説明

ヒト化抗D因子抗体

【課題】補体が媒介する障害の治療に有用な抗D因子抗体を提供する。
【解決手段】本発明は、D因子に関係する生物活性を阻害することができる、マウス抗体166−32の重鎖および軽鎖可変ドメイン配列を含む抗体を提供する。別の実施形態において、本発明は、上記抗体を含む組成物、上記抗体配列を持つ細胞株およびベクター、ならびに上記抗体および組成物の製造および使用方法を提供する。本発明はまた、過剰または制御されない補体活性化に関係する障害を処置する薬物または組成物を調製するための上記抗体の使用を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
補体系は、免疫複合体のクリアランスならびに病原体、外来抗原、ウイルス感染細胞および腫瘍細胞に対する免疫反応において中心的な役割を果たしている。一方で、補体は病的炎症および自己免疫疾患にも関与している。したがって、補体カスケードの過剰または制御されない活性化を阻害すれば、そうした疾患および症候の患者に臨床効果をもたらすことができる。
【背景技術】
【0002】
補体系は、古典経路および代替経路と呼ばれる2つの異なる活性化経路を包含する(非特許文献1)。古典経路は、カルシウム/マグネシウム依存性カスケードであり、通常は抗原抗体複合体の形成により活性化される。代替経路は、マグネシウム依存性カスケードであり、ある種の感受性表面(酵母およびバクテリアの細胞壁多糖ならびにある種の生体高分子材料など)上でのC3の沈着および活性化により活性化される。補体経路が活性化すると、たとえば、アナフィラトキシンC3a、C4aおよびC5aならびに膜侵襲複合体(MAC:membrane attack complex)C5b−9など、補体タンパク質の生物活性のあるフラグメントが生成され、白血球走化性、マクロファージ、好中球、血小板、マスト細胞および内皮細胞の活性化、血管透過性、細胞溶解および組織傷害などの炎症活性を誘発する。
【0003】
代替補体経路の活性化に不可欠で特異性が高いセリンプロテアーゼにD因子がある。D因子はC3bと結合したB因子を切断し、それにより代替経路のC3/C5コンバターゼの活性要素であるC3b/Bb酵素が生じる。D因子は、ヒトにおける血漿中濃度が極めて低く(1.8μg/ml)、代替補体経路の活性化の律速酵素であることが明らかになっているため、阻害に好適な標的になる可能性がある(非特許文献2;非特許文献3)。
【0004】
動物モデルおよびエキソビボ試験では、補体活性化をダウンレギュレートすると、いくつかの疾患適応症、たとえば、全身性エリテマトーデスおよび糸球体腎炎(非特許文献4)、関節リウマチ(非特許文献5)、心肺バイパスおよび血液透析(非特許文献6)、臓器移植における超急性(hypercute)拒絶反応(非特許文献7)、心筋梗塞(非特許文献8;非特許文献9)、再灌流傷害(非特許文献10)および成人呼吸窮迫症候群(非特許文献11)の処置に有効であることが証明されている。さらに、熱傷、重度の喘息、アナフィラキシーショック、腸の炎症、蕁麻疹、血管浮腫、血管炎、多発性硬化症、重症筋無力症、膜性増殖性糸球体腎炎およびシェーグレン症候群など、これ以外の炎症症候および自己免疫/免疫複合体病も補体活性化と密接に関係している(非特許文献12)。
【0005】
補体による障害の分野では抗体治療剤が求められており、本発明のヒト化抗体はこうしたニーズを満たすのに有用な高親和性抗体となる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】V.M.Holers,In Clinical Immunology:Principles and Practice,ed.R.R.Rich,Mosby Press;1996,363−391
【非特許文献2】P.H.Lesavre and H.J.Muller−Eberhard.J.Exp.Med.,1978;148:1498−1510
【非特許文献3】J.E.Volanakis et al.,New Eng.J.Med.,1985;312:395−401
【非特許文献4】Y.Wang et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.;1996,93:8563−8568
【非特許文献5】Y.Wang et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.,1995;92:8955−8959
【非特許文献6】CS.Rinder,J.Clin.Invest,1995;96:1564−1572
【非特許文献7】T.J.Kroshus et al.,Transplantation,1995;60:1194−1202
【非特許文献8】J.W.Homeister et al.,J.Immunol.,1993;150:1055−1064
【非特許文献9】H.F.Weisman et al.,Science,1990;249:146−151
【非特許文献10】E.A.Amsterdam et al.,Am.J.Physiol.,1995;268:H448−H457
【非特許文献11】R.Rabinovici et al.,J.Immunol.,1992;149:1744−1750
【非特許文献12】V.M.Holers,ibid.,BP.Morgan.Eur.J.Clin.Invest,1994:24:219−228
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、全般的にはD因子に関係する生物活性を阻害することができる抗体である、マウス抗体166−32の重鎖および軽鎖可変ドメイン配列を含む抗体に関する。たとえば、濃度18μg/ml(ヒトD因子の血中モル濃度の約1.5倍に相当;抗D因子抗体とD因子のモル比は約1.5:1)において、この抗体が代替補体活性を顕著に阻害することが観察できる(たとえば、米国特許第6,956,107号明細書を参照)
さらに、本発明は、マウスMAb166−32のヒト化抗体にも関する。本発明は、この抗体の可変重鎖および軽鎖のアミノ酸配列および対応する核酸配列を含む。本発明の別の実施形態は、これらの抗体のCDR配列を含む。
【0008】
本発明の別の実施形態は、本発明の抗体を含む組成物を含む。別の実施形態では、本発明は、本発明の抗体配列を持つ細胞株およびベクターを提供する。一態様では、本発明は、本発明の抗体および組成物の製造および使用方法を含む。
【0009】
本(preset)発明の別の実施形態は、過剰または制御されない補体活性化に関係する障害を処置する薬物または組成物を調製するためのこうしたヒト化抗体の使用である。障害は、心肺バイパス手術における補体活性化;急性心筋梗塞、動脈瘤、脳卒中、出血性ショック、挫滅、多臓器不全、血液量減少性ショック(hypobolemic shock)、腸管虚血または虚血の原因となる他の事象後の虚血再灌流による補体活性化を含む。また、補体活性化は、重度の火傷、内毒素血症、敗血症性ショック、成人呼吸窮迫症候群、血液透析;アナフィラキシーショック、重度の喘息、血管浮腫、クローン病、鎌状赤血球貧血、連鎖球菌感染後糸球体腎炎および膵炎などの炎症症候に関係することも明らかになっている。障害は、医薬品副作用、薬剤アレルギー、IL−2による血管漏出症候群またはX線造影剤アレルギーによる場合もある。さらに、障害は、全身性エリテマトーデス、重症筋無力症、関節リウマチ、アルツハイマー病および多発性硬化症などの自己免疫疾患も含む。また、補体活性化は、移植拒絶反応にも関係している。さらに、補体活性化は、加齢黄斑変性症、糖尿病性網膜症などの眼疾患にも関係している。
本発明は、例えば以下の項目を提供する。
(項目1)
配列番号1の重鎖可変ドメイン配列を含む、マウス抗体。
(項目2)
配列番号2の軽鎖可変ドメイン配列を含む、マウス抗体。
(項目3)
項目1に記載の重鎖可変ドメイン配列および項目2に記載の軽鎖可変ドメイン配列を含む、マウス抗体。
(項目4)
配列番号13、14、15、16、17および18を含む、抗体。
(項目5)
配列番号1および配列番号2を含む、キメラ抗体。
(項目6)
配列番号6;配列番号8;配列番号10;および配列番号12からなる群から選択される重鎖可変ドメインのアミノ酸配列を含む、ヒト化抗体の可変ドメイン。
(項目7)
配列番号5;配列番号7;配列番号9および配列番号11からなる群から選択される軽鎖可変ドメインのアミノ酸配列を含む、ヒト化抗体の可変ドメイン。
(項目8)
配列番号5の可変ドメイン配列および配列番号6の可変ドメイン配列を含む、ヒト化抗D因子抗体。
(項目9)
配列番号7の可変ドメイン配列および配列番号8の可変ドメイン配列を含む、ヒト化抗D因子抗体。
(項目10)
配列番号9の可変ドメイン配列および配列番号10の可変ドメイン配列を含む、ヒト化抗D因子抗体。
(項目11)
配列番号11の可変ドメイン配列および配列番号12の可変ドメイン配列を含む、ヒト化抗D因子抗体。
(項目12)
配列番号16の配列を持つCDR−L1;配列番号17、21または23の配列を持つCDR−L2および配列番号18、22または24の配列を持つCDR−L3を含む可変軽鎖を持つ、ヒト化抗D因子抗体。
(項目13)
配列番号13または25の配列を持つCDR−H1;配列番号14の配列を持つCDR−H2;および配列番号15または20の配列を持つCDR−H3を含む可変重鎖を持つ、ヒト化抗D因子抗体。
(項目14)
以下のアミノ酸配列:
QXQLVQSGXE LKKPGASVKV SCKASGYTFT SYGMNWVXQA PGQGLEWMGW INTYTGETTYADDFKGRFVF SLDTSVSTAY LQISSLKAED TAXYYCXREG GVNNWGQGTL VTVSS(配列番号27)、を含むポリペプチドであって、
ここで配列中、XはIまたはVであり;XはPまたはSであり;XはKまたはRであり;XはTまたはVであり;XはEまたはAである、ポリペプチド。
(項目15)
以下のアミノ酸配列:
DIQXTQSPSSLSXSVGDRVTITCITSTDIDDDMNWYQQKPGKXPKLLIXDGNTLRPGVPSRFSX10SGSGX11DFTLTISSLQPEDVATYYCLQSDSLPYTFGQ GTKLEIK(配列番号26)、を含むポリペプチドであって、
ここで配列中、XはVまたはMであり;XはMまたはAであり;XはPまたはVであり;XはSまたはYであり;X10はSまたはGであり、X11はAまたはTである、ポリペプチド。
(項目16)
配列番号6、8、10または12のアミノ酸配列を含む、ポリペプチド。
(項目17)
配列番号5、7、9または11のアミノ酸配列を含む、ポリペプチド。
(項目18)
項目14に記載のポリペプチドを含む、ヒト化抗体。
(項目19)
項目15または33に記載のポリペプチドをさらに含む、項目18に記載のヒト化抗体。
(項目20)
項目1〜13、18〜19、31または32のいずれか1項に記載の抗体フラグメント。
(項目21)
配列番号3の配列を含む、単離された核酸。
(項目22)
配列番号4の配列を含む、単離された核酸。
(項目23)
項目1〜13、18〜19、31または32のいずれか1項に記載の抗体をコードする、単離された核酸。
(項目24)
項目14〜17のいずれか1項に記載のポリペプチドをコードする、単離された核酸。
(項目25)
項目23に記載の核酸を含む、ベクター。
(項目26)
項目24に記載の核酸を含む、ベクター。
(項目27)
項目25または26に記載のベクターを含む、細胞株。
(項目28)
項目1〜13、18または19のいずれか1項に記載の抗体を含む、組成物。
(項目29)
補体による障害を処置する、項目28に記載の組成物の使用。
(項目30)
前記障害は加齢黄斑変性症または糖尿病性網膜症などの眼疾患である、項目29に記載の使用。
(項目31)
配列番号7の104番目のアミノ酸はバリンまたはロイシンである、項目7に記載の可変ドメイン。
(項目32)
配列番号7の104番目のアミノ酸がバリンまたはロイシンである配列番号7の可変ドメイン配列および配列番号8の可変ドメイン配列を含む、項目9に記載のヒト化抗D因子抗体。
(項目33)
配列番号26の104番目のアミノ酸はバリンまたはロイシンである、項目15に記載のポリペプチド。
(項目34)
配列番号7の104番目のアミノ酸はバリンまたはロイシンである、項目17に記載のポリペプチド。
(項目35)
項目1〜13、18〜19、31または32のいずれか1項に記載のヒト化抗D因子抗体またはそのフラグメントを作製する、方法。
(項目36)
マウス抗体166−32および/またはヒト化抗D因子抗体クローン#56、#111、#250もしくは#416および/またはヒト化抗D因子抗体クローン#56、#111、#250もしくは#416の可変ドメインまたはHVR配列を含む抗体と競合する、抗体。
(項目37)
マウス抗体166−32および/またはヒト化抗D因子抗体クローン#56、#111、#250もしくは#416および/またはヒト化抗D因子抗体クローン#56、#111、#250もしくは#416の可変ドメインまたはHVR配列を含む抗体と同じエピトープに結合する、抗体。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1Aおよび図1Bは、マウスMAb166−32の可変重鎖のアミノ酸配列(図1A)およびマウスMAb166−32の可変軽鎖(図1B)のアミノ酸配列を示す。
【図2】図2Aおよび図2Bは、マウスMAb166−32の可変重鎖の核酸配列(図2A)およびマウスMAb166−32の可変軽鎖の核酸配列(図2B)を示す。
【図3】マウスMAb166−32の重鎖の比較を示す。
【図4】マウスMAb166−32の軽鎖を示す。
【図5】ヒト化抗体クローン#56、#111、#250および#416それぞれの可変重鎖および可変軽鎖のアミノ酸配列を示す。
【図6】ヒト化抗体Fabクローン#56、#111、#250および#416に対する溶血アッセイの結果を示す。
【図7】ヒト化抗体Fabクローン#56、#111、#250および#416による代替補体活性の阻害を示す。
【図8A】可変重鎖(VH)コンセンサスフレームワークであり、本発明を実施する際に用いてもよい例示的なアクセプターヒトコンセンサスフレームワーク配列を示し、配列識別子は以下のとおりである:ヒトVHサブグループIコンセンサスフレームワークマイナスKabatCDR(配列番号28)、ヒトVHサブグループIコンセンサスフレームワークマイナス伸長超可変領域(配列番号29〜31)、ヒトVHサブグループIIコンセンサスフレームワークマイナスKabatCDR(配列番号32)、ヒトVHサブグループIIコンセンサスフレームワークマイナス伸長超可変領域(配列番号33〜35)、ヒトVHサブグループIIIコンセンサスフレームワークマイナスKabatCDR(配列番号36)、ヒトVHサブグループIIIコンセンサスフレームワークマイナス伸長超可変領域(配列番号37〜39)、ヒトVHサブグループVIIコンセンサスフレームワークマイナスKabatCDR(配列番号55)、ヒトVHサブグループVIIコンセンサスフレームワークマイナス伸長超可変領域(配列番号56〜58)、ヒトVHアクセプターフレームワークマイナスKabatCDR(配列番号40)、ヒトVHアクセプターフレームワークマイナス伸長超可変領域(配列番号41〜42)、ヒトVHアクセプター2フレームワークマイナスKabatCDR(配列番号43)およびヒトVHアクセプター2フレームワークマイナス伸長超可変領域(配列番号44〜46)。
