのバリアントの発現および結合を生成およびテストすることは、各新規CysDBに対するタンパク質産生の最適なフォーマットの同定を確保する。バリアントのセットの評価は、ジスルフィド結合が得られる、高品質の安定なタンパク質が産生されるのを確保するのに重要である。したがって、CysDBの改変は、2つの異なるリンカー長を用いて、ミニボディにおけるような1配向ではなく、可変領域の両方の配向、VH/VLおよびVL/VHも実際に伴う。
【0030】
幾つかの実施形態では、哺乳動物細胞系(例えば、CHO-K1細胞系)は、本明細書に記載されたミニボディ、cysダイアボディまたは他の抗体フラグメントを産生する発現系として使用することができる。しかし、本明細書に記載されたミニボディ、cysダイアボディおよび他の抗体フラグメントは、非グリコシル化されているため、哺乳動物発現系である細胞系または細胞発現は必要とされず、このため翻訳後修飾は必要とされない。このため、哺乳動物発現系(例えば、CHO-K1細胞)、細菌発現系(例えば、大腸菌(E. Coli)、枯草菌(B. subtilis))、酵母発現系(例えば、ピキア、サッカロマイセス・セレヴィシエ(S. cerevisiae))または任意の他の既知の発現系を含むがこれらに限定されない、多種多様な哺乳動物および非哺乳動物発現系が、本開示の実施形態によるPSMA抗体フラグメント(例えば、抗PSMAミニボディおよびcysダイアボディ)を産生するのに使用され得る。
【0031】
以下の実施例で詳細に記載のように、svFv領域が異なる4つのミニボディバリアントが作製され、およびCHO-K1細胞で発現された。PSMAへの特異的結合は、ELISAおよびフローサイトメトリーにより実証された。高い発現およびPSMA結合(J591 HC VHVL)を有するバリアントの1つが、タンパク質産生、精製およびさらなる評価のために選択された。J591 HC VHVLミニボディのタンパク質産生は、下記内在化およびマイクロPETイメージング実験用の十分な量を産生するのに成功裏にスケールアップされた。
【0032】
J591ミニボディの共焦点顕微鏡試験は、インタクトなhuJ591 mAbのものに類似した、CWR22rv1およびLNCaP細胞における細胞内染色の経時的な増加を示し、J591ミニボディが迅速な内在化を起こすことを示唆した。J591ミニボディの内在化をさらに評価するため、2つの放射性標識戦略、すなわち、I-131による放射性ヨウ素化およびIn-111放射性金属標識のためのDOTAコンジュゲーションが使用された。111In-DOTA J591ミニボディは、3時間にわたり細胞関連放射能の260%増加を示した。対照的に、131I-J591ミニボディの初期細胞結合は、この後、初期放射能の80%まで著しく減少した。
【0033】
J591ミニボディは、PSMA+細胞系CWR22rv1およびLNCaPへの結合時に迅速に内在化される。131I標識J591ミニボディについては、合計細胞関連放射能は経時的に減少し、131I-J591ミニボディの脱ハロゲン化ならびに/または細胞からの迅速な代謝および放出に起因しているらしい標識の減少を示唆した。対照的に、111In-DOTA-J591ミニボディの合計細胞関連放射能は、経時的に著しく増加し(約2.5倍)、これはリソソームにトラップされている残留化標識(residualizing label)と一致する。合計細胞関連放射能の経時的な持続性に基づき、残留化111In-DOTA放射性標識戦略は、内在化PSMA抗原のin vivoイメージングに適切なアプローチであるように思われた。
【0034】
抗PSMA誘導体およびコンジュゲート
幾つかの実施形態では、PSMA抗体または機能的抗体フラグメントは、修飾される抗体誘導体を含んでもよい。例えば、抗体誘導体には、グリコシル化、アセチル化、ペグ化、リン酸化、アミド化、既知の保護/ブロッキング基による誘導体化、タンパク質分解切断、および細胞リガンドまたは他のタンパク質への連結により修飾された抗体が含まれるが、これらに限定されない。数多くの化学的修飾はいずれも、既知の技法(特定の化学的切断、アセチル化、ホルミル化およびツニカマイシンの代謝合成を含むが、これらに限定されない)により実行することができる。さらに、誘導体は、1つまたは複数の非天然アミノ酸を含有してもよい。
【0035】
他の実施形態では、PSMA抗体または機能的抗体フラグメントは、別の物質にコンジュゲートされて抗PSMAコンジュゲートを形成することができる。本明細書に記載された抗PSMAコンジュゲートは、脂質、炭水化物、タンパク質または他の原子および分子と抗体を連結させる既知の方法により調製することができる。1つの態様では、抗PSMAコンジュゲートは、適切な連結(linkage)または結合(bond)を用いた部位特異的コンジュゲーションにより形成される。部位特異的コンジュゲーションは、抗体または機能的抗体フラグメントの結合活性を保存する可能性がより高い。物質は、ジスルフィド結合形成を介して還元抗体成分または抗体フラグメントのヒンジ領域でコンジュゲートまたは付着することができる。例えば、上記cysダイアボディに導入されるものなど、scFvフラグメントのC末端でのシステイン残基の導入は、多種多様な作用剤への抗原結合部位から離れた部位での部位特異的チオール反応性カップリングを可能にする。あるいは、抗PSMAコンジュゲートを形成するのに使用される他の連結または結合には、共有結合、非共有結合、スルフィド連結、ヒドラゾン連結、ヒドラジン連結、エステル連結、アミド連結、およびアミノ連結、イミノ連結、チオセミカルバゾン連結、セミカルバゾン連結、オキシム連結および炭素-炭素連結が含まれ得るが、これらに限定されない。
【0036】
1つの実施形態では、抗PSMAコンジュゲートは、診断剤にコンジュゲートされたPSMA抗体または機能的PSMA抗体フラグメントを含んでもよい。「診断剤」は、疾患を診断、検出または可視化するのに有用である原子、分子、または化合物である。本明細書に記載された実施形態によれば、診断剤には、放射性物質(例えば、放射性同位体、放射性核種、放射性標識または放射性トレーサー)、色素、造影剤、蛍光化合物または分子、生物発光化合物または分子、酵素および増強剤(例えば、常磁性イオン)が含まれ得るが、これらに限定されない。さらに、幾つかのナノ粒子、例えば量子ドットおよび金属ナノ粒子(下記)も、検出剤としての使用に適する可能性があることは留意されるべきである。
【0037】
本開示の実施形態により診断剤として使用することができる放射性物質には、18F、32P、33P、45Ti、47Sc、52Fe、59Fe、62Cu、64Cu、67Cu、67Ga、68Ga、75Sc、77As、86Y、90Y、89Sr、89Zr、94Tc、94Tc、99mTc、99Mo、105Pd、105Rh、111Ag、111In、123I、124I、125I、131I、142Pr、143Pr、149Pm、153Sm、154-1581Gd、161Tb、166Dy、166Ho、169Er、175Lu、177Lu、186Re、188Re、189Re、194lr、198Au、199Au、211At、211Pb、212Bi、212Pb、213Bi、223Raおよび225Acが含まれるが、これらに限定されない。本開示の実施形態により診断剤として使用することができる常磁性イオンには、遷移およびランタニド金属(例えば6から9、21〜29、42、43、44、または57〜71の原子数を有する金属)のイオンが含まれるが、これらに限定されない。これらの金属には、Cr、V、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、YbおよびLuのイオンが含まれる。
【0038】
診断剤が放射性金属または常磁性イオンである場合、該剤は、これらのイオンに結合するためのロングテールに付着された1つまたは複数のキレート基を有する該ロングテールを有する試薬と反応することができる。ロングテールは、イオンに結合するためのキレート基に結合することができるペンダント基を有するポリリジン鎖、多糖鎖、または他の誘導体化されたもしくは誘導体化可能な鎖などのポリマーであってもよい。本開示により使用することができるキレート基の例には、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、DOTA、NOTA、NETA、ポルフィリン、ポリアミン、クラウンエーテル、ビスチオセミカルバゾン、ポリオキシム、および類似の基が含まれるが、これらに限定されない。キレート剤は、通常は、免疫反応性の減少が最小限ならびに凝集および/または内部架橋が最小限の状態で分子への結合の形成を可能にする基により、PSMA抗体または機能的抗体フラグメントに連結される。マンガン、鉄およびガドリニウムなどの非放射性金属と複合される場合、同じキレート剤は、本明細書に記載された抗体および担体と一緒に使用される場合にMRIに有用である。NOTA、DOTA、およびTETAなどの大環状キレート剤は、それぞれ、ガリウム、イットリウムおよび銅の放射性核種を含むがこれらに限定されないさまざまな金属および放射性金属と共に、有用である。RAIT用の223Raなどの核種に安定に結合するための目的とする、大環状ポリエーテルなどの他のリング型キレート剤が使用されてもよい。特定の実施形態では、キレート部分は、AI-18F複合体などのPET分析で使用するターゲッティング分子にPETイメージング剤を付着させるのに使用することができる。