【図8B】可変重鎖(VH)コンセンサスフレームワークであり、本発明を実施する際に用いてもよい例示的なアクセプターヒトコンセンサスフレームワーク配列を示し、配列識別子は以下のとおりである:ヒトVHサブグループIコンセンサスフレームワークマイナスKabatCDR(配列番号28)、ヒトVHサブグループIコンセンサスフレームワークマイナス伸長超可変領域(配列番号29〜31)、ヒトVHサブグループIIコンセンサスフレームワークマイナスKabatCDR(配列番号32)、ヒトVHサブグループIIコンセンサスフレームワークマイナス伸長超可変領域(配列番号33〜35)、ヒトVHサブグループIIIコンセンサスフレームワークマイナスKabatCDR(配列番号36)、ヒトVHサブグループIIIコンセンサスフレームワークマイナス伸長超可変領域(配列番号37〜39)、ヒトVHサブグループVIIコンセンサスフレームワークマイナスKabatCDR(配列番号55)、ヒトVHサブグループVIIコンセンサスフレームワークマイナス伸長超可変領域(配列番号56〜58)、ヒトVHアクセプターフレームワークマイナスKabatCDR(配列番号40)、ヒトVHアクセプターフレームワークマイナス伸長超可変領域(配列番号41〜42)、ヒトVHアクセプター2フレームワークマイナスKabatCDR(配列番号43)およびヒトVHアクセプター2フレームワークマイナス伸長超可変領域(配列番号44〜46)。
【図9A】可変軽鎖(VL)コンセンサスフレームワークであり、本発明を実施する際に用いてもよい例示的なアクセプターヒトコンセンサスフレームワーク配列を示し、配列識別子は以下のとおりである:ヒトVLκサブグループIコンセンサスフレームワーク(配列番号47)、ヒトVLκサブグループIIコンセンサスフレームワーク(配列番号48)、ヒトκサブグループIIIコンセンサスフレームワーク(配列番号49)およびヒトκサブグループIVコンセンサスフレームワーク(配列番号50)。
【図9B】可変軽鎖(VL)コンセンサスフレームワークであり、本発明を実施する際に用いてもよい例示的なアクセプターヒトコンセンサスフレームワーク配列を示し、配列識別子は以下のとおりである:ヒトVLκサブグループIコンセンサスフレームワーク(配列番号47)、ヒトVLκサブグループIIコンセンサスフレームワーク(配列番号48)、ヒトκサブグループIIIコンセンサスフレームワーク(配列番号49)およびヒトκサブグループIVコンセンサスフレームワーク(配列番号50)。
【発明を実施するための形態】
【0011】
定義
本出願において使用する用語については、当業者に通常の一般的な意味で解釈すべきである。ただし、出願人は以下の用語を以下に規定するように詳細に定義したい。
【0012】
抗体鎖ポリペプチド配列に関する「実質的に同一」という語句は、抗体鎖が参照ポリペプチド配列に対して少なくとも70%または80%または90%または95%の配列同一性を示すと解釈できる。核酸配列に関するこの用語は、ヌクレオチド配列が参照核酸配列に対して少なくとも約85%または90%または95%または97%の配列同一性を示すと解釈できる。
【0013】
「同一性」または「相同性」という語は、必要に応じて配列を整列させギャップを入れ、全配列のパーセント同一性が最大になるようにした後、候補配列のアミノ酸残基と、対応する比較対象の配列の残基とが同一である割合という意味で解釈すべきであり、保存的置換については配列同一性の一部として一切考慮しない。N末端またはC末端の伸長と挿入のいずれも同一性または相同性を低下させるものと解釈してはならない。アライメントの方法およびコンピュータプログラムは、当該技術分野において周知である。配列同一性を、配列解析ソフトウェアを用いて測定してもよい。
【0014】
「抗体」という語は、最も広い意味で用いるが、具体的にはモノクローナル抗体(全長モノクローナル抗体など)、ポリクローナル抗体および多重特異的抗体(二重特異性抗体など)を含む。抗体(Ab)および免疫グロブリン(Ig)は、同じ構造特性を持つ糖タンパク質である。抗体は特定の標的に対して結合特異性を示すのに対し、免疫グロブリンは、抗体と標的特異性のない他の抗体様分子との両方を含む。未変性の抗体および免疫グロブリンは、ほとんどの場合、約150,000ダルトンのヘテロ四量体糖タンパク質で、同一の2本の軽(L)鎖および同一の2本の重(H)鎖からなる。重鎖にはそれぞれ一方の末端に可変ドメイン(V)があり、これにいくつかの定常ドメインが続いている。軽鎖にはそれぞれ一方の末端に可変ドメイン(V)があり、他方の末端に定常ドメインがある。
【0015】
本明細書で使用する場合、「抗ヒトD因子抗体」とは、補体活性化を阻害または実質的に低減する形でヒトD因子に特異的に結合する抗体をいう。
【0016】
抗体の可変ドメインの文脈における「可変」という語は、抗体において可変ドメインの一定部分の配列が大きく異なることをいい、特定の標的に対する個々の抗体の結合および特異性を対象として用いられる。しかしながら、可変性は、抗体の可変ドメイン全体に均一に分布するものではない。可変性は、軽鎖可変ドメインでも重鎖可変ドメインでも相補性決定領域(CDR:complementarity determining region)と呼ばれる3つセグメントに集中しており、この領域は超可変領域(HVR:hypervariable region)とも呼ばれる。可変ドメインのより高度に保存された部分は、フレームワーク(FR:フレームワーク)とも呼ばれている。未変性の重鎖および軽鎖の可変ドメインはそれぞれ、大部分がβシート構造(configuration)をとり3つのCDRで連結された4つのFR領域を含み、CDRはβシート構造を連結し、場合によってはβシート構造の一部になるループを形成している。各鎖のCDRはFR領域と近接して保持され、他方の鎖のCDRと共に、抗体の標的結合部位の形成に寄与している(Kabatらを参照)。本明細書で使用する場合、他に記載がない限り、免疫グロブリンのアミノ酸残基の番号付けに関してはKabatらの免疫グロブリンのアミノ酸残基番号付けシステム(Sequences of Proteins of Immunological Interest,National Institute of Health,Bethesda,Md. 1987)に従って行う。
【0017】
本明細書で使用する場合、「超可変領域」、「HVR」または「HV」という語は、配列が超可変性である、および/または構造的に明確なループを形成する抗体可変ドメインの領域をいう。通常、抗体は、VHに3つ(H1、H2、H3)およびVL(L1、L2、L3)に3つの6つの超可変領域を含む。超可変領域の多くの図表が使用されており、本明細書中に包含される。Kabatの相補性決定領域(CDR)は、配列可変性に基づくもので、最も多く使われている(Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,MD.(1991))。Chothiaは代わりに、構造ループの位置に言及している(Chothia and Lesk J.Mol.Biol.196:901−917(1987))。AbMの超可変領域は、KabatのCDRとChothiaの構造ループの折衷案であり、Oxford Molecular’s AbM抗体モデリングソフトウェアで使用されている。「接触」超可変領域は、利用可能な複合体結晶構造の解析に基づいている。これらの超可変領域の残基をそれぞれ以下に示す。
【0018】
【化1】

超可変領域は、VLに24〜36または24〜34(L1)、46〜56または50〜56(L2)および89〜97(L3)、VHに26〜35(H1)、50〜65または49〜65(H2)および93〜102、94〜102または95〜102(H3)のように「伸長超可変領域」を含んでもよい。これらの定義ごとに上掲のKabatらに従って可変ドメイン残基に番号を付ける。
【0019】
「フレームワーク」または「FR」残基は、本明細書に定義する超可変領域残基またはCDR残基以外の可変ドメイン残基である。
【0020】
「Kabatと同様の可変ドメイン残基番号付け」または「Kabatと同様のアミノ酸位置番号付け」という語およびその変形は、Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,MD.(1991)において、集めた抗体の重鎖可変ドメインまたは軽鎖可変ドメインに用いた番号付けシステムをいう。この番号付けシステムを用いると、実際の直鎖アミノ酸配列に含まれるアミノ酸が、可変ドメインのFRまたはCDRの短縮あるいは可変ドメインのFRまたはCDRへの挿入に伴い減少したり付加されたりすることがある。たとえば、重鎖可変ドメインは、H2の残基52の後に単一のアミノ酸挿入(insert)(Kabatによる残基52)および重鎖FR残基82の後に挿入された残基(たとえば、Kabatによる残基82a、82bおよび82cなど)を含んでもよい。個々の抗体の残基のKabat番号については、抗体配列の相同性領域において「標準」Kabat番号付け配列とのアライメントを行い決定してもよい。
【0021】
可変ドメインの残基(軽鎖の約1〜107残基および重鎖の1〜113残基)について言及する際は、通常、Kabatの番号付けシステムが用いられる(たとえば、Kabat et al.,Sequences of Immunological Interest.5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,Md.(1991))。免疫グロブリン重鎖定常領域の残基について言及する際は、「EU番号付けシステム」または「EUインデックス」が用いられるのが一般的である(たとえば、上掲のKabatらにより報告されたEUインデックス;重鎖定常ドメインのヒンジ領域は、重鎖の約216〜230残基(EU番号付け)である)。「Kabatと同様のEUインデックス」とは、ヒトIgG1 EU抗体の残基番号付けをいう。本明細書では他に記載がない限り、抗体の可変ドメインの残基番号に関する言及は、Kabatの番号付けシステムによる残基番号である。本明細書では他に記載がない限り、抗体の定常ドメインの残基番号に関する言及は、EU番号付けシステムによる残基番号である(たとえば、米国仮特許出願第60/640,323号明細書、EU番号付けの図を参照)。
【0022】
「抗体フラグメント」という語は、全長抗体の一部、通常、標的結合領域または可変領域をいう。抗体フラグメントの例として、Fab、Fab’、F(ab’)およびFvフラグメントが挙げられる。抗体の「機能的フラグメントまたはアナログ」という語句は、全長抗体と同様の定性的生物活性を持つ化合物をいう。たとえば、抗ヒトD因子抗体の機能的フラグメントまたはアナログは、補体活性化を阻止または実質的に低減するようにD因子に結合できるものである。本明細書で使用する場合、抗体に関する「機能的フラグメント」とは、Fv、F(ab)およびF(ab’)フラグメントをいう。「Fv」フラグメントは、完全な標的認識および結合部位を含む最小の抗体フラグメントである。この領域は、非共有結合で緊密に会合した1つの重鎖可変ドメインと1つの軽鎖可変ドメインのダイマーからなる(V−Vダイマー)。この構造(configuration)において各可変ドメインの3つのCDRが相互作用し、V−Vダイマーの表面で標的結合部位が規定される。全体として、6つのCDRが抗体に標的結合特異性を与える。しかしながら、単一可変ドメイン(または標的に特異的な3つのCDRのみを含むFvの半分)であっても標的を認識し、これと結合することができる。「一本鎖Fv」または「sFv」抗体フラグメントは、抗体のVおよびVドメインを含み、これらのドメインが単一のポリペプチド鎖に存在する。通常、Fvポリペプチドは、VドメインとVドメインの間にポリペプチドリンカーをさらに含み、sFvが標的結合に望ましい構造を形成することができるようになっている。
【0023】
Fabフラグメントは、軽鎖の定常ドメインおよび重鎖の第1の定常ドメイン(CH1)を含む。Fab’フラグメントは、Fabフラグメントと異なり、重鎖CH1ドメインのカルボキシル末端に抗体ヒンジ領域から1つまたは複数のシステインなど、少数の残基が付加されている。F(ab’)フラグメントは、F(ab’)ペプシン消化産物のヒンジシステインにおいてジスルフィド結合を切断することで得られる。抗体フラグメントのさらなる化学的カップリングは、当業者に知られている。
【0024】
本明細書で使用する場合、「モノクローナル抗体」という語は、実質的に均一な抗体の集団から得られた抗体をいい、言い換えれば、集団を構成する個々の抗体は、微量で存在する場合がある、自然に発生する突然変異を除けば同一である。モノクローナル抗体は、特異性が高く、単一の標的(targetic)部位を標的とする。さらに、一般に複数の決定基(エピトープ)に対して複数の抗体を含む従来の(ポリクローナル)抗体調製物と異なり、各モノクローナル抗体は、標的上の単一の決定基を標的とする。モノクローナル抗体は、その特異性ばかりでなく、ハイブリドーマ培養により他の免疫グロブリンに汚染されずに合成できるという点でも好都合である。「モノクローナル」という修飾語は、実質的に均一な抗体の集団から得られたものとしての抗体の特徴を示すもので、抗体を任意の特定の方法で作製する必要があるものと解釈してはならない。たとえば、本発明に用いるモノクローナル抗体を周知の技法を用いてファージ抗体ライブラリーから単離してもよい。本発明に従って使用できる親モノクローナル抗体に関しては、Kohler and Milstein,Nature 256,495(1975)に最初に記載されたハイブリドーマ法で作製してもよいし、組換え法で作製してもよい。
【0025】
非ヒト(マウスなど)抗体の「ヒト化」形態は、キメラ免疫グロブリン、免疫グロブリン鎖またはそのフラグメント(Fv、Fab、Fab’、F(ab’)または抗体のこれ以外の標的結合部分配列など)であり、非ヒト免疫グロブリン由来の最小配列を含む。一般に、ヒト化抗体は、少なくとも1つおよび一般には2つの可変ドメインの実質的に全部を含み、CDR領域の全部または実質的に全部は、非ヒト免疫グロブリンのCDR領域であり、FR領域の全部または実質的に全部は、ヒト免疫グロブリンコンセンサス配列のFR領域である。ヒト化抗体は、免疫グロブリン定常領域(Fc)、一般には選択したヒト免疫グロブリン鋳型の免疫グロブリン定常領域(Fc)の少なくとも一部をさらに含んでもよい。
【0026】
非ヒト抗体をヒト化する方法は、当該技術分野において周知である。通常、ヒト化抗体は、ヒト以外の供給源から導入された1つまたは複数のアミノ酸残基を持っている。これらの非ヒトアミノ酸残基は、多くの場合、「移入」残基と呼ばれ、一般に「移入」可変ドメインから取り出す。ヒト化は本質的に、Winterおよび共同研究者の方法[Jones et al.,Nature321:522−525(1986);Riechmann et al.,Nature332:323−327(1988);Verhoeyen et al.,Science239:1534−1536(1988)]に準じて、齧歯動物CDRまたはCDR配列をヒト抗体の対応する配列と置き換えることで行うことできる。そのため、こうした「ヒト化」抗体は、完全なヒト可変ドメインよりも実質的に小さなドメインを非ヒト種由来の対応する配列で置き換えたキメラ抗体である(米国特許第4,816,567号明細書)。実際のヒト化抗体は、いくつかのCDR残基、場合よってはいくつかのFR残基も齧歯動物抗体の類似部位の残基で置き換えられているヒト抗体であるのが一般的である。
【0027】
抗体をヒトの治療に使用することを意図しているとき、軽鎖でも重鎖でも、ヒト化抗体の作製に用いるヒト可変ドメインの選択は、抗原性および/またはHAMA(human anti−mouse antibody:ヒト抗マウス抗体)反応を低下させる上で場合によって重要になることがある。HAMA反応の低減または除去は通常、好適な治療薬の臨床開発において重要な側面である。たとえば、Khaxzaeli et al.,J.Natl.Cancer Inst.(1988),80:937;Jaffers et al.,Transplantation(1986),41:572;Shawler et al.,J.Immunol.(1985),135:1530;Sears et al.,J.Biol.Response Mod.(1984),3:138;Miller et al.,Blood(1983),62:988;Hakimi et al.,J.Immunol.(1991),147:1352;Reichmann et al.,Nature(1988),332:323;Junghans et al.,Cancer Res.(1990),50:1495を参照されたい。本明細書に記載のように、本発明は、HAMA反応を低減または除去するようにヒト化した抗体を提供する。また、当該技術分野において公知の通常の方法を用いて、これらの抗体の変異体を得てもよく、その一部を以下にさらに記載する。いわゆる「ベストフィット」法に従い、齧歯動物抗体の可変ドメイン配列について既知のヒト可変ドメイン配列の全ライブラリーをスクリーニングする。齧歯動物のVドメイン配列に最も近いヒトVドメイン配列を特定し、その配列内のヒトフレームワーク領域(FR)をヒト化抗体用に受け入れる(Sims et al.,J.Immunol.151:2296(1993);Chothia et al.,J.Mol.Biol.,196:901(1987))。別の方法では、軽鎖または重鎖の特定のサブグループのすべてのヒト抗体のコンセンサス配列に由来する特定のフレームワーク領域を用いる。複数の異なるヒト化抗体に対して、同じフレームワークを用いてもよい(Carter et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,89:4285(1992);Presta et al.,J.Immunol.151:2623(1993))。
【0028】
たとえば、本明細書に記載する抗体のアミノ酸配列は、フレームワークおよび/または超可変配列(単数または複数)を多様化するための出発(親)配列としての役割を果たしてもよい。本明細書では、出発超可変配列を連結する、選択されたフレームワーク配列をアクセプターヒトフレームワークという。アクセプターヒトフレームワークは、ヒト免疫グロブリン(そのVLおよび/またはVH領域)のフレームワーク、またはそれに由来するフレームワークでもよいが、そのフレームワークがヒト患者において免疫原性がほとんどないか、まったくないことが証明されているようなヒトコンセンサスフレームワーク配列のフレームワーク、またはそれに由来するフレームワークでもよい。本明細書において、「アクセプターヒトフレームワーク」は、ヒト免疫グロブリンフレームワークまたはヒトコンセンサスフレームワークに由来するVLまたはVHフレームワークのアミノ酸配列を含むフレームワークである。ヒト免疫グロブリンフレームワークまたはヒトコンセンサスフレームワーク「に由来する」アクセプターヒトフレームワークは、それらと同じアミノ酸配列を含んでもよいし、既存のアミノ酸配列の変化を含んでいてもよい。既存のアミノ酸に変化がある場合、既存のアミノ酸の変化は好ましくは5以下、好ましくは4以下あるいは3以下で存在する。一実施形態では、VHアクセプターヒトフレームワークの配列は、VHヒト免疫グロブリンフレームワーク配列またはヒトコンセンサスフレームワーク配列と同一である。一実施形態では、VLアクセプターヒトフレームワークの配列は、VLヒト免疫グロブリンフレームワーク配列またはヒトコンセンサスフレームワーク配列と同一である。「ヒトコンセンサスフレームワーク」は、選択したヒト免疫グロブリンVLまたはVHフレームワーク配列の中で最も多く見られるアミノ酸残基を示すフレームワークである。通常、ヒト免疫グロブリンVLまたはVH配列の選択は、可変ドメイン配列のサブグループから行う。配列のサブグループは、Kabatらと同様のサブグループであるの一般的である。一実施形態では、VLのサブグループは、Kabatらと同様のサブグループκIである。一実施形態では、VHのサブグループは、Kabatらと同様のサブグループIIIである。
【0029】
アクセプターがヒト免疫グロブリンに由来する場合、ドナーフレームワーク配列に対する相同性に基づき選ばれたヒトフレームワーク配列を任意に選択してもよく、これにはドナーフレームワーク配列をヒトフレームワーク配列の集合体の中の様々なヒトフレームワーク配列と整列させ、最も相同的なフレームワーク配列をアクセプターとして選択する。アクセプターヒトフレームワークは、公共データベースで入手可能なヒト抗体生殖系列配列のフレームワーク、またはそれに由来するフレームワークであってもよい。
【0030】
一実施形態では、本明細書のヒトコンセンサスフレームワークは、VHサブグループVIIおよび/またはVLκサブグループIコンセンサスフレームワーク配列のフレームワーク、またはそれに由来するフレームワークである。
【0031】
一実施形態では、抗D因子抗体の作製に使用するヒトフレームワークの鋳型は、VH鎖のVI−4.1b+(VH7ファミリー)とJH4dの組み合わせ(図3)および/またはVL鎖のDPK4(VκIファミリー)とJK2の組み合わせ(図4)を含む鋳型を含む、フレームワーク配列を含んでもよい。
【0032】
したがって、VHアクセプターヒトフレームワークは、QXQLVQSGXELKKPGASVKVSCKAS(配列番号27のアミノ酸1〜25)を含むFR1、配列中、XはIまたはVであり、XはPまたはSである;WVXQAPGQGLE(配列番号27のアミノ酸36〜46)を含むFR2、配列中、XはKまたはRである;RFVFSLDTSVSTAYLQISSLKAEDTAXYYCXR(配列番号27のアミノ酸67〜98)を含むFR3、配列中、XはTまたはVであり、XはEまたはAである;WGQGTLVTVSS(配列番号8のアミノ酸105〜115または配列番号27のアミノ酸105〜115)を含むFR4のフレームワーク配列のうち1つ、2つ、3つまたは全部を含んでもよい。
【0033】
VHコンセンサスフレームワークの例として、
ヒトVHサブグループIコンセンサスフレームワークマイナスKabatCDR(配列番号28);
ヒトVHサブグループIコンセンサスフレームワークマイナス伸長超可変領域(配列番号29〜31);
ヒトVHサブグループIIコンセンサスフレームワークマイナスKabatCDR(配列番号32);
ヒトVHサブグループIIコンセンサスフレームワークマイナス伸長超可変領域(配列番号33〜35);
ヒトVHサブグループIIIコンセンサスフレームワークマイナスKabatCDR(配列番号36);
ヒトVHサブグループIIIコンセンサスフレームワークマイナス伸長超可変領域(配列番号37〜39);
ヒトVHサブグループVIIコンセンサスフレームワークマイナスKabatCDR(配列番号55);
ヒトVHサブグループVIIコンセンサスフレームワークマイナス伸長超可変領域(配列番号56〜58);
ヒトVHアクセプターフレームワークマイナスKabatCDR(配列番号40);
ヒトVHアクセプターフレームワークマイナス伸長超可変領域(配列番号41〜42);ヒトVHアクセプター2フレームワークマイナスKabatCDR(配列番号43);または
ヒトVHアクセプター2フレームワークマイナス伸長超可変領域(配列番号44〜45)が挙げられる。
【0034】
一実施形態では、VHアクセプターヒトフレームワークは、
QVQLVQSGPELKKPGASVKVSCKAS(配列番号8のアミノ酸1〜25)を含むFR1、
WVRQAPGQGLE(配列番号8のアミノ酸36〜46)を含むFR2、
RFVFSLDTSVSTAYLQISSLKAEDTAVYYCER(配列番号8のアミノ酸67〜98)、
RFVFSLDTSVSTAYLQISSLKAEDTAVYYCE(配列番号8のアミノ酸67〜97)、
RFVFSLDTSVSTAYLQISSLKAEDTAVYYC(配列番号8のアミノ酸67〜96)、
RFVFSLDTSVSTAYLQISSLKAEDTAVYYCS(配列番号51)または
RFVFSLDTSVSTAYLQISSLKAEDTAVYYCSR(配列番号52)を含むFR3
WGQGTLVTVSS(配列番号8のアミノ酸105〜115または配列番号27のアミノ酸105〜115)を含むFR4
のフレームワーク配列のうち1つ、2つ、3つまたは全部を含む。
【0035】
VLアクセプターヒトフレームワークは、
DIQXTQSPSSLSXSVGDRVTITC(配列番号26のアミノ酸1〜23)を含むFR1、配列中、XはVまたはMであり、XはMまたはAである;
WYQQKPGKXPKLLIX(配列番号26のアミノ酸35〜49)を含むFR2、配列中、XはPまたはVであり、XはSまたはYである;
GVPSRFSX10SGSGX11DFTLTISSLQPEDVATYYC(配列番号26のアミノ酸57〜88)を含むFR3、配列中、X10はSまたはGであり、X11はAまたはTである;
FGQGTKX12EIK(配列番号54)を含むFR4、配列中、X12はVまたはLである、
フレームワーク配列のうち1つ、2つ、3つまたは全部を含んでもよい。
【0036】
VLコンセンサスフレームワークの例として、
ヒトVLκサブグループIコンセンサスフレームワーク(配列番号47);
ヒトVLκサブグループIIコンセンサスフレームワーク(配列番号48);
ヒトVLκサブグループIIIコンセンサスフレームワーク(配列番号49);または
ヒトVLκサブグループIVコンセンサスフレームワーク(配列番号50)
が挙げられる
一実施形態では、VLアクセプターヒトフレームワークは、
DIQVTQSPSSLSASVGDRVTITC(配列番号7のアミノ酸1〜23)を含むFR1、
WYQQKPGKVPKLLIS(配列番号7のアミノ酸35〜49)を含むFR2、
GVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDVATYYC(配列番号7のアミノ酸57〜88)を含むFR3、
FGQGTKLEIK(配列番号7のアミノ酸98〜107)または
FGQGTKVEIK(配列番号53)を含むFR4
のフレームワーク配列のうち1つ、2つ、3つまたは全部を含んでもよい。
【0037】
アクセプターの配列は、ヒト免疫グロブリン由来かヒトコンセンサスフレームワーク由来かを問わず、選択したヒトフレームワーク配列と同一であってもよいが、本発明は、アクセプター配列が、ヒト免疫グロブリン配列またはヒトコンセンサスフレームワーク配列に対する既存のアミノ酸置換を含む場合があることを意図している。これらの既存の置換数は、好ましくはわずかであり、ほとんどの場合、ヒト免疫グロブリン配列またはコンセンサスフレームワーク配列に対して4、3、2または1個のアミノ酸の相違にとどまる。
【0038】
非ヒト抗体の超可変領域残基については、VLおよび/またはVHアクセプターヒトフレームワークに組み込む。たとえば、KabatのCDR残基、Chothiaの超可変性ループ残基、Abmの残基および/または接触残基に対応する残基を組み込んでもよい。任意に、24〜34(L1)、50〜56(L2)および89〜97(L3)、26〜35(H1)、50〜65または49〜65(H2)および93〜102、94〜102または95〜102(H3)などの伸長超可変領域残基を組み込む。
【0039】
一態様では、本発明は、(a)配列番号13、配列番号23および配列番号25から選択されるアミノ酸配列を含むHVR−H1;(b)配列番号14のアミノ酸配列を含むHVR−H2;(c)配列番号15および配列番号20から選択されるアミノ酸配列を含むHVR−H3;(d)配列番号16のアミノ酸配列を含むHVR−L1;(e)配列番号17、配列番号21および配列番号24から選択されるアミノ酸配列を含むHVR−L2;および(f)配列番号18、配列番号22および配列番号19から選択されるアミノ酸配列を含むHVR−L3から選択される、少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、5つまたは6つのHVRを含む抗体を提供する。
【0040】