【0039】
本開示の実施形態により診断剤として使用することができる造影剤には、バリウム、ジアトリゾ酸、エチルヨウ化油(ethiodized oil)、クエン酸ガリウム、イオカルム酸、イオセタム酸、ヨーダミド、ヨージパミド、ヨードキサム酸、イオグラミド(iogulamide)、イオヘキソール、イオパミドール、イオパノ酸、イオプロセム酸(ioprocemic acid)、イオセファム酸(iosefamic acid)、イオセル酸(ioseric acid)、イオスラミドメグルミン(iosulamide meglumine)、イオセメチン酸(iosemetic acid)、イオタズル(iotasul)、イオテトル酸(iotetric acid)、イオタラム酸、イオトロクス酸、イオキサグル酸、イオキソトリゾ酸(ioxotrizoic acid)、イポダート、メグルミン、メトリザミド、メトリゾ酸、プロピリオドン、塩化タリウム(thallous chloride)、またはこれらの組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。
【0040】
本開示の実施形態により診断剤として使用することができる生物発光化合物および蛍光化合物または分子ならびに色素には、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、オレゴングリーン(商標)、ローダミン、テキサスレッド、テトラローダミンイソチオシアネート(TRITC)、Cy3、Cy5等、蛍光マーカー(例えば、緑色蛍光タンパク質(GFP)、フィコエリスリン等)、腫瘍関連プロテアーゼにより活性化される自己消光蛍光化合物、酵素(例えば、ルシフェラーゼ、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ等)、ナノ粒子、ビオチン、ジゴキシゲニンまたはこれらの組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。
【0041】
本開示の実施形態により診断剤として使用することができる酵素には、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、酸性ホスファターゼ、グルコースオキシダーゼ、β-ガラクトシダーゼ、β-グルコロニダーゼ(β-glucoronidase)またはβ-ラクタマーゼが含まれるが、これらに限定されない。このような酵素は、検出可能なシグナルを生成するための色素原、蛍光発生化合物または発光発生(luminogenic)化合物と組み合わせて使用することができる。
【0042】
別の実施形態では、抗PSMAコンジュゲートは、治療剤に結合されたPSMA抗体または機能的PSMA抗体フラグメントを含んでもよい。本明細書では「治療剤」は、PSMAに関連した癌または他の状態の治療に有用である原子、分子、または化合物である。治療剤の例には、薬剤、化学治療剤、治療抗体および抗体フラグメント、毒素、放射性同位体、酵素(例えば、腫瘍の部位でプロドラッグを細胞毒性剤に切断する酵素)、ヌクレアーゼ、ホルモン、免疫調節物剤、アンチセンスオリゴヌクレオチド、キレート剤、ホウ素化合物、光活性剤および色素が含まれるが、これらに限定されない。
【0043】
化学治療剤は、天然には細胞毒性または細胞増殖抑制であることが多く、およびアルキル化剤、代謝拮抗剤、抗腫瘍性抗生物質、トポイソメラーゼ阻害剤、有糸分裂阻害剤、ホルモン療法、標的治療法および免疫治療法が含まれ得る。幾つかの実施形態では、本開示の実施形態により診断剤として使用することができる化学治療剤には、13-シス-レチノイン酸、2-クロロデオキシアデノシン、5-アザシチジン、5-フルオロウラシル、6-メルカプトプリン、6-チオグアニン、アクチノマイシン-D、アドリアマイシン、アルデスロイキン、アレムツズマブ、アリトレチノイン、オールトランスレチノイン酸、アルファインターフェロン、アルトレタミン、アメトプテリン、アミホスチン、アナグレリド、アナストロゾール、アラビノシルシトシン、三酸化ヒ素、アムサクリン、アミノカンプトテシン、アミノグルテチミド、アスパラギナーゼ、アザシチジン、カルメット-ゲラン桿菌(BCG)、ベンダムスチン、ベバシズマブ、ベキサロテン、ビカルタミド、ボルテゾミブ、ブレオマイシン、ブスルファン、ロイコボリンカルシウム、シトロボラム因子、カペシタビン、カネルチニブ、カルボプラチン、カルムスチン、セツキシマブ、クロラムブシル、シスプラチン、クラドリビン、コルチゾン、シクロホスファミド、シタラビン、ダルベポエチンアルファ、ダサチニブ、ダウノマイシン、デシタビン、デニロイキンジフチトクス、デキサメタゾン、デキサゾン、デクスラゾキサン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デカルバジン(decarbazine)、ドセタキセル、ドキソルビシン、ドキシフルリジン、エニルウラシル、エピルビシン、エポエチンアルファ、エルロチニブ、エベロリムス、エキセメスタン、エストラムスチン、エトポシド、フィルグラスチム、フルオキシメステロン、フルベストラント、フラボピリドール、フロクスウリジン、フルダラビン、フルオロウラシル、フルタミド、ゲフィチニブ、ゲムシタビン、ゲムツズマブオゾガマイシン、ゴセレリン、顆粒球コロニー刺激因子、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子、ヘキサメチルメラミン、ヒドロコルチゾン、ヒドロキシウレア、イブリツモマブ、インターフェロンアルファ、インターロイキン2、インターロイキン11、イソトレチノイン、イキサベピロン、イダルビシン、メシル酸イマチニブ、イホスファミド、イリノテカン、ラパチニブ、レナリドマイド、レトロゾール、ロイコボリン、ロイプロリド、リポソームAra-C(liposomal Ara-C)、ロムスチン、メクロレタミン、メゲストロール、メルファラン、メルカプトプリン、メスナ、メトトレキサート、メチルプレドニゾロン、マイトマイシンC、ミトタン、ミトキサントロン、ネララビン、ニルタミド、オクトレオチド、オプレルベキン、オキサリプラチン、パクリタキセル、パミドロネート、ペメトレキセド、パニツムマブ、PEGインターフェロン、ペグアスパラガーゼ、ペグフィルグラスチム、PEG-L-アスパラギナーゼ、ペントスタチン、プリカマイシン、プレドニゾロン、プレドニゾン、プロカルバジン、ラロキシフェン、リツキシマブ、ロミプロスチム、ラリトレキセド(ralitrexed)、サパシタビン、サルグラモスチム、サトラプラチン、ソラフェニブ、スニチニブ、セムスチン、ストレプトゾシン、タモキシフェン、テガフール、テガフール-ウラシル、テムシロリムス、テモゾラミド(temozolamide)、テニポシド、サリドマイド、チオグアニン、チオテパ、トポテカン、トレミフェン、トシツモマブ、トラスツズマブ、トレチノイン、トリミトレキサート(trimitrexate)、バルルビシン、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビンデシン、ビノレルビン、ボリノスタット、またはゾレドロン酸が含まれるが、これらに限定されない。
【0044】
本開示の実施形態により診断剤として使用することができる治療抗体およびこの機能的フラグメントには、アレムツズマブ、ベバシズマブ、セツキシマブ、エドレコロマブ、ゲムツズマブ、イブリツモマブチウキセタン、パニツムマブ、リツキシマブ、トシツモマブ、およびトラスツズマブが含まれるが、これらに限定されない。
【0045】
本開示の実施形態により診断剤として使用することができる毒素には、リシン、アブリン、リボヌクレアーゼ(RNアーゼ)、DNアーゼI、ブドウ球菌エンテロトキシンA、ヤマゴボウ抗ウイルスタンパク質、ゲロニン、ジフテリア毒素、シュードモナス外毒素、およびシュードモナス内毒素が含まれるが、これらに限定されない。
【0046】
本開示の実施形態により診断剤として使用することができる放射性同位体には、32P、89Sr、90Y、99mTc、99Mo、131I、153Sm、177Lu、186Re、213Bi、223Raおよび225Acが含まれるが、これらに限定されない。
【0047】