一態様では、本発明は、(a)配列番号13および配列番号25から選択されるアミノ酸配列に対する配列同一性が少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%であるアミノ酸配列を含むHVR−H1;(b)配列番号14のアミノ酸配列に対する配列同一性が少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%であるアミノ酸配列を含むHVR−H2;(c)配列番号15および配列番号20から選択されるアミノ酸配列に対する配列同一性が少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%であるアミノ酸配列を含むHVR−H3;(d)配列番号16のアミノ酸配列に対する配列同一性が少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%であるアミノ酸配列を含むHVR−L1;(e)配列番号17、配列番号21および配列番号24から選択されるアミノ酸配列に対する配列同一性が少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%であるアミノ酸配列を含むHVR−L2;および(f)配列番号18、配列番号22および配列番号19から選択されるアミノ酸配列に対する配列同一性が少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%であるアミノ酸配列を含むHVR−L3から選択される、少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、5つまたは6つのHVRを含む抗D因子抗体を提供する。いくつかの実施形態では、配列同一性が少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%であるアミノ酸配列を持つHVRは、参照配列に対して置換、挿入または欠失を含むが、そのアミノ酸配列を含む抗体は、D因子に結合する能力を保持している。いくつかの実施形態では、配列番号13、配列番号25、配列番号14、配列番号15、配列番号20、配列番号16、配列番号17、配列番号21、配列番号23、配列番号18、配列番号19、配列番号22および配列番号24からなる群から選択される参照配列において全体で1〜10個のアミノ酸が置換、挿入または欠失されている。いくつかの実施形態では、本発明は、(a)配列番号13および配列番号25から選択されるアミノ酸配列を含むHVR−H1;(b)配列番号14のアミノ酸配列を含むHVR−H2;(c)配列番号15および配列番号20から選択されるアミノ酸配列を含むHVR−H3;(d)配列番号16のアミノ酸配列を含むHVR−L1;(e)配列番号17、配列番号21および配列番号24から選択されるアミノ酸配列を含むHVR−L2;および(f)配列番号18、配列番号22および配列番号19から選択されるアミノ酸配列を含むHVR−L3から選択される、少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、5つまたは6つのHVRを含む抗体を提供する。
【0041】
一態様では、本発明は、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12から選択される重鎖可変ドメインを含む抗体を提供する。一態様では、本発明は、配列番号5、配列番号7、配列番号9および配列番号11から選択される軽鎖可変ドメインを含む抗体を提供する。一態様では、本発明は、配列番号6を含む重鎖可変ドメインを含む抗体を提供する。一態様では、本発明は、配列番号5を含む軽鎖可変ドメインを含む抗体を提供する。一態様では、本発明は、配列番号6を含む重鎖可変ドメインをおよび配列番号5を含む軽鎖可変ドメインを含む抗体を提供する。一態様では、本発明は、配列番号8を含む重鎖可変ドメインを含む抗体を提供する。一態様では、本発明は、配列番号7を含む軽鎖可変ドメインを含む抗体を提供する。一態様では、本発明は、配列番号8を含む重鎖可変ドメインおよび配列番号7を含む軽鎖可変ドメインを含む抗体を提供する。一態様では、本発明は、配列番号10を含む重鎖可変ドメインを含む抗体を提供する。一態様では、本発明は、配列番号9を含む軽鎖可変ドメインを含む抗体を提供する。一態様では、本発明は、配列番号10を含む重鎖可変ドメインおよび配列番号9を含む軽鎖可変ドメインを含む抗体を提供する。一態様では、本発明は、配列番号12を含む重鎖可変ドメインを含む抗体を提供する。一態様では、本発明は、配列番号11を含む軽鎖可変ドメインを含む抗体を提供する。一態様では、本発明は、配列番号12を含む重鎖可変ドメインおよび配列番号11を含む軽鎖可変ドメインを含む抗体を提供する。
【0042】
一態様では、本発明は、配列番号6、8、10および12からなる群から選択されるアミノ酸配列に対する配列同一性が少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%であるアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインを含む抗D因子抗体を提供する。いくつかの実施形態では、参照配列に対して配列同一性が少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%であるアミノ酸配列は、置換、挿入または欠失を含むが、そのアミノ酸配列を含む抗体はD因子に結合する能力を保持している。いくつかの実施形態では、配列番号6、8、10または12からなる群から選択される配列において全体で1〜10個のアミノ酸が置換、挿入または欠失されている。いくつかの実施形態では、置換、挿入または欠失は、HVR外の領域で(すなわち、FRにおいて)起こる。いくつかの実施形態では、抗D因子抗体は、配列番号6、8、10または12からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインを含む。
【0043】
いくつかの実施形態では、本発明は、配列番号5、7、9および11からなる群から選択されるアミノ酸配列に対して配列同一性が少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%であるアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメインを含む抗D因子抗体を提供する。いくつかの実施形態では、配列同一性が少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%であるアミノ酸配列は、参照配列に対して置換、挿入または欠失を含むが、そのアミノ酸配列を含む抗体はD因子に結合する能力を保持している。いくつかの実施形態では、配列番号5、7、9および11からなる群から選択される配列において全体で1〜10個のアミノ酸が置換、挿入または欠失されている。いくつかの実施形態では、置換、挿入または欠失は、HVR外の領域で(すなわち、FRにおいて)起こる。いくつかの実施形態では、抗D因子抗体は、配列番号5、7、9および11からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメインを含む。
【0044】
抗D因子抗体は、任意の好適なフレームワーク可変ドメイン配列を含んでもよく、ただし、抗体はD因子に結合する能力を保持している。たとえば、いくつかの実施形態では、本発明の抗D因子抗体は、VI.4.1b+およびJH4dの組み合わせである重鎖可変ドメインフレームワーク配列を含む(図3を参照)。いくつかの実施形態では、本発明の抗D因子抗体は、ヒトサブグループVII重鎖フレームワークコンセンサス配列を含む。いくつかの実施形態では、本発明の抗D因子抗体は、配列番号8のアミノ酸1〜25を含むFR1、配列番号8のアミノ酸36〜46を含むFR2、配列番号8のアミノ酸67〜98を含むFR3および配列番号8のアミノ酸105〜115を含むFR4を含む、重鎖可変ドメインフレームワーク配列を含む。これらの抗体の一実施形態では、重鎖可変ドメイン配列は、40および/または88番目(Kabatの番号付け)に置換(単数または複数)を含む。これらの抗体の一実施形態では、40番目は、システイン(C)またはアラニン(A)であり、および/または88番目は、システイン(C)またはアラニン(A)である。いくつかの実施形態では、本発明の抗D因子抗体は、DPK4およびJK2の組み合わせである軽鎖可変ドメインフレームワーク配列を含む(図4を参照)。いくつかの実施形態では、本発明の抗D因子抗体は、ヒトκI(κI)軽鎖フレームワークコンセンサス配列を含む。いくつかの実施形態では、本発明の抗D因子抗体は、配列番号7のアミノ酸1〜23を含むFR1、配列番号7のアミノ酸35〜49を含むFR2、配列番号7のアミノ酸57〜88を含むFR3および配列番号7のアミノ酸98〜107を含むFR4を含む、軽鎖可変ドメインフレームワーク配列を含む。これらの抗体の一実施形態では、軽鎖可変フレームワーク配列は、15、43および/または104番目(Kabatの番号付け)に1つまたは複数の置換(単数または複数)を含む。これらの抗体の一実施形態では、15番目はシステイン(C)またはバリン(V)であり、43番目はシステイン(C)またはアラニン(A)であり、および/または104番目はバリン(V)またはロイシン(L)である。
【0045】
さらに、抗D因子抗体は、任意の好適な定常ドメイン配列を含んでもよく、ただし、抗体はD因子に結合する能力を保持している。たとえば、いくつかの実施形態では、本発明の抗D因子抗体は、重鎖定常ドメインの少なくとも一部を含む。一実施形態では、本発明の抗D因子抗体は、α、δ、ε、γ,またはμ重鎖の1つあるいはこれら組み合わせの重鎖定常ドメインを含む。免疫グロブリンは、重鎖定常ドメイン(C)のアミノ酸配列によって異なるクラスまたはアイソタイプに分類される。免疫グロブリンにはIgA、IgD、IgE、IgGおよびIgMの5つのクラスがあり、それぞれα、δ、ε、γおよびμと呼ばれる重鎖を持っている。γおよびαクラスは、C配列および機能の比較的小さな相違に基づきさらにサブクラスに分けられ、たとえば、ヒトではIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1およびIgA2のサブクラスで表される。一実施形態では、本発明の抗D因子抗体は、エフェクター機能(結合親和性など)に対して望ましい作用を与えるアミノ酸位置に置換を含む、重鎖定常ドメインを含む。一実施形態では、本発明の抗D因子抗体は、エフェクター機能(結合親和性など)に対して作用を与えないアミノ酸位置に置換を含む、重鎖定常ドメインを含む。一実施形態では、本発明の抗D因子抗体は、IgGタイプ(IgG1、IgG2、IgG3またはIgG4など)の重鎖定常ドメインを含み、114(Kabatの番号付け;EU番号付けの118に相当)、168(Kabatの番号付け;EU番号付けの172に相当)、172(Kabatの番号付け;EU番号付けの176に相当)および/または228(EU番号付け)番目に置換をさらに含む。一実施形態では、本発明の抗D因子抗体は、IgG(IgG1、IgG2、IgG3またはIgG4など)タイプの重鎖定常ドメインを含み、さらに114番目に置換を含み、114番目がシステイン(C)またはアラニン(A)であり、168番目がシステイン(C)またはアラニン(A)であり、172番目がシステイン(C)またはアラニン(A)であり、および/または228番目がプロリン(P)、アルギニン(R)またはセリン(S)である。
【0046】
さらに、たとえば、いくつかの実施形態では、本発明の抗D因子抗体は、軽鎖定常ドメインの少なくとも一部を含む。任意の脊椎動物種の軽鎖は、定常ドメインのアミノ酸配列に基づきκおよびλと呼ばれる明らかに異なる2タイプに分類できるため、一実施形態では、本発明の抗D因子抗体は、κまたはλ軽鎖の1つあるいはこれら組み合わせの軽鎖定常ドメインを含む。一実施形態では、本発明の抗D因子抗体は、エフェクター機能(結合親和性など)に対して望ましい作用を与えるアミノ酸位置に置換を含む、軽鎖定常ドメインを含む。一実施形態では、本発明の抗D因子抗体は、エフェクター機能(結合親和性など)に対して作用を与えないアミノ酸位置に置換を含む、軽鎖定常ドメインを含む。一実施形態では、本発明の抗D因子抗体は、κタイプの軽鎖定常ドメインを含み、さらに110、144、146および/または168番目(Kabatの番号付け)に置換を含む。一実施形態では、本発明の抗D因子抗体は、κタイプの軽鎖定常ドメインを含み、110がシステイン(C)またはバリン(V)である110番目に、144がシステイン(C)またはアラニン(A)である144番目に、146がイソロイシン(I)またはバリン(V)である146番目に、および/または168がシステイン(C)またはセリン(S)である168番目に置換をさらに含む。
【0047】
一態様では、本発明は、マウス抗体166−32および/またはヒト化抗D因子抗体クローン#56、#111、#250もしくは#416および/またはヒト化抗D因子抗体クローン#56、#111、#250もしくは#416の可変ドメインまたはHVR配列を含む抗体と競合する抗体を提供する。さらに、マウス抗体166−32および/またはヒト化抗D因子抗体クローン#56、#111、#250もしくは#416および/またはヒト化抗D因子抗体クローン#56、#111、#250もしくは#416の可変ドメインまたはHVR配列を含む抗体と同じエピトープに結合する抗体も提供する。
【0048】
一実施形態では、本発明は、D因子に対する抗体の一価親和性(D因子に対するFabフラグメントとしての抗体の親和性など)がより低い、たとえば、キメラ抗体の一価親和性(D因子に対するFabフラグメントとしてのキメラ抗体の親和性など)よりも少なくとも1倍または2倍低い抗D因子抗体であって、配列番号2の軽鎖可変ドメインおよび配列番号1の重鎖可変ドメインを含む、それらからなる、または本質的にそれらからなる、抗体を提供する。
【0049】
一実施形態では、本発明は、D因子に対する抗体の二価親和性(D因子に対するIgGとしての抗体の親和性など)がより低い、たとえば、キメラ抗体の二価親和性(D因子に対するIgGとしてのキメラ(cihmeric)抗体の親和性など)よりも少なくとも1倍または2倍低い抗D因子抗体であって、配列番号2の軽鎖可変ドメインおよび配列番号1の重鎖可変ドメインを含む、それらからなる、または本質的にそれらからなる、抗体を提供する。
【0050】
別の実施形態では、本発明は、D因子に対する抗体の一価親和性(D因子に対するFabフラグメントとしての抗体の親和性など)がより高い、たとえば、キメラ抗体の一価親和性(D因子に対するFabフラグメントとしてのキメラ抗体の親和性など)よりも少なくとも1倍または2倍高い抗D因子抗体であって、配列番号2の軽鎖可変ドメインおよび配列番号1の重鎖可変ドメインを含む、それらからなる、または本質的にそれらからなる、抗体を提供する。
【0051】
別の実施形態では、本発明は、D因子に対する抗体の二価親和性(D因子に対するIgGとしての抗体の親和性など)がより高い、たとえば、キメラ抗体の二価親和性(D因子に対するIgGとしてのキメラ抗体の親和性など)よりも少なくとも1倍または2倍高い抗D因子抗体であって、配列番号2の軽鎖可変ドメインおよび配列番号1の重鎖可変ドメインを含む、それらからなる、または本質的にそれらからなる、抗体を提供する。
【0052】
別の実施形態では、本発明は、D因子に対して抗体の一価形態での親和性(D因子に対するFabフラグメントとしての抗体の親和性など)が1.0nM(1.0×10−9M)以上である、抗D因子抗体を提供する。別の実施形態では、本発明は、D因子に対して抗体の一価形態での親和性(D因子に対するFabフラグメントとしての抗体の親和性など)が0.5nM(0.5×10−9M)以上である、抗D因子抗体を提供する。別の実施形態では、本発明は、D因子に対して抗体の一価形態での親和性(D因子に対するFabフラグメントとしての抗体の親和性など)が1.0pM(1.0×10−12M)以上である、抗D因子抗体を提供する。別の実施形態では、本発明は、D因子に対して抗体の一価形態での親和性(D因子に対するFabフラグメントとしての抗体の親和性など)が0.5pM(0.5×10−12M)以上である、抗D因子抗体を提供する。
【0053】
別の実施形態では、本発明は、D因子に対して抗体の二価形態での親和性(D因子に対するIgGとしての抗体の親和性など)が1.0nM(1.0×10−9M)以上である、抗D因子抗体を提供する。別の実施形態では、本発明は、D因子に対する抗体の二価形態での親和性(D因子に対するIgGとしての抗体の親和性など)が0.5nM(0.5×10−9M)以上である、抗D因子抗体を提供する。別の実施形態では、本発明は、D因子に対する抗体の二価形態での親和性(D因子に対するIgGとしての抗体の親和性など)が1.0pM(1.0×10−12M)以上である、抗D因子抗体を提供する。別の実施形態では、本発明は、D因子に対する抗体の二価形態での親和性(D因子に対するIgGとしての抗体の親和性など)が0.5pM(0.5×10−12M)以上である、抗D因子抗体を提供する。
【0054】
別の実施形態では、本発明は、D因子に対して抗体の一価形態での親和性(D因子に対するFabフラグメントとしての抗体の親和性など)が0.5mM(0.5×10−6M)と0.5pM(0.5×10−12M)の間にある、抗D因子抗体を提供する。別の実施形態では、本発明は、D因子に対して抗体の一価形態での親和性(D因子に対するFabフラグメントとしての抗体の親和性など)が15nM(15×10−9M)と0.1nM(0.1×10−9M)の間にある、抗D因子抗体を提供する。別の実施形態では、本発明は、D因子に対して抗体の一価形態での親和性(D因子に対するFabフラグメントとしての抗体の親和性など)が5.5nM(5.5×10−9M)と1nM(1×10−9M)の間にある、抗D因子抗体を提供する。別の実施形態では、本発明は、D因子に対して抗体の一価形態での親和性(D因子に対するFabフラグメントとしての抗体の親和性など)が0.5pM(0.5×10−12M)と2pM(2×10−12M)の間にある、抗D因子抗体を提供する。
【0055】
別の実施形態では、本発明は、D因子に対して抗体の二価形態での親和性(D因子に対するIgGとしての抗体の親和性など)が0.5mM(0.5×10−6M)と0.5pM(0.5×10−12M)の間にある、抗D因子抗体を提供する。別の実施形態では、本発明は、D因子に対して抗体の二価形態での親和性(D因子に対するIgGとしての抗体の親和性など)が10nM(10×10−9M)と0.05nM(0.05×10−9M)の間にある、抗D因子抗体を提供する。別の実施形態では、本発明は、D因子に対して抗体の二価形態での親和性(D因子に対するIgGとしての抗体の親和性など)が5.5nM(5.5×10−9M)と1nM(1×10−9M)の間にある、抗D因子抗体を提供する。別の実施形態では、本発明は、D因子に対して抗体の二価形態での親和性(D因子に対するIgGとしての抗体の親和性など)が0.5pM(0.5×10−12M)と2pM(2×10−12M)の間にある、抗D因子抗体を提供する。
【0056】
別の実施形態では、本発明は、D因子に対して抗体の一価形態での親和性(D因子に対するFabフラグメントとしての抗体の親和性など)が約3.7nM(3.7×10−9M)である、抗D因子抗体を提供する。別の実施形態では、本発明は、D因子に対して抗体の一価形態での親和性(D因子に対するFabフラグメントとしての抗体の親和性など)が約3.3nM(3.3×10−9M)である、抗D因子抗体を提供する。別の実施形態では、本発明は、D因子に対して抗体の一価形態での親和性(D因子に対するFabフラグメントとしての抗体の親和性など)が約5.1nM(5.1×10−9M)である、抗D因子抗体を提供する。別の実施形態では、本発明は、D因子に対して抗体の一価形態での親和性(D因子に対するFabフラグメントとしての抗体の親和性など)が約2.7nM(2.7×10−9M)である、抗D因子抗体を提供する。別の実施形態では、本発明は、D因子に対して抗体の一価形態での親和性(D因子に対するFabフラグメントとしての抗体の親和性など)が約1.4nM(1.4×10−9M)である、抗D因子抗体を提供する。別の実施形態では、本発明は、D因子に対して抗体の一価形態での親和性(D因子に対するFabフラグメントとしての抗体の親和性など)が約1.4pM(1.4×10−12M)である、抗D因子抗体を提供する。別の実施形態では、本発明は、D因子に対して抗体の二価形態での親和性(D因子に対するIgGとしての抗体の親和性など)が約1.1pM(1.1×10−12M)である、抗D因子抗体を提供する。別の実施形態では、本発明は、D因子に対して抗体の一価形態での親和性(D因子に対するFabフラグメントとしての抗体の親和性など)が約0.19nM(0.19×10−9M)である、抗D因子抗体を提供する。別の実施形態では、本発明は、D因子に対して抗体の二価形態での親和性(D因子に対するIgGとしての抗体の親和性など)が約0.08nM(0.08×10−9M)である、抗D因子抗体を提供する。別の実施形態では、本発明は、D因子に対して抗体の一価形態での親和性(D因子に対するFabフラグメントとしての抗体の親和性など)が約12.3nM(12.3×10−9M)である、抗D因子抗体を提供する。別の実施形態では、本発明は、D因子に対して抗体の二価形態での親和性(D因子に対するIgGとしての抗体の親和性など)が約9.0nM(9.0×10−9M)である、抗D因子抗体を提供する。
【0057】
別の実施形態では、本発明は、D因子に対して抗体の一価形態での親和性(D因子に対するFabフラグメントとしての抗体の親和性など)が約1.4pM(1.4×10−12M)+/−0.5である、抗D因子抗体を提供する。別の実施形態では、本発明は、D因子に対して抗体の二価形態での親和性(D因子に対するIgGとしての抗体の親和性など)が約1.1pM(1.1×10−12M)+/−0.6である、抗D因子抗体を提供する。別の実施形態では、本発明は、D因子に対して抗体の一価形態での親和性(D因子に対するFabフラグメントとしての抗体の親和性など)が約0.19nM(0.19×10−9M)+/−.01である、抗D因子抗体を提供する。別の実施形態では、本発明は、D因子に対して抗体の二価形態での親和性(D因子に対するIgGとしての抗体の親和性など)が約0.08nM(0.08×10−9M)+/−0.01である、抗D因子抗体を提供する。別の実施形態では、本発明は、D因子に対して抗体の一価形態での親和性(D因子に対するFabフラグメントとしての抗体の親和性など)が約12.3nM(12.3×10−9M)+/−2である、抗D因子抗体を提供する。別の実施形態では、本発明は、D因子に対して抗体の二価形態での親和性(D因子に対するIgGとしての抗体の親和性など)が約9.0nM(9.0×10−9M)+/−1である、抗D因子抗体を提供する。
【0058】
別の実施形態では、抗D因子抗体は、D因子に対する一価形態での親和性(D因子に対するFabフラグメントとしての抗体の親和性など)が約3.7nM(3.7×10−9M)+/−2であってもよい。別の実施形態では、抗D因子抗体は、D因子に対する一価形態での親和性(D因子に対するFabフラグメントとしての抗体の親和性など)が約3.3nM(3.3×10−9M)+/−2であってもよい。別の実施形態では、抗D因子抗体は、D因子に対する一価形態での親和性(D因子に対するFabフラグメントとしての抗体の親和性など)が約5.1nM(5.1×10−9M)+/−2であってもよい。別の実施形態では、抗D因子抗体は、D因子に対する一価形態での親和性(D因子に対するFabフラグメントとしての抗体の親和性など)が約2.7nM(2.7×10−9M)+/−2であってもよい。別の実施形態では、抗D因子抗体は、D因子に対する一価形態での親和性(D因子に対するFabフラグメントとしての抗体の親和性など)が約1.4nM(1.4×10−9M)+/−2であってもよい。別の実施形態では、抗D因子抗体は、D因子に対する一価形態での親和性(D因子に対するFabフラグメントとしての抗体の親和性など)が約1.4pM(1.4×10−12M)+/−2であってもよい。別の実施形態では、抗D因子抗体は、D因子に対する二価形態での親和性(D因子に対するIgGとしての抗体の親和性など)が約1.1pM(1.1×10−12M)+/−2であってもよい。別の実施形態では、抗D因子抗体は、D因子に対する一価形態での親和性(D因子に対するFabフラグメントとしての抗体の親和性など)が約0.19nM(0.19×10−9M)+/−2であってもよい。別の実施形態では、抗D因子抗体は、D因子に対する二価形態での親和性(D因子に対するIgGとしての抗体の親和性など)が約0.08nM(0.08×10−9M)+/−2であってもよい。別の実施形態では、抗D因子抗体は、D因子に対する一価形態での親和性(D因子に対するFabフラグメントとしての抗体の親和性など)が約12.3nM(12.3×10−9M)+/−2であってもよい。別の実施形態では、抗D因子抗体は、D因子に対する二価形態での親和性(D因子に対するIgGとしての抗体の親和性など)が約9.0nM(9.0×10−9M)+/−2であってもよい。
【0059】
受容体に対するリガンドの結合親和性については、当該技術分野において確立されているように種々のアッセイのいずれかにより判定し、様々な定量値で表してもよい。したがって、一実施形態では、結合親和性をKd値で表し、(たとえば、アビディティー効果を最小化して)固有の結合親和性で示してもよい。通常および好ましくは、結合親和性を、無細胞かそれとも細胞に結合した状況においてインビトロで測定する。本明細書でより詳細に記載する場合、結合親和性の差が何倍かについては、類似のアッセイ条件で結合親和性値を判定する、ヒト化抗体(Fab形態など)の一価の結合親和性値と参照/比較抗体(Fab形態など)(ドナー超可変領域配列を持つマウス抗体など)の一価の結合親和性値との比で定量してもよい。したがって、一実施形態では、結合親和性の差が何倍かをFab形態のヒト化抗体と該参照/比較Fab抗体のKd値の比で判定する。たとえば、一実施形態では、本発明の抗体(A)の親和性が参照抗体(M)の親和性よりも「3倍低い」場合、AのKd値は3倍であれば、MのKd値は1倍になり、AのKdとMのKdの比は3:1になる。これに対し、一実施形態では、本発明の抗体(C)の親和性が参照抗体(R)の親和性よりも「3倍高い」場合、CのKd値は1倍であれば、RのKd値は3倍になり、CのKdとRのKdとの比は、1:3になる。本明細書に記載のアッセイを含めて、たとえば、Biacore、ラジオイムノアッセイ(RIA:radioimmunoassay)およびELISA(enzyme linked immunosorbent assay)など、当該技術分野において公知の多くのアッセイのいずれかを用いて結合親和性測定値を得ることができる。
【0060】
さらに、本発明の抗体のKd値は、使用した個々のアッセイの条件によって異なっても構わない。たとえば、一実施形態では、結合親和性測定値を、Fabまたは抗体を固定化してリガンド、すなわちD因子の結合を測定するアッセイで得てもよいし、あるいは、Fabまたは抗体のリガンド、すなわちD因子を固定化してFabまたは抗体の結合を測定するアッセイで得てもよい。一実施形態では、結合親和性測定値を、再生条件として(1)10mMのグリセインまたは4MのMgCl(pH1.5)および(2)pH1.5、pH5.0、pH6.0〜pH7.2など、pH1.0〜pH7.5のpHを含めて構わないアッセイで得てもよい。一実施形態では、結合親和性測定値を、結合条件として(1)PBS(phosphate−buffered saline)またはHEPES緩衝食塩水および(2)Tween−20、すなわち0.1% Tween−20を含めても構わないアッセイで得てもよい。一実施形態では、結合親和性測定値を、リガンド、すなわち(i.e)D因子の供給源を、市販の供給源から入手しても構わないアッセイで得てもよい。一実施形態では、結合親和性測定値を、(1)Fabまたは抗体を固定化してリガンド、すなわちD因子の結合を測定し、(2)再生条件として4MのMgCl(pH7.2)を含み、(3)結合条件として0.1%Tween−20を含むHEPES緩衝食塩水(pH7.2)を含む、アッセイで得てもよい。一実施形態では、結合親和性測定値を、(1)リガンド、すなわちD因子を固定化してFabまたは抗体の結合を測定し、(2)再生条件に10mMのグリシン(pH1.5)を含み、(3)結合条件としてPBS緩衝液を含む、アッセイで得てもよい。
【0061】
「細胞」、「細胞株」および「細胞培養」という語は、子孫を含む。また、人為的または偶発的突然変異があるため、DNA内容物においてすべての子孫が正確に同一であるとは限らない場合があることが理解されよう。最初の形質転換細胞でスクリーニングすると、同じ機能または生物学的特性を持つ変異体の子孫が含まれる。本発明に用いる「宿主細胞」は通常、原核生物宿主または真核生物宿主である。
【0062】
「ベクター」という語は、好適な宿主でDNAの発現を行うのに適した制御配列に作動的に連結されたDNA配列を含む、DNAコンストラクトをいう。こうした制御配列は、転写を行うプロモーター、そうした転写を制御する任意のオペレーター配列、好適なmRNAリボソーム結合部位をコードする配列ならびに転写および翻訳の終止を制御する配列を含む。ベクターは、プラスミド、ファージ粒子または可能であれば単純なゲノムインサートであってもよい。ベクターは好適な宿主に形質転換されれば、宿主ゲノムと無関係に複製を行い機能することができ、場合によっては、ゲノム自体に統合されることもある。プラスミドは最も多く使われるベクター形態であるため、本明細書では、「プラスミド」および「ベクター」を同義で用いることがある。一方、本発明は、同等の機能を持ち、かつ当該技術分野においてすでに公知であるか、将来公知になる他のベクター形態を含むことを意図している。
【0063】
本明細書で使用する場合、「標識」という語は、たとえば、抗体などの分子またはタンパク質に直接または間接にコンジュゲートできる検出可能な化合物または組成物をいう。標識は、それ自体が検出可能(放射性同位元素標識または蛍光標識など)であってもよいし、酵素標識の場合、検出可能な基質化合物または組成物の化学的変化を触媒してもよい。
【0064】
本明細書で使用する場合、「固相」とは、本発明の抗体が付着できる非水系マトリックスをいう。本明細書に包含される固相の例として、一部または全部をガラスで形成されたもの(コントロールドポアガラスなど)、多糖類(アガロースなど)、ポリアクリルアミド、ポリスチレン、ポリビニルアルコールおよびシリコーンが挙げられる。ある実施形態では、固相は、文脈に応じてアッセイプレートのウェルを含んでもよく、他の場合では、精製カラム(アフィニティークロマトグラフィーカラムなど)である。