別の実施形態では、抗PSMAコンジュゲートは、ナノ粒子にコンジュゲートされたPSMA抗体または機能的PSMA抗体フラグメントを含んでもよい。用語「ナノ粒子」とは、サイズがナノメートルで測定される微視的粒子、例えば、少なくとも1つの次元が約100nm未満の粒子を指す。ナノ粒子は、可視光を吸収するよりむしろ散乱させるのに十分な小ささであるため、検出可能な物質として特に有用である。例えば、金ナノ粒子は、著しい可視光消光特性を有し、溶液中では深紅から黒に見える。この結果、ナノ粒子にコンジュゲートされたPSCA特異的抗体またはフラグメントを含む組成物は、被験者における腫瘍または癌性細胞のin vivoイメージングに使用することができる。粒径範囲の小端では、ナノ粒子はクラスターと呼ばれることが多い。金属、誘電体、および半導体ナノ粒子が形成されているほか、ハイブリッド構造(例えばコアシェルナノ粒子)も形成されている。ナノスフェア、ナノロッド、およびナノカップ(nanocup)は、成長した形状のほんの幾つかである。半導体量子ドットおよびナノ結晶は、別のタイプのナノ粒子の例である。PSMA抗体または機能的抗体フラグメントにコンジュゲートされた場合、このようなナノスケールの粒は、上記のような腫瘍細胞のin vivo検出用のイメージング剤として使用することができる。あるいは、ナノ粒子は、本発明のPSCA特異的抗体またはフラグメントに結合された場合、細胞表面でPSCAを過剰発現する癌性細胞に、化学治療剤、ホルモン治療剤、放射線治療剤、毒素、または当技術分野で既知の任意の他の細胞毒性剤もしくは抗癌剤を送達する薬剤担体として治療適用において使用することができる。
【0048】
上記抗PSMAコンジュゲートいずれも、1つもしくは複数の追加の治療剤、診断剤、ナノ粒子、担体またはこれらの組み合わせとさらにコンジュゲートすることができる。例えば、PSMA抗体または機能的PSMA抗体フラグメントは、131Iを有する放射性標識であってもよく、および抗PSMA-脂質コンジュゲートがミセルを形成するように脂質担体にコンジュゲートされてもよい。ミセルは、1つもしくは複数の治療または診断剤を取り込むことができる。あるいは、担体に加えて、PSMA抗体または機能的PSMA抗体フラグメントは、131I (例えば、チロシン残基で)および薬剤(例えば、リジン残基のイプシロンアミノ基で)にコンジュゲートされてもよく、担体が追加の治療または診断剤を取り込んでもよい。
【0049】
癌を診断、病期分類およびモニタリングする方法
PSMA抗体、機能的PSMA抗体フラグメントまたは抗PSMAコンジュゲートは、PSMAを過剰発現する癌細胞などのPSMA陽性細胞をターゲッティングするのに使用することができる。したがって、PSMA発現に関連する癌または他の状態を診断、検出、可視化、モニタリングまたは治療する方法は、PSMA抗体、機能的PSMA抗体フラグメントまたは抗PSMAコンジュゲートを、癌またはPSMA発現に関連する他の状態を有するまたは有することが疑われる被験者に投与するステップを含み得る。本明細書では、用語「被験者」とは、ヒト、ヒト以外の霊長類、齧歯類、イヌ、ブタ等を含むがこれらに限定されない任意の動物(例えば、哺乳動物)を指す。
【0050】
PSMA発現に関連する癌には、PSMAを過剰発現する癌腫瘍組織を有するもの(例えば、前立腺癌)またはPSMAを過剰発現する固形腫瘍新生血管系を有するもの(例えば、前立腺癌、肺癌、結腸(または結腸直腸)癌、乳癌、腎臓癌、肝臓癌、膀胱癌および膵臓癌ならびに肉腫およびメラノーマ)が含まれ得る。ほとんどの固形腫瘍新生血管系はPSMAを発現し、PSMAを新生血管系バイオマーカーにする。故に、PSMAを発現する癌細胞に加えて、PSMA発現に関連する癌には、前立腺癌、肺癌、結腸(または結腸直腸)癌、乳癌、腎臓癌、肝臓癌、膀胱癌および膵臓癌ならびに肉腫およびメラノーマなどの癌腫を含むがこれらに限定されない、新生血管系を有するいずれの癌組織も含まれ得る。
【0051】
1つの実施形態では、PSMA発現に関連する癌を診断、検出、可視化またはモニタリングする方法は、診断的抗PSMAコンジュゲートを、癌を有するまたは有することが疑われる被験者に投与するステップを含む。診断的抗PSMAコンジュゲートは、上記のような1つもしくは複数の診断剤にコンジュゲートされたPSMA抗体または機能的PSMA抗体フラグメントを含む。1つの実施形態では、PSMA抗体、または機能的PSMA抗体フラグメントは、本明細書に記載されたようなJ591ミニボディおよびJ591 CysDBなどのJ591抗体由来のミニボディまたはCysDBである。診断的抗PSMAコンジュゲートは、治療的抗PSMAコンジュゲート(下記のような)、非コンジュゲート治療剤、対照液、担体脂質またはナノ粒子などの、本明細書に記載された1つもしくは複数の追加の物質にコンジュゲートまたは結合されてもよい。
【0052】
上記方法において使用される診断的抗PSMAコンジュゲートは、in vivoもしくはin vitro検出または可視化方法に適している。1つの実施形態では、in vitro診断または予後アッセイは、正常(すなわち、非癌性)または対照組織試料(すなわち、既知の癌性または良性組織試料)と比較して、PSMAに関連する癌を有するまたは有することが疑われる被験者から採取された組織試料中のPSMAの発現レベルを判定するために行われるであろう。このような発現レベルを判定するさまざまなアッセイが企図され、および該アッセイには、免疫組織化学法、蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)法および脱落抗原アッセイ法、サザンブロッティング法、またはPCR法が含まれる。
【0053】
別の実施形態では、診断的抗PSMAコンジュゲートは、被験者の身体のトポグラフィー内の標的細胞を可視化するin vivoイメージング法により使用することができる。本明細書に記載された方法により、被験者がPSMA発現に関連する癌を有することを判定することは、標識ミニボディまたはCysDBを可視化して達成され、可視化された標識ミニボディまたはCysDBは、腫瘍部位に局在化する。PSMA発現に関連する癌の診断に加えて、PSMAミニボディは、上記のものに類似する方法により、病期分類、および癌の進行をモニタリングするのに使用することもできる。
【0054】
本明細書に記載された方法により使用することができるin vivoイメージングの適切な方法には、核磁気共鳴画像法(MRI)、陽電子放出断層撮影法(PET)またはマイクロPET、コンピュータ断層撮影法(CT)、PET/CT併用撮像素子(PET/CT combination imager)、冷却電荷結合素子(CCD)、カメラ光学イメージング(camera optical イメージング)、光学イメージング(例えば、生物発光光学イメージング、蛍光光学イメージング、または反射率の吸収)および単一光子放射型コンピュータ断層撮影法(SPECT)が含まれるが、これらに限定されない。
【0055】
下の例に記載のように、適切な放射性同位体(例えば、残留化124I、64Cu-DOTAまたは89Zr-DOTA)で標識される本明細書に記載のようなミニボディまたはCysDBは、本明細書に記載された方法によりin vivoでPSMAをターゲッティングするための臨床イメージング剤として使用することができる。これらのJ591ミニボディおよびCysDBは、本明細書に記載された実施形態による潜在的な単一光子放射型コンピュータ断層撮影法(SPECT)イメージング剤として開発することもできる。J591ミニボディは、放射性標識、例えば、111In-DOTA-J591を変化させてSPECTイメージング剤として使用されてもよい。
【0056】
本明細書に記載されたJ591ミニボディは、in vivoでの細胞関連放射能の保持を比較するため陽電子放出体I-124 (t1/2=4.2d)およびCu-64 (t1/2=12.7h)で放射性標識した後に、小動物PET(マイクロPET)および体内分布実験により腫瘍ターゲッティングについて評価された。
【0057】
124Iおよび64Cu-DOTA標識J591ミニボディは両方とも、高い取り込みおよび特異度でCWR22rv1腫瘍を迅速に標的にした。PSMA陽性CWR22rv1および陰性PC-3異種移植片を保有するマウスの連続イメージングは、両方の標識で高コントラスト画像および優れた腫瘍取り込みをもたらした。p.i. 19時間で、8.2 (±1.2) %ID/gおよび8.8 (±2.0) %ID/gが、それぞれ64Cu-DOTAおよび124I-J591ミニボディで達成された。注入後(p.i.)43時間で、腫瘍取り込みは、64Cu-DOTA-J591ミニボディで13.3 (±8.3) %ID/gまで増加し、124I-J591ミニボディで3.25 (±0.9) %ID/gまで低下した。陰性腫瘍に対する陽性腫瘍比は、64Cu-DOTAおよび124I-J591ミニボディについて、それぞれ19時間で3.1および4.9、43時間で5.4および7.3であった。持続性の高い肝臓取り込み[19時間で21.4 (±3.1) %ID/gおよび43時間で14.4(±2.1) %ID/g]が、64Cu-DOTA-J591ミニボディで見られたのに対し、124I-J591ミニボディは、高コントラスト画像をもたらす迅速なバックグラウンドクリアランスを示した。19時間での両方の放射性標識ミニボディの類似の腫瘍取り込みは予想外であり、およびより緩徐なin vivo内在化を示唆した。故に、I-124で放射性標識されたJ591ミニボディは、PSMA陽性細胞を検出するのに効率的なトレーサーである。