【0065】
抗体の作製
宿主細胞の選択および形質転換
本明細書においてベクター内のDNAのクローニングまたは発現に好適な宿主細胞は、原核生物細胞、酵母細胞または高等真核細胞である。この目的に好適な原核生物は、たとえば、E.coli、Enterobacter、Erwinia、Klebsiella、Proteus、Salmonella、SerratiaおよびShigellaなどの腸内細菌ならびにBacilli、PseudomonasおよびStreptomycesなど、グラム陰性生物とグラム陽性生物の両方を含む。好ましいE.coliクローニング宿主の1つにE.coli294(ATCC31,446)があるが、E.coli B、E.coli X1776(ATCC31,537)およびE.coli W3110(ATCC27,325)など、他の菌株も好適である。これらの例は例示的なもので、限定的なものではない。
【0066】
原核生物に加えて、糸状菌または酵母などの真核微生物も、抗体をコードするベクターの好適なクローニング宿主または発現宿主である。下等真核宿主微生物では、Saccharomyces cerevisiaeが最も多く使用される。しかしながら、Schizosaccharomyces pombe;Kluyveromyces;Candida;Trichoderma;Neurospora crassa;および、たとえば、Neurospora、Penicillium、TolypocladiumならびにA.nidulansおよびA.nigerなどのAspergillus宿主といった糸状菌など、他の多くの属、種および菌株も一般に入手可能であり、本発明に有用である。
【0067】
グリコシル化抗体の発現に好適な宿主細胞は、多細胞生物に由来する。原則として(in principal)、脊椎動物培養または無脊椎動物培養を問わず、高等真核細胞培養であれば有効である。無脊椎動物細胞の例として、植物および昆虫細胞が挙げられる。Luckow et al.,Bio/Technology 6,47−55(1988);Miller et al.,Genetic Engineering,Setlow et al.eds.Vol.8,pp.277−279(Plenam publishing 1986);Mseda et al.,Nature 315,592−594(1985)を参照されたい。多くのバキュロウイルス株および変異株ならびにSpodoptera frugiperda(毛虫)、Aedes(蚊)、Drosophila melanogaster(ショウジョウバエ)およびBombyx moriなどの宿主の、対応する許容昆虫宿主細胞が同定されている。たとえば、Autographa californica NPVのL−1変異体およびBombyx mori NPVのBm−5株など、トランスフェクション用の種々のウイルス株が一般に入手可能であり、こうしたウイルスを、本発明に従って本明細書のウイルス、特にSpodoptera frugiperda細胞のトランスフェクション用のウイルスとして用いてもよい。さらに、ワタ、トウモロコシ、ジャガイモ、大豆、ペチュニア、トマトおよびタバコなどの植物細胞培養も宿主として用いる。
【0068】
培養(組織培養)における脊椎動物細胞および脊椎動物細胞の増殖(propagation)は、日常的に行われる手順になっている。Tissue Culture,Academic Press,Kruse and Patterson,eds.(1973)を参照されたい。有用な哺乳動物宿主細胞株の例として、サル腎臓;ヒト胎児腎臓細胞株;ベビーハムスター腎細胞;チャイニーズハムスター卵巣細胞/−DHFR(CHO,Urlaub et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 77:4216(1980));マウスセルトリ細胞;ヒト子宮頸癌細胞(HELA);イヌ腎細胞;ヒト肺細胞;ヒト肝細胞;マウス乳腺腫瘍;およびNS0細胞がある。
【0069】
抗体作製のため宿主細胞を上述のベクターで形質転換させて、プロモーターの誘導、形質転換体の選択または所望の配列をコードする遺伝子の増幅のために適切に改変された従来の栄養培地で培養する。
【0070】
本発明の抗体変異体の産生に用いる宿主細胞については、種々の培地で培養してもよい。Ham’s F10(Sigma)、最小必須培地(MEM:Minimal Essential Medium,Sigma)、RPMI−1640(Sigma)およびダルベッコ改変イーグル培地(DMEM:Dulbecco’s Modified Eagle’s Medium,Sigma)などの市販されている培地は、宿主細胞の培養に好適である。さらに、Ham et al.,Meth.Enzymol.58:44(1979)、Barnes et al.,Anal.Biochem.102:255(1980)、米国特許第4,767,704号明細書;同第4,657,866号明細書;同第4,560,655号明細書;同第5,122,469号明細書;同第5,712,163号明細書または同第6,048,728号明細書に記載の培地であればどれでも宿主細胞用の培地として用いることができる。これらの培地のいずれかに、ホルモンおよび/または他の増殖因子(インスリン、トランスフェリンまたは上皮増殖因子など)、塩(Xがナトリウム、カルシウム、マグネシウムである、Xクロリド;およびホスファートなど)、緩衝液(HEPESなど)、ヌクレオチド(アデノシンおよびチミジンなど)、抗生物質(GENTAMYCIN(商標)薬剤など)、微量元素(ほとんどの場合、マイクロモル範囲の最終濃度で存在する無機化合物として規定される)およびグルコースまたは同等のエネルギー源を必要に応じて補充してもよい。当業者に知られている適切な濃度で他に必要な任意の栄養補助剤を含ませてもよい。温度、pHおよび同種のものなどの培養条件については、発現用に選択される宿主細胞で以前使用された条件であり、当業者には理解されるであろう。
【0071】
抗体の精製
組換え技法を用いる場合、抗体を細胞内、ペリプラズムに産生させてもよいし、培地に直接分泌させてもよい。抗体変異体を細胞内で産生させる場合、第1のステップとして、宿主細胞あるいは溶解フラグメントのいずれかである微粒子状の破片を、たとえば、遠心分離または除外濾過により除去してもよい。Carter et al.,Bio/Technology 10:163−167(1992)には、E.coliのペリプラズムに分泌させた抗体を単離する手順が記載されている。簡単に説明すると、酢酸ナトリウム(pH3.5)、EDTA(ethylenediaminetetraacetic acid)およびフッ化フェニルメチルスルホニル(PMSF:phenylmethylsulfonylfluoride)の存在下で約30分かけて細胞ペーストを解凍する。細胞残屑を遠心分離により除去してもよい。抗体変異体を培地に分泌させる場合、通常最初にこうした発現系の上清を、市販のタンパク質濃縮フィルター、たとえば、AmiconまたはMillipore Pelliconの除外濾過ユニットを用いて濃縮させる。前記のステップのいずれかにPMSFなどのプロテアーゼ阻害剤を加えてタンパク質分解を阻害してもよく、抗生物質を加えて外来性の汚染菌の増殖を防止しても構わない。
【0072】
細胞から調製した抗体組成物については、たとえば、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動(elecrophoresis)、透析およびアフィニティークロマトグラフィーを用いて精製することができるが、アフィニティークロマトグラフィーが好ましい精製法である。親和性リガンドとしてのプロテインAの適合性は、抗体変異体に存在する任意の免疫グロブリンFcドメインにより決まる。ヒトIgG1重鎖、IgG2重鎖またはIgG4重鎖に基づく抗体の精製にはプロテインAを用いてもよい(Lindmark et al.,J.Immunol Meth.62:1−13(1983))。すべてのマウスアイソタイプおよびヒトIgG3に推奨されるのはプロテインGである(Guss et al.,EMBO J.5:1567−1575(1986))。親和性リガンドが結合するマトリックスは、ほとんどの場合、アガロースであるが、他のマトリックスを利用することもできる。コントロールドポアガラスまたはポリ(スチレンジビニル)ベンゼンなどの機械的に安定したマトリックスを用いると、アガロースの場合よりも流速を速くし、処理時間を短くすることができる。抗体変異体がCH3ドメインを含む場合、精製にはBakerbond ABXTM樹脂(J.T.Baker,Phillipsburg,N.J.)が有用である。回収する抗体変異体に応じて、イオン交換カラムによる分画、エタノール沈殿、逆相HPLC、シリカによるクロマトグラフィー、アニオンまたはカチオン交換樹脂(ポリアスパラギン酸カラムなど)を用いたヘパリンSEPHAROSE(商標)クロマトグラフィーによるクロマトグラフィー、クロマトフォーカシング、SDS−PAGEおよび硫酸アンモニウム沈殿など、他のタンパク質精製技法も利用可能である。
【0073】
任意の予備精製ステップ(単数または複数)に続いて、目的の抗体変異体および汚染物質を含む混合物を、約2.5〜4.5のpHで溶出緩衝液を用いて低pH疎水性相互作用クロマトグラフィーに供してもよく、低塩濃度(約0〜0.25M塩など)で行うのが好ましい。
【0074】
医薬製剤
ポリペプチドまたは抗体の治療製剤を凍結乾燥製剤または水溶液として保存するため、純度が所望の程度のポリペプチドと、当該技術分野において通常用いられる任意の「薬学的に許容される」キャリア、賦形剤または安定剤(すべて「賦形剤」と呼ばれる)とを混合して調製してもよい。たとえば、緩衝剤、安定化剤、保存剤、等張剤、非イオン性洗浄剤、酸化防止剤およびこれ以外の各種添加剤がある。(Remington’s Pharmaceutical Sciences,16th edition,A.Osol,Ed.(1980)を参照)。こうした添加剤は、使用する投与量および濃度でレシピエントに無毒でなければならない。
【0075】
緩衝剤は、pHを生理的条件に近い範囲に保つのに役立つ。緩衝剤は、約2mM〜約50mMの濃度で存在するのが好ましい。本発明に用いるのに好適な緩衝剤として、有機酸と無機酸の両方およびその塩、たとえば、クエン酸塩緩衝剤(たとえば、クエン酸一ナトリウム−クエン酸二ナトリウム混合物、クエン酸−クエン酸三ナトリウム混合物、クエン酸−クエン酸一ナトリウム混合物など)、コハク酸塩緩衝剤(たとえば、コハク酸−コハク酸一ナトリウム混合物、コハク酸−水酸化ナトリウム混合物、コハク酸−コハク酸二ナトリウム混合物など)、酒石酸塩緩衝剤(たとえば、酒石酸−酒石酸ナトリウム混合物、酒石酸−酒石酸カリウム混合物、酒石酸−水酸化ナトリウム混合物など)、フマル酸塩緩衝剤(たとえば、フマル酸−フマル酸一ナトリウム混合物、など)、フマル酸塩緩衝剤(たとえば、フマル酸−フマル酸一ナトリウム混合物、フマル酸−フマル酸二ナトリウム混合物、フマル酸一ナトリウム−フマル酸二ナトリウム混合物など)、グルコン酸緩衝剤(たとえば、グルコン酸−グリコン酸ナトリウム(sodium−glyconate)混合物、グルコン酸−水酸化ナトリウム混合物、グルコン酸−グリウコン酸カリウム(pottassium glyuconate)混合物など)、シュウ酸塩緩衝剤(たとえば、シュウ酸−シュウ酸ナトリウム混合物、シュウ酸−水酸化ナトリウム混合物、シュウ酸−シュウ酸カリウム混合物など)、乳酸塩緩衝剤(たとえば、乳酸−乳酸ナトリウム混合物、乳酸−水酸化ナトリウム混合物、乳酸−乳酸カリウム混合物など)および酢酸塩緩衝剤(たとえば、酢酸−酢酸ナトリウム混合物、酢酸−水酸化ナトリウム混合物など)が挙げられる。さらに、リン酸塩緩衝剤、ヒスチジン緩衝剤およびトリスなどのトリエチルアミンが挙げられる。
【0076】
保存剤については、微生物の増殖を遅延させるために加えてもよく、0.2%〜1%(w/v)の範囲の量で加えても構わない。本発明に用いるのに好適な保存剤として、フェノール、ベンジルアルコール、メタ−クレゾール、メチルパラベン、プロピルパラベン、オクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド、ベンザルコニウム(benzalconium)ハライド(たとえば、クロリド、ブロミド、ヨウ化物)、ヘキサメトニウムクロリド、メチルまたはプロピルパラベンなどのアルキルパラベン、カテコール、レゾルシノール、シクロヘキサノールおよび3−ペンタノールが挙げられる。
【0077】
「安定剤」と呼ばれることもある等張化剤は、本発明の液体組成物の等張性を確保するために加えてもよく、多価(polhydric)糖アルコール、好ましくはグリセリン、エリトリトール、アラビトール、キシリトール、ソルビトールおよびマンニトールなどの三価以上の糖アルコールが挙げられる。
【0078】
安定剤は賦形剤の大きなカテゴリーをいい、機能面は充填剤から、治療薬を可溶化する添加剤あるいは変性または容器壁への付着の防止に役立つ添加剤など、多岐にわたる。典型的な安定剤には、多価糖アルコール(上記に列挙した);アルギニン、リジン、グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アラニン、オルニチン、L−ロイシン、2−フェニルアラニン、グルタミン酸、トレオニンなどのアミノ酸、ラクトース、トレハロース、スタキオース、マンニトール、ソルビトール、キシリトール、リビトール、ミオイニシトール(myoinisitol)、ガラクチトール、グリセロールおよびイノシトールなどのシクリトールを含む同種のものなどの有機糖類または糖アルコール;ポリエチレングリコール;アミノ酸ポリマー;尿素、グルタチオン、チオクト酸、チオグリコール酸ナトリウム、チオグリセロール、α−モノチオグリセロールおよびチオ硫酸ナトリウムなどの含硫還元剤;低分子量ポリペプチド(すなわち<10残基);ヒト血清アルブミン、ウシ血清アルブミン、ゼラチンまたは免疫グロブリンなどのタンパク質;ポリビニルピロリドンなどの親水性ポリマー、キシロース、マンノース、フルクトース、グルコースなどの単糖類;ラクトース、マルトース、スクロースなどの二糖類およびラフィノースなどのトリサッカリド;デキストランなどの多糖類が挙げられる。安定剤については、活性タンパク質1重量部当たり0.1〜10,000重量部の範囲で存在してもよい。
【0079】