【0058】
癌の治療方法
幾つかの実施形態では、PSMAの過剰発現に関連する癌または他の状態の治療方法が提供される。このような方法は、上記のようなPSMA抗体、または機能的PSMA抗体フラグメントを含む医薬組成物の治療有効量を被験者に投与するステップを含む。1つの実施形態では、PSMA抗体、または機能的PSMA抗体フラグメントは、本明細書に記載されたようなJ591ミニボディおよびJ591 CysDBなどのJ591抗体由来のミニボディまたはCysDBである。
【0059】
状態の「治療(treating)」または「治療(treatment)」とは、該状態を予防すること、該状態の発症もしくは出現割合を低下させること、該状態を出現するリスクを低減すること、該状態に関連する症状の出現を予防もしくは遅延させること、該状態に関連する症状を低減もしくは終息させること、該状態の完全もしくは部分寛解をもたらすこと、またはこれらの幾つかの組み合わせを指すことができる。
【0060】
「治療有効量」または「治療有効用量」は、標的状態の予防もしくは治療または該状態に関連する症状の軽減など、被験者において所望の治療効果をもたらす化合物の量である。正確な治療有効量は、所与の被験者において治療の有効性に関して最も有効な結果を生むであろう組成物の量である。この量は、治療化合物の特徴(活性、薬物動態、薬力学、および生物学的利用能を含む)、被験者の生理学的状態(年齢、性別、疾患タイプおよび病期、全身健康状態、所与の用量に対する反応性、ならびに薬剤のタイプを含む)、製剤中の医薬的に許容可能な担体(単数または複数)の性質、および投与経路を含むがこれらに限定されないさまざまな要因に応じて変わるであろう。臨床および薬理技術分野の当業者は、日常的な実験を通じて、すなわち化合物の投与に対する被験者の反応をモニタリングし、およびそれに応じて用量を調節して治療有効量を判定することができるであろう。さらなる手引きについては、Remington:「The Science and Practice of Pharmacy」、第21版、Univ. of Sciences in Philadelphia (USIP)、Lippincott Williams & Wilkins、Philadelphia、PA、2005年参照。
【0061】
1つの実施形態では、医薬組成物は、治療的抗PSMAコンジュゲートを含んでもよく、コンジュゲートは、上記のような1つもしくは複数の治療剤にコンジュゲートされたPSMA抗体または機能的PSMA抗体フラグメントを含む。1つの実施形態では、PSMA抗体、または機能的PSMA抗体フラグメントは、本明細書に記載されたようなJ591ミニボディおよびJ591 CysDBなどのJ591抗体由来のミニボディまたはCysDBである。例えば、本明細書に記載されたJ591ミニボディまたはcysダイアボディは、1つまたは複数の3B J591ミニボディが、イットリウム90などの適切なベータ放出放射性標識で放射性標識される放射免疫療法アプローチにおいて使用することができる。放射性標識3B J591ミニボディ(単数または複数)は、PSMAを発現する局所癌性組織に細胞の損傷および死をもたらすのに使用することができる。さらに、放射性標識J591ミニボディおよびcysダイアボディの使用は、放射性標識された完全長親huJ591抗体と比較して改善された腫瘍透過を示す可能性があるであろう。
【0062】
治療的抗PSMAコンジュゲートは、診断的抗PSMAコンジュゲート(上記)、非コンジュゲート診断剤、対照液、担体脂質またはナノ粒子などの、本明細書に記載された1つもしくは複数の追加の物質にコンジュゲートまたは結合されてもよい。
【0063】
幾つかの実施形態では、医薬組成物は、医薬的に許容可能な担体も含むことができる。医薬的に許容可能な担体は、1つの組織、器官、または身体の部分から別の組織、器官、または身体の部分への目的とする化合物の運搬または輸送に関与する医薬的に許容可能な材料、組成物、またはビヒクルであってもよい。例えば、担体は、液体もしくは固体充填剤、希釈剤、賦形剤、溶媒、もしくはカプセル化材料、またはこれらの幾つかの組み合わせであってもよい。担体の各成分は、製剤の他の成分と適合可能でなければならないという点で「医薬的に許容可能」でなければならない。担体の各成分は、これが遭遇し得る任意の組織、器官、または身体の部分との接触にも適していなければならない。これは、担体の各成分が毒性、刺激、アレルギー反応、免疫原性、または治療ベネフィットを過度に上回るいずれか他の合併症のリスクを伴ってはならないことを意味する。
【0064】
本明細書に記載された医薬組成物は、任意の適切な投与経路により投与することができる。投与経路とは、エアロゾル、経腸、経鼻、眼、経口、非経口、直腸、経皮(例えば、塗り薬または軟膏、パッチ)、または膣を含むがこれらに限定されない当技術分野で既知の任意の投与経路を指すことができる。「経皮」投与は、塗り薬または軟膏を用いて、または経皮パッチにより達成することができる。「非経口」とは、眼窩下、点滴、動脈内、関節包内、心臓内、皮内、筋肉内、腹腔内、肺内、脊髄内、胸骨内、髄腔内、子宮内、静脈内、くも膜下、嚢下、皮下、経粘膜、または経気管を含む、一般に注入に関連する投与経路を指す。
【0065】
以下の例は、本発明のさまざまな実施形態を図示することが意図される。このため、論述された特定の実施形態は、本発明の範囲の制限として解釈されるべきではない。さまざまな均等物、変更、および修正が発明の範囲を逸脱することなく行われ得ることが、当業者には明らかとなり、およびこのような同等の実施形態は、本明細書に含まれるべきであることが理解される。さらに、本開示に引用された全ての参考文献は、本明細書に完全に記載されているかのように、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【実施例1】
【0066】
J591ミニボディの生成
J591ミニボディ構築物。第3世代J591ミニボディは、完全長親huJ591抗体の修飾可変領域を組み込む改変抗体フラグメントである。ミニボディフォーマットは、各単量体がヒトIgG1 CH3ドメインに連結された一本鎖可変フラグメント(scFv)である、ホモ二量体である(図1A)。scFvは、VHVLまたはVLVH配向を有することができる。図1Bに示された通り、VHVL配向を有するscFvのJ591ミニボディ発現構築物は、18アミノ酸リンカー(L)配列により可変軽鎖(VL)領域に連結された可変重鎖(VH)ドメインを有する。VLVH配向では、VLおよびVHは、VL領域がVHドメインの上流となるように図1Bにおいて入れ替わることになる。
【0067】
4つのJ591ミニボディ配列を、下記発現試験で使用するため合成した。ミニボディ配列は、以下の通り構築した:
1) VHVL配向を有するJ591ヒト複合体(HC) (J591 HC VHVL;配列番号1)、
2) VLVH配向を有するJ591ヒト複合体(HC) (J591 HC VLVH)、
3) VHLV配向を有する2プロリン置換(2P)を有するJ591(J591 2P VHVL;配列番号2)、および
4) VLVH配向を有する2プロリン置換(2P)を有するJ591(J591 2P VLVH)。
【0068】
図3は、J591 HC VHVLミニボディの配列(配列番号1)を示し、図4は、J591 2P VHVLミニボディの配列(配列番号2)を示す。18アミノ酸リンカー(L)は、GlySerリッチ残基の特定の配列を有する(図1参照、配列については図3および4参照)。scFvは、人工ヒンジ配列によりヒトIgG1 CH3ドメインに連結されている。人工ヒンジ配列は、最初の15残基がヒトIgG1ヒンジのものであり、この後に10アミノ酸GlySerリンカー配列が続く(図1参照、配列については図3および4参照)。この特定のヒンジ配列も、以前のミニボディに成功裏に組み込まれている。ミニボディ(VH-VL-CH3またはVL-VH-CH3配向のどちらか)は、CH3ドメイン間の結合およびヒンジ領域内のジスルフィド結合の形成により安定な二量体として存在する。ミニボディの分泌を可能にするために、カッパ軽鎖シグナル配列は可変重鎖ドメインのN末端に融合された発現構築物をもたらす(図1B参照、配列については図3および4参照)。
【0069】