非イオン界面活性剤または洗浄剤(「湿潤剤」とも呼ばれる)を加えて、治療薬の可溶化の促進および撹拌による凝集からの治療用タンパク質の保護を行い、それによりさらに製剤が表面に剪断応力(stressed)を受けてもタンパク質の変性が起こらないようにしてもよい。好適な非イオン界面活性剤として、ポリソルベート(20、80など)、ポリオキサマー(184、188など)、Pluronic(登録商標)ポリオール、ポリオキシエチレンソルビタンモノエーテル(Tween(登録商標)−20、Tween(登録商標)−80など)が挙げられる。非イオン界面活性剤は、約0.05mg/ml〜約1.0mg/ml、好ましくは約0.07mg/ml〜約0.2mg/mlの範囲で存在してもよい。
【0080】
さらに他の賦形剤として、充填剤(デンプンなど)、キレート化剤(EDTAなど)、酸化防止剤(アスコルビン酸、メチオニン、ビタミンEなど)および共溶媒が挙げられる。また、本明細書の製剤は、個々の適応症の処置に必要な複数の活性化合物、好ましくは相互に悪影響を与えない相補活性を持つ化合物を含んでもよい。たとえば、免疫抑制薬をさらに加えることが望ましい場合がある。こうした分子は、併用して所期の目的に対して有効になる量で好適に存在させる。さらに、活性成分を、たとえば、コアセルベーション(coascervation)技法または界面重合により調製されたマイクロカプセル(たとえば、それぞれヒドロキシメチルセルロースまたはゼラチンマイクロカプセルおよびポリ−(メチルメタシラート)マイクロカプセル)に、コロイド状薬物送達系(たとえば、リポソーム、アルブミンミクロフェア、マイクロエマルジョン、ナノ粒子およびナノカプセル)に、またはマクロエマルジョンに封入してもよい。こうした技法は、Remington’s Pharmaceutical Sciences,16th edition,A.Osal.Ed.(1980)に開示されている。
【0081】
インビボ投与で使用する製剤は、無菌でなければならない。これは、たとえば、無菌濾過膜による濾過で容易に成し遂げられる。徐放性調製物を調製してもよい。徐放性調製物の好適な例として、抗体変異体を含む固体疎水性ポリマーの半透性マトリックスが挙げられ、このマトリックスは、たとえば、薄膜またはマイクロカプセルなどの形状製品である。徐放性マトリックスの例として、ポリエステル、ヒドロゲル(たとえば、ポリ(2−ヒドロキシエチル−メタクリラート)またはポリ(ビニルアルコール))、ポリラクチド(米国特許第3,773,919号明細書)、L−グルタミン酸およびエチル−L−グルタマートのコポリマー、非分解性エチレン−酢酸ビニル、LUPRON DEPOT(商標)(乳酸−グリコール酸コポリマーとロイプロリドアセタートとで構成される注射用ミクロスフェア)などの分解性乳酸−グリコール酸コポリマーおよびポリ−D−(−)−3−ヒドロキシ酪酸が挙げられる。エチレン−酢酸ビニルおよび乳酸−グリコール酸などのポリマーでは100日わたり分子を放出することができるが、ある種のヒドロゲルではタンパク質の放出期間が短くなる。封入抗体が長時間体内にとどまる場合、37℃で湿気にさらされると変性または凝集することがあり、その結果、生物活性が消失し、免疫原性が変化する恐れがある。安定化のための合理的な戦略を関連する機構に応じて考え出してもよい。たとえば、凝集の機構がチオ−ジスルフィド相互交換による分子間のS−S結合形成であると分かった場合、スルフヒドリル残基の修飾、酸性溶液からの凍結乾燥、含水量の制御、適切な添加剤の使用および特異的なポリマーマトリックス組成物の開発により安定化を達成することができる。
【0082】
個々の障害または症候の処置に有効となる治療用ポリペプチド、抗体またはそのフラグメントの量は、障害または症候の性質によって異なるが、標準的な臨床技法により判定することができる。可能であれば、ヒトで試験する前にまずインビトロで、次いで有用な動物モデル系で用量反応曲線および本発明の医薬組成物を判定することが望ましい。
【0083】
好ましい実施形態では、皮下注射により治療用ポリペプチド、抗体またはそのフラグメントの水溶液を投与する。各用量は、体重1キログラム当たり約0.5μg〜約50μg、一層好ましくは体重1キログラム当たり約3μg〜約30μgの範囲であってもよい。
【0084】
皮下投与の投与スケジュールは、疾患のタイプ、疾患の重症度および治療薬に対する被検体の感受性など、多くの臨床的因子により月に1回から1日1回までの幅があってもよい。
【0085】
ヒト化抗体の使用
本発明のヒト化抗体は、たとえば、特定の細胞、組織または血清中の目的標的の発現を検出する診断アッセイに有用である。診断用途では、一般に抗体変異体を検出可能な部分で標識する。多くの標識が利用可能である。蛍光の変化を定量する技法は、上述してある。化学発光基質は、化学反応により電子的に励起され、次いで(たとえばケミルミノメーターを用いて)測定できる光を発する場合があるか、蛍光アクセプターにエネルギーを供与する。酵素標識の例として、ルシフェラーゼ(ホタルルシフェラーゼおよび細菌ルシフェラーゼなど;米国特許第4,737,456号明細書)、ルシフェリン、2,3−ジヒドロフタラジンジオン、リンゴ酸デヒドロゲナーゼ、ウレアーゼ、西洋わさびペルオキシダーゼ(HRPO:horseradish peroxidase)などのペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、β−ガラクトシダーゼ、グルコアミラーゼ、リゾチーム、サッカライドオキシダーゼ(グルコースオキシダーゼ、ガラクトースオキシダーゼおよびグルコース−6−ホスファートデヒドロゲナーゼなど)、複素環式オキシダーゼ(ウリカーゼおよびキサンチンオキシダーゼなど)、ラクトペルオキシダーゼ、マイクロペルオキシダーゼおよび同種のものが挙げられる。酵素を抗体にコンジュゲートする技法については、O’Sullivan et al.,Methods for the Preparation of Enzyme−Antibody Conjugates for Use in Enzyme Immunoassay,in Methods in Enzym.(Ed.J.Langone & H.Van Vunakis),Academic press,New York,73:147−166(1981)に記載されている。
【0086】
場合によっては、標識を抗体変異体と間接的にコンジュゲートする。当業者であれば、これを行うための種々の技法を知っているであろう。たとえば、抗体変異体をビオチンとコンジュゲートし、上述の標識に関する3つの大きなカテゴリーをアビジンとコンジュゲートしてもよいし、その逆もまた同様である。ビオチンは、アビジンに選択的に結合するため、この標識をこうした間接的な形で抗体変異体とコンジュゲートしてもよい。あるいは、標識と抗体変異体との間接的なコンジュゲーションを達成するため、抗体変異体を低分子ハプテン(ジグロキシンなど)とコンジュゲートし、上記の異なるタイプの標識の1つを抗ハプテン抗体変異体(抗ジグロキシン抗体など)とコンジュゲートする。こうして、標識と抗体変異体との間接的なコンジュゲーションを達成することができる。
【0087】
本発明の別の実施形態では、抗体変異体を標識する必要がなく、その存在を、抗体変異体に結合する標識抗体を用いて検出してもよい。
【0088】
本発明の抗体を、競合結合アッセイ、直接的および間接的サンドイッチアッセイおよび免疫沈降アッセイなど、任意の既知のアッセイ方法に用いてもよい。Zola,Monoclonal Antibodies:A Manual of Techniques,pp.147−158(CRC Press,Inc.1987)を参照。
【0089】
競合結合アッセイは、標識標準物質が限られた量の抗体変異体との結合に際して被検サンプルと競合する能力に基づく。被検サンプル中の標的の量は、抗体に結合する標準物質の量に反比例する。標準物質の量を判定しやすくするため、競合の前または後に抗体を不溶化するのが一般的である。結果として、抗体に結合する標準物質および被検サンプルを、非結合のままである標準物質および被検サンプルと都合よく分けることができる。
【0090】
サンドイッチアッセイでは、それぞれが異なる免疫原性部分またはエピトープまたは検出対象のタンパク質に結合することができる、2つの抗体を用いる。サンドイッチアッセイの場合、固体支持体上に固定化された第1の抗体が解析対象の被検サンプルに結合し、その後、第2の抗体が被検サンプルに結合し、したがって不溶性の3つの部分からなる複合体が形成される。たとえば、米国特許第4,376,110号明細書を参照されたい。第2の抗体については、それ自体が検出可能な部分で標識されていてもよいし(直接サンドイッチアッセイ)、検出可能な部分で標識された抗免疫グロブリン抗体を用いて測定してもよい(間接サンドイッチアッセイ)。たとえば、サンドイッチアッセイの一タイプはELISAアッセイであり、この場合、検出可能な部分が酵素である。
【0091】
免疫組織化学の場合、腫瘍サンプルは、新鮮なものでも凍結されていてもよいし、パラフィンに包埋され、たとえば、ホルマリンなどの防腐剤で固定されていてもよい。
【0092】
さらに、抗体をインビボ診断アッセイに用いてもよい。通常、抗体変異体を放射性ヌクレオチド(.sup.111In、.sup.99Tc、.sup.14C、.sup.131I、.sup.3H、.sup.32Pまたは.sup.35Sなど)で標識し、免疫シンチオグラフィーを用いて腫瘍の位置を特定できるようする。たとえば、本発明の高親和性抗IgE抗体を用いて、たとえば、喘息患者の肺に存在するIgEの量を検出してもよい。
【0093】
本発明の抗体については、キット、すなわち、診断アッセイ実施上の注意事項が付いた、所定量の試薬を組み合わせたパッケージで提供してもよい。抗体変異体を酵素で標識する場合、キットは、酵素が必要とする基質および補助因子(検出可能な発色団またはフルオロフォアを与える基質前駆体など)を含んでもよい。さらに、安定剤、緩衝液(ブロック緩衝液または溶解緩衝液など)および同種のものなど、他の添加剤を含んでも構わない。種々の試薬の相対量は、アッセイの感度を実質的に最適化する試薬の溶液中濃度を規定するため、大きく異なる場合がある。特に、溶解時に適切な濃度の試薬溶液を与える賦形剤などの試薬については、乾燥粉末(ほとんどの場合、凍結乾燥)として提供してもよい。
【0094】
抗体のインビボでの使用
本発明の抗体については、哺乳動物の処置に使用してもよいことを意図している。一実施形態では、たとえば、前臨床データを取得するため、抗体をヒト以外の哺乳動物に投与する。ヒト以外の処置対象の例示的な哺乳動物として、非ヒト霊長類、イヌ、ネコ、齧歯類および前臨床試験が行われる他の哺乳動物が挙げられる。こうした哺乳動物については、抗体で処置する疾患の確立された動物モデルであってもよいし、目的の抗体の毒性を研究するために用いてもよい。これらの各実施形態では、哺乳動物に対して用量漸増研究を行っても構わない。
【0095】
抗体またはポリペプチドについては、非経口投与、皮下投与、腹腔内投与、肺内投与および鼻腔内投与、さらに局所免疫抑制処置に対する必要に応じて、病巣内投与など任意の好適な手段で投与する。非経口注入として、筋肉内投与、静脈内投与、動脈内投与、腹腔内投与または皮下投与が挙げられる。さらに、パルス注入で、特に抗体変異体の用量を減少させながら抗体変異体を好適に投与する。好ましくは注射により、最も好ましくは、投与が短期かそれとも長期かなどにもよるが、静脈内注射または皮下注射により投薬を行う。
【0096】
疾患の予防または処置における抗体またはポリペプチドの適切な投与量は、処置対象の疾患のタイプ、疾患の重症度および経過、抗体変異体の投与が予防目的かそれとも治療目的か、これまでの治療、患者の臨床歴および抗体に対する反応ならびに主治医の裁量によって異なる。
【0097】
たとえば、1回または複数回の別々の投与かそれとも連続注入かにより、患者に投与する初回候補投与量は、疾患のタイプおよび重症度に応じて抗体約0.1mg/kg〜150mg/kg(0.1〜20mg/kgなど)である。典型的な1日の投与量は、上記の因子に応じて約1mg/kg〜100mg/kgまたはそれ以上までの幅があってもよい。数日間またはそれ以上にわたる反復投与の場合、症候に応じて、疾患症状に所望の抑制効果が見られるまで処置を維持する。しかしながら、他の投与量レジメンが有用な場合もある。この療法の進行については、従来の技法およびアッセイにより容易にモニターできる。例示的な投薬レジメンは、国際公開第94/04188号パンフレットに開示されている。
【0098】
抗体組成物については、医療実施基準に一致した様式で製剤化、投薬および投与を行う。こうした観点から考慮すべき因子として、処置される特定の障害、処置される特定の哺乳動物、個々の患者の臨床症候、障害の原因、薬の送達部位、投与方法、投与のスケジューリングおよび開業医に知られている他の因子が挙げられる。投与される抗体の「治療有効量」は、こうした考慮すべき事項により決定されるが、疾患または障害の予防、軽減または処置に必要な最低量である。抗体については、問題の障害の予防または処置にその時点で使用されている1種または複数種の薬とともに製剤化しなくてもよいが、任意にそれとともに製剤化する。こうした他の薬の有効量は、製剤内に存在する抗体の量、障害または処置のタイプおよび上記で論じた他の因子によって異なる。これらの薬は通常、上文で使用したのと同じ投与量および投与経路で、あるいは、それまでに使用した投与量の約1〜99%で用いる。
【0099】
D因子を標的として認識する本発明の抗体については、補体による障害の処置に用いてもよい。これらの障害は、過剰または制御されない補体活性化に関係している。障害は、心肺バイパス手術における補体活性化;急性心筋梗塞、動脈瘤、脳卒中、出血性ショック、挫滅、多臓器不全、血液量減少性ショック(hypobolemic shock)および腸管虚血による補体活性化を含む。これらの障害は、重度の火傷、内毒素血症、敗血症性ショック、成人呼吸窮迫症候群、血液透析;アナフィラキシーショック、重度の喘息、血管浮腫、クローン病、鎌状赤血球貧血、連鎖球菌感染後糸球体腎炎および膵炎などの炎症症候である疾患または症候をさらに含む。障害は、医薬品副作用、薬剤アレルギー、IL−2による血管漏出症候群またはX線造影剤アレルギーによる場合もある。さらに、障害は、全身性エリテマトーデス、重症筋無力症、関節リウマチ、アルツハイマー病および多発性硬化症などの自己免疫疾患も含む。また、補体活性化は、移植拒絶反応にも関係している。最近、補体活性化と加齢黄斑変性症、糖尿病性網膜症などの眼疾患との間に強い相関関係が示されている。
【実施例】
【0100】
以下の実施例は説明を目的するものであって、限定を目的とするものではない。
(実施例1)
D因子マウスMAb166−32のヒト化
マウスmAb166−32の重鎖可変領域(V)および軽鎖可変領域(V)の配列を公共データベースで入手可能なヒト抗体生殖系列配列と比較した。上記のステップ1に記載されているような鋳型を決定する際、全長、フレームワーク内の類似CDRの位置、全体の相同性、CDRの大きさなど、複数の判断基準を用いた。これらの判断基準をすべて総合して、図3および図4に示した166−32MAb重鎖および軽鎖配列とそれぞれのヒト鋳型配列との配列アライメントに示すような、最適なヒト鋳型の選択に適した結果を得た。