一連のJ591ミニボディは、親huJ591可変重鎖および軽鎖ドメインにおけるアミノ酸置換を行って改変した。完全長親huJ591可変領域の配列分析は、タンパク質構造の柔軟性を減少させることが認められている、異常に多数の立体構造的に制限的なプロリン残基を同定した。脱免疫化J591(配列番号5; 配列番号19)とオリジナルのマウスJ591(配列番号4; 配列番号18)の間の配列アライメントの比較は、脱免疫化プロセスが別のプロリン残基を導入することを明らかにした(図2参照)。配列およびタンパク質モデリング分析後、柔軟性および折り畳み能力を改善するために、タンパク質への2つの変更を行った。第1は、2つのプロリン残基を、可変軽鎖ドメイン(P42QおよびP100A)において、マウス配列で見出される残基に変更した(図2参照、以下2Pと呼ぶ)。第2は、エピトープを破壊する代わりに潜在的なエピトープを回避して配列を脱免疫化するヒト複合体(HC)抗体技術(Antitope社)を用いて、両方の可変領域について置換を計算した(図2参照、以下HCと呼ぶ)。
【0070】
J591ミニボディの発現。上記の4つのミニボディ配列の各々に対する発現ベクターを生成した。4つのミニボディ配列の各々は、対応するXbaI/HindIII部位で哺乳動物発現用のpcDNA3.1/myc-His (-)バージョンAベクター(Invitrogen, Inc.社)にクローン化した。pcDNA3.1発現ベクターは、哺乳動物発現用のCMVプロモーターならびに哺乳動物(ネオマイシン)および細菌(アンピシリン)の両方の選択マーカーを特徴とする(図10参照)。
【0071】
4つのJ591ミニボディ発現ベクターを、CHO-K1細胞に一過性にトランスフェクトしてJ591ミニボディの発現を検証した。トランスフェクションは、6ウェルプレートフォーマットでリポフェクタミン試薬を用いて行った。72時間のトランスフェクション後、任意の細胞を除去するために上清を回収および濾過した。
【0072】
CHO-K1細胞によるJ591ミニボディの発現を確認するため、ウェスタンブロット分析を、一過性トランスフェクションから採取した上清試料を用いて行った。空ベクタートランスフェクションからの上清は陰性対照として含め、異なるミニボディのトランスフェクションからの上清は陽性対照として使用した。トランスフェクション上清をSDS-PAGEにより流出させ、およびPVDF膜に移した。膜を、アルカリホスファターゼ(AP)にコンジュゲートした抗ヒトIgG (Fc特異的)抗体でプローブし、およびAP基質BCIP/NBTと共にインキュベートして展開した。図11は、J591ミニボディの発現を確認した複数の実験の代表的なブロットである。非還元条件下、J591ミニボディは、約90kDの予想された分子量で流れた(図11)。単量体型を表す小さなバンドも、約40kDで検出された。
【0073】
一過性トランスフェクションからのJ591ミニボディ発現を分析するため、定量的ELISAを行った。ELISAは、捕捉抗体としてヤギ抗ヒトIgG (Fc特異的)、および検出抗体としてAPコンジュゲートヤギ抗ヒトIgG (Fc特異的)を使用するサンドイッチアッセイである。以前に産生したミニボディの精製タンパク質を標準として使用した。J591ミニボディ上清を連続希釈して標準曲線の線形範囲でフィットする希釈ポイントを見出した。プログラムSoftMax Proを使用して標準曲線により未知の濃度を補間した。
【0074】
複数のトランスフェクションからの上清をアッセイした。平均を図25に示す。J591 HC VHVLミニボディが、第3世代ミニボディの最も高い発現(6.7ug/ml)を示した。
【0075】
J591ミニボディの結合能力。細胞PSMAに結合するJ591ミニボディの能力を確認するため、上記一過性トランスフェクションからの上清をフローサイトメトリーにより分析した。図12A〜12Dに図示された通り、各J591ミニボディの一過性トランスフェクションからの上清を、PSMA陽性(PSMA+)(2)であるLNCaP細胞への結合についてテストし、およびPSMA陰性である陰性対照細胞と比較した。全ての上清は、J591ミニボディの2.1ug/mlの濃度に対して正規化した。細胞はこの後、2次抗ヒトIgG (Fc特異的)-PEコンジュゲート抗体で染色した。陰性対照細胞は、2次単独で染色した(1)。1×105細胞/ポイントおよび分析は10,000イベント/ポイントで行った。
【0076】
J591ミニボディで染色した各細胞集団は、陰性対照細胞と比べてシグナルの著しい増加を示した(図12参照)。J591ミニボディ上清は、陰性対照PC3細胞(PSMA陰性)を著しくは染色しなかった(データ不図示)。全ての4つのミニボディは、LNCaP細胞への同程度の結合親和性を示した(図12参照)。
【実施例2】
【0077】
安定な細胞系産生
上記発現および結合データに基づき、J591ヒト複合体VHVL (HC VHVL)ミニボディを有力候補として選択して、この後の下記in vivoイメージング試験のための大規模(およそ低ミリグラム量)タンパク質産生に進んだ。下記実施例は、J591 HC VHVLミニボディに特有であるが、しかし、本明細書に記載されたJ591ミニボディまたはcysダイアボディはいずれも、類似の試験において精製および使用され得ることが留意される。
【0078】
J591 HC VHVLミニボディは、選択マーカーとしてネオマイシンを用いてCHO-K1細胞に安定にトランスフェクトした。高発現クローンの選択後、J591ミニボディを約36mg/L (4日間にわたる培養)で発現するクローンを、スケールアップ産生用に選択した。
【0079】
タンパク質産生実行。少なくとも10mgの最終精製タンパク質を産生するために、安定な細胞系を400ml産生実行(2%FBS培地で)まで拡大した。細胞を8つのT175フラスコに播種し、産生実行は7日間続いた。
【0080】
タンパク質精製。産生実行の終わりに、上清を回収し、遠沈して任意の細胞を除去し、および0.2umフィルター単位を用いて濾過した。J591ミニボディを、タンパク質L親和性クロマトグラフィーを用いて上清から精製した。充填後、カラムをPBS (pH=7.2)で洗浄し、ミニボディをIgG溶出緩衝液(Pierce, Thermo Scientific社)を用いてカラムから溶出した。溶出画分は、1Mトリス緩衝液(pH=8)を用いて直ちに中和した。最終溶出画分を濃縮し、緩衝液はPBS (pH=7.2)の最終製剤に交換した。
【0081】
精製タンパク質分析。精製後、J591ミニボディタンパク質の最終濃度を280AでのUV吸光度を用いて計算した。吸光係数は1.76であった(mg/mlあたりA280での吸光度単位)。タンパク質の最終濃度は1.06mg/mlであった。
【0082】
J591ミニボディの純度を分析するため、タンパク質をSDS-PAGEにより非還元および還元条件下で流した。非還元条件下、ミニボディは約85kDaで検出された(図13)。85kDaバンドの下に、少量の分解を表す可能性がある比較的小さいスメアが存在した。約40kDaでの小さいバンドはミニボディ単量体を表す。還元条件下、ミニボディは40kDa前後で単量体型として検出された(図13)。
【0083】
アセンブルされたミニボディ複合体の純度を調べるため、タンパク質をサイズ除外クロマトグラフィーにより分析した。4マイクログラムの精製タンパク質をSECにより分析した(図14)。大きなピークはミニボディホモ二量体に対応する。より早期の時点で溶出された2つの小さいピークは、より大きな凝集タンパク質を表す。ピーク下の面積の分析は、タンパク質生成物の85%が適正なミニボディホモ二量体vs 15%凝集体として存在することを示した。
【実施例3】
【0084】
J591ミニボディはPSMA+細胞に結合し、PSMA+細胞により内在化される
高発現安定細胞プールは、無血清CHO-S細胞のレンチウイルス形質導入を用いてCatalent社の専有GPEx技術により生成した。イオン交換クロマトグラフィーを用いて、J591ミニボディを、下流の実験に向けて純度が十分に高い状態で細胞上清から精製した。生成物の高純度は、SDS-PAGEおよびSEC分析により確認した(>85%純度)。精製タンパク質は、著しいバイオバーデンが全くなく(0cfu/ml)、および比較的低い内毒素レベル(8から16EU/mgの間)を有する。この産生実行バッチからの総収量は、J591ミニボディタンパク質65mgであった。
【0085】
機能的ELISA。精製PSMAに結合するJ591ミニボディタンパク質の能力を確認するため、精製組換えPSMAを用いた間接的ELISAを行った。陰性対照ミニボディを実験に含めた。2μg/mlの開始濃度で、J591ミニボディは飽和時に組換えPSMAに結合した(図15参照)。J591ミニボディのこの後の連続希釈は濃度依存性結合を示した(図15参照)。予想した通り、陰性対照ミニボディはPSMAに結合しなかった(図15参照)。
【0086】
フローサイトメトリー。ELISAで組換えPSMAに成功裏に結合した後、J591ミニボディタンパク質を、PSMA+細胞に結合する能力についてフローサイトメトリーによりテストした。完全長hJ591抗体を陽性対照として本実験に含め(データ不図示)、陰性対照ミニボディも含めた。この実験におけるPSMA+細胞はLNCaPおよびCWR22rv1細胞であり、PSMA細胞系はPC3であった。J591ミニボディは、陰性対照ミニボディの当量濃度と比較してLNCaP (図16A参照)およびCWR22rv1 (図16C参照)の両方に明らかに結合する。LNCaP細胞は、CWRよりもPSMAの高発現を有することが知られており、細胞集団のより高いPEシグナルを説明する可能性がある(図16参照、上列vs.下列)。予想した通り、J591ミニボディはPC3細胞に著しくは結合しなかった(データ不図示)。