【0101】
この場合、この抗体の設計には複数のヒトフレームワーク鋳型を用いた。V鎖に選んだヒト鋳型は、VI−4.1b+(7−04.1遺伝子座)(アクセス# X62110)(VH7ファミリー)とJH4dの組み合わせであった(図3を参照)。V鎖に選んだヒト鋳型は、DPK4(VK Iファミリー)とJK2の組み合わせであった(図4を参照)。
【0102】
鋳型を選択したら、DNA合成およびオーバーラップPCRでFabライブラリーを作成した。ライブラリーは、選んだそれぞれのヒト鋳型で合成した合成MAb166−32CDRで構成された。部分的VおよびV配列をコードする重複ヌクレオチドを、18〜21ヌクレオチドが重複する約63〜約76ヌクレオチドの範囲で合成した。D因子抗原に対するヒト化Fabのライブラリーを発現するベクターを作製し、E.coli DH10Bに形質転換し、その後XL−1Bの菌叢上に置いた。
【0103】
サイズ(独立クローン数)と多様性(突然変異の分布)についてライブラリーの質を評価した。軽鎖と重鎖との二重挿入を持つ個々のクローンは、配列決定された20のうち約14であった。ゆらぎによるフレームワーク突然変異は、均一に分布していた。
【0104】
フレームワーク領域FR1に特異的な配列およびリーダー配列(GeneIII)の末端にアニールされたオーバーハンギング配列を含むビオチン化フォワードプライマーと保存された定常領域(CまたはCH1)のリバースプライマーとを用いて、標準的なPCR条件下でVおよびV遺伝子のPCR増幅を行った。アガロースゲル電気泳動または市販のPCR精製キットでPCR産物を精製し、取り込まれなかったビオチン化プライマーおよび非特異的PCR産物を除去した。
(実施例2)
ライブラリーのスクリーニング
一次スクリーニングには捕捉フィルターリフトを用いた。実際のスクリーニングサイズは、理論的なライブラリーサイズよりも3倍超大きくなる。シングルポイントELISAアッセイで候補をさらにスクリーニングした。最良のバインダーを、Fab濃度に基づきD因子を用いた抗原の直接滴定によりさらに確認した
捕捉リフトスクリーニング
D因子に対するFabの結合についての一次スクリーニングには捕捉フィルターリフトアッセイを用いた。高力価のファージを蒔いて、使用するまで(約6〜8時間)37℃でインキュベートした。ヤギ抗ヒトκを10mlのPBSTで10ug/mlに希釈し;標準的なプラークリフト手順に従ってプラークリフト用のニトロセルロースフィルターを調製し、次いでシェーカーの10mlのブロッキング緩衝液に2時間浸した。このフィルターをPBSTで3回すすいだ。フィルターをプラーク菌叢に置き、室温で約15〜24時間インキュベートした。その後、フィルターをプレートから除去し、TBSTで3回すすいだ。
【0105】
D因子(50ug/ml)をPBSTで0.1ug/mlに希釈し、1フィルター当たり4mlを加えた。フィルターをシェーカーの溶液で室温にて2時間インキュベートし、続いて5分ずつ3回すすいだ。希釈した166−222−HRP(PBSTで1:10,000に希釈)を1フィルター当たり4mlの容量で加え、このフィルターをシェーカーで1時間インキュベートした。フィルターを4回すすいだ。フィルターを乾燥させてからTMB基質に浸し、続いて水に浸して反応を止めた。陽性クローンを同定した。
(実施例3)
シングルポイントELISAによるスクリーニング
二次スクリーニングにはシングルポイントELISAによるアッセイを用いた。Immulon IIプレートをヤギ抗ヒトFab(1:12,000、50ul/ウェル)で室温にて一晩コートした。翌日、このプレートをプレートウォッシャーで4回洗浄した。ブロッキング緩衝液を1ウェル当たり100ulの容量で加え、プレートを室温で1時間インキュベートした。その後、プレートを4回洗浄した。
【0106】
(15mlのペリプラズム調製物あるいは上清から)スクリーニング対象のFabをそれぞれ1ウェル当たり50ulの容量で加え、室温で1時間インキュベートした。プレートを4回洗浄し、続いて0.01ug/mlでビオチン化D因子を50ul/ウェル加えた。プレートを室温で1時間インキュベートし、次いで4回洗浄した。ストレプトアビジン−HRPを加え(PBSTで1:10,000に希釈)、室温で1時間インキュベートした。プレートを5回洗浄し、その後TMB基質を50ul/ウェル加えて展開した。十分に現像される場合(10〜45分)、停止緩衝液を50ulの容量で加え、プレートを450nmで読み取った。
(実施例4)
ヒト化抗D因子クローンのシーケンシング
ヒトD因子に対する結合親和性に優れた16個のヒト化クローンを配列決定した(表1を参照)。この中で、軽鎖の2番目(100%ヒト)および49番目(100%マウス)と、重鎖の93番目(100%マウス)とが高度に保存されていることから、これらが抗体結合能力を保つ上で重要であることが示唆される。
【0107】
【表1】

BIAcore解析および溶血阻害アッセイによりクローン#56を評価した。BIAcore解析を行ったところ、クローン#56のヒトD因子に対する親和性はキメラ166−32Fabと類似していることが示された(表4を参照)。溶血阻害アッセイでは、クローン#56はキメラ166−32Fabよりもやや作用が強いことが示された(図6を参照)。クローン#56は、軽鎖のフレームワークに2個のマウス残基および重鎖に4個のマウス残基を含む(表1を参照)。これらの結果を踏まえて、さらなる最適化を行った。
【0108】
【表2】

BIAcore解析によりクローン#111および#114の特徴付けを行った(表4を参照)。さらに、溶血阻害アッセイによりクローン#104、#111、#114および#130の特徴付けも行った(図6を参照)。溶血阻害アッセイで示さるように、これらのクローンは、キメラ166−32よりも親和性が高く、代替経路の阻害においてキメラFabよりも作用が強い(図7)。クローン#111は、軽鎖にクローン#56と同じ2個のマウス残基(4および49番目)を含む。さらに、このクローンは、クローン#56に見られるような重鎖の97番目に保存されたマウス残基を含む。クローン#111には軽鎖CDR3と重鎖CDR3の両方に好ましい突然変異が1つある。スクリーニング対象の2つの独立したライブラリー(ヒト化ライブラリーおよびヒト化/CDR3最適化ライブラリー)から、最良のクローンはコンセンサス残基が類似していることが見出された。
【0109】
クローン#111の親和性をさらに最適化するため、単一の突然変異をCDR−H1およびCDR−L2に同時に導入して抗体ライブラリーを作成した。手短に言えば、このライブラリーを、部位特異的突然変異誘発アプローチを用いて単一の突然変異をコードするオリゴヌクレオチドをクローン#111の鋳型にアニーリングして作成した。全体でヒトD因子に対する親和性が非常に高い24個のクローンを配列決定した。この24個のクローンの中で、複数の好ましい重複突然変異を同定した。BIAcore解析のため、クローン#250、#315、#345および#416を選択した(表4を参照)。BIAcoreデータから、これらのクローンはヒトD因子に対する親和性が当初のクローン#111よりも高いことが示された。さらに、溶血阻害アッセイ(図6を参照)および代替経路の阻害(図7)ではクローン#250、#315、#348および#416についても検査した。
(実施例5)
AP(alternative pathway)溶血アッセイ
溶血阻害アッセイおよびBIAcore解析を用いてヒト化クローンの生物学的機能を判定した(以下の実施例6を参照)。以下の手順に従って溶血アッセイを行った。1:20希釈ウサギ赤血球(RRBC:rabbit red blood cell)(0.5ml+9.5mlのGVB/Mg−EGTA緩衝液)20ulを20mlの食塩水(0.9%NaCl)で約1:2×10に希釈し、コールターカウンターでカウントした。次いで、細胞濃度を約2〜5×10細胞/mlに調節した。各プレートに約500×10/プレートRRBCまたは約1mlのRRBC/プレート(500×10/2〜5×10)を加えた。
【0110】
細胞を6mlのGVB/Mg−EGTA緩衝液/プレートで希釈し、混合し、4℃で1360rpm×4分回転させて3回洗浄した。RRBCペレットを3mlのGVB/Mg−EGTA緩衝液/プレートに懸濁し、氷冷保存した。
【0111】
使用の直前に−80℃のフリーザーからヒト血清を解凍した。この血清をGVB/Mg−EGTA緩衝液(5ml/プレート)で20%血清の濃度(最終10%)に希釈し、氷冷保存した。
【0112】
【表3】

サンプルを5〜6℃で30秒間、次いで37℃で40分間振盪した。振盪しながらサンプルを5〜6℃に冷却し、次いで2,000rpm×3分、4℃で遠心した。約80ulの上清を平底96ウェルプレートに移し、標準的なプレートリーダーを用いて590nmでOD値を読み取った。阻害率を以下のとおり計算した:阻害率={[(S−SB)−(U−SB)]/(S−SB)}×100%。(U=サンプル1、2または3(それぞれ表3のカラム1、2または3)。
(実施例6)
BiaCoreによる抗ヒトD因子Fabの速度論的解析
固定化−アミンカップリング法を用いてヒトD因子(Advanced Research Inc,0.1mg/ml)をCM5チップ(BiaCore)に直接固定化した。その手順を以下のとおり簡単に記載する:(1)流速(PBS)を5μl/分で一定にする。(2)35μlのEDC/NHS(1:1)を注入。(3)酢酸塩緩衝液(pH4.5)に溶かした35μlのヒトD因子を注入。(4)35μlのエトールアミンを注入して活性化基をブロックする。(5)5μlの10mMグリシン(pH1.5)で表面をクリーンアップする。リガンド(ヒトD因子)の固定化レベルは約1,000RUである。α−ヒトD因子(huDi、40μl、31.5μg/ml)を用いて行った試験では、900RU前後で相対感度を得た。
【0113】
速度論的解析−すべての抗ヒトD因子FabをPBS緩衝液で希釈した。各サンプルを、高保有率での40μl注入パルスにより段階的な濃度(12.5nM、25nM、50nM、75nM、100nM、125nMおよび150nM)で調製した。pH1.5で10mMグリシンの5μlパルスを与えて再生を行った。速度論的パラメータについては、BIAvaluationバージョンを用いてFab結合トレースを擬一次反応速度に基づき1:1結合モデルにフィッティングさせて得たD因子(D因子に対するIgGとしての抗体の親和性など)は5.5nM(5.5×10−9M)と1nM(1×10−9M)の間にある。別の実施形態では、本発明は、D因子に対して抗体の二価形態での親和性(D因子に対するIgGとしての抗体の親和性など)が0.5pM(0.5×10−12M)と2pM(2×10−12M)の間にある、抗D因子抗体を提供する。
【0114】
別の実施形態では、本発明は、D因子に対して抗体の一価形態での親和性(D因子に対するFabフラグメントとしての抗体の親和性など)が約0.37nM(37×10−10M)である、抗D因子抗体を提供する。別の実施形態では、本発明は、D因子に対して抗体の一価形態での親和性(D因子に対するFabフラグメントとしての抗体の親和性など)が約0.33nM(3.3×10−10M)である、抗D因子抗体を提供する。別の実施形態では、本発明は、D因子に対して抗体の一価形態での親和性(D因子に対するFabフラグメントとしての抗体の親和性など)が約0.51nM(5.1×10−10M)である、抗D因子抗体を提供する。別の実施形態では、本発明は、D因子に対して抗体の一価形態での親和性(D因子に対するFabフラグメントとしての抗体の親和性など)が約2.7nM(2.7×10−9M)である、抗D因子抗体を提供する。別の実施形態では、本発明は、D因子に対して抗体の一価形態での親和性(D因子に対するFabフラグメントとしての抗体の親和性など)が約1.4nM(1.4×10−9M)である、抗D因子抗体を提供する。別の実施形態では、本発明は、D因子に対して抗体の一価形態での親和性(D因子に対するFabフラグメントとしての抗体の親和性など)が約1.4pM(1.4×10−12M)である、抗D因子抗体を提供する。別の実施形態では、本発明は、D因子に対して抗体の二価形態での親和性(D因子に対するIgGとしての抗体の親和性など)が約1.1pM(1.1×10−12M)である、抗D因子抗体を提供する。別の実施形態では、本発明は、D因子に対して抗体の一価形態での親和性(D因子に対するFabフラグメントとしての抗体の親和性など)が約0.19nM(0.19×10−9M)である、抗D因子抗体を提供する。別の実施形態では、本発明は、D因子に対して抗体の二価形態での親和性(D因子に対するIgGとしての抗体の親和性など)が約0.08nM(0.08×10−9M)である、抗D因子抗体を提供する。別の実施形態では、本発明は、D因子に対して抗体の一価形態での親和性(3.0に対するFabフラグメントとしての抗体の親和性など、抗D因子抗体を提供する。以下の表4に結果を示す。データはすべてグローバルフィッティングルーチンにより得ている。
【0115】
【表4】

当業者であれば、通常の実験を用いるのみで本明細書に記載する本発明の具体的な実施形態に対する等価物を数多く認識するか、確認することができるであろう。そうした等価物については、以下の特許請求の範囲に包含されることを意図している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書中に記載の発明。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8A】
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【図8B】
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【図9A】
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【図9B】
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【公開番号】特開2013−27404(P2013−27404A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−235325(P2012−235325)
【出願日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【分割の表示】特願2009−535444(P2009−535444)の分割
【原出願日】平成19年10月31日(2007.10.31)
【出願人】(509012625)ジェネンテック, インコーポレイテッド (357)
【Fターム(参考)】