【0087】
このフローサイトメトリー分析の前に、J591ミニボディタンパク質を、下流の放射性金属標識に備えて二官能性キレート剤1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-N,N',N'',N'''-テトラ酢酸(DOTA)にコンジュゲートさせた。コンジュゲーションは、水溶性N-ヒドロキシスクシンイミド方法(Lewisら 2001年)を用いて行った。DOTAコンジュゲーション後、タンパク質コンジュゲートを透析して緩衝液を交換し過剰なDOTAを除去した。
【0088】
コンジュゲーション後の結合能力を検証するため、J591-DOTAミニボディを、PSMAへの結合についてフローサイトメトリーによりテストした。非コンジュゲートJ591ミニボディと比較して、J591-DOTAミニボディは、細胞集団のPEシグナルわずかなシフトに示されるように、免疫反応性のわずかな減少を示した(図16Bおよび16D参照)。抗体への二官能性キレート剤の過剰なコンジュゲーションは、免疫反応性の低下の原因であることが知られている(Kukisら 1995年)。コンジュゲーション条件は、過剰なコンジュゲーションおよびこの結果として生じる結合の減少を防ぐように最適化することができる。しかし、J591-DOTAミニボディに関する結合におけるわずかなシフトは許容可能と考えられ、該タンパク質を放射性標識に進めた。
【0089】
非標識ミニボディの内在化。PSMA+細胞へのJ591ミニボディの内在化は、免疫蛍光共焦点顕微鏡を用いて調べた。この実験で使用された2つのPSMA+細胞系、LNCaPおよびCWR22rv1細胞系は、細胞結合試験で以前に使用されており、およびこの後の放射性標識内在化試験でも役立てられた。PC3細胞は、PSMA-陰性対照細胞系として使用した。完全長の、親J591抗体は、陽性対照として実験に含めた。陰性対照ミニボディも、PSMA+細胞におけるJ591ミニボディ取り込みの特異度をさらに実証するために含めた。
【0090】
LNCaP細胞でのオリジナル完全長J591抗体による以前の内在化試験が、強い内在化を180分間示した(Liuら 1998年)ことから、1次抗体インキュベーション後、細胞をt=0およびt=180分間で染色して内在化を測定した。抗体およびミニボディの局在化は、アレクサ488フルオロフォアとコンジュゲートした2次抗ヒトIgG抗体により検出した。細胞は、核の染色のためDAPIで対比染色した。
【0091】
J591完全長抗体は、t=0では極めて鮮明および明確な細胞膜の染色を示した(図17参照)。180分間、37℃でのインキュベーション後、J591完全長抗体は、細胞全体にわたるアレクサ488染色の分散により示されるようにLNCaP細胞に内在化された。J591ミニボディも、t=0での明確な細胞膜染色、およびt=180分までに強い内在化を示した(図17)。t=0でのJ591ミニボディの染色は、J591完全長より明確さは著しく低く、LNCaP細胞内でのより小さなサイズのミニボディに関するより迅速な内在化を恐らく示唆している。陰性対照ミニボディは、t=0ではLNCaP細胞に結合することができなかった。J591完全長抗体およびミニボディは、PSMA- PC3細胞に結合することができなかった(データ不図示)。
【0092】
CWR22rv1細胞への完全長J591抗体の内在化は、LNCaP細胞について見られたのと極めて類似した染色パターンを示した。染色は、t=0では細胞膜において極めて鮮明および明確であり、t=180分までに極めて分散するようになった(図18)。J591ミニボディもCWR22rv1で内在化された。t=0での染色は、際立って細胞膜であり、t=180分までによりずっと分散するようになった(図18)。予想した通り、陰性対照ミニボディはCWR22rv1細胞に結合しなかった(図18)。
【実施例4】
【0093】
放射性標識PSMA特異的ミニボディ
ヨウ素131によるJ591ミニボディの放射性標識。精製J591ミニボディタンパク質(50μg)を、Pierce Thermo Scientific社製のヨードゲン方法(Olafsenら 2006年に記載されているような)を用いて約50μCiの131Iで放射性標識した。この試薬は、J591ミニボディの利用可能なチロシン残基に131Iを付着させる化学的酸化反応を可能にする。Table 2(表1)は、放射性標識効率、精製後の結合放射能のパーセンテージ、および比放射能を含む、J591ミニボディ放射性標識結果の概要である。放射性標識効率は、該タンパク質に結合した対結合しない放射能のパーセンテージを測定するための即時薄層クロマトグラフィー(ITLC)を用いて、約51%と判定された(以下のTable 2(表1)参照)。比放射能は、用量校正器を用いた放射性標識タンパク質の合計放射能の測定、および標識効率に基づく比放射能の計算により、0.46μCi/μgと判定された(Table 2(表1))。過剰な非結合131Iを除去するため、放射性標識タンパク質を、スピンカラムを用いてさらに精製した。精製後にJ591ミニボディに結合した放射能のパーセンテージは、精製後に約96%まで劇的に増加した(Table 2(表1))。
【0094】
J591のDOTAコンジュゲーションおよびインジウム111による放射性金属標識。二官能性金属キレート剤DOTAに以前にコンジュゲートされたJ591ミニボディを、111Inで放射性標識した。100μgのDOTA-J591ミニボディを、0.1M無金属酢酸アンモニウム(pH6.0)で200μCi 111In塩化物と共に43℃、50分間インキュベートした。反応を、1mMの最終濃度に10mM DTPAを添加して停止した。放射性標識効率は約60%と判定され、比放射能は1.1μCi/μgであった(Table 2(表1)参照)。放射性標識タンパク質をさらに精製してスピンカラムを用いて過剰な非結合111Inを除去した。131I-J591ミニボディと同様に、精製後にJ591ミニボディに結合した放射能のパーセンテージは、約94%まで劇的に増加した(Table 2(表1))。
【0095】
【表1】

【0096】
放射性標識J591ミニボディの内在化および保持。131I標識および111In-DOTA標識J591ミニボディを、PSMA+ CWR22rv1細胞における細胞関連放射能の取り込みおよび保持についてテストした。CWR22rv1細胞は、マイクロPETイメージング実験に使用することになるため、CWR22rv1細胞をこれらのin vitro実験の唯一のPSMA+細胞系として選択した。同僚の文献および経験的知識から導き出すと、CWR22rv1異種移植片モデルは、LNCaPモデルより高い腫瘍取り込み率および速いin vitro腫瘍成長率を有する。
【0097】
131I標識J591ミニボディの取り込みおよび保持について、膜に関連する放射能の量は最初の30分間で急速に下がるのに対し、内在化放射能はこの時間枠で急速に増加する(図19A参照)。まとめるとこれらのデータは、131I-J591ミニボディの内在化を示唆する。内在化131I J591の量は経時的に増加するが、合計細胞関連放射能は、約2900cpmの初期開始ポイントと比べて180分までに実質的に減少した(図19A参照)。
【0098】
著しく対照的に、111In-DOTA標識J591ミニボディの取り込みおよび保持は、経時的に合計細胞関連放射能の比較的大きな増加を示した(図19B参照)。131I標識J591ミニボディと同様に、内在化放射能が増加するにつれて膜関連放射能は著しく減少し、活発な内在化を示唆している(図19B参照)。大部分は経時的な内在化放射能の増加に起因して、合計細胞関連放射能は、約7,500cpmの開始ポイントから180分までに約20,000cpmまで増加した(図19B)。
【0099】
2つの放射性標識J591ミニボディを比較するため、t=0での各放射性標識の初期細胞関連放射能のパーセンテージを単位としてデータを表して、合計細胞関連放射能を正規化した(図20参照)。t=180分までに、111In-DOTA標識J591ミニボディが初期細胞関連放射能の約250%まで増加するのに対し、131I標識J591ミニボディは初期の約80%まで減少する(図20)。文献で他のグループにより見られるように(Vaidyanathanら 2009年)、非残留化131I標識戦略は、経時的に細胞関連放射能の全体的な低下をもたらした。これらのデータは、残留化111In-DOTA放射性標識に関する細胞関連放射能の経時的な保持および蓄積を明らかに示している。
【0100】
精製J591 HC VHVLミニボディ(または上記ミニボディのいずれか)は、in vivoでヒトPSMAをターゲッティングする能力をマイクロPETイメージングおよび体内分布試験で実証するのに使用することができる。1つの実施形態では、精製J591 HC VHVLミニボディタンパク質は、イメージング試験に備えてin vitroでPSMAに結合する能力を確認するために最初に再び検証してもよい。結合の確認時に、J591 HC VHVLミニボディを、次いで二官能性キレート剤DOTAにコンジュゲートし、および銅64などマイクロPET用の適切な陽電子放出放射性金属で放射性標識することができる。放射性標識ミニボディを、分析してマイクロPETイメージングへ進む前に高い放射性標識効率および免疫反応性を確保することができる。
【0101】
幾つかの実施形態では、放射性標識ミニボディは、PSMA陽性またはPSMA陰性腫瘍のどちらかを移植した異種移植片マウスに静脈注入することができる。注入後特定の時点で、各動物はPETにより連続スキャンされてもよい。最終スキャン後、動物は解剖学的参照のためCTによりスキャンされてもよい。各動物のPETおよびCT画像を、次いで分析して腫瘍ターゲッティングおよび特異度を評価することができる。
【実施例5】
【0102】
124I-J591および64Cu-DOTA-コンジュゲートJ591ミニボディのin vivo結合および体内分布
ヨウ素124によるJ591ミニボディの放射性標識。精製J591ミニボディタンパク質(合計量300μg)を、Pierce Thermo Scientific社製のヨードゲン方法(Olafsenら 2006年に記載されているような)を用いて約1.3mCiの124Iで放射性標識した。この方法は、J591ミニボディの利用可能なチロシン残基に124I放射性同位体を付着させる化学的酸化反応を伴う。以下のTable 3(表2)は、放射性標識効率、精製後の結合放射能のパーセンテージ、比放射能、および免疫反応性を含む、J591ミニボディ放射性標識結果の概要である。標識反応後、放射性標識効率は、即時薄層クロマトグラフィー(ITLC)を用いて約62%(該タンパク質に結合した対結合しない放射能のパーセンテージ)と判定された(Table 3(表2)参照)。放射性標識J591ミニボディを、Sephadex G-25スピンカラムを用いて部分的に精製し、およびITLCにより再評価して結合放射能のパーセンテージを判定した。放射性標識タンパク質の比放射能は、用量校正器を用いて該タンパク質の合計放射能を測定して判定した、2.6μCi/μgであった(Table 3(表2))。過剰な非結合124Iを反応から除去するため、放射性標識タンパク質を、スピンカラムを用いてさらに精製した。精製後にJ591ミニボディに結合した放射能のパーセンテージは、約98%まで劇的に増加した(Table 3(表2))。124I-J591ミニボディの免疫反応性は、CWR22rv1 vs PC3細胞への結合をテストして48%と判定された(表3(表2))。この免疫反応性は予想より低かったが、ミニボディの以前の結合成績に基づき、124I J591ミニボディをイメージングおよび体内分布実験へ進めることを決定した。放射性標識条件(pH、時間、温度等)およびより高いタンパク質純度の獲得に対する今後の最適化が、免疫反応性を潜在的に改善し得るであろう。
【0103】
【表2】

【0104】
銅64によるDOTA-J591ミニボディの放射性金属標識。二官能性金属キレート剤DOTAと以前にコンジュゲートしたJ591ミニボディを、64Cuで放射性標識した。初期放射性標識条件については、PBS中400μgのDOTA-J591ミニボディを、約745μCi 64CuCl2と共に25mM無金属クエン酸アンモニウム[pH5.2]で43℃、60分間インキュベートした。反応を、1mMの最終濃度に10mM EDTAを添加して停止した。これらの標識条件を用いて、放射性標識効率は約40%と予想より低いことが判定された(Table 3(表2)参照)。
【0105】
標識効率を改善するため、放射性標識反応の開始前に、DOTA-J591ミニボディを最初に0.25酢酸アンモニウム緩衝液[pH7.2]に透析した。酢酸アンモニウム緩衝液中、追加の560μgのDOTA-J591ミニボディを約730uCiの64CuCl2で標識した。放射性標識を改善するための他の調整は、反応に使用されるクエン酸アンモニウム緩衝液のパーセンテージの増加を伴った。これらの調整により、放射性標識効率は約92%まで劇的に増加した(Table 3(表2))。
【0106】
両方の標識条件からの64Cu-DOTA J591ミニボディ画分の全てを一緒にプールし、およびさらに精製してスピンカラムを用いて過剰な非結合64Cuを除去した。精製後にJ591ミニボディに付着した放射能のパーセンテージは約85%であり、比放射能は1μCi/μgであった(Table 3(表2))。放射性標識ミニボディの免疫反応性は、124I J591ミニボディについて以前に記載した細胞ベースの方法を用いて、約29%と判定された(Table 3(表2))。免疫反応性は予想より低かったが、マイクロPETおよび体内分布実験へ進めることを決定した。タンパク質純度および標識条件に加えて、今後の免疫反応性を最適化する今後の試みには、DOTAコンジュゲーション反応(すなわちDOTA-分子比等)の最適化が含まれるであろう。
【実施例6】
【0107】
放射性標識J591ミニボディの連続マイクロPETイメージングおよび体内分布
64Cu-DOTA J591ミニボディ。64Cu-DOTA-J591ミニボディの腫瘍ターゲッティングおよび結合特異度を評価するため、マイクロPETイメージングおよび体内分布分析を、CWR22rv1 (PSMA+)およびPC3 (PSMA-)異種移植片の両方を移植したマウスを用いて行った。両方の異種移植片腫瘍は、イメージング実験の開始前に39〜223mgの間のサイズまで成長した。注入後4時間でのCTおよびPET/CT画像は、PC3腫瘍と比較してCWR22rv1腫瘍での迅速な腫瘍局在化を示した(図21Aおよび21Bは代表的なマウスを示す)。放射性金属標識ミニボディについて予想した通り、顕著な放射能が胸部で検出され、特に肝臓に局在化していた。64Cuなどの放射性金属の局在化は、文献(Yazakiら 2001年)で十分に研究されている。肝臓を除いて、バックグラウンド放射能は注入後4時間でも比較的低く、顕著なコントラストを有するPET/CT画像を可能にした(図21Bおよび21C)。強い腫瘍局在化は、注入後19時間およびさらに43時間でも持続した(図21D)。全体的なバックグラウンド放射能は経時的にわずかに減少したが、肝臓は強い放射能源のままであった(図21D)。
【0108】
最終スキャン後、全ての動物を安楽死させ(p.i. 19時間でn=8および43時間でn=4)、目的とする選択した組織(陽性および陰性腫瘍、血液、肝臓、脾臓、肺、ならびに腎臓を含む)を切除し、秤量し、および放射能についてガンマカウンターにより測定した。図22の注入後19時間での体内分布は、CWR22rv1腫瘍(腫瘍+)が、PC3腫瘍(腫瘍-)の2.69%ID/gと比較して8.23%ID/gの平均取り込みに達することを示した。局在化は、PC3腫瘍よりCWR22rv1で著しく高かった(p<0.05)。マイクロPET/CTイメージングにより明らかにされた通り、p.i. 19時間での肝臓における取り込みが比較的高かった(21.43%ID/g)のに対し、局在化は目的とする他の組織でははるかに目立たなかった(図22参照)。
【0109】
注入後43時間で、体内分布は、注入後19時間と比較してCWR22rv1腫瘍(腫瘍+; 13.25%ID/g)での平均取り込みの増加を明らかにする(図22)。バックグラウンド放射能は注入後19時間と比べて減少し、特に肝臓活性は14.37%ID/gまで著しく低下した(図22)。
【0110】
CWR22rv1腫瘍での蓄積の増加と組み合わさったバックグラウンド放射能の全体的は減少により、バックグラウンドに対する腫瘍比は、注入後19時間から注入後43時間までの間に劇的に増加した(図26)。
【0111】
124I J591ミニボディ。64Cu-DOTA J591ミニボディと同様に、マイクロPETおよび体内分布実験を124I J591ミニボディで行って腫瘍ターゲッティングを評価した。両方の異種移植片腫瘍は、イメージング実験の開始前に36〜192mgの間のサイズ範囲まで成長した。注入後(p.i.) 4時間でのマイクロPET画像は、CWR22rv1腫瘍での迅速な局在化を示したが、胸部、腹部、および膀胱における高い循環放射能を示した(図23Aおよび23B)。バックグラウンド放射能は、注入後20時間までに全身から著しく消え、44時間までにほぼ完全に無くなったのに対し、陽性腫瘍での放射能は残った(図23C)。
【0112】
体内分布分析については、1群中の全ての動物を安楽死させ(p.i. 20時間でn=6および44時間でn=2)、目的とする選択した組織を切除し、秤量し、および放射能についてガンマカウンターにより測定した。図24のマウスに関する注入後20時間での体内分布は、CWR22rv1腫瘍(腫瘍+)取り込みが、PC3腫瘍(腫瘍-)の1.8%ID/gと比較して8.75%ID/gに達することを示した。局在化は、PC3腫瘍よりCWR22rv1で著しく高かった(p<0.05)。バックグラウンド放射能は、p.i. 20時間までに比較的低かった(図24)。
【0113】
注入後44時間までに、CWR22rv1腫瘍(Tumor+)取り込みは3.25%ID/gまで実質的に減少した(図24)。上記in vitro内在化および保持実験からの以前の結果を支持して、細胞関連放射能は、124I-J591ミニボディの脱ハロゲン化および/または代謝から経時的に減少した。バックグラウンド放射能は、p.i. 44時間までに全身からほぼ完全に消えた(図24)。
【0114】
放射能の取り込みは、CWR22rv1腫瘍で経時的に減少したが(図24)、バックグラウンド放射能の迅速な減少は、画像の強いコントラストを可能にした。体内分布比は、バックグラウンド対腫瘍の経時的なこの大きな増加を反映している(図27)。
【0115】
J591ミニボディによるPSMA陽性腫瘍のイメージングが成功した時、ミニボディの体内分布を本開示の実施形態により調べることができる。これらの体内分布試験は、注入後経時的に腫瘍部位対他の選択した組織でのミニボディの局在化を調べてもよい。これらの試験は、バックグラウンドに対する腫瘍の高い比を実証するのに使用することができる。J591ミニボディの使用は、前立腺癌でのようにPSMAを過剰発現する腫瘍をイメージングする場合、バックグラウンドに対する腫瘍の高い比を生じる可能性があるであろう。これらのイメージングおよび体内分布実験からの陽性結果は、臨床研究に備えた毒物学的実験につながる可能性がある。
【0116】
さらに、PETイメージング試験によるin vivoでヒトPSMAをターゲッティングするJ591ミニボディの能力は、癌患者における臨床試験を通じて実証される可能性がある。1つの実施形態では、臨床試験は前立腺患者で行われてもよい。癌患者におけるこれらの臨床試験は、上記のような類似の方法を用いて行うことができる。簡単には、放射性標識ミニボディは、PSMAを過剰発現することが知られている癌の形態を有する癌患者に静脈内注入することができる。注入後特定の時点で、各患者はPETにより連続スキャンされてもよい。最終スキャン後、患者は解剖学的参照のためCTによりスキャンされてもよい。各患者のPETおよびCT画像を、次いで分析して腫瘍ターゲッティングおよび特異度を評価することができる。
【0117】
参考文献
以下に列挙された参考文献、特許および公開特許出願、ならびに上記明細書に引用された全ての参考文献は、本明細書に完全に記載されているかのように、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
[参考文献]






【特許請求の範囲】
【請求項1】
N末端からC末端に、
前立腺特異的膜抗原(PSMA)に結合することができるscFv配列であって、scFvが、リンカー配列により可変軽鎖ドメイン(VL)に連結された可変重鎖ドメイン(VH)を含むscFv配列と、
人工ヒンジ配列と、
ヒトIgG CH3配列と
を含むヌクレオチド配列によりコードされるミニボディ。
【請求項2】
細胞で発現される時にミニボディの分泌を可能にするN末端シグナル配列をさらに含む、請求項1に記載のミニボディ。
【請求項3】
scFvが、VHがVLの上流になるようなVHVL配向にある、請求項1に記載のミニボディ。
【請求項4】
ヌクレオチド配列が配列番号1または配列番号2を含む、請求項3に記載のミニボディ。
【請求項5】
scFvが、VLがVHの上流になるようなVLVH配向にある、請求項1に記載のミニボディ。
【請求項6】
ヌクレオチド配列が、細胞により発現される時にアミノ酸配列を産生し、前記アミノ酸配列が配列番号10または配列番号11を含む、請求項1に記載のミニボディ。
【請求項7】
N末端からC末端に、
PSMAに結合することができるscFv配列であって、scFvが、リンカー配列により可変軽鎖ドメイン(VL)に連結された可変重鎖ドメイン(VH)を含むscFv配列と、
システインテールと
を含むヌクレオチド配列によりコードされたcysダイアボディ(CysDB)。
【請求項8】
細胞で発現される時にCysDBの分泌を可能にするN末端シグナル配列をさらに含む、請求項7に記載のCysDB。
【請求項9】
scFvが、VHがVLの上流になるようなVHVL配向にある、請求項7に記載のCysDB。
【請求項10】
ヌクレオチド配列が配列番号6または配列番号7を含む、請求項9に記載のCysDB。
【請求項11】
scFvが、VLがVHの上流になるようなVLVH配向にある、請求項7に記載のCysDB。
【請求項12】
ヌクレオチド配列が配列番号8または配列番号9を含む、請求項11に記載のCysDB。
【請求項13】
リンカー配列が5または8アミノ酸長である、請求項7に記載のCysDB。
【請求項14】
ヌクレオチド配列が、細胞により発現される時にアミノ酸配列を産生し、前記アミノ酸配列が配列番号12、配列番号13、配列番号14または配列番号15を含む、請求項7に記載のCysDB。
【請求項15】
診断剤にコンジュゲートされ、PSMAに結合することができる抗PSMAミニボディまたは抗PSMA cysダイアボディを、PSMA発現に関連する癌を有するまたは有することが疑われる被験者に投与するステップと、
標識されたミニボディまたはcysダイアボディをin vivoで可視化するイメージング方法に被験者を曝すステップと、
標識されたミニボディまたはcysダイアボディが腫瘍部位に局在化する場合、被験者が、PSMA発現に関連する癌を有すると判定するステップと
を含む、被験者におけるPSMA発現に関連する癌の診断方法。
【請求項16】
ミニボディが配列番号10または配列番号11を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
cysダイアボディが配列番号12、配列番号13、配列番号14または配列番号15を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
抗PSMAミニボディまたは抗PSMA cysダイアボディが固形腫瘍の新生血管系をターゲッティングする、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
被験者におけるPSMA発現に関連する癌が、前立腺癌、肺癌、結腸直腸癌、乳癌、腎臓癌、肝臓癌、膀胱癌、膵臓癌またはメラノーマである、請求項15に記載の方法。
【請求項20】
治療有効量の医薬組成物を被験者に投与するステップであって、前記組成物が抗PSMAミニボディまたは抗PSMA cysダイアボディを含むステップ
を含む、被験者におけるPSMA発現に関連する癌の治療方法。
【請求項21】
ミニボディが配列番号10または配列番号11を含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
cysダイアボディが配列番号12、配列番号13、配列番号14または配列番号15を含む、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
抗PSMAミニボディまたは抗PSMA cysダイアボディが治療剤にコンジュゲートされる、請求項20に記載の方法。
【請求項24】
治療剤が、化学治療剤、治療抗体および抗体フラグメント、毒素、放射性同位体、酵素、ヌクレアーゼ、ホルモン、免疫調節物剤、アンチセンスオリゴヌクレオチド、キレート剤、ホウ素化合物、光活性剤および色素から成る群から選択される、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
抗PSMAミニボディまたは抗PSMA cysダイアボディが固形腫瘍の新生血管系をターゲッティングする、請求項20に記載の方法。
【請求項26】
被験者におけるPSMA発現に関連する癌が、前立腺癌、肺癌、結腸直腸癌、乳癌、腎臓癌、肝臓癌、膀胱癌、膵臓癌またはメラノーマである、請求項19に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【公表番号】特表2013−512920(P2013−512920A)
【公表日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−542204(P2012−542204)
【出願日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際出願番号】PCT/US2010/058803
【国際公開番号】WO2011/069019
【国際公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【出願人】(512144634)イマジナブ・インコーポレーテッド (1)
【Fターム(参考)】